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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168621
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】制汗剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/63 20060101AFI20231116BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20231116BHJP
   C07J 63/00 20060101ALN20231116BHJP
【FI】
A61K8/63
A61Q15/00
C07J63/00
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023174350
(22)【出願日】2023-10-06
(62)【分割の表示】P 2019170775の分割
【原出願日】2019-09-19
(71)【出願人】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】久加 亜由美
(72)【発明者】
【氏名】中島 輝恵
(72)【発明者】
【氏名】倉田 隆一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤田 郁尚
(72)【発明者】
【氏名】原 武史
(57)【要約】
【課題】汗孔を閉塞させなくとも、汗腺に作用して汗の分泌を制御できる制汗剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係る制汗剤組成物は、特定の量のグリチルリチン酸アンモニウムを含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリチルリチン酸アンモニウムを制汗成分として含有し、
当該グリチルリチン酸アンモニウムの含有量が0.05~1.00質量%である制汗剤組成物。
【請求項2】
前記グリチルリチン酸アンモニウムとして、グリチルリチン酸モノアンモニウムおよびグリチルリチン酸ジアンモニウムのうち少なくとも1種を含有する請求項1に記載の制汗剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制汗剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの汗腺は、主に汗の分泌により体温調節を行う重要な器官である。しかし、体温調節に不必要なほどの多量の汗、並びに微生物が汗を分解した代謝物の臭いおよび酸化で生じる臭いはヒトに不快感を与え得る。そこで従来、制汗剤として、塩化アルミニウムなどの金属イオンにより、汗孔を閉塞させることで物理的な制汗作用を示す制汗成分を含有し、さらに殺菌剤または抗菌剤を含有する体臭抑制化粧料および制汗化粧料が知られている。
【0003】
ところで特許文献1には、グリチルリチン酸が制汗効果を有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭52-105221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1でグリチルリチン酸を有効成分とする発汗抑制薬が報告されているが、その発汗抑制の効果は十分ではなく、改善の余地があった。
【0006】
本発明は上記問題点を鑑みなされたものであり、その目的は汗孔を閉塞させなくとも、汗腺に作用して汗の分泌を制御できる制汗剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明が鋭意検討した結果、グリチルリチン酸、その誘導体およびその塩のうちグリチルリチン酸アンモニウムが特に優れた制汗成分であることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は以下の構成を含む。
【0009】
<1>グリチルリチン酸アンモニウムを制汗成分として含有し、
当該グリチルリチン酸アンモニウムの含有量が0.05~1.00質量%である制汗剤組成物。
【0010】
<2>前記グリチルリチン酸アンモニウムとして、グリチルリチン酸モノアンモニウムおよびグリチルリチン酸ジアンモニウムのうち少なくとも1種を含有する請求項1に記載の制汗剤組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、汗孔を閉塞させなくとも、汗腺に作用して汗の分泌を制御できる制汗剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。
【0013】
本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「X~Y」は、「X以上Y以下」を意図する。また、本明細書において特記しない限り、成分の含有量を表す質量%は、制汗剤組成物全体の質量を100質量%とした値である。
【0014】
〔1.制汗剤組成物〕
本発明に係る制汗剤組成物は、有効成分としてグリチルリチン酸アンモニウムを含有し、当該グリチルリチン酸アンモニウムの含有量が0.05~1.00質量%である。
【0015】
本発明に係る制汗剤組成物によれば、汗孔を閉塞させることなく、汗の分泌を制御できる。本発明者は、国際出願番号PCT/JP2019/011137に示されているとおり、カルベノキソロンを含む所定の化合物が汗孔を閉塞させることなく、汗腺に作用して制汗作用を示すことを見出した。上記グリチルリチン酸アンモニウムは、カルベノキソロンと共通する構造を有するため、同様の作用機序を示すと考えられる。なお、グリチルリチン酸が制汗作用を有することは知られていたが、その塩であるグリチルリチン酸アンモニウムが顕著に高い制汗作用を示すことは知られておらず、驚くべきことである。また、グリチルリチン酸アンモニウムは各種溶媒に溶解しやすい。
【0016】
