(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168642
(43)【公開日】2023-11-27
(54)【発明の名称】コルゲートマシンの制御システム、コルゲートマシン、および、印刷装置の制御装置
(51)【国際特許分類】
B31F 7/00 20060101AFI20231117BHJP
B26D 5/30 20060101ALI20231117BHJP
B26D 7/06 20060101ALI20231117BHJP
B26D 3/06 20060101ALI20231117BHJP
B31B 50/20 20170101ALI20231117BHJP
B31B 50/88 20170101ALI20231117BHJP
【FI】
B31F7/00
B26D5/30 A
B26D7/06 B
B26D3/06
B31B50/20
B31B50/88
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131526
(22)【出願日】2023-08-10
(62)【分割の表示】P 2020014635の分割
【原出願日】2020-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹本 衆一
(72)【発明者】
【氏名】田阪 範文
(72)【発明者】
【氏名】福重 直行
(57)【要約】
【課題】コルゲートマシンにおける段ボールシートの加工精度を向上させる。
【解決手段】制御システムは、シート11cを搬送方向に搬送する搬送路Lsと、搬送路Lsに設けられ、搬送路Lsを搬送されているシート11cに可変絵柄24を印刷する印刷装置250と、印刷装置250よりも搬送方向MDの下流側に設けられ、搬送路Lsを搬送されているシート11cを搬送方向MDの切断位置で交差方向CDに切断する切断装置242と、印刷装置250よりも搬送方向の上流側で、シート11cに予め印刷された固定柄28の位置を検出する検出装置282と、印刷装置250を制御する印刷制御と切断装置を制御する切断制御とを実施する制御装置300と、を備えている。制御装置300は、検出装置282で検出した固定柄28の位置に基づき、可変絵柄24の印刷位置を決定して前記印刷制御を実施する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーダーに応じた所定の寸法に製造される製函材としてのシートを搬送方向に搬送する搬送路と、
前記搬送路に設けられ、前記搬送路を搬送されている前記シートに可変絵柄を印刷する印刷装置と、
前記印刷装置よりも前記搬送方向の下流側に設けられ、前記搬送路を搬送されている前記シートを前記搬送方向の切断位置で、前記シートの面に沿って前記搬送方向に交差する交差方向に切断する切断装置と、
前記印刷装置よりも前記搬送方向の上流側で、前記シートに予め印刷された固定柄の位置を検出する検出装置と、
前記印刷装置を制御する印刷制御と前記切断装置を制御する切断制御とを実施する制御装置とを備えており、
前記制御装置は、前記検出装置で検出した前記固定柄の位置に基づき、前記可変絵柄の印刷位置を決定して前記印刷制御を実施する
コルゲートマシンの制御システム。
【請求項2】
前記固定柄は、前記切断位置を示す切断マークである
請求項1に記載のコルゲートマシンの制御システム。
【請求項3】
前記固定柄は、所定の固定絵柄である
請求項1に記載のコルゲートマシンの制御システム。
【請求項4】
前記固定柄は、固定枠であり、
前記制御装置は、前記固定枠を基準にして、前記固定枠の中の所定位置を前記可変絵柄の前記印刷位置として決定する
請求項1に記載のコルゲートマシンの制御システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記印刷位置に前記可変絵柄を印刷する前記印刷制御を実施した後に、前記可変絵柄を基準とする前記搬送方向の相対的な位置を切断位置として決定して前記切断制御を実施する
請求項1に記載のコルゲートマシンの制御システム。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れか1項に記載のコルゲートマシンの制御システムを備えたコルゲートマシン。
【請求項7】
オーダーに応じた所定の寸法に製造される製函材としてのシートを搬送方向に搬送する搬送路と、前記搬送路に設けられ、前記搬送路を搬送されている前記シートに可変絵柄を印刷する印刷装置と、前記印刷装置よりも前記搬送方向の下流側に設けられ、前記搬送路を搬送されている前記シートを前記搬送方向の切断位置で、前記シートの面に沿って前記搬送方向に交差する交差方向に切断する切断装置と、前記印刷装置よりも前記搬送方向の上流側で、前記シートに予め印刷された固定柄の位置を検出する検出装置と、を備えたコルゲートマシンにおいて、前記印刷装置を制御する印刷制御と前記切断装置を制御する切断制御とを実施する制御装置であって、
前記検出装置で検出した前記固定柄の位置に基づき、前記可変絵柄の印刷位置を決定する制御を実施する
印刷装置の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、コルゲートマシンの制御システム、コルゲートマシン、および、印刷装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ライナと中芯とから段ボールシートを製造するコルゲートマシンでは、ダブルフェーサの下流にスリッタスコアラ及びカットオフ装置がこの順に備えられている。ダブルフェーサで製造された帯状の両面段ボールウェブ(シート)に対して、スリッタスコアラによって、オーダーに応じた所定の罫線入れ及び所定の幅の断裁加工が施される。その後、カットオフ装置により両面段ボールウェブをオーダーに応じた所定の長さに切断されて最終製品である段ボールシートが製造される。
【0003】
このコルゲートマシンにおいてインクジェット印刷装置を設けて、インクジェット印刷装置が表ライナにカットオフ装置での切断位置を示す切断マークを印刷することが知られている(例えば特許文献1を参照)。これによれば、検出器が切断マークを検出し、検出結果に基づきカットオフ装置を作動させて、段ボールウェブを所定の長さの段ボールシートに切断している。また、特許文献1は、インクジェット印刷装置が表ライナの表面に切断マークとは別に所定の絵柄(可変絵柄)を印刷することも記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、切断マークの印刷位置は例えば下記のように決定される。
コルゲートマシンでは、段ボールウェブの搬送方向への累積的な搬送距離が計測されており、計測した搬送距離に基づく演算により、所定の基準位置(例えば直前の切断位置)からの搬送距離で切断位置(カットオフ間距離)を把握できる。こうして把握された切断位置が印刷位置として決定される。
【0006】
しかし、上記のようなカットオフ間距離に基づき切断マークの印刷位置(切断位置)を決定する手法では、表ライナの表面に所定の可変絵柄が印刷されている場合、所定の可変絵柄と切断位置との相対的位置が確定されないので、可変絵柄と切断位置との関係(位置関係)に誤差変動が生じやすい傾向にある。そのため、可変絵柄と切断位置との関係が不正確になる場合があり、ひいては最終製品である段ボールシートに不良が生じるおそれがあった。
本件は、このような課題に鑑み案出されたもので、コルゲートマシンで可変絵柄と切断位置との関係を正確にすることができるようにすることを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本件のコルゲートマシンの制御システムは、オーダーに応じた所定の寸法に製造される製函材としてのシートを搬送方向に搬送する搬送路と、前記搬送路に設けられ、前記搬送路を搬送されている前記シートに可変絵柄を印刷する印刷装置と、前記印刷装置よりも前記搬送方向の下流側に設けられ、前記搬送路を搬送されている前記シートを前記搬送方向の切断位置で、前記シートの面に沿って前記搬送方向に交差する交差方向に切断する切断装置と、前記印刷装置よりも前記搬送方向の上流側で、前記シートに予め印刷された固定柄の位置を検出する検出装置と、前記印刷装置を制御する印刷制御と前記切断装置を制御する切断制御とを実施する制御装置とを備えている。前記制御装置は、前記検出装置で検出した前記固定柄の位置に基づき、前記可変絵柄の印刷位置を決定して前記印刷制御を実施する。
【0008】
本件のコルゲートマシンは前記コルゲートマシンの制御システムを備えている。
【0009】
本件の印刷装置の制御装置は、オーダーに応じた所定の寸法に製造される製函材としてのシートを搬送方向に搬送する搬送路と、前記搬送路に設けられ、前記搬送路を搬送されている前記シートに可変絵柄を印刷する印刷装置と、前記印刷装置よりも前記搬送方向の下流側に設けられ、前記搬送路を搬送されている前記シートを前記搬送方向の切断位置で、前記シートの面に沿って前記搬送方向に交差する交差方向に切断する切断装置と、前記印刷装置よりも前記搬送方向の上流側で、前記シートに予め印刷された固定柄の位置を検出する検出装置と、を備えたコルゲートマシンにおいて、前記印刷装置を制御する印刷制御と前記切断装置を制御する切断制御とを実施する制御装置であって、前記検出装置で検出した前記固定柄の位置に基づき、前記可変絵柄の印刷位置を決定する制御を実施する。
【発明の効果】
【0010】
本件によれば、可変絵柄を基準にして切断位置として決定する場合、可変絵柄と切断位置との関係に誤差変動が生じにくくなる。また、固定柄を基準にして可変絵柄の印刷位置を決定する場合、固定柄と可変絵柄の印刷位置との関係に誤差変動が生じにくくなる。そのため、コルゲートマシンで製造される段ボールシートの加工精度を向上させることができる。また、このように加工精度の良い段ボールシートを製函機に用いることで、品質の良い箱を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第一実施形態に係るインクジェット印刷装置を備えた製函機の説明図である。
【
図2】(a),(b)はインク噴射口の配列の説明図である。
【
図3】第一実施形態に係るインクジェットヘッドの配置例の説明図である。
【
図4】第一実施形態に係る可変絵柄の印刷マージンの説明図である。
【
図5】第二実施形態に係るインクジェット印刷装置を備えたコルゲートマシンの説明図である。
【
図6】第二実施形態に係るインクジェットヘッドの配置例の説明図である。
【
図7】(a)は第二実施形態のコルゲートマシンの制御システムの構成図であり、(b)は可変絵柄とカットオフマークとの関係を説明する説明図である。
【
図8】(a)は可変絵柄と切断予定箇所との関係の説明図であり、(b)は可変絵柄の印刷位置に基づく切断タイミングを説明するタイミングチャートである。
【
図9】(a)は可変絵柄と切断予定箇所との関係の説明図であり、(b)は可変絵柄の印刷位置に基づく切断タイミングを説明するタイミングチャートである。
【
図10】(a)は第五の例、第六の例、および、変形例のコルゲートマシンの制御システムの構成図であり、(b)は固定柄と可変絵柄との関係の説明図である。
【
図11】(a),(b)は固定柄としての枠内に印刷された可変絵柄の例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して、実施形態について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
まず、インクジェット印刷装置が適用された製函機に関する第一実施形態を説明する。次に、インクジェット印刷装置が適用されたコルゲートマシンに関する第二実施形態を説明する。
【0013】
