(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168507
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20231116BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20231116BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20231116BHJP
H01L 21/3205 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
H01L29/78 616T
H01L29/78 616U
H01L29/78 616V
H01L21/90 D
H01L27/088 D
H01L21/88 N
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023172180
(22)【出願日】2023-10-03
(62)【分割の表示】P 2022110416の分割
【原出願日】2005-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2004267673
(32)【優先日】2004-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】檜垣 欣成
(72)【発明者】
【氏名】坂倉 真之
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(57)【要約】
【課題】本発明は、アクティブマトリクス型の表示装置において、配線の断面積を増大さ
せることなく、相性の悪い2つの膜(ITO膜とアルミニウム膜)からなる配線や電極等
を接続し、且つ、大画面化しても低消費電力を実現することを課題とする。
【解決手段】本発明は、上層と、上層よりも広い幅を有する下層とからなる2層構造とす
る。TiまたはMoからなる第1導電層を設け、その上に電気抵抗値の低いアルミニウム
単体(純アルミニウム)からなる第2導電層を設ける。上層の端面から突出させた下層部
分と、ITOとを接合させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁表面を有する基板上に、半導体薄膜を有する複数の薄膜トランジスタと、透明導電膜とを有する半導体装置であり、
前記半導体装置は、前記半導体薄膜と接する第1導電層と、前記第1導電層上に接する第2導電層とを積層した電極または配線を有し、
前記第1導電層は、前記第2導電層より広い幅を有し、
前記第1導電層において前記第2導電層の端部から延在している部分に接する透明導電膜を有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1導電層は、チタン、またはモリブデンを含む合金、或いはチタン、またはモリブデンの単体であり、
前記第2導電層は、アルミニウムを含む合金、或いはアルミニウムの単体であることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄膜トランジスタ(以下、TFTという)で構成された回路を有する半導体装
置およびその作製方法に関する。例えば、液晶表示パネルに代表される電気光学装置や有
機発光素子を有する発光表示装置を部品として搭載した電子機器に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装
置全般を指し、電気光学装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
近年、絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜(厚さ数~数百nm程度)を用
いて薄膜トランジスタ(TFT)を構成する技術が注目されている。薄膜トランジスタは
ICや電気光学装置のような電子デバイスに広く応用され、特に画像表示装置のスイッチ
ング素子として開発が急がれている。
【0004】
従来、TFT駆動によるアクティブマトリクス型の液晶表示装置においては、基板上に
多数の走査線およびデータ線が縦横に設けられ、これらの配線の交点に対応して多数のT
FTが設けられている。各TFTは、走査線にゲート配線が電気的に接続され、データ線
にソース電極が電気的に接続され、画素電極にドレイン電極が電気的に接続される。
【0005】
透過型の液晶表示装置において、画素電極には光透過性と導電性を兼ね備えたITOが
一般的に用いられている。この画素電極と、データ線や走査線などの金属配線とは、絶縁
材料の層によって絶縁されており、この絶縁膜の特定の位置に形成されたコンタクトホー
ルを介して画素電極と金属配線とが接している。
【0006】
また、ディスプレイ表示面積が大きくなるほど、配線の抵抗による信号の遅延が問題に
なってくる。従って配線や電極については、大きく形状を変えるか、電気抵抗値の低い材
料、たとえばアルミニウムを用いる必要がある。
【0007】
配線や電極の材料として用いられるアルミニウムと画素電極の材料として用いられるI
TOが接すると、接合界面で電蝕とよばれる反応が生じる。または、アルミニウムとIT
Oが接すると、アルミニウム表面が酸化し電気的に導通しなくなるといった問題が生じる
。
【0008】
そこで、このような相性の悪い2つの膜からなる配線や電極等を接続する際に、アルミ
ニウム配線(または電極)とITOとの間に高融点金属膜(チタン膜など)または高融点
金属化合物膜(窒化チタン膜など)などを設けて、ITOとの電触腐食を防ぐ技術も提案
されている。
【0009】
また、本出願人は、薄膜トランジスタのドレインと画素電極であるITOとの接続をチ
タン膜、アルミニウム膜、チタン膜の積層膜で構成することを特許文献1、特許文献2、
および特許文献3に記載している。
【0010】
また、本出願人らは、薄膜トランジスタのドレインと画素電極であるITOとの接続を
チタン膜、アルミニウム膜の積層膜で構成することを特許文献4に記載し、窒化チタン膜
、アルミニウム膜の積層膜で構成することを特許文献5に記載している。
【0011】
また、本出願人は、薄膜トランジスタのゲート電極として、GOLD構造を形成するた
めに、幅の異なる2層からなるゲート電極を形成することを特許文献6に記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平9-45927号公報
【特許文献2】特開平10-32202号公報
【特許文献3】特開平6-232129号公報
【特許文献4】特開2004-6974
【特許文献5】特開平8-330600号公報
【特許文献6】特開2001-281704
