(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168488
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
E03D 1/24 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
E03D1/24
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023172018
(22)【出願日】2023-10-03
(62)【分割の表示】P 2019177891の分割
【原出願日】2019-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】河津 由加里
(72)【発明者】
【氏名】頭島 周
(72)【発明者】
【氏名】井上 正明
(57)【要約】
【課題】貯水タンク側からの結露水の漏出を効果的に抑制することができ、タンク装置の関連機器や周辺機器の信頼性を確保することができる水洗大便器を提供する。
【解決手段】本発明の水洗大便器100は、便器本体2と、タンク装置4と、局部洗浄装置48と、を有し、タンク装置は、貯水タンク10と、この貯水タンクの上部に連通可能に設けられて給水部の給水管6が接続される小タンク124と、を備えており、小タンクは、貯水タンクの上部に設けられた筒状のハウジング部150と、カバー部152と、ハウジング部の内側と外側とを通気させる通気口156を含む通気路154と、を備えており、カバー部の天面には、ハウジング部内で発生した水蒸気による結露水を通気路以外のハウジング部内に導く結露導水部Gが設けられている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、
汚物を受けるボウル部と、このボウル部の上縁に形成されたリム部と、上記ボウル部内の汚物を排出する排水トラップ部と、を備えた便器本体と、
上記便器本体の後方に設けられて上記便器本体に洗浄水を供給するタンク装置と、
上記便器本体の後方側上面に設けられて上記タンク装置に隣接して配置された局部洗浄装置と、を有し、
上記タンク装置は、給水源から供給された洗浄水を給水する給水部と、
上記便器本体の後方且つ床面よりも上方に設けられ、上記便器本体に供給する洗浄水を貯水する貯水タンク本体と、
この貯水タンク本体の上部に連通可能に設けられて上記給水部の給水管が接続される小タンクと、を備えており、
上記小タンクは、上記貯水タンク本体の上部に設けられた筒状のハウジング部と、このハウジング部の上方を覆うように設けられたカバー部と、上記ハウジング部又は上記カバー部の少なくとも一方側に設けられて上記ハウジング部の内側と外側とを通気させる通気口を含む通気路と、を備えており、
上記カバー部の天面には、上記ハウジング部内で発生した水蒸気による結露水を上記通気路以外の上記ハウジング部内に導く結露導水部が設けられていることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記結露導水部は、平面視において、上記ハウジング部内における上記通気路よりも内側の領域に結露水を導くように構成されている請求項1記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記小タンクは、さらに、上記カバー部の天面における上記結露導水部の外側から上方及び/又は下方に延びて上記通気路を形成する縦壁部を備えている請求項1又は2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記縦壁部は、上記カバー部の天面における上記結露導水部の外側から少なくとも下方に延びて上記通気路を形成しており、
上記結露導水部は、結露水を上記カバー部の天面の内側から外側に向けて上記通気路以外の上記ハウジング部内の領域に導くように構成されている請求項3記載の水洗大便器。
【請求項5】
上記結露導水部は、上記カバー部の天面の内側から外側に向かって下り傾斜する傾斜面を備えている請求項1乃至4の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項6】
上記カバー部は、その側壁が上記ハウジング部の側壁よりも内側に位置するように上記ハウジング部内の上部に取り付けられている請求項4又は5に記載の水洗大便器。
【請求項7】
上記小タンクは、上記局部洗浄装置の後方側に配置されており、上記通気路は、上記局部洗浄装置に対して遠位させるように上記小タンクの前後方向の中央部よりも後方側に配置されている請求項1乃至6の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項8】
上記通気路は、上記ハウジング部内の外側領域から上記カバー部の天面まで延びた後、上記通気口が後方側に差し向けられるように形成されている請求項7記載の水洗大便器。
【請求項9】
上記通気口は、上記ハウジング部の後方側上縁において切り欠かれて形成されており、上記カバー部は、その上面が上記ハウジング部の上縁とほぼ面一な水平面となっている請求項6乃至8の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項10】
上記排水トラップ部は、平面視において、上記ボウル部に接続される入口部から上記ボウル部よりも後方の出口部に向かって前後方向に延びており、
上記貯水タンク本体は、上記排水トラップ部の上部に対して左右両側及び後方側から取り囲むように配置されている請求項1乃至9の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項11】
上記貯水タンク本体は、これを左右中央で二分割したときに容積が大きい側である大タンク本体部と、上記貯水タンク本体を左右中央で二分割したときに容積が小さい側である小タンク本体部と、を備えている左右非対称の形状であり、
上記小タンクは、上記大タンク本体部の上方に設けられている請求項1乃至10の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項12】
上記大タンク本体部は、上記排水トラップ部の後方側に配置される後方側大タンク本体部と、この後方側大タンク本体部から前方に延びて上記排水トラップ部の左右一方側に配置された前方側大タンク本体部と、上記後方側大タンク本体部から下方に延びる下方側大タンク本体部と、を備えており、
上記小タンク本体部は、上記排水トラップ部の後方側に配置される後方側小タンク本体部と、この後方側小タンク本体部から前方に延びて上記排水トラップ部の左右他方側に配置された前方側小タンク本体部と、を備えており、
上記前方側大タンク本体部の前端は、上記前方側小タンク本体部の前端よりも前方に配置されており、
上記下方側大タンク本体部の底面は、上記後方側小タンク本体部及び上記前方側小タンク本体部のそれぞれの底面よりも下方に位置しており、
上記小タンクは、上記前方側大タンク本体部の上方に設けられている請求項11記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器として、例えば、特許文献1、2に記載されているように、便器本体に供給する洗浄水を貯水する貯水タンクと、便器使用者の局部を洗浄する局部洗浄装置と、を備えているものが知られている。
