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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168669
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】窒化ケイ素エッチング液組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/308 20060101AFI20231121BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20231121BHJP
   H10B 43/27 20230101ALI20231121BHJP
   H10B 41/27 20230101ALI20231121BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
H01L21/308 E
H01L21/306 E
H01L27/11582
H01L27/11556
H01L29/78 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079909
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】591045677
【氏名又は名称】関東化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大和田 拓央
(72)【発明者】
【氏名】吉田 勇喜
(72)【発明者】
【氏名】持田 耕平
(72)【発明者】
【氏名】倉本 蕗人
【テーマコード(参考)】
5F043
5F083
5F101
【Fターム(参考)】
5F043AA35
5F043BB23
5F043DD02
5F043DD07
5F043GG10
5F083EP22
5F083EP76
5F083GA10
5F083GA27
5F083PR05
5F083PR06
5F101BB02
5F101BD16
5F101BD30
5F101BD34
5F101BH15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】3D不揮発性メモリセル等の製造を始めとした、酸化ケイ素に対する実用的なエッチング選択比をもって窒化ケイ素を選択的にエッチングする工程において、酸化ケイ素のリグロースを抑制することができ、なおかつ脱離アルコールの発生のない窒化ケイ素エッチング液組成物を提供する。
【解決手段】3D不揮発性メモリセル等を製造するための窒化ケイ素エッチング液組成物は、リン酸と、水溶性のケイ素化合物の加水分解物と、水と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸と、1種または2種以上の水溶性のケイ素化合物の加水分解物と、水とを含有する、窒化ケイ素エッチング液組成物。
【請求項2】
水溶性のケイ素化合物の加水分解物が、シランカップリング剤の加水分解物である請求項1に記載のエッチング液組成物。
【請求項3】
水溶性のケイ素化合物の加水分解物が、3次元構造を含むシランカップリング剤の加水分解縮合物である請求項1または2に記載のエッチング液組成物。
【請求項4】
水溶性のケイ素化合物の加水分解物が、アミノアルコキシシラン加水分解縮合物および/またはメルカプトアルコキシシラン加水分解縮合物である請求項1~3に記載のエッチング液組成物。
【請求項5】
水溶性のケイ素化合物の加水分解物が、3-アミノプロピルトリアルコキシシラン加水分解縮合物である請求項1~4に記載のエッチング液組成物。
【請求項6】
硫酸もしくはその塩、または脂肪族スルホン酸もしくはその塩の中から選ばれる少なくとも1種をさらに含む、請求項1~5に記載のエッチング液組成物。
【請求項7】
無機ケイ酸塩、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシランの加水分解物、テトラエトキシシランの加水分解物の中から選ばれる少なくとも1種をさらに含む、請求項1~6に記載のエッチング液組成物。
【請求項8】
無機ケイ酸塩として、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸テトラメチルアンモニウムの中から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項7に記載のエッチング液組成物。
【請求項9】
