(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168587
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】増大した薬剤負荷および接着のためのナノ構造化ゲルの製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 9/06 20060101AFI20231116BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20231116BHJP
A61K 31/167 20060101ALI20231116BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231116BHJP
A61P 23/00 20060101ALI20231116BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20231116BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20231116BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20231116BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20231116BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20231116BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20231116BHJP
A61L 15/60 20060101ALI20231116BHJP
A61L 15/44 20060101ALI20231116BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
A61K9/06
A61K47/02
A61K31/167
A61K45/00
A61P23/00
A61K47/22
A61K47/14
A61K9/14
A61K9/70
A61K47/10
A61K47/26
A61L15/60 100
A61L15/44 100
A61K47/20
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023173522
(22)【出願日】2023-10-05
(62)【分割の表示】P 2023014533の分割
【原出願日】2018-05-08
(31)【優先権主張番号】62/502,872
(32)【優先日】2017-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519396429
【氏名又は名称】アリヴィオ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】デレク ジー. ヴァン デル ポル
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク ジェイ. ブラシオリ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー ティー. ズゲイツ
(57)【要約】
【課題】増大した薬剤負荷および接着のためのナノ構造化ゲルの製剤の提供。
【解決手段】広範な薬剤、特に、封入することが困難であることが公知の局所麻酔剤などのアミン含有化合物を高度に負荷し(例えば、約5%wt/wt薬剤/総ゲル重量と約50%wt/wt薬剤/総ゲル重量との間)、荷電表面に接着するゲル製剤を開発した。薬学的に重要なアミンの例には、リドカインなどの麻酔薬が含まれる。ヒドロゲル組成物の調製、懸濁、および透析精製中に水性媒体のイオン強度を調整することにより、薬剤負荷量を保持および/または制御し、炎症性組織を模倣する荷電表面への接着能力を高めることが可能である。いくつかの例では、形成されたゲルにチキソトロープ性を付与することなどのために、ゲルの流動学的性質を調整することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本願は、全般的に、低分子量の自己集合ナノ構造体を使用する薬物送達製剤の分野のものである。
【0002】
関連出願の相互参照
本願は、2017年5月8日に出願された米国仮特許出願第62/502,872号の利益および優先権を主張し、これにより、この米国仮特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
全身毒性を最小にしながら薬物の局所濃度を高くする手段のうちで推奨されるものの1つは、薬物を制御放出または徐放させるゲルなどのデポー剤に薬物を製剤化することである。しかし、in vivoでの投与直後に大部分がバースト放出されることなくゲル中に高レベルの薬物を封入することは困難である。薬剤の親水性/疎水性およびゲルマトリックスとのその非共有結合性相互作用などの要因は、封入効率および負荷投薬量に大きな影響を及ぼす。薬物負荷されたゲルマトリックス、特に、ゲル化剤と薬物の作用因子との間の集合から形成されたものを調製するために、水性溶媒と有機溶媒(例えば、水とジメチルスルホキシドまたは水とアルコール)との両方を含む共溶媒系が利用されてきた。例えば、(米国特許出願公開第20130280334号および同第20110229565号を参照のこと。しかし、親水性分子を、これらの共溶媒系に効率的に封入できない。電荷を有する分子(例えば、局所麻酔薬中の第三級アミン)は、ゲルマトリックスの製剤におけるpHおよび電荷-電荷相互作用に影響を及ぼす。さらに、ヒドロゲルまたはオルガノゲルのデポー薬は、しばしば、標的リガンドまたは接着性リガンドを添加して改変しない限り、炎症性組織部位に対する親和性が制限されている。
【0004】
いくつかの薬物は、全身性の副作用を示す。例えば、局所麻酔薬は、筋毒性および神経毒性を引き起こし得る(Paderaら,Anesthesiology,108(5):921-928(2008);Pereら,Reg Anesth,18(5):304-307(1993);Zimmerら,Anaesthesist,56(5):449-453(2007);Yamashitaら,Anesth Analg,97(2):512-519(2003))。薬剤が親水性であり、初期の急速放出または浸出が全身毒性を引き起こし得るので、有効量の強力な局所麻酔薬を親水性ゲルマトリックス中に封入することは非常に困難である(Barnetら,Anesth Analg,101(6):1838-1843(2005);Kohaneら,Anesthesiology,89(1):119-131(1998))。
【0005】
したがって、本発明の目的は、封入が困難な薬剤が高く負荷され、かつ製剤化中および製剤化後のプロセス(ゲルの懸濁および精製など)中の浸出が最小限の自己集合したヒドロゲル製剤を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、ゲルの流動学的性質を調整可能な自己集合したヒドロゲル製剤を提供することである。
【0007】
本発明のさらに別の目的は、服薬効率および接着特異性が増大した、大量の薬剤を炎症部位に送達させるための製剤および方法を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0280334号
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/0229565号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Paderaら,Anesthesiology,108(5):921-928(2008)
【非特許文献2】Pereら,Reg Anesth,18(5):304-307(1993)
【非特許文献3】Zimmerら,Anaesthesist,56(5):449-453(2007)
【非特許文献4】Yamashitaら,Anesth Analg,97(2):512-519(2003)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
ヒドロゲル製剤中に封入することが困難であることが公知の局所麻酔剤などの広範なアミン含有化合物を高度に負荷し(例えば、約5%wt/wt薬剤/総ゲル重量と約30%wt/wt薬剤/総ゲル重量との間)、荷電表面に接着するゲル製剤を開発した。アミン含有化合物は、第一級、第二級、第三級、および/または第四級アミンを有し得る。薬学的に重要なアミンの例には、麻酔薬および抗感染薬が含まれる。好ましい実施形態では、薬剤は、リドカイン、プロカイン、テトラカイン、ジブカイン、ベンゾカイン、ブピバカイン、またはそれらの塩(塩酸リドカイン、塩酸プロカイン、塩酸テトラカイン、塩酸ジブカイン、塩酸ベンゾカイン、または塩酸ブピバカインなど)などの局所麻酔薬である。
【0011】
ゲルは、一般に安全と認められる(GRAS)両親媒性ゲル化剤およびゲル中に封入される1つまたはそれより多くの治療剤、予防剤、または診断剤の自己集合および/または非共有結合性相互作用から形成される。いくつかの形態では、ゲル化剤は、2,500またはそれ未満の分子量を有し、アスコルビルアルカノアート、ソルビタンアルカノアート、トリグリセロールモノアルカノアート、またはスクロースアルカノアートである。自己集合したゲルは、塩(例えば、0Mおよび0.15M、その間、またはそれを超えるNaCl;または10mMと500mMとの間)を含む液体媒体(蒸留水、脱イオン水、純水もしくは超純水、食塩水、または他の生理学的に許容され得る水溶液など)、または有機溶媒および水(または塩の水溶液)を含む2溶媒系中に形成される。例示的な有機溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、アセトン、エタノール、ジオキサン、アセトニトリル、トルエン、テトラヒドロフラン、イソブチルアルコール、37℃で液体である低分子量(例えば、1kDa)のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、およびジプロピレングリコールである。
【0012】
一般に、有機溶媒は、1つまたはそれより多くのゲル化剤と混合し、少なくとも部分的に溶解する。疎水性または親水性に依存して、アミン含有化合物を、共溶媒混合物または水溶液に溶解することができ、次いで、有機溶媒中のゲル化剤に添加する。第1の実施形態では、薬剤を、水(または水性緩衝液もしくは塩の水溶液)および水混和性有機溶媒の両方を含む共溶媒の媒体に溶解したゲル化剤に添加し、これらを混合し、必要に応じて加熱して確実に完全に溶解させる。実施例で証明された第2の実施形態では、ゲル化剤を最初に有機溶媒に溶解して、溶質としてゲル化剤を有する溶液(「ゲル化剤溶液」と名付ける)を形成させる。次いで、薬剤(例えば、遊離塩基リドカイン)を、ゲル化剤溶液に溶解する。次いで、水溶液(純水または水性緩衝液もしくは塩の水溶液など)を、薬物-ゲル化剤溶液と混合してゲル溶液を形成する。液体(有機+水/水溶液)の総量中の有機溶媒の量は、一般に、50%以下である。必要とあれば、ゲル溶液を加熱して完全な溶解を確実にし、次いで、冷却して室温(25℃)または体温(37℃)での倒置に対して安定なゲルを形成する。薬剤を、ゲル中の最終濃度が約4wt/%と25wt/%との間になるまで添加する。有機溶媒の量は、一般に、有機溶媒および水(または水溶液)を組み合わせた量の約5体積%~約50体積%である。より高い%の量の有機溶媒がゲル化剤溶液中に存在したとしても、自己集合したゲル中の有機溶媒の大部分を、透析、遠心分離、および濾過などの精製技術で除去し、媒体と置換することができる。
【0013】
塩の水溶液または水性の緩衝液は、薬剤(すなわち、薬物)負荷を増加させることができる。例えば、両親媒性ゲル化剤をDMSOに溶解し、次いで、生理学的イオン強度でリン酸緩衝食塩水(PBS)を添加することにより、水と比較して、得られた自己集合したゲル中のアミン含有化合物の負荷が増加する。実施例で証明されるように、PBSを含めることにより、DMSO-PBS系で形成されたゲル中のアミン含有薬剤(リドカインまたは塩酸リドカインなど)の負荷が少なくとも4重量%、6重量%、8重量%、10重量%、15重量%、または18重量%、またはそれを超える重量%に増加したのに対して、超純水または実質的に塩を含まない水では、DMSO-水系で0.5重量%、1重量%、2重量%、または3重量%未満のリドカインまたはその塩が封入されたゲルが形成された。
【0014】
いくつかの例では、水性の緩衝液への塩(複数可)の添加などによってゲルの形成中に塩(複数可)を含めることを、ゲルの流動学的性質を調整する(チキソトロピーを付与することなど)ために使用することができる。例えば、有機溶媒(DMSOなど)への両親媒性ゲル化剤の溶解および1つまたはそれより多くの塩を含むリン酸緩衝食塩水(PBS)の添加により、水またはさらなる塩(複数可)を使用しない緩衝液と比較して、自己集合したゲルにチキソトロープ性が付与される。ゲルの流動学的性質を調整するために添加することができる塩の例には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、または亜鉛イオンを提供することができる任意の適切な塩を使用することができる。いくつかの例では、塩(複数可)を、ゲル形成中に添加する。いくつかの他の例では、塩(複数可)を、ゲル形成後(処理後工程中など)に添加する。
【0015】
いくつかの例では、有機溶媒(複数可)をゲルの形成中に含めることまたはゲル形成後(処理後工程中など)に添加することを、ゲルの流動学的性質を調整する(チキソトロピーを付与することなど)ために使用することができる。ゲルの流動学的性質を調整するために単独または既に溶解した塩(複数可)と組み合わせて使用することができる有機溶媒の例には、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、t-ブタノールなど)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの他の例では、本明細書中に記載の有機溶媒(複数可)を、ゲル形成の一部として添加するか、緩衝液(複数可)(リン酸緩衝液など)に添加することができ、調製されたゲルを再度懸濁させて、ゲル中に有機溶媒(複数可)が存在するゲルを得ることができる。
【0016】
いくつかの例では、塩(複数可)と有機溶媒(複数可)との組み合わせを使用して、ゲルの流動学的性質を調整すること(チキソトロピーを付与することなど)ができる。塩(複数可)および/または溶媒(複数可)を含めることにより、ゲル製剤中のゲル化剤(アスコルビルパルミタートなど)または薬剤(リドカインなど)の濃度を変化させることなく、流動学的性質を制御または調整することができることを証明している。局所投与される治療薬の粘度および流動学は問題の組織への治療薬の配置に影響を及ぼし得るので、流動学的性質の制御は重要な発明である。
【0017】
いくつかの例では、ゲルを、いかなるさらなる塩および/または有機溶媒を用いずに形成することができるか、その流動学的性質を、塩および/または有機溶媒(複数可)(ゲル形成中またはゲル形成後のいずれかでの)の添加によって調整することができる。記載のゲルは、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1、約2、約3、約4、または約5パスカルから、約50、約75、約100、約150、約200、約250、もしくは約300まで、または本明細書中に開示の上端点と下端点との任意の組み合わせの貯蔵弾性率(G’)を有するか、有するように調整することができる。
【0018】
いくつかの例では、ゲルを、いかなるさらなる塩および/または有機溶媒を用いずに形成することができるか、その流動学的性質を、塩および/または有機溶媒(複数可)(ゲル形成中またはゲル形成後のいずれかでの)の添加によって調整することができる。記載のゲルは、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1、約2、約3、約4、または約5パスカルから、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、または約300パスカルまで、または本明細書中に開示の上端点と下端点との任意の組み合わせの損失弾性率(G’’)を有するか、有するように調整することができる。
【0019】
いくつかの例では、(ゲル形成中またはゲル形成後のいずれかでの)塩および/または有機溶媒(複数可)の添加または無添加によって形成されたゲルの粘度は、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1、約2、約3、約4、もしくは約5センチポアズ(cP)から、約10、約100、約200、約300、約400、約500、約600、約700、約800、約900、約1,000、約1,100、約1,200、約1,300、約1,400、約1,500、約1,600、約1,700、約1,800、約1,900、約2,000、約2,500、もしくは約3000cPまでの間の範囲、または本明細書中に開示の上端点と下端点との任意の組み合わせであり得る。いくつかの例では、(ゲル形成中またはゲル形成後のいずれかでの)塩および/または有機溶媒(複数可)の添加によって形成されたゲルは、例えば、曝露の際にゲルの粘度が変化して剪断されるようなチキソトロープ性を示す。
【0020】
2溶媒系で(例えば、DMSO-PBS系で)ゲルを形成するいくつかの実施形態では、塩水溶液と比較した有機溶媒の比率の増加により、アミン含有薬剤の負荷および封入の効率が増大する。有機溶媒(例えば、DMSO)の塩水溶液(例えば、リン酸緩衝食塩水)に対する体積比を1:4から1:1に増加させることにより、自己集合したゲル中の薬剤負荷(リドカイン負荷など)が増大する。
【0021】
両親媒性ゲル化剤を最初に有機溶媒(メタノールなど)に溶解する他の実施形態では、加熱および冷却の際のゲル化のためにメタノール溶液に添加するための水相中の塩の量を増加させることにより、薬剤の負荷および封入の百分率が減少する。
【0022】
