(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016847
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】到達可能範囲算出装置、到達可能範囲算出方法および到達可能範囲算出プログラム
(51)【国際特許分類】
B60L 15/20 20060101AFI20230126BHJP
G06F 16/909 20190101ALI20230126BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20230126BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20230126BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20230126BHJP
【FI】
B60L15/20 J
G06F16/909
G01C21/26 A
B60L50/60
B60L58/12
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182941
(22)【出願日】2022-11-15
(62)【分割の表示】P 2021006623の分割
【原出願日】2012-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 智博
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 要一
(72)【発明者】
【氏名】安士 光男
(72)【発明者】
【氏名】福田 達也
(72)【発明者】
【氏名】大沢 進
(57)【要約】
【課題】ユーザが充電スポットを検索する時に、ユーザが指定した種別に限定して充電スポットを検索できる。
【解決手段】補充設備検索装置は、移動体の位置を基点とした、移動体が保有するエネルギー量で到達可能な領域を含む到達可能範囲を算出する算出部102を備え、算出部102は、移動体にエネルギーを供給可能な供給設備が到達可能範囲内にある場合、供給設備で移動体にエネルギーを供給したと仮定する場合の移動体の保有エネルギー量に基づいて、供給設備を基点とする新たな到達可能範囲を算出する算出処理を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の位置を基点とした、当該移動体が保有するエネルギー量で到達可能な領域を含む到達可能範囲を算出する算出手段を備え、
前記算出手段は、前記移動体にエネルギーを供給可能な供給設備が前記到達可能範囲内にある場合、当該供給設備で前記移動体にエネルギーを供給したと仮定する場合の当該移動体の保有エネルギー量に基づいて、当該供給設備を基点とする新たな到達可能範囲を算出する算出処理を行うことを特徴とする到達可能範囲算出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動体の残存エネルギー量に基づいて移動体の到達可能範囲を算出する到達可能範囲算出装置、到達可能範囲算出方法および到達可能範囲算出プログラムに関する。ただし、この発明の利用は、到達可能範囲算出装置、到達可能範囲算出方法および到達可能範囲算出プログラムに限らない。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体の現在地点に基づいて、移動体の到達可能範囲を生成する処理装置が知られている(たとえば、下記特許文献1参照。)。下記特許文献1では、移動体の現在地点を中心に地図上の全方位を放射状に分割し、分割領域ごとに移動体の現在地点から最も遠い到達可能な交差点を地図情報のノードとして取得する。そして、取得した複数のノードを結んで得られるベジュ曲線を移動体の到達可能範囲として表示している。
【0003】
また、移動体のバッテリー残容量および電力消費量に基づいて、各道路における移動体の現在地点からの到達可能範囲を生成する処理装置が知られている(たとえば、下記特許文献2参照。)。下記特許文献2では、移動体の現在地点に接続する複数の道路において移動体の電力消費量を算出し、移動体のバッテリー残容量および電力消費量に基づいて各道路における移動体の走行可能距離を算出する。そして、移動体の現在地点と、当該現在地点から走行可能距離だけ離れた移動体の複数の到達可能地点とを地図情報のノードとして取得し、複数のノードを結んで得られる線分の集合体を移動体の到達可能範囲として表示している。
【0004】
また、移動体の走行の途中で交通規制や渋滞が発生したとき、目的地への到達時間が遅れる場合、ユーザに知らせる処理装置が知られている(たとえば、下記特許文献3参照。)。下記特許文献3では、道路の規制や渋滞等により、目的地の営業時間に到達できないとき、警告を表示または音声出力している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-016094号公報
【特許文献2】特開平07-085397号公報
【特許文献3】特開2000-028377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1~3の技術では、移動体が到達可能な到達可能範囲と到達不可能な到達不能範囲とを明確に区別してユーザに表示等で知らせることができなかった。到達不能範囲は、移動体が保有するエネルギー量、すなわち、バッテリー残容量がなくなり到達できない範囲である。到達可能範囲と到達不能範囲とを明確に区別できないため、従来は、到達不能範囲に経路設定がおこなえてしまうが、実際には到達することができなくなる、という問題点が一例として挙げられる。
【0007】
また、到達不能範囲は、到達可能範囲以外の範囲ではあるが、到達可能範囲自体が変更される要因を考慮していなかった。たとえば、現在のバッテリー残容量で到達可能範囲を得るだけではなく、得られた到達可能範囲に移動体が到達した後にエネルギー補充(充電)をおこなうことができれば、到達可能範囲をより広範囲にできる。エネルギー補充は、充電スポット等の補充設備でおこなえる。しかし、従来は、到達可能範囲に到達した後のエネルギー補充の有無を考慮しておらず、より実際的な到達可能範囲を知らせることができなかった。併せて、エネルギー補充したとしても実際には到達できない到達不能範囲を明確に知らせることができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明の請求項1にかかる到達可能範囲算出装置は、移動体の位置を基点とした、当該移動体が保有するエネルギー量で到達可能な領域を含む到達可能範囲を算出する算出手段を備え、前記算出手段は、前記移動体にエネルギーを供給可能な供給設備が前記到達可能範囲内にある場合、当該供給設備で前記移動体にエネルギーを供給したと仮定する場合の当該移動体の保有エネルギー量に基づいて、当該供給設備を基点とする新たな到達可能範囲を算出する算出処理を行うことを特徴とする。
【0009】
また、請求項11の発明にかかる到達可能範囲算出方法は、到達可能範囲算出装置により実行される到達可能範囲算出方法であって、移動体の位置を基点とした、当該移動体が保有するエネルギー量で到達可能な領域を含む到達可能範囲を算出する算出工程を備え、前記算出工程は、前記移動体にエネルギーを供給可能な供給設備が前記到達可能範囲内にある場合、当該供給設備で前記移動体にエネルギーを供給したと仮定する場合の当該移動体の保有エネルギー量に基づいて、当該供給設備を基点とする新たな到達可能範囲を算出する算出処理を行うことを特徴とする。
【0010】
また、請求項12の発明にかかる到達可能範囲算出プログラムは、請求項11に記載の到達可能範囲算出方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施の形態1にかかる画像処理装置の機能的構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、移動体の到達可能範囲および到達不能範囲を説明する図である。
【
図3】
図3は、補充設備検索による移動体の到達可能範囲の変更処理を説明する図である。
【
図4】
図4は、画像処理装置による画像処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、ナビゲーション装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図6-1】
図6-1は、ナビゲーション装置による到達可能地点探索の一例について模式的に示す説明図である。
【
図6-2】
図6-2は、ナビゲーション装置による到達可能地点探索の一例について模式的に示す説明図である。
【
図6-3】
図6-3は、ナビゲーション装置による到達可能地点探索の一例について模式的に示す説明図である。
【
図6-4】
図6-4は、ナビゲーション装置による到達可能地点探索の一例について模式的に示す説明図である。
【
図7】
図7は、ナビゲーション装置による到達可能地点探索の一例について模式的に示す説明図である。
【
図8】
図8は、ナビゲーション装置による到達可能地点を経度-緯度で示す一例の説明図である。
【
図9】
図9は、ナビゲーション装置による到達可能地点をメッシュデータで示す一例の説明図である。
【
図10】
図10は、ナビゲーション装置によるクロージング処理の一例を示す説明図である。
【
図11】
図11は、ナビゲーション装置によるオープニング処理の一例を示す説明図である。
【
図12】
図12は、ナビゲーション装置による車両の到達可能範囲抽出の一例を模式的に示す説明図である。
【
図13】
図13は、ナビゲーション装置による車両の到達可能範囲抽出後のメッシュデータの一例を模式的に示す説明図である。
【
図14】
図14は、ナビゲーション装置による車両の到達可能範囲抽出の別の一例について模式的に示す説明図である。
【
図15-1】
図15-1は、ナビゲーション装置による車両の到達可能範囲の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図15-2】
図15-2は、補充設備の管理テーブルを示す図表である。
【
図16】
図16は、ナビゲーション装置による車両の到達可能範囲の表示例を示す図である。
【
図17】
図17は、ナビゲーション装置による車両の到達不能範囲の表示例を示す図である。
【
図18】
図18は、充電スポット検索時の種別条件の検索画面を示す図である。
【
図19】
図19は、ナビゲーション装置による車両の到達可能範囲の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図20】
図20は、勾配がある道路を走行する車両にかかる加速度の一例を模式的に示した説明図である。
【
図21】
図21は、実施の形態2にかかる画像処理システムの機能的構成の一例を示すブロック図である。
【
図22】
図22は、実施の形態3にかかる画像処理システムの機能的構成の一例を示すブロック図である。
【
図23】
図23は、実施例2にかかる画像処理装置のシステム構成の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる到達可能範囲算出装置、到達可能範囲算出方法および到達可能範囲算出プログラムの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1にかかる画像処理装置の機能的構成の一例を示すブロック図である。実施の形態1にかかる画像処理装置100は、移動体の残存エネルギー量に基づいて探索された移動体の到達可能地点に基づいて移動体の到達可能範囲を生成し表示部110に表示させる。
【0014】
また、画像処理装置100は、到達可能範囲にエネルギーを補充できる充電スポット等の補充設備がある場合、この補充設備においてエネルギーを補充(充電)すると仮定して移動体の新たな到達可能範囲を表示させる。また、補充設備でエネルギー補充を行っても移動体が到達不能な範囲があればこの到達不能範囲を生成して表示部110に表示させることができる。
【0015】
この画像処理装置100は、取得部101、算出部102、探索部103、分割部104、付与部105、補充設備検索部106、表示制御部107によって構成される。また、取得部101、算出部102、探索部103、分割部104、付与部105は、移動体の到達可能範囲を算出する到達可能範囲算出部109を構成している。
【0016】
ここで、エネルギーとは、たとえば、EV(Electric Vehicle)車などの場合、電気などに基づくエネルギーであり、HV(Hybrid Vehicle)車、PHV(Plug-in Hybrid Vehicle)車などの場合は電気などに基づくエネルギーおよび、たとえばガソリンや軽油、ガスなどに基づくエネルギーである。また、エネルギーとは、たとえば燃料電池車の場合、電気などに基づくエネルギーおよび、たとえば水素や水素原料になる化石燃料などである(以下、EV車、HV車、PHV車、燃料電池車は単に「EV車」という)。また、エネルギーとは、たとえば、ガソリン車、ディーゼル車など(以下、単に「ガソリン車」という)の場合、たとえば、ガソリンや軽油、ガスなどに基づくエネルギーである。たとえば残存エネルギーとは、たとえば、移動体の燃料タンクやバッテリー内、高圧タンクなどに残っているエネルギーであり、後の移動体の走行に用いることのできるエネルギーである。
【0017】
取得部101は、画像処理装置100を搭載した移動体の現在地点に関する情報や、移動体の現在地点において当該移動体が保有するエネルギー量である初期保有エネルギー量に関する情報、充電スポット等の補充設備に関する情報等を取得する。具体的には、取得部101は、たとえば、GPS衛星から受信したGPS情報などを用いて、自装置の現在位置を算出することによって現在地点に関する情報(位置情報)を取得する。また、エネルギー補充可能な充電スポット等の補充設備の位置、充電種別(急速充電または普通充電)にかかる情報等を取得する。
【0018】
また、取得部101は、たとえば、CAN(Controller Area Network)など通信プロトコルによって動作する車内通信網を介して、エレクトロニックコントロールユニット(ECU:Electronic Control Unit)によって管理されている移動体の残存エネルギー量を、初期保有エネルギー量として取得する。
