(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168645
(43)【公開日】2023-11-27
(54)【発明の名称】薬効予測用バイオマーカー、薬効予測用試薬、薬効予測用キット、薬効予測方法、組織液の回収能推測用バイオマーカー、組織液の回収能推測用試薬、組織液の回収能推測用キット、組織液の回収能推測方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6883 20180101AFI20231116BHJP
C12Q 1/6827 20180101ALI20231116BHJP
C12Q 1/48 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
C12Q1/6883 Z
C12Q1/6827 Z
C12Q1/48 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023172780
(22)【出願日】2023-10-04
(62)【分割の表示】P 2019202627の分割
【原出願日】2019-11-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、[感染症実用化研究事業 肝炎等克服実用化研究事業 肝炎等克服緊急対策研究事業]「C型肝炎の新たな治療関連因子及び治癒後の病態進展・改善に関連する宿主因子等の同定を目指したゲノムワイド研究」及び平成31年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、[感染症実用化研究事業 肝炎等克服実用化研究事業 肝炎等克服緊急対策研究事業]「C型肝炎の直接作用型抗ウイルス薬による治療後の病態変化に影響を及ぼす宿主因子等の同定を目指したゲノムワイド研究」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】506218664
【氏名又は名称】公立大学法人名古屋市立大学
(71)【出願人】
【識別番号】507126487
【氏名又は名称】公立大学法人奈良県立医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】田中 靖人
(72)【発明者】
【氏名】大西 雅也
(72)【発明者】
【氏名】吉治 仁志
(72)【発明者】
【氏名】瓦谷 英人
(57)【要約】
【課題】臓器不全に起因する貯留体液を排出させる薬剤の薬効を優れた精度で事前に予測できる薬効予測用バイオマーカーを提供する。
【解決手段】臓器に貯留した体液を排出させる薬剤の薬効を予測するためのバイオマーカーであり、米国バイオテクノロジー情報センターのSNPデータベースに登録された特定のrs番号で特定される一塩基多型及び特定のゲノム領域で検出される一塩基多型からなる群から選ばれる少なくとも一つ以上の一塩基多型である、薬効予測用バイオマーカー。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臓器に貯留した体液を排出するための薬剤の薬効を予測する方法であって、
被験者から採取した核酸の塩基配列について、米国バイオテクノロジー情報センターのSNPデータベースに2019年8月1日に登録されていたrs番号:rs2991364で特定される一塩基多型を検出する、薬効予測方法。
【請求項2】
前記rs番号:rs2991364で特定される一塩基多型に加えて、
米国バイオテクノロジー情報センターのSNPデータベースに2019年8月1日に登録されていた、下記のrs番号で特定される一塩基多型及び下記のゲノム領域で検出される一塩基多型からなる群から選ばれる少なくとも一つ以上の一塩基多型を併用して検出する、請求項1に記載の薬効予測方法。
rs番号:rs77769596、rs116951693、rs199623596、rs141544115、rs78650683、rs61773260、rs16827413、rs3736931、rs77980226、rs1885744、rs68016527、rs10800602、rs4915165、rs149057569、rs78506769、rs144622901、rs191498017、rs117878160、rs2861960、rs6738731、rs139777869、rs7606583、rs548655480、rs9818982、rs73093151、rs28722753、rs190430047、rs146677134、rs147398967、rs201727204、rs146161796、rs146974727、rs76934337、rs28724305、rs139082715、rs202039738、rs558310023、rs373193142、rs3108399、rs146184416、rs149351859、rs117186452、rs192877030、rs368145706、rs142073533、rs144330279、rs185364332、rs78306822、rs73746613、rs117565657、rs142078510、rs536782924、rs13358143、rs117217176、rs145513135、rs138786151、rs75479599、rs138025072、rs73416655、rs9358200、rs117952795、rs187188904、rs17279589、rs116255027、rs41279866、rs2242480、rs28371759、rs34784390、rs12721627、rs4646474、rs368125720、rs200112828、rs148391916、rs57649937、rs77535773、rs149607532、rs76148287、rs6956740、rs140143507、rs144155862、rs190856909、rs142154029、rs138882192、rs150413109、rs149631544、rs188579453、rs138430375、rs146943578、rs117377672、rs4739103、rs76335247、rs139552329、rs143804156、rs9299186、rs4978937、rs143816412、rs16907787、rs150949929、rs141204966、rs150684513、rs143150122、rs190968040、rs79875703、rs78332808、rs151314241、rs74236102、rs141277618、rs12227766、rs17012289、rs73166235、rs73166243、rs56127528、rs17487644、rs11290772、rs145849286、rs139361259、rs141696046、rs147493082、rs149200875、rs7150903、rs79594269、rs140034212、rs186766499、rs11852611、rs118115242、rs6496797、rs4541027、rs285753、rs79740453、rs3760436、rs11361451、rs115523756、rs60619936、rs142571079、rs146099575、rs62103373、rs183728329、rs764818965、rs369720664、rs76726076、rs2071643、rs137967792、rs56689668、rs5201、rs5202、rs2070097、rs5904376、rs781940941、rs781941435、rs4898372、rs73627255、rs3761527、rs3761529、rs138461346、rs12559136、rs4898458、rs151275155、rs142251323、rs186986494、rs2872601、rs5945370、rs183746106、rs5945368、rs5987180、rs55702376、rs5987179、rs111399454、rs7886319、rs7052686、rs5945169、rs150224573、rs145658816、rs141108459、rs113549204、rs148460019、rs186585558、rs2071126、rs5945367及びrs782472424のそれぞれ。
ゲノム領域:chr2:57009383、chr4:56445490、chr4:77343844、chr4:77985714、chr4:184681293、chr5:106033177、chr7:119762819、chr7:126519252、chr11:81185465、chr13:96979189、chr14:95984290及びchr22:29908953におけるそれぞれの塩基の位置。
【請求項3】
前記rs番号:rs2991364で特定される一塩基多型に加えて、
米国バイオテクノロジー情報センターのSNPデータベースに2019年8月1日に登録されていた、rs9299186及びrs4978937からなる群から選ばれる少なくとも一つ以上のrs番号で特定される一塩基多型を併用して検出する、請求項1に記載の薬効予測方法。
【請求項4】
前記薬剤がV2受容体拮抗薬である、請求項1~3のいずれか一項に記載の薬効予測方法。
【請求項5】
前記rs番号:rs2991364で特定される一塩基多型の検出に加えて、下記の臨床因子に基づいて前記薬剤の薬効を予測する、請求項1~4のいずれか一項に記載の薬効予測方法。
臨床因子:年齢、性別、身長、体重、Child-Pugh分類、血小板数、アルブミン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、総ビリルビン、血清尿素窒素、クレアチニン、ナトリウム、アンモニア、α-フェトプロテインから選ばれる少なくとも一つ以上。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の薬効予測方法に使用するための試薬であって、
前記rs番号:rs2991364で特定される一塩基多型が検出されるゲノム領域に特異的な核酸を含む、薬効予測用試薬。
【請求項7】
臓器に貯留した体液を排出させる薬剤の薬効を予測するためのキットであって、
請求項6に記載の薬効予測用試薬を備える、薬効予測用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬効予測用バイオマーカー、薬効予測用試薬、薬効予測用キット、薬効予測方法、組織液の回収能推測用バイオマーカー、組織液の回収能推測用試薬、組織液の回収能推測用キット、組織液の回収能推測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心性浮腫、肝性浮腫、常染色体優性多発性嚢胞腎等の患者に使用される利尿薬として、トルバブタン(製品名「サムスカ」、大塚製薬株式会社)が知られている。
トルバブタンは、V2受容体拮抗薬であり、腎集合管のV2受容体で抗利尿ホルモン(バソプレシン)と拮抗的に作用することで、腎集合管における水の再吸収を阻害する。つまり、トルバブタンは、腎集合管において腎集合管内から腎集合管外への水の排出を抑制することで、尿の排泄を促進し、貯留した体液を尿として体外に強制的に排出し、浮腫の症状を和らげる薬剤である。
【0003】
しかし、一部の患者においては、トルバプタンを投与しても効果がないことが知られている。そのため臨床現場においては、体液の貯留を伴う患者について事前に治療効果を判別できる方法が求められている(例えば、非特許文献1)。
非特許文献1は、非代償性肝硬変の患者においては、肝静脈喫入圧較差(HVPG:Hepatic Venous PressureGradient)の値が相対的に低いと、体液の排出による体重の減少が顕著となり、トルバブタンの薬効性が充分に認められる傾向があることを開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Ai Nakagawa,Masanori Atsukawa,Akihito Tsubota,Katsuhiko Iwakiri,et al:Usefulness of portal vein pressure for predicting the effects of tolvaptan in cirrhotic patients:World J Gastroenterol 2016 June 7;22(21):5104-5113
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トルバブタンのような臓器不全に起因する貯留体液を排出させる薬剤は、高価である。加えて、トルバブタンの投与は、入院を必要とすることから患者への負担が大きい。そのため臨床現場においては、トルバブタンによる治療の開始前にトルバブタンの薬効を優れた精度で予測することが求められている。
本発明の一態様は、臓器不全に起因する貯留体液を排出させる薬剤の薬効を優れた精度で事前に予測できる薬効予測用バイオマーカーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者らは、トルバブタンの投与患者群に対してゲノムワイド関連解析(GWAS)を行うことで、特定群からなる一塩基多型(SNPs)を有する患者においてトルバブタンの薬効が相対的に低下することを明らかにした。
加えて本発明の発明者らは、これらのSNPsの中には、ヒト等の生物の発生段階においてリンパ管、血管等の脈管の形成に寄与すると考えられている遺伝子の発現量の増減に影響を及ぼすSNPsが含まれていることを明らかにした。
【0007】
脈管の形成が健常体と比較して相対的に不充分であると、貯留した組織液を脈管により回収することが困難となり、脈管による組織液の回収能が相対的に低下すると考えられる。そのため、特定のSNPsが検出される被験者においては、貯留した組織液の脈管による回収が不充分であるため、脈管によって組織液を腎臓まで輸送する機能が低下していることが示唆された。
したがって、特定のSNPsが検出される患者においては、脈管による組織液の回収能が生まれつき低く、臓器不全に起因して貯留した組織液が脈管により回収されにくいため、本来回収されるべき組織液が腎臓に輸送されにくい体質となる傾向があると予想された。このように、GWASの結果から、特定のSNPsが脈管の形成及び脈管による組織液の回収能と関係することが示唆された。
本発明の発明者らは、体液貯留に対する薬効の予測と、脈管による体液回収能の予測との間に共通する遺伝的要因となる一塩基多型の候補群を明らかにし、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記の態様を有する。
[1] 臓器に貯留した体液を排出させる薬剤の薬効を予測するためのバイオマーカーであり、米国バイオテクノロジー情報センターのSNPデータベースに登録された下記のrs番号で特定される一塩基多型及び下記のゲノム領域で検出される一塩基多型からなる群から選ばれる少なくとも一つ以上の一塩基多型であり、
