(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168656
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】異常判別プログラム及びこれを備えた火災監視システム
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20231121BHJP
G06F 17/18 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
G08B17/00 C
G06F17/18 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079884
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000229405
【氏名又は名称】日本ドライケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】砂原 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】大木 健二
(72)【発明者】
【氏名】阿部 晶
【テーマコード(参考)】
5B056
5G405
【Fターム(参考)】
5B056BB64
5G405AA01
5G405AA06
5G405AB01
5G405AB02
5G405AC07
5G405AD06
5G405AD07
5G405CA05
5G405CA19
5G405CA21
5G405CA23
5G405DA21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】正常時に起こる確率が低い異常の発生を早期に判別する異常判別プログラム及びこれを備えた火災監視システムを提供する。
【解決手段】火災監視システムにおいて、異常判別プログラムは、所定時間にわたって、複数のセンサが測定した複数の物理量xを収集し、正規化された物理量yに変換する処理と、複数のセンサに対応する重みwが予め設定され、重みwを乗じた物理量yの総和Sprevを算出する処理と、所定時間経過後に、複数のセンサが測定した複数の物理量xを収集し、正規化された物理量yに変換し、重みwを乗じた物理量yの総和Snewを算出する処理と、総和Snewの平均値及び標準偏差σnewを算出する処理と、総和Snewの平均値、標準偏差σnew及び総和Sprevの平均値を累積分布関数に適用して算出する確率が、閾値以下であるか否かを判断し、閾値以下である場合に異常が発生したと判別する処理と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災の発生に起因して変化する物理量xを測定するための複数のセンサから出力される信号に基づいて、異常が発生したか否かを判別する異常判別プログラムであって、
火災が発生していない正常な状況下において、所定時間又は所定回数にわたって、複数のセンサによって測定された複数の物理量xを収集し、収集された物理量xのそれぞれを正規化された物理量yに変換する第1処理と、
複数のセンサのそれぞれに対応する重みwが予め設定され、重みwを乗じた物理量yの総和S
prevを算出する第2処理と、
前記所定時間が経過した後、又は前記所定回数を超えた後に、複数のセンサによって測定された複数の物理量xを収集し、収集された物理量xのそれぞれを正規化された物理量yに変換し、重みwを乗じた物理量yの総和S
newを算出する第3処理と、
総和S
newの平均値
【表36】
及び標準偏差σ
newを算出する第4処理と、
平均値
【表37】
、標準偏差σ
new及び総和S
prevの平均値
【表38】
を累積分布関数に適用して算出される確率が、予め設定された確率の閾値以下であるか否かを判断し、閾値以下である場合に異常が発生したと判別する第5処理と、
を含む処理をプロセッサに実行させることを特徴とする異常判別プログラム。
【請求項2】
前記第1処理及び前記第3処理において収集された物理量xのそれぞれは、下記式(1)によって正規化された物理量yに変換される請求項1に記載の異常判別プログラム。
【数25】
但し、
【表39】
は、物理量xの平均値であり、σは、物理量xの標準偏差である。
【請求項3】
前記第2処理及び前記第3処理における総和S
prev及び総和S
newは、下記式(2)~(4)のいずれかによって算出される請求項1に記載の異常判別プログラム。
【数26】
【数27】
【数28】
但し、P、Qは、それぞれが物理量xの測定に使用される複数のセンサを示すものである。y
(p)は、センサPの物理量yの値であり、y
(Q)は、センサQの物理量yの値である。w
(Q,P)は、センサQとセンサPの相互関係に基づいて設定される重みwである。
【請求項4】
前記第5処理における確率は、下記式(5)によって算出されるtの値に基づいて算出される請求項1に記載の異常判別プログラム。
【数29】
但し、nは、平均値
【表40】
の算出に用いた総和S
newのデータ数である。
【請求項5】
前記第2処理及び前記第3処理において用いられる重みwの値は、複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサに及ぼされる外乱の影響に基づいて設定変更される請求項1に記載の異常判別プログラム。
【請求項6】
複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサが空気調和機による温度の影響を受ける場合に、前記空気調和機の動作に関する情報に基づいて、複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサに適用される重みwの値が設定変更される請求項5に記載の異常判別プログラム。
【請求項7】
複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサが日照による温度の影響を受ける場合に、前記日照の時刻、日射量及び温度のうちの少なくとも1つに基づいて、複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサに適用される重みwの値が設定変更される請求項5に記載の異常判別プログラム。
【請求項8】
前記第1処理において、物理量xの有効数字を増加させるための乱数を生成し、複数のセンサによって測定された複数の物理量xのそれぞれに前記乱数を加算した後、正規化された物理量yを算出する請求項1に記載の異常判別プログラム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の異常判別プログラムに従って動作する火災監視システムであって、
複数のセンサ及び受信機を備え、
前記受信機は、受信部、制御部及び報知部を備え、且つ前記異常判別プログラムがインストールされており、
複数のセンサは、監視領域に設置され、火災の発生に起因して変化する物理量xを測定して信号を出力し、
前記受信部は、複数のセンサから出力された信号を受信し、
前記制御部のプロセッサは、複数のセンサによって測定された複数の物理量xに基づいて、前記異常判別プログラムに従った前記第1処理~前記第5処理を実行し、
前記報知部は、前記第5処理において異常が発生したと判別された場合に、異常が発生したことを報知する、
ことを特徴とする火災監視システム。
【請求項10】
前記異常判別プログラムは、複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサによって測定された物理量xが、予め設定された物理量xの閾値以上であるか否かを判断し、閾値以上である場合に火災が発生したと判別する第6処理を含み、
