(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168569
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】農作業機
(51)【国際特許分類】
A01B 49/02 20060101AFI20231116BHJP
A01B 21/08 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
A01B49/02
A01B21/08
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023173352
(22)【出願日】2023-10-05
(62)【分割の表示】P 2019237879の分割
【原出願日】2019-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】390010836
【氏名又は名称】小橋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健志
(72)【発明者】
【氏名】滝口 貴智
(57)【要約】
【課題】作業ロータの前方に複数のディスクを配置した農作業機において、ディスクによって後方に跳ね上げられた土が耕耘作業部の上方に到達してしまうことを抑制すること。
【解決手段】農作業機は、複数の耕耘爪を含む作業ロータと、前記作業ロータの上方に、当該作業ロータに沿うように配置されたカバー部材と、前記作業ロータの前方に配置され、それぞれ回転可能に支持された複数のディスクを含むディスクユニットと、平面視において、前記カバー部材の前方に配置された補助カバーと、を備え、前記補助カバーの少なくとも一部は、側面視において、圃場に対して略垂直であって前記ディスクと前記作業ロータとの間において前記ディスクの回転軌跡に接する第1接線よりも後方であって、前記カバー部材の前端を通り前記ディスクと前記作業ロータとの間において前記ディスクの回転軌跡に接する第2接線よりも上方の領域に位置する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の耕耘爪を有する作業ロータを含む耕耘作業部と、
前記耕耘作業部の前方に配置され、左右方向に延在するフレームと、該フレームに固定され、前方に向かって延在する支持部材と、該支持部材に支持され、下方に向かって延在するディスクアームと、該ディスクアームにそれぞれ回転可能に支持された複数のディスクと、を含むディスクユニットと、
を備え、
平面視において、前記フレームと前記ディスクとが重なる、農作業機。
【請求項2】
前記ディスクアームは、前記支持部材に固定されたディスク支持部に固定され、
正面視において、前記フレームと前記ディスク支持部とが重なる、請求項1に記載の農作業機。
【請求項3】
側面視において、前記ディスクの回転中心は、前記ディスク支持部の中心よりも後方に位置する、請求項2に記載の農作業機。
【請求項4】
側面視において、前記ディスクの回転軌跡の半径は、圃場に対して略垂直であって前記フレームの中心を通る線分と前記作業ロータの回転軌跡の前端との間の最短距離よりも大きい、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の農作業機。
【請求項5】
前記耕耘作業部は、前記作業ロータの上方を覆うシールドカバーをさらに含み、
正面視において、前記フレームと前記シールドカバーとが重なる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の農作業機。
【請求項6】
前記耕耘作業部の後方に配置され、回転可能に支持された鎮圧用回転体を含む鎮圧作業部をさらに備えた、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の農作業機。
【請求項7】
前記耕耘作業部は、前記作業ロータの上方に当該作業ロータを覆うカバー部材をさらに含み、
側面視において、前記フレームの少なくとも一部は、圃場に対して略垂直であって前記ディスクと前記作業ロータとの間において前記ディスクの回転軌跡に接する第1接線よりも後方であって、前記カバー部材の前端を通り前記ディスクと前記作業ロータとの間において前記ディスクの回転軌跡に接する第2接線よりも上方の領域に位置する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の農作業機。
【請求項8】
前記カバー部材は、シールドカバーである、請求項7に記載の農作業機。
【請求項9】