前記rs番号は、rs77769596、rs116951693、rs199623596、rs141544115、rs78650683、rs61773260、rs16827413、rs3736931、rs77980226、rs1885744、rs68016527、rs10800602、rs4915165、rs149057569、rs78506769、rs144622901、rs191498017、rs117878160、rs2861960、rs6738731、rs139777869、rs7606583、rs548655480、rs9818982、rs73093151、rs28722753、rs190430047、rs146677134、rs147398967、rs201727204、rs146161796、rs146974727、rs76934337、rs28724305、rs139082715、rs202039738、rs558310023、rs373193142、rs3108399、rs146184416、rs149351859、rs117186452、rs192877030、rs368145706、rs142073533、rs144330279、rs185364332、rs78306822、rs73746613、rs117565657、rs142078510、rs536782924、rs13358143、rs117217176、rs145513135、rs138786151、rs75479599、rs138025072、rs73416655、rs9358200、rs117952795、rs187188904、rs17279589、rs116255027、rs41279866、rs2242480、rs28371759、rs34784390、rs12721627、rs4646474、rs368125720、rs200112828、rs148391916、rs57649937、rs77535773、rs149607532、rs76148287、rs6956740、rs140143507、rs144155862、rs190856909、rs142154029、rs138882192、rs150413109、rs149631544、rs188579453、rs138430375、rs146943578、rs117377672、rs4739103、rs76335247、rs139552329、rs143804156、rs2991364、rs9299186、rs4978937、rs143816412、rs16907787、rs150949929、rs141204966、rs150684513、rs143150122、rs190968040、rs79875703、rs78332808、rs151314241、rs74236102、rs141277618、rs12227766、rs17012289、rs73166235、rs73166243、rs56127528、rs17487644、rs11290772、rs145849286、rs139361259、rs141696046、rs147493082、rs149200875、rs7150903、rs79594269、rs140034212、rs186766499、rs11852611、rs118115242、rs6496797、rs4541027、rs285753、rs79740453、rs3760436、rs11361451、rs115523756、rs60619936、rs142571079、rs146099575、rs62103373、rs183728329、rs764818965、rs369720664、rs76726076、rs2071643、rs137967792、rs56689668、rs5201、rs5202、rs2070097、rs5904376、rs781940941、rs781941435、rs4898372、rs73627255、rs3761527、rs3761529、rs138461346、rs12559136、rs4898458、rs151275155、rs142251323、rs186986494、rs2872601、rs5945370、rs183746106、rs5945368、rs5987180、rs55702376、rs5987179、rs111399454、rs7886319、rs7052686、rs5945169、rs150224573、rs145658816、rs141108459、rs113549204、rs148460019、rs186585558、rs2071126、rs5945367及びrs782472424のそれぞれであり、
前記ゲノム領域は、chr2:57009383、chr4:56445490、chr4:77343844、chr4:77985714、chr4:184681293、chr5:106033177、chr7:119762819、chr7:126519252、chr11:81185465、chr13:96979189、chr14:95984290及びchr22:29908953におけるそれぞれの塩基の位置である、薬効予測用バイオマーカー。
[2] rs2991364、rs9299186及びrs4978937からなる群から選ばれる少なくとも一つ以上のrs番号で特定される一塩基多型である、[1]に記載の薬効予測用バイオマーカー。
[3] 前記薬剤がV2受容体拮抗薬である、[1]又は[2]に記載の薬効予測用バイオマーカー。
[4] 臓器に貯留した体液を排出させる薬剤の薬効を予測するための試薬であって、[1]~[3]のいずれかに記載の薬効予測用バイオマーカーである前記一塩基多型が検出されるゲノム領域に特異的な核酸を含む、薬効予測用試薬。
[5] 臓器に貯留した体液を排出させる薬剤の薬効を予測するためのキットであって、[4]に記載の薬効予測用試薬を備える、薬効予測用キット。
[6] 臓器に貯留した体液を排出するための薬剤の薬効を予測する方法であり、被験者から採取した核酸の塩基配列について、[1]~[3]のいずれかに記載の薬効予測用バイオマーカーを検出する、薬効予測方法。
[7] 前記一塩基多型の検出に加えて、下記の臨床因子に基づいて前記薬剤の薬効を予測する、[6]に記載の薬効予測方法。
臨床因子:年齢、性別、身長、体重、Child-Pugh分類、血小板数、アルブミン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、総ビリルビン、血清尿素窒素、クレアチニン、ナトリウム、アンモニア、α-フェトプロテインから選ばれる少なくとも一つ以上。
[8] 脈管による組織液の回収能を推測するためのバイオマーカーであり、米国バイオテクノロジー情報センターのSNPデータベースに登録された下記のrs番号で特定される一塩基多型及び下記のゲノム領域で検出される一塩基多型からなる群から選ばれる少なくとも一つ以上の一塩基多型であり、
前記rs番号は、rs77769596、rs116951693、rs199623596、rs141544115、rs78650683、rs61773260、rs16827413、rs3736931、rs77980226、rs1885744、rs68016527、rs10800602、rs4915165、rs149057569、rs78506769、rs144622901、rs191498017、rs117878160、rs2861960、rs6738731、rs139777869、rs7606583、rs548655480、rs9818982、rs73093151、rs28722753、rs190430047、rs146677134、rs147398967、rs201727204、rs146161796、rs146974727、rs76934337、rs28724305、rs139082715、rs202039738、rs558310023、rs373193142、rs3108399、rs146184416、rs149351859、rs117186452、rs192877030、rs368145706、rs142073533、rs144330279、rs185364332、rs78306822、rs73746613、rs117565657、rs142078510、rs536782924、rs13358143、rs117217176、rs145513135、rs138786151、rs75479599、rs138025072、rs73416655、rs9358200、rs117952795、rs187188904、rs17279589、rs116255027、rs41279866、rs2242480、rs28371759、rs34784390、rs12721627、rs4646474、rs368125720、rs200112828、rs148391916、rs57649937、rs77535773、rs149607532、rs76148287、rs6956740、rs140143507、rs144155862、rs190856909、rs142154029、rs138882192、rs150413109、rs149631544、rs188579453、rs138430375、rs146943578、rs117377672、rs4739103、rs76335247、rs139552329、rs143804156、rs2991364、rs9299186、rs4978937、rs143816412、rs16907787、rs150949929、rs141204966、rs150684513、rs143150122、rs190968040、rs79875703、rs78332808、rs151314241、rs74236102、rs141277618、rs12227766、rs17012289、rs73166235、rs73166243、rs56127528、rs17487644、rs11290772、rs145849286、rs139361259、rs141696046、rs147493082、rs149200875、rs7150903、rs79594269、rs140034212、rs186766499、rs11852611、rs118115242、rs6496797、rs4541027、rs285753、rs79740453、rs3760436、rs11361451、rs115523756、rs60619936、rs142571079、rs146099575、rs62103373、rs183728329、rs764818965、rs369720664、rs76726076、rs2071643、rs137967792、rs56689668、rs5201、rs5202、rs2070097、rs5904376、rs781940941、rs781941435、rs4898372、rs73627255、rs3761527、rs3761529、rs138461346、rs12559136、rs4898458、rs151275155、rs142251323、rs186986494、rs2872601、rs5945370、rs183746106、rs5945368、rs5987180、rs55702376、rs5987179、rs111399454、rs7886319、rs7052686、rs5945169、rs150224573、rs145658816、rs141108459、rs113549204、rs148460019、rs186585558、rs2071126、rs5945367及びrs782472424のそれぞれであり、
前記ゲノム領域は、chr2:57009383、chr4:56445490、chr4:77343844、chr4:77985714、chr4:184681293、chr5:106033177、chr7:119762819、chr7:126519252、chr11:81185465、chr13:96979189、chr14:95984290及びchr22:29908953におけるそれぞれの塩基の位置である、組織液の回収能推測用バイオマーカー。
[9] rs2991364、rs9299186及びrs4978937からなる群から選ばれる少なくとも一つ以上のrs番号で特定される一塩基多型である、[8]に記載の組織液の回収能推測用バイオマーカー。
[10] 前記脈管が、肝臓と腎臓とを接続する血管、肝臓と腎臓とを接続するリンパ管からなる群から選ばれる少なくとも一つである、[8]又は[9]に記載の組織液の回収能推測用バイオマーカー。
[11] 脈管による組織液の回収能を推測するための試薬であり、[8]~[10]のいずれかに記載の組織液の回収能推測用バイオマーカーである前記一塩基多型が検出されるゲノム領域に特異的な核酸を含む、組織液の回収能推測用試薬。
[12] 脈管による組織液の回収能を推測するためのキットであり、[11]に記載の薬効予測用試薬を備える、組織液の回収能推測用キット。
[13] 脈管による組織液の回収能を推測する方法であり、被験者から採取した核酸の塩基配列について、[8]~[10]のいずれかに記載の組織液の回収能推測用バイオマーカーを検出する、組織液の回収能推測方法。
[14] 前記一塩基多型の検出に加えて、下記の臨床因子に基づいて脈管による組織液の回収能を予測する、[13]に記載の組織液の回収能推測方法。
臨床因子:年齢、性別、身長、体重、Child-Pugh分類、血小板数、アルブミン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、総ビリルビン、血清尿素窒素、クレアチニン、ナトリウム、アンモニア、α-フェトプロテインから選ばれる少なくとも一つ以上。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、臓器不全に起因する貯留体液を排出させる薬剤の薬効を優れた精度で事前に予測できる薬効予測用バイオマーカーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】SVEP1遺伝子の下流遺伝子のシグナル伝達経路を示す模式図である。
【
図2】SVEP1遺伝子の下流遺伝子の遺伝子発現が低下したときの、シグナル伝達経路を示す模式図である。
【
図3】実施例における研究デザインの概略を示す図である。
【
図4】GWASの結果を表すマンハッタンプロット図である。
【
図5】GTExを用いたrs2991364のeQTLを検索した結果を示す図である。
【
図6】ICGCのデータベースを用いたrs2991364のリスクアレル群におけるSVEP1の遺伝子発現量を検索した結果を示す図である。
【
図7】ICGCのデータベースを用いたrs2991364のリスクアレル群におけるITGA9の遺伝子発現量を検索した結果を示す図である。
【
図8】ICGCのデータベースを用いたrs2991364のリスクアレル群におけるFoxc2の遺伝子発現量を検索した結果を示す図である。
【
図9】ICGCのデータベースを用いたrs2991364のリスクアレル群におけるTie1の遺伝子発現量を検索した結果を示す図である。
【
図10】ICGCのデータベースを用いたrs2991364のリスクアレル群におけるAng-2の遺伝子発現量を検索した結果を示す図である。
【
図11】実施例の研究結果から想定された薬剤の薬効と脈管ネットワーク及び脈管リモデリング機構との間にある関係に関する仮説を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書における以下の用語の意味は、本段落に記載の通りである。
「特異的な核酸」とは、通常の形成条件(好ましくはストリンジェントな条件)の下、標的となる一塩基多型が検出され得るゲノム領域に対して相補対を形成し、他のゲノム領域との間にクロスハイブリダイゼーションを有意に生じない核酸を意味する。
「アレル」とは、配偶子(精子又は卵子)を通してそれぞれ1セットずつ受け継いだ、合計2セットのゲノム配列を意味する。ヒトは、同一の遺伝子及び同一のゲノム領域上において、父親又は母親からそれぞれ受け継いだ合計2セットの配列(すなわち、アレル)をもつ。父も母も同じ配列を有する場合には「ホモ」と表現されることがあり、互いに異なる配列を有する場合には「ヘテロ」と表現されることがある。
本明細書においては、ゲノム領域上で検出される一以上の塩基配列(α)からなるアレルを「アレルα」と記載する。例えば、特定のゲノム領域においてA(アデニン)がアレルとして検出される場合、「アレルA」と記載する。同様に、T(チミン)がアレルとして検出される場合、「アレルT」と記載し、G(グアニン)がアレルとして検出される場合、「アレルG」と記載し、C(シトシン)がアレルとして検出される場合、「アレルC」と記載し、その他の塩基についても同様に記載する。所定のゲノム領域上で塩基が欠損している場合、「アレル-」と記載する。
「リスクアレル」とは、ゲノム領域上で検出される複数種類の一塩基多型のうち、病気、疾患の罹患、症状が認められる確率が高くなるアレルを意味する。例えばアレルAとアレルGの一塩基多型のうち、アレルGを保有するヒトの病気のリスクがアレルAを保有するヒトと比較して相対的に高い場合(例えば、2倍程度)、アレルGがリスクアレル、すなわち、病気のリスクを上昇させる方のアレルである。