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、アルミニウム配線(または電極)とITOとの間にチタン膜や窒化チタン
膜を積層すると、配線抵抗が高くなってしまい、特に画面サイズが大面積化すると消費電
力の増大を引き起こす。配線抵抗は、配線となる金属膜の断面積を大きくすることにより
低減することが可能であるが、膜厚を厚くして断面積を増大させた場合には基板表面と厚
膜配線表面との間に段差が生じ、液晶の配向不良の原因となる。
【0014】
また、TFT駆動によるアクティブマトリクス型の発光装置においても、発光素子の陽
極(または陰極)として透明導電膜を用いる場合がある。同様に、透明導電膜からなる陽
極は、各種配線と絶縁するための層間絶縁膜上に形成される。従って、陽極としてITO
を用い、TFTの電極(アルミニウム)とを接続させる際、上述の電触腐食が同様に生じ
る。
【0015】
本発明は、アクティブマトリクス型の表示装置において、配線の断面積を増大させるこ
となく、相性の悪い2つの膜(ITO膜とアルミニウム膜)からなる配線や電極等を接続
し、且つ、大画面化しても低消費電力を実現することを課題とする。
【0016】
また、配線材料としてアルミニウムを用いてTFTを作製した場合、熱処理によってヒ
ロックやウィスカー等の突起物の形成や、アルミニウム原子のチャネル形成領域への拡散
により、TFTの動作不良やTFT特性の低下を引き起こしていた。そこで、従来ではア
ルミニウムに他の元素(Siなど)を含有させたアルミニウム合金膜として、ヒロックな
どの発生を抑制している。しかし、アルミニウム合金膜としても、接合界面においてアル
ミニウムが酸化し、ITO膜が還元することによる接合抵抗は変化してしまう問題は残る
。
【0017】
加えて、本発明は、アクティブマトリクス型の表示装置において、配線材料としてアル
ミニウムを用いてもアルミニウム原子のチャネル形成領域への拡散を防止し、且つ、良好
なオーミック接合を可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、下層を高融点金属(Ti、Moなど)、または窒化高融点金属(TiNなど
)からなる第1導電層とし、上層をアルミニウム単体またはアルミニウムを含む合金から
なる第2導電層とする2層構造の電極(または配線)とする。そして、2層構造の電極(
または配線)の断面形状は、第1導電層の幅(W1)が第2の導電層の幅(W2)よりも
広い断面形状とする。即ち、下層(第1導電層)の端部が上層(第2導電層)の端部より
も外側にある構造を作製した後、2層構造の電極(または配線)に接して覆う形で透明導
電膜を形成する。
【0019】
本発明は、この2層からなる電極(または配線)のうち、第2の導電層と重ならずに露
呈している第1導電層と透明導電膜(代表的にはITO)とを接続させることで上述した
課題を解決することを特徴としている。
【0020】
本明細書で開示する発明の構成は、
図1(A)或いは
図2(A)にその一例を示すように
、絶縁表面を有する基板上に、半導体薄膜を有する複数の薄膜トランジスタと、透明導電
膜とを有する半導体装置であり、
前記半導体装置は、前記半導体薄膜と接する第1導電層と、前記第1導電層上に接する
第2導電層とを積層した電極または配線を有し、前記第1導電層は、前記第2導電層より
広い幅(W1、或いはW3)を有し、前記第1導電層において前記第2導電層の端部から
延在している部分に接する透明導電膜を有していることを特徴とする半導体装置である。
【0021】
また、他の発明の構成は、絶縁表面を有する基板上に、半導体薄膜を有する複数の薄膜
トランジスタと、透明導電膜とを有する半導体装置であり、前記半導体装置は、前記半導
体薄膜と接する第1導電層と、前記第1導電層上に接する第2導電層とを積層した電極ま
たは配線を有し、前記第1導電層は、前記第2導電層の端部から突出している部分を有し
、前記第1導電層において前記第2導電層の端部から突出している部分に接する透明導電
膜を有していることを特徴とする半導体装置である。
【0022】
また、他の発明の構成は、絶縁表面を有する基板上に、半導体薄膜を有する複数の薄膜
トランジスタと、透明導電膜とを有する半導体装置であり、前記半導体装置は、前記半導
体薄膜と接する第1導電層と、前記第1導電層上に接する第2導電層とを積層した電極ま
たは配線を有し、前記第1導電層の側面部は、
図1(A)に示すように、前記第2導電層
の側面部におけるテーパー角より小さいテーパ角を有しており、前記第1導電層の側面部
に接する透明導電膜を有していることを特徴とする半導体装置である。
【0023】
また、他の発明の構成は、
図3にその一例を示すように、絶縁表面を有する基板上に、
半導体薄膜を有する複数の薄膜トランジスタと、透明導電膜とを有する半導体装置であり
、前記半導体装置は、前記半導体薄膜と接する第1導電層と、前記第1導電層上に接する
第2導電層とを積層した電極または配線と、前記電極または配線の一部上に平坦化絶縁膜
と、前記平坦化絶縁膜上に透明導電膜とを有し、前記平坦化絶縁膜に設けられたコンタク
トホールを介して、前記電極または配線と前記透明導電膜とが接し、且つ、前記コンタク
トホール内に、前記電極または配線の端部が位置していることを特徴とする半導体装置で
ある。
【0024】
また、上記各構成において、前記第2導電層の表面は酸化膜で覆われていることを特徴
の一つとしている。
【0025】
また、上記各構造を実現するための作製方法も本発明の一つであり、複数回のエッチン
グを用いた以下に示す方法によって、下層(第1導電層)の端部が上層(第2導電層)の
端部よりも外側にある構造を実現する。
【0026】
第1の方法としては、2層からなる金属積層膜上にマスクを形成した後に、第1のドライ
エッチング処理によって幅W1を有し、且つ、端部をテーパー状にした金属積層膜パター
ンを形成する。その後、第2のドライエッチング処理によって上層のアルミニウムを含む
材料のみを異方性エッチングして上層の幅を狭めて下層の幅(W1)よりも狭い幅(W2
)とする。この結果、上層と重ならない下層が部分的に露出した電極(または配線)が形
成される。
【0027】
また、第2の方法としては、2層からなる金属積層膜上にマスクを形成した後に、エッ
チャント液により上層のアルミニウムを含む材料のみをマスクパターンにしたがって除去
する。その際、エッチングの回り込みによって上層の端部はマスク端部よりも奥に後退し
ている。その後、ドライエッチング処理によってマスクに覆われていない部分の下層のみ
を除去する。この結果、上層と重ならない下層が部分的に露出した電極(または配線)が
形成される。
【0028】
また、第3の方法としては、2層からなる金属積層膜上にマスクを形成した後に、ドラ
イエッチング処理によって、金属積層膜パターンを形成する。その後、エッチャント液に
