(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168545
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】二量体抗原受容体(DAR)
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20231116BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20231116BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20231116BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20231116BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20231116BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20231116BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20231116BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231116BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20231116BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20231116BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231116BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231116BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C07K16/28
C07K14/725
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N5/10
A61K35/17
A61K39/00 H
A61K48/00
A61P35/00
A61P35/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023172758
(22)【出願日】2023-10-04
(62)【分割の表示】P 2020546854の分割
【原出願日】2019-03-11
(31)【優先権主張番号】62/640,775
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514291864
【氏名又は名称】ソレント・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Sorrento Therapeutics, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリー ホンジュン ジ
(72)【発明者】
【氏名】ウェンジョン グオ
(72)【発明者】
【氏名】ヤンリャン ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ガナー エフ. カウフマン
(72)【発明者】
【氏名】ベイ ベイ ディン
(57)【要約】
【課題】二量体抗原受容体(DAR)の提供。
【解決手段】本開示は、1つのポリペプチド上の重鎖結合領域と別個のポリペプチド鎖上の軽鎖結合領域とを含む二量体抗原受容体(DAR)構築物を提供する。二量体抗原受容体を構成する2つのポリペプチド鎖は、二量体化して抗原結合ドメインを形成することができる。二量体抗原受容体は標的抗原に特異的に結合するので、二量体抗原受容体は抗体様特性を有する。二量体抗原受容体は、指向性細胞療法のために使用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条に基づき、2018年3月9日に出願され、“Dimeric Antigen Receptors and Bivalent Antigen Receptors”と題された米国仮出願第62/640,775号の優先権の利益を主張し、その内容の全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願を通じて、様々な刊行物、特許および/または特許出願が参照されている。本開示が関連する分野の水準をより完全に記載するために、これらの刊行物、特許および/または特許出願の開示は、参照により、その全体が本願中に組み込まれる。
【0003】
本開示は、標的抗原に特異的に結合する二量体抗原受容体(DAR)タンパク質構築物、該二量体抗原受容体をコードする核酸、該核酸を含むベクターおよび該ベクターを保有する宿主細胞を提供する。
【背景技術】
【0004】
とりわけ、がんに関連する抗原を標的とするために、キメラ抗原受容体(CAR)が開発されてきた。第一世代CARは、活性化刺激(シグナル1)のみを送達するシグナル伝達ドメイン(TCRζ)を含有するように操作された(Geigerら、J.Immunol.162(10):5931-5939,1999;Haynesら、J.Immunol.166(1):182-187,2001)(Hombachら、Cancer
Res.61(5):1976-1982,2001;Hombachら、J.Immunol.167(11):6123-6131,2001;Maherら、Nat.Biotechnol.20(1):70-75,2002)。第一世代CARを単独で移植されたT細胞は、最適に満たない活性化のため、限られた抗腫瘍有効性を示した(Beechamら、J.Immunother.23(6):631-642,2000)。第二世代CARである免疫グロブリン-CD28-T細胞受容体(IgCD28TCR)は、第一世代受容体中に共刺激CD28(シグナル2)を組み込み(Gerstmayerら、J.Immunol.158(10):4584-4590,1997;Emtageら、Clin.Cancer Res.14(24):8112-8122,2008;Lo,Maら、Clin.Cancer Res.16(10):2769-2780,2010)、CAR-T細胞により大きな抗腫瘍能力を与えた(Finneyら、J.Immunol.161(6):2791-2797,1998;Hombachら、Cancer Res.61(5):1976-1982,2001,Maherら、Nat.Biotechnol.20(1):70-75,2002)。TCRζまたはCD28のシグナルドメインを、FcRγ、4-1BBおよびOX40などの類似の機能を有する分子で置き換えることによって、様々なCARバリアントが開発されてきた(Eshharら、Proc.Natl.Acad.Sci.U S A 90(2):720-724,1993)。様々な腫瘍抗原に対するTCR CAR-T細胞が開発されてきた(Maら、Cancer Gene Ther.11(4):297-306,2004;Maら、Prostate 61(1):12-25,2004;Loら、Clin.Cancer Res.16(10):2769-2780,2010;Kongら、Clin.Cancer Res.18(21):5949-5960,2012;Maら、Prostate 74(3):286-296,2014;Katzら、Clin.Cancer Res.21(14):3149-3159,2015;Junghansら、2016 The Prostate,76(14):1257-1270)。
【0005】
リダイレクトされた殺腫瘍活性のためにキメラ抗原受容体(CAR)で操作されたT細胞の注入による養子免疫療法は、転移性がんの処置についての潜在的に高度に特異的な様式を表す。B細胞上に発現される分子であるCD19を標的とするCAR-T細胞は、B細胞悪性病変の処置において成功を示しており、FDAの承認を受けて、いくつかの試験は、持続的な完全奏効を含む最大70%の応答を示した。
このため、抗体介在性細胞療法において、重鎖結合領域と軽鎖結合領域の両方を別個のポリペプチド鎖中に有する抗体を用いたCAR処置の強力な有効性を活用する必要性が本分野においてなお存在する。本開示は、本分野におけるこの必要性を充足するために行われた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Geigerら、J.Immunol.162(10):5931-5939,1999
【非特許文献2】Haynesら、J.Immunol.166(1):182-187,2001
【非特許文献3】Hombachら、Cancer Res.61(5):1976-1982,2001
【非特許文献4】Hombachら、J.Immunol.167(11):6123-6131,2001
【非特許文献5】Maherら、Nat.Biotechnol.20(1):70-75,2002
【非特許文献6】Beechamら、J.Immunother.23(6):631-642,2000
【非特許文献7】Gerstmayerら、J.Immunol.158(10):4584-4590,1997
【非特許文献8】Emtageら、Clin.Cancer Res.14(24):8112-8122,2008
【非特許文献9】Lo,Maら、Clin.Cancer Res.16(10):2769-2780,2010
【非特許文献10】Finneyら、J.Immunol.161(6):2791-2797,1998
【非特許文献11】Hombachら、Cancer Res.61(5):1976-1982,2001
【非特許文献12】Maherら、Nat.Biotechnol.20(1):70-75,2002
【非特許文献13】Eshharら、Proc.Natl.Acad.Sci.U S A 90(2):720-724,1993
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に10の領域を含む二量体抗原受容体(DAR)前駆体ポリペプチド:(1)重鎖リーダー配列(2)抗体重鎖可変領域、(3)抗体重鎖定常領域、(4)必要に応じて存在するヒンジ領域、(5)膜貫通領域、(6)細胞内シグナル伝達領域、(7)T2A切断配列、(8)軽鎖リーダー配列、(9)抗体軽鎖可変領域、および(10)抗体軽鎖定常領域を提供する。
【0008】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に10の領域を含む二量体抗原受容体(DAR)前駆体ポリペプチド:(1)軽鎖リーダー配列(2)抗体軽鎖可変領域、(3)抗体軽鎖定常領域、(4)必要に応じて存在するヒンジ領域、(5)膜貫通領域、(6)細胞内シグナル伝達領域、(7)T2A切断配列、(8)重鎖リーダー配列、(9)抗体重鎖可変領域、および(10)抗体重鎖定常領域を提供する。
【0009】
一実施形態において、前駆体ポリペプチドは、IgG、IgA、IgM、IgEおよびIgDからなる群より選択される抗体からのヒンジ配列を必要に応じて含む。一実施形態において、前駆体ポリペプチドは、CD8αまたはCD28ヒンジ領域からのヒンジ配列を含む。一実施形態において、前駆体ポリペプチドは、CPPCまたはSPPCアミノ酸配列を含むヒンジ領域を含む。
【0010】
一実施形態において、前駆体ポリペプチドは、CD8α、CD8β、4-1BB/CD137、CD28、CD34、CD4、FcεRIγ、CD16、OX40/CD134、CD3ζ、CD3ε、CD3γ、CD3δ、TCRα、TCRβ、TCRζ、CD32、CD64、CD64、CD45、CD5、CD9、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD137、CD154、LFA-1 T細胞共受容体、CD2 T細胞共受容体/接着分子、CD40、CD4OL/CD154、VEGFR2、FASまたはFGFR2Bからの膜貫通領域を含む。
【0011】
一実施形態において、前駆体ポリペプチドは、4-1BB、CD3ζ、CD28、CD27、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、GITR(TNFRSF18)、DR3(TNFRSF25)、TNFR2および/またはCD226からの2~5個のシグナル伝達配列の任意の順序および任意の組み合わせでの細胞内シグナル伝達配列を含む細胞内シグナル伝達領域を含む。
【0012】
一実施形態において、前駆体ポリペプチドは、配列番号15または18のアミノ酸配列を含む。
【0013】
本開示は、(a)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖:(i)抗体重鎖可変領域、(ii)抗体重鎖定常領域、(iii)必要に応じて存在するヒンジ領域、(iv)膜貫通領域、および(v)2つまたは3つの細胞内シグナル伝達配列を含む細胞内シグナル伝達領域;ならびに(b)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖:(i)抗体軽鎖可変領域、および(ii)抗体軽鎖定常領域を含む二量体抗原受容体(DAR)を提供し、抗体重鎖定常領域および抗体軽鎖定常領域は二量体化ドメインを形成し、および抗体重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域は抗原結合ドメインを形成する。
【0014】
本開示は、(a)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖:(i)抗体軽鎖可変領域、(ii)抗体軽鎖定常領域、(iii)必要に応じて存在するヒンジ領域、(iv)膜貫通領域、および(v)2つまたは3つの細胞内シグナル伝達配列を含む細胞内シグナル伝達領域;ならびに(b)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖:(i)抗体重鎖可変領域、および(ii)抗体重鎖定常領域を含む二量体抗原受容体(DAR)を提供し、抗体重鎖定常領域および抗体軽鎖定常領域は二量体化ドメインを形成し、および抗体重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域は抗原結合ドメインを形成する。
【0015】
一実施形態において、二量体抗原受容体(DAR)は、1または2のジスルフィド結合を介して二量体化する、抗体重鎖定常領域と抗体軽鎖定常領域とを含む。
【0016】
一実施形態において、二量体抗原受容体(DAR)は、IgG、IgA、IgM、IgEおよびIgDからなる群より選択される抗体に由来し得るヒンジ領域を必要に応じて含む。一実施形態において、ヒンジは、CD8αまたはCD28ヒンジ領域を含む。一実施形態において、ヒンジ領域は、CPPCまたはSPPCアミノ酸配列を含む。
【0017】
一実施形態において、二量体抗原受容体(DAR)は、CD8α、CD8β、4-1BB/CD137、CD28、CD34、CD4、FcεRIγ、CD16、OX40/CD134、CD3ζ、CD3ε、CD3γ、CD3δ、TCRα、TCRβ、TCRζ、CD32、CD64、CD64、CD45、CD5、CD9、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD137、CD154、LFA-1 T細胞共受容体、CD2 T細胞共受容体/接着分子、CD40、CD4OL/CD154、VEGFR2、FASおよびFGFR2Bからの膜貫通領域を含む。
【0018】
一実施形態において、二量体抗原受容体(DAR)は、4-1BB、CD3ζ、CD28、CD27、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、GITR(TNFRSF18)、DR3(TNFRSF25)、TNFR2および/またはCD226からの2~5個のシグナル伝達配列の任意の順序および任意の組み合わせでの細胞内シグナル伝達配列を含む細胞内シグナル伝達領域を含む。
【0019】
本開示は、(a)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖:(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むCD38抗体重鎖可変領域、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むCD38抗体重鎖定常領域、(iii)配列番号5のアミノ酸配列を含むCD28ヒンジ領域および必要に応じて配列番号21のアミノ酸配列を含む第二のヒンジ領域、(iv)配列番号6のアミノ酸配列を含むCD28膜貫通領域、および(v)配列番号7のアミノ酸配列を含む4-1BB細胞内シグナル伝達配列および配列番号9または20のアミノ酸配列を含むCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む細胞内シグナル伝達領域;ならびに(b)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖:(i)配列番号3のアミノ酸配列を含むCD38抗体軽鎖可変領域、および(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含むCD38抗体軽鎖定常領域を含む二量体抗原受容体(DAR)を提供し、抗体重鎖定常領域および抗体軽鎖定常領域は二量体化ドメインを形成し、抗体重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域はCD38タンパク質に結合する抗原結合ドメインを形成する。一実施形態において、ヒンジ領域は必要に応じたものである。
【0020】
一実施形態において、二量体抗原受容体(DAR)は、配列番号13のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチドおよび配列番号14のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチドを含む。
【0021】
一実施形態において、二量体抗原受容体(DAR)は、配列番号16のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチドおよび配列番号17のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチドを含む。
【0022】
本開示は、(1)配列番号10のアミノ酸配列を含む抗体重鎖リーダー配列と、(2)配列番号1のアミノ酸配列を含む抗体重鎖可変領域と、(3)配列番号2のアミノ酸配列を含む抗体重鎖定常領域と、(4)配列番号5のアミノ酸配列を含む必要に応じて存在する(optional)ヒンジ領域(hinger region)と、(5)配列番号6のアミノ酸配列を含む膜貫通領域と、(6)配列番号7のアミノ酸配列を含む4-1BBシグナル伝達配列、配列番号8のアミノ酸配列を含むCD28シグナル伝達配列、配列番号9のアミノ酸配列を含むCD3ζ(長)シグナル伝達および/またはITAM3モチーフを有し、配列番号20のアミノ酸配列を含むCD3ζ(短)シグナル伝達配列からなる群より選択されるシグナル伝達配列の任意の1つまたは2もしくはそれを超える任意の組み合わせを含む細胞内シグナル伝達領域と、(7)配列番号12のアミノ酸配列を含むT2A切断配列と、(8)配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖リーダー配列と、(9)配列番号3のアミノ酸配列を含む抗体軽鎖可変領域と、(10)配列番号4のアミノ酸配列を含む抗体軽鎖定常領域とを含む前駆体ポリペプチドをコードする核酸を提供する。
【0023】
本開示は、配列番号15または18のアミノ酸配列を有する前駆体ポリペプチドをコードする核酸を提供する。
【0024】
本開示は、(a)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖:(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むCD38抗体重鎖可変領域、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むCD38抗体重鎖定常領域、(iii)配列番号5のアミノ酸配列を含むCD28ヒンジ領域および必要に応じて配列番号21のアミノ酸配列を含む第二のヒンジ領域、(iv)配列番号6のアミノ酸配列を含むCD28膜貫通領域、および(v)配列番号7のアミノ酸配列を含む4-1BB細胞内シグナル伝達配列および配列番号9または20のアミノ酸配列を含むCD3ζ細胞内シグナル伝達配列をコードする核酸を含む細胞内シグナル伝達領域を提供し;同じ核酸または第二の核酸は、(b)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖:(i)配列番号3のアミノ酸配列を含むCD38抗体軽鎖可変領域、および(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含むCD38抗体軽鎖定常領域をコードし、抗体重鎖定常領域および抗体軽鎖定常領域は二量体化ドメインを形成し、抗体重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域はCD38タンパク質に結合する抗原結合ドメインを形成する。一実施形態において、ヒンジ領域は必要に応じたものである。
【0025】
一実施形態において、核酸は、配列番号13のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチドおよび配列番号14のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチドをコードする。
【0026】
一実施形態において、核酸は、配列番号16のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチドおよび配列番号17のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチドをコードする。
【0027】
本開示は、(1)配列番号10のアミノ酸配列を含む抗体重鎖リーダー配列と、(2)配列番号1のアミノ酸配列を含む抗体重鎖可変領域と、(3)配列番号2のアミノ酸配列を含む抗体重鎖定常領域と、(4)配列番号5のアミノ酸配列を含む必要に応じて存在する(optional)ヒンジ領域(hinger region)と、(5)配列番号6のアミノ酸配列を含む膜貫通領域と、(6)配列番号7のアミノ酸配列を含む4-1BBシグナル伝達配列、配列番号8のアミノ酸配列を含むCD28シグナル伝達配列、配列番号9のアミノ酸配列を含むCD3ζ(長)シグナル伝達および/またはITAM3モチーフを有し、配列番号20のアミノ酸配列を含むCD3ζ(短)シグナル伝達配列からなる群より選択されるシグナル伝達配列の任意の1つまたは2もしくはそれを超える任意の組み合わせを含む細胞内シグナル伝達領域と、(7)配列番号12のアミノ酸配列を含むT2A切断配列と、(8)配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖リーダー配列と、(9)配列番号3のアミノ酸配列を含む抗体軽鎖可変領域と、(10)配列番号4のアミノ酸配列を含む抗体軽鎖定常領域とを含む前駆体ポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結されたベクターを提供する。
【0028】
本開示は、配列番号15または18のアミノ酸配列を有する前駆体ポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結されたベクターを提供する。
【0029】
一実施形態において、ベクターは、配列番号15または18のアミノ酸配列を含む前駆体ポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクターを含む。
【0030】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団中の発現ベクターは、宿主細胞または宿主細胞の集団中への前駆体ポリペプチドをコードする核酸の一過性導入を指示する。
【0031】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団中の発現ベクターは、宿主細胞のゲノム中への前駆体ポリペプチドをコードする核酸の宿主細胞のゲノム中への安定な挿入を指示する。
【0032】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団中の発現ベクターは、宿主細胞または宿主細胞の集団中で前駆体ポリペプチドをコードする核酸の転写および/または翻訳を指示する。例えば、発現ベクターは、宿主細胞または宿主細胞の集団中で前駆体ポリペプチドをコードする核酸の転写および/または翻訳(例えば、発現)を指示する、誘導性および/または構成的プロモーターおよびエンハンサーなどの1またはそれを超える制御配列を含むことができる。
【0033】
本開示は、(a)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖:(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むCD38抗体重鎖可変領域、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むCD38抗体重鎖定常領域、(iii)配列番号5のアミノ酸配列を含むCD28ヒンジ領域および必要に応じて配列番号21のアミノ酸配列を含む第二のヒンジ領域、(iv)配列番号6のアミノ酸配列を含むCD28膜貫通領域、および(v)配列番号7のアミノ酸配列を含む4-1BB細胞内シグナル伝達配列および配列番号9または20のアミノ酸配列を含むCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む細胞内シグナル伝達配列をコードする核酸に機能的に連結されたベクターを提供し、同じベクターまたは第二のベクターが、(b)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖:(i)配列番号3のアミノ酸配列を含むCD38抗体軽鎖可変領域、および(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含むCD38抗体軽鎖定常領域をコードする核酸に機能的に連結されており、抗体重鎖定常領域および抗体軽鎖定常領域は二量体化ドメインを形成し、抗体重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域はCD38タンパク質に結合する抗原結合ドメインを形成する。一実施形態において、ベクターは、発現ベクターを含む。一実施形態において、ヒンジ領域は必要に応じたものである。
【0034】
一実施形態において、発現ベクターは、配列番号13のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチドおよび配列番号14のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結されている。
【0035】
一実施形態において、第一の発現ベクターは、配列番号13のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結されており、第二のベクターは、配列番号14のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結されている。
【0036】
一実施形態において、発現ベクターは、配列番号16のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチドおよび配列番号17のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結されている。
【0037】
一実施形態において、第一の発現ベクターは、配列番号16のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結されており、第二のベクターは、配列番号17のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結されている。
【0038】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団中の発現ベクターは、宿主細胞または宿主細胞の集団中への第一および/または第二のポリペプチドをコードする核酸の一過性導入を指示する。
【0039】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団中の発現ベクターは、宿主細胞のゲノム中への第一および/または第二のポリペプチドをコードする核酸の宿主細胞のゲノム中への安定な挿入を指示する。
【0040】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団中の発現ベクターは、宿主細胞または宿主細胞の集団中で第一および/または第二のポリペプチドをコードする核酸の転写および/または翻訳を指示する。例えば、発現ベクターは、宿主細胞または宿主細胞の集団中で第一および/または第二のポリペプチドをコードする核酸の転写および/または翻訳(例えば、発現)を指示する、誘導性および/または構成的プロモーターおよびエンハンサーなどの1またはそれを超える制御配列を含むことができる。
【0041】
本開示は、(1)配列番号10のアミノ酸配列を含む抗体重鎖リーダー配列と、(2)配列番号1のアミノ酸配列を含む抗体重鎖可変領域と、(3)配列番号2のアミノ酸配列を含む抗体重鎖定常領域と、(4)配列番号5のアミノ酸配列を含む必要に応じて存在する(optional)ヒンジ領域(hinger region)と、(5)配列番号6のアミノ酸配列を含む膜貫通領域と、(6)配列番号7のアミノ酸配列を含む4-1BBシグナル伝達配列、配列番号8のアミノ酸配列を含むCD28シグナル伝達配列、配列番号9のアミノ酸配列を含むCD3ζ(長)シグナル伝達および/またはITAM3モチーフを有し、配列番号20のアミノ酸配列を含むCD3ζ(短)シグナル伝達配列からなる群より選択されるシグナル伝達配列の任意の1つまたは2もしくはそれを超える任意の組み合わせを含む細胞内シグナル伝達領域と、(7)配列番号12のアミノ酸配列を含むT2A切断配列と、(8)配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖リーダー配列と、(9)配列番号3のアミノ酸配列を含む抗体軽鎖可変領域と、(10)配列番号4のアミノ酸配列を含む抗体軽鎖定常領域とを含む前駆体ポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結されたベクターを保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を提供する。
【0042】
一実施形態において、る宿主細胞または宿主細胞の集団は、配列番号15または18のアミノ酸配列を含む前駆体ポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結されているベクターを保有する。
【0043】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団によって保有される発現ベクターは、宿主細胞または宿主細胞の集団中への前駆体ポリペプチドをコードする核酸の一過性導入を指示する発現ベクターを含む。
【0044】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団中の発現ベクターは、宿主細胞のゲノム中への前駆体ポリペプチドをコードする核酸の宿主細胞のゲノム中への安定な挿入を指示する。
【0045】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団中の発現ベクターは、宿主細胞または宿主細胞の集団中で前駆体ポリペプチドをコードする核酸の転写および/または翻訳を指示する。例えば、発現ベクターは、宿主細胞または宿主細胞の集団中で前駆体ポリペプチドをコードする核酸の転写および/または翻訳(例えば、発現)を指示する、誘導性および/または構成的プロモーターおよびエンハンサーなどの1またはそれを超える制御配列を含むことができる。
【0046】
本開示は、(a)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖:(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むCD38抗体重鎖可変領域、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むCD38抗体重鎖定常領域、(iii)配列番号5のアミノ酸配列を含むCD28ヒンジ領域および必要に応じて配列番号21のアミノ酸配列を含む第二のヒンジ領域、(iv)配列番号6のアミノ酸配列を含むCD28膜貫通領域、および(v)配列番号7のアミノ酸配列を含む4-1BB細胞内シグナル伝達配列および配列番号9または20のアミノ酸配列を含むCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む細胞内シグナル伝達配列;ならびに(b)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖:(i)配列番号3のアミノ酸配列を含むCD38抗体軽鎖可変領域、および(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含むCD38抗体軽鎖定常領域をコードする核酸に機能的に連結されたベクターを保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を提供し、抗体重鎖定常領域および抗体軽鎖定常領域は二量体化ドメインを形成し、抗体重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域はCD38タンパク質に結合する抗原結合ドメインを形成する。一実施形態において、ヒンジ領域は必要に応じたものである。一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団は、第一および/または第二のポリペプチド鎖の転写および/または翻訳(例えば、発現)を方向付ける発現ベクターを保有する。一実施形態において、宿主細胞は、第一および/または第二のポリペプチド鎖を発現する。
【0047】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団は、配列番号13のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチドおよび配列番号14のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結されているベクターを保有する。
【0048】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団は、配列番号13のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結されている第一のベクターおよび配列番号14のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結されている第二のベクターを保有する。
【0049】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団は、配列番号16のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチドおよび配列番号17のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結されているベクターを保有する。
【0050】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団は、配列番号16のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結されている第一のベクターおよび配列番号17のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結されている第二のベクターを保有する。
【0051】