また、特定のゲノム領域上で5’-・・・「AA」・・・-3’の塩基配列が高頻度に検出される一塩基多型を、「アレルAA」と記載する。他の二以上の塩基からなる塩基配列についても同様に記載する。
「脈管」とは、臓器及び組織の代謝輸送路である。血液が流れる脈管が血管であり、リンパ液が流れる脈管がリンパ管である。
「脈管ネットワーク」とは、生体内で形成される脈管の管腔のネットワーク網を意味する。
「脈管リモデリング」とは、脈管に対する種々の刺激に対応して生じる、脈管を構成する細胞及び細胞外マトリックスの変化による脈管の構造変化及び機能変化を意味する。本発明においては、脈管の新生において脈管ネットワークを構築する際の脈管の構造変化及び機能変化を単に「脈管リモデリング」と記載することがある。ここで、「脈管の新生」としては、例えば、個体発生時の脈管樹形成期における脈管の形成;成熟個体の循環血液動態の改変のための脈管の形成;病的な炎症及び組織障害が起きた後の修復過程における脈管の形成が挙げられる。
「プライマー」及び「プローブ」とは、DNA及びRNAのいずれか一方又は両方と相補対を形成するヌクレオチドを意味する。
「GWAS」とは、Genome Wide Association Studyの略であり、ゲノムワイド関連解析と称される。
「SNP」とは、Single Nucleotide Polymorphismの略であり、本明細書においては「一塩基多型」と記載する。複数のSNPの総称を「SNPs」と記載することがある。
「被験者」は、検査対象としてのヒトを意味する。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0012】
<薬効予測用バイオマーカー>
本発明の薬効予測用バイオマーカーは、臓器に貯留した体液を排出させる薬剤の薬効を予測するためのバイオマーカーである。
臓器に貯留した体液を排出させる薬剤(以下「薬剤」と記載する。)としては、例えば、V2受容体拮抗薬が好ましい。V2受容体拮抗薬としては、例えば、トルバブタン(製品名「サムスカ」、大塚製薬株式会社)が挙げられる。トルバブタンは、肝臓に貯留した体液である腹水を強制的に排出させる薬剤である。
ただし、本発明においては、薬剤は、トルバブタンに限定されない。薬剤は、心疾患等の種々の疾患により発生する体液及び組織液の異常貯留、後述の実施例に記載の仮説のように種々の浮腫を伴う患者に投与される薬剤であれば、本発明の薬効予測用バイオマーカーによって薬効を予測できると考えられる。
【0013】
本発明の薬効予測用バイオマーカーは、米国バイオテクノロジー情報センターのSNPデータベースに登録された下記のrs番号で特定される一塩基多型及び下記のゲノム領域で検出される一塩基多型からなる群から選ばれる少なくとも一つ以上の一塩基多型である。
【0014】
「rs番号」
rs77769596、rs116951693、rs199623596、rs141544115、rs78650683、rs61773260、rs16827413、rs3736931、rs77980226、rs1885744、rs68016527、rs10800602、rs4915165、rs149057569、rs78506769、rs144622901、rs191498017、rs117878160、rs2861960、rs6738731、rs139777869、rs7606583、rs548655480、rs9818982、rs73093151、rs28722753、rs190430047、rs146677134、rs147398967、rs201727204、rs146161796、rs146974727、rs76934337、rs28724305、rs139082715、rs202039738、rs558310023、rs373193142、rs3108399、rs146184416、rs149351859、rs117186452、rs192877030、rs368145706、rs142073533、rs144330279、rs185364332、rs78306822、rs73746613、rs117565657、rs142078510、rs536782924、rs13358143、rs117217176、rs145513135、rs138786151、rs75479599、rs138025072、rs73416655、rs9358200、rs117952795、rs187188904、rs17279589、rs116255027、rs41279866、rs2242480、rs28371759、rs34784390、rs12721627、rs4646474、rs368125720、rs200112828、rs148391916、rs57649937、rs77535773、rs149607532、rs76148287、rs6956740、rs140143507、rs144155862、rs190856909、rs142154029、rs138882192、rs150413109、rs149631544、rs188579453、rs138430375、rs146943578、rs117377672、rs4739103、rs76335247、rs139552329、rs143804156、rs2991364、rs9299186、rs4978937、rs143816412、rs16907787、rs150949929、rs141204966、rs150684513、rs143150122、rs190968040、rs79875703、rs78332808、rs151314241、rs74236102、rs141277618、rs12227766、rs17012289、rs73166235、rs73166243、rs56127528、rs17487644、rs11290772、rs145849286、rs139361259、rs141696046、rs147493082、rs149200875、rs7150903、rs79594269、rs140034212、rs186766499、rs11852611、rs118115242、rs6496797、rs4541027、rs285753、rs79740453、rs3760436、rs11361451、rs115523756、rs60619936、rs142571079、rs146099575、rs62103373、rs183728329、rs764818965、rs369720664、rs76726076、rs2071643、rs137967792、rs56689668、rs5201、rs5202、rs2070097、rs5904376、rs781940941、rs781941435、rs4898372、rs73627255、rs3761527、rs3761529、rs138461346、rs12559136、rs4898458、rs151275155、rs142251323、rs186986494、rs2872601、rs5945370、rs183746106、rs5945368、rs5987180、rs55702376、rs5987179、rs111399454、rs7886319、rs7052686、rs5945169、rs150224573、rs145658816、rs141108459、rs113549204、rs148460019、rs186585558、rs2071126、rs5945367、rs782472424。
【0015】
「ゲノム領域」
chr2:57009383、chr4:56445490、chr4:77343844、chr4:77985714、chr4:184681293、chr5:106033177、chr7:119762819、chr7:126519252、chr11:81185465、chr13:96979189、chr14:95984290、chr22:29908953。ここで、例えば、「chr2:57009383」は、第2染色体の57009383番目の塩基の位置を意味する。
【0016】
これらのゲノム領域で検出される一塩基多型は、下記の通りである。
chr2:57009383:C>CT、chr4:56445490:T>TTTTG、chr4:77343844:GCCCTCT>G、chr4:77985714:T>TA、chr4:184681293:T>TA、chr5:106033177:T>TA、chr7:119762819:CACACACACAT>C、chr7:126519252:GA>G、chr11:81185465:T>C、chr13:96979189:A>G、chr14:95984290:GTGTA>G、chr22:29908953:A>AG。ここで、例えば、「chr2:57009383:C>CT」は、第2染色体の57009383番目に位置する塩基におけるC>CT多型を意味する。
【0017】
本発明の薬効予測用バイオマーカーを構成する一塩基多型について、表1~6に示す。すなわち、本発明の薬効予測用バイオマーカーは、下記(1)~(192)の一塩基多型からなる群から選ばれる少なくとも一つ以上の一塩基多型である。
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
(1):rs77769596で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルC及びアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(2):rs116951693で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(3):rs199623596で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルAGAより高頻度に検出される欠失型の一塩基多型である。
(4):rs141544115で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(5):rs78650683で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルA及びアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(6):rs61773260で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(7):rs16827413で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(8):rs3736931で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(9):rs77980226で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(10):rs1885744で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(11):rs68016527で特定される一塩基多型であり、アレルCCCがアレルCCより高頻度に検出される挿入型の一塩基多型である。
(12):rs10800602で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(13):rs4915165で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(14):rs149057569で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(15):rs78506769で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(16):ゲノム領域「chr2:57009383」で検出される一塩基多型であり、アレルCがアレルCTより高頻度に検出される欠損型の一塩基多型である。
(17):rs144622901で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(18):rs191498017で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(19):rs117878160で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルAより高頻度に検出される一塩基多型である。
(20):rs2861960で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
【0025】
(21):rs6738731で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(22):rs139777869で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(23):rs7606583で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(24):rs548655480で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(25):rs9818982で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルAより高頻度に検出される一塩基多型である。
(26):rs73093151で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(27):rs28722753で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルA及びアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(28):rs190430047で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(29):rs146677134で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルG及びアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(30):rs147398967で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(31):rs201727204で特定される一塩基多型であり、アレルATAAATAAATがアレルATAAATより高頻度に検出される挿入型の一塩基多型である。
(32):rs146161796で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(33):rs146974727で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルAより高頻度に検出される一塩基多型である。
(34):rs76934337で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(35):rs28724305で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルAより高頻度に検出される一塩基多型である。
(36):rs139082715で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(37):rs202039738で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルTTより高頻度に検出される欠損型の一塩基多型である。
(38):ゲノム領域「chr4:56445490」で検出される一塩基多型であり、アレルTがアレルTTTTGより高頻度に検出される欠損型の一塩基多型である。