【0019】
取得部101は、移動体の速度に関する情報や、渋滞情報、移動体情報を取得してもよい。移動体の速度に関する情報とは、移動体の速度、加速度である。また、取得部101は、たとえば、記憶部(不図示)に記憶された地図情報から道路に関する情報を取得してもよいし、傾斜センサなどから道路勾配などを取得してもよい。道路に関する情報とは、たとえば、道路種別や、道路勾配、路面状況などにより移動体に生じる走行抵抗である。
【0020】
算出部102は、移動体が所定区間を走行する際に消費するエネルギーである推定エネルギー消費量を算出する。所定区間とは、たとえば、道路上の一の所定地点(以下、「ノード」とする)と当該一のノードに隣り合う他のノードとを結ぶ区間(以下、「リンク」とする)である。ノードとは、たとえば、交差点やスタンドであってもよいし、所定の距離で区切られたリンク間の接続地点であってもよい。ノードおよびリンクは、記憶部に記憶された地図情報を構成する。地図情報は、たとえば、交差点(点)、道路(線や曲線)、領域(面)やこれらを表示する色などを数値化したベクタデータで構成される。
【0021】
具体的には、算出部102は、第一情報と、第二情報と、第三情報と、を含む消費エネルギー推定式に基づいて、所定区間における推定エネルギー消費量を推定する。より具体的には、算出部102は、移動体の速度に関する情報や移動体情報に基づいて、所定区間における推定エネルギー消費量を推定する。移動体情報とは、移動体の重量(乗車人数や積載荷物による重量も含む)、回転体の重量など、移動体走行時に消費または回収されるエネルギー量を変化させる要因となる情報である。なお、道路勾配が明らかな場合、算出部102は、さらに第四情報を加えた消費エネルギー推定式に基づいて、所定区間における推定エネルギー消費量を推定してもよい。
【0022】
消費エネルギー推定式とは、所定区間における移動体のエネルギー消費量を推定する推定式である。具体的には、消費エネルギー推定式は、エネルギー消費量を増減させる異なる要因である第一情報、第二情報および第三情報を含む多項式である。また、道路勾配が明らかな場合、消費エネルギー推定式には、さらに第四情報が加えられる。消費エネルギー推定式についての詳細な説明は後述する。
【0023】
第一情報は、移動体に備えられた装備品により消費されるエネルギーに関する情報である。また、移動体の加減速時を含む走行時および停止時に消費されるエネルギーに関する情報である。
【0024】
具体的には、第一情報は移動体の走行に関係しない要因で消費されるエネルギー量である。より具体的には、第一情報は移動体に備えられたエアコン、カーオーディオ、ヘッドライト、ウインカー、ブレーキポンプなどの装備品によって消費されるエネルギー量である。
【0025】
第二情報は、移動体の加減速時に消費および回収されるエネルギーに関する情報である。移動体の加減速時とは、移動体の速度が時間的に変化している走行状態である。具体的には、移動体の加減速時とは、所定時間内において、移動体の速度が変化する走行状態である。所定時間とは、一定間隔の時間の区切りであり、たとえば、単位時間当たりなどである。回収されるエネルギーとは、EV車の場合、たとえば、移動体の走行時にバッテリーに充電される電力である。また、回収されるエネルギーとは、ガソリン車の場合、たとえば、消費される燃料を低減(燃料カット)し節約することのできる燃料である。
【0026】
第三情報は、移動体の走行時に生じる抵抗により消費されるエネルギーに関する情報である。移動体の走行時とは、所定時間内において、移動体の速度が一定、加速もしくは減速している走行状態である。移動体の走行時に生じる抵抗とは、移動体の走行時に移動体の走行状態を変化させる要因である。具体的には、移動体の走行時に生じる抵抗とは、気象状況、道路状況、車両状況などにより移動体に生じる各種抵抗である。
【0027】
気象状況により移動体に生じる抵抗とは、たとえば、雨、風などの気象変化による空気抵抗である。道路状況により移動体に生じる抵抗とは、道路勾配、路面の舗装状態、路面上の水などによる路面抵抗である。車両状況により移動体に生じる抵抗とは、タイヤの空気圧、乗車人数、積載重量などにより移動体にかかる負荷抵抗である。
【0028】
具体的には、第三情報は、空気抵抗や路面抵抗、負荷抵抗を受けた状態で、移動体を一定速度、加速もしくは減速で走行させたときのエネルギー消費量である。より具体的には、第三情報は、たとえば、向かい風により移動体に生じる空気抵抗や、舗装されていない道路から受ける路面抵抗などを、移動体が一定速度、加速もしくは減速で走行するときに消費されるエネルギー消費量である。
【0029】
第四情報は、移動体が位置する高度の変化により消費および回収されるエネルギーに関する情報である。移動体が位置する高度の変化とは、移動体の位置する高度が時間的に変化している状態である。具体的には、移動体が位置する高度の変化とは、所定時間内において、移動体が勾配のある道路を走行することにより高度が変化する走行状態である。
【0030】
また、第四情報は、所定区間内における道路勾配が明らかな場合に求めることができる付加的な情報であり、これによりエネルギー消費量の推定精度を向上することができる。なお、道路の傾斜が不明な場合、または計算を簡略化する場合、移動体が位置する高度の変化はないものとして、後述する消費エネルギー推定式における道路勾配θ=0としてエネルギー消費量を推定することができる。
【0031】
探索部103は、記憶部に記憶された地図情報、取得部101によって取得された移動体の現在地点および初期保有エネルギー量、ならびに算出部102によって算出された推定エネルギー消費量に基づいて、移動体が現在地点から到達可能な地点である複数の到達可能地点を探索する。
【0032】
具体的には、探索部103は、移動体の現在地点から移動可能なすべての経路において、それぞれ、移動体の現在地点を始点とし、移動体からの経路上の所定地点同士を結ぶ所定区間における推定エネルギー消費量の累計が最小となるように所定地点および所定区間を探索する。そして、探索部103は、移動体の現在地点から移動可能なすべての経路において、それぞれ、推定エネルギー消費量の累計が移動体の現時点での初期保有エネルギー量の範囲内にある所定地点を移動体の到達可能地点とする。
【0033】
より具体的には、探索部103は、移動体の現在地点を始点として、移動体の現在地点から移動可能なすべてのリンク、これらのリンクにそれぞれ接続するノード、これらのノードから移動可能なすべてのリンクと、移動体の到達可能なすべてのノードおよびリンクを順に探索する。このとき、探索部103は、新たな一のリンクを探索するごとに、一のリンクが接続する経路の推定エネルギー消費量を累計し、推定エネルギー消費量の累計が最小となるように当該一のリンクに接続するノードおよびこのノードに接続する複数のリンクを探索する。
【0034】
たとえば、探索部103は、当該一のリンクおよび他のリンクが同一のノードに接続されている場合、このノードに接続する複数のリンクのうち、移動体の現在地点から当該ノードまでの推定エネルギー消費量の累計の少ないリンクの推定エネルギー消費量を使って当該ノードの推定エネルギー消費量の累計を算出する。そして、探索部103は、探索されたノードおよびリンクで構成される複数の経路において、それぞれ、推定エネルギー消費量の累計が移動体の初期保有エネルギー量の範囲内にあるすべてのノードを移動体の到達可能地点として探索する。このように推定エネルギー消費量の少ないリンクの推定エネルギー消費量を使うことにより、当該ノードの推定エネルギー消費量の正しい累計を算出することができる。
【0035】
また、探索部103は、移動体の移動が禁止された所定区間を、移動体の到達可能地点を探索するための候補から除いて当該到達可能地点を探索してもよい。移動体の移動が禁止された所定区間とは、たとえば、一方通行の逆走となるリンク、時間規制や季節規制により通行禁止区間となるリンクである。時間規制とは、たとえば、通学路や行事などに設定されることにより、ある時間帯で通行が禁止されることである。季節規制とは、たとえば、大雨や大雪などにより通行が禁止されることである。
【0036】
探索部103は、複数の所定区間のうち、一の所定区間の次に選択する他の所定区間の重要度が当該一の所定区間の重要度よりも低い場合、他の所定区間を、移動体の到達可能地点を探索するための候補から除いて当該到達可能地点を探索してもよい。所定区間の重要度とは、たとえば、道路種別などである。道路種別とは、法定速度や、道路の勾配、道路幅、信号の有無などの道路状態の違いにより区別することのできる道路の種類である。具体的には、道路種別とは、一般国道、高速道路、一般道路、市街地などを通る細街路などである。細街路とは、たとえば、市街地内にある幅員4メートル未満の建築基準法に規定された道路である。
【0037】
さらに、探索部103は、一の橋または一のトンネルの入口および出口が移動体の到達可能地点となる場合、分割部104によって分割される地図情報の一の橋または一のトンネルを構成するすべての領域が移動体の到達可能範囲に含まれるように移動体の到達可能地点を探索するのが好ましい。具体的には、探索部103は、たとえば、一の橋または一のトンネルの入口が移動体の到達可能地点となる場合、一の橋または一のトンネルの入口から出口に向かって、一の橋または一のトンネル上に複数の到達可能地点が探索されるように当該到達可能地点を探索してもよい。一の橋または一のトンネルの入口とは、一の橋または一のトンネルの、移動体の現在地点に近い側の始点である。
【0038】
また、探索部103は、充電スポット等によりエネルギーが補充された場合には、補充後の保有エネルギー量を用いて再度到達可能地点を探索する。
【0039】
分割部104は、地図情報を複数の領域に分割する。具体的には、分割部104は、探索部103によって探索された移動体の複数の到達可能地点のうち、移動体の現在地点から最も離れた到達可能地点に基づいて、地図情報を複数の矩形状の領域に分割し、たとえばm×mドットのメッシュデータに変換する。m×mドットのメッシュデータは、後述する付与部105によって識別情報が付与されたラスタデータ(画像データ)として扱われる。なお、m×mドットのそれぞれのmは同じ数値でも構わないし、異なる数値でも構わない。
【0040】
より具体的には、分割部104は、最大経度、最小経度、最大緯度、最小緯度を抽出し移動体の現在地点からの距離を算出する。そして、分割部104は、たとえば、移動体の現在地点から最も遠い到達可能地点と移動体の現在地点とをn等分したときの一の領域の大きさを、地図情報を複数の領域に分割したときの一の領域の大きさとし、地図情報をm×mドットのメッシュデータに分割する。このとき、メッシュデータの周辺のたとえば4ドット分を空白にするために、n=(m/2)-4とする。
【0041】
付与部105は、探索部103によって探索された複数の到達可能地点に基づいて、分割部104によって分割された複数の領域にそれぞれ移動体が到達可能であるか否かを識別する識別情報を付与する。具体的には、付与部105は、分割部104によって分割された一の領域に移動体の到達可能地点が含まれる場合、その一の領域に移動体が到達可能であることを識別する到達可能の識別情報を付与する。その後、付与部105は、分割部104によって分割された一の領域に移動体の到達可能地点が含まれない場合、その一の領域に移動体が到達不可能であることを識別する到達不可能の識別情報を付与する。
【0042】
より具体的には、付与部105は、m×mに分割されたメッシュデータの各領域に、到達可能の識別情報「1」または到達不可能の識別情報「0」を付与することで、m行m列の2次元行列データのメッシュデータに変換する。分割部104および付与部105は、このように地図情報を分割してm行m列の2次元行列データのメッシュデータに変換し、2値化されたラスタデータとして扱う。
【0043】
付与部105は、分割部104によって分割された複数の領域に対して識別情報の変更処理をおこなう第1変更部および第2変更部を備える。具体的には、付与部105は、第1変更部および第2変更部によって、地図情報が分割されてなるメッシュデータを2値化されたラスタデータとして扱い、クロージング処理(膨張処理後に縮小処理をおこなう処理)をおこなう。また、付与部105は、第1変更部および第2変更部によって、オープニング処理(縮小処理後に膨張処理をおこなう処理)をおこなってもよい。
【0044】
具体的には、第1変更部は、識別情報が付与された一の領域に隣り合う他の領域に到達可能の識別情報が付与されている場合、当該一の領域の識別情報を到達可能の識別情報に変更する(膨張処理)。より具体的には、第1変更部は、矩形状の一の領域の、左下、下、右下、右、右上、上、左上、左の8方向に隣り合う他の領域のうちのいずれかの領域に到達可能の識別情報である「1」が付与されている場合、当該一の領域の識別情報を「1」に変更する。
【0045】
第2変更部は、第1変更部による識別情報の変更後、識別情報が付与された一の領域に隣り合う他の領域に到達不可能の識別情報が付与されている場合、当該一の領域の識別情報を到達不可能の識別情報に変更する(縮小処理)。より具体的には、第2変更部は、矩形状の一の領域の、左下、下、右下、右、右上、上、左上、左の8方向に隣り合う他の領域のうちのいずれかの領域に到達不可能の識別情報である「0」が付与されている場合、当該一の領域の識別情報を「0」に変更する。第1変更部による膨張処理と、第2変更部による縮小処理は、同じ回数ずつおこなう。
【0046】
このように、付与部105は、分割部104によって分割された複数の領域のうち、移動体が現在地点から到達可能な地点である到達可能地点を含む領域に、当該移動体が到達可能であることを識別する到達可能の識別情報を付与して当該移動体の到達可能範囲とする。その後、付与部105は、到達可能の識別情報を付与した領域に隣り合う領域にも到達可能の識別情報を付与し、移動体の到達可能範囲に欠損点が生じないように各領域の識別情報を変更する。
【0047】
また、付与部105は、地図情報の一の橋または一のトンネルの入口および出口に相当する分割された地図情報に、到達可能であることを識別する到達可能の識別情報が付与されている場合、当該一の橋または当該一のトンネルを構成するすべての領域に相当する分割された地図情報に、到達可能の識別手段を付与する。具体的には、付与部105は、たとえば、一の橋または一のトンネルの入口および出口に相当する各領域にそれぞれ到達可能の識別情報が付与されている場合、一の橋または一のトンネルの入口に相当する領域から出口に相当する領域に至るまでに移動体が移動可能な全領域に到達可能の識別情報を付与する。