正面視において、前記フレームと前記シールドカバーとが重なる、請求項8に記載の農作業機。
【請求項10】
前記耕耘作業部は、前記シールドカバーと前記作業ロータとの間に位置する弾性カバーをさらに含み、
前記弾性カバーの前端は、前記耕耘爪の回転軌跡の前端よりも後方に位置する、請求項8に記載の農作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は農作業機に関する。特に、圃場を耕耘する作業ロータの前方に複数のディスクを配置した農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
圃場を深く粗く耕した(プラウを行った)後、さらに圃場表層の砕土・均平を図るように耕耘作業を行うことで播種床を形成する手法が知られている。播種床形成に際し、プラウ後の耕耘作業をどのように行うかについては作物や土壌条件に応じて多種多様である。例えば、播種床の形成に際し、円盤状のディスクを回転させて圃場を耕耘するディスクハローを用いて圃場を耕した後、複数の耕耘爪を有する作業ロータを回転させて圃場を耕耘するロータリーハローを用いてさらに耕耘作業を行う場合がある。このような播種床形成に対応した農作業機として、特許文献1では、ディスクハローとロータリーハローとを組み合わせた農作業機を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された農作業機は、ロータリーハロー部の前方に配置されたディスク円板によって圃場を耕耘した直後に、その部分をロータリーハロー部によって更に細かく耕耘する構成となっている。その際、ディスク円板によって後方に跳ね上げられた土が、ロータリーハロー部の上方に到達してしまう場合がある。具体的には、跳ね上げられた土がロータリーフレームの上に乗ってしまったり、ロータリーハロー部の上方を越えてロータリー刃による耕耘がなされないまま圃場に落ちてしまったりする場合がある。この場合、ロータリーフレームに乗った土を除去する作業が必要になったり、圃場の砕土性が低下してしまったりする不具合が生じる。
【0005】
本発明の課題の一つは、作業ロータの前方に複数のディスクを配置した農作業機において、ディスクによって後方に跳ね上げられた土が耕耘作業部の上方に到達してしまうことを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態による農作業機は、回転軸の軸方向に沿って配置された複数の耕耘爪を含む作業ロータと、前記作業ロータの上方に、当該作業ロータに沿うように配置されたカバー部材と、前記作業ロータの前方に配置され、それぞれ回転可能に支持された複数のディスクを含むディスクユニットと、平面視において、前記カバー部材の前方に配置された補助カバーと、を備え、前記補助カバーの少なくとも一部は、側面視において、圃場に対して略垂直であって前記ディスクと前記作業ロータとの間において前記ディスクの回転軌跡に接する第1接線よりも後方であって、前記カバー部材の前端を通り前記ディスクと前記作業ロータとの間において前記ディスクの回転軌跡に接する第2接線よりも上方の領域に位置する。
【0007】
前記カバー部材は、弾性カバーであってもよい。この場合、前記補助カバーは、前記弾性カバーの上方に位置するシールドカバーの一部、又は、前記シールドカバーに接続された部材であってもよい。
【0008】
前記カバー部材は、シールドカバーであってもよい。この場合、前記補助カバーは、前記シールドカバーの下方に位置する弾性カバーの一部であってもよい。
【0009】
前記補助カバーは、前記ディスクユニットに取り付けられていてもよい。
【0010】
前記補助カバーは、前記第1接線から前記第2接線にかけて設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態によれば、作業ロータの前方に複数のディスクを配置した農作業機において、ディスクによって後方に跳ね上げられた土が耕耘作業部の上方に到達してしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態における農作業機の外観を示す図であり、(A)は、外観斜視図、(B)は、正面図である。
【
図2】第1実施形態における農作業機の外観を示す図であり、(A)は、下面図、(B)は、左側面図である。
【
図3】第1実施形態における農作業機を左側方から見た側面図である。
【
図4】第2実施形態における農作業機を左側方から見た側面図である。
【
図5】第3実施形態における農作業機を左側方から見た側面図である。
【