より上層のアルミニウムを含む材料のみをマスクパターンにしたがって加工して上層の幅
を細らせる。その際、エッチングの回り込みによって上層の端部はマスク端部よりも奥に
後退している。この結果、上層と重ならない下層が部分的に露出した電極(または配線)
が形成される。
【0029】
また、第4の方法としては、2層からなる金属積層膜上に第1のマスクを形成した後に
、ドライエッチング処理またはウェットエッチング処理によって金属積層パターンを形成
する。その後、第1のマスクを除去した後に、第2のマスクを形成し、金属積層膜パター
ンを第2のマスクパターンにしたがって加工する。この際、第2のマスクパターンは、第1
のマスクパターンに対して細くしている。この結果、上層と重ならない下層が部分的に露
出した電極(または配線)が形成される。
【0030】
上述したいずれの方法も、フォトマスクを用い、プラズマ装置を用いたドライエッチング
、またはエッチャント液によるウェットエッチングで配線または電極のパターン形成を行
う。
【0031】
そして、上述した方法で得られた電極(または配線)に接して覆うように透明導電膜を
形成する。この結果、電極(または配線)の下層と透明導電膜とが接触し、主としてこの
部分で電気的に導通する。
【0032】
従来においても下層の端面で透明導電膜と接する構造も開示されているが、従来の構造
は主として最上層の上面で透明導電膜と電気的に導通させている。本発明は、下層で透明
導電膜と導通させるため、意図的に上層よりもテーパー角の小さいテーパー部、または上
層端面から突出した部分を設けて下層と透明導電膜との接触面積を確保して確実にコンタ
クトさせるものである。
【0033】
また、本発明においては、アルミニウムを含む材料からなる上層と透明導電膜との間に
は薄い酸化膜が形成されるため、上層と透明導電膜は直接導通しておらず、下層を介して
電気的に導通が行われている。この点でも大きく従来の構造と異なっている。
【0034】
なお、発光素子は、電場を加えることで発生するルミネッセンス(Electro Luminescence
)が得られる有機化合物を含む層(以下、EL層と記す)と、陽極と、陰極とを有する。
有機化合物におけるルミネッセンスには、一重項励起状態から基底状態に戻る際の発光(
蛍光)と三重項励起状態から基底状態に戻る際の発光(リン光)とがあるが、本発明の成
膜装置および成膜方法により作製される発光装置は、どちらの発光を用いた場合にも適用
可能である。
【0035】
また、本明細書中において、第1の電極とは、発光素子の陽極、或いは陰極となる電極
を指している。発光素子は、第1の電極と、該第1の電極上に有機化合物を含む層と、該
有機化合物を含む層上に第2の電極とを有する構成となっており、形成順序において先に
基板に形成する電極を第1の電極と呼んでいる。
【0036】
また、第1の電極の配置としてはストライプ配列、デルタ配列、モザイク配列などを挙
げることができる。
【0037】
なお、本明細書中における発光装置とは、画像表示デバイス、発光デバイス、もしくは
光源(照明装置含む)を指す。また、発光装置にコネクター、例えばFPC(Flexible prin
ted circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrie
r Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設け
られたモジュール、または発光素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が
直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【0038】
また、本発明の発光装置において、画面表示の駆動方法は特に限定されず、例えば、点
順次駆動方法や線順次駆動方法や面順次駆動方法などを用いればよい。代表的には、線順
次駆動方法とし、時分割階調駆動方法や面積階調駆動方法を適宜用いればよい。また、発
光装置のソース線に入力する映像信号は、アナログ信号であってもよいし、デジタル信号
であってもよく、適宜、映像信号に合わせて駆動回路などを設計すればよい。
【0039】
さらに、ビデオ信号がデジタルの発光装置において、画素に入力されるビデオ信号が定
電圧(CV)のものと、定電流(CC)のものとがある。ビデオ信号が定電圧のもの(C
V)には、発光素子に印加される電圧が一定のもの(CVCV)と、発光素子に印加され
る電流が一定のもの(CVCC)とがある。また、ビデオ信号が定電流のもの(CC)に
は、発光素子に印加される電圧が一定のもの(CCCV)と、発光素子に印加される電流
が一定のもの(CCCC)とがある。
【0040】
また、本発明の発光装置において、静電破壊防止のための保護回路(保護ダイオードな
ど)を設けてもよい。
【0041】
また、アクティブマトリクス型とする場合、第1の電極に接続するTFTを複数設ける
が、TFT構造に関係なく本発明を適用することが可能であり、例えば、トップゲート型
TFTや、ボトムゲート型(逆スタガ型)TFTや、順スタガ型TFTを用いることが可
能である。また、シングルゲート構造のTFTに限定されず、複数のチャネル形成領域を
有するマルチゲート型TFT、例えばダブルゲート型TFTとしてもよい。
【0042】
また、発光素子と電気的に接続するTFTはpチャネル型TFTであっても、nチャネ
ル型TFTであってもよい。pチャネル型TFTと接続させる場合は、陽極と接続させ、
陽極上に正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層と順次積層した後、陰極を形成す
ればよい。また、nチャネル型TFTと接続させる場合は、陰極と接続させ、陰極上に電
子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層と順次積層した後、陽極を形成すればよい。
【0043】
また、TFTのチャネル形成領域としては、非晶質半導体膜、結晶構造を含む半導体膜
、非晶質構造を含む化合物半導体膜などを適宜用いることができる。さらにTFTのチャ
ネル形成領域として、非晶質と結晶構造(単結晶、多結晶を含む)の中間的な構造を有し
、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有する半導体であって、短距離秩序を持ち格子
歪みを有する結晶質な領域を含んでいるセミアモルファス半導体膜(微結晶半導体膜、マ
イクロクリスタル半導体膜とも呼ばれる)も用いることができる。
【0044】
また、本明細書中において、画素電極とは、TFTと接続される電極であり、且つ、対
向基板に設けられる対向電極と対となす電極を指している。また、液晶素子は、画素電極
