(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168474
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール用の暗色封止材シート
(51)【国際特許分類】
H01L 31/048 20140101AFI20231116BHJP
H01L 31/056 20140101ALI20231116BHJP
【FI】
H01L31/04 560
H01L31/04 624
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023171814
(22)【出願日】2023-10-03
(62)【分割の表示】P 2019085156の分割
【原出願日】2019-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】白髭 靖史
(72)【発明者】
【氏名】松本 裕司
(72)【発明者】
【氏名】小峯 和也
(72)【発明者】
【氏名】中原 敦
(57)【要約】
【課題】「建物一体型太陽光発電(BIPV)」タイプの太陽電池モジュールにおいて非受光面側に配置される封止材シートとして好適な暗色の外観を有する封止材シートであって、暗色顔料の受光面側へのマイグレーションが極めて発生しにくい暗色封止材シートを提供すること。
【解決手段】透明第1封止層11と、暗色第1接着層12と、反射層13と、第2接着層14と、第2封止層15と、が、この順で積層されてなる、暗色封止材シート1とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュール用の暗色封止材シートであって、
透明第1封止層と、
暗色第1接着層と、
反射層と、
第2接着層と、
第2封止層と、
が、この順で積層されてなる、
暗色封止材シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール用の暗色封止材シートに関する。更に詳しくは、黒色封止材シート等の暗色封止材シートであって、太陽電池モジュールにおいて、専ら太陽電池素子の非受光面側に配置される暗色の封止材シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に太陽電池モジュールは、
図1に示すように、ガラス等からなる透明前面基板3と裏面保護シート4が両最表面に配置されていて、内部に実装される太陽電池素子5は、その受光面側と非受光面側に配置される封止材シート(一例として、透明封止材シート2と暗色封止材シート1)で挟持される態様で封止されている構成が一般的である。
【0003】
近年、世界各国で「建物一体型太陽光発電(BIPV(Building Integrated Photovoltaic systems))」タイプの太陽電池モジュールの普及促進が図られている(特許文献1、2)。例えば、欧州の一部の国では、従来の「建物据付型太陽光発電(BAPV(Building Applied Photovoltaic systems))」タイプの太陽電池モジュールより、「建物一体型太陽光発電(BIPV)」タイプの太陽電池モジュールの方が電気の買取価格が高く設定されている等の具体的な優遇措置も取られている。
【0004】
「建物一体型太陽光発電(BIPV)」タイプの太陽電池モジュールにおいては、建物全体において統一感のある外観を維持することが求められる。このため、太陽電池モジュール自体にも、太陽電池素子表面の暗色の色味に合わせた統一感のある外観が必須の要求として求められることになる。
【0005】
太陽電池モジュールに統一感のある外観を付与するための一手段として、例えば、太陽電池素子間の隙間から受光面側に視認可能に露出する非受光面側の封止材シートを暗色に着色することが必要となるケースが増えている。
【0006】
太陽電池モジュールの非受光面側に配置することが想定されている黒色の封止材シートとしては、材料樹脂組成物にカーボンブラックを添加した溶融成型した単層の黒色の封止材シート(特許文献3参照)や、多層シートの最外層に上記同様に黒色顔料を含有させた封止材シート等、様々なタイプのものが市場に存在する。
【0007】
しかしながら、太陽電池モジュールは、一般的に、太陽電子素子と、上記の封止材シート等を含むモジュール構成部材を、加熱加圧処理を伴うラミネーション法等により接着一体化することによって製造される。非受光面側の封止材シートとして上記の従来公知の暗色の封止材シートを採用した場合、この加熱加圧処理時に、太陽電子素子の非受光面側に配置されるこれらの暗色封止材シートが流動し、積層体の側面や太陽電池用素子間の隙間から、太陽電池素子の表面(受光面側)に回りこんで、同表面の一部を覆って発電可能な面積を減少させ、結果として、太陽電池モジュールの発電効率を低下させてしまうという所謂、顔料のマイグレーションを阻止しなくてならないという課題があった。
【0008】
有色顔料のマイグレーションを抑制することを企図した多層構成の封止材シートとして、最外層―中間層-最外層の3層構成の樹脂シートであって、中間層のみに顔料を含有させるようにして、尚且つ、各樹脂層の動的粘弾性を最適化して加熱時の樹脂の過剰流動を制御するようにした封止材シート等も提案されている(特許文献4参照)。
【0009】
しかしながら、上記のような構成の多層構成であるにしても、ある程度の柔軟性や熱加工時におけるモールディング性が求められる封止材シートの樹脂層中に存在する顔料のマイグレーションを完全に防止することは困難である。又、上述の「建物一体型太陽光発電(BIPV)」タイプの太陽電池モジュール普及の流れもあり、長期に亘る使用期間中も含めてマイグレーションの発生リスクがより小さい封止材シートが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2013-537011号公報
【特許文献2】特表2013-511149号公報
【特許文献3】特開2013-191783号公報
