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特開2023-168687打設面計測システム及び打設面計測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168687
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】打設面計測システム及び打設面計測方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/10 20060101AFI20231121BHJP
   E04G 21/18 20060101ALI20231121BHJP
   G01B 11/30 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
E04G21/10 A ESW
E04G21/18 A
G01B11/30 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079942
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503295448
【氏名又は名称】計測ネットサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】保坂 栄太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲郎
【テーマコード(参考)】
2E172
2E174
2F065
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172DB07
2E172HA03
2E174AA03
2E174DA17
2F065AA04
2F065AA47
2F065AA53
2F065GG04
2F065SS01
(57)【要約】
【課題】建物の床構造物の打設面の平坦度を効率よく計測することができる打設面計測システム及び打設面計測方法を提供する。
【解決手段】レーザ光を照射する照射部21と、前記照射部21が照射したレーザ光を用いて、施工中の建物の床構造物(スラブ2)のコンクリート4の打設面2aの平坦度を計測可能な計測部(制御部27及び制御部42)と、を具備し、前記計測部(制御部27及び制御部42)は、前記打設面2aの全体のうち、任意の領域(第一打設エリアA)の平坦度を計測可能であるものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を照射する照射部と、
前記照射部が照射したレーザ光を用いて、施工中の建物の床構造物のコンクリートの打設面の平坦度を計測可能な計測部と、
を具備し、
前記計測部は、前記打設面の全体のうち、任意の領域の平坦度を計測可能である、
打設面計測システム。
【請求項2】
前記打設面を複数の領域に分割した分割領域の設定が可能な分割領域設定部を具備し、
前記計測部は、
前記任意の領域として、前記分割領域として分割された領域の平坦度を計測可能である、
請求項1に記載の打設面計測システム。
【請求項3】
前記分割領域の情報を、前記床構造物の施工計画の情報と紐づけて記憶する記憶部を具備し、
前記計測部は、
前記床構造物の施工計画の情報に基づいて、前記任意の領域として、前記分割領域として分割された領域の平坦度を計測可能である、
請求項2に記載の打設面計測システム。
【請求項4】
前記分割領域ごとに、前記打設面の平坦度の計測結果を表示可能な表示部を具備する、
請求項2又は請求項3に記載の打設面計測システム。
【請求項5】
前記照射部及び前記計測部を、遠隔操作可能な操作部を具備する、
請求項1に記載の打設面計測システム。
【請求項6】
照射部によりレーザ光を照射するレーザ光照射工程と、
前記レーザ光照射工程において照射したレーザ光を用いて、施工中の建物の床構造物のコンクリートの打設面の全体のうち、任意の領域の平坦度を計測可能な平坦度計測工程と、
を具備する、
打設面計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の床構造物の打設面計測システム及び打設面計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートスラブ等の床構造物の平坦度を計測する装置が知られている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、3Dレーザスキャナを用いて、施工中のコンクリートスラブの表面の凹凸形状を計測可能な形状計測装置が記載されている。
【0004】
