(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168598
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】光ファイバケーブル
(51)【国際特許分類】
G02B 6/44 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
G02B6/44 366
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023173766
(22)【出願日】2023-10-05
(62)【分割の表示】P 2021561268の分割
【原出願日】2020-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2019214076
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】大野 正敏
(72)【発明者】
【氏名】向井 興泉
(72)【発明者】
【氏名】多木 剛
(72)【発明者】
【氏名】清水 正砂
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 亮
(72)【発明者】
【氏名】鯰江 彰
(72)【発明者】
【氏名】大里 健
(57)【要約】
【課題】コアを露出する作業のしやすさを向上させることが可能な光ファイバケーブルまたはそのようなコア露出方法を提供する。
【解決手段】光ファイバケーブルのコア露出方法は、長手方向において、前記光ファイバケーブルの第2端部よりも第1端部に近い位置で、外被に周方向に沿った切込を入れ、前記切込が入った部分で前記光ファイバケーブルを曲げることで抗張力体を破断させ、前記外被のうち前記切込と前記第1端部との間に位置する除去部を除去する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを有するコアと、前記コアを包む押さえ巻きと、前記コアおよび前記押さえ巻きを収容する外被と、前記外被に埋設されたFRP製の抗張力体と、を備える光ファイバケーブルのコア露出方法であって、
長手方向において、前記光ファイバケーブルの第2端部よりも第1端部に近い位置で、前記外被に周方向に沿った切込を入れ、
前記切込が入った部分で前記光ファイバケーブルを曲げることで前記抗張力体を破断させ、
前記外被のうち前記切込と前記第1端部との間に位置する除去部を除去する、光ファイバケーブルのコア露出方法。
【請求項2】
前記除去部を除去する際、前記除去部に覆われていた前記押さえ巻きが、前記外被のうち前記切込と前記第2端部との間に位置する残留部から延出した状態とされる、請求項1に記載の光ファイバケーブルのコア露出方法。
【請求項3】
前記除去部を除去する際、前記除去部を長手方向に引き抜く際の引抜力が、600N以下である、請求項1または2に記載の光ファイバケーブルのコア露出方法。
【請求項4】
光ファイバを有するコアと、前記コアを包む押さえ巻きと、前記コアおよび前記押さえ巻きを収容する外被と、前記外被に埋設されたFRP製の抗張力体と、を備える光ファイバケーブルのコア露出方法であって、
長手方向で異なる第1位置および第2位置において前記外被に周方向に沿って切込を入れ、
前記第1位置および前記第2位置において前記光ファイバケーブルを曲げることで前記抗張力体を破断させ、
前記第1位置と前記第2位置との間で、長手方向に沿って前記外被に第2の切込を入れ、
前記外被のうち前記第1位置と前記第2位置との間に位置する除去部を除去する、光ファイバケーブルのコア露出方法。
【請求項5】
前記外被のうち、前記抗張力体の径方向内側に位置する部分の厚みが1.2mm以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載の光ファイバケーブルのコア露出方法。
【請求項6】
前記外被に前記切込を入れる際に、前記抗張力体にも切込を入れる、請求項1から5のいずれか1項に記載の光ファイバケーブルのコア露出方法。
【請求項7】
前記光ファイバケーブルは、前記押さえ巻きに当接または近接するように配置された、長手方向に延びるリップコードをさらに備える、請求項1から6のいずれか1項に記載の光ファイバケーブルのコア露出方法。
【請求項8】
光ファイバを有するコアと、
前記コアを包む押さえ巻きと、
前記コアおよび前記押さえ巻きを収容する外被と、
前記外被に埋設されたFRP製の抗張力体と、
繊維を含み、前記外被に埋設された可撓性を有する線状部材と、を備え、
