(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168651
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】銅-亜鉛合金電気めっき液、銅-亜鉛合金バンプの形成方法、ナノポーラス銅バンプの形成方法、銅-亜鉛合金バンプ付き基材及びナノポーラス銅バンプ付き基材
(51)【国際特許分類】
C25D 3/58 20060101AFI20231121BHJP
C25D 5/02 20060101ALI20231121BHJP
C25D 5/48 20060101ALI20231121BHJP
C25D 3/56 20060101ALI20231121BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
C25D3/58
C25D5/02 B
C25D5/48
C25D3/56 Z
H01L21/92 603B
H01L21/92 602G
H01L21/92 602D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079873
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085372
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 正義
(72)【発明者】
【氏名】古山 大貴
(72)【発明者】
【氏名】中川 卓眞
【テーマコード(参考)】
4K023
4K024
【Fターム(参考)】
4K023AB29
4K023AB39
4K023BA06
4K023CB03
4K023CB16
4K023DA02
4K024AA14
4K024AA17
4K024AB01
4K024AB02
4K024BA09
4K024BB11
4K024BB12
4K024DB03
4K024DB10
4K024FA06
4K024FA08
(57)【要約】
【課題】高い強度で接合し得るナノポーラス銅バンプを形成するための銅-亜鉛合金電気めっき液を提供する。
【解決手段】銅イオンと、亜鉛イオンと、カルボン酸の塩と、pH調整剤とを含む銅-亜鉛合金電気めっき液である。カルボン酸の塩のアニオン部分をR-COOHで表したときのRの炭素数が1~6であり、めっき液のpHが2.5以上4.9以下である。カルボン酸の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩又はアンモニウム塩であることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅イオンと、亜鉛イオンと、カルボン酸の塩と、pH調整剤とを含む銅-亜鉛合金電気めっき液であって、
前記カルボン酸の塩のアニオン部分をR-COOHで表したときのRの炭素数が1~6であり、
前記めっき液のpHが2.5以上4.9以下である銅-亜鉛合金電気めっき液。
【請求項2】
前記カルボン酸の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩又はアンモニウム塩である請求項1記載の銅-亜鉛合金電気めっき液。
【請求項3】
アミノ酸化合物を更に含み、前記アミノ酸化合物が、グルタミン、グリシン、アルギニン、リシン、セリン、ヒスチジン及びアスパラギンからなる群より選ばれた1種以上の化合物である請求項1又は2記載の銅-亜鉛合金電気めっき液。
【請求項4】
前記カルボン酸は、安息香酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、グルコン酸及びコハク酸からなる群より選ばれた1種以上である請求項1又は2記載の銅-亜鉛合金電気めっき液。
【請求項5】
(a)表面に銅シード層が形成された導電性基材の前記銅シード層上にドライフィルムレジスト層を形成する工程と、
(b)前記ドライフィルムレジスト層をパターニングして開口部を形成する工程と、
(c)前記基材を請求項1ないし4いずれか1項の銅-亜鉛合金電気めっき液に浸漬し電気めっきを行うことにより前記開口部内に銅-亜鉛合金めっき層を形成する工程と、
(d)前記ドライフィルムレジスト層を前記基材から除去して前記基材上に銅-亜鉛合金めっき層からなる銅-亜鉛合金バンプを形成する工程と、
(e)前記銅-亜鉛合金バンプが形成されていない部分の銅シード層を前記基材から除去する工程とを有する銅-亜鉛合金バンプの形成方法。
【請求項6】
(a)表面に銅シード層が形成された導電性基材の前記銅シード層上にドライフィルムレジスト層を形成する工程と、
(b)前記ドライフィルムレジスト層をパターニングして開口部を形成する工程と、
(h-1)前記基材を銅めっき液に浸漬し電気めっきを行うことにより前記開口部内に銅めっき層を形成する工程と、
(h-2)前記基材を請求項1ないし4いずれか1項の銅-亜鉛合金電気めっき液に浸漬し電気めっきを行うことにより前記開口部内に形成された銅めっき層の表面に銅-亜鉛合金めっき層を積層する工程と、
(i)前記ドライフィルムレジスト層を前記基材から除去して前記基材上に前記銅めっき層と前記銅-亜鉛合金めっき層とが積層されてなる第1積層バンプを形成する工程と、
(j)前記第1積層バンプが形成されていない部分の銅シード層を前記基材から除去する工程とを有する銅-亜鉛合金バンプの形成方法。
【請求項7】
請求項5記載の銅-亜鉛合金バンプから亜鉛を除去することにより前記銅-亜鉛合金めっき層を平均空孔度が5%以上45%以下のナノポーラス銅層に変質して前記基材上にナノポーラス銅層からなるナノポーラス銅バンプを形成する方法。
前記平均空孔度は、前記ナノポーラス銅層の断面を走査型電子顕微鏡で画像解析することにより算出されたナノポーラス銅層の全面積(S1)と、ナノポーラス銅層中の空孔部分の面積(S2)とに基づいて下記式(A)で求められた空孔度(P)の算術平均値である。
P(%)= (S2/S1)×100 (A)
【請求項8】
請求項6記載の第1積層バンプの銅-亜鉛合金めっき層から亜鉛を除去することにより前記銅-亜鉛合金めっき層を平均空孔度が5%以上45%以下のナノポーラス銅層に変質して前記基材上に前記銅めっき層と前記ナノポーラス銅層とが積層されてなる第2積層バンプを形成する方法。
前記平均空孔度は、前記ナノポーラス銅層の断面を走査型電子顕微鏡で画像解析することにより算出されたナノポーラス銅層の全面積(S1)と、ナノポーラス銅層中の空孔部分の面積(S2)とに基づいて下記式(A)で求められた空孔度(P)の算術平均値である。
P(%)= (S2/S1)×100 (A)
【請求項9】