前記制御部のプロセッサは、複数のセンサによって測定された複数の物理量xのそれぞれに基づいて、前記異常判別プログラムに従った前記第6処理を実行し、
前記報知部は、前記第6処理において火災が発生したと判別された場合に、火災が発生したことを報知する請求項9に記載の火災監視システム。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか1項に記載の異常判別プログラムに従って動作する火災監視システムであって、
複数のセンサ、少なくとも1つの中継器、及び受信機を備え、
前記中継器は、受信部及び制御部を備え、且つ前記異常判別プログラムがインストールされており、
複数のセンサは、監視領域に設置され、火災の発生に起因して変化する物理量xを測定して信号を出力し、
前記受信部は、複数のセンサから出力された信号を受信し、
前記制御部のプロセッサは、複数のセンサによって測定された複数の物理量xに基づいて、前記異常判別プログラムに従った前記第1処理~前記第5処理を実行し、前記第5処理において異常が発生したと判別した場合に、他の中継器又は前記受信機に信号を送信する、
ことを特徴とする火災監視システム。
【請求項12】
前記異常判別プログラムは、複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサによって測定された物理量xが、予め設定された物理量xの閾値以上であるか否かを判断し、閾値以上である場合に火災が発生したと判別する第6処理を含み、
前記制御部のプロセッサは、複数のセンサによって測定された複数の物理量xのそれぞれに基づいて、前記異常判別プログラムに従った前記第6処理を実行し、前記第6処理において火災が発生したと判別した場合に、他の中継器又は前記受信機に信号を送信する請求項10に記載の火災監視システム。
【請求項13】
物理量xを測定するための複数のセンサから出力される信号に基づいて、異常が発生したか否かを判別する異常判別プログラムであって、
所定時間又は所定回数にわたって、複数のセンサによって測定された複数の物理量xを収集し、収集された物理量xのそれぞれを正規化された物理量yに変換する第1処理と、
物理量yの総和S
prevを算出する第2処理と、
前記所定時間が経過した後、又は前記所定回数を超えた後に、複数のセンサによって測定された複数の物理量xを収集し、収集された物理量xのそれぞれを正規化された物理量yに変換し、物理量yの総和S
newを算出する第3処理と、
総和S
newの平均値
【表41】
及び標準偏差σ
newを算出する第4処理と、
平均値
【表42】
、標準偏差σ
new及び総和S
prevの平均値
【表43】
を累積分布関数に適用して算出される確率が、予め設定された確率の閾値以下であるか否かを判断し、閾値以下である場合に異常が発生したと判別する第5処理と、
を含む処理をプロセッサに実行させることを特徴とする異常判別プログラム。
【請求項14】
複数のセンサのそれぞれに対応する重みwが予め設定され、前記第2処理においては重みwを乗じた物理量yの前記総和Sprevが算出され、前記第3処理においては重みwを乗じた物理量yの前記総和Snewが算出される請求項13に記載の異常判別プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のセンサによって測定された物理量に基づいて、異常が発生したか否かを判別する異常判別プログラム及びこれを備えた火災監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、一般家庭などに広く普及している火災感知器は、部屋の温度や煙濃度などの物理量を測定し、閾値以上の物理量が測定された場合に火災の発生を報知する。一方、オフィスビル、テナントビル、物流倉庫などの大規模施設には、複数のアナログ式感知器と受信機とを組み合わせた火災監視システムが用いられる。複数のアナログ式感知器は、大規模施設の各所の監視領域に設置される。複数のアナログ式感知器のそれぞれは、測定値に応じたアナログ信号を受信機に出力する。受信機は、複数のアナログ式感知器のそれぞれから受信したアナログ信号に基づいて、火災が発生したか否か、その他の異常が発生したか否かを判別する。例えば、受信機は、火災が発生したか否かを判断するための閾値未満の物理量が測定された場合に、注意を喚起するための予報を発することが可能である。予報を発するか否かを判断するための閾値は、アナログ式感知器ごとに、又は監視領域ごとに異なる値を設定することができる。
【0003】
また、従来の火災感知器として、複合式スポット型感知器が知られている。複合式スポット型感知器は、例えば、温度及び煙濃度などの2以上の物理量を測定することが可能であり、いずれか1つの物理量が閾値以上となった場合に、火災の発生を報知する。
【0004】
さらに、特開2018-88630号公報(特許文献1)及び特開2018-101416号公報(特許文献2)には、監視カメラによって撮影された監視領域の画像を多数生成し、これらの画像に基づいて、多層式ニューラルネットワークをディープラーニング(深層学習)させ、火災の検出精度を向上させる火災監視システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-88630号公報
【特許文献2】特開2018-101416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
火災監視システムの受信機は、火災が発生したか否かを判断するための閾値未満の物理量が測定された場合に、注意を喚起するための予報を発することが可能である。しかし、受信機は、複数のアナログ式感知器のそれぞれによって測定された物理量を閾値と比較する判断しかできない。受信機は、複数のアナログ式感知器の相互関係、例えば、温度と煙濃度のような異なる物理量どうしの関係、複数のアナログ式感知器の互いの位置関係、複数のアナログ式感知器の互いの測定結果の関連性、複数のアナログ式感知器のそれぞれに及ぶ外乱の影響などを考慮して、注意を喚起するための予報を発することはできない。
【0007】
従来の複合式スポット型感知器は、温度及び煙濃度などの2以上の物理量のうちのいずれか1つの物理量が閾値以上となった場合に、火災の発生を報知する。つまり、複合式スポット型感知器は、2以上の物理量のそれぞれを閾値と比較して、火災が発生したか否かを判断するものである。このため、複合式スポット型感知器は、2以上の物理量を総合して、火災が発生したか否かを判断することはできない。
【0008】
特開2018-88630号公報及び特開2018-101416号公報の火災監視システムは、いずれも多数の画像に基づいて、多層式ニューラルネットワークをディープラーニングさせる作業が必要である。また、画像に基づくディープラーニングでは、上述したような複数のアナログ式感知器の相互関係を考慮した重み付けができない。さらに、多層式ニューラルネットワークによる火災の検出のための計算負荷は、極めて大きい。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、複数のセンサの測定結果を総合し、且つ複数のセンサの相互関係を考慮することにより、正常時に起こる確率が低い異常が発生したことを早期に判別することが可能な異常判別プログラム及びこれを備えた火災監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(A)上記目的を達成するために、本発明の異常判別プログラムは、火災の発生に起因して変化する物理量xを測定するための複数のセンサから出力される信号に基づいて、異常が発生したか否かを判別する異常判別プログラムであって、火災が発生していない正常な状況下において、所定時間又は所定回数にわたって、複数のセンサによって測定された複数の物理量xを収集し、収集された物理量xのそれぞれを正規化された物理量yに変換する第1処理と、複数のセンサのそれぞれに対応する重みwが予め設定され、重みwを乗じた物理量yの総和S