リン酸と、1種または2種以上の水溶性のケイ素化合物の加水分解物と、水とを含む組成物を用いることを特徴とする、酸化ケイ素に対して高いエッチング選択性を有する、窒化ケイ素のエッチング方法。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3D不揮発性メモリセル等を製造するための窒化ケイ素エッチング液組成物、および該エッチング液組成物を用いて3D不揮発性メモリセル等を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電源を供給しなくても記憶を保持するメモリである不揮発性メモリにおいて、NAND型フラッシュメモリの技術革新が進んでいる。NAND型フラッシュメモリは、スマートメディアやSSDなどの記憶装置として利用されている。
【0003】
NAND型フラッシュメモリの構造は、従来は平面型(図1)であり、微細化が進むにつれて線幅が狭くなり、寿命や性能に悪影響を及ぼしていた。昨今では3D型(図2)の開発が進んでおり、縦に積層することにより、余裕をもった線幅で製造することでき、従来型と比べて長寿命、高速、大容量を実現している。
【0004】
3D NANDフラッシュメモリの製造方法の一例としては、(1)酸化ケイ素と窒化ケイ素が交互に積層された基板において、(2)ドライエッチングによりホールを形成し、(3)該ホール中に絶縁膜(酸化ケイ素)で覆われたゲート電極(p-Si電極)を埋め込み、(4)ドライエッチングにより積層膜に溝(間隔)を形成し、(5)基板表面にイオン注入を行って不純物領域を形成し、(6)ウェットエッチングにより窒化ケイ素をエッチングし、(7)露出した基板および酸化ケイ素表面にバリアメタルとしてTiN、電極としてWを製膜し、(8)混酸によってTiNおよびWを一括でエッチングする工程を経る。
【0005】
上記の工程(6)(図3)において窒化ケイ素をエッチングするエッチング液組成物として、リン酸、アンモニウムイオンおよびシリコン化合物を含むエッチング液組成物が開示されている(特許文献1~3)。
エッチング液組成物中にリン酸およびシリコン化合物が含まれる場合、これらが反応してSi(OH)xが発生する。Si(OH)xが存在すると、酸化ケイ素と窒化ケイ素のエッチングレートがそれぞれ低下するが、酸化ケイ素のエッチングレートの低下率の方が大きいため、結果的に酸化ケイ素に対する窒化ケイ素のエッチング選択比は向上する。一方で、Si(OH)xが過剰に存在すると飽和溶解度を超えてSi(OH)xが酸化ケイ素表面に付着し、酸化ケイ素の再成長(以下、「酸化ケイ素のリグロース」という)が生じる(図4)。特許文献1~3には、エッチング液組成物中のアンモニウムイオンがSi(OH)xと結合して、水溶性の化合物を形成することで、酸化ケイ素のリグロースを抑制すると記載されている。
【0006】
また、窒化ケイ素のエッチング液組成物として、無機酸、シロキサン化合物、アンモニウム系化合物、および溶媒を含むエッチング液組成物(特許文献4)、リン酸、2種または3種以上のシラン化合物からなる複合シラン、および水を含むエッチング液組成物(特許文献5)、ならびに、リン酸、シリコンを含む有機化合物および有機溶剤を含むエッチング液組成物(特許文献6)も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第8940182号公報
【特許文献2】米国特許第9136120号公報
【特許文献3】米国特許第9368647号公報
【特許文献4】特開2018-085513号公報
【特許文献5】特開2018-182312号公報
【特許文献6】特開2000-058500号公報
【特許文献7】特開2020-145343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
3D NAND型のメモリセルの積層数増加が進む中、本発明者らは、酸化ケイ素に対する窒化ケイ素のエッチング選択比を向上させるために、鋭意検討した結果、リン酸と1種または2種以上のシランカップリング剤と水とを含み、アンモニウムイオンを含まないエッチング液組成物を見出した(特許文献7)。しかしながら、一般的なシランカップリング剤はアルコキシ基を有しており、加水分解によりVOC(揮発性有機化合物:Volatile Organic Compounds)であるアルコールが発生する。この際、リン酸等の酸が触媒となり、激しい加水分解反応が起こることがあり危険を伴う。また、アルコキシ基を持つシランカップリング剤はリン酸水溶液に溶解させるのに時間がかかるため、製造時のコストアップにつながるという課題に直面した。さらに、3D NAND積層数増加に伴い、窒化ケイ素溶解時のSi(OH)x発生量が増えており、酸化ケイ素のリグロースを抑制するために必要なシランカップリング剤の添加量も増えている。そのため、リン酸添加時に発生するアルコール量も多く、組成物によっては消防法危険物に該当する溶液となってしまい、これまでのエッチング装置では使用が困難となってきている。
