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  • 特開-使用済み核燃料の合理的な処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168643
(43)【公開日】2023-11-27
(54)【発明の名称】使用済み核燃料の合理的な処理方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/00 20060101AFI20231117BHJP
   G21F 9/30 20060101ALI20231117BHJP
   G21F 9/02 20060101ALI20231117BHJP
【FI】
G21F9/00 N
G21F9/30 561
G21F9/02 561A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2023131725
(22)【出願日】2023-08-12
(71)【出願人】
【識別番号】723000154
【氏名又は名称】植月 利一
(72)【発明者】
【氏名】植月 利一
(57)【要約】
【課題】使用済み核燃料で生じる不要な放射性核種を短寿命核種または安定核種に変換し、再利用可能な核種重量を増やし、ガラス固化する廃棄物量を低減する合理的な高レベル放射性廃棄物の処理方法を提供する。
【解決手段】核燃料取出し直後から発生する気体核種を回収する気体槽と、PUREX法などの回収処理後、硝酸に可溶な核種を回収する可溶物槽と硝酸に難・不溶な核種を回収する難溶物槽を具備し、気体槽では規定時間貯蔵後ヨウ素のみ熱中性子を1回照射し、可溶物槽の可溶性核種と難溶物槽の難・不溶な核種のみに冷中性子を照射し規定時間貯蔵の照射と貯蔵を複数回以上繰返し、各槽で発生した酸化物を沸点の低い塩化物に変え、沸点の違いを利用した分留法で元素を分離し、必要ならガス遠心分離法で同位体を分離し、資源として再利用できる放射性核種と安定核種を回収し、ガラス固化する核種の廃棄量を最小化する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済み核燃料から生じる核分裂生成物のうち、燃料取出し直後から発生した気体核種を回収する気体槽と、使用済み核燃料からウラン、プルトニウムなどの回収処理後、残された核分裂生成物を規定の時間経過後、硝酸に可溶な核種を貯蔵する可溶物槽と、硝酸に難溶あるいは不溶な核種を分離して貯蔵する難溶物槽を具備し、これらの核種に冷中性子あるいは熱中性子を照射して核種変換を行い、請求項2乃至4で記述した方法を用い、規定の回数だけ中性子を照射し、規定の時間貯蔵することを特徴とする放射性廃棄物の処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の放射性廃棄物の処理方法において、所定の時間経過後、核分裂生成物のうち可溶物槽中の硝酸に可溶な核種に1回目の冷中性子を照射し、規定の時間貯蔵後、放射線崩壊で生じた気体核種は気体槽に回収し、生じた硝酸に難溶あるいは不溶な核種を分離して別の貯蔵槽に回収し、壊変で発生した気体および難溶性の核種には中性子を照射せず、可溶物槽中の硝酸に可溶な核種のみ2回目の冷中性子を照射し、以後、冷中性子照射と規定時間貯蔵を複数回繰返し、冷中性子照射後の貯蔵期間に放射線崩壊で生じた気体核種は気体槽に、生じた硝酸に難溶あるいは不溶な核種は別の貯蔵槽に回収し、これらの核種には中性子を照射しないことを特徴とする放射性廃棄物の処理方法。
【請求項3】
請求項1に記載の放射性廃棄物の処理方法において、所定の時間経過後、核分裂生成物のうち難溶物槽中の硝酸に難溶あるいは不溶な核種に1回目の冷中性子を照射後、規定濃度の硝酸溶液を難溶物槽に投入し、規定の時間貯蔵後、放射線崩壊で生じた安定な気体核種は排気、放射性の気体核種があれば気体槽に回収し、生じた硝酸に可溶な核種は硝酸溶液と共に濾過して別の貯蔵槽へ回収し、難溶物槽の核種に2回目の冷中性子照射後、濾過した硝酸溶液を難溶物槽に還流させ規定の時間貯蔵し、以後、冷中性子照射と規定時間貯蔵を複数回繰返し、冷中性子照射後の貯蔵期間に放射線崩壊で生じた安定な気体核種は排気、放射性の気体核種があれば気体槽に回収し、生じた硝酸に可溶な核種は硝酸溶液と共に濾過して別の貯蔵槽に回収し、放射性気体および可溶性の核種には中性子を照射しないことを特徴とする放射性廃棄物の処理方法。
【請求項4】
請求項1に記載の放射性廃棄物の処理方法において、所定の時間経過後、核分裂生成物のうち気体槽中の核種は、請求項2に記載された可溶物槽で発生した気体核種と請求項3に記載された難溶物槽で発生した放射性気体核種を含むが、可溶物槽への冷中性子2回目の照射直前に、可溶物槽から回収した気体のうちヨウ素と臭素および気体槽中に存在するヨウ素、臭素を気化あるいは昇華させ、ヨウ素のみ液化させ分離して、ヨウ素に熱中性子を1回だけ照射し、以後気体核種には中性子を照射せず、この貯蔵期間に発生した固体核種は別の貯蔵槽に回収し、この固体核種にも中性子を照射しないことを特徴とする放射性廃棄物の処理方法。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4に記載の放射性廃棄物の処理を実施後、請求項2と請求項4で回収した固体核種と請求項3で回収した固体核種を別々に脱硝化した後、塩化物に変換し、塩化物の沸点の違いを利用した分留法で元素分離を行い、必要ならガス遠心分離法を用い同位体分離を行い、有用な放射性核種と資源として再利用できる安定核種を回収し、ガラス固化する核種の廃棄量を最小化することを特徴とする放射性廃棄物の処理方法。なお、元素分離には、一般的な元素分離方法、例えば融点の違いを利用した元素分離法、沈殿法、遠心分離法、電解法、吸着法、溶媒抽出法、イオン交換法もしくは、これらの組合せを用いてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核分裂生成物による高レベル放射性廃棄物の処理技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
100万kW級の原子力発電所では、5%濃縮ウラン燃料で毎年約23トンの核燃料を使用し、使用済み核燃料から発生する核分裂生成物(FP:Fission Products)はU235の比率、燃焼度、運転状況、照射時間などにより核種や発生量は変わるが、一般的に核燃料1トンから発生する核分裂生成物は2~5%と言われている。
【0003】
これらの核分裂生成物は、PUREX(Plutonium and Uranium Recovery by Extraction)法をベースとした使用済み核燃料の再処理によりウラン、プルトニウムなどのアクチノイドを回収後に高レベル放射性廃液(HALW;Highly Active Liquid Waste)となる。(アクチノイド除去については特許文献1などがある)
【0004】
この高レベル放射性廃液は濃縮して容積を減らしガラスに溶け込ませ、ステンレス製の容器(キャニスター)に固化され(ガラス固化体)、 このガラス固化体は、内部の放射性物質の崩壊により高温度を保つため、中間保管場所で30~50年間ほど貯蔵し放射性物質が減り温度が低下してから、このガラス固化体は最終的に地下300メートル以深の安定した地層中に処分(地層処分)される。
【0005】
このような処理法ではガラス固化体が増加し、保管場所の確保、ガラス固化体の管理などが問題で、特に保管場所の確保は喫緊の課題である。そこで、高レベル廃棄物中の元素や放射性核種を半減期、元素の化学的性質、利用目的等に応じてグループ化し、長寿命の核種は、中性子照射などにより核反応を起こさせ、短寿命または非放射性の核種に変換させる(核変換技術)、さらに有用な元素や核種の利用を図る(高レベル廃棄物の資源化)という方法が検討されている。(非特許文献1など)
【0006】
核変換技術においては、長寿命核分裂生成物に中性子、荷電粒子ビーム、陽電子などを照射して核種変換させる報告例はあるが、これらは、特定した放射性核種のみを対象にしたもので、高レベル放射性廃棄物全体に係るものでない。(特許文献2、3、4)
【0007】
使用済み核燃料の再処理工場で扱う硝酸溶解液、または工程で発生する放射性プロセス廃液から白金族元素、テクネチウム、テルル及びセレンを高回収率で選択的に分離回収する方法が提案されているが、これらは再利用のための回収に係るもので、ガラス固化体に係るものではない。(特許文献5)
【0008】
放射性廃棄物の処理方法において、放射性廃棄物から核分裂生成物のうち放射性核種を含み原子番号が共通する同位体元素の群に、加速器により生成した高エネルギーの中性子を照射して非弾性散乱を生じさせ、(n,2n)反応あるいは(n,3n)反応により、質量数(中性子数)を1あるいは2少なくする核種変換を行うもので、同位体元素の中性子分離エネルギーの偶奇性に基づいて異なることを利用し、質量数の異なる核種の反応断面積が10倍以上異なる中性子エネルギー帯を選択し、この選択したエネルギー帯の中性子を照射して、変換対象の長寿命核種の質量数を減らし、短寿命核種あるいは安定核種に変換させる放射性廃棄物の処理方法であって、同位体分離を伴わずに抽出する技術が開示されている。(特許文献6)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002-243890号公報 使用済核燃料から全アクチノイドを分離貯蔵する方法
【特許文献2】特開2017-198622号公報 中性子による長寿命核分裂生成物の処理方法 国立大学法人京都大学
【特許文献3】特開2018-044851号公報 長寿命核分裂生成物の核種変換短寿命化処理システム及び長寿命核分裂生成物の核種変換短寿命化処理方法 学校法人中部大学
【特許文献4】特願2016-544629号公報 長寿命核分裂生成物の処理方法 一般財団法人高度情報科学技術研究機構 他
【特許文献5】特願平11-026995号公報 白金族元素、テクネチウム、テルル及びセレンの分離回収方法 核燃料サイクル開発機構 他
【特許文献6】特開2016-176812号公報 放射性廃棄物の処理方法、東芝
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】原子力百科事典ATOMICA「高レベル廃棄物の群分離と資源化」(07-02-01-01)概要、日本原子力研究開発機構(JAEA) 尚、発明の概要以降で参考とした文献、引用したデータ元について末尾に記載した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、前記の同位体元素の中性子分離エネルギーの偶奇性に基づいて異なることを利用し、選択した高エネルギー帯の中性子を照射して変換対象の長寿命核種の質量数を減らし、短寿命核種あるいは安定核種に変換させる放射性廃棄物の処理方法において、反応断面積が10倍以上異なる高エネルギー帯の中性子を照射するが、変換されたくない核種の反応断面積は10分の1以下ではあるが、(n,2n)反応が生じ、放射性核種が残存することが考えられ、放射性核種と安定核種の完全な分離は実現困難である。また、前記放射性廃棄物の対象とする元素は10元素で、半減期が1010年以上の放射性核種についての記述はない。さらに、放射性核種の発生重量あるいは放射能の記述がなく定量的な記述がない。
【0012】
本発明は、原子力発電所で発生した使用済み核燃料からPUREX法などの再処理によりウラン、プルトニウムなどのアクチノイドを取り除いた後に残された高レベル放射性廃液に含まれる核種と廃液に含まれない残渣などに含まれる核種について、不要な放射性核種を短寿命核種または安定核種に変換し、放射性廃棄物のガラス固化体化する重量を低減し、再利用可能な放射性核種および安定核種を資源として回収する合理的な核分裂生成物の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、使用済み核燃料から生じるFPのうち、取出し直後から発生した気体核種を回収し貯蔵する槽(以後、気体槽という)とウラン、プルトニウムなどアクチノイドの回収処理を経てから規定の時間を経た後、気体核種を除いたFPのうち、硝酸に可溶な核種(以後、可溶性核種という)と、硝酸に難溶あるいは不溶な核種(以後、難溶性核種という)に分離して回収する貯蔵槽(以後、貯蔵槽の前者を可溶物槽、後者を難溶物槽という)とを具備し、これらの核種に低エネルギーの冷中性子を照射して中性子捕獲反応により質量数を変化させて核種変換を行う方法で、中性子照射後、規定時間経過後、請求項1乃至5で記述した方法を用い、規定の時間貯蔵し、既定の回数だけ中性子を照射することを特徴とする放射性廃棄物の処理方法を提供する。
【0014】
該放射性廃棄物の処理方法において、冷却期間を含め規定のt時間経過後、可溶物槽の可溶性核種に1回目の冷中性子を照射し、規定のt時間貯蔵後、放射性崩壊で発生した気体核種は気体槽に移送し、発生した難溶性核種は固液分離装置などを用い別の貯蔵槽(難溶物槽A)に回収する。以後、冷中性子を可溶性核種にNi回照射後、規定のt時間貯蔵後、放射線崩壊で発生した気体核種は気体槽に回収し、発生した難溶性核種は固液分離装置などを用い難溶物槽Aに回収し、この難溶性核種には冷中性子を照射しないことを特徴とする放射性廃棄物の処理方法である。
【0015】
該放射性廃棄物の処理方法において、既定のt時間経過後、難溶物槽の難溶性核種に1回目の冷中性子を照射後、規定の濃度の硝酸溶液を投入し、規定のt’時間貯蔵後、発生した気体核種が安定核種であれば排気し、放射性核種であれば気体槽に回収し、発生した可溶性核種は硝酸溶液と共に濾過し別の貯蔵槽(可溶物槽B)に回収し、2回目の難溶性核種への冷中性子照射後に、可溶物槽Bに回収した可溶性核種と硝酸溶液を難溶物槽に還流し、規定のt’時間貯蔵する。以後、冷中性子を難溶性核種にNj回照射するが、Nj回目の冷中性子照射直前の可溶物槽Bにある可溶性核種を硝酸溶液と共にNj回目の冷中性子照射後に難溶物槽に還流し、規定のt時間貯蔵後、放射性崩壊で生じた気体が安定核種であれば排気し、放射性核種であれば気体槽に回収し、可溶性核種は濾過装置などを用い可溶物槽Bに回収し、可溶性核種には中性子を照射しないことを特徴とする放射性廃棄物の処理方法である。
【0016】
該放射性廃棄物の処理方法において、FPのうち気体核種については、規定のt時間経過後、可溶物槽及び難溶物槽で発生した気体核種を回収するが、可溶性核種に冷中性子照射2回目の直前に、可溶物槽から回収した気体と気体槽に存在する気体のうちヨウ素のみ抽出してヨウ化物槽に貯蔵しヨウ素のみに1回の中性子照射を行う。この際、中性子は熱中性子でも構わない。ヨウ化物槽で発生した気体は気体槽に回収する。尚、難溶物槽で発生する気体が安定核種だけの場合は気体槽に回収しない。以後、気体核種には中性子を照射せず、この貯蔵期間に放射線崩壊で発生した固体核種は別の貯蔵槽(固体槽)に回収し、この固体核種には中性子を照射しないことを特徴とする放射性廃棄物の処理方法である。
【0017】
可溶物槽および難溶物槽に冷中性子照射を各々Ni、Nj回繰り返し、数年程度の一定期間放置後、放射性核種が崩壊し、生じた固体核種は可溶物槽、難溶物槽A、固体槽と、難溶物槽、可溶物槽Bに回収され、前3者に回収された核種および硝酸溶液は塩化物槽1(固化装置付き)に、後2者に回収された核種および硝酸溶液は塩化物槽2(固化装置付き)に移送し、夫々加熱して硝酸を追い出すことにより、ほとんどの核種は酸化物となる。
【0018】
上記の塩化物槽で発生した酸化物を沸点の低い塩化物に変換する。塩化物槽1に存在する塩化物を気化槽に投入して塩化物の沸点の昇順に加熱し、沸点毎に精留塔で気化させ凝縮器で分留し塩化物として取出し、安定核種のみであれば、冷却装置を介して安定核種回収槽に回収し、放射性のみの核種及び放射性核種と安定核種の混在する同位体はガラス固化核種回収槽に回収する。放射性物質として利用できる単一放射性核種は回収し、放射性物質として利用できる放射性核種と資源として再利用可能な安定核種の2核種だけの同位体は、ウラン燃料製造時に使用される質量差を利用したガス遠心分離装置により同位体分離を行い、質量数の小さい軽核種と、質量数の大きい重核種に分離し、それぞれ軽核種回収槽、重核種回収槽に回収する。次に塩化物槽2についても同様に処理する。可溶物槽で発生した核種と難溶物槽で発生した核種を別々に処理することで、安定な核種の回収重量が増加し、ガラス固化する廃棄核種重量を低減できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、不要な半減期の長い放射性核種を短寿命核種または安定核種に変換し、高レベル放射性廃棄物のガラス固化体にする核種重量を低減し、再利用可能な放射性核種および安定核種を資源として核種毎にあるいは元素毎に回収する合理的な核分裂生成物の処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は本発明の実施例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図1に基づいて説明する。
本発明は、核種の中性子捕獲断面積が大きくなる低エネルギーの冷中性子を核種に照射し、中性子捕獲反応により中性子を捕獲させ、質量数を変化させて核種変換を行う方法である。冷中性子源装置は中性子源から発生する中性子を極低温の液体水素を減速材として減速し、更に液体ヘリウムで減速して冷中性子に変換し、一定の時間だけ中性子照射を行うためのシャッターを具備する。中性子照射は被照射核種が核種変換されるのに十分な時間だけシャッターを開口する。中性子捕獲断面積の大きな核種は中性子を捕獲して質量数が1増加する。さらに、質量数が1増えた核種の中性子捕獲断面積が大きければ、この核種も中性子を捕獲して質量数が2増加する。
【0022】
中性子照射により、安定な核種が放射性核種に変換されることがあり、中性子照射回数と、照射後の放置時間により放射性崩壊で生じる核種と重量が変化するので、廃棄する核種重量を減らし、資源として回収できる核種重量を最大にするように、中性子照射回数と放置時間の最適化が必要となる。これに関しては実施例で述べる。
