(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168489
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
E03D 11/02 20060101AFI20231116BHJP
E03D 5/10 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
E03D11/02 Z
E03D5/10
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023172019
(22)【出願日】2023-10-03
(62)【分割の表示】P 2019179748の分割
【原出願日】2019-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】生野 愛子
(72)【発明者】
【氏名】羽生 亜矢子
(72)【発明者】
【氏名】檜皮 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 謙治
(72)【発明者】
【氏名】石見 亘
(72)【発明者】
【氏名】安達 善勝
(57)【要約】
【課題】便器洗浄性能や汚物排出性能を低下させることなく発電を行うことができる水洗大便器を提供する。
【解決手段】本発明の水洗大便器1は、便器本体2と、洗浄水供給装置4と、を有し、洗浄水供給装置は、給水源から供給された洗浄水が通過する給水路56と、この給水路を開閉する電磁弁52を含み且つ給水路内の洗浄水を給止水する給水部34と、この給水部の電磁弁の動作を制御するコントローラ42と、を備えており、給水路は、給水部から給水された洗浄水のうち、便器本体のボウル部6内の便器洗浄に利用される洗浄水を便器本体に供給する主給水路56a,56bと、この主給水路から分岐し且つ便器本体で封水形成に利用される補給水を便器本体に供給する補給水路88,90と、を備えており、補給水路には、その補給水の水流W1を利用して発電する発電装置74が設けられている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、
汚物を受けるボウル部と、このボウル部内の汚物を排出する排出路と、を備え、これらのボウル部及び排出路内に封水を形成する便器本体と、
給水源と上記便器本体との間に接続され、上記給水源から供給された洗浄水を上記便器本体に供給する洗浄水供給装置と、を有し、
上記洗浄水供給装置は、上記給水源から供給された洗浄水が通過する給水路と、この給水路を開閉する電磁弁を含み且つ上記給水路内の洗浄水を給止水する給水部と、この給水部の電磁弁の動作を制御するコントローラと、を備えており、
上記給水路は、上記給水部から給水された洗浄水のうち、上記便器本体のボウル部内の便器洗浄に利用される洗浄水を上記便器本体に供給する主給水路と、この主給水路から分岐し且つ上記便器本体で封水形成に利用される補給水を上記便器本体に供給する補給水路と、を備えており、
上記補給水路には、その補給水の水流を利用して発電する発電装置が設けられていることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記洗浄水供給装置は、さらに、上記給水源から供給された洗浄水を貯水して上記便器本体に供給する貯水する貯水タンクと、この貯水タンク内に設けられて上記貯水タンク内の上限水位を上回った洗浄水を上記便器本体内にオーバーフローさせるオーバーフロー管と、を備えており、
上記主給水路は、上記給水部から上記貯水タンク内に延びる上流側主給水路と、この上流側主給水路の下流側に設けられてその下流端が上記便器本体の導水路と連通する下流側主給水路と、を備えており、
上記補給水路は、上記上流側主給水路から分岐した後、その下流端が上記オーバーフロー管内に吐水可能な補給水口を形成し、
上記発電装置は、上記オーバーフロー管の上端よりも上方に位置する上記補給水路に配置されている請求項1記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記補給水路は、上記給水路における上記主給水路から分岐する分岐部と、この分岐部から上記貯水タンク内の上方を延びる上流側補給水路と、この上流側補給水路の下流側に設けられて水平方向に延びる水平部分又は上流側から下流側に向かって下降する下降部分を備えた下流側補給水路と、を備えており、
上記発電装置は、上記下流側補給水路の上記水平部分又は上記下降部分に設けられて且つ補給水の水流により回転して発電に寄与する水車を備えている請求項2記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記発電装置の水車は、上記下流側補給水路における上流側から下流側に向かって下降する下降部分に設けられている請求項3記載水洗大便器。
【請求項5】
上記発電装置は、上記補給水路の補給水口よりも上流側に設けられて上記下流側補給水路内の補給水を整流化させるように構成されている請求項3又は4に記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器に係り、特に、発電装置を備えた水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器として、例えば、特許文献1に記載されているように、電源インフラのない環境下においても自動洗浄を実現する手段として、発電装置を備えているものが知られている。
このような従来の水洗大便器においては、発電装置が、便器本体に対して便器洗浄用の洗浄水を給水する給水装置における主給水路に設けられている。また、発電装置は、給水装置から便器本体への主給水路内を通過する便器洗浄用の洗浄水の水流により回転する水車を備えており、この水車の回転により発電が行なわれるようになっている。