図6】第4実施形態における農作業機を左側方から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の農作業機の実施形態について説明する。但し、本発明の農作業機は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0014】
本願の明細書及び特許請求の範囲において、「上」は圃場から略垂直に遠ざかる方向を示し、「下」は圃場に向かって略垂直に近づく方向を示す。「前」は農作業機が進行する方向を示し、「後」は前とは反対の方向を示す。「左」は農作業機が進行する方向に向かったときの左を示し、「右」は左とは反対の方向を示す。
【0015】
<第1実施形態>
(農作業機の構成)
本実施形態の農作業機100の構成について説明する。本実施形態では、農作業機100として、トラクタ等の走行機体の後部に装着され、走行機体に牽引されて圃場を耕耘するロータリーハローを例示する。
【0016】
図1及び
図2は、第1実施形態の農作業機100の外観の構成を示す図である。具体的には、
図1(A)は、農作業機100を前方左斜め上方から見た斜視図であり、
図1(B)は、農作業機100を正面から見た正面図である。また、
図2(A)は、農作業機100を下方から見た下面図であり、
図2(B)は、農作業機100を左側方から見た側面図である。なお、
図1及び
図2は、本実施形態の農作業機100の概略の構成を示すものであり、説明の便宜上、一部の部品の図示を省略している場合がある。
【0017】
本実施形態の農作業機100は、大別して、装着部10、耕耘作業部20、ディスクユニット30、及び鎮圧作業部40を含む。以下、各部について説明する。
【0018】
装着部10は、トップマスト110及びロアリンク連結部115を含む。トップマスト110及びロアリンク連結部115は、トラクタ等の走行機体(図示せず)に農作業機100を装着するための連結機構として機能する。本実施形態の農作業機100において、トップマスト110及びロアリンク連結部115をまとめてフロントヒッチと呼ぶ場合がある。フロントヒッチは、トップマスト110の頂部に設けられた支持部と、ロアリンク連結部115の左右両サイドに設けられた2つの支持部とで走行機体と接続される。
【0019】
トップマスト110及びロアリンク連結部115は、図示しない走行機体のトップリンク及び左右二箇所に設けられたロアリンク(すなわち、3点リンクヒッチ機構)にそれぞれ連結される。装着部10により農作業機100が走行機体に装着されると、入力軸117から動力を入力することが可能となる。入力軸117は、PIC(Power Input Connection)軸とも呼ばれ、走行機体から動力を伝達するインターフェースとして機能する。入力軸117は走行機体のPTO(Power Take Off)軸とユニバーサルジョイント等で連結される。なお、農作業機100と走行機体との連結は、オートヒッチフレームを介して行われてもよい。
【0020】
耕耘作業部20は、第1メインフレーム210に支持された作業ロータ220、作業ロータ220の上方に位置するシールドカバー230、作業ロータ220とシールドカバー230との間に作業ロータに沿うように配置された弾性カバー235、作業ロータ220の後方に位置する整地部材240、整地部材240を圃場に対して押し付けるように作用する加圧部材250、及び作業ロータ220に動力を伝達するチェーン駆動部260を含む。作業ロータ220は、回転軸222及び該回転軸222の軸方向に沿って配置された複数の耕耘爪224を含む。
【0021】
上述の入力軸117から入力された動力は、第1メインフレーム210の内部に配置された動力伝達軸(図示せず)を介してチェーン駆動部260に伝達され、さらに作業ロータ220の回転軸222に伝達される。チェーン駆動部260は、チェーンケースの内部にチェーン及びスプロケットを有し、上述の動力伝達軸と回転軸222とを連結する。動力が回転軸222に伝達されることにより、回転軸222と共に複数の耕耘爪224が回転する。このように、作業ロータ220が回転することにより複数の耕耘爪224が圃場に作用し、圃場の耕耘作業が行われる。
【0022】
ディスクユニット30は、第2メインフレーム310、ディスク支持部320、ディスクアーム330、及びディスク340を含む。第2メインフレーム310には、2組4つのディスク支持部320が固定されており、各ディスク支持部320には、ディスクアーム330を介して複数のディスク340が支持されている。本実施形態では、1つのディスク支持部320に対して2つのディスク340を設けた例を示すが、これに限らず、1つだけディスク340を支持してもよいし、3つ以上のディスク340を支持してもよい。
