(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168555
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】表示装置、表示方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
G05B23/02 R
G05B23/02 301L
G05B23/02 301W
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023172907
(22)【出願日】2023-10-04
(62)【分割の表示】P 2019133828の分割
【原出願日】2019-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 鉄也
(57)【要約】
【課題】プラントの要求条件を変化させた場合における運転方針による運転条件の違いをリアルタイムかつ定量的に比較する表示装置を提供する。
【解決手段】表示装置は、プラントに係る複数の運転条件のうち満たすべき条件である要求条件の入力を受け付ける条件入力部と、前記プラントの挙動を模擬するプラントモデルに基づくシミュレーションによって前記運転条件を算出する運転条件提案プログラムの導入前の前記プラントの過去の運転に基づいて算出した前記運転条件と、前記運転条件提案プログラムの導入後の前記プラントの過去の運転に基づいて算出した前記運転条件とを提示する提示部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントに係る複数の運転条件のうち満たすべき条件である要求条件の入力を受け付ける条件入力部と、
前記プラントの挙動を模擬するプラントモデルに基づくシミュレーションによって前記運転条件を算出する運転条件提案プログラムの導入前の前記プラントの過去の運転に基づいて算出した前記運転条件と、前記運転条件提案プログラムの導入後の前記プラントの過去の運転に基づいて算出した前記運転条件とを提示する提示部と、
を備える表示装置。
【請求項2】
プラントに係る複数の運転条件のうち満たすべき条件である要求条件の入力を受け付けるステップと、
前記プラントの挙動を模擬するプラントモデルに基づくシミュレーションによって前記運転条件を算出する運転条件提案プログラムの導入前の前記プラントの過去の運転に基づいて算出した前記運転条件と、前記運転条件提案プログラムの導入後の前記プラントの過去の運転に基づいて算出した前記運転条件とを提示するステップと、
を含む表示方法。
【請求項3】
プラントに係る複数の運転条件のうち満たすべき条件である要求条件の入力を受け付けるステップと、
前記プラントの挙動を模擬するプラントモデルに基づくシミュレーションによって前記運転条件を算出する運転条件提案プログラムの導入前の前記プラントの過去の運転に基づいて算出した前記運転条件と、前記運転条件提案プログラムの導入後の前記プラントの過去の運転に基づいて算出した前記運転条件とを提示するステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、表示方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラントの設計や開発においては、各設備の特性を示す特性関数などからなる計算機モデルを用いてプラントの挙動を推定するアプリケーション(プログラム)が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載されているエネルギー変動費推定プログラムによれば、施設属性に依らず、他の様々な施設のデータを用いずに、対象施設の特性が変化したときも、対象施設のデータを使用して省エネ対策後の期間に省エネ対策を実施しなかった場合のエネルギー変動費を推定することができる。
なお、特許文献1に記載されているエネルギー変動費推定プログラムでは、例えば、プラントが時間的に後先する2つの期間で稼動されたとき、後の期間において先の期間の稼動条件でプラントを稼動すると仮定するときのエネルギー変動費が推定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、特許文献1に記載されているエネルギー変動費推定プログラムでは、後の期間において先の期間の稼動条件でプラントを稼動すると仮定するときのエネルギー変動費が推定される。そのため、プラントの稼動条件(運転条件)を変化させた前後で、コスト削減などの効果を適切に比較することができない場合があるという課題があった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、プラントの運転条件を変化させた場合の効果を定量的に比較することができる運転比較装置、運転比較方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、運転比較装置は、プラントに係る複数の運転条件のうち満たすべき条件である要求条件の入力を受け付ける条件入力部と、複数のアルゴリズムに基づいて、前記要求条件を満たす複数の運転条件を算出する運転条件算出部と、前記複数の運転条件を提示する提示部とを備える。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様に係る運転比較装置において、前記複数のアルゴリズムは、前記プラントの挙動を模擬するプラントモデルに基づくシミュレーションによって前記運転条件を算出するアルゴリズムと、前記プラントの過去の運転に基づいて前記運転条件を算出するアルゴリズムとを含むものであってよい。