本開示は、被験体における腫瘍抗原の悪影響発現に関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法を提供し、方法は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に10の領域を含む前駆体ポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(1)重鎖リーダー領域、(2)抗体重鎖可変領域、(3)抗体重鎖定常領域、(4)必要に応じて存在するヒンジ領域、(5)膜貫通領域、(6)2~5の細胞内シグナル伝達配列を有する細胞内シグナル伝達配列、(7)T2A切断可能配列領域、(8)軽鎖リーダー領域、(9)抗体軽鎖可変領域、および(10)抗体軽鎖定常領域を保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含む。
【0052】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団は、(1)配列番号10のアミノ酸配列を含む抗体重鎖リーダー配列と、(2)配列番号1のアミノ酸配列を含む抗体重鎖可変領域と、(3)配列番号2のアミノ酸配列を含む抗体重鎖定常領域と、(4)配列番号5のアミノ酸配列を含む必要に応じて存在する(optional)ヒンジ領域(hinger
region)と、(5)配列番号6のアミノ酸配列を含む膜貫通領域と、(6)配列番号7のアミノ酸配列を含む4-1BBシグナル伝達配列、配列番号8のアミノ酸配列を含むCD28シグナル伝達配列、配列番号9のアミノ酸配列を含むCD3ζ(長)シグナル伝達および/またはITAM3モチーフを有し、配列番号20のアミノ酸配列を含むCD3ζ(短)シグナル伝達配列からなる群より選択されるシグナル伝達配列の任意の1つまたは2もしくはそれを超える任意の組み合わせを含む細胞内シグナル伝達領域と、(7)配列番号12のアミノ酸配列を含むT2A切断配列と、(8)配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖リーダー配列と、(9)配列番号3のアミノ酸配列を含む抗体軽鎖可変領域と、(10)配列番号4のアミノ酸配列を含む抗体軽鎖定常領域とを含む前駆体ポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結された発現ベクターを保有する。
【0053】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団は、配列番号15または18のアミノ酸配列を含む前駆体ポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクターを保有する。
【0054】
本開示は、被験体における腫瘍抗原の悪影響発現に関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法を提供し、方法は、(a)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むCD38抗体重鎖可変領域、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むCD38抗体重鎖定常領域、(iii)配列番号5のアミノ酸配列を含むCD28ヒンジ領域および必要に応じて配列番号21のアミノ酸配列を含む第二のヒンジ領域、(iv)配列番号6のアミノ酸配列を含むCD28膜貫通領域、および(v)配列番号7のアミノ酸配列を含む4-1BB細胞内シグナル伝達配列および配列番号9または20のアミノ酸配列を含むCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む細胞内シグナル伝達配列;ならびに(b)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖:(i)配列番号3のアミノ酸配列を含むCD38抗体軽鎖可変領域、および(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含むCD38抗体軽鎖定常領域を保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含む。一実施形態において、抗体重鎖定常領域および抗体軽鎖定常領域は二量体化ドメインを形成し、抗体重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域はCD38タンパク質に結合する抗原結合ドメインを形成する。一実施形態において、ヒンジ領域は必要に応じたものである。
【0055】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団は、Tリンパ球(例えば、T細胞、制御性T細胞、γδT細胞および細胞傷害性T細胞)、NK(ナチュラルキラー)細胞、マクロファージ、樹状細胞、肥満細胞、好酸球、Bリンパ球および単球からなる群より選択される。
【0056】
一実施形態において、宿主細胞は、臍帯血由来のNK細胞または胎盤由来のNK細胞を含むNK細胞を含む。
【0057】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団中の発現ベクターは、宿主細胞または宿主細胞の集団中への第一および/または第二のポリペプチドをコードする核酸の一過性導入を指示する。
【0058】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団中の発現ベクターは、宿主細胞のゲノム中への第一および/または第二のポリペプチドをコードする核酸の宿主細胞のゲノム中への安定な挿入を指示する。
【0059】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団中の発現ベクターは、宿主細胞または宿主細胞の集団中で第一および/または第二のポリペプチドをコードする核酸の転写および/または翻訳を指示する。例えば、発現ベクターは、宿主細胞または宿主細胞の集団中で第一および/または第二のポリペプチドをコードする核酸の転写および/または翻訳(例えば、発現)を指示する、誘導性および/または構成的プロモーターおよびエンハンサーなどの1またはそれを超える制御配列を含むことができる。
【0060】
一実施形態において、腫瘍抗原の有害な発現と関連する疾患、障害または状態は、血液の乳がん(hematologic breast cancer)、卵巣がん、前立腺がん、頭頸部がん、肺がん、膀胱がん、黒色腫、結腸直腸がん、膵臓がん、肺がん、肝臓がん、腎臓がん、食道がん、平滑筋腫、平滑筋肉腫、神経膠腫および神経膠芽腫を含むがこれらに限定されないがんである。
【0061】
一実施形態において、疾患は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、バーキットリンパ腫(BL)、B慢性リンパ球性白血病(B-CLL)、BおよびT急性リンパ球性白血病(ALL)、T細胞リンパ腫(TCL)、急性骨髄性白血病(AML)、有毛細胞白血病(HCL)、ホジキンリンパ腫(HL)、慢性骨髄性白血病(CML)および多発性骨髄腫(MM)からなる群より選択される血液のがんである。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
第一および第二のポリペプチド鎖を含む抗原結合ドメインを含む二量体抗原受容体(DAR)構築物であって、
a)前記第一のポリペプチド鎖が、アミノ末端からカルボキシル末端へ順に5つの領域:
(i)抗体重鎖可変領域(VH)、(ii)抗体重鎖定常領域(CH)、(iii)ヒンジ領域またはヒンジ領域なし、(iv)膜貫通領域(TM)および(v)細胞内シグナル伝達領域を含み、ならびに
b)前記第二のポリペプチド鎖が、アミノ末端からカルボキシル末端へ順に2つの領域:(i)抗体軽鎖可変領域(VL)(例えば、κまたはλ)および(ii)抗体軽鎖定常領域(CL)を含む、二量体抗原受容体(DAR)構築物。
(項目2)
a)前記第一のポリペプチド鎖が、アミノ末端からカルボキシル末端へ順に5つの領域を含み、(i)前記抗体重鎖可変領域(VH)が、配列番号1のアミノ酸配列を有するCD38抗体重鎖可変領域を含み、(ii)前記抗体重鎖定常領域(CH)が、配列番号2のアミノ酸配列を有するCD38抗体重鎖定常領域を含み、(iii)前記ヒンジ領域が、配列番号5のアミノ酸配列を含むCD28ヒンジ領域、配列番号21のアミノ酸配列を含むCD8ヒンジ領域および配列番号5のアミノ酸配列を含むCD28ヒンジ領域と配列番号21のアミノ酸配列を含むCD8ヒンジ領域とを含むヒンジ領域からなる群より選択され、(iv)前記膜貫通領域(TM)が、配列番号6のアミノ酸配列を有するCD28膜貫通領域を含み、かつ(v)前記細胞内シグナル伝達領域が、配列番号7のアミノ酸配列を有する4-1BB細胞内シグナル伝達配列および配列番号9または20のアミノ酸配列を有するCD3ζ細胞内シグナル伝達を含み、ならびに
b)第二のポリペプチド鎖が、アミノ末端からカルボキシル末端へ順に2つの領域を含み、(i)前記抗体軽鎖可変領域(VL)が、配列番号3のアミノ酸配列を有するCD38抗体軽鎖可変領域を含み、かつ(ii)前記抗体軽鎖定常領域(CL)が、配列番号4のアミノ酸配列を有するCD38抗体軽鎖定常領域を含み、
前記抗体重鎖定常領域および前記抗体軽鎖定常領域が二量体化ドメインを形成し、前記抗体重鎖可変領域および前記抗体軽鎖可変領域がCD38タンパク質を結合する抗原結合ドメインを形成する、項目1に記載の二量体抗原受容体(DAR)。
(項目3)
項目2に記載の二量体抗原受容体(DAR)をコードする核酸。
(項目4)
項目3に記載の核酸に機能的に連結されたベクター。
(項目5)
項目4に記載のベクターを保有する宿主細胞または宿主細胞の集団。
(項目6)
前記ベクターが発現ベクターであり、前記発現ベクターが、前記二量体抗原受容体(DAR)をコードする前記核酸の転写および/または翻訳(発現)を指示する、項目5に記載の宿主細胞
(項目7)
前記宿主細胞または宿主細胞の前記集団が、Tリンパ球(T細胞、制御性T細胞、γδT細胞または細胞傷害性T細胞)、NK(ナチュラルキラー)細胞、マクロファージ、樹状細胞、肥満細胞、好酸球、Bリンパ球または単球を含む、項目5に記載の宿主細胞または宿主細胞の集団。
(項目8)
被験体における腫瘍抗原の有害な発現と関連する疾患、障害または状態を有する前記被験体を処置する方法であって、項目5に記載の宿主細胞または宿主細胞の集団を前記被験体に投与することを含む、方法。
(項目9)
被験体における腫瘍抗原の有害な発現と関連する疾患、障害または状態を有する前記被験体を処置する方法であって、項目6に記載の宿主細胞または宿主細胞の集団を前記被験体に投与することを含む、方法。
(項目10)
アミノ末端からカルボキシル末端へ順に10個の領域:(1)重鎖リーダー配列、(2)抗体重鎖可変領域、(3)抗体重鎖定常領域、(4)必要に応じて存在するヒンジ領域、(5)膜貫通領域、(6)細胞内シグナル伝達領域、(7)T2A切断配列、(8)軽鎖リーダー配列、(9)抗体軽鎖可変領域および(10)抗体軽鎖定常領域を含む前駆体ポリペプチド。
(項目11)
(1)前記重鎖リーダー配列が、配列番号10のアミノ酸配列を含み、(2)前記抗体重鎖可変領域が、配列番号1のアミノ酸配列を含むCD38抗体重鎖可変領域を含み、(3)前記抗体重鎖定常領域が、配列番号2のアミノ酸配列を含むCD38抗体重鎖定常領域を含み、(4)前記ヒンジ領域が、配列番号5のアミノ酸配列を含むCD28ヒンジ領域、配列番号21のアミノ酸配列を含むCD8ヒンジ領域および配列番号5のアミノ酸配列を含むCD28ヒンジ領域と配列番号21のアミノ酸配列を含むCD8ヒンジ領域とを含むヒンジ領域からなる群より選択され、(5)前記膜貫通領域が、配列番号6のアミノ酸配列を含むCD28膜貫通領域を含み、(6)前記細胞内シグナル伝達領域が、配列番号7のアミノ酸配列を含む4-1BBシグナル伝達配列、配列番号8のアミノ酸配列を含むCD28シグナル伝達配列、配列番号9のアミノ酸配列を含むCD3ζ(長)シグナル伝達配列および/またはITAM3モチーフを有し、配列番号20のアミノ酸配列を含むCD3ζ(短)シグナル伝達配列からなる群より選択される任意の1つまたは2もしくはそれを超えるシグナル伝達配列の任意の組み合わせを含み、(7)前記T2A切断配列が、配列番号12のアミノ酸配列を含み、(8)前記軽鎖リーダー配列が、配列番号11のアミノ酸配列を含み、(9)前記抗体軽鎖可変領域が、配列番号3のアミノ酸配列を含むCD38抗体軽鎖可変領域を含み、ならびに(10)前記抗体軽鎖定常領域が、配列番号4のアミノ酸配列を含むCD38抗体軽鎖定常領域を含む、項目10に記載の前駆体ポリペプチド。
(項目12)
配列番号15または18のアミノ酸配列を含む、項目11に記載の前駆体ポリペプチド。
(項目13)
項目11に記載の前駆体ポリペプチドをコードする核酸。
(項目14)
項目11に記載の核酸に機能的に連結されたベクター。
(項目15)
項目14に記載のベクターを保有する宿主細胞または宿主細胞の集団。
(項目16)
前記ベクターが発現ベクターであり、前記発現ベクターが、前記二量体抗原受容体(DAR)をコードする前記核酸の転写および/または翻訳(発現)を指示する、項目15に記載の宿主細胞
(項目17)
前記宿主細胞または宿主細胞の前記集団が、Tリンパ球(T細胞、制御性T細胞、γδT細胞または細胞傷害性T細胞)、NK(ナチュラルキラー)細胞、マクロファージ、樹状細胞、肥満細胞、好酸球、Bリンパ球または単球を含む、項目15に記載の宿主細胞または宿主細胞の集団。
(項目18)
被験体における腫瘍抗原の有害な発現と関連する疾患、障害または状態を有する前記被験体を処置する方法であって、項目15に記載の宿主細胞または宿主細胞の集団を前記被験体に投与することを含む、方法。
(項目19)
被験体における腫瘍抗原の有害な発現と関連する疾患、障害または状態を有する前記被験体を処置する方法であって、項目16に記載の宿主細胞または宿主細胞の集団を前記被験体に投与することを含む、方法。
(項目20)
前記疾患が、非ホジキンリンパ腫(NHL)、バーキットリンパ腫(BL)、B慢性リンパ球性白血病(B-CLL)、BおよびT急性リンパ球性白血病(ALL)、T細胞リンパ腫(TCL)、急性骨髄性白血病(AML)、有毛細胞白血病(HCL)、ホジキンリンパ腫(HL)、慢性骨髄性白血病(CML)および多発性骨髄腫(MM)からなる群より選択される血液のがんである、項目18に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】
図1は、2つの細胞内シグナル伝達配列を含む例示的な二量体抗原受容体を示す模式図である。
【0063】
【
図2】
図2は、3つの細胞内シグナル伝達配列を含む例示的な二量体抗原受容体を示す模式図である。
【0064】
【
図3】
図3は、2つの細胞内シグナル伝達配列を含む例示的な二量体抗原受容体を示す模式図である。
【0065】
【
図4】
図4は、3つの細胞内シグナル伝達配列を含む例示的な二量体抗原受容体を示す模式図である。
【0066】
【
図5】
図5は、T2A切断配列と3つの細胞内シグナル伝達配列とを含む例示的な前駆体ポリペプチド分子を示す模式図である。
【0067】
【
図6】
図6は、T2A切断配列と2つの細胞内シグナル伝達配列とを含む例示的な前駆体ポリペプチド分子を示す模式図である。
【0068】
【
図7】
図7は、T2A切断配列と3つの細胞内シグナル伝達配列とを含む例示的な前駆体ポリペプチド分子を示す模式図である。
【0069】
【
図8】
図8は、T2A切断配列と2つの細胞内シグナル伝達配列とを含む例示的な前駆体ポリペプチド分子を示す模式図である。
【0070】
【
図9】
図9は、CD38二量体抗原受容体(DAR)構築物を発現するT細胞と比較された、CD38キメラ抗原受容体(CAR)構築物を発現するT細胞を比較するフローサイトメトリー研究の結果を示す。陰性対照は、ノックアウトTRAC(T細胞受容体α定常)遺伝子を有する細胞系である。DAR(V1)構築物は、CD8およびCD28ヒンジ配列を有する長いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域は、CD28および長いCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む。
【0071】
【
図10】
図10は、RPMI8226標的細胞に対する、CD38 CARまたはCD38 DARを発現するT細胞のパーセント細胞傷害性を示すグラフである。陰性対照(線A)は、ノックアウトTRAC遺伝子を有する細胞系である。CD38 DAR(V1)構築物(B点線)は、CD8およびCD28ヒンジ配列を有する長いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域は、CD28および長いCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む。CD38 CAR構築物が示されている(線C)。
【0072】
【
図11】
図11は、CD38 CAR V1またはV2構築物を発現するT細胞を比較するフローサイトメトリー研究の結果を示す。陰性対照は、
図1に記載されているものと同じ細胞系(TRAC KO)である。CD38 DAR(V1)構築物は、CD8およびCD28ヒンジ配列を有する長いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域は、CD28および長いCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む。CD38 DAR(V2b)構築物は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域はCD28および長いCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む。
【0073】
【
図12】
図12は、RPMI8226標的細胞に対する、CD38 CAR、CD38 DAR(V1)またはCD38 DAR(V2b)を発現するT細胞のパーセント細胞傷害性を示すグラフである。陰性対照(線A)は、ノックアウトTRAC遺伝子を有する細胞系である。CD38 DAR(V1)構築物(線B)は、CD8およびCD28ヒンジ配列を有する長いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域は、CD28および長いCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む。CD38 DAR(V2b)構築物(C点線)は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域はCD28および長いCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む。CD38 CARが示されている(線D)。
【0074】
【
図13】
図13は、CD38 CAR、CD38 DAR(V1)またはCD38 DAR(V2b)構築物を発現するT細胞からのIFN-γ放出のレベルを示す棒グラフである。各データの組は、左から右に、RPMI8226細胞、K562細胞および培地を示す。陰性対照は、ノックアウトTRAC(T細胞受容体α定常)遺伝子を有する細胞系である。CD38 DAR(V1)構築物は、CD8およびCD28ヒンジ配列を有する長いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域は、CD28および長いCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む。CD38 DAR(V2b)構築物は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域はCD28および長いCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む。
【0075】
【
図14】
図14は、CD38 CAR、CD38 DAR(V1)またはCD38 DAR(V2b)構築物を発現するT細胞からのTNF-α放出のレベルを示す棒グラフである。各データの組は、左から右に、RPMI8226細胞、K562細胞および培地を示す。陰性対照は、ノックアウトTRAC(T細胞受容体α定常)遺伝子を有する細胞系である。CD38 DAR(V1)構築物は、CD8およびCD28ヒンジ配列を有する長いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域は、CD28および長いCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む。CD38 DAR(V2b)構築物は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域はCD28および長いCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む。
【0076】
【
図15】
図15は、CD38 CAR、CD38 DAR(V1)またはCD38 DAR(V2b)構築物を発現するT細胞からのIL-2放出のレベルを示す棒グラフである。各データの組は、左から右に、RPMI8226細胞、K562細胞および培地を示す。陰性対照は、ノックアウトTRAC遺伝子を有する細胞系である。CD38 DAR(V1)構築物は、CD8およびCD28ヒンジ配列を有する長いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域は、CD28および長いCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む。CD38 DAR(V2b)構築物は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域はCD28および長いCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む。
【0077】
【
図16】
図16は、K562またはRPMI8226細胞とともに共培養されたときの、CAR、またはDAR(V1)もしくは(V2b)構築物を発現するT細胞の増殖能を比較するフローサイトメトリー研究の結果を示す。陰性対照は、ノックアウトTRAC(T細胞受容体α定常)遺伝子を有する細胞系である。CD38 DAR(V1)構築物は、CD8およびCD28ヒンジ配列を有する長いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域は、CD28および長いCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む。CD38 DAR(V2b)構築物は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域はCD28および長いCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む。
【0078】
【
図17】
図17は、K562またはRPMI8226細胞とともに共培養されたときの、CAR、またはDAR(V1)もしくは(V2b)構築物を発現するT細胞の増殖(expansion)の倍数変化を示す棒グラフである。陰性対照は、ノックアウトTRAC(T細胞受容体α定常)遺伝子を有する細胞系である。CD38 DAR(V1)構築物は、CD8およびCD28ヒンジ配列を有する長いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域は、CD28および長いCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む。CD38 DAR(V2b)構築物は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域はCD28および長いCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む。
【0079】
【
図18】
図18は、異種移植動物モデルにおいて評価されたCD38 DAR T細胞の殺腫瘍活性を示す。陰性対照マウスに、リン酸緩衝食塩水またはノックアウトTRAC遺伝子を有する細胞系を投与した。試験マウスに、短いヒンジ配列を含む、CD38 DAR(V2b)構築物を発現するT細胞を投与し、シグナル伝達領域はCD28および長いCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む。
【0080】
【
図19】
図19は、異種移植動物モデルにおいて評価されたCD38 DAR(V2a)T細胞の殺腫瘍活性を示す。陰性対照マウスに、リン酸緩衝食塩水またはノックアウトTRAC遺伝子を有する細胞系を投与した。試験マウスに、短いヒンジ配列を含む、CD38 DAR(V2a)構築物を発現するT細胞を投与し、シグナル伝達領域は4-1BBおよび長いCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む。
【0081】
【
図20】
図20は、CD38 DAR(V2a)または(V3)構築物を発現するT細胞を比較するフローサイトメトリー研究の結果を示す。陰性対照は、活性化T細胞およびノックアウトTRAC遺伝子を有する細胞系を含む。CD38 DAR(V2a)構築物は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域は4-1BBおよび長いCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む。CD38 DAR(V3)構築物は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域は4-1BBおよび短縮ITAM領域を有するCD3ζを含む。
【0082】
【
図21】
図21は、RPMI8226標的細胞に対する、(V3)と比較したCD38 DAR(V2a)を発現するT細胞のパーセント細胞傷害性を示すグラフである。陰性対照は、ノックアウトTRAC遺伝子を有する細胞系(線A)である。CD38 DAR(V2a)構築物(線B)は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域は4-1BBおよび長いCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む。CD38 DAR(V3)構築物(線C)は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域は4-1BBおよび短縮ITAM領域を有するCD3ζを含む。
【0083】
【
図22】
図22は、DAR(V3)構築物と比較された、CD38 DAR(V2a)を発現するT細胞からのIFN-γ放出のレベルを示す棒グラフである。各データの組は、左から右に、RPMI8226細胞、K562細胞および培地を示す。陰性対照は、ノックアウトTRAC遺伝子を有する細胞系である。CD38 DAR(V2a)構築物は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域は4-1BBおよび長いCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む。CD38 DAR(V3)構築物は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域は4-1BBおよび短縮ITAM領域を有するCD3ζを含む。
【0084】
【
図23】
図23は、DAR(V3)構築物と比較された、CD38 DAR(V2a)を発現するT細胞からのTNF-α放出のレベルを示す棒グラフである。各データの組は、左から右に、RPMI8226細胞、K562細胞および培地を示す。陰性対照は、ノックアウトTRAC遺伝子を有する細胞系である。CD38 DAR(V2a)構築物は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域は4-1BBおよび長いCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む。CD38 DAR(V3)構築物は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域は4-1BBおよび短縮ITAM領域を有するCD3ζを含む。
【0085】
【
図24】
図24は、CD38 DAR(V2a)およびDAR(V3)T細胞中のメモリーT細胞の割合を測定するためのフローサイトメトリー研究の結果を示す。CD38 DAR(V2a)構築物は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域は4-1BBおよび長いCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む。CD38 DAR(V3)構築物は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域は4-1BBおよび短縮ITAM領域を有するCD3ζを含む。
【0086】
【
図25】
図25は、CD38 CAR、CD38 DAR第二世代およびCD38 DAR第三世代構築物を発現するT細胞を比較するフローサイトメトリー研究の結果を示す。陰性対照は、ノックアウトTRAC遺伝子を有する細胞系である。28Z第二世代構築物は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域はCD28およびCD3ζシグナル伝達配列(例えば、DAR(V2b)構築物)を含む。BBZ第二世代構築物は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域は4-1BBおよびCD3ζシグナル伝達配列(例えば、DAR(V2a)構築物)を含む。28BBZ第三世代構築物は短いヒンジを含み、シグナル伝達領域はCD28、4-1BBおよびCD3ζシグナル伝達配列(例えば、DAR(V2c)構築物)を含む。
【0087】
【
図26】
図26は、RPMI8226標的細胞に対する、CD38 CAR、2つの異なるCD38第二世代DARのうちの1つまたはCD38第三世代DAR構築物を発現するT細胞のパーセント細胞傷害性を示すグラフである。陰性対照(線A)は、ノックアウトTRAC遺伝子を有する細胞系である。28Z第二世代構築物(線E)は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域はCD28およびCD3ζシグナル伝達配列(例えば、DAR(V2b構築物)を含む。BBZ第二世代構築物(線C)は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域は4-1BBおよびCD3ζシグナル伝達配列(例えば、DAR(V2a)構築物)を含む。28BBZ第三世代構築物(線D点線)は短いヒンジを含み、シグナル伝達領域はCD28、4-1BBおよびCD3ζシグナル伝達配列(例えば、DAR(V2c)構築物)を含む。CD38 CARを発現する細胞が示されている(線B)。
【0088】
【
図27】
図27は、CD38 CAR、2つの異なるCD38第二世代DARのうちの1つまたはCD38第三世代DARを発現するT細胞からのIL-2分泌のレベルを示すグラフである。各データの組は、左から右に、K562細胞、RPMI8226細胞およびT細胞のみを示す。陰性対照は、ノックアウトTRAC遺伝子を有する細胞系である。28Z第二世代構築物は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域はCD28およびCD3ζシグナル伝達配列(例えば、DAR(V2b)構築物)を含む。BBZ第二世代構築物は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域は4-1BBおよびCD3ζシグナル伝達配列(例えば、DAR(V2a)構築物)を含む。28BBZ第三世代構築物は短いヒンジを含み、シグナル伝達領域はCD28、4-1BBおよびCD3ζシグナル伝達配列(例えば、DAR(V2c)構築物)を含む。
【0089】
【
図28】
図28は、CD38 CAR、2つの異なるCD38第二世代DARのうちの1つまたはCD38第三世代DARを発現するT細胞からのTNF-α分泌のレベルを示すグラフである。各データの組は、左から右に、K562細胞、RPMI8226細胞およびT細胞のみを示す。陰性対照は、ノックアウトTRAC遺伝子を有する細胞系である。28Z第二世代構築物は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域はCD28およびCD3ζシグナル伝達配列(例えば、DAR(V2b)構築物)を含む。BBZ第二世代構築物は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域は4-1BBおよびCD3ζシグナル伝達配列(例えば、DAR(V2a)構築物)を含む。28BBZ第三世代構築物は短いヒンジを含み、シグナル伝達領域はCD28、4-1BBおよびCD3ζシグナル伝達配列(例えば、DAR(V2c)構築物)を含む。
【0090】
【
図29】
図29は、CD38 CAR、2つの異なるCD38第二世代DARのうちの1つまたはCD38第三世代DARを発現するT細胞からのIFN-γ分泌のレベルを示すグラフである。各データの組は、左から右に、K562細胞、RPMI8226細胞およびT細胞のみを示す。陰性対照は、ノックアウトTRAC遺伝子を有する細胞系である。28Z第二世代構築物は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域はCD28およびCD3ζシグナル伝達配列(例えば、DAR(V2b)構築物)を含む。BBZ第二世代構築物は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域は4-1BBおよびCD3ζシグナル伝達配列(例えば、DAR(V2a)構築物)を含む。28BBZ第三世代構築物は短いヒンジを含み、シグナル伝達領域はCD28、4-1BBおよびCD3ζシグナル伝達配列(例えば、DAR(V2c)構築物)を含む。
【0091】
【
図30】
図30は、異種移植動物モデルにおいて評価されたCD38 CAR T細胞の殺腫瘍活性を示す。陰性対照マウスに、リン酸緩衝食塩水、活性化T細胞またはノックアウトTRAC遺伝子を有する細胞系を投与した。試験マウスに、28ZもしくはBBZ第二世代構築物のいずれかまたは第三世代28BBZ DAR構築物を発現するT細胞を投与した。28Z DAR第二世代構築物は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域はCD28およびCD3ζシグナル伝達配列(例えば、DAR(V2b)構築物)を含む。BBZ第二世代構築物は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域は4-1BBおよびCD3ζシグナル伝達配列(例えば、DAR(V2a)構築物)を含む。28BBZ第三世代構築物は短いヒンジを含み、シグナル伝達領域はCD28、4-1BBおよびCD3ζシグナル伝達配列(例えば、DAR(V2c)構築物)を含む。
【0092】
【
図31】
図31は、CD38 DAR V2、V3またはV4構築物を発現するT細胞を比較するフローサイトメトリー研究の結果を示す。陰性対照は、活性化T細胞およびノックアウトTRAC遺伝子を有する細胞系を含む。CD38 V2 DAR構築物は短いヒンジを含み、シグナル伝達領域は4-1BBおよびCD3ζシグナル伝達配列を含む(例えば、DAR(V2b)構築物)。CD38 V3 DAR構築物は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域は4-1BBおよびCD3ζ(ITAM3モチーフのみを有する)シグナル伝達配列を含む(例えば、DAR(V3)構築物)。CD38 DAR V4構築物はヒンジ配列を欠き、シグナル伝達領域は4-1BBおよびCD3ζ(ITAM3モチーフのみを有する)シグナル伝達配列を含む(例えば、DAR(V4)構築物)。
【0093】
【
図32】
図32は、RPMI8226標的細胞に対する、CD38 DAR V2、V3またはV4構築物を発現するT細胞のパーセント細胞傷害性を示すグラフである。陰性対照(線A)は、ノックアウトTRAC遺伝子を有する細胞系である。CD38 DAR V4構築物(線B)はヒンジ配列を欠き、シグナル伝達領域は4-1BBおよびCD3ζ(ITAM3モチーフのみを有する)シグナル伝達配列を含む(例えば、DAR(V4)構築物)。CD38 V2 DAR構築物(C点線)は短いヒンジを含み、シグナル伝達領域は4-1BBおよびCD3ζシグナル伝達配列を含む(例えば、DAR(V2a)構築物)。CD38 V3 DAR構築物(線D)は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域は4-1BBおよびCD3ζ(ITAM3モチーフのみを有する)シグナル伝達配列を含む(例えば、DAR(V3)構築物)。