【0023】
各ディスク340は、ディスク支持部320に固定されたディスクアーム330によってそれぞれ回転可能に支持される。本実施形態において、ディスクアーム330は、湾曲部(又は屈曲部)を有する板状部材である。なお、
図1(B)では、複数のディスク340は、それぞれの凹曲面341が斜め上方を向くように支持されているが、ディスク340の向きはこれに限定されず、複数のディスク340の凹曲面341が(略)水平を向くように、複数のディスク340を支持させることも可能である。
【0024】
本実施形態のように、複数のディスク340を進行方向に対して斜めに支持することにより、個々のディスク340が、圃場をより広い範囲で掘削することができ、ディスクユニット30の砕土性能が向上する。また、複数のディスク340の凹曲面341が斜め上
方を向いているため、複数のディスク340のそれぞれに土の放擲を行わせることができる。
【0025】
また、本実施形態では、複数のディスク340による土の放擲方向を制御することにより、圃場の均平性能も向上させている。例えば、
図2(A)に示すように、複数のディスク340は、凹曲面341がディスクユニット30の中心方向(内側)を向くディスク(以下「内側ディスク340a」という。)と、その逆の方向(外側)を向くディスク(以下「外側ディスク340b」という。)と、を含む。内側ディスク340aは、土を内側に向かって放擲し、外側ディスク340bは、土を外側に向かって放擲する。これにより、ディスクユニット30の作業時における土の移動が内側と外側とに平均化され、ディスクユニット30全体として圃場の均平性が向上する。
【0026】
鎮圧作業部40は、カゴ用ブラケット410、ローラアーム420、角度調整機構430、カゴローラ440、スクレーパ用ブラケット450、及びスクレーパ460を含む。カゴ用ブラケット410は、第1メインフレーム210に固定された左右一対(2つの)部材であり、後方に配置されるカゴローラ440を両持ち支持するためのブラケットである。各カゴ用ブラケット410には、ローラアーム420の一端が回転可能に固定され、ローラアーム420の他端にはカゴローラ440が回転可能に支持されている。カゴ用ブラケット410に対するローラアーム420の角度は、両者の間に架け渡されたねじ式の角度調整機構430により調整可能である。そして、角度調整機構430による調整でカゴローラ440の高さ位置を調整して、作業ロータ220の耕深を調整することができるようになっている。
【0027】
カゴローラ440は、リング状の複数の支持部材440aに対して複数のバー440bが架設された構造を有し、ローラアーム420に対して回転可能に支持される。本実施形態の農作業機100では、走行機体の走行に伴って前方に進行すると、整地部材240の後方に配置されたカゴローラ440が、耕耘作業部20の通過した後を回転しながら進行する。その際、複数のバー440bが、耕耘作業部20によって耕耘された圃場の土塊を砕土及び鎮圧する構成となっている。スクレーパ460は、ゴム等の弾性部材がカゴローラ440に接するように配置されており、鎮圧作業の際に、カゴローラ440に付着した土を落とす役割を果たす。なお、左右方向において、カゴローラ440の幅をディスクユニット30及び耕耘作業部20のうちより耕耘幅が大きい方の耕耘幅(本実施形態ではディスクユニット30の耕耘幅)よりも大きく構成することが好ましい。
【0028】
また、本実施形態において、カゴローラ440は、農作業機100を高速で耕耘作業させる際の安定性を確保する役割も有している。すなわち、農作業機100で耕深の浅い作業を行う場合において、(走行機体と)カゴローラ440で作業ロータ220を支えることができるため、農作業機100で高速に耕耘作業を行った場合でも、カゴローラ440が無い場合に比べて、より耕耘作業時の安定性を確保することができる。なお、本実施形態では、鎮圧用回転体の一例としてカゴローラ440を例示したが、この例に限らず、鎮圧ローラなど回転して圃場を鎮圧できる機能を有していれば、他の鎮圧用回転体を用いてもよい。
【0029】
以上説明した本実施形態の農作業機100には、ディスクユニット30と耕耘作業部20との間に、補助カバーが設けられている。これにより、ディスク340によって後方に跳ね上げられた土が耕耘作業部20(具体的には、シールドカバー230)の上方に到達してしまう不具合を防ぐことができる。その点について、以下に説明する。
【0030】
(カバー部材の構成)