横断面視において、前記コアの中心軸線を中心として前記抗張力体の中心を通る仮想円の内側に前記線状部材が位置する、光ファイバケーブル。
【請求項9】
オプション部品をさらに備え、
前記線状部材は、前記抗張力体よりも前記外被の端面から長手方向に大きく延出し、前記オプション部品の内部に固定されている、請求項8に記載の光ファイバケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブルのコア露出方法および光ファイバケーブルに関する。
本願は、2019年11月27日に、日本に出願された特願2019-214076号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバケーブルは、一般的に、光ファイバを含むコアと、コアを収容する外被と、を備えている。特許文献1が開示する光ファイバケーブルのコア露出方法では、外被に周方向に沿って切込を入れ、外被のうち切込と光ファイバケーブルの端部との間に位置する部分を除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような光ファイバケーブルにおいては、コアを露出する作業のしやすさを向上させることが求められている。例えば抗張力体が外被に埋設されていると、特許文献1の解体方法のように、外被に周方向に沿って切込を入れるだけでは、外被を除去することは容易ではない。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされ、コアを露出する作業のしやすさを向上させることが可能な光ファイバケーブルまたはそのようなコア露出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る光ファイバケーブルのコア露出方法は、光ファイバを有するコアと、前記コアを包む押さえ巻きと、前記コアおよび前記押さえ巻きを収容する外被と、前記外被に埋設されたFRP製の抗張力体と、を備える光ファイバケーブルのコア露出方法であって、長手方向において、前記光ファイバケーブルの第2端部よりも第1端部に近い位置で、前記外被に周方向に沿った切込を入れ、前記切込が入った部分で前記光ファイバケーブルを曲げることで前記抗張力体を破断させ、前記外被のうち前記切込と前記第1端部との間に位置する除去部を除去する。
【0007】
また、本発明の第2の態様に係る光ファイバケーブルのコア露出方法は、光ファイバを有するコアと、前記コアを包む押さえ巻きと、前記コアおよび前記押さえ巻きを収容する外被と、前記外被に埋設されたFRP製の抗張力体と、を備える光ファイバケーブルのコア露出方法であって、長手方向で異なる第1位置および第2位置において前記外被に周方向に沿って切込を入れ、前記第1位置および前記第2位置において前記光ファイバケーブルを曲げることで前記抗張力体を破断させ、前記第1位置と前記第2位置との間で、長手方向に沿って前記外被に第2の切込を入れ、前記外被のうち前記第1位置と前記第2位置との間に位置する除去部を除去する。
【0008】
また、本発明の第3の態様に係る光ファイバケーブルは、光ファイバを有するコアと、前記コアを包む押さえ巻きと、前記コアおよび前記押さえ巻きを収容する外被と、前記外被に埋設されたFRP製の抗張力体と、繊維を含み、前記外被に埋設された可撓性を有する線状部材と、を備え、横断面視において、前記コアの中心軸線を中心として前記抗張力体の中心を通る仮想円の内側に前記線状部材が位置する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の上記態様によれば、コアを露出させる作業のしやすさを向上させることが可能な光ファイバケーブルまたはそのようなコア露出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る光ファイバケーブルの横断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る光ファイバケーブルのコア露出方法において、切込工程を説明する図である。
【
図4】第2実施形態に係る光ファイバケーブルの横断面図である。
【
図5A】第2実施形態に係る光ファイバケーブルのコア露出方法において、切込工程を説明する図である。
【
図6】第3実施形態に係る光ファイバケーブルの横断面図である。
【
図8A】第3実施形態に係る光ファイバケーブルの製造方法において、切込工程を説明する図である。
【