また、発電装置によって発電された電力は、給水装置の主流路の開閉弁の動作や、これを制御するコントローラに利用され、便器本体の自動洗浄を実現することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されている従来の水洗大便器においては、発電装置が便器本体への主給水路に設けられているため、主給水路内の洗浄水が主給水路を通過する際に、圧力損失が生ずることになる。これにより、主給水路の発電装置を通過して便器本体に供給される便器洗浄用の洗浄水の瞬間流量[L/min]が低下してしまい、便器洗浄性能や汚物排出性能が低下してしまうおそれがあるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題を解決するためになされたものであり、水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を達成するために、本発明は、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、汚物を受けるボウル部と、このボウル部内の汚物を排出する排出路と、を備え、これらのボウル部及び排出路内に封水を形成する便器本体と、給水源と上記便器本体との間に接続され、上記給水源から供給された洗浄水を上記便器本体に供給する洗浄水供給装置と、を有し、上記洗浄水供給装置は、上記給水源から供給された洗浄水が通過する給水路と、この給水路を開閉する電磁弁を含み且つ上記給水路内の洗浄水を給止水する給水部と、この給水部の電磁弁の動作を制御するコントローラと、を備えており、上記給水路は、上記給水部から給水された洗浄水のうち、上記便器本体のボウル部内の便器洗浄に利用される洗浄水を上記便器本体に供給する主給水路と、この主給水路から分岐し且つ上記便器本体で封水形成に利用される補給水を上記便器本体に供給する補給水路と、を備えており、上記補給水路には、その補給水の水流を利用して発電する発電装置が設けられていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、便器洗浄を開始した際、コントローラの制御により給水部の電磁弁が開弁して給水路が開放される。これにより、給水源から洗浄水供給装置に供給された洗浄水は、給水部から給水路に供給される。
このとき、給水部から給水路に供給された洗浄水のうちの大半の洗浄水の主流(主洗浄水)が、便器洗浄用の洗浄水として主給水路を通過した後、便器本体に供給され、ボウル部内の便器洗浄に利用される。
これにより、便器本体のボウル部を洗浄し、ボウル部内の汚物を排出路から排出することができる。
一方、給水部から給水路に供給された洗浄水のうちの残部は、補給水として補給水路を通過した後、便器本体に供給され、便器本体のボウル部及び排出路内における封水形成に利用される。
これにより、次回の便器洗浄に備えて、便器本体のボウル部や排出路内に封水を形成することができる。
また、このとき、補給水路に設けられた発電装置においては、補給水路を通過する補給水の水流によって発電が行われ、その電力がコントローラ等を介して、例えば、電磁弁の開閉動作、或いは、他の周辺機器への供給電力として利用される。
ちなみに、仮に、発電装置を主給水路に設けた場合では、便器洗浄用の洗浄水が発電装置を通過した際の圧力損失等によって、洗浄水の瞬間流量[L/min]等が低下し、便器本体における便器洗浄性能や汚物排出性能を低下させるおそれがある。
これに対し、本発明では、便器本体の封水形成に寄与する補給水路の補給水は、便器洗浄性能や汚物排出性能に寄与する主給水路の主洗浄水に比べて、高い瞬間流量[L/min]を必要としないことに着目し、発電装置を補給水路に設けることにより、便器洗浄性能や汚物排出性能を低下させることなく発電を行うことができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、上記洗浄水供給装置は、さらに、上記給水源から供給された洗浄水を貯水して上記便器本体に供給する貯水する貯水タンクと、この貯水タンク内に設けられて上記貯水タンク内の上限水位を上回った洗浄水を上記便器本体内にオーバーフローさせるオーバーフロー管と、を備えており、上記主給水路は、上記給水部から上記貯水タンク内に延びる上流側主給水路と、この上流側主給水路の下流側に設けられてその下流端が上記便器本体の導水路と連通する下流側主給水路と、を備えており、上記補給水路は、上記上流側主給水路から分岐した後、その下流端が上記オーバーフロー管内に吐水可能な補給水口を形成し、上記発電装置は、上記オーバーフロー管の上端よりも上方に位置する上記補給水路に配置されている。
このように構成された本発明においては、発電装置がオーバーフロー管の上端よりも上方に位置する補給水路に設けられているため、常時、発電装置を貯水タンクの上限水位(満水水位等)よりも上方に配置することができる。
したがって、発電装置が貯水タンク内の洗浄水によって被水することを確実に抑制することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記補給水路は、上記給水路における上記主給水路から分岐する分岐部と、この分岐部から上記貯水タンク内の上方を延びる上流側補給水路と、この上流側補給水路の下流側に設けられて水平方向に延びる水平部分又は上流側から下流側に向かって下降する下降部分を備えた下流側補給水路と、を備えており、上記発電装置は、上記下流側補給水路の上記水平部分又は上記下降部分に設けられて且つ補給水の水流により回転して発電に寄与する水車を備えている。
このように構成された本発明においては、補給水路内を流れる補給水の水勢が、主給水路内を流れる主洗浄水の水勢に比べて弱い状態であっても、発電装置の発電に寄与する水車が下流側補給水路の水平部分又は上流側から下流側に向かって下降する下降部分に設けられているため、下流側補給水路の水平部分又は下降部分を流れる補給水の水流により発電装置の水車を確実に回転させることができる。
また、仮に、発電装置の水車が補給水路における上流側から下流側に向かって上昇する上昇部分に設けられた場合では、水車が下流側補給水路の水平部分又は下降部分に設けられた場合に比べて、補給水路の上昇部分を流れる補給水に対して、水流が弱められる方向に重力が作用する。これにより、発電装置の水車が下流側補給水路の水平部分又は下降部分に設けられた場合に比べて、水車の回転効率(回転数等)が低下し、発電効率が低下することになる。
一方、本発明によれば、発電装置の水車が下流側補給水路の水平部分に設けられた場合には、その補給水の水流に対する重力の影響をほとんど受け難くなるため、発電装置の水車を確実に回転させることができる。