図3は、第1実施形態における農作業機100を左側方から見た側面図である。具体的
には、農作業機100が非作業状態にあり、整地部材240が最下げ位置(自重により最も下がった位置)にある状態を示している。また、
図3では、ディスク340の回転軌跡345及び作業ロータ220の回転軌跡225を示している。ここで「回転軌跡」とは、例えば、ディスク340又は作業ロータ220が回転した際に、その軌跡の外縁を指す。なお、
図3において、
図1及び
図2を用いて説明した部位については、同じ符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0031】
図3に示されるように、作業ロータ220とシールドカバー230との間には、当該作業ロータ22に沿うように弾性カバー235が設けられている。弾性カバー235は、例えば硬質ゴム等の材料で構成された板状部材であり、シールドカバー230の内側(作業ロータ220側)にボルト等の固定手段により取り付けてある。本実施形態の作業ロータ220は、
図3の矢印で示すように、ダウンカット方向に回転するため、作業ロータ220の上方から前方に向かって飛散する土が存在する。この前方に向かって飛散する土は、ディスク340によって後方に放擲される土とぶつかり合い、土の流動性を悪化させるおそれがある。また、前方に飛散する土がディスクアーム330に溜まってくると、ディスク340の作業効率を損なうおそれも生じる。したがって、本実施形態では、弾性カバー235を、作業ロータ220に沿うように(つまり、作業ロータ220の回転軌跡225に沿うように)作業ロータの前側上方に配置することにより、前方への土の飛散を抑え、均平性を損なわないよう構成されている。ここで、「作業ロータ220に沿うように」とは、円弧状に湾曲した形状のみを意味しているのではなく、作業ロータ220の回転軌跡225に対応した形状であれば直線形状も含まれる。なお、本実施形態において、シールドカバー230及び弾性カバー235は、いずれも作業ロータ220の上方に位置する「カバー部材」の一例である。
【0032】
通常、ディスク340は、矢印の方向に回転するため、ディスク340の回転によって跳ね上げられた土は、放物線を描いて後方に飛ぶ。実際には、農作業機100が前方に向かって所定の速度で走行しているため、後方に跳ね上げられた土のほとんどが作業ロータ220の回転範囲内に向かう。しかしながら、一定の高さを越えて高く跳ね上げられた一部の土は、作業ロータ220に向かうことなく、耕耘作業部20のカバー部材の上方に乗ってしまう場合があり得る。つまり、跳ね上げられた土が、耕耘作業部20の通過時点でシールドカバー230よりも上方にあると、そのままシールドカバー230の上に乗ってしまうことが起こり得る。
【0033】
ここで、
図3において、第1接線51及び第2接線52を定義する。第1接線51は、圃場50に対して略垂直であってディスク340と作業ロータ220との間においてディスク340の回転軌跡345に接する接線である。第2接線52は、作業ロータ220に沿うように配置されたカバー部材(
図3の例では、弾性カバー235)の前端を通りディスク340と作業ロータ220との間においてディスク340の回転軌跡345に接する接線である。
図3に示されるように、これらの第1接線51と第2接線52とは角度θで互いに交差する。なお、この角度θの値は、ディスク340と作業ロータ220との間の距離によって変化する。
【0034】
このとき、第1接線51よりも後方であって、第2接線52よりも上方の領域53は、ディスク340によって後方に跳ね上げられた土がシールドカバー230の上方に到達し得る領域である。換言すれば、この領域53の範囲内でシールドカバー230よりも上方に向かう土を遮蔽すれば、シールドカバー230の高さを越える土を減らすことができる。そこで、本実施形態では、
図3に示す領域53、すなわちカバー部材である弾性カバー235の前方に補助カバー55を設けることにより、ディスク340が跳ね上げた土を遮蔽する構成としている。本実施形態では、補助カバー55が、シールドカバー230の一部(具体的には、シールドカバー230の前端部)に接続された部材で構成された例を示
している。この補助カバー55を構成する部材は、板状の部材を折り曲げて形成され、その前端及び後端は、シールドカバー230の裏側(作業ロータ220側)で溶接されている。これにより、補助カバー55を構成する部材は、シールドカバー230の前側部分と共に中空部分を形成している。また、補助カバー55を構成する部材の後端部分は、側面視において、作業ロータ220に沿うような直線形状に構成されており、弾性カバー235の前縁部が固定されている。