【0094】
【
図33】
図33は、CD38 DAR V2、V3またはV4構築物を発現するT細胞からのIFN-γ放出のレベルを示す棒グラフである。各データの組は、左から右に、RPMI8226細胞、K562細胞および培地を示す。陰性対照は、ノックアウトTRAC遺伝子を有する細胞系である。CD38 V2 DAR構築物は短いヒンジを含み、シグナル伝達領域は4-1BBおよびCD3ζシグナル伝達配列を含む(例えば、DAR(V2b)構築物)。CD38 V3 DAR構築物は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域は4-1BBおよびCD3ζ(ITAM3モチーフのみを有する)シグナル伝達配列を含む(例えば、DAR(V3)構築物)。CD38 DAR V4構築物はヒンジ配列を欠き、シグナル伝達領域は4-1BBおよびCD3ζ(ITAM3モチーフのみを有する)シグナル伝達配列を含む(例えば、DAR(V4)構築物)。
【0095】
【
図34】
図34は、CD38 DAR V2、V3またはV4構築物を発現するT細胞からのTNF-α放出のレベルを示す棒グラフである。各データの組は、左から右に、RPMI8226細胞、K562細胞および培地を示す。陰性対照は、ノックアウトTRAC遺伝子を有する細胞系である。CD38 V2 DAR構築物は短いヒンジを含み、シグナル伝達領域は4-1BBおよびCD3ζシグナル伝達配列を含む(例えば、DAR(V2b)構築物)。CD38 V3 DAR構築物は短いヒンジ配列を含み、シグナル伝達領域は4-1BBおよびCD3ζ(ITAM3モチーフのみを有する)シグナル伝達配列を含む(例えば、DAR(V3)構築物)。CD38 DAR V4構築物はヒンジ配列を欠き、シグナル伝達領域は4-1BBおよびCD3ζ(ITAM3モチーフのみを有する)シグナル伝達配列を含む(例えば、DAR(V4)構築物)。
【0096】
【
図35A】
図35Aは、CD38二量体抗原受容体(DAR)構築物の異なる領域のアミノ酸配列を示す。
【0097】
【
図35B】
図35Bは、CD38二量体抗原受容体(DAR)構築物V2bの第一のポリペプチド、第二のポリペプチドおよび前駆体ポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
【0098】
【
図35C】
図35Cは、CD38二量体抗原受容体(DAR)構築物V3の第一のポリペプチド、第二のポリペプチドおよび前駆体ポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
【0099】
【
図35D】
図35Dは、CD8およびCD28ヒンジ配列を含む長いヒンジ配列、ITAM3モチーフのみを有するCD3ζシグナル伝達領域、CD8ヒンジ配列ならびに抗CD38 CAR構築物のアミノ酸配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0100】
別段の定義がなければ、本明細書において使用される技術用語および科学用語は、別段の定義がなければ当業者によって一般的に理解される意味を有する。一般的に、本明細書に記載されている、細胞培養および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、トランスジェニック細胞の作製、タンパク質化学および核酸化学およびハイブリダイゼーションの技術に関連する用語は、周知であり、本分野において一般的に使用されている。別段の記載がなければ、本明細書中に提供されている方法および技術は、一般に、本分野において周知の慣用的な手順に従って、ならびに本明細書に引用および論述されている様々な一般的およびより具体的な参考文献に記載されているとおりに実施される。例えば、
Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)およびAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates(1992)を参照されたい。Borrebaeck(ed) Antibody Engineering,2nd Edition Freeman and Company,NY,1995;McCaffertyら、Antibody Engineering,A Practical Approach IRL at Oxford Press,Oxford,England,1996;およびPaul(1995)Antibody Engineering Protocols Humana Press,Towata,N.J.,1995;Paul(ed.),Fundamental Immunology,Raven Press,N.Y,1993;Coligan(1991)Current Protocols in Immunology Wiley/Greene,NY;Harlow and Lane(1989)Antibodies:A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Press,NY;Stitesら、(eds.) Basic and Clinical Immunology(4th ed.) Lange Medical Publications,Los Altos,Califおよびその中に引用されている参考文献;Coding Monoclonal Antibodies:Principles and Practice(2nd ed.) Academic Press,New York,N.Y.,1986、およびKohler and Milstein Nature 256:495-497,1975などの多数の基本的な教科書が、標準的な抗体作製方法を記載している。本明細書中に引用されている参考文献の全ては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。酵素の反応および富化/精製技術も周知であり、製造業者の仕様に従って本分野で一般的に達成されるように、または本明細書に記載されているように行われる。本明細書に記載されている分析化学、合成有機化学および医化学および薬化学に関連して使用される用語ならびにこれらの研究室手技および技術は、本分野において周知であり、一般的に使用されている。化学的合成、化学的分析、薬学的調製、製剤化および送達、および患者の処置に対しては、標準的な技術を使用することができる。
【0101】
本明細書に記載されている見出しは、本開示の様々な態様の限定ではなく、これらの態様は、本明細書を全体として参照することによって理解することができる。
【0102】
本明細書中の文脈によって別段の要求がされていなければ、単数形の用語は複数を含むものとし、複数形の用語は単数を含むものとする。単数形「a」、「an」および「the」ならびに任意の単語の単数での使用は、明示的かつ明確に1つの指示対象に限定されていなければ、複数の指示対象を含む。
【0103】
本明細書における選択肢(例えば、「または」の使用は、当該選択肢の一方または両方またはその任意の組み合わせを意味するように解釈されることが理解される。
【0104】
本明細書において使用される「および/または」という用語は、それ以外のものとともにまたはそれ以外のものなしに、指定された特徴または構成要素のそれぞれの具体的な開示を意味するように解釈されるべきである。例えば、本明細書において、「Aおよび/またはB」などの語句において使用される「および/または」という用語は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)および「B」(単独)を含むことが意図される。同様に、「A、Bおよび/またはC」などの語句において使用される「および/または」という用語は、以下の態様のそれぞれ:A、BおよびC;A、BまたはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)を包含することが意図される。
【0105】
本明細書において使用される用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」および「含有する(containing)」ならびにこれらの文法的変形は、本明細書において使用される場合、列記中の1つの項目または複数の項目が、列記された項目を置換しまたは列記された項目に追加することができる他の項目を除外しないように非限定的であることが意図される。本明細書において「含む(comprising)」という言語とともに態様が記載されている場合には常に、別途、「からなる(consisting of)」および/または「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語で記載されている類似の態様も提供されることが理解される。
【0106】
本明細書において使用される「約」という用語は、当業者によって決定された場合に特定の値または組成に対して許容され得る誤差範囲内にある値または組成を表し、これは、1つには、その値または組成がどのようにして測定または決定されるかに、すなわち、測定系の限界に依存する。例えば、「約」または「およそ」は、当該分野での慣行にしたがって、1または1を超える標準偏差内を意味することができる。あるいは、「約」または「およそ」は、測定系の限界に応じて、最大10%の範囲(すなわち、±10%)またはそれを超える範囲を意味することができる。例えば、約5mgは、4.5mgと5.5mgの間の任意の数を含むことができる。さらに、生物学的系または過程に関しては特に、これらの用語は、最大1桁の規模または最大5倍の値を意味することができる。本開示中に特定の値または組成が与えられている場合、別段の記載がなければ、「約」または「およそ」の意味は、その値または組成に対する許容され得る誤差範囲内にあると考えられるべきである。
【0107】
本明細書において使用される用語「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」ならびに他の関連する用語は互換的に使用され、アミノ酸のポリマーを表し、いずれかの特定の長さに限定されない。ポリペプチドは、天然のアミノ酸および非天然のアミノ酸を含み得る。ポリペプチドには、組換え形態または化学的に合成された形態が含まれる。ポリペプチドには、タンパク質分解による切断、デュードットT2Aリボソームスキッピング切断(cleavage due dot T2A ribosomal skipping)、水酸化、メチル化、脂質化、アセチル化、SUMO化、ユビキチン化、グリコシル化、リン酸化および/またはジスルフィド結合形成などの翻訳後修飾を未だ受けていない前駆体分子も含まれる。これらの用語は、天然および人工のタンパク質、タンパク質断片およびタンパク質配列のポリペプチドアナログ(ムテイン、バリアント、キメラタンパク質および融合タンパク質など)ならびに翻訳後修飾によってまたは他の方法で共有結合的にもしくは非共有結合的に修飾されたタンパク質を包含する。2つのポリペプチド鎖を含む二量体抗原受容体が、本明細書に記載されている。
【0108】
本明細書において使用される用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」ならびに他の関連する用語は互換的に使用され、ヌクレオチドのポリマーを表し、いずれかの特定の長さに限定されない。核酸には、組換え形態および化学的に合成された形態が含まれる。核酸には、DNA分子(cDNAまたはゲノムDNA)、RNA分子(例えば、mRNA)、ヌクレオチドアナログ(例えば、ペプチド核酸および天然に存在しないヌクレオチドアナログ)を用いて生成されたDNAまたはRNAおよびこれらのハイブリッドが含まれる。核酸分子は、一本鎖または二本鎖であり得る。一実施形態において、本開示の核酸分子は、抗体またはその断片もしくはscFV、派生物、ムテインもしくはバリアントをコードする連続したオープンリーディングフレームを含む。一実施形態において、核酸は、1種類のポリヌクレオチドまたは2もしくはそれを超える異なる種類のポリヌクレオチドの混合物を含む。二量体抗原受容体をコードする核酸が、本明細書に記載されている。
【0109】
抗原結合タンパク質は、例えば、免疫グロブリンの構造を有することができる。一実施形態において、「免疫グロブリン」は、ポリペプチド鎖の2つの同一の対から構成され、各対が1つの「軽」鎖(約25kDa)と1つの「重」鎖(約50~70kDa)を有する四量体分子を表す。各鎖のアミノ末端部分は、抗原認識に主として関与する約100~110またはそれを超えるアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能に主として関与する定常領域を構成する。ヒト軽鎖は、κまたはλ軽鎖として分類される。重鎖は、μ、δ、γ、αまたはεとして分類され、それぞれ、抗体のイソタイプをIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEとして規定する。軽鎖および重鎖の中で、可変および定常領域は、約12またはそれを超えるアミノ酸の「J」領域によって連結され、重鎖も、約10を超えるアミノ酸の「D」領域を含む。一般に、Fundamental Immunology第7章(Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989))参照(あらゆる目的のために、その全体が参照により組み込まれる)。完全な免疫グロブリンが2つの抗原結合部位を有するように、各軽/重鎖対の可変領域が抗体結合部位を形成する。一実施形態において、抗原結合タンパク質は、四量体免疫グロブリン分子とは異なるが、1つの標的抗原をなお結合する、または2もしくはそれを超える標的抗原を結合する構造を有する合成分子であり得る。例えば、合成抗原結合タンパク質は、抗体断片、1~6もしくはそれを超えるポリペプチド鎖、ポリペプチドの非対称的集合体またはその他の合成分子を含むことができる。標的抗原を特異的に結合する免疫グロブリン様特性を有する二量体抗原受容体が、本明細書に記載されている。
【0110】
本明細書において使用される「抗体」および「複数の抗体」および関連する用語は、完全な免疫グロブリンまたは抗原に特異的に結合するその抗原結合部分を表す。抗原結合部分は、組換えDNA技術によってまたは完全な抗体の酵素的もしくは化学的切断によって作製され得る。抗原結合部分としては、とりわけ、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ドメイン抗体(dAbs)および相補性決定領域(CDR)断片、一本鎖抗体(scFv)、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディならびに特異的な抗原結合をポリペプチドに付与するのに十分である免疫グロブリンの少なくとも一部を含有するポリペプチドが挙げられる。
【0111】
抗体としては、組換え的に作製された抗体および抗原結合部分が挙げられる。抗体としては、非ヒト、キメラ、ヒト化および完全ヒト抗体が挙げられる。抗体としては、単一特異的、多重特異的(例えば、二重特異的、三重特異的およびこれより高次の特異性)が挙げられる。抗体としては、四量体抗体、軽鎖単量体、重鎖単量体、軽鎖二量体、重鎖二量体が挙げられる。抗体としては、F(ab’)2断片、Fab’断片およびFab断片が挙げられる。抗体としては、単一ドメイン抗体、一価抗体、一本鎖抗体、一本鎖可変断片(scFv)、ラクダ化(camelized)抗体、アフィボディ、ジスルフィド結合されたFv(sdFv)、抗イディオタイプ抗体(抗Id)、ミニボディが挙げられる。抗体としては、モノクローナルおよびポリクローナル集団が挙げられる。抗体のように挙動する二量体抗原受容体が、本明細書に記載されている。
【0112】
本明細書において使用される「抗原結合ドメイン」、「抗原結合領域」または「抗原結合部位」およびその他の関連する用語は、抗原と相互作用し、抗原結合タンパク質の抗原に対する特異性および親和性に寄与するアミノ酸残基(またはその他の部分)を含有する抗原結合タンパク質の部分を表す。その抗原に特異的に結合する抗体に関しては、これは、そのCDRドメインの少なくとも1つの少なくとも一部を含む。抗原結合ドメインを形成する抗体重鎖可変領域と抗体軽鎖可変領域を有する二量体抗原受容体が、本明細書において記載されている。
【0113】
抗体または抗原結合タンパク質または抗体断片の文脈で本明細書において使用される用語「特異的結合」、「特異的に結合する」または「特異的に結合している」およびその他の関連する用語は、他の分子または部分と比較した、抗原への非共有結合または共有結合の優先的結合を表す(例えば、抗体は、他の利用可能な抗原と比較して、特定の抗原に特異的に結合する)。一実施形態において、抗体が、10-5Mもしくはそれ未満、または10-6Mもしくはそれ未満、または10-7Mもしくはそれ未満、または10-8Mもしくはそれ未満、または10-9Mもしくはそれ未満、または10-10Mもしくはそれ未満の解離定数KDで抗原に結合すれば、抗体は標的抗原に特異的に結合する。標的抗原を特異的に結合する二量体抗原受容体が、本明細書に記載されている。
【0114】
一実施形態において、解離定数(KD)は、BIACORE表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイを使用して測定することができる。表面プラズモン共鳴は、例えば、BIACOREシステム(GE HealthcareのBiacore Life Sciences部門、Piscataway、NJ)を用いて、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化を検出することによって、リアルタイムな相互作用の分析を可能にする光学現象を表す。
【0115】
本明細書において使用される「エピトープ」および関連する用語は、抗原結合タンパク質によって(例えば、抗体またはその抗原結合部分によって)結合される抗原の部分を表す。エピトープは、抗原結合タンパク質によって結合される2つまたはそれを超える抗原の部分を含むことができる。エピトープは、1つの抗原のまたは2もしくはそれを超える抗原の非連続部分(例えば、抗原の一次配列中では連続しないが、抗原の三次構造および四次構造という観点では、抗原結合タンパク質によって結合されるのに互いに十分近接するアミノ酸残基)を含むことができる。一般的には、抗体の可変領域、特にCDRがエピトープと相互作用する。標的抗原(例えば、CD38)のエピトープを結合する二量体抗原受容体が、本明細書に記載されている。
【0116】
本明細書において使用される「抗体断片」、「抗体部分」、「抗体の抗原結合断片」または「抗体の抗原結合部分」およびその他の関連する用語は、完全な抗体が結合する抗原を結合する完全な抗体の一部を含む完全な抗体以外の分子を表す。抗体断片の例としては、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;Fd;およびFv断片ならびにdAB;ダイアボディ;直鎖抗体;一本鎖抗体分子(例えば、scFv);特異的な抗原結合をポリペプチドに付与するのに十分である抗体の少なくとも一部を含有するポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。抗体の抗原結合部分は、組換えDNA技術によってまたは完全な抗体の酵素的もしくは化学的切断によって作製され得る。抗原結合部分としては、とりわけ、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ドメイン抗体(dAb)および相補性決定領域(CDR)断片、キメラ抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディならびに抗原結合特性を抗体断片に付与するのに十分である免疫グロブリンの少なくとも一部を含有するポリペプチドが挙げられる。ヒンジ、膜貫通および細胞内シグナル伝達領域に連結されたFab断片を含む二量体抗原受容体が、本明細書に記載されている。
【0117】
「Fab」、「Fab断片」という用語およびその他の関連する用語は、可変軽鎖領域(VL)、定常軽鎖領域(CL)、可変重鎖領域(VH)および第一の定常領域(CH1)を含む一価断片を表す。Fabは、抗原を結合することができる。F(ab’)2断片は、ヒンジ領域において、ジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片である。F(Ab’)2は、抗原結合能を有する。Fd断片は、VHおよびCH1領域を含む。Fv断片は、VLおよびVH領域を含む。Fvは、抗原を結合することができる。dAb断片は、VHドメイン、VLドメインまたはVHもしくはVLドメインの抗原結合断片を有する(米国特許第6,846,634号および同第6,696,245号;米国特許出願公開第2002/02512号;同第2004/0202995号;同第2004/0038291号;同第2004/0009507号;同第2003/0039958号;およびWardら、Nature341:544-546,1989)。ヒンジ、膜貫通および細胞内シグナル伝達領域に連結されたFab断片を含む二量体抗原受容体が、本明細書に記載されている。
【0118】
「ヒト抗体」という用語は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する1またはそれを超える可変および定常領域を有する抗体を表す。一実施形態において、可変および定常ドメインの全てがヒト免疫グロブリン配列に由来する(例えば、完全ヒト抗体)。これらの抗体は、組換え法を通じて、またはヒト重鎖および/もしくは軽鎖をコードする遺伝子に由来する抗体を発現するように遺伝的に改変されているマウスを目的の抗原で免疫することを通じてなど、様々な方法で調製され得、その例は以下に記載されている。完全ヒト抗体重鎖可変領域と抗体軽鎖可変領域を含む二量体抗原受容体が、本明細書において記載されている。
【0119】
「ヒンジ」という用語は、一般的にはタンパク質の2つのドメイン間に見出され、構築物全体の柔軟性および互いに対してドメインの一方または両方の運動を可能にし得るアミノ酸セグメントを表す。構造的には、ヒンジ領域は、約10~約100アミノ酸、例えば、約15~約75アミノ酸、約20~約50アミノ酸または約30~約60アミノ酸を含む。一実施形態において、ヒンジ領域は10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100アミノ酸の長さである。ヒンジ領域は、CD8ヒンジ領域もしくはその断片、CD8αヒンジ領域もしくはその断片、抗体(例えば、IgG、IgA、IgM、IgEまたはIgD抗体)のヒンジ領域または抗体の定常ドメインCH1とCH2を連結するヒンジ領域などの、天然に存在するタンパク質のヒンジ領域に由来することができる。ヒンジ領域は抗体に由来することができ、抗体の1またはそれを超える定常領域を含んでもよくもしくは含まなくてもよく、またはヒンジ領域は抗体のヒンジ領域と抗体のCH3定常領域とを含み、またはヒンジ領域は抗体のヒンジ領域と抗体のCH2およびCH3定常領域とを含み、またはヒンジ領域は天然に存在しないペプチドであり、またはヒンジ領域はscFvのC末端と膜貫通ドメインのN末端との間に配置される。
【0120】
「リーダー配列」または「リーダーペプチド」または「ペプチドシグナル配列」または「シグナルペプチド」という用語は、ポリペプチドのN末端に位置するペプチド配列を表す。リーダー配列は、ポリペプチド鎖を細胞の分泌経路に方向づけ、細胞膜の脂質二重層中へのポリペプチドの組み込みおよび固定を指示することができる。典型的には、リーダー配列は約10~50アミノ酸の長さである。リーダー配列は、細胞質から小胞体への前駆体ポリペプチドの輸送を指示することができる。リーダー配列としては、CD8α、CD28またはCD16リーダー配列を含むシグナル配列が挙げられる。
【0121】
「キメラ抗原受容体」または「CAR」という用語は、細胞内シグナル伝達ドメインに融合されている細胞外抗原結合タンパク質を含む一本鎖融合タンパク質を表す。CAR細胞外結合ドメインは、ヒトモノクローナル抗体などのモノクローナル抗体の可変重領域と軽領域を融合することによって得られる一本鎖可変断片(scFvまたはsFv)である。開示されている構築物はDARであり、標的化のために一本鎖抗体を使用せず、代わりに、別個の重鎖および軽鎖可変ドメイン領域を使用する点で、DARはCARとは異なる。
【0122】
本明細書において使用される「ベクター」および関連する用語は、外来遺伝物質(例えば、核酸導入遺伝子)に機能的に連結することができる核酸分子(例えば、DNAまたはRNA)を表す。ベクターは、細胞(例えば、宿主細胞)中に外来遺伝物質を導入するための媒体として使用することができる。ベクターは、ベクター中への導入遺伝子の挿入のために少なくとも1つの制限エンドヌクレアーゼ認識配列を含むことができる。ベクターは、ベクター-導入遺伝子構築物を保有する宿主細胞の選択を補助するために、抗生物質耐性または選択可能な特徴を付与する少なくとも1つの遺伝子配列を含むことができる。ベクターは、一本鎖または二本鎖核酸分子であり得る。ベクターは、直鎖または環状核酸分子であり得る。ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALENまたはCRISPR/Casを利用する遺伝子編集法のために使用されるドナー核酸は、ベクターの一種であり得る。ベクターの1つの種類は「プラスミド」であり、これは、導入遺伝子に連結することができ、宿主細胞中で複製し、導入遺伝子を転写および/または翻訳することが可能な直鎖または環状二本鎖染色体外DNA分子を表す。ウイルスベクターは、典型的には、導入遺伝子に連結することができるウイルスRNAまたはDNA骨格配列を含有する。ウイルス骨格配列は、感染を無効化するが、宿主細胞ゲノム中へのウイルス骨格および共に連結された導入遺伝子の挿入を保持するように改変することができる。ウイルスベクターの例としては、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴、バキュロウイルス、パポバウイルス、ワクシニアウイルス、単純ヘルペスウイルスおよびエプスタインバーウイルスベクターが挙げられる。ある種のベクターは、その中にベクターが導入されている宿主細胞中において自律的な複製をすることが可能である(例えば、細菌の複製起点を含む細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞中に導入されると、宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、それにより、宿主ゲノムと一緒に複製される。
【0123】
「発現ベクター」は、誘導性および/または構成的プロモーターおよびエンハンサーなどの1またはそれを超える制御配列を含有することができるベクターの一種である。発現ベクターは、リボソーム結合部位および/またはポリアデニル化部位を含むことができる。制御配列は、宿主細胞中に形質導入された発現ベクターに連結された導入遺伝子の転写または転写および翻訳を指示する。制御配列(複数可)は、導入遺伝子の発現のレベル、タイミングおよび/または場所を調節することができる。制御配列は、例えば、導入遺伝子に対して直接的に、または1もしくはそれを超える他の分子(例えば、制御配列および/または核酸に結合するポリペプチド)の作用を通じてその効果を発揮することができる。制御配列は、ベクターの一部であり得る。制御配列のさらなる例は、例えば、Goeddel,1990,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,San
Diego,Calif.およびBaronら、1995,Nucleic Acids Res.23:3605-3606に記載されている。二量体抗原受容体をコードする核酸を含む発現ベクターが、本明細書に記載されている。
【0124】
ベクター中に含有される導入遺伝子配列の機能または発現を許容する連鎖が導入遺伝子とベクターとの間に存在する場合に、導入遺伝子はベクターに「機能的に連結」されている。一実施形態において、制御配列が導入遺伝子の発現(例えば、発現のレベル、タイミングまたは場所)に影響を与える場合に、導入遺伝子は制御配列に「機能的に連結」されている。
【0125】
本明細書において使用される用語「形質移入された」または「形質転換された」または「形質導入された」またはその他の関連する用語は、宿主細胞中に外来性核酸(例えば、導入遺伝子)を転移または導入する方法を表す。「形質移入された」または「形質転換された」または「形質導入された」宿主細胞は、外来性核酸(導入遺伝子)を形質移入された、形質転換されたまたは形質導入された宿主細胞である。宿主細胞としては、初代対象細胞およびその子孫が挙げられる。二量体抗原受容体のいずれかの少なくとも一部をコードする外来性核酸が本明細書に記載されており、宿主細胞中に導入することができる。本明細書に記載されている二量体抗原受容体のいずれかの少なくとも一部を含む発現ベクターを宿主細胞中に導入することができ、宿主細胞は、二量体化して本明細書に記載されている二量体抗原受容体を形成する第一および第二のポリペプチドを発現することができる。
【0126】
本明細書に使用されている用語「宿主細胞」または「宿主細胞の集団」または関連する用語は、外来(外来性または導入遺伝子)核酸がその中に導入されている細胞(またはその集団)を表す。外来核酸は、導入遺伝子に機能的に連結された発現ベクターを含むことができ、宿主細胞は、核酸および/または外来核酸(導入遺伝子)によってコードされるポリペプチドを発現するために使用することができる。宿主細胞(またはその集団)は培養された細胞であり得、または被験体から抽出され得る。宿主細胞(またはその集団)としては、初代対象細胞および継代の数に全く関係ないその子孫が挙げられる。宿主細胞(またはその集団)としては、不死化された細胞系が挙げられる。子孫細胞は、親細胞と比べて同一の遺伝物質を保有してもよく、または保有しなくてもよい。宿主細胞は、子孫細胞を包含する。一実施形態において、宿主細胞は、本明細書に開示されているとおりに、抗体を発現するためにいずれかの方法で改変され、形質移入され、形質導入され、形質転換されおよび/または操作されている任意の細胞(その子孫を含む)を記載する。一例において、宿主細胞(またはその集団)は、本明細書に記載されている所望の抗体またはその抗原結合部分をコードする核酸に機能的に連結された発現ベクターを導入することができる。宿主細胞およびその集団は、宿主のゲノム中に安定的に組み込まれている発現ベクターを保有することができ、または染色体外の発現ベクターを保有することができる。一実施形態において、宿主細胞およびその集団は、いくつかの細胞分裂後に存在するまたは一過性に存在し、いくつかの細胞分裂後に失われる染色体外ベクターを保有することができる。
【0127】
宿主細胞は、原核生物、例えば、大腸菌であり得、または真核生物、例えば、単細胞真核生物(例えば、酵母またはその他の真菌)、植物細胞(例えば、タバコまたはトマト植物細胞)、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞、サル細胞、ハムスター細胞、ラット細胞、マウス細胞または昆虫細胞)またはハイブリドーマであり得る。一実施形態において、宿主細胞は、所望される抗体をコードする核酸に機能的に連結された発現ベクターを導入することができ、これにより、形質移入された/形質転換された宿主細胞による抗体の発現に適した条件下で培養される形質移入された/形質転換された宿主細胞を生成し、必要に応じて、形質移入された/形質転換された宿主細胞から抗体を回収し(例えば、宿主細胞可溶化液からの回収)または培地から回収する。一実施形態において、宿主細胞は、CHO、BHK、NS0、SP2/0およびYB2/0を含む非ヒト細胞を含む。一実施形態において、宿主細胞は、HEK293、HT-1080、Huh-7およびPER.C6などのヒト細胞を含む。宿主細胞の例としては、サル腎臓細胞のCOS-7株(ATCC CRL 1651)(Gluzmanら、1981,Cell 23:175参照)、L細胞、C127細胞、3T3細胞(ATCC CCL 163)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞もしくはその派生物、例えば、Veggie CHOおよび無血清培地中で成長する関連細胞系(Rasmussenら、1998、Cytotechnology28:31参照)またはDHFRを欠損するCHO株DX-B 11(Urlaubら、1980,Proc.Natl.Acad.Sci.USA77:4216-20参照)、HeLa細胞、BHK(ATCC CRL 10)細胞系、アフリカミドリザル腎臓細胞系CV1由来のCV1/EBNA細胞系(ATCC CCL 70)(McMahanら、1991,EMBO J.10:2821参照)、ヒト胎児由来腎臓細胞、例えば、293、293EBNAもしくはMSR293、ヒト上皮A431細胞、ヒトColo205細胞、他の形質転換された霊長類細胞系、正常な二倍体細胞、初代組織のインビトロ培養に由来する細胞株、初代外植片、HL-60、U937、HaKまたはジャーカット細胞が挙げられる。一実施形態において、宿主細胞は、Y0、NS0またはSp20などのリンパ球系細胞を含む。一実施形態において、宿主細胞は、哺乳動物の宿主細胞であるが、ヒト宿主細胞ではない。典型的には、宿主細胞は、次いで、宿主細胞中で発現することができるポリペプチドをコードする核酸で形質転換されまたは形質移入されることができる培養された細胞である。「トランスジェニック宿主細胞」または「組換え宿主細胞」という用語は、発現されるべき核酸を導入されている(例えば、形質転換されたまたは形質移入された)宿主細胞を表すために使用することができる。宿主細胞は、上記核酸を含むが、上記核酸と機能的に連結するようになるように制御配列が宿主細胞中に導入されなければ、所望のレベルでその核酸を発現しない細胞でもあり得る。宿主細胞という用語は、特定の対象細胞のみならず、このような細胞の子孫または潜在的な子孫も表すことが理解される。例えば、変異または環境的な影響のために、後続の世代にある種の改変が起こり得るので、このような子孫は、実際には、親細胞と同一でないことがあり得るが、本明細書に使用されている用語の範囲内になお含まれる。
【0128】
宿主細胞または宿主細胞の集団は、Tリンパ球(例えば、T細胞、制御性T細胞、γδT細胞および細胞傷害性T細胞)、NK(ナチュラルキラー)細胞、マクロファージ、樹状細胞、肥満細胞、好酸球、Bリンパ球、単球を含む。一実施形態において、NK細胞は、臍帯血由来のNK細胞または胎盤由来のNK細胞を含む。
【0129】
トランスジェニック宿主細胞は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALENSまたはCRISPR/Casを含む周知のデザイナーヌクレアーゼを含む非ウイルス法を用いて調製することができる。導入遺伝子は、ジンクフィンガーヌクレアーゼなどのゲノム編集技術を用いて、宿主細胞のゲノム中に導入することができる。ジンクフィンガーヌクレアーゼは一対のキメラタンパク質を含み、それぞれが、操作されたジンクフィンガーモチーフ由来のDNA結合ドメインに融合された制限エンドヌクレアーゼ(例えば、FokI)の非特異的エンドヌクレアーゼドメインを含有する。DNA結合ドメインは、宿主ゲノム中の特異的な配列を結合するように操作することができ、エンドヌクレアーゼドメインは、二本鎖切断を作る。ドナーDNAは、導入遺伝子、例えば、本明細書に記載されているCARまたはDAR構築物をコードする核酸のいずれかと、宿主細胞のゲノム中の意図された挿入部位のいずれかの側にある領域に対して相同である隣接配列とを保有する。宿主細胞のDNA修復機構は、相同的DNA修復による導入遺伝子の正確な挿入を可能とする。トランスジェニック哺乳動物宿主細胞は、ジンクフィンガーヌクレアーゼを用いて調製されてきた(米国特許第9,597,357号、同第9,616,090号、同第9,816,074号および同第8,945,868号)。トランスジェニック宿主細胞は、正確な導入遺伝子挿入を与えることができるDNA結合ドメインに融合された非特異的エンドヌクレアーゼドメインを含む点でジンクフィンガーヌクレアーゼと類似するTALEN(Transcription Activator-Like Effector Nucleases(転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ))を用いて調製することができる。ジンクフィンガーヌクレアーゼと同様、TALENは宿主のDNA中に二本鎖切断も導入する。トランスジェニック宿主細胞は、CRISPR(Clustered
