IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東ソー・ファインケム株式会社の特許一覧

特開2023-168680パーフルオロアルキルトリメチルシランの製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168680
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】パーフルオロアルキルトリメチルシランの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/12 20060101AFI20231121BHJP
   C07F 7/16 20060101ALI20231121BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231121BHJP
【FI】
C07F7/12 D
C07F7/16
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079933
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182073
【弁理士】
【氏名又は名称】萩 規男
(72)【発明者】
【氏名】村上 弘英
(72)【発明者】
【氏名】久米 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】白井 智大
【テーマコード(参考)】
4H039
4H049
【Fターム(参考)】
4H039CA92
4H039CD20
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ02
4H049VQ11
4H049VR24
4H049VS02
4H049VS12
4H049VT08
4H049VT42
4H049VT43
4H049VU32
4H049VV17
4H049VW02
(57)【要約】
【課題】製造が規制されていないパーフルオロアルキルヨージドを原料とした、より簡便で工業化に適したパーフルオロアルキルトリメチルシランの新規製造方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるパーフルオロアルキルヨージドを、アルミニウム存在下、極性非プロトン性溶媒中、下記一般式(2)で表されるハロゲン化トリメチルシランと反応させることを特徴とする、下記一般式(3)で表されるパーフルオロアルキルトリメチルシランの製造方法を用いる。
Rf-I (1)
(式(1)中、Rfは炭素数1~3のパーフルオロアルキル基を示す) X-SiMe (2)
(式(2)中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。)
Rf-SiMe (3)
(式(3)中、Rfは炭素数1~3のパーフルオロアルキル基を示す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるパーフルオロアルキルヨージドを、アルミニウム存在下、極性非プロトン性溶媒中、下記一般式(2)で表されるハロゲン化トリメチルシランと反応させる、下記一般式(3)で表されるパーフルオロアルキルトリメチルシランの製造方法。
Rf-I (1)
(式(1)中、Rfは炭素数1~3のパーフルオロアルキル基を示す。)
X-SiMe (2)
(式(2)中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す。)
Rf-SiMe (3)
(式(3)中、Rfは炭素数1~3のパーフルオロアルキル基を示す。)
【請求項2】
前記極性非プロトン性溶媒が、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド及びアセトニトリルからなる群から選ばれる1以上の極性非プロトン性溶媒である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ハロゲン化トリメチルシランが、クロロトリメチルシランである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記パーフルオロアルキルヨージドがトリフルオロヨードメタンまたはペンタフルオロヨードエタンであり、前記極性非プロトン性溶媒が、N-メチル-2-ピロリドンであり、及び前記ハロゲン化トリメチルシランがクロロトリメチルシランである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記パーフルオロアルキルヨージドが、トリフルオロヨードメタンである、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ハロゲン化トリメチルシランの使用量が、パーフルオロアルキルヨージド1.0molに対して、1.0mol~4.0molである、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記アルミニウムの使用量が、パーフルオロアルキルヨージド1.0molに対して、0.5mol~3.0molである、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記アルミニウムが、粉末状アルミニウムである、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記極性非プロトン性溶媒の使用量が、パーフルオロアルキルヨージド1重量部に対して、2重量部~20重量部である、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記反応の反応温度が、0℃~60℃の範囲である、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーフルオロアルキルヨージドを原料としたパーフルオロアルキルトリメチルシランの新規な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素原子は水素原子に近い原子サイズでありながら高い電気陰性度を有しており、化合物の立体構造を変えずに化学的性質を大きく変えることができるとして、特に医農薬分野において含パーフルオロアルキル基を有する化合物の合成が盛んである。Ruppert-Prakash試薬をはじめとしたパーフルオロアルキルトリメチルシランは、求核的にパーフルオロアルキル基を導入する手法として幅広く用いられている。