ここで、施工途中のスラブには、コンクリートの打設が完了した部分と、まだコンクリートが打設されていない部分と、が含まれることが考えられる。
【0005】
このようなスラブの施工中において、コンクリートの打設が完了した部分について順次、上記形状計測装置による表面の計測を行う場合、例えばコンクリートの打設がされていない部分や、すでに計測を行った部分等、計測が不要な部分にまでスキャンを行ってしまうことが想定される。この場合は、スラブの表面の計測に時間がかかり、効率よく計測を行い難いことが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-60319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、建物の床構造物の打設面の平坦度を効率よく計測することができる打設面計測システム及び打設面計測方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、レーザ光を照射する照射部と、前記照射部が照射したレーザ光を用いて、施工中の建物の床構造物のコンクリートの打設面の平坦度を計測可能な計測部と、を具備し、前記計測部は、前記打設面の全体のうち、任意の領域の平坦度を計測可能であるものである。
【0010】
本発明は「建物」の床構造物の打設面を計測するものである。そして、本明細書において「建物」とは、土地に定着する工作物のうち、屋根、柱及び壁を有するものをいい、土地に定着する工作物であっても、屋根、柱及び壁のいずれか一つでも備えないもの、例えば、「橋梁、道路、トンネル、鉄道(屋外プラットフォームを含む)、地下構築物、樋門、鉄塔、法面工、護岸及びダム」は含まない。すなわち、本発明で計測する「打設面」は、「建物」以外の床構造物の打設面、例えば、上述した「橋梁、道路、トンネル、鉄道(屋外プラットフォームを含む)、地下構築物、樋門、鉄塔、法面工、護岸及びダム」の床構造物の打設面は含まない。
【0011】
請求項2においては、前記打設面を複数の領域に分割した分割領域の設定が可能な分割領域設定部を具備し、前記計測部は、前記任意の領域として、前記分割領域として分割された領域の平坦度を計測可能であるものである。
【0012】
請求項3においては、前記分割領域の情報を、前記床構造物の施工計画の情報と紐づけて記憶する記憶部を具備し、前記計測部は、前記床構造物の施工計画の情報に基づいて、前記任意の領域として、前記分割領域として分割された領域の平坦度を計測可能であるものである。
【0013】
請求項4においては、前記分割領域ごとに、前記打設面の平坦度の計測結果を表示可能な表示部を具備するものである。
【0014】
請求項5においては、前記照射部及び前記計測部を、遠隔操作可能な操作部を具備するものである。
【0015】
請求項6においては、照射部によりレーザ光を照射するレーザ光照射工程と、前記レーザ光照射工程において照射したレーザ光を用いて、施工中の建物の床構造物のコンクリートの打設面の全体のうち、任意の領域の平坦度を計測可能な平坦度計測工程と、を具備するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
請求項1においては、建物の床構造物の打設面の平坦度を効率よく計測することができる。
【0018】
請求項2においては、分割された領域ごとに、平坦度の計測を行うことができる。
【0019】
請求項3においては、施工計画の情報に基づいて、分割領域ごとに平坦度の計測を行うことができる。
【0020】
請求項4においては、分割領域ごとに、平坦度の計測結果を視覚的に認識することができる。
【0021】
請求項5においては、コンクリートが打設される現場にいなくとも、打設面の平坦度の管理を行うことができる。
【0022】
請求項6においては、建物の床構造物の打設面の平坦度を効率よく計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る打設面計測システム及び建物を示した側面図。
図2】測量機器による打設面の計測の様子を示した平面図。
図3】(a)測量機器を示した正面図。(b)測量機器及び制御装置を示したブロック図。
図4】平坦度計測処理を示すフローチャート。
図5】(a)標高取得処理においてメッシュ化された打設面を示す模式図。(b)平坦度算出処理の様子を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、図1から図5までを用いて、本発明の一実施形態に係る打設面計測システム10及び建物1について説明する。以下の説明においては、図中に記した矢印に従って、上下方向、左右方向及び前後方向をそれぞれ定義する。
【0025】