また、本発明によれば、発電装置の水車が下流側補給水路の下降部分に設けられた場合には、その補給水に対して水流が強められる方向に重力が作用する。これにより、発電装置の水車が上昇部分に設けられた場合に比べて、水車を効率良く回転させることができ、発電効率を向上させることができる。
【0009】
本発明は、好ましくは、上記発電装置の水車は、上記下流側補給水路における上流側から下流側に向かって下降する下降部分に設けられている。
このように構成された本発明においては、発電装置が下流側補給水路における上流側から下流側に向かって下降する下降部分に配置されているため、発電装置の水車に対して補給水を加速させた状態で勢い良く流入させることができる。これにより、水車を効率良く回転させることができ、発電効率を向上させることができる。
【0010】
本発明は、好ましくは、上記発電装置は、上記補給水路の補給水口よりも上流側に設けられて上記下流側補給水路内の補給水を整流化させるように構成されている。
このように構成された本発明においては、発電装置が補給水路の補給水口よりも上流側に設けられて下流側補給水路内の補給水を整流化させるように構成されているため、下流側補給水路内を流れる補給水について、発電装置を通過させることにより予め整流化させた後、補給水口から吐水させることができる。
これにより、整流化された状態の洗浄水が補給水口から吐水され、暴れることなく、スムーズにオーバーフロー管内に流入することができる。
したがって、補給水がオーバーフロー管に流入せずに無駄水となることを抑制することができ、補給水路からオーバーフロー管を経て便器本体に効率良く補給水を供給することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水洗大便器によれば、便器洗浄性能や汚物排出性能を低下させることなく発電を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態による水洗大便器を示す平面図である。
【
図2】
図1のII-II線に沿って見た断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態による水洗大便器の洗浄水タンク装置の内部構造の概念図である。
【
図4】本発明の第1実施形態による水洗大便器の洗浄水タンク装置の内部構造を示す平面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態による水洗大便器の洗浄水タンク装置の内部構造を示す正面断面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態による水洗大便器の洗浄水タンク装置の内部構造を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便器を説明する。
まず、
図1及び
図2により、本発明の第1実施形態による水洗大便器の基本構造を説明する。
図1は、本発明の実施形態による水洗大便器を示す平面図であり、
図2は、
図1のII-II線に沿って見た断面図である。
【0014】
図1及び
図2に示すように、本発明の第1実施形態による水洗大便器1は、便器本体2と、この便器本体2に洗浄水を供給する洗浄水供給装置(洗浄水タンク装置4)を備えている。
便器本体2は、その前方側に設けられたボウル部6と、ボウル部6の上縁に形成されたリム部8と、このリム部8の内周に形成された棚部10と、を備えている。
また、便器本体2のボウル部6の底部には、トラップ排水路12の入口12aが開口し、このトラップ排水路12は、上方に延びる上昇管12bと、下方に延びる下降管12cを備えている。このトラップ排水路12の形状から分かるように、本実施形態による水洗大便器1は、高さ方向の落差により汚物を排出する洗い落とし式便器である。
なお、本実施形態においては、洗い落とし式便器に適用した形態について説明するが、このような形態に限定されず、サイホン作用を利用してボウル部内の汚物を吸い込んで排水トラップ管路から一気に外部に排出する、いわゆる、サイホン式便器の形態等、他の水洗大便器の形態についても適用可能である。
【0015】
つぎに、便器本体2は、洗浄水タンク装置4の排水口14から排出される洗浄水が流入する導水路16と、棚部10の前方から見て左側中央に形成された第1リム吐水口18と、前方から見て右側後方に形成された第2リム吐水口20とを備えている。
また、導水路16は、下流に向かって第1通水路22と第2通水路24に分岐し、導水路16の洗浄水が第1通水路22を経て第1リム吐水口18に到達する一方、第2通水路24を経て第2リム吐水口20に到達し、洗浄水が、それぞれ、第1リム吐水口18及び第2リム吐水口20から吐水され、ボウル部6を洗浄し、汚物をトラップ排水路12から排出するようになっている。
【0016】
つぎに、
図3~
図5により、洗浄水タンク装置4の詳細について説明する。
図3は、本発明の第1実施形態による水洗大便器の洗浄水タンク装置の内部構造の概念図である。また、
図4は、本発明の第1実施形態による水洗大便器の洗浄水タンク装置の内部構造を示す平面図である。さらに、
図5は、本発明の第1実施形態による水洗大便器の洗浄水タンク装置の内部構造を示す正面断面図である。
なお、
図3において、便宜上、
図4及び
図5に示す洗浄水タンク装置の内部構造の一部を省略している。また、
図3~
図5に示す洗浄水タンク装置4については、洗浄水を貯水する貯水タンク26の上方の上蓋については取り外した状態を示している。
【0017】
図3~
図5に示すように、洗浄水タンク装置4は、平面視において左右方向に長い扁平形状に形成された貯水タンク26と、水道管等の給水源(図示せず)から供給される洗浄水を貯水タンク26に供給する一次側の給水管28と、を備えている。また、一次側の給水管28の下端(上流端部)には、止水栓30が設けられており、その上流側は、水道等の給水源(図示せず)に接続されている。
一方、給水管28の上端(下流側端部)には、定流量弁32を介して給水弁装置34が設けられている。
また、給水弁装置34は、詳細は後述するが、ジェットポンプユニット36の一部であり、給水管28から定流量弁32を経て供給された洗浄水を給止水するようになっている。