ゲル製剤を、例えば、透析、遠心分離、および/または濾過(例えば、タンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF))を使用して、溶媒、溶媒夾雑物、過剰な薬剤(すなわち、薬物または遊離薬物)を除去するようにさらに処理することができる。好ましい実施形態では、溶媒残渣を、出発レベルの1%、3%、5%、または10%未満まで、または、米国薬局方協会のハーモナイゼーション国際会議ガイダンスまたは米国食品医薬品局による残留溶媒の合格基準未満まで除去する。いくつかの形態では、0から0.15M未満までの塩を含む水性媒体における透析またはTFFにより、0.15Mまたはそれを超える量の塩を有する水性媒体における透析と比較して、効果的により大量の薬剤(すなわち、薬物)が保持され、ヒドロゲル中の薬剤の高負荷が維持される。
【0023】
均一な、均質な、および倒置に対して安定な自己支持ゲルの形成後、ゲルを薬学的に許容され得るキャリア中に懸濁させるかまたは該キャリア中で精製して、投与に望ましい体積にすることができる。薬物負荷されたゲルの懸濁のための媒体としての低濃度の(例えば、0.15M未満)塩を有する水または水性媒体は、懸濁前のヒドロゲル組成物と比較して、少なくとも80%、85%、90%、95%、または約100%までの薬剤を高負荷量で含有し続ける;それに対して、約0.15Mの塩を含むリン酸緩衝食塩水または水性媒体は、懸濁前と比較して、約65%、70%、75%、または80%の封入薬物量を維持する。ゲル組成物の懸濁によって、投与しやすい(例えば、必要とする患者への飲用または注入による投与しやすい)製剤の望ましい最終体積および/または毒性を制御するのに望ましい薬剤濃度が提供され得る。ゲルを乾燥させるか凍結乾燥させて全ての溶媒を除去し、乾燥形態で投与するか、投与のために再水和することもできる。自己集合したゲルは倒置に安定である(すなわち、周囲温度(例えば、ゲル化剤のクラフト点未満)および周囲圧力で倒置したときに流動しない)にもかかわらず、薬学的に許容され得るキャリア中に懸濁させられたゲルは重力に応じて流動し得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、ゲルを薬学的に許容され得るキャリア中に懸濁させ、次いで、ゲルを分散させるか破壊して繊維または粒子を形成する。分散技術には、撹拌、ボルテックスでの撹拌、ピペット操作、および均質化が含まれる。
【0025】
アミン含有化合物の負荷量が高いゲル製剤(例えば、自己支持ゲル、懸濁媒体中での繊維状ゲル、および精製されたゲル)は、荷電表面(表面上にアミン官能基を有する表面など)に接着する。イオン強度が低いか無い懸濁媒体(例えば、ゼロまたは0.15M未満の塩を含む水性媒体)は、イオン強度が高い媒体(例えば、0.15Mまたはそれを超える塩を有する水溶液)と比較して、ゲル製剤の接着を改善する。いくつかの形態では、水中のゲル製剤は、表面の強い洗浄後、荷電表面に、少なくとも約10、13、15、17、20、もしくは25μgゲル/cm2表面の密度またはそれを超える密度で接着するのに対して、ゲル化剤の濃度は類似しているが、塩濃度がより高いリン酸緩衝食塩水または溶液を用いたゲル製剤は、表面の強い洗浄後、荷電表面に、約5、4、3、2、または1μgゲル/cm2表面より低い密度でしか接着しない。
【0026】
アミン含有化合物(例えば、麻酔剤および必要に応じて抗感染薬および/または抗炎症薬)の負荷が高いゲル組成物を含む荷電表面への接着のための製剤を、患者の局所または全身に投与することができ、このゲル製剤は、炎症性組織または病理学的環境に高酵素活性量で接着して、薬剤が放出されて障害または疾患の1つまたはそれより多くの症状が緩和または処置される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、遠心分離および再懸濁プロセスにおける洗浄数に対して左のY軸に負荷百分率(mgリドカイン/mg総固体[リドカインおよびアスコルビルパルミタート])を示し、右のY軸にリドカイン封入百分率を示す折れ線グラフである。
【0028】
【
図2A】
図2A~2Eは、それぞれ実施例6で調製したヒドロゲル1~5の貯蔵弾性率G’、損失弾性率G’’、および位相角のデータを示すグラフである。
【
図2B】
図2A~2Eは、それぞれ実施例6で調製したヒドロゲル1~5の貯蔵弾性率G’、損失弾性率G’’、および位相角のデータを示すグラフである。
【
図2C】
図2A~2Eは、それぞれ実施例6で調製したヒドロゲル1~5の貯蔵弾性率G’、損失弾性率G’’、および位相角のデータを示すグラフである。
【
図2D】
図2A~2Eは、それぞれ実施例6で調製したヒドロゲル1~5の貯蔵弾性率G’、損失弾性率G’’、および位相角のデータを示すグラフである。
【
図2E】
図2A~2Eは、それぞれ実施例6で調製したヒドロゲル1~5の貯蔵弾性率G’、損失弾性率G’’、および位相角のデータを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明の詳細な説明
I. 定義
用語「負荷」または「薬物負荷(DL)」は、一般に、DL(%)=封入および/または会合した薬物(薬剤)の重量÷薬物(薬剤)およびゲル化剤の総重量×100%として計算される。
【0030】
用語「封入パーセント(%)」または「封入百分率」は、一般に、封入%=封入された薬物(薬剤)の重量÷測定された薬物(薬剤)の総重量(封入+未封入)×100%として計算される。
【0031】
用語「封入効率(EE)」は、一般に、EE(%)=実験上の/測定された薬物(薬剤)負荷÷理論上の薬物(薬剤)負荷×100%として計算される。
【0032】
用語「ゲル化剤」は、1つまたはそれより多くの溶媒中の非共有結合性相互作用(水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、イオン相互作用、π-πスタッキング、またはそれらの組み合わせなど)を介して自己集合可能な分子を指す。ゲル化剤には、ヒドロゲル化剤(例えば、ヒドロゲルを形成するゲル化剤)および有機ゲル化剤(例えば、有機ゲルを形成するゲル化剤)が含まれ得る。いくつかの実施形態では、ゲル化剤は、ヒドロゲルまたは有機ゲルのいずれかを形成することができる。典型的には、ゲル化剤は両親媒性である。
【0033】
用語「自己集合」は、分子が自発的に集合するか、または組織化して、高次構造(適切な環境中でのヒドロゲルまたは有機ゲルなど)を形成する能力を指す。
【0034】
用語「ヒドロゲル」は、共に共有結合(例えば、高分子ヒドロゲル)または非共有結合(例えば、自己集合したヒドロゲル)で保持された分子の三次元(3-D)ネットワークであって、ここで、水が主要な構成要素であるものを指す。ゲルを、ゲル化剤の自己集合またはゲル化剤の化学的架橋を介して形成することができる。水系ゲル化剤を使用して、ヒドロゲルを形成することができる。有機ゲル化剤は、有機溶媒が主な構成要素である溶媒中でゲル(オルガノゲル)を形成するゲル化剤である。
【0035】
用語「有機ゲル」は、共に共有結合(例えば、高分子ヒドロゲル)または非共有結合(例えば、自己集合したヒドロゲル)で保持された分子の3-Dネットワークであって、ここで、有機溶媒が主要な構成要素であるものを指す。ゲルを、ゲル化剤の自己集合またはゲル化剤の化学的架橋を介して形成することができる。
【0036】
用語「治療剤」は、疾患または障害または機能障害の1つまたはそれより多くの症状を防止または処置するために投与することができる薬剤を指す。
【0037】
用語「診断剤」は、一般に、同定または画像化の目的で投与することができる薬剤を指す。
【0038】
用語「予防剤」は、一般に、疾患を防止するために、または妊娠のような一定の状態を防止するために投与することができる薬剤を指す。
【0039】
用語「プロドラッグ」は、in vivoまたはin situでその治療的に活性なまたは利用可能な形態に変換されるまで完全には活性または利用可能ではない、薬物、改変された薬物の薬物前駆体を指す。
【0040】
本明細書中で使用される用語「接着する」は、ゲル組成物が、しばらくの間接触またはインキュベートされた後に表面または物質に密着することを指す。穏やかな洗浄液では、一般に、表面から接着したゲル組成物は除去されない。この穏やかな洗浄液は、ゲル組成物が形成される溶媒または媒体を含む。強力な洗浄液は接着したゲル組成物を表面から除去することができ、ゲル組成物の接着量をこの洗浄液から定量することができる。水性媒体中で形成されたヒドロゲルについて、接着性表面からゲルを除去するための強力な洗浄液は、有機溶媒(例えば、エタノール)を含む。
【0041】
用語「有機溶媒」は、その液相中で固体物質を溶解することができる任意の炭素含有物質を指す。有機化学で一般的に用いられる有機溶媒の例には、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトン、ジクロロメタン、およびヘキサンが含まれる。
【0042】
用語「水混和性」は、あらゆる比率で水と混合されて単一の均一な液相を形成する溶媒を指す。これには、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン、アセトン、エタノール、メタノール、およびジオキサンのような溶媒が含まれるが、一般に、ヘキサン、油類、およびエーテルなどの溶媒は除外される。これには、実際には不混和性と見なされる酢酸エチルおよびジクロロメタンなどの水にいくらかの非常に制限された混和性または溶解性を有する溶媒も排除される。一般に、残部が水または緩衝液である約20重量%および50重量%との間の水混和性有機溶媒を使用してヒドロゲルを作製する。
【0043】
用語「塩」は、一般に、酸の塩基との反応または中和によって形成されたイオン性化合物を指す。例示的な塩には、薬学的に許容され得る小分子(塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸ジナトリウム、およびリン酸一カリウムなどの)が含まれる。この定義には、緩衝塩(例えば、リン酸一ナトリウム、リン酸ジナトリウム)も含まれる。
【0044】
用語「アミン」は、電子の孤立電子対を有する塩基性窒素原子を含む化合物および官能基を指す。これには、第一級アミン(
【化1】
)、第二級アミン(
【化2】
)、第三級アミン(
【化3】
)、環状アミン、および第四級アミンが含まれる。第四級アミンは、通常、第四級アンモニウムカチオン(
【化4】
)である。
【0045】
本明細書中で一般に使用される「流動学」または「流動学的性質」は、ゲルまたは流体などの物質の変形および流れに関する性質を指す。
【0046】
本明細書中で一般に使用される「チキソトロピック」は、剪断に対する時間依存性の応答を示すゲルおよび/または流体の性質を指す。固定した剪断速度に供したとき、ゲルおよび/または流体は経時的に粘度が減少するであろう。しばしば、これは、大きな初期粘度の喪失として観察され、その後に徐々に喪失されていく。剪断が取り除かれた時点で、チキソトロピックなゲルおよび/または流体は粘度を回復する。これらのゲルおよび/または流体は、擬塑性と見なすこともできるが、これらが剪断速度の増加に応答した粘度の減少を示す場合に限る。擬塑性は、一般に、単なる剪断減粘と見なされる。より具体的には、剪断速度の増加に応答して粘度が減少する。さらに、これらは、剪断が取り除かれた時点でその非剪断粘度を直ちに回復する。
【0047】
数値の範囲には、温度範囲、濃度範囲(重量基準、体積基準など)、分子量範囲、整数範囲、および時間範囲などが含まれるが、これらに限定されない。範囲には、範囲に含まれる部分範囲および部分範囲の組み合わせが含まれる。用語「約」の使用は、記述した値を超えるかそれ未満の値を説明することを意図し、用語「約」は、およそ+/-10%の範囲を修飾し;他の例では、値は、記述した値をおよそ+/-5%の範囲で超えるかそれ未満の範囲であり得る。別段の指定がない限り、用語「約」を数字の範囲の前(すなわち、約1~5)または一連の数字の前(すなわち、約1、2、3、4など)で使用するとき、数字の範囲の両端または一連の数字の各数字を修飾することを意図する。
【0048】
II. 組成物
1. ゲル化剤
ゲル化剤は、自己集合して、ナノ繊維構造体を有するゲル組成物を形成する両親媒性分子である。好ましい実施形態では、これらは、分子量が2,500Da未満のGRAS物質である。
【0049】
例示的なGRASゲル化剤には、アスコルビルアルカノアート、ソルビタンアルカノアート、トリグリセロールモノアルカノアート、スクロースアルカノアート、グリココール酸、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。アルカノアートには、不安定な結合(例えば、エステル結合、カルバマート結合、チオエステル結合、およびアミド結合)を介してアスコルビル分子、ソルビタン分子、トリグリセロール分子、またはスクロース分子に結合した疎水性C1~C22アルキル(例えば、アセチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、カプリリル、カプリル、ラウリル、ミリスチル、パルミチル、ステアリル、アラキジル、またはベヘニル)が含まれ得る。例えば、アスコルビルアルカノアートには、アスコルビルパルミタート、アスコルビルデカノアート、アスコルビルラウラート、アスコルビルカプリラート、アスコルビルミリスタート、アスコルビルオレアート、またはそれらの任意の組み合わせが含まれ得る。ソルビタンアルカノアートには、ソルビタンモノステアラート、ソルビタンデカノアート、ソルビタンラウラート、ソルビタンカプリラート、ソルビタンミリスタート、ソルビタンオレアート、またはそれらの任意の組み合わせが含まれ得る。トリグリセロールモノアルカノアートには、トリグリセロールモノパルミタート、トリグリセロールモノデカノアート、トリグリセロールモノラウラート、トリグリセロールモノカプリラート、トリグリセロールモノミリスタート、トリグリセロールモノステアラート、トリグリセロールモノオレアート、またはそれらの任意の組み合わせが含まれ得る。スクロースアルカノアートには、スクロースパルミタート、スクロースデカノアート、スクロースラウラート、スクロースカプリラート、スクロースミリスタート、スクロースオレアート、またはそれらの任意の組み合わせが含まれ得る。いくつかの実施形態では、GRASゲル化剤には、アスコルビルパルミタート、ソルビタンモノステアラート、トリグリセロールモノパルミタート、スクロースパルミタート、またはグリココール酸が含まれる。
【0050】
代表的な低分子量のGRASゲル化剤には、ビタミン前駆体(アスコルビルパルミタート(ビタミンC前駆体)、酢酸レチニル(ビタミンA前駆体)、およびα-トコフェロールアセタート(ビタミンE前駆体)など)が含まれる。
【0051】
いくつかの実施形態では、GRAS第1のゲル化剤の代わりまたはそれに加えて、自己集合したゲル組成物は、分子量が2,500またはそれに未満の両親媒性3-アミノベンズアミド誘導体から形成される。ゲル化剤はまた、生理学的条件において薬物の活性形態へと変換し得るプロドラッグであり得るかまたはプロドラッグを含み得る。
【0052】
他の実施形態では、1つまたはそれより多くの、C1~C30基を有する飽和または不飽和の炭化水素鎖は、エステル化またはカルバマート結合、無水物結合、および/もしくはアミド結合を介して、低分子量、一般に親水性の化合物へと合成的に改変される。範囲C1~C30には、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19など、C30まで、ならびにC1~C30の中に入る範囲(例えば、C1~C29、C2~C30、C3~C28など)が含まれる。
【0053】
いくつかの実施形態では、αトコフェロールアセタート、酢酸レチニル、レチニルパルミタート、またはそれらの組み合わせは、ゲル化剤と共集合し得る。
【0054】
2. 分解可能な結合
ゲル化剤は、刺激に応答して治療剤を放出し得る。例示的な刺激には、超音波、温度、pH、金属イオン、光、電気刺激、電磁刺激、およびそれらの組み合わせが含まれる。投与部位または放出が望ましい場所(例えば、一般に低pHに関連する腫瘍または感染領域)での特性に起因する、放出を誘起する刺激が存在し得る。これらは、血液もしくは血清中に存在する条件、または細胞、組織、もしくは器官の内側もしくは外側に存在する条件であり得る。ゲル組成物を、細胞、組織、または器官の病状に存在する条件下(例えば、炎症)でのみ解体するように設計することができ、従って、標的にされた組織および/または器官での薬剤の放出が可能である。
【0055】
いくつかの実施形態では、ゲル組成物は、酵素と接触した際におよび/または加水分解を介して切断可能である分解可能な結合(エステル結合、アミド結合、無水物結合、チオエステル結合、およびカルバマート結合など)を含む。典型的には、結合は、両親媒性分子の親水性部分と疎水性部分との間にある。いくつかの実施形態では、ホスファートベースの結合を、ホスファターゼによって切断することができる。いくつかの実施形態では、不安定な結合は、酸化還元切断可能であり、還元または酸化の際に切断される(例えば、-S-S-)。いくつかの実施形態では、分解可能な結合は温度に感受性を示し、例えば、高温で切断可能であり、例えば、37~100℃、40~100℃、45~100℃、50~100℃、60~100℃、70~100℃の温度範囲で切断可能である。いくつかの実施形態では、分解可能な結合を、生理学的温度(例えば、36~40℃、約36℃、約37℃、約38℃、約39℃、約40℃)で切断することができる。例えば、結合を、温度の上昇によって切断することができる。
【0056】
分解可能な結合の選択により、薬剤が必要な部位でのみ放出されるので、投薬量をより低くすることができる。別の利点は、他の器官および組織に対する毒性の低下である。
【0057】
3. ゲル化のための液体媒体(溶媒および緩衝液)
ゲルは、一般に安全と認められる(GRAS)両親媒性ゲル化剤およびゲル中に封入される1つまたはそれより多くの治療剤、予防剤、または診断剤の自己集合および/または非共有結合性相互作用から形成される。いくつかの形態では、ゲル化剤は、2,500またはそれ未満の分子量を有し、アスコルビルアルカノアート、ソルビタンアルカノアート、トリグリセロールモノアルカノアート、またはスクロースアルカノアートである。自己集合したゲルは、塩(例えば、0Mおよび0.15M、その間、それを超えるNaCl;または10mMと500mMとの間)を含む液体媒体(蒸留水、脱イオン水、純水もしくは超純水、食塩水、または他の生理学的に許容され得る水溶液など)、または有機溶媒および水(または塩の水溶液)を含む2溶媒系中に形成される。例示的な有機溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、アセトン、エタノール、ジオキサン、アセトニトリル、トルエン、テトラヒドロフラン、イソブチルアルコール、37℃で液体である低分子量(例えば、1kDa)のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、およびジプロピレングリコールが含まれる。