本明細書で「シート」は、複数の壁部を有する段ボール箱に組み立てられる製函材としてのシート材の総称である。シートには、コルゲートマシンで製造過程にあるライナ原紙(裏ライナ用のシート,表ライナ用のシート)や,中芯原紙(中芯用のシート)、段ボールウェブ,コルゲートマシンで製造された段ボールシート,製函機で製造過程にある段ボールシート,製函機で製造された製函用シート材が含まれる。
製函機やコルゲートマシンでシートが搬送される方向を搬送方向MDと呼ぶ。搬送方向MDに搬送されるシートの面に沿って搬送方向MDに交差する方向を交差方向CDと呼ぶ。ここでは、交差方向CDは、搬送方向MDに直交する方向であり、製函機やコルゲートマシンの機械幅方向あるいはシートの幅方向に対応する。
【0014】
特段の説明がなく「上流」と記載した場合は、搬送方向MDにおける上流を意味するものとし、同様に、特段の説明がなく「下流」と記載した場合は、搬送方向MDにおける下流を意味するものとする。
特段の説明がなく「上」,「下」と記載した場合は、製函機やコルゲートマシンでの上下方向を意味するものとする。上下方向は搬送方向MDおよび交差方向CDに直交する方向である。
特段の説明がなく「表(おもて)」と記載した場合は、段ボール箱に組み立てた状態で外側に面する側を意味し、特段の説明がなく「裏(うら)」と記載した場合、「表(おもて)」の反対側を意味するものとする。
【0015】
[A.第一実施形態]
[I.製函機]
[1.全体構成]
図1は、第一実施形態に係る製函機100の全体構成を説明する説明図である。
製函機100は、コルゲートマシンで製造された段ボールシート10に対して印刷や,溝切り,罫線入れ,打ち抜き,糊付け,折り曲げ等の加工を施して、製函用シート材10aを製造するためのフォルダグルア装置(段ボール箱製造装置)である。
段ボールシート10は、一箱分のサイズに形成された矩形の板状シートである。
製函用シート材10aは、段ボールシート10に上記の加工が施されたものであり、立方体状に組み立てられておらず平面状に畳まれたシート状の段ボール箱である。
【0016】
図1では、製函機100がいわゆるA式段ボール箱(みかん箱)となる製函用シート材10aを製造する場合を例に挙げており、段ボールシート10が製函用シート材10aに加工される過程を製函機100の各工程の装置構成の上方に、装置構成とは分けて装置構成に対応させて付記している。
製函機100において、段ボールシート10は、その長辺の一方を搬送方向MDの下流に向けた姿勢で搬送方向MDに搬送されている。これは段ボールシート10の段(フルート)が搬送方向MDに対して平行になる姿勢とする。
【0017】
製函機100には、上流側から順に、給紙部1,印刷部2,排紙部3,ダイカット部4,フォルダグルア部5,カウンタエゼクタ部6が設けられている。
給紙部1は、段ボールシート10を印刷部2に供給(給紙)するユニットである。給紙部1には、板状の段ボールシート10が多数積載された状態で搬入されている。給紙部1は、これら段ボールシート10を1枚ずつ印刷部2に供給する。
印刷部2は、段ボールシート10を搬送方向MDに搬送する搬送コンベア7(搬送路Ls)を有しており、搬送コンベア7で搬送中の段ボールシート10に所定の絵柄を印刷する。
【0018】
印刷部2には、所定の色数(ここでは、4色)のフレキソ印刷部21A~21Dが、搬送方向MDに沿って上流側から順に配置されている。
フレキソ印刷部21A~21Dのそれぞれは、印版が装着された版胴と段ボールシート10を版胴に圧接する受けロールとを備え、搬送路Lsの段ボールシート10に対して印版に形成された絵柄を各色のインクで順次印刷する。
フレキソ印刷部21A~21Dの版胴のそれぞれは、その直径が何れも同一径に設定されており、印刷中は段ボールシート10の搬送速度と同じ周速で回転している。
【0019】
フレキソ印刷部21A~21Dの下流側にはインクジェット印刷装置22が設けられている。インクジェット印刷装置22は、インクジェット方式で印刷する印刷装置であり、搬送路Lsを搬送方向MDに搬送される段ボールシート10にデジタルデータに基づく所定の絵柄(可変絵柄)を印刷する。
フレキソ印刷部21A~21Dが、各段ボールシート10に対して印版に形成された共通の絵柄を印刷するものであるのに対して、インクジェット印刷装置22は個々の段ボールシート10に対して異なる可変絵柄を印刷し得る。そのため、インクジェット印刷装置22は、例えば個々の段ボールシート10を識別可能な識別コードの印刷に利用され得る。なお、インクジェット印刷装置22の設置場所は本実施形態に限らず、段ボールシート10に対して印刷可能な場所であれば、例えばフレキソ印刷部21A~21Dの上流側など、製函機100のどこに設けてもよい。インクジェット印刷装置22の詳細な構成は後述する。
【0020】
排紙部3では、印刷部2で印刷された段ボールシート10に溝切りや罫線入れを行って排紙する。
ダイカット部4では、排紙部3から排紙された段ボールシート10に打ち抜き加工や更なる溝切りや罫線入れを施す。
フォルダグルア部5は、ダイカット部4により加工された段ボールシート10の幅方向(交差方向CD)の一端に形成された糊代部に糊付けして、段ボールシート10の幅方向両端部が重合するように段ボールシート10を折り曲げ加工する。
【0021】
フォルダグルア部5により加工された段ボールシート10は、幅方向両端部が糊によって接着されてシート状の段ボール箱(製函用シート材)10aとなる。
カウンタエゼクタ部6では、フォルダグルア部5で加工された製函用シート材10aを計数しながら、スタッカテーブルに積載する部分である。カウンタエゼクタ部6により所定枚数の製函用シート材10aが積み上げられたら、このシート材群10bが一単位のバッチとして出荷される。
【0022】
[2.詳細構成]
<インクジェット印刷装置の構成>
次に、インクジェット印刷装置22の詳細構成を説明する。
インクジェット印刷装置22は、搬送方向MDに段ボールシート10を搬送する搬送路Lsと、搬送路Lsの上方において段ボールシート10の表面に対向し交差方向CD(
図1で紙面に対して垂直方向)に並べて配置された二個のインクジェットヘッド23A,23B(
図1では二点鎖線で示す。以下単に「ヘッド」ともいう)とを有している。なお、個々のヘッド23A,23Bを区別する必要がない場合は符号23を用いる。
【0023】
ヘッド23A,23Bのそれぞれは、段ボールシート10に対向する下面部に複数のインク噴射口を有しており、可変絵柄に対応した位置にあるインク噴射口からインクを噴射することで、段ボールシート10に対して所定の可変絵柄を印刷するものである。
図1のインクジェット印刷装置22は、ヘッド23A,23Bを固定したまま、段ボールシート10がヘッド23A,23Bの下方を一回通過する過程で所定の可変絵柄の印刷を1アクションで完成させるシングルパス方式の構造を有する。各ヘッド23A,23Bの複数のインク噴射口は交差方向CDに沿って配列されている。これらインク噴射口の配列された範囲は、各ヘッド23A,23Bが印刷可能な交差方向CDの範囲(後述の
図2で符号P1A,P1Bで示す「印刷範囲」)を規定している。
【0024】
図2(a),(b)は、一個のヘッド23におけるインク噴射口の配列と印刷柄24(破線で囲む範囲)とを説明する説明図である。符号23N1~23N9は九個(複数個)のインク噴射口であり、可変絵柄24に重ねられた円形は一個のインク噴射口23N1~23N9が一回の噴射で噴射されたインクを表す。
例えば、
図2(a)で九個のインク噴射口23N1~23N9は、交差方向CDに沿って一列に配列されている。この場合、段ボールシート10がヘッド23A,23Bの下方を一回通過する過程でインク噴射口23N1~23N9から複数回インクを噴射して可変絵柄24の印刷を完成させている。
【0025】
また、
図2(b)では、九個のインク噴射口23N1~23N9が、搬送方向MDに沿って、一列目L1,二列目L2の二列に分散して配置されている〔
図2(b)で二点鎖線を参照〕。インク噴射口23N1~23N9は、二列L1,L2のそれぞれで搬送方向MDに位置をずらして配置(千鳥配置)されている。例えば設置スペースの制約でインク噴射口23N1~23N9を横一列に配置できない場合に、(b)の千鳥配置を適用するとよい。
この場合、二列L1,L2のそれぞれではインク噴射口23N1~23N9が時間差でインクを噴射することで、交差方向CDで一列分の範囲に印刷を施している。二列L1,L2のそれぞれでは、段ボールシート10がヘッド23A,23Bの下方を一回通過する過程でインク噴射口23N1~23N9が時間差のインク噴射を複数回実施して、可変絵柄24の印刷を完成させる。
【0026】
一個のヘッド23でのインク噴射口の数は図示の例に限定されない。例えば、搬送MDに沿う列の数は三列以上であってもよい。列の数を多くして、インク噴射口の配置に対応する面積を広くとった場合、その面積の範囲内に収まる寸法の可変絵柄24であれば、段ボールシート10がヘッド23の下方を一回通過する過程で一回インクを噴射するだけで可変絵柄の印刷を完成させることが可能である。この場合、高速で効率よく印刷を実施可能である。
ヘッド23の作動は印刷制御装置22Aが所定の可変絵柄を表すデジタルデータに基づき制御する。
【0027】
<段ボールシート>
図3は、段ボールシート10に対するヘッド23A,23Bの配置例を説明するための説明図であり、段ボールシート10を上側から視た平面図で示している。紙面の上から下へ向かう方向が搬送方向MDに対応し、紙面の左右方向が交差方向CDに対応している。段ボールシート10は、長辺の一側を下流側に向けて搬送方向MDに沿って上流から下流に(紙面上で上から下に)搬送されるものとする。
図3の段ボールシート10は、インクジェット印刷装置22を通過した直後であり、溝切り、罫線入れおよび打ち抜きなどの加工が未だ施されていない。段ボールシート10では、溝切り、罫線入れおよび打ち抜きなどの加工が施される予定箇所(加工予定箇所)が破線で示されている。
【0028】
――段ボールシートの領域――
段ボールシート10は、領域31A~31Dと、領域32A~32Dと、領域33A~33Dとの十二個の領域に区分される。これら領域31A~31D,領域32A~32D,領域33A~33Dは破線で区画されている。
段ボールシート10では、段ボールシート10が段ボール箱に組み立てたときに四方の側壁部(一対の長さ面と一対の幅面)になることが予定された領域32A,32B,32C,32Dが交差方向CDに並んでいる。
【0029】
これら領域32A~32Dのそれぞれの搬送方向MDの下流側は段ボール箱に組み立てたときに天面および底面の一方(一対の外フラップと一対の内フラップ)になることが予定された領域31A,31B,31C,31Dであり、上流側は天面および底面の他方(一対の外フラップと一対の内フラップ)になることが予定された領域33A,33B,33C,33Dである。
【0030】
段ボールシート10が段ボール箱に組み立てられた場合、領域32Aと領域32Cとが一対の長さ面となり、領域32Bと領域32Dとが一対の幅面となる。また、領域31Aと領域31Cとが天面または底面の一方の一対の外フラップとなり、領域31Bと領域31Dとが天面または底面の一方の一対の内フラップとなる。また、領域33Aと領域33Cとが天面または底面の他方の一対の外フラップとなり、領域33Bと領域33Dとが天面または底面の他方の一対の内フラップとなる。
【0031】
――可変絵柄――
段ボールシート10では、上記の領域31A~31D,領域32A~32D,領域33A~33Dのうち、六つの領域32A,32B,32C,32D,31C,33Cのそれぞれに可変絵柄24が印刷されている。これら領域32A,32B,32C,32D,31C,33Cのそれぞれは、段ボールシート10の段ボール箱に組み立てられたときに外観をなす壁部になることが予定された領域である。なお、段ボールシート10の表面(印刷面)が、段ボール箱に組み立てられたときに外側を向く面になるものとする。
