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特開2023-168657光学式非接触速度計の校正システム及び光学式非接触速度計の校正方法
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  • 特開-光学式非接触速度計の校正システム及び光学式非接触速度計の校正方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168657
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】光学式非接触速度計の校正システム及び光学式非接触速度計の校正方法
(51)【国際特許分類】
   G01P 21/02 20060101AFI20231121BHJP
   G01P 5/26 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
G01P21/02
G01P5/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079887
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】衣笠 静一郎
(72)【発明者】
【氏名】古谷 雅
(57)【要約】
【課題】既知の長さの基準測定対象を必要としない光学式非接触速度計の校正システムを提供する。
【解決手段】校正対象の光学式非接触速度計10が発する検査光に対して透明な配管20と、配管20に流体を供給する流体供給装置30と、配管20を流れる流体の速度を参照速度として計測する、配管20に設けられた流速センサ40と、光学式非接触速度計10が計測した流体の計測速度と、参照速度とに基づき、光学式非接触速度計10の計測速度を校正するための校正信号を生成するための校正信号生成部301と、を備える光学式非接触速度計の校正システム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
校正対象の光学式非接触速度計が発する検査光に対して透明な配管と、
前記配管に流体を供給する流体供給装置と、
前記配管を流れる流体の速度を参照速度として計測する、前記配管に設けられた流速センサと、
前記光学式非接触速度計が計測した前記流体の計測速度と、前記参照速度とに基づき、前記光学式非接触速度計の計測速度を校正するための校正信号を生成するための校正信号生成部と、
を備える、光学式非接触速度計の校正システム。
【請求項2】
前記光学式非接触速度計を保持する保持部をさらに備える、請求項1に記載の光学式非接触速度計の校正システム。
【請求項3】
前記保持部が、前記流速センサに対向する位置に前記検査光が照射されるよう、前記光学式非接触速度計を保持する、請求項2に記載の光学式非接触速度計の校正システム。
【請求項4】
前記流体供給装置が、複数の異なる供給速度で、前記配管に前記流体を供給する、請求項1に記載の光学式非接触速度計の校正システム。
【請求項5】
前記配管の温度を制御する温度制御装置をさらに備える、請求項1に記載の光学式非接触速度計の校正システム。
【請求項6】
前記光学式非接触速度計に前記校正信号を送信するための校正信号送信部をさらに備える、請求項1に記載の光学式非接触速度計の校正システム。
【請求項7】
前記校正信号が、前記計測速度を、前記参照速度に近づけるよう、構成されている、請求項1に記載の光学式非接触速度計の校正システム。
【請求項8】
前記配管及び前記流体供給装置が、前記配管における前記流体の流れが層流になるよう構成されている、請求項1に記載の光学式非接触速度計の校正システム。
【請求項9】
校正対象の光学式非接触速度計が発する検査光に対して透明な配管に流体を供給することと、
前記光学式非接触速度計で、前記配管を流れる流体の速度を計測速度として計測することと、
前記配管に設けられた流速センサで、前記配管を流れる流体の速度を参照速度として計測することと、
前記計測速度と、前記参照速度とに基づき、前記計測速度を校正するための校正信号を生成することと、
を含む、光学式非接触速度計の校正方法。
【請求項10】