これらの従来の水洗大便器においては、局部洗浄装置が便器本体におけるボウル部よりも後方の上面に配置されており、貯水タンクが局部洗浄装置の後方に配置されることにより、洗浄水タンク及び局部洗浄装置のそれぞれが便器本体の後方に組み込まれている。
また、特許文献1に記載されている従来の水洗大便器においては、密閉式の貯水タンクの外側の局部洗浄装置が収納されているケーシング内に吸気管が設けられている。これにより、ケーシング内の空気が吸気管により貯水タンク内に吸気されるようになっている。
さらに、貯水タンク内で生じた蒸気は、吸気管を通過することにより冷却されて結露水となり、下方のケーシングプレートに形成された排水路に落ちた後、この排水路により便器本体のボウル部へ導かれるようになっている。これにより、ケーシング内に収納されている局部洗浄装置が結露水によりショートする故障を防ぐことができるようになっている。
さらに、特許文献2に記載されている従来の水洗大便器においては、洗浄水の給排水時にタンク内の空気置換を行う吸排気口部が貯水タンクに設けられている。この吸排気口部は、タンクカバーに設けられた開口部に接続されており、タンクカバーと貯水タンクとの間の空間を介することなく、外気との空気置換を直接的に行うことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-68054号公報
【特許文献2】特開2011-144521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、近年、水洗大便器のデザイン性の向上と多様化に向けて、水洗大便器全体の上端高さを可能な限り低く設計する、いわゆる、「ローシルエット化」が課題となっている。
よって、いかに便器のローシルエット化を実現しつつ、便器洗浄を可能にする適切なタンク容量を確保するかが課題となる。
また、水洗大便器の貯水タンクの周辺には、貯水タンクや局部洗浄装置に給水する給水系の機能部やその関連機器(電子部品等を含む)、及びこれらを制御するコントローラ等の電子機器が設けられている。
よって、貯水タンクを便器本体の後方に設置して便器のローシルエット化を実現しようとした場合、便器本体後方の貯水タンクや局部洗浄装置、並びに、それらの周辺機器の設置スペースが、その後方の外部壁面(便器設置場所の壁面)との間で限られたスペースとなっている。
したがって、貯水タンク周辺の局部洗浄装置の機能部等の周辺機器の設備保護等の観点からも、便器本体の後方の限られた設置スペースを有効活用しながら、いかに貯水タンクと外部との通気対策や貯水タンク内の水蒸気による結露対策を取るかが重要な課題の1つとなっている。
また、特に、タンク装置の貯水タンク周辺の給水系機能部における電装機器や局部洗浄装置の機能部における電子部品等については、貯水タンク側からの結露水による漏水や湿気等の外的負荷に対する耐久性が低いという問題がある。
よって、これらの外的負荷に対して、貯水タンク周辺の給水系機能部や局部洗浄装置の機能部の信頼性を確保するかについても重要な課題の1つとなっている。
【0005】
そこで、本発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、貯水タンク側からの結露水の漏出を効果的に抑制することができ、タンク装置の関連機器や周辺機器の信頼性を確保することができる水洗大便器を提供すること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、汚物を受けるボウル部と、このボウル部の上縁に形成されたリム部と、上記ボウル部内の汚物を排出する排水トラップ部と、を備えた便器本体と、上記便器本体の後方に設けられて上記便器本体に洗浄水を供給するタンク装置と、上記便器本体の後方側上面に設けられて上記タンク装置に隣接して配置された局部洗浄装置と、を有し、上記タンク装置は、給水源から供給された洗浄水を給水する給水部と、上記便器本体の後方且つ床面よりも上方に設けられ、上記便器本体に供給する洗浄水を貯水する貯水タンク本体と、この貯水タンク本体の上部に連通可能に設けられて上記給水部の給水管が接続される小タンクと、を備えており、上記小タンクは、上記貯水タンク本体の上部に設けられた筒状のハウジング部と、このハウジング部の上方を覆うように設けられたカバー部と、上記ハウジング部又は上記カバー部の少なくとも一方側に設けられて上記ハウジング部の内側と外側とを通気させる通気口を含む通気路と、を備えており、上記カバー部の天面には、上記ハウジング部内で発生した水蒸気による結露水を上記通気路以外の上記ハウジング部内に導く結露導水部が設けられていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、例えば、貯水タンク本体内の洗浄水により水蒸気が発生して小タンク部内まで上昇した場合、或いは、小タンク自体のハウジング部内の洗浄水により水蒸気が発生して上昇した場合、このような上昇した水蒸気は、小タンクのカバー部の天面等に付着した後、冷却されて結露水となる。
そして、このような結露水は、小タンクのカバー部の天面に設けられた結露導水部により、通気路以外のハウジング部内に導かれる。
したがって、結露導水部に付着している結露水が通気路からハウジング部の外部へ漏出することを抑制することができる。
したがって、タンク装置に隣接して配置された局部洗浄装置や、小タンクの外側近傍に設けられた周辺機器や電装部品等が、小タンクから漏出した結露水の湿気に晒されて故障するリスクを低減させることができる。
これらの結果、貯水タンクや水受けハウジング側からの結露水の漏出を効果的に抑制することができ、タンク装置の関連機器や周辺機器の信頼性を確保することができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、上記結露導水部は、平面視において、上記ハウジング部内における上記通気路よりも内側の領域に結露水を導くように構成されている。
このように構成された本発明においては、結露導水部により、ハウジング部内における通気路よりも内側の領域に結露水を確実に導くことができる。
よって、結露導水部によりハウジング部内に導かれた結露水が通気路を経て通気口から漏出することを抑制することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記小タンクは、さらに、上記カバー部の天面における上記結露導水部の外側から上方及び/又は下方に延びて上記通気路を形成する縦壁部を備えている。
このように構成された本発明においては、結露導水部によりハウジング部内に導かれた結露水が、万一、通気路内に浸入したとしても、結露水が縦壁部を伝ってハウジング部内に戻されることになる。
したがって、結露導水部によりハウジング部内に導かれた結露水が通気路を経て通気口から漏出することを効果的に抑制することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記縦壁部は、上記カバー部の天面における上記結露導水部の外側から少なくとも下方に延びて上記通気路を形成しており、上記結露導水部は、結露水を上記カバー部の天面の内側から外側に向けて上記通気路以外の上記ハウジング部内の領域に導くように構成されている。
このように構成された本発明においては、小タンクのカバー部の天面に付着した結露水は、結露導水部によりカバー部の天面の内側から外側に向けて通気路以外のハウジング部内の領域に導かれる。