と、対向電極と、これらの電極に挟まれた液晶層とを指している。アクティブマトリクス
型の液晶表示装置においては、マトリクス状に配置された画素電極を駆動することによっ
て、画面上に表示パターンが形成される。詳しくは選択された画素電極と該画素電極に対
応する対向電極との間に電圧が印加されることによって、画素電極と対向電極との間に配
置された液晶層の光学変調が行われ、この光学変調が表示パターンとして観察者に認識さ
れる。
【発明の効果】
【0045】
本発明により、電極(または配線)と画素電極との接触抵抗を増大させることなく、従
来必要とされていた配線の上層として高融点金属を含む層を設ける工程を省略できる。こ
れにより製造上のコスト低減と時間短縮の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図4】エッチング後の電極端部における斜視図および断面図のSEM写真。
【
図7】第1のTEGパターンを用いた電気測定の結果示すグラフ。(チタンとアルミニウムの積層の実験結果)
【
図8】第2のTEGパターンを用いた電気測定の結果示すグラフ。
【
図11】EL表示パネルを示す上面図。(実施例3)
【
図15】第1のTEGパターンを用いた電気測定の結果示すグラフ。(モリブデンとアルミニウムの積層の実験結果)
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の実施形態について、以下に説明する。
【0048】
(実施の形態1)
ここでは、アクティブマトリクス型の発光装置の例に本発明を説明することとする。
【0049】
図1(A)は、発光装置の画素部における一部を拡大した断面図である。以下に
図1(
A)に示した発光素子を有する半導体装置の作製工程を示す。
【0050】
まず、基板10上に下地絶縁膜11を形成する。基板10側を表示面として発光を取り
出す場合、基板10としては、光透過性を有するガラス基板や石英基板を用いればよい。
また、処理温度に耐えうる耐熱性を有する光透過性のプラスチック基板を用いてもよい。
また、基板10側とは逆の面を表示面として発光を取り出す場合、前述の基板の他にシリ
コン基板、金属基板またはステンレス基板の表面に絶縁膜を形成したものを用いても良い
。ここでは基板10としてガラス基板を用いる。なお、ガラス基板の屈折率は1.55前
後である。
【0051】
下地絶縁膜11としては、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜
などの絶縁膜から成る下地膜を形成する。ここでは下地膜として2層構造を用いた例を示
すが、前記絶縁膜の単層膜または2層以上積層させた構造を用いても良い。なお、特に下
地絶縁膜を形成しなくてもよい。
【0052】
次いで、下地絶縁膜上に半導体層を形成する。半導体層は、非晶質構造を有する半導体
膜を公知の手段(スパッタ法、LPCVD法、またはプラズマCVD法等)により成膜し
た後、公知の結晶化処理(レーザー結晶化法、熱結晶化法、またはニッケルなどの触媒を
用いた熱結晶化法等)を行って得られた結晶質半導体膜を第1のフォトマスクを用いて所
望の形状にパターニングして形成する。この半導体層の厚さは25~80nm(好ましく
は30~70nm)の厚さで形成する。結晶質半導体膜の材料に限定はないが、好ましく
はシリコンまたはシリコンゲルマニウム(SiGe)合金などで形成すると良い。
【0053】
また、非晶質構造を有する半導体膜の結晶化処理として連続発振のレーザーを用いてもよ
く、非晶質半導体膜の結晶化に際し、大粒径に結晶を得るためには、連続発振が可能な固
体レーザを用い、基本波の第2高調波~第4高調波を適用するのが好ましい。代表的には
、Nd:YVO4レーザー(基本波1064nm)の第2高調波(532nm)や第3高調波(
355nm)を適用すればよい。連続発振のレーザーを用いる場合には、出力10Wの連
続発振のYVO4レーザから射出されたレーザ光を非線形光学素子により高調波に変換す
る。また、共振器の中にYVO4結晶と非線形光学素子を入れて、高調波を射出する方法
もある。そして、好ましくは光学系により照射面にて矩形状または楕円形状のレーザ光に
成形して、被処理体に照射する。このときのエネルギー密度は0.01~100MW/c
m2程度(好ましくは0.1~10MW/cm2)が必要である。そして、10~2000
cm/s程度の速度でレーザ光に対して相対的に半導体膜を移動させて照射すればよい。
【0054】
次いで、レジストマスクを除去した後、半導体層を覆うゲート絶縁膜12を形成する。
ゲート絶縁膜12はプラズマCVD法またはスパッタ法を用い、厚さを1~200nmと
する。
【0055】
次いで、ゲート絶縁膜12上に膜厚100~600nmの導電膜を形成する。ここでは
、スパッタ法を用い、TaN膜とW膜との積層からなる導電膜を形成する。なお、ここで
は導電膜をTaN膜とW膜との積層としたが、特に限定されず、Ta、W、Ti、Mo、
Al、Cuから選ばれた元素、または前記元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材
料の単層、またはこれらの積層で形成してもよい。また、リン等の不純物元素をドーピン
グした多結晶シリコン膜に代表される半導体膜を用いてもよい。
【0056】
次いで、第2のフォトマスクを用いてレジストマスクを形成し、ドライエッチング法ま
たはウェットエッチング法を用いてエッチングを行う。このエッチング工程によって、導
電膜をエッチングして、導電層14a、14bを得る。なお、導電層14a、14bはT
FTのゲート電極となる。
【0057】
次いで、レジストマスクを除去した後、第3のフォトマスクを用いてレジストマスクを
新たに形成し、ここでは図示しないnチャネル型TFTを形成するため、半導体にn型を
付与する不純物元素(代表的にはリン、またはAs)を低濃度にドープするための第1の
ドーピング工程を行う。レジストマスクは、pチャネル型TFTとなる領域と、導電層の
近傍とを覆う。この第1のドーピング工程によって絶縁膜を介してスルードープを行い、
低濃度不純物領域を形成する。一つの発光素子は、複数のTFTを用いて駆動させるが、
pチャネル型TFTのみで駆動させる場合には、上記ドーピング工程は特に必要ない。
【0058】
次いで、レジストマスクを除去した後、第4のフォトマスクを用いてレジストマスクを
新たに形成し、半導体にp型を付与する不純物元素(代表的にはボロン)を高濃度にドー
プするための第2のドーピング工程を行う。この第2のドーピング工程によってゲート絶
縁膜12を介してスルードープを行い、p型の高濃度不純物領域17、18を形成する。
【0059】
次いで、第5のフォトマスクを用いてレジストマスクを新たに形成し、ここでは図示しな
いnチャネル型TFTを形成するため、半導体にn型を付与する不純物元素(代表的には