【0023】
(使用済み核燃料取出しから一定時間放置後の処理)
使用済み核燃料取出しから発生したFPのうち気体核種は気体槽に回収し、発生したFPのうち気体核種を除いた核種は一定期間冷却してからPUREX法などの再処理後、残された高レベル放射性廃棄物には硝酸溶液中にある可溶性核種と残渣などの難溶性核種が存在する。
硝酸溶液中で発生したヨウ素の95%はウラン、プルトニウム回収処理中に気体として回収され、残りはヨウ化銀、ヨウ化パラジウムとして硝酸溶液中に残渣として残るが、ヨウ素酸などの添加により、気体として回収できるので、一定期間(t時間)に発生したこれらの気体は気体槽中で発生した核種の重量として扱う。〔参考文献1;末尾に記載〕
なお、炭素は硝酸と反応しCOとして存在するので、気体槽に貯蔵される核種として扱う。〔参考文献2:末尾に記載〕ただし重量は炭素のみの値を示す。
この可溶性核種と、難溶性核種を夫々可溶物槽と難溶物槽に貯蔵する。硝酸に可溶な核種を含む硝酸溶液はそのまま使用しても、いったん脱硝化して、新たに濃度4~6モル/Lの硝酸溶液を加えて、硝酸に可溶な核種を硝酸化物あるいは酸化物としてもよく、この硝酸に可溶な核種を含む硝酸溶液を可溶物槽に回収する。
【0024】
(可溶物槽)
使用済み核燃料取出しから冷却、再処理後、一定期間(t時間)を経て、可溶性核種を回収した可溶物槽中の硝酸溶液中の核種に1回目の冷中性子を照射し、t時間貯蔵する。t時間経過後、可溶性核種を親核種として放射線崩壊で発生したヘリウム、キセノン、クリプトン、臭素、ヨウ素の気体核種は気体槽に回収するが、常温で液体の臭素、固体のヨウ素を気体として回収するため、必要なら可溶物槽を加熱する。これらの気体は、逆流防止付きバルブを介し真空ポンプなどにより気体槽へ移送する。
放射線崩壊で発生したゲルマニウム、ジルコニウム、パラジウム、インジウム、スズなど浮遊または沈殿した難溶性核種は固液分離装置を介し可溶物槽に付属の難溶物槽Aに回収し、濾過された可溶性核種は硝酸溶液と共に可溶物槽に還流する。t時間経過後、可溶物槽中の核種に2回目の冷中性子を照射しt時間貯蔵するが、必要なら可溶物槽を加熱し、この貯蔵期間に放射線崩壊で発生した気体核種を気体槽に回収し、発生した難溶性核種は可溶物槽に付属の難溶物槽Aに回収し、可溶性核種を含む硝酸溶液を可溶物槽に還流する。以後、冷中性子を可溶性核種にのみNi回照射しt時間貯蔵して、放射線崩壊で発生した気体核種を気体槽に、発生した難溶性核種を難溶物槽Aに回収し、可溶性核種を含む硝酸溶液を可溶物槽に還流するのを繰り返す。貯蔵期間に発生した難溶性核種には冷中性子を照射しない。これにより、壊変で発生した難溶性の安定核種の回収重量が増加する。尚、崩壊時に発生する熱や加熱により、硝酸溶液が蒸発するので、冷中性子照射後に必要量を充足し、液量を一定に保つ。
【0025】
(難溶物槽)
使用済み核燃料取出しから冷却、再処理後、一定期間(t時間)を経て、難溶性核種を回収した難溶物槽中の核種に、1回目の冷中性子を照射後、難溶物槽に規定濃度の硝酸溶液を加えt’時間貯蔵する。t’時間経過後、難溶性核種を親核種として壊変で発生する気体は安定なヨウ素127のみで、ヨウ素を気体として放出させるため、必要なら難溶物槽を加熱し、逆流防止付きバルブを介し真空ポンプなどにより放射線モニターで安全を確認後、排気する。また、難溶性核種を親核種として放射性崩壊で発生したホウ素、ガリウム、ヒ素、セレン、銀、カドミウム、テルルなどの可溶性核種を含む硝酸溶液を濾過し難溶物槽に付属の可溶物槽Bに回収する。t’時間経過後、難溶物槽中の核種に2回目の冷中性子を照射後、前記の可溶性核種を含む硝酸溶液と追加の硝酸溶液を加え難溶物槽に還流してt’時間貯蔵する。この貯蔵期間に発生した硝酸に可溶な核種と硝酸溶液を3回目の冷中性子照射前に濾過し難溶物槽に付属の可溶物槽Bに回収する。以後、冷中性子を難溶性核種にのみNj回照射後、t時間貯蔵して発生した可溶性核種を含む硝酸溶液を可溶物槽Bから難溶物槽に還流させるのを繰り返す。t時間経過後も冷中性子照射により生じたスズ127とアンチモン127の崩壊で生じたテルル127の崩壊で安定なヨウ素127が繰り返し発生するが、前述のようにして排気できる。但し、使用済み核燃料がMOXの場合、あるいはウラン235の含有率や燃焼度が異なる場合、難溶物槽で放射性の気体核種が発生するときは、逆流防止付きバルブを介し真空ポンプなどにより気体槽へ移送する。貯蔵期間に発生した可溶性核種には冷中性子を照射しない。これにより、壊変で発生した可溶性の安定核種の回収重量が増加する。尚、冷中性子照射後に発生する可溶性核種の重量が照射回数と共に増えるので硝酸溶液も増加する必要がある。
【0026】
(気体槽)
使用済み核燃料取出しから一定期間(t時間)放置後発生し気体核種は、t時間経過後、可溶物槽に2回目の冷中性子照射直前に可溶物槽から回収した気体核種と合わせて、気体槽を加熱し臭素とヨウ素を昇華・気化させ気体槽の上部に設けた冷却装置で、気体槽内の上部にある受け皿を冷却してヨウ素のみを液化させ、ヨウ化物槽に移送しヨウ素に熱中性子を照射し核種変換する。これはヨウ素の中性子捕獲断面積が熱中性子に対しても大きいので熱中性子照射でかまわない。t時間経過後、気体槽に規定濃度の硝酸溶液を加えt時間放置する。この放置期間に放射線崩壊で生じた固体核種は可溶性核種の安定なルビジウムとセシウムのみで気体槽に付属の固体槽に回収し、発生した気体核種は気体槽に還流させる。発生した可溶性核種には中性子を照射しない。また、ヨウ化物槽で発生した核種はキセノンだけで、気体槽に還流させる。以後、可溶槽の冷中性子照射と貯蔵期間サイクルに同期して、可溶物槽で発生した気体を回収し、崩壊で発生した可溶性核種と硝酸溶液を気体槽に還流することをNi回繰り返す。尚、難溶物槽で発生した気体が安定なヨウ素127以外にも存在する場合は難溶物槽の冷中性子照射とその後の貯蔵期間サイクルに同期させて、冷中性子照射直前に気体槽に還流させる。
【0027】
可溶物槽と難溶物槽に冷中性子照射を各々Ni、Nj回繰り返した後、数年程度の一定期間貯蔵後、放射性核種の崩壊で生じた固体核種は可溶物槽、難溶物槽A、固体槽と、難溶物槽、可溶物槽Bに回収され、前3者に回収した核種および硝酸溶液は塩化物槽1に、後2者に回収した核種および硝酸溶液は塩化物槽2に移送し、夫々加熱して硝酸を追い出すと、ほとんどの核種は酸化物となる。〔参考文献3;末尾に記載〕
【0028】
前記の前3者と後2者から発生した酸化物同位体を、沸点の違いを利用して元素分離するが、これらの酸化物の沸点は極めて高温であり、沸点の低い塩化物に変換する。塩化物槽1及び2に移送された酸化物を規定濃度の塩酸溶液あるいは塩素ガス注入により塩化物に変換する。塩酸で塩化物化しない核種には塩素ガスを使用し、炭素を投入すれば、下記の化学式により数時間の加熱処理で塩化物が生成する。
2[M]On+nC+xCl→2[M]Clx+nCO
但し、[M]は金属元素を示し、ホウ素、ゲルマニウム、ジルコニウム、ニオブ、ルビジウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、ツリウム、ハフニウムが該当する。〔参考文献4;末尾に記載〕
【0029】
塩化物槽1に存在する主に可溶物槽で発生した塩化物(実施例では60核種)を気化槽に投入し、塩化物沸点の昇順に加熱して沸点毎に精留塔で気化させ凝縮器で分留し塩化物として取出し、安定核種および安定な核種のみの同位体であれば冷却装置を介して核種回収槽に回収し、放射性核種および放射性核種のみの同位体あるいは放射性核種と安定核種の混在する同位体はガラス固化核種回収槽に回収する。また、放射性物質として利用できる放射性核種と資源として再利用できる安定核種の2核種からなる同位体は、質量差を利用したガス遠心分離装置により同位体分離を行い、質量数の小さい軽核種と質量数の大きい重核種に分離し、それぞれ軽核種回収槽、重核種回収槽に回収する。
【0030】
次に塩化物槽2に存在する難溶物槽で発生した塩化物(実施例では36核種)を気化槽に投入し、前記と同様に、塩化物沸点の昇順に加熱し、沸点毎に精留塔で気化させ凝縮器で分留し塩化物として取出し、安定核種および安定な核種のみの同位体であれば冷却装置を介して核種回収槽に回収し、放射性核種および放射性核種のみの同位体あるいは放射性核種と安定核種の混在する同位体はガラス固化核種回収槽に回収する。詳細は実施例で述べるが、可溶物槽と難溶物槽で発生した核種を別々に処理するので、ガラス固化する廃棄物重量を低減できる。
【0031】
気体槽では、臭素とヨウ素が存在するが、いずれも安定核種であり常温で夫々液体と固体として回収できる。沸点が0℃以下の気体核種では、放射性核種の重量は減少し、安定核種の重量は増加し、廃棄する放射性気体の比率が少し低下する。放射性核種のヨウ素129は安定なキセノン130に核種変換される。
【0032】
実施例を述べる前に本発明に係る用語の定義などを説明する。原子力発電で使用済みの核燃料から発生したFPは放射性崩壊により壊変するが、この核種を原子番号、元素記号、質量数の順に示し、( )内に崩壊形式と半減期を示す。崩壊形式が2種類ある場合は分岐比を%で表示する。半減期の単位は、秒:s、分:m、時間:h、日:d、年:yで表す。尚、1年は365日として計算している。
崩壊形式にはα崩壊、β崩壊、γ崩壊などがあり、α崩壊では原子核からヘリウム原子核(α線)を放出し原子番号が2、質量数が4減った原子に変化する。β崩壊では3種類の崩壊があり、原子核の中性子から1個の電子を放出して1個の中性子が陽子に変換され原子番号が1増加する(以下、β崩壊とする)崩壊と、原子核の陽子が1個の陽電子を放出して中性子に変換され原子番号が1減るecβ+崩壊(以下、ε崩壊とする)と、核外の電子が原子核に1個捕獲され1個の陽子が中性子に変換され原子番号が1減る(以下、ec崩壊とする)崩壊がある。いずれも電子(β線)が放出される。さらに、β崩壊がほぼ同時におこる二重β崩壊があり、この崩壊では2個の中性子が陽子になるので、原子番号が2増加する(以下、2β崩壊とする)。いずれの崩壊でも質量数は変化しない。また、γ崩壊では励起された原子核が基底状態に遷移する際、余剰なエネルギーをγ線として放射する崩壊で、原子番号と質量数は変化しない。崩壊で生じた励起状態にある娘核種がγ線を放出して基底状態に壊変する核異性体転移(以下、IT崩壊とする)では原子番号、質量数とも変化しない。質量数にmがつく核種は核異性体である。ここで崩壊形式、分岐比、半減期はIAEAのデータを使用した。〔データ引用元1;末尾に記載〕
崩壊の順序は核エネルギー準位の高い核種から低い核種へと変化する。このエネルギー準位はIAEA NDSのMass Chain Chart of Nuclidesのデータに元づいている。
【0033】
ある核種が放射性崩壊で、その重量が1/2になるまでの時間を半減期τといい、崩壊定数λとの関係はτ=ln(2)/λ〔ln(2)は2の自然対数〕である。核種1g当りの放射能は比放射能Sとよばれ、アボガドロ定数をN、質量数をZとすればS=λ×N/Zであり、単位はBq/gである。
放射能の低減度合いは0.1Bq到達時間T0.1で表し、比放射能Sの放射性核種のt秒後の重量をmとすればT0.1=1/λ×{ln(10)+ln(S×m)}+tで表せる。
【0034】
ほとんどの核種の中性子捕獲断面積σnは中性子の速度に反比例するので、冷中性子(ここでは液体ヘリウムの沸点-268.9℃)の捕獲断面積σn(0.353meV)は日本原子力研究開発機構核データ研究グループのJENDL-5〔データ引用元2;末尾に記載〕の熱中性子(20℃)のσn(0.0253eV)の値を元に計算で求めた。σn(0.353meV)の値はσn(0.0253eV)の値の8.47倍である。なお、捕獲断面積が中性子の速度に反比例しない核種は熱中性子の値以上としてある。
【0035】
核種の中性子捕獲確率σpは中性子捕獲断面積σnと核断面積σとの比で表され、核種の質量数をZとすると、原子半径はR=1.25×Z1/3〔fm〕で与えられ、核断面積σ=πRは計算で求めた。〔日本原子力研究開発機構:原子又は原子核の表示、個数密度、核半径、単位系 (03-06-01-03)〕
中性子被照射核種のσpが1以上であれば中性子を1個捕獲して核種変換されその重量は0gとなり、質量数が1増えた核種の重量は中性子を捕獲した核種の重量になる。さらに捕獲した核種のσpが1以上であれば、質量数は2増えた核種に変換され、この核種の重量は、これらの核種の重量の和となる。σpが1以下であれば被照射核種の重量は(1-σp)倍となり、核種変換された核種の重量がσp倍に核種変換するとした。
【0036】
ある放射性核種A(崩壊定数λ)が崩壊し、次々に生成された娘核種B(同λ)、C(同λ)、D(同λ)が放射性核種で、娘核種Eが安定核種とすると、任意の時刻tにおける放射性核種の重量をそれぞれN、N、N、N、Nとすると、これらの重量には次の連立微分方程式が成り立つ。
【0037】
【数1】
【0038】
t=0で放射性核種Aの初期重量をNとすれば、式(1)の両辺にexp(-λ×t)をかけてtで積分すれば、式(6)が求められる。放射性核種B、C、D及び安定核種Eの初期重量は0であり、式(2)に式(6)を代入し微分方程式を解くと式(7)が求められ、以下同様にして式(3)~式(5)を解くと式(8)~式(10)が得られ、任意の時刻tにおける核種重量N(t)、N(t)、N(t)、N(t)、N(t)は、[数2]に示した式(6)~式(10)で求められる。
【0039】
【数2】
【0040】
核燃料取出しから発生した気体と、冷却期間を含めPUREX法などによりウラン、プルトニウムなどのアクチノイドを回収後、一定時間経過後、可溶性核種と難溶性核種を回収した可溶物槽と難溶物槽に分けて核種重量の変化を計算する。計算にはマイクロソフト社の表計算ソフトExcelワークシートの計算機能を使用した。以後、断わりが無い場合は中性子照射とは冷中性子照射を指し、中性子捕獲とは冷中性子捕獲を指す。
【0041】
表1Aは核種に中性子を照射したときの核種重量の変化を求めた計算例を示す。縦方向にA列3行から同一の質量数毎に昇順で原子番号順に核種を記載し、質量数zは昇順にz1、z2、z3、・・・、原子記号と質量数をAz、Bz、Cz、・・・で表す。尚、この表では原子番号は表示していない。また、質量数にmがつく核種は核異性体を表す。
横方向にA列は核種、B列は崩壊形式、C列は半減期τ、D列は崩壊定数λ、E列は中性子捕獲確率σp(中性子捕獲断面積σnと核断面積σとの比)を表示する。但し、半減期は記載せず。σpの値は中性子エネルギーが可溶物槽と難溶物槽の固体核種は0.353meVの値を示し、気体槽の気体核種は0.0253eVの値を示すが、本表では表示の通りで実際の数値を表示していない。F列には燃料取出しt時間(日)後の核種重量を記載し、G列には1回目の中性子照射による核種変換の状況を示し、σpが1以上の核種には+1nと記載、さらに変換された核種が中性子を捕獲して質量数が1増えた核種のσpが1以上であれば、この核種には+1n、質量数が1少ない変換された元の核種には+2nと表記する。σpが非記載の核種のセルは⇒を表記し、中性子を照射しない核種(可溶物槽では壊変で生じた難溶性核種と気体核種、難溶物槽では壊変で生じた可溶性核種と気体核種、気体槽では2回目の中性子照射のヨウ素を除く気体核種と壊変で生じた可溶性核種)のセルにも⇒を表記する。また中性子を捕獲して変換された核種は<>で示し、<>内に核種変換前の核種(元素記号と質量数)に+1n、+2n、・・・と表記する。H列には中性子照射後の累積重量を示し、中性子照射で中性子を捕獲して変換された核種は0gで空欄となる。I列1行目に秒単位で表したt時間を記入する。中性子照射1回目のt時間後の重量をそれぞれI~K列に、その合計をL列に表示する。以下、質量数を増やして計算する。F、H、L、N列最下行のセルに該列の核種重量の合計値をΣNt0、ΣNt0、ΣNt1、ΣNt1と表示してあるが、これらの合計値が等しいことで質量保存の法則が成立し、計算式の正しさを確認できる。
L列の核種重量の合計及びH、N列の累積重量は1×10-40(以下、1E-40と表記)g以下であれば原則として0gと表示する。
M列には2回目の中性子照射による核種変換の状況を示し、G列と同じである。但し、可溶物槽と気体槽ではσp>1のヨウ素はG列とは異なり、+1nあるいは+2nとなり、このほかのヨウ素のセルには⇒と表記する。N列は2回目の中性子照射後の累積重量を示し、中性子照射で中性子を捕獲して変換された核種は空欄となる。
表1Aには記載していないが、O列1行目に秒単位で表した2回目の貯蔵時間t時間を記入し、以下、I~K列と同様にO~Q列に中性子照射t時間後の核種重量を表示させ、その合計をR列に表示させる。さらに質量数を増やして計算する。計算対象の核種の質量数、原子番号は具体例で述べる。
ここでは可溶物槽と気体槽の核種重量変化を求める場合にについて記述しているが、難溶物槽の核種重量変化を求める場合は、tをt’、tをt’に置き換える。
以下に中性子照射後の親核種(崩壊形式,崩壊定数)が放射性崩壊して娘核種に壊変するときこれらの核種のt時間経過後の核種重量を求める方法を説明する。なお、表ではtを半角文字でt1と表示してある。
【0042】
【表1A】
【0043】
質量数z1の放射性核種Az1mを親核種(mは核異性体を表す)として、Az1m(IT,λaz1m)→Az1(β,λaz1)→Bz1(β,λbz1)→Cz1m(IT,λcz1m)→Cz1(安定)に壊変するとき、1回目の中性子照射t時間後の核種Az1m、Az1、Bz1、Cz1mとCz1の重量は[数2]で示した式(6)~式(10)を以下の様に書替え、初期重量Nを核種Az1mの累積重量Naz1mに、tをt1に書替える。但し、*は乗算を表し、λcz1=0である。またNの添え字(数字)は壊変の順序を示し同一の核種が別の壊変で出現した場合に違う壊変反応であることを示している。例えばBz1は式(13)と式(17)で出現している。
【0044】
【数3】
【0045】