このとき、万一、カバー部の天面の内側から外側に導かれた結露水が、結露導水部の外側から下方に延びて通気路を形成する縦壁部に付着したとしても、結露水が縦壁部を伝って流下し、ハウジング部内に確実に戻されることになる。
したがって、結露水が通気路を経て通気口から漏出することをより効果的に抑制することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記結露導水部は、上記カバー部の天面の内側から外側に向かって下り傾斜する傾斜面を備えている。
このように構成された本発明においては、小タンクのカバー部の天面等に付着した結露水について、結露導水部の傾斜面による簡易な構造によってカバー部の天面の内側から外側に向かって導いた後、ハウジング部内に確実に導くことができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記カバー部は、その側壁が上記ハウジング部の側壁よりも内側に位置するように上記ハウジング部内の上部に取り付けられている。
このように構成された本発明においては、カバー部について、その側壁がハウジング部の側壁よりも内側に位置するようにハウジング部内の上部に取り付けられているため、小タンクのカバー部の天面等に付着してカバー部の天面の内側から外側に向かって導かれた結露水は、カバー部の側壁に沿って流下することができる。
これにより、結露水をハウジング部の側壁よりも内側の領域内に確実に導くことができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、上記小タンクは、上記局部洗浄装置の後方側に配置されており、上記通気路は、上記局部洗浄装置に対して遠位させるように上記小タンクの前後方向の中央部よりも後方側に配置されている。
このように構成された本発明においては、局部洗浄装置の後方側に配置された小タンクについて、通気路を局部洗浄装置に対して遠位させるように小タンクの前後方向の中央部よりも後方側に配置したことにより、万一、ハウジング部内の結露水が通気路から小タンクの外部に漏出したとしても、通気路が局部洗浄装置に対して遠位した位置に配置されているため、局部洗浄装置が小タンクから漏出した結露水の湿気に晒されるリスクを低減させることができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、上記通気路は、上記ハウジング部内の外側領域から上記カバー部の天面まで延びた後、上記通気口が後方側に差し向けられるように形成されている。
このように構成された本発明においては、通気路がハウジング部内の外側領域からカバー部の天面まで延びた後、通気口が後方側に差し向けられるように形成されているため、ハウジング部内の結露水が通気路を経て通気口から漏出し難くすることができる。
また、通気路を局部洗浄装置に対して遠位させて配置したことに加えて、通気口が後方側に差し向けられているため、万一、ハウジング部内の結露水が通気口から小タンクの外部に漏出したとしても、局部洗浄装置が小タンクから漏出した結露水の湿気に晒されるリスクを効果的に低減させることができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、上記通気口は、上記ハウジング部の後方側上縁において切り欠かれて形成されており、上記カバー部は、その上面が上記ハウジング部の上縁とほぼ面一な水平面となっている。
このように構成された本発明においては、通気口がハウジング部の後方側上縁において切り欠かれて形成されており、カバー部の上面がハウジング部の上縁とほぼ面一な水平面となっているため、小タンクの高さ方向の寸法を抑制することができる。
したがって、タンク装置全体や水洗大便器全体のローシルエット化及び小型化を実現することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、上記排水トラップ部は、平面視において、上記ボウル部に接続される入口部から上記ボウル部よりも後方の出口部に向かって前後方向に延びており、上記貯水タンク本体は、上記排水トラップ部の上部に対して左右両側及び後方側から取り囲むように配置されている。
このように構成された本発明においては、貯水タンク本体が排水トラップ部の上部に対して左右両側及び後方側から取り囲むように配置されているため、便器本体の後方の限られたスペースを有効活用して、貯水タンク本体を配置することができる。
したがって、貯水タンク本体のタンク容量をより大きく確保しつつ、タンク装置全体や水洗大便器全体のローシルエット化及び小型化を実現することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、上記貯水タンク本体は、これを左右中央で二分割したときに容積が大きい側である大タンク本体部と、上記貯水タンク本体を左右中央で二分割したときに容積が小さい側である小タンク本体部と、を備えている左右非対称の形状であり、上記小タンクは、上記大タンク本体部の上方に設けられている。
このように構成された本発明においては、貯水タンク本体を大タンク本体部と小タンク本体部とによる左右非対称の形状にすると共に、小タンクについて、貯水タンク本体の大タンク本体部の上方に設けることにより、便器本体の後方の限られたスペースを有効活用して、貯水タンク本体のタンク容量をより大きく確保することができる。
また、タンク装置全体や水洗大便器全体のローシルエット化及び小型化を実現することができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、上記大タンク本体部は、上記排水トラップ部の後方側に配置される後方側大タンク本体部と、この後方側大タンク本体部から前方に延びて上記排水トラップ部の左右一方側に配置された前方側大タンク本体部と、上記後方側大タンク本体部から下方に延びる下方側大タンク本体部と、を備えており、上記小タンク本体部は、上記排水トラップ部の後方側に配置される後方側小タンク本体部と、この後方側小タンク本体部から前方に延びて上記排水トラップ部の左右他方側に配置された前方側小タンク本体部と、を備えており、上記前方側大タンク本体部の前端は、上記前方側小タンク本体部の前端よりも前方に配置されており、上記下方側大タンク本体部の底面は、上記後方側小タンク本体部及び上記前方側小タンク本体部のそれぞれの底面よりも下方に位置しており、上記小タンクは、上記前方側大タンク本体部の上方に設けられている。
このように構成された本発明においては、貯水タンク本体について、大タンク本体部の後方側大タンク本体部、前方側大タンク本体部及び下方側大タンク本体部、並びに、小タンク本体部の後方側小タンク本体部及び前方側小タンク本体部のそれぞれによって、左右非対称の形状にすることができると共に、小タンクが前方側大タンク本体部の上方に設けられているため、小タンクが占有するスペースを抑制することができる。
したがって、便器本体の後方の限られたスペースを有効活用して、貯水タンク本体のタンク容量をより大きく確保することができる。