前記流速センサに対向する位置に前記検査光が照射されるよう、前記光学式非接触速度計を配置することをさらに含む、請求項9に記載の光学式非接触速度計の校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式非接触速度計の校正システム及び光学式非接触速度計の校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触速度計は測定対象の速度を非接触で測定可能であり、例えばフィルムや不織布のようなシートの搬送速度の測定などに用いられている。非接触速度計の精度を維持するために、非接触速度計を校正する方法が提案されている。
【0003】
特開平8-304452号公報は、既知の長さの測定対象材を設置し、移動装置により非接触速度計を任意の速度で測定対象材に対して平行移動させて、非接触速度計で測定対象材に対する相対速度を測定し、非接触速度計が測定した速度から測定対象材の測定長さを算出し、測定長さと測定対象材の既知の長さを比較することで、非接触速度計を校正することを記載している。
【0004】
特開平9-113526号公報は、既知の長さの無端ベルトを一対のプーリー間に架設し、無端ベルトの回転数と既知の長さから無端ベルトの基準速度を算出し、かつ、非接触速度計で無端ベルトの速度を測定し、非接触速度計で測定した速度と基準速度を比較することで、非接触速度計を校正することを記載している。
【0005】
特開2017-173216号公報は、移動する定盤からの散乱光を非接触速度計で検出してビート信号の周期を算出し、定盤の移動距離をビート信号の周期で除した値を、非接触速度計が測定領域に形成する干渉縞の間隔として算出して、非接触速度計を校正することを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-304452号公報
【特許文献2】特開平9-113526号公報
【特許文献3】特開2017-173216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の非接触速度計の校正方法では、既知の長さの基準測定対象を用いるが、校正の際には、速度から長さを算出する際に、正確な測定時間を計測あるいは設定する必要があり得る。そこで、本発明は、既知の長さの基準測定対象を必要としない光学式非接触速度計の校正システム及び光学式非接触速度計の校正方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様に係る光学式非接触速度計の校正システムは、校正対象の光学式非接触速度計が発する検査光に対して透明な配管と、配管に流体を供給する流体供給装置と、配管を流れる流体の速度を参照速度として計測する、配管に設けられた流速センサと、光学式非接触速度計が計測した流体の計測速度と、参照速度とに基づき、光学式非接触速度計の計測速度を校正するための校正信号を生成するための校正信号生成部と、を備える。
【0009】
上記の光学式非接触速度計の校正システムが、光学式非接触速度計を保持する保持部をさらに備えていてもよい。
【0010】
上記の光学式非接触速度計の校正システムにおいて、保持部が、流速センサに対向する位置に検査光が照射されるよう、光学式非接触速度計を保持してもよい。
【0011】
上記の光学式非接触速度計の校正システムにおいて、流体供給装置が、複数の異なる供給速度で、配管に流体を供給してもよい。
【0012】
上記の光学式非接触速度計の校正システムが、配管の温度を制御する温度制御装置をさらに備えていてもよい。
【0013】
上記の光学式非接触速度計の校正システムが、光学式非接触速度計に校正信号を送信するための校正信号送信部をさらに備えていてもよい。
【0014】
上記の光学式非接触速度計の校正システムにおいて、校正信号が、計測速度を、参照速度に近づけるよう、構成されていてもよい。
【0015】
上記の光学式非接触速度計の校正システムにおいて、配管及び流体供給装置が、配管における流体の流れが層流になるよう構成されていてもよい。
【0016】
本発明の態様に係る光学式非接触速度計の校正方法は、校正対象の光学式非接触速度計が発する検査光に対して透明な配管に流体を供給することと、光学式非接触速度計で、配管を流れる流体の速度を計測速度として計測することと、配管に設けられた流速センサで、配管を流れる流体の速度を参照速度として計測することと、計測速度と、参照速度とに基づき、計測速度を校正するための校正信号を生成することと、を含む。
【0017】
上記の光学式非接触速度計の校正方法が、流速センサに対向する位置に検査光が照射されるよう、光学式非接触速度計を配置することをさらに含んでいてもよい。
【0018】