複数の銅-亜鉛合金バンプを有する基材であって、
前記銅-亜鉛合金バンプの平均径は1μm以上30μm以下の範囲にあり、
前記銅-亜鉛合金バンプ同士の中心間の平均距離は2μm以上50μm以下の範囲にあり、
前記銅-亜鉛合金バンプの平均高さは0.5μm以上10μm以下の範囲にあり、
前記銅-亜鉛合金バンプを構成する銅と亜鉛の合計量を100at%とするとき、亜鉛を3at%以上50at%以上の割合で含むことを特徴とする銅-亜鉛合金バンプ付き基材。
【請求項10】
複数のナノポーラス銅バンプを有する基材であって、
前記ナノポーラス銅バンプの平均径は1μm以上30μm以下の範囲にあり、
前記ナノポーラス銅バンプ同士の中心間の平均距離は2μm以上50μm以下の範囲にあり、
前記ナノポーラス銅バンプの平均高さは0.5μm以上10μm以下の範囲にあり、
前記ナノポーラス銅バンプの平均空孔度が5%以上45%以上の範囲にあることを特徴とするナノポーラス銅バンプを有する基材。
前記平均空孔度は、前記ナノポーラス銅バンプの断面を走査型電子顕微鏡で画像解析することにより算出されたナノポーラス銅バンプの全面積(S1)と、ナノポーラス銅バンプ中の空孔部分の面積(S2)とに基づいて下記式(A)で求められた空孔度(P)の算術平均値である。
P(%)= (S2/S1)×100 (A)
【請求項11】
銅めっき層とこの銅めっき層表面に積層された銅-亜鉛合金めっき層とからなる複数の第1積層バンプを有する基材であって、
前記第1積層バンプの平均径は1μm以上30μm以下の範囲にあり、
前記第1積層バンプ同士の中心間の平均距離は2μm以上50μm以下の範囲にあり、
前記第1積層バンプの平均高さは0.5μm以上10μm以下の範囲にあり、
前記銅-亜鉛合金めっき層を構成する銅と亜鉛の合計量を100at%とするとき、亜鉛を3at%以上50at%以上の割合で含むことを特徴とする積層バンプ付き基材。
【請求項12】
銅めっき層とこの銅めっき層表面に積層されたナノポーラス銅層とからなる複数の第2積層バンプを有する基材であって、
前記第2積層バンプの平均径は1μm以上30μm以下の範囲にあり、
前記第2積層バンプ同士の中心間の平均距離は2μm以上50μm以下の範囲にあり、
前記第2積層バンプの平均高さは0.5μm以上10μm以下の範囲にあり、
前記ナノポーラス銅層の平均空孔度が5%以上45%以上の範囲にあることを特徴とする積層バンプ付き基材。
前記平均空孔度は、前記ナノポーラス銅層の断面を走査型電子顕微鏡で画像解析することにより算出されたナノポーラス銅層の全面積(S1)と、ナノポーラス銅層中の空孔部分の面積(S2)とに基づいて下記式(A)で求められた空孔度(P)の算術平均値である。
P(%)= (S2/S1)×100 (A)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い強度で接合し得るナノポーラス銅バンプを形成するための銅-亜鉛合金電気めっき液に関する。更に本発明は、このめっき液を用いて得られる銅-亜鉛合金バンプの形成方法、ナノポーラス銅バンプの形成方法、銅-亜鉛合金バンプ付き基材及びナノポーラス銅バンプ付き基材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノポーラスの構造体は、比表面積が大きく、電極である金属バンプに適用した際にも熱圧着時の変形のし易さや、焼結のし易さから、より強固に接合するため、接合体として利用されることが期待されてきている。例えば、接続用バンプの高さばらつきを吸収できるように、銅バンプのような接続用バンプの構造を多孔質金属で形成する微細パターン接続用回路部品およびその形成方法が開示されている(例えば、特許文献1(請求項1~4、段落[0036]、段落[0048]、段落[0051])参照。)。この方法では、微細パターン接続用バンプ位置に高エネルギー線を照射すること、あるいはプラズマ中に曝すことにより絶縁樹脂層に開口部を形成し、この開口部に金属微粒子、あるいは金属微粒子を分散させたペースト組成物を充填し、レーザー光、超音波、高周波により加熱して金属微粒子間に金属・金属結合を形成させるとともにペースト中の有機物成分を除去している。更に、不要となる絶縁樹脂パターンは剥離液を用いて溶解あるいは膨潤剥離することにより、金属薄膜上に金属微粒子が結合した多孔質金属からなる接続用バンプを形成している。
【0003】
しかし、特許文献1に示される、ナノポーラス構造の多孔質金属からなる接続用バンプの形成方法では、開口部に充填した金属微粒子を加熱して溶融させる作業や、不要となる絶縁樹脂パターンは剥離液を用いて溶解あるいは膨潤剥離させる作業を必要とし、容易にバンプを形成できない課題があった。
【0004】
この課題を解決するために、電気めっき液を用いて、ナノポーラス構造のバンプを形成することが考えられる。ポーラス構造体を形成する1つの方法として、銅-亜鉛合金から亜鉛を脱合金する方法が考えられるが、これまでに銅-亜鉛合金電気めっき液として、特許文献2~5が開示されている。
【0005】
特許文献2には、銅イオンと、亜鉛イオンと、イミダゾール基を少なくとも1以上有しかつ親水性基を有する複素環式化合物と、クアドロールと併用した添加剤を有する銅亜鉛合金めっき液が開示される。特許文献2の電気めっき法によれば、ムラのない均一な銅亜鉛合金めっき膜を、極めて生産性よく大電流で形成することができる。この銅亜鉛合金めっき液は、めっき膜を均一に形成するために、pHは9.6~11.6が好ましい旨が特許文献2に記載されている。
【0006】
特許文献3には、銅塩と、亜鉛塩と、ピロりん酸アルカリ金属塩と、アミノ酸またはその塩から選ばれた少なくとも一種とを含有し、アミノ酸またはその塩の濃度が0.08mol/L~0.22mol/Lであることを特徴とする銅-亜鉛合金電気めっき浴が開示される。特許文献3の電気めっき浴によれば、シアン化合物を使用することなく、目的組成を有する均一で光沢のある合金層を、従来よりも高い電流密度であっても形成することができ、生産性に優れる。この銅-亜鉛合金電気めっき浴は、高電流密度とした場合でも均一な合金層が容易に得られる理由で、pHが10.5~12の範囲にあることが好ましい旨が特許文献3に記載されている。
【0007】
特許文献4には、銅塩、亜鉛塩、オキシカルボン酸又はその塩、脂肪族ジカルボン酸又はその塩、及びチオシアン酸又はその塩を含むことを特徴とする非シアン系銅-亜鉛電気めっき浴が開示される。特許文献4の電気めっき浴によれば、銅箔と樹脂基板間の接着強度を高く維持するとともに、耐マイグレーション性に優れたプリント配線板用銅箔を提供するとともに、このプリント配線板用銅箔の製造に好適であり、毒性の高いシアン化合物を使用しないプリント配線板用銅箔の表面処理方法に好適に用いられ、めっき浴の安定性に優れる。この非シアン系銅-亜鉛電気めっき浴は、電解条件として、pHが9~14の範囲にあることが好ましいことが特許文献4に記載されている。
