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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168661
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20231121BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
H01B7/00 301
H01B7/18 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079894
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱本 直也
(72)【発明者】
【氏名】金 知聖
【テーマコード(参考)】
5G309
5G313
【Fターム(参考)】
5G309AA11
5G313AA03
5G313AA10
5G313AB05
5G313AC03
5G313AD06
5G313AE08
(57)【要約】
【課題】高圧線と低圧線を並走させる構成において、高圧線から生じた電磁波の影響が低圧線に及ぶことを抑制することが可能なワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】ワイヤハーネスWは、電線10と、導電パイプ20と、を備えている。導電パイプ20は、電線10の外周を覆う筒状をなしている。電線10及び導電パイプ20の一方が高圧線を構成し、他方が低圧線を構成する。更に、ワイヤハーネスWは、電線10の外周を覆い、電線10と導電パイプ20との間に介在する筒状のシールド部材30を備えている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、
前記電線の外周を覆う筒状の導電パイプと、を備えるワイヤハーネスであって、
前記電線及び前記導電パイプのうち一方が高圧線を構成し、他方が低圧線を構成し、
更に、前記電線の外周を覆い、前記電線と前記導電パイプとの間に介在する筒状のシールド部材を備えているワイヤハーネス。
【請求項2】
前記電線が前記高圧線を構成し、
前記導電パイプが前記低圧線を構成する請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記導電パイプは、筒状の導電層と、前記導電層の内周を覆う筒状の内側絶縁層と、を有している請求項1又は請求項2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記導電パイプは、前記導電層の外周を覆う筒状の外側絶縁層を有している請求項3に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記導電層の外周面は、前記導電パイプの長さ方向の端部に前記外側絶縁層から露出した露出面を有しており、
更に、可撓性を有し、前記露出面に電気的に接続される継ぎ足し電線を備えている請求項4に記載のワイヤハーネス。
【請求項6】
可撓性を有し、前記導電パイプの開口から出た前記電線と前記継ぎ足し電線とを内部に配置させる筒状の外装部材を備えている請求項5に記載のワイヤハーネス。
【請求項7】
前記導電パイプの前記外側絶縁層と前記外装部材との端部同士をつなぎ、前記露出面に対する前記継ぎ足し電線の接続部を覆う筒状の防水部材を備えている請求項6に記載のワイヤハーネス。
【請求項8】
前記外側絶縁層は、前記高圧線が配索されていることを示す色に着色されている請求項7に記載のワイヤハーネス。
【請求項9】
可撓性を有し、前記導電パイプに電気的に接続される継ぎ足し電線を備えている請求項1又は請求項2に記載のワイヤハーネス。
【請求項10】
前記導電パイプに対する前記継ぎ足し電線の接続部を覆う防水部材を備えている請求項9に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から特許文献3には、シールドパイプに複数の電線を挿通させた構成をなすシールド導電路が開示されている。また、特許文献4には、パイプの軸方向の端部を潰し加工した構成をなすパイプ導体が開示されている。潰し加工された接続部は、他の導体に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-310127号公報
【特許文献2】特開2006-310516号公報
【特許文献3】特開2007-280814号公報
