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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168665
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】高周波回路、および、レーダ装置
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/107 20060101AFI20231121BHJP
   H01P 3/12 20060101ALI20231121BHJP
   H01P 3/00 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
H01P5/107 J
H01P3/12 100
H01P3/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079900
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸田 武紘
【テーマコード(参考)】
5J014
【Fターム(参考)】
5J014AA00
5J014DA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】マイクロストリップ線路とポスト壁導波路との変換損失を低減する高周波回路及びレーダ装置を提供する。
【解決手段】高周波回路10は、基板の第1面201に形成されている信号導体21、平膜導体241、242、平膜導体23、第2面の略全面に形成されている平膜導体、ポスト壁導波路92及び変換部93を備える。変換部は、信号導体とポスト壁導波路とのモード変換を行い、平膜導体241、242と平膜導体23とを、第1方向xで接続する平膜導体251、252と、平膜導体241、242の夫々と平膜導体23とを第1方向で対向して離間させるスリット40と、を有する。スリットは、第2方向yに延びる形状であり、第2方向の信号導体側の一方端が高周波的に開放し、他方端が高周波的に終端する。第2方向において、スリットにおける他方端は、ポスト壁導波路の導波路の信号導体側の端と同位置又は導波路の信号導体側の端より外側にある。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1層に形成され、第1方向に延びる信号導体と、
前記第1層に形成され、前記信号導体の短辺方向である第2方向の両側において、前記第1方向に並走する第1平膜導体と、
前記第1層に形成され、前記信号導体に前記第1方向に接続した第2平膜導体と、
第2層に形成され、前記第2平膜導体に対向する第3平膜導体と、
前記第2平膜導体と前記第3平膜導体との間に導波路を有するポスト壁導波路と、
前記信号導体と前記ポスト壁導波路とのモード変換を行う変換部と、
を備え、
前記変換部は、
前記第1平膜導体のそれぞれと前記第2平膜導体とを、前記第1方向で接続する接続導体と、前記第1平膜導体のそれぞれと前記第2平膜導体とを前記第1方向で対向して離間させるスリットと、を有し、
前記スリットは、前記第2方向に延びる形状であって、前記第2方向の前記信号導体側の一方端が高周波的に開放し、他方端が高周波的に終端し、
前記第2方向において、前記スリットにおける前記他方端は、前記ポスト壁導波路の前記導波路の前記信号導体側の端と同位置または前記導波路の前記信号導体側の端より外側にある、
高周波回路。
【請求項2】
請求項1に記載の高周波回路であって、
前記導波路の前記信号導体側の端は、前記ポスト壁導波路を構成するポスト壁の前記第2方向の内側である、
高周波回路。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の高周波回路であって、
前記第1平膜導体のそれぞれに対して前記第1方向に沿って配置され、前記第1平膜導体と前記第3平膜導体と接続する複数の層間接続導体を備え、
前記層間接続導体の前記第2方向の距離は、前記導波路の前記第2方向の長さよりも短い、
高周波回路。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の高周波回路であって、
前記第2平膜導体への接続部近傍における前記信号導体は、前記第2方向の幅が長くなる、
高周波回路。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の高周波回路を備えるレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類の伝送線路を備えた高周波回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、導波管、ポスト壁導波路、および、マイクロストリップ線路を備える導波管マイクロストリップ線路変換器が記載されている。導波管とマイクロストリップ線路とは、ポスト壁導波路を介して接続される。