そこで、本発明者らは、3D不揮発性メモリセル等の製造において、酸化ケイ素に対する実用的なエッチング選択比をもって窒化ケイ素を選択的にエッチングした上で、酸化ケイ素のリグロースを抑制することができ、なおかつ混合時の脱離アルコールの発生がない窒化ケイ素エッチング液組成物を提供することを課題として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく鋭意研究する中で、本発明者らは、リン酸と、水溶性のケイ素化合物の加水分解物を含む窒化ケイ素エッチング組成物が、3D不揮発性メモリセル等の製造において、酸化ケイ素に対する実用的なエッチング選択比をもって窒化ケイ素を選択的にエッチングした上で、酸化ケイ素のリグロースを抑制することができ、ケイ素化合物の加水分解物のリン酸への溶解性を改善し、なおかつ加水分解物を用いることでケイ素化合物添加時の脱離アルコールの発生を抑制し得ることを見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明者らは、リン酸と、水溶性のケイ素化合物の加水分解物と水とを含む窒化ケイ素エッチング組成物が、3D不揮発性メモリセル等の製造において、酸化ケイ素に対する実用的なエッチング選択比をもって窒化ケイ素を選択的にエッチングした上で、酸化ケイ素のリグロースを抑制することができ、ケイ素化合物の加水分解物のリン酸への溶解性を改善し、加水分解反応時時の脱離アルコールの発生を抑制し得る理由を以下のように推定している。
すなわち、エッチング液組成物がリン酸と水溶性のケイ素化合物の加水分解物を含むことにより、これらが反応して酸化ケイ素表面に吸着し、結果的に酸化ケイ素に対する窒化ケイ素のエッチング選択比が向上する。また、エッチング液組成物が水溶性のケイ素化合物の加水分解物を含むことにより、酸化ケイ素表面へのSi(OH)xの付着が防がれ、酸化ケイ素のリグロースを抑制することができる(図5)と推定される。また、水溶性のケイ素化合物の加水分解物を用いることにより、リン酸への溶解性を著しく向上させ、さらに、脱離アルコールの発生を抑制できると推定される。
【0011】
すなわち、本発明は、以下に関する。
[1] リン酸と、1種または2種以上の水溶性のケイ素化合物の加水分解物と、水とを含有する、窒化ケイ素エッチング液組成物に関する。
[2] 水溶性のケイ素化合物の加水分解物が、シランカップリング剤の加水分解物である[1]に記載のエッチング液組成物に関する。
【0012】
[3] 水溶性のケイ素化合物の加水分解物が、3次元構造を含むシランカップリング剤の加水分解縮合物である[1]~[2]に記載のエッチング液組成物に関する。
[4] 水溶性のケイ素化合物の加水分解物が、アミノアルコキシシラン加水分解縮合物および/またはメルカプトアルコキシシラン加水分解縮合物である[1]~[3]に記載のエッチング液組成物に関する。
[5] 水溶性のケイ素化合物の加水分解物が、3-アミノプロピルトリアルコキシシラン加水分解縮合物である[1]~[4]に記載のエッチング液組成物に関する。
[6] 硫酸もしくはその塩、または脂肪族スルホン酸もしくはその塩の中から選ばれる少なくとも1種をさらに含む、[1]~[5]に記載のエッチング液組成物に関する。
[7] 無機ケイ酸塩、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシランの加水分解物、テトラエトキシシランの加水分解物の中から選ばれる少なくとも1種をさらに含む、[1]~[6]に記載のエッチング液組成物に関する。
[8] 無機ケイ酸塩として、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸テトラメチルアンモニウムの中から選ばれる少なくとも1種を含む、[7]に記載のエッチング液組成物に関する。
[9] リン酸と、1種または2種以上の水溶性のケイ素化合物の加水分解物と、水とを含む組成物を用いることを特徴とする、酸化ケイ素に対して高いエッチング選択性を有する、窒化ケイ素のエッチング方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のエッチング液組成物は、3D不揮発性メモリセル等の製造において、酸化ケイ素に対する実用的なエッチング選択比をもって窒化ケイ素を選択的にエッチングした上で、酸化ケイ素のリグロースを抑制することができ、なおかつ加水分解反応時の脱離アルコールの発生がない。換言すると、エッチング液組成物中に窒化ケイ素を別途溶解させる必要なく、安全かつ短時間で、さらに経済的に窒化ケイ素を選択的にエッチングすることができる。さらに、エッチング液組成物中にアンモニウムイオンを含まなくても酸化ケイ素のリグロースを抑制することができるため、エッチング液組成物の製造コストを抑えることができる。
また、本発明のエッチング液組成物が、硫酸またはその塩、脂肪族スルホン酸またはその塩、無機ケイ酸塩、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシランの加水分解物、テトラエトキシシランの加水分解物をさらに含む場合、酸化ケイ素に対する窒化ケイ素のエッチング選択比をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】平面型のNANDフラッシュメモリの構造を示す図である。