上記の光学式非接触速度計の校正方法において、複数の異なる供給速度で、配管に流体を供給してもよい。
【0019】
上記の光学式非接触速度計の校正方法が、配管の温度を制御することをさらに含んでいてもよい。
【0020】
上記の光学式非接触速度計の校正方法が、非接触速度計に校正信号を送信することをさらに含んでいてもよい。
【0021】
上記の光学式非接触速度計の校正方法において、校正信号が、計測速度を、参照速度に近づけるよう、構成されていてもよい。
【0022】
上記の光学式非接触速度計の校正方法において、配管における流体の流れが層流になるよう、配管に流体を流してもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、既知の長さの基準測定対象を必要としない光学式非接触速度計の校正システム及び光学式非接触速度計の校正方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、実施形態に係る光学式非接触速度計の校正システムを示す模式図である。
図2図2は、実施形態に係る流速センサの模式的斜視図である。
図3図3は、実施形態に係る流速センサの模式的断面図である。
図4図4は、実施形態に係る光学式非接触速度計を示す模式図である。
図5図5は、実施形態に係る光学式非接触速度計を示す模式図である。
図6図6は、実施形態に係る光学式非接触速度計を示す模式図である。
図7図7は、実施形態に係る参照速度と計測速度との関係を示す模式的なグラフである。
図8図8は、実施形態に係る参照速度と計測速度との関係を示す模式的なグラフである。
図9図9は、実施形態に係る光学式非接触速度計の校正方法のフローチャートである。
図10図10は、実施形態に係る光学式非接触速度計の校正システムを示す模式図である。
図11図11は、実施形態に係る光学式非接触速度計の校正システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。ただし、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0026】
実施形態に係る光学式非接触速度計の校正システムは、図1に示すように、校正対象の光学式非接触速度計10が発する検査光に対して透明な配管20と、配管20に流体を供給する流体供給装置30と、配管20を流れる流体の速度を参照速度として計測する、配管20に設けられた流速センサ40と、光学式非接触速度計10が計測した流体の計測速度と、参照速度とに基づき、光学式非接触速度計10の計測速度を校正するための校正信号を生成するための校正信号生成部301と、を備える。
【0027】
流体は液体であっても気体であってもよい。流体は、例えば、検査光を散乱させる特性、検査光を反射する特性、検査光を回折させる特性、及び検査光の透過特性に変調を与える特性の少なくともいずれかを有する。流体は、検査光を散乱させる物質、検査光を反射する物質、検査光を回折させる物質、及び検査光を吸収する物質の少なくともいずれかを含んでいてもよい。物質の検査光を散乱させる特性、物質の検査光を反射する特性、物質の検査光を回折させる特性、又は物質の検査光を吸収する特性は、検査光の波長に応じて選択されてもよい。物体は、粒子を構成していてもよい。液体の例としては、水、塩水、及び油が挙げられるが、特に限定されない。
【0028】
流体供給装置30は、例えば、流体を収容する容器31、容器31と配管20を接続する流路32、流路32に設けられた流量制御機械33を備える。容器31内の流体は、重力を利用して、流路32を介して配管20に一方向に送られ得る。あるいは、容器31内の流体は、ポンプ等の流体機械を用いて、流路32を介して配管20に送られ得る。またあるいは、容器31内の流体は、容器31内に加えられる圧力によって、流路32を介して配管20に送られ得る。流量制御機械33は、配管20に供給される流体の流量を制御する。流量制御機械33としては、バルブ、及びフローコントローラ―が使用可能である。流体の流量は、配管20の口径に基づいて設定してもよい。流体供給装置30は、複数の異なる供給速度で、配管20に流体を供給してもよい。流体供給装置30は、圧力変動を吸収するダンパーをさらに備えていてもよい。
【0029】