【0003】
これまで、パーフルオロアルキルトリメチルシランは、原料として主にパーフルオロアルキルブロマイドが用いられてきた。しかし、これらの化合物は難分解性に基づき環境寿命が非常に長い(例えば、非特許文献1)ことが知られている。特にブロモトリフルオロメタン(ハロン1301)はGWP(地球温暖化係数)が高く(例えば非特許文献1)、1990年のモントリオ-ル議定書締約国会合の決議を踏まえ、オゾン層保護を目的とする国内法により1992年から特定ハロンとして製造等が規制されている。
【0004】
パーフルオロアルキルトリメチルシランの製造方法として、特許文献1にはハロゲン化トリメチルシランとパーフルオロアルキルブロマイドに対し、ヘキサアルキルホスホントリアミドを用いる方法が開示されている。しかし、ヘキサアルキルホスホントリアミドはその毒性から取り扱いが難しく、また、入手も困難であるため、工業利用に適した製造方法とは言い難い。
【0005】
非特許文献2には、ハロゲン化トリメチルシランとパーフルオロアルキルブロマイドに対し、アルミニウムを用いて反応させる方法が開示されている。しかし、本方法はパーフルオロブロマイドの高い蒸気圧に起因して、高圧下で実施する必要があり、高圧ガス設備が必要となる問題があった。実際に発明者らの検討においても、大気圧下ではパーフルオロアルキルトリメチルシランを収率よく得ることが困難であった。
【0006】
一方、環境への負荷が比較的小さく、製造が規制されていないパーフルオロアルキルヨージドを用いたパーフルオロアルキルトリメチルシランの製造方法も知られている。例えば、非特許文献2には、ハロゲン化トリメチルシランと、パーフルオロアルキルヨージドに対し、テトラキス(ジメチルアミノ)エチレンを用いてパーフルオロアルキルトリメチルシランを導く方法が開示されている。しかし、テトラキス(ジメチルアミノ)エチレンは非常に高価であり工業利用は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3200099号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Scientific Assessment of Ozone Depletion:2018,6章,24項,Table6-2
【非特許文献2】Journal of Fluorine Chemistry,1989年,第42巻,429-433頁
【非特許文献3】SYNLETT,1995年,第6巻,641-642頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記の背景技術に鑑み、製造が規制されていないパーフルオロアルキルヨージドを原料とした、より簡便で工業化に適したパーフルオロアルキルトリメチルシランの新規製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、パーフルオロアルキルヨージドをアルミニウム存在下、極性非プロトン性溶媒中でハロゲン化トリメチルシランと反応させることにより、パーフルオロアルキルトリメチルシランを大気圧下で製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の発明に係る。
[1] 下記一般式(1)で表されるパーフルオロアルキルヨージドを、アルミニウム存在下、極性非プロトン性溶媒中、下記一般式(2)で表されるハロゲン化トリメチルシランと反応させる、下記一般式(3)で表されるパーフルオロアルキルトリメチルシランの製造方法。
Rf-I (1)
(式(1)中、Rfは炭素数1~3のパーフルオロアルキル基を示す)
X-SiMe (2)
(式(2)中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を示す)
Rf-SiMe (3)
(式(3)中、Rfは炭素数1~3のパーフルオロアルキル基を示す)
[2] 前記極性非プロトン性溶媒が、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド及びアセトニトリルからなる群から選ばれる1又は2以上である、[1]に記載の製造方法。
[3] 前記ハロゲン化トリメチルシランが、クロロトリメチルシランである、[1]に記載の製造方法。
[4] 前記パーフルオロアルキルヨージドがトリフルオロヨードメタン又はペンタフルオロヨードエタンであり、前記極性非プロトン性溶媒がN-メチル-2-ピロリドンであり、及び前記ハロゲン化トリメチルシランがクロロトリメチルシランである、[1]に記載の製造方法。