図2】3D型のNANDフラッシュメモリの構造を示す図である。
図3】窒化ケイ素のエッチング前後を示す図である。
図4】酸化ケイ素のリグロースの原理を示す図である。
図5】酸化ケイ素のリグロース抑制の原理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について、本発明の好適な実施形態に基づき、詳細に説明する。
リン酸と、1種または2種以上の水溶性のケイ素化合物の加水分解物と水とを含み、酸化ケイ素に対して高いエッチング選択性を有し、酸化ケイ素のリグロースを抑制する窒化ケイ素エッチング液組成物に関する。
【0016】
本発明のエッチング液組成物は、3D不揮発性メモリセル等を製造するための窒化ケイ素エッチング液組成物である。
3D不揮発性メモリは、3D型の不揮発性メモリであれば、メモリの種類や演算形式は特に制限されず、例えば、3D NANDフラッシュメモリなどが挙げられる。本発明のエッチング液組成物は、3D不揮発性メモリの中でも、特に高積層または単位セルのアスペクト比が高いものの製造に好適であり、例えば、酸化ケイ素膜の膜厚が10nm~50nmのものなどが挙げられる。
【0017】
本発明に用いられる水溶性のケイ素化合物の加水分解物は、特に制限されないが、式1
【化1】
は、互いに同一であるまたは互いに異なるH原子またはアルキル基のいずれかであり、Rが、互いに同一であるまたは互いに異なる、H原子、N原子、S原子、Cl原子およびF原子の群から選択される少なくとも1種を含むC1~10のアルキル基であり、Rが式2
【化2】
、ROもしくはORおよびSiは縮合して環を形成してもよく、mおよびnは1~1000の整数を示す、で表される化合物である。式1で表される化合物は、アミノアルコキシシラン加水分解物およびメルカプトアルコキシシラン加水分解物が好ましく、3-アミノプロピルトリアルコキシシラン加水分解物がより好ましく、R1がH原子、メチル基およびエチル基のいずれかであり、Rが3-アミノプロピル基で表される化合物がさらに好ましい。また、mおよびnは1~1000の整数であり、1~500が好ましく、1~100がより好ましい。
【0018】
水溶性のケイ素化合物の加水分解物は、単独で使用してもよく、組み合わせて使用してもよい。水溶性のケイ素化合物の加水分解物のエッチング液組成物中の濃度は、特に制限されないが、0.01~30重量%であることが好ましく、0.5~30重量%であることがより好ましく、0.5~25重量%であることがさらに好ましい。
【0019】
本発明のエッチング液組成物は、リン酸を含む。リン酸のエッチング液組成物中の濃度は、特に制限されないが、40~95重量%であることが好ましく、50~95重量%であることがより好ましい。
【0020】
本発明のエッチング液組成物は、上記の水溶性のケイ素化合物の加水分解物とリン酸を含み、これらが反応して酸化ケイ素表面に吸着することにより、結果的に酸化ケイ素に対して窒化ケイ素を選択的にエッチングすることができる。さらに、酸化ケイ素表面へのSi(OH)xの付着が防がれ、酸化ケイ素のリグロースを抑制することができ、なおかつ加水分解反応時の脱離アルコールの発生がない。
【0021】
本発明のエッチング液組成物は、水は、リン酸、水溶性のケイ素化合物の加水分解物、および下記の含み得る追加成分以外の残部を構成する。
【0022】
本発明のエッチング液組成物は、硫酸またはその塩、脂肪族スルホン酸またはその塩をさらに含んでもよく、それにより、酸化ケイ素に対して窒化ケイ素のエッチング選択性が向上する。
【0023】
本発明のエッチング液組成物は、無機ケイ酸塩、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシランの加水分解物、テトラエトキシシランの加水分解物をさらに含んでもよく、それにより、窒化ケイ素膜に対する酸化ケイ素膜の選択比が向上するため好ましい。無機ケイ酸塩、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシランの加水分解物、テトラエトキシシランの加水分解物は、エッチング液組成物中でSi(OH)xを形成する。
無機ケイ酸塩としては、特に制限されないが、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸テトラメチルアンモニウムが好ましい。
【0024】