(39):ゲノム領域「chr4:77343844」で検出される一塩基多型であり、アレルGCCCTCTがアレルGより高頻度に検出される挿入型の一塩基多型である。
(40):ゲノム領域「chr4:77985714」で検出される一塩基多型であり、アレルTがアレルTAより高頻度に検出される欠損型の一塩基多型である。
【0026】
(41):rs558310023で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(42):rs373193142で特定される一塩基多型であり、アレルATAGATAがアレルATAより高頻度に検出される挿入型の一塩基多型である。
(43):rs3108399で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(44):rs146184416で特定される一塩基多型であり、アレルCTTACCTTACCTがアレルCTTACCTより高頻度に検出される挿入型の一塩基多型である。
(45):rs149351859で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(46):rs117186452で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(47):rs192877030で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルAより高頻度に検出される一塩基多型である。
(48):rs368145706で特定される一塩基多型であり、アレルGGがアレルGより高頻度に検出される挿入型の一塩基多型である。
(49):rs142073533で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(50):rs144330279で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルAより高頻度に検出される一塩基多型である。
(51):ゲノム領域「chr4:184681293」で検出される一塩基多型であり、アレルTがアレルTAより高頻度に検出される欠損型の一塩基多型である。
(52):rs185364332で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルAより高頻度に検出される一塩基多型である。
(53):rs78306822で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(54):rs73746613で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(55):rs117565657で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(56):rs142078510で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルAより高頻度に検出される一塩基多型である。
(57):rs536782924で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(58):rs13358143で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(59):rs117217176で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(60):ゲノム領域「chr5:106033177」で検出される一塩基多型であり、アレルTがアレルTAより高頻度に検出される欠損型の一塩基多型である。
【0027】
(61):rs145513135で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(62):rs138786151で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(63):rs75479599で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(64):rs138025072で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルAより高頻度に検出される一塩基多型である。
(65):rs73416655で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルG及びアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(66):rs9358200で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(67):rs117952795で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(68):rs187188904で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(69):rs17279589で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(70):rs116255027で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(71):rs41279866で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(72):rs2242480で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(73):rs28371759で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(74):rs34784390で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルTTより高頻度に検出される欠損型の一塩基多型である。
(75):rs12721627で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(76):rs4646474で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(77):rs368125720で特定される一塩基多型であり、アレル-がアレルTCTより高頻度に検出される欠損型の一塩基多型である。
(78):rs200112828で特定される一塩基多型であり、アレル-がアレルTより高頻度に検出される欠損型の一塩基多型である。
(79):rs148391916で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルA及びアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(80):rs57649937で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレル-より高頻度に検出される挿入型の一塩基多型である。
【0028】
(81):rs77535773で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(82):rs149607532で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(83):rs76148287で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルAより高頻度に検出される一塩基多型である。
(84):rs6956740で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルA、アレルG及びアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(85):ゲノム領域「chr7:119762819」で検出される一塩基多型であり、アレルCACACACACATがアレルCより高頻度に検出される挿入型の一塩基多型である。
(86):rs140143507で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルAより高頻度に検出される一塩基多型である。
(87):rs144155862で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(88):rs190856909で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルA及びアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(89):rs142154029で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(90):rs138882192で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(91):ゲノム領域「chr7:126519252」で検出される一塩基多型であり、アレルGAがアレルGより高頻度に検出される挿入型の一塩基多型である。
(92):rs150413109で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(93):rs149631544で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(94):rs188579453で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルC及びアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(95):rs138430375で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(96):rs146943578で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルC、アレルG及びアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(97):rs117377672で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(98):rs4739103で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(99):rs76335247で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルA及びアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(100):rs139552329で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルAより高頻度に検出される一塩基多型である。
【0029】
(101):rs143804156で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(102):rs2991364で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(103):rs9299186で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(104):rs4978937で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(105):rs143816412で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(106):rs16907787で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(107):rs150949929で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(108):rs141204966で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルA及びアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(109):rs150684513で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルAより高頻度に検出される一塩基多型である。
(110):rs143150122で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルA及びアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(111):rs190968040で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(112):rs79875703で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(113):ゲノム領域「chr11:81185465」で検出される一塩基多型であり、アレルTがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(114):rs78332808で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(115):rs151314241で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(116):rs74236102で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(117):rs141277618で特定される一塩基多型であり、アレル-がアレルCより高頻度に検出される欠損型の一塩基多型である。
(118):rs12227766で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(119):rs17012289で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(120):rs73166235で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルAより高頻度に検出される一塩基多型である。
【0030】
(121):rs73166243で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(122):rs56127528で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(123):rs17487644で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(124):rs11290772で特定される一塩基多型であり、アレルCCCがアレルCCより高頻度に検出される挿入型の一塩基多型である。
(125):rs145849286で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルAより高頻度に検出される一塩基多型である。