配管20は、少なくとも光学式非接触速度計10が発する検査光が照射される部分が検査光に対して透明であればよい。配管20は、流体に乱流が生じないように構成されることが好ましい。配管20及び流体供給装置30の少なくともいずれかは、配管20における流体の流れが層流になるよう構成されていることが好ましい。配管20は、例えば直管であり、所定の長さを有する。流速センサ40は、例えば、配管20の側面に設けられる。流速センサ40は、例えば、配管20の外側面に当接している。流速センサ40が設けられた配管20の内側面の近傍に凹凸がないことが好ましい。流速センサ40は、配管20を流れる流体の速度を計測可能であれば、特に限定されない。流速センサ40の例としては、熱式流速センサ、超音波流速センサ、及び電磁式流速センサが挙げられる。流体の種類に応じて、流速センサ40の種類を選択してもよい。流速センサ40は、光学式非接触速度計10とは異なる種類の速度計であることが好ましい。例えば、流速センサ40は、非光学式流速センサである。
【0030】
熱式流速センサの例として、マイクロフローセンサが挙げられる。マイクロフローセンサは、例えば、図2及び図3に示すように、キャビティ46が設けられた基板41、基板41上にキャビティ46を覆うように配置された絶縁膜45、絶縁膜45に設けられたヒータ42、ヒータ42より上流側に設けられた上流側測温抵抗素子43、及びヒータ42より下流側に設けられた下流側測温抵抗素子44を備える。
【0031】
絶縁膜45のキャビティ46を覆う部分は、断熱性のダイヤフラムを構成している。ヒータ42は、キャビティ46を覆う絶縁膜45の中心に配置されており、配管20を流れる流体を加熱する。上流側測温抵抗素子43はヒータ42より上流側の流体の温度を検出するために用いられ、下流側測温抵抗素子44はヒータ42より下流側の流体の温度を検出するために用いられる。
【0032】
配管20内の流体が静止している場合、ヒータ42で加えられた熱は、上流方向と下流方向へ対称的に拡散する。したがって、上流側測温抵抗素子43及び下流側測温抵抗素子44の温度は等しくなり、上流側測温抵抗素子43及び下流側測温抵抗素子44の電気抵抗は等しくなる。これに対し、配管20内の流体が上流から下流に流れている場合、ヒータ42が発した熱は、下流方向に運ばれる。したがって、上流側測温抵抗素子43の温度よりも、下流側測温抵抗素子44の温度が高くなる。そのため、上流側測温抵抗素子43の電気抵抗と下流側測温抵抗素子44の電気抵抗との間に差が生じる。下流側測温抵抗素子44の電気抵抗と上流側測温抵抗素子43の電気抵抗の差は、配管20内の流体の速度や流量と相関関係がある。そのため、下流側測温抵抗素子44の電気抵抗と上流側測温抵抗素子43の電気抵抗の差から、配管20内を流れる流体の速度や流量を算出可能である。
【0033】
図1に示す流速センサ40が超音波式流速センサである場合、超音波式流速センサは、例えば、配管20の側面に当接する超音波発振子を備え、流体の移動による超音波周波数の変化を利用して流体の流速を計測する。流速センサ40が電磁式流速センサである場合、電磁式流速センサは、流体の移動による電磁誘導の変化を利用して流体の流速を計測する。
【0034】
光学式非接触速度計10は、配管20内の流体に検査光を照射し、少なくとも流体からの反射光に基づき、流体の速度を算出する。
【0035】
光学式非接触速度計10は、レーザードップラー式速度計であってもよい。光学式非接触速度計10がレーザードップラー式速度計である場合、光学式非接触速度計10は、図4に示すように、レーザー光を発する光源201を備える。レーザー光は、コリメートレンズ202を経て、ハーフミラー203で二分割される。分割された一方のレーザー光は、ミラー204で反射され、二つのレーザー光は、それぞれ、入射角θで配管20に入射し、干渉する。配管20内で生じた散乱光又は反射光は、集光レンズ205で集光され、受光素子206で受光される。
【0036】
受光素子206から得られるドップラー信号の周波数Fと、流体の速度Vと、レーザー光の波長λと、レーザー光の入射角θと、の関係は、下記(1)式で与えられる。
F=(2V/λ)sinθ (1)
レーザー光の波長λと、レーザー光の入射角θと、は、予め取得可能である。ドップラー信号の周波数Fは、受光素子206で受光した光の時間変化をフーリエ変換することにより取得可能である。そのため、ドップラー信号の周波数Fを取得することにより、光学式非接触速度計10は、流体の速度Vを算出する。
【0037】