【特許文献4】特開2019-87326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1から特許文献3の技術では、部品点数が多く、部品点数の削減が望まれている。また、特許文献1~特許文献3の技術を用いて高圧線と低圧線を並走させる場合、高圧線から生じた電磁波の影響が低圧線に及ぶおそれがあり、その対策も必要となる。これらの課題は、特許文献4の技術でも解決できない。
【0005】
本開示の目的は、高圧線と低圧線を並走させる構成において、高圧線から生じた電磁波の影響が低圧線に及ぶことを抑制することが可能なワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のワイヤハーネスは、電線と、前記電線の外周を覆う筒状の導電パイプと、を備えるワイヤハーネスであって、前記電線及び前記導電パイプのうち一方が高圧線を構成し、他方が低圧線を構成し、更に、前記電線の外周を覆い、前記電線と前記導電パイプとの間に介在する筒状のシールド部材を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、高圧線と低圧線を並走させる構成において、高圧線から生じた電磁波の影響が低圧線に及ぶことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1のワイヤハーネスが設置された車両を示す模式図である。
図2図2は、導電パイプの内部に電線及びシールド部材が通された状態を示す側面図である。
図3図3は、図2に示す状態から、導電パイプに第1継ぎ足し電線及び第2継ぎ足し電線が接続された状態を示す側面図である。
図4図4は、導電パイプと外装部材との連結構造を示す側面図である。
図5図5は、図4のA-A線断面図である。
図6図6は、実施形態2の図3相当図である。
図7図7は、図6のB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示のワイヤハーネスは、
(1)電線と、前記電線の外周を覆う筒状の導電パイプと、を備えるワイヤハーネスであって、前記電線及び前記導電パイプのうち一方が高圧線を構成し、他方が低圧線を構成し、更に、前記電線の外周を覆い、前記電線と前記導電パイプとの間に介在する筒状のシールド部材を備えている。
【0011】
この構成によれば、電線の外周を覆う導電パイプに外装材としての役割を担わせつつ、電線と導電パイプとにより、高圧線と低圧線を並走させることができる。しかも、シールド部材によって、高圧線から生じた電磁波の影響が低圧線に及ぶことを抑制することができる。
【0012】
(2)前記(1)において、前記電線が前記高圧線を構成し、前記導電パイプが前記低圧線を構成することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、高圧線から生じた電磁波が低圧線に及ぶことを抑制するだけでなく、高圧線から生じた電磁波がワイヤハーネスの外部に漏れることも抑制することができる。
【0014】
(3)前記(1)又は(2)において、前記導電パイプは、筒状の導電層と、前記導電層の内周を覆う筒状の内側絶縁層と、を有していることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、導電パイプの導電層がシールド部材に接触することを回避することができる。
【0016】
(4)前記(1)から(3)のいずれかにおいて、前記導電パイプは、前記導電層の外周を覆う筒状の外側絶縁層を有していることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、導電パイプの導電層が周辺の物に触れることを回避できる。
【0018】
(5)前記(4)において、前記導電層の外周面は、前記導電パイプの長さ方向の端部に前記外側絶縁層から露出した露出面を有していることが好ましい。前記ワイヤハーネスは、更に、可撓性を有し、前記露出面に電気的に接続される継ぎ足し電線を備えていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、導電パイプによって剛性の高い導電路を構成することができ、継ぎ足し電線によって撓みやすい導電路を構成することができる。また、継ぎ足し電線が導電層の外周面に接続されるため、導電層に対する継ぎ足し電線の接続部がシールド部材に接触することを回避できる。
【0020】
(6)前記(5)において、前記ワイヤハーネスは、更に、可撓性を有し、前記導電パイプの開口から出た前記電線と前記継ぎ足し電線とを内部に配置させる筒状の外装部材を備えていることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、導電パイプの開口から出た電線と継ぎ足し電線を外装部材の内部でまとめて配置させることができる。しかも、外装部材は可撓性を有しているため、電線及び継ぎ足し電線を外装部材とともに曲げやすい。