また、タンク装置全体や水洗大便器全体のローシルエット化及び小型化を実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の水洗大便器によれば、貯水タンク側からの結露水の漏出を効果的に抑制することができ、タンク装置の関連機器や周辺機器の信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態による水洗大便器を斜め後方且つ上方から見た概略斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態による水洗大便器の全体構成図である。
【
図3】本発明の第1実施形態による水洗大便器のタンクユニットの部分を拡大した部分拡大平面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態による水洗大便器の貯水タンクを斜め後方且つ上方から見た斜視図である。
【
図6】本発明の第1実施形態による水洗大便器の貯水タンクの背面図である。
【
図7】
図3のVII-VII線に沿った断面図であり、本発明の第1実施形態による水洗大便器における便器本体の後方側の上面に局部洗浄装置が設けられた状態を示す。
【
図8】
図7に示す本発明の第1実施形態による水洗大便器の水受けハウジング部分を拡大した部分拡大側面断面図である。
【
図9】本発明の第2実施形態による水洗大便器の水受けハウジングを斜め後方かつ上方から見た斜視図である。
【
図11】本発明の第3実施形態による水洗大便器の水受けハウジングを斜め前方かつ上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便器について説明する。
まず、
図1は、本発明の第1実施形態による水洗大便器を斜め後方且つ上方から見た概略斜視図である。また、
図2は、本発明の第1実施形態による水洗大便器の全体構成図である。
図1及び
図2に示すように、本発明の第1実施形態による水洗大便器1は、陶器製の便器本体2と、その後方側に設けられたタンク装置4と、を備えている。
また、便器本体2は、汚物を受けるボウル部2aと、このボウル部2aの底部から延びてボウル部2a内の汚物を排出する排水トラップ部(排水トラップ管2b)と、ボウル部2aの上縁に形成されるリム部2cと、を備えている。
【0021】
つぎに、
図1及び
図2に示すように、タンク装置4は、その上流側及び下流側にそれぞれ接続された給水管6(給水部)及び吐水管8をそれぞれ備えている。
給水管6の上流側は、水道等の外部の給水源(図示せず)に接続されている。一方、給水管6の下流側は、タンク装置4の貯水タンク10(詳細は後述する)に接続されている。これらにより、給水管6から貯水タンク10に洗浄水が供給されるようになっている。
また、給水管6には、上流側から下流側に向かって、止水栓12、バルブユニット14がそれぞれ設けられている。
さらに、バルブユニット14は、給水管6に設けられた定流量弁16、並びに、この定流量弁16の下流側に設けられた開閉弁(ダイヤフラム弁17)を開閉する電磁弁18をそれぞれ含む。
【0022】
つぎに、
図1及び
図2に示すように、タンク装置4は、さらに、給水管6のバルブユニット14の下流側に接続されている連結ユニット20と、この連結ユニット20の下流側に接続されて貯水タンク10を含むタンクユニット22とを備えている。
バルブユニット14において、給水管6内の洗浄水が定流量弁16により流量が一定に調整されるようになっている。
その後、電磁弁18が電磁的に開弁し、開閉弁(ダイヤフラム弁17)により給水管6の流路が開放されると、給水管6内の洗浄水が連結ユニット20を経てタンクユニット22に供給されるようになっている。
すなわち、バルブユニット14全体は、給水管6と共に、水道等の給水源から供給された洗浄水を貯水タンク10に給水する給水部として機能するようになっている。
【0023】
図2に示すように、連結ユニット20は、水受けハウジング24(小タンク)と、オーバーフロー管26と、逆止弁28と、を備えている。
また、水受けハウジング24は、その下方開口部24aがタンクユニット22の貯水タンク10の上方開口部10aに着脱可能に接続されている。
なお、水受けハウジング24の詳細については、後述する。
【0024】
つぎに、オーバーフロー管26は、水受けハウジング24の側壁の一部に設けられたオーバーフロー口24bと吐水管8とを接続している。
吐水管8は、その上流側がタンク装置4のポンプ30に接続された接続管(洗浄水供給管)であり、その下流側が便器本体2のリム部2cの内部のリム導水路2dに接続されている。
さらに、逆止弁28は、オーバーフロー口24bに設けられており、水受けハウジング24内の洗浄水がオーバーフロー口24bからオーバーフロー管26に流入することを可能にする一方、オーバーフロー管26内の洗浄水が水受けハウジング24内へ逆流することを妨げることができるようになっている。
【0025】
つぎに、
図2に示すように、タンクユニット22は、貯水タンク10、ポンプ30、フロートスイッチ32、水抜き栓34、及び、コントローラC等をそれぞれ備えている。
ポンプ30は、吐水管8の上流側に接続されている通水管36の一部(途中)に設けられている。この通水管36の上流端36aは、貯水タンク10内に設けられた吸引管38の下流端38aに接続されている。
【0026】
貯水タンク10内に貯水されている洗浄水は、ポンプ30が作動することにより、吸引管38から通水管36内に吸引された後、ポンプ30を経て吐水管8に圧送されるようになっている。
これにより、貯水タンク10からポンプ30により吐水管8に供給された洗浄水のうちのすべてがリム導水路2dの入口2eからリム導水路2d内に供給されるようになっている。
そして、リム導水路2d内の洗浄水はリム導水路2dの下流端のリム吐水口2fからボウル部2a内に吐水され、便器洗浄(いわゆる、リム吐水100%による便器洗浄)が行われるようになっている。
すなわち、これらの通水管36及び吐水管8のそれぞれは、貯水タンク10からポンプ30によって圧送された洗浄水を便器本体2に供給する洗浄水供給管として機能するようになっている。
【0027】
フロートスイッチ32は、貯水タンク10内の水位を検知するものである。バルブユニット14の電磁弁18の開閉動作は、フロートスイッチ32が検知した貯水タンク10内の水位に基づいてコントローラCにより制御されるようになっている。
また、ポンプ30の作動についても、フロートスイッチ32が検知した貯水タンク10内の水位に基づいてコントローラCにより制御されるようになっている。
例えば、フロートスイッチ32が検知した貯水タンク10内の水位が所定以下である場合には、電磁弁18が開弁して給水管6が開放され、ポンプ30が作動されるようになっている。
そして、貯水タンク10内の水位が所定水位まで到達すると、電磁弁18が閉弁して給水管6が閉鎖され、ポンプ30が停止されるようになっている。
さらに、コントローラCの制御により、給水管6から貯水タンク10への給水中にポンプ30を駆動して、貯水タンク10から便器本体2に洗浄水を圧送することができ、給水管6から貯水タンク10への給水とポンプ30から便器本体2への洗浄水の供給を同時に行うことができる。
【0028】
水抜き栓34は、貯水タンク10の底面に設けられている。この水抜き栓34は、通常使用時では、常時閉鎖されており、必要に応じて開放され、貯水タンク10内の洗浄水を外部に排出することができるようになっている。
【0029】
つぎに、
図3~
図6を参照して、タンクユニット22の貯水タンク10の詳細について説明する。