光学式非接触速度計10は、自己結合式速度計であってもよい。光学式非接触速度計10が自己結合式速度計である場合、光学式非接触速度計10は、図5に示すように、レーザー光を発する光源211を備える。レーザー光は配管20に入射する。配管20内で生じた散乱光又は反射光は、照射光と同じ光路を逆に進む。光源211内の光共振器に再侵入する戻り光は、光共振器において生成されたレーザー光と干渉する。この干渉は、光共振器の中で自己結合効果が起きることを意味する。自己結合により生じた干渉波形を受光素子212で検出する。干渉波形の周期に基づき、光学式非接触速度計10は、流体の速度を算出する。
【0038】
光学式非接触速度計10は、空間フィルタ式速度計であってもよい。光学式非接触速度計10が空間フィルタ式速度計である場合、光学式非接触速度計10は、図6に示すように、光を発する光源221を備える。光源221はレーザー光源であってもよいし、LEDであってもよい。配管20内の流体は、集光された光で、光学式非接触速度計10の受光光学系に対して暗視野照明となるよう、斜め方向から照射される。配管20内で生じた散乱光又は反射光は、集光レンズ222で集光され、周期的な透過率分布を有する格子223上に、流体の像を形成する。
【0039】
受光光学系の倍率をM、流体の速度をVとすると、格子223上の像は速度MVで移動する。格子223からの透過光を、受光素子224で受光する。受光素子224が受光する透過光の信号の周期Fは、格子223の間隔をpとすると、下記(2)式で与えられる。
F=MV/p (2)
受光光学系の倍率M、格子223の間隔pと、は予め取得可能であるため、周波数Fを測定することにより、光学式非接触速度計10は、流体の速度Vを算出する。
【0040】
図1に示す光学式非接触速度計10の応答速度と流速センサ40の応答速度が一致するように、光学式非接触速度計10及び流速センサ40の少なくともいずれかの応答速度を調整してもよい。
【0041】
実施形態に係る光学式非接触速度計の校正システムは、光学式非接触速度計10を保持する保持部50をさらに備えていてもよい。保持部50は、例えば、流速センサ40に対向する位置に検査光が照射されるよう、光学式非接触速度計10を保持する。
【0042】
校正信号生成部301は、計測速度を、参照速度に近づけるための校正信号を生成する。光学式非接触速度計10は、有線又は無線で、校正信号生成部301に、計測速度を送信する。流速センサ40は、有線又は無線で、校正信号生成部301に、参照速度を送信する。校正信号生成部301は、光学式非接触速度計10から計測速度を受信し、流速センサ40から参照速度を受信する。
【0043】
校正信号生成部301は、計測速度と、参照速度と、を比較する。例えば、図7に示すように、計測速度と、参照速度が、同じである場合は、校正信号生成部301は、校正信号を生成しない。図8(a)に示すように、計測速度が、参照速度より速い場合、校正信号生成部301は、計測速度が参照速度と等しくなるよう、計測速度を校正する校正信号を生成する。図8(b)に示すように、計測速度が、参照速度より遅い場合、校正信号生成部301は、計測速度が参照速度と等しくなるよう、計測速度を校正する校正信号を生成する。
【0044】
校正信号は、図1に示す光学式非接触速度計10の計測速度を校正できれば、特に限定されない。例えば、校正信号は、光学式非接触速度計10が算出した計測速度に乗じる係数や式を含んでいてもよい。式は一次式であってもよいし、多項式であってもよい。あるいは、校正信号は、光学式非接触速度計10が計測速度の算出に用いる光学系の感度や電気回路の電気信号の強度及び周波数を校正する信号であってもよい。
【0045】
実施形態に係る非接触速度計の校正システムは、校正信号生成部301が生成した校正信号を光学式非接触速度計10に送信するための校正信号送信部302をさらに備える。光学式非接触速度計10は、校正信号を受信し、校正信号に基づき、校正された計測速度を算出するよう構成される。
【0046】
実施形態に係る非接触速度計の校正システムは、流体供給装置30、光学式非接触速度計10、及び流速センサ40の少なくともいずれかを有線又は無線を介して制御するための制御部303をさらに備えていてもよい。制御部303は、流体供給装置30が配管20の供給する流体の流量及び流速の少なくともいずれかを制御する。制御部303は、光学式非接触速度計10の速度計測の開始と停止を制御する。制御部303は、流速センサ40の速度計測の開始と停止を制御する。
【0047】
校正信号生成部301、校正信号送信部302、及び制御部303は、例えば、中央演算処理装置(CPU)300に含まれる。