Regularly Interspaced Short Palindromic
Repeats(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート))を用いて調製することができる。CRISPRは、標的特異的なドナーDNA組み込みのためのガイドRNAに連結されたCasエンドヌクレアーゼを利用する。ガイドRNAは、標的DNA中のgRNA結合領域の上流にあるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列を含有する保存されたマルチヌクレオチドを含み、Casエンドヌクレアーゼが二本鎖標的DNAを切断する場所である宿主細胞標的部位にハイブリッドを形成する。ガイドRNAは、特異的な標的部位にハイブリッドを形成するように設計することができる。ジンクフィンガーヌクレアーゼおよびTALENと同様に、CRISPR/Cas系は、挿入部位に対して相同性を有する隣接配列を有するドナーDNAの部位特異的挿入を導入するために使用することができる。ゲノムを改変するために使用されるCRISPR/Cas系の例は、例えば、米国特許第8,697,359号、同第10,000,772号、同第9,790,490号および米国特許出願公開第2018/0346927号中に記載されている。一実施形態において、トランスジェニック宿主細胞は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALENまたはCRISPR/Cas系を用いて調製することができ、宿主標的部位はTRAC遺伝子(T細胞受容体アルファ定常(T Cell Receptor
Alpha Constant))であり得る。ドナーDNAは、例えば、本明細書に記載されているCARまたはDAR構築物をコードする核酸のいずれをも含むことができる。ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALENまたはCRISPR/Cas系とともに宿主細胞中にドナーDNAを共送達するために、電気穿孔、ヌクレオフェクションまたはリポフェクションを使用することができる。
【0130】
トランスジェニック宿主細胞は、CARまたはDAR構築物を有するレトロウイルスベクターでT細胞を形質導入することによって調製することができる。形質導入は、Maら、2004 The Prostate61:12-25;およびMaら、The Prostate74(3):286-296、2014(これらの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているとおりに本質的に実施することができる。抗CD38 CARまたはDAR MFGレトロウイルスベクタープラスミドDNAは、エコトロピックレトロウイルスを作製するために、FuGene試薬(Promega,Madison,WI)を用いてPhoenix-Eco細胞系(ATCC)中に形質移入することができ、次いで、PG13パッケージング細胞にGal-Vエンベロープを形質導入して、ヒト細胞を感染するためのレトロウイルスを作製するために、採取一過性ウイルス上清(エコトロピックウイルス(Ecotropic virus))を使用することができる。PG13細胞からのウイルス上清は、CD3またはCD3/CD28活性化の2~3日後に、活性化T細胞(またはPBMC)を形質導入するために使用することができる。活性化ヒトT細胞は、5%FBSを補充したAIM-V成長培地(GIBCO-Thermo Fisher scientific,Waltham,MA)中で2日間、製造業者のマニュアルのとおりに100ng/mLマウス抗ヒトCD3抗体OKT3(Orth Biotech,Rartian,NJ)または抗CD3、抗CD28TransAct(Miltenyi Biotech,German)で、および300~1000U/mL IL2で、正常な健康ドナー末梢血単核球(PBMC)を活性化することによって調製することができる。10μg/mLのレトロネクチン(Takara Bio USA)で予め被覆された6ウェルプレート中で、3mLのウイルス上清でおよそ5×106個の活性化ヒトT細胞を形質導入し、1000gで約1時間、およそ32℃で遠心分離した。形質導入後、5%FBSおよび300~1000U/mLのIL2を補充されたAIM-V成長培地中で、形質導入されたT細胞を拡大増殖させることができる。
【0131】
本開示のポリペプチド(例えば、抗体および抗原結合タンパク質)は、本分野において公知の任意の方法を用いて作製することができる。1つの例において、ポリペプチドは、宿主細胞中に導入され、発現を促進する条件下で宿主細胞によって発現される組換え発現ベクター中に、ポリペプチドをコードする核酸配列(例えば、DNA)を挿入することによって、組換え核酸法によって作製される。
【0132】
組換え核酸操作のための一般的な技術は、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Vols.1-3,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2 ed.,1989中に、またはF.Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology(Green Publishing and Wiley-Interscience:New York,1987)および定期的な改訂版中に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。ポリペプチドをコードする核酸(例えば、DNA)は、哺乳動物、ウイルスまたは昆虫遺伝子に由来する1またはそれを超える適切な転写制御エレメントまたは翻訳制御エレメントを担持する発現ベクターに機能的に連結される。このような制御エレメントとしては、転写プロモーター、転写を調節するための必要に応じて存在するオペレーター配列、適切なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列ならびに転写および翻訳の終結を調節する配列が挙げられる。発現ベクターとしては、宿主細胞中に複製能を付与する複製開始点(origin or replication)を含むことができる。発現ベクターは、トランスジェニック宿主細胞の認識を容易にするための選択を付与する遺伝子を含むことができる(例えば、形質転換体)。
【0133】
組換えDNAは、タンパク質を精製するために有用であり得るタンパク質タグ配列の任意の種類をコードすることもできる。タンパク質タグの例としては、ヒスチジンタグ、FLAGタグ、mycタグ、HAタグまたはGSTタグを挙げることができるが、これらに限定されない。細菌、真菌、酵母および哺乳動物細胞宿主とともに使用するための適切なクローニングおよび発現ベクターは、Cloning Vectors:A Laboratory Manual,(Elsevier,N.Y.,1985)に見出すことができる。
【0134】
発現ベクター構築物は、宿主細胞に適した方法を用いて宿主細胞中に導入することができる。宿主細胞中に核酸を導入するための様々な方法は本分野において公知であり、電気穿孔;塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストランまたはその他の物質を利用する形質移入;ウイルス形質移入;非ウイルス形質移入;微粒子銃;リポフェクション;および感染(例えば、ベクターが感染性因子である場合)を含むが、これらに限定されない。適切な宿主細胞としては、原核生物、酵母、哺乳動物細胞または細菌細胞が挙げられる。
【0135】
適切な細菌としては、グラム陰性またはグラム陽性生物、例えば、大腸菌(E.coli)またはバチルス属種(Bacillus spp.)が挙げられる。酵母、例えば、エス・セレビシエ(S.cerevisiae)などのサッカロミセス(Saccharomyces)種の酵母なども、ポリペプチドの作製のために使用され得る。組換えタンパク質を発現するために、様々な哺乳動物または昆虫細胞培養系も利用することができる。昆虫細胞中で異種タンパク質を産生するためのバキュロウイルス系はLuckow and Summers,(Bio/Technology,6:47,1988)によって概説されている。適切な哺乳動物宿主細胞系の例としては、内皮細胞、COS-7サル腎臓細胞、CV-1、L細胞、C127、3T3、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、ヒト胎児由来腎臓細胞、HeLa、293、293TおよびBHK細胞系が挙げられる。精製されたポリペプチドは、組換えタンパク質を発現するために適切な宿主/ベクター系を培養することによって調製される。次いで、培地または細胞抽出物からタンパク質が精製される。二量体抗原受容体を形成する第一および第二のポリペプチドのいずれもが、トランスジェニック宿主細胞によって発現されることができる。
【0136】
本明細書に開示されている抗体および抗原結合タンパク質は、細胞-翻訳系を用いて作製することもできる。このような目的のために、ポリペプチドをコードする核酸は、mRNAを産生するためにインビトロでの転写を可能にするように、および特定の無細胞系中でのmRNAの無細胞翻訳が使用できるように(哺乳動物または酵母無細胞翻訳系などの真核生物のまたは細菌の無細胞翻訳系などの原核生物の)修飾されなければならない。
【0137】
本明細書に開示されている様々なポリペプチドのいずれかをコードする核酸は、化学的に合成され得る。細胞中での発現を改善するために、コドン使用頻度を選択し得る。このようなコドン使用頻度は、選択された細胞の種類に依存する。大腸菌(E.coli)およびその他の細菌ならびに哺乳動物細胞、植物細胞、酵母細胞および昆虫細胞に対して、特殊化されたコドン使用頻度パターンが開発されてきた。例えば、Mayfieldら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.2003 100(2):438-42;Sinclairら、Protein Expr.Purif.2002(1):96-105;Connell N D.Curr.Opin.Biotechnol.2001 12(5):446-9;Makridesら、Microbiol.Rev.1996 60(3):512-38;およびSharpら、Yeast.1991 7(7):657-78を参照されたい。
【0138】
本明細書に記載されている抗体および抗原結合タンパク質は、化学合成によって(例えば、Solid Phase Peptide Synthesis,2nd ed.,1984,The Pierce Chemical Co.,Rockford,III.に記載されている方法によって)も作製することができる。タンパク質への修飾も、化学合成によって作製することができる。
【0139】
本明細書に記載されている抗体および抗原結合タンパク質は、タンパク質化学の分野において一般的に知られている、タンパク質に対する単離/精製法によって精製することができる。非限定的な例としては、抽出、再結晶、塩析(例えば、硫酸アンモニウムまたは硫酸ナトリウムを用いた)、遠心分離、透析、限外ろ過、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ゲルろ過、ゲル浸透クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動、向流分配またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。精製後に、ポリペプチドは、ろ過および透析を含むがこれらに限定されない本分野で公知の様々な方法のいずれかによって、異なる緩衝液中に交換されおよび/または濃縮され得る。
【0140】
本明細書に記載されている精製された抗体および抗原結合タンパク質は、少なくとも65%純粋、少なくとも75%純粋、少なくとも85%純粋、少なくとも95%純粋または少なくとも98%純粋である。純度の正確な数値にかかわらず、ポリペプチドは、医薬製品として使用するために十分に純粋である。本明細書に記載されている二量体抗原受容体のいずれもが、トランスジェニック宿主細胞によって発現されることができ、次いで、本分野で公知の任意の方法を用いて約65~98%純度または高いレベルの純度に精製することができる。
【0141】
ある実施形態において、本明細書の抗体および抗原結合タンパク質は、翻訳後修飾をさらに含むことができる。例示的な翻訳後タンパク質修飾としては、リン酸化、アセチル化、メチル化、ADPリボシル化、ユビキチン化、グリコシル化、カルボニル化、SUMO化、ビオチン化またはポリペプチド側鎖もしくは疎水性基の付加が挙げられる。その結果、修飾されたポリペプチドは、脂質、多糖または単糖およびホスフェートなどの非アミノ酸要素を含有し得る。一実施形態において、グリコシル化は、1またはそれを超えるシアル酸部分をポリペプチドにコンジュゲートするシアル化であり得る。シアル酸部分は、タンパク質の免疫原性の可能性も低減しながら、溶解度および血清半減期を改善する。Rajuら、Biochemistry.2001 31;40(30):8868-76を参照されたい。
【0142】
一実施形態において、本明細書に記載されている抗体および抗原結合タンパク質は、可溶性ポリペプチドとなるように修飾することができ、これは、抗体および抗原結合タンパク質を非タンパク質性ポリマーに連結することを含む。一実施形態において、米国特許第4,640,835号;同第4,496,689号;同第4,301,144号;同第4,670,417号;同第4,791,192号または同第4,179,337号に記載されている様式で、非タンパク質性ポリマーは、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルキレンを含む。
【0143】
本開示は、薬学的に許容され得る賦形剤と混合されて、本明細書に記載された二量体抗原受容体のいずれかを含む治療的組成物を提供する。賦形剤は、担体、安定化剤および賦形剤を包含する。薬学的に許容され得る賦形剤の賦形剤としては、例えば、不活性な希釈剤または充填剤(例えば、スクロースおよびソルビトール)、滑沢剤、流動促進剤および粘着防止剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シリカ、水素化植物油またはタルク)が挙げられる。さらなる例としては、緩衝剤、安定化剤、防腐剤、非イオン性界面活性剤、抗酸化剤および等張化剤(isotonifier)が挙げられる。
【0144】
治療用組成物および治療用組成物を調製する方法は本分野において周知であり、例えば、”Remington:The Science and Practice of Pharmacy”(20th ed.,ed.A.R.Gennaro A R.,2000,Lippincott Williams & Wilkins,Philadelphia,Pa)に見出される。治療用組成物は、非経口投与用に製剤化することができ、例えば、賦形剤、無菌水、生理食塩水、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、植物起源の油または水素化ナフタレンを含有してもよく、含有することができる。本明細書に記載されている抗体(またはその抗原結合タンパク質)の放出を調節するために、生体適合性、生分解性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマーまたはポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーが使用され得る。抗体(またはその抗原結合タンパク質)の生体内分布を調節するために、ナノ粒子製剤(例えば、生分解性ナノ粒子、固体脂質ナノ粒子、リポソーム)が使用され得る。他の潜在的に有用な非経口送達系としては、エチレン-酢酸ビニルコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、埋め込み可能な注入系およびリポソームが挙げられる。製剤中の抗体(またはその抗原結合タンパク質)の濃度は、投与されるべき薬物の投薬量および投与の経路を含む多数の要因に応じて様々である。
【0145】
本明細書に記載されている二量体抗原受容体のいずれもが、医薬産業において一般的に使用される無毒な酸付加塩または金属錯体などの薬学的に許容され得る塩として必要に応じて投与され得る。酸付加塩の例としては、酢酸、乳酸、パモ酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、安息香酸、パルミチン酸、スベリン酸、サリチル酸、酒石酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸またはトリフルオロ酢酸などの有機酸、タンニン酸、カルボキシメチルセルロースなどのポリマー酸、および塩酸、臭化水素酸、硫酸 リン酸などの無機酸が挙げられる。金属錯体としては、亜鉛、鉄などが挙げられる。1つの例において、抗体(またはその抗原結合部分)は、熱的安定性を増加するために酢酸ナトリウムの存在下で製剤化される。
【0146】
本明細書に記載されている二量体抗原受容体のいずれもが経口用に製剤化され得、非毒性の薬学的に許容され得る賦形剤と混合して活性成分を含有する錠剤を含む。経口用製剤は、チュアブル錠剤として、または活性成分が不活性固体希釈剤と混合される硬質ゼラチンカプセル剤、または活性成分が水もしくは油媒体とともに混合される軟質ゼラチンカプセル剤としても提供され得る。
【0147】
本開示は、膜貫通領域および細胞内シグナル伝達領域に連結されたFab断片を含む二量体抗原受容体(DAR)を提供する。一実施形態において、DAR構築物は、Fab断片と膜貫通領域の間にヒンジ領域を必要に応じて含む。DAR構造の本開示は、Fab型抗体を有するDAR構造を、同じ抗体のscFv型を有するCAR構造に匹敵する予想外の驚くべき結果を提供する。さらに、ヒンジ領域、膜貫通領域および2つの細胞内シグナル伝達領域が同じであるので、
DAR型およびCAR型は直接的に匹敵する。さらに、DAR型の活性は、その対応するCAR型より優れていた。
【0148】
本開示は、1つのポリペプチド上の重鎖結合領域と別個のポリペプチド鎖上の軽鎖結合領域とを含む二量体抗原受容体(DAR)構築物を提供する。二量体抗原受容体を構成する2つのポリペプチド鎖は、二量体化してタンパク質複合体を形成することができる。二量体抗原受容体は標的抗原に特異的に結合するので、二量体抗原受容体は抗体様特性を有する。二量体抗原受容体は、指向性細胞療法のために使用することができる。
【0149】
本開示は、第一のポリペプチド鎖と第二のポリペプチド鎖とを有するDAR(二量体抗原受容体)構築物のための構造であって、第一のポリペプチド鎖が抗体の重鎖可変領域を含み、第二のポリペプチド鎖が抗体の軽鎖可変領域を含み、第一のポリペプチド鎖および第二のポリペプチド鎖の両方が同じ細胞によって発現されている場合には、第一のポリペプチド鎖が、形質導入された細胞の外側にある領域において、1つまたは複数のジスルフィド結合によって、第二のポリペプチド鎖に連結されている構造を提供する。より具体的には、DAR構築物は、順に、抗体重鎖(または軽鎖)であって、可変ドメイン領域およびCH1領域、対応するCL/CK領域の場合は(カッパ(K)またはラムダ(L))を有する抗体重鎖(または軽鎖)と、ヒンジ領域と、膜貫通領域と、1つまたは2つのシグナル伝達ドメインとを含む第一のポリペプチド鎖、ならびに対応するCL/CK領域を有する抗体軽鎖(または重鎖)可変ドメイン領域(カッパ(K)またはラムダ(L))を含む第二のポリペプチド鎖を含み、各第一および第二のポリペプチド鎖中のCH領域は、ヒンジ配列における1つまたは2つのジスルフィド結合で連結されている。
【0150】
本開示は、第一のポリペプチド鎖と第二のポリペプチド鎖とを有するDAR(二量体抗原受容体)構築物のための構造であって、第一のポリペプチド鎖が抗体の重鎖可変領域を含み、第二のポリペプチド鎖が抗体の軽鎖可変領域を含み、第一のポリペプチド鎖および第二のポリペプチド鎖の両方が同じ細胞によって発現されている場合には、第一のポリペプチド鎖が、形質導入された細胞の外側にある領域において、1つまたは複数のジスルフィド結合によって、第二のポリペプチド鎖に連結されている構造を提供する。より具体的には、DAR構築物は、順に、抗体重鎖であって、可変ドメイン領域およびCH1領域、対応するCL/CK領域の場合は(カッパ(K)またはラムダ(L))を有する抗体重鎖と、ヒンジ領域と、膜貫通領域と、1つまたは2つのシグナル伝達ドメインとを含む第一のポリペプチド鎖、ならびに対応するCL/CK領域を有する抗体軽鎖可変ドメイン領域(カッパまたはラムダ)を含む第二のポリペプチド鎖を含み、各第一および第二のポリペプチド鎖中のCH領域は、ヒンジ配列における1つまたは2つのジスルフィド結合で連結されている。
【0151】
一実施形態において、DAR構築物は、別個のポリペプチド鎖上に抗体重鎖可変領域と抗体軽鎖可変領域とを含み、重鎖可変領域および軽鎖可変領域が抗原結合ドメインを形成する。
【0152】
一実施形態において、ヒンジ領域は約10~約100アミノ酸の長さである。一実施形態において、ヒンジ領域は、CD8ヒンジ領域またはその断片、CD8αヒンジ領域またはその断片、抗体の定常ドメインCH1とCH2を連結する抗体(IgG、IgA、IgM、IgEまたはIgD)のヒンジ領域からなる群より独立に選択される。ヒンジ領域は抗体に由来することができ、抗体の1またはそれを超える定常領域を含んでもよく、または含まなくてもよい。
【0153】
一実施形態において、膜貫通ドメインは、CD8α、CD8β、4-1BB/CD137、CD28、CD34、CD4、FcεRIγ、CD16、OX40/CD134、CD3ζ、CD3ε、CD3γ、CD3δ、TCRα、TCRβ、TCRζ、CD32、CD64、CD64、CD45、CD5、CD9、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD137、CD154、LFA-1 T細胞共受容体、CD2 T細胞共受容体/接着分子、CD40、CD4OL/CD154、VEGFR2、FASおよびFGFR2Bからなる群より選択される膜タンパク質配列領域に由来することができる。
【0154】
一実施形態において、シグナル伝達領域は、CD3ζ鎖、4-1BB、CD28、CD27、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球(lymph oocyte)機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、GITR(TNFRSF18)、DR3(TNFRSF25)、TNFR2、CD226およびこれらの組み合わせからのシグナル伝達領域からなる群より選択される。
【0155】
一実施形態において、二量体抗原受容体の一般的な設計は、第一のポリペプチド鎖と第二のポリペプチド鎖とを含み、第一のポリペプチド鎖は、二量体化領域に接続された抗原結合領域と、ヒンジ領域に接続された二量体化領域と、膜貫通領域に接続されたヒンジ領域と、1または複数の細胞内シグナル伝達配列領域に接続された膜貫通領域とを含み、第二のポリペプチド鎖は、抗原結合ドメインと二量体化ドメインとを含む。一実施形態において、第一および第二のポリペプチド鎖の一方または両方における抗原結合ドメインは、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、サイトカイン受容体の細胞外領域、単一ドメイン抗体およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。一実施形態において、第一および第二のポリペプチド鎖の一方または両方における二量体化ドメインは、κ軽鎖定常領域、λ軽鎖定常領域、ロイシンジッパー、myc-max成分およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
図1~4において、「S-S」は、ジスルフィド結合、ロイシンジッパーまたはmyc-max成分を含む、第一および第二のポリペプチド鎖の二量体化をもたらす任意の化学的結合または会合を表す。
【0156】
本開示は、第一のポリペプチド鎖は重鎖可変(VH)および重鎖定常領域(CH)を担持し、第二のポリペプチド鎖は軽鎖可変(VL)および軽鎖定常領域(CL)(例えば、
図1および2)を担持する二量体抗原受容体(DAR)構築物を提供する。一実施形態において、二量体抗原受容体(DAR)構築物は、(a)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖:(i)抗体重鎖可変領域(VH)、(ii)抗体重鎖定常領域(CH)、(iii)必要に応じて存在するヒンジ領域、(iv)膜貫通領域(TM)、および(v)細胞内シグナル伝達領域;(b)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖:(i)抗体軽鎖可変領域(VL)(例えば、カッパまたはラムダ)、および(ii)抗体軽鎖定常領域(CL)を含む。
【0157】
本開示は、第一のポリペプチド鎖は軽鎖可変(VL)および軽鎖定常領域(CL)を担持し、第二のポリペプチド鎖は重鎖可変(VH)および重鎖定常領域(CH)(例えば、
図3および4)を担持する二量体抗原受容体(DAR)構築物を提供する。一実施形態において、二量体抗原受容体(DAR)構築物は、(a)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖:(i)抗体軽鎖可変領域(VL)、(ii)抗体軽鎖定常領域(CL)、(iii)必要に応じて存在するヒンジ領域、(iv)膜貫通領域(TM)、および(v)細胞内シグナル伝達領域;(b)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖:(i)抗体重鎖可変領域(VH)、および(ii)抗体重鎖定常領域(CH)を含む。
【0158】
一実施形態において、
図1~4に示されている二量体抗原受容体に関しては、抗体重鎖定常領域(CH)および抗体軽鎖定常領域(CL)は、二量体化して二量体化ドメインを形成することができる。一実施形態において、抗体重鎖定常領域および抗体軽鎖定常領域は、1または2のジスルフィド結合を介して二量体化する。
【0159】
一実施形態において、
図1~4に示されている二量体抗原受容体に関しては、抗体重鎖可変領域(VH)および抗体軽鎖可変領域(VL)は、互いに会合して抗原結合ドメインを形成する。例えば、抗体重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域は、抗体重鎖定常領域と抗体軽鎖定常領域が二量体化する場合、互いと会合する。
【0160】
一実施形態において、
図1~4に示されている二量体抗原受容体に関しては、抗体重鎖可変領域と抗体軽鎖可変領域とから形成される抗原結合ドメインが標的抗原を結合する。
【0161】
一実施形態において、
図1~4に示されている二量体抗原受容体に関しては、抗体重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域は完全ヒト抗体領域である。
【0162】
一実施形態において、
図1~4に示されている二量体抗原受容体に関しては、ヒンジ領域は約10~約100アミノ酸の長さである。一実施形態において、ヒンジ領域は、抗体(例えば、IgG、IgA、IgM、IgEまたはIgD)からのヒンジ領域またはその断片を含む。一実施形態において、ヒンジ領域は、CD8(例えば、CD8α)もしくはCD28ヒンジ領域またはこれらの断片を含む。一実施形態において、ヒンジ領域は、CPPCまたはSPPCアミノ酸配列を含む。一実施形態において、ヒンジ領域は、CD8およびCD28ヒンジ配列の両方(例えば、長いヒンジ領域)、CD8配列のみ(短いヒンジ)またはCD28ヒンジ配列のみ(例えば、短いヒンジ領域)を含む。
【0163】
一実施形態において、
図1~4に示されている二量体抗原受容体に関しては、第一および第二のポリペプチド鎖の膜貫通領域は、独立して、CD8α、CD8β、4-1BB/CD137、CD28、CD34、CD4、FcεRIγ、CD16、OX40/CD134、CD3ζ、CD3ε、CD3γ、CD3δ、TCRα、TCRβ、TCRζ、CD32、CD64、CD64、CD45、CD5、CD9、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD137、CD154、LFA-1 T細胞共受容体、CD2 T細胞共受容体/接着分子、CD40、CD4OL/CD154、VEGFR2、FASおよびFGFR2Bに由来することができる。
【0164】
一実施形態において、
図1~4に示されている二量体抗原受容体に関しては、第一のポリペプチドの細胞内シグナル伝達領域は、4-1BB、CD3ζ、CD28、CD27、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、GITR(TNFRSF18)、DR3(TNFRSF25)、TNFR2、CD226およびこれらの組み合わせからの2~5個のシグナル伝達配列の任意の順序および任意の組み合わせでの細胞内シグナル伝達配列を含む。一実施形態において、細胞内シグナル伝達領域は、CD28、4-1BBおよび/またはCD3ζの任意の1つまたは2もしくはそれより多くの任意の組み合わせからの細胞内シグナル伝達配列を含む。一実施形態において、細胞内シグナル伝達領域は、CD28およびCD3ζ細胞内シグナル伝達配列または4-1BBおよびCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む。一実施形態において、細胞内シグナル伝達領域のCD3ζ部分は、ITAM(immunoreceptor tyrosine-based activation motif)(免疫受容活性化チロシンモチーフ))モチーフ1、2および3(例えば、長いCD3ζ)を含む。一実施形態において、細胞内シグナル伝達領域のCD3ζ部分は、ITAMモチーフの1つのみ、例えば、ITAM1、2または3のみ(例えば、短いCD3ζ)を含む。
【0165】
本開示は、互いに会合して、CD38タンパク質抗原を結合する抗原結合ドメインを形成する第一および第二のポリペプチド鎖を有する二量体抗原受容体(DAR)構築物を提供する。一実施形態において、CD38タンパク質は、ヒト、カニクイザルおよび/またはマウスから得られる。一実施形態において、CD38タンパク質は、野生型または変異体CD38タンパク質を含む。
【0166】
一実施形態において、二量体抗原受容体の第一のポリペプチド鎖は、配列番号1のアミノ酸配列を含む抗体重鎖可変領域を含む。一実施形態において、抗体重鎖定常領域は、配列番号2のアミノ酸配列を含む。一実施形態において、ヒンジ領域は、配列番号5のアミノ酸配列を含むCD28ヒンジまたは配列番号21のアミノ酸配列を含むCD8ヒンジまたは配列番号19のCD28およびCD8ヒンジ配列を含むヒンジ領域(例えば、長いヒンジ)を含む。一実施形態において、膜貫通領域は配列番号6のアミノ酸配列を含むCD28膜貫通領域である。一実施形態において、細胞内シグナル伝達領域は、配列番号7のアミノ酸配列を含む4-1BBシグナル伝達配列、配列番号8のアミノ酸配列を含むCD28シグナル伝達配列、配列番号9のアミノ酸配列を含むCD3ζ(長)シグナル伝達および/またはITAM3モチーフを有し、配列番号20のアミノ酸配列を含むCD3ζ(短)シグナル伝達配列からなる群より選択されるシグナル伝達配列の任意の1つまたは2もしくはそれを超える任意の組み合わせを含む。一実施形態において、第一のポリペプチド鎖は、(例えば、
図35Bで下線が付されたリーダー配列ありまたはなしで)配列番号13のアミノ酸配列を含む。一実施形態において、第一のポリペプチド鎖は、4-1BBとCD3ζシグナル伝達配列の間に配列番号13のアミノ酸配列とCD28シグナル伝達配列(配列番号8)を含む。一実施形態において、第一のポリペプチド鎖は、(例えば、
図35Cで下線が付されたリーダー配列ありまたはなしで)配列番号16のアミノ酸配列を含む。一実施形態において、第一のポリペプチド鎖は、4-1BBとCD3ζシグナル伝達配列の間に配列番号16のアミノ酸配列とCD28シグナル伝達配列(配列番号8)を含む。
【0167】
一実施形態において、二量体抗原受容体の第二のポリペプチド鎖は、配列番号3のアミノ酸配列を含む抗体軽鎖可変領域を含む。一実施形態において、抗体軽鎖定常領域は、配列番号4のアミノ酸配列を含む。一実施形態において、第二のポリペプチド鎖の完全長は、(例えば、
図35Bで下線が付されたリーダー配列ありまたはなしで)配列番号14のアミノ酸配列を含む。一実施形態において、第二のポリペプチド鎖の完全長は、(例えば、
図35Cで下線が付されたリーダー配列ありまたはなしで)配列番号17のアミノ酸配列を含む。
【0168】
本開示は、(a)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖:(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むCD38抗体重鎖可変領域、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むCD38抗体重鎖定常領域、(iii)配列番号5のアミノ酸配列を含むCD28ヒンジ領域、(iv)配列番号6のアミノ酸配列を含むCD28膜貫通領域、および(v)配列番号7のアミノ酸配列を含む4-1BB細胞内シグナル伝達配列および配列番号9のアミノ酸配列を含むCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む細胞内シグナル伝達配列;ならびに(b)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖:(i)配列番号3のアミノ酸配列を含むCD38抗体軽鎖可変領域、および(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含むCD38抗体軽鎖定常領域を含む二量体抗原受容体(DAR)構築物を提供し、抗体重鎖定常領域および抗体軽鎖定常領域は二量体化ドメインを形成し、抗体重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域はCD38タンパク質に結合する抗原結合ドメインを形成する(例えば、
図1)。
【0169】
本開示は、(a)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖:(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むCD38抗体重鎖可変領域、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むCD38抗体重鎖定常領域、(iii)配列番号5のアミノ酸配列を含むCD28ヒンジ領域、(iv)配列番号6のアミノ酸配列を含むCD28膜貫通領域、および(v)配列番号7のアミノ酸配列を含む4-1BB細胞内シグナル伝達配列およびITAM3モチーフを有し、配列番号20のアミノ酸配列を含むCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む細胞内シグナル伝達配列;ならびに(b)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖:(i)配列番号3のアミノ酸配列を含むCD38抗体軽鎖可変領域、および(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含むCD38抗体軽鎖定常領域を含む二量体抗原受容体(DAR)構築物を提供し、抗体重鎖定常領域および抗体軽鎖定常領域は二量体化ドメインを形成し、抗体重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域はCD38タンパク質に結合する抗原結合ドメインを形成する(例えば、
図1)。
【0170】
本開示は、重鎖可変(VH)および重鎖定常領域(CH)を担持する第一のポリペプチド鎖、および軽鎖可変(VL)および軽鎖定常領域(CL)(例えば、