図9A】第3実施形態の変形例に係る光ファイバケーブルの製造方法において、切込工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態の光ファイバケーブルおよび光ファイバケーブルのコア露出方法について、図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の光ファイバケーブル1Aは、コア2と、押さえ巻き6と、外被101と、抗張力体8と、を備えている。光ファイバケーブル1Aは、光ファイバを収容するための溝が形成されたスロットロッドを有さない、いわゆるスロットレス型の光ファイバケーブルである。
【0012】
(方向定義)
本実施形態では、光ファイバケーブル1Aの長手方向を単に長手方向という。長手方向に直交する断面を横断面といい、長手方向に沿う断面を縦断面という。また、横断面視において、光ファイバケーブルの中心軸線Oに交差する方向を径方向といい、中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。
また、長手方向において、光ファイバケーブル1Aの第1端部E1側(
図3A参照)を+X側といい、第2端部E2側を-X側という。
【0013】
コア2は、複数の光ファイバテープ心線5を有している。光ファイバテープ心線5は、複数の光ファイバ3と、これらの光ファイバ3を束ねる結束材4と、を備えている。光ファイバ3としては、光ファイバ心線や光ファイバ素線などを用いることができる。光ファイバテープ心線5は、いわゆる間欠固定テープ心線であってもよい。光ファイバテープ心線5が間欠固定テープ心線である場合、複数の光ファイバ3は、その延在方向に対して直交する方向に引っ張ると、網目状(蜘蛛の巣状)に広がるように互いに接着されている。詳しくは、ある一つの光ファイバ3が、その両隣の光ファイバ3に対して長手方向で異なる位置においてそれぞれ接着されており、かつ、隣接する光ファイバ3同士は、長手方向で一定の間隔をあけて互いに接着されている。
【0014】
複数の光ファイバテープ心線5は、SZ状若しくは螺旋状に撚り合わされた状態で、押さえ巻き6によって包まれている。なお、光ファイバテープ心線5の態様は間欠固定テープ心線に限られず、適宜変更してもよい。また、光ファイバテープ心線5の数は適宜変更可能であり、1つであってもよい。また、複数の光ファイバ3が、結束材4によって束ねられておらず、そのまま押さえ巻き6によって包まれていてもよい。
【0015】
押さえ巻き6は、コア2を包んでいる。押さえ巻き6としては、不織布やポリエステルテープなどを用いることができる。また、押さえ巻き6は吸水性を有していてもよい。
【0016】
外被101は、コア2および押さえ巻き6を内部に収容している。外被101の材質としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンプロピレン共重合体(EP)などのポリオレフィン(PO)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)などを用いることができる。外被101の外周面には、抗張力体8の位置を示す目印Mが形成されている。本実施形態の目印Mは、径方向外側に向けて突出し、光ファイバケーブル1Aの全長にわたって延びる突起である。なお、目印Mは突起でなくてもよく、例えば凹部または着色部などであってもよい。また、目印Mはなくてもよい。目印Mがない場合も、例えば一対の抗張力体8によりもたらされる光ファイバケーブル1Aの曲げの方向性により、使用者は抗張力体8の位置を認識することができる。
【0017】
抗張力体8は、外被101に埋設されている。本実施形態では、2本の抗張力体8が、径方向においてコア2を間に挟むように配置されている。抗張力体8はFRP(Fiber Reinforced Plastics)により形成されている。FRPに含まれる繊維としては、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維などを用いることができる。なお、外被101に埋設される抗張力体8の数は、1または3以上であってもよい。3本以上の抗張力体8を用いる場合、抗張力体8は周方向において等間隔に配置されていてもよい。この場合、光ファイバケーブル1Aに曲げの方向性が生じるのを抑制して、光ファイバケーブル1Aを取り扱いやすくすることができる。
【0018】
次に、光ファイバケーブル1Aのコア露出方法について説明する。
【0019】
図2に示すように、まず、目印Mに刃などの工具Kを当て、外被101を切りながら工具Kを外被101内に進入させる。外被101は軟質の樹脂により形成されているため、工具Kは容易に外被101内に進入できる。一方、抗張力体8はFRPにより形成されているため、抗張力体8の方が、切断に対する抵抗が外被101よりも大きい。このため、工具Kの先端が抗張力体8に当たると、工具Kの進行が停止する。本実施形態では工具Kによって抗張力体8を完全には切断しない。ただし、抗張力体8の外周部分の一部に工具Kによって傷が入ってもよい。あるいは、抗張力体8のうち径方向外側に位置する部分が工具Kによって切断され、抗張力体8のうち径方向内側に位置する部分が切断されずにつながった状態となってもよい。