【0008】
本発明の第3の態様によれば、第1または第2の態様に係る運転比較装置において、前記複数のアルゴリズムは、前記プラントの挙動を模擬するプラントモデルに基づくシミュレーションによって前記運転条件を算出する運転条件提案プログラムの導入前の前記プラントの過去の運転に基づいて前記運転条件を算出するアルゴリズムと、前記運転条件提案プログラムの導入後の前記プラントの過去の運転に基づいて前記運転条件を算出するアルゴリズムとを含むものであってよい。
【0009】
本発明の第4の態様によれば、第2または第3の態様に係る運転比較装置において、前記プラントの過去の運転に基づいて前記運転条件を算出するアルゴリズムは、前記プラントの過去の運転に係る運転条件を学習用データセットとして学習された学習モデルを用いるアルゴリズムであるものであってよい。
【0010】
本発明の第5の態様によれば、プログラムは、プラントに係る複数の運転条件のうち満たすべき条件である要求条件の入力を受け付けるステップと、複数のアルゴリズムに基づいて、前記要求条件を満たす複数の運転条件を算出するステップと、前記複数の運転条件を提示するステップとをコンピュータに実行させる。
【0011】
本発明の第6の態様によれば、表示装置は、プラントに係る複数の運転条件のうち満たすべき条件である要求条件の入力を受け付ける条件入力部と、前記プラントの挙動を模擬するプラントモデルに基づくシミュレーションによって前記運転条件を算出する運転条件提案プログラムの導入前の前記プラントの過去の運転に基づいて算出した前記運転条件と、前記運転条件提案プログラムの導入後の前記プラントの過去の運転に基づいて算出した前記運転条件とを提示する提示部と、を備える。
【0012】
本発明の第7の態様によれば、表示方法は、プラントに係る複数の運転条件のうち満たすべき条件である要求条件の入力を受け付けるステップと、前記プラントの挙動を模擬するプラントモデルに基づくシミュレーションによって前記運転条件を算出する運転条件提案プログラムの導入前の前記プラントの過去の運転に基づいて算出した前記運転条件と、前記運転条件提案プログラムの導入後の前記プラントの過去の運転に基づいて算出した前記運転条件とを提示するステップとを含む。
【0013】
本発明の第8の態様によれば、プログラムは、プラントに係る複数の運転条件のうち満たすべき条件である要求条件の入力を受け付けるステップと、前記プラントの挙動を模擬するプラントモデルに基づくシミュレーションによって前記運転条件を算出する運転条件提案プログラムの導入前の前記プラントの過去の運転に基づいて算出した前記運転条件と、前記運転条件提案プログラムの導入後の前記プラントの過去の運転に基づいて算出した前記運転条件とを提示するステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のいずれか1つの態様によれば、プラントの運転条件(要求条件)を変化させた場合の効果を定量的に比較することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1の実施形態に係る運転比較装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態に係るコジェネレーションシステムの構成例を示す模式図である。
【
図3】第1の実施形態に係る運転比較装置が有するソフトウェアの構成例を示す模式図である。
【
図4】第1の実施形態に係る運転比較装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図5】第1の実施形態に係る条件入力部と提示部の動作例を説明するための模式図である。
【
図6】第1の実施形態に係る提示部の動作例を説明するための模式図である。
【
図7】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〈第1の実施形態〉
図1は、第1の実施形態に係る運転比較装置の構成例を示すブロック図である。
図2は、第1の実施形態に係るコジェネレーションシステムの構成例を示す模式図である。本実施形態に係るコジェネレーションシステム2のオペレーティングには、運転要求を満たす各プラントの運転条件を提案する運転条件提案プログラムが導入されている。運転条件の例としては、コジェネレーションシステム2における蒸気発生設備の負荷や発電設備の負荷、外部から受電する受電電力量などが挙げられる。操作者は、運転条件提案プログラムによって計算された運転条件を参考にして、各プラントの操作を行う。
【0017】
図1に示す運転比較装置1は、運転条件提案プログラムによって提案されるコジェネレーションシステム2の運転条件を、運転条件提案プログラムの導入前の運転方針に従った運転条件と比較する装置であって、サーバー、パーソナルコンピュータなどのコンピュータを用いて構成される。すなわち、コジェネレーションシステム2の操作者は、運転比較装置1が提示する情報を参照することで、運転条件提案プログラムが提案する運転条件の妥当性を定量的に認識することができる。
【0018】
《コジェネレーションシステムの構成》
まず、
図2に示すコジェネレーションシステム2の構成例について説明する。