打設面計測システム10は、図1に示す施工中の建物1において、スラブ2の打設面2aの平坦度の計測を実行可能なものである。以下では、まず建物1について説明する。
【0026】
建物1は、鉄骨造により構成されている。建物1は、所定の階の床を構成するスラブ2を具備する。スラブ2は、鉄筋コンクリートにより形成される。具体的には、スラブ2は、鉄筋3が配筋された型枠(不図示)内にコンクリート4が打設されることで形成される。上記打設されたコンクリート4が硬化すれば(コンクリート4の養生期間が経過すれば)、スラブ2の形成は完了する。
【0027】
また、建物1は、鉄骨柱5を具備する。鉄骨柱5は、鉄骨梁(不図示)と共に、建物1の躯体を構成する。鉄骨柱5は、H型鋼により形成されている。
【0028】
図1では、スラブ2を形成するコンクリート4を打設している工程(コンクリート打設工程)の建物1を示している。より詳細には、図1は、スラブ2を形成するコンクリート4の打設後であって、当該コンクリート4が硬化する前の状態を示している。コンクリート4は、打設面2a(上面)が所望の高さとなるように打設される。また、コンクリート4は、表面(打設面2a)が概ね均一になるように、仕上げが施される。
【0029】
本実施形態においては、コンクリート4の打設対象である所定の階を複数の領域に分割し、上記領域ごとにコンクリート4の打設を行う。具体的には、本実施形態では、コンクリート4の打設対象を、図2に示す第一打設エリアA、第二打設エリアB、第三打設エリアC及び第四打設エリアDの4つの領域(エリア)に分割している。
【0030】
図2に示すように、第一打設エリアAは、コンクリート4の打設対象全体のうちの左後部分の領域である。第二打設エリアBは、第一打設エリアAの右方に位置する領域である。第三打設エリアCは、第一打設エリアA及び第二打設エリアBの前方に位置する領域である。第四打設エリアDは、第三打設エリアCの前方に位置する領域である。
【0031】
本実施形態では、上記各打設エリアの範囲(形状や大きさ)は、建物1(スラブ2)の施工計画(スケジュール)に基づいて設定される。建物1の施工計画には、建物1の形状(屋根や梁の位置等)や、コンクリート4を打設する箇所や量、打設の日時や順序(タイミング)等、スラブ2の形成に関する計画の情報が含まれる。上記打設エリアは、1日分の作業が行われる領域でもよく、1日分の作業が行われる領域を、予め決められた打設の順序に応じて分割した複数の領域でもよい。
【0032】
上記各エリアは、事前に(例えばコンクリート打設工程の前日までに)設定されている。本実施形態に係るコンクリート打設工程においては、第一打設エリアA、第二打設エリアB、第三打設エリアC及び第四打設エリアDの順番で、コンクリート4の打設が行われる。図2では、上記各打設エリアのうち、第一打設エリアAのコンクリート4の打設及び打設面2aの仕上げが完了し、他の打設エリアにはコンクリート4の打設は行われていない状態を示している。この状態では、上記他の打設エリア(第二打設エリアB、第三打設エリアC及び第四打設エリアD)は、鉄筋3が露出している。
【0033】
次に、図1から図3までを用いて、打設面計測システム10の詳細について説明する。
【0034】
打設面計測システム10は、スラブ2の打設面2aの平坦度の計測を実行すると共に、計測結果の表示を行うものである。打設面計測システム10は、測量機器20、架台30及び制御装置40を具備する。
【0035】
図1から図3までに示す測量機器20は、レーザ光を用いて打設面2aの平坦度を計測可能なものである。測量機器20は、後述する架台30を介して、鉄骨柱5に取り付けられる。測量機器20は、照射部21、旋回部22、ベース部23、入力部24、表示部25、記憶部26、制御部27及び通信部28を具備する。
【0036】
照射部21は、レーザ光を照射する部分である。また、照射部21は、計測対象(打設面2a)で反射したレーザ光を検出する。図1及び図2に示すように、照射部21は、打設面2aに対して、大量のレーザ光を照射すると共に、反射したレーザ光を検出することで、大量の計測対象となる点(計測対象点)までの距離や、計測対象点の座標及び標高(高さ)を含むデータ(以下では「点群データ」と称する)を取得する。照射部21は、一回の計測で、所定範囲の領域(例えば計測者の判断による任意の打設エリア)の点群データの取得を行うことができる。
【0037】
旋回部22は、照射部21の向きを変更可能に、照射部21を支持するものである。旋回部22は、上下方向に向く軸回りに照射部21を旋回(回動)可能に形成される。また、旋回部22は、左右方向に向く軸回りに照射部21を旋回(回動)可能に形成される。旋回部22により、照射部21を旋回させることで、レーザ光の照射方向を変更することができる。旋回部22は、計測者(操作者)の手による操作によって(手動で)照射部21を旋回させることができる。また、旋回部22は、モータ等の動力によっても(自動でも)、照射部21を旋回させることができる。