【特許文献4】特開2016-157760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記状況に鑑みてなされたものであり、「建物一体型太陽光発電(BIPV)」タイプの太陽電池モジュールにおいて非受光面側に配置される封止材シートとして好適な暗色の外観を有する封止材シートであって、暗色顔料の受光面側へのマイグレーションが極めて発生しにくい暗色封止材シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、暗色封止材シートを封止層と反射層とを有する多層構成とし、意匠上の要求である暗色の外観については、封止層と反射層とを接合する接着層の色味によって担保する層構成とすることによって、上記課題が解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0013】
(1) 太陽電池モジュール用の暗色封止材シートであって、透明第1封止層と、暗色第1接着層と、反射層と、第2接着層と、第2封止層と、が、この順で積層されてなる、暗色封止材シート。
【0014】
(2) 前記暗色第1接着層が近赤外線を透過する樹脂層である、(1)に記載の、暗色封止材シート。
【0015】
(3) 前記暗色第1接着層には、赤外線透過性青色系暗色顔料と、赤外線透過性茶色系暗色顔料と、が、前記赤外線透過性青色系暗色顔料と前記赤外線透過性茶色系暗色顔料との質量比が、45:55~70:30の範囲で混合されてなる、赤外線透過性混合暗色顔料が含有されており、前記赤外線透過性青色系暗色顔料は、フタロシアニン系顔料であって、前記赤外線透過性茶色系暗色顔料は、ベンズイミダゾロン系顔料、4-[(2,5-ジクロロフェニル)アゾ]-3-ヒドロキシ-N-(2,5-ジメトキシフェニル)-2-ナフタレンカルボキサミド、1-[(4-ニトロフェニル)アゾ]-2-ナフタレノール、ビス[3-ヒドロキシ-4-(フェニルアゾ)-2-ナフタレンカルボン酸]銅塩、N,N’-ビス(2,4-ジニトロフェニル)-3,3’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ジイミド、Δ2,2’(1H,1’H)-ビナフト[2,1-b]チオフェン-1,1’-ジオン及びN、N’-(10,15,16,17-テトラヒドロ-5,10,15,17-テトラオキソ-5H-ジナフト[2,3-a:2’3’-i]カルバゾール-4,9-ジイル)ビス(ベンズアミド)からなる群より選ばれる少なくとも一種以上の顔料である、(2)に記載の、暗色封止材シート。
【0016】
(4) 前記赤外線透過性茶色系暗色顔料が、ベンズイミダゾロン系顔料である、(3)に記載の暗色封止材シート。
【0017】
(5) 前記暗色第1接着層は、水酸基を有する主剤樹脂がイソシアネート基を有する硬化剤によって硬化されてなる樹脂層である、(1)から(4)の何れかに記載の暗色封止材シート。
【0018】
(6) 前記反射層が、ポリエステル系樹脂をベース樹脂とする白色樹脂基材である、(1)から(5)の何れかに記載の暗色封止材シート。
【0019】
(7) 受光面側から、透明前面基板と、透明封止材シートと、太陽電池素子と、暗色封止材シートと、裏面保護シートと、が、この順に積層されてなる太陽電池モジュールであって、前記暗色封止材シートは、(1)から(6)の何れかに記載の暗色封止材シートであって、前記透明第1封止層側の表面の一部が前記太陽電池モジュールの前記透明前面基板側の外部から視認可能に露出している、太陽電池モジュール。
【0020】
(8) 前記太陽電池素子の受光面側の表面のJISZ8722に準拠して測定した標準光源D65によるCIE系色座標におけるa*値と、前記暗色封止材シートの透明第1封止層側の表面の前記a*値との差の絶対値が1.5以下であり、
前記太陽電池素子の前記表面のJISZ8722に準拠して測定した標準光源D65によるCIE系色座標におけるb*値と、前記暗色封止材シートの前記表面の前記b*値との差の絶対値が2.5以下である、(7)に記載の太陽電池モジュール。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、「建物一体型太陽光発電(BIPV)」タイプの太陽電池モジュールにおいて非受光面側に配置される封止材シートとして好適な暗色の外観を有する封止材シートであって、暗色顔料の受光面側へのマイグレーションが極めて発生しにくい暗色封止材シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の暗色封止材シートを用いた太陽電池モジュールの層構成の一例を示す断面模式図である。
【
図2】本発明の暗色封止材シートの層構成の一例を示す断面模式図である。
【
図3】
図1の太陽電池モジュールの受光面側表面の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の暗色封止材シート、及び、本発明の暗色封止材シートを用いた太陽電池モジュールについて順次説明する。
【0024】
<暗色封止材シート>
図2に示す通り、本発明の暗色封止材シート1は、透明第1封止層11と、暗色第1接着層12と、反射層13と、第2接着層14と、第2封止層15と、が、この順で積層されている多層構成の封止材シートである。
【0025】
暗色封止材シート1は、可視光及び近赤外線を透過する透明第1封止層11と、可視光及び近赤外線とを反射する反射層13との間に、暗色第1接着層12を配置したことを、層構成上の主たる特徴とする。
【0026】
又、暗色封止材シート1のより好ましい実施形態においては、暗色第1接着層12が、可視光の大部分を吸収する暗色の外観を有しながら、近赤外線は透過する樹脂層とされている。
【0027】
尚、本発明の暗色封止材シートは、暗色第1接着層12が視認可能に露出することによる好ましい暗色の外観の発現を阻害しない透明な樹脂層、より具体的には、透明第1封止層11と同様に可視光及び近赤外線を透過させる樹脂層が、更に透明第1封止層11と暗色第1接着層12との間に配置されている層構成であってもよい。そのような透明な樹脂層の一例として透明なポリエチレンテレフタレートからなる樹脂層を挙げることができる。