図2は、2つのプラント20とプラント30に設置されている蒸気や電力を発生する各設備などをコジェネレーションシステム2として示す。プラント20とプラント30へは燃料41が配管42を介して供給される。プラント20は、第1ボイラー24および第2ボイラー25と、ガスタービンGT(以下、単にGTともいう)と、背圧タービンBT(以下、単にBTともいう)を備える。プラント20では、第1ボイラー24と、第2ボイラー25と、背圧タービンBTと、ガスタービンGTとを用いて発生したHP(高圧)プロセス蒸気51と、MP(中圧)プロセス蒸気52と、LP(低圧)プロセス蒸気53と、電力(送電54)を、プラント20あるいはプラント30内の図示していない他の設備などへ供給する。また、プラント30は、2つの第3ボイラー31および第4ボイラー32と、2つの復水タービンCT1(以下、単にCT1ともいう)および復水タービンCT2(以下、単にCT2ともいう)を備える。プラント30では、第3ボイラー31と、第4ボイラー32と、復水タービンCT1と、復水タービンCT2とを用いて発生したHPプロセス蒸気51と電力(送電54)を、プラント30あるいはプラント20内の図示していない他の設備などへ供給する。なお、プラント20およびプラント30は、電力会社などの外部から供給された電力も受電55することができる。なお、復水タービンCT1およびCT2の少なくとも一方の抽気が、MPプロセス蒸気52やLPプロセス蒸気53に供給されてもよい。
【0019】
なお、運転比較装置1は、
図2に示すようなコジェネレーションシステムに限らず、発電設備または発電設備と蓄電設備などから構成される発電システムなどを計算対象とすることができる。また、スチームタービン(以下、STともいう)による発電設備や、太陽光発電設備、風力発電設備、水力発電設備などを計算対象とすることができる。
【0020】
《運転比較装置の構成》
図1において、運転比較装置1は、運転比較装置1を構成するコンピュータが有するハードウェアとプログラム、データなどのソフトウェアとの組み合わせから構成される機能的要素として、条件入力部11と、提案運転条件算出部12と、過去運転条件算出部13と、提示部14と、記憶部19とを備える。記憶部19は、プラントモデル16と、運転再現モデル17と、学習用データセット18とを記憶する。運転再現モデル17は、プラントの過去の実際の運転条件の値を学習用データセット18として学習した学習済みモデルであって、導入前モデル171と、導入後モデル172を含む。
【0021】
条件入力部11は、計算対象のプラントの要求条件15の入力を受け付ける。プラントの要求条件15は、
図2に示すプラント20およびプラント30のような計算対象とするプラントの要求条件(デマンド(需要)条件や各設備の制約条件など)を示すデータであり、例えば、電力デマンド(
図2の送電54に対応する)の値、蒸気デマンド(
図2のHPプロセス蒸気51、MPプロセス蒸気52およびLPプロセス蒸気53に対応する)の値、受電電力(
図2の受電55に対応する)の値や、BT、ST、CTなどの運用制限値、送電や受電の運用制限値、気象条件、燃料や電力の単価などを含む。すなわち、要求条件15は、プラントの運転条件のうち、制約として与えられるものである。
【0022】
提案運転条件算出部12は、運転条件提案プログラムによって要求条件15を満たす運転条件を計算する。具体的には、提案運転条件算出部12は、プラントの挙動を模擬するプラントモデル16に基づくシミュレーションによって、要求条件15を満たすプラントの運転条件を算出する。なお、プラントモデル16は、プラントの挙動を模擬するモデル(シミュレーションモデル)である。
【0023】
過去運転条件算出部13は、運転再現モデル17に、評価しようとする要求条件を入力することで、プラントの過去の運転方針に基づく運転条件を算出する。運転再現モデル17は過去の運転方針を再現する学習モデルであり、運転再現モデル17を用いることで、評価しようとする要求条件において、過去の運転方針ではどのようにプラントの運転条件が設定されていたのかを推定することができる。
【0024】
なお、運転再現モデル17が含む導入前モデル171は、運転条件提案プログラムを導入する前の過去の運転条件の値を学習用データセット18として学習された学習済みモデルである。また、導入後モデル172は、運転条件提案プログラムを導入した後の過去の運転条件を学習用データセット18として学習された学習済みモデルである。例えば、導入前モデル171は、運転条件提案プログラムが導入されるより前の過去の運転実績に基づく学習モデルであり、導入後モデル172は、例えば運転条件提案プログラムが導入された後から現在までの過去の運転実績に基づく学習モデルである。
【0025】
すなわち、過去運転条件算出部13は、導入前モデル171に要求条件を入力することで、導入前運転条件を算出するとともに、導入後モデル172に要求条件を入力することで導入後運転条件を算出する。導入前モデル171を用いることで、評価しようとする要求条件において、例えば運転条件提案プログラムが導入されるより前の過去の運転方針ではどのように運転条件が設定されていたのかを推定することができる。また、導入後モデル172を用いることで、評価しようとする要求条件において、運転条件提案プログラムが導入された後の運転方針では、どのように運転条件が設定されていたのかを推定することができる。すなわち、利用者は、導入前運転条件と導入後運転条件とを比較することで、運転条件提案プログラムの導入によってプラントの運転がどのように変化したかを認識することができる。