【0038】
ベース部23は、測量機器20の下部を構成するものである。ベース部23の上部には、旋回部22が設けられている。ベース部23は、後述する架台30に取り付けられる。ベース部23には、架台30に対する測量機器20の角度を調整可能な適宜の角度調整部が設けられる。
【0039】
入力部24は、各種の情報を入力するためのものである。入力部24は、ベース部23に設けられる。入力部24は、複数のボタンにより構成される。計測者は、入力部24を用いて測量機器20の各種操作(例えば測量機器20のオンオフや、照射部21及び旋回部22の動作等)を行うことができる。
【0040】
表示部25は、各種の情報を表示するものである。表示部25は、例えば液晶ディスプレイ等により構成される。表示部25は、ベース部23に設けられる。表示部25には、測量機器20の操作のための情報が表示される。
【0041】
本実施形態では、入力部24及び表示部25を並べて配置した操作パネルを、ベース部23に設けている。操作パネルは、ベース部23の前面及び後面にそれぞれ設けられる。これにより、計測者は、前方及び後方のどちらからでも測量機器20の操作を行うことができる。
【0042】
記憶部26は、各種のプログラムや、点群データ等の取得された各種の情報が記憶されるものである。記憶部26は、RAM、ROM等により構成される。また、記憶部26には、建物1の施工計画のデータや、建物1の図面データが記憶されている。上記図面データには、スラブ2の平面図が含まれる。
【0043】
制御部27は、記憶部26に記憶されたプログラムを実行するものである。制御部27は、CPUにより構成される。
【0044】
通信部28は、後述する制御装置40等の外部の機器との通信が可能なものである。通信部28は、例えばインターネット等の各種の通信手段を介して、外部の機器との情報のやりとりを行うことができる。
【0045】
架台30は、鉄骨柱5に対して取り付けられると共に、測量機器20を支持するものである。架台30は、固定部31及び取付部32を具備する。
【0046】
固定部31は、鉄骨柱5に固定される部分である。固定部31は、鉄骨柱5のフランジを挟持することで鉄骨柱5に固定可能に形成される。なお、固定部31の構成としては、上述した態様に限られず、鉄骨柱5に固定可能な種々の構成を採用可能である。
【0047】
取付部32は、測量機器20を支持する部分である。取付部32は、固定部31から前方へ延びるように形成される。取付部32の上部には、測量機器20のベース部23が脱着可能に取り付けられる。
【0048】
制御装置40は、各種の情報の処理が可能なものである。制御装置40は、例えば建物1の施工を管理する管理者の施設(例えば事務所等)に配置される。制御装置40としては、一般的なパーソナルコンピュータ等を用いることができる。制御装置40は、記憶部41、制御部42、通信部43、入力部44及び表示部45を具備する。
【0049】
記憶部41は、各種のプログラムや取得された各種の情報が記憶されるものである。記憶部41は、RAM、ROM等により構成される。
【0050】
制御部42は、記憶部41に記憶されたプログラムを実行するものである。制御部42は、CPUにより構成される。
【0051】
通信部43は、測量機器20等の外部の機器との通信が可能なものである。通信部43は、例えばインターネット等の各種の通信手段を介して、外部の機器との情報のやりとりを行うことができる。
【0052】
入力部44は、各種の情報を入力するためのものである。入力部44は、キーボード、マウス等により構成される。
【0053】
表示部45は、各種の情報を表示するものである。表示部45は、例えば液晶ディスプレイ等により構成される。
【0054】
制御装置40(制御部42)は、測量機器20との通信を行うことで、測量機器20が取得したデータ(点群データ等)を取得することができる。また、制御装置40は、測量機器20との通信(例えば無線通信)を行うことで、測量機器20の遠隔操作を行うことができる。具体的には、計測者は、入力部44を用いた操作により、入力部24で実行可能な測量機器20の各種の操作(例えば測量機器20のオンオフや、照射部21及び旋回部22の動作等)を行うことができる。上記制御装置40と測量機器20との通信は、適宜のアクセスポイントを利用して行うことができる。
【0055】
上述の如き打設面計測システム10は、スラブ2の打設面2aの平坦度(平坦性)を計測する平坦度計測処理を実行可能である。ここで、平坦度とは、打設面2aの凹凸の程度(高さ(標高)のばらつき)を示すものである。平坦度は、所定の基準値に対して打設面2aの高さ(標高)がどれだけ離れているかで示される。以下では、まず、平坦度計測処理を実行するまでに計測者が行う工程について説明する。