式(11)~式(15)の右辺の各核種の崩壊定数λをD列(λ)の該当する行のセル名に、初期重量Naz1mをセル名「H3」に、t1をセル名「I$1」に書替え、等号を含めて書替えたこれらの右辺を夫々I列3~7行セルに書込めば、t時間後の該当核種の重量の計算結果がこれらのセルに表示される。書込みしたワークシート中のセルの内容の一例を「 」内に示すと、セルI3には式(11)の右辺「=H3*exp(-$D3*I$1)」、セルI4には式(12)の右辺「=H3*$D3*{exp(-$D3*I$1)-exp(-$D4*I$1)}/($D4-$D3)」と半角文字で書き込まれている。但し、$は絶対参照を示す。
【0046】
同様に放射性核種Az1がAz1(β,λaz1)→Bz1(β,λbz1)→Cz1m(IT,λcz1m)→Cz(安定)に壊変するとき、 t時間後の核種Az1,Bz1,Cz1mとCz1の重量は、[数2]で示した式(6)~式(9)を以下の様に書替え、初期重量Nを核種Az1の累積重量Naz1、tをt1に書替える。
【0047】
【数4】
【0048】
式(16)~式(19)の右辺の各核種の崩壊定数λをD列(λ)の該当する行のセル名に、初期重量Naz1をセル名「H4」に、t1をセル名「I$1」に書替え、等号を含めて書替えたこれらの右辺を夫々J列4~7行セルに書込めば、t時間後の該当核種の重量の計算結果がこれらのセルに表示される。書込みしたワークシート中のセルの内容の一例を「 」内に示すと、セルJ4には式(16)の右辺「=H4*exp(-$D4*I$1)」、セルJ7には式(17)の右辺「=H4*$D4*{exp(-$D4*I$1)-exp(-$D5*I$1)}/($D5-$D4)」と半角文字で書き込まれている。
放射性核種Bz1(σp>1)は中性子照射により中性子を捕獲して核種Bz2に変換され、照射直後の累積重量(H5セル)は0gとなるが、t時間後に核種Az1mと核種Az1の壊変で核種Bz1が発生する。これらの重量は式(13)のN3bz1(t1)と式(17)のN2bz1(t1)の右辺であり、式中の各核種の崩壊定数λをD列(λ)の該当する行のセル名に、初期重量を夫々の核種の累積重量のセル名「H3」と「H4」に、tをt1と書かれたセル名「I$1」に書替え、等号を含めて書替えた両右辺を夫々I5セルとJ5セルに書込めば、t時間後の核種Bz1の重量の計算結果がこれらのセルに表示される。
【0049】
放射性核種Cz1mがCz1m(IT,λcz1m)→Cz1(安定)に壊変するとき、t時間後の核種Cz1mとCz1の重量は、[数2]で示した式(6)、式(7)を以下の様に書替え、初期重量Nを核種Cz1mの累積重量Ncz1m、tをt1に書替える。
【0050】
【数5】
【0051】
式(20)~式(21)の右辺の各核種の崩壊定数λをD列(λ)の該当する行のセル名に、初期重量Ncz1mをセル名「H6」に、t1をセル名「I$1」に書替え、等号を含めて書替えた両式の右辺を夫々K列6~7行セルに書込めば、t時間後の該当核種の重量の計算結果がこれらのセルに表示される。
安定核種Cz1(σp>1)は中性子照射で中性子を捕獲して核種Cz2に変換され照射直後の累積重量(H7セル)は0gとなるが、t時間後に核種Az1mの壊変で式(15)のN5cz1(t1)、核種Az1の壊変で式(19)のN4cz1(t1)、及び核種Cz1mの壊変で式(21)のN2cz1(t1)が生じる。これらの式の右辺の各核種の崩壊定数をD列(λ)の該当する行のセル名に、初期重量を各核種の累積重量のセル名「H3」、「H4」、「H6」に、tをt1のセル名「I$1」に書替え、等号を含めて書替えたこれらの右辺をI7、J7、K7セルに書込めば、t時間後に生じた核種Cz1mの重量の計算結果が該セルに表示される。
L列には、核種Az1m、Az1、Bz1、Cz1m、Cz1のt時間後の核種重量Naz1mt1、Naz1t1、Nbz1t1、Ncz1mt1、Ncz1t1がI~K列の同じ行のセルの和で求められる。
Naz1mt1=N1az1m(t1)、
Naz1t1=N2az1m(t1)+N1az1(t1)、
Nbz1t1=N3bz1(t1)+N2bz1(t1)、
Ncz1mt1=N4cz1m(t1)+N3cz1m(t1)+N1cz1m(t1)、
Ncz1t1=N5cz1(t1)+N4cz1(t1)+N2cz1(t1)である。
ワークシート中のセルの内容の一例を「 」内に示すと、セルL4には「=I4+J4
」が半角文字で書き込まれている。
【0052】
質量数が1増えた放射性核種Bz2〔σp=0.8〕の重量は核種Bz1〔σp>1〕の中性子捕獲で核種変換されNbz1だけ増加するが、中性子照射で核種Bz1の重量の20%は核種変換されないので、照射直後の累積重量はNbz2’=0.2×(Nbz1+Nbz2)となる。核種Bz2がBz2(β,λbz2)→Cz2(β,λcz2)→Dz2(安定)に壊変するとき、t時間後の核種Bz2、Cz2、Dz2の重量は、[数2]で示した式(6)~式(8)を以下の様に書替え、初期重量Nを核種Bz2の累積重量Nbz2’、tをt1に書替える。但し、λdz2=0である。
【0053】
【数6】
【0054】
式(22)~式(24)の右辺の各核種の崩壊定数λをD列(λ)の該当する行のセル名に、初期重量Nbz2’をセル名「H8」に、t1をセル名「I$1」に書替え、等号を含めて書替えたこれらの右辺を夫々I列8~10行セルに書込めば、t時間後の該当核種の重量の計算結果がこれらのセルに表示される。書込みしたワークシート中のセルの内容の一例を「 」内に示すと、セルI8には「=0.2*(F5+F8)*exp(-$D8*I$1)」、セルI9には「=0.2*(F5+F8)*F8*{(exp(-$D8*I$1)-exp(-$D9*I$1)}/($D9-$D8)」が半角文字で書き込まれている。
放射性核種Cz2の重量は中性子照射により核種Cz1(σp>1)の中性子捕獲で核種変換されNcz1だけ増し、照射後の累積重量はNcz2’=Ncz1+Ncz2となる。核種Cz2がCz2(β,λcz2)→Dz2(安定)に壊変するとき、t時間後の核種Cz2とDz2の重量は、[数2]で示した式(1)、式(2)を以下の様に書換え、初期重量Nを核種Cz2の累積重量Ncz2’、tをt1に書替える。
【0055】
【数7】
【0056】
式(25)、式(26)の右辺で各核種の崩壊定数λをD列(λ)の該当する行のセル名に、初期重量Ncz2’をセル名「H9」に、t1をセル名「I$1」に書替え、等号を含めて書替えた両右辺を夫々J列9~10行セルに書込めば、t時間後の該当核種の重量の計算結果がJ列9~10行セルに表示される。
安定核種Dz2(σp>1)は中性子照射によりDz3に核種変換され累積重量(H10セル)は0gであるが、t時間後に核種Bz2とCz2のβ崩壊で核種Dz2が生じる。式(24)のN3dz1(t1)と式(26)のN2dz1(t1)の右辺で各核種の崩壊定数λを該当する行のD列(λ)のセル名に、両式の初期重量を該当する核種の累積重量のセル名「H8」と「H9」に、t1をセル名「I$1」に書替え、等号を含めて書替えた両右辺を夫々I10、J10セルに書込めば、t時間後の壊変で生じた核種Dz2の重量の計算結果が該セルに表示される。なお、核種Ez2のec崩壊で生じた核種Dz2の重量については、式(28)の右辺で各核種の崩壊定数をD列(λ)の該当する行の各セル名に、初期重量Nを核種Ez2の累積重量Nez2のセル名「H11」に、t1をセル名「I$1」に書替え、等号を含めて書替えた右辺をK10セルに書込めば、t時間後の該当核種の重量の計算結果が該セルに表示される。
放射性核種Ez2がec崩壊で原子番号が1少ない安定核種Dz2に、Ez2(ec,λez1)→Dz2(安定)に壊変するとき、t時間後の核種Ez2とDz2の重量は、[数2]で示した式(6)、式(7)を以下の様に書換え、初期重量Nを核種Ez2の累積重量Nez2、tをt1に書替える。
【0057】
【数8】
【0058】
式(27)~式(28)の右辺で各核種の崩壊定数λをD列(λ)の該当する行のセル名に、初期重量Nez2をセル名「H11」に、t1をセル名「I$1」に書替え、等号を含めて書替えた両右辺を夫々K列11~10行セルに書込めば、t時間後の該当核種の重量の計算結果が該セルに表示される。
L列には核種Bz2、Cz2、Dz2、Ez2のt時間後の重量Nbz2t1、Ncz2t1、Ndz2t1、Nez2t1はI~K列の同じ行のセルの和で求められる。
Nbz2t1=N1bz2(t1)、
Ncz2t1=N2cz2(t1)+N1cz2(t1)、
Ndz2t1=N3dz2(t1)+N2dz2(t1)+N2ez2(t1)、
Nez2t1=N1ez2(t1)+N2gz6(t1)である。
尚、N2gz6(t1)は後述するように核種Gz6のα崩壊で生じたものである。
【0059】
質量数が2増えた放射性核種Bz3(σpは非記載)の重量は、1回目の中性子照射により、同位体のBz1(σp>1)とBz2(σp=0.8)の中性子捕獲で、Nbz3’=Nbz3+0.8×(Nbz1+Nbz2)となる。核種Bz3がBz3(β,λbz3)→Cz3(β,λcz3)→Dz3(β,λdz3)→Ez3(安定)に壊変するとき、t時間後の核種Bz3、Cz3、Dz3とEz3の重量は、[数2]で示した式(6)~式(9)を以下の様に書換え、初期重量Nを核種Bz3の累積重量Nbz3’、tをt1に書替える。但し、λez3=0である。
【0060】
【数9】
【0061】
式(29)~式(32)の右辺で各核種の崩壊定数λを該当する行のD列(λ)のセル名に、初期重量Nbz3’をセル名「H12」に、t1をセル名「I$1」に書替え、等号を含めて書替えたこれらの右辺を夫々I列12~15行セルに書込めば、t時間後の該当核種の重量の計算結果がこれらのセルに表示される。書込みしたワークシート中のセルの内容の一例を「 」内に示すと、セルI12は「={F12+0.8*(F5+F8)}*exp(-$D12*I$1)」が半角文字で書き込まれている。
放射性核種Cz3(σp>1)は中性子捕獲でCz4mに核種変換され累積重量(H13セル)は0であるが、t時間後に核種Bz2のβ崩壊でCz2を生じる。式(30)N2cz3(t1)の右辺で各核種の崩壊定数λをD列(λ)の該当する行のセル名に、初期重量Nbz3’をセル名「H12」に、t1をセル名「I$1」に書替え、等号を含めて書替えた式をI13セルに書込めば、t時間後の核種Cz2の重量の計算結果が該セルに表示される。
【0062】
放射性核種Dz3の重量は同位体の核種Dz2(σp>1)の中性子捕獲によりNdz2だけ増加し、累積重量はNdz3’=Ndz2+Ndz3となる。核種Dz3がDz3(β,λdz3)→Ez3(安定)に壊変するとき、t時間後の核種Dz3とEz3の重量は[数2]で示した式(1)、式(2)を以下の様に書替え、初期重量Nを核種Dz3の累積重量Ndz3’、tをt1に書替える。
【0063】
【数10】
【0064】
式(33)~式(34)の右辺で各核種の崩壊定数λをD列(λ)の該当する行のセル名に、初期重量Ndz3’をセル名「H14」に、t1をセル名「I$1」に書替え、等号を含めて書替えたこれらの右辺を夫々J列14~15行セルに書込めば、t時間後の該当核種の重量の計算結果が該セルに表示される。
安定核種Ez3(σp>1)は中性子捕獲によりEz4に核種変換され、累積重量(H15セル)は0gとなるが、t時間後、核種Bz3とDz3の壊変で核種Ez3が生じる。式(32)N4ez3の右辺と式(34)N2ez3の右辺で、各核種の崩壊定数λをD列(λ)の該当する行のセル名に、初期重量を夫々の累積重量を示すセル名「H12」と「H14」に、t1をセル名「I$1」に書替え、等号を含めて書替えた両式を夫々I15とJ15セルに書込めば、t時間後の核種Ez2の重量の計算結果が該セルに表示される。
L列には核種Bz3、Cz3、Dz3、Ez3のt時間後の核種重量Nbz3t1、Ncz3t1、Ndz3t1、Nez3t1が、I~K列の同じ行のセルの和で求められる。
Nbz3t1=N1bz3(t1)、
Ncz3t1=N2cz3(t1)、
Ndz3t1=N3dz3(t1)+N1dz3(t1)、
Nez3t1=N4ez3(t1)+N2ez3(t1)である。
【0065】
質量数が3増えた放射性核種Cz4mの重量は核種Cz3(σp>1)の中性子捕獲でNcz3だけ増加し累積重量はNcz4m’=Ncz3+Ncz4mとなる。核種Cz4mがCz4m(IT,λcz4m)→Cz4(β,λcz4)→Dz4(安定)に壊変するとき、t時間後の核種Cz4m、Cz4、Dz4の重量は[数2]で示した式(6)~式(8)を以下の様に書替え、初期重量Nを核種Cz4mの累積重量Ncz4m’、tをt1に書替える。但し、λdz4=0である。
【0066】
【数11】
【0067】
式(35)~式(37)の右辺で各核種の崩壊定数λをD列(λ)の該当する行のセル名に、初期重量Ncz4m’をセル名「H16」に、tをt1のセル名「I$1」に書替え、等号を含めて書替えたこれらの右辺を夫々I列16~18行セルに書込めば、t時間後の該当核種の重量の計算結果が該セルに表示される。書込みしたワークシート中のセルの内容の一例を「 」内に示すと、セルI16は「=(F13+F16)*exp(-$D16*I$1)」が半角文字で書き込まれている。
放射性核種Cz4(σp>1)は中性子を捕獲してCz5に核種変換されH17セル(累積重量)は0となるが、t時間後は放射性核種Cz4mのIT崩壊で核種Cz4を生じる。核種Cz4mの式(36)N2cz4(t1)の右辺で各核種の崩壊定数λをD列(λ)の該当する行のセル名に、初期重量Ncz4m’をセル名「H16」に、t1をセル名「I$1」に書替え、等号を含めて書替えた式をI17セルに書込めば、t時間後の該当核種の重量の計算結果が該セルに表示される。
【0068】
安定核種Dz4より核エネルギー準位が高い放射性核種Ez4のε(β+)崩壊で原子番号が1少ない安定核種Dz4に壊変する。核種Ez4の重量は、同位体Ez3(σp>1)の中性子捕獲によりNez3だけ増加し、累積重量はNez4’=Nez3+Nez4となる。核種Ez4がEz4(ε,λez4)→Dz4(安定)に壊変するとき、t時間後の核種Dz3とEz3の重量は[数2]で示した式(1)、式(2)を以下の様に書替え、初期重量Nを核種Ez4の累積重量Nez4’、tをt1に書替える。
【0069】
【数12】
【0070】
式(38)、式(39)の右辺で各核種の崩壊定数λをD列(λ)の該当する行のセル名に、初期重量Nez4’をセル名「H19」に、t1をセル名「I$1」に書替え、等号を含めて書替えた両式を夫々J列19~18行セルに書込めば、t時間後の該当核種の重量の計算結果が該セルに表示される。
L列には、核種Cz4m、Cz4、Dz4、Ez4のt時間後の核種重量Ncz4mt1、Ncz4t1、Ndz4t1、Nez4t1が、I~K列の同じ行のセルの和で求められる。
Ncz4mt1=N1cz4m(t1)、
Ncz4t1=N2cz4(t1)、
Ndz4t1=N3dz4(t1)+N2dz4(t1)、
Nez4t1=N1ez4(t1)である。
【0071】
質量数が4増えた放射性核種Cz5の重量は同位体Cz4(σp>1)の中性子捕獲によりNcz4だけ増加し、累積重量はNcz5’=Ncz4+Ncz5となる。核種Dz5がβ崩壊するとき、核種Ez5mの核エネルギー準位が核種Dz5より高いと、Dz5はEz5mに壊変されず、Ez5に壊変する。Cz5(β,λcz5)→Dz5(β,λdz5)→Ez5(安定)と壊変するとき、t時間後の核種Cz5、Dz5、Ez5の重量は[数2]で示した式(6)~式(8)を以下の様に書替え、初期重量Nを核種Cz5の累積重量Ncz5’、tをt1に書替える。但し、λez5=0である。
【0072】
【数13】
【0073】
式(40)~式(42)の右辺で各核種の崩壊定数λをD列(λ)の該当する行のセル名に、初期重量Ncz5’をセル名「H20」に、t1をセル名「I$1」に書替え、等号を含めて書替えたこれらの右辺を夫々I列20~21行と23行セルに書込めば、t時間後の該当核種の重量の計算結果が該セルに表示される。書込みしたワークシート中のセルの内容の一例を「 」内に示すと、セルI20は「=(F17+F20)*exp(-$D20*I$1)」が半角文字で書き込まれている。
放射性核種Dz5(σp>1)は中性子を捕獲してDz6に核種変換され、累積重量(H21セル)は0となるが、t時間後、放射性核種Cz5のβ崩壊で核種Dz5が生じる。式(41)N2dz5の右辺で各核種の崩壊定数λをD列(λ)の該当する行のセル名に書替え、初期重量Ncz5’をセル名「H20」、t1をセル名「I$1」に書替え、等号と共にこの右辺をI21セルに書込めば、t時間後の核種Dz5の重量の計算結果が該セルに表示される。
放射性核種Ez5mがEz5m(IT、λez5m)→Ez5(安定)に壊変するとき、t時間後の核種Ez5mとEz5の重量は[数2]で示した式(6)、式(7)を以下の様に書替え、初期重量Nを核種Ez5mの累積重量Nez5m、tをt1に書替える。
【0074】
【数14】
【0075】
式(43)、式(44)の右辺で各核種の崩壊定数λをD列(λ)の該当する行のセル名に、累積重量Nez5mをセル名「H22」、t1をセル名「I$1」に書替え、等号を含めて両右辺を夫々J列22~23行セルに書込めば、t時間後の該当核種の重量の計算結果がJ列22~23行セルに表示される。
安定核種Ez5(σp>1)は同位体のEz6に核種変換され累積重量(H23セル)は0gとなるが、t時間後に核種Cz5とEz5mを親核種として崩壊によりEz5が生じる。式(42)N3ez5(t1)の右辺、式(44)N2ez5(t1)の右辺で各核種の崩壊定数λをD列(λ)の該当する行のセル名に書替え、それぞれの累積重量をセル名「H20」と「H22」に、t1をセル名「I$1」に書替え、等号を含めて両右辺を夫々I23セルとJ23セルに書込めば、t時間後の核種Ez5の重量の計算結果が該セルに表示される。
L列には、核種Cz5、Dz5、Ez5m、Ez5のt時間後の核種重量Ncz5t1、Ndz5t1、Nez5mt1、Nez5t1が、I~K列の同じ行のセルの和で求められる。
Ncz5t1=N1cz5(t1)、
Ndz5t1=N2dz5(t1)、