【0022】
(7)前記(6)において、前記ワイヤハーネスは、更に、前記導電パイプの前記外側絶縁層と前記外装部材との端部同士をつなぎ、前記露出面に対する前記継ぎ足し電線の接続部を覆う筒状の防水部材を備えていることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、露出面に対する継ぎ足し電線の接続部を、防水部材によって防水することができる。
【0024】
(8)前記(1)から(7)のいずれかにおいて、前記外側絶縁層は、前記高圧線が配索されていることを示す色に着色されていることが好ましい。
【0025】
この構成によれば、導電層の外周を覆う外側絶縁層の色によって、高圧線が配策されていることを示すことができる。
【0026】
(9)前記(1)から(8)のいずれかにおいて、前記ワイヤハーネスは、更に、可撓性を有し、前記導電パイプに電気的に接続される継ぎ足し電線を備えていることが好ましい。
【0027】
この構成によれば、導電パイプによって剛性の高い導電路を構成することができ、継ぎ足し電線によって撓みやすい導電路を構成することができる。
【0028】
(10)前記(9)において、前記ワイヤハーネスは、更に、前記導電パイプに対する前記継ぎ足し電線の接続部を覆う防水部材を備えていることが好ましい。
【0029】
この構成によれば、導電パイプに対する継ぎ足し電線の接続部を、防水部材によって防水することができる。
【0030】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0031】
<実施形態1>
(ワイヤハーネスWの構成)
図1には、実施形態1のワイヤハーネスWが設置された車両90が開示されている。車両90には、第1車載機器91と、第2車載機器92と、高圧バッテリ93と、低圧バッテリ94と、が搭載されている。後ほど詳しく説明するが、ワイヤハーネスWは、高圧線と低圧線を別々に構成する。高圧線は、第1車載機器91と、高圧バッテリ93とに電気的に接続されている。高圧線は、高圧バッテリ93側から供給された電力を、第1車載機器91側に供給する。低圧線は、第2車載機器92と、低圧バッテリ94とに電気的に接続されている。低圧線は、低圧バッテリ94側から供給された電力を、第2車載機器92側に供給する。
【0032】
第1車載機器91及び第2車載機器92は、車両90の前側に配置されており、高圧バッテリ93及び低圧バッテリ94は、車両90の後側に配置されている。第1車載機器91は、例えばインバータである。インバータは、車両走行の動力源となる車輪駆動用の図示しないモータに接続されている。インバータは、高圧バッテリ93の直流電力から交流電力を生成し、その交流電力をモータに供給する。第2車載機器92は、例えば電気部品を収納する電気接続箱である。電気接続箱は、例えばジャンクションボックス、ヒューズボックス、リレーボックスなどである。第2車載機器92は、低圧バッテリ94の電力を各種機器に分配する。
【0033】
高圧バッテリ93は、例えばリチウムイオンバッテリなどの二次電池によって構成される。
低圧バッテリ94は、例えば鉛バッテリ、リチウムイオンバッテリなどの二次電池によって構成される。低圧バッテリ94は、満充電時の出力電圧が、高圧バッテリ93の満充電時の出力電圧よりも低いバッテリである。高圧バッテリ93の満充電時の出力電圧は、例えば100V以上である。低圧バッテリ94の満充電時の出力電圧は、例えば12Vである。
【0034】
ワイヤハーネスWは、図5に示すように、電線10と、導電パイプ20と、シールド部材30と、を備えている。
【0035】
電線10は、例えば被覆電線である。電線10は、芯線11と、芯線11の外周を覆う絶縁被覆12と、を有している。芯線11は、図5に示す例では、複数の金属素線13によって構成されている。電線10は、可撓性を有している。電線10は、高圧線を構成する。電線10の一端は、高圧バッテリ93に電気的に接続され、他端は第1車載機器91に電気的に接続される。図1に示すように、電線10の一端には、コネクタ14が取り付けられている。コネクタ14は、高圧バッテリ93に接続される。電線10の他端には、コネクタ15が取り付けられている。コネクタ15は、第1車載機器91に接続される。電線10は、2本設けられている。2本の電線10の一方は、高圧バッテリ93の正極に電気的に接続され、他方は、高圧バッテリ93の負極に電気的に接続される。電線10は、高圧バッテリ93側から供給された電力を、第1車載機器91側に供給する。