さらに、洗浄水タンク装置4は、使用者が給水弁装置34を手動で操作可能にする手動レバー38、並びに、リモコン装置40及びコントローラ42等を備えている。
例えば、使用者が、便器使用後等において、手動レバー38を手動操作した場合には、給水弁装置34のポペット弁46が開閉操作され、圧力室44内の圧力を開放するポペット穴44aが開閉されるようになっている。これにより、給水弁装置34の主弁体48が開閉し、便器本体2のボウル部6の洗浄が行われるようになっている。
【0018】
一方、
図3に示すように、コントローラ42は、リモコン装置40から送信される信号、及び、便器本体2側の便座等に設けられた人感センサ50が検知した信号に基づいて、給水弁装置34の電磁弁52のパイロット弁52aがソレノイドコイルの電磁力により移動し、圧力室44の電磁弁側パイロット穴44bが開閉されるようになっている。
これらの結果、給水弁装置34の圧力室44内の圧力が高くなると、この圧力によって主弁体48が主弁座54に押しつけられて、主弁座54に着座して閉弁状態となり、圧力室44内の圧力が低くなると、主弁体48が弁座54から離間することにより、主弁体48が開弁状態となり、便器の自動洗浄が行われるようになっている。
なお、給水弁装置34の主弁体48が開閉する機構の詳細については後述する。
【0019】
つぎに、
図3~
図5を参照して、ジェットポンプユニット36の詳細について説明する。
まず、
図3~
図5に示すように、ジェットポンプユニット36は、上流側から下流側に向かって、詳細は後述する給水弁装置34と、この給水弁装置34から下流側に延びる二次側の給水路(給水管56)と、給水管56の下流側端部に接続されたジェットノズル58と、このジェットノズル58の下流側に配置されるスロート管60と、を備えている。
また、給水弁装置34と二次側の給水管56との間には、真空破壊弁61が設けられている。この真空破壊弁61は、外部から空気を吸入することにより、ジェットノズル58までの給水管56の流路内が負圧にならないようにするためのものである。
さらに、ジェットノズル58は、スロート管60に向けて洗浄水を噴射することにより、ジェットポンプ作用が誘発されるようになっている。
なお、本明細書中に記載されている「ジェットポンプ作用」という用語については、ジェットノズル58からスロート管60の入口(吸引口60a)に向けて噴射される勢いのある洗浄水の流れ自体が、ポンプ等の他の機械要素に依存することなく、直接的にスロート管60の吸引口60aの近傍等の周囲の洗浄水を引き込むような負圧を形成する作用を意味し、この負圧を利用してスロート管60内に吸い込んだ貯水タンク26内の洗浄水を便器本体2側へ圧送する作用を意味している。
また、ジェットポンプユニット36は、スロート管60の吸引口60aを開閉する流路切替弁装置62を備えている。この流路切替弁装置62により、ジェットノズル58から噴射される洗浄水が進行する流路方向について、スロート管60の内部方向に差し向ける流路からスロート管60の外部方向に差し向ける流路に切り替えることができるようになっている。
【0020】
すなわち、
図3~
図5に示すように、二次側の給水管56の給水路は、給水弁装置34から貯水タンク26内のジェットノズル58の下流端に延びる上流側主給水路56aと、この上流側主給水路56aの下流側に設けられてスロート管60の吸引口60aから下降管部60cの出口部60dまで延びる下流側主給水路56bと、を備えている。
また、この下流側主給水路56bの下流端(スロート管60の下降管部60cの出口部60d)は、便器本体2の導水路16と連通している。
さらに、流路切替弁装置62は、上流側主給水路56aの出口から流出する洗浄水は、貯水タンク26内への給水又は下流側主給水路56b(スロート管60)への通水に切り替える切替部となっている。
ここで、流路切替弁装置62は、具体的には、流路切替弁62a及びフロート62b等を備えている。
流路切替弁62aは、便器洗浄後の貯水タンク26内への給水を行う際に、ジェットノズル58から噴射される洗浄水が進行する流路方向をスロート管60の内部方向に差し向ける流路からスロート管60の外部方向(貯水タンク26内)に差し向ける流路に切り替えるようになっている。
また、フロート62bは、貯水タンク26内に貯水された洗浄水の水位に応じて上下動することにより流路切替弁62aを作動させるようになっている。
【0021】
つぎに、
図3~
図5を参照して、給水弁装置34の主弁体48が開閉する機構の詳細について説明する。
図3に示すように、給水弁装置34は、さらに、貯水タンク26内の洗浄水の水位に伴い上下動する給水フロート66と、この給水フロート66の上下動により圧力室44のフロート側パイロット穴44cを開閉するフロート側パイロット弁68と、を備えている。
また、
図3に示すように、主弁体48には、ブリード穴(図示せず)が設けられており、止水状態のとき、ブリード穴(図示せず)により一次側の給水管28の一次側流路Aと圧力室44の内部とが連通するようになっている。
さらに、給水弁装置34の止水状態においては、ポペット穴44a、電磁弁側パイロット穴44b、及び、フロート側パイロット穴44cのいずれも閉鎖されており、かつ、一次側の給水管28の一次側流路Aは圧力室44とブリード穴(図示せず)を通じて連通している。これにより、一次側流路Aと圧力室44の水圧は同一の水圧(一次側流路圧力α)となる。
また、二次側流路Bは大気開放され、主弁体48に水圧が作用する面積の方が一次側流路Aの面積よりも大きくなるため、主弁体48は主弁座64に押付けられて閉弁するようになっている。
【0022】
さらに、給水弁装置34において、ポペット穴44a、電磁弁側パイロット穴44b,及び、フロート側パイロット穴44cの少なくとも1つが開放されると、圧力室44から洗浄水が流出し、圧力室44内の圧力が低下するため、主弁体48が主弁座54から離れる方向に移動して開弁し、吐水状態となるようになっている。
また、給水弁装置34において、ポペット穴44a,電磁弁側パイロット穴44b,及び、フロート側パイロット穴44cのいずれもが閉鎖されると、再度圧力室44の圧力が一次側流路圧力αとなり、主弁体48が主弁座54に向けて移動し、最終的に閉弁された状態(止水状態)となる。