(126):rs139361259で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(127):rs141696046で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(128):ゲノム領域「chr13:96979189」で検出される一塩基多型であり、アレルAがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(129):rs147493082で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルAより高頻度に検出される一塩基多型である。
(130):rs149200875で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(131):rs7150903で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(132):rs79594269で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(133):rs140034212で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルA及びアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(134):rs186766499で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルAより高頻度に検出される一塩基多型である。
(135):ゲノム領域「chr14:95984290」で検出される一塩基多型であり、アレルGTGTAがアレルGより高頻度に検出される挿入型の一塩基多型である。
(136):rs11852611で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(137):rs118115242で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルAより高頻度に検出される一塩基多型である。
(138):rs6496797で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルC及びアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(139):rs4541027で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(140):rs285753で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルAより高頻度に検出される一塩基多型である。
【0031】
(141):rs79740453で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(142):rs3760436で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(143):rs11361451で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレル-より高頻度に検出される挿入型の一塩基多型である。
(144):rs115523756で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(145):rs60619936で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレル-より高頻度に検出される挿入型の一塩基多型である。
(146):rs142571079で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(147):rs146099575で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(148):rs62103373で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(149):rs183728329で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルAより高頻度に検出される一塩基多型である。
(150):ゲノム領域「chr22:29908953」で検出される一塩基多型であり、アレルAがアレルAGより高頻度に検出される欠損型の一塩基多型である。
(151):rs764818965で特定される一塩基多型である。
(152):rs369720664で特定される一塩基多型である。
(153):rs76726076で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルA、アレルC及びアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(154):rs2071643で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(155):rs137967792で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(156):rs56689668で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(157):rs5201で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(158):rs5202で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(159):rs2070097で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(160):rs5904376で特定される一塩基多型であり、アレルCCCがアレルCCCCより高頻度に検出される欠損型の一塩基多型である。
【0032】
(161):rs781940941で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルA、アレルG及びアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(162):rs781941435で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(163):rs4898372で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルC及びアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(164):rs73627255で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルAより高頻度に検出される一塩基多型である。
(165):rs3761527で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(166):rs3761529で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルAより高頻度に検出される一塩基多型である。
(167):rs138461346で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルAより高頻度に検出される一塩基多型である。
(168):rs12559136で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルAより高頻度に検出される一塩基多型である。
(169):rs4898458で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(170):rs151275155で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(171):rs142251323で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルAより高頻度に検出される一塩基多型である。
(172):rs186986494で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(173):rs2872601で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルAより高頻度に検出される一塩基多型である。
(174):rs5945370で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(175):rs183746106で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルAより高頻度に検出される一塩基多型である。
(176):rs5945368で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルG及びアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(177):rs5987180で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(178):rs55702376で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(179):rs5987179で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルG及びアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(180):rs111399454で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルAより高頻度に検出される一塩基多型である。
【0033】
(181):rs7886319で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルC、アレルG及びアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(182):rs7052686で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(183):rs5945169で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(184):rs150224573で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルAより高頻度に検出される一塩基多型である。
(185):rs145658816で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(186):rs141108459で特定される一塩基多型であり、アレルTがアレルCより高頻度に検出される一塩基多型である。
(187):rs113549204で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルGより高頻度に検出される一塩基多型である。
(188):rs148460019で特定される一塩基多型であり、アレルAがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(189):rs186585558で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルAより高頻度に検出される一塩基多型である。
(190):rs2071126で特定される一塩基多型であり、アレルGがアレルAより高頻度に検出される一塩基多型である。
(191):rs5945367で特定される一塩基多型であり、アレルCがアレルTより高頻度に検出される一塩基多型である。
(192):rs782472424で特定される一塩基多型であり、アレル-がアレルAより高頻度に検出される欠損型の一塩基多型である。
【0034】
本発明の薬効予測用バイオマーカーは、(1)~(192)の少なくとも一種の一塩基多型又は少なくとも二種以上の一塩基多型の組合せである。本発明の薬効予測用バイオマーカーが(1)~(192)の一塩基多型の少なくとも二種以上の組合せであると、さらに優れた精度で薬剤の薬効を事前に予測できると期待される。
【0035】
特に、本発明の薬効予測用バイオマーカーとしては、(1)~(192)の一塩基多型の中でも、発明者らによる実験データの解析が進んでいることから、(102)、(103)及び(104)からなる群から選ばれる少なくとも一つが好ましい。すなわち、本発明の薬効予測用バイオマーカーとしては、rs2991364、rs9299186及びrs4978937からなる群から選ばれる少なくとも一つ以上のrs番号で特定される一塩基多型が好ましく、rs2991364で特定される一塩基多型がより好ましい。
【0036】
本発明の薬効予測用バイオマーカーは、上述の(1)~(192)の一塩基多型の検出を指標とすることで、薬剤の薬効性が本来期待される程度より低いか否かの予測に使用するバイオマーカーである。よって、上述の(1)~(192)の一塩基多型に対応するアレルを保有する被験者においては、臓器不全に起因する体液貯留の改善を期待しにくいほど薬効が不充分であると予測する。
ここで、「(1)~(192)の一塩基多型に対応するアレルを保有する」とは、例えば、一塩基多型が(102)である場合、所定のゲノム領域上にアレルTを保有することを意味する。例えば、一塩基多型が(102)のrs2991364の場合、アレルがCかTであり、ターゲットアレルがTである。したがって、遺伝型がT/T>T/C>C/Cの順番で、被験体は臓器不全に起因する体液貯留の改善を期待しにくいほど薬効が不充分であると予測される。この場合、被験体は、rs299136のアレルTを保有する遺伝型を示している。その他の一塩基多型についても同様である。
したがって、上述の(1)~(192)の一塩基多型に対応するアレルを保有する遺伝型を示す被験体において、臓器不全に起因する体液貯留の改善を期待しにくいほど薬効が不充分であると予測する。
【0037】
(作用機序)
以上説明した本発明の薬効予測用バイオマーカーは、後述の実施例に記載のように、薬剤が投与され、薬効性の程度を確認した患者群に対してGWASを行った結果、薬効性が相対的に不充分であった患者群において有意に高頻度に検出された一塩基多型である。そのため、被験者から採取したサンプルとしての核酸にこれらの一塩基多型である薬効予測用バイオマーカーが検出されると、臓器不全に起因する体液貯留の改善を期待しにくいほど薬効が不充分である、と優れた精度で事前に予測できる。
【0038】
(用途)
本発明の薬効予測用バイオマーカーは、例えば、バソプレシン等のV2受容体拮抗薬の薬効の事前の予測に適用できる。
本発明の薬効予測用バイオマーカーは、例えば、後述の本発明の薬効予測用試薬、薬効予測用キット、薬効予測方法に適用できる。本発明の薬効予測用バイオマーカーの用途の詳細は、後述の<薬効予測用試薬>、<薬効予測用キット>、<薬効予測方法>の各項目において詳細に説明する。
適用対象の浮腫の具体的態様としては、全身性浮腫、局所性浮腫が挙げられる。浮腫の原因は特に限定されない。全身性浮腫としては、例えば、腎性浮腫、心性浮腫、肝性浮腫、栄養障害性浮腫、薬剤性浮腫、内分泌疾患による浮腫、特発性浮腫等が挙げられる。局所性浮腫としては、例えば、静脈性浮腫、リンパ性浮腫、炎症性浮腫、血管神経性浮腫等が挙げられる。ただし、浮腫の具体的態様はこれらの例示に限定されない。
【0039】
<薬効予測用試薬>
本発明の薬効予測用試薬は、臓器に貯留した体液を排出させる薬剤の薬効を予測するための試薬である。本発明の薬効予測用試薬は、上述の本発明の薬効予測用バイオマーカーである一塩基多型が検出されるゲノム領域に特異的な核酸(A)を含む。本発明の薬効予測用試薬は、核酸(A)以外の任意成分をさらに含んでもよい。