図3は、本発明の第1実施形態による水洗大便器のタンクユニットの部分を拡大した部分拡大平面図である。また、
図4は、
図3のIV-IV線に沿った断面図である。
まず、
図3及び
図4に示すように、タンクユニット22の貯水タンク10は、単一のタンク本体40と、このタンク本体40の外側を覆う防露材42とを備えている。
つぎに、
図5は、本発明の第1実施形態による水洗大便器の貯水タンクを斜め後方且つ上方から見た斜視図である。また、
図6は、本発明の第1実施形態による水洗大便器の貯水タンクの背面図である。
図3~
図6に示すように、タンクユニット22の貯水タンク10を左右中央で二分割する仮想の鉛直面を「鉛直面A1」とすると、貯水タンク10の単一のタンク本体40及びその外側の防露材42は、鉛直面A1に対して左右に大タンク部44及び小タンク部46をそれぞれ備えており、鉛直面A1によって、大タンク部44と小タンク部46とに左右に二分割されている。
すなわち、
図6に示すように、大タンク部44は、タンク本体40及び防露材42を背面側から見て鉛直面A1の左側に配置され、小タンク部46は、タンク本体40及び防露材42を背面側から見て鉛直面A1の右側に配置されており、大タンク部44の容積V1は、小タンク部46の容積V2よりも大きく設定(V1>V2)されている。
これにより、貯水タンク10は、大タンク部44と小タンク部46とにより左右非対称の形状(平面視において概ねC字形又はU字形の異形状)となっている。
【0030】
また、
図1、
図3及び
図4に示すように、便器本体2の排水トラップ管2bは、ボウル部2aの下方に接続される入口部2gからボウル部2aよりも後方の出口部2hに向かって前後方向に延びている。
そして、
図3~
図6に示すように、貯水タンク10の大タンク部44は、排水トラップ管2bの後方側に配置される後方側大タンク部44aと、この後方側大タンク部44aから前方に延びて排水トラップ管2bの左右一方側(便器本体2の正面側から見て右側)に配置された前方側大タンク部44bと、後方側大タンク部44aから下方に延びる下方側大タンク部44cと、を備えている。
つぎに、
図3~
図6に示すように、貯水タンク10の小タンク部46は、排水トラップ管2bの後方側に配置される後方側小タンク部46aと、この後方側小タンク部46aから前方に延びて排水トラップ管2bの左右他方側(便器本体2の正面側から見て左側)に配置された前方側小タンク部46bと、を備えている。
すなわち、
図1、
図3及び
図4に示すように、貯水タンク10は、排水トラップ管2bの上部に対して左右両側及び後方側から取り囲むように配置されている。
【0031】
つぎに、
図4に示すように、便器本体2は、ボウル部2aよりも後方側の領域において、大タンク部44及び小タンク部46のそれぞれを床面よりも上方の位置で収容する大タンク収容部S1及び小タンク収容部S2をそれぞれ備えている。
すなわち、大タンク収容部S1は、便器本体2のボウル部2aよりも後方側の領域において、左右中央で二分割した鉛直面A1に対して左右一方側(便器本体2を正面側から見て鉛直面A1の右側)に形成されている。
一方、小タンク収容部S2は、便器本体2のボウル部2aよりも後方側の領域において、鉛直面A1に対して左右他方側(便器本体2を正面側から見て鉛直面A1の左側)に形成されている。
【0032】
また、
図4~
図6に示すように、大タンク部44及び小タンク部46のそれぞれが大タンク収容部S1及び小タンク収容部S2のそれぞれに設置された状態では、大タンク部44の底面の最低位置(下方側大タンク部44cの底面44a最低位置P1)が、小タンク部46の底面の最低位置(後方側小タンク部46a及び前方側小タンク部46bの底面46cの最低位置P2)よりも下方に位置している。
さらに、
図4~
図6に示すように、大タンク部44及び小タンク部46のそれぞれが大タンク収容部S1及び小タンク収容部S2のそれぞれに設置された状態では、大タンク部44の上面の最高位置(前方側大タンク部44bの上面44eの最高位置P3)が、小タンク部46の後方側小タンク部46a及び前方側小タンク部46bの上面46dの最高位置P4よりも上方に位置し、かつ、便器本体2のリム部2cの上面2iよりも下方に位置している。
また、
図3~
図6に示すように、前方側大タンク部44bの前端44fの位置P5は、前方側小タンク部46bの前端46eの位置P6よりも前方に位置している。
【0033】
ちなみに、
図2及び
図4に示すように、吸引管38は、タンク本体40の大タンク部44の後方側大タンク部44a及び下方側大タンク部44c内の双方に亘って設けられている。そして、ポンプ30から上流側(側方)に延びる通水管36の上流端36aは、大タンク部44の一部である吸引管38の下流端38aに水密に接続されている。
また、
図3に示すように、ポンプ30から下流側(上方)に延びる通水管36の下流端には、吐水管8の上流端が接続されており、吐水管8の下流端(出口部8a)は、便器本体2の鉛直面A1に対して左右他方側(便器本体2を正面側から見て鉛直面A1よりも左側)のリム導水路2dの入口2eに接続されている。
【0034】
つぎに、
図4に示すように、大タンク部44は、その鉛直面A1側(左右中央側)の側壁面44gが大タンク収容部S1内における排水トラップ管2bの外側(排水トラップ管2bを正面側から見て右側)に配置されている。
同様に、小タンク部46は、その鉛直面A1側(左右中央側)の側壁面46fが小タンク収容部S2内における排水トラップ管2bの外側(排水トラップ管2bを正面側から見て左側)に配置されている。
また、
図4及び
図5に示すように、排水トラップ管2bは、便器本体2の左右中央に設けられており、通水管36の上流端36aは、大タンク部44の左右側面のうちの排水トラップ管2b側の側壁面44gに接続されている。
【0035】
さらに、
図3及び
図4に示すように、ポンプ30は、便器本体2のボウル部2aよりも後方で且つ排水トラップ管2bの上方に配置されている。
また、ポンプ30は、後方側大タンク部44a及び後方側小タンク部46aよりも前方側に配置されており、かつ、前方側大タンク部44bと前方側小タンク部46bとの間の左右方向のスペースに配置されている。
これにより、ポンプ30は、通水管36の上流端36a及び吐水管8の下流端(出口部8a)よりも便器本体2の左右中央側に設けられている。
【0036】
つぎに、
図1~
図8を参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便器1のタンク装置4における連結ユニット20の水受けハウジング24(小タンク)の詳細について説明する。
図7は、
図3のVII-VII線に沿った断面図であり、本発明の第1実施形態による水洗大便器における便器本体の後方側の上面に局部洗浄装置が設けられた状態を示す。また、
図8は、
図7に示す本発明の第1実施形態による水洗大便器の水受けハウジング部分を拡大した部分拡大側面断面図である。
まず、
図4、
図7及び
図8に示すように、本実施形態による水洗大便器1は、局部洗浄装置48は、使用者の局部を洗浄可能にする局部洗浄装置48を備えている。この局部洗浄装置48は、便器本体2におけるボウル部2aよりも後方側の上面2iに配置されている。
【0037】
つぎに、
図3、
図4、
図7及び
図8に示すように、連結ユニット20の水受けハウジング24(小タンク)は、局部洗浄装置48の機能部48aの後方側に隣接して配置されている。