[5] 前記パーフルオロアルキルヨージドが、トリフルオロヨードメタンである、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6] 前記ハロゲン化トリメチルシランの使用量が、パーフルオロアルキルヨージド1.0molに対して、1.0mol~4.0molである、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[7] 前記アルミニウムの使用量が、パーフルオロアルキルヨージド1.0molに対して、0.5mol~3.0molである、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[8] 前記アルミニウムが、粉末状アルミニウムである、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[9] 前記極性非プロトン性溶媒の使用量が、パーフルオロアルキルヨージド1重量部に対して、2重量部~20重量部である、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[10] 前記反応の温度が、0℃~60℃の範囲である、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、環境への負荷が比較的小さく、製造が規制されていないパーフルオロアルキルヨージドを原料とした、大気圧下で簡便に実施可能なパーフルオロアルキルトリメチルシランの工業的製造方法が提供できる。
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の上記一般式(1)に示されるパーフルオロアルキルヨージドにおいて、Rfは直鎖の炭素数1~3のパーフルオロアルキル基が好ましく、炭素数1~2のパーフルオロアルキル基が特に好ましい。
【0014】
本発明の上記一般式(2)に示されるハロゲン化トリメチルシランにおいては、原料価格の入手性を考慮するとXは塩素原子または臭素原子が好ましく、塩素原子が特に好ましい。本発明で使用するハロゲン化トリメチルシランは、クロロトリメチルシラン、ブロモトリメチルシラン、ヨードトリメチルシランであることが好ましく、クロロトリメチルシランがさらに好ましい。
【0015】
本発明の極性非プロトン性溶媒は、反応に不活性な溶媒であれば特に限定されないが、具体的にはジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル等が挙げられる。これらの内、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリルが好ましく、特にN-メチル-2-ピロリドンが好ましい。これらは単独で使用できるが、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0016】
本発明において使用されるハロゲン化トリメチルシランの使用量は、反応に具するパーフルオロアルキルヨージド1.0molに対して、好ましくは1.0mol~4.0mol、より好ましくは1.0mol~2.0molとすると良い。
【0017】
本発明において使用されるアルミニウムは、アルミニウムもしくはアルミニウムを含有する金属のいずれも使用できる。市販のアルミニウムを直接使用できる。
アルミニウムの形状としては、噴霧粉、乾式粉砕粉(フレーク粉)、湿式粉砕粉(アルミペースト)などの粉末状、粒状のいずれも使用できるが、溶媒への分散性、反応性の観点から粉末状であることが好ましい。また、本発明において使用されるアルミニウムの使用量は、反応に具するパーフルオロアルキルヨージド1.0molに対して、好ましくは0.5mol~3.0mol、より好ましくは0.5mol~1.5mol使用すると良い。
【0018】
本発明において使用される極性非プロトン性溶媒の使用量は、反応に具するパーフルオロアルキルヨージド1重量部に対して、2重量部~20重量部を使用すると良く、より好ましくは5重量部~10重量部を使用すると良い。
【0019】
本発明における反応温度は、通常好ましくは0℃~60℃の範囲であり、より好ましくは20℃~40℃の範囲である。本発明における反応は窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
【0020】
本発明における反応時間は、好ましくは8時間~30時間の範囲であり、より好ましくは10時間~24時間の範囲である。
【0021】
本発明の反応後の後処理としては、公知の方法により実施可能で、反応生成物は直接、または水を加えた後に精製することが可能である。常圧下、または減圧下で蒸留することにより単離又は精製することができ、本発明の目的化合物を得ることができる。例えば単蒸留により粗製物を得た後に、更に必要に応じて精密蒸留により精製しても良い。
【実施例0022】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0023】
なお、分析に当たっては下記機器を使用した。
<NMR>
H-NMR(400MHz)、19F-NMR(376MHz):ブルカー製AVANCE I I 400
【0024】
実施例1 トリフルオロヨードメタンを用いたトリフルオロメチルトリメチルシランの合成
冷却循環器を備えた3Lガラス製フラスコに窒素雰囲気中でN-メチル-2-ピロリドン2088g(21.1mol、富士フィルム和光純薬株式会社製)、アルミニウム粉末37g(1.4mol、ミナルコ株式会社製)を室温で加え撹拌を開始した。続いて、クロロトリメチルシラン380g(3.5mol、東京化成工業株式会社製)を室温で加え内温30℃まで昇温したのち、液相に浸漬させた導入管でトリフルオロヨードメタン392g(2.0mol、東ソー・ファインケム製)を内温30℃~40℃を維持して断続的に加えた。内温25℃~30℃を維持して17時間熟成を行い、氷水冷却下純水を360g(20.0mol)加え30分撹拌を行った。続いて、常圧下、100℃~140℃での単蒸留により無色透明の留出液を177g取得した。