【0028】
上記層構成からなる暗色封止材シート1の総厚さは、各層に要求される耐衝撃性、バリア性、絶縁性等を維持することができる限りにおいて特に限定はされない。但し、経済性への配慮や太陽電池モジュール全体の薄膜化の要請に対応する観点から、その総厚さが600μm以下であることが好ましい。
【0029】
暗色封止材シート1は、その意匠性について、少なくとも一方の表面において、「暗色」の外観を有する樹脂シートである。尚、本発明における「暗色」とは、「JISZ8722に準拠して測定した標準光源D65によるCIE系色座標におけるa*値及びb*値が、-2.0≦a*≦5.0、且つ、-10.0≦b*≦1.0の範囲内にある色」のことを言うものとする。又、本明細書においては、特に別段の断りの無い限り、「a*値」及び「b*値」とは、上記の値のことを言うものとする。
【0030】
又、暗色封止材シート1のより好ましい実施形態においては、暗色第1接着層12は、可視光の多くの部分を吸収する一方で、「近赤外線を透過する」層とされている。本明細書において「近赤外線」とは、「750nm以上2200nm以下の波長域の電磁波(光)」のことを言うものとする。尚、本明細書において、「近赤外線を透過する」とは、「波長750nm以上1500nm以下の電磁波(光)を15%以上透過、好ましくは50%以上透過、更に好ましくは60%以上透過する」こと意味するものとする。
【0031】
又、暗色封止材シート1は、反射層13によって、暗色第1接着層12を透過した「近赤外線を反射する機能を有する」樹脂シートである。尚、本明細書において、「近赤外線を反射する機能を有する」とは、「750nm以上2200nm以下の波長域において積分反射率が85%以上であること」ことを意味するものとする。
【0032】
[透明第1封止層及び第2封止層]
暗色封止材シート1の両最表面にそれぞれ配置される透明第1封止層11及び第2封止層15の2つの封止層は、何れもポリエチレン系樹脂等のオレフィン系樹脂をベース樹脂とする樹脂層である。
【0033】
反射層13に対して、暗色の接着層(暗色第1接着層12)によって接合されている透明第1封止層11は、太陽電池モジュールにおいて太陽電池素子5の非受光面側の直下に配置されることが想定される層(
図1参照)である。この透明第1封止層11は、透明な樹脂層であることが必須である。ここで、本明細書において、「透明」とは「可視光域及び近赤外線領域の光線を透過」可能であることを言い、より詳しくは、「波長400nm以上1200nm以下における光線透過率が、上記波長領域全体において70%以上、好ましくは80%以上」であることを意味するものとする。又、本明細書における「光線透過率」とは、特段の断りがない場合、JIS-K-7105又はJIS-K-7136に準拠して測定された光線透過率のことを言うものとする。
【0034】
一方、反射層13に対して透明第1封止層11とは反対側の最表面に配置される第2封止層15の色味については特に限定されない。但し、反射層13の反射機能を補助して発電効率の向上に寄与させるために、例えば、白色着色剤を含有する白色の樹脂層とすることも有効である。上記の白色着色剤としては、特に限定はされないが、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛及び酸化チタン等の白色顔料を好ましく用いることができる。それらの中でも汎用性の観点から酸化チタンを特に好ましく用いることができる。
【0035】
尚、上記のような発電効率の向上への寄与という観点からは、第2封止層15を上記のように白色化するのが望ましいが、白色以外に、光反射性が得られるような色調であれば、例えば、黄色、緑色、薄青色等に着色させてもよい。又、必要に応じて非受光面側表面についても意匠性を向上させるために黒色その他の色に封止材シートを着色することが求められる場合においは、それぞれ所望の色彩を有する顔料等を適宜用いて、所望の色彩を付与することができる。
【0036】
透明第1封止層11及び第2封止層15を形成するベース樹脂は、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、やポリエチレン等、従来、太陽電池用の封止材を形成するために用いられている各種のオレフィン系樹脂を適宜選択して用いることができる。但し、それらのうちでも、水蒸気バリア性等について長期信頼性の高いポリエチレン系樹脂、中でも、密度0.870g/cm3以上0.940g/cm3以下の低密度ポリエチレン(LDPE)を、透明第1封止層11及び第2封止層15を形成するベース樹脂として好ましく用いることができる。
【0037】
又、透明第1封止層11及び第2封止層15のベース樹脂とするポリエチレン系樹脂は、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)であることがより好ましい。直鎖低密度ポリエチレンは、エチレンとα-オレフィンとの共重合体であり、本発明においては、その密度が0.870g/cm3以上0.940g/cm3以下であることが好ましく、0.870g/cm3以上0.885g/cm3以下であることがより好ましい。この範囲であれば、シート加工性を維持しつつ良好な透明性と耐熱性を付与することができる。
【0038】
又、上記ベース樹脂として用いるポリエチレン系樹脂は、密度が0.870g/cm3以上0.940g/cm3以下のメタロセン系直鎖低密度ポリエチレン(M-LLDPE)であることが更に好ましい。メタロセン系直鎖低密度ポリエチレンは、結晶性分布が狭く、結晶サイズが揃っていて、又、低密度であるために結晶性自体が低いので、これをベース樹脂として用いることにより、封止材シートとしてシート状に加工した際の透明性をより優れたものとすることができる。
【0039】
又、本明細書における「ポリエチレン系樹脂」には、エチレンを重合して得られる通常のポリエチレンのみならず、α-オレフィン等のようなエチレン性の不飽和結合を有する化合物を重合して得られた樹脂、エチレン性不飽和結合を有する複数の異なる化合物を共重合させた樹脂、及びこれらの樹脂に別の化学種をグラフトして得られる変性樹脂等が含まれる。