prevを算出する第2処理と、前記所定時間が経過した後、又は前記所定回数を超えた後に、複数のセンサによって測定された複数の物理量xを収集し、収集された物理量xのそれぞれを正規化された物理量yに変換し、重みwを乗じた物理量yの総和S
newを算出する第3処理と、総和S
newの平均値
【表1】
及び標準偏差σ
newを算出する第4処理と、平均値
【表2】
、標準偏差σ
new及び総和S
prevの平均値
【表3】
を累積分布関数に適用して算出される確率が、予め設定された確率の閾値以下であるか否かを判断し、閾値以下である場合に異常が発生したと判別する第5処理と、を含む処理をプロセッサに実行させる。
【0011】
(B)好ましくは、上記(A)の異常判別プログラムにおいて、前記第1処理及び前記第3処理において収集された物理量xのそれぞれは、下記式(1)によって正規化された物理量yに変換される。
【数1】
但し、
【表4】
は、物理量xの平均値であり、σは、物理量xの標準偏差である。
【0012】
(C)好ましくは、上記(A)又は(B)の異常判別プログラムにおいて、前記第2処理及び前記第3処理における総和S
prev及び総和S
newは、下記式(2)~(4)のいずれかによって算出される。
【数2】
【数3】
【数4】
但し、P、Qは、それぞれが物理量xの測定に使用される複数のセンサを示すものである。y
(p)は、センサPの物理量yの値であり、y
(Q)は、センサQの物理量yの値である。w
(Q,P)は、センサQとセンサPの相互関係に基づいて設定される重みwである。
【0013】
(D)好ましくは、上記(A)~(C)のいずれかの異常判別プログラムにおいて、前記第5処理における確率は、下記式(5)によって算出されるtの値に基づいて算出される請求項1~3のいずれか1項に記載の異常判別プログラム。
【数5】
但し、nは、平均値
【表5】
の算出に用いた総和S
newのデータ数である。
【0014】
(E)好ましくは、上記(A)~(D)のいずれかの異常判別プログラムにおいて、前記第2処理及び前記第3処理において用いられる重みwの値は、複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサに及ぼされる外乱の影響に基づいて設定変更される。
【0015】
(F)好ましくは、上記(E)の異常判別プログラムにおいて、複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサが空気調和機による温度の影響を受ける場合に、前記空気調和機の動作に関する情報に基づいて、複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサに適用される重みwの値が設定変更される。
【0016】
(G)好ましくは、上記(E)の異常判別プログラムにおいて、複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサが日照による温度の影響を受ける場合に、前記日照の時刻、日射量及び温度のうちの少なくとも1つに基づいて、複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサに適用される重みwの値が設定変更される。
【0017】
(H)好ましくは、上記(A)~(G)のいずれかの異常判別プログラムにおいて、前記第1処理において、物理量xの有効数字を増加させるための乱数を生成し、複数のセンサによって測定された複数の物理量xのそれぞれに前記乱数を加算した後、正規化された物理量yを算出する。
【0018】
(I)上記目的を達成するために、本発明の火災監視システムは、上記(A)~(H)のいずれかの異常判別プログラムに従って動作する火災監視システムであって、複数のセンサ及び受信機を備え、前記受信機は、受信部、制御部及び報知部を備え、且つ前記異常判別プログラムがインストールされており、複数のセンサは、監視領域に設置され、火災の発生に起因して変化する物理量xを測定して信号を出力し、前記受信部は、複数のセンサから出力された信号を受信し、前記制御部のプロセッサは、複数のセンサによって測定された複数の物理量xに基づいて、前記異常判別プログラムに従った前記第1処理~前記第5処理を実行し、前記報知部は、前記第5処理において異常が発生したと判別された場合に、異常が発生したことを報知する。
【0019】
(J)好ましくは、上記(I)の火災監視システムにおいて、前記異常判別プログラムは、複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサによって測定された物理量xが、予め設定された物理量xの閾値以上であるか否かを判断し、閾値以上である場合に火災が発生したと判別する第6処理を含み、前記制御部のプロセッサは、複数のセンサによって測定された複数の物理量xのそれぞれに基づいて、前記異常判別プログラムに従った前記第6処理を実行し、前記報知部は、前記第6処理において火災が発生したと判別された場合に、火災が発生したことを報知する。
【0020】
(K)上記目的を達成するために、本発明の火災監視システムは、上記(A)~(H)のいずれかの異常判別プログラムに従って動作する火災監視システムであって、複数のセンサ、少なくとも1つの中継器、及び受信機を備え、前記中継器は、受信部及び制御部を備え、且つ前記異常判別プログラムがインストールされており、複数のセンサは、監視領域に設置され、火災の発生に起因して変化する物理量xを測定して信号を出力し、前記受信部は、複数のセンサから出力された信号を受信し、前記制御部のプロセッサは、複数のセンサによって測定された複数の物理量xに基づいて、前記異常判別プログラムに従った前記第1処理~前記第5処理を実行し、前記第5処理において異常が発生したと判別した場合に、他の中継器又は前記受信機に信号を送信する。
【0021】
(L)好ましくは、上記(K)の火災監視システムにおいて、複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサによって測定された物理量xが、予め設定された物理量xの閾値以上であるか否かを判断し、閾値以上である場合に火災が発生したと判別する第6処理を含み、前記制御部のプロセッサは、複数のセンサによって測定された複数の物理量xのそれぞれに基づいて、前記異常判別プログラムに従った前記第6処理を実行し、前記第6処理において火災が発生したと判別した場合に、他の中継器又は前記受信機に信号を送信する。
【0022】
(M)上記目的を達成するために、本発明の異常判別プログラムは、物理量xを測定するための複数のセンサから出力される信号に基づいて、異常が発生したか否かを判別する異常判別プログラムであって、所定時間又は所定回数にわたって、複数のセンサによって測定された複数の物理量xを収集し、収集された物理量xのそれぞれを正規化された物理量yに変換する第1処理と、物理量yの総和S
prevを算出する第2処理と、前記所定時間が経過した後、又は前記所定回数を超えた後に、複数のセンサによって測定された複数の物理量xを収集し、収集された物理量xのそれぞれを正規化された物理量yに変換し、物理量yの総和S
newを算出する第3処理と、総和S
newの平均値
【表6】
及び標準偏差σ
newを算出する第4処理と、平均値
【表7】
、標準偏差σ
new及び総和S
prevの平均値
【表8】
を累積分布関数に適用して算出される確率が、予め設定された確率の閾値以下であるか否かを判断し、閾値以下である場合に異常が発生したと判別する第5処理と、を含む処理をプロセッサに実行させる。