なお、このとき、一次側流路Aの洗浄水が、圧力室44内へブリード穴から少しずつ注入されるため、ポペット穴44a、電磁弁側パイロット穴44b、及び、フロート側パイロット穴44cを塞いでから、所定時間遅れて、主弁体48が閉弁状態(止水状態)となるようになっている。
【0023】
つぎに、
図3~
図5に示すように、ジェットポンプユニット36のスロート管60は、下方から斜め上方に延びる上昇管部60bと、この上昇管部60bの上端付近から下方に延びる下降管部60cとを備えており、概ね逆V字形状に形成されている。
また、スロート管60の上昇管部60bの上流側端部(入口部)には、吸引口60aが形成されており、この吸引口60aは、貯水タンク26内の下部に位置するようになっている。
さらに、スロート管60の下降管部60cの出口部60dは、便器本体2の導水路16と連通する排水口14に接続されている。
また、スロート管60の吸引口60aに対向するように、ジェットノズル58が配置され、スロート管60の吸引口60aとジェットノズル58は、常時、貯水タンク26内で水没した状態となっている。
【0024】
つぎに、
図3に示すように、給水弁装置34から二次側の給水管56への洗浄水の供給が開始された直後においては、貯水タンク26内に洗浄水が未だ高い水位WL3近くまで貯水された状態である。このとき、流路切替弁装置62のフロート62bは上昇した状態であり、流路切替弁62aは下降し、ジェットノズル58の前方側を開放している状態となっている。
これらにより、貯水タンク26内に貯水された洗浄水は、ジェットノズル58及びスロート管60の吸引口60aに向かう流れを形成している。
【0025】
つぎに、
図3に示すように、貯水タンク26内の洗浄水の水位が低下するにつれて、流路切替弁装置フロート62bも下降し、流路切替弁62aが上昇するようになっている。
これにより、スロート管60の流路が流路切替弁62aに遮られるため、ジェットノズル58から噴射される洗浄水は、流路切替弁62aに衝突し、スロート管60内を流れることなく、流路切替弁62aによって跳ね返されるようになっている。
すなわち、流路切替弁62aによってジェットノズル58から噴射される洗浄水は、その進行方向がスロート管60の内部方向からスロート管60の外部方向へと切り替えられ、貯水タンク26内に貯水されるようになっている。
このとき、貯水タンク26内の水位は上昇するが、流路切替弁62aが洗浄水の勢いにより移動できないので、フロート62bも上昇することなく、その位置に保持されるようになっている。
また、給水弁装置34の給水フロート66は、貯水タンク26の水位の上昇に連動して上昇するが、フロート側パイロット穴44cは、フロート側パイロット弁68によって開状態のままである。これにより、給水弁装置34による給水状態は、継続されるようになっている。
【0026】
つぎに、
図3~
図5に示すように、二次側の給水管56の途中には、給水管56から分岐する補給水用の分岐管70(詳細は後述する)が設けられている。この分岐管70は、便器本体2に補給水を供給する補給水路を形成している。
また、貯水タンク26内には、スロート管60の下降管部60cに隣接して設けられて上下方向に延びるオーバーフロー管72が設けられている。このオーバーフロー管72の下流側(下方側)は、便器本体2の導水路16と連通している。
さらに、分岐管70の下流端の補給水口70aは、オーバーフロー管72の上端のオーバーフロー口72aの上方に位置決めされている。このオーバーフロー管72の上端は、貯水タンク26内の上限水位を定めており、この上限水位を上回った洗浄水を便器本体2の導水路16内にオーバーフローさせるようになっている。
また、
図3~
図5に示すように、分岐管70の途中には、詳細は後述する発電装置74が設けられている。
これらにより、給水管56内の洗浄水の一部は、分岐管70に流入した後、発電装置74を通過し、補給水口70aからオーバーフロー管72内に吐水され、最終的には、便器本体2で封水を形成する補給水として利用されるようになっている。
【0027】
つぎに、
図3及び
図4に示すように、貯水タンク26内には、大洗浄及び小洗浄に必要な洗浄水量を切り換えるための大小洗浄切替機構76が設けられている。
この大小洗浄切替機構76は、貯水タンク26内をジェットノズル58及びスロート管60の吸引口60aを取り囲む外側空間領域R1とこの領域R1よりも空間が小さい小空間領域R2との二つの空間領域R1,R2に区画する区画壁78を備えている。
より具体的に説明すると、この区画壁78は、上下方向に延びる壁面を形成し、その上方が開放されて前後方向及び左右方向の四方から取り囲んだカップ形状の小タンク80を形成している。この小タンク80は、貯水タンク26内の前方且つ左寄りに配置されており、小タンク80の内部には、小空間領域R2が平面視において貯水タンク26の左右方向に長い扁平形状となるように形成されている。
【0028】
また、
図3及び
図4に示すように、小タンク80の後方側の区画壁(後側区画壁80a)には、前後方向に貫くようにほぼ左右方向に長い長方形形状の開口(後側開口84b)が形成されている。
この小タンク80の後側開口80bには、大小切替弁82が開閉可能に設けられている。この大小切替弁82が開口84bを開閉することにより、ジェットポンプユニット36を通じて便器本体2へ供給する洗浄水量を変更することができ、大洗浄と小洗浄とを切り替えることができるようになっている。
【0029】
さらに、
図3及び
図4に示すように、大小洗浄切替機構76の大小切替弁82は、玉鎖84の一端(下端)に接続されている。また、玉鎖84の他端(上端)は、手動レバー38と共に回動可能に連結されている駆動軸86に接続されている。
例えば、大洗浄を行うときは、使用者が手動レバー38を一方向に回動操作することにより、駆動軸86が回転しても、玉鎖84はたるむだけで、大小切替弁82が小タンク80の開口80bを開いた状態のままとなる。その結果、大小洗浄切替機構76が大洗浄状態となるようになっている。
一方、小洗浄を行うときは、使用者が手動レバー38を他方向に回動操作することにより、玉鎖84と共に大小切替弁82が引き上げられ、大小切替弁82が小タンク80の開口80bを閉じた状態となる。その結果、大小洗浄切替機構76が小洗浄状態となるようになっている。
【0030】
ここで、