Nez5mt1=N1ez5m(t1)、
Nez5t1=N3ez5(t1)+N2ez5(t1)である。
【0076】
質量数が5増えた放射性核種Dz6の重量は、同位体Dz5(σp>1)の中性子捕獲によりNdz5だけ増加し、中性子照射直後の累積重量はNdz6’=Ndz5+Ndz6となる。核種Dz6がDz6(β,λdz6)→Ez6(β,λez6)→Fz6(安定)に壊変するとき、t時間後の核種Dz6、Ez6、Fz6の重量は[数2]で示した式(6)~式(8)を以下の様に書換え、初期重量Nを核種Dz6の累積重量Ndz6’に、tをt1に書替える。但し、λfz6=0
【0077】
【数15】
【0078】
式(45)~式(47)の右辺で各核種の崩壊定数λをD列(λ)の該当する行のセル名に、累積重量Ndz6’をセル名「H24」、t1をセル名「I$1」に書替え、等号を含めてこれらの右辺を夫々I列24~26行セルに書込めば、t時間後の該当核種の重量の計算結果がI列24~26行セルに表示される。書込みしたワークシート中のセルの内容の一例を示すと、セルI24は「=(F21+F24)*exp(-$D24*I$1)」が半角文字で書込まれている。
放射性核種Ez6の重量は、同位体Ez5(σp>1)の中性子捕獲によりNez5だけ増加し、累積重量はNez6’=Nez5+Nez6となる。核種Ez6がEz6(β,λez6)→Fz6(安定)に壊変するとき、t時間後の核種Ez6とFz6の重量は[数2]で示した式(6)、式(7)を以下の様に書替え、初期重量Nを核種Dz6の累積重量Ndz6’に、tをt1に書替える。但し、λfz6=0である。
【0079】
【数16】
【0080】
式(48)、式(49)の右辺で各核種の崩壊定数λをD列(λ)の該当する行のセル名に、累積重量Ndz6’をセル名「H24」に、t1をセル名「I$1」に書替え、等号を含めてこれらの右辺を夫々J列25~26行セルに書込めば、t時間後の該当核種の重量の計算結果が該セルに表示される。
安定核種Fz6のt時間後の重量は初期値Nfz6に放射性核種Dz6とEz6のβ崩壊で生じた重量が加わる。式(47)N3fz6(t1)と式(49)N2fz6(t1)の右辺で各核種の崩壊定数λをD列(λ)の該当する行のセル名に書替え、等号を含めてこれらの右辺を夫々I26、J26セルに書込めば、t時間後の核種Fz6の重量の計算結果が該セルに表示される。
放射性核種Gz6はα崩壊で原子番号が2、質量数が4減り核種Ez1に壊変するので、核種Gz6がGz6(α)→Ez2(安定)と壊変するとき、t時間後の核種Gz6とEz2の重量は[数2]で示した式(6)、式(7)を以下の様に書替え、初期重量Nを核種Gz6の累積重量Ngz6に、tをt1に書替える。
【0081】
【数17】
【0082】
式(50)、式(51)の右辺で各核種の崩壊定数λをD列(λ)の該当する行のセル名に、累積重量Ngz6をセル名「H27」、t1のセル名「I$1」に書替え、等号を含めて両右辺を夫々J列27と11行セルに書込めば、t時間後の該当核種の重量の計算結果が該セルに表示される。
L列には、核種Dz6、Ez6、Fz6、Gz6のt時間後の重量Ndz6t1、Nez6t1、Nfz6t1、Ngz6t1がI~K列の同じ行のセルの和で求められる。
Ndz6t1=N1dz6(t1)、
Nez6t1=N2ez6(t1)+N1ez6(t1)、
Nfz6t1=Nfz6+N3fz6(t1)+N2fz6(t1)、
Ngz6t1=N1gz6(t1)である。
【0083】
中性子照射2回目のt時間貯蔵後の核種重量を求めるには、表1Aに示していないが、秒単位で表したt2をO列1行セルに記入し、中性子照射1回目の累積重量とt時間後の核種の重量と合計重量を表示しているH列~L列(H3~L27セル)の数式をコピーし、そのままN列~R列(N3~R27セル)に貼り付ける。数式でt1をt2(数式ではI1をO1)に書替え、数式中の崩壊定数λのD列のセルは固定アドレス(絶対参照)とし、重量に関するセルは相対参照アドレスとする。式(11)~式(51)において、t1がt2に、初期重量に相当するH列の累積重量がN列の累積重量に変更されただけである。貼り付けされた移動後のセルは自動的に変更され、例えばI3セルの数式「=H3*exp(-$D3*I$1)」は「=N3*exp(-$D3*O$1)」と半角文字で書き込まれている。なお$は絶対参照を意味する。t時間後の核種重量の計算結果はO列~Q列の該当セルに表示される。R列には、A列に記載された全核種のt時間後の核種重量が、O~Q列の同じ行のセルの和で求められる。
【0084】
表1Bに中性子照射Ni回目と照射後の一定期間t時間放置後の核種の重量変化を 求めた計算例を示す。この表は中性子照射Ni回の例を示し、列名(AA~AN)は仮称で実際の表では異なる。AF1セルに秒単位で表したt時間を記入し、AC列に表示された中性子照射Ni回目直前の核種の合計重量をE列のσpの値を考慮して、AD列に表示された中性子照射条件でAE列の各セルにコピーする。⇒は同一行でAC列のセルの重量をそのままAE列のセルにコピーすることを示す。σpが1以上の核種のAE列の累積重量は0gで、σpが1以下の場合はこの中性子捕獲確率を考慮した累積重量となる。また、σpが非記載の核種で<>で表示されたセルは、質量数の小さい同じ元素の中性子捕獲により核種変換されて増加した重量が加算される(例えばAE9、AE14セルなど)。中性子照射Ni回目のt時間後の核種重量を求めるには、表1Aの中性子照射1回目のI列~K列の各セルに書込んだ書替え後の式(11)~式(51)を、そのままAF列~AH列の各セルにコピーし、数式中の変数の初期重量NをAE列の累積重量該当セル名、tをセル名「AF$1」に書替えれば、t時間後の核種重量の計算結果がAF~AH列の該当セルに表示される。例えば、I列3~7行セルに表示された式(11)~式(15) とAF列3~7行セルに表示された式(11)~式(15)の違いは変数tがt1からtiへ、初期重量NがNaz1mからNaz1mti-1に変更されただけである。AI列には全核種のt時間後の核種重量が、AF~AH列の同じ行のセルの和で求められる。但し、σpが非記載の安定核種は、AE列の累積重量が加算される。例を挙げると18行と26行の安定核種Dz4とFz6は、前者はAF18とAG18の和にAE18が、後者はAF26とAG26の和にAE26が加算される。この表では可溶物槽と気体槽の核種重量変化を求める場合を述べているが、難溶物槽の核種重量変化を求める場合はtをt’、 tをt’、NiをNjに置き換える。
【0085】
【表1B】
【0086】
中性子照射Ni回目のt時間後に放射性核種の崩壊エネルギーによる貯蔵物の温度と放射能を低減するためt時間放置する。t時間放置後の核種重量を求めるには、AJ1セルに秒単位で表したt時間を記入し、表1Aの中性子照射1回目のI~K列の各セルに書込んだ書替え後の式(11)~式(51)のコピーしたセルをAJ~AL列の各セルに移動し、数式中の初期重量NをAI列(重量小計)の該当セル名、t1をセル名「AJ$1」に書替えれば、t時間後の核種重量の計算結果がAJ~AL列の該当セルに表示される。I列3~7行セルに表示された式(11)~式(15) とAJ列3~7行セルに表示された式(11)~式(15)の違いは、列名と変数t1がts、累積重量Naz1mがNaz1mtiに変更されただけである。AN列に核種のt時間後の重量が、AJ~AL列の同じ行のセルの和で求められる。但し、安定核種はAE列の累積重量も加算され、Cz1、Dz2、Ez3、Dz4、Ez5、Fz6が該当する。また中性子を照射しないので、AE列の累積重量が0gとなる核種は、この核種を親核種として娘核種への崩壊系列が未記載のため、この系列の遂次方程式が必要となる。
5行目の核種Bz1がBz1(β,λbz1)→Cz1m(IT,λcz1m)→Cz(安定)に壊変するときts時間後のこれらの核種重量はAM列を設け、AM列5~7行セルに[数2]で示した式(6)~式(8)を以下の様に書替え、初期重量Nを核種Bz1の重量小計Nbz1tiに、tをtsに書替える。但し、λcz1=0である。
【0087】
【数18】
【0088】
式(52)~式(54)の右辺で各核種の崩壊定数λを該当する行のD列(λ)のセル名に、重量小計Nbz1tiのセル名「AI5」に、tsをセル名「AJ$1」に書替え、等号を含めてこれらの右辺を夫々AM列5~7行セルに書込めば、t時間後の該当核種の重量の計算結果がAM列5~7行セルに表示される。
13行目の放射性核種Cz3がCz3(β,λcz3)→Dz3(β,λdz3)→Ez3(安定)に壊変するとき、t時間後のこれらの核種重量を求めるには、AM列13~15行セルに[数2]で示した式(6)~式(8)を以下の様に書替え、初期重量Nを核種Cz3の重量小計Ncz3tiに、tをtsに書替える。但し、λez3=0
【0089】
【数19】
【0090】
式(55)~式(57)の右辺で各核種の崩壊定数λを該当する行のD列λのセル名に、重量小計Ncz3tiのセル名「AI13」セルに、tsをセル名「AJ$1」に書替え、等号を含めてこれらの式を夫々AM列13~15行セルに書込めば、t時間後の該当核種の重量の計算結果がAM列13~15行セルに表示される。
同様に17行目の放射性核種Cz4(β,λdz4)→Ez4(安定)に壊変するとき、t時間後のこれらの核種重量を求めるには、AM列17~18行セルに[数2]で示した式(6)、式(7)を以下の様に書替え初期重量Nを核種Cz4の重量小計Ncz4tiに、tをtsに書替える。但し、λdz4=0である。
【0091】
【数20】
【0092】
式(58)、式(59)の右辺で各核種の崩壊定数λを該当する行のD列(λ)のセル名に、重量小計Ncz4tiのセル名「AI17」セルに、tsをセル名「AJ$1」に書替え、等号を含めて両式を夫々AM列17、18行セルに書込めば、t時間後の該当核種の重量の計算結果がAM列17、18行セルに表示される。
同様に21行目の放射性核種Dz5(β,λdz5)→Ez5(安定)では、t時間後のこれらの核種重量を求めるには、AM列21と23行セルに[数2]で示した式(6)、式(7)を以下の様に書替え、初期重量Nを核種Dz5の重量小計Ndz5tiに、tをtsに書替える。但し、λez5=0
【0093】
【数21】
【0094】
式(60)、式(61)の右辺で各核種の崩壊定数λを該当する行のD列(λ)のセル名に、重量小計Ndz5tiのセル名「AI21」に、tをtsのセル名「AJ$1」に書替え、等号を含めて両式を夫々AM21と23セルに書込めば、t時間後の該当核種の重量の計算結果がAM列21と23行セルに表示される。
表1BのAC、AE、AI、AN列の最下行のセルには、これらの列の核種重量の合計をΣNti-1、ΣNti、ΣNti、ΣNtsと表示するが、表1AのΣNt0、ΣNt0、ΣNt1、ΣNt1を含め、これらの数値が全て等しいことを確認すれば、質量保存則に元づき、計算式の正しさを反映するものである。
【実施例0095】
本発明に係る実施例として、東京電力福島第一原子力発電所の原子炉2号機の使用済み核燃料で発生したFP879種の重量推移のデータを使用した。〔データ引用元3;末尾に記載〕なお、上記データには非記載の14核種と中性子照射で新たに発生する18核種を計算対象に追加している。使用済み核燃料取出しから一定期間t時間は数十日から数十年間であり、本実施例では180日とする。可溶物槽、難溶物槽、気体槽では、使用済み核燃料取出し180日後の重量が1E-40g以上の核種を同一質量数毎に、原子番号順に核種、崩壊形式、半減期τ、崩壊定数λ、中性子捕獲確率σp、180日後の重量を該当セルに、下記する貯蔵期間を該当セルに書込み、中性子照射回数に相当する分だけ核種重量を表示するために列を増やし、本発明を適用した場合の核種重量の経時変化を表1A、表1Bを元にExcelワークシートを作成した。ワークシートをA4用紙の表にすると120枚以上になるので割愛し、各槽毎の核種について計算した結果を表記する。半減期の単位は秒:s、分:m、時間:h、日:d、年:yで表す。
中性子捕獲確率σpは中性子捕獲断面積σnと核断面積σとの比で表され、中性子捕獲断面積σn(0.353meV)は日本原子力研究開発機構 核データ研究グループのJENDL-5のσn(0.0253eV)を元に計算で求めた。なお、σnが中性子の速度に反比例しない核種は熱中性子の値以上としてある。核種のσpが1以上であれば中性子を捕獲して核種変換され、その重量は0gとなり、質量数が増えた核種は中性子を捕獲した核種の重量となる。さらに捕獲した核種のσpが1以上であれば、質量数は2増えた核種に変換され、変換された核種のσpが1以上であれば、さらに中性子を捕獲して核種変換され質量数は3増える。一例を挙げると、バリウム同位体の0.353meVのσpは、Ba132が53.7、Ba133mが18.1、Ba133が18.1、Ba134が9.89、Ba135が38であり、それぞれ4~1個の中性子を捕獲して56Ba136mに核種変換される。
本発明では、発生した高レベル放射性廃棄物を硝酸に可溶な可溶物と難溶・不溶な難溶物とに分離貯蔵し、前者では壊変で発生した安定な難溶物には中性子を照射せず、後者では壊変で発生した安定な可溶物には中性子を照射しないので、安定な核種の回収量が槽分離をしない場合より大幅に増加する。また、高レベル放射性廃棄物のガラス固化体にする重量を最小にするため、中性子照射回数を3~16回と、その後の貯蔵期間を3日~1年をパラメータとして計算した結果、照射間隔を30日とした。照射回数は槽毎により異なる。
【0096】
(可溶物槽中の核種)
表1A、表1Bを可溶物槽中の核種に適用する場合は、難溶性核種と気体核種のt0日後の重量(F列)は0gであり、中性子照射後に可溶性核種の壊変で生じた難溶性核種と気体核種には中性子を照射しないので、これらの核種の該当する行のG、M、・・AD、
・・・列のセルには⇒を表示し、中性子照射後の累積重量は照射前の合計重量となる。但し、中性子照射2回目のみσpが1以上のヨウ素は除外する。同一質量数で可溶性核種を含まない崩壊系列の場合は初期重量が0gなので、この質量数の核種は表から除外する(例えば32Ge73m~32Ge75、40Zr93~46Pd107と50Sn118~51Sb122)。計算対象は2He4から72Hf178までで、先頭の核種は中性子照射で可溶性核種3Li6が中性子捕獲により3Li8(β,0.84s)→4Be8(α,8.2×10-17s)→2He4(安定)と壊変して気体2He4が生じ、末尾の核種はJAEAデータに記載された可溶性の安定核種70Yb172が、非記載の同位体70Yb173~176のσpが1以上のため、1回目の中性子照射で核種変換されて生じた放射性核種70Yb177(β,1.91h)のβ崩壊でσpが1以上の可溶性核種71Lu177(β/IT,160.4d)を生じ、該核種が2回目の照射で核種変換されて生じた71Lu178m(β,23.1m)のβ崩壊で難溶性の核種72Hf178m(IT,23.1m)→72Hf178(安定)を生じることによる。質量数が172以上の核種は中性子照射により新たに発生した核種である。可溶物槽で発生した気体核種と難溶性核種の重量は可溶物槽の表中に記載している。
【0097】
可溶物槽の可溶性核種にのみ中性子をNi回照射し、t時間貯蔵後、発生した気体核種を気体槽に回収し、発生した難溶性核種は固液分離装置などで難溶物槽Aに回収するのをNi回繰り返し、可溶性核種以外には中性子を照射しない。本実施例では照射回数Niを可溶物槽のガラス固化体重量が最小となる9回とし、貯蔵期間tは、t~tは30日、tは310日(核燃料取出しから通算して2年に相当)とし、tは4年とする。
可溶物槽にはPUREX法などの再処理後の硝酸溶液中に含まれる可溶性核種を溶液ごと使用しても、いったん脱硝して新たに濃度4モル/Lの硝酸溶液約300Lを加えて、硝酸に可溶な核種を硝酸化物あるいは酸化物としてもよく、この硝酸に可溶な核種を含む硝酸溶液を可溶物槽に回収する。なお、放射性崩壊による発熱で溶液温度が上昇するが、ヨウ素を液相から気相にするため必要なら加熱するため、硝酸溶液が蒸発するので、濃度4モル/Lの硝酸溶液は中性子照射後に約300Lに保つ必要がある。
表1A、表1Bを元に可溶物槽の可溶性核種にのみ中性子を前述の条件で照射した時、壊変で変化した核種重量の変化をExcelワークシートで計算した。可溶物槽の可溶性核種は241種(放射性核種が164種、安定核種が77種)、核燃料取出し180日後の重量は可溶性核種が1097.3kg(放射性核種が397.0kg、安定核種が700.3kg)である。これらの重量は全て核種単体の重量である。
【0098】
可溶物槽の放射性核種について、使用済み核燃料取出し180日後の重量と、未対策で6年間放置した場合と、本発明を適用(可溶性核種にのみ中性子を前述の条件で照射)した場合の6年後の重量〔単位g〕と放射能〔単位Bq〕について計算した結果を表2A-1に示す。未対策放置6年後の放射性固体核種164種で重量371.5kgは、対策により核種数16種で重量24.6kg(可溶性核種が14種で24.6kg、難溶性核種が2種で9.6μg、気体核種は無し)に減少する。これらの重量は全て核種単体の重量であり、酸化物、硝酸化物等の化合物の重量ではない。対策により放射能は可溶性核種が278.8PBq(Pはペタ)に減少し、難溶性核種が20.8PBqに増加する。
非記載の放射性の可溶性核種150種のうち105核種は半減期が10日以下と短く対策6年後には0gとなり、半減期が50日以上の長い可溶性核種45種のσpは1以上で、中性子照射で核種変換され重量は3.56E-73gとなる。これは、9回目の中性子照射で重量76.25kgの64Gd158(安定)が核種変換されて生じた核種64Gd161が、Gd161(β,3.7m)→65Tb161(β,6.9d)→66Dy161(安定)の壊変過程で生じた放射性核種65Tb161が6年後に3.56E-73g残存することによる。核燃料取り出し180日後に存在した397.0kgの可溶性の放射性核種重量は対策により、6年後に24.6kgに減少する。
【0099】
【表2A-1】
【0100】