【0048】
より具体的には、付与部105は、たとえば、第1変更部による膨張処理前に、一の橋または一のトンネルの入口および出口に相当する各領域にそれぞれ到達可能の識別情報である「1」が付与されている場合で、一の橋または一のトンネル上に欠損点が生じているときに、一の橋または一のトンネルの入口に相当する領域と出口に相当する領域とを結ぶ区間上に位置する全領域の識別情報を「1」に変更する。一の橋または一のトンネルの入口に相当する領域と出口に相当する領域とを結ぶ区間とは、複数のカーブを含む道路に相当する区間であってもよいし、一本の直線状の道路に相当する区間であってもよい。
【0049】
補充設備検索部106は、探索部103により探索されて付与部105により移動体が移動可能な領域に到達可能の識別情報が付与された範囲(到達可能範囲)における充電スポット等の補充設備を検索する。この検索により、到達可能範囲内に補充設備がある場合、取得部101に対し、この補充設備に関する情報の再度取得を要求する。この要求に基づき、取得部101は、補充設備に関する情報を算出部102,探索部103,分割部104に出力し、これら算出部102~付与部105により、移動体が補充設備でエネルギー補充(厳密には、後述する最大充電容量の充電)をおこなった場合に、この補充設備を中心とする移動体の到達可能範囲を新たに求める。
【0050】
上記の取得部101は、補充設備に関する情報を通信等で外部から取得する。これに限らず、画像処理装置100が補充設備に関する情報をデータベースとして記憶部に保持する構成とすることもでき、この場合、補充設備検索部106が直接記憶部から補充設備に関する情報を検索し、この補充設備に関する情報を算出部102、探索部103による到達可能範囲を算出する手段に出力する。
【0051】
新たに求められた到達可能範囲は、既に検索された到達可能範囲に画像上で合成して表示制御部107に出力される。これにより、移動体が補充設備でエネルギー補充した場合を想定し、より広い範囲の到達可能範囲を表示することができるようになる。また、到達可能範囲以外の領域(範囲)を到達不能範囲として表示することもでき、ユーザに対し充電をおこなっても実際には到達できない領域(範囲)を明確に知らせることができるようになる。
【0052】
表示制御部107は、付与部105によって識別情報が付与された領域の識別情報に基づいて、移動体の到達可能範囲を地図情報とともに表示部110に表示させる。具体的には、表示制御部107は、付与部105によって識別情報が付与された複数の画像データであるメッシュデータをベクタデータに変換し、記憶部に記憶された地図情報とともに表示部110に表示させる。
【0053】
(移動体の到達可能範囲および到達不能範囲の概要説明)
つぎに、移動体の到達可能範囲および到達不能範囲の概要について説明する。
図2は、移動体の到達可能範囲および到達不能範囲を説明する図である。一例として、海に突き出た半島201があり、この半島201に充電スポット202があるとする。移動体が充電スポット202で充電した場合に到達できる到達可能範囲Aを図中斜線で示す。この到達可能範囲Aは半島201の先端まで達しておらず、先端付近に他の充電スポット202がないことから、移動体は到達可能範囲Aの範囲までしか到達できず、半島の先端を含む到達不能範囲Xには到達することができない。このように、移動体が充電スポット202まで到達した後、この充電スポット202で充電をおこなっても、到達できない領域(到達不能範囲X)が生じることがある。
【0054】
(エネルギー補充設備検索による移動体の到達可能範囲の変更について)
つぎに、エネルギー補充設備検索による移動体の到達可能範囲の変更処理について説明する。
図3は、補充設備検索による移動体の到達可能範囲の変更処理を説明する図である。
図3の(a)に示すように、移動体の到達可能範囲A=A1であり、現在地点301を中心として輪郭a1を有するとする。このように一度移動体の到達可能範囲A1が求められた後、補充設備検索部106は、取得部101に対し、この到達可能範囲A1内の充電スポット202の検索を要求する。
【0055】
そして(b)に示すように、到達可能範囲A1内で3つの充電スポット202a~202cが検索されたとする。この後、算出部102~付与部105により、移動体が各充電スポット202a~202cで充電をおこなった場合に、これら充電スポット202a~202cのそれぞれを中心とする移動体の新たな到達可能範囲を求める。この結果、(c)に示すように、充電スポット202aを中心とする新たな到達可能範囲A2、充電スポット202bを中心とする新たな到達可能範囲A3、充電スポット202cを中心とする新たな到達可能範囲A4が求められる。これにより、移動体の到達可能範囲Aは、各到達可能範囲を重ね合わせた範囲となり、A=A1+A2+A3+A4と広範囲になる。なお、到達可能範囲Aの輪郭aは、
図3(c)の太線で示す通り、各到達可能範囲A1~A4を重ね合わせた範囲Aの輪郭となる。
【0056】
補充設備検索は、1回に限らず、拡大された範囲に、さらに新たな充電スポット202が見つかる都度、同様の処理を繰り返しおこない、到達可能範囲をさらに広範囲にすることができる。たとえば、上記の(c)で新たに3つの充電スポット202a~202cが検索された場合、該当する到達可能範囲A2~A4に対して新たに補充設備検索をおこなう。
【0057】
これにより、(d)に示すように、補充設備検索部106の要求により到達可能範囲A2で新たに充電スポット202dが検索されたとする。この後、算出部102~付与部105により、移動体が各充電スポット202dで充電をおこなった場合に、充電スポット202dを中心とする移動体の新たな到達可能範囲を求める。この結果、(e)に示すように、充電スポット202dを中心とする新たな到達可能範囲A5が求められる。これにより、移動体の到達可能範囲Aは、各到達可能範囲を重ね合わせた範囲となり、A=A1+A2+A3+A4+A5となり、さらに広範囲になる。
【0058】
上記の処理は、たとえば、新たな到達可能範囲内に充電スポットがなくなるまで検索を継続することにより、移動体が充電スポットで充電を繰り返した場合に到達できる到達可能範囲Aを得ることができるようになる。また、到達可能範囲Aを明確に表示できるため、この到達可能範囲A以外の範囲を到達不能範囲Xとして表示することができるようになる。
【0059】
つぎに、画像処理装置100による画像処理について説明する。
図4は、画像処理装置による画像処理の手順の一例を示すフローチャートである。画像処理装置100は、まず、取得部101によって、移動体の現在地点に関する情報、および、移動体の現在地点において移動体が保有するエネルギー量である初期保有エネルギー量に関する情報、を取得する(ステップS401,S402)。このとき、画像処理装置100は、移動体情報も取得してもよい。
【0060】
そして、画像処理装置100は、算出部102によって、移動体が所定区間を走行する際に消費するエネルギーである推定エネルギー消費量を算出する(ステップS403)。このとき、画像処理装置100は、移動体の経路上の所定地点同士を結ぶ複数の所定区間における推定エネルギー消費量をそれぞれ算出する。
【0061】
つぎに、画像処理装置100は、探索部103によって、記憶部に記憶された地図情報と、ステップS402,S403において取得した初期保有エネルギー量および推定エネルギー消費量とに基づいて、移動体の複数の到達可能地点を探索する(ステップS404)。
【0062】
つぎに、画像処理装置100は、分割部104によって、ベクタデータからなる地図情報を複数の領域に分割し、ラスタデータからなるメッシュデータに変換し、ステップS404において探索した複数の到達可能地点に基づいて、分割した複数の領域にそれぞれ、付与部105によって到達可能の識別情報を付与する(ステップS405)。その後、画像処理装置100は、識別情報を付与した複数の領域の識別情報に基づいて、表示制御部107によって移動体の到達可能範囲Aを算出する(ステップS406)。
【0063】
この後、画像処理装置100は、補充設備検索部106によって、到達可能範囲A内に充電スポット202があるか検索を要求する(ステップS407)。取得部101は、到達可能範囲A内の充電スポット202を検索する。到達可能範囲A内に充電スポット202がある場合(ステップS407:Yes)、この充電スポット202で充電した(かつ、移動体の現在地点は充電スポット202である)と仮定して(ステップS408)、ステップS403の推定エネルギー消費量の算出以降の処理を再度実行する。到達可能範囲A内に充電スポット202がない場合(ステップS407:No)、表示制御部107は、それまでに得られた到達可能範囲Aを表示部110に表示し(ステップS409)、以上の処理を終了する。
【0064】
以上説明したように、実施の形態1にかかる画像処理装置100は、移動体の現在位置、保有するエネルギー量により消費するエネルギー量を算出し、移動体の到達可能範囲を求め表示する。そして、この到達可能範囲内に、エネルギーを補充できる補充設備(充電スポット)があるかを検索し、補充設備がある場合、この補充設備でエネルギー補充したと仮定して、補充設備を新たな基点とする到達可能範囲を再度求める。これにより、到達可能範囲内に補充設備がある場合、移動体の到達可能範囲が広範囲となり、この到達可能範囲をユーザに明確に知らせることができる。また、到達可能範囲外の到達不能範囲を明確にユーザに知らせることもできるようになる。
【実施例0065】
以下に、本発明の実施例1について説明する。本実施例では、車両に搭載されるナビゲーション装置500を画像処理装置100として、本発明を適用した場合の一例について説明する。
【0066】
(ナビゲーション装置500のハードウェア構成)
つぎに、ナビゲーション装置500のハードウェア構成について説明する。
図5は、ナビゲーション装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図5において、ナビゲーション装置500は、CPU501、ROM502、RAM503、磁気ディスクドライブ504、磁気ディスク505、光ディスクドライブ506、光ディスク507、音声I/F(インターフェース)508、マイク509、スピーカ510、入力デバイス511、映像I/F512、ディスプレイ513、カメラ514、通信I/F515、GPSユニット516、各種センサ517を備えている。各構成部501~517は、バス520によってそれぞれ接続されている。
【0067】
CPU501は、ナビゲーション装置500の全体の制御を司る。ROM502は、ブートプログラム、推定エネルギー消費量算出プログラム、到達可能地点探索プログラム、識別情報付与プログラム、地図データ表示プログラムなどのプログラムを記録している。RAM503は、CPU501のワークエリアとして使用される。すなわち、CPU501は、RAM503をワークエリアとして使用しながら、ROM502に記録された各種プログラムを実行することによって、ナビゲーション装置500の全体の制御を司る。
【0068】
推定エネルギー消費量算出プログラムでは、車両の推定エネルギー消費量を算出する消費エネルギー推定式に基づいて、一のノードと隣り合うノードとを結ぶリンクにおける推定エネルギー消費量を算出する。到達可能地点探索プログラムでは、推定プログラムにおいて算出された推定エネルギー消費量に基づいて、車両の現在地点での残存エネルギー量で到達可能な複数の地点(ノード)が探索される。識別情報付与プログラムでは、探索プログラムにおいて探索された複数の到達可能地点に基づいて、地図情報を分割した複数の領域に、車両が到達可能であることを識別する識別情報が付与される。地図データ表示プログラムでは、識別情報付与プログラムによって識別情報が付与された複数の領域に基づいて、車両の到達可能範囲をディスプレイ513に表示させる。
【0069】
磁気ディスクドライブ504は、CPU501の制御にしたがって磁気ディスク505に対するデータの読み取り/書き込みを制御する。磁気ディスク505は、磁気ディスクドライブ504の制御で書き込まれたデータを記録する。磁気ディスク505としては、たとえば、HD(ハードディスク)やFD(フレキシブルディスク)を用いることができる。
【0070】
また、光ディスクドライブ506は、CPU501の制御にしたがって光ディスク507に対するデータの読み取り/書き込みを制御する。光ディスク507は、光ディスクドライブ506の制御にしたがってデータが読み出される着脱自在な記録媒体である。光ディスク507は、書き込み可能な記録媒体を利用することもできる。着脱可能な記録媒体として、光ディスク507のほか、MO、メモリカードなどを用いることができる。
【0071】
磁気ディスク505および光ディスク507に記録される情報の一例としては、地図データ、車両情報、道路情報、走行履歴などが挙げられる。地図データは、カーナビゲーションシステムにおいて車両の到達可能地点を探索するときや、車両の到達可能範囲を表示するときに用いられ、建物、河川、地表面などの地物(フィーチャ)を表す背景データ、道路の形状をリンクやノードなどで表す道路形状データなどを含むベクタデータである。また、エネルギーの補充設備である充電スポット202に関する情報をこれら磁気ディスク505および光ディスク507に記録し、読み出して利用する構成とすることもできる。
【0072】
音声I/F508は、音声入力用のマイク509および音声出力用のスピーカ510に接続される。マイク509に受音された音声は、音声I/F508内でA/D変換される。マイク509は、たとえば、車両のダッシュボード部などに設置され、その数は単数でも複数でもよい。スピーカ510からは、所定の音声信号を音声I/F508内でD/A変換した音声が出力される。
【0073】
入力デバイス511は、文字、数値、各種指示などの入力のための複数のキーを備えたリモコン、キーボード、タッチパネルなどが挙げられる。入力デバイス511は、リモコン、キーボード、タッチパネルのうちいずれか一つの形態によって実現されてもよいが、複数の形態によって実現することも可能である。