【0023】
(N)好ましくは、上記(M)の異常判別プログラムにおいて、複数のセンサのそれぞれに対応する重みwが予め設定され、前記第2処理においては重みwを乗じた物理量yの前記総和Sprevが算出され、前記第3処理においては重みwを乗じた物理量yの前記総和Snewが算出される。
【発明の効果】
【0024】
本発明の異常判別プログラム及びこれを備えた火災監視システムによれば、複数のセンサの測定結果を総合し、且つ複数のセンサの相互関係を考慮することにより、正常時に起こる確率が低い異常が発生したことを早期に判別することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の異常判別プログラムを備えた火災監視システムの第1実施形態を示す概略図である。
【
図2】
図2は、上記火災監視システムを構成する受信機を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、複数のセンサによって測定された物理量xと、正規化された物理量yとを説明するための説明図である。
【
図4】
図4は、物理量yの総和Sを説明するための説明図である。
【
図5】
図5は、異常判別プログラムにおける異常判別の原理を説明するための説明図である。
【
図6】
図6は、異常判別プログラムをシミュレーションするために設定した監視領域の条件を示すものであり、
図6(a)は天井、センサ1~4及び火源の側面図、
図6(b)は天井及びセンサ1~4の正面図である。
【
図7】
図7(a)は、上記シミュレーションで算出したセンサ1の位置における温度を示すグラフであり、
図7(b)は、上記シミュレーションで算出したセンサ2の位置における温度を示すグラフである。
【
図8】
図7(a)は、上記シミュレーションで算出したセンサ3の位置における温度を示すグラフであり、
図7(b)は、上記シミュレーションで算出したセンサ4の位置における温度を示すグラフである。
【
図9】
図9は、上記シミュレーションで算出したtの値と、tの値から算出したt分布の確率値とを示すグラフである。
【
図10】
図10は、本発明の異常判別プログラムを備えた火災監視システムの第2実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の異常判別プログラム及びこれを備えた火災監視システムの実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
なお、本発明の異常判別プログラムは、測定された物理量xが生じる確率に基づいて異常が発生したか否かを判別するものである。このため、本発明の異常判別プログラムの判別対象は、火災に起因する異常に限定されない。しかし、説明の便宜上、火災に起因する異常を判別対象の一例にして、異常判別プログラム及び火災監視システムの実施形態について説明する。
【0028】
1.火災監視システムの第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態の火災監視システムを示す。本実施形態の火災監視システムは、例えば、オフィスビル、テナントビル、物流倉庫などの大規模施設に設置される。火災監視システムは、主として、複数のセンサ1~4及び受信機10で構成される。センサ1~4は、例えば、大規模施設における所定の監視領域の天井に設置される。図示しないが、大規模施設の各所の監視領域には、センサ1~4と同じ構成又は異なる構成の多数のセンサが設置される。センサ1~4及びその他のセンサから出力される信号は、
図1中の破線で示される信号線5を介して、受信機10に入力される。受信機10は、センサ1~4及びその他のセンサから出力される信号に基づいて、大規模施設の全体を監視する。受信機10は、火災及び火災以外のトラブルの発生を監視することが可能である。火災以外のトラブルには、例えば、ガスに関連する異常、電気に関連する異常、大規模施設に設置された防災設備の異常、受信機10と連動する周辺機器との通信状態の異常などが含まれる。
【0029】
1.2 複数のセンサ
複数のセンサ1~4は、例えば、アナログ式の火災感知器である。センサ1~4は、互いに同一の構成であり、温度及び/又は煙濃度(物理量x)を測定するための少なくとも1つの検出素子を備える。所定の監視領域において、複数のセンサ1~4のそれぞれは、火災の発生に起因して変化する物理量xを測定し、物理量xに応じたアナログ信号を生成する。さらに、複数のセンサ1~4のそれぞれは、物理量xに応じたアナログ信号をデジタル信号に変換して出力する。このデジタル信号は、複数のセンサ1~4のそれぞれに割り当てられたアドレスを含む。複数のセンサ1~4のそれぞれから出力されるデジタル信号は、信号線5を介して、受信機10に入力される。
【0030】
なお、複数のセンサ1~4は、複数の火災感知器に限定されるものではない。例えば、複数のセンサ1~4は、差動式分布型感知器であってもよい。差動式分布型感知器は、主として、1本の電線の途中に、複数の熱電対を所定の間隔で電気的に接続した構成となっている。複数の熱電対のそれぞれは、検出した熱量に応じた起電力を生じさせる。
【0031】
また、複数のセンサ1~4は、光ファイバーを利用した温度測定装置であってもよい。この温度測定装置は、主として、1本の光ファイバー、レーザー光源及び光検出部を備えた構成となっている。光ファイバーは、例えば、大規模施設における所定の監視領域の天井に敷設される。レーザー光源は、光ファイバーの入射端にパルス状のレーザー光を入射させる。入射光の一部は、光ファイバーのガラス粒子に反射され、レーリー散乱光、ブリルアン散乱光及びラマン散乱光のそれぞれの反射光を発生させる。これらの反射光は、再び入射端に戻る。これらの反射光の成分のうち、ラマン散乱光の強度及びブリルアン散乱光の周波数は、光ファイバーの温度に依存して変化する。したがって、ラマン散乱光の強度及びブリルアン散乱光の周波数に基づいて、温度を測定することが可能である。また、入射光が入射してから反射光が戻る時間に基づいて、反射光が発生した光ファイバー上の位置を特定することが可能である。
【0032】
1.3 受信機
図1に示される受信機10は、例えば、大規模設備に設けられた防災センターに設置される。受信機10は、主として、
図2に示される受信部11、制御部12及び報知部13で構成される。
図2において、受信部11は、
図1中の信号線5を介して、複数のセンサ1~4に電気的に接続される。受信部11は、複数のセンサ1~4から出力されたデジタル信号を受信する。このデジタル信号には、複数のセンサ1~4のそれぞれによって測定された物理量xが含まれる。受信部11は、受信したデジタル信号を制御部12に送信する。説明の便宜上、制御部12によって処理されるデジタル信号を、複数のセンサ1~4によって測定された物理量xと表現する。
【0033】
制御部12は、演算処理を実行するためのプロセッサを備える。制御部12のプロセッサは、本実施形態に係る異常判別プログラムに従って、
図2中に示されるステップS1~S10、S11~S14及びS21~S26の処理を実行する。異常判別プログラムは、従来の火災監視システムと同様に火災の発生を判別することに加えて、火災が発生した初期段階の僅かな異常を判別することが可能である。本実施形態に係る異常判別プログラムについては、後に詳述する。
【0034】
報知部13は、例えば、
図1に示される大型のタッチパネル、図示しないLEDやスピーカなどによって構成される。報知部13は、制御部11から出力される信号に基づいて、種々の情報をタッチパネルに表示させる。例えば、制御部12が、火災又は異常の発生を検出した場合、報知部13は、火災又は異常の発生をタッチパネルに表示される画像、LEDの発光色、及びスピーカから出力される音によって報知する。