可溶物槽の放射性核種で対策後に重量が1E-40g以上の核種について、未対策で6年間放置した場合と本発明を適用した場合の重量と放射能の変化について計算した結果を表2A-2に示す。表では可溶物槽で生じた放射性核種の崩壊形式と半減期、中性子捕獲確率σp(0.353meV)、核種重量〔単位g〕と放射能〔単位Bq〕を示す。なお、重量は核種単体の重量であり、酸化物、硝酸化物等の化合物の重量ではない。
【0101】
【表2A-2】
【0102】
可溶物槽で生じる放射性の可溶性核種で、放射能が0.1Bq以下となるのは48Cd116、55Cs134/135、58Ce141/142、60Nd144の6種で、対策により放射能が低下した核種は、38Sr90、39Y90、48Cd116、55Cs134/135、58Ce141/142、60Nd144、62Sm151、63Eu154の10種であり、放射能が増加した核種は39Y91、63Eu155、71Lu177m/177の4種である。
対策で放射能(重量)が減少した10核種は、38Sr90と48Cd116はσpが夫々0.09と0.54で親核種は無く、両者の半減期は長く中性子照射で一部は核種変換されずに残るが重量は照射回数と共に減少し、未対策放置6年後より減少する。残りの39Y90、55Cs134/135、58Ce141/142、60Nd144、62Sm151、63Eu154はσpが1より大きく8回の中性子照射で核種変換され重量は0gとなるが、これらの核種は9回目の中性子照射で核種変換されて生じた放射性親核種38Sr90(β)、55Cs134m(IT)/Cs135m(IT)、56Ba141(β)、57La142(β)、59Pr144m(IT)→Pr144(β)、60Nd151(β)→61Pm151(β)、63Eu154m(IT)のIT、β崩壊で生じ、それぞれ未対策放置6年後の重量より少ない。尚、39Y90は半減期の長い親核種38Sr90のβ崩壊が消滅するまで残存する。
対策で放射能(重量)が増加した4核種39Y91、63Eu155、71Lu177m/177は、σpが1より大きく8回目の中性子照射で核種変換され重量は0gとなるが、この4種は9回目の中性子照射で核種変換された放射性の親核種38Sr91(β)/39Y91m(IT)、62Sm155(β)、70Yb177m(IT)→Yb177(β)のIT、β崩壊で生じ、それぞれ未対策放置6年後の重量より多い。なお、71Lu177m/177は、70Yb172/173の中性子捕獲で生じた親核種71Yb177が71Yb177m(IT)→Yb177(β)→71Lu177m(β/IT)→Lu177(β)→72Hf177m(IT)→Hf177(安定)と壊変して新しく発生した核種である。
可溶物槽で生じる放射性の難溶性核種は50Sn117mと72Hf177mで両者の親核種はσpが0で、前者は48Cd117m(β)、後者は70Yb177m(IT)であり、壊変で生じた娘核種の重量は両者共に増加しているが、0.1Bq到達時間は3.4年と6年である。72Hf177mは、親核種の71Lu177m/177が可溶性核種として6年後に分離され、半減期が1.09秒と短いので約1.2分後には、その放射能は0.1Bq以下となりHf177(安定)に壊変する。尚、50Sn117m、72Hf177m共に難溶物槽では発生しない。
可溶物槽で生じる放射性の気体核種は35Br83と36Kr83m、53I132/133、54Xe133m/133の6種である。これらの核種は以下の3通りの壊変で生じ、34Se83m(β,70s)→35Br83(β,2.37h)→36Kr83m(IT,1.83h)→Kr83(安定)、52Te132(β,3.2d)→53I132(β,2.3h)→54Xe132(安定)、52Te133m(β/IT,55.4m)→Te133(β,12.5m)→53I133(β,20.8h)→54Xe133m(IT,2.19d)→Xe133(β,5.25d)→55Cs133(安定)であり、この6種の放射性気体は中性子照射回数と共に漸次減少し、照射9回目以降に生じる放射性気体核種の各々の放射能は0.1Bq以下で無視できる。
【0103】
可溶物槽の安定核種で180日後の重量と、未対策放置6年後と本発明を適用した場合の重量変化を計算した結果を表2B-1に示す。未対策放置6年後の安定核種138種;重量817.9kg(可溶性核種が77種;715.6kg、難溶性核種が44種;102.3kg、気体核種が17種;0g)は、対策により核種数は42種(可溶性核種が24種、難溶性核種が11種、気体核種が7種)に減少し、重量は1072.7kg(可溶性核種が432.5kg、難溶性核種が634.2kg、気体核種が6.1kg)に増加する。但し、これらの核種の重量は全て核種単体の重量である。なお、可溶物槽で発生する難溶性核種11種は難溶物槽では発生しないので未対策放置6年後の重量を記載し、気体の放置6年後の7核種の重量は気体槽に記載した。
非記載の可溶性で安定な53核種は全てσpが1以上で、中性子照射により核種の重量は7.7E-50gとなる。これは8回目の中性子照射で0gとなる68Er166の親核種66Dy166(β,3.4d)のσpが0.91で中性子照射で中性子を捕獲できずに残存した重量に、9回目の照射でDy165の核種変換で生じた重量が加算されて生じた7.7E-50gのDy166(β,3.4d)が67Ho166(β,26.8h)→68Er166(安定)と壊変し、6年後にEr166が7.7E-50g残存することによる。安定核種の中性子照射で核種変換されて放射性核種が生じた場合でも、その崩壊過程で生じた娘核種で半減期の長い放射性核種があっても、該核種のσpが1より大きく、次の中性子照射で安定な核種に核種変換される。
【0104】
【表2B-1】
【0105】
可溶物槽の安定核種で、対策後の重量が1E-40g以上の可溶性核種24種と、中性子照射で発生した難溶性核種11種と気体核種7種について、中性子捕獲確率σp、核燃料取出し180日後と6年後の未対策放置後と対策後の核種重量〔単位g〕を表2B-2に示す。重量は核種単体の値を示す。
可溶性の安定核種でσp(値を[]内に示す)が1以下の核種は3種で、30Zn70[0.93]と34Se82[0.4]は中性子照射で核種変換されずに一部が残存し、前者は照射2回目以降に親核種が発生せず、後者は親核種が無いため、両者は9回の中性子照射で一部が中性子捕獲で核種変換され、その重量は漸次減少し未対策放置6年後より減少する。38Sr88[0.05]は中性子照射で核種変換されずに残存する重量が多く、照射1、2回目で37Rb86/87の核種変換で生じた親核種37Rb88(β,17.8m)のβ崩壊で生じた重量が加わり、その後も中性子照射で核種変換されず残り、その重量は漸次減少するが未対策放置6年後より多くなる。
残りの可溶性安定核種21種は全てσpが1以上で8回目の中性子照射で核種変換され重量は0gとなり、9回目の照射でσpが0か1以下の放射性の親核種に核種変換され、その後の壊変で生じた安定な可溶性核種の重量は未対策放置6年後と比べ大小が生じる。対策で重量が減少するのは31Ga71、56Ba134~138、59Pr141、60Nd142/145、62Sm152/154、63Eu151、64Gd154の13種で、重量が増加するのは64Gd155/158、66Dy161/162、67Ho165、68Er167、70Yb172/173の8種で、70Yb173は中性子照射により、新たに増えた核種である。質量数が155以上の安定核種の重量は対策により顕著に多くなる。
可溶物槽で発生する難溶性核種には中性子を照射しないので親核種となる可溶性の放射性核種のσpの値が影響する。32Ge72の親核種は30Zn72(β)[0.095
]で、中性子照射3回目で核種変換された親核種が0gとなり未対策放置6年後の重量より減少する。40Zr90の親核種は38Sr90[0.09]と39Y90m[0]で
、毎回の中性子照射で核種変換されずに残存し38Sr90(β)→39Y90(β)→40Zr90(安定)の壊変で生じた重量に、2回まで中性子照射でY89[11.1]の核種変換で生じた39Y90m(IT/β)→Y90(β)→40Zr90の壊変で生じた重量が加わり、未対策放置6年後より増加する。他の安定な難溶性核種9種は放射性の親核種のσpが0であり、中性子照射2回目で親核種が0gとなる3種では、31Ga70を親核種とする32Ge70の重量は未対策放置6年後より多くなり、47Ag108/110を親核種とする46Pd108/110の重量は未対策放置6年後より少なくなる。残り6種は、中性子照射9回まで親核種が発生する32Ge73と40Zr91/92は未対策放置6年後の重量より減少し、50Sn117は未対策放置6年後の重量より増加し、72Hf177/178は中性子照射により新たに発生した核種である。
可溶物槽で発生する安定気体は7種で、2He4は中性子照射で新たに発生した核種で気体槽では発生せず可溶物槽のみで発生する。これは3Li6/7の中性子捕獲で核種変換された3Li8(β,0.84s)を親核種として4Be8(α,<1fs)のα崩壊で2He4(安定)が生じることによる。54Xe132の親核種52Te132(β)[0.93]は中性子照射により核種変換され重量は減少し、53I132(β,2.3h)→54Xe132(安定)のβ崩壊で生じる重量が加わるが未対策放置6年後の重量より減少する。残り5種35Br79/81、36Kr83/86、54Xe134は、親核種のσpは0で、夫々の親核種34Se79m(IT/β)、Se81m(IT/β
)、Se83m(β)、37Rb86m(IT)→Rb86(β/ec)、55Cs134m(IT)の壊変で生じ、35Br81を除く4核種は未対策放置6年後の重量より減少する。
【0106】
【表2B-2】
【0107】
6年以降に安定核種で重量が増加する核種があり、〔〕内に示した半減期の長い放射性親核種の壊変によるもので、可溶性核種では62Sm154と64Gd154〔63Eu154m/154〕、Gd155〔Eu155〕、難溶性核種では40Zr90〔38Sr90〕、40Zr91〔39Y91〕、50Sn117〔Sn117m〕、72Hf177〔71Lu177m/177〕が該当する。これらの親核種の可溶性の放射性核種はガラス固化するが、難溶性で安定核種の親核種となる放射性の可溶性核種ストロンチウム38Sr90とルテチウム71Lu177は再利用放射性核種として回収する。(後述)
【0108】
(難溶物槽中の核種)
表1A、1Bを難溶物槽中の核種に適用する場合には、可溶性核種と気体核種のt日後の重量(F列)は0gであり、中性子照射後に難溶性核種の放射性崩壊で発生した可溶性核種と気体核種には中性子を照射しないので、これらの核種の該当する行のG、M、・
・、AD、・・・のセルには⇒を表示し、中性子照射後の累積重量は照射直前の合計重量となる。貯蔵時間tはt’、t’、・・・とする。同一質量数で可溶性核種と気体核種だけの崩壊系列の場合は初期重量が0gなので、この質量数の核種は表から除外する(
34Se78~39Y90と54Xe127以降)。計算対象の核種は4Be9から54Xe128までで、難溶性核種51Sb128のβ崩壊で生じた可溶性核種52Te128が、2β崩壊で安定な気体核種54Xe128を生じることによる。難溶物槽で発生した気体核種及び可溶性核種の重量は難溶物槽の表中に示す。
【0109】
難溶物槽の難溶性核種にのみNj回の中性子を照射し、中性子照射後、難溶物槽に規定濃度の硝酸溶液(本実施例では4モル/L)を加えt時間貯蔵後、発生した可溶性核種を濾過装置などで可溶物槽Bに回収し、次の中性子照射後に可溶物槽Bの可溶性核種と硝酸溶液を難溶物槽に還流させるのをNj回繰り返す。
本実施例では照射回数Njを難溶物槽のガラス固化体重量を最小にする13回とし、貯蔵期間tは、t~t12は30日、t13は190日(核燃料取出しから通算で2年に相当)とし、t’は4年とする。なお、発生した可溶性核種を溶かすのに必要な濃度4モル/Lの硝酸溶液は中性子照射毎に5L、30L、70L、75L、・・・と増加し、最大で約100Lである。
表1A、表1Bを元に難溶物槽の難溶性核種にのみ中性子を前述の条件で照射した時、壊変で変化した核種重量の変化をExcelワークシートで計算した。難溶物槽の難溶性固体は133種(放射性核種が86種、安定核種が47種)、核燃料取出し180日後の重量は難溶性核種が763.4kg(放射性核種が235.9kg、安定核種が527.4kg)である。これらの重量は全て核種単体の重量である。
【0110】
難溶物槽の難溶性核種について、使用済み核燃料取出し180日後の重量と、未対策で6年間放置した場合と、本発明を適用(可溶性核種にのみ中性子を前述の条件で照射)した場合の6年後の重量〔単位g〕と放射能〔単位Bq〕の計算結果を表3A-1に示す。
未対策放置6年後の難溶性の放射性固体核種数90種で重量234.0kg(可溶物槽で発生しない可溶性で放射性核種4種の未対策6年後の重量6.16kgを含む)は、対策により核種数12種で重量31.3kg(可溶性核種が4種で58.3g、難溶性核種が8種で31.2kg、気体核種は無し)に減少する。これらの重量は全て核種単体の重量であり、酸化物、硝酸化物等の化合物の重量ではない。対策により放射能は可用性核種が2.36TBq(Tはテラ)、難溶性核種が0.15TBqに減少する。
非記載の放射性難溶性核種は78種で、そのうち半減期が50日以上の長い難溶性核種15種は全てσpが1以上であり、40Zr93/95、41Nb92、42Mo100、43Tc98、44Ru106、45Rh102、50Sn119m/121m/123の10種は親核種が無く、41Nb93m/95は親核種が難溶性の放射性核種40Zr93/Zr95でσpが1より大きいので、これら12核種は1回目の中性子照射で核種変換され0gとなる。親核種のσpが0であるが半減期の長い娘核種41Nb94、43Tc99、49In115の3種は、2回目の中性子照射により核種変換で親核種は発生せず、娘核種の重量は0gとなる。
半減期の短い45Rh106と50Sn121の2種は、これらの親核種が半減期の長い44Ru106(β,371.8d)と50Sn121m(IT/β,43.9y)であるが、σpは夫々1.12と8.52で1回目の中性子照射で親核種は核種変換され0gとなり、その娘核種の重量は0gとなる。
残りの61種は半減期が短く6年後には重量は0gとなり、核燃料取り出し180日後に存在した168.8kgの難溶性の放射性核種は対策により0gとなる。
難溶物槽で放射性の難溶物を親核種として発生するする気体は安定な53I127だけで、放射性気体の発生は無い。同一質量数Zの崩壊系列で難溶性核種の壊変で生じる娘核種は可溶性核種だけで気体核種は直接発生しない。親核種が難溶性核種で気体核種が発生する崩壊系列は2種類あり、32Ge→33As→34Se→35Br→36Krと、49In→50Sn→51Sb→52Te→53I→54Xeで、放射性核種には核異性体を含む場合があり、質量数は前者が79~88で、後者は127~134である。前者はGe79~88の半減期が30秒以下で核燃料取り出し180日後には存在せず、気体の臭素、クリプトンは発生しない。後者では中性子照射により51Sn127mと52Sb128が発生するが127系列では壊変が53I127(安定)で終わり、128系列では52Te128(2β,7.7E+24y)→54Xe128(安定)で壊変が終わり放射性の気体は発生しない。また質量数が129以上は難溶性核種の発生が無く、この崩壊系列で気体核種が発生するのは質量数が127と128の場合しかない。
【0111】
【表3A-1】
【0112】
難溶物槽の放射性核種で対策後に重量が1E-40g以上の核種について、未対策で6年間放置した場合と本発明を適用した場合の重量と放射能の変化について計算した結果を表3A-2に示す。表では難溶物槽で生じた放射性核種の崩壊形式と半減期、中性子捕獲確率σp(0.353meV)、核種重量〔単位g〕と放射能〔単位Bq〕を示す。なお、重量は核種単体の重量であり、酸化物、硝酸化物等の化合物の重量ではない。
【0113】
【表3A-2】
【0114】
難溶物槽で生じる放射性の難溶性核種で、対策6年後に放射能が0.1Bq以下となるのは40Zr96と50Sn126の2種で、放射能が0.1Bq以上となるのは4Be10、46Pd107、51Sb124/125/126m/126の6種である。対策で放射能が低下した核種は40Zr96、46Pd107、50Sn126、51Sb124/125/126m/126の7種で、放射能が増加した核種は4Be10である。
対策で放射能(重量)が減少した7核種では、40Zr96と50Sn126はσpが0.183と0.62で親核種は無く、両者の半減期は長く中性子照射で一部は核種変換されずに残り重量は照射回数と共に減少する。46Pd107、51Sb124とSb125はσpが1より大きく13回の中性子照射で核種変換され重量は0gとなり、13回目の中性子照射で核種変換された放射性親核種44Ru107(β)、51Sb124m(IT/β)と50Sn125m(β)の壊変で生じるが、夫々放置6年後の重量より少ない。また、51Sb126m/126は親核種51Sn126(β)のσpが0.62で半減期が長いので、13回の中性子照射で核種変換されずに残存し、親核種のβ崩壊が消滅するまで残存するが、それぞれ放置6年後の重量より少ない。
対策で重量が増加した核種は1種で、σpが極めて小さい4Be10の親核種は無く、13回の中性子照射でσpが0.338の安定な4Be9が核種変換されて生じた放射性の核種4Be10(β)の重量は放置6年後の重量より微増する。
難溶物槽で6年後に残存する放射性の可溶性核種はテルルだけで、52Te125mとTe128およびTe127m/127の4種で、前2者の親核種はσpが0の50Sn125m(β)と51Sb128(β)であり、13回の中性子照射で核種変換された親核種のβ崩壊で生じ、重量は照射回数と共に漸次減少する。6年後には難溶物槽に親核種と分離されるので52Te125mの0.1Bq到達時間は3.1年で、安定なTe125に壊変する。また、52Te128は長寿命の核種で対策により未対策放置6年後の重量より減少する。後2者の親核種はσpが0の50Sn127mで、13回の中性子照射でσpが0.62で長寿命の50Sn126の核種変換で生じた50Sn127m(β,4.13m)が51Sb127(β,3.85d)→52Te127m(IT/β,106.1d)→Te127(β,9.35h)→53I127(安定)と壊変し約19年後に安定な気体I127に変化する。なお、テルルは可溶物槽では発生しない。