【0032】
以下では、可変絵柄24が、例えばQRコード(登録商標)やバーコードなど識別コードである場合を例に挙げる。識別コードは、例えば段ボールシート10を個別に識別可能なコードであり、個々の段ボールシートのID番号や、製造元,製造ロット番号,製造年月日などの情報を含む。以下、可変絵柄24を識別コード24に特定して説明する。
一枚の段ボールシート10における領域32A,32B,32C,32D,31C,33Cのそれぞれには共通の識別コード24が印刷される。
【0033】
<インクジェットヘッドの配置>
第一実施形態のヘッド23A,23Bは、上記の段ボールシート10を段ボール箱に組み立てたときに外観をなす六面(六箇所の壁部)のそれぞれに識別コード24が印刷されるように、配置されている。
具体的には、ヘッド23Aは、搬送方向MDに並んだ領域31A,32A,33Aと、これら領域31A,32A,33Aに交差方向CDで隣接しており搬送方向MDに並んだ領域31B,32B,33Bとに印刷範囲P1Aが跨るように配置されている。
そのため、ヘッド23Aは、領域31A,32A,33Aと領域31B,32B,33Bに対して印刷が可能である。
図3はヘッド23Aが領域32A,32Bのそれぞれに識別コード24を印刷する場合を例に挙げている。
【0034】
識別コード24の印刷される領域32Aと領域32Bとに着目すると、ヘッド23Aは、段ボールシート10が段ボール箱に組み立てられた状態で一方の長さ面(第一の壁部)になることが予定された領域(第一の領域)32Aと、この領域32Aに交差方向CDで隣接しており一方の幅面(第一の壁部とは別の第二の壁部)になることが予定された領域(第二の領域)32Bと、に印刷範囲P1Aが跨るように配置されている。
【0035】
また、ヘッド23Bは、搬送方向MDに並んだ領域31C,32C,33Cと、これら領域31C,32C,33Cに交差方向CDで隣接しており搬送方向MDに並んだ領域31D,32D,33Dとに印刷範囲P1Bが跨るように配置されている。そのため、ヘッド23Bは、領域31C,32C,33Cと領域31D,32D,33Dとに対して印刷が可能である。
図3はヘッド23Bが領域32C,32Dと、この領域32Cに搬送方向MDに並んでおり、段ボールシート10が段ボール箱に組み立てられた状態で外フラップ(第一の壁部および第二の壁部とは別の第三の壁部)になることが予定された領域(第三の領域)31C,33Cとのそれぞれに識別コード24を印刷する場合を例に挙げている。
【0036】
識別コード24の印刷される領域32Cと領域32Dとに着目すると、ヘッド23Bは、段ボールシート10が段ボール箱に組み立てられた状態で他方の長さ面(第一の壁部)になることが予定された領域(第一の領域)32Cと、この領域32Cに交差方向CDで隣接しており他方の幅面(第一の壁部とは別の第二の壁部)になることが予定された領域(第二の領域)32Dと、に印刷範囲P1Bが跨るように配置されている。
【0037】
図3に示すように、ヘッド23Aの交差方向CDの位置は、上面視で、印刷範囲P1Aの交差方向CDの中心が領域31A,32A,33Aと領域31B,32B,33Bとの境界の交差方向CDの位置と一致するように配置されている。また、ヘッド23Bの交差方向CDの位置は、上面視で、印刷範囲P1Bの交差方向CDの中心が領域31C,32C,33Cと領域31D,32D,33Dとの境界の交差方向CDの位置と一致するように配置されている。
【0038】
第一実施形態のインクジェット印刷装置22におけるヘッド23A,23Bの配置は、溝切り、罫線入れおよび打ち抜きなどの加工予定箇所に着目すると、搬送方向MDに沿って延在する加工予定箇所、具体的には溝切り(スロット)予定箇所と罫線(クリーズ)予定箇所とにヘッド23A,23Bの印刷範囲P1A,P1Bが跨っている配置とも言える。
【0039】
ヘッド23A,23Bは印刷範囲が交差方向CDに隣接した二つの領域に跨るように配置されているので、一個のヘッド23A,23Bだけで交差方向CDに隣接した二つの領域に印刷できる。そのため、段ボール箱に組み立てられた状態で壁部になることが予定された複数の領域に印刷を行う場合に、交差方向CDに並んだ領域のそれぞれに一つずつインクジェットヘッドを設ける従来の構成に比べて、インクジェットヘッドの数を削減できる。
【0040】
<インクジェット印刷>
上記の配置により、ヘッド23A,23Bは、二個のヘッド23A,23Bだけで段ボール箱の壁部になることが予定されている領域32A,32B,32C,32D,31C,33Cのそれぞれに、識別コード24を印刷可能である。
各ヘッド23A,23Bにてインクを噴射するインク噴出口の選択と、各インク噴出口のインクを噴射するタイミング(印刷タイミング)を印刷制御装置22Aが制御することで、デジタルデータに基づく所定の絵柄や,サイズ,形状,位置の識別コード24が印刷される。
【0041】
ヘッド23A,23Bでは、印刷範囲P1A,P1Bのそれぞれにおいて、印刷範囲の一側を二つの領域の一方(領域31A,32A,33Aと領域31B,32B,33Bの一方、または、領域31C,32C,33Cと領域31D,32D,33Dの一方)に用いて、印刷範囲の他側を二つの領域の他方(領域31A,32A,33Aと領域31B,32B,33Bの他方、または、領域31C,32C,33Cと領域31D,32D,33Dの他方)に用いている。
具体的には、印刷範囲P1Aの
図3で左側の半分は領域31A,32A,33Aへの印刷に用いられ、
図3で右側の半分は領域31B,32B,33Bへの印刷に用いられている。また、印刷範囲P1Bの
図3で左側の半分は領域31C,32C,33Cへの印刷に用いられ、
図3で右側の半分は領域31D,32D,33Dへの印刷に用いられている。
【0042】
例えば、ヘッド23Aで領域32Aと領域32Bとのそれぞれに識別コード24を印刷する場合、領域32A,32Bの搬送方向MDの中央付近がヘッド23Aの下方を通過するタイミングで、印刷範囲P1Aの
図3で左側半分の一部のインク噴出口と、
図3で右側半分の一部のインク噴出口とのそれぞれからインクを噴射する。
また、ヘッド23Bで領域31Cに識別コード24を印刷する場合、
図3で領域31Cの右上箇所付近がヘッド23Bの下方を通過するタイミングで、印刷範囲P1Bの
図3で左側半分の一部のインク噴出口からインクを噴射する。
【0043】
領域32A,32B,32C,32D,31C,33Cのそれぞれの識別コード24は、印刷範囲P1A,P1B内でさえあれば任意の位置に印刷され得る。例えば、領域32Aで識別コード24はその領域内の搬送方向MDの中央付近に印刷されているが、例えば搬送方向MDの一側または他側の縁部付近(領域33Aや領域31Aのとの境界付近)に印刷されてもよい。
【0044】
図3では交差方向CDに隣接する領域どうし(例えば領域32Aと領域32Bと)で識別コード24の搬送方向MDの位置が揃えられているが、識別コード24の搬送方向MDの位置が異なっていてもよい。なお、識別コード24の搬送方向MDの位置は、識別コード24の代表部分(例えば、最下流部分又は最上流部分)の搬送方向MDの位置とすればよい。また、識別コード24の検出タイミングについても、識別コード24の代表部分(例えば、最下流部分又は最上流部分)を検出したタイミングとすればよい。
識別コード24は、領域内の他の可変絵柄の配置に合わせて、他の可変絵柄に干渉しない位置に印刷され得る。
【0045】
<識別コードの印刷マージン>
識別コード24のそれぞれは、その識別コード24が印刷される領域32A,32B,32C,32D,31C,33Cの縁部から所定の印刷マージン以上離れた位置に印刷される。
【0046】
図4は、印刷マージンを説明するための説明図であって、段ボールシート10における領域32C,32D,33C,33Dの一部を拡大して示している。
図4において二点鎖線は領域32C,32D,33C,33Dのそれぞれの間の境界を示す。領域33Cと領域33Dの間の破線はスロット(溝切り)加工が予定されている箇所(加工予定箇所)を示す。領域32Cと領域33Cの間,領域32Dと領域33Dの間の破線は罫線(スコア)加工が予定されている箇所を示し、領域32Cと領域32Dの間の破線は罫線(クリーズ)加工が予定されている箇所を示す。
なお、
図4では、スロットの幅(交差方向CDの寸法)や、罫線の幅(スコアの搬送方向MDの寸法およびクリーズの交差方向CDの寸法)を誇張して描いている。
【0047】
印刷マージンは、シート10を段ボール箱に組み立て状態で識別コード24の周囲に識別コード24の読み取りに必要な空白部(クワイエットゾーン)を確保するために設けられている。この印刷マージンには、交差方向CDのマージンdxと搬送方向MDのマージンdyとの二種のマージンがある。
【0048】
――交差方向CDのマージン――
交差方向CDのマージンdx[mm]は、識別コード24の縁部から、その識別コード24に交差方向CDで隣接している境界(二点鎖線)までの間隔である。例えば領域33Cに印刷された識別コード24において交差方向CDの一側の縁部(
図4において交差方向CDの右側の縁部)から領域33Cと領域33Dとの間の境界までの間隔である。
dx[mm]は、スロット幅a[mm]と罫線位置精度b[mm]とクワイエットゾーンc[mm]とから下記の式1で求められる。
dx[mm]=(a[mm]/2)+b[mm]+c[mm]・・・式1
【0049】
スロット幅a[mm]は、領域33Cと領域33Dとの間に形成される予定のスロットの幅(領域の間の加工予定箇所の寸法)である。
罫線位置精度b[mm]は、領域32Cと領域32Dとの間に形成される予定の罫線(クリーズ)のばらつき(誤差)を考慮した値(領域の間の加工予定箇所の寸法)である。
クワイエットゾーンc[mm]は、例えばQRコード(登録商標)やバーコードなど画像コードを読み取るために必要とされる空白部分(交差方向CDの空白部分)の寸法である。クワイエットゾーンc[mm]の寸法は、識別コード24の仕様や規格により定められた規定値(所定値)である。
【0050】
――搬送方向MDのマージン――
搬送方向MDのマージンdy[mm]は、識別コード24の縁部から、その識別コード24に搬送方向MDで隣接している境界(二点鎖線)までの間隔である。例えば領域33Cに印刷された識別コード24において搬送方向MDの一側の縁部(
図4において搬送方向MDの下側の縁部)から領域33Cと領域32Cとの間の境界までの間隔である。
マージンdy[mm]は、罫線幅e[mm]と罫線位置精度b[mm]とクワイエットゾーンc[mm]とから下記の式2で求められる。
dy[mm]=(e[mm]/2)+b[mm]+c[mm]・・・式2
【0051】
罫線幅e[mm]は、領域33Cと領域32Cとの間や、領域33Dと領域32Dとの間に形成される予定の罫線(スコア)の幅(領域の間の加工予定箇所の寸法)である。
搬送方向MDのマージンdy[mm]での罫線位置精度b[mm]は、上記の罫線(スコア)の位置のばらつき(誤差)を考慮した値(領域の間の加工予定箇所の寸法)である。
搬送方向MDのマージンdy[mm]でのクワイエットゾーンc[mm]は、上記と同様な識別コード24の仕様や規格により定められた規定値である。
【0052】
マージンdx[mm],マージンdx[mm]を上記の式1,式2で求めることで、段ボール箱に組み立てるときの罫線(クリーズおよびスコア)での折り曲げ加工による段ボールシート10の変形を考慮しつつ、所定のクワイエットゾーンを確保できる。
【0053】
[B.第二実施形態]
[II.コルゲートマシン]
[1.全体構成]
次に、第二実施形態に係るコルゲートマシンを説明する。
図5は、コルゲートマシン200の全体構成を説明する説明図である。