【0058】
一般に、有機溶媒は、1つまたはそれより多くのゲル化剤と混合し、少なくとも部分的に溶解する。疎水性または親水性に依存して、アミン含有化合物を、共溶媒混合物または水溶液に溶解することができ、次いで、有機溶媒中のゲル化剤に添加する。第1の実施形態では、薬剤を、水(または水性緩衝液もしくは塩の水溶液)および水混和性有機溶媒の両方を含む共溶媒の媒体に溶解したゲル化剤に添加し、これらを混合し、必要に応じて加熱して確実に完全に溶解させる。実施例で証明された第2の実施形態では、ゲル化剤を最初に有機溶媒に溶解して、溶質としてゲル化剤を有する溶液(「ゲル化剤溶液」と名付ける)を形成させる。次いで、薬剤(例えば、遊離塩基リドカイン)を、ゲル化剤溶液に溶解する。次いで、水溶液(純水または水性緩衝液もしくは塩の水溶液など)を、薬物-ゲル化剤溶液と混合してゲル溶液を形成する。液体(有機+水/水溶液)の総量中の有機溶媒の量は、一般に、50%以下である。必要とあれば、ゲル溶液を加熱して完全な溶解を確実にし、次いで、冷却して室温(25℃)または体温(37℃)での倒置に対して安定なゲルを形成する。薬剤を、ゲル中の最終濃度が約4wt/%と25wt/%との間になるまで添加する。有機溶媒の量は、一般に、有機溶媒および水(または水溶液)を組み合わせた量の約5体積%~約50体積%である。より高い%の量の有機溶媒がゲル化剤溶液中に存在したとしても、自己集合したゲル中の有機溶媒の大部分を、透析、遠心分離、および濾過などの精製技術で除去し、媒体と置換することができる。
【0059】
塩の水溶液または水性の緩衝液は、薬剤負荷を増加させることができる。例えば、両親媒性ゲル化剤をDMSOに溶解し、次いで、生理学的イオン強度でリン酸緩衝食塩水(PBS)を添加することにより、水と比較して、得られた自己集合したゲル中のアミン含有化合物の負荷が増加する。実施例で証明されるように、PBSを含めることにより、DMSO-PBS系で形成されたゲル中のアミン含有薬剤(リドカインまたは塩酸リドカインなど)の負荷が少なくとも4重量%、6重量%、8重量%、10重量%、15重量%、または18重量%、またはそれを超える重量%に増加したのに対して、超純水または実質的に塩を含まない水では、DMSO-水系で0.5重量%、1重量%、2重量%、または3重量%未満のリドカインまたはその塩が封入されたゲルが形成された。
【0060】
いくつかの例では、水性の緩衝液への塩(複数可)の添加などによってゲルの形成中に塩(複数可)を含めることを、ゲルの流動学的性質を調整する(チキソトロピーを付与することなど)ために使用することができる。例えば、有機溶媒(DMSOなど)への両親媒性ゲル化剤の溶解および1つまたはそれより多くの塩を含むリン酸緩衝食塩水(PBS)の添加により、水またはさらなる塩(複数可)を使用しない緩衝液と比較して、自己集合したゲルにチキソトロープ性が付与される。ゲルの流動学的性質を調整するために添加することができる塩の例には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、または亜鉛イオンを提供することができる任意の適切な塩を使用することができる。いくつかの例では、塩(複数可)を、ゲル形成中に添加する。いくつかの他の例では、塩(複数可)を、ゲル形成後(処理後工程中など)に添加する。流動学的性質を調整するために使用される(ゲル形成中または処理後に添加される)塩の濃度は、約0.1~約300mM、約0.1~約300mM、約0.1~約250mM、約0.1~約200mM、約0.1~約150mM、約0.1~約100mM、約0.1~約50mM、または約0.1~約25mMの間の範囲であり得る。いくつかの例では、本明細書中に記載の塩を、約1~250mM、約1~200mM、約1~150mM、約1~100mM、約1~75mM、約1~50mM、または約1~25mMの間の範囲の濃度で、緩衝液(複数可)(リン酸緩衝液など)に添加するか、ゲルを調製するために使用するか、調製したゲルを再度懸濁させてもよい。いくつかの他の例では、本明細書中に記載の塩(複数可)を、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150mM、またはそれを超える濃度で、緩衝液(複数可)(リン酸緩衝液など)に添加するか、ゲルを調製するために使用するか、調製したゲルを再度懸濁させてもよい。全処理工程後の最終ゲル中の1つまたはそれより多くの塩の濃度は、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150mM、またはそれを超える濃度であり得る。
【0061】
いくつかの例では、有機溶媒(複数可)をゲルの形成中に含めることまたはゲル形成後(処理後工程中など)に添加することを、ゲルの流動学的性質を調整する(チキソトロピーを付与することなど)ために使用することができる。ゲルの流動学的性質を調整するために単独または既に溶解した塩(複数可)と組み合わせて使用することができる有機溶媒の例には、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、t-ブタノールなど)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの他の例では、本明細書中に記載の有機溶媒(複数可)を、ゲル形成の一部として添加するか、緩衝液(複数可)(リン酸緩衝液など)に添加することができ、調製されたゲルを再度懸濁させて、有機溶媒(複数可)の濃度が約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25%(体積/総ゲル体積)であるゲルを得ることができる。
【0062】
さらに他の例では、直前に記載の塩(複数可)と有機溶媒(複数可)との組み合わせを使用して、ゲルの流動学的性質を調整すること(チキソトロピーを付与することなど)ができる。
【0063】
2溶媒系で(例えば、DMSO-PBS系で)ゲルを形成するいくつかの実施形態では、塩水溶液と比較した有機溶媒の比率の増加により、アミン含有薬剤の負荷および封入の効率が増大する。有機溶媒(例えば、DMSO)の塩水溶液(例えば、リン酸緩衝食塩水)に対する体積比を1:4から1:1に増加させることにより、自己集合したゲル中の薬剤負荷(リドカイン負荷など)が増大する。
【0064】
両親媒性ゲル化剤を最初に有機溶媒(アルコール(すなわち、メタノール)など)に溶解する他の実施形態では、加熱および冷却の際のゲル化のためにアルコール含有溶液に添加するための水相中の塩の量を増加させることにより、薬剤の負荷および封入の百分率が減少する。
【0065】
ゲル製剤を、例えば、透析、遠心分離、および/または濾過(例えば、タンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF))を使用して、溶媒、溶媒夾雑物、過剰な薬剤(すなわち、薬物または遊離薬物)を除去するようにさらに処理することができる。好ましい実施形態では、溶媒残渣を、出発レベルの1%、3%、5%、または10%未満まで、または、米国薬局方協会のハーモナイゼーション国際会議ガイダンスまたは米国食品医薬品局による有機溶媒の残留溶媒の合格基準未満まで除去する。本来ならば封入または捕捉されない溶媒、溶媒夾雑物、および/または過剰な薬物もしくは遊離薬物の残存量を、約1,000ppm未満、約900ppm未満、約800ppm未満、約700ppm未満、約600ppm未満、約500ppm未満、約400ppm未満、約300ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、またはそれ未満に低下させることができる。いくつかの形態では、0から0.15M未満までの塩を含む水性媒体における透析またはTFFにより、0.15Mまたはそれを超える量の塩を有する水性媒体における透析と比較して、効果的により大量の薬剤が保持され、ヒドロゲル中の薬剤の高負荷が維持される。
【0066】
均一な、均質な、および倒置に対して安定な自己支持ゲルの形成後、ゲルを薬学的に許容され得るキャリア中に懸濁させるかまたは該キャリア中で精製して、投与に望ましい体積にすることができる。薬物負荷されたゲルの懸濁のための媒体としての低濃度の(例えば、0.15M未満)塩を有する水または水性媒体は、懸濁前のヒドロゲル組成物と比較して、少なくとも80%、85%、90%、95%、または約100%までの薬剤を高負荷量で含有し続ける;それに対して、約0.15Mの塩を含むリン酸緩衝食塩水または水性媒体は、懸濁前と比較して、約65%、70%、75%、または80%の封入薬物量を維持する。ゲル組成物を懸濁すると、投与に容易な(例えば、必要とする患者への飲用または注入による投与に容易な)製剤の望ましい最終体積および/または毒性を制御するのに望ましい薬剤の濃度を得ることができる。ゲルを乾燥させるか凍結乾燥させて全ての溶媒を除去し、乾燥形態で投与するか、投与のために再水和することもできる。自己集合したゲルは倒置に安定である(すなわち、周囲温度(例えば、ゲル化剤のクラフト点未満)および周囲圧力で倒置したときに流動しない)にもかかわらず、薬学的に許容され得るキャリア中に懸濁させられたゲルは重力に応じて流動し得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、ゲルを薬学的に許容され得るキャリア中に懸濁させ、次いで、ゲルを分散させるか破壊して繊維または粒子を形成する。分散技術には、撹拌、ボルテックスでの撹拌、ピペット操作、および均質化が含まれる。
【0068】
アミン含有化合物の負荷量が高いゲル製剤(例えば、自己支持ゲル、懸濁媒体中での繊維状ゲル、および精製されたゲル)は、荷電表面(表面上にアミン官能基を有する表面など)に接着する。イオン強度が低いか無い環境(例えば、ゼロまたは0.15M未満の塩を含む水性媒体)は、イオン強度が高い環境(例えば、0.15Mまたはそれを超える塩を有する水溶液)と比較して、ゲル製剤の接着を改善する。いくつかの形態では、水中のゲル製剤は、表面の強い洗浄後、荷電表面に、少なくとも約10、13、15、17、20、もしくは25μgゲル/cm2表面の密度またはそれを超える密度で接着するのに対して、ゲル化剤の濃度は類似しているが、塩濃度がより高いリン酸緩衝食塩水または溶液を用いたゲル製剤は、表面の強い洗浄後、荷電表面に、約5、4、3、2、または1μgゲル/cm2表面より低い密度でしか接着しない。
【0069】
上述の通り、一般に、有機溶媒は、加熱を用いるか用いないで1つまたはそれより多くのゲル化剤を溶解する。疎水性または親水性に応じて、アミン含有化合物を、ゲル化剤溶液を含む有機溶媒に溶解することができるか、水と共に溶解することができるか、ゲル化剤溶液を含む有機溶媒に添加される水性の緩衝液中に溶解することができる。有機溶媒の量は、一般に、有機溶媒および水(または水溶液)を組み合わせた量の約5体積%~約50体積%である。
【0070】
いくつかの形態では、有機溶媒を使用してゲル化剤を予め溶解し、予め溶解したゲル化剤溶液を使用して、アミン含有薬剤(遊離塩基リドカインなど)または遊離塩基形態の他のアミン含有麻酔薬を溶解する。総ゲル化媒体中の有機溶媒の体積百分率を増加させると、一般に、アミン含有化合物の負荷、ならびに集合したゲルの一貫性/均一性が改善される(例えば、倒置したときに流動性を示すゲルと異なる;上層の液体がゲルと共に存在するゲル-液体混合物とも異なる)。
【0071】
適切な有機溶媒には、水混和性溶媒、または水溶性がかなり高い(例えば、5g/100g水を超える)溶媒(例えば、DMSO、アセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、およびアルコール(エタノール、メタノール、またはイソプロピルアルコールなど))、および他の水混和性有機溶媒、ならびに低分子量ポリエチレングリコール(例えば、37℃で融解する1kD PEG)が含まれる。
【0072】
ゲル化剤およびアミン含有化合物を含む有機溶液を、一定量の水性媒体(例えば、食塩水)にさらに添加し、これが熱処理を受けて室温で倒置に安定な自己集合したヒドロゲル(例えば、倒置したバイアル中に含まれたときに流動しない;ヒドロゲルを形成するための水性構成要素が溶媒中に少なくとも50%)が得られる。一般に、必要とあればゲル化剤および/または薬剤を最初に溶解するための有機溶媒の量は、溶解したゲル化剤および/または薬剤と混合するためおよびヒドロゲル集合のために加熱するための水性媒体の体積と比較して、等体積以下または1/2、1/3,1/4、1/5、1/6、1/7、1/8、1/9、1/10、もしくはそれ未満の体積である。すなわち、薬物負荷の高い均一なゲルの形成で使用される液体の総量中の有機溶媒の体積は、一般に、約50%、33%、25%、20%、17%、14%、12.5%、11%、10%、または9%以下である。
【0073】
好ましい実施形態では、残部が水または緩衝液である約20体積%と50体積%との間の水混和性有機溶媒を使用して、ヒドロゲルを作製する;より高い体積%の水混和性有機溶媒は、一般に、薬物負荷およびゲルの一貫性を改善する(例えば、より低い%の溶媒は、時折、倒置試験を失敗する流動性ゲルを形成し得る)。
【0074】
自己集合したヒドロゲル中の有機溶媒の量を、透析、遠心分離、および/または濾過によって実質的に除去して、投与のための薬剤負荷が依然として高い適切なゲル製剤を得ることができる。有機溶媒の残存量を、約1,000ppm未満、約900ppm未満、約800ppm未満、約700ppm未満、約600ppm未満、約500ppm未満、約400ppm未満、約300ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満 約50ppm未満、またはそれ未満に低下させることができる。有機溶媒の任意の残存量は、一般に、米国FDAによる医薬製品の記載の限度内(例えば、ジクロロメタンが600ppm未満、メタノールが3,000ppm未満、クロロホルムが60ppm未満である)、およびGMPまたは他の質ベースの要件の限度内である。いくつかの実施形態では、塩を含む水溶液は、両方の材料をヒドロゲル集合プロセスで同時に溶解することによってゲル化剤中の薬剤の負荷量を改善する。これは、リン酸緩衝食塩水の添加前にゲル化剤をDMSOに溶解して均一な混合物を形成し、加熱および冷却後にゲルを形成する実施例1で証明されている。
【0075】
他の実施形態では、水性緩衝液と有機溶媒との混合物がゲル形成の媒体である場合、塩の量を増加させると薬剤の負荷および封入効率が減少する。これは、水溶液の添加前にゲル化剤をメタノールに溶解して均一な混合物を形成し、加熱および冷却後にゲルを形成する実施例5で証明されている。
【0076】
塩には、薬学的に許容され得る小分子(塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸ジナトリウム、およびリン酸一カリウムなど)が含まれる。
【0077】
4. アミン含有薬剤
集合したゲル組成物を使用して、1つまたはそれより多くのアミン含有薬剤を、特にアミン含有麻酔化合物を必要とする個体または被験体に送達することができる。
【0078】
リドカインもしくは他の「-カイン」麻酔剤、および/または他の脂肪族アミン含有薬剤について、自己集合したゲル(本明細書中に記載のものなど)が自己集合したゲル内への好ましい封入を容易にするために封入/捕捉すべき薬剤(すなわち、薬物)上の疎水性部分に依存するので、封入は困難であり得ると考えられる。この課題に取り組んだ以前の試みには、本来は(ヒドロ)ゲル内への封入に適切でない親水性薬剤の疎水性プロドラッグの作製が含まれていた(US2011/0229565A1;Karpら、Science translational Medicine 2015,7(300):300ra128)。しかし、かかる以前のアプローチは、切断可能な結合を介した疎水性部分(パルミチン酸、ステアリン酸など)への抱合が実現可能な化学的官能基を含む薬物および/または薬剤に制限される。リドカインなどの薬剤は、プロドラッグアプローチで利用するために必要な化学的官能基を含まない。本明細書中に記載のゲルおよび方法では、ゲル化剤(複数可)の酸性の化学的官能基とアミン含有薬剤の塩基性の化学的官能基(遊離塩基形態のリドカイン中に存在するものなど)との間の静電相互作用によってゲル内への封入を容易にすることができると考えられる。さらに、ゲル製剤および/またはゲルの(後)処理中に存在する無機塩および有機溶媒もゲル化剤(複数可)(アスコルビルパルミタートなど)とアミン含有薬剤(リドカインなど)との間の相互作用に影響を及ぼし得ることが見出された。塩のタイプおよび塩濃度を使用して、封入効率を調整することができ、それに応じて、ゲル中の薬物負荷範囲を調整することができる。自己集合したゲル中へのアミン含有薬剤の薬剤(薬物)負荷を調整するために使用することができる公知の方法は、本明細書中に記載の方法以前には存在しなかった。
【0079】
自己集合した精製したゲルについて、約5%と約50%との間のアミン含有薬剤の負荷は、バースト相中でさえ有意に維持される(例えば、付加された薬剤の25%、30%、40%、または50%以下がバースト相で放出されるか、室温における濃縮系のバースト放出が実質的にない)。これは、ほんの数分または数時間で非常に高度にバースト放出するか、完全に放出さえする他の未精製の自己集合した材料とは異なる。
【0080】
いくつかの実施形態では、ゲル化剤は、加水分解または酵素によって分解し、活性薬剤を放出するプロドラッグであり得る。
【0081】
他の実施形態では、アミン含有薬剤を、ゲル組成物のナノ繊維構造体を用いて物理的に捕捉するか、封入するか、非共有結合することができる。薬剤を、1つまたはそれより多くのゲル化剤、1つまたはそれより多くの安定化剤で共有結合的に修飾することができるか、ゲル化剤として使用することができる。あるいは、薬剤を、ゲル組成物の集合した規則正しい配列のラメラ、小胞、および/またはナノ繊維構造体中に組み込むか、集合した構造体の表面上に配置する。
【0082】
自己集合したゲルは、約90wt/wt%、約80wt/wt%、約70wt/wt%、約60wt/wt%、約50wt/wt%、約45wt/wt%、約40wt/wt%、約35wt/wt%、約30wt/wt%、約25wt/wt%、約20wt/wt%、約15wt/wt%、約10wt/wt%、または約5wt/wt%までのアミン含有薬剤(または以下に列挙した他の薬剤)の負荷効率を示す。
【0083】