【0036】
導電パイプ20は、図5に示すように、電線10の外周を覆う筒状をなしている。導電パイプ20は、導電性を有している。導電パイプ20は、筒状の導電層21と、導電層21の内周を覆う筒状の内側絶縁層22と、導電層21の外周を覆う筒状の外側絶縁層23と、を有している。導電層21、内側絶縁層22、及び外側絶縁層23は、互いに積層されている。なお、導電パイプ20は、丸筒状(円筒状)に限らず、角筒状であってもよい。
【0037】
導電層21は、導電性を有しており、例えば金属製の筒体である。
【0038】
内側絶縁層22は、導電層21の内周面に密着している。内側絶縁層22は、導電層21の内周の全体を覆っている。内側絶縁層22は、例えば塗装や押出成形(押出被覆)などによって形成される。
【0039】
外側絶縁層23は、導電層21の外周面に密着している。外側絶縁層23は、両端部を除き、導電層21の外周を覆っている。外側絶縁層23は、導電層21の外周を全周にわたって覆っている。図2に示すように、導電層21の外周面は、導電パイプ20の長さ方向の一方側の端部において外側絶縁層23から露出した第1露出面24と、他方側の端部において外側絶縁層23から露出した第2露出面25と、を有している。つまり、外側絶縁層23は、導電層21の外周面の両端部に外側絶縁層23から露出した露出面(第1露出面24及び第2露出面25)が形成されるように、導電層21の外周を覆っている。第1露出面24及び第2露出面25は、「露出面」の一例に相当する。第1露出面24及び第2露出面25の各々は、導電層21の全周にわたって形成されている。上述した電線10は、導電パイプ20内を通り、導電パイプ20の長さ方向の両側から導電パイプ20の外部に出ている。外側絶縁層23は、高圧線が配策されていることを示す色(例えばオレンジ色)に着色されている。
【0040】
導電パイプ20は、低圧線を構成する。導電パイプ20(より具体的には、導電層21)の長さ方向の一端は、後述する第1継ぎ足し電線40を介して低圧バッテリ94(より具体的には、低圧バッテリ94の正極)に電気的に接続され、他端は、後述する第2継ぎ足し電線50を介して第2車載機器92に電気的に接続される。導電パイプ20は、低圧バッテリ94側から供給された電力を第2車載機器92側に供給する。なお、低圧バッテリ94の負極は、グラウンド(より具体的には、ボディアース)に電気的に接続される。
【0041】
シールド部材30は、図5に示すように、2本の電線10の外周を一括して覆う筒状をなしており、電線10と導電パイプ20との間に介在している。シールド部材30は、導電性を有している。シールド部材30は、例えば編組線である。シールド部材30は、電磁波を遮断する機能を有している。シールド部材30は、電線10を流れる電流に起因して生じた電磁波の影響が、低圧線を構成する導電パイプ20に及ぶことを抑制することができる。また、シールド部材30は、電線10を流れる電流に起因して生じた電磁波が、ワイヤハーネスWの外部に漏れることを抑制することができる。
【0042】
ワイヤハーネスWは、図3に示すように、第1継ぎ足し電線40と、第2継ぎ足し電線50と、を備えている。
【0043】
第1継ぎ足し電線40は、「継ぎ足し電線」の一例に相当する。第1継ぎ足し電線40は、導電層21(より具体的には、第1露出面24)に電気的に接続されている。第1継ぎ足し電線40は、可撓性を有している。第1継ぎ足し電線40は、例えば被覆電線である。第1継ぎ足し電線40は、芯線として構成される第1導体41と、第1導体41の外周を覆う第1被覆42と、を有している。第1導体41は、導電性を有しており、例えば銅などを含む金属製である。第1導体41は、長さ方向の端部において第1被覆42から露出した第1接続部43を有している。第1接続部43は、第1固定部材44によって第1露出面24に固定されている。第1固定部材44は、例えば金属製で、拡縮可能な環状をなしている。第1固定部材44は、第1接続部43を第1露出面24に押し付けた状態で第1露出面24に圧着されている。第1被覆42は、絶縁性を有しており、例えば樹脂製である。図1に示すように、第1継ぎ足し電線40の第1接続部43側とは反対側の端部は、低圧バッテリ94に接続される。第1継ぎ足し電線40の第1接続部43側とは反対側の端部には、コネクタ45が取り付けられている。コネクタ45は、低圧バッテリ94に接続される。
【0044】