【0040】
なかでも、少なくともα-オレフィンとエチレン性不飽和シラン化合物とをコモノマーとして共重合してなるシラン共重合体を透明第1封止層11及び第2封止層15のベース樹脂又は添加樹脂として好ましく用いることができる。このような樹脂を用いることにより、裏面保護シートや太陽電池素子等、太陽電池モジュールを構成する他の積層部材と暗色封止材シート1との間の密着性を更に向上させることができる。
【0041】
尚、上記ベース樹脂として用いるポリエチレン系樹脂のメルトマスフローレート(MFR)は、190℃、荷重2.16kg、において1.0g/10分以上40g/10分以下であることが好ましい。MFRが上記の範囲であることにより、製膜時の加工適性を良好に維持することができる。尚、本明細書中におけるMFRとは、特に断りのない限り、以下の方法により得られた値である。
MFR(g/10min):JIS K7210に準拠して測定。具体的には、ヒーターで加熱された円筒容器内で合成樹脂を、190℃で加熱・加圧し、容器底部に設けられた開口部(ノズル)から10分間あたりに押出された樹脂量を測定した。試験機械は押出し形プラストメータを用い、押出し荷重については2.16kgとした。尚、多層フィルムである封止材シートについては、全ての層が一体積層された多層状態のまま、上記処理による測定を行い、得た測定値を当該多層の封止材シートのMFR値とする。
【0042】
透明第1封止層11及び第2封止層15を形成する材料組成物には、適宜、架橋剤を含有させることができる。架橋剤は公知のものが使用でき特に限定されない。又、同材料組成物には、同様に各種の架橋助剤を含有させることもできる。又、透明第1封止層11及び第2封止層15は、上記の架橋剤の添加によって適切な架橋を進行させることによって耐熱性を向上させることができる。尚、この架橋は、電離放射線の照射によるものであってもよい。
【0043】
透明第1封止層11及び第2封止層15を形成する材料組成物には、更にその他の成分を含有させることができる。例えば、シランカップリング剤等の密着性向上成分、光安定化剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤等の成分が例示される。
【0044】
以上説明した、透明第1封止層11及び第2封止層15の厚みは、暗色封止材シートの総厚さを500μm以下程度に止めることができ、尚且つ、所望の耐衝撃性や絶縁性を担保するこができる厚みであればよいが、何れも100μm以上300μm以下であることが好ましい。
【0045】
[暗色第1接着層]
暗色第1接着層12は、暗色封止材シート1において、少なくとも以下の3つの機能を発揮する樹脂層である。第1に、暗色第1接着層12は、中間層として配置される反射層13の表面に透明第1封止層11を強固に接合する接着層としての機能を発揮する。第2に、暗色第1接着層12は、暗色封止材シート1に、太陽電池素子5の表面の色味に近似する暗色の外観を生じさせる意匠層としての機能を発揮する。そして、第3に、暗色第1接着層12は、接着層として強固に硬化する層であることにより、同層内に含有されている暗色顔料のマイグレーションを長期に亘って回避する暗色顔料固定層としての機能を発揮する。
【0046】
そして、暗色封止材シート1のより好ましい実施形態においては、暗色第1接着層12は、第4の機能として、暗色の外観を有しながら太陽電池モジュールの発電に寄与する近赤外線についてはこれを吸収せずに透過させる近赤外線透過層としての機能を発揮する。
【0047】
暗色第1接着層12を形成する接着剤は、主剤樹脂、硬化剤、及び、溶剤を含み、必要に応じてその他の各種の添加剤を含む従来公知の各種の接着剤に、更に、赤外線透過性混合暗色顔料が適量添加されたものを適宜用いることができる。接着剤は、主剤樹脂と硬化剤と、を使用直前に混合する2液タイプのものであることが好ましい。
【0048】
又、暗色第1接着層12は、水酸基を有する主剤樹脂がイソシアネート基を有する硬化剤によって硬化されてなる樹脂層であることが好ましい。この水酸基を有する主剤樹脂として、例えば、ポリウレタンジオールと脂肪族ポリカーボネートジオールとの混合物を含む、ポリウレタン/ポリカーボネートジオール系の樹脂材料を好ましく用いることができる。この主剤を構成するポリウレタンジオール及び脂肪族ポリカーボネートジオールは、ともに水酸基を有するポリオールである。暗色封止材シート1において、暗色の外観を生じさせる機能を発揮する暗色第1接着層12を形成する主剤樹脂を、イソシアネート基を有する硬化剤と反応させて、太陽電池モジュールとしての一体化の工程に先行して十分に硬化させることにより、太陽電池モジュールとしての一体化の工程を行う際の暗色顔料のマイグレーションをほぼ完全に防ぐことができる。
【0049】
暗色封止材シート1において、暗色第1接着層12を、上記第2及び第4の機能、即ち、「暗色の外観による意匠性向上」と「近赤外線透過によって発電効率を向上させる機能」を発現させうる層とするためには、以下に詳細を説明する「赤外線透過性混合暗色顔料」を用いることが好ましい。暗色第1接着層12に含有させる顔料として好ましく用いることができる「赤外線透過性混合暗色顔料」とは、下記に詳細を説明する「赤外線透過性青色系暗色顔料」と、「赤外線透過性茶色系暗色顔料」とが、所定の質量比の範囲内で混合されてなる混合顔料である。
【0050】
「赤外線透過性混合暗色顔料」に含まれる顔料成分のうち、「赤外線透過性青色系暗色顔料」は、フタロシアニン系顔料であることが好ましい。フタロシアニン系顔料とは、フタロシアニン骨格を有する顔料であり、各種金属が配位されたフタロシアニンをも含む概念である。具体的には、C.I.PigmentGreen7、C.I.PigmentGreen36、C.I.PigmentGreen37、C.I.PigmentBlue16、C.I.PigmentBlue75、又は、C.I.PigmentBlue15等が挙げられる。
【0051】