【0008】
特許文献5には、銅化合物、亜鉛化合物、ポリリン酸及びその塩から選ばれた少なくとも1種の化合物、オキシカルボン酸及びその塩から選ばれた少なくとも1種の化合物、α-アミノ酸のアラルキルエステル、α-アミノ酸のアラルキルエステルのスルホンアミド化物を含有する銅-亜鉛合金電気めっき液が開示される。特許文献5のめっき液によれば、被めっき体に対して安定して密着性及び平滑性に優れた緻密な銅-亜鉛合金めっき皮膜を直接形成でき、しかも人体や環境に対する悪影響が少ない安全性に優れ、電解中の電流密度によらず該めっき皮膜の組成が一定であって、長時間連続電解を行った後においても、光沢のあるめっき皮膜が得られる。この銅-亜鉛合金電気めっき液は、より安定しためっき液を得るために、pHが7~14の範囲にあることが好ましいことが特許文献5に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003-174055号公報
【特許文献2】特開2019-099895号公報
【特許文献3】特開2009-127097号公報
【特許文献4】特許第3347457号公報
【特許文献5】特許第5645422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
通常、電気めっき液によりドライフィルムレジスト層を用いてバンプを形成する場合、最終的にこのレジスト層はアルカリ性のレジスト剥離液で除去される。このため、銅-亜鉛合金電気めっき液により、バンプを形成する場合には、めっき液がアルカリ性であると、上記レジスト層が基板から浮き上がるため、めっき液は酸性であることが好ましい。特にこの傾向はバンプの高密度化が進んだ際に顕著に現れる。
【0011】
しかしながら、特許文献2~5に示される銅亜鉛合金電気めっき液は、pHが7以上のアルカリ性であるため、バンプを形成するめっき液には適していない。
【0012】
本発明の目的は、高い強度で接合し得るナノポーラス銅バンプを形成するための銅-亜鉛合金電気めっき液を提供することにある。本発明の別の目的は、このめっき液を用いて得られる銅-亜鉛合金バンプの形成方法、ナノポーラス銅バンプの形成方法、銅-亜鉛合金バンプ付き基材及びナノポーラス銅バンプ付き基材を提供することにある。
【0013】
本発明者らは、ドライフィルムレジスト層をパターニングして形成された開口部内に、電気化学的に貴な金属である銅と卑な金属である亜鉛を組み合わせた銅-亜鉛合金層を、所定のpH範囲の酸性領域にあって、かつめっき時に銅イオンと亜鉛イオンを安定して存在させることができる電気めっき液で作製し、卑な亜鉛をエッチング除去することにより、貴な銅を主成分とするナノポーラス構造体を作製する脱合金法に着目して、本発明に到達した。
【0014】
本発明の第1の観点は、銅イオンと、亜鉛イオンと、カルボン酸の塩と、pH調整剤とを含む銅-亜鉛合金電気めっき液であって、前記カルボン酸の塩のアニオン部分をR-COOHで表したときのRの炭素数が1~6であり、前記めっき液のpHが2.5以上4.9以下であることを特徴とする。
【0015】
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、前記カルボン酸の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩又はアンモニウム塩である。
【0016】
本発明の第3の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、アミノ酸化合物を更に含み、前記アミノ酸化合物が、グルタミン、グリシン、アルギニン、リシン、セリン、ヒスチジン及びアスパラギンからなる群より選ばれた1種以上の化合物である。
【0017】
本発明の第4の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、前記カルボン酸は、安息香酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、グルコン酸及びコハク酸からなる群より選ばれた1種以上である。
【0018】
本発明の第5の観点は、(a)表面に銅シード層が形成された導電性基材の前記銅シード層上にドライフィルムレジスト層を形成する工程と、(b)前記ドライフィルムレジスト層をパターニングして開口部を形成する工程と、(c)前記基材を第1ないし第4のいずれかの観点の銅-亜鉛合金電気めっき液に浸漬し電気めっきを行うことにより前記開口部内に銅-亜鉛合金めっき層を形成する工程と、(d)前記ドライフィルムレジスト層を前記基材から除去して前記基材上に銅-亜鉛合金めっき層からなる銅-亜鉛合金バンプを形成する工程と、(e)前記銅-亜鉛合金バンプが形成されていない部分の銅シード層を前記基材から除去する工程とを有する銅-亜鉛合金バンプの形成方法である。
【0019】
本発明の第6の観点は、(a)表面に銅シード層が形成された導電性基材の前記銅シード層上にドライフィルムレジスト層を形成する工程と、(b)前記ドライフィルムレジスト層をパターニングして開口部を形成する工程と、(h-1)前記基材を銅めっき液に浸漬し電気めっきを行うことにより前記開口部内に銅めっき層を形成する工程と、(h-2)前記基材を第1の観点ないし第4の観点のいずれか1項の銅-亜鉛合金電気めっき液に浸漬し電気めっきを行うことにより前記開口部内に形成された銅めっき層の表面に銅-亜鉛合金めっき層を積層する工程と、(i)前記ドライフィルムレジスト層を前記基材から除去して前記基材上に前記銅めっき層と前記銅-亜鉛合金めっき層とが積層されてなる第1積層バンプを形成する工程と、(j)前記第1積層バンプが形成されていない部分の銅シード層を前記基材から除去する工程とを有する銅-亜鉛合金バンプの形成方法である。
【0020】
本発明の第7の観点は、第5の観点の銅-亜鉛合金バンプから亜鉛を除去することにより前記銅-亜鉛合金めっき層を平均空孔度が5%以上45%以下のナノポーラス銅層に変質して前記基材上にナノポーラス銅層からなるナノポーラス銅バンプを形成する方法である。
前記平均空孔度は、前記ナノポーラス銅層の断面を走査型電子顕微鏡で画像解析することにより算出されたナノポーラス銅層の全面積(S1)と、ナノポーラス銅層中の空孔部分の面積(S2)とに基づいて下記式(A)で求められた空孔度(P)の算術平均値である。
P(%)= (S2/S1)×100 (A)
【0021】