第2継ぎ足し電線50は、「継ぎ足し電線」の一例に相当する。第2継ぎ足し電線50は、導電層21(より具体的には、第2露出面25)に電気的に接続されている。第2継ぎ足し電線50は、可撓性を有している。第2継ぎ足し電線50は、例えば被覆電線である。第2継ぎ足し電線50は、芯線として構成される第2導体51と、第2導体51の外周を覆う第2被覆52と、を有している。第2導体51は、導電性を有しており、例えば銅などを含む金属製である。第2導体51は、長さ方向の端部において第2被覆52から露出した第2接続部53を有している。第2接続部53は、第2固定部材54によって第2露出面25に固定されている。第2固定部材54は、例えば金属製で、拡縮可能な環状をなしている。第2固定部材54は、第2接続部53を第2露出面25に押し付けた状態で第2露出面25に圧着されている。第2被覆52は、絶縁性を有しており、例えば樹脂製である。図1に示すように、第2継ぎ足し電線50の第2接続部53側とは反対側の端部は、第2車載機器92に接続される。第2継ぎ足し電線50の第2接続部53側とは反対側の端部には、コネクタ55が取り付けられている。コネクタ55は、第2車載機器92に接続される。
【0045】
ワイヤハーネスWは、図1及び図4に示すように、第1外装部材60を備えている。第1外装部材60は、「外装部材」の一例に相当する。第1外装部材60は、筒状をなしている。第1外装部材60の内部には、導電パイプ20の一方の開口から出た電線10と第1継ぎ足し電線40とが配置されている。第1外装部材60は、可撓性を有しており、絶縁性を有している。第1外装部材60は、例えばコルゲートチューブである。第1外装部材60、電線10、及び第1継ぎ足し電線40は、いずれも可撓性を有している。このため、電線10及び第1継ぎ足し電線40を、第1外装部材60とともに曲げやすい。
【0046】
ワイヤハーネスWは、図1及び図4に示すように、第1防水部材61を備えている。第1防水部材61は、「防水部材」の一例に相当する。第1防水部材61は、筒状をなしており、導電パイプ20に対する第1継ぎ足し電線40の第1接続部43を覆っている。第1接続部43は、「接続部」の一例に相当する。第1防水部材61は、第1露出面24の全体を覆っている。第1防水部材61は、例えばゴム製である。第1防水部材61は、導電パイプ20と第1外装部材60とに連結され、導電パイプ20と第1外装部材60との間の隙間を塞いでいる。第1防水部材61は、連結部材62によって導電パイプ20に連結され、連結部材63によって第1外装部材60に連結されている。連結部材62,63は、例えば結束バンドである。
【0047】
ワイヤハーネスWは、図1及び図4に示すように、第2外装部材70を備えている。第2外装部材70は、「外装部材」の一例に相当する。第2外装部材70は、筒状をなしている。第2外装部材70の内部には、導電パイプ20の他方の開口から出た電線10と第2継ぎ足し電線50とが配置されている。第2外装部材70は、可撓性を有しており、絶縁性を有している。第2外装部材70は、図4に示す例では、コルゲートチューブである。第2外装部材70、電線10、及び第2継ぎ足し電線50は、いずれも可撓性を有している。このため、電線10及び第2継ぎ足し電線50を、第2外装部材70とともに曲げやすい。
【0048】
ワイヤハーネスWは、図1及び図4に示すように、第2防水部材71を備えている。第2防水部材71は、「防水部材」の一例に相当する。第2防水部材71は、筒状をなしており、導電パイプ20に対する第2継ぎ足し電線50の第2接続部53を覆っている。第2接続部53は、「接続部」の一例に相当する。第2防水部材71は、第2露出面25の全体を覆っている。第2防水部材71は、例えばゴム製である。第2防水部材71は、導電パイプ20と第2外装部材70とに連結され、導電パイプ20と第2外装部材70との間の隙間を塞いでいる。第2防水部材71は、連結部材72によって導電パイプ20に連結され、連結部材73によって第2外装部材70に連結されている。連結部材72,73は、例えば結束バンドである。
【0049】
(ワイヤハーネスWの製造方法)
ワイヤハーネスWは、例えば以下のように製造される。まず、金属製の筒体の内周と外周に絶縁塗装がなされて、導電パイプ20が形成される(図2参照)。電線10の外周は、シールド部材30で覆われる。電線10は、シールド部材30で覆われた状態で、導電パイプ20内に通される(図2参照)。第1継ぎ足し電線40の第1接続部43は、第1固定部材44によって、導電パイプ20の第1露出面24に接触した状態で固定される(図3参照)。第2継ぎ足し電線50の第2接続部53は、第2固定部材54によって、導電パイプ20の第2露出面25に接触した状態で固定される(図3参照)。
【0050】