【0020】
次に、工具Kを周方向に移動させる。これにより、
図2に破線で示すような切込Lが、周方向に沿って外被101に入る(切込工程)。切込Lは、少なくとも外被101の外周面に全周にわたって入れられる。
図2では切込Lの径方向における位置が周方向における全周にわたって一定であるが、切込Lの径方向における位置は周方向に沿って変動してもよい。特に、周方向において抗張力体8が位置していない部分では工具Kに作用する抵抗が小さくなるため、当該部分では切込Lが抗張力体8の位置よりも径方向内側に位置してもよい。
【0021】
図3Aに示すように、本実施形態では、外被101のうち、切込Lよりも+X側(第1端部E1側)に位置する部分を除去部101aといい、切込Lよりも-X側(第2端部E2側)に位置する部分を残留部101bという。
【0022】
切込工程の後、
図3Bに示すように、長手方向において切込Lの位置が凸(
図3Bでは紙面の上側)および凹(
図3Bでは紙面の下側)となるように光ファイバケーブル1Aを湾曲させる。具体的には、除去部101aおよび残留部101bをそれぞれ両手で把持して、切込Lを起点として折り曲げるような力を光ファイバケーブル1Aに加える。すると、長手方向において切込Lが形成された位置であって、かつ凸となるように曲げられた位置において抗張力体8に強い引張応力が加わる。この引張応力によって、2本の抗張力体8のうちの一方が破断する(破断工程)。特に、切込工程において抗張力体8に傷が入っていたり、部分的に切断されたりしている場合には、抗張力体8がスムーズに破断される。
【0023】
次に、
図3Cに示すように、
図3Bにおいて凹となるように湾曲していた部分が凸となるように、再び光ファイバケーブル1Aを湾曲させる。これにより、2本の抗張力体8のうちの他方が破断する。このように、本実施形態では曲げの向きを変えて複数回光ファイバケーブル1Aを湾曲させ、このような操作によって各抗張力体8を破断させる。抗張力体8の材質であるFRPは、金属のように延性破壊する材料ではなく、脆性破壊しやすいので、このように破断できると考えられる。なお、破断工程において、抗張力体8の径方向内側に位置する外被101も、抗張力体8とともに破断させてもよい。
【0024】
次に、外被101の除去部101aを+X側に向けて引き抜くような力を加える。これにより、除去部101aと残留部101bとが接続されている部分(切込Lよりも径方向内側の部分)に引張応力が集中し、当該部分が破断する。これにより、
図3Dに示すように除去部101aが残留部101bから分離し、除去部101aに覆われていた押さえ巻き6が剥き出しになる(除去工程)。より具体的には、押さえ巻き6およびコア2が、外被101の端面101cから+X側に延出した状態となる。端面101cは、外被101に切込Lを入れることで形成された面である。押さえ巻き6は容易にコア2から剥離可能であるため、押さえ巻き6が剥き出しになれば、使用者はコア2を容易に露出させることができる。
【0025】
以上説明したように、本実施形態の光ファイバケーブル1Aは、光ファイバ3を有するコア2と、コア2を包む押さえ巻き6と、コア2および押さえ巻き6を収容する外被101と、外被101に埋設されたFRP製の抗張力体8と、を備えている。そして、本実施形態の光ファイバケーブルのコア露出方法は、長手方向において光ファイバケーブル1Aの第2端部E2よりも第1端部E1に近い位置で外被101に周方向に沿った切込Lを入れ(切込工程)、切込Lが入った部分で光ファイバケーブル1Aを曲げることで抗張力体8を破断させ(破断工程)、外被101のうち切込Lと第1端部E1との間に位置する除去部101aを除去する(除去工程)。このコア露出方法によれば、外被101に抗張力体8が埋設されていてもコア2を容易に露出させることが可能となる。
【0026】
また、
図3Dに示すように、除去工程において、除去部101aに覆われていた押さえ巻き6が、外被101のうち切込Lと第2端部E2との間に位置する残留部101bから延出した状態とされる。このように、除去工程の後も押さえ巻き6がコア2を包んだ状態を維持することで、コア2に含まれる光ファイバ3が不意に傷ついてしまうことを抑制できる。
【0027】
また、切込工程において、抗張力体8にも切込を入れることで、破断工程において抗張力体8がより破断しやすくなる。