第二実施形態のコルゲートマシン200は、中芯の両面に表ライナおよび裏ライナを貼合して両面段ボールシートを製造する段ボールシート製造装置である。
【0054】
コルゲートマシン200には、裏ライナ11a,中芯11b,表ライナ11cにそれぞれ用いる原紙をコルゲートマシン200に供給するためのミルロールスタンド211a,211b,211cが設けられている。
ミルロールスタンド211a,211b,211cのそれぞれは、裏ライナ11a,中芯11b,表ライナ11cの原紙ロールを支持するものである。ミルロールスタンド211a,211b,211cのそれぞれには、二個の原紙ロールが支持されるとともに、その上方に原紙ロールから繰り出された原紙を継ぎ合わせるためのスプライサが設けられている。
【0055】
裏ライナ11a用のミルロールスタンド211aと中芯11b用のミルロールスタンド211bのそれぞれの下流側には、プレヒータ231,232が設けられている。各プレヒータ231,232は、裏ライナ11a,中芯11bのそれぞれの原紙を予熱するヒータである。各プレヒータ231,232は、内部に蒸気が供給される加熱ロールを有しており、裏ライナ11a,中芯11bのそれぞれの原紙をこの加熱ロールに巻き付けて搬送することで昇温する。
【0056】
裏ライナ11a用のプレヒータ231および中芯11b用のプレヒータ232の下流側にはシングルフェーサ233が設けられている。シングルフェーサ233は、中芯11bの原紙を段繰りして波型加工された中芯11bを作成するとともに、この中芯11bの段頂に糊付けし、中芯11bの段頂に裏ライナ11aを貼り合わせた片面段ボールウェブ12を形成する。
【0057】
シングルフェーサ233の下流側には、一対の無端ベルトで構成されたコンベア234が設けられており、コンベア234によって片面段ボールウェブ12がブリッジ235に搬送される。ブリッジ235は、片面段ボールウェブ12をシングルフェーサ233から下流側のダブルフェーサ238まで送る架橋状部分であり、シングルフェーサ233とダブルフェーサ238との速度差を吸収するために片面段ボールウェブ12を一時的に滞留させる滞留部として機能する。
【0058】
表ライナ11c用のミルロールスタンド211cの下流側には、インクジェット印刷装置250が設けられている。なお、インクジェット印刷装置250の設置場所は本実施形態に限らず、表ライナ11cに印刷可能な場所であればコルゲートマシン200のどこに設けてもよい。
インクジェット印刷装置250は、表ライナ11cに所定の可変絵柄をインクジェット方式で印刷する印刷装置であり、表ライナ11c用のミルロールスタンド211cとプレヒータ236との間に設けられている。インクジェット印刷装置250は、表ライナ11cをミルロールスタンド211cから下流側のプレヒータ236に搬送する搬送路Lsと、搬送路Lsの上方に配置されたインクジェットヘッド260とで構成される。
【0059】
ブリッジ235およびインクジェット印刷装置250の下流側にはプレヒータ236が設けられている。プレヒータ236は、表ライナ11cを加熱する加熱ロール236aと片面段ボールウェブ12を加熱するための加熱ロール236bとを有しており、表ライナ11c,片面段ボールウェブ12を加熱することの他は、前述のプレヒータ231,232と同様に構成される。
プレヒータ236の下流側にはグルーマシン237が設けられている。グルーマシン237は、片面段ボールウェブ12の段頂に糊付けする糊付け装置と、表ライナ11cを加熱するヒータ(加熱ロール)237aとを有しており、段頂に糊付けされた片面段ボールウェブ12と加熱された表ライナ11cとのそれぞれをダブルフェーサ238に供給する。
【0060】
ダブルフェーサ238は、表ライナ11cを加熱するヒータ(加熱ロール)238aを有しており、ヒータ238aで加熱した表ライナ11cを片面段ボールウェブ12の段頂に貼り合わせて帯状の段ボールウェブ(両面シート)10Wを形成する。
ロータリーシャ239は、オーダーチェンジをするときにスリッタスコアラ240の上流側で段ボールウェブ10Wを切断するために使用される回転式切断装置である。
【0061】
スリッタスコアラ(断裁装置)240は、ダブルフェーサ238で作成された段ボールウェブ10Wを搬送方向MDに沿って断裁し複数丁の段ボールウェブ10W′を作成し、また、複数丁の段ボールウェブ10W′に搬送方向MDに沿って延びる罫線を形成する加工を施す。
スリッタスコアラ240の下流側に設けられたディレクタ装置241は、複数丁の段ボールウェブ10W′を、上段または下段のカットオフ装置242に分離して振り分ける。上段および下段の各カットオフ装置242のそれぞれは、上段または下段に振り分けられた段ボールウェブ10W′を交差方向CDに切断して最終製品である段ボールシート(板状段ボールシート)10を作成する。各カットオフ装置242で切断された段ボールシート10のそれぞれは、上段または下段のスタッカ243に順次積載される。
【0062】
[2.詳細構成]
<インクジェット印刷装置の詳細構成>
次に、インクジェット印刷装置250の詳細な構成例を説明する。以下では、コルゲートマシン200が四丁の段ボールシート10を作成する場合を例に挙げて説明をする。
第二実施形態のコルゲートマシン200は、搬送路Lsの上方で表ライナ11c(シート)の表面に対向して六個のインクジェットヘッド(以下単に「ヘッド」とも言う)六個のヘッド260A,260B,260C,260D,260E,260Fを有する点が上述したインクジェット印刷装置22とは異なっており、その他の構造はインクジェット印刷装置22と共通である。
【0063】
具体的には、各ヘッド260A~260Fは、表ライナ11cに対向する下面部に交差方向CDに沿って配列された複数のインク噴射口を有しており、これらインク噴射口の配列された範囲(交差方向CDの所定の印刷範囲)で印刷可能である。なお、個々のヘッド260A~260Fを区別する必要がない場合はヘッドに符号260を用いる。インク噴射口の配列などヘッド260の詳細な構成は、ヘッド23と共通である。
【0064】
図6は、表ライナ11cに対するヘッド260の配置例を説明するための説明図であり、表ライナ11cを上側から視た平面図で示している。紙面の上から下へ向かう方向が搬送方向MDに対応し、紙面の左右方向がCD方向に対応している。
表ライナ11cは、段(フルート)が搬送方向MDに垂直になる姿勢で搬送路Lsを搬送されている。つまり、表ライナ110,112,114,116は、
図3の段ボールシート10と比較すると、搬送方向MDに対して90度回転させた向きで搬送されている。
【0065】
<表ライナの構成>
コルゲートマシン200が四丁の段ボールシート10を作成するので、
図6の表ライナ11cは、搬送方向MDに延びて交差方向CDに離間した三本の断裁予定線(一点鎖線参照)によって四丁分の表ライナに区分けされている。断裁予定線は、インクジェット印刷装置250よりも後段のスリッタスコアラ240で断裁される予定の箇所である。断裁予定線は、断裁されることが予定されている仮想的な線であり、実際の表ライナ11c表面に記載されているわけではない。一丁の段ボールシート10の交差方向CDの寸法(所定距離)はオーダー毎に指定される。
【0066】
四丁分の表ライナ11cは
図6で左から右に向かって(交差方向CDの一側から他側に向かって)並んでいる。本明細書では、断裁予定線で区切った四丁分の表ライナ11cのそれぞれを表ライナ110,112,114,116と呼ぶ。なお、個々の表ライナを区別する必要がない場合は表ライナに符号11cを用いる。
【0067】
個々の表ライナ110,112,114,116には、スリッタスコアラ240よりも後段のカットオフ装置242で切断される予定の箇所(切断予定線)が二点鎖線で示されている。切断予定線も、切断が予定されている仮想的な線であり、実際の表ライナ表面に記載されているわけではない。搬送方向MDに所定距離ずつ離間して切断予定線(二点鎖線)がある。
【0068】
表ライナ11cの搬送方向MDへの累積的な搬送距離が図示しない計測部で計測されている。そのため、計測した搬送距離に基づく演算により、所定の基準位置(例えば直前の切断予定線)から搬送方向MDに所定距離(カットオフ間距離)だけ離間した切断予定線の位置を把握できる。一丁の段ボールシート10の搬送方向MDの寸法(所定距離)はオーダー毎に指定される。
個々の表ライナ110,112,114,116では、断裁予定線(一点鎖線を参照)と搬送方向MDに隣接した一対の切断予定線とで区画された範囲110a,112a,14a,116aが一枚の段ボールシート(一箱分の段ボール箱)に対応する。
【0069】
更に、
図6の表ライナ11cでは、コルゲートマシン200で製造された段ボールシート10を加工するための製函機(
図1参照)で溝切り、罫線入れおよび打ち抜きが施される予定箇所が破線で示されている。これら破線も、各処理が予定されている仮想的な線であり、実際の表ライナ表面に記載されているわけではない。
表ライナ110,112,114,116のそれぞれで一枚の段ボールシートとなる予定の範囲110a,112a,114a,116aは、
図3の領域31A~31D,領域32A~32D,領域33A~33Dに対応する十二個の領域に区分される。ただし、
図6の十二個の領域は、
図3の段ボールシート10の十二個の領域31A~31D,32A~32D,33A~33Dと比較して、搬送方向MDおよび交差方向CDを有する平面上で90度回転した向きで並んでいる。
【0070】
例えば、表ライナ110の範囲110aでは、段ボール箱に組み立てたときに四方の側壁部(一対の長さ面と一対の幅面)になることが予定された領域42A,42B,42C,42Dが搬送方向MDに並んでいる。
これら領域42A~42Dのそれぞれの交差方向CDの一側は段ボール箱に組み立てたときに天面または底面の一方(一対の外フラップと一対の内フラップ)になることが予定された領域41A,41B,41C,41Dであり、他側は天面または底面の他方(一対の外フラップと一対の内フラップ)になることが予定された領域43A,43B,43C,43Dである。
【0071】
範囲110aのシートが段ボール箱に組み立てられた場合、領域42Aと領域42Cとが一対の長さ面となり、領域42Bと領域42Dとが一対の幅面となる。また、領域41Aと領域41Cとが天面または底面の一方の一対の外フラップとなり、領域41Bと領域41Dとが天面または底面の一方の一対の内フラップとなる。また、領域43Aと領域43Cとが天面または底面の他方の一対の外フラップとなり、領域43Bと領域43Dとが天面または底面の他方の一対の内フラップとなる。
【0072】
他の表ライナ112,114,116の範囲112a,114a,116aも、表ライナ110と同様の並び順で、十二個の領域(具体的には、範囲112a内の領域51A~51D,52A~52D,53A~53D、または、範囲114a内の領域61A~61D,62A~62D,63A~63D,範囲116a内の領域71A~71D,72A~72D,73A~73D)に区分される。
【0073】
<インクジェットヘッドの配置>
第二実施形態では、交差方向CDに並んだ四丁分の表ライナ110,112,114,116に対して、六個のヘッド260A~260Fが
図6で左から右に向かって(交差方向CDの一側から他側に向かって)この順に並べて配置されている。
これらヘッド260A~260Fは、各表ライナ110,112,114,116の範囲110a,112a,114a,116aにおいて段ボール箱の六面になることが予定された各領域に識別コード24(可変絵柄)が印刷されるように、配置されている。
【0074】
具体的には、ヘッド260Aは、表ライナ110の領域41A~41Dと、これら領域41A~41Dに交差方向CDで隣接する領域42A~42Dに印刷範囲が跨るように配置されている。そのため、ヘッド260Aは領域41A~41Dと領域42A~42Dとに対して印刷が可能である。