【0074】
映像I/F512は、ディスプレイ513に接続される。映像I/F512は、具体的には、たとえば、ディスプレイ513全体を制御するグラフィックコントローラと、即時表示可能な画像情報を一時的に記録するVRAM(Video RAM)などのバッファメモリと、グラフィックコントローラから出力される画像データに基づいてディスプレイ513を制御する制御ICなどによって構成される。
【0075】
ディスプレイ513には、アイコン、カーソル、メニュー、ウインドウ、あるいは文字や画像などの各種データが表示される。ディスプレイ513としては、たとえば、TFT液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどを用いることができる。
【0076】
カメラ514は、車両内部あるいは外部の映像を撮影する。映像は静止画あるいは動画のどちらでもよく、たとえば、カメラ514によって車両外部を撮影し、撮影した画像をCPU501において画像解析したり、映像I/F512を介して磁気ディスク505や光ディスク507などの記録媒体に出力したりする。
【0077】
通信I/F515は、無線を介してネットワークに接続され、ナビゲーション装置500およびCPU501のインターフェースとして機能する。ネットワークとして機能する通信網には、CANやLIN(Local Interconnect Network)などの車内通信網や、公衆回線網や携帯電話網、DSRC(Dedicated Short Range Communication)、LAN、WANなどがある。通信I/F515は、たとえば、公衆回線用接続モジュールやETC(ノンストップ自動料金支払いシステム)ユニット、FMチューナー、VICS(Vehicle Information and Communication System)(登録商標)/ビーコンレシーバなどである。
【0078】
GPSユニット516は、GPS衛星からの電波を受信し、車両の現在位置を示す情報を出力する。GPSユニット516の出力情報は、後述する各種センサ517の出力値とともに、CPU501による車両の現在位置の算出に際して利用される。現在位置を示す情報は、たとえば、緯度・経度、高度などの、地図データ上の1点を特定する情報である。
【0079】
各種センサ517は、車速センサ、加速度センサ、角速度センサ、傾斜センサなどの、車両の位置や挙動を判断するための情報を出力する。各種センサ517の出力値は、CPU501による車両の現在位置の算出や、速度や方位の変化量の算出に用いられる。
【0080】
図1に示した画像処理装置100の取得部101、算出部102、探索部103、分割部104、付与部105、補充設備検索部106、表示制御部107は、上述したナビゲーション装置500におけるROM502、RAM503、磁気ディスク505、光ディスク507などに記録されたプログラムやデータを用いて、CPU501が所定のプログラムを実行し、ナビゲーション装置500における各部を制御することによってその機能を実現する。
【0081】
(ナビゲーション装置500による推定エネルギー消費量算出の概要)
本実施例のナビゲーション装置500は、自装置が搭載された車両の推定エネルギー消費量を算出する。具体的には、ナビゲーション装置500は、たとえば、速度、加速度、車両の勾配に基づいて、第一情報と、第二情報と、第三情報と、を含む消費エネルギー推定式のいずれか一つ以上の式を用いて、所定区間における車両の推定エネルギー消費量を算出する。所定区間とは、道路上の一のノード(たとえば交差点)と当該一のノードに隣り合う他のノードとを結ぶリンクである。
【0082】
より具体的には、ナビゲーション装置500は、プローブで提供される渋滞情報や、サーバを介して取得した渋滞予測データ、記憶装置に記憶されたリンクの長さや道路種別などに基づいて、車両がリンクを走行し終わるのに要する旅行時間を算出する。そして、ナビゲーション装置500は、次の(1)式~(4)式に示す消費エネルギー推定式のいずれかを用いて単位時間当たりの推定エネルギー消費量を算出し、車両がリンクを旅行時間で走行し終える際の推定エネルギー消費量を算出する。
【0083】
【0084】
【0085】
上記(1)式に示す消費エネルギー推定式は、加速時および走行時における単位時間当たりの消費エネルギーを推定する理論式である。ここで、εは正味熱効率、ηは総伝達効率である。移動体の加速度αと道路勾配θから重力の加速度gとの合計を合成加速度|α|とすると、合成加速度|α|が負の場合の消費エネルギー推定式は、上記(2)式で表される。すなわち、上記(2)式に示す消費エネルギー推定式は、減速時における単位時間当たりの消費エネルギーを推定する理論式である。このように、加減速時および走行時における単位時間当たりの消費エネルギー推定式は、走行抵抗と走行距離と正味モータ効率と伝達効率との積で表される。
【0086】
上記(1)式および(2)式において、右辺第1項は、移動体に備えられた装備品により消費されるエネルギー消費量(第一情報)である。右辺第2項は、勾配成分によるエネルギー消費量(第四情報)および転がり抵抗成分によるエネルギー消費量(第三情報)である。右辺第3項は、空気抵抗成分によるエネルギー消費量(第三情報)である。また、(1)式の右辺第4項は、加速成分によるエネルギー消費量(第二情報)である。(2)式の右辺第4項は、減速成分によるエネルギー消費量(第二情報)である。
【0087】
上記(1)式および(2)式では、モータ効率と駆動効率は一定と見なしている。しかし、実際には、モータ効率および駆動効率はモータ回転数やトルクの影響により変動する。そこで、次の(3)式および(4)式に単位時間当たりの消費エネルギーを推定する実証式を示す。
【0088】
合成加速度|α+g・sinθ|が正の場合の推定エネルギー消費量を算出する実証式、すなわち、加速時および走行時における単位時間当たりの推定エネルギー消費量を算出する実証式は、次の(3)式で表される。また、合成加速度|α+g・sinθ|が負の場合の推定エネルギー消費量を算出する実証式、すなわち、減速時における単位時間当たりの推定エネルギー消費量を算出する実証式は、次の(4)式で表される。
【0089】
【0090】
【0091】
上記(3)式および(4)式において、係数a1,a2は、車両状況などに応じて設定される常数である。係数k1は、加減速時を含む走行時および停止時におけるエネルギー消費量に基づく変数である。係数k2,k3は、加減速時を含む走行時におけるエネルギー消費量に基づく変数である。また、速度V、加速度Aとしており、その他の変数は、上記(1)式および(2)式と同様である。右辺第1項は、上記(1)式および(2)式の右辺第1項に相当する。係数k1は前述した燃費係数k1に相当する。
【0092】
また、上記(3)式および(4)式において、右辺第2項は、上記(1)式および(2)式の、右辺第2項の勾配抵抗成分のエネルギーと、右辺第4項の加速度抵抗成分のエネルギーとに相当する。右辺第3項は、上記(1)式および(2)式の、右辺第2項の転がり抵抗成分のエネルギーと、右辺第3項の空気抵抗成分のエネルギーに相当する。(4)式の右辺第2項のβは、位置エネルギーと運動エネルギーの回収分(以下、「回収率」とする)である。
【0093】
また、ナビゲーション装置500は、上述したように車両がリンクを走行するのに要する旅行時間を算出し、車両がリンクを走行するときの平均速度および平均加速度を算出する。そして、ナビゲーション装置500は、リンクにおける車両の平均速度および平均加速度を用いて、次の(5)式または(6)式に示す消費エネルギー推定式に基づいて、車両がリンクを旅行時間で走行し終える際の推定エネルギー消費量を算出してもよい。
【0094】
【0095】
【0096】
上記(5)式に示す消費エネルギー推定式は、車両が走行するリンクの高度差Δhが正の場合の、リンクにおける推定エネルギー消費量を算出する理論式である。高度差Δhが正の場合とは、車両が上り坂を走行している場合である。上記(6)式に示す消費エネルギー推定式は、車両が走行するリンクの高度差Δhが負の場合の、リンクにおける推定エネルギー消費量を算出する理論式である。高度差Δhが負の場合とは、車両が下り坂を走行している場合である。高度差がない場合は、上記(5)式に示す消費エネルギー推定式を用いるのが好ましい。
【0097】
上記(5)式および(6)式において、右辺第1項は、移動体に備えられた装備品により消費されるエネルギー消費量(第一情報)である。右辺第2項は、加速抵抗によるエネルギー消費量(第二情報)である。右辺第3項は、位置エネルギーとして消費されるエネルギー消費量である(第四情報)。右辺第4項は、単位面積当たりに受ける空気抵抗および転がり抵抗(走行抵抗)によるエネルギー消費量(第三情報)である。
【0098】
ナビゲーション装置500は、道路勾配が明らかでない場合、上記(1)式~(6)式に示す消費エネルギー推定式の道路勾配θ=0として車両の推定エネルギー消費量を算出してもよい。
【0099】
つぎに、上記(1)式~(6)式で用いる回収率βについて説明する。上記(5)式において、右辺第2項をリンクにおける加速成分のエネルギー消費量Paccとすると、加速成分のエネルギー消費量Paccは、リンクにおける全エネルギー消費量(左辺)から、アイドリング時のエネルギー消費量(右辺第1項)と走行抵抗によるエネルギー消費量(右辺第4項)を減じたものであり、次の(7)式で表される。
【0100】
【0101】
なお、上記(7)式では、車両は道路勾配θの影響を受けていないこととする(θ=0)。すなわち、上記(5)式の右辺第3項をゼロとする。そして、上記(7)式を上記(5)式に代入することで、次の(8)式に示す回収率βの算出式を得ることができる。
【0102】
【0103】
回収率βは、EV車では0.7~0.9程度であり、HV車では0.6~0.8程度であり、ガソリン車では0.2~0.3程度である。なお、ガソリン車の回収率とは、加速時に要するエネルギーと減速時に回収するエネルギーとの割合である。
【0104】
(ナビゲーション装置500における到達可能地点探索の概要)
本実施例のナビゲーション装置500は、自装置が搭載された車両の現在地点から到達可能な複数のノードを車両の到達可能地点として探索する。具体的には、ナビゲーション装置500は、上記(1)~(6)式に示す消費エネルギー推定式のいずれか一つ以上を用いてリンクにおける推定エネルギー消費量を算出する。そして、ナビゲーション装置500は、リンクにおける推定エネルギー消費量の累計が最小となるように車両の到達可能なノードを探索し到達可能地点とする。ナビゲーション装置500による到達可能地点探索の一例について説明する。
【0105】
図6-1~
図6-4は、ナビゲーション装置500による到達可能地点探索の一例について模式的に示す説明図である。
図6-1~
図6-4では、地図データのノード(たとえば交差点)を丸印とし、隣り合うノード同士を結ぶリンク(道路上の所定区間)を線分で示す(
図7についても同様にノードおよびリンクを図示)。
【0106】
図6-1に示すように、ナビゲーション装置500は、まず、車両の現在地点301から最も近いリンクL1_1を探索する。そして、ナビゲーション装置500は、リンクL1_1に接続するノードN1_1を探索し、到達可能地点を探索するためのノード候補(以下、単に「ノード候補」という)に追加する。
【0107】
つぎに、ナビゲーション装置500は、消費エネルギー推定式を用いて、車両の現在地点301とノード候補としたノードN1_1とを結ぶリンクL1_1における推定エネルギー消費量を算出する。そして、ナビゲーション装置500は、リンクL1_1における推定エネルギー消費量3whを、たとえばノードN1_1に関連付けて記憶装置(磁気ディスク505や光ディスク507)に書き出す。
【0108】
つぎに、
図6-2に示すように、ナビゲーション装置500は、ノードN1_1に接続するすべてのリンクL2_1,L2_2,L2_3を探索し、到達可能地点を探索するためのリンク候補(以下、単に「リンク候補」という)とする。つぎに、ナビゲーション装置500は、消費エネルギー推定式を用いて、リンクL2_1における推定エネルギー消費量を算出する。
【0109】
そして、ナビゲーション装置500は、リンクL2_1における推定エネルギー消費量4whとリンクL1_1における推定エネルギー消費量3whとを累計した累計エネルギー量7whを、リンクL2_1に接続するノードN2_1に関連付けて記憶装置に書き出す(以下、「累計エネルギー量をノードに設定」とする)。
【0110】
さらに、ナビゲーション装置500は、リンクL2_1の場合と同様に、消費エネルギー推定式を用いて、リンクL2_2,L2_3における推定エネルギー消費量をそれぞれ算出する。そして、ナビゲーション装置500は、リンクL2_2における推定エネルギー消費量5whとリンクL1_1における推定エネルギー消費量3whとを累計した累計エネルギー量8whを、リンクL2_2に接続するノードN2_2に設定する。
【0111】
また、ナビゲーション装置500は、リンクL2_3における推定エネルギー消費量3whとリンクL1_1における推定エネルギー消費量3whとを累計した累計エネルギー量6whを、リンクL2_3に接続するノードN2_3に設定する。このとき、ナビゲーション装置500は、累計エネルギー量を設定したノードがノード候補でない場合には、そのノードをノード候補に追加する。
【0112】
つぎに、
図6-3に示すように、ナビゲーション装置500は、ノードN2_1に接続するすべてのリンクL3_1,L3_2_1、ノードN2_2に接続するすべてのリンクL3_2_2,L3_3,L3_4、およびノードN2_3に接続するリンクL3_5を探索し、リンク候補とする。つぎに、ナビゲーション装置500は、消費エネルギー推定式を用いて、リンクL3_1~リンクL3_5における推定エネルギー消費量を算出する。
【0113】
そして、ナビゲーション装置500は、リンクL3_1における推定エネルギー消費量4whをノードN2_1に設定した累計エネルギー量7whに累計し、リンクL3_1に接続するノードN3_1に累計エネルギー量11whを設定する。また、ナビゲーション装置500は、リンクL3_3~L3_5においてもリンクL3_1の場合と同様に、各リンクL3_3~L3_5にそれぞれ接続するノードN3_3~N3_5に累計エネルギー量13wh,12wh,10whを設定する。