【0035】
本実施形態の場合、第2接線52よりも下方に飛んだ土は、作業ロータ220に向かって飛ぶ(もしくは、作業ロータ220に届く前に圃場に落ちる)ため、作業ロータ220によって砕土されて圃場に戻る。領域53の範囲内に向かって飛んだ土は、シールドカバー230を越える前にほとんどが補助カバー55に当たって落ちるか、作業ロータ220に向かう。仮に、ほぼ真上(すなわち、第1接線51に近い方向)に向かって飛んだとしても、農作業機100を基準とすれば、相対的には後方に飛ぶのと同じであるため、ほとんどが第2メインフレーム310に当たるか、補助カバー55に当たる。第1接線51よりも前方に向かって飛ぶ土は、可能性はゼロではないが非常に少なく、また、ディスク支持部320に当たるか、耕耘作業部20が到達する前に圃場に落ちるかして圃場に戻ると考えられる。
【0036】
以上のように、本実施形態の農作業機100は、上述の第1接線51よりも後方であって第2接線52よりも上方の領域53の範囲内に、補助カバー55の少なくとも一部が配置された構成となっている。これにより、ディスク340によって跳ね上げられた土のほとんどを耕耘作業部20で砕土することが可能となり、シールドカバー230の上に土が乗ったり、耕耘作業部20を越えて砕土されないまま圃場に土が落ちたりする不具合を抑制することができる。
【0037】
<第2実施形態>
本実施形態では、補助カバーの構成を第1実施形態とは異なるものとした例について説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態と異なる点に着目して説明を行い、第1実施形態と同じ部位については、同じ符号を用いて説明を省略する。
【0038】
図4は、第2実施形態における農作業機100aを左側方から見た側面図である。本実施形態の農作業機100aは、弾性カバー235の一部(具体的には、弾性カバー235の先端部)が補助カバー55aを構成している。つまり、本実施形態では、カバー部材であるシールドカバー230の前端より突出するように、弾性カバー235の少なくとも一部が前方に向かって延在し、補助カバー55aとして機能する。
【0039】
本実施形態の場合、第1接線51は、第1実施形態と同じ接線である。他方、第2接線52は、カバー部材(
図4の例では、シールドカバー230)の前端を通りディスク340と作業ロータ220との間においてディスク340の回転軌跡345に接する接線である。農作業機100aでは、これらの第1接線51と第2接線52とが交差して形成される領域53に、補助カバー55aの少なくとも一部が延在している。
【0040】
このように、本実施形態の農作業機100aは、第1接線51よりも後方であって第2接線52よりも上方の領域53の範囲内に、弾性カバー235の一部で構成された補助カバー55aを有する。これにより、ディスク340によって跳ね上げられた土のほとんどを耕耘作業部20で砕土することが可能となり、シールドカバー230の上に土が乗ったり、耕耘作業部20を越えて砕土されないまま圃場に土が落ちたりする不具合を抑制することができる。
【0041】
なお、本実施形態では、補助カバー55aの先端が領域53の範囲内に収まるように構
成されているが、この例に限られるものではない。例えば、補助カバー55aの先端が、第1接線51を越えてディスク340側に到達していてもよい。また、本実施形態では、補助カバー55aの先端は自由端として構成されているが、補助カバー55aの先端をディスクユニット30の第2メインフレーム31に固定する構成としてもよい。この場合、補助カバー55aが、第1接線51から第2接線52に渡って設けられるため、より効率的に土の上方への飛散を防ぐことができる。
【0042】
<第3実施形態>
本実施形態では、補助カバーの構成を第1実施形態とは異なるものとした例について説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態と異なる点に着目して説明を行い、第1実施形態と同じ部位については、同じ符号を用いて説明を省略する。
【0043】
図5は、第3実施形態における農作業機100bを左側方から見た側面図である。本実施形態の農作業機100bは、シールドカバー230及び弾性カバー235とは別に補助カバー55bを設けている。具体的には、本実施形態では、シールドカバー230の前端に対し、領域53に向かって突出するように補助カバー55bが取り付けられている。補助カバー55bとしては、例えば、ステンレス鋼等の金属材料で構成された部材又は硬質ゴム等の樹脂材料で構成された部材を用いることができるが、これらの部材に限られるものではない。