【0028】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について説明するが、第1実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0029】
図4に示すように、本実施形態の光ファイバケーブル1Bは、リップコード7をさらに備えている。リップコード7は押さえ巻き6に当接または近接するように配置され、長手方向に沿って延びている。
図4の例では、リップコード7は一部が外被101から径方向内側に露出するように、外被101に埋設されている。ただし、リップコード7が周方向および長手方向に移動しないように工夫されていれば、リップコード7は外被101に埋設されていなくてもよい。また、リップコード7の数は変更可能であり、2本以上であってもよい。
【0030】
リップコード7としては、PPやナイロン製の円柱状ロッドなどを用いることができる。また、PPやポリエステルなどの繊維を撚り合わせた糸(ヤーン)によりリップコード7を形成し、リップコード7に吸水性を持たせてもよい。
リップコード7以外の光ファイバケーブル1Bの構成は、光ファイバケーブル1Aと同じである。
【0031】
次に、本実施形態の光ファイバケーブル1Bのコア露出方法について説明する。
【0032】
まず、
図5Aに示すように、長手方向において異なる第1位置P1および第2位置P2において、外被101に周方向に沿って切込Lを入れる(切込工程)。各切込Lの深さなどは第1実施形態と同じである。本実施形態では、外被101のうち、長手方向において第1位置P1と第2位置P2との間に位置する部分を除去部101aといい、それ以外の部分を残留部101bという。
【0033】
次に、第1位置P1および第2位置P2において光ファイバケーブル1Bを曲げることで、各抗張力体8を破断させる(破断工程)。抗張力体8の破断のメカニズムなどは第1実施形態と同じである。
【0034】
次に、
図5Bに示すように、第1位置P1と第2位置P2との間で、長手方向に沿って外被101に第2の切込L2を入れる(第2切込工程)。第2の切込L2は、除去部101aの長手方向における全長にわたって形成される。第2の切込L2の周方向における位置は、コア2から見て、リップコード7の反対側であることが好ましい。
【0035】
次に、除去部101aを径方向に引っ張ることで、除去部101aと残留部101bとの接続部分を破断させる。これにより、
図5Cに示すように、除去部101aが除去されて押さえ巻き6が露出する(除去工程)。より具体的には、押さえ巻き6およびコア2が、外被101の2つの端面101cの間で延びた状態となる。本実施形態では、2つの切込Lを入れるため、2つの端面101cが形成される。なお、除去部101aを除去する際に、第2の切込L2が開いて開口が形成されるように除去部101aが弾性変形し、その開口を押さえ巻き6およびコア2が通過する。
図5Cでは、押さえ巻き6およびコア2が除去部101aの開口を通過した後、弾性力によって開口が閉じられた状態を示している。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の光ファイバケーブルのコア露出方法は、長手方向で異なる第1位置P1および第2位置P2において外被101に周方向に沿って切込Lを入れ(切込工程)、第1位置P1および第2位置P2において光ファイバケーブル1Bを曲げることで抗張力体8を破断させ(破断工程)、第1位置P1と第2位置P2との間で、長手方向に沿って外被101に第2の切込L2を入れ(第2切込工程)、外被101のうち第1位置P1と第2位置P2との間に位置する除去部101aを除去する(除去工程)。このコア露出方法によれば、外被101に抗張力体8が埋設されていてもコア2を容易に露出させることが可能となる。さらに、光ファイバケーブル1Bの長手方向における中間部分においてもコア2を露出させることができる。
【0037】
また、工具Kで切断すること、およびリップコード7で引き裂くことの双方によって、除去部101aに対して周方向において異なる2か所に、長手方向に延びる切込を入れることができる。これにより、除去部101aが周方向で2分割されるため、除去部101aを除去することがより容易となる。なお、先述の通り除去部101aを弾性変形させて開口を形成し、当該開口を用いて除去部101aを押さえ巻き6およびコア2から除去すれば、リップコード7によって除去部101aを引き裂かなくても、除去部101aを除去することが可能である。したがって、リップコード7は必須ではない。