【0003】
この構成では、マイクロストリップ線路とポスト壁導波路との間で、高周波信号の伝送モードの変換を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5705035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、マイクロストリップ線路とポスト壁導波路とを高周波的に接続させるため、マイクロストリップ線路の信号導体とポスト壁導波路の導体壁とを、物理的、電気的に単純に接続しても、変換損失が大きくなってしまう。
【0006】
したがって、本発明の目的は、マイクロストリップ線路とポスト壁導波路との変換損失を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の高周波回路は、信号導体、第1平膜導体、第2平膜導体、第3平膜導体、ポスト壁導波路、および、変換部を備える。信号導体は、第1層に形成され、第1方向に延びる形状からなる。第1平膜導体は、第1層に形成され、信号導体の短辺方向である第2方向の両側において、第1方向に並走する。第2平膜導体は、第1層に形成され、信号導体に第1方向に接続する。第3平膜導体は、第2層に形成され、第2平膜導体に対向する。ポスト壁導波路は、第2平膜導体と第3平膜導体との間に導波路を有する。変換部は、信号導体とポスト壁導波路とのモード変換を行う。
【0008】
変換部は、第1平膜導体のそれぞれと第2平膜導体とを、第1方向で接続する接続導体と、第1平膜導体のそれぞれと第2平膜導体とを第1方向で対向して離間させるスリットと、を有する。
【0009】
スリットは、第2方向に延びる形状であって、第2方向の信号導体側の一方端が高周波的に開放し、他方端が高周波的に終端する。第2方向において、スリットにおける他方端は、ポスト壁導波路の導波路の信号導体側の端と同位置または導波路の信号導体側の端より外側にある。
【0010】
この構成では、マイクロストリップラインの伝送モード(準TEMモード)とポスト壁導波路の伝送モード(TE10モード)とのモード変換が、変換部によって実現される。この際、スリットにおける高周波的な終端となる端部が、ポスト壁導波路の導波路の信号導体側の端と同位置または導波路の信号導体側の端より外側にあることで、ポスト壁導波路におけるマイクロストリップラインへの接続端から、ポスト壁導波路の伝送モードの電界分布がより確実に形成される。これにより、マイクロストリップラインとポスト壁導波路との間の変換損失は抑制される。
【0011】
また、この発明の高周波回路では、導波路の信号導体側の端は、ポスト壁導波路を構成するポスト壁の第2方向の内側である。
【0012】
この構成では、ポスト壁導波路の幅(第2方向の長さ)をより明確にしている。
【0013】
また、この発明の高周波回路では、一対の第1平膜導体のそれぞれに対して第1方向に沿って配置され、第1平膜導体と第3平膜導体とを接続する複数の層間接続導体を備える。複数の層間接続導体の第2方向の距離は、ポスト壁導波路の第2方向の長さよりも短い。
【0014】
この構成では、第2方向における第1平膜導体と第3平膜導体とが接続される位置(マイクロストリップラインのグランドの位置)が、マイクロストリップラインの信号導体に近い位置となる。これにより、マイクロストリップラインからの空間放射が抑制され、マイクロストリップラインを伝送する電磁波が第1平膜導体と第3平膜導体との間に漏洩することが低減され、マイクロストリップラインの伝送損失は抑制される。
【0015】
また、この発明の高周波回路では、第2平膜導体への接続部近傍における信号導体は、第2方向の幅が長くなる。
【0016】
この構成では、マイクロストリップラインの信号導体がポスト壁導波路の導体壁に接続部部分(変換部)でのインピーダンスの不整合は抑制される。これにより、マイクロストリップラインとポスト壁導波路との変換効率は向上する。
【0017】
また、この発明のレーダ装置は、上述のいずれかに記載の高周波回路を備える。この構成では、レーダ装置は電波を効率的に送信できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の実施形態に係る高周波回路の外観斜視図である。
図2図2(A)、図2(B)は、本発明の実施形態に係る高周波回路の平面図である。
図3図3(A)、図3(B)は、本発明の実施形態に係る高周波回路の側面断面図である。
図4図4(A)は、本発明の実施形態に係る高周波回路の電界分布図であり、図4(B)は、比較例の電界分布図である。