図1)を担持する第二のポリペプチド鎖を含むバージョン1(例えば、V1)二量体抗原受容体(DAR)構築物を提供し、(a)第一のポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含み:(i)抗体重鎖可変領域(VH)、(ii)抗体重鎖定常領域(CH)、(iii)CD8およびCD28ヒンジ配列(例えば、配列番号19)を含む長ヒンジ領域、(iv)CD28膜貫通配列(例えば、配列番号6)を含む膜貫通領域(TM)、および(v)CD28シグナル伝達配列(例えば、配列番号8)およびITAMモチーフ1、2および3(例えば、配列番号9)を有するCD3-ζシグナル伝達配列を含む細胞内シグナル伝達領域;(b)第二のポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む:(i)抗体軽鎖可変領域(VL)(例えば、カッパまたはラムダ)、および(ii)抗体軽鎖定常領域(CL)。一実施形態において、抗体重鎖可変領域(VH)は抗CD38重鎖可変領域配列(例えば、配列番号1)を含み、抗体重鎖定常領域(CH)は抗CD38重鎖定常領域配列(例えば、配列番号2)を含む。
【0171】
本開示は、重鎖可変(VH)および重鎖定常領域(CH)を担持する第一のポリペプチド鎖、および軽鎖可変(VL)および軽鎖定常領域(CL)(例えば、
図1および2)を担持する第二のポリペプチド鎖を含むバージョン2(例えば、V2)二量体抗原受容体(DAR)構築物を提供し、(a)第一のポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含み:(i)抗体重鎖可変領域(VH)、(ii)抗体重鎖定常領域(CH)、(iii)CD28ヒンジ配列(例えば、配列番号5)を含む短ヒンジ領域、(iv)CD28膜貫通配列(例えば、配列番号6)を含む膜貫通領域(TM)、および(v)(1)4-1BBシグナル伝達配列(例えば、配列番号7)およびITAMモチーフ1、2および3(例えば、配列番号9)を有するCD3-ζ、または(2)CD28(例えば、配列番号8)シグナル伝達配列およびITAMモチーフ1、2および3(例えば、配列番号9)を有するCD3-ζ、または(3)4-1BB(例えば、配列番号7)シグナル伝達配列およびCD28(例えば、配列番号8)シグナル伝達配列およびITAMモチーフ1、2および3(例えば、配列番号9)を有するCD3-ζのいずれかを含む細胞内シグナル伝達領域;(b)第二のポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む:(i)抗体軽鎖可変領域(VL)(例えば、カッパまたはラムダ)、および(ii)抗体軽鎖定常領域(CL)。
【0172】
一実施形態において、バージョン2a(V2a)DAR構築物は、4-1BBシグナル伝達配列(例えば、配列番号7)ならびにITAMモチーフ1、2および3を有するCD3ζ(例えば、配列番号9)を有する細胞内シグナル伝達領域を含む。
【0173】
一実施形態において、バージョン2b(V2b)DAR構築物は、CD28(例えば、配列番号8)シグナル伝達配列ならびにITAMモチーフ1、2および3を有するCD3-ζ(例えば、配列番号9)を有する細胞内シグナル伝達領域を含む。
【0174】
一実施形態において、バージョン2c(V2c)DAR構築物は、4-1BB(例えば、配列番号7)シグナル伝達配列およびCD28(例えば、配列番号8)シグナル伝達配列ならびにITAMモチーフ1、2および3を有するCD3ζ(例えば、配列番号9)を有する細胞内シグナル伝達領域を含む。
【0175】
一実施形態において、DAR V2aおよびV2bは第二世代DAR構築物であるのに対して、DAR V2cは第三世代DAR構築物である。一実施形態において、抗体重鎖可変領域(VH)は、抗CD38重鎖可変領域配列(例えば、配列番号1)を含み、抗体重鎖定常領域(CH)は、抗CD38重鎖定常領域配列(例えば、配列番号2)を含む。
【0176】
本開示は、重鎖可変(VH)および重鎖定常領域(CH)を担持する第一のポリペプチド鎖、および軽鎖可変(VL)および軽鎖定常領域(CL)(例えば、
図1)を担持する第二のポリペプチド鎖を含むバージョン3(例えば、V3)二量体抗原受容体(DAR)構築物を提供し、(a)第一のポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含み:(i)抗体重鎖可変領域(VH)、(ii)抗体重鎖定常領域(CH)、(iii)CD28ヒンジ配列(例えば、配列番号5)を含む短ヒンジ領域、(iv)CD28膜貫通配列(例えば、配列番号6)を含む膜貫通領域(TM)、および(v)4-1BBシグナル伝達配列(例えば、配列番号7)およびITAMモチーフ3のみ(例えば、配列番号20)を有するCD3-ζシグナル伝達配列を含む細胞内シグナル伝達領域;(b)第二のポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む:(i)抗体軽鎖可変領域(VL)(例えば、カッパまたはラムダ)、および(ii)抗体軽鎖定常領域(CL)。一実施形態において、抗体重鎖可変領域(VH)は抗CD38重鎖可変領域配列(例えば、配列番号1)を含み、抗体重鎖定常領域(CH)は抗CD38重鎖定常領域配列(例えば、配列番号2)を含む。
【0177】
本開示は、重鎖可変(VH)および重鎖定常領域(CH)を担持する第一のポリペプチド鎖、および軽鎖可変(VL)および軽鎖定常領域(CL)を担持する第二のポリペプチド鎖を含むバージョン4(例えば、V4)二量体抗原受容体(DAR)構築物を提供し、(a)第一のポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に4つの領域を含み:(i)抗体重鎖可変領域(VH)、(ii)抗体重鎖定常領域(CH)、(iii)CD28膜貫通配列(例えば、配列番号6)を含む膜貫通領域(TM)、および(iv)4-1BBシグナル伝達配列(例えば、配列番号7)およびITAMモチーフ3のみ(例えば、配列番号20)を有するCD3-ζシグナル伝達配列を含む細胞内シグナル伝達領域;(b)第二のポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む:(i)抗体軽鎖可変領域(VL)(例えば、カッパまたはラムダ)、および(ii)抗体軽鎖定常領域(CL)。DAR V4構築物はヒンジ配列を欠く。一実施形態において、抗体重鎖可変領域(VH)は抗CD38重鎖可変領域配列(例えば、配列番号1)を含み、抗体重鎖定常領域(CH)は抗CD38重鎖定常領域配列(例えば、配列番号2)を含む。
【0178】
本開示は、前駆体ポリペプチドを提供する。一実施形態において、前駆体ポリペプチドは、会合/集合して二量体抗原受容体(DAR)構築物を形成する第一および第二のポリペプチド鎖になるように処理することができる。
【0179】
本開示は、アミノ末端からカルボキシル末端へ順に10個の領域:(1)重鎖リーダー配列、(2)抗体重鎖可変領域、(3)抗体重鎖定常領域、(4)必要に応じて存在するヒンジ領域、(5)膜貫通領域、(6)細胞内シグナル伝達領域、(7)T2A切断配列、(8)軽鎖リーダー配列、(9)抗体軽鎖可変領域および(10)抗体軽鎖定常領域を含む前駆体ポリペプチドを提供する(
図5および6)。非限定的な例において、細胞内シグナル伝達領域は、4-1BB、CD3ζおよび/またはCD28の少なくとも2つの任意の組み合わせの細胞内シグナル伝達配列を含む(
図5および6)。当業者であれば他の細胞内シグナル伝達配列の組み合わせが可能であることを理解する。T2A切断配列は、リボソームスキッピングおよび2つの別個のポリペプチドを生成するタンパク質翻訳の再開を促進するアミノ酸配列である。一実施形態において、前駆体ポリペプチドの集団は、T2A切断配列において切断されたもしくは切断されていないポリペプチドの混合物ならびに/または重鎖および/もしくは軽鎖リーダー配列において切断されたもしくは切断されていないポリペプチドの混合物を含む。
【0180】
本開示は、アミノ末端からカルボキシル末端へ順に10個の領域:(1)軽鎖リーダー配列、(2)抗体軽鎖可変領域、(3)抗体軽鎖定常領域、(4)必要に応じて存在するヒンジ領域、(5)膜貫通領域、(6)細胞内シグナル伝達領域、(7)T2A切断配列、(8)重鎖リーダー配列、(9)抗体重鎖可変領域および(10)抗体軽鎖定常領域を含む前駆体ポリペプチドを提供する(
図7および8)。非限定的な例において、細胞内シグナル伝達領域は、4-1BB、CD3ζおよび/またはCD28の少なくとも2つの任意の組み合わせの細胞内シグナル伝達配列を含む(
図7および8)。当業者であれば他の細胞内シグナル伝達配列の組み合わせが可能であることを理解する。T2A切断配列は、リボソームスキッピングおよび2つの別個のポリペプチドを生成するタンパク質翻訳の再開を促進するアミノ酸配列である。一実施形態において、前駆体ポリペプチドの集団は、T2A切断配列において切断されたもしくは切断されていないポリペプチドの混合物ならびに/または重鎖および/もしくは軽鎖リーダー配列において切断されたもしくは切断されていないポリペプチドの混合物を含む。
【0181】
一実施形態において、
図5~8に示されている前駆体ポリペプチドに関しては、重鎖および軽鎖リーダー配列は、ポリペプチド鎖(例えば、第一および第二のポリペプチド鎖)を細胞の分泌経路へ向かわせ、細胞膜の脂質二重層中へのポリペプチドの組み込みおよび係留を可能にするペプチドシグナル配列を含む。重および軽鎖リーダー配列は、宿主細胞の細胞質から小胞体への前駆体ポリペプチドの輸送を指示することができる。重鎖および軽鎖リーダー配列としては、CD8α、CD28またはCD16リーダー配列を含むシグナル配列が挙げられる。
【0182】
一実施形態において、
図5~8に示されている前駆体ポリペプチドに関しては、前駆体ポリペプチドのN末端は、第一のペプチドシグナル配列(例えば、重鎖または軽鎖リーダー配列)を含む。
【0183】
一実施形態において、
図5~8に示されている前駆体ポリペプチドに関しては、前駆体ポリペプチドは、切断配列の後に配置された第二のペプチドシグナル配列(例えば、重鎖または軽鎖リーダー配列)を含むことができる。
【0184】
一実施形態において、前駆体ポリペプチドは、切断配列において切断されることができ、これにより、それぞれがそのN末端にペプチドシグナル配列を有する第一および第二のポリペプチド鎖を生成する。
【0185】
一実施形態において、
図5~8に示されている前駆体ポリペプチドに関しては、前駆体ポリペプチドのプロセシングとしては、第一および第二のポリペプチド鎖へ前駆体を切断すること、前駆体を分泌することおよび/または細胞膜中に前駆体を係留することが挙げられる。
【0186】
一実施形態において、
図5~8に示されている前駆体ポリペプチドに関しては、前駆体ポリペプチド鎖が切断されて第一および第二のポリペプチド鎖を生成した後に、(ポリペプチド鎖の1つの)抗体重鎖定常領域(CH)と(他のポリペプチド鎖の)抗体軽鎖定常領域(CL)は二量体化して、二量体化ドメインを形成することができる。一実施形態において、抗体重鎖定常領域および抗体軽鎖定常領域は、1または2のジスルフィド結合を介して二量体化する。
【0187】
一実施形態において、
図5~8に示されている前駆体ポリペプチドに関しては、前駆体ポリペプチド鎖が切断されて第一および第二のポリペプチド鎖を生成した後に、(ポリペプチド鎖の1つの)抗体重鎖可変領域(VH)および(ポリペプチド鎖の1つの)抗体軽鎖可変領域(VL)は、互いに会合して抗原結合ドメインを形成する。例えば、抗体重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域は、抗体重鎖定常領域と抗体軽鎖定常領域が二量体化する場合、互いと会合する。
【0188】
一実施形態において、
図5~8に示されている前駆体ポリペプチドに関しては、抗体重鎖可変領域と抗体軽鎖可変領域とから形成される抗原結合ドメインが標的抗原を結合する。
【0189】
一実施形態において、
図5~8に示されている前駆体ポリペプチドに関しては、抗体重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域は完全ヒト抗体領域である。
【0190】
一実施形態において、
図5~8に示されている前駆体ポリペプチドに関しては、ヒンジ領域は約10~約100アミノ酸の長さである。一実施形態において、ヒンジ領域は、抗体(例えば、IgG、IgA、IgM、IgEまたはIgD)からのヒンジ領域またはその断片を含む。一実施形態において、ヒンジ領域は、CD8(例えば、CD8α)もしくはCD28ヒンジ領域またはこれらの断片を含む。一実施形態において、ヒンジ領域は、CPPCまたはSPPCアミノ酸配列を含む。一実施形態において、ヒンジ領域は、CD8およびCD28ヒンジ配列の両方(例えば、長いヒンジ領域)、CD8配列のみ(短いヒンジ)またはCD28ヒンジ配列のみ(例えば、短いヒンジ領域)を含む。
【0191】
一実施形態において、
図5~8に示されている前駆体ポリペプチドに関しては、前駆体ポリペプチド鎖の膜貫通領域は、CD8α、CD8β、4-1BB/CD137、CD28、CD34、CD4、FcεRIγ、CD16、OX40/CD134、CD3ζ、CD3ε、CD3γ、CD3δ、TCRα、TCRβ、TCRζ、CD32、CD64、CD64、CD45、CD5、CD9、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD137、CD154、LFA-1 T細胞共受容体、CD2 T細胞共受容体/接着分子、CD40、CD4OL/CD154、VEGFR2、FASおよびFGFR2Bに由来することができる。
【0192】
一実施形態において、
図5~8に示されている前駆体ポリペプチドに関しては、第一のポリペプチドの細胞内シグナル伝達領域は、4-1BB、CD3ζ、CD28、CD27、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、GITR(TNFRSF18)、DR3(TNFRSF25)、TNFR2、および/またはCD226からの2~5個のシグナル伝達配列の任意の順序および任意の組み合わせでの細胞内シグナル伝達配列を含む。一実施形態において、細胞内シグナル伝達領域は、CD28、4-1BBおよび/またはCD3ζの任意の1つまたは2もしくはそれより多くの任意の組み合わせからの細胞内シグナル伝達配列を含む。一実施形態において、細胞内シグナル伝達領域は、CD28およびCD3ζ細胞内シグナル伝達配列または4-1BBおよびCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む。一実施形態において、細胞内シグナル伝達領域のCD3ζ部分は、ITAM(immunoreceptor tyrosine-based activation motif)(免疫受容活性化チロシンモチーフ))モチーフ1、2および3(例えば、長いCD3ζ)を含む。一実施形態において、細胞内シグナル伝達領域のCD3ζ部分は、ITAMモチーフの1つのみ、例えば、ITAM1、2または3のみ(例えば、短いCD3ζ)を含む。
【0193】
本開示は、10の領域:(1)配列番号10のアミノ酸配列を含む抗体重鎖リーダー配列と、(2)配列番号1のアミノ酸配列を含むCD38抗体重鎖可変領域と、(3)配列番号2のアミノ酸配列を含むCD38抗体重鎖定常領域と、(4)配列番号5のアミノ酸配列を含むCD28ヒンジ領域および必要に応じて配列番号21のアミノ酸配列を含むCD8ヒンジと、(5)配列番号6のアミノ酸配列を含むCD28膜貫通領域と、(6)配列番号7のアミノ酸配列を含む4-1BBシグナル伝達配列、配列番号8のアミノ酸配列を含むCD28シグナル伝達配列、配列番号9のアミノ酸配列を含むCD3ζ(長)シグナル伝達および/またはITAM3モチーフを有し、配列番号20のアミノ酸配列を含むCD3ζ(短)シグナル伝達配列からなる群より選択されるシグナル伝達配列の任意の1つまたは3もしくはそれを超える任意の組み合わせを含む細胞内シグナル伝達領域と、(7)配列番号12のアミノ酸配列を含むT2A切断配列と、(8)配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖リーダー配列と、(9)配列番号3のアミノ酸配列を含むCD38抗体軽鎖可変領域と、(10)配列番号4のアミノ酸配列を含むCD38抗体軽鎖定常領域とを含む前駆体ポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結されたベクターを提供する。一実施形態において、完全長前駆体ポリペプチドは、配列番号15または18のアミノ酸配列を含む。一実施形態において、完全長前駆体ポリペプチドは、4-1BBとCD3ζシグナル伝達配列との間に配列番号15のアミノ酸配列とCD28シグナル伝達配列(配列番号8)とを含む。一実施形態において、前駆体ポリペプチドは、第一および第二のポリペプチド鎖を放出するためにT2A切断可能配列において切断すること、および前駆体を分泌すること、および/または細胞膜中に前駆体を係留することによって処理することができる。第一および第二のポリペプチド鎖は、抗体重鎖定常領域と抗体軽鎖定常領域との間で少なくとも1つのジスルフィド結合を介して二量体化することができ、抗体重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域はCD38抗原を結合する抗原結合ドメインを形成することができる。一実施形態において、ヒンジ領域は、必要に応じて存在する。
【0194】
本開示は、10の領域:(1)配列番号10のアミノ酸配列を含む抗体重鎖リーダー配列と、(2)配列番号1のアミノ酸配列を含むCD38抗体重鎖可変領域と、(3)配列番号2のアミノ酸配列を含むCD38抗体重鎖定常領域と、(4)配列番号5のアミノ酸配列を含むCD28ヒンジ領域と、(5)配列番号6のアミノ酸配列を含むCD28膜貫通領域と、(6)配列番号7のアミノ酸配列を含む4-1BBシグナル伝達配列およびITAM3モチーフを有し、配列番号20のアミノ酸配列を含むCD3ζ(短)シグナル伝達配列を含む細胞内シグナル伝達領域および必要に応じて配列番号8のアミノ酸配列を含むCD28シグナル伝達配列と、(7)配列番号12のアミノ酸配列を含むT2A切断配列と、(8)配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖リーダー配列と、(9)配列番号3のアミノ酸配列を含むCD38抗体軽鎖可変領域と、(10)配列番号4のアミノ酸配列を含むCD38抗体軽鎖定常領域とを含む前駆体ポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結されたベクターを提供する。一実施形態において、完全長前駆体ポリペプチドは、配列番号18のアミノ酸配列を含む。一実施形態において、前駆体ポリペプチドは、第一および第二のポリペプチド鎖を放出するためにT2A切断可能配列において切断すること、および前駆体を分泌すること、および/または細胞膜中に前駆体を係留することによって処理することができる。一実施形態において、第一および第二のポリペプチド鎖の放出後に、第一ポリペプチド鎖は配列番号16のアミノ酸配列を含み、第二ポリペプチド鎖は配列番号17のアミノ酸配列を含む。第一および第二のポリペプチド鎖は、抗体重鎖定常領域と抗体軽鎖定常領域との間で少なくとも1つのジスルフィド結合を介して二量体化することができ、抗体重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域はCD38抗原を結合する抗原結合ドメインを形成することができる。
【0195】
本開示は、本明細書に記載の第一のポリペプチド鎖、第二のポリペプチド鎖、第一および第二のポリペプチド鎖、二量体抗原受容体または前駆体ポリペプチドのいずれかをコードする核酸を提供する。
【0196】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖:(i)抗体重鎖可変領域、(ii)抗体重鎖定常領域、(iii)必要に応じて存在するヒンジ領域、(iv)膜貫通領域、および(v)細胞内シグナル伝達領域をコードする核酸を提供する。
【0197】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖:(i)抗体軽鎖可変領域、および(ii)抗体軽鎖定常領域をコードする核酸を提供する。
【0198】
一実施形態において、核酸は、(a)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖:(i)抗体重鎖可変領域、(ii)抗体重鎖定常領域、(iii)必要に応じて存在するヒンジ領域、(iv)膜貫通領域、および(v)2~5の細胞内シグナル伝達配列を有する細胞内シグナル伝達配列;ならびに(b)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖:(i)抗体軽鎖可変領域、および(ii)抗体軽鎖定常領域(例えば、
図1および2)を含む第一および第二のポリペプチド鎖をコードする。
【0199】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖:(i)抗体軽鎖可変領域、(ii)抗体軽鎖定常領域、(iii)必要に応じて存在するヒンジ領域、(iv)膜貫通領域、および(v)細胞内シグナル伝達領域をコードする核酸を提供する。
【0200】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖:(i)抗体重鎖可変領域、および(ii)抗体重鎖定常領域をコードする核酸を提供する。
【0201】
一実施形態において、核酸は、(a)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖:(i)抗体軽鎖可変領域、(ii)抗体軽鎖定常領域、(iii)必要に応じて存在するヒンジ領域、(iv)膜貫通領域、および(v)2~5の細胞内シグナル伝達配列を有する細胞内シグナル伝達配列;ならびに(b)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖:(i)抗体重鎖可変領域、および(ii)抗体重鎖定常領域(例えば、
図3および4)を含む第一および第二のポリペプチド鎖をコードする。
【0202】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に6つの領域を含む第一のポリペプチド鎖:(i)重鎖リーダー領域、(ii)抗体重鎖可変領域、(iii)抗体重鎖定常領域、(iv)必要に応じて存在するヒンジ領域、(v)膜貫通領域、および(vi)細胞内シグナル伝達領域をコードする核酸を提供する。
【0203】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に3つの領域を含む第二のポリペプチド鎖:(i)軽鎖リーダー領域、(ii)抗体軽鎖可変領域、および(iii)抗体軽鎖定常領域をコードする核酸を提供する。
【0204】
一実施形態において、核酸は、(a)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に6つの領域を含む第一のポリペプチド鎖:(i)重鎖リーダー配列、(ii)抗体重鎖可変領域、(iii)抗体重鎖定常領域、(iv)必要に応じて存在するヒンジ領域、(v)膜貫通領域、および(vi)2~5のを細胞内シグナル伝達配列有する細胞内シグナル伝達配列;ならびに(b)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖:(i)抗体軽鎖可変領域、および(ii)抗体軽鎖定常領域を含む第一および第二のポリペプチド鎖をコードする。
【0205】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に6つの領域を含む第一のポリペプチド鎖:(i)軽鎖リーダー領域、(ii)抗体軽鎖可変領域、(iii)抗体軽鎖定常領域、(iv)必要に応じて存在するヒンジ領域、(v)膜貫通領域、および(vi)細胞内シグナル伝達領域をコードする核酸を提供する。
【0206】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に3つの領域を含む第二のポリペプチド鎖:(i)重鎖リーダー領域、(ii)抗体重鎖可変領域、および(iii)抗体軽鎖定常領域をコードする核酸を提供する。
【0207】
一実施形態において、核酸は、(a)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に6つの領域を含む第一のポリペプチド鎖:(i)軽鎖リーダー配列、(ii)抗体軽鎖可変領域、(iii)抗体軽鎖定常領域、(iv)必要に応じて存在するヒンジ領域、(v)膜貫通領域、および(vi)2~5の細胞内シグナル伝達配列を有する細胞内シグナル伝達配列;ならびに(b)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖:(i)抗体重鎖可変領域、および(ii)抗体重鎖定常領域を含む第一および第二のポリペプチド鎖をコードする。
【0208】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に10の領域を含む前駆体ポリペプチド:(1)重鎖リーダー領域、(2)抗体重鎖可変領域、(3)抗体重鎖定常領域、(4)必要に応じて存在するヒンジ領域、(5)膜貫通領域、(6)2~5の細胞内シグナル伝達配列を有する細胞内シグナル伝達配列、(7)T2A切断可能配列領域、(8)軽鎖リーダー領域、(9)抗体軽鎖可変領域、および(10)抗体軽鎖定常領域(例えば、
図5および6)をコードする核酸を提供する。
【0209】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に10の領域を含む前駆体ポリペプチド:(1)軽鎖リーダー領域、(2)抗体軽鎖可変領域、(3)抗体軽鎖定常領域、(4)必要に応じて存在するヒンジ領域、(5)膜貫通領域、(6)2~5の細胞内シグナル伝達配列を有する細胞内シグナル伝達配列、(7)T2A切断可能配列領域、(8)重鎖リーダー領域、(9)抗体重鎖可変領域、および(10)抗体重鎖定常領域(例えば、
図7および8)をコードする核酸を提供する。
【0210】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖:(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むCD38抗体重鎖可変領域、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むCD38抗体重鎖定常領域、(iii)配列番号5のアミノ酸配列を含むCD28ヒンジ領域および必要に応じて配列番号21のアミノ酸配列を含むCD8ヒンジ、(iv)配列番号6のアミノ酸配列を含むCD28膜貫通領域、および(v)配列番号7のアミノ酸配列を含む4-1BBシグナル伝達配列、配列番号8のアミノ酸配列を含むCD28シグナル伝達配列、配列番号9のアミノ酸配列を含むCD3ζ(長)シグナル伝達および/またはITAM3モチーフを有し、配列番号20のアミノ酸配列を含むCD3ζ(短)シグナル伝達配列からなる群より選択されるシグナル伝達配列の任意の1つまたは2もしくはそれを超える任意の組み合わせを含む細胞内シグナル伝達領域をコードする核酸を提供する。実施形態において、核酸は、配列番号13または16(例えば、
図35Bまたは35Cにおいて下線が付されるリーダー配列を伴うまたは伴わない)のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖をコードする。一実施形態において、核酸は、4-1BBおよびCD3ζシグナル伝達配列の間に配列番号13のアミノ酸配列およびおよびCD28シグナル伝達配列(配列番号8)を含む第一のポリペプチド鎖をコードする。一実施形態において、核酸は、配列番号16(例えば、
図35Cにおいて下線が付されるリーダー配列を伴うまたは伴わない)のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖をコードする。一実施形態において、核酸は、4-1BBおよびCD3ζシグナル伝達配列の間に配列番号16のアミノ酸配列およびCD28シグナル伝達配列(配列番号8)を含む第一のポリペプチド鎖をコードする。一実施形態において、ヒンジ領域は必要に応じたものである。
【0211】
一実施形態において、核酸は、配列番号3のアミノ酸配列を含む抗体軽鎖可変領域を含む二量体抗原受容体の第二のポリペプチド鎖をコードする。一実施形態において、核酸は、配列番号4のアミノ酸配列を含む抗体軽鎖定常領域を含む二量体抗原受容体の第二のポリペプチド鎖をコードする。一実施形態において、核酸は、配列番号14または17(例えば、
図35Bまたは35Cにおいて下線が付されるリーダー配列を伴うまたは伴わない)のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖の全長をコードする。
【0212】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖:(i)配列番号3のアミノ酸配列を含むCD38抗体軽鎖可変領域、および(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含むCD38抗体軽鎖定常領域をコードする核酸を提供する。
【0213】
一実施形態において、核酸は、第一のポリペプチド鎖(配列番号13または16)、T2A切断配列(配列番号12)、および第二のポリペプチド鎖(配列番号14または17)をコードする。一実施形態において、第一のポリペプチド鎖(配列番号13または16)は、
図35BおよびCにおいてそれぞれ下線が付されるリーダー配列を含むかまたは欠如する。一実施形態において、第二のポリペプチド鎖(配列番号14または17)は、
図35BまたはCにおいてそれぞれ下線が付されるリーダー配列を含むかまたは欠如する。
【0214】
本開示は、配列番号15または18のアミノ酸配列を含む前駆体ポリペプチドをコードする核酸を提供する。
【0215】
本開示は、重鎖可変(VH)および重鎖定常領域(CH)を担持する第一のポリペプチド鎖、および軽鎖可変(VL)および軽鎖定常領域(CL)(例えば、
図1)を担持する第二のポリペプチド鎖を含むバージョン1(例えば、V1)二量体抗原受容体(DAR)構築物をコードする核酸を提供し、(a)第一の核酸は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖をコードし:(i)抗体重鎖可変領域(VH)、(ii)抗体重鎖定常領域(CH)、(iii)CD8およびCD28ヒンジ配列(例えば、配列番号19)を含む長ヒンジ領域、(iv)CD28膜貫通配列(例えば、配列番号6)を含む膜貫通領域(TM)、および(v)CD28シグナル伝達配列(例えば、配列番号8)およびITAMモチーフ1、2および3(例えば、配列番号9)を有するCD3-ζシグナル伝達配列を含む細胞内シグナル伝達領域;(b)第二の核酸は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖をコードする:(i)抗体軽鎖可変領域(VL)(例えば、カッパまたはラムダ)、および(ii)抗体軽鎖定常領域(CL)。一実施形態において、抗体重鎖可変領域(VH)は抗CD38重鎖可変領域配列(例えば、配列番号1)を含み、抗体重鎖定常領域(CH)は抗CD38重鎖定常領域配列(例えば、配列番号2)を含む。
【0216】
本開示は、重鎖可変(VH)および重鎖定常領域(CH)を担持する第一のポリペプチド鎖、および軽鎖可変(VL)および軽鎖定常領域(CL)(例えば、
図1および2)を担持する第二のポリペプチド鎖を含むバージョン2(例えば、V2)二量体抗原受容体(DAR)構築物をコードする核酸を提供し、(a)第一の核酸は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖をコードし:(i)抗体重鎖可変領域(VH)、(ii)抗体重鎖定常領域(CH)、(iii)CD28ヒンジ配列(例えば、配列番号5)を含む短ヒンジ領域、(iv)CD28膜貫通配列(例えば、配列番号6)を含む膜貫通領域(TM)、および(v)(1)4-1BBシグナル伝達配列(例えば、配列番号7)およびITAMモチーフ1、2および3(例えば、配列番号9)を有するCD3-ζ、または(2)CD28(例えば、配列番号8)シグナル伝達配列およびITAMモチーフ1、2および3(例えば、配列番号9)を有するCD3-ζ、または(3)4-1BB(例えば、配列番号7)シグナル伝達配列およびCD28(例えば、配列番号8)シグナル伝達配列およびITAMモチーフ1、2および3(例えば、配列番号9)を有するCD3-ζのいずれかを含む細胞内シグナル伝達領域;(b)第二の核酸は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖をコードする:(i)抗体軽鎖可変領域(VL)(例えば、カッパまたはラムダ)、および(ii)抗体軽鎖定常領域(CL)。
【0217】
一実施形態において、核酸は、4-1BBシグナル伝達配列(例えば、配列番号7)ならびにITAMモチーフ1、2および3を有するCD3ζ(例えば、配列番号9)を有する細胞内シグナル伝達領域を含むバージョン2a(V2a)DAR構築物をコードする。
【0218】
一実施形態において、核酸は、CD28(例えば、配列番号8)シグナル伝達配列ならびにITAMモチーフ1、2および3を有するCD3-ζ(例えば、配列番号9)を有する細胞内シグナル伝達領域を含むバージョン2b(V2b)DAR構築物をコードする。
【0219】
一実施形態において、核酸は、4-1BB(例えば、配列番号7)シグナル伝達配列およびCD28(例えば、配列番号8)シグナル伝達配列ならびにITAMモチーフ1、2および3を有するCD3ζ(例えば、配列番号9)を有する細胞内シグナル伝達領域を含むバージョン2c(V2c)DAR構築物をコードする。一実施形態において、DAR V2aおよびV2bは第二世代DAR構築物であるのに対して、DAR V2cは第三世代DAR構築物である。一実施形態において、抗体重鎖可変領域(VH)は、抗CD38重鎖可変領域配列(例えば、配列番号1)を含み、抗体重鎖定常領域(CH)は、抗CD38重鎖定常領域配列(例えば、配列番号2)を含む。
【0220】
本開示は、重鎖可変(VH)および重鎖定常領域(CH)を担持する第一のポリペプチド鎖、および軽鎖可変(VL)および軽鎖定常領域(CL)(例えば、
図1)を担持する第二のポリペプチド鎖を含むバージョン3(例えば、V3)二量体抗原受容体(DAR)構築物をコードする核酸を提供し、(a)第一の核酸は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖をコードし:(i)抗体重鎖可変領域(VH)、(ii)抗体重鎖定常領域(CH)、(iii)CD28ヒンジ配列(例えば、配列番号5)を含む短ヒンジ領域、(iv)CD28膜貫通配列(例えば、配列番号6)を含む膜貫通領域(TM)、および(v)4-1BBシグナル伝達配列(例えば、配列番号7)およびITAMモチーフ3のみ(例えば、配列番号20)を有するCD3-ζシグナル伝達配列を含む細胞内シグナル伝達領域;(b)第二の核酸は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖をコードする:(i)抗体軽鎖可変領域(VL)(例えば、カッパまたはラムダ)、および(ii)抗体軽鎖定常領域(CL)。一実施形態において、抗体重鎖可変領域(VH)は抗CD38重鎖可変領域配列(例えば、配列番号1)を含み、抗体重鎖定常領域(CH)は抗CD38重鎖定常領域配列(例えば、配列番号2)を含む。
【0221】
本開示は、重鎖可変(VH)および重鎖定常領域(CH)を担持する第一のポリペプチド鎖、および軽鎖可変(VL)および軽鎖定常領域(CL)を担持する第二のポリペプチド鎖を含むバージョン4(例えば、V4)二量体抗原受容体(DAR)構築物をコードする核酸を提供し、(a)第一の核酸は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に4つの領域を含む第一のポリペプチド鎖をコードし:(i)抗体重鎖可変領域(VH)、(ii)抗体重鎖定常領域(CH)、(iii)CD28膜貫通配列(例えば、配列番号6)を含む膜貫通領域(TM)、および(iv)4-1BBシグナル伝達配列(例えば、配列番号7)およびITAMモチーフ3のみ(例えば、配列番号20)を有するCD3-ζシグナル伝達配列を含む細胞内シグナル伝達領域;(b)第二の核酸は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖をコードする:(i)抗体軽鎖可変領域(VL)(例えば、カッパまたはラムダ)、および(ii)抗体軽鎖定常領域(CL)。DAR V4構築物はヒンジ配列を欠く。一実施形態において、抗体重鎖可変領域(VH)は抗CD38重鎖可変領域配列(例えば、配列番号1)を含み、抗体重鎖定常領域(CH)は抗CD38重鎖定常領域配列(例えば、配列番号2)を含む。
【0222】
本開示は、本明細書に記載の第一のポリペプチド鎖、第二のポリペプチド鎖、第一および第二のポリペプチド鎖、二量体抗原受容体または前駆体ポリペプチドのいずれかをコードする核酸に機能的に連結されているベクターを提供する。