図6はヘッド260Aが表ライナ110の領域41Cと領域42A~42Dのそれぞれとに識別コード24を印刷する場合を例に挙げている。
【0075】
ヘッド260Bは、表ライナ110の領域43A~43Dと、これら領域43A~43Dに交差方向CDで隣接する表ライナ112の領域51A~51Dに印刷範囲が跨るように配置されている。そのため、ヘッド260Bは、表ライナ110の領域43A~43Dと表ライナ112の領域51A~51Dとに対して印刷可能である。つまり、このヘッド260Bは、交差方向CDに隣接した二丁分の表ライナ110,112で共用される。
図6はヘッド260Bが表ライナ110の領域43Cと表ライナ112の領域51Cのそれぞれとに識別コード24を印刷する場合を例に挙げている。
【0076】
ヘッド260Cは、表ライナ112の領域52A~52Dと、これら領域52A~52Dに交差方向CDで隣接する領域53A~53Dに印刷範囲が跨るように配置されている。そのため、ヘッド260Cは、表ライナ112の領域52A~52Dと領域53A~53Dとに対して印刷可能である。
図6はヘッド260Cが表ライナ112の領域52A~52Dと領域53Cのそれぞれに識別コード24を印刷する場合を例に挙げている。
【0077】
ヘッド260Dは、表ライナ114の領域61A~61Dと、これら領域61A~61Dに交差方向CDで隣接する領域62A~62Dに印刷範囲が跨るように配置されている。そのため、ヘッド260Dは表ライナ114の領域61A~61Dと領域62A~62Dとに対して印刷可能である。
図6は260Dが表ライナ114の領域61Cと領域62A~62Dのそれぞれとに識別コード24を印刷する場合を例に挙げている。
【0078】
ヘッド260Eは、表ライナ114の領域63A~63Dと、これら領域63A~63Dに交差方向CDで隣接する表ライナ116の領域71A~71Dに印刷範囲が跨るように配置されている。そのため、ヘッド260Eは表ライナ114の領域63A~63Dと表ライナ116の領域71A~71Dとに対して印刷可能である。つまり、ヘッド260Eは二丁分の表ライナ114,116で共用される。
図6はヘッド260Eが表ライナ114の領域63Cと表ライナ116の領域71Cとのそれぞれに識別コード24を印刷する場合を例に挙げている。
【0079】
ヘッド260Fは、表ライナ116の領域72A~72Dと、これら領域72A~72Dに交差方向CDで隣接する領域73A~73Dに印刷範囲が跨るように配置されている。そのため、ヘッド260Fは表ライナ116の領域72A~72Dと領域73A~73Dとに対して印刷可能である。
図6はヘッド260Fが表ライナ116の領域72A~72Dと領域73Cとのそれぞれに識別コード24を印刷する場合を例に挙げている。
【0080】
なお、
図6のヘッド260A~260Fも、それぞれの印刷範囲の交差方向CDの中心を、領域41A~41Dと領域42A~42D,領域43A~43Dと領域51A~51D,領域52A~52Dと領域53A~53D,領域61A~61Dと領域62A~62D,領域63A~63Dと領域71A~71D、または、領域72A~72Dと領域73A~73Dの境界に揃えて配置されている。
【0081】
上記のヘッド260A~260Fの配置では、一丁分の表ライナ110,112,114または116に対して二個のヘッド260が配置される。例えば、表ライナ110に対して二個のヘッド260Aとヘッド260Bとが配置されている。
一丁分の表ライナ110に用いる一方のヘッド260Aは、領域41Cと領域42Cとに着目すると、段ボール箱に組み立てられた状態で天面(第一の壁部)になることが予定された領域(第一の領域)41Cと、この領域41Cに交差方向CDで隣接しており長さ面(第一の壁部とは別の第二の壁部)になることが予定された領域(第二の領域)42Cと、に印刷範囲が跨るように配置されているものと言える。
【0082】
また、一丁分の表ライナ110に用いる他方のヘッド260Bは、領域43Cとこの領域43Cに交差方向CDで隣接した表ライナ112の領域51Cとに着目すると、表ライナ110を用いた段ボールシート10が段ボール箱に組み立てられた状態で底面(第一の壁部)になることが予定された領域(第一の領域)43Cと、この領域43Cに交差方向CDで隣接しており底面とは別の壁部(第二の壁部)になることが予定された表ライナ112の領域51C(第二の領域)と、に印刷範囲が跨るように配置されているものと言える。つまり、この場合の「第二の壁部」とは、第一の壁部とは別の段ボール箱の壁部である。
【0083】
上記のヘッド260A~260Fの配置は、コルゲートマシン200での断裁,切断加工や製函機(
図1参照)での溝切り、罫線入れおよび打ち抜き加工などの加工予定箇所に着目すると、搬送方向MDに沿って延在する加工予定箇所にヘッド260A~260Fのそれぞれの印刷範囲が跨っている配置ともいえる。
具体的には、ヘッド260A,260C,260D,260Fは、罫線(スコア)となる予定箇所(言い換えれば、一対の外フラップおよび一対の内フラップになることが予定された領域と側面になることが予定された領域との間)に印刷範囲が跨っている配置と言える。また、ヘッド260B,260Eは、断裁予定線(
図6の一点鎖線を参照)に印刷範囲が跨っている配置と言える。
【0084】
上記のコルゲートマシン200では、丁取り数(丁数)が「四」丁であり、ヘッド260の配置数は六個である。上述した
図6のような四丁取りの段ボールシートにおいて、従来は交差方向CDに並んだ領域のそれぞれに一つずつヘッドを配置しており一丁あたり三個のヘッドを配置していたため、丁数が四丁に対して十二個のインクジェットヘッドが必要であったが、本実施形態では従来技術に比べてヘッド260の数を大幅に削減できる。
ヘッド260の最小配置数は丁数に応じて決まる。最小配置数は、六面体形状の段ボールシート10の六面に印刷柄24を印刷する場合に必要となるヘッド260の個数の最小値である。
【0085】
具体的には、コルゲートマシン200で六面体形状の段ボールシート10の六面に印刷柄24を印刷する場合、丁数が奇数「f」ならばヘッド260の最小配置数zは下記の式3で求められ、丁数が偶数「g」ならばヘッド260の最小配置数zは下記式4で求められる。
丁数fが奇数の場合:z=丁数f×1.5+0.5・・・式3
丁数gが偶数の場合:z=丁数g×1.5 ・・・式4
なお、従来技術の場合、丁数が奇数「f」または偶数「g」の何れの場合も、最小配置数zは下記式5で求められる。
z=丁数f(またはg)×3・・・式5
【0086】
<インクジェット印刷装置を用いた印刷>
上記の配置により、ヘッド260A~260Fは、段ボール箱の六面(六箇所の壁部)となることが予定された各領域に識別コード24を印刷可能である。
インクジェット印刷装置の制御装置(後述する
図7で符号250A)によるヘッド260A~260Fの制御や印刷マージンなど、識別コード24の印刷に関する詳細事項は、前述したヘッド23A,23Bでの識別コード24の印刷と同様であってよく、説明を省略する。
【0087】
[3.制御システム]
以下に、本実施形態の制御システムについて説明する。ここでは、制御システムの複数の例を説明する。
[第一の例]
まず、[第一の例]として、カットオフマーク(切断マーク)を利用した切断タイミングで切断を制御する場合を例に挙げて説明する。
インクジェット印刷装置250では、各表ライナ110,112,114,116において、識別コード24に加えてカットオフマーク26を印刷している。カットオフマーク26は、カットオフ装置242で切断される予定の箇所(切断位置)を示すマークである。
【0088】
上述のように、表ライナ11cの搬送方向MDへの累積的な搬送距離に基づく演算により、切断予定線での切断を実施することもできるが、この場合、実際の切断線の切断予定線に対する誤差が累積的に増大することがある。これに対して、実際に表ライナ110,112,114,116に印刷したカットオフマーク26等に基づく切断では、このような誤差の発生が抑制され、実際の切断線を切断予定線の位置に(あるいは誤差が極めて少ない位置に)位置させることができる。
【0089】
本実施形態の第一の例では、以下で説明するように、カットオフマーク26の印刷位置は、識別コード24の印刷位置に対する相対的な位置として確定される。そして、カットオフ装置242は、後述するように、カットオフマーク26で規定される「切断位置」で段ボールウェブ10W(表ライナ11c)を切断するように制御される。
【0090】
識別コード24は一箱分の表ライナ11cの範囲内に印刷されるものである。具体的には、表ライナ11cが段ボール箱に組み立てられたときに外観面となることが予定された領域(例えば箱の六面になることが予定された領域42A,42B,42C,42D,領域41C,43C)に印刷される。
これに対してカットオフマーク26は、所定の位置での切断を確実に実施するために設けられている。そのためカットオフマーク26は搬送方向MDに隣接する一箱分の表ライナ11c(シート)どうしの間に印刷される。
【0091】
図7(a)は、コルゲートマシン200においてカットオフ装置242による切断を制御するための構成要素(制御システム290)を示す構成図である。
図7(a)の制御システム290には、カットオフマーク26を印刷するインクジェット印刷装置(印刷装置)250と、段ボールウェブ10W(表ライナ11c)の搬送方向MDの搬送距離を計測するための計測部270と、印刷されたカットオフマーク26を検出する検出部(検出装置)280と、カットオフ装置(切断装置)242と、制御装置300とが設けられている。制御装置300は、インクジェット印刷装置250の制御を実施する印刷制御とカットオフ装置242の制御を実施する切断制御とを実施する。
【0092】
計測部270は、インクジェット印刷装置250とカットオフ装置242との間の任意の箇所に設けられている。具体的には、計測部270が検出部280よりも搬送方向MDの上流側で例えばロータリーシャ239(
図5参照)およびスリッタスコアラ240(
図5参照)の間に設けられている場合を例に挙げることができる。
検出部280は、インクジェット印刷装置250とカットオフ装置242との間の任意の箇所に設けられている。具体的には、検出部280が計測部270よりも搬送方向MDの下流側で例えばスリッタスコアラ240(
図5参照)およびカットオフ装置242の間に設けられている場合を例に挙げることができる。
【0093】
計測部270は、段ボールウェブ10Wの搬送路の上方に配置された計測車271と、計測車271に接続されたロータリエンコーダ272とを有する。計測車271は、段ボールウェブ10Wの上側を向いた面に当接する回転体であり、段ボールウェブ10Wの搬送方向MDへの移動に応じて回転する。ロータリエンコーダ272は計測車271の回転に応じたパルス信号を出力する。
検出部280は、段ボールウェブ10W(表ライナ11c)の表面に印刷されたカットオフマーク26を検出するための検出手段である。検出部280は、カットオフマーク26を検出可能でさえあれば、例えば光学式センサやカメラなど、周知のどのような検出手段を用いてもよい。検出部280は、カットオフマーク26を検出したときに検出信号を出力する。
【0094】
ロータリエンコーダ272は、印刷制御装置250Aと切断制御装置242Aとのそれぞれに接続されている。ロータリエンコーダ272からのパルス信号は印刷制御装置250Aと切断制御装置242Aとのそれぞれに供給される。
検出部280は切断制御装置242Aに接続されている。検出部280からの検出信号は切断制御装置242Aに供給される。
【0095】