リン、またはAs)を高濃度にドープするための第3のドーピング工程を行う。第3のド
ーピング工程におけるイオンドープ法の条件はドーズ量を1×1013~5×1015/cm2と
し、加速電圧を60~100keVとして行う。レジストマスクは、pチャネル型TFT
となる領域と、導電層の近傍とを覆う。この第3のドーピング工程によってゲート絶縁膜
12を介してスルードープを行い、n型の高濃度不純物領域を形成する。
【0060】
この後、レジストマスクを除去し、水素を含む第1の層間絶縁膜13を成膜した後、半
導体層に添加された不純物元素の活性化および水素化を行う。水素を含む第1の層間絶縁
膜13は、PCVD法により得られる窒化酸化珪素膜(SiNO膜)を用いる。加えて、
結晶化を助長する金属元素、代表的にはニッケルを用いて半導体膜を結晶化させている場
合、活性化と同時にチャネル形成領域19におけるニッケルの低減を行うゲッタリングを
も行うことができる。
【0061】
次いで、層間絶縁膜の2層目となる平坦化絶縁膜16を形成する。平坦化絶縁膜16と
しては、塗布法によって得られるシリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構
成される絶縁膜を用いる。
【0062】
次いで、第6のマスクを用いてエッチングを行い、平坦化絶縁膜16にコンタクトホー
ルを形成すると同時に周縁部の平坦化絶縁膜を除去する。ここでは、第1の層間絶縁膜1
3と選択比が取れる条件でエッチング(ウェットエッチングまたはドライエッチング)を
行う。用いるエッチング用ガスに限定はないが、ここではCF4、O2、He、Arとを用
いることが適している。CF4の流量を380sccm、O2の流量を290sccm、H
eの流量を500sccm、Arの流量を500sccm、RFパワーを3000W、圧
力を25Paとし、ドライエッチングを行う。なお、第1の層間絶縁膜13上に残渣を残
すことなくエッチングするためには、10~20%程度の割合でエッチング時間を増加さ
せると良い。1回のエッチングでテーパー形状としてもよいし、複数のエッチングによっ
てテーパー形状にしてもよい。ここでは、さらにCF4、O2、Heを用いて、CF4の流
量を550sccm、O2の流量を450sccm、Heの流量を350sccm、RF
パワーを3000W、圧力を25Paとする2回目のドライエッチングを行ってテーパー
形状とする。平坦化絶縁膜の端部におけるテーパー角θは、30°を越え75°未満とす
ることが望ましい。
【0063】
次いで、第6のマスクをそのままマスクとしてエッチングを行い、露呈しているゲート
絶縁膜12、および第1の層間絶縁膜13を選択的に除去する。エッチング用ガスにCH
F3とArを用いてゲート絶縁膜12、および第1の層間絶縁膜13のエッチング処理を
行う。なお、半導体層上に残渣を残すことなくエッチングするためには、10~20%程
度の割合でエッチング時間を増加させると良い。
【0064】
次いで、第6のマスクを除去し、コンタクトホールで半導体層と接する2層構造からな
る導電膜を形成する。下層となる第1導電層22aは、高融点金属(Ti、Moなど)ま
たは高融点金属化合物(TiNなど)を用い、20nm~200nmの膜厚範囲とする。
下層となる第1導電層22aは、シリコンとアルミニウムの相互拡散を防止する効果を有
している。
【0065】
また、上層となる第2導電層22bは、配線の電気抵抗値を低くするため、低抵抗金属
(代表的にはAl)を用い、0.1μm~2μmの膜厚範囲とする。なお、各層の表面を
酸化させないように、これら2層を同じスパッタ装置で連続して形成することが好ましい
。
【0066】
次いで、第7のマスクを用いて第1のエッチングを行う。第1のエッチングでは、上層
が幅W1となるようにパターニングする。第1のエッチングは、ドライエッチング法また
はウェットエッチング法を用いる。
【0067】
次いで、レジストマスクを残したまま、第2のエッチングを行い、ICP(Inductivel
y Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用いてレジストマスクを後退さ
せながら第2導電層をエッチングして幅W2とする。第2のエッチングの際、第1導電層
も僅かに除去されてテーパー部が形成される。ICPエッチング法を用いれば、エッチン
グ条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される電力量、基板側
の電極温度等)を適宜調節することによって所望のテーパー形状に膜をエッチングするこ
とができる。なお、エッチング用ガスとしては、Cl2、BCl3、SiCl4、CCl4な
どを代表とする塩素系ガスまたはCF4、SF6、NF3などを代表とするフッ素系ガス、
またはO2を適宜用いることができる。
【0068】
また、ICPエッチング法を用いてテーパー形状を形成する場合、電極の両側に均等に
突出部が形成される。なお、第2のエッチング条件によっては、第1の導電層がエッチン
グされて露呈した領域の平坦化絶縁膜16も僅かにエッチングされることがある。
【0069】
次いで、上記2層構造を有する配線または電極に接して透明導電膜を形成する。透明導
電膜と第1導電層22aとを直接接して形成し、良好なオーミック接合を得ることができ
る。そして、第8のマスクを用いてエッチングを行い、第1の電極23R、23G、即ち
、有機発光素子の陽極(或いは陰極)を形成する。
【0070】
第1の電極の材料として、ITO(酸化インジウムスズ)、またはITSO(ITOに
酸化珪素が2~10重量%含まれたターゲットを用いてスパッタリング法で得られる酸化
珪素を含む酸化インジウムスズ)を用いる。ITSOの他、酸化珪素を含み酸化インジウ
ムに2~20%の酸化亜鉛(ZnO)を混合した透光性酸化物導電膜(IZO)などの透
明導電膜を用いても良い。また、酸化珪素を含むATO(アンチモン・チン・オキサイド
)の透明導電膜を用いても良い。
【0071】
なお、第1の電極23R、23GとしてITOを用いる場合は、電気抵抗値を下げるた
めに結晶化させるベークを行う。対して、ITSOやIZOは、ベークを行ってもITO
のように結晶化せず、アモルファス状態のままである。
【0072】
上述した方法で得られる2層の電極とITSOとの接触抵抗と、比較例における接触抵
抗とを比べるため、以下に示す実験を行った。
【0073】
ガラス基板上に絶縁層として酸化珪素膜を形成し、チタン層(厚さ100nm)の上に
純アルミニウム層(厚さ700nm、抵抗率4μΩcm)を連続でスパッタ法により成膜
し、2層構造の金属層とした後、フォトリソグラフィーにより電極パターンのレジストマ
スクを形成し、以下の3つの方法で2層構造の金属層をエッチングして2つのサンプルを
形成する。
【0074】