図3に示すように、貯水タンク26内の水位WLは、大洗浄が終了したときの貯水タンク26内の領域R1,R2の双方の最低水位である死水水位WL1を示している。
また、
図3に示すように、水位WL1は、小洗浄が終了したときの貯水タンク26内の領域R1のみの死水水位DWLにもなっており、これらの死水水位DWLである水位WL1は、区画壁78の開口80bの上端よりも下方に位置している。
さらに、
図3に示すように、水位WL2は、小洗浄が終了したときの貯水タンク26内の領域R2の水位を示している。
また、水位WL3は、貯水タンク26内に貯水される洗浄水の初期状態における止水水位であり、且つ大洗浄又は小洗浄後に給水弁装置34により貯水タンク26内に洗浄水が給水されその後給水が停止される満水水位である。
【0031】
つぎに、
図3~
図6を参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便器1の分岐管70及び発電装置74の詳細について説明する。
図6は、
図5のVI-VI線に沿った断面図である。
図3~
図6に示すように、分岐管70内の補給水路は、上流側補給水路88及び下流側補給水路90をそれぞれ備えている。
また、上流側補給水路88は、上流側主給水路56aの途中の分岐部56cから貯水タンク26内の上方を延びる上昇部分88aと、この上昇部分88aの上端(下流側)から水平方向延びる水平部分88bと、を備えている。
さらに、下流側補給水路90は、上流側補給水路88の水平部分88bの下流側に設けられて且つ水平方向に延びる水平部分90aと、この水平部分90aの下流側に設けられて且つ上流側から下流側に向かって下降する下降部分90bと、を備えている。
ここで、上流側補給水路88の水平部分88b、並びに、下流側補給水路90の水平部分90a及び下降部分90bは、オーバーフロー管72の上端よりも上方に位置している。
【0032】
また、
図6に示すように、発電装置74は、分岐管70の下流側補給水路90の水平部分90aに設けられた水車92を備えており、この水車92が補給水の水流W1により水平平面内で回転駆動して発電に寄与するようになっている。
図3~
図6に示すように、二次側の給水管56の上流側主給水路56a内の全体流量の給水のうち、その一部である一定流量の給水(補給水)が補給水用の分岐管70の上流側補給水路88に分流されるようになっている。
また、上流側補給水路88に流れ込んだ補給水は、上昇部分88aを上昇して水平部分88bを流れた後、下流側補給水路90に流れるようになっている。
その後、
図6に示すように、下流側補給水路90内の補給水は、下流側補給水路90の水平部分90aに設けられた発電装置74の水車92に流れ込むようになっている。
そして、発電装置74においては、流れ込んだ補給水の水流W1により水車92が回転駆動することにより、電力が生成されるようになっている。
また、発電装置74を通過する補給水は、水車92を通過することにより整流化され、下流側補給水路90の下降部分90bに流れるようになっている。その後、この下流側補給水路90の下降部分90bの補給水は、下降部分90bの下端(下流端)の補給水口70aからオーバーフロー管72内に吐水されるようになっている。
そして、オーバーフロー管72内に吐水された補給水は、便器本体2の導水路16を経て、ボウル部6内に補給水として供給されるようになっている。
【0033】
なお、発電装置74によって生成された電力は、この発電装置74に接続されたコントローラ42に送られ、コントローラ42に内蔵されたキャパシタ(図示せず)に充電されるようになっている。
ここで、便器本体2の1回の洗浄により生成されて蓄積される電力は、1回の洗浄で電磁弁52を作動させるために消費される電力よりも多く、洗浄で使用する電力を発電装置74の発電電力で賄うことができるようになっている。
したがって、洗浄水タンク装置4は、自己の発電した電力を使用して、便器本体2への洗浄水の供給を行うことができるようになっている。
【0034】
また、本実施形態においては、コントローラ42には、回路基板及びキャパシタ(以上、図示せず)が内蔵されている。この回路基板には、発電装置74からの交流電力を直流に変換する整流回路が設けられている。そして、この整流回路からの直流電流によってキャパシタが充電され、キャパシタからの電力によって、回路基板上に設けられた電磁弁52の制御回路が作動するようになっている。
また、本実施形態では、リモコン装置40や人感センサ50から送信される信号をコントローラ42が受信し、このコントローラ42が電磁弁52に電気信号を送り、この電磁弁52の開閉操作が行われるようになっている。
さらに、この電磁弁52の開閉操作により、給水弁装置34の主弁体48の開閉操作が自動で行われ、給水弁装置34の給止水による便器の自動洗浄が行われるようになっている。
【0035】
つぎに、
図1~
図6を参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便器1の作用について説明する。
上述した本実施形態による水洗大便器1によれば、コントローラ42がリモコン装置40又は人感センサ50から送信される信号を受信し、便器洗浄が開始される。この際、コントローラ42の制御により給水弁装置34の電磁弁52が開弁し、二次側の給水管56の給水路が開放される。
これにより、水道等の給水源(図示せず)から一次側の給水管28を経て洗浄水供給装置(洗浄水タンク装置4)の給水弁装置34に供給された洗浄水は、この給水弁装置34から二次側の給水管56の給水路に供給される。
このとき、給水弁装置34から二次側の給水管56の上流側主給水路56aに供給された洗浄水のうちの大半の洗浄水の主流(主洗浄水W0)は、便器洗浄用の洗浄水として下流側主給水路56bを通過した後、便器本体2の導水路16に供給され、ボウル部6内の便器洗浄に利用される。
これにより、便器本体2のボウル部6を洗浄し、ボウル部6内の汚物を排出路(トラップ排水路12)から排出することができる。
一方、給水弁装置34から二次側の給水管56の上流側主給水路56aに供給された洗浄水のうちの残部は、上流側主給水路56aの途中の分岐部56cから補給水用の分岐管70の上流側補給水路88に補給水として分流される。
そして、上流側補給水路88内の補給水W1は、下流側補給水路90の発電装置74の水車92を通過した後、分岐管70の補給水口70aから、その下方のオーバーフロー管72内に吐水される。