本発明の第8の観点は、第6の観点の第1積層バンプの銅-亜鉛合金めっき層から亜鉛を除去することにより前記銅-亜鉛合金めっき層を平均空孔度が5%以上45%以下のナノポーラス銅層に変質して前記基材上に前記銅めっき層と前記ナノポーラス銅層とが積層されてなる第2積層バンプを形成する方法である。
前記平均空孔度は、前記ナノポーラス銅層の断面を走査型電子顕微鏡で画像解析することにより算出されたナノポーラス銅層の全面積(S1)と、ナノポーラス銅層中の空孔部分の面積(S2)とに基づいて下記式(A)で求められた空孔度(P)の算術平均値である。
P(%)= (S2/S1)×100 (A)
【0022】
本発明の第9の観点は、複数の銅-亜鉛合金バンプを有する基材であって、前記銅-亜鉛合金バンプの平均径は1μm以上30μm以下の範囲にあり、前記銅-亜鉛合金バンプ同士の中心間の平均距離は2μm以上50μm以下の範囲にあり、前記銅-亜鉛合金バンプの平均高さは0.5μm以上10μm以下の範囲にあり、前記銅-亜鉛合金バンプを構成する銅と亜鉛の合計量を100at%とするとき、亜鉛を3at%以上50at%以上の割合で含むことを特徴とする。
【0023】
本発明の第10の観点は、複数のナノポーラス銅バンプを有する基材であって、前記ナノポーラス銅バンプの平均径は1μm以上30μm以下の範囲にあり、前記ナノポーラス銅バンプ同士の中心間の平均距離は2μm以上50μm以下の範囲にあり、前記ナノポーラス銅バンプの平均高さは0.5μm以上10μm以下の範囲にあり、前記ナノポーラス銅バンプの平均空孔度が5%以上45%以上の範囲にあることを特徴とする。
前記平均空孔度は、前記ナノポーラス銅バンプの断面を走査型電子顕微鏡で画像解析することにより算出されたナノポーラス銅バンプの全面積(S1)と、ナノポーラス銅バンプ中の空孔部分の面積(S2)とに基づいて下記式(A)で求められた空孔度(P)の算術平均値である。
P(%)= (S2/S1)×100 (A)
【0024】
本発明の第11の観点は、銅めっき層とこの銅めっき層表面に積層された銅-亜鉛合金めっき層とからなる複数の第1積層バンプを有する基材であって、前記第1積層バンプの平均径は1μm以上30μm以下の範囲にあり、前記第1積層バンプ同士の中心間の平均距離は2μm以上50μm以下の範囲にあり、前記第1積層バンプの平均高さは0.5μm以上10μm以下の範囲にあり、前記銅-亜鉛合金めっき層を構成する銅と亜鉛の合計量を100at%とするとき、亜鉛を3at%以上50at%以上の割合で含むことを特徴とする。
【0025】
本発明の第12の観点は、銅めっき層とこの銅めっき層表面に積層されたナノポーラス銅層とからなる複数の第2積層バンプを有する基材であって、前記第2積層バンプの平均径は1μm以上30μm以下の範囲にあり、前記第2積層バンプ同士の中心間の平均距離は2μm以上50μm以下の範囲にあり、前記第2積層バンプの平均高さは0.5μm以上10μm以下の範囲にあり、前記ナノポーラス銅層の平均空孔度が5%以上45%以上の範囲にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の第1の観点の銅-亜鉛合金電気めっき液は、銅イオンと亜鉛イオンに加えて支持塩としてカルボン酸の塩を含むため、電気めっきを行うと、このカルボン酸の塩が銅と亜鉛の析出を制御して平滑な表面の銅-亜鉛合金めっき層を形成する。また、カルボン酸の塩のアニオン部分をR-COOHで表したときのRの炭素数が1~6であるため、優先的に析出し易い銅の析出を抑制し、亜鉛組成を制御しながら、銅-亜鉛合金めっき層を形成する。更に、pH調整剤により、めっき液のpHが2.5以上4.9以下に調整されているため、基材上のレジスト層の開口部内に電気めっきをするときに、アルカリ性で剥離するレジスト層の基材からの浮き上がりがなく、めっき液のいわゆるレジスト潜り現象を抑制し、所定の開口部内にめっきすることができる。
【0027】
本発明の第2の観点の銅-亜鉛合金電気めっき液では、カルボン酸の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩又はアンモニウム塩であるため、めっき液中でカルボン鎖の塩が銅イオンと亜鉛イオンをめっき液中で安定して存在させ、まためっき時にもpHの変動を抑えることが期待される。
【0028】
本発明の第3の観点の銅-亜鉛合金電気めっき液では、所定のアミノ酸化合物を更に含むことにより、めっき時に銅-亜鉛合金の結晶を微粒化することで、脱合金する際に、均一な脱合金が可能になる。
【0029】
本発明の第4の観点の銅-亜鉛合金電気めっき液では、カルボン酸の塩を構成する所定のカルボン酸の塩のアニオン部分をR-COOHで表したときのRの炭素数が1~6の範囲にあるため、上記銅の優先的な析出抑制効果を生じ、めっき液として安定に存在する。
【0030】
本発明の第5の観点の銅-亜鉛合金バンプの形成方法では、レジスト層の開口部内に、本発明の第1ないし第4のいずれかの観点の銅-亜鉛合金電気めっき液により銅-亜鉛合金めっき層を形成した後、レジスト層及び銅シード層を除去するため、容易に銅-亜鉛合金バンプを形成することができる。
【0031】
本発明の第6の観点の銅-亜鉛合金バンプの形成方法では、レジスト層の開口部内に、初めに、銅めっき層を形成し、次いでこの銅めっき層の上に本発明の第1ないし第4のいずれかの観点の銅-亜鉛合金電気めっき液により銅-亜鉛合金めっき層を形成する。次にレジスト層及び銅シード層を除去するため、容易に銅めっき層と銅-亜鉛合金めっき層とが積層されてなる第1積層バンプを形成することができる。
【0032】
本発明の第7の観点のナノポーラス銅バンプの形成方法では、銅-亜鉛合金バンプから亜鉛を除去して基材上に平均空孔度が5%以上45%以下のナノポーラス銅層からなるナノポーラス銅バンプを形成するため、また、本発明の第8の観点の第2積層バンプの形成方法では、銅めっき層の上に、第1積層バンプの銅-亜鉛合金めっき層から亜鉛を除去して平均空孔度が5%以上45%以下のナノポーラス銅層を積層した第2積層バンプを形成するため、それぞれの形成方法では、一連の湿式処理が可能になり、所定の平均空孔度を有するナノポーラス銅バンプ及び第2積層バンプを容易に形成することができる。
【0033】
本発明の第9又は第11の観点の基材では、所定のバンプ平均径、所定のバンプ同士の中心間の平均距離及び所定のバンプの平均高さを有する複数の銅-亜鉛合金バンプ又は第1積層バンプを具備するため、また銅-亜鉛合金バンプ又は第1積層バンプの銅-亜鉛合金めっき層を構成する銅と亜鉛の合計量を100at%とするときに、所定の亜鉛の割合であるため、この基材を、微細バンプを用いた高密度実装においても、脱合金を用いたポーラス構造を形成するための前駆体の用途に供することができる。本発明のめっき液がレジストへのダメージを最小限に抑え、30μm以下のバンプ径を有する微細バンプに形成することが可能である。