【0040】
核酸(A)は、本発明の薬効予測用試薬は、上述の本発明の薬効予測用バイオマーカーである一塩基多型が検出されるゲノム領域に特異的に結合する。
核酸(A)は、上述のプライマー及びプローブであるとも言える。すなわち、核酸(A)は、薬効予測用バイオマーカーが検出され得るゲノム領域に特異的に相補対を形成する。
核酸(A)は、薬効予測用バイオマーカーが検出され得るゲノム領域に相補的な配列を有する。ただし、核酸(A)は、特異的な相補対の形成が可能であれば、多少のミスマッチがあってもよい。ミスマッチの程度としては、1~数個でもよく、1~5個でもよく、1~3個でもよい。
【0041】
核酸(A)の塩基長は、薬効予測用バイオマーカーが検出され得るゲノム領域と特異的に相補対を形成できれば特に限定されない。例えば、プローブの場合、15~150塩基長でもよく、16~100塩基長でもよい。例えば、プライマーの場合、10~70塩基長でもよく、15~60塩基長でもよく、20~50塩基長でもよい。
核酸(A)は、例えば、ホスホジエステル法により合成できる。
核酸(A)の設計、合成等に関しては、例えばMolecular Cloning,Third Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York等の成書を参照できる。
【0042】
核酸(A)は予め標識物質で標識してもよい。標識物質による標識により、例えば、PCR増幅産物の標識量を指標として本発明の薬効予測用バイオマーカーを検出してもよい。
標識物質としては、例えば、国際公開第2017/191720号の段落0021に例示のものを使用できる。
標識方法としては、例えば、国際公開第2017/191720号の段落0020に例示のものを使用できる。
【0043】
薬効予測用試薬における任意成分は特に限定されない。例えば、核酸(A)の保存状態の向上に寄与する成分等が考えられる。
【0044】
本発明の薬効予測用試薬は、本発明の薬効予測用バイオマーカーである一塩基多型が検出されるゲノム領域に特異的な核酸を含む。そのため、被験者から採取したサンプル中のゲノム領域上において、上述の薬効予測用バイオマーカーを含むゲノム領域と特異的に相補対を形成できる。したがって、例えば、後述の<薬効予測方法>の項で述べる検出方法により、一塩基多型を検出すれば、被験者が当該一塩基多型に対応するアレルを保有する遺伝型を示すか否かを判定できる。結果として、臓器不全に起因する体液貯留の改善を期待しにくいほど薬効が不充分である、と優れた精度で事前に予測できる。
【0045】
<薬効予測用キット>
本発明の薬効予測用キットは、臓器に貯留した体液を排出させる薬剤の薬効を予測するためのキットである。本発明の薬効予測用キットは、上述の本発明の薬効予測用試薬を備える。
【0046】
本発明の薬効予測用キットは、上述の<薬効予測用試薬>の項目において述べた核酸(A)を備えてもよい。核酸(A)の詳細及び好ましい態様は、上述の<薬効予測用試薬>の項目において述べた内容と同内容とすることができる。
本発明の薬効予測用キットは、核酸(A)をプライマー及びプローブとして使用する際に必要なDNAポリメラーゼ、制限酵素、緩衝液、発色試薬等の試薬をさらに備えてもよく、容器、採取用の器具等をさらに備えてもよく、取扱説明書をさらに備えてもよい。
【0047】
本発明の薬効予測用キットは、本発明の薬効予測用バイオマーカーを検出するための薬効予測用試薬を備える。そのため、本発明の薬効予測用キットによれば、臓器不全に起因する体液貯留の改善を期待しにくいほど薬効が不充分である、と優れた精度で事前に予測できる。
【0048】
<薬効予測方法>
本発明の薬効予測方法は、臓器に貯留した体液を排出するための薬剤の薬効を予測する方法である。
本発明の薬効予測方法では、被験者から採取した核酸の塩基配列について、本発明の薬効予測用バイオマーカーを検出する。
本発明の薬効予測方法においては、上述の(1)~(192)の一塩基多型に対応するアレルが検出された場合、薬剤の薬効性が本来期待される程度より低いと予測する。すなわち、上述の(1)~(192)の一塩基多型に対応するアレルを保有する被験者においては、臓器不全に起因する体液貯留の改善を期待しにくいほど薬効が不充分であると予測する。
【0049】
「薬効予測用バイオマーカーを検出する」とは、被験者が上述の(1)~(192)の一塩基多型に対応するアレルを保有する遺伝型を示すか否かを検出することを意味する。 よって、本発明の薬効予測方法においては、下記の〔1〕~〔192〕のいずれかの遺伝型を示す被験者であれば、臓器不全に起因する体液貯留の改善を期待しにくいほど薬効が不充分であると予測できる。
【0050】
〔1〕:rs77769596のアレルAを保有する遺伝型である。
〔2〕:rs116951693のアレルTを保有する遺伝型である。
〔3〕:rs199623596のアレルAを保有する遺伝型である。
〔4〕:rs141544115のアレルAを保有する遺伝型である。
〔5〕:rs78650683のアレルCを保有する遺伝型である。
〔6〕:rs61773260のアレルTを保有する遺伝型である。
〔7〕:rs16827413のアレルCを保有する遺伝型である。
〔8〕:rs3736931のアレルAを保有する遺伝型である。
〔9〕:rs77980226のアレルCを保有する遺伝型である。
〔10〕:rs1885744のアレルCを保有する遺伝型である。
〔11〕:rs68016527のアレルCCCを保有する遺伝型である。
〔12〕:rs10800602のアレルAを保有する遺伝型である。
〔13〕:rs4915165のアレルTを保有する遺伝型である。
〔14〕:rs149057569のアレルCを保有する遺伝型である。
〔15〕:rs78506769のアレルGを保有する遺伝型である。
〔16〕:ゲノム領域「chr2:57009383」で検出されるアレルCを保有する遺伝型である。
〔17〕:rs144622901のアレルCを保有する遺伝型である。
〔18〕:rs191498017のアレルGを保有する遺伝型である。
〔19〕:rs117878160のアレルGを保有する遺伝型である。
〔20〕:rs2861960のアレルCを保有する遺伝型である。
【0051】
〔21〕:rs6738731のアレルCを保有する遺伝型である。
〔22〕:rs139777869のアレルTを保有する遺伝型である。
〔23〕:rs7606583のアレルCを保有する遺伝型である。
〔24〕:rs548655480のアレルCを保有する遺伝型である。
〔25〕:rs9818982のアレルGを保有する遺伝型である。
〔26〕:rs73093151のアレルCを保有する遺伝型である。
〔27〕:rs28722753のアレルCを保有する遺伝型である。
〔28〕:rs190430047のアレルTを保有する遺伝型である。
〔29〕:rs146677134のアレルAを保有する遺伝型である。
〔30〕:rs147398967のアレルAを保有する遺伝型である。
〔31〕:rs201727204のアレルATAAATAAATを保有する遺伝型である。
〔32〕:rs146161796のアレルAを保有する遺伝型である。
〔33〕:rs146974727のアレルTを保有する遺伝型である。
〔34〕:rs76934337のアレルAを保有する遺伝型である。
〔35〕:rs28724305のアレルGを保有する遺伝型である。
〔36〕:rs139082715のアレルCを保有する遺伝型である。
〔37〕:rs202039738のアレルTを保有する遺伝型である。
〔38〕:ゲノム領域「chr4:56445490」で検出されるアレルTを保有する遺伝型である。
〔39〕:ゲノム領域「chr4:77343844」で検出されるアレルGCCCTCTを保有する遺伝型である。
〔40〕:ゲノム領域「chr4:77985714」で検出されるアレルTを保有する遺伝型である。
【0052】
〔41〕:rs558310023のアレルAを保有する遺伝型である。
〔42〕:rs373193142のアレルATAGATAを保有する遺伝型である。
〔43〕:rs3108399のアレルAを保有する遺伝型である。
〔44〕:rs146184416のアレルCTTACCTTACCTを保有する遺伝型である。
〔45〕:rs149351859のアレルTを保有する遺伝型である。
〔46〕:rs117186452のアレルTを保有する遺伝型である。
〔47〕:rs192877030のアレルGを保有する遺伝型である。
〔48〕:rs368145706のアレルGGを保有する遺伝型である。
〔49〕:rs142073533のアレルAを保有する遺伝型である。
〔50〕:rs144330279のアレルGを保有する遺伝型である。
〔51〕:ゲノム領域「chr4:184681293」で検出されるアレルTを保有する遺伝型である。
〔52〕:rs185364332のアレルGを保有する遺伝型である。
〔53〕:rs78306822のアレルCを保有する遺伝型である。
〔54〕:rs73746613のアレルTを保有する遺伝型である。
〔55〕:rs117565657のアレルTを保有する遺伝型である。
〔56〕:rs142078510のアレルGを保有する遺伝型である。
〔57〕:rs536782924のアレルAを保有する遺伝型である。
〔58〕:rs13358143のアレルGを保有する遺伝型である。
〔59〕:rs117217176のアレルCを保有する遺伝型である。
〔60〕:ゲノム領域「chr5:106033177」で検出されるアレルTを保有する遺伝型である。
【0053】
〔61〕:rs145513135のアレルCを保有する遺伝型である。
〔62〕:rs138786151のアレルTを保有する遺伝型である。
〔63〕:rs75479599のアレルAを保有する遺伝型である。
〔64〕:rs138025072のアレルGを保有する遺伝型である。
〔65〕:rs73416655のアレルAを保有する遺伝型である。
〔66〕:rs9358200のアレルAを保有する遺伝型である。
〔67〕:rs117952795のアレルCを保有する遺伝型である。
〔68〕:rs187188904のアレルAを保有する遺伝型である。
〔69〕:rs17279589のアレルAを保有する遺伝型である。
〔70〕:rs116255027のアレルTを保有する遺伝型である。
〔71〕:rs41279866のアレルCを保有する遺伝型である。
〔72〕:rs2242480のアレルCを保有する遺伝型である。
〔73〕:rs28371759のアレルAを保有する遺伝型である。
〔74〕:rs34784390のアレルTを保有する遺伝型である。
〔75〕:rs12721627のアレルGを保有する遺伝型である。
〔76〕:rs4646474のアレルCを保有する遺伝型である。
〔77〕:rs368125720のアレル-を保有する遺伝型である。
〔78〕:rs200112828のアレル-を保有する遺伝型である。
〔79〕:rs148391916のアレルTを保有する遺伝型である。
〔80〕:rs57649937のアレルAを保有する遺伝型である。
【0054】
〔81〕:rs77535773のアレルGを保有する遺伝型である。
〔82〕:rs149607532のアレルTを保有する遺伝型である。
〔83〕:rs76148287のアレルGを保有する遺伝型である。
〔84〕:rs6956740のアレルCを保有する遺伝型である。
〔85〕:ゲノム領域「chr7:119762819」で検出されるアレルCACACACACATを保有する遺伝型である。
〔86〕:rs140143507のアレルTを保有する遺伝型である。
〔87〕:rs144155862のアレルAを保有する遺伝型である。
〔88〕:rs190856909のアレルCを保有する遺伝型である。
〔89〕:rs142154029のアレルTを保有する遺伝型である。
〔90〕:rs138882192のアレルCを保有する遺伝型である。
〔91〕:ゲノム領域「chr7:126519252」で検出されるアレルGAを保有する遺伝型である。
〔92〕:rs150413109のアレルCを保有する遺伝型である。
〔93〕:rs149631544のアレルTを保有する遺伝型である。
〔94〕:rs188579453のアレルGを保有する遺伝型である。
〔95〕:rs138430375のアレルAを保有する遺伝型である。
〔96〕:rs146943578のアレルAを保有する遺伝型である。
〔97〕:rs117377672のアレルAを保有する遺伝型である。
〔98〕:rs4739103のアレルCを保有する遺伝型である。
〔99〕:rs76335247のアレルGを保有する遺伝型である。
〔100〕:rs139552329のアレルGを保有する遺伝型である。
【0055】
〔101〕:rs143804156のアレルCを保有する遺伝型である。
〔102〕:rs2991364のアレルTを保有する遺伝型である。
〔103〕:rs9299186のアレルCを保有する遺伝型である。
〔104〕:rs4978937のアレルCを保有する遺伝型である。
〔105〕:rs143816412のアレルTを保有する遺伝型である。
〔106〕:rs16907787のアレルCを保有する遺伝型である。
〔107〕:rs150949929のアレルTを保有する遺伝型である。
〔108〕:rs141204966のアレルGを保有する遺伝型である。
〔109〕:rs150684513のアレルCを保有する遺伝型である。
〔110〕:rs143150122のアレルCを保有する遺伝型である。
〔111〕:rs190968040のアレルTを保有する遺伝型である。
〔112〕:rs79875703のアレルTを保有する遺伝型である。
〔113〕:ゲノム領域「chr11:81185465」で検出されるアレルTを保有する遺伝型である。
〔114〕:rs78332808のアレルTを保有する遺伝型である。
〔115〕:rs151314241のアレルAを保有する遺伝型である。
〔116〕:rs74236102のアレルCを保有する遺伝型である。
〔117〕:rs141277618のアレル-を保有する遺伝型である。
〔118〕:rs12227766のアレルTを保有する遺伝型である。
〔119〕:rs17012289のアレルAを保有する遺伝型である。
〔120〕:rs73166235のアレルGを保有する遺伝型である。
【0056】
〔121〕:rs73166243のアレルCを保有する遺伝型である。
〔122〕:rs56127528のアレルTを保有する遺伝型である。
〔123〕:rs17487644のアレルTを保有する遺伝型である。
〔124〕:rs11290772のアレルCCCを保有する遺伝型である。
〔125〕:rs145849286のアレルTを保有する遺伝型である。
〔126〕:rs139361259のアレルTを保有する遺伝型である。
〔127〕:rs141696046のアレルAを保有する遺伝型である。
〔128〕:ゲノム領域「chr13:96979189」で検出されるアレルAを保有する遺伝型である。
〔129〕:rs147493082のアレルGを保有する遺伝型である。
〔130〕:rs149200875のアレルAを保有する遺伝型である。
〔131〕:rs7150903のアレルAを保有する遺伝型である。
〔132〕:rs79594269のアレルCを保有する遺伝型である。
〔133〕:rs140034212のアレルGを保有する遺伝型である。
〔134〕:rs186766499のアレルGを保有する遺伝型である。
〔135〕:ゲノム領域「chr14:95984290」で検出されるアレルGTGTAを保有する遺伝型である。
〔136〕:rs11852611のアレルAを保有する遺伝型である。
〔137〕:rs118115242のアレルGを保有する遺伝型である。
〔138〕:rs6496797のアレルTを保有する遺伝型である。
〔139〕:rs4541027のアレルCを保有する遺伝型である。
〔140〕:rs285753のアレルGを保有する遺伝型である。
【0057】
〔141〕:rs79740453のアレルCを保有する遺伝型である。