又、「赤外線透過性混合暗色顔料」に含まれる顔料成分のうち、「赤外線透過性茶色系暗色顔料」は、ベンズイミダゾロン系顔料、4-[(2,5-ジクロロフェニル)アゾ]-3-ヒドロキシ-N-(2,5-ジメトキシフェニル)-2-ナフタレンカルボキサミド、1-[(4-ニトロフェニル)アゾ]-2-ナフタレノール、ビス[3-ヒドロキシ-4-(フェニルアゾ)-2-ナフタレンカルボン酸]銅塩、N,N’-ビス(2,4-ジニトロフェニル)-3,3’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ジイミド、Δ2,2’(1H,1’H)-ビナフト[2,1-b]チオフェン-1,1’-ジオン及びN、N’-(10,15,16,17-テトラヒドロ-5,10,15,17-テトラオキソ-5H-ジナフト[2,3-a:2’3’-i]カルバゾール-4,9-ジイル)ビス(ベンズアミド)からなる群より選ばれる少なくとも一種以上の顔料であることが好ましい。
【0052】
「赤外線透過性混合暗色顔料」の調合に用いる「赤外線透過性茶色系暗色顔料」として、上記の中でも、顔料の分散性や接着性向上効果を最大化する観点から、「ベンズイミダゾロン系顔料」を、特に好ましく用いることができる。ベンズイミダゾロン系顔料とは、下記一般式(1)で表されるベンズイミダゾロン骨格を有する顔料である。具体的には、C.I.PigmentYellow120、C.I.PigmentYellow151、C.I.PigmentYellow154、C.I.PigmentYellow175、C.I.PigmentYellow180、C.I.PigmentYellow181、C.I.PigmentYellow194、C.I.PigmentRed175、C.I.PigmentRed176、C.I.PigmentRed185、C.I.PigmentRed208、C.I.PigmentViolet32、C.I.PigmentOrange36、C.I.PigmentOrange62、C.I.PigmentOrange72、C.I.PigmentBrown25等が挙げられるが、これに限るものではない。色域の観点からC.I.PigmentBrown25が特に好ましい。
【0053】
【0054】
「赤外線透過性混合暗色顔料」における、「赤外線透過性青色系暗色顔料」と、「赤外線透過性茶色系暗色顔料」の混合比率は、具体的には、質量比で、45:55~70:30の範囲で、対応する太陽電池素子5の表面の色味に合わせて調整される。例えば、比較的純粋な黒色に近い、一般的な単結晶型の太陽電池素子に対しては、この比率が、45:55~50:50くらいの割合とすることにより、これらの太陽電池素子の色味とのバラツキを最小限に抑えて、この太陽電池素子を搭載した太陽電池モジュール10の意匠性の向上に寄与することができる。一方、例えば、太陽電池素子の表面の色味が青味がかった色に寄っている場合は、この比率を55:45~60:40くらいの割合とすることにより、同様に、太陽電池モジュール10の意匠性の向上に寄与することができる。
【0055】
又、太陽電池モジュール10において、太陽電池素子5の受光面側の表面のa*値と、暗色封止材シート1の同表面との間におけるa*値との差の絶対値は1.5以下であり、太陽電池素子5の受光面側の表面のb*値と、暗色封止材シート1の同表面との間におけるb*値との差の絶対値は2.5以下であることが好ましい。又、これらの色味の差の絶対値は、a*値においては、1.0以下であることがより好ましく、b*値においては、2.0以下であることがより好ましい。このような範囲への色味の調整は、「赤外線透過性混合暗色顔料」を採用することにより、「赤外線透過性青色系暗色顔料」と、「赤外線透過性茶色系暗色顔料」の2種類の顔料の混合比率の調整という単純な調整作業で実現することができる。
【0056】
そして、暗色第1接着層12に含有される顔料として上述の「赤外線透過性混合暗色顔料」を用いることにより、暗色第1接着層12を、暗色封止材シート1の表面に暗色の外観を発現させるものでありながら、波長750nm以上1500nm以下の近赤外線を透過する層とすることができる。これにより、この層を透過した近赤外線を、その直下に配置されている反射層13において反射して太陽電池素子5に向かわせることができる。そして、これらの反射光を発電に寄与させることにより、外観の暗色化に伴う太陽電池モジュール10の発電効率の低下を最小限に止めることができる。
【0057】
従来、「建物一体型太陽光発電(BIPV)」タイプの太陽電池モジュールにおいて、意匠性に配慮して非受光面側に暗色の封止材シートを配置する場合、暗色顔料のマイグレーションの発生や、非受光面側からの反射光を発電に寄与させることができなくなること等により、発電効率低下してしまうことについて、改善策が模索されていた。これに対して、本発明によれば、上記の第3の機能(マイグレーション防止機能)を発現させることにより、そして、好ましくは上記の第4の機能(近赤外線透過機能)を併せて発現させることにより、高水準の意匠性確保に伴う発電効率の低下を回避或いは最小限に止めることができる。
【0058】
暗色第1接着層12の厚さは、層間の密着性、耐久性及び印刷適性を向上させる観点から、2.0μm以上10.0μm以下であることが好ましく3.0μm以上7.0μm以下であることが更に好ましい。但し、この暗色第1接着層12の厚さは、同層内の単位面積当りの、「赤外線透過性混合暗色顔料」の含有量に比例し、暗色封止材シート1の表面の色味に影響を与える。よって、暗色封止材シート1においては、上記範囲内で表面の色味を太陽電池素子5の色味により近づけるように更に最適化することが好ましい。
【0059】
[反射層]
反射層13は、暗色第1接着層12を透過した近赤外線を受光面側に向けて反射する機能を有する層である。そして、反射層13は、上述の通り、暗色封止材シート1において3つ乃至4つの重要な機能を発揮する暗色第1接着層12を形成するための基板層としての役割も果たす。このような機能を発揮しうる層として、例えば、ポリエステル系樹脂をベース樹脂とし、白色顔料を含有する白色樹脂基材を挙げることができる。又、反射機能を有する層として、白色の樹脂基材に代えてアルミ箔等の金属性の薄膜を反射層13として配置することもできる。