【0223】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されているベクターを提供する:(i)抗体重鎖可変領域、(ii)抗体重鎖定常領域、(iii)必要に応じて存在するヒンジ領域、(iv)膜貫通領域、および(v)細胞内シグナル伝達領域。
【0224】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されているベクターを提供する:(i)抗体軽鎖可変領域、および(ii)抗体軽鎖定常領域。
【0225】
一実施形態において、第一および第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されているベクターは、(a)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖:(i)抗体重鎖可変領域、(ii)抗体重鎖定常領域、(iii)必要に応じて存在するヒンジ領域、(iv)膜貫通領域、および(v)2~5の細胞内シグナル伝達配列を有する細胞内シグナル伝達配列;ならびに(b)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖:(i)抗体軽鎖可変領域、および(ii)抗体軽鎖定常領域を含む。
【0226】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されているベクターを提供する:(i)抗体軽鎖可変領域、(ii)抗体軽鎖定常領域、(iii)必要に応じて存在するヒンジ領域、(iv)膜貫通領域、および(v)細胞内シグナル伝達領域。
【0227】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されているベクターを提供する:(i)抗体重鎖可変領域、および(ii)抗体重鎖定常領域。
【0228】
一実施形態において、第一および第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されているベクターは、(a)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖:(i)抗体軽鎖可変領域、(ii)抗体軽鎖定常領域、(iii)必要に応じて存在するヒンジ領域、(iv)膜貫通領域、および(v)2~5の細胞内シグナル伝達配列を有する細胞内シグナル伝達配列;ならびに(b)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖:(i)抗体重鎖可変領域、および(ii)抗体重鎖定常領域を含む。
【0229】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に6つの領域を含む第一のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されているベクターを提供する:(i)重鎖リーダー領域、(ii)抗体重鎖可変領域、(iii)抗体重鎖定常領域、(iv)必要に応じて存在するヒンジ領域、(v)膜貫通領域、および(vi)細胞内シグナル伝達領域。
【0230】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に3つの領域を含む第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されているベクターを提供する:(i)軽鎖リーダー領域、(ii)抗体軽鎖可変領域、および(iii)抗体軽鎖定常領域。
【0231】
一実施形態において、第一および第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されているベクターは、(a)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に6つの領域を含む第一のポリペプチド鎖:(i)重鎖リーダー配列、(ii)抗体重鎖可変領域、(iii)抗体重鎖定常領域、(iv)必要に応じて存在するヒンジ領域、(v)膜貫通領域、および(vi)2~5の細胞内シグナル伝達配列を有する細胞内シグナル伝達配列;ならびに(b)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖:(i)抗体軽鎖可変領域、および(ii)抗体軽鎖定常領域を含む。
【0232】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に6つの領域を含む第一のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されているベクターを提供する:(i)軽鎖リーダー領域、(ii)抗体軽鎖可変領域、(iii)抗体軽鎖定常領域、(iv)必要に応じて存在するヒンジ領域、(v)膜貫通領域、および(vi)細胞内シグナル伝達領域。
【0233】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に3つの領域を含む第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されているベクターを提供する:(i)重鎖リーダー領域、(ii)抗体重鎖可変領域、および(iii)抗体軽鎖定常領域。
【0234】
一実施形態において、第一および第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されているベクターは、(a)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に6つの領域を含む第一のポリペプチド鎖:(i)軽鎖リーダー配列、(ii)抗体軽鎖可変領域、(iii)抗体軽鎖定常領域、(iv)必要に応じて存在するヒンジ領域、(v)膜貫通領域、および(vi)2~5の細胞内シグナル伝達配列を有する細胞内シグナル伝達配列;ならびに(b)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖:(i)抗体重鎖可変領域、および(ii)抗体重鎖定常領域を含む。
【0235】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に10の領域を含む前駆体ポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結されているベクターを提供する:(1)重鎖リーダー領域、(2)抗体重鎖可変領域、(3)抗体重鎖定常領域、(4)必要に応じて存在するヒンジ領域、(5)膜貫通領域、(6)2~5の細胞内シグナル伝達配列を有する細胞内シグナル伝達配列、(7)T2A切断可能配列領域、(8)軽鎖リーダー領域、(9)抗体軽鎖可変領域、および(10)抗体軽鎖定常領域。
【0236】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に10の領域を含む前駆体ポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結されているベクターを提供する:(1)軽鎖リーダー領域、(2)抗体軽鎖可変領域、(3)抗体軽鎖定常領域、(4)必要に応じて存在するヒンジ領域、(5)膜貫通領域、(6)2~5の細胞内シグナル伝達配列を有する細胞内シグナル伝達配列、(7)T2A切断可能配列領域、(8)重鎖リーダー領域、(9)抗体重鎖可変領域、および(10)抗体重鎖定常領域。
【0237】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されているベクターを提供する:(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むCD38抗体重鎖可変領域、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むCD38抗体重鎖定常領域、(iii)配列番号5のアミノ酸配列を含むCD28ヒンジ領域、(iv)配列番号6のアミノ酸配列を含むCD28膜貫通領域、および(v)配列番号7のアミノ酸配列を含む4-1BB細胞内シグナル伝達配列および配列番号9のアミノ酸配列を含むCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む細胞内シグナル伝達領域。
【0238】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されているベクターを提供する:(i)配列番号3のアミノ酸配列を含むCD38抗体軽鎖可変領域、および(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含むCD38抗体軽鎖定常領域。
【0239】
一実施形態において、ベクターは、第一のポリペプチド鎖(配列番号13または16)および第二のポリペプチド鎖(配列番号14または17)をコードする核酸に機能的に連結されている。
【0240】
一実施形態において、ベクターは、第一のポリペプチド鎖(配列番号13または16)、T2A切断配列(配列番号12)、および第二のポリペプチド鎖(配列番号14または17)をコードする核酸に機能的に連結されている。一実施形態において、第一のポリペプチド鎖(配列番号13または16)は、
図35BおよびCにおいて下線が付されるリーダー配列を含むかまたは欠如する。一実施形態において、第二のポリペプチド鎖(配列番号14または17)は、
図35BおよびCにおいて下線が付されるリーダー配列を含むかまたは欠如する。本開示は、配列番号15または18のアミノ酸配列を含む前駆体ポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結されたベクターを提供する。
【0241】
本開示は、重鎖可変(VH)および重鎖定常領域(CH)を担持する第一のポリペプチド鎖、および軽鎖可変(VL)および軽鎖定常領域(CL)(例えば、
図1)を担持する第二のポリペプチド鎖を含むバージョン1(例えば、V1)二量体抗原受容体(DAR)構築物をコードする核酸に連結されているベクターを提供し、(a)第一のベクターは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖をコードする第一の核酸に機能的に連結されており:(i)抗体重鎖可変領域(VH)、(ii)抗体重鎖定常領域(CH)、(iii)CD8およびCD28ヒンジ配列(例えば、配列番号19)を含む長ヒンジ領域、(iv)CD28膜貫通配列(例えば、配列番号6)を含む膜貫通領域(TM)、および(v)CD28シグナル伝達配列(例えば、配列番号8)およびITAMモチーフ1、2および3(例えば、配列番号9)を有するCD3-ζシグナル伝達配列を含む細胞内シグナル伝達領域;(b)第一のベクターは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖をコードする第二の核酸に機能的に連結されている:(i)抗体軽鎖可変領域(VL)(例えば、カッパまたはラムダ)、および(ii)抗体軽鎖定常領域(CL)。一実施形態において、抗体重鎖可変領域(VH)は抗CD38重鎖可変領域配列(例えば、配列番号1)を含み、抗体重鎖定常領域(CH)は抗CD38重鎖定常領域配列(例えば、配列番号2)を含む。
【0242】
本開示は、重鎖可変(VH)および重鎖定常領域(CH)を担持する第一のポリペプチド鎖、および軽鎖可変(VL)および軽鎖定常領域(CL)(例えば、
図1および2)を担持する第二のポリペプチド鎖を含むバージョン2(例えば、V2)二量体抗原受容体(DAR)構築物をコードする核酸に連結されているベクターを提供し、(a)第一のベクターは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖をコードする第一の核酸に機能的に連結されており:(i)抗体重鎖可変領域(VH)、(ii)抗体重鎖定常領域(CH)、(iii)CD28ヒンジ配列(例えば、配列番号5)を含む短ヒンジ領域、(iv)CD28膜貫通配列(例えば、配列番号6)を含む膜貫通領域(TM)、および(v)(1)4-1BBシグナル伝達配列(例えば、配列番号7)およびITAMモチーフ1、2および3(例えば、配列番号9)を有するCD3-ζ、または(2)CD28(例えば、配列番号8)シグナル伝達配列およびITAMモチーフ1、2および3(例えば、配列番号9)を有するCD3-ζ、または(3)4-1BB(例えば、配列番号7)シグナル伝達配列およびCD28(例えば、配列番号8)シグナル伝達配列およびITAMモチーフ1、2および3(例えば、配列番号9)を有するCD3-ζのいずれかを含む細胞内シグナル伝達領域;(b)第一のベクターは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖をコードする第二の核酸に機能的に連結されている:(i)抗体軽鎖可変領域(VL)(例えば、カッパまたはラムダ)、および(ii)抗体軽鎖定常領域(CL)。
【0243】
一実施形態において、ベクターは、4-1BBシグナル伝達配列(例えば、配列番号7)ならびにITAMモチーフ1、2および3を有するCD3ζ(例えば、配列番号9)を有する細胞内シグナル伝達領域を含むバージョン2a(V2a)DAR構築物をコードする核酸に機能的に連結されている。
【0244】
一実施形態において、ベクターは、CD28(例えば、配列番号8)シグナル伝達配列ならびにITAMモチーフ1、2および3を有するCD3-ζ(例えば、配列番号9)を有する細胞内シグナル伝達領域を含むバージョン2b(V2b)DAR構築物をコードする核酸に機能的に連結されている。
【0245】
一実施形態において、ベクターは、4-1BB(例えば、配列番号7)シグナル伝達配列およびCD28(例えば、配列番号8)シグナル伝達配列ならびにITAMモチーフ1、2および3を有するCD3ζ(例えば、配列番号9)を有する細胞内シグナル伝達領域を含むバージョン2c(V2c)DAR構築物をコードする核酸に機能的に連結されている。一実施形態において、DAR V2aおよびV2bは第二世代DAR構築物であるのに対して、DAR V2cは第三世代DAR構築物である。一実施形態において、抗体重鎖可変領域(VH)は、抗CD38重鎖可変領域配列(例えば、配列番号1)を含み、抗体重鎖定常領域(CH)は、抗CD38重鎖定常領域配列(例えば、配列番号2)を含む。
【0246】
本開示は、重鎖可変(VH)および重鎖定常領域(CH)を担持する第一のポリペプチド鎖、および軽鎖可変(VL)および軽鎖定常領域(CL)(例えば、
図1)を担持する第二のポリペプチド鎖を含むバージョン3(例えば、V3)二量体抗原受容体(DAR)構築物をコードする核酸に連結されているベクターを提供し、(a)第一のベクターは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖をコードする第一の核酸に機能的に連結されており:(i)抗体重鎖可変領域(VH)、(ii)抗体重鎖定常領域(CH)、(iii)CD28ヒンジ配列(例えば、配列番号5)を含む短ヒンジ領域、(iv)CD28膜貫通配列(例えば、配列番号6)を含む膜貫通領域(TM)、および(v)4-1BBシグナル伝達配列(例えば、配列番号7)およびITAMモチーフ3のみ(例えば、配列番号20)を有するCD3-ζシグナル伝達配列を含む細胞内シグナル伝達領域;(b)第一のベクターは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖をコードする第二の核酸に機能的に連結されている:(i)抗体軽鎖可変領域(VL)(例えば、カッパまたはラムダ)、および(ii)抗体軽鎖定常領域(CL)。一実施形態において、抗体重鎖可変領域(VH)は抗CD38重鎖可変領域配列(例えば、配列番号1)を含み、抗体重鎖定常領域(CH)は抗CD38重鎖定常領域配列(例えば、配列番号2)を含む。
【0247】
本開示は、重鎖可変(VH)および重鎖定常領域(CH)を担持する第一のポリペプチド鎖、および軽鎖可変(VL)および軽鎖定常領域(CL)を担持する第二のポリペプチド鎖を含むバージョン4(例えば、V4)二量体抗原受容体(DAR)構築物をコードする核酸に連結されているベクターを提供し、(a)第一のベクターは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に4つの領域を含む第一のポリペプチド鎖をコードする第一の核酸に機能的に連結されており:(i)抗体重鎖可変領域(VH)、(ii)抗体重鎖定常領域(CH)、(iii)CD28膜貫通配列(例えば、配列番号6)を含む膜貫通領域(TM)、および(iv)4-1BBシグナル伝達配列(例えば、配列番号7)およびITAMモチーフ3のみ(例えば、配列番号20)を有するCD3-ζシグナル伝達配列を含む細胞内シグナル伝達領域;(b)第一のベクターは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖をコードする第二の核酸に機能的に連結されている:(i)抗体軽鎖可変領域(VL)(例えば、カッパまたはラムダ)、および(ii)抗体軽鎖定常領域(CL)。DAR V4構築物はヒンジ配列を欠く。一実施形態において、抗体重鎖可変領域(VH)は抗CD38重鎖可変領域配列(例えば、配列番号1)を含み、抗体重鎖定常領域(CH)は抗CD38重鎖定常領域配列(例えば、配列番号2)を含む。
【0248】
本開示は、宿主細胞または宿主細胞の集団であって、本明細書に記載されている、第一のポリペプチド鎖、第二のポリペプチド鎖、第一および第二のポリペプチド鎖、二量体抗原受容体または前駆体ポリペプチドのいずれかをコードする核酸導入遺伝子に機能的に連結された1またはそれを超える発現ベクターを保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を提供する。
【0249】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団に1またはそれを超える発現ベクターが導入され、ベクターは、本明細書に記載されている二量体抗原受容体(DAR)構築物のいずれかをコードする核酸導入遺伝子に機能的に連結されている。宿主細胞または宿主細胞の集団は、Tリンパ球(例えば、T細胞、制御性T細胞、γδT細胞および細胞傷害性T細胞)、NK(ナチュラルキラー)細胞、マクロファージ、樹状細胞、肥満細胞、好酸球、Bリンパ球、単球を含む。一実施形態において、NK細胞は、臍帯血由来のNK細胞または胎盤由来のNK細胞を含む。
【0250】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団は、宿主細胞中への導入遺伝子の一過性導入または宿主細胞のゲノム中への導入遺伝子の安定な挿入を誘導することができる1またはそれを超える発現ベクターを保有する。発現ベクターは、宿主細胞中での導入遺伝子の転写および/または翻訳を誘導することができる。発現ベクターは、レトロウイルス、レンチウイルスまたはアデノウイルスに由来する核酸骨格配列を含むことができる。発現ベクターは、誘導性および/または構成的プロモーターおよびエンハンサーなどの1またはそれを超える制御配列を含むことができる。発現ベクターは、リボソーム結合部位および/またはポリアデニル化部位を含むことができる。
【0251】
一実施形態において、二量体抗原受容体(DAR)構築物をコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクターは、トランスジェニック宿主細胞の表面上にディスプレイすることができる二量体抗原受容体(DAR)構築物の産生を誘導することができ、または二量体抗原受容体を細胞培地中に分泌させることができる。
【0252】
一実施形態において、宿主細胞は、二量体抗原受容体のいずれかをコードする核酸導入遺伝子に機能的に連結された1またはそれを超える発現ベクターを保有することができ、宿主細胞は、二量体抗原受容体構築物を一過性にまたは安定に発現するために、適切な培地中で培養することができる。
【0253】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(i)抗体重鎖可変領域、(ii)抗体重鎖定常領域、(iii)必要に応じて存在するヒンジ領域、(iv)膜貫通領域、および(v)細胞内シグナル伝達領域を保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を提供する。
【0254】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(i)抗体軽鎖可変領域、および(ii)抗体軽鎖定常領域を保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を提供する。
【0255】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団は、第一のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている第一の発現ベクターおよび第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている第二の発現ベクターを保有し、(a)第一のポリペプチド鎖はアミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含み:(i)抗体重鎖可変領域、(ii)抗体重鎖定常領域、(iii)必要に応じて存在するヒンジ領域、(iv)膜貫通領域、および(v)2~5の細胞内シグナル伝達配列を有する細胞内シグナル伝達配列;(b)第二のポリペプチド鎖はアミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域をを含む:(i)抗体軽鎖可変領域、および(ii)抗体軽鎖定常領域。
【0256】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団は、以下を含む第一および第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(a)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖:(i)抗体重鎖可変領域、(ii)抗体重鎖定常領域、(iii)必要に応じて存在するヒンジ領域、(iv)膜貫通領域、および(v)2~5の細胞内シグナル伝達配列を有する細胞内シグナル伝達配列;ならびに(b)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖:(i)抗体軽鎖可変領域、および(ii)抗体軽鎖定常領域を保有する。
【0257】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団は、第一および第二のポリペプチド鎖を発現する。
【0258】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(i)抗体軽鎖可変領域、(ii)抗体軽鎖定常領域、(iii)必要に応じて存在するヒンジ領域、(iv)膜貫通領域、および(v)細胞内シグナル伝達領域を保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を提供する。
【0259】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(i)抗体重鎖可変領域、および(ii)抗体重鎖定常領域を保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を提供する。
【0260】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団は、第一のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている第一の発現ベクターおよび第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている第二の発現ベクターを保有し、(a)第一のポリペプチド鎖はアミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含み:(i)抗体軽鎖可変領域、(ii)抗体軽鎖定常領域、(iii)必要に応じて存在するヒンジ領域、(iv)膜貫通領域、および(v)2~5の細胞内シグナル伝達配列を有する細胞内シグナル伝達配列;(b)第二のポリペプチド鎖はアミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域をを含む:(i)抗体重鎖可変領域、および(ii)抗体重鎖定常領域。
【0261】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団は、以下を含む第一および第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(a)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖:(i)抗体軽鎖可変領域、(ii)抗体軽鎖定常領域、(iii)必要に応じて存在するヒンジ領域、(iv)膜貫通領域、および(v)2~5の細胞内シグナル伝達配列を有する細胞内シグナル伝達配列;ならびに(b)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖:(i)抗体重鎖可変領域、および(ii)抗体重鎖定常領域を保有する。
【0262】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団は、第一および第二のポリペプチド鎖を発現する。
【0263】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に6つの領域を含む第一のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(i)重鎖リーダー領域、(ii)抗体重鎖可変領域、(iii)抗体重鎖定常領域、(iv)必要に応じて存在するヒンジ領域、(v)膜貫通領域、および(vi)細胞内シグナル伝達領域を保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を提供する。
【0264】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に3つの領域を含む第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(i)軽鎖リーダー領域、(ii)抗体軽鎖可変領域、および(iii)抗体軽鎖定常領域を保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を提供する。
【0265】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団は、第一のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている第一の発現ベクターおよび第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている第二の発現ベクターを保有し、(a)第一のポリペプチド鎖はアミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に6つの領域を含み:(i)重鎖リーダー配列、(ii)抗体重鎖可変領域、(iii)抗体重鎖定常領域、(iv)必要に応じて存在するヒンジ領域、(v)膜貫通領域、および(vi)2~5の細胞内シグナル伝達配列を有する細胞内シグナル伝達配列;(b)第二のポリペプチド鎖はアミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域をを含む:(i)抗体軽鎖可変領域、および(ii)抗体軽鎖定常領域。
【0266】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団は、以下を含む第一および第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(a)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に6つの領域を含む第一のポリペプチド鎖:(i)重鎖リーダー配列、(ii)抗体重鎖可変領域、(iii)抗体重鎖定常領域、(iv)必要に応じて存在するヒンジ領域、(v)膜貫通領域、および(vi)2~5の細胞内シグナル伝達配列を有する細胞内シグナル伝達配列;ならびに(b)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖:(i)抗体軽鎖可変領域、および(ii)抗体軽鎖定常領域を保有する。
【0267】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団は、第一および第二のポリペプチド鎖を発現する。
【0268】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に6つの領域を含む第一のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(i)軽鎖リーダー領域、(ii)抗体軽鎖可変領域、(iii)抗体軽鎖定常領域、(iv)必要に応じて存在するヒンジ領域、(v)膜貫通領域、および(vi)細胞内シグナル伝達領域を保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を提供する。
【0269】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に3つの領域を含む第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(i)重鎖リーダー領域、(ii)抗体重鎖可変領域、および(iii)抗体軽鎖定常領域を保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を提供する。
【0270】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団は、第一のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている第一の発現ベクターおよび第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている第二の発現ベクターを保有し、(a)第一のポリペプチド鎖はアミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に6つの領域を含み:(i)軽鎖リーダー配列、(ii)抗体軽鎖可変領域、(iii)抗体軽鎖定常領域、(iv)必要に応じて存在するヒンジ領域、(v)膜貫通領域、および(vi)2~5の細胞内シグナル伝達配列を有する細胞内シグナル伝達配列;(b)第二のポリペプチド鎖はアミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域をを含む:(i)抗体重鎖可変領域、および(ii)抗体重鎖定常領域。
【0271】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団は、以下を含む第一および第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(a)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に6つの領域を含む第一のポリペプチド鎖:(i)軽鎖リーダー配列、(ii)抗体軽鎖可変領域、(iii)抗体軽鎖定常領域、(iv)必要に応じて存在するヒンジ領域、(v)膜貫通領域、および(vi)2~5の細胞内シグナル伝達配列を有する細胞内シグナル伝達配列;ならびに(b)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖:(i)抗体重鎖可変領域、および(ii)抗体重鎖定常領域を保有する。
【0272】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団は、第一および第二のポリペプチド鎖を発現する。
【0273】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に10の領域を含む前駆体ポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(1)重鎖リーダー領域、(2)抗体重鎖可変領域、(3)抗体重鎖定常領域、(4)必要に応じて存在するヒンジ領域、(5)膜貫通領域、(6)2~5の細胞内シグナル伝達配列を有する細胞内シグナル伝達配列、(7)T2A切断可能配列領域、(8)軽鎖リーダー領域、(9)抗体軽鎖可変領域、および(10)抗体軽鎖定常領域を保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を提供する。
【0274】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団は、前駆体ポリペプチドを発現する。
【0275】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に10の領域を含む前駆体ポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(1)軽鎖リーダー領域、(2)抗体軽鎖可変領域、(3)抗体軽鎖定常領域、(4)必要に応じて存在するヒンジ領域、(5)膜貫通領域、(6)2~5の細胞内シグナル伝達配列を有する細胞内シグナル伝達配列、(7)T2A切断可能配列領域、(8)重鎖リーダー領域、(9)抗体重鎖可変領域、および(10)抗体重鎖定常領域を保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を提供する。
【0276】
一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団は、前駆体ポリペプチドを発現する。
【0277】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むCD38抗体重鎖可変領域、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むCD38抗体重鎖定常領域、(iii)配列番号5のアミノ酸配列を含むCD28ヒンジ領域、(iv)配列番号6のアミノ酸配列を含むCD28膜貫通領域、および(v)配列番号7のアミノ酸配列を含む4-1BB細胞内シグナル伝達配列および配列番号9のアミノ酸配列を含むCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む細胞内シグナル伝達領域を保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を提供する。
【0278】
本開示は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(i)配列番号3のアミノ酸配列を含むCD38抗体軽鎖可変領域、および(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含むCD38抗体軽鎖定常領域を保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を提供する。
【0279】
一実施形態において、ベクターは、第一および第二のポリペプチド鎖(配列番号6および7)をコードする核酸に機能的に連結されている。
【0280】
一実施形態において、ベクターは、第一のポリペプチド鎖(配列番号6)、T2A切断配列(配列番号12)、および第二のポリペプチド鎖(配列番号7)をコードする核酸に機能的に連結されている。
【0281】
本開示は、配列番号15のアミノ酸配列を含む前駆体ポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結されたベクターを提供する。
【0282】
一実施形態において、宿主細胞は、第一のポリペプチド鎖(配列番号13または16)および第二のポリペプチド鎖(配列番号)を発現する。一実施形態において、宿主細胞は、配列番号14または17)の前駆体ポリペプチドを発現する。
【0283】
一実施形態において、第一のポリペプチド鎖(配列番号13または16)は、
図35BまたはCにおいて下線が付されるリーダー配列を含むかまたは欠如する。一実施形態において、第二のポリペプチド鎖(配列番号14または17)は、
図35BまたはCにおいて下線が付されるリーダー配列を含むかまたは欠如する。
【0284】
本開示は、重鎖可変(VH)および重鎖定常領域(CH)を担持する第一のポリペプチド鎖、および軽鎖可変(VL)および軽鎖定常領域(CL)(例えば、