サンプル1(比較例)として、2層構造の金属層に対して一回のICP装置を用いたプ
ラズマエッチングのみで金属層の2層両方をエッチングした。この結果、形成された電極
端面は垂直に近い約80°のテーパー角となった。その後、透明電極となるITSO膜を
スパッタ法により形成し、フォトリソグラフィーを用いてパターン形成を行った。
【0075】
サンプル2(本発明)として、2層構造の金属層に対してICP装置を用いた2段階の
プラズマエッチングを行い、下層のチタン層が突出した形状を得た。具体的には、第1の
エッチングでエッチング後の電極端面が60°程度のテーパー角になるようにエッチング
し、第1のエッチング条件とは異なる第2のエッチングで上層のアルミニウム層を選択的
に、端面がほぼ垂直になる条件でエッチングした。
【0076】
第1のエッチングにおける第1条件は、エッチング用ガスにBCl3とCl2とを用い、
それぞれのガス流量比を60(sccm)、20(sccm)とし、1.9Paの圧力で
コイル型の電極に450WのRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを生成し
てエッチングを100秒行った。なお、基板側(試料ステージ)にも100WのRF(1
3.56MHz)電力を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。なお、基板
側の電極面積サイズは、12.5cm×12.5cmであり、コイル型の電極面積サイズ
(ここではコイルの設けられた石英円板)は、直径25cmの円板である。次に第2条件
として、ガス及び流量比を第1条件と同じにしたまま、圧力を1.2Paとし、コイル型
の電極に600WのRF電力を、基板側に250WのRF電力をそれぞれ投入し、プラズ
マを生成してエッチングを160秒行った。
【0077】
そして、第2のエッチングにおける条件は、エッチング用ガスにBCl3とCl2とを用
い、それぞれのガス流量比を40(sccm)、40(sccm)とし、3.5Paの圧
力でコイル型の電極に200WのRF電力を、基板側に50WのRF電力をそれぞれ投入
し、プラズマを生成してエッチングを60秒行った。
【0078】
なお、エッチング後のSEM(走査型電子顕微鏡)写真として
図4(A)に斜視図、図
4(B)に断面図、
図4(C)に断面模式図を示す。また、突出した部分の長さは0.2
2μmであった。即ち、上層の端部から下層の端部まで0.22μm離れており、下層の
幅W1は上層の幅W2よりも0.44μm広くなっている。その後、透明電極となるIT
SO膜をスパッタ法により形成し、フォトリソグラフィーを用いてパターン形成を行った
。
【0079】
なお、上記各2つのサンプルについて、電気抵抗測定のためのTEG(Test El
ement Group:測定用単体素子)パターンをそれぞれ2通り作成した。
【0080】
1つは、金属層とITSO層が直列接続になるよう交互に配置されたコンタクトチェー
ンと呼ばれる第1のTEG(上面レイアウト図を
図5(A)、コンタクト部の拡大した測
長値の関係を
図6(B)に示す)であり、配線とITOと両者の接触界面の3つの抵抗要
素が直列接続されたものである。
【0081】
もう一つは、ケルビン測定を行うために金属層とITSO層が十字形に重ねて配置され
た第2のTEG(上面レイアウト図を
図6(A)、コンタクト部の拡大した測長値の関係
を
図6(B)に示す)とである。
【0082】
次に、上記2つのサンプルを用い、第1のTEGについて電気抵抗測定を行ったところ
、サンプル1(比較例)と比べて、サンプル2(本発明)は、1Vでの抵抗値(コンタク
ト1個当たり)が77%減少している。
【0083】
また、
図7に第1のTEGについての電気抵抗測定を行った結果を示す。なお、ITS
Oの抵抗率は4000μΩcmとして算出している。
【0084】
また、上記2つのサンプルを用い、第2のTEGについて電気抵抗測定を行ったところ
、サンプル1(比較例)よりもサンプル2(本発明)の接触抵抗値が小さかった。
図8に
第2のTEGについての電気抵抗測定を行った結果を示す。
【0085】
以上の実験から、下層(チタン層)を突出させた2層構造の電極とすることで、ITS
Oとの接触抵抗を低減できることが示された。
【0086】
また、下層(チタン層)に代えてモリブデン層(膜厚100nm)を用い、同様にして
第1のTEGについての電気抵抗測定を行った結果を
図15に示す。なお、ITSOの抵
抗率は4000μΩcmとして算出している。
図15において、下層のモリブデン層の端
面がほぼ垂直になる条件でエッチングした比較用のサンプルを実線で示している。また、
図15において、下層のモリブデン層が突出し、且つ、端面が60°程度のテーパー角と
したサンプルを×印として示している。
図15からも、下層(モリブデン層)を突出させ
た2層構造の電極とすることで、ITSOとの接触抵抗を低減できることが示された。
【0087】
また、下層の膜厚の条件を100nm、200nm、300nmと振って、同様に電気
抵抗測定を行ったところ、下層の膜厚が厚ければ厚いほど接触抵抗値が低減された。
【0088】
また、
図1(B)に透明導電膜からなる第1の電極とTiからなる下層とが接している
部分の拡大断面図を示す。
図1(B)に示すように上層となる第2導電層22bの表面に
は酸化アルミニウム膜34が薄く形成されており、透明導電膜からなる第1の電極は下層
のみと電気的に接合している。
図1(B)では下層22aの端部におけるテーパー角αが
、上層となる第2導電層22bの端部におけるテーパー角βよりも小さい例を示している
。なお、下層となる第1導電層22aの端部におけるテーパー角αが小さければ小さいほ
ど、第1の電極と第1導電層の接触面積は増加する。
【0089】
次いで、第8のマスクを用いて第1の電極23R、23Gの端部を覆う絶縁物29(バン
ク、隔壁、障壁、土手などと呼ばれる)を形成する。絶縁物29としては、塗布法により
得られる有機樹脂膜、またはSOG膜(例えば、アルキル基を含むSiOx膜)を膜厚0
.8μm~1μmの範囲で用いる。
【0090】
次いで、有機化合物を含む層24R、24Gを、蒸着法または塗布法を用いて積層形成
する。なお、信頼性を向上させるため、有機化合物を含む層24R、24Gの形成前に真
空加熱を行って脱気を行うことが好ましい。例えば、有機化合物材料の蒸着を行う前に、
基板に含まれるガスを除去するために減圧雰囲気や不活性雰囲気で200℃~300℃の
加熱処理を行うことが望ましい。有機化合物を含む層24R、24Gの形成に蒸着法を用
い、真空度が5×10-3Torr(0.665Pa)以下、好ましくは10-4~10-6T
orrまで真空排気された成膜室で蒸着を行う。蒸着の際、予め、抵抗加熱により有機化
合物は気化されており、蒸着時にシャッターが開くことにより基板の方向へ飛散する。気