【0034】
本発明の第10又は第12の観点の基材では、所定のバンプ平均径、所定のバンプ同士の中心間の平均距離及び所定のバンプの平均高さを有する複数のナノポーラス銅バンプを具備するため、またナノポーラス銅バンプ又は第2積層バンプのナノポーラス銅層が所定の平均空孔度を有するため、この基材を、焼結作用を利用して銅表面同士を直接接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の第1の実施形態のナノポーラス銅バンプを形成するまでの状況を示す図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態の銅-亜鉛合金電気めっき法により、基材の片面に銅-亜鉛合金めっき層を形成する状況を示す図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態の第2積層バンプを形成するまでの状況を示す図である。
【
図4】(a)本発明の第1の実施形態の銅-亜鉛合金めっき層の走査型電子顕微鏡の写真図である。(b)本発明の第1の実施形態の脱合金後のナノポーラス銅バンプの走査型電子顕微鏡の写真図である。
【
図5】実施例と比較例のナノポーラス銅バンプを有するSiウェハを無酸素銅板に接合して接合体を形成した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0037】
〔銅-亜鉛合金電気めっき液〕
本実施形態の銅-亜鉛合金電気めっき液は、銅イオンと、亜鉛イオンと、カルボン酸の塩と、pH調整剤とを含み、pHが2.5以上4.9以下である。カルボン酸の塩は、導電塩、支持塩であって、銅と亜鉛の析出を制御して平滑な表面の銅-亜鉛合金めっき層を形成するために用いられる。めっき液のpHはpH調整剤により上記範囲に調整される。pH調整剤としては、上記カルボン酸と同種のカルボン酸が液管理の観点と液寿命を延ばすことができるため好ましい。めっき液のpHが2.5以上4.9以下に調整されているため、基材上のレジスト層の開口部内に電気めっきをするときに、アルカリ性で剥離するレジスト層の基材からの浮き上がりがなく、めっき液のいわゆるレジスト潜り現象を抑制し、所定の開口部内にめっきすることができる。pHが2.5未満では、電気めっき時に銅が優先的に析出し、亜鉛が殆ど析出せず、銅-亜鉛合金めっき層が形成されない。またpHが4.9を超えると、レジスト層が基材表面から浮き上がって、基材から剥離し、正常な銅-亜鉛合金めっき層又はナノポーラス銅バンプが形成されない。好ましいめっき液のpHは3.0~4.5である。
【0038】
銅-亜鉛合金電気めっきにおける銅イオン、亜鉛イオンの供給源は、めっき系の金属イオン供給源として公知である銅塩、亜鉛塩を使用することができる。例えば、硫酸塩、ピロリン酸塩、酢酸塩、塩化物塩、スルファミン酸塩等が挙げられる。めっき液中の銅イオン濃度は、0.005モル/L~0.8モル/Lであることが好ましい。まためっき液中の亜鉛イオン濃度は、0.1モル/L~0.9モル/Lであることが好ましい。
【0039】
カルボン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩又はアンモニウム塩が挙げられ、カルボン酸の塩の部分をR-COOHで表したときの一価のRの炭素数が1~6である。例示すれば、カルボン酸としては、安息香酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、グルコン酸及びコハク酸からなる群より選ばれた1種以上が挙げられる。めっき液中のカルボン酸の塩の濃度は、0.05モル/L~0.5モル/Lであることが好ましい。
【0040】
本実施形態の銅-亜鉛合金電気めっき液は、更にアミノ酸化合物を含んでもよい。アミノ酸化合物は、水溶性であって、任意濃度で銅塩(銅イオン)、亜鉛塩(亜鉛イオン)と沈殿を発生させなければ使用可能である。アミノ酸化合物は、めっき時に銅-亜鉛合金の結晶を微粒化することで、脱合金する際に、均一な脱合金が可能になる。アミノ酸化合物を例示すれば、グルタミン、グリシン、アルギニン、リシン、セリン、ヒスチジン及びアスパラギンからなる群より選ばれた1種以上が挙げられる。めっき液中のアミノ酸化合物の濃度は、0.01モル/L~0.1モル/Lであることが好ましい。アミノ酸化合物に加えて、更に錯体化剤として、エチレンジアミン四酢酸を0.01モル/L~0.5モル/Lの濃度で含有してもよい。銅-亜鉛合金電気めっき液には、必要に応じて、光沢剤、界面活性剤、酸化防止剤等を添加することも可能である。
【0041】
〔銅-亜鉛合金電気めっき液の調製方法〕
本実施形態の銅-亜鉛合金電気めっき液は、上記銅イオンと、上記亜鉛イオンと、上記カルボン酸の塩とを混合し、最後にpH調整剤を加えて所定のpHになるように、調製される。
【0042】
〔第1の実施形態における銅-亜鉛合金バンプ〕
第1の実施形態における、銅-亜鉛合金バンプは、平均径が1μm以上30μm以下、好ましくは4μm以上27μm以下の範囲にあり、バンプ同士の中心間の平均距離が2μm以上50μm以下、好ましくは2μm以上50μm以下の範囲にあり、バンプの平均高さが0.5μm以上10μm以下、好ましくは3μm以上8μm以下の範囲にある。バンプのサイズ及びピッチが上記範囲であることにより、微細なバンプ接合体の形成に有利である効果があり、本発明のめっき液は微細パターンが形成されたバンプの形成が可能である。また銅-亜鉛合金バンプを構成する銅と亜鉛の合計量を100at%とするとき、亜鉛を3at%以上50at%以下の割合、好ましくは4at%以上38at%以下の割合で含む。亜鉛を上記割合で含むことにより、ナノポーラス銅バンプを形成することができる。
【0043】
〔第1の実施形態におけるナノポーラス銅バンプ〕
第1の実施形態における、ナノポーラス銅バンプは、平均径が1μm以上30μm以下、好ましくは4μm以上27μm以下の範囲にあり、バンプ同士の中心間の平均距離が2μm以上50μm以下、好ましくは2μm以上50μm以下の範囲にあり、バンプの平均高さが0.5μm以上10μm以下、好ましくは3μm以上8μm以下の範囲にある。バンプのサイズ及びピッチが上記範囲であることにより、微細なバンプ接合体の形成に有利である効果がある。またナノポーラス銅バンプの平均空孔度は5%以上45%以下、好ましくは8%以上38%以下の範囲にある。ナノポーラス銅バンプの平均空孔度が上記範囲にあることにより、この銅バンプにより接合強度の高い接合体が得られる。なお、バンプの平均空孔度は、次の方法で求められる。