【0035】
1.4 異常判別プログラム
本実施形態の異常判別プログラムに従った制御部12の処理について説明する。
図2において、ステップS1~S10は、異常判別プログラムのメインルーチンの処理である。また、ステップS11~S14及びS21~S26は、メインルーチンに付随するサブルーチンの処理である。
【0036】
1.4.1 火災判別処理
制御部12は、複数のセンサ1~4によって測定された物理量xに基づいて、ステップS1の火災判別処理を実行する。火災判別処理S1において、制御部12は、物理量xをステップS11において予め設定された第1閾値と比較する。例えば、物理量xが温度である場合、第1閾値として「70℃」の温度が設定される。この場合、制御部12は、物理量xが70℃以上であるか否かを判断する。この判断の結果、70℃以上であると判別した場合(YES)、制御部12は、報知部13に信号を送信し、火災の発生を報知させる。一方、70℃以上でないと判別した場合(NO)、制御部12は、ステップS2の物理量x収集処理を実行する。
【0037】
本実施形態の異常判別プログラムでは、火災判別処理S1が最も早い段階で実行されることにより、万が一に火災が発生した場合でも、報知部13によって火災の発生が迅速に報知される。この結果、受信機10が設置された防災センターによる火災の初期消火を迅速に行うことが可能となる。
【0038】
1.4.2 物理量x収集処理
ステップS2の物理量x収集処理において、制御部12は、複数のセンサ1~4によって測定された物理量xを継続的に収集する。制御部12は、複数のセンサ1~4のそれぞれについて、所定の時間間隔で物理量xの収集する。物理量xを収集する時間間隔は、複数のセンサ1~4の数、信号線5の長さ、制御部12のプロセッサの処理能力などに応じて決定される。
【0039】
ステップS21において、収集された物理量xは、複数のセンサ1~4のそれぞれに対応するデータベースに時系列に記憶される。新たな物理量xが測定される度に、データベースに物理量xが蓄積される。データベースの記憶領域が物理量xで満たされた場合、最古の物理量xが削除され、最新の物理量xが追加される。このようにして、本実施形態の異常判別プログラムの動作中は、常時、データベースに記憶された物理量xが更新される。
【0040】
ここで、ステップS21のデータベースに蓄積される物理量xの意義について説明する。まず、データベースに蓄積される物理量xは、上述した火災判別処理S1において第1閾値未満であると判別されたものである。すなわち、データベースに蓄積される物理量xは、いずれも火災の発生が報知されていない状況下において測定されたものである。次に、データベースに蓄積される物理量xは、正常又は異常のいずれか一方の状況下において測定された可能性がある。正常な状況とは、火災の原因となる事象が生じていない状況である。異常な状況とは、未だ火災の発生が報知されていないが、火災の原因となる事象が生じている状況である。そして、正常な状況下において測定された時系列の物理量xの集りは、その後に異常が発生したか否かを判別するための拠り所になる。
【0041】
1.4.3 乱数加算処理
ステップS3の乱数加算処理において、制御部12は、物理量xの有効数字を増加させるための乱数を生成し、ステップS2において収集された物理量xのそれぞれに乱数を加算する。乱数加算処理S3は、複数のセンサ1~4の性能に応じて選択的に実行される。すなわち、乱数加算処理S3は、後述するステップS9の確率算出処理の精度を向上させるための処理であり、物理量xの最小桁が不足する場合に実行される。乱数加算処理S3において、制御部12は、複数のセンサ1~4によって測定された物理量xに実質的な影響を与えない小数第n位の乱数を生成し、この乱数を物理量xに加算する。
図2のステップS21において、乱数が加算された物理量xは、複数のセンサ1~4のそれぞれに対応するデータベースに時系列に記憶される。一方、複数のセンサ1~4によって測定された物理量xが小数第n位の有効数字を有する場合、制御部12は、乱数加算処理S3を実行せずに、ステップS4の物理量y換算処理に進む。
【0042】
1.4.4 物理量y換算処理
ステップS4の物理量y換算処理において、制御部12は、ステップS2において収集された物理量xのそれぞれを、又はステップS3において乱数が加算された物理量xのそれぞれを、下記式(1)によって正規化された物理量yに変換する。
【数6】
但し、
【表9】
は、物理量xの平均値であり、σは、物理量xの標準偏差である。
【0043】
ここで、物理量y換算処理における正規化について、
図3を参照しつつ説明する。
図3に示されるように、複数のセンサ1~4によって測定された物理量xは、いずれも連続的な変数であり、平均値μ、標準偏差σの正規分布N(μ,σ)に従う。しかし、複数のセンサ1~4のそれぞれは、
図1に示される所定の監視領域において異なる条件下に設置されている。例えば、複数のセンサ1~4のそれぞれは、天井の異なる位置に設置され、空気調和機100の吹出口からの距離も互いに異なる。このため、複数のセンサ1~4によって測定された物理量xの平均値μ、標準偏差σは、互いに異なる値になる。そこで、上記式(1)によって、複数のセンサ1~4によって測定された物理量xを正規化された物理量yに変換する。
図3に示されるように、正規化された物理量yは、平均値0、標準偏差1の標準正規分布N(0,1)に従う。つまり、複数のセンサ1~4によって測定された物理量xの正規分布N(μ,σ)は、正規化された物理量yの標準正規分布N(0,1)に揃えられる。正規化された物理量yの集りは、正規分布N(0,1)に従う母集団を形成する。
図2のステップS22において、正規化された物理量yは、複数のセンサ1~4のそれぞれに対応するデータベースに時系列に記憶される。
【0044】
なお、上記式(1)における平均値
【表10】
の算出には、ステップS21のデータベースに蓄積された物理量xが用いられる。この場合、平均値
【表11】
の算出に用いる物理量xのデータ数は、特に限定されるものではない。例えば、平均値
【表12】
を算出するタイミングにおいて、ステップS21のデータベースに蓄積された全ての物理量xを用いてもよい。また例えば、ステップS21のデータベースに蓄積された物理量xのうち、直近の数十分間又は数十秒間の物理量xを、平均値
【表13】
の算出に用いてもよい。
【0045】
1.4.5 総和S
prev算出処理
ステップS5の総和S
prev算出処理において、制御部12は、ステップS22の複数のセンサ1~4のそれぞれに対応するデータベースから物理量yを取得し、重みwを乗じた物理量yの総和S
prevを、下記式(2)によって算出する。
【数7】
但し、P、Qは、それぞれが物理量xの測定に使用される複数のセンサ1~4を示すものである。y
(p)は、センサPの物理量yの値であり、y
(Q)は、センサQの物理量yの値である。w
(Q,P)は、センサQとセンサPの相互関係に基づいて設定される重みwである。
【0046】
重みwは、予めステップS12において、複数のセンサ1~4のそれぞれに対応して、センサ1~4の相互関係(同じセンサどうしの関係も含む)に基づく値が設定される。例えば、下記の表1は、複数のセンサ1~4の互いの距離rに基づいて設定された重みwを示す。
【表14】
【0047】
表1に示される重みwは、センサPからセンサQまでの距離rが、床面から天井までの高さH(m)とr≦0.18Hの関係がある場合を「1」とし、これ以外の場合を「r-3/2」としたものである。
【0048】
上記式(2)の総和S
prevは、センサPのそれぞれについて、センサQの物理量y
(Q)に重みw
(Q,P)を乗じた値を全て加算したものである。