【0060】
反射層13を構成する樹脂基材のベース樹脂として好ましく用いることができるポリエステル系樹脂として、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)を好ましい樹脂の一例として挙げることができる。尚、ポリエチレンテレフタレート(PET)は、要求物性や使用環境に応じて、必要であれば、耐加水分解性ポリエチレンテレフタレート(HR-PET)とすることが好ましい。
【0061】
反射層13を構成する白色の樹脂基材として、上記の各ベース樹脂に、白色顔料が含有されてなる白色の樹脂基材を用いることができる。この白色顔料としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化ケイ素等を用いることができる。
【0062】
反射層13を構成する白色樹脂基材に含ませる白色顔料として酸化チタンを用いる場合、粒径0.2μm以上0.5μm程度の汎用品たる酸化チタンを好ましく用いることができる。但し、粒径0.8μm以上1.2μm以下の酸化チタンを用いることもでき、これによれば、反射層13に「近赤外線を極めて効率よく反射する機能」を備えさせることができる。
【0063】
尚、上述の「近赤外線を効率よく反射する機能」とは、より具体的には、凡そ750nm以上2200nm以下の波長領域において、積分反射率が85%以上である機能を意味する。又、上記の反射率については、通常比較標準試料との相対反射率を使用する。本発明においては、比較標準試料として硫酸バリウムを使用している。本発明における反射率は、分光光度計(例えば、(株)島津製作所UV2450)に積分球付属装置(例えば、(株)島津製作所製ISR2200)を取り付け、硫酸バリウムを標準板とし、標準板を100%とした相対反射率を測定した値とする。
【0064】
又、白色顔料の粒径は、日本電子社製の透過型電子顕微鏡(JEM-1230)を用いて白色顔料の一次粒径を写真に撮影した後、その画像をマウンテック社製の画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(MAC-View Ver.3)にて統計処理を行い算出して得られる値を採用する。粒径の算出にあたっては体積基準の円相当径を採用する。尚、本明細書における各種の樹脂や無機フィラーの粉末材料の粒径は、何れも上記方法によって測定した粒径のことを言うものとする。
【0065】
反射層13の厚さは、特に限定されない。但し、これを白色樹脂基材で構成する場合、透明第1封止層11及び第2封止層15に十分な衝撃保護性能やバリア性を備えさせながら、暗色封止材シート1の総厚さを600μm以下程度に止める観点から、30μm以上60μ未満であることが好ましい。
【0066】
[第2接着層]
第2接着層14は、中間層として配置される反射層13の表面(透明第1封止層11の積層面とは反対側の面)に第2封止層15を強固に接合する機能を発揮する接着層である。第2接着層とは異なり顔料添加等による着色の必要はなく、上記接合機能を十分に発揮することができる限りにおいて他に特段の制限はない。
【0067】
第2接着層14を形成する接着剤としては、暗色第1接着層12と同様の主剤樹脂、硬化剤、及び、溶剤を含む従来公知の各種の接着剤を用いることができる。接着剤は、主剤樹脂と硬化剤と、を使用直前に混合する2液タイプのものであることが好ましい。
【0068】
[暗色封止材シートの製造方法]
暗色封止材シート1は、透明第1封止層11を構成する透明な樹脂フィルムを、反射層13を構成する白色樹脂基材等の表面に暗色第1接着層12を構成する暗色の接着剤を用いたドライラミネーション法によって積層一体化し、第2封止層15を構成する樹脂フィルムを、第2接着層14を構成する接着剤を用いて同様にドライラミネーション法によって積層一体化することにより得ることができる。
【0069】
<太陽電池モジュール>
次に、本発明の太陽電池モジュールについて、
図1及び
図3を参照しながら説明する。
図1は、本発明の太陽電池モジュール10について、その層構成の一例を示す断面図である。太陽電池モジュール10は、入射光6の受光面側から、透明前面基板3、太陽電池素子5の受光面側に積層される透明封止材シート2、太陽電池素子5、太陽電池素子5の非受光面側に積層される本発明の暗色封止材シート1、及び、裏面保護シート4が、この順に積層されている層構成からなる。
【0070】
[透明前面基板]
透明前面基板3は、一般にガラス製の基板である。透明前面基板3は、又、太陽電池モジュール10の耐候性、耐衝撃性、耐久性を維持しつつ、且つ、太陽光線を高い透過率で透過させるものであればその他の部材であってもよい。
【0071】
[透明封止材シート]
受光面側に配置される透明封止材シート2は、太陽電池素子5を外部衝撃から保護する機能を発揮しながら、入射光6を高い透過率で透過させるための透明性が求められる。そのような透明封止材シート2としては、暗色封止材シートの透明第1封止層11と同様に、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、や低密度ポリエチレン等の各種のオレフィン系樹脂をベース樹脂とする樹脂シートを適宜用いることができる。
【0072】
[太陽電池素子]
太陽電池モジュール10に搭載される太陽電池素子5は、アモルファスシリコン型、結晶シリコン型等、従来公知の太陽電池素子を適宜選択して用いることができる。但し、本発明は、それらの中でも、その表面の色味が、純粋な黒味から青色、又は青紫色に近づく方向へシフトしている単結晶型の太陽電池素子、具体的には、その表面におけるa*値が2.0以上3.0以下、b*値が-6.0以上-4.0以下である単結晶型の太陽電池素子を搭載する太陽電池モジュールとしての実施において特段に有利な効果を発揮する。
【0073】
[裏面保護シート]