平均空孔度は、ナノポーラス銅バンプの断面を走査型電子顕微鏡で画像解析することにより算出されたナノポーラス銅バンプの全面積(S1)と、ナノポーラス銅バンプ中の空孔部分の面積(S2)とに基づいて下記式(A)で求められた空孔度(P)の算術平均値である。
P(%)= (S2/S1)×100 (A)
【0044】
〔第1の実施形態の銅-亜鉛合金バンプの形成方法〕
次に、
図1を参照して、第1の実施形態の銅-亜鉛合金バンプを形成する方法について説明する。
【0045】
図1(a)に示すように、表面に銅シード層1が形成された導電性基材2を用意し、銅シード層1の上にドライフィルムレジスト層3を形成する。次いで、
図1(b)に示すように、ドライフィルムレジスト層3をパターニングして開口部3aを形成する。次に、レジスト層3に開口部3aが形成された基材2を上述した銅-亜鉛合金電気めっき液に浸漬し電気めっきを行うことにより開口部3a内に銅-亜鉛合金めっき層4を形成する。導電性基材2としては、例えばSiウェハや有機基板、ガラス基板などに銅シード層を形成したものが挙げられる。
【0046】
図2に、第1の実施形態の銅-亜鉛合金電気めっき法により、導電性基材2の片面に銅-亜鉛合金めっき層4を形成する状況を示す。
図2において、
図1と同じ符号は同じ構成要素を示す。電気めっき装置20のめっき槽21に上述した銅-亜鉛合金電気めっき液22を入れ、この液中に被めっき物である導電性基材2と、この基材2の片面に対向するように含リン銅やPt/Ti電極等、金属材23を配置する。図示するように、基材2をカソードとして、直流電源の負極24に接続し、金属材23を可溶性アノード若しくは不溶性アノードとして、直流電源の正極25に接続し、基材2と金属材23とに電圧を印加することにより、基材2上に形成されたレジスト層3の開口部3a内に銅-亜鉛合金めっき層4が形成される。電気めっきを行った後、
図2に示される銅-亜鉛合金めっき層4が形成された基材2をめっき液22から取り出す。
【0047】
図1に戻って、
図1(d)に示すように、ドライフィルムレジスト層3を基材2から除去して基材2上に銅-亜鉛合金めっき層からなる銅-亜鉛合金バンプ5を形成する。次いで、
図1(e)に示すように、銅-亜鉛合金バンプ5が形成されていない部分の銅シード層1を基材2から除去する。その後、基材2をエタノール、水等の洗浄用溶媒で洗浄し、大気中で乾燥空気を用いて乾燥する。これにより、銅-亜鉛合金バンプ5が形成される。
【0048】
〔第1の実施形態におけるナノポーラス銅バンプの形成方法〕
銅-亜鉛合金バンプ5から、第1の実施形態のナノポーラス銅バンプの形成方法を説明する。
【0049】
図1(f)に示すように、銅-亜鉛合金バンプ5から亜鉛を除去して基材2上にナノポーラス銅層からなるナノポーラス銅バンプ6を形成する。ナノポーラス銅バンプ6が形成された基材2は表面酸化を防ぐために、ベンゾトリアゾール及び界面活性剤を主成分とした防錆剤に所定時間浸漬することが好ましい。
【0050】
ここで、銅-亜鉛合金バンプ5から亜鉛を除去するには、薬液によるエッチング反応や電気化学的にアノード反応を進行させる方法等が挙げられる。例えば、酸による脱合金を実施し、銅-亜鉛合金バンプ5を濃度0.002モル/L~3.5モル/Lの塩酸を含む20℃~35℃の温度の溶液に、銅-亜鉛合金バンプ5の高さに応じて、30分以上浸漬及び撹拌することにより、銅-亜鉛合金バンプ5から亜鉛を除去する。これにより銅-亜鉛合金バンプがナノポーラス銅層からなるナノポーラス銅バンプ6に変質する。
【0051】
〔第2の実施形態の第1積層バンプ〕
図3(j)に示すように、第1積層バンプ9は、基材2上に銅めっき層7と銅-亜鉛合金めっき層8とが積層されてなるバンプである。
第2の実施形態における、第1積層バンプ9は、平均径が1μm以上30μm以下、好ましくは4μm以上27μm以下の範囲にあり、バンプ同士の中心間の平均距離が2μm以上50μm以下、好ましくは2μm以上50μm以下の範囲にあり、バンプの平均高さが0.5μm以上10μm以下、好ましくは3μm以上8μm以下の範囲にある。バンプのサイズ及びピッチが上記範囲であることにより、微細なバンプ接合体の形成に有利である。
【0052】
また銅-亜鉛合金めっき層8を構成する銅と亜鉛の合計量を100at%とするとき、亜鉛を3at%以上50at%以下の割合、好ましくは4at%以上38at%以下の割合で含む。亜鉛を上記割合で含むことにより、ナノポーラス銅バンプを形成することができる。銅-亜鉛合金めっき層8の高さは2μm以上8μm以下の範囲内とすることが好ましい。
【0053】
銅めっき層7は純銅のめっき層であることが好ましい。ここで、銅めっき層7はポーラス構造ではなく、密に詰まった構造であり、いわゆるCuピラーである。銅めっき層7の相対密度は99%以上であることが好ましい。銅めっき層7の高さは5μm以上100μm以下の範囲内とすることが好ましい。
【0054】
〔第2の実施形態における第2積層バンプ〕
図3(k)に示すように、第2の実施形態における、第2積層バンプ11は、基材2上に銅めっき層7とナノポーラス銅層10とが積層されてなる。
第2積層バンプ11は、平均径が1μm以上30μm以下、好ましくは4μm以上27μm以下の範囲にあり、バンプ同士の中心間の平均距離が2μm以上50μm以下、好ましくは2μm以上50μm以下の範囲にあり、バンプの平均高さが0.5μm以上10μm以下、好ましくは3μm以上8μm以下の範囲にある。バンプのサイズ及びピッチが上記範囲であることにより、微小バンプの高密度化に貢献可能である。
また、ナノポーラス銅層10の平均空孔度は5%以上45%以上、好ましくは4%以上38%以上の範囲にある。ナノポーラス銅層10の平均空孔度が上記範囲にあることにより、この銅バンプにより接合強度の高い接合体が得られる。なお、バンプの平均空孔度は、次の方法で求められる。
平均空孔度は、ナノポーラス銅層10の断面を走査型電子顕微鏡で画像解析することにより算出されたナノポーラス銅層10の全面積(S
1)と、ナノポーラス銅層10中の空孔部分の面積(S
2)とに基づいて下記式(A)で求められた空孔度(P)の算術平均値である。
P(%)= (S
2/S
1)×100 (A)
銅めっき層7は純銅のめっき層であることが好ましい。ここで、銅めっき層7はポーラス構造ではなく、密に詰まった構造であり、いわゆるCuピラーである。銅めっき層7の相対密度は99%以上であることが好ましい。銅めっき層7の高さは5μm以上100μm以下の範囲内とすることが好ましい。ナノポーラス銅層10の高さは2μm以上8μm以下の範囲内とすることが好ましい。