【0038】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態について説明するが、第1実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0039】
図6に示すように、本実施形態の光ファイバケーブル1Cは、4本の抗張力体8と、4本の線状部材9と、を備えている。抗張力体8および線状部材9は、周方向において交互に配置されており、長手方向に沿って延びている。ただし、抗張力体8および線状部材9の数および配置は適宜変更可能である。
線状部材9は、横断面において楕円形状であり、径方向の寸法が周方向の寸法よりも小さい。
図6に示す横断面において、仮想円Cは、中心軸線Oを中心として抗張力体8の中心を通っている。線状部材9は、仮想円Cの内側に位置している。
【0040】
線状部材9は、繊維を含み、可撓性を有している。線状部材9の繊維としては、例えばガラス繊維、アラミド繊維を採用できる。線状部材9の繊維は、撚り合わされていてもよいし、撚り合わされていなくてもよい。線状部材9は、繊維の表面を覆うコーティング(例えば樹脂)を有してもよい。ただし、線状部材9は、破断工程において光ファイバケーブル1Cが曲げられたときに破断されない程度の可撓性を有することが好ましい。
【0041】
図7に示すように、光ファイバケーブル1Cは、第1端部E1に固定されたオプション部品10をさらに備えている。
図7の例では、オプション部品10は防水コネクタである。ただし、オプション部品10は、防水コネクタ以外の種類の光コネクタであってもよいし、例えばクロージャや牽引具等、光コネクタ以外であってもよい。クロージャとは、光ファイバケーブル1Cから光ファイバ3を分岐させた分岐部において、露出した光ファイバを保護する部品である。牽引具とは、光ファイバケーブル1Cを建物のダクト等に敷設する際に、光ファイバケーブル1Cを牽引するための部品である。線状部材9は、これらのオプション部品10と光ファイバケーブル1Cとの固定の強度を高めるために用いられる。
【0042】
図7に示すオプション部品10(防水コネクタ)は、クランプ部材11と、コネクタユニット12と、カップリングユニット13と、フェルール14と、ブーツ16と、コネクタ外装部17と、を有する。クランプ部材11、コネクタユニット12、カップリングユニット13、フェルール14、およびブーツ16は、筒状のコネクタ外装部17内に配されている。クランプ部材11の内側には接着剤(不図示)が充填されている。これらの部材を有する防水コネクタ10は全体として筒状であり、外被101の端面101cの近傍を覆っている。第1実施形態で説明した通り、端面101cは、光ファイバケーブル1Cの第1端部E1に近い位置で外被101に切込Lを入れることで形成されている。コア2および線状部材9は、端面101cから長手方向における+X側に延出している。線状部材9は、抗張力体8よりも端面101cから大きく延出する。抗張力体8は端面101cから延出していても延出していなくてもよい。抗張力体8が端面101cから延出していない場合も、「線状部材9が抗張力体8より端面101cから大きく延出する」ことに含まれる。
【0043】
詳細な図示は省略するが、フェルール14はコア2に含まれる光ファイバ3を挿通させるためのファイバ孔を有している。コア2に含まれる光ファイバ3は、防水コネクタ10内を通り、フェルール14の先端(+X側の端)まで到達している。防水コネクタ10を他の光コネクタなどに接続すると、他のコネクタが備える光回路(光ファイバ、光導波路等)に、光ファイバ3が光学的に接続される。コア2(光ファイバ3)とともに、押さえ巻き6も端面101cから延出していてもよい。あるいは、押さえ巻き6は端面101cから延出していなくてもよい。
クランプ部材11内に充填された接着剤により、外被101および線状部材9が防水コネクタ10に固定されている。さらに、接着剤により、防水コネクタ10内に水などが入り込むことを抑制できる。
【0044】
図7に示すように、線状部材9はクランプ部材11の内部において折り返されている。折り返された線状部材9の一部は、外被101とクランプ部材11との間に位置している。クランプ部材11およびコネクタ外装部17のうち外被101および線状部材9を覆っている部分は、径方向内側に向けて塑性変形させられ、凹部11aが形成されている。凹部11aにより、線状部材9は外被101に圧接させられている。このような構成によれば、オプション部品10を光ファイバケーブル1Cに対してより強固に固定することができる。
【0045】
次に、オプション部品10を光ファイバケーブル1Cに固定する方法(言い換えると、オプション部品10が固定された光ファイバケーブル1Cの製造方法)について説明する。