自己集合したゲルは、約100wt/wt%、99wt/wt%、98wt/wt%、97wt/wt%、96wt/wt%、95wt/wt%、94wt/wt%、93wt/wt%、92wt/wt%、91wt/wt%、90wt/wt%、約80wt/wt%、約70wt/wt%、約60wt/wt%、約50wt/wt%、約45wt/wt%、約40wt/wt%、約35wt/wt%、約30wt/wt%、約25wt/wt%、約20wt/wt%、約15wt/wt%、約10wt/wt%、または約5wt/wt%までのアミン含有薬剤(または以下に列挙した他の薬剤)の捕捉効率または封入効率を示す。
【0084】
いくつかの例では、ゲルの流動学的性質を調整するために、自己集合したゲルを、ゲル形成中に塩(複数可)および/または有機溶媒(複数可)を封入して調製するか、ゲル形成後に(処理後工程中など)添加する。ゲルへのチキソトロープ性の付与などのために流動学的性質が調整されるかかる例では、ゲル調製における塩(複数可)および/または有機溶媒(複数可)の使用量を、好ましくはゲル内に少なくとも約50wt/wt%、約45wt/wt%、約40wt/wt%、約35wt/wt%、約30wt/wt%、約25wt/wt%、約20wt/wt%、約15wt/wt%、約10wt/wt%、または約5wt/wt%の封入効率が得られるように制御する。
【0085】
麻酔剤
いくつかの実施形態では、アミン含有薬剤は、少なくとも4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、またはそれを超える負荷量でゲルマトリックス中に捕捉されるか、封入されるか、包埋されるか、静電的に結合されるか、そうでなければ送達される麻酔剤である;これらの製剤は、形成後プロセス(懸濁および精製など)中でさえも高負荷量の麻酔薬を維持する。一般に、麻酔薬は、ゲルマトリックス中に約5重量%と約25重量%との間で負荷される。
【0086】
一般的な局所麻酔薬の大部分(例えば、リドカイン、プロカイン、ジブカイン、テトラカイン、ベンゾカイン、ブピバカイン)は、以下のHenderson-Hasselbachの式:
pKa=pH+log10([BH+]/[B])
【0087】
(式中、[BH+]および[B]は、それぞれ、電荷形態および無電荷形態の濃度を表す)に従って、化合物のpKa値および媒体のpHに応じて2つの形態(すなわち、無電荷の遊離塩基形態(B)およびカチオン性形態(BH+))で存在し得るイオン性第三級アミンを含む。第三級アミン含有麻酔薬の形態(例えば、リドカイン)は、神経遮断を担い得る。無電荷の遊離塩基形態は、一般に、荷電形態よりもはるかに容易に細胞膜および組織を透過する(Henry Rら,J Urol,Jun;165(6 Pt 1):1900-1903(2001))。作用部位が神経膜の内面上に存在する場合、局所麻酔分子は、遮断作用を発揮する前に神経鞘および神経膜の両方を通過する必要がある。荷電形態は、ナトリウムとナトリウムチャネル中の負電荷担体部位を競合する。
【0088】
いくつかの実施形態では、ゲル製剤の調製においてアミン含有薬剤の遊離塩基形態を使用し、ゲルは、遊離塩基および遊離塩基の共役酸の両方を平衡状態で含み得る。例えば、集合したゲルマトリックス中のリドカインの負荷量は、少なくとも4%である(例えば、約4%と約18%との間)。ゲルの懸濁および精製プロセス中の麻酔薬の負荷量は、ゲル集合の完了後の麻酔薬の負荷量と比較して、少なくとも90%、80%、または70%保持されている。
【0089】
いくつかの実施形態では、リドカイン、プロカイン、テトラカイン、ジブカイン、ベンゾカイン、ブピバカイン、またはそれらの塩が、集合したゲル製剤中に含められる。例えば、塩酸リドカイン、塩酸プロカイン、塩酸テトラカイン、塩酸ジブカイン、塩酸ベンゾカイン、および/またはブピバカインを使用することができる。遊離塩基であるリドカイン、プロカイン、テトラカイン、ベンゾカイン、ブピバカイン、またはジブカインをゲル化剤の材料と混合し、適切な溶媒の存在下で集合したヒドロゲルに封入することもできる。
【0090】
いくつかの例では、ゲル製剤はまた、アミン含有薬剤(麻酔薬など)およびさらなる薬剤(抗生物質、抗炎症剤、抗菌薬など)、またはそれらの組み合わせの送達に適切である。
【0091】
抗生物質/抗菌薬
薬剤の高負荷のためのゲル製剤および自己集合プロセスはまた、抗生物質および/または抗菌薬の送達に適切である。いくつかの形態では、ゲル製剤中の高負荷に適切な抗生物質/抗菌剤化合物には、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、メタサイクリン、デメクロサイクリン、ロリテトラサイクリン、リムシクリン、メクロシクリン、ミオカマイシン、アミノグリコシド、アンサマイシン(ansaycin)、カルバペネム、セファロスポリン、糖ペプチド、リンコサミド、リポペプチド、マクロライド、モノバクタム、ニトロフラン、オキサゾリジノン、ペニシリン、ポリペプチド、キノロン/フルオロキノロン、スルホンアミド、クロファジミン、ダプソン、カプレオマイシン、シクロセリン、エタンブトール、エチオナミド、イソニアジド、ピラジナミド、リファンピシン(リファンピン)、リファブチン、リファペンチン、ストレプトマイシン、アルスフェナミン、クロラムフェニコール、ホスホマイシン、フシジン酸、メトロニダゾール、ムピロシン、プラテンシマイシン、キヌプリスチン/ダルホプリスチン、チアンフェニコール、チゲサイクリン、チニダゾール、およびトリメトプリム;およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0092】
抗炎症薬
高薬剤負荷のためのゲル製剤および自己集合プロセスはまた、抗炎症薬(コルチゾンおよびプレドニゾンのようなステロイドなど)および/または非ステロイド系抗炎症薬(ナプロキセンなど)の送達に適切である。
【0093】
5. 必要に応じた安定剤
いくつかの実施形態では、投与後の血液安定性を増強し、そして/またはナノ構造体の解体速度を低下させる薬剤を組成物に含める。アルブミンが含まれる血中タンパク質は、集合したラメラ構造体、ミセル構造体、小胞構造体、および/または繊維構造体中の凹凸(界面に存在する凹凸など)と相互作用することができ、それにより、粒子またはより高度に構造化されたナノ粒子またはバルクヒドロゲルの解体速度をより速くする。安定剤は、典型的には、剛性を付与し、充填密度を増大させ、そして/または集合した構造体の強度を増大させ、したがって、相転移プロセスを変化させて温度を移行させ、そして/またはタンパク質の接着または蓄積を軽減または防止するように集合した粒子の表面の性質を調整する。
【0094】
一般に、安定剤は、血清溶液中に存在するときの集合した粒子またはナノ粒子のサイズ減少率を小さくするのに対して、安定剤を使用しない組成物は、約30分間で血清溶液中の流体力学的サイズが実質的に小さくなる。安定剤は、37℃での血清との少なくとも1、2、3、4、12、24、または48時間のインキュベーションにおいて、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%を超える集合したナノ構造体の流体力学的サイズの減少を1%、5%、10%、15%、20%、または30%未満にすることが可能である。
【0095】
一般に、自己集合したラメラを硬くし得る分子は、通常は、疎水性分子、小さな鎖の親水性ポリマーのような表面特性を変化させ得る分子、および/または表面電荷を改変し得る分子(荷電した分子)であろう。
【0096】
いくつかの実施形態では、安定剤は、集合したゲル組成物の形成において、ゲル化剤と共集合される。これらの安定剤は、一般に、ラメラ構造体、ミセル構造体、小胞構造体、および/または繊維構造体の中に、封入化、統合、捕捉、挿入、またはインターカレーションによって組み込まれる。一般に、10~30モル%の共集合タイプの安定化剤を含めることにより、集合したナノ粒子が、血清溶液中で2~4時間の期間にわたってインキュベートしたとき、元のサイズの約80%または80%超を維持することが可能である。
【0097】
例示的な安定剤には、典型的には疎水性のステロール、リン脂質、および低分子量の治療化合物が含まれる。適切なステロールには、コレステロール、コルチコステロイド(corticosteriod)、例えば、ジヒドロコレステロール、ラノステロール、β-シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラッシカステロール、エルゴカステロール、ビタミンD、植物ステロール、シトステロール、アルドステロン、アンドロステロン、テストステロン、エストロゲン、エルゴカルシフェロール、エルゴステロール、エストラジオール-l7α、エストラジオール-17β、コール酸、コルチコステロン、エストリオール、ラノステロール、リトコール酸、プロゲステロン、コレカルシフェロール、コルチゾール、コルチゾン、酢酸コルチゾン、酢酸コルチゾール、デオキシコルチコステロンおよびエストロン、ならびにフコステロールが含まれる。他の安定剤には、リゾリン脂質(リゾPC、2-ヘキサデコキシ-オキシド-ホスホリル)オキシエチル-トリメチル-アザニウムが含まれる)、ガングリオシド(GM1およびGT1bが含まれる)、スルファチド、スフィンゴリン脂質、合成糖リン脂質(glycopholipid)(シアロ-ラクトシルなど)、リン脂質(DOPE、DOPS、POPE、DPPE、DSPEが含まれる)、親油性薬物(シトシンアラビノシドジホスファートジアシルグリセロール(cytosine arabinoside diphosphate
diacyglycerol)など)、タンパク質(シトクロムb5、ヒト高密度リポタンパク質(HDL)、ヒトグリコホリンAなど)、短鎖親水性ポリマー(ポリエチレングリコール(PEG)および脂質を有するその誘導体が含まれる)、胆汁酸(タウロコール酸、デオキシコール酸(desoxycholic acid)、およびグリココール酸(geicocholic acid)が含まれる)、1,1’-ジオクタデシル3,3,3’,3’-テトラメチル-インドカルボシアニンペルクロラート(1,1’-dioctadecyl 3,3,3’,3’-tetramethyl-indocarbocyanine percholorate)(DiI)、DiR、DiD、フルオレセインイソチオシアナート(fluorescein isothiocynate)、テトラメチルローダミンイソチオシアナート、ローダミンBオクタデシルエステルペルクロラート、およびN’-オクタデシルフルオレセイン-5-チオ尿素(N’-Octadecylfuorescein-5-thiourea)が含まれるが、これらに限定されない。ステロールは、一般に、1つまたはそれより多くのゲル化剤と共集合して、規則正しいラメラ構造体、ミセル構造体、小胞構造体、および/もしくは繊維構造体に挿入される。ステロール自体はゲル化剤ではなく、単独でゲル組成物を形成できない。
【0098】
適切なリン脂質には、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびジステアロイル ホスファチジルコリンが含まれる。リン脂質は、典型的には、規則正しいラメラ構造体および/もしくは繊維構造体の形成において、1つまたはそれより多くのゲル化剤と共集合する。
【0099】
他の実施形態では、安定剤は、ラメラ構造体、ミセル構造体、小胞構造体、および/もしくは繊維構造体への挿入またはインターカレーションよりむしろ、集合した組成物の中に、典型的には、ゲル組成物全体に封入される薬剤である。一般に、5~15モル%の間の安定剤を含めることにより、集合したナノ構造体が、血清溶液中で2~4時間の期間にわたってインキュベートしたとき、元のサイズの約80%または80%超を維持することが可能である。
【0100】
いくつかの実施形態では、薬剤は、血液または血清溶液に存在するときの集合したナノ構造体のサイズ減少を小さくすることができ、ここで、37℃で血清とインキュベートした50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%を超えるナノ構造体の流体力学的サイズの減少が、活性薬剤を用いないゲル組成物と比較して、少なくとも1時間、2時間、3時間、4時間、12時間、24時間、もしくは48時間で1%、5%、10%、15%、20%、または30%未満である。疎水性薬剤は、2%、4%、6%、8%、および10%、ならびにその範囲内のすべての値のモル百分率で、活性薬剤とゲル化剤との間に封入されるときにゲル化剤から形成されたナノ構造体を安定化し得る。
【0101】
ゲル組成物のための安定剤として使用される適切な低分子量の治療剤、予防剤、および/または診断剤は、低分子量(例えば、2,500Da未満)の一般に疎水性の薬剤(ドセタキセルおよびステロイドなど)および他の疎水性の薬剤(デキサメタゾンなど)、または薬剤の組み合わせである。
【0102】
6. 製剤
ゲル組成物を、一般に、媒体中で加熱し、ゲル化剤および薬剤(複数可)と混合してゲル化剤を完全またはほぼ完全に溶解し、その後にクラフト点未満まで冷却してゲル化剤を薬剤の周囲に集合させ、そして/または表面上に有するようにすることによって形成する。いくつかの形態では、有機溶媒(例えば、水性媒体の量と比較して一般に約1/10未満の少量)を使用して薬剤(複数可)と共にゲル化剤を溶解して均一な溶液を形成し、その後に加熱およびヒドロゲル組成物の形成のための一定量の水性媒体を添加する。
【0103】
形成されたゲルは、一般に、倒置に対して安定である(例えば、ゲルを含むバイアルを垂直に倒置するか傾けたときにバイアル由来の重力流に抵抗する)。形成されたゲルはまた、その時点の構造を保持することができ、37℃またはin vivoで洗い流さずに適用した状態でとどまることができる。形成されたゲルは、ゲル化剤またはゲル化剤および薬剤由来のナノ構造体を含むことができ、ここで、ナノ構造体には、ラメラ構造体、繊維、シート様構造体、テープ様構造体、ナノ粒子、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0104】
ゲルは、一般に安全と認められる(GRAS)両親媒性ゲル化剤およびゲル中に封入される1つまたはそれより多くの治療剤、予防剤、または診断剤の自己集合および/または非共有結合性相互作用から形成される。いくつかの形態では、ゲル化剤は、2,500またはそれ未満の分子量を有し、アスコルビルアルカノアート、ソルビタンアルカノアート、トリグリセロールモノアルカノアート、またはスクロースアルカノアートである。自己集合したゲルは、塩(例えば、0Mおよび0.15M、その間、それを超えるNaCl;または10mMと500mMとの間)を含む液体媒体(蒸留水、脱イオン水、純水もしくは超純水、食塩水、または他の生理学的に許容され得る水溶液など)、または有機溶媒および水(または塩の水溶液)を含む2溶媒系中に形成される。例示的な有機溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、アセトン、エタノール、ジオキサン、アセトニトリル、トルエン、テトラヒドロフラン、イソブチルアルコール、37℃で液体である低分子量(例えば、1kDa)のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、またはそれらの組み合わせである。
【0105】
一般に、有機溶媒は、1つまたはそれより多くのゲル化剤と混合し、少なくとも部分的に溶解する。疎水性または親水性に依存して、アミン含有化合物を、共溶媒混合物または水溶液に溶解することができ、次いで、有機溶媒中のゲル化剤に添加する。第1の実施形態では、薬剤を、水(または水性緩衝液もしくは塩の水溶液)および水混和性有機溶媒の両方を含む共溶媒の媒体に溶解したゲル化剤に添加し、これらを混合し、必要に応じて加熱して確実に完全に溶解させる。実施例で証明された第2の実施形態では、ゲル化剤を最初に有機溶媒に溶解して、溶質としてゲル化剤を有する溶液(「ゲル化剤溶液」と名付ける)を形成させる。次いで、薬剤(例えば、遊離塩基リドカイン)を、ゲル化剤溶液に溶解する。次いで、水溶液(純水または水性緩衝液もしくは塩の水溶液など)を、薬物-ゲル化剤溶液と混合してゲル溶液を形成する。液体(有機+水/水溶液)の総量中の有機溶媒の量は、一般に、50%以下である。必要とあれば、ゲル溶液を加熱して完全な溶解を確実にし、次いで、冷却して室温(25℃)または体温(37℃)での倒置に対して安定なゲルを形成する。薬剤を、ゲル中の最終濃度が約4wt/%と25wt/%との間になるまで添加する。有機溶媒の量は、一般に、有機溶媒および水(または水溶液)を組み合わせた量の約5体積%~約50体積%である。より高い%の量の有機溶媒がゲル化剤溶液中に存在したとしても、自己集合したゲル中の有機溶媒の大部分を、透析、遠心分離、および濾過などの精製技術で除去し、媒体と置換することができる。
【0106】
塩の水溶液または水性の緩衝液は、薬剤負荷を増加させることができる。例えば、両親媒性ゲル化剤をDMSOに溶解し、次いで、生理学的イオン強度でリン酸緩衝食塩水(PBS)を添加することにより、水と比較して、得られた自己集合したゲル中のアミン含有化合物の負荷が増加する。実施例で証明されるように、PBSを含めることにより、DMSO-PBS系で形成されたゲル中のアミン含有薬剤(リドカインまたは塩酸リドカインなど)の負荷が少なくとも4重量%、6重量%、8重量%、10重量%、15重量%、または18重量%、またはそれを超える重量%に増加したのに対して、超純水または実質的に塩を含まない水では、DMSO-水系で0.5重量%、1重量%、2重量%、または3重量%未満のリドカインまたはその塩が封入されたゲルが形成された。
【0107】
いくつかの例では、水性の緩衝液への塩(複数可)の添加などによってゲルの形成中に塩(複数可)を含めることを、ゲルの流動学的性質を調整する(チキソトロピーを付与することなど)ために使用することができる。例えば、有機溶媒(DMSOなど)への両親媒性ゲル化剤の溶解および1つまたはそれより多くの塩を含むリン酸緩衝食塩水(PBS)の添加により、水またはさらなる塩(複数可)を使用しない緩衝液と比較して、自己集合したゲルにチキソトロープ性が付与される。ゲルの流動学的性質を調整するために添加することができる塩の例には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、または亜鉛イオンを提供することができる任意の適切な塩を使用することができる。いくつかの例では、塩(複数可)を、ゲル形成中に添加する。いくつかの他の例では、塩(複数可)を、ゲル形成後(処理後工程中など)に添加する。流動学的性質を調整するために使用される(ゲル形成中または処理後に添加される)塩の濃度は、約0.1~約300mM、約0.1~約300mM、約0.1~約250mM、約0.1~約200mM、約0.1~約150mM、約0.1~約100mM、約0.1~約50mM、または約0.1~約25mMの間の範囲であり得る。いくつかの例では、本明細書中に記載の塩を、約1~250mM、約1~200mM、約1~150mM、約1~100mM、約1~75mM、約1~50mM、または約1~25mMの間の範囲の濃度で、緩衝液(複数可)(リン酸緩衝液など)に添加するか、ゲルを調製するために使用するか、調製したゲルを再度懸濁させてもよい。いくつかの他の例では、本明細書中に記載の塩(複数可)を、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150mM、またはそれを超える濃度で、緩衝液(複数可)(リン酸緩衝液など)に添加するか、ゲルを調製するために使用するか、調製したゲルを再度懸濁させてもよい。全処理工程後の最終ゲル中の1つまたはそれより多くの塩の濃度は、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150mM、またはそれを超える濃度であり得る。