【0056】
まず、計測者は、測量機器20を打設面2aの計測が可能な位置に設置する。具体的には、計測者は、架台30を介して、測量機器20を鉄骨柱5に取り付ける。測量機器20は、図2に示す全ての打設エリア(第一打設エリアA、第二打設エリアB、第三打設エリアC及び第四打設エリアD)の全ての打設面2aの計測を実行可能な位置に配置される。測量機器20を、比較的高い位置に設置すれば、レーザ光を広範囲に照射することができる。測量機器20を設置する高さとしては、例えば測量機器に用いられる一般的な三脚の高さよりも高い位置(例えば打設面2aから2m以上の高さ)を採用可能である。上記測量機器20の取り付けは、スラブ2のコンクリート4が打設される前(例えばコンクリート4が打設される日の前日)に行われる。
【0057】
また、計測者は、測量機器20が設置された位置を制御部27に取得させる。測量機器20の設置位置の取得は、予め設定された2つの基準点にそれぞれ配置され、照射部21からのレーザ光を反射可能なプリズムを用いて行われる。上記プリズムは、例えばコンクリート4が打設される領域の外に配置される。
【0058】
設置位置の取得は、計測者による操作を契機として実行される。ここで、上記設置位置の取得のための操作をはじめ、以下の測量機器20の操作(平坦度計測処理のための操作等)は、制御装置40の入力部44を用いた遠隔操作により行われる。
【0059】
設置位置を取得する際、測量機器20(制御部27)は、プリズムに対して照射部21からのレーザ光を照射し、基準点までの距離のデータ、水平角及び垂直角を取得する。制御部27は、上記基準点までの距離のデータ、水平角及び垂直角と、基準点の位置(座標)を含む図面データと、を用いて、測量機器20の設置位置を取得する。この際には、計測者は、照射部21の向きをプリズムに向けるように、遠隔操作による旋回部22の操作を実行可能である。上記設置位置の取得は、例えば、コンクリート4の打設当日であって、コンクリート4が打設される前に行われる。
【0060】
次に、平坦度計測処理の詳細について説明する。平坦度計測処理は、点群データを用いて、打設面2aの平坦度を計測する処理である。打設面2aの平坦度の計測は、図2に示す各打設エリア(第一打設エリアA、第二打設エリアB、第三打設エリアC及び第四打設エリアD)ごとに行われる。平坦度計測処理は、測定する打設エリアへのコンクリート4の打設が完了し、コンクリート4の表面(打設面2a)が概ね均一になるように仕上げが施された後であって、当該コンクリート4が硬化する前に実行される。
【0061】
図4に示すように、平坦度計測処理は、打設エリア設定処理S10、点群データ取得処理S11、標高取得処理S12、平坦度算出処理S13及び計測結果表示処理S14を含む。
【0062】
打設エリア設定処理S10は、制御装置40(制御部42)が、平坦度の計測の対象となる打設エリアを設定する処理である。ここで、記憶部41には、各打設エリア(第一打設エリアA、第二打設エリアB、第三打設エリアC及び第四打設エリアD)のデータ(コンクリート4の打設対象をどのように分割したかの位置情報を示すデータ)が事前に記憶されている。上記各打設エリアのデータは、建物1の施工計画のデータと紐づいて記憶されている。上記データの記憶は、制御装置40を用いて行うことができる。
【0063】
打設エリア設定処理S10において、制御部42は、記憶部41に記憶された打設エリアのうちから選択された打設エリアを、計測を行う打設エリアとして設定する。上記選択は、計測者の操作(入力部44を用いた遠隔操作)により実行可能である。
【0064】
なお、打設エリアの設定としては、計測者による操作に代えて、制御部42が自動で計測を行う打設エリアを設定することによっても実行可能である。この場合は、例えば、作業の日時や時刻等と、施工計画のデータと、に基づいて、各打設エリアのうちから計測を行う打設エリアを制御部42に設定させる処理を実行可能である。また、以下では、第一打設エリアAを、計測を行う打設エリアとして設定した例を用いて説明を行う。
【0065】
点群データ取得処理S11は、打設エリア設定処理S10において取得された打設エリア(第一打設エリアA)の点群データを取得する処理である。点群データ取得処理S11は、計測者による操作(入力部44を用いた遠隔操作)を契機として実行される。点群データ取得処理S11において、制御部27は、第一打設エリアAに対して、照射部21からのレーザ光を照射すると共に、点群データを取得する。また、上記点群データは、制御装置40(制御部42)へ送信される。