図5図5は、スリットの長さと挿入損失との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態に係る高周波回路について、図を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る高周波回路の外観斜視図である。図2(A)、図2(B)は、本発明の実施形態に係る高周波回路の平面図である。図3(A)、図3(B)は、本発明の実施形態に係る高周波回路の側面断面図である。図3(A)は、図2(A)のA-A断面を示し、図3(B)は、図2(A)のB-B断面を示す。なお、図1図2(A)、図2(B)、図3(A)、図3(B)、では、高周波回路10の変換部付近を示している。
【0020】
また、図1図2(A)、図2(B)、図3(A)、図3(B)、では、x軸、y軸、z軸の直交三軸を用いて図示している。そして、このx軸方向における+xの方向が本発明の「第1方向」に対応し、このy軸方向における+yの方向が本発明の「第2方向」に対応する。
【0021】
図1図2(A)、図2(B)、図3(A)、図3(B)、に示すように、高周波回路10は、基板20、信号導体21、平膜導体22、平膜導体23、平膜導体241、平膜導体242、平膜導体251、平膜導体252、複数の層間接続導体321、複数の層間接続導体322、複数の層間接続導体331、複数の層間接続導体332、複数の層間接続導体341、複数の層間接続導体342、および、スリット40を備える。
【0022】
基板20は、誘電体からなる。基板20は、一枚の誘電体であっても、複数の誘電体層を積層した積層体であってもよい。基板20は、厚み方向(図のz軸方向)の一方端に第1面201を備え、他方端に第2面202を備える。
【0023】
信号導体21は、所定の幅(信号導体21の第2方向の長さ)を有し、高周波信号の伝送方向(図のx軸方向)に延びる形状である。信号導体21は、基板20の第1面201に形成されている。
【0024】
平膜導体22は、基板20の第2面202に形成されている。平膜導体22は、第2面202の略全面に形成されている。
【0025】
平膜導体23は、基板20の第1面201に形成されている。平膜導体23は、x軸方向における信号導体21が形成されている領域に対して+xの方向(第1方向)に隣り合う領域に形成されている。x軸方向において、信号導体21の+x側の端部と平膜導体23の-x側の端部とは一致する。
【0026】
平膜導体23は、信号導体21の先端部(x軸方向の+x側の端部)に接続する。すなわち、平膜導体23は、信号導体21の第1方向の先端部に接続する。
【0027】
平膜導体23の第2方向の長さは、平膜導体23を用いて形成されるポスト壁導波路で伝送する高周波信号の波長の1/2以上である。
【0028】
平膜導体241および平膜導体242は、基板20の第1面201に形成されている。平膜導体241および平膜導体242は、x軸方向における信号導体21が形成されている領域と同じ層に形成されている。平膜導体241と平膜導体242とは、一対の平膜導体である。平膜導体241および平膜導体242は、x軸方向に沿って、信号導体21に並走して配置される。平膜導体241は、y軸方向において、信号導体21よりも+y側に配置される。平膜導体242は、軸方向において、信号導体21よりも-y側に配置される。すなわち、平膜導体241および平膜導体242は、y軸方向において信号導体21を間に挟む位置に配置される。平膜導体241および平膜導体242は、y軸方向において、信号導体21から離間しており、信号導体21と接続していない。
【0029】
平膜導体241におけるx軸方向の+x側の端部は、平膜導体251を通じて平膜導体23に接続する。平膜導体242におけるx軸方向の+x側の端部は、平膜導体252を通じて平膜導体23に接続する。平膜導体251および平膜導体252が、本発明の「接続導体」に対応する。
【0030】
複数の層間接続導体321および複数の層間接続導体322は、基板20をz軸方向(厚み方向)に貫通する。複数の層間接続導体321および複数の層間接続導体322は、いわゆる、導電性ビアホールや導電性スルーホールである。複数の層間接続導体321は、高周波回路10を平面視して(z軸方向に平行な方向に視て)、平膜導体22と平膜導体241とに重なる。複数の層間接続導体321は、平膜導体22と平膜導体241とに接続する。複数の層間接続導体322は、高周波回路10を平面視して(z軸方向に平行な方向に視て)、平膜導体22と平膜導体242とに重なる。複数の層間接続導体322は、平膜導体22と平膜導体242とに接続する。
【0031】
複数の層間接続導体321および複数の層間接続導体322は、信号導体21の延びる方向に沿って(x軸方向に沿って)配置される。複数の層間接続導体321が第1列の層間接続導体321であり、複数の層間接続導体322が第2列の層間接続導体322である。
【0032】
第1列の層間接続導体321および第2列の層間接続導体322とは、y軸方向(第2方向)において信号導体21を挟む位置に配置される。
【0033】