【0108】
いくつかの例では、有機溶媒(複数可)をゲルの形成中に含めることまたはゲル形成後(処理後工程中など)に添加することを、ゲルの流動学的性質を調整する(チキソトロピーを付与することなど)ために使用することができる。ゲルの流動学的性質を調整するために単独または既に溶解した塩(複数可)と組み合わせて使用することができる有機溶媒の例には、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、t-ブタノールなど)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの他の例では、本明細書中に記載の有機溶媒(複数可)を、ゲル形成の一部として添加するか、緩衝液(複数可)(リン酸緩衝液など)に添加することができ、調製されたゲルを再度懸濁させて、有機溶媒(複数可)の濃度が約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25%(体積/総ゲル体積)であるゲルを得ることができる。
【0109】
さらに他の例では、直前に記載の塩(複数可)と有機溶媒(複数可)との組み合わせを使用して、ゲルの流動学的性質を調整すること(チキソトロピーを付与することなど)ができる。
【0110】
実施例6に示すように、薬剤(リドカインなど)濃度に対してゲル化剤(アスコルビルパルミタートなど)の濃度を固定して、流動学的性質を、塩(複数可)および有機溶媒(複数可)の含有およびこれらの各濃度によって顕著に変化させることができる。自己集合したアスコルビルパルミタートヒドロゲルは、回復可能な流動学的性質(すなわち、剪断減粘)を有することが示されている(US2013/0280334A1号、US2017/0319500A1号)。塩(複数可)および/または溶媒(複数可)を含めることにより、ゲル製剤中のゲル化剤(アスコルビルパルミタートなど)または薬剤(リドカインなど)の濃度を変化させることなく、流動学的性質を制御または調整することができることを証明している。局所投与される治療薬の粘度および流動学は問題の組織への治療薬の配置に影響を及ぼし得るので、流動学的性質の制御は重要な発明である。
【0111】
いくつかの例では、ゲルを、いかなるさらなる塩および/または有機溶媒を用いずに形成することができるか、その流動学的性質を、塩および/または有機溶媒(複数可)(ゲル形成中またはゲル形成後のいずれかでの)の添加によって調整することができる。記載のゲルは、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1、約2、約3、約4、または約5パスカルから、約50、約75、約100、約150、約200、約250、もしくは約300まで、または本明細書中に開示の上端点と下端点との任意の組み合わせの貯蔵弾性率(G’)を有するか、有するように調整することができる。
【0112】
いくつかの例では、ゲルを、いかなるさらなる塩および/または有機溶媒を用いずに形成することができるか、その流動学的性質を、塩および/または有機溶媒(複数可)(ゲル形成中またはゲル形成後のいずれかでの)の添加によって調整することができる。記載のゲルは、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1、約2、約3、約4、または約5パスカルから、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、または約300パスカルまで、または本明細書中に開示の上端点と下端点との任意の組み合わせの損失弾性率(G’’)を有するか、有するように調整することができる。
【0113】
いくつかの例では、(ゲル形成中またはゲル形成後のいずれかでの)塩および/または有機溶媒(複数可)の添加または無添加によって形成されたゲルの粘度は、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1、約2、約3、約4、もしくは約5センチポアズ(cP)から、約10、約100、約200、約300、約400、約500、約600、約700、約800、約900、約1,000、約1,100、約1,200、約1,300、約1,400、約1,500、約1,600、約1,700、約1,800、約1,900、約2,000、約2,500、もしくは約3000cPまでの間の範囲、または本明細書中に開示の上端点と下端点との任意の組み合わせであり得る。いくつかの例では、(ゲル形成中またはゲル形成後のいずれかでの)塩および/または有機溶媒(複数可)の添加によって形成されたゲルは、例えば、曝露の際にゲルの粘度が変化して剪断されるようなチキソトロープ性を示す。
【0114】
2溶媒系で(例えば、DMSO-PBS系で)ゲルを形成するいくつかの実施形態では、塩水溶液と比較した有機溶媒の比率の増加により、アミン含有薬剤の負荷および封入の効率が増大する。有機溶媒(例えば、DMSO)の塩水溶液(例えば、リン酸緩衝食塩水)に対する体積比を1:5から1:1に増加させることにより、自己集合したゲル中の薬剤負荷(リドカイン負荷など)が増大する。
【0115】
両親媒性ゲル化剤を最初に有機溶媒(メタノールなど)に溶解する他の実施形態では、加熱および冷却の際のゲル化のためにメタノール溶液に添加するための水相中の塩の量を増加させることにより、薬剤の負荷および封入の百分率が減少する。
【0116】
ゲル製剤を、例えば、透析、遠心分離、および/または濾過(例えば、タンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF))を使用して、溶媒、溶媒夾雑物、過剰な薬剤(すなわち、薬物または遊離薬物)を除去するようにさらに処理することができる。好ましい実施形態では、溶媒残渣を、出発レベルの1%、3%、5%、または10%未満まで、または、米国薬局方協会または米国食品医薬品局による有機溶媒の残留溶媒の合格基準未満まで除去する。本来ならばゲルによって封入または捕捉されない溶媒、溶媒夾雑物、過剰な薬物、または遊離薬物の残存量を、約1,000ppm未満、約900ppm未満、約800ppm未満、約700ppm未満、約600ppm未満、約500ppm未満、約400ppm未満、約300ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、またはそれ未満に低下させることができる。いくつかの形態では、0から0.15M未満までの塩を含む水性媒体における透析またはTFFにより、0.15Mまたはそれを超える量の塩を有する水性媒体における透析と比較して、効果的により大量の薬剤が保持され、ヒドロゲル中の薬剤の高負荷が維持される。
【0117】
(典型的には、室温で)均一な、均質な、および倒置に対して安定な(ゲルを保持している容器を倒置した際に、少なくとも5、10、または15秒間、いくつかの場合、約1、5、10、30、または60分間、1日間、2日間、3日間、1週間、2週間、またはそれを超えてゲルにおいて重力流が認められないことを意味する)自己支持ゲルの形成後、ゲルは、少なくとも60分間またはそれを超えて倒置に対して安定性を示すことが好ましい。ゲルを薬学的に許容され得るキャリア中に懸濁させるかまたは該キャリア中で精製して、投与に望ましい体積にすることができる。薬物負荷されたゲルの懸濁のための媒体としての低濃度の(例えば、0.15M未満)塩を有する水または水性媒体は、懸濁前のヒドロゲル組成物と比較して、少なくとも80%、85%、90%、95%、または約100%までの薬剤を高負荷量で含有し続ける;それに対して、約0.15Mの塩を含むリン酸緩衝食塩水または水性媒体は、懸濁前と比較して、約65%、70%、75%、または80%の封入薬物量を維持する。ゲル組成物を懸濁すると、投与に容易な(例えば、必要とする患者への飲用または注入による投与に容易な)製剤の望ましい最終体積および/または毒性を制御するのに望ましい薬剤の濃度を得ることができる。ゲルを乾燥させるか凍結乾燥させて全ての溶媒を除去し、乾燥形態で投与するか、投与のために再水和することもできる。自己集合したゲルは倒置に安定である(すなわち、周囲温度(例えば、ゲル化剤のクラフト点未満)および周囲圧力で倒置したときに流動しない)にもかかわらず(倒置に対する安定性は、典型的には、室温で決定され、少なくとも60分間またはそれを超えた期間の重力流に対するゲルの耐性によって特徴づけられる)、薬学的に許容され得るキャリア中に懸濁させられたゲルは重力に応じて流動し得る。
【0118】
いくつかの実施形態では、ゲルを薬学的に許容され得るキャリア中に懸濁させ、次いで、ゲルを分散させるか破壊して繊維または粒子を形成する。分散技術には、撹拌、ボルテックスでの撹拌、ピペット操作、および均質化が含まれる。
【0119】
アミン含有化合物の負荷量が高いゲル製剤(例えば、自己支持ゲル、懸濁媒体中での繊維状ゲル、および精製されたゲル)は、荷電表面(表面上にアミン官能基を有する表面など)に接着する。イオン強度が低いか無い環境(例えば、ゼロまたは0.15M未満の塩を含む水性媒体)は、イオン強度が高い環境(例えば、0.15Mまたはそれを超える塩を有する水溶液)と比較して、ゲル製剤の接着を改善する。いくつかの形態では、水中のゲル製剤は、荷電表面に、少なくとも約10、13、15、17、20、もしくは25μgゲル/cm2表面の密度またはそれを超える密度で接着するのに対して、ゲル化剤の濃度は類似しているが、塩濃度がより高いリン酸緩衝食塩水または溶液を用いたゲル製剤は、荷電表面に、約5、4、3、2、または1μgゲル/cm2表面より低い密度でしか接着しない。
【0120】
薬剤負荷したゲルを懸濁させるための液体製剤
液体製剤は、液体の薬学的キャリア中に懸濁させられた、自己集合した分散ゲル、ナノ構造体、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの形態では、自己集合したゲルを、投与を容易にするため、および/または毒性を最小にする目的で所望の濃度に到達させるために液体媒体中に懸濁させるか再度懸濁させる。いくつかの形態では、塩で緩衝化された実質的に水性の媒体が薬物負荷量が高い自己集合したヒドロゲルの形成において好ましいが、高い薬剤含有量を維持するためのゲルの懸濁および精製工程においては、塩溶液よりも水が好ましい。
【0121】
適切な液体キャリアには、蒸留水、脱イオン水、純水もしくは超純水、食塩水、ならびに塩および/もしくは緩衝液を含む他の生理学的に許容され得る水溶液(リン酸緩衝食塩水(PBS)、リンゲル液、および等張性塩化ナトリウム、または動物もしくはヒトへの投与にふさわしい任意の他の水溶液など)が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、液体キャリア中の塩濃度は、生理学的範囲内の濃度である。
【0122】
いくつかの実施形態では、懸濁媒体および精製媒体としての蒸留水、脱イオン水、純水もしくは超純水は、PBSまたは他の塩溶液よりも集合したヒドロゲル中に高負荷量の薬剤が得られる。
【0123】
他の実施形態では、液体製剤は、生理学的流体と比較して等張であり、pHがおよそ同じである(約pH4.0~約pH8.0、より好ましくは約pH6.0~pH7.0の範囲に及ぶ)。pHは、負荷すべき薬剤(例えば、リドカイン)が沈殿せず、生理学的条件にも近いように選択する。液体薬学的キャリアは、1つまたはそれより多くの生理学的に適合性の緩衝液(リン酸緩衝液または重炭酸緩衝液など)を含み得る。当業者は、意図する投与経路に適切な塩類含有量および水溶液のpHを容易に決定することができる。
【0124】
液体製剤は、1つまたはそれより多くの懸濁化剤(セルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、またはレシチンなど)を含み得る。液体製剤はまた、1つまたはそれより多くの防腐剤(エチルまたはn-プロピルp-ヒドロキシベンゾアートなど)を含み得る。
【0125】
製剤を、1つまたはそれより多くの薬学的に許容され得る賦形剤(希釈剤、防腐剤、結合剤、潤滑剤、崩壊薬、膨潤剤、充填剤、安定化剤、およびそれらの組み合わせが含まれる)を使用して調製することができる。液体製剤はまた、微量のポリマー、界面活性剤、または当業者に周知の他の賦形剤を含み得る。この文脈では、「微量」は、例えば、循環を介した標的組織への集合したゲル組成物の送達に悪影響を及ぼし得る賦形剤が存在しないことを意味する。
【0126】
これらの薬学的に許容され得る賦形剤を、精製された自己集合したヒドロゲルの凍結乾燥形態に高薬剤負荷量で含めることもできる。
【0127】
荷電表面への接着を増強するための製剤
一般に、水または低イオン強度(または低濃度、例えば、0と500mMとの間)の水溶液中で調製され、懸濁させられ、希釈されたヒドロゲルは、高イオン強度のリン酸緩衝食塩水または水溶液中で調製され、懸濁させられ、希釈されたヒドロゲルより荷電表面への接着能力が強い。
【0128】
乾燥粉末製剤およびキット
1つまたはそれより多くの治療剤、予防剤、および診断剤を負荷したゲル化剤を、微粉化した固体製剤として乾燥粉末形態で製剤化することができる。乾燥粉末構成要素を、別個の容器中に保管するか、または特定の比で混合して保管することができる。いくつかの実施形態では、適切な水性溶媒および有機溶媒をさらなる容器中に含める。いくつかの実施形態では、乾燥粉末構成要素、1つまたはそれより多くの溶媒、および集合したナノ構造体を混合および調製するための手順に関する説明書を、キット中に含める。あるいは、安定化した集合した粒子、ナノ粒子またはそのバルクゲルを、真空乾燥または凍結乾燥を介して乾燥させ、適切な薬学的液体キャリアを、集合したナノ構造体またはゲル組成物を使用の際に再水和および懸濁させるために添加することができる。
【0129】
乾燥粉末製剤を、典型的には、1つまたはそれより多くのゲル化剤、安定剤、または活性薬剤を1つまたはそれより多くの薬学的に許容され得るキャリアとブレンドすることによって調製する。薬学的キャリアは、1つまたはそれより多くの分散剤を含み得る。薬学的キャリアはまた、1つまたはそれより多くのpH調整剤または緩衝液を含み得る。適切な緩衝液は、有機酸および有機塩基(クエン酸ナトリウムまたはアスコルビン酸ナトリウムなど)から調製した有機塩を含む。薬学的キャリアはまた、1つまたはそれより多くの塩(塩化ナトリウムまたは塩化カリウムなど)を含み得る。いくつかの形態では、最終キャリア緩衝液は、ゲルの調製および/または精製用の緩衝液と同一である。他の形態では、最終キャリア緩衝液は、ゲルの調製および/または精製用の緩衝液と同一ではない。
【0130】
乾燥粉末製剤を液体製剤中に懸濁させて、集合した粒子またはそのナノ粒子の懸濁液を形成し、液体製剤の送達について当該分野で公知の方法を使用して全身または局所に投与することができる。
【0131】
注射用製剤
いくつかの実施形態では、薬剤負荷した集合した粒子を、非経口送達(懸濁液の注射または粘膜表面への局所適用など)のために製剤化する。製剤を、任意の経路(静脈内投与など)を介して投与することができるか、処置すべき器官または組織に直接注射することができる。例えば、非経口投与には、患者の静脈内、皮内、腹腔内、膀胱内、髄腔内、胸膜内、気管内、筋肉内、膣内、皮下、または結膜下(subjunctivally)への投与が含まれ得る。
【0132】
非経口製剤を、当該分野で公知の技術を使用して、水性組成物として調製することができる。典型的には、かかる組成物を、注射用製剤(例えば、液剤または懸濁剤;注射前に再構成媒体を添加することによって液剤または懸濁剤を調製するために使用するのに適した固体形態)として調製することができる。
【0133】
キャリアは、例えば、水、緩衝液、エタノール、1つまたはそれより多くのポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール)、油(植物油(例えば、ピーナッツ油、トウモロコシ油、ゴマ油など)など)、ポリマー(例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン)、およびそれらの組み合わせを含む溶媒または分散媒であり得る。
【0134】
製剤は、典型的には、再構成の際に、非経口投与のためにpH4~8に緩衝化される。適切な緩衝液には、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、重炭酸緩衝液、およびクエン酸緩衝液が含まれるが、これらに限定されない。
【0135】
水溶性ポリマーは、しばしば、非経口投与のための製剤化において使用される。適切な水溶性ポリマーには、ポリビニルピロリドン、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、およびポリエチレングリコールが含まれるが、これらに限定されない。
【0136】
滅菌注射剤を調製することができる。例えば、滅菌製剤を、最初に処理溶液(例えば、薬剤およびゲル化剤溶液)の滅菌濾過を行い、その後に無菌処理条件下でのゲルの調製、懸濁、精製、および凍結乾燥を行うことによって調製することができる。あるいは、すべての処理工程を、非無菌条件下で行うことができ、次いで、最終滅菌(例えば、ガンマ線照射またはE-ビーム照射)を、凍結乾燥したヒドロゲル生成物に適用することができる。再懸濁用の滅菌溶液を、類似の方法を使用して調製することもできる。
【0137】
防腐剤を、真菌および微生物の成長を防止するために使用することができる。適切な抗真菌剤および抗菌剤には、安息香酸、ブチルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、ベンジルペルオキシド、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、セチルピリジニウムクロリド、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、およびチロメサールが含まれるが、これらに限定されない。