具体的には、水受けハウジング24は、貯水タンク10(貯水タンク本体)の上部に設けられた筒状のハウジング部(ハウジング本体部50)と、このハウジング本体部50の上方を覆うように設けられた上蓋(カバー部52)と、ハウジング本体部50の内側と外側とを通気可能にする通気路54及び通気口56(詳細は後述する)と、をそれぞれ備えている。
まず、
図3、
図4、
図7及び
図8に示すように、水受けハウジング24のハウジング本体部50において、便器本体2の前方側から見て左側の側壁50aの上方には、給水管6が接続されている。この給水管6の下流側には、ハウジング本体部50の内部まで延びる給水ノズル58(給水部)が設けられている。
また、給水ノズル58の先端部には、下方に差し向けられた給水口58a(給水部)が設けられている。
さらに、ハウジング本体部50の側壁50aの下方のオーバーフロー口24bには、逆止弁28を介してオーバーフロー管26が接続されている。
ここで、ハウジング本体部50の底面に設けられた下方開口部24aと貯水タンク10(貯水タンク本体)の上方開口部10aとは、上下方向に延びる連通穴60によって互いに連通しており、給水口58aから吐水された洗浄水W1は、ハウジング本体部50の下方開口部24aから連通穴60を通過し、貯水タンク10の上方開口部10aから貯水タンク10内に給水されるようになっている。
【0038】
つぎに、
図8に示すように、水受けハウジング24のカバー部52は、ハウジング本体部50の上方に天面52aを形成している。このカバー部52の天面52aには、ハウジング本体部50内で発生した水蒸気によって付着した結露水W2を通気路54以外のハウジング本体部50内に導く結露導水部Gが設けられている。
また、結露導水部Gは、カバー部52の天面52aの中央部に設けられて下方に突出するほぼ円錐状の中央突起62を備えている。
さらに、結露導水部Gは、中央突起62の上縁から天面52aに沿って上方内側から下方外側に向かって下り傾斜する外側傾斜面64を備えている。
また、結露導水部Gは、外側傾斜面64の外縁から下方に突出する外側突起66を備えている。
さらに、結露導水部Gは、外側突起66よりも外側の外縁部から下方に延びる縦壁部(外周壁68)を備えている。
【0039】
これらにより、
図8に示すように、カバー部52の天面52aの中央突起62の表面に付着している結露水W2は、突起62の上縁から中央下端部に向かって傾斜する内側傾斜面62aに沿って下方に導かれた後、ハウジング本体部50内における通気路54の領域(通気路領域R1)よりも内側の領域(内側領域R2)内に落下するようになっている。
また、
図8に示すように、カバー部52の天面52aの外側傾斜面64に付着している結露水W2は、外側傾斜面64に沿って上方内側から下方外側に向かって導かれた後、外側突起66に沿ってハウジング本体部50内における内側領域R2に落下するようになっている。
さらに、
図8に示すように、カバー部52の天面52aの外側傾斜面64における外周壁68の内面68b付近に付着している結露水W2についても、外周壁68の内面68bに沿ってハウジング本体部50内における内側領域R2に落下するようになっている。
【0040】
つぎに、
図3及び
図8に示すように、カバー部52における後方側の縦壁部(外周壁68)の上端には、上方に延びる後方側外周壁70が形成されている。
この後方側外周壁70は、その周方向に所定の幅L1で天面52aよりも上方に延びており、その上端部70aがハウジング本体部50の上端50bよりも上方に位置し、外側に屈曲している。
さらに、
図8に示すように、カバー部52については、その側壁(外周壁68,70)の外面68a,70bがハウジング本体部50の側壁50aの内面50cよりも内側に位置するように、ハウジング本体部50に対して上方から取り付けられている。
これにより、カバー部52の後方側の外周壁68から上方に延びる後方側外周壁70の外面70bとその外側に対向するハウジング本体部50の側壁50aの内面との間には、通気路54が形成されるようになっている。
すなわち、カバー部52における後端側の縦壁部(後方側外周壁70)及びその後方に対向するハウジング本体部50の側壁50aのそれぞれは、カバー部52の天面52aの結露導水部Gの外側の領域において上下方向に延びる通気路54を形成する壁面となっている。
なお、本実施形態では、カバー部52がハウジング本体部50に対して別部材として取り外し可能に設けられた形態について説明するが、このような形態に限定されず、カバー部がハウジング本体部の上方に一体に形成された形態であってもよい。
【0041】
つぎに、
図8に示すように、カバー部52の縦壁部(後方側外周壁70)の上端部70aの下側面(天面)とその下方に対向するハウジング本体部50の上端面50bとの間には、通気口56が形成されるようになっている。
また、ハウジング本体部50及びカバー部52は局部洗浄装置48の後方側に配置されているため、通気路54については、局部洗浄装置48に対して遠位させるようにハウジング本体部50及びカバー部52の前後方向の中央部C1よりも後方側に配置されている。
これにより、通気路54は、ハウジング本体部50内の外側領域R1からカバー52部の後方側外周壁70の上端部70aの下側面(天面)まで延びた後、通気口56が後方側に差し向けられるように形成されている。
【0042】
つぎに、
図1~
図8を参照して、上述した本発明の第1実施形態による水洗大便器1の作用について説明する。
本実施形態による水洗大便器1によれば、例えば、貯水タンク10内の洗浄水により水蒸気が発生して水受けハウジング24内まで上昇した場合、或いは、水受けハウジング24自体のハウジング本体部50内の洗浄水により水蒸気が発生して上昇した場合、このような上昇した水蒸気は、水受けハウジング24のカバー部52の天面52a等に付着した後、冷却されて結露水W2となる。
そして、このような結露水W2は、水受けハウジング24のカバー部52の天面52aに設けられた結露導水部Gにより、通気路54以外のハウジング本体部50内の領域(ハウジング本体部50内における通気路54の領域R1よりも内側の領域R1)に導かれる。
したがって、結露導水部Gに付着している結露水W2が通気路54からハウジング本体部50の外部へ漏出することを抑制することができる。
したがって、タンク装置4に隣接して配置された局部洗浄装置48や、水受けハウジング24の外側近傍に設けられた周辺機器や電装部品等が、水受けハウジング24から漏出した結露水の湿気に晒されて故障するリスクを低減させることができる。
これらの結果、貯水タンク10や水受けハウジング24側からの結露水の漏出を効果的に抑制することができ、タンク装置4の関連機器や周辺機器の信頼性を確保することができる。
【0043】
つぎに、本実施形態による水洗大便器1によれば、結露導水部Gによりハウジング本体部50内に導かれた結露水W2が、万一、通気路54内に浸入したとしても、結露水W2がカバー部52の縦壁部(外周壁68)の外面又はその後方のハウジング本体部50の側壁50a内面を伝ってハウジング本体部50内に戻されることになる。
したがって、結露導水部Gによりハウジング本体部50内に導かれた結露水W2が通気路54を経て通気口56から漏出することを効果的に抑制することができる。
【0044】