裏面保護シート4としては、太陽電池モジュールの保護シートに求められる耐候性やバリア性を有する各種の樹脂シートであって、太陽電池モジュールの裏面保護シートとして用いられている公知の樹脂シート等を適宜選択して用いることができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、好ましくは、耐熱性と耐加水分解性に優れる耐加水分解ポリエチレンテフタレート(HR-PET)、或いは、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂をベース樹脂とする従来公知の各種樹脂シートを適宜選択して用いることができる。
【0074】
裏面保護シート4の厚さは、特に限定されないが、太陽電池モジュールに求められるバリア性や絶縁性を担保するため、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いる場合であれば、厚さは、60μm以上350μm以下であることが好ましく、70μm以上320μm以下であることがより好ましい。
【0075】
尚、裏面保護シート4にも、所望の色味の外観を発現させることを目的として、各種各色の着色材料を添加することができる。
【0076】
[建物一体型太陽光発電(BIPV)タイプの太陽電池モジュール]
上述の「建物一体型太陽光発電(BIPV)」タイプの太陽電池モジュールにおいては、発電効率等の性能とともに、建物本体や周辺環境との親和性まで含めた高度の意匠性が求められる。この場合、当然に太陽電池モジュール事態の外観についても統一感のある外観であることが必須となる。
【0077】
ここで、
図1に示す層構成からなる太陽電池モジュール10においては、
図3に示すように、太陽電池モジュール10の透明前面基板3の側からの平面視における外観は、太陽電池素子5が配置されていない隙間部分において、透明性を有する透明前面基板3及び透明封止材シート2を通して、暗色封止材シート1の表面の一部が、外部から視認可能に露出する態様となる。
【0078】
一方で、太陽電池素子5については、その表面が暗色である場合が多いので、この場合、これに近い暗色の色味を有する暗色封止材シート1を太陽電池素子5の非受光面側の直下に配置することにより、太陽電池モジュール10の表面の外観を、色味のバラツキが少ない統一感のある暗色の外観とすることができる。そして、これにより、「建物一体型太陽光発電(BIPV)」タイプの太陽電池モジュールとして意匠面での適性を高めることができる。
【0079】
より具体的には、「建物一体型太陽光発電(BIPV)」タイプの太陽電池モジュールにおいては、太陽電池素子5の受光面側の表面のJISZ8722に準拠して測定した標準光源D65によるCIE系色座標におけるa*値と、暗色封止材シート1の透明第1封止層11側の表面のa*値との差の絶対値が1.5以下であり、太陽電池素子5の表面のb*値と、暗色封止材シート1の上記表面のb*値との差の絶対値が2.5以下であることが好ましく、暗色封止材シート1を用いることにより、そのような意匠性に優れる太陽電池モジュールを構成することができる。このような範囲への色味の調整は、上記の「赤外線透過性混合暗色顔料」を採用する場合においては、「赤外線透過性青色系暗色顔料」と、「赤外線透過性茶色系暗色顔料」の2種類の顔料の混合比率の調整という単純な調整作業で実現することができる。
【0080】
そして、暗色第1接着層12に含有される顔料として上述の「赤外線透過性混合暗色顔料」を用いることにより、暗色第1接着層12を、暗色封止材シート1の表面に暗色の外観を発現させるものでありながら、波長750nm以上1500nm以下の近赤外線を透過する層とすることができる。これにより、この層を透過した近赤外線を、その直下に配置されている反射層13において反射して太陽電池素子5に向かわせることができる。そして、これらの反射光を発電に寄与させることにより、外観の暗色化に伴う太陽電池モジュール10の発電効率の低下を最小限に止めることができる。
【0081】
以上の構成部材、層構成からなる太陽電池モジュール10は、例えば、暗色封止材シート1を含む上記の各部材を、上記構成となるように順次積層してから、真空吸引等により一体化し、その後、ラミネーション法等の成形法により、上記の部材を一体成形体として加熱圧着成形して製造することができる。真空熱ラミネート加工による場合、ラミネート温度は、130℃以上170℃以下の範囲内とすることが好ましい。又、ラミネート時間は、5分以上20分以下の範囲内が好ましく、特に8分以上15分以下の範囲内が好ましい。
【実施例0082】
以下の通り、層構成、暗色顔料の組成と配置が、それぞれ異なる様々な暗色封止材シート試料を実施例及び比較例の暗色封止材シートとして作成し、これらを比較する試験を行い、本発明の作用効果を検証した。
【0083】
<暗色封止材シートの作成>
下記の各樹脂基材、接着剤、顔料を用いてそれぞれの実施例、比較例の暗色封止材シート試料を作製した。
【0084】
[実施例1~3の暗色封止材シート]
(第1透明封止層、第2封止層)
実施例1~3の暗色封止材シートにおいて、第1透明封止層、及び、第2封止層を構成する樹脂フィルムとして、下記の2種のポリエチレンフィルム(表1中にて「PE1」「PE1-W」と記す)を使い分けた。
ポリエチレンフィルム(PE1)
:密度0.919g/cm3、厚さ200μmのメタロセン系直鎖低密度ポリエチレン(M-LLDPE)フィルム。
ポリエチレンフィルム(PE1-W)
上記ポリエチレンフィルム(PE1)と樹脂成分及び厚さは同一であり、樹脂成分100質量部に対して10質量部の割合で白色顔料(二酸化チタン)を更に含有する白色のポリエチレン系樹脂フィルム。
【0085】
(反射層)
反射層を構成する白色樹脂基材として、下記の白色PETフィルム(表1中にて「PET-W」と記す)を用いた。
白色PETフィルム(PET-W)
:東レ社製「E20」、厚さ50μm
【0086】
(第1暗色接着層)