図4中の(a)~(d)は、センサP、Qのそれぞれがセンサ1~4である場合の上記式(2)中の物理量y
(Q)及び重みw
(Q,P)を示す。
図4中の(a)~(d)中のセンサ1~4の物理量y
(Q)のそれぞれに重みw
(Q,P)を乗じた値を全て加算したものが、上記式(2)の総和S
prevである。
【0049】
なお、総和S
prevを算出するための数式は、下記式(3)又は(4)のいずれかであってもよい。
【数8】
【数9】
【0050】
総和Sprevの算出に用いる物理量y(p)及び物理量y(Q)のデータ数は、特に限定されるものではない。例えば、総和Sprevを算出するタイミングにおいて、ステップS22のデータベースに蓄積された全ての物理量y(p)及び物理量y(Q)を用いてもよい。また例えば、ステップS22のデータベースに蓄積された物理量y(p)及び物理量y(Q)のうち、直近の数十分間又は数十秒間の物理量y(p)及び物理量y(Q)を、総和Sprevの算出に用いてもよい。
【0051】
総和Sprev算出処理S5においては、予め設定された回数に達するまで、繰り返し総和Sprevが算出される。繰り返し総和Sprevが算出される時間間隔は、特に限定されるものではない。例えば、最短の時間間隔として、最新の物理量y(p)及び物理量y(Q)がステップS22のデータベースに記憶される度に、総和Sprevが算出されてもよい。最短の時間間隔よりも長い場合、総和Sprevが算出される時間間隔は、任意に設定することができる。
【0052】
総和S
prev算出処理S5によって繰り返し算出された総和S
prevは、
図2のステップS23において、データベースに記憶される。データベースに記憶された総和S
prevに基づいて、総和S
prevの平均値
【表15】
が算出される。平均値
【表16】
は、後述するステップS9において、複数のセンサ1~4によって新たに測定された物理量xの異常判別に用いられる。
【0053】
1.4.6 総和Snew算出処理
制御部12は、総和Sprev算出処理S5が完了した後、ステップS6の総和Snew算出処理に進む。総和Snew算出処理S6において、制御部12は、上述したステップS2~S5と同様に、複数のセンサ1~4によって測定された複数の物理量xを収集し、収集された物理量xのそれぞれを正規化された物理量yに変換し、重みwを乗じた物理量yの総和Snewを算出する。測定された物理量xから正規化された物理量yへの変換には、上記式(1)が用いられる。総和Snewの算出には、上記式(2)~(4)のいずれか1つが用いられる。また、総和Snew算出処理S6においても、予め設定された回数に達するまで、繰り返し総和Snewが算出される。繰り返し算出された総和Snewは、ステップS24において、データベースに記憶される。
【0054】
総和Snewの算出に用いる物理量y(p)及び物理量y(Q)のデータ数は、特に限定されるものではないが、上述した総和Sprev算出処理S5において、総和Sprevの算出に用いた物理量y(p)及び物理量y(Q)のデータ数と同一又は近似させることが好ましい。
【0055】
また、総和Snewの算出が繰り返される回数及び時間間隔は、特に限定されるものではないが、上述した総和Sprev算出処理S5において、総和Sprevの算出が繰り返される回数及び時間間隔と同一又は近似させることが好ましい。
【0056】
1.4.7 平均値
【表17】
算出処理
ステップS7の平均値
【表18】
算出処理において、制御部12は、総和S
newの平均値
【表19】
を算出する。平均値
【表20】
算出処理S7において算出された総和S
newの平均値
【表21】
は、ステップS25において、データベースに記憶される。
【0057】
1.4.8 標準偏差σnew算出処理
ステップS8の標準偏差σnew算出処理において、制御部12は、総和Snewの標準偏差σnewを算出する。標準偏差σnew算出処理S8において算出された標準偏差σnewは、ステップS26において、データベースに記憶される。
【0058】
1.4.9 確率算出処理
ステップS9の確率算出処理において、制御部12は、平均値
【表22】
、標準偏差σ
new及び総和S
prevの平均値
【表23】
を累積分布関数に適用する。累積分布関数に用いる変数として、例えば、下記式(5)が用いられる。制御部12は、下記式(5)によって算出されたtの値に基づいて、t分布の確率値を算出する。
【数10】
但し、nは、平均値
【表24】
の算出に用いた総和S
newのデータ数である。
【0059】
1.4.10 異常判別処理
ステップS10の異常判別処理において、制御部12は、ステップS9の確率算出処理において算出された確率値を、ステップS13において予め設定された第2閾値と比較する。第2閾値として、例えば、1.0×10-4~1.0×10-8の範囲内の低い確率の値が設定される。
【0060】
制御部12は、算出された確率値が第2閾値以下であるか否かを判断する。算出された確率値が第2閾値以下であると判別した場合(YES)、制御部12は、報知部13に信号を送信し、異常の発生を報知させる。その後、制御部12は、ステップS22のデータベースから更新された物理量yを取得し、ステップS5~10の処理を繰り返す。一方、算出された確率値が第2閾値以下でないと判別した場合(NO)、制御部12は、報知部13に信号を送信することなく、ステップS22のデータベースから更新された物理量yを取得し、ステップS5~S10の処理を繰り返す。
【0061】
1.4.11 異常判別の原理
上述した異常判別プログラムにおける異常判別の原理について、
図5を参照しつつ説明する。平均値μ、標準偏差σの正規分布N(μ,σ)の母集団からサンプリングされたサンプル集団の平均値を
【表25】
、標準偏差をσ
sampとしたときに、下記式(6)で算出されるtは、
図5に示されるt分布に従う。
【数11】
但し、nは、平均値
【表26】
の算出に用いたサンプル集団のデータ数である。
【0062】
そこで、本実施形態の異常判別プログラムでは、
図2のステップS1~S5において、正常時の物理量xに基づいて、母集団となる物理量yの総和S
prevを算出する。その後、
図2のステップS6において、新たに測定された物理量xを正規化された物理量yに換算し、この物理量yの総和S
newを算出する。総和S
newは、総和S
prevからサンプリングされたサンプル集団ではないが、これを総和S
prevのサンプル集団とみなし、
図2のステップS9においてtを算出し、tの値からt分布の確率値を導き出す。ステップS10において、確率値が第2閾値以下の場合は、正常時に起こる確率が低い事象、すなわち、異常が発生したと判別する。
【0063】
1.4.12 重みwの設定変更
図2のステップS12において予め設定される重みwの値は、複数のセンサ1~4のうちの少なくとも1つに及ぼされる外乱の影響に基づいて、設定変更されるようにしてもよい。
【0064】
例えば、複数のセンサ1~4のうちの少なくとも1つが、
図1に示される空気調和機100による温度の影響を受ける場合、空気調和機100の動作に関する情報に基づいて、複数のセンサ1~4のうちの少なくとも1つに適用される重みwの値が設定変更される。空気調和機100の動作に関する情報には、例えば、空気調和機100のON/OFFの情報、空気調和機100の設定温度の情報などが含まれる。これらの情報が制御部12に提供されることにより、制御部12が、ステップS14の設定変更処理を実行する。例えば、
図1に示されるセンサ3が空気調和機100による温度の影響を受ける場合、制御部12は、センサ3に対応して設定された重みwの値を、下記の表2のように「0」に設定変更する。これにより、上記式(2)~(4)を用いた総和S
prev及び総和S