【0055】
〔第2の実施形態の第1積層バンプの形成方法〕
次に、
図3を参照して、第2の実施形態の銅めっき層と銅-亜鉛合金めっき層の積層体である第1積層バンプを形成した後で、第2積層バンプを形成するまでの方法について説明する。
図3において、
図1と同じ符号は同じ構成要素を示す。
【0056】
図3(a)に示すように、表面に銅シード層1が形成された導電性基材2を用意し、銅シード層1の上にドライフィルムレジスト層3を形成する。次いで、
図3(b)に示すように、ドライフィルムレジスト層3をパターニングして開口部3aを形成する。次に、
図3(h)に示すように、基材2を銅めっき液に浸漬し電気めっきを行うことにより開口部3a内に銅めっき層7を形成し、続いて、基材2を上述した銅-亜鉛合金電気めっき液に浸漬し電気めっきを行うことにより開口部3a内に形成された銅めっき層7の表面に銅-亜鉛合金めっき層8を積層する。次に、
図3(i)に示すように、ドライフィルムレジスト層3を基材2から除去して基材2上に銅めっき層7と銅-亜鉛合金めっき層8とが積層されてなる第1積層バンプ9を形成する。更に続いて、
図3(j)に示すように、第1積層バンプ9が形成されていない部分の銅シード層1を基材2から除去する。その後、基材2をエタノール、水等の洗浄用溶媒で洗浄し、大気中で乾燥空気を用いて乾燥する。これにより、第1積層バンプ9が形成される。
【0057】
〔第2の実施形態の第2積層バンプの形成方法〕
第1積層バンプ9から、第2の実施形態の第2積層バンプ11の形成方法を説明する。
【0058】
図3(k)に示すように、第1積層バンプ9の銅-亜鉛合金めっき層8から亜鉛を除去して基材2上に銅めっき層7とナノポーラス銅層10とが積層されてなる第2積層バンプ11を形成する。第2積層バンプ11が形成された基材2は表面酸化を防ぐために、ベンゾトリアゾール及び界面活性剤を主成分とした防錆剤に所定時間浸漬することが好ましい。
【0059】
ここで、銅-亜鉛合金めっき層8から亜鉛を除去するには、薬液によるエッチング反応や電気化学的にアノード反応を進行させる方法等が挙げられる。例えば、酸による脱合金を実施し、銅-亜鉛合金めっき層8を濃度0.002モル/L~3.5モル/Lの塩酸を含む20℃~35℃の温度の溶液に、銅-亜鉛合金めっき層8の高さに応じて、30分以上浸漬及び撹拌することにより、銅-亜鉛合金めっき層8から亜鉛を除去する。これにより第1積層バンプ9の銅-亜鉛合金めっき層8がナノポーラス銅層に変質して第2積層バンプ11が形成される。
【0060】
〔第1及び第2の実施形態におけるめっき条件〕
第1及び第2の実施形態における、
図1~
図3に示される銅-亜鉛合金電気めっき及び銅電気めっきにおける条件は、例えば、直流電源を用いて、被めっき物である導電性基材2における電流密度を0.1A/dm
2~5A/dm
2程度、好ましくは0.3A/dm
2~2.0A/dm
2にし、液温を30℃前後にして、60分~120分程度の時間めっきを行う。めっき時には空気及び噴流撹拌又は揺動撹拌を行うことが好ましい。
【実施例0061】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
先ず、被めっき物として、ウェハ表面にシード層が形成されたSiウェハ(厚さ:0.8mm)を用いた。シード層は、ウェハ表面にチタン層(厚さ:100nm)とこのチタン層の上に銅層(厚さ:500nm)をそれぞれスパッタリングにより形成した。このSiウェハ表面をフォトレジストで1ダイ(8mm角)当たり径25μmの真円形状の開口部が18000個有するようにパターニングして、シード層上に開口部付きのレジスト層を形成した。レジスト層の厚さは25μmであり、その開口部のピッチは50μmであった。このSiウェハに対して、銅-亜鉛合金電気めっきを行う前の処理として、酸素プラズマクリーナーによる親水化処理を施した。次いでSiウェハを濃度10質量%の硫酸水溶液に浸漬し、酸洗浄した。酸洗浄したSiウェハを水洗し、Siウェハのパターン面に、後述するように建浴した銅-亜鉛合金電気めっき液で、銅-亜鉛合金電気めっきを行った。めっき処理時に、パドル撹拌機構を用いて、Siウェハのパターン面近傍のめっき液を撹拌した。
【0062】
下記液組成で銅-亜鉛合金電気めっき浴を建浴した。以下の表1及び表2に実施例1のめっき浴の組成及びめっき条件のうち、特徴ある項目を示す。実施例1では、下記の組成物を混合し、最後にpHが4.5になるように、pH調整剤として酒石酸を加えた。
【0063】
[組成]
硫酸銅五水和物(Cu2+として):0.01モル/L
硫酸亜鉛七水和物(Zn2+として):0.25モル/L
酒石酸二ナトリウム二水和物:0.3モル/L
アミノ酸化合物であるグリシン:0.1モル/L
イオン交換水:残部
[めっき条件]
浴温:30℃±2℃
浴のpH:4.5
カソード電流密度:0.3A/dm2
【0064】
上記めっき条件にてめっきを行うことで、Siウェハ上のレジスト層の開口部内に銅-亜鉛合金めっき層を形成した。
図4(a)に実施例1の銅-亜鉛合金めっき層表面の走査型電子顕微鏡写真図を示す。
【0065】
【0066】
【0067】
銅-亜鉛合金めっき層を形成した後に、ドライフィルム用レジスト剥離液によりレジスト層を溶解して除去した。次いで、シード層をエッチング液を用いて、銅-亜鉛合金めっき層が形成されていない部分のシード層を除去した。次に、銅-亜鉛合金めっき層を、濃度1.00モル/Lの塩酸を含む27℃の溶液に浸漬し、溶液を70分間攪拌することにより、銅-亜鉛合金めっき層から亜鉛を除去して脱合金した。脱合金されためっき層は表面酸化を防ぐために、ベンゾトリアゾールと界面活性剤を主成分とする防錆剤に30秒間浸漬させることにより、防錆処理を行った。これにより、Siウェハ上にナノポーラス銅バンプを形成した。
図4(b)に実施例1の脱合金後のナノポーラス銅バンプ表面の走査型電子顕微鏡写真図を示す。
【0068】
<実施例2~10及び比較例1~4>
表1に示すように、実施例2~10及び比較例1~4では、硫酸銅五水和物の濃度を実施例1と同一にするか、又は変更し、硫酸亜鉛七水和物の濃度を実施例1と同一にするか、又は変更した。実施例2~10及び比較例1、2では、カルボン酸の塩の種類と濃度を実施例1と同一にするか、又は変更した。比較例3、4では、カルボン酸の塩を使用しなかった。実施例2~10及び比較例2、3では、pH調整剤の種類を実施例1とは変更し、実施例1と異なるpHに調整した。比較例1では、pH調整剤を使用しなかった。また、実施例2~7及び比較例1~3では、アミノ酸の種類と濃度を実施例1と同一にするか、又は変更した。実施例10では、アミノ酸を使用しなかった。更に、実施例4と5のみ、エチレンジアミン四酢酸を用いた。比較例4ではカルボン酸の塩を使用せずに、pHのみを調整した。