つぎに、本実施形態による水洗大便器1によれば、水受けハウジング24のカバー部52の天面52aに付着した結露水W2は、結露導水部Gによりカバー部52の天面aの内側から外側に向けて通気路54の領域R1以外のハウジング本体部50内の内側領域R2に導かれる。
このとき、万一、カバー部52の天面52aの内側から外側に導かれた結露水W2が、結露導水部G2の外側から下方に延びる縦壁部(外周壁68や通気路54を形成する後方側外周壁70等)に付着したとしても、結露水W2が外周壁68や後方側外周壁70の内面68b等を伝って流下し、ハウジング本体部50内の内側領域R2内に確実に戻されることになる。
したがって、結露水W2が通気路54を経て通気口56から漏出することをより効果的に抑制することができる。
【0045】
つぎに、本実施形態による水洗大便器1によれば、結露導水部Gが、中央突起62の上縁から天面52aに沿って上方内側から下方外側に向かって下り傾斜する外側傾斜面64を備えている。
これにより、水受けハウジング24のカバー部52の天面52a等に付着した結露水W2について、結露導水部Gの外側傾斜面64による簡易な構造によってカバー部52の天面52aの内側から外側に向かって導いた後、ハウジング本体部50内に確実に導くことができる。
【0046】
つぎに、本実施形態による水洗大便器1によれば、カバー部52について、その側壁(外周壁68)がハウジング本体部50の側壁50aよりも内側に位置するようにハウジング本体部50内の上部に取り付けられている。
これにより、水受けハウジング24のカバー部52の天面52a等に付着し、結露導水部Gによりカバー部52の天面53aの内側から外側に向かって導かれた結露水W2は、カバー部52の側壁(外周壁68)に沿って流下することができる。
よって、結露水W2をハウジング本体部50の側壁50aよりも内側の領域R2内に確実に導くことができる。
【0047】
つぎに、本実施形態による水洗大便器1によれば、局部洗浄装置48の後方側に配置された水受けハウジング24について、通気路54を局部洗浄装置48に対して遠位させるように水受けハウジング24の前後方向の中央部C1よりも後方側に配置した。
これにより、万一、ハウジング本体部50内の結露水W2が通気路54から水受けハウジング24の外部に漏出したとしても、通気路54が局部洗浄装置48に対して遠位した位置に配置されているため、局部洗浄装置48が水受けハウジング24から漏出した結露水の湿気に晒されるリスクを低減させることができる。
【0048】
つぎに、本実施形態による水洗大便器1によれば、通気路54がハウジング本体部50内の外側領域R1からカバー部52の後方側外周壁70の上端部70aの下側面(天面)まで延びた後、通気口56が後方側に差し向けられるように形成されている。
これにより、ハウジング本体部50内の結露水W2が通気路54を経て通気口56から漏出し難くすることができる。
また、通気路54を局部洗浄装置48に対して遠位させて配置したことに加えて、通気口56が後方側に差し向けられているため、万一、ハウジング本体部50内の結露水W2が通気口56から水受けハウジング24の外部に漏出したとしても、局部洗浄装置48が、水受けハウジング24の通気口56から漏出した結露水W2の湿気に晒されるリスクを効果的に低減させることができる。
【0049】
つぎに、本実施形態による水洗大便器1によれば、貯水タンク10が排水トラップ管2bの上部に対して左右両側及び後方側から取り囲むように配置されている。
これにより、便器本体2の後方の限られたスペースを有効活用して、貯水タンク10を配置することができる。
また、貯水タンク10について、大タンク本体部(大タンク部44)の後方側大タンク44a、前方側大タンク部44b及び下方側大タンク部44c、並びに、小タンク本体部(小タンク部46)の後方側小タンク部46a及び前方側小タンク部46bのそれぞれによって、左右非対称の形状にすることができると共に、水受けハウジング24が前方側大タンク部44bの上方に設けられている。これにより、水受けハウジング24が占有するスペースを抑制することができる。
したがって、便器本体2の後方の限られたスペースを有効活用して、貯水タンク10のタンク容量をより大きく確保することができる。
さらに、タンク装置4全体や水洗大便器1全体のローシルエット化及び小型化を実現することができる。
【0050】
つぎに、
図9及び
図10を参照して、本発明の第2実施形態による水洗大便器について説明する。
図9は、本発明の第2実施形態による水洗大便器の水受けハウジングを斜め後方かつ上方から見た斜視図である。また、
図10は、
図9のX-X線に沿った断面図である。
ここで、
図9及び
図10に示す本発明の第2実施形態による水洗大便器100において、上述した本発明の第1実施形態による水洗大便器1と同一部分には同一の符号を付し、これらの説明については省略する。
まず、
図9及び
図10に示すように、本発明の第2実施形態による水洗大便器100においては、カバー部152が、その側壁(前方側縦壁部168及び後方側縦壁部170)の外面がハウジング本体部150の側壁150aの内面よりも内側に位置するように、ハウジング本体部150に対して上方から取り付けられている。
また、前方側縦壁部168及び後方側縦壁部170のそれぞれの内面においては、これらに付着した結露水を内面に沿って流下させ、通気路154以外のハウジング本体部150内に落下させて導く結露導水部Gとして機能するようになっている。
【0051】
つぎに、
図9及び
図10に示すように、本実施形態による水洗大便器100においては、カバー部152の後方側縦壁部170の外面とその外側に対向するハウジング本体部150の側壁150aの内面との間には、通気路154が形成されるようになっている。
すなわち、カバー部152の後方側縦壁部170の外面170b及びその後方に対向するハウジング本体部150の側壁150aの内面150cのそれぞれは、ハウジング本体部150内の領域R101の後方側の領域R102において上下方向に延びる通気路154を形成する壁面となっている。
また、水受けハウジング124の通気口156は、ハウジング本体部150の後方側上縁に切り欠かれて形成されている。
さらに、通気路154は、ハウジング本体部150内の外側領域R101からカバー152部の後方側縦壁部170の上端部170a(天面152a)まで延びた後、後方側の通気口56が局部洗浄装置48に対して遠位側(後方側)に差し向けられるように形成されている。
【0052】
つぎに、
図9及び
図10に示すように、本実施形態による水洗大便器100においては、カバー部152の上面(最上面152b)が、ハウジング本体部150の上縁(側壁150aの上端面150b)とほぼ面一となる水平面となっている。
また、カバー部152の後方側縦壁部170は、天面152aの後方側から下方に向けて周方向に所定の幅L101で延びており、結露導水部Gとしても機能するようになっている。
さらに、
図9及び
図10に示すように、カバー部152における最上面152bの下側の天面152aには、結露導水部Gとして傾斜面164が設けられている。この傾斜面164は、カバー部152の中央部C101と前端152cとの間の途中位置P101から外側に向かって下り傾斜している。
【0053】