制御装置300は、図示しないCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含む記憶装置と、入力インタフェースと、出力インタフェースと、これらを相互に接続するバスと、を含んで構成されるコンピュータである。制御装置300内の印刷制御装置250Aと切断制御装置242Aとのそれぞれは、制御装置300の機能的要素として設けられている。制御装置300は、記憶装置に記憶されたソフトウエアプログラムを実行することで、印刷制御装置250Aとしての機能(印刷制御)と、切断制御装置242Aとしての機能(切断制御)とのそれぞれを実施可能である。なお、印刷制御装置250Aと切断制御装置242Aとのそれぞれが独立した制御装置として構成されていてもよい。
【0096】
印刷制御装置250Aと切断制御装置242Aとのそれぞれでは、ロータリエンコーダ272からのパルス信号のパルスを計数することで、段ボールウェブ10Wが搬送された累積的な距離(搬送距離)を計測できる。
【0097】
<印刷制御>
印刷制御装置250Aは、識別コート24(可変絵柄)を表すデジタルデータと段ボールウェブ10Wの搬送距離とに基づき、インクジェットヘッド260(インクジェット印刷装置250)の作動を制御する。
具体的には、識別コード24の位置(搬送方向MDおよび交差方向CDの位置)を特定する情報は、その識別コード24を表すデジタルデータに含まれる。印刷制御装置250Aは、計測部270で計測した搬送距離に基づく演算により、所定の基準位置(例えば直前の切断予定線)からの離間距離として識別コード24の搬送方向MD方向の位置を把握できる。印刷制御装置250Aは、計測部270で計測した搬送距離に基づき、識別コード24の印刷位置に該当する表ライナ11c上の箇所がヘッド260の下方を通過するタイミングで、インクジェット印刷装置250の作動を制御する。
【0098】
――カットオフマーク26の印刷位置の決定――
印刷制御装置250Aは、カットオフマーク26の印刷位置を識別コード24に対する相対的な位置として決定している。
図7(b)は、識別コード24の印刷位置とカットオフマーク26の印刷位置との関係を説明する表ライナ11cの平面図である。
図7(b)では表ライナ11cのうち、一丁分の表ライナを図示し、他を省略している。
【0099】
カットオフマーク26は、或る識別コード24aから所定のオフセット距離Mだけ搬送方向MDに離間した位置に印刷される。
図7(b)のカットオフマーク26は、識別コード24aの最下流部分(先頭)から所定のオフセット距離Mだけ搬送方向MDの上流側に離間した位置に印刷されている。
オフセット距離Mは、その識別コード24aの先頭から搬送方向MDの上流側に隣接する切断予定線〔
図7(b)で二点鎖線を参照〕までの距離である。オフセット距離Mは識別コード24を表すデジタルデータに基づき取得できる。
【0100】
切断予定線の位置は、上述のように、計測部270で計測した搬送距離に基づく演算により、所定の基準位置(例えば直前の切断予定線)から搬送方向MDに所定距離(カットオフ間距離F)だけ離間した位置として求められる。
印刷制御装置250Aは、識別コード24aを印刷した位置からオフセット距離Mだけ搬送された位置でカットオフマーク26が印刷されるように、印刷位置を制御する。そのため、カットオフマーク26の印刷位置は識別コード24に対する相対的な位置として確定される。
【0101】
<切断制御>
切断制御装置242Aは、計測部270で計測された段ボールウェブ10Wの搬送距離と、検出部280から出力された検出信号とに基づきカットオフ装置242の作動を制御する。検出信号は、検出部280でカットオフマーク26が検出されたタイミングを示す。
具体的には、切断制御装置242Aは、検出部280でカットオフマーク26が検出された時点から段ボールウェブ10Wが所定距離Lだけ搬送されたタイミングでカットオフ装置242を作動させる。所定距離Lは検出部280からカットオフ装置242までの搬送方向MDに沿う距離である〔
図7(a)参照〕。
【0102】
本実施形態のカットオフマーク26が識別コード24に対する相対的な位置として確定されているので、識別コード24とカットオフマーク26の位置(切断位置)との関係に誤差変動が生じにくくなり、識別コード24とカットオフマーク26の位置(切断位置)との関係を正確にすることができる。
なお、カットオフマークを利用した切断制御自体は周知技術である。
【0103】
[第二の例]
次に、[第二の例]として、カットオフマーク26を用いずに、検出部280が識別コード24を検出したタイミング(検出タイミング)に基づいてカットオフ装置242の作動を制御する場合を例に挙げる。
この場合、制御システム290の構成は、インクジェット印刷装置250がカットオフマーク26を印刷しない点と検出部280が識別コード24を検出する点を除き、
図7(a)を参照して説明した[第一の例]における制御システム290の構成と共通であり、図示を省略する。
【0104】
図8(a)は識別コード24と切断位置との関係を説明する表ライナ11cの平面図である。
図8(a)に示すように、或る識別コード24aから搬送方向MDの上流側の切断予定線までは所定のオフセット距離Mだけ離間している。オフセット距離Mは、
図7(a)のオフセット距離Mと同様に、その識別コード24aの先頭から搬送方向MDの上流側の切断予定線までの距離である。
【0105】
図8(b)は検出部280の検出信号と、計測部270のパルス信号とカットオフ装置242の作動タイミング(切断タイミング)とを示すタイミングチャートであり、横軸は時間tを示す。
切断制御装置242Aは、検出部280で或る識別コード24aが検出されたタイミングと、計測部270のパルス信号(搬送距離)とに基づきカットオフ装置242の作動を制御する。
【0106】
具体的には、切断制御装置242Aは、検出部280で識別コード24aが検出された時点から段ボールウェブ10Wが所定距離「L+M」(所定のオフセット距離)だけ搬送方向MDの下流側に搬送されたタイミングでカットオフ装置242を作動させる。
所定距離「L+M」は、検出部280からカットオフ装置242までの搬送距離L〔
図6(a)参照〕と上記のオフセット距離Mとの合計距離である。
【0107】
この第二の例では、検出部280で識別コード24aが検出された時点から所定距離「L+M」だけ搬送方向MDの下流側に段ボールウェブ10Wが搬送されたタイミングに基づいて、切断位置が決定されている。よって、切断位置は、識別コード24に対する相対的な位置として確定されているものといえる。そのため、第二の例でも、識別コード24と切断位置との関係に誤差変動が生じにくくなり、識別コード24と切断位置との関係を正確にすることができる。
【0108】
[第三の例]
次に、[第三の例]として、カットオフマーク26を用いずに、インクジェット印刷装置250が識別コード24を印刷したタイミング(印刷タイミング)に基づいてカットオフ装置242の作動を制御する場合を例に挙げる。
この場合、制御システム290の構成は、検出部280が不要である(使用されない)点と、印刷制御装置250Aから切断制御装置242Aに切断タイミング信号が出力される点〔
図7(a)の破線を参照〕を除き、
図7(a)を参照して説明した[第一の例]における制御システム290の構成と共通であり、図示を省略する。
【0109】
図9(a)は識別コード24と切断位置の関係を説明する表ライナ11cの平面図である。
図9(b)は、識別コード24の印刷タイミングとカットオフ装置242の作動タイミング(切断タイミング)とを示すタイミングチャートであり、横軸は時間tを示す。
図9(a)において、一箱分の表ライナ11cに印刷された六個の識別コード24は、搬送方向MDの並び順に着目して、搬送方向MDの下流側から上流側に向かって順に符号24b,24c,24d,24eで区別される。
【0110】
識別コード24bとその直前の切断予定線との間の距離を距離Aとする。識別コード24bと識別コード24cとの間の距離を距離Bとする。識別コード24cと識別コード24dとの間の距離を距離Cとする。識別コード24dと識別コード24eとの間の距離を距離Dとする。識別コード24eとその直後の切断予定線との間の距離を距離Eとする。カットオフ間距離Fは距離A,B,C,D,Eの合計で表される。
識別コード24の位置(搬送方向MDの位置)を特定する情報は、その識別コード24を表すデジタルデータに含まれている。また、切断予定線の位置は上述のカットオフ間距離Fとして把握できる。そのため、印刷制御装置250Aは、距離A,B,C,D,Eと、距離A~距離Eの合計としての距離Fとを把握できる。
【0111】
図9(b)は、識別コード24の印刷タイミングと切断位置との関係を説明するタイミングチャートである。
図9(b)で印刷タイミング1,印刷タイミング2,印刷タイミング3,印刷タイミング4のそれぞれは、識別コード24b,24c,24d,24eのそれぞれの印刷タイミングを表す。
切断タイミング信号は、カットオフ装置242の作動タイミング(切断タイミング)を指示する信号である。
【0112】
仮想カットオフタイミングは、印刷タイミング1,印刷タイミング2,印刷タイミング3,印刷タイミング4に基づいて把握される仮想的なカットオフ箇所K1〔
図9(a)参照〕がインクジェットヘッド260を通過するタイミングである。例えば、仮想カットオフタイミングT1は、その直前の印刷タイミング4から距離Eに応じた時間t
1(t
1=E÷V,V=表ライナ11cの搬送速度)だけ遅れたタイミングとなる。なお、仮想カットオフタイミングT1は、ロータリエンコーダ272からのパルス信号に基づく距離換算により、直前の識別コード24(印刷タイミング)からの距離を基準として決定してもよい。
【0113】
印刷制御装置250Aは、上述と同様に、識別コート24を表すデジタルデータと段ボールウェブ10Wの搬送距離とに基づき、インクジェットヘッド260(インクジェット印刷装置250)の作動を制御して識別コード24b,24c,24d,24eのそれぞれを印刷する。
印刷制御装置250Aでは、計測部270のパルス信号(搬送距離)と、印刷タイミング1~4と距離A~Eとに基づいて、仮想カットオフのタイミングT1,T2を特定できる。
【0114】
それから、印刷制御装置250Aは、計測部270のパルス信号(搬送距離)に基づいて、仮想カットオフタイミングT1の時点から段ボールウェブ10Wが距離Gだけ搬送方向MDの下流側に搬送されたタイミングで、切断タイミング信号を出力する。即ち、段ボールウェブ10Wの搬送速度をVとすると、距離G及び搬送速度Vから演算できる時間t
2(t
2=G÷V)だけ遅れて、仮想カットオフのタイミングT1に応じた箇所K1〔
図9(a)参照〕のカットオフを実施するように切断タイミング信号を出力する。
距離Gは、インクジェットヘッド260からカットオフ装置242までの距離G〔
図6(a)参照〕である。
【0115】
そして、切断制御装置242Aは、切断タイミング信号に基づきカットオフ装置242の作動を制御する。
この第三の例では、印刷制御装置250Aが、識別コード24の印刷タイミングに基づき切断タイミング信号を出力しており、切断タイミング信号に基づき切断位置が決定される。よって、この切断位置は、識別コード24に対する相対的な位置として確定されているものといえる。そのため、第三の例でも、識別コード24と切断位置との関係に誤差変動が生じにくくなり、識別コード24と切断位置との関係を正確にすることができる。
【0116】
[第四の例]
第四の例では、制御装置300(例えば切断制御装置242A)が、識別コード24(可変絵柄)の情報と、この識別コード24の情報に対する切断位置の情報とを紐付けて記憶する記憶部302〔
図7(a)参照〕を備え、検出部280で検出された識別コード24またはインクジェット印刷装置250で印刷された識別コード24の情報に紐付けられた切断位置の情報に基づいて、カットオフ装置(切断装置)242を制御するように構成されている。