【0069】
<実施例11、12>
実施例11、12では、Siウェハ上に、銅めっき層7として、相対密度が99%以上である密に詰まった構造、いわゆるCuピラーを形成し、その上に銅-亜鉛合金めっき層を形成した。
【0070】
表2に示すように、実施例2~12及び比較例1~4では、めっき時の浴温を実施例1と同一にし、かつめっき時のカソード電流密度を実施例1と同一にするか、又は変更した。それ以外は実施例1と同様にして、銅-亜鉛合金めっきを行った。
実施例1と同様にしてめっきを行うことで、実施例2~10及び比較例1~4では、Siウェハ上に、銅-亜鉛合金めっき層を形成した。銅-亜鉛合金めっき層を形成した後に、実施例1と同様にレジスト層及びシード層を除去し、続いて、銅-亜鉛合金めっき層から亜鉛を除去して脱合金した。実施例1と同様に防錆処理を行うことにより、Siウェハ上にナノポーラス銅バンプを形成した。実施例11、12では、銅めっき層7の上に実施例1と同様にしてめっきを行うことで、銅-亜鉛合金めっき層を形成した。
【0071】
<比較評価その1>
(1) 銅-亜鉛合金めっき層の銅と亜鉛の組成比率
実施例1~12及び比較例1~4で得られた銅-亜鉛合金めっき層を構成する銅と亜鉛の組成比率を、EDS(エネルギー分散型X線分析)を用いて測定した。
(2) レジスト層の剥離の有無
実施例1~12及び比較例1~4で銅-亜鉛合金めっき層を形成したときに、レジスト層がSiウェハ表面から浮き上がって、Siウェハから剥離したか否かをSiウェハ表面を光学顕微鏡で観察することにより評価した。
(3) ナノポーラス銅バンプの平均空孔度
実施例1~12及び比較例1~4で得られたナノポーラス銅バンプ及び第2積層パンプのナノポーラス銅層の平均空孔度を上述した方法で測定した。具体的には、測定は異なる視野で3回撮影し、算出された空孔度の平均値を平均空孔度とした。これらの結果を表2に示す。
【0072】
<比較評価その2>
<接合試験と接合評価>
図5に示すように、実施例1~10及び比較例1~4で得られたナノポーラス銅バンプ6を有するSiウェハからなる基材2を、バンプ6を下向きにして、無酸素銅板26の表面に配置し、これらを加圧加熱して接合体27を得る接合試験を行った。接合試験は、加圧加熱接合装置(アルファデザイン製、HTB-MM)を使用し、窒素雰囲気下、圧着ヘッドの温度を320℃に設定し、18MPaの圧力で3分間保持することにより行った。また、実施例11及び12では、銅ピラー7とナノポーラス銅層10からなる第2積層バンプ11を有するSiウェハからなる基材2を、第2積層バンプ11を下向きにして、無酸素銅板26の表面に配置し、これらを加圧加熱して接合体27を得る接合試験を行った。接合試験は、加圧加熱接合装置(アルファデザイン製、HTB-MM)を使用し、窒素雰囲気下、圧着ヘッドの温度を320℃に設定し、18MPaの圧力で3分間保持することにより行った。
【0073】
(4) 接合体のシェア強度
得られた接合体27のシェア強度を、せん断強度評価試験機((株)ノードソンアドバンストテクノロジー社製ボンドテスター;Dage Series 4000)を用いて測定した。具体的には、シェア強度の測定は、接合体の基材(無酸素銅板)を水平に固定し、接合層の表面(上面)から50μm上方の位置でシェアツールにより、ナノポーラス銅バンプ付きSiウエハを横から水平方向に押して、ナノポーラス銅バンプが破断されたときの強度を測定することによって行った。なお、シェアツールの移動速度は0.1mm/秒とした。1条件に付き3回強度試験を行い、それらの算術平均値を接合強度の測定値とした。実施例1~8及び比較例1~3で得られた10種類の接合体のシェア強度を以下の表2に示す。接合強度が15MPa以上であれば「優」とし、2MPa以上15MPa未満であれば「良」とし、2MPa未満であれば「不良」とした。なお、表2の接合強度において「-」は、ナノポーラス銅バンプと基材(無酸素銅板)とを接合しようとしたが接合されていなかった場合、又は接合強度を測定する前にナノポーラス銅バンプが剥離してしまったことを意味する。
【0074】
表1及び表2から明らかなように、比較例1では、銅-亜鉛合金電気めっき液のpHが5.5と高過ぎたため、レジスト層がSiウェハ表面から浮き上がって、Siウェハから剥離したため、正常なナノポーラス銅バンプが形成されず、接合強度を測定できなかった。
【0075】
比較例2では、銅-亜鉛合金電気めっき液のpHが2.2と低過ぎたため、電気めっき時に銅が優先的に析出し、亜鉛が殆ど析出せず、銅-亜鉛合金めっき層が形成されなかった。このため、脱合金後もポーラスな銅バンプ(平均空孔度:0.5%)にならず、接合強度は1.5MPaと低過ぎ、接合評価は「不良」であった。
【0076】
比較例3では、銅-亜鉛合金電気めっき液がカルボン酸の塩を用いなかったため、電気めっき時に銅が優先的に析出し、亜鉛が殆ど析出せず、銅-亜鉛合金めっき層が形成されなかった。このため、脱合金後もポーラスな銅バンプ(平均空孔度:0.5%)にならず、接合強度は1.2MPaと低過ぎ、接合評価は「不良」であった。
【0077】
比較例4では、銅-亜鉛合金電気めっき液がカルボン酸の塩を用いなかったため、pHの範囲は正常であったが、電気めっき時に銅が優先的に析出し、亜鉛が殆ど析出せず、銅-亜鉛合金めっき層が形成されなかった。このため、脱合金後もポーラスな銅バンプ(平均空孔度:0.8%)にならず、接合強度は1.4MPaと低過ぎ、接合評価は「不良」であった。
【0078】
これらに対して、実施例1~12では、銅-亜鉛合金電気めっき液が銅イオンと亜鉛イオンとカルボン酸の塩とを含み、このカルボン酸の塩のアニオン部分をR-COOHで表したときに炭素数が1~6であり、かつめっき液のpHが2.5以上4.9以下であるという、本発明の第1の要件を満たすため、銅-亜鉛合金めっき層形成時にレジスト層の剥離はなく、ナノポーラス銅バンプの平均空孔度が5%~45%の範囲にあった。この結果、ナノポーラス銅バンプの接合評価では、すべて「優」であった。
なお、銅-亜鉛合金めっき液にアミノ酸とエチレンジアミン四酢酸を含んだ実施例4と5では、アミノ酸及びエチレンジアミン四酢酸によりめっき液中の銅イオンと亜鉛イオンが錯体化され、ナノポーラス銅バンプの平均空孔度がそれぞれ42%、35%と高く、その接合強度はそれぞれ27MPa、31MPaと高く、接合評価がともに優れていた。
一方、アミノ酸を含まない実施例8では、ナノポーラス銅バンプの平均空孔度が5%と低く、その接合強度は9.5MPaとそれほど高くなく、接合評価は「良」であった。