上述した本発明の第2実施形態による水洗大便器100によれば、水受けハウジング124のカバー部152の天面152aに付着した結露水W2は、結露導水部Gによりカバー部152の天面152aの傾斜面164に沿って上方内側から下方外側に導かれる。
そして、この結露水W2は、カバー部152の前方側縦壁部168の内面168bに沿って流下し、ハウジング本体部150の内側領域R102内に落下する。
また、カバー部152の天面152aの後方側縦壁部170の外面170b及び内面170c及び外面に付着している結露水W2についても、後方側縦壁部170の内面に沿って流下し、ハウジング本体部150の内側領域R102内に落下する。
したがって、結露水W2が通気路154を経て通気口156から漏出することを抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態による水洗大便器100によれば、通気口156がハウジング本体部150の後方側上縁150bにおいて切り欠かれて形成されており、カバー部152の最上面152bがハウジング本体部150の上端面150bとほぼ面一な水平面となっている。
これにより、水受けハウジング124の高さ方向の寸法を抑制することができるため、タンク装置4全体や水洗大便器1全体のローシルエット化及び小型化を実現することができる。
【0055】
つぎに、
図11及び
図12を参照して、本発明の第3実施形態による水洗大便器について説明する。
図11は、本発明の第3実施形態による水洗大便器の水受けハウジングを斜め前方かつ上方から見た斜視図である。また、
図12は、
図11のXII-XII線に沿った断面図である。
ここで、
図11及び
図12に示す本発明の第3実施形態による水洗大便器200において、上述した本発明の第1実施形態による水洗大便器1と同一部分には同一の符号を付し、これらの説明については省略する。
図11及び
図12に示すように、本発明の第3実施形態による水洗大便器200においては、通気口256を形成するカバー部252の後方側縦壁部270が、ハウジング本体部50及びカバー部52の前後方向の中央部C1よりも後方側に設けられている。
また、後方側縦壁部270は、カバー部252の上壁(天面252a及び上面252b)から上方に突出しており、カバー部252に対して上方に突出する通気路254が形成されている。
さらに、後方側縦壁部270の上端が前方側に差し向けられるように形成され、前方側に開口する通気口256が形成されている。
このように、通気口256自体が、ハウジング本体部50及びカバー部52の前後方向の中央部C1よりも後方側に配置され、局部洗浄装置48に対して遠位側に離間するように配置されていれば、通気口256は、後方側に差し向けられていることに限られず、前方側に差し向けられてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 本発明の第1実施形態による水洗大便器
2 便器本体
2a ボウル部
2b 排水トラップ管(排水トラップ部)
2c リム部
2d リム導水路
2e リム導水路の入口
2f リム吐水口
2g 排水トラップ管の入口部
2h 排水トラップ管の出口部
2i リム部の上面
4 タンク装置
6 給水管(給水部)
8 吐水管
8a 吐水管の出口部
10 貯水タンク(貯水タンク本体)
10a 上方開口部
10b 貯水タンクの外側上面
12 止水栓
14 バルブユニット(給水部)
16 定流量弁
17 ダイヤフラム弁
18 電磁弁
20 連結ユニット
22 タンクユニット
24 水受けハウジング(小タンク)
24a 下方開口部
24b オーバーフロー口
26 オーバーフロー管
28 逆止弁
30 ポンプ
32 フロートスイッチ
32a 検知部
34 水抜き栓
36 通水管(外側通水管)
36a 通水管の上流端
38 吸引管
38a 吸引管の下流端
40 タンク本体
40a タンク本体の底面
42 防露材
42a 防露材の外側上面
44 大タンク部(大ダンク本体部)
44a 後方側大タンク部(後方側大タンク本体部)
44b 前方側大タンク部(前方側大タンク本体部)
44c 下方側大タンク部(下方側大タンク本体部)
44d 下方側大タンク部の底面
44e 前方側大タンク部の上面
44f 前方側大タンク部の前端
44g 大タンク部の側壁面
46 小タンク部(小タンク本体部)
46a 後方側小タンク部(後方側小タンク本体部)
46b 前方側小タンク部(前方側小タンク本体部)
46c 後方側小タンク部及び前方側小タンク部の底面
46d 後方側小タンク部の上面
46e 前方側小タンク部の前端
46f 小タンク部の側壁面
48 局部洗浄装置
48a 局部洗浄装置の機能部
50 ハウジング本体部(ハウジング部)
50a ハウジング本体部の側壁
50b ハウジング本体部の上端、上端面
50c ハウジング本体部の側壁の内面
52 水受けハウジングのカバー部
52a カバー部の天面
54 通気路
56 通気口
58 給水ノズル(給水部)
58a 給水口(給水部)
60 連通穴
62 中央突起(結露導水部)
62a 内側傾斜面
64 外側傾斜面(結露導水部、傾斜面)
66 外側突起(結露導水部)
68 外周壁(カバー部の縦壁部、側壁)
68a 外周壁の外面
68b 外周壁の内面
70 カバー部の後方側外周壁(縦壁部)
70a 後方側外周壁の上端部
70b 後方側外周壁の外面
100 本発明の第2実施形態による水洗大便器
124 水受けハウジング(小タンク)
150 ハウジング本体部
150a ハウジング本体部の側壁
150b ハウジング本体部の上端、上端面、後方側上縁
150c ハウジング本体部の側壁の内面
152 カバー部
152a カバー部の天面
152b カバー部の最上面(カバー部の上面)
152c カバー部の前端
154 通気路
156 通気口
164 傾斜面(結露導水部)
168 カバー部の前方側縦壁部(結露導水部、カバー部の縦壁部、側壁)
168a 前方側縦壁部の外面
168b 前方側縦壁部の内面
170 カバー部の後方側縦壁部(結露導水部、縦壁部)
170a 後方側縦壁部の上端部
170b 後方側縦壁部の外面
170c 後方側縦壁部の内面
200 本発明の第3実施形態による水洗大便器
224 水受けハウジング(小タンク)
250 ハウジング本体部
252 カバー部
252a カバー部の天面
252b カバー部の上面
254 通気路
256 通気口
270 カバー部の後方側縦壁部(縦壁部)
A1 貯水タンクを左右中央で二分割する鉛直面
B 衝突領域面(衝突部)
C コントローラ
C1 ハウジング本体部及びカバー部の前後方向の中央部
C101 カバー部の中央部
G 結露導水部
L1 通気口の周方向の幅
P1 大タンク部(下方側大タンク部)の底面の最低位置
P2 小タンク部(後方側小タンク部及び前方側小タンク部)の底面の最低位置
P3 大タンク部(前方側大タンク部)の上面の最高位置
P4 小タンク部(後方側小タンク部)の上面の最高位置
P5 前方側大タンク部の前端位置
P6 前方側小タンク部の前端位置
P101 カバー部の最上面における中央部と前端との間の途中位置
R1 通気路領域、本体部内の外側領域
R2 ハウジング本体部内の内側領域
R101 ハウジング本体部内の領域
R102 ハウジング本体部内の領域の後方側領域
S1 便器本体の大タンク収容部
S2 便器本体の小タンク収容部
V1 大タンク部の容積
V2 小タンク部の容積
W1 洗浄水
W2 結露水
WL 貯水タンク内の水位、水面