その後、オーバーフロー管72内の補給水は、便器本体2の導水路16に供給され、便器本体2のボウル部6及びトラップ排水路12内における封水形成に利用される。
これらにより、次回の便器洗浄に備えて、便器本体2のボウル部6やトラップ排水路12内に封水を形成することができる。
また、このとき、発電装置74においては、その水車92が分岐管70の下流側補給水路90の水平部分90aに設けられているため、下流側補給水路90の水平部分90aを通過する補給水の水流W1が水車92に流入することにより、水車92が回転駆動することができる。
このような水車92の回転駆動により、発電装置74の発電が行われ、その電力がコントローラ42等を介して、例えば、電磁弁52の開閉動作、或いは、他の周辺の電子機器(図示せず)への供給電力として利用される。
ちなみに、仮に、発電装置74について二次側の給水管56の上流側主給水路56aや下流側主給水路56bに設けた場合では、便器洗浄用の洗浄水が発電装置74を通過した際の圧力損失等によって、洗浄水の瞬間流量[L/min]等が低下し、便器本体2における便器洗浄性能や汚物排出性能を低下させるおそれがある。
これに対し、本実施形態の水洗大便器1では、便器本体2の封水形成に寄与する分岐管70の補給水路の補給水が、便器洗浄性能や汚物排出性能に寄与する二次側の給水管56の上流側主給水路56aや下流側主給水路56bの主洗浄水に比べて、高い瞬間流量[L/min]を必要としないことに着目し、発電装置74を分岐管70の下流側補給水路90の水平部分90aに設けることができたため、便器洗浄性能や汚物排出性能を低下させることなく発電を行うことができる。
【0036】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、発電装置74がオーバーフロー管72の上端よりも上方に位置する分岐管70の下流側補給水路90の水平部分90aに設けることができたため、常時、発電装置74を貯水タンク26の上限水位(満水水位等)よりも上方に配置することができる。
したがって、発電装置74が貯水タンク26内の洗浄水によって被水することを確実に抑制することができる。
【0037】
さらに、本実施形態による水洗大便器1によれば、補給水路88,90内を流れる補給水W1の水勢が、主給水路56a,56b内を流れる主洗浄水W0の水勢に比べて弱い状態であっても、発電装置74の発電に寄与する水車92を下流側補給水路90の水平部分90aに設けることができた。
したがって、下流側補給水路90の水平部分90aを流れる補給水の水流W1により発電装置74の水車92を確実に回転駆動させることができる。
また、仮に、発電装置74の水車92が上流側補給水路88における上流側から下流側に向かって上昇する上昇部分88a等に設けられた場合では、水車92が下流側補給水路90の水平部分90aに設けられた場合に比べて、上流側補給水路88の上昇部分88aを流れる補給水に対して、水流が弱められる方向に重力が作用する。これにより、発電装置74の水車92が下流側補給水路90の水平部分90aに設けられた場合に比べて、水車92の回転効率(回転数等)が低下し、発電効率が低下することになる。
一方、本実施形態の水洗大便器1によれば、発電装置74の水車92が下流側補給水路90の水平部分90aに設けられているため、補給水の水流W1に対する重力の影響をほとんど受け難くなり、発電装置74の水車92を確実に回転駆動させることができる。
【0038】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、発電装置74が、分岐管70の補給水口70aよりも上流側に設けられ、下流側補給水路90内の補給水を整流化させるように構成されている。
これにより、下流側補給水路90内を流れる補給水について、発電装置74を通過させることにより予め整流化させた後、補給水口70aから吐水させることができる。
したがって、整流化された状態の洗浄水が補給水口70aから吐水され、暴れることなく、スムーズにオーバーフロー管72内に流入することができる。
したがって、補給水口70aから吐水された補給水がオーバーフロー管72内に流入せずに無駄水となることを抑制することができ、便器本体2に効率良く補給水を供給することができる。
【0039】
つぎに、
図7を参照して、本発明の第2実施形態による水洗大便器100について説明する。
図7は、本発明の第2実施形態による水洗大便器の洗浄水タンク装置の内部構造を示す背面図である。
ここで、
図7に示す本発明の第2実施形態による水洗大便器100について、
図1~
図6に示す上述した本発明の第1実施形態による水洗大便器1と同一部分については同一の符号を付し、これらの説明については説明を省略する。
図7に示すように、本発明の第2実施形態による水洗大便器100においては、洗浄水タンク装置104における発電装置174の配置のみが、上述した本発明の第1実施形態による水洗大便器1の洗浄水タンク装置4における発電装置74の配置と異なっている。
すなわち、本実施形態による水洗大便器100では、分岐管170内の上流側補給水路188が、上流側主給水路56aの途中の分岐部56cから貯水タンク26内の上方を延びる上昇部分188aと、この上昇部分188aの上方部分(下流側)から湾曲した後に水平方向延びる水平部分188bと、を備えている。
また、分岐管170内の下流側補給水路190は、上流側補給水路188の水平部分188bの下流側の一端から下方の延びる下降部分190aを備えており、この下降部分190aの下端(下流端)が補給水口170aとなっている。
さらに、発電装置174の水車92は、下流側補給水路190の下降部分190aの途中に設けられている。
また、発電装置174の水車92は、下流側補給水路190の下降部分190aを上方から下方に流れる補給水の水流W1により、鉛直平面内で回転駆動して発電に寄与するようになっている。
ここで、下流側補給水路190の下降部分190aは、オーバーフロー管72の上端よりも上方に位置しており、補給水口170aは、オーバーフロー管72の上端(オーバーフロー口72a)の上方に位置決めされている。
【0040】