【0026】
提示部14は、提案運転条件算出部12が算出した(運転条件提案プログラムによって提案された)運転条件、ならびに過去運転条件算出部13が算出した導入前運転条件および導入後運転条件とに基づく情報を提示する。利用者は、運転条件提案プログラムによって提案された運転条件と導入前運転条件とを比較することで、運転条件提案プログラムの妥当性を定量的に評価することができる。また利用者は、導入前運転条件と導入後運転条件とを比較することで、運転条件提案プログラムを導入する前と後でプラントの運転がどのように変化したかを定量的に評価することができる。また利用者は、運転条件提案プログラムによって提案された運転条件と導入後運転条件とを比較することで、運転条件提案プログラムの導入後のプラントの運転方針の妥当性を定量的に評価することができる。なお、操作者は、運転条件提案プログラムによって提示された運転条件を参照するが、提示された運転条件と異なる条件で操作してもよい。そのため、提案運転条件算出部12によって算出された運転条件と、導入後モデル172に基づいて過去運転条件算出部13が算出する過去運転条件とは異なる可能性がある。
【0027】
図3は、第1の実施形態における運転比較装置1のデータの入出力関係の例を示す模式図である。運転比較装置1は、インプット110として、要求条件15および学習用データセット18の入力を受け付ける。
図3に示す例では、運転比較装置1は、要求条件15として、電力デマンド111、蒸気デマンド(HP/MP/LP)112、受電/送電電力113、BT/ST/GT等の運用制限114、送電・受電の運用制限115の入力を受け付ける。なお、要求条件15のうち受電/送電電力113は任意条件である。また運転比較装置1は、学習用データセット18として、過去の運転条件117の入力を受け付ける。
また、運転比較装置1は、アウトプット120として、運転条件120aおよび過去運転条件120bを出力する。運転条件120aおよび過去運転条件120bは、ボイラー負荷121、GT負荷122、BT負荷123、CT負荷124、受電/送電電力125、燃料費等126を含む。なお、受電/送電電力125は、要求条件15として受電/送電電力113が設定されない場合に計算される。
【0028】
提案運転条件算出部12は、運転条件提案プログラムPに従って、電力デマンド111、蒸気デマンド(HP/MP/LP)112、受電/送電電力113、BT/ST/GT等の運用制限114、送電・受電の運用制限115を満たすボイラー負荷121、GT負荷122、BT負荷123、CT負荷124、受電/送電電力125、燃料費等126を算出する。
また、過去運転条件算出部13は、運転再現モデル17に、電力デマンド111、蒸気デマンド(HP/MP/LP)112、受電/送電電力113、BT/ST/GT等の運用制限114、送電・受電の運用制限115を入力することで、ボイラー負荷121、GT負荷122、BT負荷123、CT負荷124、受電/送電電力125、燃料費等126を算出する。
【0029】
《運転比較装置の動作》
次に、
図1に示す運転比較装置1の動作例について説明する。
図4は、第1の実施形態に係る運転比較装置1の動作例を示すフローチャートである。
運転比較装置1の条件入力部11は、利用者から要求条件の入力を受け付ける(ステップS101)。利用者は、複数の運転条件の中から任意の項目を要求条件として入力する。
要求条件が入力されると、提案運転条件算出部12は、受け付けた要求条件に基づいて、運転条件提案プログラムに従って運転条件を計算する(ステップS102)。
【0030】
他方、過去運転条件算出部13は、ステップS101で入力を受け付けた要求条件に基づいて、導入前モデル171を構築する(ステップS103)。すなわち、過去運転条件算出部13は、運転条件提案プログラムを導入する前のプラントの過去の運転条件の値のうち、ステップS101で要求条件として指定されたものを入力サンプルとし、他の運転条件を出力サンプルとする学習用データセット18を用いて、導入前モデル171を学習させる。過去運転条件算出部13は、ステップS101で入力された要求条件を、導入前モデル171に入力することで、導入前運転条件を計算する(ステップS104)。
【0031】
過去運転条件算出部13は、ステップS101で入力を受け付けた要求条件に基づいて、導入後モデル172を構築する(ステップS105)。すなわち、過去運転条件算出部13は、運転条件提案プログラムを導入した後のプラントの過去の運転条件の値のうち、ステップS101で要求条件として指定されたものを入力サンプルとし、他の運転条件を出力サンプルとする学習用データセット18を用いて、導入後モデル172を学習させる。過去運転条件算出部13は、ステップS101で入力された要求条件を、導入後モデル172に入力することで、導入後運転条件を計算する(ステップS106)。
【0032】
提示部14は、ステップS102、ステップS104、およびステップS106の計算結果を比較できる形態で提示する(ステップS107)。
【0033】
《提示例》
ここで、
図5と
図6を参照して、提示部14による情報の提示例について説明する。
図5は、第1の実施形態に係る条件入力部と提示部の動作例を説明するための模式図である。
図5は、表示装置の表示画面や印刷装置による印刷紙面における提示部14による出力例である。
図6は、第1の実施形態に係る提示部の動作例を説明するための模式図である。
【0034】