第1列の層間接続導体321は、平膜導体241における信号導体21側の端部付近に配置される。第2列の層間接続導体322は、平膜導体242における信号導体21側の端部付近に配置される。
【0034】
複数の層間接続導体331および複数の層間接続導体332は、基板20をz軸方向(厚み方向)に貫通する。複数の層間接続導体331および複数の層間接続導体332は、いわゆる、導電性ビアホールや導電性スルーホールである。複数の層間接続導体331および複数の層間接続導体332は、高周波回路10を平面視して(z軸方向に平行な方向に視て)、平膜導体22と平膜導体23とに重なる。複数の層間接続導体331および複数の層間接続導体332は、平膜導体22と平膜導体23とに接続する。
【0035】
複数の層間接続導体331および複数の層間接続導体332は、x軸方向に沿って配置される。複数の層間接続導体331が第1列の層間接続導体331であり、複数の層間接続導体332が第2列の層間接続導体332である。
【0036】
第1列の層間接続導体331は、y軸方向(第2方向)において、信号導体21の+y側の端を+x方向に延ばした線よりも+y側に配置される。さらには、第1列の層間接続導体331は、y軸方向(第2方向)において、第1列の層間接続導体321が形成されるラインの延長線よりも+y側(信号導体21から離れる側)に配置される。
【0037】
第2列の層間接続導体332は、y軸方向(第2方向)において、信号導体21の-y側の端を+x方向に延ばした線よりも-y側に配置される。さらには、第2列の層間接続導体332は、y軸方向(第2方向)において、第2列の層間接続導体322が形成されるラインの延長線よりも-y側(信号導体21から離れる側)に配置される。
【0038】
第1列の層間接続導体331と第2列の層間接続導体332とのy軸方向の距離W33は、第1列の層間接続導体331と第2列の層間接続導体332を含むポスト壁導波路で伝送する高周波信号の波長の1/2以上である。第1列の層間接続導体331と第2列の層間接続導体332とのy軸方向の距離W33は、より具体的には、距離W33は、第1列の層間接続導体331の内端(第2列の層間接続導体332側の端)と第2列の層間接続導体332の内端(第1列の層間接続導体331側の端)との距離である。
【0039】
複数の層間接続導体341および複数の層間接続導体342は、基板20をz軸方向(厚み方向)に貫通する。複数の層間接続導体341および複数の層間接続導体342は、いわゆる、導電性ビアホールや導電性スルーホールである。複数の層間接続導体341は、高周波回路10を平面視して(z軸方向に平行な方向に視て)、平膜導体22と平膜導体241とに重なる。複数の層間接続導体341は、平膜導体22と平膜導体241とに接続する。複数の層間接続導体342は、高周波回路10を平面視して(z軸方向に平行な方向に視て)、平膜導体22と平膜導体242とに重なる。複数の層間接続導体342は、平膜導体22と平膜導体242とに接続する。
【0040】
複数の層間接続導体341および複数の層間接続導体342は、信号導体21の延びる方向に沿って(x軸方向に沿って)配置される。複数の層間接続導体341が第1列の層間接続導体341であり、複数の層間接続導体342が第2列の層間接続導体342である。
【0041】
第1列の層間接続導体341および第2列の層間接続導体342とは、y軸方向(第2方向)において、信号導体21、第1列の層間接続導体321、および、第2列の層間接続導体322を挟む位置に配置される。
【0042】
第1列の層間接続導体341は、y軸方向(第2方向)において、第1列の層間接続導体331が形成されるラインの延長線よりも信号導体21から離れた位置に配置される。第2列の層間接続導体342は、y軸方向(第2方向)において、第2列の層間接続導体332が形成されるラインの延長線よりも信号導体21から離れた位置に配置される。
【0043】
スリット40は、第1面201における、平膜導体241、242と平膜導体23との間での導体の非形成部である。言い換えれば、スリット40は、信号導体21が平膜導体23に接続する端部の領域において、信号導体21のy軸方向(幅方向)の両側の導体の非形成部である。
【0044】
スリット40は、y軸方向に沿って延びる形状であり、x軸方向に所定幅を有する。スリット40は、信号導体21よりも+y側のスリット401と、信号導体21よりも-y側のスリット402とによって構成される。スリット401、402は、y軸方向の信号導体21側の一方端が高周波的に開放し、他方端(平膜導体251、252側の端)が高周波的に終端する。スリット401は、平膜導体241と平膜導体23とをx軸方向で対向して離間させる。スリット402は、平膜導体242と平膜導体23とをx軸方向で対向して離間させる。
【0045】
スリット40の長さW40は、第1列の層間接続導体331と第2列の層間接続導体332とのy軸方向の距離W33と同等、又は長い。この形状を、スリット401とスリット402とを用いて記載すると例えば次のようになる。