第1防水部材61及び第1外装部材60の内部には、導電パイプ20の一方の開口から出た電線10と第1継ぎ足し電線40が通される(図2図3参照)。第1防水部材61は、連結部材62によって導電パイプ20に連結され、連結部材63によって第1外装部材60に連結される。電線10の一端には、コネクタ14が取り付けられる。コネクタ14は、高圧バッテリ93に接続される。これにより、電線10の一端が、高圧バッテリ93に電気的に接続される。第1継ぎ足し電線40の第1接続部43側とは反対側の端部には、コネクタ45が取り付けられる。コネクタ45は、低圧バッテリ94に接続される。これにより、第1継ぎ足し電線40の第1接続部43側とは反対側の端部が、低圧バッテリ94に電気的に接続される。
【0051】
第2防水部材71及び第2外装部材70の内部には、導電パイプ20の他方の開口から出た電線10と第2継ぎ足し電線50とが通される(図2図3参照)。第2防水部材71は、連結部材72によって導電パイプ20に連結され、連結部材73によって第2外装部材70に連結される。電線10の他端には、コネクタ15が取り付けられる。コネクタ15は、第1車載機器91に接続される。これにより、電線10の他端が、第1車載機器91に電気的に接続される。第2継ぎ足し電線50の第2接続部53側とは反対側の端部には、コネクタ55が取り付けられる。コネクタ55は、第2車載機器92に接続される。これにより、第2継ぎ足し電線50の第2接続部53側とは反対側の端部が、第2車載機器92に電気的に接続される。
【0052】
(ワイヤハーネスWの作用)
ワイヤハーネスWは、電線10を高圧線として利用し、電線10の外周を覆う導電パイプ20を低圧線として利用することができる。このため、構造の簡易化を図りつつ、高圧線と低圧線を並走させることができる。更に、電線10と導電パイプ20との間には、シールド部材30が介在しており、電線10の外周は、シールド部材30によって覆われている。このため、シールド部材30によって、高圧線から生じた電磁波の影響が低圧線に及ぶことを抑制するとともに、ワイヤハーネスWの外部に漏れることを抑制することができる。また、導電パイプ20によって構成される低圧線の強度を高めることができるとともに、導電パイプ20によって、内部に配置された電線10を保護することができる。
【0053】
更に、導電パイプ20は、筒状の導電層21と、導電層21の内周を覆う筒状の内側絶縁層22と、を有している。このため、導電パイプ20の導電層21がシールド部材30に接触することを回避できる。
【0054】
更に、導電パイプ20は、導電層21の外周を覆う筒状の外側絶縁層23を有している。このため、導電パイプ20の導電層21が外部の導体に接触することを回避できる。
【0055】
更に、導電層21の外周面は、導電パイプ20の長さ方向の一方側の端部に外側絶縁層23から露出した第1露出面24と、他方側の端部に外側絶縁層23から露出した第2露出面25と、を有している。ワイヤハーネスWは、第1露出面24に電気的に接続される第1継ぎ足し電線40と、第2露出面25に電気的に接続される第2継ぎ足し電線50と、を備えている。第1継ぎ足し電線40及び第2継ぎ足し電線50は、いずれも可撓性を有している。この構成によれば、導電パイプ20によって剛性の高い導電路を構成することができ、第1継ぎ足し電線40及び第2継ぎ足し電線50によって撓みやすい導電路を構成することができる。また、第1継ぎ足し電線40及び第2継ぎ足し電線50が導電層21の外周面に接続されるため、第1継ぎ足し電線40及び第2継ぎ足し電線50がシールド部材30に接触することを回避できる。
【0056】
更に、ワイヤハーネスWは、導電パイプ20の一方側の開口から出た電線10と第1継ぎ足し電線40とを内部に配置させる筒状の第1外装部材60と、他方側の開口から出た電線10と第2継ぎ足し電線50とを内部に配置させる筒状の第2外装部材70と、を備えている。第1外装部材60及び第2外装部材70は、いずれも可撓性を有している。この構成によれば、導電パイプ20の一方側の開口から出た電線10と第1継ぎ足し電線40を第1外装部材60の内部でまとめて配置させることができ、他方側の開口から出た電線10と第2継ぎ足し電線50を第2外装部材70の内部でまとめて配置させることができる。しかも、導電パイプ20の一方側の開口から出た電線10と第1継ぎ足し電線40を第1外装部材60とともに曲げやすく、他方側の開口から出た電線10と第2継ぎ足し電線50を第2外装部材70とともに曲げやすい。
【0057】