難溶物槽で生じる放射性気体核種は無い。
【0115】
難溶物槽の安定核種で180日後の重量と、未対策で6年間放置した場合と本発明を適用した場合の重量変化を計算した結果を表3B-1に示す。未対策6年放置後の安定固体核種141種;重量450.9kg(可溶性核種が77種;7.57kg、難溶性核種が47種;443.4kg、気体核種が17種;0g)は、対策により核種数は24種(可溶性核種が12種、難溶性核種が11種、気体核種が1種)に減少し、重量は732.1kg(可溶性核種が718.1kg、難溶性核種が12.6kg、気体核種が1.41kg)に増加する。但し、これらの核種の重量は全て核種単体の重量である。
非記載の難溶性安定核種36核種は全てσpが1以上で、中性子照射により核種変換されて重量は0gとなり、核種変換された親核種となる放射性核種が長寿命でもσpが1より大きい難溶性核種となり、中性子照射により核種変換され0gとなる。例を挙げると、安定な49In113は1回目の中性子照射で核種変換され、49In115m(IT/β,4.5h)→In115(β,4.4E+14y)→50Sn115(安定)と壊変し、σpが1より大きいIn115は2回目の中性子照射でIn116mに核種変換され0gとなり、49In116m(β,54.3m)→50Sn116(安定)と壊変しIn113は0gとなり、安定な50Sn116の重量が増えるが、該核種もσpが0.9で中性子照射の照射回数と共に重量は減少する。また、安定な46Pd108は中性子照射で核種変換され46Pd108+1n→Pd109m(IT)→Pd109(β,13.6h)→47Ag109m(IT,39.8s)→Ag109(安定)と壊変し、Pd108は0gとなり安定な可溶性核種の47Ag109が増加する。
【0116】
【表3B-1】
【0117】
対策後の重量が1E-40g以上の安定な難溶性核種11種と、中性子照射で発生した安定な可溶性核種12種と気体核種1種について中性子捕獲確率σp(0.353meV)、核燃料取出し180日後と、未対策放置6年後と対策後の核種重量〔単位g〕を表3B-2に示す。
難溶性の安定核種は11種全てが対策6年後の重量は未対策放置6年後の重量より減少している。σpが1以下の核種は7種(σpの値を[]内に示す。)で、そのうち4種、4Be9[0.34]、40Zr90[0.09]、Zr94[0.42]、50Sn124[0.94]は親核種が無いので中性子照射回数と共に重量は漸次減少する。他の3種50Sn114[0.92]/Sn116[0.91]/Sn122[0.98]は、中性子照射で核種変換されずに一部が残存し、中性子照射2回目以降、それぞれの親核種49In114(β/ε)、49In116m(β)、51Sb122m(IT)→Sb122(β/ε)は発生しないので娘核種の重量は0gとなり、13回目の中性子照射で一部が中性子捕獲で核種変換され、残された娘核種の重量は減少し未対策放置6年後より少ない。残り4種42Mo97/98と44Ru101および51Sb123はσpが1以上で、中性子照射13回で核種変換され0gとなるが、親核種40Zr97(β)/98(β)と42Mo101(β)および50Sn123m(β)のβ崩壊で発生する娘核種の重量は未対策放置6年後より少なくなる。
難溶物槽で発生する12種の可溶性核種には中性子を照射しない。このうち4種、31Ga71、33As75、34Se77、48Cd114は、それぞれの親核種32Ge71m(IT)→Ge71(ec)、32Ge75m(IT)、32Ge77m(β/IT)、49In114m(IT/ε)のσpは0で、中性子照射による親核種の発生が3回までで、発生する娘核種の重量は未対策放置6年後より少ない。52Te125は13回の中性子照射で毎回核種変換で生じた親核種50Sn125m(β)の崩壊で発生するが照射回数と共に重量は漸次減少し、未対策放置6年後より少ない。残りの7種、5B10,47Ag107/109、48Cd111、52Te122/124/126は、それぞれの親核種4Be10(β)、44Ru107(β)、46Pd109m(IT)、46Pd111m(IT/β)、51Sb122m(IT)/124m(IT/β)/126m(β/IT)のσpが0で、13回の中性子照射で発生した親核種のβ、IT崩壊で生じ、これらの娘核種の重量は未対策放置6年後の重量より多くなる。
難溶物槽で発生する安定気体核種は53I127の1.41kgだけで、中性子照射でで核種変換されたSn127m(β)を親核種として51Sb127(β,3.85d)→52Te127m(IT/β,106.1d)→52Te127(β,9.35h)→53I127(安定)と壊変することによる。放射線量モニターで安全を確認後、放出できる。尚、対策6年以降に難溶物槽に付属の可溶槽Bに残存するガラス固化体にする放射性のテルルが52Te127m(IT/β,106.1d)→Te127(β,9.35h)→53I127(安定)と壊変しI127が20℃で0.63mL(3.35mg)発生するので、テルルのガラス固化の際、銀を加えヨウ化銀として固化する。
対策6年以後に安定核種で重量が増加する核種があるが〔〕内に示した半減期の長い放射性親核種の崩壊によるもので、難溶性核種では無く、可溶性核種では5B10〔4Be10〕、47Ag107〔46Pd107〕、52Te124〔51Sb124m〕、52Te125〔51Sb125〕が該当する。これらの親核種の難溶性の放射性核種はガラス固化する。但し、熱中性子に対してもσpが大きい46Pd107の7.758kgは、6年後の核種分離で単独で存在するので、熱中性子照射により核種変換し、46Pd107+2n→46Pd109m(IT,3.1s)→Pd109(β,13.6h)→47Ag109m(IT,39.8s)→Ag109(安定)の壊変で41.2日以降に安定なAg109に変換して回収できる。
【0118】
【表3B-2】
【0119】
(気体槽中の核種)
表1A、表1Bを気体槽中の核種に適用する場合には、可溶性核種と難溶性核種のt日後の重量(F列)は0gであり、気体核種の放射性崩壊で発生した固体核種と気体核種には中性子を照射しないので、これらの核種に該当する行のG列とM列のセルには⇒を表示し、中性子照射後の累積重量は照射直前の重量となる。気体槽では可溶物槽で発生した気体核種を可溶物槽の中性子照射直前に回収する。2回目直前に回収したヨウ素のみに1回だけ中性子を照射するのでσpが1以上のヨウ素核種に該当するM列セルには+nが表示され、核種変換で質量数が増えたσpが無記載のヨウ素核種に該当するM列セルには核種変換前の質量数の核種と捕獲中性子数が< >内に表示される。尚、ヨウ素には熱中性子を照射するので気体核種のσpは中性子エネルギー0.0253eVの値を用いる。
σpが1以上のヨウ素53I127(安定)、I128(β/IT,25m)、I129(β,1.57E+7y)は、中性子照射で夫々中性子3~1個を捕獲してI130m(IT/β,8.84m)となり、I130(β,12.4h)とI131(β,8.03d)は夫々中性子2、1個を捕獲してI132(β,2.30h)に核種変換される。同一質量数で可溶性核種と難溶性核種だけの場合は、初期重量が0gなので、この質量数の核種は表から除外する(29Cu66~34Se78、37Rb87~52Te126と54Xe137以降)。計算対象の核種は1H3から54Xe137までである。
【0120】
気体槽では使用済み核燃料取出しから一定期間(t時間)放置後発生した気体核種は可溶物槽で1回目の冷中性子照射t時間経過後、2回目の冷中性子照射直前に可溶物槽から回収した気体核種を含めて、気体槽を加熱し臭素、ヨウ素を昇華・気化させ、冷却装置で気体槽上部のヨウ素受け皿を臭素の沸点以上の温度に冷却しヨウ素のみを液化して取出し、ヨウ化物槽に移送しヨウ素だけに熱中性子を照射し核種変換させる。なお、本実施例では、tは180日である。
熱中性子照射は可溶物槽2回目と同期させてヨウ素のみに熱中性子を照射するので、本実施例ではtは30日となる。可溶物槽での中性子照射と同期させて可溶物槽で発生した気体核種を気体槽に回収する。
表1A、表1Bを元に気体槽のヨウ素のみに中性子を前述の条件で照射した時、壊変で変化した核種重量の変化をExcelワークシートで計算した。可溶物槽と難溶物槽で発生した気体核種の重量は、気体槽には含めていない。
気体槽には47核種(放射性核種が30種、安定核種が17種)、核燃料取出し180日後の重量は385.4kg(放射性核種が158.1kg、安定核種が227.3kg)である。これらの重量は全て気体核種のみの重量である。
【0121】
気体槽の放射性核種について、使用済み核燃料取出し180日後の重量と、未対策で6年間放置した場合と、本発明を適用(ヨウ素のみ中性子を前述の条件で照射)した場合の6年後の重量〔単位g〕と放射能〔単位Bq〕の変化を計算した結果を表4A-1に示す。未対策放置6年後の放射性気体核種30種で重量157.5kgは、対策により核種数6種で重量146.0kgに減少する。これらの重量は全て核種単体の重量である。対策により放射能は変わらず22.1PBq(Pはペタ)である。
非記載の放射性気体核種は24種、未対策放置6年後に114.8kgあるが、対策により核種の重量は6.56×10-55gとなる。これは、54Xe131mの0.695mgがXe131m(IT,11.8d)→Xe131(安定)と壊変し、6年後に54Xe131mが6.56E-55g残存することによる。
放射性ヨウ素8種では、使用済み核燃料取り出し180日後、重量が1E-40g以上存在する核種は53I129/131/132の3種で、53I129(β,1570万年)[σp24.2]の11.48kgは、取り出し210日後、1回目の熱中性子照射により核種変換され重量は0gとなり、核種変換で生じた53I130m(IT/β,8.84m)は37.4日後にI130(β,12.4h)→54Xe130(安定)と壊変し、安定な54Xe130の11.48kgに核種変換される。I131(β,8.03d)[σp63.2]の93μgは中性子照射で核種変換され重量は0gとなり、核種変換で生じた53I132(β,2.3h)は、その4.3日後に54Xe132(安定)となる。53I132[σp0]の0.1fgは約1日後に54Xe132(安定)となる。これ以外の5種、53I128/130/130m/133/134は半減期が短く180日以内に消滅する。
残りの上記以外の放射性気体16種は半減期が10日以下の短い核種で、中性子を照射しないので放射線崩壊により安定な核種に壊変され、全16核種の重量は0gとなる。
ヨウ素を除く気体核種に中性子を照射しない理由は、多量に存在する54Xe136(2β,2.2E+21y)[σp0.1]に熱中性子を照射すると10%は核種変換され、54Xe137(β,3.8m)→55Cs137(β,30.1y)→56Ba137m(IT,2.6m)→56Ba137(安定)の壊変が生じ、この壊変過程で長寿命の放射性核種55Cs137が多量に発生することによる。
可溶物槽から回収した放射性気体核種は35Br83、36Kr83m、53I132/133、54Xe133m/133の6種で、これらの核種は中性子照射により核種変換された放射性の可溶性核種の次の3通りの壊変で生じ、34Se83m(β)→35Br83(β)→36Kr83m(IT)→36Kr83(安定)、52Te132(β)→53I132(β)→54Xe132(安定)、52Te133m(IT/β)→52Te133(β)→53I133(β)→54Xe133m(IT)→54Xe133(β)→55Cs133(安定)であり、発生する放射性気体核種の重量は中性子照射回数と共に漸次減少し、対策6年以降には1E-40g以下となる。
難溶物槽では、放射性気体核種は発生しない。
難溶物槽から回収された放射性気体核種は無いが、原子力発電の運転状況、照射時間などで使用済み核燃料のFPの発生状況が変化した場合あるいはMOX燃料等を使用した場合に放射性気体が発生するときは気体槽に回収し実施例で示した処置をとる。
【0122】
【表4A-1】
【0123】
気体槽の放射性核種で対策後に重量が1E-40g以上の核種について、未対策で6年間放置した場合と本発明を適用した場合の重量と放射能の変化について計算した結果を表4A-2に示す。表では難溶物槽で生じた放射性核種の崩壊形式と半減期、中性子捕獲確率σp(0.0253eV)、核種重量〔単位g〕と放射能〔単位Bq〕を示す。なお、重量は核種単体の重量である。
【0124】
【表4A-2】
【0125】
気体槽で生じる放射性の気体6核種は対策6年後の重量と放射能は未対策放置6年後とほぼ同等である。対策6年後に放射能が0.1Bq以下の核種は54Xe127/136の2種で、0.1Bq以上の核種は1H3、6C14、36Kr81/85の4種である。なお、6C14は酸化物の気体として存在する。σpの小さい54Xe136(2β,2.165E+21y)は対策の効果はないが、その放射能は6.5mBqと小さく、天然存在比8.86%の核種である。
気体槽で発生する放射性固体核種は無い。
【0126】
気体槽の安定核種について、180日後の重量と、未対策で6年間放置した場合と本発明を適用した場合の重量変化を計算した結果を表4B-1に示す。未対策放置6年後の安定気体核種の17種;重量227.3kgは、対策により核種数が18種;重量239.4kg(可溶性核種が2種;623g、難溶性核種は無し、気体核種が16種;238.8kg)に変化している。安定な気体核種の重量に関しては若干増加している。但し、これらの核種の重量は全て核種単体の重量である。
非記載の安定気体核種1種は2He4で、気体槽では発生せず、可溶物槽で中性子照射1回目のみ発生するので、ここには記載しない。
【0127】
【表4B-1】
【0128】
対策後の重量が1E-40g以上の安定気体核種16種と、中性子照射で発生した可溶性安定核種2種について、中性子捕獲確率σp(気体は0.0253eV、固体は0.353meV)、核燃料取出し180日後と、未対策放置6年後と対策後の核種重量〔単位g〕を表4B-2に示す。
【0129】
【表4B-2】
【0130】
安定気体核種でヨウ素にのみ中性子を照射した対策により未対策放置6年後の重量より増加したのは54Xe130で、σpの大きい53I127(安定)2.6kgと53129(β,1.57E+7y)11.5kgが核種変換されて生じた53I130m(IT/β,8.84m)→I130(β,12.36h)→54Xe130(安定)の壊変で14.1kg増加したことによる。2He3は放射性核種1H3の崩壊で微増する。
安定な気体核種7N14、35Br81、36Kr80/82/83/84/86、54Xe128/131/132/134の11種は、熱中性子を照射しないので、使用済み各燃料取出しから6年後まで、その合計重量は224.3kgで変化しない。
残り3種35Br79、53I127、54Xe129は、対策6年後の重量は未対策放置6年後の重量より減少している。
6年以後に安定核種で重量が増加する気体核種があるが〔〕内に示した半減期の長い放射性気体親核種の崩壊によるもので、2He3〔1H3〕、7N14〔6C14〕、35Br81〔36Kr81〕が該当する。
気体槽で生じる安定な可溶性核種の重量は、37Rb85の623.3gと55Cs133の38.6ngで、放射性気体のβ崩壊で発生し、親核種は前者が半減期の長い36Kr85(β,10.74y)で、後者は54Xe133(β,5.25d)であり、これらは気体槽に付属の固体槽に回収され、前者は6年以後も重量が増加する。また、気体槽では安定な難溶性核種は発生しない。
可溶物槽から移送された安定な気体核種7種は、2He4、35Br79/81、36Kr83/86、54Xe132/134で、重量は6.06kgである。対策6年後以降重量は増加しない。
難溶物槽に付属の可溶物槽Bに残存する52Te127m/127の壊変で発生した安定な気体53I127は6年後も増加するが、これは難溶物槽で処置した通りである。
【0131】
使用済み核燃料取出し180日後、可溶物槽の可溶性核種に30日間隔で冷中性子を9回繰り返し照射し、発生した難溶性核種と気体核種には冷中性子を照射しない。同様に難溶物槽の難溶性核種に30日間隔で冷中性子照射を13回繰り返し、発生した可溶性核種と気体核種には冷中性子を照射しない、気体槽では燃料取り出し210日後にヨウ素だけに熱中性子を1回だけ照射する対策を講じた場合、各槽で使用済み核燃料取り出し6年後に残存する放射性核種で0.1Bq到達時間(〔〕内は未対策→対策後を示す)が10年以上の核種と、放射能が0.1Bq以下の長寿命の核種について纏める。
可溶物槽の可溶性核種は、38Sr90〔1748年→1736年〕、39Y90〔1748年→1736年〕/91〔10年→12年〕、62Sm151〔4766年→3753年〕、63Eu154〔486年→396年〕/155〔202年→274年〕、71Lu177m〔※→31年〕/177〔※→20年〕の8種と、長寿命の48Cd116(1.1垓年→49μBq)、58Ce142(52.3京年→5.0pBq)、60Nd144(3.36京年→21.3fBq)の3種であり、難溶性2核種の50Sn117mと72Hf177mの0.1Bq到達時間は3.4年と6年である。
難溶物槽の難溶性核種は、4Be10〔3950万年→3980万年〕、46Pd107〔2.7億年→2.6億年〕、50Sn126〔979万年→561万年〕、51Sb125〔158年→25年〕/126m〔979万年→561万年〕/126〔979万年→561万年〕の6種と、長寿命の40Zr96〔3567京年→82.9mBq〕であり、可溶性核種は52Te127m〔17年→19年〕/127〔17年→19年〕の2種と長寿命の52Te128(83nBq→0.78nBq)である。