まず、オプション部品10が固定されていない状態の光ファイバケーブル1Cを用意する。
次に、第1実施形態で説明した光ファイバケーブル1Aのコア露出方法と同様の手順により、光ファイバケーブル1Cの第1端部E1において、コア2および線状部材9を外被101から露出させる。
【0046】
より詳しくは、
図8Aに示すように、外被101を切りながら工具Kを外被101内に進入させる。さらに、工具Kを周方向に移動させることで、外被101および抗張力体8を部分的に切断する(切込工程)。
図8の例では、工具Kにより、抗張力体8のうち径方向外側に位置する部分が切断されている。言い換えると、先述の仮想円Cに沿った切込Lが、外被101および抗張力体8に形成される。工具Kは、中心軸線Oからの距離(すなわち径方向における位置)が規制された状態で、光ファイバケーブル1Cに対して周方向に移動可能に構成されていることが好ましい。工具Kを径方向においてどの程度まで進入させるかについては適宜変更可能である。ただし、工具Kによって線状部材9が切断されないように、切込Lは仮想円C(
図6参照)よりも径方向外側に形成されることが好ましい。
【0047】
本実施形態においても、外被101のうち、切込Lよりも+X側(第1端部E1側)に位置する部分を除去部101aといい、切込Lよりも-X側(第2端部E2側)に位置する部分を残留部101bという。
【0048】
切込工程の後、長手方向において切込Lの位置が凸および凹となるように光ファイバケーブル1Cを湾曲させる(
図3B、
図3Cと同様)。これにより、切込工程において傷が入っていたり、部分的に切断されたりした部分において、抗張力体8が破断される(破断工程)。
図6のように、4本の抗張力体8が周方向に等間隔に配置されている場合は、各抗張力体8が破断されるように、曲げる方向を変化させて光ファイバケーブル1Cを複数回曲げるとよい。本実施形態の抗張力体8もFRPであるため、脆性破壊によって、このような破断が生じやすい。一方、線状部材9は主として繊維で構成され可撓性を有するため、光ファイバケーブル1Cが曲げられても破断しない。つまり、本実施形態の破断工程では、線状部材9が破断しないように、抗張力体8を破断する。
【0049】
次に、
図8Bに示すように、外被101の除去部101aを+X側に引き抜き、残留部101bから分離させる(除去工程)。本実施形態では、除去部101aを除去すると、押さえ巻き6とともに線状部材9が剥き出しになる。より具体的には、押さえ巻き6、コア2、および線状部材9が、外被101の端面101cから+X側に延出した状態となる。この時点では、線状部材9、コア2、押さえ巻き6が、それぞれ同じ長さで、端面101cから延出していてもよい。必要に応じて、線状部材9および押さえ巻き6の不要な部分を切除してもよい。抗張力体8は端面101cの近傍で破断されるため、端面101cからわずかに延出していてもよいし、延出していなくてもよい。
【0050】
次に、オプション部品10を光ファイバケーブル1Cに固定する。例えば、光ファイバ3がフェルール14の先端まで到達した状態とし、クランプ部材11を外被101や線状部材9等に被せる。その後、接着剤をクランプ部材11内に充填することで、線状部材9等がオプション部品10に固定される。
図7に示すようなオプション部品10(防水コネクタ)の場合、クランプ部材11およびコネクタ外装部17を塑性変形させる工程を行ってもよい。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の光ファイバケーブル1Cは、光ファイバ3を有するコア2と、コア2を包む押さえ巻き6と、コア2および押さえ巻き6を収容する外被101と、外被101に埋設されたFRP製の抗張力体8と、繊維を含み、外被101に埋設された可撓性を有する線状部材9と、を備える。横断面視において、コア2の中心軸線Oを中心として抗張力体8の中心を通る仮想円Cの内側に線状部材9が位置する。この構成により、工具Kによって外被101に切込Lを入れる際に、意図せず線状部材9が切断されることを抑制できる。したがって、コア2を露出させる作業をしやすい。
【0052】
また、光ファイバケーブル1Cはオプション部品10をさらに備え、線状部材9は、抗張力体8よりも外被101の端面101cから長手方向に大きく延出してオプション部品10の内部に固定されている。この構成によれば、主として抗張力体8をオプション部品10の内部に固定することでオプション部品10と光ファイバケーブル1Cとを固定する場合と比較して、固定の強度を安定させることができる。
【0053】