グリチルリチン酸アンモニウムの含有量が0.05質量%以上であれば、発汗を抑える観点から好ましい。当該含有量は0.10質量%以上であることがより好ましく、0.30質量%以上であることがさらに好ましい。当該含有量が1.00質量%以下であれば使用者に対する負荷を低減する観点から好ましい。当該含有量は0.90質量%以下であることがより好ましく、0.80質量%以下であることがさらに好ましい。
【0017】
上記制汗剤組成物は、グリチルリチン酸アンモニウムとして、グリチルリチン酸モノアンモニウムおよびグリチルリチン酸ジアンモニウムのうち、少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0018】
本発明に係る制汗剤組成物には、本発明の機能を妨げない範囲内で、その他の成分を配合することができる。その他の成分としては、例えば、水、界面活性剤、アルコール、清涼剤、植物抽出物、香料、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、防腐剤、増粘剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
上記界面活性剤としては、例えば、アルキルグリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、グリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、シリコーン界面活性剤等のノニオン界面活性剤;アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アシルN-メチルタウリン塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、N-アシルアミノ酸塩等のアニオン界面活性剤;塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウムなどのカチオン界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
【0020】
上記アルコールとしては、例えば、エタノール等が挙げられる。
【0021】
上記清涼剤としては、例えば、メントール、メンチルグリセリルエーテル、乳酸メンチル、ハッカ油、ペパーミント油、カンファ、イシリン等が挙げられる。
【0022】
上記酸化防止剤としては、例えば、トコフェロールおよびその誘導体、アスコルビン酸およびその誘導体等が挙げられる。
【0023】
上記金属イオン封鎖剤としては、例えば、エデト酸塩、リン酸、ポリリン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0024】
上記増粘剤としては、例えば、デキストラン、プルラン、アラビノガラクタン、グァーガム、タラガム、ローカストビーンガム、コンニャクマンナン、タマリンド種子ガム等が挙げられる。
【0025】
なお、上記制汗剤組成物は、汗孔を閉塞させることで物理的な制汗作用を示す制汗成分(アルミニウム化合物等)を含んでもよく、含まなくてもよい。
【0026】
以上説明したように、本発明に係る制汗剤組成物によれば、上記グリチルリチン酸アンモニウムを汗腺による汗の分泌を制御するための有効成分として含有しているので、汗腺の分泌管に作用して汗の分泌の際の汗腺の分泌管の動きを制御することができる。このことから、本発明に係る制汗剤組成物によれば、汗孔を閉塞させなくても、汗腺に作用して汗の分泌を制御することができる。
【0027】
〔2.制汗剤組成物の剤形、製造方法および用途〕
本発明に係る制汗剤組成物の剤形としては、エアゾール、ローション、ミスト、乳液、ジェル、クリーム、スティック、シート等が挙げられる。
【0028】
また、本発明に係る制汗剤組成物の商品形態は、特に限定されないが、ポンプ容器、チューブ容器、ジャー容器またはエアゾール容器等に充填した商品形態とすることができる。
【0029】
本発明に係る制汗剤組成物の製造方法は、特に限定されず、公知の製造方法を用いることができる。上記制汗剤組成物の製造方法としては、例えば、上記各成分を混合し、プロペラミキサー、ディスパーミキサー、パドルミキサー等の公知の混合装置で攪拌し、各成分を均一化する方法が挙げられる。
【0030】
本発明に係る制汗剤組成物は、例えば、化粧用途に用いられる制汗剤、医療用途に用いられる制汗剤などに用いられることが期待される。また、本発明に係る制汗剤組成物は、汗の分泌を完全に阻害するための制汗剤、汗の分泌を緩和するための制汗剤などの使用者の要求に応じた制汗剤として用いられることが期待される。
【実施例0031】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、表1における含有量は、純分に換算した量(質量%)である。
【0032】
〔発汗抑制率測定方法〕
室温にて、前腕外側部の肌上に、得られた表1の組成物を1cmの円形状に塗布した。次いで、約42℃の温水に下肢を温浴して発汗を促した。ここで、発汗計(機器名:SKN-2000、西澤電機計器製作所社製)を用いて、発汗量が10分間安定している期間における、下記実施例および比較例の組成物を塗布した箇所(試料塗布部)の平均発汗量(mg/min)を測定した。そして、下記式(1)から比較例1を基準とした発汗抑制率を算出した。
【0033】
発汗抑制率(%)=100-[(比較例1以外の該当する実施例または比較例の平均発汗量/比較例1の平均発汗量)×100]・・・(1)
〔実施例1~3および比較例1~3〕
表1に示すように各成分を配合することにより、実施例1~2および比較例1~3の制汗剤を調製した。発汗抑制率の測定結果も表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
表1より、グリチルリチン酸アンモニウムを0.05質量%以上含有した実施例1~4は、比較例1~3と比べて発汗抑制率が高い。このことから、グリチルリチン酸アンモニウムには発汗を抑制する効果があることがわかった。また、グリチルリチン酸の塩であっても、グリチルリチン酸ジカリウムは発汗を抑制しなかった。そのため、グリチルリチン酸およびその塩のうち、グリチルリチン酸アンモニウムが効果的に発汗を抑制すると言える。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、制汗剤として好適に利用することができる。