【0114】
具体的には、ナビゲーション装置500は、リンクL3_3における推定エネルギー消費量5whをノードN2_2に設定した累計エネルギー量8whに累計し、ノードN3_3に累計エネルギー量13whを設定する。ナビゲーション装置500は、リンクL_3_4における推定エネルギー消費量4whをノードN2_2に設定した累計エネルギー量8whに累計し、ノードN3_4に累計エネルギー量12whを設定する。ナビゲーション装置500は、リンクL3_5における推定エネルギー消費量4whをノードN2_3に設定した累計エネルギー量6whに累計し、ノードN3_5に累計エネルギー量10whを設定する。
【0115】
一方、ナビゲーション装置500は、ノードN3_2のように一のノードに複数のリンクL3_2_1,L3_2_2が接続する場合には、車両の現在地点301から一のノードN3_2までの複数の経路における累計エネルギー量のうち、最小の累計エネルギー量10whを当該一のノードN3_2に設定する。
【0116】
具体的には、ナビゲーション装置500は、リンクL3_2_1における推定エネルギー消費量4whをノード2_1に設定した累計エネルギー量7whに累計し(=累計エネルギー量11wh)、リンクL3_2_2における推定エネルギー消費量2whをノード2_2に設定した累計エネルギー量8whに累計する(=累計エネルギー量10wh)。そして、ナビゲーション装置500は、車両の現在地点301からリンクL3_2_1までの経路の累計エネルギー量11whと、車両の現在地点301からリンクL3_2_2までの経路の累計エネルギー量10whとを比較し、最小の累計エネルギー量となるリンクL3_2_2側の経路の累計エネルギー量10whをノードN3_2に設定する。
【0117】
ナビゲーション装置500は、上述したノードN2_1~N2_3のように車両の現在地点301から同一階層のノードが複数存在する場合、たとえば、同一レベルのノードのうち、累計エネルギー量が少ないノードに接続するリンクから順に推定エネルギー消費量および累計エネルギー量を算出する。具体的には、ナビゲーション装置500は、ノードN2_3、ノードN2_1、ノードN2_2の順に、各ノードに接続するリンクにおける推定エネルギー消費量をそれぞれ算出し、各ノードにおける累計エネルギー量に累計する。このように、推定エネルギー消費量および累計エネルギー量を算出するノードの順番を特定することにより、残存エネルギー量で到達可能な範囲を効率的に算出することができる。
【0118】
その後、ナビゲーション装置500は、ノードN3_1~N3_5からさらに深い階層のノードへと、上述したような累計エネルギー量の累計を続けていく。そして、ナビゲーション装置500は、予め設定された指定エネルギー量以下の累計エネルギー量が設定されたすべてのノードを、車両の到達可能地点として抽出し、到達可能地点として抽出されたノードの経度緯度情報をそれぞれのノードに関連付けて記憶装置に書き出す。
【0119】
具体的には、たとえば指定エネルギー量を10whとした場合、
図6-4に斜線で塗りつぶされた丸印で示すように、ナビゲーション装置500は、10wh以下の累計エネルギー量が設定されたノードN1_1,N2_1,N2_2,N2_3,N3_2,N3_5を車両の到達可能地点として抽出する。予め設定された指定エネルギー量とは、たとえば、車両の現在地点301での残存エネルギー量(初期保有エネルギー量)である。
【0120】
図6-4に示す車両の現在地点301と複数のノードおよびリンクとで構成された地図データ640は到達可能地点探索を説明するための一例であり、ナビゲーション装置500は、実際には
図7に示すように
図6-4に示す地図データ640よりも広い範囲でさらに多くのノードおよびリンクを探索する。
【0121】
図7は、ナビゲーション装置500による到達可能地点探索の一例について示す説明図である。上述したようにすべての道路(細街路を除く)について累計エネルギー量を算出し続けていく場合、
図7に示すように、各道路のすべてのノードにおける累計エネルギー量を漏れなく詳細に探索することができる。しかし、日本全国で約200万個のリンクにおける推定エネルギー消費量を算出し累計することとなり、ナビゲーション装置500の情報処理量が膨大となる。このため、ナビゲーション装置500は、たとえばリンクの重要度などに基づいて、移動体の到達可能地点を探索する道路を絞り込んでもよい。
【0122】
具体的には、ナビゲーション装置500は、たとえば、車両の現在地点301周辺ではすべての道路(細街路を除く)において累計エネルギー量を算出し、ある一定距離以上離れた範囲では重要度の高い道路のみで累計エネルギー量を算出する。これにより、ナビゲーション装置500によって探索されるノード数およびリンク数を減少させることができ、ナビゲーション装置500の情報処理量を低減させることができる。したがって、ナビゲーション装置500の処理速度を向上することができる。
【0123】
(ナビゲーション装置500における地図データ分割の概要)
本実施例のナビゲーション装置500は、上述したように探索された到達可能地点に基づいて、記憶装置に記憶された地図データを分割する。具体的には、ナビゲーション装置500は、ベクタデータで構成される地図データを、たとえば64×64ドットのメッシュデータ(X,Y)に変換し、地図データをラスタデータ(画像データ)にする。
【0124】
図8は、ナビゲーション装置500による到達可能地点を経度-緯度で示す一例の説明図である。また、
図9は、ナビゲーション装置500による到達可能地点をメッシュデータで示す一例の説明図である。
図8には、探索された到達可能地点の経度緯度情報(x,y)を絶対座標で図示している。
図9には、到達可能地点に基づいて識別情報が付与された64×64ドットのメッシュデータ(X,Y)をスクリーン座標で図示している。
【0125】
図8に示すように、ナビゲーション装置500は、まず、複数の到達可能地点のそれぞれの経度x、緯度yに基づいて、絶対座標で点群800を有する経度緯度情報(x,y)を生成する。経度緯度情報(x,y)の原点(0,0)は
図8の左下である。そして、ナビゲーション装置500は、車両の現在地点301の経度ofxから経度x方向に最も離れた到達可能地点の最大経度x_max、最小経度x_minまで距離w1,w2を算出する。また、ナビゲーション装置500は、車両の現在地点301の緯度ofyから緯度y方向に最も離れた到達可能地点の最大緯度y_max、最小緯度y_minまで距離w3,w4を算出する。
【0126】
つぎに、ナビゲーション装置500は、車両の現在地点301からの距離w1~w4のうち、最も距離のある、車両の現在地点301から最小経度x_minまでの距離w2(以下、w5=max(w1,w2,w3,w4)とする)のn分の1の長さがメッシュデータ(X,Y)の矩形状の一要素の1辺の長さとなるように、複数の到達可能地点を含む地図データを、たとえばm×mドット(たとえば64×64ドット)のメッシュデータ(X,Y)に変換する。
【0127】
具体的には、ナビゲーション装置500は、1メッシュと経度緯度の大きさとの比を倍率mag=w5/nとし、経度緯度情報(x,y)とメッシュデータ(X,Y)とが次の(9)式,(10)式を満たすように、経度緯度情報(x,y)をメッシュデータ(X,Y)に変換する。
【0128】
X=(x-ofx)/mag ・・・(9)
【0129】
Y=(y-ofy)/mag ・・・(10)
【0130】
経度緯度情報(x,y)をメッシュデータ(X,Y)に変換することにより、
図9に示すように、車両の現在地点301は、m×mドットのメッシュデータ(X,Y)で構成される矩形状の画像データの中心となり、車両の現在地点301のメッシュデータ(X,Y)はX軸方向、Y軸方向ともに等しく、X=Y=m/2=n+4となる。また、メッシュデータ(X,Y)の周辺のたとえば4ドット分を空白にするためにn=(m/2)-4とする。そして、ナビゲーション装置500は、経度緯度情報(x,y)をメッシュデータ(X,Y)に変換するときに、メッシュデータ(X,Y)の各領域にそれぞれ識別情報を付与し、m行m列の2次元行列データ(Y,X)のメッシュデータに変換する。
【0131】
具体的には、ナビゲーション装置500は、メッシュデータ(X,Y)の一の領域に車両の到達可能地点が含まれる場合、当該一の領域に車両が到達可能であることを識別する到達可能の識別情報として、たとえば「1」を付与する(
図9では1ドットをたとえば黒色で描画)。一方、ナビゲーション装置500は、メッシュデータ(X,Y)の一の領域に車両の到達可能地点が含まれない場合、当該の一の領域に車両が到達不可能であることを識別する到達不可能の識別情報として、たとえば「0」を付与する(
図9では1ドットをたとえば白色で描画)。
【0132】
このように、ナビゲーション装置500は、地図データを分割した各領域にそれぞれ識別情報を付与したm行m列の2次元行列データ(Y,X)のメッシュデータに変換し、地図データを2値化されたラスタデータとして扱う。メッシュデータの各領域は、それぞれ一定範囲の矩形状の領域で表される。具体的には、
図9に示すように、たとえば、複数の到達可能地点の点群700が黒色で描画されたm×mドットのメッシュデータ(X,Y)が生成される。メッシュデータ(X,Y)の原点(0,0)は左上である。
【0133】
(ナビゲーション装置500における識別情報付与の概要・その1)
本実施例のナビゲーション装置500は、上述したように分割されたm×mドットのメッシュデータ(X,Y)のそれぞれの領域に付与された識別情報を変更する。具体的には、ナビゲーション装置500は、m行m列の2次元行列データ(Y,X)のメッシュデータに対してクロージング処理(膨張処理後に縮小処理をおこなう処理)をおこなう。
【0134】
図10は、ナビゲーション装置によるクロージング処理の一例を示す説明図である。(A)~(C)は、各領域にそれぞれ識別情報が付与されたm行m列の2次元行列データ(Y,X)のメッシュデータである。(A)には、地図データの分割処理後、はじめて識別情報が付与されたメッシュデータ1000を示す。すなわち、(A)に示すメッシュデータ1000は、
図9に示すメッシュデータと同一である。
【0135】
また、(B)には、(A)に示すメッシュデータ1000に対してクロージング処理(膨張)をおこなった後のメッシュデータ1010を示す。(C)には、(B)に示すメッシュデータ1010に対してクロージング処理(縮小)をおこなった後のメッシュデータ1020を示す。(A)~(C)に示すメッシュデータ1000,1010,1020において、到達可能の識別情報が付与された複数の領域によって生成される車両の到達可能範囲1001,1011,1021を黒く塗りつぶした状態で示す。
【0136】
(A)に示すように、識別情報付与後のメッシュデータ1000には、車両の到達可能範囲1001内に含まれる到達不可能な領域からなる欠損点1002(ハッチングされた到達可能範囲1001内の白地部分)が生じている。欠損点1002は、たとえば、ナビゲーション装置500による到達可能地点探索処理の負荷を低減させるためにノードおよびリンクを探索する道路を絞り込んだ場合に、到達可能地点となるノード数が少なくなることにより生じる。
【0137】
つぎに、(B)に示すように、ナビゲーション装置500は、識別情報付与後のメッシュデータ1000に対してクロージングの膨張処理をおこなう。クロージングの膨張処理では、識別情報付与後のメッシュデータ1000の、到達可能の識別情報が付与されている領域に隣り合う一の領域の識別情報が、到達可能の識別情報に変更される。これにより、膨張処理前(識別情報付与後)の車両の到達可能範囲1001内に生じていた欠損部1002が消滅する。
【0138】
また、膨張処理前の車両の到達可能範囲1001の最外周の領域に隣り合うすべての領域の識別情報が、到達可能な識別情報に変更される。このため、膨張処理後の車両の到達可能範囲1011の外周は、膨張処理をおこなうごとに、膨張処理前の車両の到達可能範囲1001の最外周の各領域の外周を囲むように1ドット分ずつ広がる。
【0139】
その後、(C)に示すように、ナビゲーション装置500は、メッシュデータ1010に対してクロージングの縮小処理をおこなう。クロージングの縮小処理では、膨張処理後のメッシュデータ1010の、到達不可能の識別情報が付与されている領域に隣り合う一の領域の識別情報が、到達不可能の識別情報に変更される。
【0140】
このため、膨張処理後の車両の到達可能範囲1011の最外周の各領域が、縮小処理がおこなわれるごとに1ドット分ずつ到達不可能な領域となり、膨張処理後の車両の到達可能範囲1011の外周が縮まる。これにより、縮小処理後の車両の到達可能範囲1021の外周は、膨張処理前の車両の到達可能範囲1001の外周とほぼ同様となる。
【0141】
ナビゲーション装置500は、上述した膨張処理および縮小処理は同じ回数ずつおこなう。具体的には、膨張処理が2回おこなわれた場合、その後の縮小処理も2回おこなわれる。膨張処理と縮小処理との処理回数を等しくすることで、膨張処理によって到達可能の識別情報に変更された車両の到達可能範囲の外周部分のほぼすべての領域の識別情報を、縮小処理によって元の到達不可能の識別情報に変更することができる。このようにして、ナビゲーション装置500は、車両の到達可能範囲内の欠損点1002を除去し、かつ外周を明瞭に表示可能な車両の到達可能範囲1021を生成することができる。
【0142】
(ナビゲーション装置500における識別情報付与の概要・その2)
ナビゲーション装置500は、2次元行列データ(Y,X)のメッシュデータに対してオープニング処理(縮小処理後に膨張処理をおこなう処理)をおこない、外周を明瞭に表示可能な車両の到達可能範囲を生成してもよい。具体的には、ナビゲーション装置500は、次のようにオープニング処理をおこなう。
【0143】
図11は、ナビゲーション装置によるオープニング処理の一例を示す説明図である。
図11(A)~
図11(C)は、各領域にそれぞれ識別情報が付与されたm行m列の2次元行列データ(Y,X)のメッシュデータである。(A)には、識別情報付与後のメッシュデータ1100を示す。(B)には、(A)に対するオープニング処理(縮小)後のメッシュデータ1110を示す。また、(C)には、(B)に対するオープニング処理(膨張)後のメッシュデータ1120を示す。(A)~(C)に示すメッシュデータ1100,1110,1120において、到達可能の識別情報が付与された複数の領域によって生成される車両の到達可能範囲1101,1111,1121を黒く塗りつぶした状態で示す。