図1)を担持する第二のポリペプチド鎖を含むバージョン1(例えば、V1)二量体抗原受容体(DAR)構築物をコードする核酸に連結されている発現ベクターを保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を提供し、宿主細胞または宿主細胞の集団は、(a)第一のベクターは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖をコードする第一の核酸に機能的に連結されており:(i)抗体重鎖可変領域(VH)、(ii)抗体重鎖定常領域(CH)、(iii)CD8およびCD28ヒンジ配列(例えば、配列番号19)を含む長ヒンジ領域、(iv)CD28膜貫通配列(例えば、配列番号6)を含む膜貫通領域(TM)、および(v)CD28シグナル伝達配列(例えば、配列番号8)およびITAMモチーフ1、2および3(例えば、配列番号9)を有するCD3-ζシグナル伝達配列を含む細胞内シグナル伝達領域;(b)第一のベクターは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖をコードする第二の核酸に機能的に連結されている:(i)抗体軽鎖可変領域(VL)(例えば、カッパまたはラムダ)、および(ii)抗体軽鎖定常領域(CL)を保有する。一実施形態において、抗体重鎖可変領域(VH)は抗CD38重鎖可変領域配列(例えば、配列番号1)を含み、抗体重鎖定常領域(CH)は抗CD38重鎖定常領域配列(例えば、配列番号2)を含む。
【0285】
本開示は、重鎖可変(VH)および重鎖定常領域(CH)を担持する第一のポリペプチド鎖、および軽鎖可変(VL)および軽鎖定常領域(CL)(例えば、
図1および2)を担持する第二のポリペプチド鎖を含むバージョン2(例えば、V2)二量体抗原受容体(DAR)構築物をコードする核酸に連結されているベクターを提供し、宿主細胞または宿主細胞の集団は、(a)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖をコードする第一の核酸に機能的に連結されている第一のベクター:(i)抗体重鎖可変領域(VH)、(ii)抗体重鎖定常領域(CH)、(iii)CD28ヒンジ配列(例えば、配列番号5)を含む短ヒンジ領域、(iv)CD28膜貫通配列(例えば、配列番号6)を含む膜貫通領域(TM)、および(v)(1)4-1BBシグナル伝達配列(例えば、配列番号7)およびITAMモチーフ1、2および3(例えば、配列番号9)を有するCD3-ζ、または(2)CD28(例えば、配列番号8)シグナル伝達配列およびITAMモチーフ1、2および3(例えば、配列番号9)を有するCD3-ζ、または(3)4-1BB(例えば、配列番号7)シグナル伝達配列およびCD28(例えば、配列番号8)シグナル伝達配列およびITAMモチーフ1、2および3(例えば、配列番号9)を有するCD3-ζのいずれかを含む細胞内シグナル伝達領域;(b)第一のベクターは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖をコードする第二の核酸に機能的に連結されている:(i)抗体軽鎖可変領域(VL)(例えば、カッパまたはラムダ)、および(ii)抗体軽鎖定常領域(CL)を保有する。
【0286】
一実施形態において、ベクターは、4-1BBシグナル伝達配列(例えば、配列番号7)ならびにITAMモチーフ1、2および3を有するCD3ζ(例えば、配列番号9)を有する細胞内シグナル伝達領域を含むバージョン2a(V2a)DAR構築物をコードする核酸に機能的に連結されている。
【0287】
一実施形態において、ベクターは、CD28(例えば、配列番号8)シグナル伝達配列ならびにITAMモチーフ1、2および3を有するCD3-ζ(例えば、配列番号9)を有する細胞内シグナル伝達領域を含むバージョン2b(V2b)DAR構築物をコードする核酸に機能的に連結されている。
【0288】
一実施形態において、ベクターは、4-1BB(例えば、配列番号7)シグナル伝達配列およびCD28(例えば、配列番号8)シグナル伝達配列ならびにITAMモチーフ1、2および3を有するCD3ζ(例えば、配列番号9)を有する細胞内シグナル伝達領域を含むバージョン2c(V2c)DAR構築物をコードする核酸に機能的に連結されている。一実施形態において、DAR V2aおよびV2bは第二世代DAR構築物であるのに対して、DAR V2cは第三世代DAR構築物である。一実施形態において、抗体重鎖可変領域(VH)は、抗CD38重鎖可変領域配列(例えば、配列番号1)を含み、抗体重鎖定常領域(CH)は、抗CD38重鎖定常領域配列(例えば、配列番号2)を含む。
【0289】
本開示は、重鎖可変(VH)および重鎖定常領域(CH)を担持する第一のポリペプチド鎖、および軽鎖可変(VL)および軽鎖定常領域(CL)(例えば、
図1)を担持する第二のポリペプチド鎖を含むバージョン3(例えば、V3)二量体抗原受容体(DAR)構築物をコードする核酸に連結されている発現ベクターを保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を提供し、宿主細胞または宿主細胞の集団は、(a)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖をコードする第一の核酸に機能的に連結されている第一のベクター:(i)抗体重鎖可変領域(VH)、(ii)抗体重鎖定常領域(CH)、(iii)CD28ヒンジ配列(例えば、配列番号5)を含む短ヒンジ領域、(iv)CD28膜貫通配列(例えば、配列番号6)を含む膜貫通領域(TM)、および(v)4-1BBシグナル伝達配列(例えば、配列番号7)およびITAMモチーフ3のみ(例えば、配列番号20)を有するCD3-ζシグナル伝達配列を含む細胞内シグナル伝達領域;および(b)第一のベクターは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖をコードする第二の核酸に機能的に連結されている:(i)抗体軽鎖可変領域(VL)(例えば、カッパまたはラムダ)、および(ii)抗体軽鎖定常領域(CL)を保有する。一実施形態において、抗体重鎖可変領域(VH)は抗CD38重鎖可変領域配列(例えば、配列番号1)を含み、抗体重鎖定常領域(CH)は抗CD38重鎖定常領域配列(例えば、配列番号2)を含む。
【0290】
本開示は、重鎖可変(VH)および重鎖定常領域(CH)を担持する第一のポリペプチド鎖、および軽鎖可変(VL)および軽鎖定常領域(CL)を担持する第二のポリペプチド鎖を含むバージョン4(例えば、V4)二量体抗原受容体(DAR)構築物をコードする核酸に連結されている発現ベクターを保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を提供し、宿主細胞または宿主細胞の集団は、(a)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に4つの領域を含む第一のポリペプチド鎖をコードする第一の核酸に機能的に連結されている第一のベクター:(i)抗体重鎖可変領域(VH)、(ii)抗体重鎖定常領域(CH)、(iii)CD28膜貫通配列(例えば、配列番号6)を含む膜貫通領域(TM)、および(iv)4-1BBシグナル伝達配列(例えば、配列番号7)およびITAMモチーフ3のみ(例えば、配列番号20)を有するCD3-ζシグナル伝達配列を含む細胞内シグナル伝達領域;(b)第一のベクターは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖をコードする第二の核酸に機能的に連結されている:(i)抗体軽鎖可変領域(VL)(例えば、カッパまたはラムダ)、および(ii)抗体軽鎖定常領域(CL)を保有する。DAR V4構築物はヒンジ配列を欠く。一実施形態において、抗体重鎖可変領域(VH)は抗CD38重鎖可変領域配列(例えば、配列番号1)を含み、抗体重鎖定常領域(CH)は抗CD38重鎖定常領域配列(例えば、配列番号2)を含む。
【0291】
本開示は、二量体抗原受容体構築物を発現するように操作されたトランスジェニック宿主細胞を被験体に投与することによって養子細胞療法を実施する方法をさらに提供する。
【0292】
本開示は、腫瘍抗原の有害な発現(上昇した発現)と関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置する方法をさらに提供する。このような方法は、例えば、第一のポリペプチド鎖もしくは第二のポリペプチド鎖のいずれかまたは第一および第二のポリペプチド鎖のいずれかまたは本明細書に記載されている前駆体ポリペプチド鎖のいずれかをコードする核酸に機能的に連結された発現ベクターを保有する宿主細胞を被験体に投与することを含む。一実施形態において、宿主細胞または宿主細胞の集団は、第一および第二のポリペプチド鎖のいずれかまたは本明細書に記載されている前駆体ポリペプチド鎖のいずれかを発現する。
【0293】
一実施形態において、被験体を処置するために使用される宿主細胞または宿主細胞の集団に1またはそれを超える発現ベクターが導入され、ベクターは、本明細書に記載されている二量体抗原受容体(DAR)構築物のいずれかをコードする核酸導入遺伝子に機能的に連結されている。宿主細胞または宿主細胞の集団は、Tリンパ球(例えば、T細胞、制御性T細胞、γδT細胞および細胞傷害性T細胞)、NK(ナチュラルキラー)細胞、マクロファージ、樹状細胞、肥満細胞、好酸球、Bリンパ球、単球を含む。一実施形態において、NK細胞は、臍帯血由来のNK細胞または胎盤由来のNK細胞を含む。
【0294】
一実施形態において、被験体を処置するために使用される宿主細胞または宿主細胞の集団は、宿主細胞中への導入遺伝子の一過性導入または宿主細胞のゲノム中への導入遺伝子の安定な挿入を誘導することができる1またはそれを超える発現ベクターを保有する。発現ベクターは、宿主細胞中での導入遺伝子の転写および/または翻訳を誘導することができる。一実施形態において、導入遺伝子は、第一のポリペプチド鎖もしくは第二のポリペプチド鎖のいずれかまたは第一および第二のポリペプチド鎖のいずれかまたは本明細書に記載されている前駆体ポリペプチド鎖のいずれかをコードする核酸を含む。発現ベクターは、レトロウイルス、レンチウイルスまたはアデノウイルスに由来する核酸骨格配列を含むことができる。発現ベクターは、誘導性および/または構成的プロモーターおよびエンハンサーなどの1またはそれを超える制御配列を含むことができる。発現ベクターは、リボソーム結合部位および/またはポリアデニル化部位を含むことができる。
【0295】
一実施形態において、二量体抗原受容体(DAR)構築物をコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクターは、トランスジェニック宿主細胞の表面上にディスプレイすることができる二量体抗原受容体(DAR)構築物の産生を誘導することができ、または二量体抗原受容体を細胞培地中に分泌させることができる。
【0296】
一実施形態において、宿主細胞は、二量体抗原受容体のいずれかをコードする核酸導入遺伝子に機能的に連結された1またはそれを超える発現ベクターを保有することができ、宿主細胞は、二量体抗原受容体構築物を一過性にまたは安定に発現するために、適切な培地中で培養することができる。
【0297】
一実施形態において、被験体を処置するために使用される宿主細胞または宿主細胞の集団は自家であり、処置を受けている被験体に由来する。一実施形態において、全血は被験体から取得することができ、所望の細胞(例えば、Tリンパ球、NK細胞またはマクロファージ)は全血から回収することができる。
【0298】
一実施形態において、被験体を処置するために使用される宿主細胞または宿主細胞の集団は同種異系であり、異なる被験体に由来する。同種異系の細胞は、自家細胞に対して使用されるのと同じ様式で異なる被験体から得た全血から取得することができる。一実施形態において、同種異系の細胞は、妊娠後の胎盤または腱(chord)組織に由来する。
【0299】
一実施形態において、所望の細胞は、処置を受けるべき被験体からまたは異なる被験体から取得され、第一もしくは第二のポリペプチドのいずれかまたは前駆体ポリペプチドの発現を指示する1またはそれを超える発現ベクターを保有するように操作され、これによりトランスジェニック宿主細胞を生成する。トランスジェニック宿主細胞は、第一もしくは第二のポリペプチドまたは前駆体ポリペプチドを発現することができる。宿主細胞は、二量体化して、被験体中の腫瘍抗原に特異的に結合する二量体抗原受容体を形成する第一および第二のポリペプチド鎖を発現することができる。宿主細胞は、二量体化して、被験体中の腫瘍抗原に特異的に結合する二量体抗原受容体を形成する第一および第二のポリペプチド鎖を形成するために切断され得る前駆体ポリペプチド鎖を発現することができる。(例えば、発現ベクターを保有するまたはポリペプチド鎖を発現する)トランスジェニック宿主細胞は、腫瘍抗原の有害な発現と関連する疾患、障害または状態を処置するために被験体に投与することができる。
【0300】
本開示は、腫瘍抗原の有害な発現と関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置する方法を提供し、ここで、障害は、血液の乳がん(hematologic breast cancer)、卵巣がん、前立腺がん、頭頸部がん、肺がん、膀胱がん、黒色腫、結腸直腸がん、膵臓がん、肺がん、肝臓がん、腎臓がん、食道がん、平滑筋腫、平滑筋肉腫、神経膠腫および神経膠芽腫を含むがこれらに限定されないがんである。
【0301】
一実施形態において、がんは、非ホジキンリンパ腫(NHL)、バーキットリンパ腫(BL)、B慢性リンパ球性白血病(B-CLL)、BおよびT急性リンパ球性白血病(ALL)、T細胞リンパ腫(TCL)、急性骨髄性白血病(AML)、有毛細胞白血病(HCL)、ホジキンリンパ腫(HL)、慢性骨髄性白血病(CML)および多発性骨髄腫(MM)からなる群より選択される血液のがんである。
【0302】
本開示は、腫瘍抗原の悪影響発現に関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法をさらに提供し、方法は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(i)抗体重鎖可変領域、(ii)抗体重鎖定常領域、(iii)必要に応じて存在するヒンジ領域、(iv)膜貫通領域、および(v)細胞内シグナル伝達領域(例えば、
図1および2)を保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含む。
【0303】
本開示は、腫瘍抗原の悪影響発現に関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法をさらに提供し、方法は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(i)抗体軽鎖可変領域、および(ii)抗体軽鎖定常領域(例えば、
図1および2)を保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含む。
【0304】
本開示は、腫瘍抗原の悪影響発現に関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法をさらに提供し、方法は、第一および第二の発現ベクターを保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含み、第一の発現ベクターは第一のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結され、第二の発現ベクターは第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結され、(a)第一のポリペプチド鎖はアミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含み:(i)抗体重鎖可変領域、(ii)抗体重鎖定常領域、(iii)必要に応じて存在するヒンジ領域、(iv)膜貫通領域、および(v)2~5の細胞内シグナル伝達配列を有する細胞内シグナル伝達配列;(b)第二のポリペプチド鎖はアミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域をを含む:(i)抗体軽鎖可変領域、および(ii)抗体軽鎖定常領域(例えば、
図1および2)。
【0305】
本開示は、腫瘍抗原の悪影響発現に関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法をさらに提供し、方法は、以下を含む第一および第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(a)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖:(i)抗体重鎖可変領域、(ii)抗体重鎖定常領域、(iii)必要に応じて存在するヒンジ領域、(iv)膜貫通領域、および(v)2~5の細胞内シグナル伝達配列を有する細胞内シグナル伝達配列;ならびに(b)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖:(i)抗体軽鎖可変領域、および(ii)抗体軽鎖定常領域(例えば、
図1および2)を保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含む。
【0306】
一実施形態において、腫瘍抗原の悪影響発現に関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法は、第一のポリペプチド鎖、第二のポリペプチド鎖、または第一および第二のポリペプチド鎖(例えば、
図1および2)を発現する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含む。一実施形態において、第一および第二のポリペプチド鎖は、二量体化して被験体における腫瘍抗原に特異的に結合する二量体抗原受容体を形成する。
【0307】
本開示は、腫瘍抗原の悪影響発現に関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法をさらに提供し、方法は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(i)抗体軽鎖可変領域、(ii)抗体軽鎖定常領域、(iii)必要に応じて存在するヒンジ領域、(iv)膜貫通領域、および(v)細胞内シグナル伝達領域(例えば、
図3および4)を保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含む。
【0308】
本開示は、腫瘍抗原の悪影響発現に関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法をさらに提供し、方法は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(i)抗体重鎖可変領域、および(ii)抗体重鎖定常領域(例えば、
図3および4)を保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含む。
【0309】
本開示は、腫瘍抗原の悪影響発現に関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法をさらに提供し、方法は、第一および第二の発現ベクターを保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含み、第一の発現ベクターは第一のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結され、第二の発現ベクターは第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結され、(a)第一のポリペプチド鎖はアミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含み:(i)抗体軽鎖可変領域、(ii)抗体軽鎖定常領域、(iii)必要に応じて存在するヒンジ領域、(iv)膜貫通領域、および(v)2~5の細胞内シグナル伝達配列を有する細胞内シグナル伝達配列;(b)第二のポリペプチド鎖はアミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域をを含む:(i)抗体重鎖可変領域、および(ii)抗体重鎖定常領域(例えば、
図3および4)。
【0310】
本開示は、腫瘍抗原の悪影響発現に関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法をさらに提供し、方法は、以下を含む第一および第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(a)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖:(i)抗体軽鎖可変領域、(ii)抗体軽鎖定常領域、(iii)必要に応じて存在するヒンジ領域、(iv)膜貫通領域、および(v)2~5の細胞内シグナル伝達配列を有する細胞内シグナル伝達配列;ならびに(b)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖:(i)抗体重鎖可変領域、および(ii)抗体重鎖定常領域(例えば、
図3および4)を保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含む。
【0311】
一実施形態において、腫瘍抗原の悪影響発現に関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法は、第一のポリペプチド鎖、第二のポリペプチド鎖、または第一および第二のポリペプチド鎖(例えば、
図3および4)を発現する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含む。一実施形態において、第一および第二のポリペプチド鎖は、二量体化して被験体における腫瘍抗原に特異的に結合する二量体抗原受容体を形成する。
【0312】
本開示は、腫瘍抗原の悪影響発現に関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法をさらに提供し、方法は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に6つの領域を含む第一のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(i)重鎖リーダー領域、(ii)抗体重鎖可変領域、(iii)抗体重鎖定常領域、(iv)必要に応じて存在するヒンジ領域、(v)膜貫通領域、および(vi)細胞内シグナル伝達領域(例えば、
図1および2)を保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含む。
【0313】
本開示は、腫瘍抗原の悪影響発現に関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法をさらに提供し、方法は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に3つの領域を含む第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(i)軽鎖リーダー領域、(ii)抗体軽鎖可変領域、および(iii)抗体軽鎖定常領域(例えば、
図1および2)を保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含む。
【0314】
本開示は、腫瘍抗原の悪影響発現に関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法をさらに提供し、方法は、第一および第二の発現ベクターを保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含み、第一の発現ベクターは第一のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結され、第二の発現ベクターは第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結され、(a)第一のポリペプチド鎖はアミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に6つの領域を含み:(i)重鎖リーダー配列、(ii)抗体重鎖可変領域、(iii)抗体重鎖定常領域、(iv)必要に応じて存在するヒンジ領域、(v)膜貫通領域、および(vi)2~5の細胞内シグナル伝達配列を有する細胞内シグナル伝達配列;(b)第二のポリペプチド鎖はアミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域をを含む:(i)抗体軽鎖可変領域、および(ii)抗体軽鎖定常領域(例えば、
図1および2)。
【0315】
本開示は、腫瘍抗原の悪影響発現に関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法をさらに提供し、方法は、以下を含む第一および第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(a)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に6つの領域を含む第一のポリペプチド鎖:(i)重鎖リーダー配列、(ii)抗体重鎖可変領域、(iii)抗体重鎖定常領域、(iv)必要に応じて存在するヒンジ領域、(v)膜貫通領域、および(vi)2~5の細胞内シグナル伝達配列を有する細胞内シグナル伝達配列;ならびに(b)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖:(i)抗体軽鎖可変領域、および(ii)抗体軽鎖定常領域(例えば、
図1および2)を保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含む。
【0316】
一実施形態において、腫瘍抗原の悪影響発現に関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法は、第一のポリペプチド鎖、第二のポリペプチド鎖、または第一および第二のポリペプチド鎖(例えば、
図1および2)を発現する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含む。一実施形態において、第一および第二のポリペプチド鎖は、二量体化して被験体における腫瘍抗原に特異的に結合する二量体抗原受容体を形成する。
【0317】
本開示は、腫瘍抗原の悪影響発現に関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法をさらに提供し、方法は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に6つの領域を含む第一のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(i)軽鎖リーダー領域、(ii)抗体軽鎖可変領域、(iii)抗体軽鎖定常領域、(iv)必要に応じて存在するヒンジ領域、(v)膜貫通領域、および(vi)細胞内シグナル伝達領域(
図3および4)を保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含む。
【0318】
本開示は、腫瘍抗原の悪影響発現に関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法をさらに提供し、方法は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に3つの領域を含む第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(i)重鎖リーダー領域、(ii)抗体重鎖可変領域、および(iii)抗体軽鎖定常領域(
図3および4)を保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含む。
【0319】
本開示は、腫瘍抗原の悪影響発現に関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法をさらに提供し、方法は、第一および第二の発現ベクターを保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含み、第一の発現ベクターは第一のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結され、第二の発現ベクターは第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結され、(a)第一のポリペプチド鎖はアミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に6つの領域を含み:(i)軽鎖リーダー配列、(ii)抗体軽鎖可変領域、(iii)抗体軽鎖定常領域、(iv)必要に応じて存在するヒンジ領域、(v)膜貫通領域、および(vi)2~5の細胞内シグナル伝達配列を有する細胞内シグナル伝達配列;(b)第二のポリペプチド鎖はアミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域をを含む:(i)抗体重鎖可変領域、および(ii)抗体重鎖定常領域(
図3および4)。
【0320】
本開示は、腫瘍抗原の悪影響発現に関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法をさらに提供し、方法は、以下を含む第一および第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(a)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に6つの領域を含む第一のポリペプチド鎖:(i)軽鎖リーダー配列、(ii)抗体軽鎖可変領域、(iii)抗体軽鎖定常領域、(iv)必要に応じて存在するヒンジ領域、(v)膜貫通領域、および(vi)2~5の細胞内シグナル伝達配列を有する細胞内シグナル伝達配列;ならびに(b)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖:(i)抗体重鎖可変領域、および(ii)抗体重鎖定常領域(
図3および4)を保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含む。
【0321】
一実施形態において、腫瘍抗原の悪影響発現に関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法は、第一のポリペプチド鎖、第二のポリペプチド鎖、または第一および第二のポリペプチド鎖(
図3および4)を発現する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含む。一実施形態において、第一および第二のポリペプチド鎖は、二量体化して被験体における腫瘍抗原に特異的に結合する二量体抗原受容体を形成する。
【0322】
本開示は、腫瘍抗原の悪影響発現に関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法をさらに提供し、方法は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に10の領域を含む前駆体ポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(1)重鎖リーダー領域、(2)抗体重鎖可変領域、(3)抗体重鎖定常領域、(4)必要に応じて存在するヒンジ領域、(5)膜貫通領域、(6)2~5の細胞内シグナル伝達配列を有する細胞内シグナル伝達配列、(7)T2A切断可能配列領域、(8)軽鎖リーダー領域、(9)抗体軽鎖可変領域、および(10)抗体軽鎖定常領域(例えば、
図5および6)を保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含む。一実施形態において、前駆体ポリペプチドは切断されて、二量体化して被験体における腫瘍抗原に特異的に結合する二量体抗原受容体を形成する第一および第二のポリペプチド鎖を形成する。
【0323】
本開示は、腫瘍抗原の悪影響発現に関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法をさらに提供し、方法は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に10の領域を含む前駆体ポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(1)軽鎖リーダー領域、(2)抗体軽鎖可変領域、(3)抗体軽鎖定常領域、(4)必要に応じて存在するヒンジ領域、(5)膜貫通領域、(6)2~5の細胞内シグナル伝達配列を有する細胞内シグナル伝達配列、(7)T2A切断可能配列領域、(8)重鎖リーダー領域、(9)抗体重鎖可変領域、および(10)抗体重鎖定常領域(
図7および8)を保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含む。一実施形態において、前駆体ポリペプチドは切断されて二量体化して被験体における腫瘍抗原に特異的に結合する二量体抗原受容体を形成する第一および第二のポリペプチド鎖を形成する。
【0324】
一実施形態において、腫瘍抗原の悪影響発現に関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(i)配列番号1のアミノ酸配列を含むCD38抗体重鎖可変領域、(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含むCD38抗体重鎖定常領域、(iii)配列番号5のアミノ酸配列を含むCD28ヒンジ領域、(iv)配列番号6のアミノ酸配列を含むCD28膜貫通領域、および(v)配列番号7のアミノ酸配列を含む4-1BB細胞内シグナル伝達配列および配列番号9のアミノ酸配列を含むCD3ζ細胞内シグナル伝達配列を含む細胞内シグナル伝達領域を保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含む。
【0325】
一実施形態において、腫瘍抗原の悪影響発現に関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法は、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されている発現ベクター:(i)配列番号3のアミノ酸配列を含むCD38抗体軽鎖可変領域、および(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含むCD38抗体軽鎖定常領域を保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含む。
【0326】
一実施形態において、腫瘍抗原の悪影響発現に関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法は、第一および第二の発現ベクターを保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含み、第一の発現ベクターは、配列番号13または16のアミノ酸配列をコードする核酸に機能的に連結されており、第二の発現ベクターは、配列番号14または17のアミノ酸配列をコードする核酸に機能的に連結されている。
【0327】
一実施形態において、腫瘍抗原の悪影響発現に関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法は、第一および第二のポリペプチド鎖をコードする核酸に機能的に連結されたベクターを保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含み、ベクターは、配列番号13および14、または配列番号16および17のアミノ酸配列を含む。
【0328】
一実施形態において、腫瘍抗原の悪影響発現に関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法は、配列番号15または18のアミノ酸配列(例えば、CD38前駆体、第二世代)を含む前駆体ポリペプチドをコードする発現ベクターを保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含む。