〔142〕:rs3760436のアレルCを保有する遺伝型である。
〔143〕:rs11361451のアレルCを保有する遺伝型である。
〔144〕:rs115523756のアレルTを保有する遺伝型である。
〔145〕:rs60619936のアレルCを保有する遺伝型である。
〔146〕:rs142571079のアレルTを保有する遺伝型である。
〔147〕:rs146099575のアレルAを保有する遺伝型である。
〔148〕:rs62103373のアレルTを保有する遺伝型である。
〔149〕:rs183728329のアレルGを保有する遺伝型である。
〔150〕:ゲノム領域「chr22:29908953」で検出されるアレルAを保有する遺伝型である。
〔151〕:rs764818965のアレルを保有する遺伝型である。
〔152〕:rs369720664のアレルを保有する遺伝型である。
〔153〕:rs76726076のアレルGを保有する遺伝型である。
〔154〕:rs2071643のアレルCを保有する遺伝型である。
〔155〕:rs137967792のアレルCを保有する遺伝型である。
〔156〕:rs56689668のアレルTを保有する遺伝型である。
〔157〕:rs5201のアレルAを保有する遺伝型である。
〔158〕:rs5202のアレルCを保有する遺伝型である。
〔159〕:rs2070097のアレルAを保有する遺伝型である。
〔160〕:rs5904376のアレルCCCを保有する遺伝型である。
【0058】
〔161〕:rs781940941のアレルCを保有する遺伝型である。
〔162〕:rs781941435のアレルTを保有する遺伝型である。
〔163〕:rs4898372のアレルAを保有する遺伝型である。
〔164〕:rs73627255のアレルGを保有する遺伝型である。
〔165〕:rs3761527のアレルTを保有する遺伝型である。
〔166〕:rs3761529のアレルGを保有する遺伝型である。
〔167〕:rs138461346のアレルGを保有する遺伝型である。
〔168〕:rs12559136のアレルGを保有する遺伝型である。
〔169〕:rs4898458のアレルAを保有する遺伝型である。
〔170〕:rs151275155のアレルCを保有する遺伝型である。
〔171〕:rs142251323のアレルGを保有する遺伝型である。
〔172〕:rs186986494のアレルAを保有する遺伝型である。
〔173〕:rs2872601のアレルGを保有する遺伝型である。
〔174〕:rs5945370のアレルCを保有する遺伝型である。
〔175〕:rs183746106のアレルGを保有する遺伝型である。
〔176〕:rs5945368のアレルCを保有する遺伝型である。
〔177〕:rs5987180のアレルCを保有する遺伝型である。
〔178〕:rs55702376のアレルTを保有する遺伝型である。
〔179〕:rs5987179のアレルAを保有する遺伝型である。
〔180〕:rs111399454のアレルGを保有する遺伝型である。
【0059】
〔181〕:rs7886319のアレルAを保有する遺伝型である。
〔182〕:rs7052686のアレルGを保有する遺伝型である。
〔183〕:rs5945169のアレルAを保有する遺伝型である。
〔184〕:rs150224573のアレルGを保有する遺伝型である。
〔185〕:rs145658816のアレルAを保有する遺伝型である。
〔186〕:rs141108459のアレルTを保有する遺伝型である。
〔187〕:rs113549204のアレルAを保有する遺伝型である。
〔188〕:rs148460019のアレルAを保有する遺伝型である。
〔189〕:rs186585558のアレルGを保有する遺伝型である。
〔190〕:rs2071126のアレルGを保有する遺伝型である。
〔191〕:rs5945367のアレルCを保有する遺伝型である。
〔192〕:rs782472424のアレル-を保有する遺伝型である。
【0060】
例えば、一塩基多型が(102)のrs2991364の場合、すなわち、〔102〕の遺伝型の場合、アレルがCかTであり、ターゲットアレルがTである。したがって、遺伝型がT/T>C/T>C/Cの順番で、被験体は臓器不全に起因する体液貯留の改善を期待しにくいほど薬効が不充分であると予測される。
〔1〕~〔192〕の遺伝型に示す上述のその他の遺伝型においても、高頻度に検出される遺伝子多型のターゲットアレルの遺伝型において、被験体は臓器不全に起因する体液貯留の改善を期待しにくいほど薬効が不充分であると予測される。
【0061】
本発明の薬効予測方法においては、〔1〕~〔192〕の少なくとも一つ以上の遺伝型又は〔1〕~〔192〕の少なくとも二つ以上の遺伝型の組合せを被検者が示すか否かを検出する。
さらに優れた精度で薬剤の薬効を事前に予測できると期待されることから、〔1〕~〔192〕の少なくとも二つ以上の遺伝型の組合せを被検者が示すか否かを検出することが好ましい。
【0062】
特に、〔1〕~〔192〕の遺伝型の中でも、予測の精度がさらよくなることから、〔102〕、〔103〕及び〔104〕からなる群から選ばれる少なくとも一つの遺伝型が好ましく、〔102〕の遺伝型がより好ましい。
【0063】
本発明の薬効予測方法においては、予測の精度がさらによくなることから、上述の(1)~(192)の少なくとも一つの一塩基多型の検出に加えて、下記の臨床因子に基づいて薬剤の薬効を予測することが好ましい。
臨床因子:年齢、性別、身長、体重、Child-Pugh分類、血小板数、アルブミン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、総ビリルビン、血清尿素窒素、クレアチニン、ナトリウム、アンモニア、α-フェトプロテインから選ばれる少なくとも一つ以上。
【0064】
これらの臨床因子の中でも、予測の精度がさらによくなることから、臨床因子としては、血清尿素窒素、クレアチニン、ナトリウム、α-フェトプロテインからなる群から選ばれる少なくとも一つが好ましく、血清尿素窒素及びナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも一つがより好ましい。
【0065】
「臨床因子に基づいて薬剤の薬効を予測する」とは、臨床因子の値が基準値より大きいか又は小さいときに薬剤の薬効性が本来期待される程度より低い、と予測することを意味する。具体的には、例えば、多変量解析等の統計的手法によって一塩基多型のデータと臨床因子のデータとを組み合わせて、臨床因子を含めた多変量解析をすることで、さらに優れた精度で薬剤の薬効を事前に予測できると期待される。
前記基準値としては、これを超えると薬剤の薬効性が本来期待される程度より低くなると予測される値又はこれを下回ると薬剤の薬効性が本来期待される程度より低くなると予測される値が考えられる。前記基準値は、例えば、多変量解析等の統計的手法におけるカットオフ値が考えられる。
【0066】
被験者から採取した核酸は、例えば、被検者の血液、唾液、リンパ液、尿、汗、皮膚細胞、粘膜細胞、毛髪等から採取したサンプルから、ゲノムDNAを抽出し、ゲノムDNAを精製することで調製できる。抽出方法及び精製方法は特に限定されない。
本発明の薬効予測用バイオマーカーが検出され得るゲノム領域を含む核酸であれば、任意の長さのゲノムDNAをサンプルとしての核酸とすることができる。「薬効予測用バイオマーカーが検出され得るゲノム領域」の長さは、例えば16~500塩基長でもよく、18~200塩基長でもよい。
【0067】
被験者の人種及び集団は日本人及び日本人集団に限られない。被験者は、日本人以外のモンゴロイド、その他の人種(例えば、コーカソイド等)でもよい。ただし、日本人集団に対する中国人集団、韓国人集団等のように、遺伝的に近い集団では一塩基多型の種類及びアレル頻度が同様の傾向を示すことを考慮すると、被験者は、日本人、中国人、韓国人等のモンゴロイド;コーカソイドが好ましく、モンゴロイドがより好ましく、日本人がさらに好ましい。
【0068】
薬効予測用バイオマーカーの検出方法は、通常使用される一塩基多型の検出方法であれば特に限定されない。薬効予測用バイオマーカーの検出方法はとしては、例えば、アレルに特異的なプライマー及びプローブ等を使用し、PCR法による増幅及びPCRによる増幅産物の多型を発光によって検出する方法の他、国際公開第2017/191720号の段落0014に例示のものを使用できる。
検出方法は一種単独で使用してもよく、複数を併用してもよい。また、PCR法等によりサンプルとなる核酸を予め増幅した後に、薬効予測用バイオマーカーを検出してもよい。
多数のサンプルについて検出する場合、検出に要する時間が削減されることから、アレルに特異的なプライマー及びプローブ等を使用し、PCR法による増幅及びPCRによる増幅産物の多型を発光によって検出する方法;TaqMan-PCR法、Invader法、FRETを利用する方法、ASP-PCR法、プライマー伸長法を用いたMALDI-TOF/MS法、RCA法、DNAチップ又はマイクロアレイを用いる方法、DigiTag2法等が好ましい。
【0069】
プライマー及びプローブとしては、検出方法に応じてDNA、RNA、ペプチド核酸等が選択される。例えばMolecular Cloning(Third Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,NewYork)を参考にして相補対の形成条件を適宜設定してもよい。
プライマー及びプローブとして、上述の<薬効予測用試薬>の項で説明した核酸(A)を使用できる。そのため、プライマー及びプローブの詳細及び好ましい態様については、上述の<薬効予測用試薬>の項で説明した核酸(A)と同内容とすることができる。
【0070】
本発明の本発明の薬効予測方法では、被験者から採取した核酸の塩基配列について、本発明の薬効予測用バイオマーカーを検出する。そのため、被験者から採取したサンプルとしての核酸にこれらの一塩基多型である薬効予測用バイオマーカーが検出されたときに、臓器不全に起因する体液貯留の改善を期待しにくいほど薬効が不充分である、と優れた精度で事前に予測できる。
薬効予測方法によって臓器不全に起因する体液貯留の改善を期待しにくいほど薬効が不充分であると予測した場合、薬効予測用バイオマーカーを検出した後に、V2受容体拮抗薬等の薬剤の投与をしないことを選択する。これにより、不必要な患者の経済的負担及び入院に伴う負担の発生を低減できる。
一方、薬効予測方法によって臓器不全に起因する体液貯留の改善を期待できるほど薬効が充分であると予測した場合、V2受容体拮抗薬等の薬剤の投与をすることを選択する。これにより、薬剤による充分な治療効果を期待できる患者に対して選択的に薬剤を投与できる。
【0071】
本発明の本発明の薬効予測方法は、臓器に貯留した体液を排出するための薬剤の薬効予測のための方法であるとも言える。臓器に貯留した体液を排出するための薬剤の薬効予測のための方法においては、本発明の薬効予測方法と同様に、被験者から採取した核酸の塩基配列について、本発明の薬効予測用バイオマーカーを検出する。
本発明の本発明の薬効予測方法は、臓器に貯留した体液を排出するための薬剤の薬効予測のためにデータを収集する方法であるとも言える。臓器に貯留した体液を排出するための薬剤の薬効予測のためにデータを収集する方法においては、本発明の薬効予測方法と同様に、被験者から採取した核酸の塩基配列について、本発明の薬効予測用バイオマーカーを検出する。
【0072】
<組織液の回収能推測用バイオマーカー>
本発明の組織液の回収能推測用バイオマーカーは、脈管による組織液の回収能を推測するためのバイオマーカーである。脈管としては、例えば、肝臓と腎臓とを接続する血管、肝臓と腎臓とを接続するリンパ管が挙げられる。
【0073】
本発明の組織液の回収能推測用バイオマーカーは、米国バイオテクノロジー情報センターのSNPデータベースに登録された特定のrs番号で特定される一塩基多型及び特定のゲノム領域で検出される一塩基多型からなる群から選ばれる少なくとも一つ以上の一塩基多型である。
本発明の組織液の回収能推測用バイオマーカーは、<薬効予測用バイオマーカー>の項において述べた(1)~(192)の一塩基多型である。そのため、組織液の回収能推測用バイオマーカーの詳細及び好ましい態様は、<薬効予測用バイオマーカー>の項で述べた内容と同様である。
【0074】
(作用機序)
以上説明した本発明の組織液の回収能推測用バイオマーカーは、後述の実施例に示すように、薬剤が投与され、薬効性の程度を確認した患者群に対してGWASを行った結果、薬効性が相対的に不充分であった患者群において有意に高頻度に検出された一塩基多型である。
上述の(1)~(192)の一塩基多型の中には、(102)、(103)及び(104)のようにSVEP1という遺伝子のイントロン上に存在するものが含まれていることが判明した。SVEP1は、ヒト等の生物の発生段階においてリンパ管、血管等の脈管の形成に寄与すると考えられている遺伝子である。例えば、SVEP1のノックアウトマウスは、高度浮腫となりやすく、出生後間も無く死亡することが報告されている(Circ Res.2017;120:1276-1288)。
加えて、
図1に示すように、SVEP1の下流シグナルには、脈管ネットワーク及び弁形成に関わり、先天性リンパ浮腫症の原因遺伝子の一つであるFOXC2(Forkhead box protein C2)遺伝子が含まれている。FOXC2の遺伝子発現の制御が、リンパ管のリモデリング機構に関与している可能性も報告されている(J Clin Invest.2016;126(7):2437-2451)。
以上の報告を踏まえると、これらの一塩基多型の中には、例えば、rs2991364のリスクアレルにおいては、SVEP1遺伝子の下流シグナルのFOXC2遺伝子等の脈管の形成に寄与する遺伝子群の発現量が低下し、脈管ネットワーク及び脈管リモデリング機構が脆弱となっているという仮説を立てることができた(
図2)。そのため、貯留した組織液が脈管により回収されにくく、脈管による組織液の回収能が生まれつき低下していると推測できる。
【0075】
(用途)
本発明の組織液の回収能推測用バイオマーカーは、例えば、バソプレシン等のV2受容体拮抗薬の薬効の事前の予測に適用できる。
本発明の組織液の回収能推測用バイオマーカーは、例えば、後述の本発明の組織液の回収能推測用試薬、組織液の回収能推測用キット、組織液の回収能推測方法に適用できる。本発明の組織液の回収能推測用バイオマーカーの用途の詳細は、後述の<組織液の回収能推測用試薬>、<組織液の回収能推測用キット>、<組織液の回収能推測方法>の各項目において詳細に説明する。
適用対象としては浮腫が想定される。浮腫の具体的態様としては、全身性浮腫、局所性浮腫が挙げられる。浮腫の原因は特に限定されない。全身性浮腫としては、例えば、腎性浮腫、心性浮腫、肝性浮腫、栄養障害性浮腫、薬剤性浮腫、内分泌疾患による浮腫、特発性浮腫等が挙げられる。局所性浮腫としては、例えば、静脈性浮腫、リンパ性浮腫、炎症性浮腫、血管神経性浮腫等が挙げられる。ただし、浮腫の具体的態様はこれらの例示に限定されない。
【0076】
<組織液の回収能推測用試薬>
本発明の組織液の回収能推測用試薬は、脈管による組織液の回収能を推測するための試薬である。
本発明の組織液の回収能推測用試薬は、本発明の薬効予測用バイオマーカーである一塩基多型が検出されるゲノム領域に特異的な核酸を含む。
薬効予測用バイオマーカーである一塩基多型が検出されるゲノム領域に特異的な核酸の詳細及び好ましい態様は、上述の<薬効予測用試薬>の項で述べた核酸(A)と同内容である。
【0077】
本発明の組織液の回収能推測用試薬は、本発明の組織液の回収能推測用バイオマーカーである一塩基多型が検出されるゲノム領域に特異的な核酸を含む。そのため、被験者から採取したサンプル中のゲノム領域上において、組織液の回収能推測用バイオマーカーを含むゲノム領域と特異的に相補対を形成できる。したがって、例えば、<薬効予測方法>の項で述べた検出方法により、一塩基多型を検出すれば、被験者が当該一塩基多型に対応するアレルを保有する遺伝型を示すか否かを判定できる。結果として、脈管による組織液の回収能が生まれつき低下しているか否か推測できる。