【0144】
(A)に示すように、識別情報付与後のメッシュデータ1100における車両の到達可能範囲1101の外周に孤立点1102が多く生じている場合、識別情報付与後のメッシュデータ1100に対してオープニング処理をおこなうことで、孤立点1102を除去することができる。具体的には、(B)に示すように、ナビゲーション装置500は、識別情報付与後のメッシュデータ1100に対してオープニングの縮小処理をおこなう。
【0145】
オープニングの縮小処理では、識別情報付与後のメッシュデータ1100の、到達不可能の識別情報が付与されている領域に隣り合う一の領域の識別情報が、到達不可能の識別情報に変更される。これにより、縮小処理前(識別情報付与後)の車両の到達可能範囲1101内に生じていた孤立点1102が除去される。
【0146】
このため、識別情報付与後の車両の到達可能範囲1101の最外周の各領域が、縮小処理がおこなわれるごとに1ドット分ずつ到達不可能な領域となり、識別情報付与後の車両の到達可能範囲1101の外周が縮まる。また、識別情報付与後の車両の到達可能範囲1101に生じていた孤立点1102が除去される。
【0147】
その後、(C)に示すように、ナビゲーション装置500は、メッシュデータ1110に対してオープニングの膨張処理をおこなう。オープニングの膨張処理では、縮小処理後のメッシュデータ1110の、到達不可能の識別情報が付与されている領域に隣り合う一の領域の識別情報が、到達可能の識別情報に変更される。このため、膨張処理後の車両の到達可能範囲1121の外周は、膨張処理をおこなうごとに、縮小処理後の車両の到達可能範囲1111の最外周の各領域の外周を囲むように1ドット分ずつ広がる。
【0148】
ナビゲーション装置500は、オープニング処理においても、クロージング処理と同様に膨張処理および縮小処理は同じ回数ずつおこなう。このように膨張処理と縮小処理との処理回数を等しくすることで、縮小処理によって縮まった車両の到達可能範囲1111の外周を広げ、縮小処理後の車両の到達可能範囲1121の外周を縮小処理前の車両の到達可能範囲1101の外周に戻すことができる。このようにして、ナビゲーション装置500は、孤立点1102が生じず、かつ外周を明瞭に表示可能な車両の到達可能範囲1121を生成することができる。
【0149】
(ナビゲーション装置500における到達可能範囲の輪郭抽出の概要・その1)
本実施例のナビゲーション装置500は、m行m列の2次元行列データ(Y,X)のメッシュデータに付与された識別情報に基づいて、車両の到達可能範囲の輪郭を抽出する。具体的には、ナビゲーション装置500は、たとえば、フリーマンのチェインコードを用いて車両の到達可能範囲の輪郭を抽出する。より具体的には、ナビゲーション装置500は、次のように車両の到達可能範囲の輪郭を抽出する。
【0150】
図12は、ナビゲーション装置による車両の到達可能範囲抽出の一例を模式的に示す説明図である。また、
図13は、ナビゲーション装置による車両の到達可能範囲抽出後のメッシュデータの一例を模式的に示す説明図である。
図12(A)には、領域1200に隣り合う領域1210~1217の隣接方向を示す数字(以下、「方向指数(チェインコード)」という)と、方向指数に対応する8方向の矢印とを示す。
図12(B)には、h行h列の2次元行列データ(Y,X)のメッシュデータ1220を一例として示す。また、
図12(B)には、到達可能の識別情報が付与された領域1221~1234および当該領域1221~1234に囲まれた到達可能の識別情報が付与された領域をハッチングで図示する。
【0151】
方向指数は、単位長さの線分の向いている方向を示す。メッシュデータ(X,Y)において、方向指数に対応する座標は、(X+dx,Y+dy)となる。具体的には、
図12(A)に示すように、領域1200から左下に隣り合う領域1210へ向かう方向の方向指数は「0」である。領域1200から下に隣り合う領域1211へ向かう方向の方向指数は「1」である。領域1200から右下に隣り合う領域1212へ向かう方向の方向指数は「2」である。
【0152】
また、領域1200から右に隣り合う領域1213へ向かう方向の方向指数は「3」である。領域1200から右上に隣り合う領域1214へ向かう方向の方向指数は「4」である。領域1200から上に隣り合う領域1215へ向かう方向の方向指数は「5」である。領域1200から左上に隣り合う領域1216へ向かう方向の方向指数は「6」である。領域1200から左に隣り合う領域1217へ向かう方向の方向指数は「7」である。
【0153】
ナビゲーション装置500は、領域1200に隣り合う到達可能の識別情報「1」が付与された領域を左回りに検索する。また、ナビゲーション装置500は、領域1200に隣り合う到達可能の識別情報が付与された領域の検索開始点を、前回の方向指数に基づいて決定する。具体的には、ナビゲーション装置500は、他の領域から領域1200へ向かう方向指数が「0」であった場合、領域1200の左に隣り合う領域、すなわち方向指数「7」の方向に隣り合う領域1217から検索を開始する。
【0154】
同様に、ナビゲーション装置500は、他の領域から領域1200へ向かう方向指数が「1」~「7」であった場合、領域1200の左下、下、右下、右、右上、上、左上に隣り合う領域、すなわちそれぞれ方向指数「0」、「1」、「2」、「3」、「4」、「5」、「6」の方向に隣り合う領域1210~1216から検索を開始する。そして、ナビゲーション装置500は、領域1200から各領域1210~1217のいずれか一の領域から到達可能の識別情報「1」を検出した場合、到達可能の識別情報「1」を検出した領域1210~1217に対応する方向指数「0」~「7」を、領域1200に関連付けて記憶装置に書き込む。
【0155】
具体的には、ナビゲーション装置500は、次のように車両の到達可能範囲の輪郭を抽出する。
図12(B)に示すように、ナビゲーション装置500は、まず、h行h列の2次元行列データ(Y,X)のメッシュデータ1220のa行a列の領域から行単位で到達可能の識別情報が付与された領域を検索する。
【0156】
メッシュデータ1220のa行目のすべての領域には到達不可能の識別情報が付与されているので、つぎに、ナビゲーション装置500は、メッシュデータ1220のb行a列の領域からb行h列の領域に向かって到達可能の識別情報を検索する。そして、ナビゲーション装置500は、メッシュデータ1220のb行e列の領域1221において到達可能の識別情報を検出した後、メッシュデータ1220のb行e列の領域1221から左回りに、車両の到達可能範囲の輪郭となる到達可能の識別情報を有する領域を検索する。
【0157】
具体的には、ナビゲーション装置500は、領域1221の左に隣り合うb行d列の領域はすでに検索済みのため、まず、領域1221の左下に隣り合う領域1222から左回りに、到達可能の識別情報を有する領域があるか否かを検索する。そして、ナビゲーション装置500は、領域1222の到達可能の識別情報を検出し、領域1221から領域1222へ向かう方向の方向指数「0」を、領域1221に関連付けて記憶装置に記憶する。
【0158】
つぎに、ナビゲーション装置500は、前回の方向指数「0」であるため、領域1222の左に隣り合うc行c列の領域から左回りに、到達可能の識別情報を有する領域があるか否かを検索する。そして、ナビゲーション装置500は、領域1222の左下に隣り合う領域1223の到達可能の識別情報を検出し、領域1222から領域1223へ向かう方向の方向指数「0」を、前回の方向指数に関連付けて記憶装置に記憶する。
【0159】
以降、ナビゲーション装置500は、前回の方向指数に基づいて検索開始点を決定し、検索開始点から左回りに到達可能の識別情報を有する領域があるか否かを検索する処理を、方向指数に対応する矢印が領域1221に戻ってくるまで繰り返しおこなう。具体的には、ナビゲーション装置500は、領域1222の左に隣り合う領域から左回りに、到達可能の識別情報を有する領域があるか否かを検索し、領域1223の左下に隣り合う領域1224の到達可能の識別情報を検出して、方向指数「1」を前回の方向指数に関連付けて記憶装置に記憶する。
【0160】
同様に、ナビゲーション装置500は、前回の方向指数に基づいて検索開始点を決定した後、検索開始点から左回りに到達可能の識別情報を有する領域を検索し、到達可能の識別情報を有する領域1224~1234を順次検出する。そして、ナビゲーション装置500は、方向指数を取得するごとに前回の方向指数に関連付けて記憶装置に記憶する。
【0161】
その後、ナビゲーション装置500は、領域1234の右上に隣り合うb行f列の領域から左回りに、到達可能の識別情報を有する領域があるか否かを検索し、領域1234の上に隣り合う領域1221の到達可能の識別情報を検出して、方向指数「5」を前回の方向指数に関連付けて記憶装置に記憶する。これにより、記憶装置には、方向指数「0」→「0」→「1」→「0」→「2」→「3」→「4」→「3」→「2」→「5」→「5」→「6」→「6」→「5」がこの順で記憶される。
【0162】
このようにナビゲーション装置500は、最初に検出した領域1221から、当該領域1221に隣り合う到達可能の識別情報を有する領域1222~1234を左回りに順次検索し方向指数を取得する。そして、ナビゲーション装置500は、領域1221から方向指数に対応する方向の一の領域を塗りつぶすことで、
図13に示すように、車両の到達可能範囲の輪郭1301および当該輪郭1301に囲まれた部分1302からなる車両の到達可能範囲1300を有するメッシュデータを生成する。
【0163】
(ナビゲーション装置500における到達可能範囲の輪郭抽出の概要・その2)
本実施例のナビゲーション装置500による車両の到達可能範囲抽出の別の一例について説明する。ナビゲーション装置500は、たとえば、到達可能の識別情報が付与された2次元行列データ(Y,X)のメッシュデータの経度緯度情報に基づいて、車両の到達可能範囲の輪郭を抽出してもよい。具体的には、ナビゲーション装置500は、次のように車両の到達可能範囲の輪郭を抽出する。
【0164】
図14は、ナビゲーション装置による車両の到達可能範囲抽出の別の一例について模式的に示す説明図である。
図13に示すようなd行h列の2次元行列データ(Y,X)のメッシュデータ1400を例に説明する。ナビゲーション装置500は、メッシュデータ1400の、到達可能の識別情報「1」が付与された領域を検索する。具体的には、ナビゲーション装置500は、まず、a行a列の領域からa行h列の領域に向かって到達可能の識別情報「1」を検索する。
【0165】
メッシュデータ1400のa行目のすべての領域には到達不可能の識別情報「0」が付与されているので、つぎに、ナビゲーション装置500は、b行a列の領域からb行h列の領域に向かって到達可能の識別情報「1」を有する領域を検索する。そして、ナビゲーション装置500は、到達可能の識別情報「1」を有するb行c列の領域1401の最小経度px1、最小緯度py1(領域1401の左上座標)を取得する。
【0166】
つぎに、ナビゲーション装置500は、b行d列の領域からb行h列の領域に向かって到達可能の識別情報「1」を有する領域を検索する。そして、ナビゲーション装置500は、到達可能の識別情報「1」を有する領域と、到達可能の識別情報「0」を有する領域との境界を検索し、到達可能の識別情報「1」を有するb行f列の領域1402の最大経度px2、最大緯度py2(領域1402の右下座標)を取得する。
【0167】
つぎに、ナビゲーション装置500は、b行c列の領域1401の左上座標(px1,py1)と、b行f列の領域1402の右下座標(px2,py2)とを対向する頂点とする矩形領域を塗りつぶす。
【0168】
つぎに、ナビゲーション装置500は、メッシュデータ1400のb行g列からb行h列の領域へ、さらにc行a列からc行h列に向かって到達可能の識別情報「1」を検索する。そして、ナビゲーション装置500は、到達可能の識別情報「1」を有するc行d列の領域1403の最小経度px3、最小緯度py3(領域1303の左上座標)を取得する。
【0169】
つぎに、ナビゲーション装置500は、c行e列の領域からc行h列の領域に向かって到達可能の識別情報「1」を有する領域を検索する。そして、ナビゲーション装置500は、到達可能の識別情報「1」を有する領域と、到達可能の識別情報「0」を有する領域との境界を検索し、到達可能の識別情報「1」を有するc行f列の領域1404の最大経度px4、最大緯度py4(領域1404の右下座標)を取得する。
【0170】
つぎに、ナビゲーション装置500は、c行d列の領域1403の左上座標(px3,py3)と、c行f列の領域1404の右下座標(px4,py4)とを対向する頂点とする矩形領域を塗りつぶす。
【0171】
その後、ナビゲーション装置500は、c行g列の領域からc行h列の領域へ、さらにさらにd行a列からd行h列に向かって到達可能の識別情報「1」を有する領域を検索する。ナビゲーション装置500は、c行g列の領域からd行h列までのすべての領域には到達不可能の識別情報「0」が付与されているので、処理を終了する。
【0172】
このように、2次元行列データ(Y,X)のメッシュデータ1300の各行ごとに、到達可能の識別情報「1」を有する領域を塗りつぶすことにより、車両の到達可能範囲を取得することができる。
【0173】
(ナビゲーション装置の充電スポット検索による到達可能範囲表示処理)
図15-1は、ナビゲーション装置による車両の到達可能範囲の処理手順の一例を示すフローチャート、
図15-2は、補充設備の管理テーブルを示す図表である。はじめに、ナビゲーション装置500は、取得部101により車両の現在位置を取得し(ステップS1501)、バッテリーの充電量(残容量)を取得する(ステップS1502)。つぎに、算出部102~付与部105により、現在位置とバッテリーの充電量に基づき、現在位置から現在の充電量での車両の到達可能範囲の推定処理をおこなう(ステップS1503)。この際、補充設備検索部106は、管理テーブル(
図15-2参照)1500の内容を空にする初期化をおこなう(ステップS1504)。
【0174】