【0046】
スリット401の+y側の端部(終端)は、第1列の層間接続導体331が形成されるラインの延長線上にあるか、延長線よりも信号導体21側と反対側にある。スリット402の-y側の端部は、第2列の層間接続導体332が形成されるラインの延長線上にあるか、延長線よりも信号導体21側と反対側にある。
【0047】
より具体的には、y軸方向において、スリット401における高周波的な終端は、信号導体21の+y側にあり、+y側におけるポスト壁導波路92の信号導体21側の端と同位置またはこの端より外側(信号導体21から離れる側)にある。さらに、y軸方向において、スリット402における高周波的な終端は、信号導体21の-y側にあり、-y側におけるポスト壁導波路92の信号導体21側の端と同位置またはこの端より外側(信号導体21から離れる側)にある。
【0048】
このような構成によって、高周波回路10は、マイクロストリップライン91、ポスト壁導波路92、および、変換部93を実現する。より具体的には、以下の通りである。
【0049】
マイクロストリップライン91は、ポスト壁導波路92への接続部から離れた領域では、基板20(誘電体)、信号導体21、平膜導体22によって構成される。具体的には、ポスト壁導波路92への接続部から離れた領域のマイクロストリップライン91は、信号導体21と平膜導体22とが基板20(誘電体)を挟んで対向する構成を備える。
【0050】
マイクロストリップライン91は、ポスト壁導波路92への接続部付近の領域では、基板20(誘電体)、信号導体21、平膜導体22、平膜導体241、平膜導体242、複数の層間接続導体321、322、341、342によって構成される。
【0051】
具体的には、ポスト壁導波路92への接続部付近の領域のマイクロストリップライン91は、信号導体21と平膜導体22とが基板20(誘電体)を挟んで対向し、平膜導体241と平膜導体242とが信号導体21を幅方向の両側に配置され、平膜導体241と平膜導体22とが複数の層間接続導体321、341によって接続され、平膜導体242と平膜導体22とが複数の層間接続導体322、342によって接続される構成を備える。
【0052】
ポスト壁導波路92は、基板20(誘電体)、平膜導体22、平膜導体23、第1列の層間接続導体331、および、第2列の層間接続導体332によって構成される。具体的には、平膜導体22と平膜導体23とは、第1列の層間接続導体331、および、第2列の層間接続導体332によってそれぞれ接続される。これにより、基板20内における平膜導体22、平膜導体23、第1列の層間接続導体331、および、第2列の層間接続導体332によって囲まれる直方体の領域が、ポスト壁導波路の導波路となる。
【0053】
変換部93は、スリット40を備える。
【0054】
このように、マイクロストリップライン91とポスト壁導波路92との接続部にスリット40の変換部が設けられることで、マイクロストリップライン91を準TEMモードによって伝送された高周波信号は、TE10モードにモード変換される。そして、ポスト壁導波路92には、TE10モードが励起し、ポスト壁導波路92は、TE10モードの高周波信号を伝送する。
【0055】
この際、高周波回路10では、スリット40のy軸方向(第2方向)の長さW40がポスト壁導波路92のy軸方向(第2方向)の距離W33と同等、又は長い。言い換えれば、スリット40の長さ(信号伝送方向に直交する方向の長さ)がポスト壁導波路92の幅と同等、又は長い。これにより、ポスト壁導波路92におけるマイクロストリップライン91の接続端から、距離W33に応じたTE10モードがより確実に励起される。
【0056】
図4(A)は、本発明の実施形態に係る高周波回路の電界分布図であり、図4(B)は、比較例の電界分布図である。なお、比較例は、スリット40Pの長さが、距離W33よりも短い構成を備える。
【0057】
図4(A)に示すように、スリット40の長さW40が距離W33よりも長い場合、ポスト壁導波路のマイクロストリップラインの接続端の極近傍まで、安定したTE10モードが励起する。一方、図4(B)に示すように、スリット40Pの長さが距離W33よりも短い場合、ポスト壁導波路のマイクロストリップラインの接続端の近傍領域で、安定したTE10モードが励起しない。
【0058】
このように、高周波回路10の構成を備えることで、マイクロストリップライン91とポスト壁導波路92とのモード変換をより安定して行うことができる。
【0059】
図5は、スリットの長さと挿入損失との関係を示すグラフである。図5において、ΔW1(+)、ΔW2(+)、ΔW3(+)は、スリットの長さがポスト壁導波路の幅よりも長い場合を示し、ΔW4(-)、ΔW5(-)は、スリットの長さがポスト壁導波路の幅よりも短い場合を示す。
【0060】