【0078】
<組織液の回収能推測用キット>
組織液の回収能推測用キットは、脈管による組織液の回収能を予測するためのキットである。本発明の回収能推測用キットは、上述の本発明の回収能推測用試薬を備える。
【0079】
本発明の組織液の回収能推測用キットは、上述の<薬効予測用試薬>の項目において述べた核酸(A)を備えてもよい。核酸(A)の詳細及び好ましい態様は、上述の<薬効予測用試薬>の項目において述べた内容と同内容とすることができる。
本発明の組織液の回収能推測用キットは、核酸(A)をプライマー及びプローブとして使用する際に必要なDNAポリメラーゼ、制限酵素、緩衝液、発色試薬等の試薬をさらに備えてもよく、容器、採取用の器具等をさらに備えてもよく、取扱説明書をさらに備えてもよい。
【0080】
本発明の組織液の回収能推測用キットは、本発明の組織液の回収能推測用試薬を備える。そのため、本発明の組織液の回収能推測用キットによれば、脈管による組織液の回収能が生まれつき低下しているか否か推測できる。
【0081】
<組織液の回収能推測方法>
本発明の組織液の回収能推測方法は、脈管による組織液の回収能を推測する方法である。本発明の組織液の回収能推測方法では、被験者から採取した核酸の塩基配列について、本発明の組織液の回収能推測用バイオマーカーを検出する。
被験者、サンプル及び組織液のバイオマーカーの検出方法の詳細及び好ましい態様は、上述の<薬効予測方法>の項で述べた内容と同様である。
本発明の組織液の回収能推測方法では、被験者から採取した核酸の塩基配列について回収能推測用バイオマーカーを検出する。そのため、被験者から採取したサンプルとしての核酸にこれらの一塩基多型である組織液の回収能推測用バイオマーカーが検出されたとき、脈管による組織液の回収能が生まれつき低下していると推測できる。
組織液の回収能推測方法によって脈管による組織液の回収能が生まれつき低下していると推測した場合、組織液の回収能推測用バイオマーカーを検出した後に、適切な対応をする。対応としては、例えば、V2受容体拮抗薬等の薬剤の投与をしないことである。これにより、不必要な患者の経済的負担及び入院に伴う負担の発生を低減できる。
【0082】
本発明の本発明の組織液の回収能推測方法は、脈管による組織液の回収能の予測のための方法であるとも言える。脈管による組織液の回収能の予測のための方法においては、上述の<薬効予測方法>の項で述べた方法と同様にして、被験者から採取した核酸の塩基配列について、本発明の組織液の回収能推測用バイオマーカーを検出する。
本発明の本発明の組織液の回収能推測方法は、脈管による組織液の回収能の予測のためにデータを収集する方法であるとも言える。脈管による組織液の回収能の予測のためにデータを収集する方法においては、上述の<薬効予測方法>の項で述べた方法と同様にして、被験者から採取した核酸の塩基配列について、本発明の組織液の回収能推測用バイオマーカーを検出する。
【実施例0083】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されない。
【0084】
<略語の説明>
Case群:トルバプタンの投与により体重が増加した症例であり、トルバブタンの薬効が不充分であった症例群
Control群:トルバプタンの投与により1.5kg/週以上の体重の減少があった症例であり、トルバブタンの薬効が充分であった症例群
MAF:minor allele frequency
P-value:p値
OR:odds ratio(危険率)
Child(A/B/C):Child-Pugh分類の各グレードの症例数
GTEx:Genotype-Tissue Expression
ICGC:International Cancer Genome Consortium
SVEP1:sushi,von Willebrand factor type A,EGF and pentraxin domain containing 1
ITGA9:Integrin alpha9
「E」は10のべき乗を意味する。例えば、「2.4E-07」は、2.4×10-7を意味する。
【0085】
<研究デザイン>
図3に本実施例で行った研究デザインの概略を示す。
図3に示すように、本実施例では下記の「1.Discovery GWAS」、「2.Replication study」、「3.Combined analysis」の3つの検証について記載する。
【0086】
「1.Discovery GWAS」
研究対象の患者群は、共同研究施設にて肝硬変による難治性腹水に対してトルバプタンが投与された患者のうち、遺伝子研究に対する承諾が得られた253名である。こらのうち、Case群:25名と、Control群:156名についてGWASを実施した。
【0087】
「2.Replication study」
上記とは独立したコホートにおいて、肝硬変による難治性腹水にトルバプタンが投与されたCase群55例、Control群177例について、GWASを実施し、Replication studyとした。
【0088】
「3.Combined analysis」
Discovery GWAS及びReplication studyのすべてのCase群、Control群を用いた関連解析を行った。加えて、臨床因子を含めた多変量解析を行った。
【0089】
<SNPタイピング及び機能解析>
被験者から得られた血液由来のゲノムDNAに対してAffymetrix Axiom ASI1アレイを用いてゲノムワイドSNPタイピングを実施した。SNP call rate<0.95,MAF<0.05,Hardy-Weinberg平衡検定にて0.001以下でフィルタリングした411,709カ所のSNPを解析対象とした。
Replication studyには、GWASにて得られた候補SNPs(p<10-4:183SNPs)を含むSNPタイピングをDigiTag2法にて実施した。
関連解析とコホート研究における患者群と対照群のアレル頻度は、カイ2乗検定を用いて比較した。
【0090】
<Discovery GWASの結果>
全ゲノム上に分布する411,709カ所のマーカーSNPsに対して、Case群:25例とControl群:156例に対してGWASを実施した。各SNPsのアレル頻度を2群間で比較した結果、134のSNPsがトルバプタン治療効果との間に有意な関連(p<10
-4)を認めた。この中には、SVEP1遺伝子、KIAA1109遺伝子、miR181遺伝子の近傍においてSignificant levelに到達しているSNPsが複数みられた。これら134のSNPsを関連遺伝子候補として抽出した(
図4)。
【0091】
図4は、GWASの結果を表すマンハッタンプロット図である。
図4においては、横軸に左から順に染色体1番、染色体2番・・・染色体22番、X染色体をプロットし、縦軸に-log
10(P値)をプロットしている。
図4に示す関連遺伝子候補の一例について説明する。
miR181(染色体1番q32.1)の近傍の複数カ所でSNPが同定された(P<5×10
-8)。miR181は、PTENを抑制することにより細胞の生存及び代謝を促進することが報告されている。
KIAA1109(染色体4番q27)の近傍の複数カ所でSNPsが同定された(P=5×10
-7)。KIAA1109はタンパク質をコードするが、その構造は不明である。KIAA1109/IL2/IL21遺伝子領域のSNPは、セリアック病、クローン病、関節リウマチ等自己免疫疾患と関連することが報告されている。
SVEP1(染色体9番q31.3)の近傍の複数カ所(3点)でSNPsが同定された(P=7×10
-7)。インテグリンα9β1のリガンドをコードする。SVEP1は、骨形成、骨格筋の分化、上皮形成に必要であることが報告されている。ノックアウトマウスではリンパ管発生異常のため重度の浮腫を呈し出生後すぐに死亡するという報告がある(Circ Res.2017;120:1276-1288)。
【0092】
さらに、genome-wide imputationのデータを用いたGWASにより、上記3領域の他に複数の関連候補として49のSNPsを見出した。これら49のSNPsと上述の134のSNPsを合計した183のSNPsが、Discovery GWASの結果によって関連候補として抽出された。
【0093】
<Replication studyの結果>
Replication studyにおいては、Discovery GWASの結果によって抽出された183のSNPsと、連鎖不平衡の条件を満たさないながらも、極めて有意な差(P<10-6)がみられた9のSNPsを合計した192のSNPsについて、別コホート(Case群55例、Control群177例)を用いてDigiTag2法にて検証した。DigiTag2法による検証結果を表7に示す。ここで、9のSNPsとは、上述の(1)~(192)の一塩基多型のうち、(7)、(12)、(43)、(47)、(55)、(87)、(103)、(120)、(144)の一塩基多型である。これらの9のSNPsは、GWASにおける連鎖不平衡の条件を満たしていないため183のSNPsから除外されたが、有意差がP<10-6と顕著であった9のSNPsを抽出したものである。
すなわち、これらの9のSNPsは、(7):rs番号がrs16827413で特定される一塩基多型、(12):rs番号がrs10800602で特定される一塩基多型、(43):rs番号がrs3108399で特定される一塩基多型、(47):rs番号がrs192877030で特定される一塩基多型、(55):rs番号がrs117565657で特定される一塩基多型、(87):rs番号がrs144155862で特定される一塩基多型、(103):rs番号がrs9299186で特定される一塩基多型、(120):rs番号がrs73166235で特定される一塩基多型、(144):rs番号がrs115523756で特定される一塩基多型である。
【0094】
【0095】
表7に示すように、3SNPs(rs2991364、rs9299186、rs4978937)が有意水準に達する関連SNPとして同定された。
【0096】
<Combined analysisの結果>
Discovery GWAS及びReplication studyのすべてのCase群、Control群を用いた関連解析の結果を表8に示す。
【0097】
【0098】
表8に示すように、rs2991364、rs9299186、rs4978937は、Case群においてControl群に比して優位に高頻度に検出された。特に、rs2991364は、Discovery GWASとReplication studyの全てのCsse群、Control群を用いた関連解析によって、危険率(OR):3.5519、P値:2.01×10-8とゲノムワイド有意水準に達し、192のSNPsの中でも最も有力な候補として同定された。ここで、rs2991364は、9番染色体(9q32)のSVEP1遺伝子上のイントロンにおけるC/T多型SNPである。
表9に臨床因子も含めた多変量解析の結果を示す。
【0099】
【0100】
表9に示すように、BUN(OR:1.00,P<0.05)、Na(OR:1.00,P=0.01)、rs2991364(OR:3.32,P=0.000242)が独立した因子として抽出された。これらのBUN、Na、rs2991364は、Case群と有意に関連していることが示唆された。
【0101】
<GTExのデータベースを用いた解析>
GTEx(https://gtexportal.org/home/)projectは、ヒト由来の様々な組織検体を用いて遺伝的変異の遺伝子発現への影響(expressionQTL(eQTL))を大規模に調べ、データベースとして公開している。GTExにて、今回の候補SNPの一つであるrs2991364のeQTLを検索した。結果を
図5に示す。
図5に示すように、小脳においてSVEP1遺伝子発現がリスクアレル群で有意に低下(P値:1.9×10
-6)していることが判明した。
【0102】
<ICGCのデータベースを用いた解析>
次に、SVEP1遺伝子発現低下による下流シグナル発現への影響を検討するために、公開データベースより肝臓組織の全ゲノムシーケンスとRNAシーケンスデータを入手し、rs2991364多型別の下流シグナル遺伝子発現差解析を実施した。肝臓データは、ICGC,https://icgc.org/)に登録及び公開されているがんのゲノム研究データから、日本国で実施されたC型肝炎関連肝癌症例の非癌部データを選定したものを使用した。
ICGCデータ計83症例(リスクアレル群CT/TT変異:21症例、メジャーアレル群CC変異:62症例)において、rs2991364多型間でのSVEP1遺伝子の発現量の差を調べたが、rs2991364多型間での有意な発現量の低下はみられなかった。しかし、rs2991364のリスクアレル群の中でSVEP1遺伝子発現が有意に低下している10症例を抽出し、メジャーアレル群(37症例)と比較解析を実施したところ、SVEP1下流シグナル遺伝子であるITGA9、Angioprotein2、FOXC2の発現は有意な低下がみられた(
図1、6~10)。
【0103】
GTEx及びICGCのデータベースを用いた解析結果から、rs2991364は組織により表現型は異なるが、1)少なくとも小脳においてSVEP1遺伝子発現に影響を及ぼすこと、2)さらにSVEP1遺伝子の低下は下流遺伝子の発現低下を引き起こし、特に脈管ネットワーク、弁形成に大きく関与するFOXC2遺伝子の発現が低下することが判明した。
上述のようにFOXC2遺伝子は、脈管ネットワーク及び弁形成に関わり、先天性リンパ浮腫症の原因遺伝子の一つであり、その遺伝子発現の制御が、リンパ管のリモデリング機構に関与している可能性が報告されている(J Clin Invest.2016;126(7):2437-2451)。そのため、rs2991364のリスクアレルにおいては、FOXC2遺伝子の発現量が低下していることから、脈管ネットワーク及び脈管リモデリング機構が脆弱となっている可能性が強く示唆された。この結果は、貯留した組織液が脈管により回収されにくく、脈管による組織液の回収能が生まれつき低下しているという仮説の妥当性を裏付けるものである。
【0104】
以上説明した実施例の結果から、リスクアレル群では脈管ネットワーク及び脈管リモデリング機構の脆弱性から組織液が生まれつき回収されにくい体質であるとする仮説の妥当性が高まったと考えられる。
この仮説によるメカニズムによれば、臓器不全に起因する貯留体液を排出させる薬剤はトルバプタンに限定されず、バソプレシンV2受容体拮抗薬であれば同様に、rs2991364リスクアレル保有者ではトルバプタンの投与効果が得られにくい可能性があると考えられる。すなわち、
図11に示すように、臓器不全によりある臓器で組織液が貯留したとき、rs2991364リスクアレル保有者では、脈管の形成が脆弱であることから、脈管による組織液の回収が生まれつき困難であり、そもそも組織液を脈管により回収しにくく、その結果として腎臓まで組織液を充分に輸送できない体質であると考えられる。そのため、腎臓での水分排泄を促進するバソプレシンV2受容体拮抗薬をいくら投与しても、バソプレシンV2受容体拮抗薬の薬効が認められにくい傾向にあることが示唆された。
さらに、最近大規模なGWASの結果からSVEP1遺伝子変異は心血管疾患のリスク因子の一つであると報告されている(N Engl J Med.2016 Mar 24;374(12):1134-1144.)。SVEP1遺伝子は体液貯留と循環器疾患に関連した遺伝子であることが考えられ、SVEP1遺伝子発現に影響を及ぼすrs2991364が心性浮腫においてもトルバプタンの効果を予測するSNPマーカーとなる可能性が示唆された。
【0105】
以上説明した実施例の結果から、GWASによって同定された192のSNPsを検出することで、臓器不全に起因する貯留体液を排出させる薬剤の薬効を優れた精度で予測できると考えられた。
【0106】
本発明においては、本明細書において明示した論文、公開特許公報等の内容は、その全ての内容を引用して援用することができる。