【0066】
標高取得処理S12は、点群データに基づいて第一打設エリアAの打設面2aの高さ(標高)を取得する処理である。標高取得処理S12において、制御部42は、図5(a)に示すように、第一打設エリアAの打設面2aを網目(マス目)状に区切る(メッシュ化する)ことで形成されたメッシュごとに、当該メッシュの中心座標の高さを取得する。なお、上記メッシュの大きさは、種々の値を設定可能である。
【0067】
具体的には、制御部42は、取得した点群データに含まれる第一打設エリアA内の点群の座標及び標高(高さ)のデータを取得する。制御部42は、点群データのうち、上記メッシュの中心を含む三角形(TIN)から中心座標の再計算を行い、導き出された座標をメッシュの中心座標の標高(高さ)として取得する。ここで、「メッシュの中心座標の標高」は、予め設定されたスラブ2の標高を示す設計値を基準として、当該設計値からどれだけ離れているかで示される。メッシュの中心座標の標高は、設計値よりも高い場合は正の値、低い場合は負の値で示される。例えば、メッシュの中心座標の標高が、設計値よりも1mm高ければ、当該中心座標の標高は「1」で示される。
【0068】
平坦度算出処理S13は、メッシュの中心座標の標高に基づいて、第一打設エリアAの打設面2aの平坦度を算出する処理である。平坦度算出処理S13において、制御部42は、計測対象となる任意のメッシュの中心座標の標高と、基準となる標高(基準高さ)と、の差分を計測対象のメッシュの平坦度として算出する。上記メッシュの平坦度は、基準高さよりも高い場合は正の値、低い場合は負の値で示される。
【0069】
本実施形態においては、上記基準高さを、計測対象のメッシュの両隣(例えば左右両隣)に位置する2つのメッシュの中心座標の標高の平均としている。換言すれば、上記基準高さは、上記2つのメッシュの中心座標の標高同士を結んだ直線の、計測対象のメッシュの中心座標における高さである。図5(b)は、平坦度算出処理S13の算出結果を模式的に示したものである。
【0070】
図5(b)に示す左右方向中央のメッシュのように、仮に当該メッシュの中心座標の標高が3であり、両隣に位置する2つのメッシュの中心座標の標高が1と3である場合、基準高さは2となる。従って、上記中央のメッシュの平坦度は、1(+1)として示される。なお、図5(b)に示すように、端部に位置するメッシュについては、両隣にメッシュが存在しないため、平坦度の算出は行われない。なお、上述した例では、左右両隣のメッシュの中心座標を用いて、基準高さを算出した例を示したが、このような態様に代えて、前後両隣のメッシュの中心座標を用いて基準高さを算出してもよく、また、前後左右のメッシュの中心座標を用いて基準高さを算出してもよい。
【0071】
計測結果表示処理S14は、平坦度算出処理S13の結果を表示する処理である。計測結果表示処理S14において、制御装置40(制御部42)は、上記結果を記憶部41に記憶させると共に、表示部45に表示させる。計測者は、表示された結果を確認することで、第一打設エリアAの打設面2aの平坦度に問題がないか否かを判断することができる。
【0072】
制御部42は、各メッシュの画像を表示部45に表示すると共に、当該メッシュの画像内に平坦度の値を表示させることができる。また、制御部42は、各メッシュの画像を、平坦度の値ごとに色分けすることができる。これによれば、計測者は、平坦度の計測結果を視覚的に認識することができる。
【0073】
また、制御部42は、メッシュの平坦度が基準高さに対して比較的大きく乖離した場合、当該メッシュの色を所定の色に変化させる等の報知を実行可能である。具体的には、制御部42は、平坦度と基準高さとの差分が所定の閾値以上である場合に報知を実行可能である。なお、報知の方法としては、上述した例に限られず、任意のメッセージや音による方法等を採用可能である。制御部42は、計測結果表示処理S14を実行した後、平坦度計測処理を終了する。
【0074】
計測者は、第一打設エリアAの打設面2aの平坦度に問題があると判断した場合は、当該第一打設エリアAについて施工の修正指示を出すことができる。この場合は、計測者は、修正後の第一打設エリアAに対して、平坦度計測処理を再度実行する(再計測を行う)。上記再計測の結果は、上述した計測結果と同様に記憶及び表示される。
【0075】
また、計測者は、他の打設エリアへのコンクリート4の打設が完了し、打設面2aの仕上げが施されるごとに、当該他の打設エリアについても、第一打設エリアAと同様に平坦度計測処理を実行する。
【0076】