更に、ワイヤハーネスWは、導電パイプ20の外側絶縁層23と第1外装部材60との端部同士をつなぎ、第1露出面24に対する第1継ぎ足し電線40の第1接続部43を覆う筒状の第1防水部材61を備えている。この構成によれば、第1露出面24に対する第1継ぎ足し電線40の第1接続部43を、第1防水部材61によって防水することができる。また、ワイヤハーネスWは、導電パイプ20の外側絶縁層23と第2外装部材70との端部同士をつなぎ、第2露出面25に対する第2継ぎ足し電線50の第2接続部53を覆う筒状の第2防水部材71を備えている。この構成によれば、第2露出面25に対する第2継ぎ足し電線50の第2接続部53を、第2防水部材71によって防水することができる。
【0058】
更に、外側絶縁層23は、高圧線が配策されていることを示す色に着色されている。このため、導電層21の外周を覆う外側絶縁層23の色によって、高圧線が配策されていることを示すことができる。
【0059】
<実施形態2>
実施形態1では、第1継ぎ足し電線及び第2継ぎ足し電線を導電パイプに圧着する構成であったが、別の方法で接続してもよい。実施形態2では、溶接によって接続する構成について説明する。以下では、実施形態1と同じ構成について同じ符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0060】
実施形態2の導電パイプ220は、図6及び図7に示すように、電線10の外周を覆う筒状をなしている。導電パイプ220は、導電性を有している。導電パイプ220は、筒状の導電層221と、導電層221の内周を覆う筒状の内側絶縁層222と、導電層221の外周を覆う筒状の外側絶縁層223と、を有している。
【0061】
実施形態2の導電パイプ220は、図6及び図7に示すように、長さ方向の一方側の端部に設けられた第1平板部226と、他方側の端部に設けられた第2平板部227と、を有している。導電パイプ220は、第1平板部226及び第2平板部227を有する点で実施形態1の導電パイプ20とは異なり、その他の点で共通する。第1平板部226は、外側絶縁層223から露出した第1露出平面226Aを有している。第2平板部227は、外側絶縁層223から露出した第2露出平面227Aを有している。第1露出平面226A及び第2露出平面227Aは、「露出面」の一例に相当する。第1平板部226及び第2平板部227は、例えばプレス加工によって形成される。
【0062】
第1継ぎ足し電線40の第1接続部43は、第1露出平面226Aに溶接(例えば、超音波溶接)によって接続されている。第2継ぎ足し電線50の第2接続部53は、第2露出平面227Aに溶接(例えば、超音波溶接)によって接続されている。この構成によれば、溶接される面が平面であるため、溶接しやすい。
【0063】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
(1)上記各実施形態では、電線が高圧線を構成し、導電パイプが低圧線を構成していたが、電線が低圧線を構成し、導電パイプが高圧線を構成していてもよい。
(2)導電パイプは、内側絶縁層を有していなくてもよい。
(3)導電パイプは、外側絶縁層を有していなくてもよい。
(4)ワイヤハーネスは、外装部材を備えていなくてもよい。
(5)ワイヤハーネスは、防水部材を備えていなくてもよい。
(6)外側絶縁層の色は、高圧線が配索されていることを示す色でなくてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 :電線
11 :芯線
12 :絶縁被覆
13 :金属素線
14 :コネクタ
15 :コネクタ
20 :導電パイプ
21 :導電層
22 :内側絶縁層
23 :外側絶縁層
24 :第1露出面(露出面)
25 :第2露出面(露出面)
30 :シールド部材
40 :第1継ぎ足し電線(継ぎ足し電線)
41 :第1導体
42 :第1被覆
43 :第1接続部(接続部)
44 :第1固定部材
45 :コネクタ
50 :第2継ぎ足し電線(継ぎ足し電線)
51 :第2導体
52 :第2被覆
53 :第2接続部(接続部)
54 :第2固定部材
55 :コネクタ
60 :第1外装部材(外装部材)
61 :第1防水部材(防水部材)
62 :連結部材
63 :連結部材
70 :第2外装部材(外装部材)
71 :第2防水部材(防水部材)
72 :連結部材
73 :連結部材
90 :車両
91 :第1車載機器
92 :第2車載機器
93 :高圧バッテリ
94 :低圧バッテリ
220 :導電パイプ
221 :導電層
222 :内側絶縁層
223 :外側絶縁層
226 :第1平板部
226A :第1露出平面(露出面)
227 :第2平板部
227A :第2露出平面(露出面)
W :ワイヤハーネス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7