化された有機化合物は、上方に飛散し、メタルマスクに設けられた開口部を通って基板に
蒸着される。
【0091】
なお、フルカラー化するために、発光色(R、G、B)ごとにマスクのアライメントを
行う。
【0092】
有機化合物を含む層24R、24Gは積層であり、第1の電極上に正孔注入層、正孔輸
送層、発光層、電子輸送層と順次形成する。例えば、有機化合物を含む層24Rのうち、
発光層としてDCMが添加されたAlq3を40[nm]成膜する。また、有機化合物を
含む層24Gのうち、発光層としてDMQDが添加されたAlq3を40[nm]成膜す
る。また、ここでは図示していないが青色の青色の発光層としてCBP(4,4'-ビス
(N-カルバゾリル)-ビフェニル)が添加されたPPD(4,4'-ビス(N-(9-
フェナントリル)-N-フェニルアミノ)ビフェニル)を30nm、ブロッキング層とし
てSAlq(ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミ
ニウム)を10[nm]成膜する。
【0093】
次いで、第2の電極25、即ち、有機発光素子の陰極(或いは陽極)を形成する。第2
の電極25の材料としては、MgAg、MgIn、AlLiなどの合金、CaF2、Ca
N、または周期表の1族もしくは2族に属する元素とアルミニウムとを共蒸着法により形
成した膜を用いればよい。
【0094】
また、第2の電極25を形成する前に陰極バッファ層としてCaF2、MgF2、またはB
aF2からなる透光性を有する層(膜厚1nm~5nm)を形成してもよい。
【0095】
また、第2の電極25を保護する保護層を形成してもよい。
【0096】
次いで、封止基板33をシール材(図示しない)で貼り合わせて発光素子を封止する。
なお、一対の基板およびシール材で囲まれた領域27には乾燥した不活性気体、或いは透
明な充填材を充填する。不活性気体としては希ガスまたは窒素を用いることができ、乾燥
させるための乾燥剤を封止基板33に配置する。また、充填材としては、透光性を有して
いる材料であれば特に限定されず、代表的には紫外線硬化または熱硬化のエポキシ樹脂を
用いればよい。なお、充填材を一対の基板間に充填すると、全体の透過率を向上させるこ
とができる。
【0097】
第1の電極を透明材料、第2の電極を金属材料とすれば、基板10を通過させて光を取
り出す構造、即ちボトムエミッション型となる。また、第1の電極を金属材料、第2の電
極を透明材料とすれば、封止基板33を通過させて光を取り出す構造、即ちトップエミッ
ション型となる。また、第1の電極および第2の電極を透明材料とすれば、基板10と封
止基板33の両方を通過させて光を取り出す構造とすることができる。本発明は、適宜、
いずれか一の構造とすればよい。
【0098】
また、基板10を通過させて光を取り出す際、発光層から放出される発光が通過する層
、即ち、第1の電極、1層目の層間絶縁膜13、2層目の層間絶縁膜16、ゲート絶縁膜
12、下地絶縁膜11には全て酸化珪素(約1.46前後)が含まれているため、それぞ
れの屈折率の差が小さくなって光の取り出し効率が向上する。即ち、屈折率の異なる材料
層間での迷光を抑えることができる。
【0099】
(実施の形態2)
ここでは、実施の形態1とは2層構造の電極の形状が異なる例を
図2(A)および
図2(
B)を用いて以下に説明する。
【0100】
なお、第1導電層222a及び第2導電層222bからなる電極を形成する工程以外の工
程は、実施の形態1と同一であるので、ここでは詳細な説明は省略する。従って、
図2(
A)及び
図2(B)において、
図1(A)と同じ箇所の部分には同じ符号を用いている。
【0101】
実施の形態1に従って、コンタクトホールで半導体層と接する2層構造からなる導電膜
を形成する。下層となる第1導電層222aは、高融点金属(Ti、Moなど)または高
融点金属化合物(TiNなど)を用い、20nm~200nmの膜厚範囲とする。下層と
なる第1導電層222aは、シリコンとアルミニウムの相互拡散を防止する効果を有して
いる。
【0102】
また、上層となる第2導電層222bは、配線の電気抵抗値を低くするため、低抵抗金
属(代表的にはAl)を用い、0.1μm~2μmの膜厚範囲とする。なお、各層の表面
を酸化させないように、これら2層を同じスパッタ装置で連続して形成することが好まし
い。
【0103】
次いで、第7のマスクを用いて第1のエッチングを行う。第1のエッチングでは、上層
が幅W4となるようにパターニングする。第1のエッチングは、ドライエッチング法また
はウェットエッチング法を用いる。
【0104】
次いで、第8のマスクを用いて第2のエッチングを行う。第2のエッチングでは、下層
が幅W3となるようにパターニングする。第2のエッチングは、ドライエッチング法また
はウェットエッチング法を用いる。
【0105】
上記2回のエッチングによって、上層の幅W4は第7のマスクによって決定され、下層
の幅W3は第8のマスクによって決定される。
【0106】
次いで、実施の形態1と同様にして、上記2層構造を有する配線または電極に接して透
明導電膜を形成する。透明導電膜と第1導電層222aとを直接接して形成し、良好なオ
ーミック接合を得ることができる。そして、第9のマスクを用いてエッチングを行い、第
1の電極23R、23G、即ち、有機発光素子の陽極(或いは陰極)を形成する。
【0107】
以降の工程は、実施の形態1と同一であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0108】
ここでは、突出した部分を形成するために2回のパターニングを行って
図2(A)に示
す電極構造を得る例を示した。2回のパターニングを行う場合には、実施の形態1に示す
ように上層の両側に均等に突出部を形成するのではなく、後に形成する第1の電極と重な
る部分だけに突出部を形成することもできる。即ち、2つのパターニングマスクを適宜設
計することによって、第1の電極と下層の接触面積を制御することができる。
【0109】
また、
図2(B)に透明導電膜からなる第1の電極とTiからなる下層とが接している
部分の拡大断面図を示す。
図2(B)に示すように第2導電層222bの表面には酸化ア
ルミニウム膜34が薄く形成されており、透明導電膜からなる第1の電極は下層のみと電
気的に接合している。
図2(B)では下層となる第1導電層222aの端部におけるテー
パー角αが、第2導電層222bの端部におけるテーパー角βよりも大きい例を示してい
る。なお、
図2(B)に示すように、下層の上面部および端面と、第1の電極とが電気的
に接続されているが、第1の電極が下層端面と接している面積よりも、第1の電極が下層
上面と接している面積のほうが広い構造となっている。
【0110】
また、本実施の形態は実施の形態1と自由に組み合わせることができる。