【0329】
一実施形態において、腫瘍抗原の悪影響発現に関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法は、第一のポリペプチド鎖(配列番号13または16)、第二のポリペプチド鎖(配列番号14または17)、第一および第二のポリペプチド鎖(配列番号13および14、または配列番号16および17)または前駆体ポリペプチド(配列番号15または18)を発現する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含む。一実施形態において、第一のポリペプチド鎖(配列番号13または16)は、
図35BまたはCにおいて下線が付されるリーダー配列を含むかまたは欠如する。一実施形態において、第二のポリペプチド鎖(配列番号14または17)は、
図35BまたはCにおいて下線が付されるリーダー配列を含むかまたは欠如する。一実施形態において、第一および第二のポリペプチド鎖は、二量体化して被験体における腫瘍抗原に特異的に結合する二量体抗原受容体を形成する。一実施形態において、前駆体ポリペプチドは、切断されて、二量体化して被験体における腫瘍抗原(例えば、CD38)二特異的に結合する二量体抗原受容体を形成する第一および第二のポリペプチド鎖を形成する。
【0330】
本開示は、腫瘍抗原の有害な発現と関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置する方法を提供し、ここで、障害は、血液の乳がん(hematologic breast cancer)、卵巣がん、前立腺がん、頭頸部がん、肺がん、膀胱がん、黒色腫、結腸直腸がん、膵臓がん、肺がん、肝臓がん、腎臓がん、食道がん、平滑筋腫、平滑筋肉腫、神経膠腫および神経膠芽腫を含むがこれらに限定されないがんである。
【0331】
一実施形態において、がんは、非ホジキンリンパ腫(NHL)、バーキットリンパ腫(BL)、B慢性リンパ球性白血病(B-CLL)、BおよびT急性リンパ球性白血病(ALL)、T細胞リンパ腫(TCL)、急性骨髄性白血病(AML)、有毛細胞白血病(HCL)、ホジキンリンパ腫(HL)、慢性骨髄性白血病(CML)および多発性骨髄腫(MM)からなる群より選択される血液のがんである。
【0332】
本開示は、腫瘍抗原の有害な発現と関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法を提供し、方法は、重鎖可変(VH)および重鎖定常領域(CH)を担持する第一のポリペプチド鎖、および軽鎖可変(VL)および軽鎖定常領域(CL)(例えば、
図1)を担持する第二のポリペプチド鎖を含むバージョン1(例えば、V1)二量体抗原受容体(DAR)構築物をコードする核酸に連結されている発現ベクターを保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含み、宿主細胞または宿主細胞の集団は、(a)第一のベクターは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖をコードする第一の核酸に機能的に連結されており:(i)抗体重鎖可変領域(VH)、(ii)抗体重鎖定常領域(CH)、(iii)CD8およびCD28ヒンジ配列(例えば、配列番号19)を含む長ヒンジ領域、(iv)CD28膜貫通配列(例えば、配列番号6)を含む膜貫通領域(TM)、および(v)CD28シグナル伝達配列(例えば、配列番号8)およびITAMモチーフ1、2および3(例えば、配列番号9)を有するCD3-ζシグナル伝達配列を含む細胞内シグナル伝達領域;(b)第一のベクターは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖をコードする第二の核酸に機能的に連結されている:(i)抗体軽鎖可変領域(VL)(例えば、カッパまたはラムダ)、および(ii)抗体軽鎖定常領域(CL)を保有する。一実施形態において、抗体重鎖可変領域(VH)は抗CD38重鎖可変領域配列(例えば、配列番号1)を含み、抗体重鎖定常領域(CH)は抗CD38重鎖定常領域配列(例えば、配列番号2)を含む。
【0333】
本開示は、腫瘍抗原の有害な発現と関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法を提供し、方法は、重鎖可変(VH)および重鎖定常領域(CH)を担持する第一のポリペプチド鎖、および軽鎖可変(VL)および軽鎖定常領域(CL)(例えば、
図1および2)を担持する第二のポリペプチド鎖を含むバージョン2(例えば、V2)二量体抗原受容体(DAR)構築物をコードする核酸に連結されている発現ベクターを保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含み、宿主細胞または宿主細胞の集団は、(a)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖をコードする第一の核酸に機能的に連結されている第一のベクター:(i)抗体重鎖可変領域(VH)、(ii)抗体重鎖定常領域(CH)、(iii)CD28ヒンジ配列(例えば、配列番号5)を含む短ヒンジ領域、(iv)CD28膜貫通配列(例えば、配列番号6)を含む膜貫通領域(TM)、および(v)(1)4-1BBシグナル伝達配列(例えば、配列番号7)およびITAMモチーフ1、2および3(例えば、配列番号9)を有するCD3-ζ、または(2)CD28(例えば、配列番号8)シグナル伝達配列およびITAMモチーフ1、2および3(例えば、配列番号9)を有するCD3-ζ、または(3)4-1BB(例えば、配列番号7)シグナル伝達配列およびCD28(例えば、配列番号8)シグナル伝達配列およびITAMモチーフ1、2および3(例えば、配列番号9)を有するCD3-ζのいずれかを含む細胞内シグナル伝達領域;(b)第一のベクターは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖をコードする第二の核酸に機能的に連結されている:(i)抗体軽鎖可変領域(VL)(例えば、カッパまたはラムダ)、および(ii)抗体軽鎖定常領域(CL)を保有する。 一実施形態において、バージョン2a(V2a)DAR構築物は、4-1BBシグナル伝達配列(例えば、配列番号7)ならびにITAMモチーフ1、2および3を有するCD3ζ(例えば、配列番号9)を有する細胞内シグナル伝達領域を含む。 一実施形態において、バージョン2b(V2b)DAR構築物は、CD28(例えば、配列番号8)シグナル伝達配列ならびにITAMモチーフ1、2および3を有するCD3-ζ(例えば、配列番号9)を有する細胞内シグナル伝達領域を含む。 一実施形態において、バージョン2c(V2c)DAR構築物は、4-1BB(例えば、配列番号7)シグナル伝達配列およびCD28(例えば、配列番号8)シグナル伝達配列ならびにITAMモチーフ1、2および3を有するCD3ζ(例えば、配列番号9)を有する細胞内シグナル伝達領域を含む。一実施形態において、DAR V2aおよびV2bは第二世代DAR構築物であるのに対して、DAR V2cは第三世代DAR構築物である。一実施形態において、抗体重鎖可変領域(VH)は、抗CD38重鎖可変領域配列(例えば、配列番号1)を含み、抗体重鎖定常領域(CH)は、抗CD38重鎖定常領域配列(例えば、配列番号2)を含む。
【0334】
本開示は、腫瘍抗原の有害な発現と関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法を提供し、方法は、重鎖可変(VH)および重鎖定常領域(CH)を担持する第一のポリペプチド鎖、および軽鎖可変(VL)および軽鎖定常領域(CL)(例えば、
図1)を担持する第二のポリペプチド鎖を含むバージョン3(例えば、V3)二量体抗原受容体(DAR)構築物をコードする核酸に連結されている発現ベクターを保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含み、宿主細胞または宿主細胞の集団は、(a)アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に5つの領域を含む第一のポリペプチド鎖をコードする第一の核酸に機能的に連結されている第一のベクター:(i)抗体重鎖可変領域(VH)、(ii)抗体重鎖定常領域(CH)、(iii)CD28ヒンジ配列(例えば、配列番号5)を含む短ヒンジ領域、(iv)CD28膜貫通配列(例えば、配列番号6)を含む膜貫通領域(TM)、および(v)4-1BBシグナル伝達配列(例えば、配列番号7)およびITAMモチーフ3のみ(例えば、配列番号20)を有するCD3-ζシグナル伝達配列を含む細胞内シグナル伝達領域;および(b)第一のベクターは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖をコードする第二の核酸に機能的に連結されている:(i)抗体軽鎖可変領域(VL)(例えば、カッパまたはラムダ)、および(ii)抗体軽鎖定常領域(CL)を保有する。一実施形態において、抗体重鎖可変領域(VH)は抗CD38重鎖可変領域配列(例えば、配列番号1)を含み、抗体重鎖定常領域(CH)は抗CD38重鎖定常領域配列(例えば、配列番号2)を含む。
【0335】
本開示は、腫瘍抗原の有害な発現と関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法を提供し、方法は、重鎖可変(VH)および重鎖定常領域(CH)を担持する第一のポリペプチド鎖、および軽鎖可変(VL)および軽鎖定常領域(CL)を担持する第二のポリペプチド鎖を含むバージョン4(例えば、V4)二量体抗原受容体(DAR)構築物をコードする核酸に連結されている発現ベクターを保有する宿主細胞または宿主細胞の集団を被験体に投与することを含み、宿主細胞または宿主細胞の集団は、(a)第一のベクターは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に4つの領域を含む第一のポリペプチド鎖をコードする第一の核酸に機能的に連結されており:(i)抗体重鎖可変領域(VH)、(ii)抗体重鎖定常領域(CH)、(iii)CD28膜貫通配列(例えば、配列番号6)を含む膜貫通領域(TM)、および(iv)4-1BBシグナル伝達配列(例えば、配列番号7)およびITAMモチーフ3のみ(例えば、配列番号20)を有するCD3-ζシグナル伝達配列を含む細胞内シグナル伝達領域;(b)第一のベクターは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順に2つの領域を含む第二のポリペプチド鎖をコードする第二の核酸に機能的に連結されている:(i)抗体軽鎖可変領域(VL)(例えば、カッパまたはラムダ)、および(ii)抗体軽鎖定常領域(CL)。DAR
V4構築物はヒンジ配列を欠く。一実施形態において、抗体重鎖可変領域(VH)は抗CD38重鎖可変領域配列(例えば、配列番号1)を含み、抗体重鎖定常領域(CH)は抗CD38重鎖定常領域配列(例えば、配列番号2)を含む。
【0336】
本開示は、腫瘍抗原の有害な発現と関連する疾患、障害または状態を有する被験体を処置する方法を提供し、ここで、障害は、血液の乳がん(hematologic breast cancer)、卵巣がん、前立腺がん、頭頸部がん、肺がん、膀胱がん、黒色腫、結腸直腸がん、膵臓がん、肺がん、肝臓がん、腎臓がん、食道がん、平滑筋腫、平滑筋肉腫、神経膠腫および神経膠芽腫を含むがこれらに限定されないがんである。
【0337】
一実施形態において、がんは、非ホジキンリンパ腫(NHL)、バーキットリンパ腫(BL)、B慢性リンパ球性白血病(B-CLL)、BおよびT急性リンパ球性白血病(ALL)、T細胞リンパ腫(TCL)、急性骨髄性白血病(AML)、有毛細胞白血病(HCL)、ホジキンリンパ腫(HL)、慢性骨髄性白血病(CML)および多発性骨髄腫(MM)からなる群より選択される血液のがんである。
【0338】
【実施例0339】
以下の実施例は、例示であることが意図されており、本開示の実施形態をさらに理解するために使用することができ、いかなる形であれ本教示の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0340】
[実施例1]ヒトPBMC細胞および初代T細胞の単離
【0341】
健康なヒトドナーから、バフィコート(San Diego血液バンク)、新鮮血または白血球除去生成物(StemCell)のいずれかから初代ヒトT細胞を単離した。末梢血単核球は、密度勾配遠心分離によって単離した。T細胞は、製造業者の指示にしたがって、EasySepTMHumanT Cell Isolation Kit(STEMCELL)を使用して、磁気による負の選択によってPBMCから単離した。
【0342】
(実施例2)初代T細胞培養
【0343】
300U/mL IL-2(Proleukin)を加えた5%CTS(商標)Immune Cell SR(Thermo Fisher Scientific)を補充したCTS(商標) OpTmizer(商標)T Cell Expansion SFM中で、106細胞/mLの密度で初代T細胞を培養した。単離されたT細胞は、新たにまたは凍結したタンクから刺激した。T Cell TransAct(Miltenyi)3μL/mL当たり106細胞で、2~3日間、細胞を活性化した。形質移入後、300U/mLでIL-2を加えた培地中でT細胞を培養した。
【0344】
[実施例3]腫瘍細胞系
【0345】
多発性骨髄腫細胞系RPMI8226をATCCから取得し、ルシフェラーゼおよびGFP遺伝子を担持するレンチウイルスを用いて形質導入した。ルシフェラーゼおよびGFP発現を有する単一細胞クローンを選択した(RPMI8226-FLuc)。RPE遺伝子を担持するレンチウイルスでK562細胞を形質導入することによって、K562/RPE細胞を同様に作製した。両細胞系は、10%ウシ胎児血清(Sigma)を補充したRPMI1640培地(ATCC)中で培養した。
【0346】
[実施例4] CARおよびDAR T細胞の調製
【0347】
活性化T細胞に、CARまたはDAR構築物のいずれかをコードする核酸を導入した。
【0348】
抗CD38 CARポリペプチドをコードする核酸は、その後に2つの追加のアミノ酸残基AspおよびIleが続く重鎖シグナルペプチド(配列番号10)、mycタグEQKLISEEDL(配列番号22)、抗CD38重鎖可変領域(配列番号1)、15アミノ酸リンカーGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号23),抗CD38軽鎖可変領域(配列番号3),CD8ヒンジ領域(配列番号21),CD28ヒンジ領域(配列番号5),CD28膜貫通領域(配列番号6),CD28細胞内シグナル伝達領域(配列番号8)およびCD3ζ細胞内シグナル伝達領域(配列番号9)を含んだ。完全長抗CD38
CAR構築物は、配列番号22のアミノ酸配列を有する。
【0349】
抗CD38 DAR前駆体ポリペプチドをコードする核酸の例(例えば、V2aまたはV3)は、配列番号15または18のアミノ酸配列を含む。
【0350】
[実施例5] 細胞傷害性アッセイ
【0351】
電気穿孔の2~3週後に、CAR、DARおよび対照T細胞を、IL-2とともに、一晩、栄養素飢餓状態に供した。これらの細胞を、CD38陽性RPMI-8226/GFP細胞またはCD38陰性K562/RPE細胞の標的細胞混合物とともに共培養した。エフェクター対標的細胞の比は、5:1~0.08:1の範囲であった。一晩のインキュベーションの後、GFP細胞集団を測定して、抗CD38A2 CARおよびDAR T細胞による特異的な標的細胞の殺滅を判定するために、細胞をフローサイトメトリーに供した。
【0352】
[実施例6]サイトカイン分泌アッセイ
【0353】
電気穿孔の2~3週後に、CAR、DARおよび対照T細胞を、IL-2とともに、一晩、栄養素飢餓状態に供した。これらの細胞を、CD38陰性K562またはCD38陽性RPMI8226細胞とともに共培養した。エフェクター対標的細胞の比は、2:1であった。一晩のインキュベーション後、製造業者の指示にしたがって、サイトカインIL-2、IFN-γおよびTNFα(Affymetrix eBioscience)を検出するため、上清を集めるために、細胞を遠心分離した。
【0354】
[実施例7] エフェクターメモリーT細胞を検出する
【0355】
DAR T細胞をDPBS5%ヒト血清アルブミンで洗浄し、次いで、4℃で30~60分間、抗CD3ーBV421抗体(SK7,BioLegend)およびPEまたはAPCコンジュゲートCD38-Fcタンパク質(Chimerigen Laboratories)で染色した。iQue Screener Plus(Intellicyte Co)を用いて、CD3およびCD38を検出した。エフェクターメモリーT細胞およびT細胞のセントラルメモリー画分を同定するためのマーカーは、CD45RO(BioLegend)およびCCR7(BioLegend)であった。
【0356】
[実施例8] インビボでの腫瘍殺滅
【0357】
抗CD38A2 CARTまたはDART細胞の殺腫瘍活性を、RPMI8226異種移植マウスモデルにおいて試験した。ルシフェラーゼおよびGFP遺伝子を有するレンチウイルスベクターによって、ATCCから得た多発性骨髄腫細胞系RPMI8226を形質移入した。ルシフェラーゼおよびGFP発現を有する単一クローンを選択した(RPMI8226-FLuc)。合計7×106細胞のRPMI8226-Flucを200μLのPBS中に懸濁し、次いで、各マウスの尾静脈中に静脈内注射した。IVIS画像法からの生物発光に基づいて、極めて小さなまたは極めて大きな腫瘍負荷量を有する動物は除外した。研究で選択された動物を、異なる群に無作為化した。
【0358】
腫瘍接種の3週後に、尾静脈を介して、200μLのPBS中の約1000万の操作されたCARまたはDAR T細胞の単回処置を施行した。処置対照群として、同じ量のATCまたはTRAC KO T細胞または200μLのPBSを静脈内に投与した。
【0359】
処置の4または5週後まで、腫瘍細胞接種後に毎週、各マウスの背側上で、IVIS Lumina III In Vivo Imaging System(Perkin
Elmer Health Sciences,Inc)を用いて総光子束を測定することによって、腫瘍成長をモニターした。150mg/kgのルシフェリン腹腔内投与から約10~20分後に、画像を撮影した。
【0360】
[実施例9] DAR V1構築物を発現するT細胞の結果
【0361】
抗CD38キメラ抗原受容体(CAR)または抗CD38二量体抗原受容体(DAR)バージョン1のいずれかを発現するトランスジェニックT細胞の発現レベルを、フローサイトメトリーを用いて比較した。トランスジェニックT細胞は、CAR構築物を発現するトランスジェニックT細胞と比較して、より高いレベルのバージョン1 DAR構築物を発現する(
図9)。
【0362】
抗CD38キメラ抗原受容体(CAR)または抗CD38二量体抗原受容体(DAR)バージョン1のいずれかを発現するT細胞の細胞殺滅能力を、インビトロ細胞傷害性アッセイにおいて比較した。バージョン1 DAR構築物を発現するトランスジェニックT細胞(B点線)は、CAR構築物を発現するトランスジェニックT細胞(線C)と比べて、インビトロでの細胞殺滅において同等であったが、これより優れているわけではなかった(
図10)。
【0363】
抗CD38キメラ抗原受容体(CAR)または抗CD38二量体抗原受容体(DAR)バージョン1のいずれかを発現するT細胞のサイトカイン分泌能力は、インビトロサイトカイン分泌アッセイにおいて比較した。バージョン1 DAR構築物を発現するトランスジェニックT細胞は、CAR構築物を発現するトランスジェニックT細胞と比べて、より高いレベルの腫瘍壊死因子α(TNFα)分泌(
図14)およびIL-2分泌(
図15)を示したが、より低いレベルのインターフェロンγ(IFNγ)(
図13)を示した。
【0364】
RPMI8226またはK562腫瘍標的細胞のいずれかとともに共培養した、抗CD38キメラ抗原受容体(CAR)または抗CD38二量体抗原受容体(DAR)バージョン1のいずれかを発現するT細胞のインビトロでのクローン増殖に対する能力を、フローサイトメトリーを用いて比較した。バージョン1 DAR構築物を発現するトランスジェニックT細胞は、CAR構築物を発現するT細胞と同等である倍数変化増殖を示した(
図16および17)。
【0365】
[実施例10]DAR V2b構築物を発現するT細胞の結果
【0366】
抗CD38キメラ抗原受容体(CAR)または抗CD38二量体抗原受容体(DAR)V1またはV2bのいずれかを発現するトランスジェニックT細胞の発現レベルを、フローサイトメトリーを用いて比較した。トランスジェニックT細胞は、DAR V1またはCAR構築物を発現するトランスジェニックT細胞と比較して、より高いレベルのDAR
V2b構築物を発現する(
図11)。
【0367】
抗CD38キメラ抗原受容体(CAR)または抗CD38二量体抗原受容体(DAR)V1またはV2bのいずれかを発現するT細胞の細胞殺滅能力を、インビトロ細胞傷害性アッセイにおいて比較した。DAR V2b構築物を発現するトランスジェニックT細胞(C点線)は、DAR V1構築物を発現するトランスジェニックT細胞(線B)と比べて、より優れたインビトロ細胞殺滅を示し、DAR V2bを発現するT細胞は、CAR構築物を発現するトランスジェニックT細胞と比べて(線D)、インビトロでの細胞殺滅が同様であった(
図12)。
【0368】
抗CD38キメラ抗原受容体(CAR)または抗CD38二量体抗原受容体(DAR)V2a、V2bまたはV2c構築物のいずれかを発現するT細胞の細胞殺滅能力を、インビトロ細胞傷害性アッセイにおいて比較した。DAR V2b構築物を発現するトランスジェニックT細胞(「28Z」線E)は、CAR構築物を発現するトランスジェニックT細胞(線B)およびDAR V2aを発現するT細胞(「BBZ」線C)と比べて、顕著により優れたインビトロ細胞殺滅を示し、DAR V2cを発現するT細胞(「28BBZ」点線D)と比べて同様の殺滅能を示した(
図26)。
【0369】
抗CD38キメラ抗原受容体(CAR)または抗CD38二量体抗原受容体(DAR)V1またはV2bのいずれかを発現するT細胞のサイトカイン分泌能力は、インビトロサイトカイン分泌アッセイにおいて比較した。DAR V2b構築物を発現するトランスジェニックT細胞は、CARまたはDAR V1構築物を発現するトランスジェニックT細胞と比較して、より高いレベルのIL-2分泌を示した(
図15)。DAR V2b構築物を発現するトランスジェニックT細胞は、CAR構築物を発現するトランスジェニックT細胞と比べて、わずかにより高いレベルのインターフェロンγ(IFNγ)分泌を示し(
図13)、DAR V1構築物を発現するトランスジェニックT細胞と比べてより高いレベルを示した。DAR V2b構築物を発現するトランスジェニックT細胞は、CARまたはDAR V1構築物を発現するトランスジェニックT細胞と比較して、より低いレベルの腫瘍壊死因子α(TNFα)分泌を示した(
図14)。
【0370】
RPMI8226またはK562細胞のいずれかとともに共培養した、抗CD38キメラ抗原受容体(CAR)または抗CD38二量体抗原受容体(DAR)V1またはV2bのいずれかを発現するT細胞のインビトロでのクローン増殖に対する能力を測定するために、フローサイトメトリーを使用した。DAR V2b構築物を発現するトランスジェニックT細胞は、RPMI8226細胞とともに共培養すると、CARまたはDAR V1構築物を発現するT細胞と比較してより高いレベルの倍数変化増殖を示した(
図16および17)。
【0371】
異種移植動物モデルにおけるCD38 DAR T細胞の殺腫瘍活性を測定するために、インビボ異種移植動物モデルを使用した。陰性対照マウスに、リン酸緩衝食塩水またはノックアウトTRAC遺伝子を有する細胞系を投与した。CD38 CARまたはCD38 DAR(V2b)構築物のいずれかを発現するトランスジェニックT細胞を試験マウスに投与した。4週目に、CD38 DAR(V2b)構築物を発現するT細胞で処置したマウスは、CD38 CAR構築物を発現するT細胞で処置したマウスと比べて、有意により少ない腫瘍負荷量を示した(
図18)。
【0372】
[実施例11]DAR V2c構築物を発現するT細胞の結果
【0373】
抗CD38キメラ抗原受容体(CAR)または抗CD38二量体抗原受容体(DAR)V2a、V2bまたはV2c構築物のいずれかを発現するトランスジェニックT細胞の発現レベルを、フローサイトメトリーを用いて比較した。トランスジェニックT細胞は、DAR V2b(例えば、「BBZ」)を発現するトランスジェニックT細胞と比べて、類似のレベルのDAR V2c(例えば、「28BBZ」)構築物を発現し、DAR V2b(「28Z」)構築物を発現するT細胞と比べて、わずかにより高いレベルのDAR V2c(「28BBZ」)が発現される(
図25)。
【0374】
抗CD38キメラ抗原受容体(CAR)または抗CD38二量体抗原受容体(DAR)V2a、V2bまたはV2c構築物のいずれかを発現するT細胞の細胞殺滅能力を、インビトロ細胞傷害性アッセイにおいて比較した。DAR V2c構築物を発現するトランスジェニックT細胞(「28BBZ」点線D)は、CAR構築物を発現するトランスジェニックT細胞(線B)およびDAR V2a構築物(線C)を発現するトランスジェニックT細胞と比べて、顕著により高いレベルのインビトロ細胞殺滅を示したが、DAR V2bを発現するT細胞(「28Z」線E)と比べて、同様のレベルの細胞殺滅を示した(
図26)。
【0375】
抗CD38キメラ抗原受容体(CAR)または抗CD38二量体抗原受容体(DAR)V2aまたはV2b構築物のいずれかを発現するT細胞のサイトカイン分泌能力を、インビトロサイトカイン分泌アッセイにおいて比較した。DAR V2a(「BBZ」)を発現するトランスジェニックT細胞は、DAR V2b(「28Z」)構築物を発現するT細胞と比べて、わずかにより高いレベルのIL-2分泌を示し、CAR構築物を発現するトランスジェニックT細胞と比べて、より高いレベルを示した(
図27)。DAR V2b(「BBZ」)構築物を発現するトランスジェニックT細胞は、CARまたはDAR V2b(「28Z」)構築物を発現するトランスジェニックT細胞と比較して、わずかにより高いレベルの腫瘍壊死因子α(TNFα)分泌を示した(
図28)。DAR V2b(「BBZ」)構築物を発現するトランスジェニックT細胞は、CAR構築物を発現するトランスジェニックT細胞と比べて、わずかにより高いレベルのインターフェロンγ(IFNγ)分泌を示したが、DAR V2b(「BBZ」)を発現する細胞は、DAR V2b(「28Z」)構築物を発現するトランスジェニックT細胞と比べて、わずかにより低いレベルのIFNγ分泌を示した(
図29)。
【0376】
異種移植動物モデルにおけるCD38 DAR T細胞の殺腫瘍活性を測定するために、インビボ異種移植動物モデルを使用した。陰性対照マウスに、リン酸緩衝食塩水(「PBS」)またはノックアウトTRAC遺伝子を有する細胞系(「TRAC KO」)を投与した。CD38 CARまたはCD38 DAR(V2a)構築物のいずれかを発現するトランスジェニックT細胞を試験マウスに投与した。4週目に、CD38 DAR(V2a)構築物を発現するT細胞で処置したマウスは、CD38 CAR構築物を発現するT細胞で処置したマウスと比べて、有意により少ない腫瘍負荷量を示した(
図19)。
【0377】
別のインビボ異種移植動物モデルにおいて、DAR V2bまたはDAR V2cのいずれかを発現するT細胞に対して、CD38 DAR V2a構築物を発現するT細胞の殺腫瘍活性を直接比較した。陰性対照マウスは、リン酸緩衝食塩水(「PBS」)または活性化T細胞(「ATC」)またはノックアウトTRAC遺伝子を有する細胞系(「TRAC KO」)を投与した。CD38 DAR V2a、V2bまたはV2c構築物のいずれかを発現するトランスジェニックT細胞を試験マウスに投与した。5週目に、CD38 DAR V2a構築物(「BBZ」)を発現するT細胞で処置したマウスは、CD38 CAR V2b(「28Z」)またはV2c(「28BBZ」)構築物を発現するT細胞で処置したマウスと比べて、測定できるほどより少ない腫瘍負荷量を示した(
図30)。
【0378】
[実施例12] DAR V2a構築物を発現するT細胞の結果
【0379】
抗CD38キメラ抗原受容体(CAR)または抗CD38二量体抗原受容体(DAR)V2aまたはV2b構築物のいずれかを発現するトランスジェニックT細胞の発現レベルを、フローサイトメトリーを用いて比較した。トランスジェニックT細胞は、DAR V2b(例えば、「28Z」)またはCAR構築物を発現するトランスジェニックT細胞と比較して、より高いレベルのDAR V2a(例えば、「BBZ」)構築物を発現する(
図25)。
【0380】
抗CD38キメラ抗原受容体(CAR)または抗CD38二量体抗原受容体(DAR)V2a、V2bまたはV2c構築物のいずれかを発現するT細胞の細胞殺滅能力を、インビトロ細胞傷害性アッセイにおいて比較した。DAR V2a構築物を発現するT細胞(「BBZ」線C)は、CAR構築物を発現するトランスジェニックT細胞(線B)と比べて、より優れたインビトロ細胞殺滅を示したが、DAR V2bを発現するT細胞(「28Z」線E)を発現するT細胞またはDAR V2cを発現するT細胞(「28BBZ」点線D)と比べて、より低い細胞殺滅レベルを示した(
図26)。
【0381】
抗CD38キメラ抗原受容体(CAR)または抗CD38二量体抗原受容体(DAR)V2aまたはV2b構築物のいずれかを発現するT細胞のサイトカイン分泌能力を、インビトロサイトカイン分泌アッセイにおいて比較した。DAR V2a(「BBZ」)を発現するトランスジェニックT細胞は、DAR V2b(「28Z」)構築物を発現するT細胞と比べて、わずかにより高いレベルのIL-2分泌を示し、CAR構築物を発現するトランスジェニックT細胞と比べて、より高いレベルを示した(
図27)。DAR V2b(「BBZ」)構築物を発現するトランスジェニックT細胞は、CARまたはDAR V2b(「28Z」)構築物を発現するトランスジェニックT細胞と比較して、わずかにより高いレベルの腫瘍壊死因子α(TNFα)分泌を示した(
図28)。DAR V2b(「BBZ」)構築物を発現するトランスジェニックT細胞は、CAR構築物を発現するトランスジェニックT細胞と比べて、わずかにより高いレベルのインターフェロンγ(IFNγ)分泌を示したが、DAR V2b(「BBZ」)を発現する細胞は、DAR V2b(「28Z」)構築物を発現するトランスジェニックT細胞と比べて、わずかにより低いレベルのIFNγ分泌を示した(
図29)。
【0382】
異種移植動物モデルにおけるCD38 DAR T細胞の殺腫瘍活性を測定するために、インビボ異種移植動物モデルを使用した。陰性対照マウスに、リン酸緩衝食塩水(「PBS」)またはノックアウトTRAC遺伝子を有する細胞系(「TRAC KO」)を投与した。CD38 CARまたはCD38 DAR(V2a)構築物のいずれかを発現するトランスジェニックT細胞を試験マウスに投与した。4週目に、CD38 DAR(V2a)構築物を発現するT細胞で処置したマウスは、CD38 CAR構築物を発現するT細胞で処置したマウスと比べて、有意により少ない腫瘍負荷量を示した(
図19)。
【0383】
別のインビボ異種移植動物モデルにおいて、DAR V2bまたはDAR V2cのいずれかを発現するT細胞に対して、CD38 DAR V2a構築物を発現するT細胞の殺腫瘍活性を直接比較した。陰性対照マウスは、リン酸緩衝食塩水(「PBS」)または活性化T細胞(「ATC」)またはノックアウトTRAC遺伝子を有する細胞系(「TRAC KO」)を投与した。CD38 DAR V2a、V2bまたはV2c構築物のいずれかを発現するトランスジェニックT細胞を試験マウスに投与した。5週目に、CD38 DAR V2B構築物(「BBZ」)を発現するT細胞で処置したマウスは、CD38 CAR V2b(「28Z」)またはV2c(「28BBZ」)構築物を発現するT細胞で処置したマウスと比べて、測定できるほどより少ない腫瘍負荷量を示した(
図30)。
【0384】
[実施例13] DAR V3構築物を発現するT細胞の結果
【0385】
抗CD38二量体抗原受容体(DAR)V2aまたはV3構築物を発現するトランスジェニックT細胞の発現レベルを、フローサイトメトリーを用いて比較した。トランスジェニックT細胞は、DAR V2aを発現するトランスジェニックT細胞と比較して、より高いレベルのDAR V3構築物を発現する(
図20および31)。
【0386】
抗CD38二量体抗原受容体(DAR)V2aまたはV3構築物を発現するT細胞の細胞殺滅能力を、インビトロ細胞傷害性アッセイにおいて比較した。DAR V3を発現するトランスジェニックT細胞(線C)は、DAR V2a構築物を発現するトランスジェニックT細胞(線B)と比較して、より高いレベルのインビトロ細胞殺滅を示した(
図21)。
【0387】
抗CD38二量体抗原受容体(DAR)V2aまたはV3構築物を発現するT細胞のサイトカイン分泌能力を、インビトロサイトカイン分泌アッセイにおいて比較した。DAR
V3を発現するトランスジェニックT細胞は、DAR V2aを発現するT細胞と比較して、顕著により高いレベルのインターフェロンγ(IFNγ)分泌を示した(
図22)。DAR V3を発現するトランスジェニックT細胞は、DAR V2a構築物を発現するトランスジェニックT細胞と比較して、顕著により高いレベルの腫瘍壊死因子α(TNFα)分泌を示した(
図23)。
【0388】
抗CD38二量体抗原受容体(DAR)V2aまたはV3を発現するT細胞のサイトカイン分泌能力を、インビトロサイトカイン分泌アッセイにおいて比較した。DAR V3構築物を発現するトランスジェニックT細胞は、V2a構築物を発現するトランスジェニックT細胞と比較して、顕著により高いレベルのインターフェロンγ(IFNγ)分泌を示した(
図33)。DAR V3構築物を発現するトランスジェニックT細胞は、DAR
V2a構築物を発現するトランスジェニックT細胞と比較して、より低いレベルの腫瘍壊死因子α(TNFα)分泌を示した(
図34)。
【0389】
DAR V2aまたはV3構築物のいずれかを発現するT細胞の集団中でのセントラルメモリーT細胞(TCM)の存在を検出するために、フローサイトメトリーを使用した。DAR V3構築物を発現するT細胞は、DAR V2aを発現するT細胞と比べて、より高い百分率のセントラルメモリーT細胞(TCM)を示した(
図24)。
【0390】
抗CD38二量体抗原受容体(DAR)V2aまたはV3構築物を発現するT細胞の細胞殺滅能力を、インビトロ細胞傷害性アッセイにおいて比較した。DAR V2a構築物を発現するトランスジェニックT細胞(点線C)は、DAR V3を発現するトランスジェニックT細胞(線D)と比較して、同様のレベルのインビトロ細胞殺滅を示した(
図32)。
【0391】
[実施例14] DAR V4構築物を発現するT細胞の結果
【0392】
抗CD38二量体抗原受容体(DAR)V2a、V3またはV4構築物を発現するトランスジェニックT細胞の発現レベルを、フローサイトメトリーを用いて比較した。トランスジェニックT細胞は、DAR V2aまたはV4構築物を発現するトランスジェニックT細胞と比較して、より高いレベルのDAR V3構築物を発現する(
図31)。
【0393】
抗CD38二量体抗原受容体(DAR)V2a、V3またはV4構築物を発現するT細胞の細胞殺滅能力を、インビトロ細胞傷害性アッセイにおいて比較した。DAR V4構築物を発現するトランスジェニックT細胞(線B)は、DAR V2a構築物(点線C)またはDAR V3(線D)を発現するトランスジェニックT細胞と比較して、同様のレベルのインビトロ細胞殺滅を示した(
図32)。DAR V4構築物はヒンジ領域を欠いており、細胞殺滅の結果は、いずれも短いヒンジ領域(例えば、CD28ヒンジ配列のみ)を含むV2aまたはV3構築物を発現するT細胞と比べて、ヒンジ領域を欠如するDAR構築物がDAR V4構築物を発現するT細胞の細胞殺滅能力を向上させないことを示す。
【0394】
抗CD38二量体抗原受容体(DAR)V2a、V3またはV4構築物を発現するT細胞のサイトカイン分泌能力を、インビトロサイトカイン分泌アッセイにおいて比較した。DAR V4構築物を発現するトランスジェニックT細胞は、DAR V3構築物を発現するT細胞と比較して、顕著に低下したレベルのインターフェロンγ(IFNγ)分泌を示した(
図33)。DAR V4構築物を発現するトランスジェニックT細胞は、DAR
V3構築物を発現するトランスジェニックT細胞と比較して、より低いレベルの腫瘍壊死因子α(TNFα)分泌を示した(
図34)。