newの演算からセンサ3の測定結果が除外される。
【表27】
【0065】
また例えば、複数のセンサ1~4のうちの少なくとも1つが日照による温度の影響を受ける場合に、日照の時刻、日射量及び天井の温度のうちの少なくとも1つに基づいて、複数のセンサのうちの少なくとも1つに適用される重みwの値が設定変更されるようにしてもよい。
【0066】
1.5 作用効果
本実施形態の異常判別プログラム及びこれを備えた火災監視システムによれば、複数のセンサ1~4によって測定された物理量xを総合し、且つ複数のセンサ1~4の相互関係を考慮した重みwを適用することにより、正常時に起こる確率が低い異常が発生したことを早期に判別することが可能となる。
【0067】
また、異常が発生したか否かの判別に用いられる総和S
prevは、複数のセンサ1~4によって測定された物理量xに基づいて算出されるので、ニューラルネットワークをディープラーニングさせる作業が不要である。さらに、
図2のステップS3~S10において実行される演算処理によって、異常が発生したか否かを判別することができ、判別のための計算負荷は、極めて小さい。
【0068】
2.異常判別プログラムのシミュレーション
Microsoft Corporation(登録商標)の表計算ソフトウェアである製品名「Microsoft Excel(登録商標)」を用いて、本発明の異常判別プログラムのシミュレーションを行った。
【0069】
2.1 監視領域の条件設定
まず、本発明の異常判別プログラムが適用される監視領域の条件を、
図6(a)、(b)に示されるように設定した。
図6(a)、(b)において、監視領域には、天井と床面があり、天井と床面の間に壁はない設定とした。天井に4つのセンサ1~4が設置され、床面に1つの火源が設置される設定とした。
【0070】
天井は、10m×10m=100m2の正方形とし、床面から高さH=8mのところに位置する設定とした。4つのセンサ1~4は、互いに5mの距離rをおいて、天井の2辺のそれぞれから2.5m離れたところに位置する設定とした。つまり、天井を4分割した5m×5m=25m2の中心に1つのセンサが位置することになる。
【0071】
図6(b)に示されるように、火源は、天井の中心点からセンサ1の方向へ図中の縦方向に1m、及び図中の横方向に1mずれたところに位置する設定とした。火源として、木材を等間隔に組み上げた6段クリブを想定した。6段クリブの想定は、次に述べる火源の発熱速度Qの計算に用いられる火災成長係数αの値に反映される。
【0072】
2.2 火源の発熱速度Qの計算
火源の火災成長モデルとして二次関数モデルQ=αt2を使用した。Qは火源の発熱速度であり、1秒当たりの発熱量(kW)を表わす。αは火災成長係数、tは時間(秒)である。火災成長係数αは、6段クリブを想定して0.007kW/s2とした。火源の発熱速度Qは、所定の時間にわたって、例えば、時間tを1秒ずつ加算して繰り返し算出する。発熱速度Qを繰り返し算出する場合に、時間t=0の時点を火源への着火点とする。
【0073】
2.3 天井流温度Tの計算
火源の発熱速度Q(kW)、天井高さH(m)及び火源とセンサの水平距離r(m)を下記式(7)のAlpertの式に代入することにより、センサ1~4のそれぞれの位置における天井流温度上昇ΔT(℃)を算出する。例えば、1秒ごとに算出される発熱速度Qに基づいて、所定の時間にわたる天井流温度上昇ΔTを算出する。
【数12】
但し、Qは火源の発熱速度(kW)、Hは天井高さ(m)、rは火源とセンサの水平距離(m)である。
【0074】
ΔTは、天井流の「温度上昇」を示すものであり、ΔTに周囲温度T0を加算したT(=ΔT+T0)が、センサ1~4のそれぞれの位置における天井流の「温度」となる。さらに、本シミュレーションでは、ΔT+T0によって算出した天井流温度Tに、平均値0、標準偏差1の標準正規分布N(0,1)となるような乱数を加算する。
【0075】
2.4 天井流温度Tの計算の具体例
以下、センサ1~4のそれぞれの位置における天井流温度Tの計算の具体例について説明する。以下の具体例は、時間t=250秒、周囲温度T0=20℃とした場合の1回の計算である。
【0076】
まず、火源の発熱速度Qを算出する。時間t=250秒の場合の発熱速度Qは、0.007×2502=437.5kWとなる。これは1秒当たりに437.5kJの熱量が燃焼によって発生していることを意味する。
【0077】
次に、火源とセンサの水平距離r(m)を算出する。
図6(b)に示される火源とセンサ1の水平距離をr
1、火源とセンサ2の水平距離をr
2、火源とセンサ3の水平距離をr
3、火源とセンサ4の水平距離をr
4とした場合、各水平距離r
1、r
2、r
3、r
4は、下記式(8)~(11)のとおりとなる。
【数13】
【数14】
【数15】
【数16】
【0078】
次に、センサ1~4のそれぞれの位置における天井流温度上昇ΔT(℃)を上記式(7)を用いて算出する。
【0079】
センサ1の水平距離r
1は2.12mであり、天井高さHは8mであるから、r
1/H=0.265である。したがって、センサ1の位置における天井流温度上昇ΔT
1は、上記式(7)中の2つの式のうち、(0.18<r/H)に対応する式を用いて算出する。天井流温度上昇ΔT
1は、下記式(12)のとおりであり、ΔT
1=23.5℃である。
【数17】
【0080】
センサ2の水平距離r
2は3.81mであり、天井高さHは8mであるから、r
2/H=0.476である。したがって、センサ2の位置における天井流温度上昇ΔT
2は、上記式(7)中の2つの式のうち、(0.18<r/H)に対応する式を用いて算出する。天井流温度上昇ΔT
2は、下記式(13)のとおりであり、ΔT
2=15.9℃である。
【数18】
【0081】
センサ3の水平距離r
3は4.95mであり、天井高さHは8mであるから、r
3/H=0.619である。したがって、センサ3の位置における天井流温度上昇ΔT
3は、上記式(7)中の2つの式のうち、(0.18<r/H)に対応する式を用いて算出する。天井流温度上昇ΔT
3は、下記式(14)のとおりであり、ΔT
3=13.3℃である。
【数19】
【0082】
センサ4の水平距離r
4は3.81mであり、天井高さHは8mであるから、r
4/H=0.476である。したがって、センサ4の位置における天井流温度上昇ΔT
4は、上記式(7)中の2つの式のうち、(0.18<r/H)に対応する式を用いて算出する。天井流温度上昇ΔT
4は、下記式(15)のとおりであり、ΔT
4=15.9℃である。
【数20】
【0083】
次に、天井流温度上昇ΔT
1~ΔT
4のそれぞれに周囲温度T
0を加算して、センサ1~4のそれぞれの位置における天井流温度T
1~T
4を算出する。上述したように、周囲温度T
0は20℃とした。センサ1~4のそれぞれの位置における天井流温度T
1~T
4は、下記式(16)~(19)のとおりである。
【数21】
【数22】
【数23】
【数24】
【0084】
最後に、天井流温度T1~T4のそれぞれに、平均値0、標準偏差1の標準正規分布N(0,1)となるような乱数を加算することで、時間t=250秒の時点でのセンサ1~4のそれぞれの位置における温度が得られる。
【0085】
2.5 計算によって得られたセンサ1~4の温度
図6(a)、(b)に示される監視領域の条件の設定に基づいて、且つ火源の発熱速度Q=αt
2及び上記式(7)~(19)を用いて、センサ1~4のそれぞれの位置における-60秒~360秒までの温度を1秒ごとに算出した。この場合の周囲温度T
0は20℃とした。
【0086】
図7(a)はセンサ1の温度、
図7(b)はセンサ2の温度、
図8(a)はセンサ3の温度、