図5に示す例においては、ステップS1の入力により、要求条件の一例として、電力デマンド85MW、SH送気デマンド125(t/h)、SM送気デマンド100(t/h)、SL送気デマンド25(t/h)、ボイラ運転負荷上限100(%)、BT運転負荷上限100(%)、GT運転負荷上限100(%)、CT1運転負荷上限100(%)、CT2運転負荷上限100(%)、大気温度25(℃)、および降水量0(mm)が設定されている。すなわち、
図5において、項番「1」~「4」の行における「要求条件」の列の値が、条件入力部11が受け付けたプラントの運転条件15に対応する。
これに対し、
図5において、運転条件提案プログラムによって計算された要求条件を満足する提示運転条件(例えば、推奨運転点)の一例として、受電電力8(MW)、第1ボイラー負荷25(t/h)、第2ボイラー負荷 0(t/h)、第3ボイラー負荷 305(t/h)、第4ボイラー負荷 305(t/h)、BT負荷 3(MW)、GT負荷 17.5(MW)、CT1負荷 21(MW)、CT2負荷 35(MW)、燃料費が17%低減したことが表示される。
【0035】
また、
図5において、「導入前運転条件」の列には、運転条件提案プログラム導入前の過去運転条件のデータが表示される。また、「導入後運転条件」の列には、運転条件提案プログラム導入後の過去運転条件のデータが表示される。
【0036】
一方、
図6に示す例では、提示部14は、
図2を参照して説明したコジェネレーションシステム2の構成を示す画像に対して、例えば吹き出しG11~G17として、現状運転条件(例えば、推奨運転点)に基づく情報を提示する。
【0037】
《作用・効果》
以上のように、本実施形態によれば、提示部14が、2つ以上の異なる運転方針に基づく運転条件を計算し、これらを提示する。これにより、運転比較装置1は、プラントの要求条件を変化させた場合における運転方針による運転条件の違いをリアルタイムかつ定量的に比較することができる。
【0038】
本実施形態によれば、提示部14は、運転条件提案プログラムによって提案された提案運転条件と導入前運転条件とを提示する。これにより利用者は、提案運転条件と導入前運転条件とを比較することで、運転条件提案プログラムの妥当性を定量的に評価することができる。
また本実施形態によれば、提示部14は、導入前運転条件と導入後運転条件とを提示する。これにより利用者は、運転条件提案プログラムを導入する前と後でプラントの運転がどのように変化したかを定量的に評価することができる。
また本実施形態によれば、提示部14は、運転条件提案プログラムによって提案された提案運転条件と導入後運転条件とを提示する。これにより利用者は、運転条件提案プログラムの導入後のプラントの運転方針の妥当性を定量的に評価することができる。
【0039】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して説明してきたが、具体的な構成は上記実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0040】
〈コンピュータ構成〉
図7は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ90は、プロセッサ91、メインメモリ92、ストレージ93、インタフェース94を備える。
上述の運転比較装置1は、コンピュータ90に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ93に記憶されている。プロセッサ91は、プログラムをストレージ93から読み出してメインメモリ92に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ91は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ92に確保する。
【0041】
プログラムは、コンピュータ90に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータは、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサによって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0042】
ストレージ93の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ93は、コンピュータ90のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース94または通信回線を介してコンピュータ90に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ90に配信される場合、配信を受けたコンピュータ90が当該プログラムをメインメモリ92に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ93は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【符号の説明】
【0043】
1 運転比較装置
2 コジェネレーションシステム
11 条件入力部
12 提案運転条件算出部
13 過去運転条件算出部
14 提示部
15 プラントの要求条件
16 プラントモデル
17 運転再現モデル
18 学習用データセット
19 記憶部
20、30 プラント
171 導入前モデル
172 導入後モデル