図5に示すように、スリットの長さがポスト壁導波路の幅よりも長いことによって、挿入損失を低減できる。例えば、スリットの長さがポスト壁導波路の幅よりも短い場合よりも、9.4GHz付近での挿入損失を大幅に低減できる。
【0061】
このように、高周波回路10は、マイクロストリップライン91とポスト壁導波路92との変換損失を低減できる。この際、高周波回路10は、マイクロストリップライン91とポスト壁導波路92との接続部にスリット40を設けるだけの簡素な構造によって、変換効率を低減できる。
【0062】
さらに、高周波回路10では、信号導体21を挟む第1列の層間接続導体321と第2列の層間接続導体322との距離W32が、ポスト壁導波路92の幅(距離W33)よりも短い。これにより、マイクロストリップライン91からの空間放射が抑制され、マイクロストリップライン91を伝送する電磁波が平膜導体241、242と平膜導体22との間に漏洩することが低減され、マイクロストリップライン91の伝送損失を低減できる。
【0063】
また、さらに、高周波回路10は、信号導体21の先端がポスト壁導波路92に近づくほど幅広になる変換補助部220を備える。このような構成により、マイクロストリップライン91の先端での急激なインピーダンス変化を抑制できる。これにより、高周波回路10は、挿入損失をさらに低減できる。
【0064】
上述の説明では、基板20の両面に導体を形成する態様を示した。しかしながら、例えば、基板20の厚み方向の途中位置に、マイクロストリップラインのグランド用の平膜導体を備えていてもよい。これにより、マイクロストリップラインの特性インピーダンスを所望値に調整できる。さらに、この場合、第1列の層間接続導体321、第1列の層間接続導体341、第2列の層間接続導体322、第2列の層間接続導体342が備えられていることで、マイクロストリップラインのグランド用の平膜導体と平膜導体22との間の不要波の発生を抑制できる。
【0065】
なお、上述の高周波回路10は、電波を送信する機器、例えば、レーダ装置に用いられる。これにより、レーダ装置等の電波を送信する機器は、電波を効率的に送信できる。
【符号の説明】
【0066】
10:高周波回路
20:基板
21:信号導体
22、23、241、242、251、252:平膜導体
40、401、402、40P:スリット
20:基板
91:マイクロストリップライン
92:ポスト壁導波路
93:変換部
202:第2面
220:変換補助部
321、322、331、332、341、342:層間接続導体
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-07-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1層に形成され、第1方向に延びる信号導体と、
前記第1層に形成され、前記信号導体の短辺方向である第2方向の両側において、前記第1方向に並走する第1平膜導体と、
前記第1層に形成され、前記信号導体に前記第1方向に接続した第2平膜導体と、
第2層に形成され、前記第2平膜導体に対向する第3平膜導体と、
前記第2平膜導体と前記第3平膜導体との間に導波路を有するポスト壁導波路と、
前記信号導体と前記ポスト壁導波路とのモード変換を行う変換部と、
を備え、
前記変換部は、
前記第1平膜導体のそれぞれと前記第2平膜導体とを、前記第1方向で接続する接続導体と、前記第1平膜導体のそれぞれと前記第2平膜導体とを前記第1方向で対向して離間させるスリットと、を有し、
前記スリットは、前記第2方向に延びる形状であって、前記第2方向の前記信号導体側の一方端が高周波的に開放し、他方端が高周波的に終端し、
前記第2方向において、前記スリットにおける前記他方端は、前記ポスト壁導波路の前記導波路の前記信号導体側の端と同位置または前記導波路の前記信号導体側の端より外側にある、
高周波回路。
【請求項2】
請求項1に記載の高周波回路であって、
前記導波路の前記信号導体側の端は、前記ポスト壁導波路を構成するポスト壁の前記第2方向の内側である、
高周波回路。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の高周波回路であって、
前記第1平膜導体のそれぞれに対して前記第1方向に沿って配置され、前記第1平膜導体と前記第3平膜導体と接続する複数の層間接続導体を備え、
前記層間接続導体の前記第2方向の距離は、前記導波路の前記第2方向の長さよりも短い、
高周波回路。
【請求項4】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の高周波回路であって、
前記第2平膜導体の接続部に近づくほど前記信号導体は、前記第2方向の幅が長くなる、
高周波回路。
【請求項5】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の高周波回路を備えるレーダ装置。