図8(b)はセンサ4の温度を示す。これらの図面において、0秒の時点を火源の着火点とし、-60秒~0秒までの温度は、火源の発熱速度Q=0(kW)にして計算した。つまり、火源の着火点以前は、天井流温度上昇ΔT
1~ΔT
4がいずれも0となり、センサ1~4の温度は、周囲温度T
0の20℃に乱数を加算した値になる。着火点よりも後は、火源の発熱速度Q=αt
2の時間tを1秒ずつ加算して、1秒~360秒までの温度を算出した。
【0087】
2.6 物理量xから物理量yへの換算
図7(a)、(b)及び
図8(a)、(b)に示されるセンサ1~4の1秒ごとの温度のそれぞれは、乱数が加算された物理量xに相当する。上記式(1)を用いて、センサ1~4の1秒ごとの温度(物理量x)のそれぞれを物理量yに換算する。上記式(1)中の平均値
【表28】
及び標準偏差σの算出には、物理量yに換算する物理量xよりも前に算出された複数の物理量xを用いる。例えば、270秒の時点の物理量xを物理量yに換算する場合は、250秒~269秒までの20個の物理量xを用いて、上記式(1)中の平均値
【表29】
及び標準偏差σを算出する。
【0088】
2.7 総和S
prevの算出
本シミュレーションでは、
図7(a)、(b)及び
図8(a)、(b)に示される0秒の着火点よりも前に算出した複数の物理量yを用いて、上記式(2)によりセンサ1~4の物理量yの総和S
prevを算出する。例えば、総和S
prevの算出には、-40秒~-21秒までの20個の物理量yを用いる。また、上記式(2)中の重みw
(Q,P)には、上記表1中の値を用いる。
【0089】
2.8 総和Snewの算出
センサ1~4の物理量yの総和Sprevを算出した後、新たな物理量yが算出される1秒ごとに、上記式(2)を用いてセンサ1~4の物理量yの総和Snewを算出する。例えば、270秒の時点における総和Snewの算出には、251秒~270秒までの20個の物理量yを用いる。また、上記式(2)中の重みw(Q,P)には、上記表1中の値を用いる。
【0090】
2.9 平均値
【表30】
の算出
センサ1~4の物理量yの総和S
newが算出される1秒ごとに、総和S
newの平均値
【表31】
を算出する。例えば、270秒の時点における総和S
newが算出されたタイミングでは、250秒~269秒までの20個の総和S
newを用いて平均値
【表32】
を算出する。
【0091】
2.10 標準偏差σnewの算出
センサ1~4の物理量yの総和Snewが算出される1秒ごとに、総和Snewの標準偏差σnewを算出する。例えば、270秒の時点における総和Snewが算出されたタイミングでは、250秒~269秒までの20個の総和Snewを用いて標準偏差σnewを算出する。
【0092】
2.11 tの値、t分布の確率値の算出
平均値
【表33】
、標準偏差σ
new及び総和S
prevの平均値
【表34】
を、上記式(5)に適用することによってtの値を算出し、このtの値に基づいて、t分布の確率値を算出する。
図9は、-22秒~360秒までの間、1秒ごとに算出されたtの値と、このtの値から算出されたt分布の確率値とを示すグラフである。なお、上記式(5)中の総和S
prevの平均値
【表35】
は、例えば、-40秒~-21秒までの間に1秒ごとに算出された20個の総和S
prevを用いて算出する。
【0093】
図9に示されるように、火源に着火してから約90秒の時点において、tの値が約6となり、t分布の確率値が1.0×10
-4~1.0×10
-5の間に低下した。仮に、本発明の異常判別プログラムにおいて、確率の閾値を1.0×10
-4~1.0×10
-5の間に設定した場合は、火源に着火してから約90秒の時点において、火災の発生に起因する温度の異常を判別することが可能となる。
【0094】
一方、
図7(a)、(b)及び
図8(a)、(b)に示されるように、火源に着火してから約90秒の時点において、4つのセンサ1~4のそれぞれによって測定された温度は、約25℃であった。仮に、本発明の異常判別プログラムにおいて、確率の閾値を1.0×10
-4~1.0×10
-5の間に設定した場合は、周囲温度T
0の20℃から約5℃の温度上昇があった時点で、火災の発生に起因する温度の異常を判別することが可能である。
【0095】
これに対し、一般的な定温式熱感知器は、反応時間が早い順番に「特種」>「1種」>「2種」>「3種」の種別に区分される。最も反応時間が早い「特種」の定温式熱感知器は、60℃以上の温度を測定したときに火災の発生を報知する構成となっているので、初期温度20℃から約5℃の温度上昇では全く動作しないことになる。
【0096】
3.火災監視システムの第2実施形態
図10は、本発明の第2実施形態の火災監視システムを示す。本実施形態の火災監視システムは、主として、複数の監視領域に設置された複数のセンサ1~4、少なくとも1つの中継器20、及び受信機10で構成される。中継器20は、いずれか一の監視領域に設置されたセンサ1~4と、受信機10との間に信号線5を介して電気的に接続される。中継器20は、第1実施形態と同様の受信部11及び制御部12を備え、且つ第1実施形態と同様の異常判別プログラムがインストールされている。一方、本実施形態の受信機10は、既存の製品をそのまま適用しており、受信機10に異常判別プログラムはインストールされていない。
【0097】
中継器20の受信部11は、信号線5を介して、複数のセンサ1~4に電気的に接続される。受信部11は、複数のセンサ1~4から出力されたデジタル信号を受信する。このデジタル信号には、複数のセンサ1~4のそれぞれによって測定された物理量xが含まれる。受信部11は、受信したデジタル信号を制御部12に送信する。制御部12は、演算処理を実行するためのプロセッサを備える。
【0098】
第1に、制御部12のプロセッサは、複数のセンサ1~4から受信した物理量xを含むデジタル信号を受信機10、及び/又は他の中継器、他の受信機又は消火設備などに送信する。例えば、受信機10は、物理量xを含むデジタル信号に基づいて、
図2中に示されるステップS1と同様の火災判別処理を実行し、火災が発生したか否かを判別する。受信機10は、火災が発生したと判別した場合に、報知部13に火災の発生を報知させる。
【0099】
第2に、制御部12のプロセッサは、第1実施形態と同様の異常判別プログラムに従って、
図2中に示されるステップS2~S10、S11~S14及びS21~S26の処理を実行する。制御部12は、ステップS10において異常が発生したと判別した場合に、異常検出信号5aを受信機10、及び/又は他の中継器、他の受信機又は消火設備などに送信する。例えば、受信機10は、異常検出信号5aに基づいて、報知部13に異常の発生を報知させる。
【0100】
上述した本実施形態の火災監視システムでは、中継器20に異常判別プログラムがインストールされている。このため、中継器20を、例えば、オフィスビル、テナントビル、物流倉庫などに設置された既存の火災監視システムに追加することで、所定の監視領域における異常の発生を判別することが可能となる。つまり、既存のセンサ1~4、信号線5及び受信機10を用いて、本発明の火災監視システムを構築することができる。
【0101】
また、中継器20は、複数の監視領域に選択的に適用することが可能であり、ユーザーが選んだ任意の監視領域において異常の発生を判別することができる。さらに、中継器20は、入力端子及び出力端子に信号線5を接続することで容易に設置することができる。その他、中継器20に異常判別プログラムをインストールすることにより、受信機10の計算負荷が軽減され、メモリに記憶される情報量を削減することが可能である。
【符号の説明】
【0102】
1~4 センサ
5 信号線
10 受信機
11 受信部
12 制御部(プロセッサ)
13 報知部
20 中継器
22 制御部(プロセッサ)
5a 異常検出信号