本発明のエッチング液組成物は、窒化ケイ素のエッチングを妨げない限り、硫酸またはその塩、脂肪族スルホン酸またはその塩、無機ケイ酸塩、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシランの加水分解物、テトラエトキシシランの加水分解物以外の追加成分を含んでもよく、例えば、フッ素化合物などが挙げられる。本発明のエッチング液組成物は、フッ素化合物をさらに含むと、窒化ケイ素のエッチングレートが速くなるため好ましい。フッ素化合物としては、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、ヘキサフルオロケイ酸が好ましく、ヘキサフルオロケイ酸がより好ましい。
【0025】
本発明のエッチング液組成物は、アンモニウムイオンを含まなくても良い。本発明のエッチング液組成物は、アンモニウムイオンを含まなくても、酸化ケイ素のリグロースを抑制することができる。
【0026】
また、本発明は、3D不揮発性メモリセル等を製造する方法であって、本発明によるエッチング液組成物を用いて、窒化ケイ素をエッチングすることを含む、前記方法にも関する。さらに、本発明は、該方法により得られる3D不揮発性メモリセル等にも関する。
【実施例0027】
次に、本発明のエッチング液組成物について、以下に記載する実施例および比較例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
<評価1:窒化ケイ素膜/酸化ケイ素膜のエッチング選択比>
(ウエハ(浸漬前)の作成)
Si基板上に窒化ケイ素を製膜した基板を用い、20mm×15mmの大きさにカットして窒化ケイ素ウエハ(浸漬前)を得た。また、同様に、酸化ケイ素を製膜した基板を用い、酸化ケイ素ウエハ(浸漬前)を得た。
【0029】
(窒化ケイ素ウエハの前処理)
上記窒化ケイ素ウエハ(浸漬前)を、0.6重量%のフッ化水素酸水溶液に浸漬し、90秒間25℃にて静置した。その後、該ウエハを取り出し、超純水(DIW)を用いて1分間リンスすることにより、窒化ケイ素ウエハ(前処理後)を得た。
【0030】
(エッチング液組成物へのウエハの浸漬)
上記窒化ケイ素ウエハ(前処理後)を、表1の組成を有するエッチング液組成物100mL中に浸漬し、5~10分間160℃にて撹拌浸漬した。その後、該ウエハを取り出し、超純水(DIW)を用いて1分間リンスすることにより、窒化ケイ素ウエハ(浸漬後)を得た。なお、表1中の水溶性のケイ素化合物の加水分解物として、3-アミノプロピルトリエトキシシランの加水分解縮合物で3次元構造を持ち、より具体的には式3と想定される、
【化3】
が式4
【化3】
、HOもしくはOHおよびSiは脱水縮合して環を形成している可能性があり、mおよびnは1~100の整数を示す、で表される3-アミノプロピルトリエトキシシランの加水分解物を用いた。
また、酸化ケイ素ウエハ(浸漬前)に対しては、表1の組成を有するエッチング液組成物100mL中に浸漬し、10~20分間160℃にて撹拌浸漬した。その後、該ウエハを取り出し、超純水(DIW)を用いて1分間リンスすることにより、酸化ケイ素ウエハ(浸漬後)を得た。
【0031】
【表1】
【0032】
(エッチング液組成物のエッチングレートの測定)
上記窒化ケイ素(前処理後)または酸化ケイ素ウエハ(浸漬前)の膜厚を分光エリプソメーター(J.A.Woollam製、型番:RC2(登録商標))で測定し、上記窒化ケイ素または酸化ケイ素ウエハ(浸漬後)の膜厚を分光エリプソメーター(J.A.Woollam製、型番:RC2(登録商標))で測定した。浸漬前後の膜厚差より、エッチング液組組成物の窒化ケイ素または酸化ケイ素に対するエッチングレートを算出し、さらに窒化ケイ素のエッチングレートを酸化ケイ素のエッチングレートで除することにより、窒化ケイ素膜/酸化ケイ素膜のエッチング選択比を算出した。結果を表2に示す。
【0033】
<評価2:酸化ケイ素のリグロースの有無>
(ウエハ(浸漬前)の作成)
窒化ケイ素膜、酸化ケイ素膜が交互に積層され、ドライエッチングにより積層膜に溝(間隔)が形成された基板を用い、20mm×15mmの大きさにカットして評価用のウエハを得た。
【0034】
(評価用ウエハの前処理)
上記評価用ウエハ(浸漬前)を、0.6重量%のフッ化水素酸水溶液に浸漬し、90秒間25℃にて静置した。その後、該ウエハを取り出し、超純水(DIW)を用いて1分間リンスすることにより、評価用ウエハ(前処理後)を得た。
【0035】
(エッチング液組成物へのウエハの浸漬)
上記評価用ウエハ(前処理後)を、表1の組成を有するエッチング液組成物100mL中に浸漬し、240分間160℃にて撹拌浸漬した。その後ウエハを取り出し、超純水(DIW)を用いて1分間リンスすることにより、上記評価用ウエハ(浸漬後)を得た。
【0036】
(エッチング液組成物の酸化ケイ素のリグロースの確認)
上記評価用ウエハ(浸漬後)を、FE-SEM(日立ハイテクノロジーズ製、型番:SU8220)で観察し、酸化ケイ素のリグロースの有無を確認した。結果を表2に示す。
【0037】
【表2】











図1
図2
図3
図4
図5