【0044】
本実施形態の場合、第1接線51及び第2接線52は、第1実施形態と同じ接線である。農作業機100bでは、これらの第1接線51と第2接線52とが交差して形成される領域53に、補助カバー55bの少なくとも一部が延在している。
【0045】
このように、本実施形態の農作業機100bは、第1接線51よりも後方であって第2接線52よりも上方の領域53の範囲内に、シールドカバー230及び弾性カバー235とは別の部材で構成された補助カバー55bを有する。これにより、ディスク340によって跳ね上げられた土のほとんどを耕耘作業部20で砕土することが可能となり、シールドカバー230の上に土が乗ったり、耕耘作業部20を越えて砕土されないまま圃場に土が落ちたりする不具合を抑制することができる。
【0046】
なお、本実施形態では、補助カバー55bの先端が領域53の範囲内に収まるように構成されているが、補助カバー55bの先端は、第1接線51を越えてディスク340側に到達していてもよい。
【0047】
<第4実施形態>
本実施形態では、補助カバーの構成を第1実施形態とは異なるものとした例について説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態と異なる点に着目して説明を行い、第1実施形態と同じ部位については、同じ符号を用いて説明を省略する。
【0048】
図6は、第4実施形態における農作業機100cを左側方から見た側面図である。本実施形態の農作業機100cは、シールドカバー230及び弾性カバー235とは別に補助カバー55cが設けられている。具体的には、本実施形態では、ディスクユニット30の一部である第2メインフレーム310に対し、領域53に向かって突出するように補助カバー55cの少なくとも一部が取り付けられている。本実施形態では、補助カバー55cとして硬質ゴム等の樹脂材料で構成された部材を用いるが、これに限られるものではなく、ステンレス鋼等の金属材料で構成された部材を用いてもよい。
【0049】
本実施形態の場合、第1接線51及び第2接線52は、第1実施形態と同じ接線である。農作業機100cでは、これらの第1接線51と第2接線52とが交差して形成される
領域53、すなわちカバー部材であるシールドカバー230又は弾性カバー235の前方に、補助カバー55cの少なくとも一部が延在している。また、本実施形態では、補助カバー55cの先端が、第2接線52を越えて作業ロータ220側に到達している。つまり、補助カバー55cが、第1接線51から第2接線52に渡って設けられているため、より効率的に土の上方への飛散を防ぐことができる。
【0050】
このように、本実施形態の農作業機100cは、第1接線51よりも後方であって第2接線52よりも上方の領域53の範囲内に、第2メインフレーム310に取り付けられた補助カバー55cを有する。これにより、ディスク340によって跳ね上げられた土のほとんどを耕耘作業部20で砕土することが可能となり、シールドカバー230の上に土が乗ったり、耕耘作業部20を越えて砕土されないまま圃場に土が落ちたりする不具合を抑制することができる。
【0051】
なお、本実施形態では、第2メインフレーム310に補助カバー55cを取り付ける例を示したが、この例に限らず、ディスク支持部320その他の耕耘作業部20より前方に位置する部材に取り付けられていてもよい。
【0052】
以上、本発明について図面を参照しながら説明したが、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
10…装着部、20…耕耘作業部、30…ディスクユニット、40…鎮圧作業部、50…圃場、51…第1接線、52…第2接線、53…領域、55、55a~55c…補助カバー、100、100a~100c…農作業機、110…トップマスト、115…ロアリンク連結部、117…入力軸、210…第1メインフレーム、220…作業ロータ、222…回転軸、224…耕耘爪、225…作業ロータの回転軌跡、230…シールドカバー、235…弾性カバー、240…整地部材、240b…第1作用部、240c…第2作用部、250…加圧部材、260…チェーン駆動部、310…第2メインフレーム、320…ディスク支持部、330…ディスクアーム、340…ディスク、340a…内側ディスク、340b…外側ディスク、341…凹曲面、345…ディスクの回転軌跡、410…カゴ用ブラケット、420…ローラアーム、430…角度調整機構、440…カゴローラ、440a…支持部材、440b…バー、450…スクレーパ用ブラケット、460…スクレーパ