【0048】
次に、図9を参照して、実施形態に係る光学式非接触速度計の校正方法を説明する。
【0049】
ステップS101で、制御部303の指示により、配管20内の流体が流れていない状態で、光学式非接触速度計10が流体の速度の計測を開始し、光学式非接触速度計10が計測する計測速度をゼロにリセットする。ステップS102で、制御部303の指示により、配管20内の流体が流れていない状態で、流速センサ40が流体の速度の計測を開始し、流速センサ40が計測する参照速度をゼロにリセットする。
【0050】
ステップS103で、制御部303の指示により、流体供給装置30が、配管20に所定の流量で流体を供給する。配管20内の流体の流速が安定する所定の時間が経過した後、ステップS104で、制御部303の指示により、光学式非接触速度計10が流体の速度の計測し、計測速度を校正信号生成部301に送信する。ステップS105で、制御部303の指示により、流速センサ40が流体の速度の計測し、参照速度を校正信号生成部301に送信する。ステップS103とステップS104は、並行して実施されてもよい。
【0051】
ステップS106で、制御部303の指示により、流体供給装置30及び流速センサ40が流体の速度の計測を終了する。ステップS107で、校正信号生成部301は、受信した参照速度と計測速度に基づき、校正信号を生成する。ステップS108で、校正信号送信部302は、校正信号生成部301が生成した校正信号を光学式非接触速度計10に送信する。光学式非接触速度計10は、校正信号を受信し、以後、校正された計測速度を算出するよう構成される。
【0052】
なお、ステップS103からステップS106を、複数の異なる流体の供給速度で実施してもよい。この場合、複数の異なる流体の供給速度のいずれにおいても、計測速度が参照速度と等しくなるよう、校正信号生成部301は、校正信号を生成する。
【0053】
上記のように本発明を実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。
【0054】
例えば、図10に示すように、実施形態に係る光学式非接触速度計の校正システムは、計測速度と参照速度にタイプスタンプを付与する時刻情報提供装置400をさらに備えていてもよい。時刻情報提供装置400は、光学式非接触速度計10及び流速センサ40と有線又は無線を介して通信し、光学式非接触速度計10及び流速センサ40に時刻情報を送信する。時刻情報提供装置400は、光学式非接触速度計10及び流速センサ40と無線接続するためのCPU300のアクセスポイントに接続されていてもよい。
【0055】
光学式非接触速度計10は、計測速度を送信する際に、時刻情報に基づき、計測速度にタイムスタンプを付与する。流速センサ40は、参照速度を送信する際に、時刻情報に基づき、参照速度にタイムスタンプを付与する。校正信号生成部301は、タイムスタンプに基づき、同じ時刻に送信された計測速度と参照速度を比較する。これにより、精度の高い校正信号を生成可能である。
【0056】
また、例えば、図11に示すように、実施形態に係る光学式非接触速度計の校正システムは、配管20の温度を制御する温度制御装置21をさらに備えていてもよい。流体の流速が低い場合、配管20内の温度勾配により、流体に対流が生じる場合がある。温度制御装置21は、配管20の温度が一定になるように、配管20の温度を制御する。
【0057】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。
【符号の説明】
【0058】
10・・・光学式非接触速度計、20・・・配管、21・・・温度制御装置、30・・・流体供給装置、31・・・容器、32・・・流路、33・・・流量制御機械、40・・・流速センサ、41・・・基板、42・・・ヒータ、43・・・上流側測温抵抗素子、44・・・下流側測温抵抗素子、45・・・絶縁膜、46・・・キャビティ、50・・・保持部、201・・・光源、202・・・コリメートレンズ、203・・・ハーフミラー、204・・・ミラー、205・・・集光レンズ、206・・・受光素子、211・・・光源、212・・・受光素子、221・・・光源、222・・・集光レンズ、223・・・格子、224・・・受光素子、301・・・校正信号生成部、302・・・校正信号送信部、303・・・制御部、400・・・時刻情報提供装置
図1
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図11