ベンゾトリフルオリドを内部標準とする19F-NMR分析から、留出液にはトリフルオロメチルトリメチルシランが55重量%含まれていた(収率62%)。収率は出発材料RF-X(トリフルオロヨードメタン)を基準(モル収率)とした。以下も同様である。
さらに、得られた留出液を常圧下80℃~120℃で精密蒸留することにより、トリフルオロメチルトリメチルシランを143g取得した(単離収率50%)。収率は出発材料RF-X(トリフルオロヨードメタン)を基準とし、単離されたRf-TMS(トリフルオロメチルトリメチルシラン)の量の比率(モル収率)とした。以下も同様である。
【0025】
分析結果は以下の通りであった。
H-NMR(溶媒:重クロロホルム、内部標準物質:クロロホルム) δ(ppm):0.27(s,9H、CH
19F-NMR(溶媒:重クロロホルム、内部標準:ベンゾトリフルオリド) δ(ppm):-67.3(s,3F,CF
【0026】
実施例2 ペンタフルオロヨードエタンを用いたペンタフルオロエチルトリメチルシランの合成
冷却循環器を備えた100mLガラス製フラスコに窒素雰囲気中でN-メチル-2-ピロリドン38g(富士フィルム和光純薬株式会社製、0.4mol)、アルミニウム粉末0.7g(ミナルコ株式会社製、0.03mol)を室温で加え撹拌を開始した。続いて、クロロトリメチルシラン7.4g(東京化成工業株式会社製、0.07mol)を室温で加え内温30℃まで昇温したのち、液相に浸漬させた導入管でペンタフルオロヨードエタン9.1g(東ソー・ファインケム製、0.04mol)を内温30℃~40℃を維持して断続的に加えた。内温25℃~40℃を維持して16時間熟成を行い、内温25~35℃を維持して、純水を6.6g(0.4mol)加え30分撹拌を行った。続いて、常圧下、100℃~140℃での単蒸留により無色透明の留出液を7.8g取得した。
ベンゾトリフルオリドを内部標準とする19F-NMR分析から、留出液にはペンタフルオロエチルトリメチルシランが59重量%含まれていた(収率65%)。
【0027】
分析結果は以下の通りであった。
H-NMR(溶媒:重クロロホルム、内部標準物質:クロロホルム) δ(ppm):0.29(s,9H,CH
19F-NMR (溶媒:重アセトン、内部標準:ベンゾトリフルオリド) δ(ppm):-82.5(s,3F,CF)、-131.9(s,2F,CF
【0028】
比較例1 ブロモトリフルオロメタンを用いたトリフルオロメチルトリメチルシランの合成
冷却循環器を備えた100mLガラス製フラスコに窒素雰囲気中でN-メチル-2-ピロリドン45g(富士フィルム和光純薬株式会社製、0.5mol)、アルミニウム粉末0.9g(ミナルコ株式会社製、0.03mol)を室温で加え撹拌を開始した。続いて、クロロトリメチルシラン8.6g(東京化成工業株式会社製、0.08mol)を室温で加え内温30℃まで昇温したのち、液相に浸漬させた導入管でブロモトリフルオロメタン6.5g(日本ハロン製、0.05mol)を内温30℃~40℃を維持して断続的に加えた。内温25℃~40℃を維持して17時間熟成を行い、室温下、純水を8.0g(0.5mol)加え30分撹拌を行った。続いて、常圧下、100℃~140℃での単蒸留により無色透明の留出液を7.8g取得した。
ベンゾトリフルオリドを内部標準とする19F-NMR分析から、留出液にはトリフルオロメチルトリメチルシランが0.5重量%含まれていた(収率0.2%)。
【0029】
分析結果は以下の通りであった。
H-NMR(溶媒:重クロロホルム、内部標準物質:クロロホルム) δ(ppm):0.27(s,9H,CH
19F-NMR(溶媒:重クロロホルム、内部標準:ベンゾトリフルオリド) δ(ppm):-67.3(s,3F,CF
【0030】
比較例2 ペンタフルオロブロモエタンを用いたペンタフルオロエチルトリメチルシランの合成
冷却循環器を備えた100mLガラス製フラスコに窒素雰囲気中でN-メチル-2-ピロリドン46g(富士フィルム和光純薬株式会社製、0.5mol)、アルミニウム粉末0.8g(ミナルコ株式会社製、0.03mol)を室温で加え撹拌を開始した。続いて、クロロトリメチルシラン8.6g(東京化成工業株式会社製、0.08mol)を室温で加え内温30℃まで昇温したのち、液相に浸漬させた導入管でペンタフルオロブロモエタン9.0g(日本ハロン製、0.05mol)を内温30℃~40℃を維持して断続的に加えた。内温25℃~40℃を維持して17時間熟成を行い、内温25~35℃を維持して、純水を8.5g(0.5mol)加え30分撹拌を行った。続いて、常圧下、100℃~140℃での単蒸留により無色透明の留出液を6.9g取得した。
ベンゾトリフルオリドを内部標準とする19F-NMR分析から、留出液にはペンタフルオロエチルトリメチルシランが35重量%含まれていた(収率37%)。
【0031】
分析結果は以下の通りであった。
H-NMR(溶媒:重クロロホルム、内部標準物質:クロロホルム) δ(ppm):0.29(s,9H,CH
19F-NMR (溶媒:重アセトン、内部標準:ベンゾトリフルオリド) δ(ppm):-82.5(s,3F,CF)、-131.9(s,2F,CF
【0032】
上記の結果から、反応にパーフルオロアルキルヨージドを用いることで、パーフルオロアルキルブロマイドを用いた場合と比較して、大気圧下で収率よくパーフルオロアルキルトリメチルシランが得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明により、環境への負荷が小さく製造が規制されていないパーフルオロアルキルヨージドを原料とする簡便で工業化に適したパーフルオロアルキルトリメチルシランの製造方法が提供できる。