気体槽の気体核種は、1H3〔659年→658年〕、6C14〔18万年→同年〕、36Kr81〔471万年→同年〕/85〔624年→同年〕の4種と、長寿命の54Xe136(6.5mBq→同Bq)であり、放射性の可溶性および難溶性の核種は発生しない。これらの可溶性核種8種と難溶性核種6種、気体核種5種には、本発明の効果は限定的であるが、長寿命の可溶性核種3種と難溶性核種1種は未対策放置6年後の重量より激減しており対策の効果は顕著である。
【0132】
本発明では、発生した高レベル放射性廃棄物を硝酸に可溶な可溶物と難溶・不溶な難溶物とに分離貯蔵し、前者では壊変で発生した安定な難溶物には中性子を照射せず、後者では壊変で発生した安定な可溶物には中性子を照射しないので、安定な核種の回収量が槽分離をしない場合より大幅に増加する。また、高レベル放射性廃棄物のガラス固化体にする重量を最小にするため、中性子照射回数とその後の貯蔵期間をパラメータとして核種変換された親核種の放射線崩壊で発生する娘核種を低減し、安定な核種重量を増加させるため、中性子照射間隔を3日~1年と変えて計算した結果、30日に設定している。中性子照射回数は、可溶物槽では中性子照射回数を増やすと放射性核種55Cs134/135の放射能は照射8回で0.16mBq/23.3μBq、照射9回では71.4nBq/2.73nBqに減少するが、放射性核種71Lu177m/177の放射能は照射8回で18.3PBq/4.08PBq、照射9回で20.0PBq/4.46PBqと増加するが、後者は再利用可能な核種なので実施例では9回に設定した。
難溶物槽ではσpが0.18の40Zr96(2β,3.9E+19y)が未対策6年後の重量は53.4kgあり、12回の中性子照射で28.5kg、放射能も0.1Bq強に低減するが、13回の照射では該核種の重量は23.5kg、放射能は83mBqに低減でき、本実施例では照射回数を13回とした。
これまでは対策により各槽で6年後に核種重量が1E-40g以上残存する核種について記述したが、未対策放置6年後に存在する核種に対して、本発明の実施による効果を評価するため、0.1Bq到達時間が10年以上の放射性核種および放射能が0.1Bq以下であるが長寿命の放射性核種について槽毎に表5-1、5-2に纏めた。
表では、放射性核種、崩壊形式、半減期、中性子捕獲確率、未対策放置6年後と対策により各槽毎に発生した6年後の重量〔単位g〕、未対策放置6年後と対策6年後の放射能〔単位Bq〕と0.1Bq到達時間を示す。
【0133】
〔表5.1〕~〔表5.2〕
【0134】
未対策で0.1Bq到達時間が10年以上で半減期が50日以上の長い46核種と、半減期は短いが親核種の半減期が長い娘核種10種は、中性子照射による対策で、6年後には53Te125m〔9.1年〕を除く53核種の放射能は0Bqとなる。
半減期が長い放射性の可溶性核種は34Se79、37Rb87、47Ag108m/110m、48Cd109/113m/113、52Te123m/125、55Cs134/135/137、56Ba133、57La138、58Ce139/144、60Nd150、61Pm146/147、62Sm146/147/148、63Eu150/152、64Gd152/153、65Tb160、67Ho166m、69Tm170/171の30種で、半減期が短く親核種の半減期が長い娘核種は47Ag108/109m/110、56Ba137m、59Pr144m/144の6種であり、0.1Bq以下ではあるが長寿命の放射性核種3種Te123/128/130は使用済み核燃料取り出し180日後にはほぼ0gとなり放射能は無視できる。
半減期が長い放射性の難溶性核種は40Zr93/95、41Nb92/93m/94/95、42Mo100、43Tc98/99、44Ru106、45Rh102、49In115、50Sn119m/121m/123/126の16種で、半減期が短く親核種の半減期が長い娘核種は45Rh106、50Sn121、51Sb126m/126の4種である。未対策で半減期が長くσpが0.62の50Sn126と、これを親核種とする半減期の短い51Sb126m/126の3種は親核種50Sn126の未対策放置6年後の重量1.41kgは対策により4.87mgに減少し、0.1Bq到達時間は979万年から低減するが561万年と長い。
【0135】
使用済み核燃料取出し180日後、可溶物槽は30日間隔で冷中性子照射を9回、難溶物槽は13回繰り返した後、6年後までに放射性核種の壊変で生じた固体核種は可溶物槽(難溶物槽Aの難溶性核種と気体槽に付属の固体槽で発生した可溶性核種を含む)、難溶物槽(可溶物槽Bの可溶性核種を含む)に回収され、前者の回収した核種および硝酸溶液は塩化物槽1に、後者の回収した核種および硝酸溶液は塩化物槽2に移送し、別々に加熱して硝酸を追い出し、核種を酸化物とする。
これらの発生した酸化物核種を沸点の違いを利用して元素を分離するが、これらの酸化物の沸点は極めて高温であり、省エネルギーの観点から沸点の低い塩化物に変換する。本実施例では6年後に塩化物槽1及び2に移送された酸化物は可溶物槽と気体槽に付属の固体槽及び難溶物槽で生じる核種重量(いずれも酸化物重量ではなく核種単体の重量)で、夫々1091.3kgと623g及び762.0kgであり、これらを塩化物にするため、塩化物槽1では塩酸で塩化物化されないゲルマニウム、ジルコニウム、パラジウム、ハフニウムの核種重量624.5kgを除く467.4kgに、塩化物槽2では塩酸で塩化物化されないホウ素、ジルコニウム、ルテニウム、パラジウムの核種重量38.6kgを除く723.4kgに、濃度6モル/Lの塩酸溶液を夫々50L、40Lを加えて塩化物とし、塩酸では塩化物化されない核種で、塩化物槽1の核種597.1kgと塩化物槽2の核種46.81kgに対し塩素ガス(1気圧、20℃換算)を夫々180m、15m注入し塩化物に変換する。塩素ガス使用の場合は適量の炭素を投入する。
対策により、重量が1E-40g以上の固体核種は可溶物槽で48種、難溶物槽で35種、気体槽で2種存在する。これらの核種を槽毎に塩化物の沸点の昇順に、核種、崩壊形式、半減期、中性子捕獲確率σp、塩化物の沸点〔単位℃〕、6年後の未対策放置と対策後の槽別の重量〔単位g〕、未対策と対策後の放射能〔単位Bq〕、未対策と対策後の0.1Bq到達時間を表6.1~6.3に纏めた。尚、核種重量は塩化物ではなく核種単体としての重量である。
【0136】
〔表6.1〕~〔表6.3〕
【0137】
(塩化物槽1の固体核種)
塩化物槽1に存在する可溶物槽と気体槽で発生した塩化物(実施例では60核種)を気化槽に投入し、塩化物沸点の昇順に加熱し、沸点毎に精留塔で気化させ凝縮器で塩化物気体として分留し、安定核種あるいは安定同位体は冷却装置を介して核種回収槽に、放射性核種あるいは放射性同位体および放射性核種と安定核種の混在する同位体はガラス固化核種回収槽に回収する。さらに資源として再利用できる放射性核種と安定核種の2種類だけの同位体は、ウラン燃料製造時に使用される質量差を利用したガス遠心分離装置で同位体分離を行い、安定で質量数の小さい軽核種と、放射性で質量数の大きい重核種に分離し、夫々軽核種回収槽、重核種回収槽に回収する。沸点昇順で回収工程を記述すると、冗長になるので回収方法毎に記述する。
【0138】
(塩化物槽1の安定核種の回収、気体槽に付属の固体槽を含む)
塩化物槽1を87℃に加熱して塩化ゲルマニウム(安定同位体32Ge70/72;76.7mg)を、196℃に加熱して塩化セレン(34Se82;22.7g)を、331℃に加熱して塩化ジルコニウム(安定同位体40Zr90~92;62.8kg)を、432℃に加熱して塩化ハフニウム(放射性核種72Hf177mは可溶性の親核種から分離され短時間で安定なHf177に壊変、安定同位体Hf177~178;561.7kg)を、623℃に加熱して塩化スズ(放射性核種50Sn117m;3E-37gは無視でき、安定核種Sn117;9.75kg)を、1388℃に加熱して塩化ルビジウム(気体槽の37Rb85;623g)、1453℃に加熱して塩化イッテルビウム(安定同位体70Yb172/173;172.4kg)を、1500℃に加熱して塩化ホルミウム(67Ho165;14.5kg)と塩化エルビウム(68Er167;108.3kg)を、1530℃に加熱して塩化ジスプロシウム(66Dy161/162;77.1kg)を、1580℃に加熱して塩化ガドリニウム(64Gd154/155/158;27.5kg)を気化・分留させ、冷却装置を介して核種回収槽に回収する。回収槽を個別にすればこれらの安定な核種の塩化物が回収できる。
塩化物槽1で、塩化物の沸点が201℃のガリウム、675℃のパラジウム、732℃の亜鉛、1560℃のバリウム、1600℃以上のプロメチウムの重量は、いずれも1μg以下で回収は困難である。尚、前述の沸点が同一の1500℃の塩化エルビウムと塩化ホルミウムは、その融点の違いで分離できる。
【0139】
(塩化物槽1のガラス固化核種の回収)
塩化物槽1を632℃に加熱して塩化ユウロピウム(放射性同位体63Eu154/155;552gと安定核種Eu151;11.9mgが混在)を、682℃に加熱して塩化サマリウム(放射性核種62Sm151;0.3gと安定同位体Sm152/154;65μgが混在)を、960℃に加熱して塩化カドミウム(放射性核種46Cd116;14.2g)を、1480℃に加熱して塩化ルテチウム(放射性同位体71Lu177m/177;119g)を、1507℃に加熱して塩化イットリウム(放射性同位体39Y90/91;6.1g)を気化・分留させ、冷却装置を介してガラス固化核種回収槽に回収する。尚、放射性核種である沸点が1600℃以上の塩化ネオジム;0.53pg、塩化セリウム;2.7ngは微量で放射能は0.2pBq以下で無視できる。
放射性核種Cd116の放射能は49.2μBqで、地球存在確率7.5%であり、ガラス固化の必要性は無いと考えられる。また塩化ルテチウムは放射性医薬品に利用できるので回収する。
【0140】
(塩化物槽1の安定核種と放射性核種を分別して資源回収できる核種)
塩化物槽1を1250℃に加熱して塩化ストロンチウム(放射性核種38Sr90;23.9kgと安定核種Sr88;32.7kgが混在)を気化・分留させた後、冷却装置を介して分留し、質量差を利用したガス遠心分離装置で核種分離を行い、質量数の小さい安定核種と質量数の大きい放射性核種に分離し、それぞれ安定核種は軽核種回収槽に、放射性核種は重核種回収槽に回収できる。
【0141】
(塩化物槽2に存在する固体核種)
次に塩化物槽2に存在する塩化物(実施例では36核種)を気化槽に投入し、前記と同様に、塩化物の沸点の昇順に加熱し、沸点毎に精留塔で気化した塩化物を凝縮器で塩化物気体として取出し、安定核種あるいは安定同位体であれば、冷却装置を介して核種回収槽に回収し、放射性核種あるいは放射性同位体および放射性核種と安定核種の混在する同位体はガラス固化核種回収槽に回収する。可溶物槽で発生した核種と難溶物槽で発生した核種を別々に処理するので、ガラス固化する廃棄核種重量を低減できる。
【0142】
(塩化物槽2の安定核種の回収)
塩化物槽2を131℃に加熱して塩化ヒ素(33As75;5.5g)を、196℃に加熱して塩化セレン(34Se77;32.4g)を、268℃に加熱して塩化モリブデン(安定同位体42Mo97/98;5.26kg)を、500℃に加熱して塩化ルテニウム(安定核種44Ru101;6.39kg)を、960℃に加熱して塩化カドミウム(安定同位体48Cd111/114;2.38kg)を、1550℃に加熱して塩化銀(安定同位体47Ag107/109;712.5kg)を気化・分留させ、冷却装置を介して核種回収槽に回収する。塩化ルテニウムは沸点で熱分解するので金属として回収できる。尚、沸点12.6℃の塩化ホウ素、201℃の塩化ガリウムは1μg以下の微量で回収困難である。
【0143】
(塩化物槽2のガラス固化核種の回収)
塩化物槽2では、380℃に加熱して塩化テルル(放射性同位体52Te125m/127m/127/128;58.3gと安定同位体Te122/124/125/126;3.15kgが混在)を、547℃に加熱して塩化ベリリウム(放射性核種4Be10;9.8mgと安定核種Be9;6μgが混在)を、623℃に加熱して塩化スズ(放射性核種50Sn126;4.9mgと安定同位体Sn114/116/122;71pgが混在)を、675℃に加熱して塩化パラジウム(放射性核種46Pd107;7.76kg)を、気化・分留させ、冷却装置を介してガラス固体化核種回収槽に回収する。
なお、224℃の塩化アンチモン(放射性同位体51Sb124~126/126m;0.25ngと安定同位体Sb123;0.7ngが混在)は微量で回収できず、昇華点が331℃のジルコニウムは放射性核種40Zr96(天然存在比2.8%)23.5kgと安定同位体Zr90/94が931g混在するが、その放射能は82.9mBqであり、ガラス固化せずに放射性廃棄物として処理できる。また、後述するが46Pd107のσpは熱中性子に対しても大きいので、熱中性子照射によりPd109m(IT,4.7m)に核種変換し、安定な47Ag109として回収できる。
【0144】
(気体槽と可溶物槽及び難溶物槽で発生した気体核種)
燃料取出し180日後、発生した気体核種を元素の沸点順に核種、崩壊形式、半減期、元素の沸点、σp(熱中性子エネルギー0.0253eVの値)、未対策6年後の放置した場合の重量と槽毎の重量と各槽の合計重量〔単位g〕、未対策6年後と対策後の放射能〔単位Bq〕、対策後と未対策時の0.1Bq到達時間を表7に示す。なお、炭素の沸点は酸化物として存在するのでCOの沸点とした。
【0145】
【表7】
【0146】
使用済み核燃料取出し180日後の気体核種の重量と体積(1気圧/20℃の値を[
]内に示す)は、放射性核種が158.1kg[27.3m]、安定核種が227.3kg[43.5m]で、6年放置後の気体は対策により、放射性核種が157.5kg[27.1m]から146.0kg[26.0m]に減少し、安定核種が227.3kg[43.5m]から238.8kg[47.3m]に増加する。放射性核種54Xe136の重量[体積]は未対策放置6年後に144.5kg[25.6m]で全放射性核種の91.7%[体積比94.5%]を占めるが、対策後の重量は同じであるが放射性核種の99.0%[同98.5%]を占め、2番目に多いI129の重量は11.5kg[1.1m]は7.3%[同4.1%]を占めるが、対策後には0%となる。
本実施例では、発生した安定な臭素(可溶物槽で発生した35Br79/81を含む)3.0kgとヨウ素(難溶物槽で発生した53I127を含む)1.4kgを常温で夫々液体と固体として回収でき、長寿命の放射性ヨウ素(53I129)11.5kgは安定なキセノン(54Xe130)に核種変換できる。気体槽を常温から沸点の降順に冷却すれば、気体元素別に分離できるが、放射性気体と安定気体が混在するので同位体分離は困難で、冷却エネルギー使用による回収コストにも課題があり、沸点が常温以下の気体核種はほぼ従来通りの廃棄となる。
非記載の放射性気体核種で、対策により0.1Bq到達時間が長くなるのが8種で、35Br83(β,2.4h)の427日と36Kr83m(IT,1.8h)の425日、53I130(β,12.4h)の247日と53I130m(IT/β,8.84m)の211日、53I132(β,2.3h)の331日、53I133(β,20.8h)の281日、54Xe133(β,5.3d)の372日、54Xe133m(IT,2.2d)の357日が該当し、対策により53I131(β,8.03d)の0.1Bq到達時間が210日に短くなる。半減期の短い12種の35Br80(β/ec,17.7m)/Br80m(IT,4.42h)/Br82m(IT/β,6.1m)/Br82(β,35.3h)、36Kr79(ε,35h)/Kr81m(IT/β,13s)/Kr85m(β/IT,4.5h)、53I128(β/ec,25m)/I134(β,52.5m)、54Xe135(β,9.1h)/Xe135m(IT,15.3m)/Xe137(β,3.8m)は使用済み核燃料取り出し180日後に、その核種重量は0gとなり、放射能も0Bqとなる。
【0147】
表6.1~表6.3で示した中性子照射による対策後の可溶物槽、難溶物槽、気体槽で発生した高レベル放射性固体核種の重量と放射能および安定な固体核種の重量を計算で求め、各槽で発生した核種を塩化物として、その沸点により元素分離を行い、安定な核種あるいは同位体の場合は回収し、また再利用可能な放射性核種も回収し、放射性の核種あるいは同位体の場合および放射性の核種あるいは同位体と安定な核種あるいは同位体が混在する場合、その合計した放射能が0.1Bq以下であれば放射性廃棄物として処理し、0.1Bq以上であればキャニスター(内容量150L、許容重量550kg以下)に収容しガラス固化体にして処理する。対策により回収できる安定固体、放射性固体、廃棄する固体、ガラス固化して廃棄する固体の重量、放射能を回収率、廃棄ガラス固化率で評価した結果を表8.1に示す。
なお、この重量は核種単体の値であり、塩化物の値ではない。
【0148】
【表8.1】
【0149】
使用済み核燃料取出し180日後のFPは、固体核種が1861kg(安定核種;1228kg、放射性核種;633kg)、気体核種が385.4kg(安定核種;227.3kg、放射性核種;158.1kg)であり、未対策で6年間放置すると固体核種が1861kg(安定核種;1254kg、放射性核種;607kg)、気体核種が384.8kg(安定核種;227.3kg、放射性核種;157.5kg)となるが、本発明の実施により6年後に固体核種は1853.5kg(安定核種;1797.6kg、放射性核種;55.9kg)、気体核種は392.6kg(安定核種;246.2kg、放射性核種;146.4kg)となり、固体重量は99.6%に減少し、気体重量は102%に増加する。固体の安定核種は143.3%に増加し、放射性核種は9.2%に減少しており、気体の安定核種は108.3%に増加し、放射性核種は93%に減少している。未対策で使用済み核燃料取出し6年放置後の核種1861kgに沸点の違いを利用して元素分離をした場合に廃棄するガラス固化核種の重量は未記載の重量を加えて1504kgで廃棄率は80.8%となるが、対策により可溶物槽(気体槽含む)と難溶物槽に存在する固体の核種単体の重量1092kg、762kgの合計重量1854kgのうちガラス固化体にする核種の単体重量はそれぞれ559gと10.97kgの合計11.52kgであり、ガラス固化体で廃棄する重量は0.62%に低減できる。これを塩化物に換算すると、可溶物槽(気体槽含む)と難溶物槽に存在する固体の重量は1920kgと1027kgで、それぞれ76.0%、34.8%増加し、ガラス固化する廃棄核種の塩化物重量は945gと19.8kgとなり、それぞれ1.7倍、1.8倍に増加するが、合計しても20.7kgであり、ガラス固化体として廃棄するキャニスターは1本以内である。