図15-2に示す補充設備の管理テーブル1500は、補充設備検索部106が管理し、
図5のRAM503等にデータ記憶される。この管理テーブル1500は、補充設備(充電スポット)の識別子(ID)と、充電スポットに対する処理識別子(処理済みYesまたはNo)の情報からなる。なお、ステップS1504の実行により、管理テーブル1500は、充電スポットIDおよび処理済み情報が消去された状態となる。なお、予め、各充電スポットには、それぞれ個別のIDが付与されている。または、充電スポットの名称や位置などから固有のIDを付与されてもよい。
【0175】
つぎに、補充設備検索部106は、ステップS1503で推定された到達可能範囲(
図3のA1に相当)の中にある充電スポットを検索する(ステップS1505)。具体的には、補充設備検索部106は取得部101に対し、到達可能範囲の中にある充電スポットの検索を要求する。これにより、取得部101が到達可能範囲の中にある充電スポットを見つけることができれば、補充設備検索部106は、この見つかった充電スポットで、補充設備の管理テーブル1500にないIDの充電スポットの処理識別子を「処理済み=No」として管理テーブル1500に追加する(ステップS1506)。
【0176】
つぎに、補充設備検索部106は、管理テーブル1500の中で処理識別子が「処理済み=No」の充電スポットIDを探す(ステップS1507)。そして、管理テーブル1500の中で処理識別子が「処理済み=No」の充電スポットIDが見つかれば(ステップS1508:Yes)、ステップS1509に移行し、見つからなければ(ステップS1508:No)、ステップS1516に移行する。
【0177】
ステップS1509では、補充設備検索部106は、管理テーブル1500の中で処理識別子が「処理済み=No」の充電スポットを一つ選び(ステップS1509)、この選んだ充電スポットIDの処理識別子を「処理済み=Yes」に書き換える(
図15-2参照、ステップS1510)。この後、取得部101は、車両(バッテリー)の最大充電容量を取得し(ステップS1511)、また、充電スポットIDをキーにして、充電スポットにおける急速充電で充電できる割合を取得する(ステップS1512)。この充電スポットにおける急速充電で充電できる割合は予め設定しておくことができる。
【0178】
上記の急速充電について説明しておく。急速充電によれば、たとえば、30分でバッテリーを80%程度まで充電できる。急速充電ではない通常充電の充電スポットでは、充電に数時間かかる。ステップS1512は、短時間で急速充電を完了させる場合におこなう。また、急速充電で充電できる割合は、たとえば、電池容量の80%である。このように、充電スポットでの充電を急速充電に限定しておこなうことができる。この場合、急速充電可能な充電スポットを検索し、取得すればよい。急速充電可能な充電スポットは、インターネット等を介して取得部101が取得できる。
【0179】
つぎに、算出部102は、取得した上記最大充電容量×充電できる割合を計算し、車両に対する充電可能最大量を求める(ステップS1513)。また、取得部101は、充電スポットIDをキーにして、充電スポットDBから充電スポットの位置を取得する(ステップS1514)。そして、算出部102~付与部105は、充電スポットIDを基点として、求められた充電可能最大量での到達可能範囲(
図3のA2~A4の一つに相当)推定処理をおこない(ステップS1515)、ステップS1505に戻る。この処理を繰り返すことにより、処理済みの到達可能範囲A1中の充電スポット202で充電したときに到達できる新たな到達可能範囲A2~A5を新たに得ることができ、これら各到達可能範囲A1~A5を合成して表示出力できるようになる。
【0180】
また、ステップS1508にて、管理テーブル1500の中で処理識別子が「処理済み=No」の充電スポットIDが見つからなければ(ステップS1508:No)、今まで含めたすべての到達可能範囲A1~A5を合成する(ステップS1516)。具体的には、付与部105は、それぞれの到達可能範囲A1~A5の領域の識別情報「1」を合算し、合成した到達可能範囲Aを得る。
【0181】
また、到達可能範囲Aでない範囲を到達不能範囲Xとする(ステップS1517)。そして、表示制御部107は、到達可能範囲Aと到達不能範囲Xとを地図に重畳して表示部110に表示し(ステップS1518)、処理を終了する。
【0182】
(充電スポット設備検索による到達可能範囲表示例)
図16は、ナビゲーション装置による車両の到達可能範囲の表示例を示す図である。上記の処理により、表示部110の表示画面上には地
図1600に重畳して車両の到達可能範囲Aが表示される。これにより、ユーザは、充電スポットにより充電をおこなうことにより、車両が到達できる到達可能範囲を明確に知ることができるようになる。
【0183】
また、現在のバッテリー残容量で到達できる到達可能範囲A1の表示色を黄色で表示し、充電スポット202(202a~202d)で充電すれば到達できる到達可能範囲A2~A5の表示色を緑色で表示する等、充電スポットの利用の有無で到達できる到達可能範囲を色の違いで容易に識別できるようにしてもよい。また、充電スポット202(202a~202d)における充電の種別(急速充電あるいは普通充電)を考慮し、上記のように表示色を異ならせる処理により、急速充電だけで行ける範囲および行けない範囲と、普通充電で行ける範囲および行けない範囲を別に表示できるようになる。
【0184】
また、
図17は、ナビゲーション装置による車両の到達不能範囲の表示例を示す図である。図示のように、地
図1600上において、車両の到達可能範囲A以外の範囲(到達可能範囲Aの外部の範囲、図中斜線)は到達不能範囲Xとして、たとえば、到達が不可能なことが分かりやすい赤色等で表示することもできる。
【0185】
さらに、ユーザの操作により、この到達不能範囲Xに目的地1700を設定した場合、実際には到達できないため、ナビゲーション装置500は、警告の表示画面1701を表示するようにしてもよい。図示の例では、警告の表示画面1701は、「指定された位置へは、充電スポットで充電をした場合でも到達できません。」と表示する。これにより、ナビゲーション装置500の操作により、到達できない場所に目的地を設定した場合に、充電スポット202で充電をおこなっても実際には到達できない場合、これを明確にユーザに知らせることができるようになる。
【0186】
(充電スポット検索時の取得情報の補足)
図18は、充電スポット検索時の種別条件の検索画面を示す図である。図示のように、充電スポット202の検索時にユーザが指定した種別の充電スポットに限定して検索することとしてもよい。図示の検索項目の画面1800では、補充設備検索部106が検索する充電スポット202の種別として、自動車ディーラー、公共施設、駐車場、ガソリンスタンド併設、等の各種別をチェックボックス1801でチェックしたものを条件として検索することができる。これにより、ユーザが所望する種別の充電スポットに基づく到達可能範囲を求めることができるようになる。
【0187】
また、充電スポットごとに営業時間をデータとしてもっておき、充電スポットを検索する際に営業時間内の充電スポット202に限定して検索をおこなってもよい。たとえば、8:00-20:00までの営業時間の充電スポット202を21時で探した場合には有効にしない。たとえば、現状では、充電スポット202はカーディーラーが多く、夜は営業していない。また、営業時間を判定する際に、現在位置から充電スポット202までの到達時間を考慮してもよい。その場合、探索部103は、現在位置または、一つ前の充電スポット202から、当該充電スポット202までの経路を探索し、所要時間を計算する。そして、現在時刻から所要時間を合算し、到着時間とする。
【0188】
さらに、複数の充電スポット202を経由して走行する場合には、目的地までの所要時間に充電にかかる時間を含ませてもよい。たとえば、急速充電により30分で充電できる充電スポット202であれば、この充電スポット202での充電時間として30分を追加する。加えて、充電スポット202での充電時間を考慮して目的地を設定した際に、今の出発時間(ある設定時間帯)では到達できないが、別の出発時間(深夜早朝等の他の設定時間帯)であれば目的地に到達できる場合、その旨表示するようにしてもよい。この場合、出発時間をユーザの操作で切り替えて、各出発時間別での到達可能範囲A(および到達不能範囲X)を表示してもよい。
【0189】
(ナビゲーション装置の充電スポット検索による到達可能範囲の表示処理の他の例)
図19は、ナビゲーション装置による車両の到達可能範囲の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図19において、
図15-1と同一の処理内容は同一のステップ番号を付して説明を省略する。この処理例では、充電スポット202の種別と、営業時間内での充電スポット202への到着を判断する処理を加えている(ステップS1510とステップS1511の間にステップS1901~ステップS1905の処理を挿入)。
【0190】
ステップS1901では、ステップS1509で選んだ充電スポットは、急速充電が可能であるか判断し、可能であれば(ステップS1901:Yes)、ステップS1902に移行し、急速充電が可能でなければ(ステップS1901:No)、ステップS1507に戻る。ステップS1902では、選んだ充電スポット202の営業時間を取得する(ステップS1902)。つぎに、選んだ充電スポット202の営業時間が24時間営業であるか判断する(ステップS1903)。営業時間に制約がない24時間営業であれば(ステップS1903:Yes)、ステップS1511に移行し、24時間営業でなければ(ステップS1903:No)、ステップS1904に移行する。
【0191】
ステップS1904では、探索部103により、選んだ充電スポット202までの所要時間を計算し、現在時刻に所要時間を足すことで充電スポット202へ到着する時間を求める(ステップS1904)。この後、充電スポット202への到着時間が営業時間内か判断する(ステップS1905)。到着時間が営業時間内であれば(ステップS1905:Yes)、ステップS1511に移行し、到着時間が営業時間外であれば(ステップS1905:No)、ステップS1507に戻る。
【0192】
上記の処理により、充電スポット202により充電をおこなう場合の充電時間と、充電スポット202の営業時間を考慮し、この営業時間内に到着できる充電スポット202を検索することができるようになる。これにより、現在、設置箇所が限られている充電スポット202であっても、検索された充電スポット202を用いた充電をおこなうことができ、出発時間の制約を受けずに目的地までの走行ができるようになる。
【0193】
(道路勾配について)
つぎに、上記(1)式~(6)式の右辺に変数として用いられる道路勾配θについて説明する。
図20は、勾配がある道路を走行する車両にかかる加速度の一例を模式的に示した説明図である。
図20に示すように、道路勾配がθの坂道を走行する車両には、車両の走行に伴う加速度A(=dx/dt)と、重力加速度gの進行方向成分B(=g・sinθ)がかかる。たとえば、上記(1)式を例に説明すると、上記(1)式の右辺第2項は、この車両の走行に伴う加速度Aと、重力加速度gの進行方向成分Bの合成加速度Cを示している。また、車両が走行する区間の距離Dとし、走行時間Tとし、走行速度Vとする。
【0194】
道路勾配θを考慮せずに電力消費量の推定をおこなった場合、道路勾配θが小さい領域では推定消費電力量と実際の消費電力量との誤差が小さいが、道路勾配θが大きい領域では推定した推定消費電力量と実際の消費電力量との誤差が大きくなってしまう。このため、ナビゲーション装置500では、道路勾配、すなわち第四情報を考慮して燃費の推定をおこなうことで推定精度が向上する。
【0195】
車両が走行する道路の勾配は、たとえば、ナビゲーション装置500に搭載された傾斜計を用いて知ることができる。また、ナビゲーション装置500に傾斜計が搭載されていない場合は、たとえば、地図データに含まれる道路の勾配情報を用いることができる。
【0196】
(走行抵抗について)
つぎに、車両に生じる走行抵抗について説明する。ナビゲーション装置500は、たとえば、次の(11)式により走行抵抗を算出する。一般的に、走行抵抗は、道路種別や、道路勾配、路面状況などにより、加速時や走行時に移動体に生じる。
【0197】
【0198】
以上説明したように、ナビゲーション装置500によれば、地図情報を複数の領域に分割して各領域ごとに移動体が到達可能か否かを探索し、各領域にそれぞれ移動体が到達可能または到達不可能であることを識別する到達可能または到達不可能の識別情報を付与する。そして、ナビゲーション装置500は、到達可能の識別情報が付与された領域に基づいて、移動体の到達可能範囲を生成する。このため、ナビゲーション装置500は、海や湖、山脈など移動体の走行不可能な領域を除いた状態で移動体の到達可能範囲を生成することができる。したがって、画像処理装置100は、移動体の到達可能範囲を正確に表示することができる。
【0199】
そして、移動体の到達可能範囲に含まれる充電スポットに基づき、この充電スポットにおける充電による新たな到達可能範囲を表示できるようになる。これにより、ユーザは、バッテリーの残容量を気にすることなく、表示される到達可能範囲により目的地までの走行がおこなえるか否かを明確に知ることができるようになる。また、到達不能範囲についても明確に表示できるため、目的地が到達不能範囲である場合に、この目的地の設定をおこなえなくすることができ、これらを実際の走行前に知ることができるようになる。
【0200】
また、ナビゲーション装置500は、地図情報を分割した複数の領域を画像データに変換し、当該複数の領域にそれぞれ到達可能または到達不可能の識別情報を付与した後、クロージングの膨張処理をおこなう。このため、ナビゲーション装置500は、移動体の到達可能範囲内の欠損点を除去することができる。また、ナビゲーション装置500は、地図情報を分割した複数の領域を画像データに変換し、当該複数の領域にそれぞれ到達可能または到達不可能の識別情報を付与した後、オープニングの縮小処理をおこなう。このため、ナビゲーション装置500は、移動体の到達可能範囲の孤立点を除去することができる。このように、ナビゲーション装置500は、移動体の到達可能範囲の欠損点や孤立点を除去することができるので、移動体の走行可能範囲を2次元のなめらかな面でかつ見やすく表示することができる。