【0111】
(実施の形態3)
ここでは、透明導電膜と、2層構造の電極との間にもう一層の絶縁膜を設けた例を
図3を
用いて以下に説明する。
【0112】
なお、第1導電層22a、第2導電層22b、及び第3導電層22cからなる電極を形
成するまでの工程は、実施の形態1と同一であるのでここでは詳細な説明は省略する。ま
た、
図3において、
図1(A)と同一の箇所には同じ符号を用いる。
【0113】
まず、実施の形態1に示した工程に従って、2層構造の電極22a、22bを形成する
。次いで、層間絶縁膜の3層目となる平坦化絶縁膜320を形成する。平坦化絶縁膜32
0としては、塗布法によって得られるシリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造
が構成される絶縁膜を用いる。ここでは3層目の平坦化絶縁膜320で平坦化を行うため
、平坦化絶縁膜16は特に平坦でなくともよく、例えば、PCVD法による無機絶縁膜を
用いてもよい。
【0114】
次いで、平坦化絶縁膜320を選択的にエッチングして、上層となる第2導電層22b
及び平坦化絶縁膜16に達するコンタクトホールを形成する。次いで、透明導電膜を成膜
して、パターニングを行い、第1の電極323R、323Gを形成する。
【0115】
次いで、実施の形態1に示した工程と同様にして第1の電極323R、323Gの端部
を覆う絶縁物329を形成する。以降の工程は実施の形態1と同一であるのでここでは詳
細な説明は省略することとする。
【0116】
図3に示す構造とすることで、第1の電極面積を広くすることが可能となり、発光領域
を広くすることができる。
【0117】
また、本実施の形態は実施の形態1または実施の形態2と自由に組み合わせることがで
きる。
【0118】
以上の構成でなる本発明について、以下に示す実施例でもってさらに詳細な説明を行う
こととする。
【実施例0119】
本実施例では、フルカラーの発光装置の説明を
図9を用いて説明する。
図9はアクティブ
マトリクス型の発光装置の一部断面を示す図である。
【0120】
下地絶縁膜1002が設けられた第1の基板1001上には、3つのTFT1003R
、1003G、1003Bを設けている。これらのTFTは、チャネル形成領域1020
と、ソース領域またはドレイン領域1021、1022とを有し、ゲート絶縁膜1005
と、ゲート電極を有するpチャネル型TFTである。また、ゲート電極は2層となってお
り、テーパー形状となっているゲート電極の下層1023aと、ゲート電極の上層102
3bとで構成されている。
【0121】
また、層間絶縁膜1006は、無機絶縁膜である。また、層間絶縁膜1006を覆う平
坦化絶縁膜1007は、塗布法による平坦な層間絶縁膜である。
【0122】
発光素子においては、第1の電極を平坦とすることが重要であり、平坦化絶縁膜1007
が平坦でない場合、平坦化絶縁膜1007の表面凹凸の影響によって第1の電極も平坦と
ならない恐れがある。従って、平坦化絶縁膜1007の平坦性は重要である。
【0123】
また、TFTのドレイン配線、またはソース配線1024a、1024bは、2層構造と
している。後に透明導電膜と接続させる部分において、ドレイン配線、またはソース配線
の下層1024aがドレイン配線、またはソース配線の上層1024bより広い幅を有し
ている。この電極形状は、実施の形態2に従い、突出した部分を形成するために2回のパ
ターニングを行って得る。ここでは、ドレイン配線、またはソース配線の下層1024a
には膜を用い、ドレイン配線、またはソース配線の上層1024bにはアルミニウム単体
膜を用いた積層膜とする。TFTのドレイン配線、またはソース配線の上層1024bは
、層間絶縁膜のカバレッジを考慮して、テーパー形状とすることが好ましい。
【0124】
また、実施の形態1に従って、下層の側面部が上層の側面部におけるテーパー角より小
さいテーパ角としてもよい。
【0125】
また、隔壁1009は樹脂であり、異なる発光を示す有機化合物を含む層との仕切りの役
目を果たしている。従って、隔壁1009は、一つの画素、即ち、発光領域を囲むように
格子形状としている。また、異なる発光を示す有機化合物を含む層が隔壁上で重なっても
よいが、隣り合う画素の第1の電極とは重ならないようにする。
【0126】
発光素子は、透明導電材料からなる第1の電極1008と、有機化合物を含む層1015
R、1015G、1015Bと、第2の電極1010とで構成されている。本実施例にお
いて、第1の電極1008は、下層1024aと接して導通させている。
【0127】
また、第1の電極1008及び第2の電極1010は仕事関数を考慮して材料を選択する
必要がある。但し第1の電極及び第2の電極は、画素構成によりいずれも陽極、又は陰極
となりうる。駆動用TFTの極性がpチャネル型である場合、第1の電極を陽極、第2の
電極を陰極とするとよい。また、駆動用TFTの極性がNチャネル型である場合、第1の
電極を陰極、第2の電極を陽極とすると好ましい。
【0128】
また、有機化合物を含む層1015R、1015G、1015Bは、第1の電極(陽極
)側から順に、HIL(ホール注入層)、HTL(ホール輸送層)、EML(発光層)、
ETL(電子輸送層)、EIL(電子注入層)の順に積層されている。なお、有機化合物
を含む層は、積層構造以外に単層構造、又は混合構造をとることができる。フルカラーと
するため、有機化合物を含む層1015R、1015G、1015Bは、それぞれ選択的
に形成して、R、G、Bの3種類の画素を形成する。
【0129】
また、水分や脱ガスによるダメージから発光素子を保護するため、第2の電極1010
を覆う保護膜1011、1012を設けることが好ましい。保護膜1011、1012と
しては、PCVD法による緻密な無機絶縁膜(SiN、SiNO膜など)、スパッタ法に
よる緻密な無機絶縁膜(SiN、SiNO膜など)、炭素を主成分とする薄膜(DLC膜
、CN膜、アモルファスカーボン膜)、金属酸化物膜(WO2、CaF2、Al2O3など)
などを用いることが好ましい。
【0130】
第1の基板1001と第2の基板1016との間の間隔1014には、充填材料または不
活性ガスを充填する。窒素などの不活性ガスを充填する場合は、乾燥させるための乾燥剤
を間隔1014に設けることが好ましい。
【0131】
また、発光素子の光は、第1の基板1001を通過して取り出される。
図9に示す構造
は下方出射型の発光装置である。
【0132】
また、ここではトップゲート型TFTを例として説明したが、TFT構造に関係なく本
発明を適用することが可能であり、例えばボトムゲート型(逆スタガ型)TFTや順スタ
ガ型TFTに適用することが可能である。
【0133】
また、本実施例は実施の形態1、実施の形態2、または実施の形態3と自由に組み合わ
せることができる。