切断位置の情報は、識別コード24(六個の識別コード24の何れか一つ)を基準として所定距離だけ離間した位置を切断位置として特定する情報である。
【0117】
具体的には、例えば、或る識別コード24に対する切断位置の情報Aは、この識別コード24に対応付けられた製品Aを収容する或るサイズAの段ボール箱における切断位置を、直前の識別コート24から100mmの位置として特定する情報である。
また、別の識別コード24に対する切断位置の情報Bは、その識別コード24に対応付けられた製品Cを収容する或るサイズBの段ボール箱における切断位置を、直前の識別コート24から80mmの位置として特定する情報である。
第四の例によれば、識別コード24を検出部280などの読み取り機で読み取るだけで切断位置を決定することができる。
【0118】
[第五の例および第六の例]
次に、
図10(a),(b)を参照して、[第五の例]と[第六の例]とを説明する。まず、[第五の例]および[第六の例]で共通の前提事項を説明し、それから[第五の例],[第六の例]を順に説明する。
【0119】
これら[第五の例]と[第六の例]では、表ライナ11cには、例えば原紙の状態で(インクジェット印刷装置250よりも上流側の工程で)、予め固定柄が印刷(プレプリント)されていることが前提となっている。固定柄は、例えば表ライナ11cの原紙の製造工程でフレキソ印刷により印刷されている。
[第五の例]および[第六の例]では、詳しくは後述する通り、印刷制御装置250Aが、固定柄の位置に基づき、インクジェット印刷装置250で印刷される各識別コード24の位置を決定することに特徴がある。
【0120】
図10(a)は、コルゲートマシン200において上記の印刷位置の制御をするための構成要素(制御システム292)を示す構成図である。この制御システム292は、インクジェット印刷装置250の上流側に、固定柄を検出する検出部(検出装置)282を備えている点が
図7(a)とは異なる。
検出部282は、固定柄を検出可能でさえあれば、例えば光学式センサやカメラなど、周知のどのような検出手段を用いてもよい。検出部282は、固定柄に応じた検出信号を出力する。
【0121】
[第五の例]および[第六の例]では、固定柄の具体例として、カットオフマーク(切断マーク)27と、固定絵柄28とが挙げられている。
カットオフマーク27は、上記のようにカットオフ装置242で切断される予定の箇所(切断位置)を示すマークであり、インクジェット印刷装置250よりも上流側の工程で予め印刷されている点で上述したカットオフマーク26とは異なる。
固定絵柄28は、例えば段ボール箱の外観意匠をなす絵柄,文字列などである。
【0122】
[第五の例]
[第五の例]では、印刷制御装置250Aが、カットオフマーク27の位置に基づいて、インクジェット印刷装置250で識別コード24の位置を決定する場合を例に挙げる。ここで「カットオフマーク27の位置」は、例えばカットオフマーク27の搬送方向MDで下流側のエッジの位置である。カットオフマーク27は、交差方向CDに沿って延在しており、交差方向CDに沿って直線状に延びたエッジを有している。そのため、カットオフマーク27で交差方向CDに沿うエッジの一方(例えば搬送方向MDの下流側のエッジ)を基準に識別コード24の位置を決定するとよい。
【0123】
この場合、印刷制御装置250Aは、カットオフマーク27に応じた検出信号を検出部282から取得する。この検出信号は、カットオフマーク27が検出部282の下方を通過したタイミングを示す。
印刷制御装置250Aは、カットオフマーク27の位置を基準にして、カットオフマーク27の位置から所定距離B1,B2,B3,B4だけ搬送方向の下流側に表ライナ11cが搬送されたタイミングのそれぞれで、インクジェット印刷装置250を作動させる。
【0124】
具体的には、検出部282でカットオフマーク27が検出された時点(検出信号のタイミング)から表ライナ11cが所定距離X+所定距離(B1,B2,B3またはB4)だけ搬送されたタイミングでインクジェット印刷装置250を作動させる。これにより、カットオフマーク27の位置を基準にして六個の識別マーク24が印刷される。
【0125】
[第六の例]
[第六の例]では、印刷制御装置250Aが、固定絵柄28の位置に基づいて、インクジェット印刷装置250で識別コード24の位置を決定する場合を例に挙げる。
識別コード24の位置を決定するための基準となる「固定絵柄28の位置」は、固定絵柄28における特定の部分である。特定の部分としては、例えば固定絵柄28の搬送方向MDで下流側のエッジの位置が挙げられる。仮に、固定絵柄28に交差方向CDに沿って直線状に延びる部分が存在している場合、その部分を基準として用いるとよい。
【0126】
印刷制御装置250Aは、固定絵柄28に応じた検出信号を検出部282から取得する。この検出信号は、固定絵柄28が検出部282の下方を通過したタイミングを示す。
印刷制御装置250Aは、固定絵柄28の位置を基準にして、固定絵柄28の位置から所定距離D1,D2,D3,D4だけ搬送方向MDの下流側に表ライナ11cが搬送されたタイミングのそれぞれで、インクジェット印刷装置250を作動させる。具体的には、検出部282で固定絵柄28が検出された時点(検出信号のタイミング)から表ライナ11cが所定距離X+所定距離(D1,D2,D3またはD4)だけ搬送されたタイミングでインクジェット印刷装置250を作動させる。これにより、固定絵柄28の位置を基準にして六個の識別マーク24が印刷される。
【0127】
[変形例]
上記の第六の例では、固定絵柄28(固定柄)を基準にして搬送方向MDの下流側に所定距離だけ離間した位置を可変絵柄としての識別コード24の印刷位置として決定する例を説明した。
上記の第六の例に対する変形例として、固定絵柄として印刷された固定枠を基準にして、その固定枠の中の所定位置を可変絵柄〔
図11(a),(b)を参照〕の印刷位置として決定する場合を例に挙げる。
【0128】
図11(a)は、固定絵柄として固定枠29Aと文字列29B(「LOT NO.」)とが印刷されており、固定枠29Aの中に可変絵柄としてロット番号24A(図で文字列「12FN5 08D14」)が印刷される場合を例に挙げている。
この場合、印刷制御装置250Aは、固定枠29Aの代表部分(例えば、最下流部分又は最上流部分)を基準にして固定枠29Aの中の所定位置をロット番号24Aの印刷位置として決定し、決定した印刷位置にロット番号24Aを印刷するようにインクジェット印刷装置250を制御する。具体的には、検出部282により固定枠29Aの代表部分が検出されたタイミングから表ライナ11cが所定距離X+所定距離だけ搬送されたタイミングでインクジェット印刷装置250を作動させる。ここで所定距離は、固定枠29Aの代表部分からロット番号24Aの印刷位置までの搬送方向MDに沿う距離である。
【0129】
図11(b)は、固定絵柄として固定枠29Cが印刷されており、この固定枠29Cの中に可変絵柄としてバーコード24Bが印刷される場合を例に挙げている。
この場合、印刷制御装置250Aは、固定枠29Cの代表部分(例えば、最下流部分又は最上流部分)を基準にして固定枠29Cの中の所定位置をバーコード24Bの印刷位置として決定し、決定した印刷位置にバーコード24Bを印刷するようにインクジェット印刷装置250を制御する。具体的には、検出部282により固定枠29Cの代表部分が検出されたタイミングから表ライナ11cが所定距離X+所定距離だけ搬送されたタイミングでインクジェット印刷装置250を作動させる。ここで所定距離は、固定枠29Cの代表部分からバーコード24Bの印刷位置までの搬送方向MDに沿う距離である。
【0130】
[III.作用効果]
上述した制御システム290,292は例えば以下のように把握することができる。
(1)本実施形態の制御システム290,292は、製函材としてのシート11cを搬送方向に搬送する搬送路Lsと、搬送路Lsに設けられ、搬送路Lsを搬送されているシート11cに識別コード(可変絵柄)24を印刷するインクジェット印刷装置(印刷装置)250と、印刷装置250よりも搬送方向MDの下流側に設けられ、搬送路Lsを搬送されているシート11cを搬送方向MDの切断位置で交差方向CDに切断する切断装置242と、印刷装置250を制御する印刷制御と切断装置242を制御する切断制御とを実施する制御装置300と、を備えている。
【0131】
制御装置300は、可変絵柄としての識別コード24を基準とする搬送方向MDの相対的な位置を切断位置として決定し、決定した切断位置で切断を実施する制御、および、シート11cに予め印刷された固定柄27,28,29A,29Cを基準とする搬送方向MDの相対的な位置を可変絵柄24,24A,24Bの印刷位置として決定し、決定した印刷位置で印刷を実施する制御の少なくとも何れか一方を実施する。
【0132】
可変絵柄としての識別コード24を基準にして切断位置を決定する場合、識別コード24を基準とする搬送方向MDの相対的な位置が切断位置として決定されるので、カットオフ間距離に基づき切断位置を決定する方法に比べて、識別コード24(可変絵柄)と切断位置との関係(位置関係)に誤差変動が生じにくくなり、識別コード24(可変絵柄)と切断位置との関係を正確にすることができる。そのため、不良の発生を抑制できる。
【0133】
固定柄27,28,29A,29Cを基準にして可変絵柄24,24A,24Bの印刷位置を決定する場合、固定柄27,28,29A,29Cと可変絵柄24,24A,24Bとの関係(位置関係)に誤差変動が生じにくくなり、固定柄27,28と可変絵柄24,24A,24Bとの関係を正確にすることができる。そのため、不良の発生を抑制できる。
したがって、コルゲートマシン200で製造される段ボールシート10の加工精度を向上させることができる。また、このように加工精度の良い段ボールシート10を製函機100に用いることで、品質の良い箱を作成することができる。
【0134】
(2)本実施形態の制御システム290の第一の例は、制御装置300(250A)が、識別コード24の位置から搬送方向MDに所定のオフセット距離Mだけ離間した位置を切断位置として決定して、切断位置にカットオフマーク(切断マーク)26を印刷するように印刷制御を実施する。そして、切断装置242よりも搬送方向MDの上流側にカットオフマーク26を検出する検出部(検出装置)280が設けられている。
【0135】
制御装置300(242A)は検出装置280がカットオフマーク26を検出したタイミングに基づいて切断制御を実施する。
この場合、カットオフマーク26が識別コード24に対する相対的な位置として確定されており、カットオフマーク26が切断位置を示している。そのため、識別コード24と切断位置との関係に誤差変動が生じにくくなり、識別コード24と切断位置との関係を正確にすることができる。
【0136】
(3)本実施形態の制御システム290の第二の例は、切断装置242よりも搬送方向MDの上流側に識別コード24を検出する検出装置280が設けられており、制御装置300(242A)は、検出装置280が識別コード24を検出した時点から所定のオフセット距離(L+M)だけ搬送方向MDの下流側にシート11cが搬送されたタイミングに基づいて切断制御を実施する。
この場合、検出部280で識別コード24が検出された時点から段ボールウェブ10Wが所定距離L+M(所定のオフセット距離)だけ搬送方向MDの下流側に搬送されたタイミングに基づいて、切断位置が決定されている。よって、切断位置は、識別コード24に対する相対的な位置として確定されているものといえる。
【0137】
そのため、識別コード24と切断位置との関係に誤差変動が生じにくくなり、識別コード24と切断位置との関係を正確にすることができる。また、カットオフマーク26を印刷する必要がない利点があるため、外周面にカットオフマーク表示の無い段ボール箱に対応した段ボールシート10を製造することができる。また、後でカットオフマーク26の部分を切断して廃棄する必要がない。