上述の如き平坦度計測処理を実行することで、スラブ2の打設面2aの平坦度を効率よく計測することができる。すなわち、平坦度計測処理により計測を行う打設エリア(例えば第一打設エリアA)の平坦度を計測する際には、制御装置40(制御部42)は、当該打設エリアの平坦度を計測するのに必要な分のデータ(メッシュの中心座標の標高)を取得して、平坦度を計測する。このため、制御部42は、計測対象の打設エリア以外の打設エリアについては、データの取得や平坦度の計測を行わない。このように、計測を行う打設エリアについて平坦度の計測を行うことで、例えばコンクリート4の打設がされていない領域や、すでに平坦度の計測を行った領域を除外して、必要な領域だけ平坦度の計測を行うことができ、計測にかかる時間を短縮することができる。これによれば、コンクリート打設工程において、リアルタイムでの平坦度の計測に適した打設面計測システム10(打設面計測方法)を実現することができる。
【0077】
また、本実施形態では、制御装置40を用いた遠隔操作により、平坦度計測処理を実行することができる。これにより、計測者は、コンクリート4が打設される現場にいなくとも、打設面2aの平坦度の管理を行うことができる。また、打設面2aの平坦度の計測を広範囲に亘って行うには、測量機器20を比較的高い位置に設置することが望ましい。このような場合であっても、遠隔操作を行うことで、高い位置に設置された測量機器20の操作を容易に行うことができる。
【0078】
また、本実施形態では、制御装置40を用いた遠隔操作により、測量機器20を用いた作業の開始時や作業の終了時において、測量機器20の起動及びシャットダウン(オンオフ)を実行することができる。また、例えば、測量機器20の作動中にフリーズ等の不具合が起きた場合でも、遠隔操作により測量機器20の再起動を実行することができる。なお、上述した例では、無線通信により測量機器20と制御装置40との通信を行う例を示したが、無線通信に代えて、有線通信(例えばシリアルケーブル等)により測量機器20と制御装置40との通信を行うようにしてもよい。
【0079】
また、計測者は、各打設エリアに打設したコンクリート4が硬化した後に、平坦度計測処理を実行することで、硬化後のスラブ2の打設面2aの平坦度を計測することができる。硬化後の打設面2aに対して平坦度計測処理を実行する際には、各打設エリアごとに平坦度計測処理を実行してもよく、全ての打設エリアに対して一括で平坦度計測処理を実行してもよい。
【0080】
なお、上述した本実施形態に係る平坦度計測処理の各処理の内容は一例であり、建物の床構造物に係る平坦度計測処理としては上述した内容に限られず、種々の変更が可能である。例えば、上記平坦度算出処理S13では、基準高さを、計測対象のメッシュの両隣のメッシュの中心座標の標高の平均としたが、基準高さはこのような値に限定されない。基準高さとしては、平坦度の計測の基準となる種々の値を採用可能である。
【0081】
以上のように、本発明の一実施形態に係る打設面計測システム10は、
レーザ光を照射する照射部21と、
前記照射部21が照射したレーザ光を用いて、施工中の建物の床構造物(スラブ2)のコンクリート4の打設面2aの平坦度を計測可能な計測部(制御部27及び制御部42)と、
を具備し、
前記計測部(制御部27及び制御部42)は、前記打設面2aの全体のうち、任意の領域(打設エリア設定処理S10において設定された第一打設エリアA)の平坦度を計測可能であるものである(平坦度算出処理S13)。
【0082】
このような構成により、スラブ2の打設面2aの平坦度を効率よく計測することができる。すなわち、打設面2aの全体のうち、任意の領域(第一打設エリアA)の平坦度を計測することで、計測対象の領域以外の領域については、データの取得や平坦度の計測を行うことなく、所望の平坦度の計測を行うことができる。このように、例えばコンクリート4の打設がされていない領域や、すでに平坦度の計測を行った領域を除外して、必要な領域だけ平坦度の計測を行うことができ、計測にかかる時間を短縮することができる。
【0083】
また、打設面計測システム10は、
前記打設面2aを複数の領域に分割した分割領域(第一打設エリアA、第二打設エリアB、第三打設エリアC及び第四打設エリアD)の設定が可能な分割領域設定部(制御部42)を具備し(打設エリア設定処理S10)、
前記計測部(制御部27及び制御部42)は、
前記任意の領域(第一打設エリアA)として、前記分割領域(各打設エリア)として分割された領域の平坦度を計測可能であるものである。
【0084】
このような構成により、分割された領域(分割領域)のうち、例えばコンクリート4が打設され、計測可能となった領域ごとに平坦度の計測を行うことができる。
【0085】
また、打設面計測システム10は、
前記分割領域(各打設エリア)の情報を、前記床構造物(スラブ2)の施工計画の情報と紐づけて記憶する記憶部(記憶部41)を具備し、
前記計測部(制御部27及び制御部42)は、