【0138】
適切な経口剤形には、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、およびロゼンジが含まれる。錠剤を、当該分野で周知の圧縮または成形技術を使用して作製することができる。ゼラチンカプセルまたは非ゼラチンカプセルを、硬質カプセルまたは軟質カプセルのシェルとして調製することができ、これらのカプセルは、当該分野で周知の技術を使用して、液体、固体、および半固体の充填物質を封入することができる。これらのカプセルは、好ましくは、胃を通過するときの解体を回避するために腸溶コーティングされる。
【0139】
賦形剤(可塑剤、顔料、着色剤、安定剤、および流動促進剤が含まれる)を使用して、腸内投与のためのコーティングされた組成物を形成することもできる。製剤を、“Pharmaceutical dosage form tablets”,eds.Libermanら(New York,Marcel Dekker,Inc.,1989)、“Remington-The science and practice of pharmacy”,20th ed.,Lippincott Williams&Wilkins,Baltimore,MD,2000、および“Pharmaceutical dosage forms and drug delivery systems”,6th Edition,Anselら(Media,PA:Williams
and Wilkins,1995)などの標準的な参考文献に記載のように調製することができる。これらの参考文献は、錠剤およびカプセルを調製するための賦形剤、材料、装置、およびプロセス、ならびに錠剤、カプセル剤、および粒剤の遅延放出投薬形態に関する情報を提供している。
【0140】
III. 作製方法
1. 薬剤を負荷したナノ構造化ゲル集合物の作製
集合したバルクゲルは、一般に、両親媒性ゲル化剤および薬物の作用因子の集合由来の繊維状構造を含む。バルクゲルまたは粒子における自己集合は、種々の形状(ミセル、小胞、ラメラ、または繊維、シート、テープなどが含まれる)を有し得る。
【0141】
一般に、極性有機溶媒(DMSO、メタノール、またはイソプロパノールなど)を使用して、ゲル化剤および薬物の作用因子を溶解および混合する。水性媒体(例えば、水、低張液、等張液、または高張液)を添加して、薬物負荷が高い自己集合したヒドロゲル組成物を形成する。
【0142】
混合物を、浴中にて加熱および/または超音波処理および/または配置を行ってゲル化剤、薬剤、および任意の他の固体成分を完全に溶解して均一な溶液を形成することができる。次いで、溶液を、制御された条件下で(例えば、温度制御された容器または水浴)冷却し、そして/または平静な場所に静置する。溶液は、所与の期間後に粘着性ゲルに移行し得る。容器を倒置した際に室温で少なくとも10秒間、場合によっては、少なくとも5、10、または15秒間、場合によっては約1、5、10、30、または60分間、1日間、2日間、3日間、1週間、2週間、またはそれより長い期間にわたって重力流が認められないとき、完全にゲル化したと見なされる。ゲルは、好ましくは、少なくとも60分間またはそれを超える期間にわたって倒置安定性を示す。自己集合したゲルは均一であり、倒置に対して安定であり、これは、ゲル化領域(非流動性)および非ゲル化液体領域(流動性)の混合物である不均一材料とは異なる。
【0143】
本明細書中に記載のように調製した自己集合したゲルは、約90wt/wt%、約80wt/wt%、約70wt/wt%、約60wt/wt%、約50wt/wt%、約45wt/wt%、約40wt/wt%、約35wt/wt%、約30wt/wt%、約25wt/wt%、約20wt/wt%、約15wt/wt%、約10wt/wt%、または約5wt/wt%までのアミン含有薬剤(または上に列挙した他の薬剤)の負荷効率を示す。
【0144】
本明細書中に記載のように調製した自己集合したゲルは、約100wt/wt%、99wt/wt%、98wt/wt%、97wt/wt%、96wt/wt%、95wt/wt%、94wt/wt%、93wt/wt%、92wt/wt%、91wt/wt%、90wt/wt%、約80wt/wt%、約70wt/wt%、約60wt/wt%、約50wt/wt%、約45wt/wt%、約40wt/wt%、約35wt/wt%、約30wt/wt%、約25wt/wt%、約20wt/wt%、約15wt/wt%、約10wt/wt%、または約5wt/wt%までのアミン含有薬剤(または上に列挙した他の薬剤)の捕捉効率または封入効率を示す。
【0145】
いくつかの例では、ゲルの流動学的性質を調整する(チキソトロピーを付与することなど)ために塩(複数可)を水性媒体(緩衝液など)に添加することなどによって、ゲルの形成中に1つまたはそれより多くのさらなる塩を含める操作を用いてゲルを作製する。例えば、有機溶媒(DMSOなど)への両親媒性ゲル化剤の溶解および1つまたはそれより多くの塩を含むリン酸緩衝食塩水(PBS)の添加により、さらなる塩(複数可)が存在しない水、水性媒体、または緩衝液と比較して、自己集合したゲルにチキソトロープ性が付与される。ゲルの流動学的性質を調整するために添加することができる塩の例には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、または亜鉛イオンを提供することができる任意の適切な塩を使用することができる。いくつかの例では、塩(複数可)を、ゲル形成中に添加する。いくつかの他の例では、塩(複数可)を、塩(複数可)を含む水性媒体中の形成されたゲルを再度懸濁させることにより、ゲル形成後(処理後工程中など)に添加する。
【0146】
流動学的性質を調整するために使用する(ゲル形成中または処理後に添加する)ことができる塩(複数可)の濃度は、水性媒体中に存在する場合(ゲルの調製で使用するか、形成されたゲルを再度懸濁させるため)または塩(複数可)を含む最終ゲル中の濃度として存在する場合、約0.1~約300mM、約0.1~約300mM、約0.1~約250mM、約0.1~約200mM、約0.1~約150mM、約0.1~約100mM、約0.1~約50mM、または約0.1~約25mMの範囲にあり得る。
【0147】
いくつかの例では、本明細書中に記載の塩(複数可)を、緩衝液(複数可)(リン酸緩衝液など)に添加するか、ゲルを調製するために使用するか、調製したゲルを、約1~250mM、約1~200mM、約1~150mM、約1~100mM、約1~75mM、約1~50mM、または約1~25mMの範囲の濃度で再度懸濁させることができる。いくつかの他の例では、本明細書中に記載の塩(複数可)を、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150mMの濃度、またはそれを超える濃度で、緩衝液(複数可)(リン酸緩衝液など)に添加するか、ゲルを調製するために使用するか、調製したゲルを再度懸濁させることができる。全処理工程後の最終ゲル中の1つまたはそれより多くの塩の濃度は、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150mMの濃度、またはそれを超える濃度であり得る。
【0148】
いくつかの例では、ゲルの流動学的性質を調整する(チキソトロピーを付与することなど)ために1つまたはそれより多くの有機溶媒をゲルの形成中に含めることまたはゲル形成後(処理後工程中など)に添加することによるゲルを作製する。ゲルの流動学的性質を調整するために単独または既に溶解した塩(複数可)と組み合わせて使用することができる有機溶媒の例には、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、t-ブタノールなど)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの他の例では、本明細書中に記載の有機溶媒(複数可)を、ゲル形成の一部として添加するか、緩衝液(複数可)(リン酸緩衝液など)に添加することができ、調製されたゲルを再度懸濁させて、有機溶媒(複数可)の濃度が約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25%(体積/総ゲル体積)であるゲルを得ることができる。
【0149】
さらに他の例では、ゲルの流動学的性質を調整する(チキソトロピーを付与することなど)のために直前に記載の塩(複数可)と有機溶媒(複数可)との組み合わせが添加されるようにゲルを作製する。ゲルへのチキソトロープ性の付与などのために流動学的性質が調整されるかかる例では、ゲル調製における塩(複数可)および/または有機溶媒(複数可)の使用量を、好ましくはゲル内に少なくとも約50wt/wt%、約45wt/wt%、約40wt/wt%、約35wt/wt%、約30wt/wt%、約25wt/wt%、約20wt/wt%、約15wt/wt%、約10wt/wt%、または約5wt/wt%のアミン含有薬剤(または上記の他の薬剤)の封入効率が得られるように選択または制御することができる。
【0150】
いくつかの例では、ゲルを、いかなるさらなる塩および/または有機溶媒を用いずに形成することができるか、その流動学的性質を、塩および/または有機溶媒(複数可)(ゲル形成中またはゲル形成後のいずれかでの)の添加によって調整することができる。記載のゲルは、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1、約2、約3、約4、または約5パスカルから、約50、約75、約100、約150、約200、約250、もしくは約300まで、または本明細書中に開示の上端点と下端点との任意の組み合わせの貯蔵弾性率(G’)を有するか、有するように調整することができる。記載のゲルは、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1、約2、約3、約4、または約5パスカルから、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、または約300パスカルまで、または本明細書中に開示の上端点と下端点との任意の組み合わせの損失弾性率(G’’)を有するか、有するように調整することができる。
【0151】
いくつかの例では、(ゲル形成中またはゲル形成後のいずれかでの)塩および/または有機溶媒(複数可)の添加または無添加によってゲルを作製し、このゲルの粘度は、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1、約2、約3、約4、もしくは約5センチポアズ(cP)から、約10、約100、約200、約300、約400、約500、約600、約700、約800、約900、約1,000、約1,100、約1,200、約1,300、約1,400、約1,500、約1,600、約1,700、約1,800、約1,900、約2,000、約2,500、もしくは約3000cPまでの間の範囲、または本明細書中に開示の上端点と下端点との任意の組み合わせである。いくつかの例では、(ゲル形成中またはゲル形成後のいずれかでの)塩および/または有機溶媒(複数可)の添加によって形成されたゲルは、例えば、曝露の際にゲルの粘度が変化して(すなわち、減少して)剪断されるが、その元の粘度まで回復するか、その元の粘度まで実質的に回復するようなチキソトロープ性を示す。
【0152】
蒸留技術、濾過技術、透析技術、および遠心分離技術を使用して、非封入の過剰な薬剤および望ましくない溶媒をゲルから除去することができる。いくつかの実施形態では、負荷された薬剤の保持を改善するためには、純水または低イオン強度溶液を使用した精製が高イオン強度溶液より好ましい。いくつかの実施形態では、透析媒体としての0.15M未満の塩濃度の水または低イオン強度の他の水性溶媒は、0.15Mまたはそれより高い塩を有する食塩水と比較して、ヒドロゲル中により高いレベルの薬剤負荷が維持される。
【0153】
安定化したとき、自己集合したゲル組成物は溶媒を含まず、ゲル化剤を、液体両親媒性物質(ビタミン誘導液体両親媒性物質など)と組み合わせて薬物の作用因子を捕捉する混合物を形成することができる。混合物は、1つまたはそれより多くのゲル化剤、1つまたはそれより多くの安定剤、および1つまたはそれより多くの液体両親媒性物質を含み得る。次いで、混合物を浴中にて加熱/超音波処理/配置して、均一な溶液を形成する。次いで、得られた溶液を冷却し、そして/または平静な場所に静置する。溶液は、所与の期間後に粘着性ゲルに移行し得る。
【0154】
いくつかの実施形態では、1つまたはそれより多くのゲル化剤および必要に応じて封入すべき薬剤を、溶媒の非存在下で組み合わせて混合物を形成することができる。次いで、混合物を浴中にて加熱/超音波処理/配置して、均一な溶液を形成する。次いで、得られた溶液を冷却し、そして/または平静な場所に静置する。溶液は、所与の期間後に粘着性ゲルに移行し得る。
【0155】
いくつかの実施形態では、1つまたはそれより多くのゲル化剤および1つまたはそれより多くの溶媒を含む融解したゲルを、薬剤を封入するために、固体薬剤、同一の1つまたはそれより多くの溶媒に溶解した薬剤、またはゲル適合性溶媒中に溶解または懸濁させた薬剤に添加することができる。
【0156】
いくつかの実施形態では、ゲル化剤、安定剤、溶媒/緩衝液の含有量、および/または活性薬剤の温度感受性に応じて、ゲルを40~110℃に加熱する。これらの混合物を、全ての材料が溶解するまで、1~30分間またはそれを超えて、浴中にて加熱および/または超音波処理および/または配置を行うことができる。溶液を-20~37℃に冷却し、そして/または15分間、30分間、45分間から1時間、数時間、1日間、2日間、または3日間静置する。
【0157】
ナノ構造体を、固化したゲル中で形成する。いくつかの実施形態では、ナノ構造体は、1ミクロン、2ミクロン、3ミクロン、4ミクロン、5ミクロン、10ミクロン、20ミクロン、または25ミクロンの長さおよび/または幅を有する繊維、シート、または粒子であり得る。ナノ構造体は、ネットワークに凝集することができ、そして/または液晶、乳濁液、フィブリル構造、またはテープ様形態の形態であり得る。ナノ構造体が繊維の形態であるとき、繊維は約2nmまたはそれを超える直径を有することができ、数百ナノメートルまたはそれを超える長さを有することができる。いくつかの実施形態では、繊維は、1ミクロン、2ミクロン、3ミクロン、4ミクロン、5ミクロン、10ミクロン、20ミクロン、もしくは25ミクロン、またはそれを超える長さを有することができる。
【0158】
両親媒性分子が溶媒中で自己集合するとき、ゲル化剤分子の疎水性部分および親水性部分が相互作用して、ゲル化剤分子のラメラを形成し得る。いくつかの実施形態では、ゲルがヒドロゲルであるとき、ゲル化剤の疎水性部分は、所与のラメラの内側領域に位置し、親水性部分はラメラの外面に位置する。いくつかの実施形態では、ゲルが有機ゲルであるとき、ゲル化剤の疎水性部分は、所与のラメラの外側領域に位置し、親水性部分は、そのラメラの内面に位置する。ラメラは、約3~約5ナノメートルの幅および数ミクロンの長さを有することができる。数十および数百のかかるラメラが一緒に束になって、ナノ構造体(例えば、ナノサイズの幅(例えば、100~900nm、数ミクロンまたはそれより長い長さを伴う)の繊維およびシート様構造体など)を形成し得る。
【0159】
ゲル化剤は、溶媒以外のヒドロゲル組成物(例えば、ゲル化剤、治療上活性な薬剤、および必要に応じて安定剤)の総量のうちの少なくとも10モル%、20モル%、30モル%、40モル%、50モル%、60モル%、70モル%、80モル%、または90モル%であり得る。ゲル化剤を、溶媒中に0.01重量%と50重量%との間(例えば、500mg/mLまで)まで溶解する。
【0160】
2. 繊維混合物への懸濁および粒子への処理
いくつかの実施形態では、自己集合したゲルを、(例えば、均質化によって)低イオン強度水溶液中に懸濁させ、遠心分離(例えば、2,000~25,000rpmで2~15分間)および再懸濁/洗浄の反復サイクルを通じて単離して、ペレット化したゲルから水分散性の自己集合したナノ構造体を得る。いくつかの形態では、バルクゲルを、水および/またはリン酸緩衝食塩水(「PBS」)中に懸濁させ、均質化または超音波処理して、バルクゲルを、バルクゲル中で形成された繊維性ナノ構造体を保持する粒子へと分割する。
【0161】
いくつかの実施形態では、自己集合したゲルを、(例えば、均質化によって)低イオン強度水溶液中に懸濁させ、透析またはタンジェンシャルフローフィルトレーションによって単離して、ペレット化したゲルから水分散性の自己集合したナノ構造体を得る。
【0162】
いくつかの実施形態では、ナノ構造体は、乾燥した環境(走査型電子顕微鏡法における真空乾燥試料など)で測定したときに、2nmまたは2nm超から500nmまでの最小の寸法(例えば、厚み、幅、もしくは直径)を有することができ;あるいは、動的光散乱を介して流体力学的サイズについて測定したときに、10nm、50nm、100nm、200nm、300nm、400nm、500nmまたはこれを超える最小寸法を有することができる。ナノ粒子は、100nmと990nmとの間、好ましくは500nmと900nmとの間の流体力学直径を有することができ、ナノ粒子は、少なくとも2時間の期間にわたって血清中でのサイズの少なくとも50、60、70、または80%を維持する。
【0163】
IV. 使用方法
製剤を、種々の経路(処置すべき器官または組織への直接注射、手術時の配置、創傷への局所適用、または鼻腔、眼、口腔もしくは口内表面、膣もしくは直腸内の粘膜表面上への配置など)を介して投与することができる。例えば、非経口投与には、静脈内、皮内、腹腔内、膀胱内、髄腔内、胸膜内、気管内、筋肉内、膣内、皮下、または結膜下(subjunctivally)への投与が含まれ得る。
【0164】
薬物を負荷したゲル組成物を、種々の公知の局所送達技術(注射、カテーテルを使用した点滴注入、移植、エアロゾルを使用した吸入、および粘膜(口腔表面または口内表面など)、鼻道もしくは肺路、腸管(経口または直腸)、膣、または皮膚への局所適用が含まれる)を通じて投与することができる。安定化したナノ構造体のin situでの自己集合により、組成物の局所送達および活性薬剤の刺激応答送達が可能である。エステラーゼが存在するか、炎症性組織が酵素を放出するとき、酵素はゲル組成物を解体し、アミン含有薬剤(リドカインまたは他のかかる化合物など)および任意の他の薬剤(本明細書中に記載の薬剤など)を放出する。薬剤(複数可)が放出された後、酵素濃度は減少する。切断されないゲル組成物は、病理学的環境が薬剤放出の量およびタイミングを調節する「オンデマンド放出」のための別の炎症刺激まで安定なままである。いくつかの実施形態では、組成物を使用して、組織再生の種々のステージと相関する治療剤を放出させることができる。