また、横断面視において、線状部材9は扁平な形状となっている。より詳しくは、線状部材9の周方向の寸法が、線状部材9の径方向の寸法より大きい。これにより、工具Kで切込Lを入れる際に、線状部材9が破断されにくくなる。その一方で、線状部材9の断面積を大きくして、オプション部品10と光ファイバケーブル1Cとの固定の強度を高めることが可能である。
【実施例0054】
以下、具体的な実施例を用いて、上記実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0055】
本実施例では、第1実施形態で説明した光ファイバケーブル1Aを用意した。そして、外被101のうち抗張力体8の径方向内側に位置する部分の厚みtと、除去部101aの除去のしやすさの関係について確認した。結果を表1に示す。
【0056】
【0057】
表1に示すように、厚みtが0.6~1.4mmの範囲で異なる複数の光ファイバケーブル1Aを用意した。そして、第1実施形態で説明した切込工程、破断工程、除去工程を行った。その結果、厚みtが1.2mm以下の場合には、除去工程において光ファイバケーブル1Aの除去部101aを問題無く除去することができた。一方、厚みtが1.4mmの場合には、除去部101aを除去することが難しかった。これは、厚みtが大きすぎると、除去部101aを長手方向に引き抜く操作を行っても、除去部101aと残留部101bとの接続部分を破断させることが難しいためである。以上のことから、外被101のうち抗張力体8の径方向内側に位置する部分の厚みtは、1.2mm以下であることが好ましい。
【0058】
次に、光ファイバケーブル1Aにおいて、除去部101aを長手方向に引き抜く力(引抜力F)と、除去部101aの除去のしやすさについて確認した。結果を表2に示す。
【0059】
【0060】
引抜力Fは、押さえ巻き6の表面性状(平滑性など)、外被101の表面性状、コア2の形状などによって変化する。これらのパラメータを変化させることで、表2に示すように、引抜力Fが300~700Nの範囲で異なる複数の光ファイバケーブル1Aを用意した。そして、第1実施形態で説明した切込工程、破断工程、除去工程を行った。その結果、引抜力Fが600N以下の場合には、問題無く除去部101aを除去することができた。一方、引抜力Fが700Nを超えると、除去部101aを除去することが容易ではなかった。以上のことから、除去部101aを長手方向に引き抜く際の引抜力Fは600N以下であることが好ましい。
【0061】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0062】
例えば、第1実施形態の光ファイバケーブル1Aが、第2実施形態で説明したリップコード7を備えていてもよい。この場合、光ファイバケーブル1Aの第1端部E1の近傍においてコア2を露出させた後、リップコード7を用いて残留部101bを切り裂くといった用途が想定される。
また、第2実施形態の光ファイバケーブル1Bにおいて、外被101のうち抗張力体8の径方向内側に位置する部分の厚みtを1.2mm以下としてもよい。
【0063】
また、前記実施形態の光ファイバケーブル1A、1Bでは、2本の抗張力体8がコア2を挟むように外被101に埋設されていたが、3本以上の抗張力体8が周方向に間隔を空けて外被101に埋設されていてもよい。この場合にも、各々の抗張力体8を破断させるように光ファイバケーブル1A、1Bを屈曲させることで、前記実施形態と同様に解体することができる。
【0064】
また、第2実施形態で説明したコア露出方法を第3実施形態の光ファイバケーブル1Cに適用してもよい。この場合、
図9Aに示すように、第1位置P1と第2位置P2との間の第3位置P3において、外被101に対して第3の切込L3を周方向に沿って入れ、線状部材9を切断するとよい。次に、
図9Bに示すように除去部101aを除去すると、2つの端面101cから線状部材9が延出した状態となる。この線状部材9を用いて、オプション部品10を光ファイバケーブル1Cに固定することができる。この変形例は、オプション部品10として例えばクロージャを採用する場合に好適である。この変形例において、光ファイバケーブル1Cは、第2実施形態で説明したリップコード7をさらに備えてもよい。あるいは、線状部材9をリップコード7として用いることも可能である。
1A、1B、1C…光ファイバケーブル 2…コア 3…光ファイバ 6…押さえ巻き 7…リップコード 8…抗張力体 9…線状部材 101…外被 101a…除去部 101b…残留部 101c…端面 E1…第1端部 E2…第2端部 L…切込 L2…第2の切込 P1…第1位置 P2…第2位置