【0201】
(実施の形態2)
図21は、実施の形態2にかかる画像処理システムの機能的構成の一例を示すブロック図である。実施の形態2にかかる画像処理システム2100の機能的構成について説明する。実施の形態2にかかる画像処理システム2100は、サーバ2110、端末2120によって構成される。実施の形態2にかかる画像処理システム2100は、実施の形態1の画像処理装置100の機能をサーバ2110および端末2120に備える。
【0202】
サーバ2110は、移動体に搭載された端末2120によって表示部110に表示させる情報を生成する。具体的には、サーバ2110は、移動体の到達可能範囲に関する情報を検出し端末2120に送信する。端末2120は、移動体に搭載されても構わないし、携帯端末として移動体の中で利用されても構わないし、携帯端末として移動体の外で利用されても構わない。そして、端末2120は、サーバ2110から移動体の到達可能範囲に関する情報を受信する。
【0203】
図21において、サーバ2110は、算出部102、探索部103、分割部104、付与部105、補充設備検索部106、サーバ受信部2111、サーバ送信部2112によって構成される。端末2120は、取得部101、表示制御部107、端末受信部2121、端末送信部2122によって構成される。なお、
図21に示す画像処理システム2100においては、
図1に示した画像処理装置100と同一の構成部に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0204】
サーバ2110において、サーバ受信部2111は、端末2120から送信された情報を受信する。具体的には、たとえば、サーバ受信部2111は、公衆回線網や携帯電話網、DSRC、LAN、WANなどの通信網に無線を介して接続された端末2120からの移動体に関する情報を受信する。移動体に関する情報とは、移動体の現在地点に関する情報、および、移動体の現在地点において移動体が保有するエネルギー量である初期保有エネルギー量に関する情報である。サーバ受信部2111によって受信された情報は、算出部102で参照される情報である。なお、補充設備に関する情報は、端末2120、あるいはサーバ2110のいずれが取得してもよく、算出部102、探索部103による到達可能範囲を算出する手段に出力すればよい。
【0205】
サーバ送信部2112は、付与部105によって移動体が到達可能であることを識別する到達可能の識別情報が付与された地図情報が分割されてなる複数の領域を移動体の到達可能範囲として、端末2120に送信する。具体的には、たとえば、サーバ送信部2112は、公衆回線網や携帯電話網、DSRC、LAN、WANなどの通信網に無線を介して接続された端末2120に情報を送信する。
【0206】
端末2120は、たとえば、携帯端末の情報通信網や自装置に備えられた通信部(不図示)を介して通信可能な状態で、サーバ2110と接続されている。
【0207】
端末2120において、端末受信部2121は、サーバ2110からの情報を受信する。具体的には、端末受信部2121は、複数の領域に分割され、かつ当該領域のそれぞれに、移動体の到達可能地点に基づいて到達可能または到達不可能の識別情報が付与された地図情報を受信する。より具体的には、たとえば、端末受信部2121は、公衆回線網や携帯電話網、DSRC、LAN、WANなどの通信網に無線を介して接続されたサーバ2110から情報を受信する。
【0208】
端末送信部2122は、取得部101に取得された移動体に関する情報をサーバ2110に送信する。具体的には、たとえば、端末送信部2122は、公衆回線網や携帯電話網、DSRC、LAN、WANなどの通信網に無線を介して接続されたサーバ2110に移動体に関する情報を送信する。
【0209】
つぎに、実施の形態2にかかる画像処理システム2100による画像処理について説明する。画像処理システム2100による画像処理は、実施の形態1にかかる画像処理装置100とほぼ同一であるため、
図4のフローチャートを利用して実施の形態1との差異について説明する。
【0210】
画像処理システム2100による画像処理は、実施の形態1にかかる画像処理装置100による画像処理のうち、推定エネルギー消費量算出処理、到達可能地点探索処理、エネルギー補充設備検索処理、識別情報付与処理、をサーバ2110がおこなう。
【0211】
具体的には、
図4のフローチャートにおいて、端末2120は、ステップS401の処理をおこない、ステップS401,ステップS402で取得した情報をサーバ2110に送信する。つぎに、サーバ2110は、端末2120からの情報を受信する。つぎに、サーバ2110は、端末2120から受信した情報に基づいてステップS403~S407の処理をおこない、ステップS207で取得した情報を端末2120に送信する。つぎに、端末2120は、サーバ2110からの情報を受信する。そして、端末2120は、サーバ2110から受信した情報に基づいてステップS408をおこない、本フローチャートによる処理を終了する。
【0212】
以上説明したように、実施の形態2にかかる画像処理システム2100および画像処理方法は、実施の形態1にかかる画像処理装置100および画像処理方法と同様の効果を得ることができる。
【0213】
(実施の形態3)
図22は、実施の形態3にかかる画像処理システムの機能的構成の一例を示すブロック図である。実施の形態3にかかる画像処理システム2200の機能的構成について説明する。実施の形態3にかかる画像処理システム2200は、第1サーバ2210、第2サーバ2220、第3サーバ2230、端末2240によって構成される。画像処理システム2200は、実施の形態1の画像処理装置100の算出部102の機能を第1サーバ2210が備え、実施の形態1の画像処理装置100の探索部103の機能を第2サーバ2220が備え、実施の形態1の画像処理装置100の分割部104、付与部105、補充設備検索部106の機能を第3サーバ2230が備え、実施の形態1の画像処理装置100の取得部101および表示制御部107の機能を端末2240が備える。
【0214】
図22において、端末2240は、実施の形態2の端末2120と同様の構成を有する。具体的には、端末2240は、取得部101、表示制御部107、端末受信部2241、端末送信部2242によって構成される。端末受信部2241は、実施の形態2の端末受信部2121と同様の構成を有する。端末送信部2242は、実施の形態2の端末送信部2122と同様の構成を有する。第1サーバ2210は、算出部102、第1サーバ受信部2211、第1サーバ送信部2212、によって構成される。
【0215】
第2サーバ2220は、探索部103、第2サーバ受信部2221、第2サーバ送信部2222、によって構成される。第3サーバ2230は、分割部104、付与部105、補充設備検索部106、第3サーバ受信部2231、第3サーバ送信部2232によって構成される。
図22に示す画像処理システム2200においては、
図1に示した画像処理装置100および
図21に示した画像処理システム2100と同一の構成部に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0216】
第1サーバ2210において、第1サーバ受信部2211は、端末2240から送信された情報を受信する。具体的には、たとえば、第1サーバ受信部2211は、公衆回線網や携帯電話網、DSRC、LAN、WANなどの通信網に無線を介して接続された端末2240の端末送信部2242からの情報を受信する。第1サーバ受信部2211によって受信された情報は、算出部102で参照される情報である。
【0217】
第1サーバ送信部2212は、算出部102によって算出された情報を第2サーバ受信部2221に送信する。具体的には、第1サーバ送信部2212は、公衆回線網や携帯電話網、DSRC、LAN、WANなどの通信網に無線を介して接続された第2サーバ受信部2221に情報を送信してもよいし、有線で接続された第2サーバ受信部2221に情報を送信してもよい。
【0218】
第2サーバ2220において、第2サーバ受信部2221は、端末送信部2242および第1サーバ送信部2212によって送信された情報を受信する。具体的には、たとえば、第2サーバ受信部2221は、公衆回線網や携帯電話網、DSRC、LAN、WANなどの通信網に無線を介して接続された第1サーバ送信部2212および端末送信部2242からの情報を受信する。第2サーバ受信部2221は、有線で接続された第1サーバ送信部2212からの情報を受信してもよい。第2サーバ受信部2221によって受信された情報は、探索部103で参照される情報である。
【0219】
第2サーバ送信部2222は、探索部103によって探索された情報を第3サーバ受信部2231に送信する。具体的には、たとえば、第2サーバ送信部2222は、公衆回線網や携帯電話網、DSRC、LAN、WANなどの通信網に無線を介して接続された第3サーバ受信部2231に情報を送信してもよいし、有線で接続された第3サーバ受信部2231に情報を送信してもよい。
【0220】
第3サーバ2230において、第3サーバ受信部2231は、端末送信部2242および第2サーバ送信部2222によって送信された情報を受信する。具体的には、たとえば、第3サーバ受信部2231は、公衆回線網や携帯電話網、DSRC、LAN、WANなどの通信網に無線を介して接続された第2サーバ送信部2222および端末送信部2242からの情報を受信してもよい。第3サーバ受信部2231は、有線で接続された第2サーバ送信部2222からの情報を受信してもよい。第3サーバ受信部2231によって受信された情報は、分割部104で参照される情報である。
【0221】
第3サーバ送信部2232は、付与部105によって生成され、補充設備検索部106により検索された後の到達可能範囲の情報を端末受信部2241に送信する。具体的には、たとえば、第3サーバ送信部2232は、公衆回線網や携帯電話網、DSRC、LAN、WANなどの通信網に無線を介して接続された端末受信部2241に情報を送信する。なお、エネルギー補充設備に関する情報は、端末2240、あるいは第1サーバ2210~第3サーバ2230のいずれが取得してもよく、算出部102、探索部103による到達可能範囲の算出のための情報として出力する。
【0222】
つぎに、実施の形態3にかかる画像処理システム2200による画像処理について説明する。画像処理システム2200による画像処理は、実施の形態1にかかる画像処理装置100とほぼ同一であるため、
図4のフローチャートを利用して実施の形態1との差異について説明する。
【0223】
画像処理システム2200による画像処理は、実施の形態1にかかる画像処理装置100による画像処理のうち、推定エネルギー消費量算出処理を第1サーバ2210がおこない、到達可能地点探索処理を第2サーバ2220がおこない、識別情報付与処理を第3サーバ2230がおこなう。
図4のフローチャートにおいて、端末2240は、ステップS201の処理をおこない、ステップS401,ステップS402で取得した情報を第1サーバ2210に送信する。
【0224】
つぎに、第1サーバ2210は、端末2240からの情報を受信する。つぎに、第1サーバ2210は、端末2240から受信した情報に基づいてステップS403の処理をおこない、ステップS403で算出した情報を第2サーバ2220に送信する。つぎに、第2サーバ2220は、第1サーバ2210からの情報を受信する。つぎに、第2サーバ2220は、第1サーバ2210から受信した情報に基づいてステップS404の処理をおこない、ステップS404で探索した情報を第3サーバ2230に送信する。
【0225】
つぎに、第3サーバ2230は、第2サーバ2220からの情報を受信する。つぎに、第3サーバ2230は、第2サーバ2220からの情報に基づいてステップS405~ステップS408の処理をおこない、ステップS406で生成した情報を端末2240に送信する。つぎに、端末2240は、第3サーバ2230からの情報を受信する。そして、端末2240は、第3サーバ2230から受信した情報に基づいてステップS409をおこない、本フローチャートによる処理を終了する。
【0226】
以上説明したように、実施の形態3にかかる画像処理システム2200および画像処理方法は、実施の形態1にかかる画像処理装置100および画像処理方法と同様の効果を得ることができる。
ナビゲーション装置2310は、車両2330に搭載されている。ナビゲーション装置2310は、サーバ2320に車両の現在地点の情報および初期保有エネルギー量に関する情報を送信する。また、ナビゲーション装置2310は、サーバ2320から受信した情報をディスプレイに表示してユーザに報知する。サーバ2320は、ナビゲーション装置2310から車両の現在地点の情報および初期保有エネルギー量に関する情報を受信する。サーバ2320は、受信した車両情報に基づいて、車両2330の到達可能範囲に関する情報を生成する。また、補充設備を検索し、新たな到達可能範囲を求める。
サーバ2320およびナビゲーション装置2310のハードウェア構成は、実施例1のナビゲーション装置500のハードウェア構成と同一である。また、ナビゲーション装置2310は、車両情報をサーバ2320に送信する機能と、サーバ2320からの情報を受信してユーザに報知する機能に該当するハードウェア構成のみを備えていればよい。
また、画像処理システム2300は、車両に搭載されたナビゲーション装置2310を実施の形態3の端末2240とし、サーバ2320の機能構成を実施の形態3の第1~3サーバ2210~2230に分散させた構成としてもよい。
なお、本実施の形態で説明した画像処理方法は、予め用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することにより実現することができる。このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD-ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。またこのプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することが可能な伝送媒体であってもよい。