上記の白色樹脂基材の一方の表面に上記のポリエチレンフィルム(PE1)を、ポリウレタン/ポリカーボネートジオール系の主剤とイソシアネート系の硬化剤との2液タイプの接着剤の主剤に、更に、下記の「赤外線透過性混合暗色顔料(B1)」を添加した「暗色接着剤」よるドライラミネート法によって積層一体化した。「暗色接着剤」への「赤外線透過性混合暗色顔料」の添加量は、同接着剤中の同顔料の含有量比が、固形分比で25質量%の配合量となるように調整した。又、この「暗色接着剤」の塗工量は、6.0g/m3とした。
赤外線透過性混合暗色顔料(B1)
:下記の「赤外線透過性青色系暗色顔料」と「赤外線透過性茶色系暗色顔料」とを、混合してなる混合顔料。
赤外線透過性青色系暗色顔料
:フタロシアニン系顔料(非晶質型フタロシアニン系顔料青(PigmentBlue15、粒径0.15~0.20μm))
:赤外線透過性茶色系暗色顔料
ベンズイミダゾロン系顔料(PigmentBrown25、粒径0.08μm)
(有機系暗色顔料)。
【0087】
(第2接着層)
上記の白色樹脂基材の他方の表面に上記のポリエチレンフィルム(PE1)を、ポリウレタン/ポリカーボネートジオール系の主剤とイソシアネート系の硬化剤との2液タイプの接着剤(顔料は不添加)によるドライラミネート法によって積層一体化することにより、各実施例及び比較例の暗色封止材シートの他方の表面にポリエチレンフィルム(PE1)を接合した。又、この「接着剤」の塗工量は、4.0g/m3とした。
【0088】
[比較例1の暗色封止材シート]
比較例1の暗色封止材シートにおいては反射層を配置せず、暗色顔料として実施例で用いた「赤外線透過性混合暗色顔料」を樹脂成分100質量部に対して固形分換算で7質量部の割合で含有する下記のポリエチレンフィルム(PE2-B)を用いて単層構成の暗色封止材シートとした。
ポリエチレンフィルム(PE2-B)
:密度0.919g/cm3、厚さ400μmのメタロセン系直鎖低密度ポリエチレン(M-LLDPE)フィルム。「赤外線透過性混合暗色顔料」7質量部含有。
【0089】
[比較例2の暗色封止材シート]
比較例2の暗色封止材シートにおいても反射層を配置せず、暗色顔料として「カーボンブラック」を樹脂成分100質量部に対して7質量部の割合で含有する下記のポリエチレンフィルム(PE2-CB)を用いて単層構成の暗色封止材シートとした。
ポリエチレンフィルム(PE2-CB)
:密度0.919g/cm3、厚さ400μmのメタロセン系直鎖低密度ポリエチレン(M-LLDPE)フィルム。「カーボンブラック」7質量部含有。
【0090】
[比較例3の暗色封止材シート]
比較例3の暗色封止材シートにおいては、第1透明封止層と同様に最表面に配置する樹脂フィルムとして、実施例1~3で用いたポリエチレンフィルムに、更に、暗色顔料として下記の「赤外線透過性混合暗色顔料」を樹脂成分100質量部に対して12質量部の割合で含有させた暗色ポリエチレンフィルム(PE1-B)を用いた。又、第2透明封止層を構成する樹脂フィルムとしては、実施例1~3で用いたポリエチレンフィルム(PE1)をそのまま用いた。第1透明封止層(但し暗色顔料含有)と反射層と第2封止材層とのドライラミネーションに用いる接着剤は何れも顔料を含有しない実施例1~3で第2接着層を形成するために用いた上記の「接着剤」を用いた。この「接着剤」の塗工量は、何れも4.0g/m3とした。
ポリエチレンフィルム(PE1-B)
:密度0.919g/cm3、厚さ200μmのメタロセン系直鎖低密度ポリエチレン(M-LLDPE)フィルム。「赤外線透過性混合暗色顔料」12質量部含有。
【0091】
[暗色封止材シート評価用太陽電池モジュール試料の製造]
180mm□の白板半強化ガラス(AGCファブリテック(株)製:3KWE33)、受光面側の透明封止材シート(密度0.880g/cm3、厚さ400μmのメタロセン系直鎖低密度ポリエチレン(M-LLDPE)フィルム)、太陽電池素子(PVGソリューション製単結晶セル(EarthON-194))、非受光面側の暗色封止材シート(上記実施例1~3及び比較例1~3それぞれの暗色封止材シート)、及び、裏面保護シート(ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、厚さ150μm)を順次積層し、真空ラミネータを用いて下記ラミネート条件で融着一体化し、実施例1~3及び比較例1~3の暗色封止材シート評価用太陽電池モジュールを作製した。
(ラミネート条件)
真空ラミネータにて圧力100kPaにて150℃で15分間圧着した後、高温層にて150℃30分間静置するスタンダードキュア条件でラミネートを行った。
【0092】
<評価例1:マイグレーション防止効果>
実施例1~3、比較例1~3の各暗色封止材シート評価用太陽電池モジュール試料について、上記の熱ラミネート後、常温まで冷却した直後において、目視観察により、下記の評価基準により、回り込み防止効果を評価した。結果を下記表1に示す。
(評価基準)
A:暗色顔料が太陽電池素子の受光面側に全く回り込んでいない。
B:暗色顔料が太陽電池素子の受光面側の端部から2mm以内の部分のみに回り込んでいる。
C:暗色顔料が太陽電池素子の受光面側の端部から2mm以内の部分を超えて回り込んでいる。
【0093】
<評価例2:発電効率>
実施例1~3、比較例1~3の各暗色封止材シート評価用太陽電池モジュール試料について、有効面積を18cm□と規定するSUSマスクを、各太陽電池モジュールの受光面側に載置して、ソーラーシミュレータ((株)三永電機製:XES-155S1)によりAM1.5G相当の照度100mW/cm2の疑似太陽光を照射して、この場合における、各太陽電池モジュール試料のI-V曲線を測定した。そして、実施例1のVoc値を規準(100%)とした場合における他の実施例及び比較例の100分率比で表したIsc値の比率を、下記の評価規準に基づいて評価した。結果を下記表1に示す。
(評価基準)
A:99.5%以上
B:98.0%以上99.5%未満
C:98.0%未満
【0094】
【0095】
表1より、本発明の暗色封止材シートは、暗色の外観を有する封止材シートであって、暗色顔料の受光面側へのマイグレーションが極めて発生しにくい暗色封止材シートであり、これを用いることにより、発電効率の維持率においても優れた太陽電池モジュールを構成することができることが確認された。