【0165】
ゲルを、水和形態または乾燥形態で投与することができる。
【0166】
ゲルを、必要に応じて水和媒体と共に、キット中の滅菌凍結乾燥パッケージ中に提供することができる。ゲルを、標準的な吸湿性パッドの代わりにバンドエイドなどのガーゼ付絆創膏に付着させることができる。
【0167】
ゲルを、使用時に再度懸濁させてもよく、所望の用量を送達するためのサイズに切断され、次いで、乾燥状態または再水和状態で投与される固体の形態で提供してもよい。
【0168】
好ましい実施形態では、薬剤は、局所麻酔薬、抗感染薬(抗生物質など)、抗菌薬、および/または抗炎症薬である。製剤を、疼痛緩和、感染の処置、もしくは細胞の死滅が望まれる部位またはその隣接部位に適用する。
【0169】
いくつかの実施形態では、ゲル組成物を、例えば、加水分解もしくは酵素分解への曝露の際、または外部刺激への曝露によって制御可能に解体することができる。ゲルを、両親媒性ゲル化剤中の不安定な結合(エステル結合、アミド結合、無水物結合、カルバマート結合、リン酸ベースの結合(例えば、ホスホジエステル)、ジスルフィド(-S-S-)など)、ゲル化剤内の疎水性基と親水性基との間に存在し得る酸切断基(-OC(O)-、-C(O)O-、または-C=NN-など)の切断によって解体することができる。不安定な結合の例は、例えば、PCT公開番号WO2010/033726号にも記載されている。
【0170】
いくつかの実施形態では、封入された薬剤は、ゲル解体の際にゲル組成物から制御可能に放出される。例えば、封入された薬剤を、ある期間にわたって(例えば、1日間、1週間、1ヶ月間、6ヶ月間、または1年間)徐々に放出させることができる。パラメーターに応じて(例えば、ゲル組成物を生理学的条件下(約pH7.4および約37℃)で投与するとき)、放出を、数分から、数日、数ヶ月まで遅延させるか延長することができる。
【0171】
異なるパラメーターを使用して、放出を制御することができる。例えば、酵素濃度および/または温度によって徐放を制御することができる。例えば、酵素濃度の上昇を特徴とする感染領域への送達による高酵素濃度、または、例えば、腫瘍または感染領域中の低pHを用いて放出を促進することができる。いくつかの実施形態では、バースト放出を伴わないか、最小限のバースト放出を伴って徐放が起こる。
【0172】
いくつかの実施形態では、薬剤負荷した集合したゲル組成物またはナノ繊維粒子を使用して1つまたはそれより多くの局所麻酔薬を炎症性組織中に送達させ、それにより、炎症の1つまたはそれより多くの症状を処置する。他の実施形態では、薬剤負荷した集合したゲル組成物またはナノ繊維粒子を使用して、1つまたはそれより多くの活性薬剤を、薬剤の持続性送達を目的とする腫瘍組織に送達させ、さらに、エステラーゼを産生する腫瘍細胞および酵素を放出する炎症性組織によって取り込まれ、前述の腫瘍細胞および炎症性組織の両方に対して病理特異的にプロドラッグゲル化剤が分解され、活性薬剤が放出される。遊離形態で送達される活性薬剤と比較して、薬剤負荷した集合した組成物は、炎症組織および/または腫瘍組織中に分配される(すなわち、非炎症組織または非腫瘍組織よりも炎症組織および/または腫瘍組織に蓄積する)。
【0173】
あるいは、薬物の作用因子を有するゲル化剤を生体システムに適用することができ、自己集合がin situで起こり得る。例えば、本明細書中に記載のゲル組成物を骨の表面に適用することができ、ゲルを、骨の孔内に集合させることができる。例えば、加熱したゲル組成物を溶液の形態で骨の部位に注射し、次いで、生理学的温度に冷却してゲル形態に集合させることができる。
【0174】
薬剤負荷したゲル組成物またはナノ繊維粒子は、遊離形態の活性薬剤の送達または共溶媒補助ゲル組成物からの送達と比較して、単回用量、長時間の作用、または組織特異的製剤から利益を得る標的化効率、効力、安全性、およびコンプライアンスの改善に有用であり得る。
【0175】
薬剤負荷されたゲル組成物で処置すべき疾患または障害の例には、アレルギー(例えば、接触皮膚炎)、関節炎、喘息、癌、心血管疾患、糖尿病性潰瘍、湿疹、感染症、炎症、粘膜炎、歯周疾患、乾癬、呼吸器経路の疾患(例えば、結核)、血管閉塞、疼痛、移植片対宿主病、口唇潰瘍、間質性膀胱炎、ハンナー病変、術後疼痛、末梢神経ニューロパシー、細菌容態、ウイルス容態が含まれるが、これらに限定されない。
【0176】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照することによってさらに理解されるであろう。
【実施例0177】
実施例1: ゲル形成のための媒体としての塩水溶液の使用によりリドカイン負荷が増加する;懸濁媒体としての水の使用によりリドカインの高負荷が維持される。
材料と方法
【0178】
DMSO-水系におけるヒドロゲルの調製:
アスコルビルパルミタート(AP)を含むDMSOの保存液(20.4wt/wt%)を、3.95グラムのアスコルビルパルミタートを15.23グラムのDMSOに溶解することによって調製した。保存液(2.0g)を、白色固体としてリドカイン遊離塩基を含む2つの20mLシンチレーションバイアルに分注した。第1のバイアルは120mgリドカインを含み、第2のバイアルは60mgリドカインを含んでいた。HPLCグレードの純水(5.6mL)を各バイアルに添加し、得られた懸濁液を熱水浴中にて撹拌しながら80℃で6分間加熱した。バイアルを熱水浴から取り出し、室温の水浴中で30分間冷却した(120mgおよび60mgの調製物について、理論上のリドカイン負荷は、それぞれ13%および23%)。次いで、バイアルを水浴から取り出し、室温でさらに2時間静置した。得られたヒドロゲルを水(8mL)中に懸濁させて、最終体積を15mLにした。
【0179】
固体含有量のみに関する薬物負荷を計算した。APのDMSO溶液を含む2グラムの保存液を添加して、0.41グラムのAPを含むゲルを得た。したがって、2gのAP/DMSO保存液を使用した120mgリドカインを含む試料の理論上のリドカイン負荷を、以下のように計算する:
負荷=0.12グラム/(0.12+0.41グラム)=23%。
【0180】
DMSO-PBS系におけるヒドロゲルの調製:
アスコルビルパルミタートを含むDMSOの保存液(20.4wt/wt%)を、3.95グラムのアスコルビルパルミタートを15.23グラムのDMSOに溶解することによって調製した。保存液(2.0g)を、白色固体としてリドカイン遊離塩基(120mg)を含む第1の20mLシンチレーションバイアルに分注した。第2のバイアルでは、アスコルビルパルミタート(200mg)およびリドカイン遊離塩基(30mg)をDMSO(0.7mL)に溶解した。リン酸緩衝食塩水をバイアルに添加し(第1のバイアルに5.6mL、第2のバイアルに2.8mL添加する)、得られた懸濁液を熱水浴中にて撹拌しながら80℃で6分間加熱した。バイアルを熱水浴から取り出し、室温の水浴中で30分間冷却した。次いで、バイアルを水浴から取り出し、室温でさらに2時間静置した。
【0181】
得られたヒドロゲルを水(8mL)中に懸濁させて、最終体積を15mLにした。
【0182】
また、懸濁媒体の影響を研究するために、水の代わりにPBS(8mL)を使用してDMSO-PBS系中に形成されたヒドロゲルを懸濁させ、最終体積を15mLにした。
【0183】
負荷効率および封入効率の評価:
懸濁させたヒドロゲルのアリコート(1mL)を遠心管に移し、14,000RCFで8分間遠心分離した。上清をピペットによって除去し、純水で1:100に希釈した。残存するペレットを、DMSO(1mL)に溶解し、1%クエン酸のメタノール溶液で1:100に希釈した。上清中および残存ペレット中のリドカインおよびアスコルビルパルミタートの含有量を、HPLCによってアッセイして、製剤の封入リドカイン含有量および遊離(すなわち、非封入)リドカイン含有量を評価した。
【0184】
結果
水およびPBS中に形成されたアスコルビルパルミタートヒドロゲル中のリドカインの負荷量を、定量し、表1に示した。
【0185】
【0186】
ゲル形成中の水性構成要素としての塩水溶液(ここでは、リン酸緩衝食塩水(PBS))は、水を使用して形成されたゲルと比較してリドカイン負荷が有意に増加した。
【0187】
親水性小分子(リドカイン)は、一般に、純水およびDMSOの共溶媒系で形成されたアスコルビルパルミタートヒドロゲル中に効率的に封入されない。ゲル調製工程において塩が必要とされるのにはいくつかの要因が起因し得るが、これらの要因は、ゲル中にリドカインを会合または捕捉する静電相互作用、ゲルの膨潤/崩壊、または他の機序が単独または組み合わせて関連し得る。
【0188】
表1に示すようにゲル中にリドカインを高負荷させるには水よりもPBSが好ましいが、懸濁媒体としての水は、高負荷の維持においてPBSより優れていた(表2)。
【0189】
【0190】
実施例2: 無塩媒体中での精製は、塩含有溶液と比較して、ヒドロゲルからのリドカインの漏出を非常に減少させる。
【0191】
材料と方法
遠心分離:
過剰な薬物および溶媒(例えば、DMSO)などの夾雑物を除去するために、懸濁させたヒドロゲルを遠心分離し、任意の可溶性夾雑物(過剰な薬物およびDMSOなど)を含む上清を破棄した。ゲルペレットを、PBSまたは水に再度懸濁させた。遠心分離プロセスおよび再懸濁プロセスを、ゲル精製のために少なくとも3回繰り返した。
【0192】
透析:
8~10kDa分子量カットオフの透析バッグ、試料体積と比較して約1000倍体積過剰の外相としての水またはPBSを使用した透析を、2日間にわたって3~5回水またはPBSを交換して行った。
【0193】
結果
遠心分離およびPBSへの再懸濁の繰り返しによりゲルが破壊され、各洗浄サイクルでリドカインの一部が放出された(
図1)。したがって、過剰な溶媒および遊離薬物を除去するためにPBSを使用した精製技術としての遠心分離は、薬物負荷を維持しながら親水性薬物を含むヒドロゲルを精製するには無効であった。
図1は、PBS中での遠心分離サイクルが、最初にPBSに溶解し、13%リドカインを含めることによって調製されたアスコルビルパルミタートヒドロゲル(AP:リドカイン-PBS13%と示す)由来のリドカイン負荷を急速に減少させることを示す。遠心分離のための洗浄/再懸濁溶液として純水を使用するときに、高負荷レベルを維持することができる。水に再懸濁する3回の遠心分離サイクルでは、負荷が92%維持され、封入%は91%に増加した。対照的に、3回の洗浄サイクルのためにPBSを使用すると、薬物負荷は20%しか維持されず、封入%は53%にしか増加しなかった(
図1)。
【0194】
透析では、ヒドロゲル繊維は、透析管の内側に有効に保持され、これは、この繊維の寸法が管の孔径よりも遥かに大きかったからである。表3に示すように、遊離薬物%は、外相として水を用いた透析を使用した場合に著しく低下したが、ゲル負荷の減少は少しだけであった。これらの結果は、精製媒体としての水が封入%を増加させながら(すなわち、過剰な遊離薬物を除去しながら)薬物負荷を保持することができるという点で遠心分離と一致する。水の代わりにPBSを使用して行った透析では薬物負荷が完全に喪失され、これは、懸濁相としてPBSを使用した遠心分離と類似していた。これらのデータは、純水が液体ベースの精製方法中の高薬物負荷の維持に有効であるのに対して、塩の存在がゲルを破壊し、薬物負荷を喪失させることを示唆している。
【0195】
塩の存在はゲル形成工程中で高薬物負荷を達成するために必要である(表1);それに対して、精製において、無塩培地は封入された薬剤のゲルからの漏出を最小にする。
【0196】
【0197】
この所見により、製剤の以下の2つの重要な局面を制御する手段が得られた:(1)遊離含有量対封入含有量(遊離薬物を精製された製剤に添加して所望のレベルまで戻すことができるので)、および(2)製剤の安定性、凍結乾燥/再懸濁、ならびに組織および他の表面へのゲルの接着に重要な懸濁流体の組成。
実施例3: 水での調製、懸濁、および希釈は、PBSでの調製、懸濁、および希釈と比較して、アスコルビルパルミタートヒドロゲルの荷電表面への接着レベルを改善する。
【0198】
材料と方法
アスコルビルパルミタート(AP、20~25mg)をガラスバイアルに添加し、次いで、DMSO(3.5μL/mg AP)に溶解した。次いで、水およびPBSを添加し(4mL/mL DMSO)、混合物を、ヒートガンを使用して50秒間加熱した。次いで、バイアルを、ベンチトップに30分間静置した。この時点で、1mLの水またはPBSを水ゲルまたはPBSゲルにそれぞれ添加し、これらのゲルを強く撹拌して懸濁させた。次いで、ゲルを9mLの水またはPBSでそれぞれ希釈した。各溶液(1mL)を、24ウェルのアミンコーティングしたポリスチレンプレートの1つのウェルに添加し、30分間静置した。この時点で、ピペットを用いてゲル懸濁液を取り出し、ウェルを水またはPBSでそれぞれ洗浄した(短時間撹拌しながら1回の洗浄あたり1mL、合計6回)。次いで、ウェルを、iRiSデジタル画像化システム(Logos Biosystems)を使用して10倍で画像化した。画像化後、0.5mLエタノールを各ウェルに2分間添加して、表面に接着したAPゲル粒子を溶解した。次いで、200マイクロリットルの各溶液をUV透過性の96ウェルプレートに移し、254nmでの吸光度を測定した。溶液のAP含有量を、エタノール中で調製したAPの検量線を使用して定量した。次いで、各試料中で測定したAPの質量を、ポリスチレンプレートのウェル領域によって正規化した。
【0199】
結果
デジタル画像により、ゲルを水中で調製し、懸濁させ、そして希釈したときのアミンコーティングしたポリスチレンプレート上のAPゲルが、PBS中で調製し、懸濁させ、そして希釈したゲルより付着することが確認された。水中で調製し、懸濁させ、そして希釈したAPゲルについて、接着レベルは17μg/cm2であった。比較すると、PBS中で調製し、懸濁させ、そして希釈したAPゲルの接着レベルは2μg/cm2であった。この結果は、より低いイオン強度(PBSよりもむしろ水)で正電荷表面へのAPゲルの接着が8倍を超えて有意に増加することを示している。
【0200】
実施例4: 異なる溶媒を使用した低含水量のゲルの調製により、リドカイン負荷および封入率が改善される。
材料と方法
ヒドロゲルを、実施例1の「DMSO-PBS系におけるヒドロゲルの調製」中の第1のバイアルについて記載のように調製した。
【0201】
本実験において以下の6つのバリエーションを作製した:(1)1つの調製について、PBSレベルを5.6mLから2.8mLに低下させた(すなわち、PBS:DMSO比を4:1から2:1に変化させた)、(2)第2のゲル調製について、PBSレベルを5.6mLから1.4mLに低下させた(すなわち、PBS:DMSO比を4:1から1:1に変化させた)、および(3)残りのゲル調製について、溶媒はメタノール、エタノール、イソプロパノール、またはt-ブタノールであり、水を2.8mL使用した(すなわち、2:1 H2O:メタノール;2:1 H2O:エタノール;2:1 H2O:イソプロパノール;2:1 H2O:t-ブタノール)。ヒドロゲルを上記のように水中に懸濁させ、ゲル負荷および封入率についてアッセイした。
【0202】
結果
ヒドロゲル負荷および封入率の結果を、表4に示す。含水量の低下により、DMSO系におけるリドカイン負荷および封入率が改善される。DMSOからメタノールへ切り替えると、理論的に98%である薬物封入率および負荷率がほぼ100%になる。表4に詳述するように、本発明者らは、メタノールの代わりに他のアルコールの効果も試験し、溶媒をメタノールからエタノール、イソプロパノール、またはt-ブタノールに切り替えた場合、薬物封入率および負荷率の低下が増加した。これらの結果は、ゲル負荷および封入率において溶媒タイプおよび有機溶媒対水の相対体積比が重要であることを示す。
【0203】
【0204】
実施例5: 製剤負荷を制御するための塩の使用
材料と方法
NaClを添加したメタノール-リン酸緩衝液(PB)(pH7.4)におけるヒドロゲルの調製:
アスコルビルパルミタート(AP)を含むメタノールの保存液(20.4wt/wt%)を、3.95グラムのアスコルビルパルミタートを15.43グラムのメタノールに溶解することによって調製した。保存液(2.0g)を、各々が白色固体として120mgリドカイン遊離塩基を含む5つの20mLシンチレーションバイアルに分注した。0、50、100、150、または300mM NaClを含むリン酸緩衝液(PB)(pH7.4)を各バイアルに2.8mL添加し、得られた懸濁液を熱水浴中にて撹拌しながら80℃で6分間加熱した。バイアルを熱水浴から取り出し、室温の水浴中で30分間冷却した(理論上のリドカイン負荷は23%)。次いで、バイアルを水浴から取り出し、室温で一晩静置した。得られたヒドロゲルを水(8mL)中に懸濁させて、最終体積を15mLにした。
【0205】
ゲル精製後にNaClを添加したメタノール-リン酸緩衝液(PB)(pH7.4)におけるヒドロゲルの調製:
アスコルビルパルミタート(AP)を含むメタノールの保存液(20.4wt/wt%)を、3.95グラムのアスコルビルパルミタートを15.43グラムのメタノールに溶解することによって調製した。保存液(2.0g)を、各々が白色固体として120mgリドカイン遊離塩基を含む5つの20mLシンチレーションバイアルに分注した。リン酸緩衝液(PB)(pH7.4)を各バイアルに2.8mL添加し、得られた懸濁液を熱水浴中にて撹拌しながら80℃で6分間加熱した。バイアルを熱水浴から取り出し、室温の水浴中で30分間冷却した(理論上のリドカイン負荷は23%)。次いで、バイアルを水浴から取り出し、室温で一晩静置した。得られたヒドロゲルを水(8mL)中に懸濁させて、最終体積を15mLにした。
【0206】
過剰な薬物および溶媒(例えば、メタノール)などの夾雑物を除去するために、懸濁させたヒドロゲルを遠心分離し、任意の可溶性夾雑物(過剰な薬物およびメタノールなど)を含む上清を破棄した。ゲルペレットを、水中に再度懸濁させた。遠心分離プロセスおよび再懸濁プロセスを、ゲル精製のために少なくとも3回繰り返した。最終遠心分離工程後、ペレットを15mLの、0、50、100、150、または300mM NaClを含むPB中に再度懸濁させた。
【0207】
NaCl、KCl、CaCl2、MgCl2、またはZnClを添加したメタノール-リン酸緩衝液(PB)(pH7.4)におけるヒドロゲルの調製:
アスコルビルパルミタートを含むメタノールの保存液(20.4wt/wt%)を、4.3955グラムのアスコルビルパルミタートを16.9227グラムのDMSOに秤量することによって調製した。保存液(2.0g)を、各々が白色固体として120mgリドカイン遊離塩基を含む10種の20mLシンチレーションバイアルに分注した。NaCl、KCl、CaCl2、MgCl2、またはZnClを含むリン酸緩衝液(10mM、pH7.4)を、2つの濃度(50または150mM)で調製した。前述の塩を含むPB緩衝液を、シンチレーションバイアルに添加し、得られた懸濁液を撹拌しながら80℃で6分間加熱した。バイアルを熱水浴から取り出し、室温で一晩静置した。得られたヒドロゲルを水(8mL)中に懸濁させて、最終体積を15mLにした。
【0208】
結果
ゲル調製中またはゲル精製中のいずれかにNaClを添加したメタノール-リン酸緩衝液(pH7.4)についてのヒドロゲル負荷および封入率の結果を、以下の表5に示す。メタノールベースのヒドロゲル系では、水相への塩の添加を使用して、遊離リドカイン対封入したリドカインのレベルを制御することができ、したがって、ゲル負荷レベルを制御することができる。この塩の影響を、ゲルの調製工程および精製工程の両方で使用することができ、この影響は、用量依存性である(すなわち、塩の添加量が増加するにつれて、負荷または封入%の低下が増加する)。
【0209】
【0210】
ゲル調製中にNaCl、KCl、CaCl2、MgCl2、またはZnClを添加したメタノール-リン酸緩衝液(pH7.4)についてのヒドロゲル負荷および封入率の結果を、以下の表6に示す。PB製剤の緩衝液中の塩濃度の増加により、NaCl、KCl、CaCl2、MgCl2、およびZnClについてリドカイン負荷が減少する。負荷および封入の相対的変化は、全ての試験した塩化物塩にわたって類似していたが、得られたゲルのバルク特性の相違が認められた。これらの相違は、アスコルビルパルミタートヒドロゲルのより高次の自己集合に影響を及ぼす対カチオン(Na+、K+、Ca2+、Mg2+、Zn+)に原因し得る。
【0211】
【0212】
実施例6. ヒドロゲルの流動学的性質に及ぼすNaClおよびDMSOの影響。
材料と方法
ヒドロゲル1の調製:ヒドロゲルを、実施例1中の第1のバイアルについて記載のように調製した。
【0213】
ヒドロゲル2の調製:ヒドロゲルを、実施例1中の第1のバイアルについて記載のように調製した。再度懸濁させて15mLの体積にした後、ヒドロゲル懸濁液を、水で最終体積35mLまで希釈した。懸濁液を5,000RPMにて4℃で10分間遠心分離した。上清をデカントし、残存固体を水に再度懸濁させて35mLにし、再度遠心分離した。このプロセスを、合計で3回の遠心分離サイクルのために繰り返した。第3の遠心分離サイクル後、残存する固体試料を、水(3.2mL)ならびにリドカインHCl・H2O(157mM)および重炭酸ナトリウム(32mM)を含むリドカイン保存液(6.8mL)中に再度懸濁させた。
【0214】
ヒドロゲル3の調製:アスコルビルパルミタート(400mg)およびリドカイン(120mg)を20mLシンチレーションバイアルに秤量し、メタノール(1.4mL)に溶解した。水(2.8mL)を溶液に添加し、得られた懸濁液を水浴中にて撹拌しながら80℃で6分間加熱した。バイアルを熱水から取り出し、室温で一晩静置した。ヒドロゲルを水(15mL)中に再度懸濁させ、円錐遠心管に移し、最終体積35mLまで希釈した。懸濁液を、5,000RPMにて4℃で10分間遠心分離した。上清をデカントし、残存固体を水中に再度懸濁させて35mLにし、再度遠心分離した。このプロセスを、合計で3回の遠心分離サイクルのために繰り返した。第3の遠心分離サイクル後、残存する固体を、水(1mL)ならびにNaCl(300mM)およびリン酸ナトリウム(10mM)を含むpH6.59の保存液(6.4mL)中に再度懸濁させた。
【0215】
ヒドロゲル4の調製:ヒドロゲルを、実施例6中のヒドロゲル3などの遠心分離プロセスを通じて調製した。第3の遠心分離サイクル後、残存する固体試料を、水(1.5mL)ならびにNaCl(130mM)、リン酸ナトリウム(8.1mM)、およびDMSO(18.7%;vol/vol)を含むpH6.98の保存液(6.75mL)中に再度懸濁させた。
【0216】
ヒドロゲル5の調製:ヒドロゲルを、実施例6中のヒドロゲル3などの遠心分離プロセスを通じて調製した。第3の遠心分離後、残存溶媒を、NaCl(50mM)を含む保存液(6.4mL)中に再度懸濁させた。
【0217】
結果
ヒドロゲル製剤の特徴を、表7に列挙する。アスコルビルパルミタートおよびリドカインのpHおよび最終濃度は、各製剤について同一であるか類似することが意図される。ヒドロゲル流動学に及ぼす影響を証明するために、NaClおよびDMSOの量を変動させる。
【0218】
【0219】
5つのヒドロゲル試料の各々を、TA InstrumentsのAR-G2レオメーターで分析した。各製剤についての時間掃引、剪断掃引、およびチキソトロピーを表8に列挙し、
図2A~2Eは、ヒドロゲルの貯蔵弾性率G’、損失弾性率G’’、および位相角を示す。ヒドロゲル1は、結果として、最高の降伏応力および平衡粘度を有する最強のゲル(最高のG’、G’’)である。塩やDMSOを含まないヒドロゲル2は、粘度が非常に低い最弱のゲルである。塩を含み、かつDMSOを含まないヒドロゲル3は、ヒドロゲル1より弱く、粘度が低い。ヒドロゲル4は、処理後に添加したDMSOおよびNaClを含み、それにより、ヒドロゲル1と比較してG’およびG’’が減少し、粘度がより低い。最後に、低レベルの塩を含み、かつDMSOを含まないヒドロゲル5は、ヒドロゲル2より強力であるが、ヒドロゲル1、3、および4より弱い。
【0220】
【表8】
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
ナノ構造体を含み、均一な溶液から形成されるゲル組成物であって、前記ゲル組成物は、
分子量が2,500またはそれ未満であるゲル化剤であって、前記ゲル化剤は、一般に安全と認められる化合物に関するFederal Drug Administrationの要件を満たす、ゲル化剤、
アミン官能基を含む1つまたはそれより多くの薬剤、および
水溶液および必要に応じて有機溶媒を含むゲル化媒体
を含み、
ここで、形成された前記ゲル組成物が室温での倒置に対して安定であり、
ここで、前記1つまたはそれより多くの薬剤が、前記薬剤と前記ゲル化剤との間の静電相互作用によって前記ゲル化剤中に封入、捕捉、および/または包埋され、そして/または前記ゲル化剤と会合してゲル組成物にされ、
ここで、前記ゲル化剤の最小濃度が4%wt/volである、ゲル組成物。
(項目2)
前記均一な溶液が1つまたはそれより多くの塩を含む、項目1に記載のゲル組成物。
(項目3)
前記1つまたはそれより多くの塩が、前記薬剤と前記ゲル化剤との間の静電相互作用を媒介し、前記静電相互作用に影響を及ぼし、そして/または前記静電相互作用を改変する、項目2に記載のゲル組成物。
(項目4)
前記1つまたはそれより多くの塩が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目2または3に記載のゲル組成物。
(項目5)
前記1つまたはそれより多くの塩が、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150mMの濃度、またはそれを超える濃度で前記ゲル組成物中に存在する、項目2~4のいずれか1項に記載のゲル組成物。
(項目6)
前記均一な溶液が1つまたはそれより多くの有機溶媒を含む、項目1~5のいずれか1項に記載のゲル組成物。
(項目7)
前記1つまたはそれより多くの有機溶媒が、前記薬剤と前記ゲル化剤との間の静電相互作用を媒介し、前記静電相互作用に影響を及ぼし、そして/または前記静電相互作用を改変する、項目6に記載のゲル組成物。
(項目8)
前記1つまたはそれより多くの有機溶媒が、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t-ブタノール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目6~7のいずれか1項に記載のゲル組成物。
(項目9)
前記1つまたはそれより多くの有機溶媒が、総ゲルの約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25%体積/体積の濃度で前記ゲル組成物中に存在する、項目6~8のいずれか1項に記載のゲル組成物。
(項目10)
前記ゲルの粘度が、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1、約2、約3、約4、または約5センチポアズから、約10、約100、約200、約300、約400、約500、約600、約700、約800、約900、約1,000、約1,100、約1,200、約1,300、約1,400、約1,500、約1,600、約1,700、約1,800、約1,900、約2,000、約2,500、または約3000センチポアズまでの間の範囲である、項目1~9のいずれか1項に記載のゲル組成物。
(項目11)
形成された前記ゲル組成物がチキソトロピックゲル組成物である、項目1~10のいずれか1項に記載のゲル組成物。
(項目12)
前記ゲルのG’値が約0.1~約300Paである、項目10に記載のゲル組成物。
(項目13)
前記ゲルのG’’値が約0.1~約300Paである、項目11~12のいずれか1項に記載のゲル組成物。
(項目14)
前記ゲルが剪断依存性粘度を有する、項目11~13のいずれか1項に記載のゲル組成物。
(項目15)
前記ゲル化媒体が、蒸留水、脱イオン水、純水もしくは超純水、食塩水、他の生理学的に許容され得る水溶液、または有機溶媒を含む、項目1~14のいずれか1項に記載のゲル組成物。
(項目16)
前記ゲル化媒体は塩を含み、前記塩は、前記塩を含まないゲル化媒体中で形成されたゲルと比較して、薬剤の封入量、捕捉量、および/または包埋量を増加させる塩である、項目1または6~15のいずれか1項に記載のゲル組成物。
(項目17)
前記1つまたはそれより多くの薬剤が麻酔剤である、項目1~16のいずれか1項に記載のゲル組成物。
(項目18)
前記1つまたはそれより多くの薬剤が、リドカイン、プロカイン、テトラカイン、ジブカイン、ベンゾカイン、ブピバカイン、およびそれらの塩からなる群から選択される麻酔剤である、項目17に記載のゲル組成物。
(項目19)
前記麻酔剤が、約10重量%と約25重量%との間で前記ゲル中に封入されている、項目17または18に記載のゲル組成物。
(項目20)
前記ゲル化剤が、アスコルビルパルミタート、アスコルビルデカノアート アスコルビルラウラート、アスコルビルカプリラート、アスコルビルミリスタート、アスコルビルオレアート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるアスコルビルアルカノアートである、項目1~19のいずれか1項に記載のゲル組成物。
(項目21)
前記アスコルビルアルカノアートがアスコルビルパルミタートである、項目20に記載のゲル組成物。
(項目22)
前記ゲル化剤が、ソルビタンモノステアラート、ソルビタンデカノアート、ソルビタンラウラート、ソルビタンカプリラート、ソルビタンミリスタート、ソルビタンオレアート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるソルビタンアルカノアートである、項目1~21のいずれか1項に記載のゲル組成物。
(項目23)
前記ゲル化剤が、トリグリセロールモノパルミタート、トリグリセロールモノデカノアート、トリグリセロールモノラウラート、トリグリセロールモノカプリラート、トリグリセロールモノミリスタート、トリグリセロールモノステアラート、トリグリセロールモノオレアート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるトリグリセロールモノアルカノアートである、項目1~22のいずれか1項に記載のゲル組成物。
(項目24)
前記ゲル化剤が、スクロースパルミタート、スクロースデカノアート、スクロースラウラート、スクロースカプリラート、スクロースミリスタート、スクロースオレアート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるスクロースアルカノアートである、項目1~23のいずれか1項に記載のゲル組成物。
(項目25)
前記ゲル組成物が、前記均一な溶液の加熱および前記均一な溶液の室温への冷却の後に形成される、項目1~24のいずれか1項に記載のゲル組成物。
(項目26)
形成された前記ゲル組成物が、倒置に対して少なくとも60分間安定である、項目1~25のいずれか1項に記載のゲル組成物。
(項目27)
前記ゲル組成物が、水性媒体中に懸濁させられ、アミン化表面に少なくとも10μgゲル/cm
2表面の密度で接着する、項目1~26のいずれか1項に記載のゲル組成物。
(項目28)
形成された前記ゲル組成物が、有機溶媒および/または前記ゲル組成物中に封入、捕捉、および/または包埋されなかった遊離薬剤が除去されるように精製されているか、実質的に精製されている、項目1~26のいずれか1項に記載のゲル組成物から形成された精製されたゲル組成物。
(項目29)
前記有機溶媒が、乾燥、溶媒交換、および/または凍結乾燥によって除去されている、項目28に記載の精製されたゲル組成物。
(項目30)
項目1~27のいずれか1項に記載のゲル組成物または項目28~29のいずれか1項に記載の精製されたゲル組成物を薬学的に許容され得るキャリア中に含む医薬製剤であって、
必要に応じて、前記ゲル組成物または前記精製されたゲル組成物が、前記薬学的に許容され得るキャリア中に均質化されているか、そうでなければ分散されている、医薬製剤。(項目31)
医薬製剤中に分散されたゲル組成物を含み、前記ゲル組成物が、粒子、シート、および/またはテープが含まれるナノ構造体を含む、項目30に記載の医薬製剤。
(項目32)
項目30~31のいずれか1項に記載の医薬製剤を含む医療用包帯、創傷被覆材、または医療用パッチ。
(項目33)
項目1~26のいずれか1項に記載の自己集合したゲル組成物を形成する方法であって、
水溶液および必要に応じて有機溶媒を含むゲル化媒体中に分子量が2,500またはそれ未満であるゲル化剤およびアミン官能基を含む1つまたはそれより多くの薬剤を含む均一な溶液を調製する工程であって、
ここで、前記ゲル化剤が、一般に安全と認められる化合物に関するFederal Drug Administrationの要件を満たす、調製する工程、および
前記均一な溶液を静置し、それにより、自己集合したゲル組成物が形成される、静置する工程
を含む、方法。
(項目34)
前記ゲル化媒体が1つまたはそれより多くの塩を含む、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記1つまたはそれより多くの塩が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記1つまたはそれより多くの塩が、前記ゲル化媒体中に、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150mM、またはそれを超える濃度で存在する、項目33~35のいずれか1項に記載の方法。
(項目37)
前記ゲル化媒体が1つまたはそれより多くの有機溶媒を含む、項目33~35のいずれか1項に記載の方法。
(項目38)
前記1つまたはそれより多くの有機溶媒が、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t-ブタノール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記1つまたはそれより多くの有機溶媒が、前記自己集合したゲル組成物中に、総ゲルの約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25%体積/体積の濃度で存在する、項目36~38のいずれか1項に記載の方法。
(項目40)
前記水溶液が、蒸留水、脱イオン水、純水、超純水、食塩水、他の生理学的に許容され得る水溶液を含む、項目33~39のいずれか1項に記載の方法。
(項目41)
前記1つまたはそれより多くの薬剤が麻酔剤である、項目33~40のいずれか1項に記載の方法。
(項目42)
前記1つまたはそれより多くの薬剤が、リドカイン、プロカイン、テトラカイン、ジブカイン、ベンゾカイン、ブピバカイン、およびそれらの塩からなる群から選択される麻酔剤である、項目33~40のいずれか1項に記載の方法。
(項目43)
前記ゲル化剤が、
アスコルビルパルミタート、アスコルビルデカノアート アスコルビルラウラート、アスコルビルカプリラート、アスコルビルミリスタート、アスコルビルオレアート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるアスコルビルアルカノアート;
ソルビタンモノステアラート、ソルビタンデカノアート、ソルビタンラウラート、ソルビタンカプリラート、ソルビタンミリスタート、ソルビタンオレアート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるソルビタンアルカノアート;
トリグリセロールモノパルミタート、トリグリセロールモノデカノアート、トリグリセロールモノラウラート、トリグリセロールモノカプリラート、トリグリセロールモノミリスタート、トリグリセロールモノステアラート、トリグリセロールモノオレアート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるトリグリセロールモノアルカノアート;
スクロースパルミタート、スクロースデカノアート、スクロースラウラート、スクロースカプリラート、スクロースミリスタート、スクロースオレアート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるスクロースアルカノアート;ならびに
これらの組み合わせ
から選択される、項目33~42のいずれか1項に記載の方法。
(項目44)
必要に応じて塩濃度が0.15M以下の精製媒体中で前記ゲル組成物を遠心分離または透析する工程を含む、項目1~27のいずれか1項に記載のゲル組成物を精製する方法。
(項目45)
前記精製媒体が塩を含まない、項目44に記載の方法。
(項目46)
薬剤の送達を、それを必要とする患者に行う方法であって、項目1~27のいずれか1項に記載のゲル組成物を投与する工程を含み、必要に応じて、前記ゲル組成物が前記患者における炎症性組織に接着する、方法。