上述した本発明の第2実施形態による水洗大便器100によれば、補給水路188,190内を流れる補給水の水勢が、主給水路56a,56b内を流れる主洗浄水W0の水勢に比べて弱い状態であっても、発電装置174の発電に寄与する水車92が下流側補給水路190の下降部分190aに設けることができた。
したがって、補給水路188,190内を流れる補給水W1の水勢が、主給水路56a,56b内を流れる主洗浄水W0の水勢に比べて弱い状態であっても、発電装置174の発電に寄与する水車92が、下流側補給水路190における上流側から下流側に向かって下降する下降部分190aに設けられているため、下流側補給水路190の下降部分190aを流れる補給水の水流W1により発電装置174の水車92を鉛直平面内で確実に回転させることができる。
また、仮に、発電装置174の水車92が補給水路における上流側から下流側に向かって上昇する上昇部分に設けられた場合では、水車92が下流側補給水路190の下降部分190aに設けられた場合に比べて、補給水路の上昇部分を流れる補給水に対して、水流が弱められる方向に重力が作用する。これにより、発電装置174の水車92が下流側補給水路190の下降部分190aに設けられた場合に比べて、水車92の回転効率(回転数等)が低下し、発電効率が低下することになる。
一方、本実施形態の水洗大便器100によれば、発電装置174の水車92が下流側補給水路190の下降部分190aに配置されているため、補給水に対して水流W1が強められる方向に重力が作用する。これにより、発電装置174の水車92が上流側補給水路188の上昇部分188aに設けられた場合に比べて、発電装置174の水車92に対して補給水W1を加速させた状態で勢い良く流入させることができる。
よって、水車92を効率良く回転させることができ、発電効率を向上させることができる。
【0041】
なお、上述した本発明の第1実施形態及び第2実施形態による水洗大便器1,100では、上流側主給水路56aの途中の分岐部56cにおいて、補給水用の分岐管70,170(補給水路)を二次側の給水管56(主給水路)に常時直接的に接続させた形態について説明したが、このような分岐部56cの形態に限られず、他の分岐部の形態を採用してもよい。
例えば、他の分岐部の形態として、主給水路と補給水路との間の流路に流路切替手段(切替弁等)を設け、この流路切替手段が、貯水タンク内の水位等に応じて主給水路と補給水路との間の流路を切り替えるようにしてもよい。
これより、補給水路を主給水路に一時的に接続させることもでき、主給水路内の洗浄水が補給水路に一時的に供給される分岐部として機能することができる。
また、上述した本発明の第1実施形態及び第2実施形態による水洗大便器1,100においては、洗浄水タンク装置4,104について、ジェットポンプユニットを採用した形態について説明したが、ジェットポンプユニット以外を採用した他の形態についても、発電装置74,174を適用可能である。
すなわち、洗浄水タンク装置4,104の他の形態として、主給水管及び補給水管を備えた給水形態であれば、ジェットポンプユニット以外を採用した洗浄水タンク装置や給水装置の補給水管に対して、発電装置74,174を適用可能である。
さらに、上述した本発明の第1実施形態及び第2実施形態による水洗大便器1,100では、電磁弁52が、発電装置74,174によって生成され、コントローラ42のキャパシタに充電されていた電力によって作動される形態について説明した。
しかしながら、このような形態に限られず、発電装置74,174によって発電させた電力については、例えば、最大電圧が5V未満で使用できるものであれば、電磁弁52以外の水洗大便器の関連の電装機器等に利用してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 本発明の第1実施形態による水洗大便器
2 便器本体
4 洗浄水タンク装置(洗浄水供給装置)
6 ボウル部
8 リム部
10 棚部
12 トラップ排水路(排出路)
12a 入口
12c 下降管
12b 上昇管
14 排水口
16 導水路
18 リム吐水口
20 リム吐水口
22 第1通水路
24 第2通水路
26 貯水タンク
28 一次側の給水管
30 止水栓
32 定流量弁
34 給水弁装置(給水部)
36 ジェットポンプユニット
38 手動レバー
40 リモコン装置
42 コントローラ
44 圧力室
44a ポペット穴
44b 電磁弁側パイロット穴
44c フロート側パイロット穴
46 ポペット弁
48 主弁体(給水部)
50 人感センサ
52 電磁弁(給水部)
52a 電磁弁側パイロット弁
54 主弁座
56 二次側の給水管(給水路、主給水路)
56a 上流側主給水路(主給水路)
56b 下流側主給水路(主給水路)
56c 分岐部
58 ジェットノズル
60 スロート管
60a 吸引口
60b 上昇管路
60c 下降管部
60d スロート管の下降管部の出口部
61 真空破壊弁
62 流路切替弁装置(切替部)
62a 流路切替弁
62b フロート
64 主弁座
66 給水フロート
68 フロート側パイロット弁
70 補給水用の分岐管(給水路、補給水路)
70a 補給水口
72 オーバーフロー管
72a オーバーフロー口
74 発電装置
76 大小洗浄切替機構
78 区画壁
80 小タンク
80a 小タンクの後側区画壁
80b 小タンクの後側開口
82 大小切替弁
84 玉鎖
86 駆動軸
88 分岐管の上流側補給水路(補給水路)
88a 分岐管の上流側補給水路の上昇部分(補給水路)
88b 分岐管の上流側補給水路の水平部分(補給水路)
90 分岐管の下流側補給水路(補給水路)
90a 分岐管の下流側補給水路の水平部分(補給水路)
90b 分岐管の下流側補給水路の下降部分(補給水路)
92 水車
100 本発明の第2実施形態による水洗大便器
104 洗浄水タンク装置(洗浄水供給装置)
174 発電装置
188 分岐管の上流側補給水路
188a 分岐管の上流側補給水路の上昇部分
188b 分岐管の上流側補給水路の水平部分
190 分岐管の下流側補給水路
190a 分岐管の下流側補給水路の下降部分
A 一次側流路
B 二次側流路
A1 中心軸線
B 二次側流路
R1 外側空間領域
R2 小空間領域
W0 主洗浄水
W1 補給水、水流
WL 水位
DWL 死水水位
WL1 死水水位
WL2 水位
WL3 止水水位(満水水位)
α 一次側流路圧力