【0138】
(4)本実施形態の制御システム290の第三の例では、制御装置300(250A)は、印刷装置250が識別コード24を印刷する印刷タイミングに基づいて切断位置を決定して、切断制御を実施する。
この場合、印刷制御装置250Aが、識別コード24した印刷タイミングに基づき仮想カットオフタイミングを特定し、仮想カットオフタイミングの時点から所定のオフセット距離だけ搬送方向MDの下流側にシート11cが搬送されたタイミングに基づき切断位置が決定される。
【0139】
したがって、この切断位置は識別コード24に対する相対的な位置として確定されているものといえる。そのため、識別コード24と切断位置との関係に誤差変動が生じにくくなり、識別コード24と切断位置との関係を正確にできる。また、カットオフマーク26を印刷する必要もなく、検出部280も不要である利点があるため、外周面にカットオフマーク表示の無い段ボール箱に対応した段ボールシート10を製造することができる。また、後でカットオフマーク26の部分を切断して廃棄する必要がない。
【0140】
(5)本実施形態の制御システム290の第四の例では、制御装置300(242A)が、識別コード24(可変絵柄)の情報と識別コード24の情報に対する切断位置の情報とを紐付けて記憶する記憶部302を備え、識別コード24の情報に紐付けられた切断位置の情報に基づいて切断位置を決定して、切断制御を実施する。
記憶部302に記憶された切断位置の情報に基づいて切断位置を決定するので、識別コード24を検出装置280などの読み取り機で読み取るだけで切断位置を決定することができる。
【0141】
(6)本実施形態の制御システム292の第五の例では、固定柄は、切断位置を示すカットオフマーク27であり、インクジェット印刷装置(印刷装置)250よりも搬送方向MDの上流側でカットオフマーク27の位置を検出する検出装置282が設けられており、制御装置300(250A)は、検出装置282で検出したカットオフマーク27の位置に基づき、可変絵柄としての識別コード24の印刷位置を決定し、印刷制御を実施する。
固定柄がカットオフマーク27である場合、固定柄としてのカットオフマーク27と識別コード24との関係に誤差変動が生じにくくなり、カットオフマーク27と識別コード24との関係を正確にすることができる。
(7)本実施形態の制御システム292の第六の例では、固定柄は、所定の固定絵柄28,29A,29Cであり、インクジェット印刷装置(印刷装置)250よりも搬送方向MDの上流側で固定絵柄28,29A,29Cの位置を検出する検出装置282が設けられており、制御装置300(250A)は、検出装置282で検出した固定絵柄28,29A,29Cの位置に基づき、可変絵柄24,24A,24Bの印刷位置を決定し、印刷制御を実施する。
固定柄が固定絵柄28,29A,29Cである場合、固定絵柄28,29A,29Cと可変絵柄24,24A,24Bとの関係に誤差変動が生じにくくなり、固定絵柄28,29A,29Cと可変絵柄24,24A,24Bとの関係を正確にすることができる。
【0142】
(8)本実施形態の制御システム290,292が段ボールシートを製造するコルゲートマシン200に搭載されることで、コルゲートマシン200では、印刷装置250で印刷した識別コード24と切断装置242での実際の切断線(切断位置)との関係に誤差変動が生じにくく、識別コード24と切断位置との関係を正確にすることができる。また、固定柄27,28,29A,29Cを基準にして可変絵柄24,24A,24Bの印刷位置を決定する場合、固定柄27,28,29A,29Cと可変絵柄24,24A,24Bとの関係に誤差変動が生じにくくなり、固定柄27,28と可変絵柄24,24A,24Bとの関係を正確にすることができる。そのため、コルゲートマシン200の最終製品である段ボールシート10の不良の発生を抑制できる。
【0143】
(9)本実施形態のインクジェット印刷装置(印刷装置)250の制御装置300(250A)は、製函材としてのシートを搬送方向に搬送する搬送路Lsと、搬送路Lsに設けられ、搬送路Lsを搬送されているシート11cに識別コード(可変絵柄)24を印刷するインクジェット印刷装置(印刷装置)250と、インクジェット印刷装置(印刷装置)250よりも搬送方向MDの下流側に設けられ、搬送路Lsを搬送されているシート11cを搬送方向MDの切断位置で交差方向CDに切断する切断装置242と、を備えたコルゲートマシン200に設けられている。
【0144】
インクジェット印刷装置(印刷装置)250の制御装置300(250A)は、可変絵柄としての識別コード24を基準とする搬送方向MDの相対的な位置を切断位置として決定し、決定した切断位置で切断制御を実施する制御、および、シート11cに予め印刷された固定柄27,28,29A,29Cを基準とする搬送方向MDの相対的な位置を可変絵柄24,24A,24Bの印刷位置として決定し、決定した印刷位置で印刷制御を実施する制御の少なくとも何れか一方を実施する。
【0145】
インクジェット印刷装置(印刷装置)250の制御装置300(250A)は、可変絵柄24を基準にして切断位置を決定する場合、決定した切断位置を特定する情報を切断制御装置242Aに出力して、この切断位置で切断が実施されるとよい。この場合、制御装置300(250A)によって印刷制御された可変絵柄24を基準にして切断位置として決定するので、可変絵柄24と切断位置との関係に誤差変動が生じにくくなる。
【0146】
制御装置300(250A)が固定柄27,28,29A,29Cを基準にして可変絵柄24,24A,24Bの印刷位置を決定する場合、固定柄27,28,29A,29Cと可変絵柄24,24A,24Bの印刷位置との関係に誤差変動が生じにくくなる。
そのため、コルゲートマシン200で製造される段ボールシート10の加工精度を向上させることができる。また、このように加工精度の良い段ボールシート10を製函機100に用いることで、品質の良い箱を作成することができる。
【0147】
上述した第一の例~第四の例にかかる制御システム290,292と、第五の例および第六の例にかかる制御システム292とは、印刷柄(可変絵柄または固定柄)に基づいて加工位置を決定するシステムとして把握することができる。
このシステムでは、印刷柄と加工位置との関係に誤差変動が生じにくくなり、印刷柄と加工位置との関係を正確にすることができる。
【0148】
[IV.その他]
上述した制御システムは一例であって、上述したものに限らない。例えば、インクジェット印刷装置250やカットオフ装置242の配置や構成は適宜変更されてよい。
制御装置300は、上記の第一の例~第四の例で説明した識別コード(可変絵柄)24を基準とする搬送方向MDの相対的な位置を切断位置として決定する制御と、上記の第五の例,第六の例および変形例で説明した固定柄27,28,29A,29Cを基準とする搬送方向MDの相対的な位置を可変絵柄24,24A,24Bの印刷位置として決定する制御との両方を実施してよい。
【0149】
具体的には、例えば、制御装置300は、まず、固定絵柄28が予め印刷されたシートにおいて固定絵柄28の位置を基準にして六個の識別マーク24の印刷位置を決定する。そして、決定した印刷位置で六個の識別マーク24を印刷した後に、それら識別コード24を基準として切断位置を決定する。
【0150】
また、上記の第一の例~第四の例,第五の例,第六の例および変形例のそれぞれで切断位置または印刷位置を決定する装置は、印刷制御装置250Aおよび切断制御装置242Aのいずれか一方が他方に変更されてもよい。
例えば、上記の第二の例では、検出部280の検出信号が切断制御装置242Aに送給され、切断制御装置242Aが切断位置を決定する場合を例に挙げたが、検出部280の検出信号が印刷制御装置250Aに送給され、印刷制御装置250Aが切断位置を決定して、決定した切断位置を特定する情報を切断制御装置242Aへ出力してもよい。
【0151】
また、上記の第四の例で印刷制御装置250Aが、識別コード24(可変絵柄)と、この識別コード24に対する切断位置の情報とを紐付けて記憶する記憶部302を備え、識別コード24の情報に紐付けられた切断位置の情報に基づいて切断位置を決定して、決定した切断位置を特定する情報を切断制御装置242Aへ出力してもよい。
【0152】
インクジェット印刷装置250でインクジェットヘッド260の配置は、シート11cが段ボール箱に組み立てられたときに壁部になることが予定されており交差方向CDに隣接された二つの領域に印刷範囲が跨る配置としたが、これに限らず、どのような配置でもよい。
また、コルゲートマシン200の構造は、
図5に示す構造に限らずどのような構造であってもよい。例えば、コルゲートマシン200は、両面段ボールシートの片側に片面段ボールシートの段頂を貼り合わせた複両面段ボール(ダブルウォール)や、複両面段ボールの片側に片面段ボールの段頂を貼り合わせた複々両面段ボール(トリプルウォール)のような多層段ボールシートを製造する構造であってもよい。
【0153】
コルゲートマシン200は、四丁取りの構造に限らず、任意の複数丁取りの構造であってもよいし、複数丁に断裁する装置を持たない構造でよい。
インクジェットヘッド23,260で識別コード24を印刷する場所や、一箱分のシートに印刷される識別コード24の数は適宜変更されてよい。
識別コード24は、個々の段ボールシート10を識別するコードに限らず、例えば段ボールシート10の製造元を表すコードや、段ボール箱に組み立てられた後に梱包する予定の物品を表すコードなど、その他のどのような情報を表すコードであってもよい。
【0154】
可変絵柄は、識別コード24に限らない。荷物の取扱要領を指示するケアマークなどその他任意の絵柄でもよい。また、絵柄に限らず、文字、数字でもよい。
段ボール箱に組み立てたときに一個の壁部になることが予定された一つの領域内に複数の可変絵柄24が印刷されてもよい。
段ボール箱に組み立てたときに複数の壁部になることが予定された複数の領域で互いに異なる可変絵柄24が印刷されてもよい。
【符号の説明】
【0155】
1 給紙部
2 印刷部
3 排紙部
4 ダイカット部
5 フォルダグルア部
6 カウンタエゼクタ部
7 搬送コンベア
10 段ボールシート(シート)
10W 段ボールウェブ
10a 製函用シート材
11c 表ライナ
12 片面段ボールウェブ
21A~21D フレキソ印刷部
22,250 インクジェット印刷装置(印刷装置)
22A,250A 印刷制御装置
23A,23B,260,260A~260F インクジェットヘッド
24,24A,24B 識別コード(可変絵柄)
26 カットオフマーク(可変絵柄,切断マーク)
27 カットオフマーク(固定柄,切断マーク)
28,29A,29B,29C 固定絵柄(固定柄)
31A~31D,32A~32D,33A~33D 領域
41A~41D,42A~42D,43A~43D 領域
51A~51D,52A~52D,53A~53D 領域
61A~61D,62A~62D,63A~63D 領域
71A~71D,72A~72D,73A~73D 領域
100 製函機
200 コルゲートマシン
211 ミルロールスタンド
231,232,236 プレヒータ
233 シングルフェーサ
234 コンベア
235 ブリッジ
236a,236b 加熱ロール
237 グルーマシン
238 ダブルフェーサ
238a ヒータ
239 ロータリーシャ
240 スリッタスコアラ
241 ディレクタ装置
242 カットオフ装置(切断装置)
242A 切断制御装置
243 スタッカ
250A 印刷制御装置
270 計測部
280 検出部(検出装置)
290,292 制御システム
300 制御装置
CD 交差方向
Ls 搬送路
MD 搬送方向
P1A,P1B 印刷範囲