前記床構造物(スラブ2)の施工計画の情報に基づいて、前記任意の領域(第一打設エリアA)として、前記分割領域(各打設エリア)として分割された領域の平坦度を計測可能であるものである。
【0086】
このような構成により、施工計画の情報に基づいて、分割領域ごとに平坦度の計測を行うことができる。
【0087】
また、計測部(制御部42)が、施工計画の情報に基づいて、自動で任意の領域(第一打設エリアA)を設定可能な構成を使用した場合、分割領域ごとの平坦度の計測を容易に行うことができる。
【0088】
また、打設面計測システム10は、
前記分割領域(各打設エリア)ごとに、前記打設面2aの平坦度の計測結果を表示可能な表示部(表示部45)を具備するものである(計測結果表示処理S14)。
【0089】
このような構成により、分割領域(各打設エリア)ごとに、平坦度の計測結果を視覚的に認識することができる。
【0090】
また、打設面計測システム10は、
前記照射部21及び前記計測部(制御部27)を、遠隔操作可能な操作部(入力部44)を具備するものである。
【0091】
このような構成により、コンクリート4が打設される現場にいなくとも、打設面2aの平坦度の管理を行うことができる。
【0092】
また、本発明の一実施形態に係る打設面計測方法は、
照射部21によりレーザ光を照射するレーザ光照射工程(点群データ取得処理S11)と、
前記レーザ光照射工程において照射したレーザ光を用いて、施工中の建物の床構造物のコンクリートの打設面の全体のうち、任意の領域(第一打設エリアA)の平坦度を計測可能な平坦度計測工程(標高取得処理S12、平坦度算出処理S13)と、
を具備するものである。
【0093】
このような構成により、スラブ2の打設面2aの平坦度を効率よく計測することができる。
【0094】
なお、本実施形態に係るスラブ2は、本発明に係る建物の床構造物の一形態である。
また、本実施形態に係る打設エリアは、本発明に係る分割領域の一形態である。
また、本実施形態に係る制御部27、制御部42は、本発明に係る計測部の一形態である。
また、本実施形態に係る制御部42は、本発明に係る分割領域設定部の一形態である。
また、本実施形態に係る入力部44は、本発明に係る操作部の一形態である。
【0095】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0096】
例えば、本実施形態では、測量機器20を架台30を介して鉄骨柱5に取り付けた例を示したが、このような態様に限られない。例えば、測量機器20を適宜の三脚の上に設置するようにしてもよい。
【0097】
また、本実施形態では、入力部44(制御装置40)による遠隔操作で測量機器20の操作を行った例を示したが、このような態様に限られない。例えば、測量機器20の入力部24を用いて測量機器20の操作を行うようにしてもよい。
【0098】
また、本実施形態では、主として制御装置40の制御部42で平坦度計測処理を実行した例を示したが、このような態様に限られない。例えば、測量機器20の制御部27で平坦度計測処理を実行するようにしてもよく、制御部27及び制御部42の両方を用いて平坦度計測処理を実行するようにしてもよい。
【0099】
また、本実施形態では、平坦度計測処理を、コンクリート4の表面(打設面2a)に仕上げが施された後に実行した例を示したが、このような態様に限られない。例えば、コンクリート4の表面に仕上げを施している途中に平坦度計測処理を実行し、表面仕上げの施工中においてリアルタイムで平坦度を計測するようにしてもよい。
【0100】
また、本実施形態では、各打設エリアの範囲を、建物1の施工計画に基づいて設定した例を示したが、このような態様に限られない。例えば、各打設エリアの範囲を、建物1の施工計画に関連させずに設定してもよい。この場合は、例えば、各打設エリアを、コンクリート4の打設対象を、一定の形状のマス目状に分割した領域としてもよい。
【0101】
また打設エリア(任意の領域)は、予め設定されたものに限定されない。例えば、各打設エリアを、計測者が、計測時に指定した任意の範囲としてもよい。この場合は、例えば、表示部45に表示された図面データのうちの所定範囲を、計測者が、入力部44を用いて線で囲う等の操作を行い、上記任意の範囲を指定するようにしてもよい。
【0102】
また、本実施形態では、制御装置40としてパーソナルコンピュータを用いた例を示したが、このような態様に限られない。例えば、適宜のスマートフォンやタブレット端末等の端末を制御装置40として用いてもよい。
【符号の説明】
【0103】
10 打設面計測システム
20 測量機器
21 照射部
27 制御部
40 制御装置
42 制御部
図1
図2
図3
図4
図5