尚、可溶物槽で発生するカドミウムの放射性核種46Cd116(2β,3.3E+19y)14.2gの放射能は49.2μBqで天然存在比が7.49%であり廃棄ガラス固化体に含めず廃棄処理固体に含めてある。同様に難溶物槽で発生するジルコニウム(放射性核種40Zr96;23.5kgと安定同位体40Zr90/94;0.9kgが混在)24.4kgの放射性核種Zr96(2β,3.9E+19y)の放射能は82.9mBqであり天然存在比が2.80%なので、廃棄ガラス固化体に含めず廃棄処理固体に含めてある。
使用済み核燃料から発生するFPで未対策放置6年後の廃棄放射性気体核種の放射能は22.1PBqであり、対策による増減は無いが、放射性固体核種の放射能957.3PBqは対策により、再利用放射性核種の放射能146.5PBqと廃棄ガラス固化する放射性核種の放射能153.2PBqとなり、放射性廃棄物として処理するのはジルコニウム(放射性核種40Zr96;23.5kgと安定同位体Zr90/94;931gが混在)24.4kgの放射能83mBqとカドミウムの放射性核種(46Cd116)14.2gの放射能49.2μBqのみとなる。
【0150】
(可溶物槽で再利用できる回収核種とガラス固化体にする核種)
可溶物槽で回収できる可溶性核種の安定塩化物とその重量(核種単体)は、セレン(34Se82)が22.7g、ルビジウム(気体槽37Rb85)が623.3g、ストロンチウム(38Sr88)が32.7kg、ガドリニウム(64Gd154/155/158)が27.5kg、ジスプロシウム(66Dy161/162)が77.1kg、ホルミウム(67Ho165)が14.5kg、エルビウム(68Er167)が108.3kg、イッテルビウム(70Yb172/173)が172.4kg、難溶性核種の安定塩化物とその重量(核種単体)はゲルマニウム(32Ge70/72/73)が76.7mg、ジルコニウム(40Zr90/91/92)が62.8kg、スズ(50Sn117)が9.75kg、ハフニウム(72Hf177/178)が561.6kgで、可溶物槽(気体槽を含む)では合計1067kgであり、これらの塩化物を還元して金属として再利用可能である。
回収できる放射性核種とその重量(核種単体)は、ストロンチウム(38Sr90)の23.9kgとルテチウム(71Lu177m/177)の118.6g、合計で24.0kgであり、38Sr90(β,28.8y)は無人機械の動力用エネルギー源の原子力電池に利用でき、71Lu177(β,6.65d)は神経内分泌腫瘍の放射性核種療法に利用でき、放射性医薬品「一般名:ルテチウムオキソドトレオチド(177Lu)」に使用される。(出典:日本核医学会)
ガラス固化体にする核種とその重量はイットリウム(放射性同位体39Y90/91)が6.08g、サマリウム(放射性核種62Sm151;0.3gと安定同位体62Sm152/154;65μg)が0.3g、ユウロピウム(放射性同位体63Eu154/155;552.1gと安定核種Eu151;12mg)が552.1g、合計で558.5gである。
ガラス固化せず放射性廃棄物として廃棄するのは放射能が49.2μBqのカドミウム(48Cd116)の14.2gである。
【0151】
(難溶物槽で再利用できる回収同位体とガラス固化体にする核種)
難溶物槽で回収できる可溶性の安定核種の塩化物とその重量(核種単体)は、ヒ素(33As75)が5.5g、セレン(34Se77)が32.4g、銀(47Ag107/109)が712.5kg、カドミウム(48Cd111/114)が2.38kg、難溶性の安定塩化物とその重量(核種単体)は、モリブデン(42Mo97/98)が5.26kg、ルテニウム(44Ru101)が6.39kgで、合計726.6kgであり、これらの塩化物を還元して金属として再利用可能である。
回収できる放射性核種は無い。
ガラス固化体にする核種と、その重量(核種単体)はパラジウム(放射性核種46Pd107)が7.76kg、スズ(放射性核種50Sn126;4.9mgと安定同位体Sn114/116/122/124;71pg)が4.9mg、アンチモン(放射性同位体51Sb124/125/126m/126;0.25ngと安定核種Sb123;0.7ng)が0.95ng、テルル(放射性同位体52Te125m/127/127m/128;58.3gと安定同位体52Te122/124/125/126;3.15kg)が3.21kgで、合計10.97kgである。
また、前述した様に、ガラス固化せず放射性廃棄物として廃棄するのは放射能が83mBqのジルコニウム(48Cd116)の24.4kgである。
なお、ガラス固化体にする46Pd107のσpは熱中性子(0.0253eV)に対して9.9と大きいので熱中性子照射により46Pd109mに核種変換すれば、Pd109m(IT,3.1s)→Pd109(β,13.6h)→47Ag109m(IT,39.8s)→Ag109(安定)と壊変し、照射41.2日後に放射性核種の放射能が0.1Bq以下となり、安定な47Ag109の7.76kgとして回収され、対策後の安定固体回収率は98.1%から98.5%に、廃棄ガラス固化比率が0.62%から0.20%に向上する。
【0152】
使用済み核燃料1tからガラス固化体(高レベル放射性廃棄物)が約1.25本作られる。(中国電力ホームページhttps://www.enerugia.co.jp)一般的に100万kWの原子力発電からウラン235の濃度が3.7%(5%)の場合、年間約31.5t(22.6t)の使用済み核燃料が出され、これから約15.8m(11.3m)の高レベル放射性廃液を生じ、約32本(23本)のガラス固化体が作られるといわれている。(日本原子力研究開発機構 原子力百科事典 ATOMICA)
福島第一原発の2号機(電気出力78.4万kW)の核燃料はU235濃度が3.7%であり、1年間の発電に必要な核燃料は24.7tであるので、ガラス固化体を求めると前者からは31本、後者からは25本となる。核燃料取り出し180日後のFPで固体核種単体の重量1.86t(硝酸化物換算で3.4t、酸化物換算で2.3tで一般的には核種単体の1.6倍あるといわれているので固体核種の重量を約3tとした)は、本発明の実施によりガラス固化体にする核種単体の重量を11.52kg(塩化物換算で20.7kg)と低減でき、ガラス固化体とするキャニスターは前者の計算では0.21本、後者の計算で0.17本となる。
さらに、核燃料取り出しから数年以上放置される場合を考慮して、核燃料取出し10年後の核種について本発明の方法を適用して同様に処理した場合、すなわち核燃料取り出しから16年間放置された場合と対策16年後の計算した結果を表8.2に示す。
【0153】
【表8.2】
【0154】
核種重量について未対策で放置16年後と放置6年後を比較すると、固体では、放射性核種では96.4%に減少し、安定核種では101.8%と増加し、放射性核種から安定核種への壊変が進み、気体では、放射性核種は99.6%に減少するが、安定核種は100%と変化しない。気体の放射性核種は壊変で安定な気体には壊変せず、固体に壊変していると考えられる。対策により、10年間放置後の使用済み核燃料から回収する安定固体の重量は1794kgで殆ど変わらず、回収放射性固体の重量が20.96kgで13%ほど低下し、廃棄ガラス固化体の重量は11.49kgと30g減少しただけで殆ど変わらず、廃棄処理固体の重量が28.28kgで15.8%増加する。使用済み核燃料を10年間放置した場合でも、廃棄ガラス固化体化率は使用済み核燃料取り出し180日後の対策後の値と同じであり、本発明の効果はあると考えられる。
【0155】
〔参考文献〕および〔データ引用元〕
〔参考文献1〕桜井勉、高橋昭「再処理中のヨウ素の挙動」JAERI-Review 97-002日本原子力研究所、
https://doi.org/10.11484/jaeri-review-97-002
〔参考文献2〕特開平05―072390号公報 14CO2の処理方法 財団法人産業創造研究所
〔参考文献3〕田川博章「硝酸塩の熱分解」横浜国大環境研紀要 14:p.41-57 (1987)
https://ynu.repo.nii.ac.jp/
〔参考文献4〕木下賢介、倉田正輝「高レベル廃液からの超ウラン元素の分離技術」電力中央研究所レビューNo.37、p49-58
https://criepi.denken.or.jp/koho/review/No37/chap-6.pdf
〔データ引用元1〕IAEA Nuclear Structure and Decay Data;IAEA Nuclear Data Section,Vienna International Centre,PO Box100 A-1400 Vienna,Austria
https://www-nds.iaea.org/relnsd/vcharthtml/VChartHTML.html
〔データ引用元2〕日本原子力研究開発機構 核データ研究グループ JENDL-5
https://wwwndc.jaea.go.jp/jendl
〔データ引用元3〕西原 健司、岩元 大樹、須山 賢也「福島第一原子力発電所の燃料組成評価」JAEA-Data/Code 2012-018,日本原子力研究開発機構
https://jopss.jaea.go.jp/pdfdata/JAEA-Data-Code-2012-018.pdf
【産業上の利用可能性】
【0156】
本実施例では、東京電力福島第一発電所の第二号機の使用済み核燃料の取出し180日後と、10年後のFPのうち固体核種についてガラス固化する核種重量を計算したが、他の原子力発電所で生じる使用済み核燃料で発生するFPの重量が与えられれば、本実施例のワークシートを適用して、ガラス固化する核種重量を求めることができる。さらに、本発明の実施により、原子力発電で発生した使用済み核燃料の高レベル放射性廃棄物のガラス固化体の割合を1%以下に低減できるので高レベル放射性廃棄物貯蔵場の必要面積が減り、保管管理が容易となり、廃棄物貯蔵場所の選択肢を広げ、更に、供給電力に占める原子力発電の比率を高めるための布石となり、地球温暖化の抑止に寄与できると考える。
【符号の説明】
【0157】
1 気体槽
2 固体槽
3 可溶物槽
4 難溶物槽A
5 難溶物槽
6 可溶物槽B
7 熱中性子源装置
8 冷中性子源装置
9 中性子照射シャッター
10 固液分離装置
11 ろ過装置
12 液体ヨウ素受け皿
13 冷却装置
14 ヨウ化物槽
15 塩化物槽1(固化装置付き)
16 塩化物槽2(固化装置付き)
17 気化装置
18 精留塔
19 凝縮器
20 加熱装置
21 硝酸溶液注入口
22 塩酸溶液注入口
23 塩素ガス注入口
24 バルブ(液体用)
25 逆流防止付きバルブ(液体用)
26 逆流防止付きバルブ(気体用)
27 真空ポンプ
28 液体還流ポンプ
29 放射線量モニター
30 気体放出バルブ
31 流路切替えバルブ
32 温度制御付き加熱装置
33 硝酸回収装置
34 冷却装置
35 安定核種回収槽
36 ガラス固化核種回収槽
37 液化ヨウ素取出し管
38 ガス遠心分離装置
39 重核種回収槽
40 軽核種回収槽
図1
【手続補正書】
【提出日】2023-09-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0115
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0115】
難溶物槽の安定核種で180日後の重量と、未対策で6年間放置した場合と本発明を適用した場合の重量変化を計算した結果を表3B-1に示す。未対策6年放置後の安定固体核種141種;重量450.9kg(可溶性核種が77種;7.57kg、難溶性核種が47種;443.4kg、気体核種が17種;0g)は、対策により核種数は24種(可溶性核種が12種、難溶性核種が11種、気体核種が1種)に減少し、重量は732.1kg(可溶性核種が718.1kg、難溶性核種が12.6kg、気体核種が1.41kg)に増加する。但し、これらの核種の重量は全て核種単体の重量である。
非記載の難溶性安定核種36核種は全てσpが1以上で、中性子照射により核種変換されて重量は0gとなり、核種変換された親核種となる放射性核種が長寿命でもσpが1より大きい難溶性核種となり、中性子照射により核種変換され0gとなる。例を挙げると、安定な49In113は1回目の中性子照射で核種変換され、49In115m(IT/β,4.5h)→In115(β,4.4E+14y)→50Sn115(安定)と壊変し、σpが1より大きいIn115は2回目の中性子照射でIn116mに核種変換され0gとなり、49In116m(β,54.3m)→50Sn116(安定)と壊変しIn113は0gとなり、安定な50Sn116の重量が増えるが、該核種もσpが0.9で中性子照射の照射回数と共に重量は減少する。また、安定な46Pd108は中性子照射で46Pd109mに核種変換され46Pd109m(IT,4.7m)→Pd109(β,13.6h)→47Ag109m(IT,39.8s)→Ag109(安定)と壊変し、Pd107は0gとなり安定な可溶性核種の47Ag109が増加する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0117
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0117】
対策後の重量が1E-40g以上の安定な難溶性核種11種と、中性子照射で発生した安定な可溶性核種12種と気体核種1種について中性子捕獲確率σp(0.353meV)、燃料取出し180日後と、未対策放置6年後と対策後の核種重量〔単位g〕を表3B-2に示す。
難溶性の安定核種は11種全てが対策6年後の重量は未対策放置6年後の重量より減少している。σpが1以下の核種は7種(σpの値を[]内に示す。)で、そのうち4種、4Be9[0.34]、40Zr90[0.09]、Zr94[0.42]、50Sn124[0.94]は親核種が無いので中性子照射回数と共に重量は漸次減少する。他の3種50Sn114[0.92]/Sn116[0.91]/Sn122[0.98]は、中性子照射で核種変換されずに一部が残存し、中性子照射2回目以降、それぞれの親核種49In114(β/ε)、49In116m(β)、51Sb122m(IT)→Sb122(β/ε)は発生しないので娘核種の重量は0gとなり、13回目の中性子照射で一部が中性子捕獲で核種変換され、残された娘核種の重量は減少し未対策放置6年後より少ない。残り4種42Mo97/98と44Ru101および51Sb123はσpが1以上で、中性子照射13回で核種変換され0gとなるが、親核種40Zr97(β)/98(β)と42Mo101(β)および50Sn123m(β)のβ崩壊で発生する娘核種の重量は未対策放置6年後より少なくなる。
難溶物槽で発生する12種の可溶性核種には中性子を照射しない。このうち4種、31Ga71、33As75、34Se77、48Cd114は、それぞれの親核種32Ge71m(IT)→Ge71(ec)、32Ge75m(IT)、32Ge77m(β/IT)、49In114m(IT/ε)のσpは0で、中性子照射による親核種の発生が3回までで、発生する娘核種の重量は未対策放置6年後より少ない。52Te125は13回の中性子照射で毎回核種変換で生じた親核種50Sn125m(β)の崩壊で発生するが照射回数と共に重量は漸次減少し、未対策放置6年後より少ない。残りの7種、5B10,47Ag107/109、48Cd111、52Te122/124/126は、それぞれの親核種4Be10(β)、44Ru107(β)、46Pd109m(IT)、46Pd111m(IT/β)、51Sb122m(IT)/124m(IT/β)/126m(β/IT)のσpが0で、13回の中性子照射で発生した親核種のβ、IT崩壊で生じ、これらの娘核種の重量は未対策放置6年後の重量より多くなる。
難溶物槽で発生する安定気体核種は53I127の1.41kgだけで、中性子捕獲で核種変換された50Sn127m(β)を親核種として51Sb127(β,3.85d)→52Te127m(IT/β,106.1d)→52Te127(β,9.35h)→53I127(安定)と壊変することによる。放射線量モニターで安全を確認後、放出できる。尚、対策6年以降に難溶物槽に付属の可溶槽Bで生じる放射性のテルルが52Te127m(IT/β,106.1d)→Te127(β,9.35h)→53I127(安定)と壊変しI127が20℃で0.63mL(3.35mg)発生するので、テルルのガラス固化の際、銀を加えヨウ化銀として固化する。
対策6年以後に安定核種で重量が増加する核種があるが〔〕内に示した半減期の長い放射性親核種の崩壊によるもので、難溶性核種では無く、可溶性核種では5B10〔4Be10〕、47Ag107〔46Pd107〕、52Te124〔51Sb124m〕、52Te125〔51Sb125〕が該当する。これらの親核種の難溶性の放射性核種はガラス固化する。但し、σpが大きい46Pd107は、後述するが6年後の核種分離で単独で存在するので熱中性子照射により核種変換し、46Pd109m(IT,3.1s)→Pd109(β,13.59h)→47Ag109m(IT,39.8s)→Ag109(安定)の壊変で41.2日以降に安定なAg109に変換して回収できる。