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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168707
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
H02M3/155 C
H02M3/155 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079972
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】慶本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】左右田 学
(72)【発明者】
【氏名】森川 竜一
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA20
5H730AS05
5H730BB13
5H730BB57
5H730BB82
5H730BB88
5H730CC01
5H730DD03
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD31
5H730FG05
5H730XX03
5H730XX12
5H730XX15
5H730XX23
5H730XX32
5H730XX35
5H730XX46
(57)【要約】
【課題】過電圧の印加からより確実に負荷回路を保護できる電力変換装置を提供する。
【解決手段】実施形態の電力変換装置は、第1入力端子と、第2入力端子と、第1出力端子と、第2出力端子と、入力される直流電圧を降圧して、他の直流電圧に変換して負荷回路に出力する電力変換のユニットと、前記負荷回路に供給する電圧および電流を制御するように前記ユニットにゲート信号を送信する制御装置と、前記ユニットの出力電流にもとづいて、前記ユニットの異常の兆候を判定してアクティブな判定信号を出力するユニット素子故障判定手段と、前記ユニット素子故障判定回路が出力した前記判定信号にもとづいて前記負荷回路に過電圧が印加されることを防止する過電圧保護手段と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1入力端子と、
前記第1入力端子に印加される電位よりも低い電位が印加される第2入力端子と、
第1出力端子と、
前記第1出力端子よりも低い電位とされる第2出力端子と、
前記第1入力端子と前記第2入力端子との間に印加される直流電圧を降圧して、他の直流電圧に変換して前記第1出力端子と前記第2出力端子との間に接続された負荷回路に出力する電力変換のためのユニットと、
前記負荷回路に印加する電圧および前記負荷回路に流れる電流を制御するように前記ユニットにゲート信号を送信する制御装置と、
前記ユニットの出力電流にもとづいて、前記ユニットの異常の兆候を判定してアクティブな判定信号を出力するユニット素子故障判定手段と、
前記ユニット素子故障判定回路が出力した前記判定信号にもとづいて前記負荷回路に過電圧が印加されることを防止する過電圧保護手段と、
を備え、
前記ユニットは、
前記第1入力端子と前記第2入力端子との間に接続された第1スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子の低電位側に直列に接続された第2スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子の短絡故障時に開放されるように設けられた第1ヒューズと、
前記第2スイッチング素子の短絡故障時に開放されるように設けられた第2ヒューズと、
前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との接続ノードと、前記第1出力端子と、の間に接続されたチョークコイルと、
を含み、
前記ユニット素子故障判定回路は、前記ユニットの出力電流にもとづいて、前記第1スイッチング素子の短絡故障の兆候を判定して前記判定信号を出力し、
前記過電圧保護手段は、前記第1スイッチング素子を含む電流経路を形成して前記第1ヒューズを溶断させる電力変換装置。
【請求項2】
前記過電圧保護手段は、前記判定信号にもとづいて前記第1出力端子と前記第2出力端子との間を短絡して前記電流経路を形成する請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記過電圧保護手段は、前記判定信号にもとづいて前記第2スイッチング素子を常時オンとすることによって前記電流経路を形成する請求項1記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記ユニットは、複数台設けられて並列に接続され、
前記ユニット素子故障判定手段は、
前記複数台のユニットの出力電流にもとづいて、前記複数台のユニットから異常の兆候のあるユニットである故障ユニットを判定して前記判定信号を出力し、
前記過電圧保護手段は、前記判定信号にもとづいて、前記複数台のユニットのうち2台以上のユニットの前記第1スイッチング素子を常時オフとし、前記第2スイッチング素子を常時オンとすることによって前記電流経路を形成する請求項1記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記ユニット素子故障判定手段は、
前記判定信号の出力後も前記複数台のユニットの出力電流の値を監視し、
前記複数台のユニットの出力電流にもとづいて、前記第1ヒューズの溶断を判定して溶断完了信号を前記制御装置に出力し、
前記制御装置は、前記溶断完了信号にもとづいて、前記複数台のユニットのうち正常なユニットの運転を再開させる請求項4記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
過電圧の印加に敏感な負荷回路に電力を供給する電力変換装置がある。そのような負荷回路を保護するために、クローバー回路のような過電圧保護回路を電力変換装置に付加することが通常行われる。
【0003】
このような過電圧保護回路では、設定値のばらつき等により、過電圧の印加に敏感な負荷回路を保護するためには、十分でない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2021-526785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、過電圧の印加からより確実に負荷回路を保護できる電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、第1入力端子と、前記第1入力端子に印加される電位よりも低い電位が印加される第2入力端子と、第1出力端子と、前記第1出力端子よりも低い電位とされる第2出力端子と、前記第1入力端子と前記第2入力端子との間に印加される直流電圧を降圧して、他の直流電圧に変換して前記第1出力端子と前記第2出力端子との間に接続された負荷回路に出力する電力変換のためのユニットと、前記負荷回路に印加する電圧および前記負荷回路に流れる電流を制御するように前記ユニットにゲート信号を送信する制御装置と、前記ユニットの出力電流にもとづいて、前記ユニットの異常の兆候を判定してアクティブな判定信号を出力するユニット素子故障判定手段と、前記ユニット素子故障判定回路が出力した前記判定信号にもとづいて前記負荷回路に過電圧が印加されることを防止する過電圧保護手段と、を備える。前記ユニットは、前記第1入力端子と前記第2入力端子との間に接続された第1スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子の低電位側に直列に接続された第2スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子の短絡故障時に開放されるように設けられた第1ヒューズと、前記第2スイッチング素子の短絡故障時に開放されるように設けられた第2ヒューズと、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との接続ノードと、前記第1出力端子と、の間に接続されたチョークコイルと、を含む。前記ユニット素子故障判定回路は、前記ユニットの出力電流にもとづいて、前記第1スイッチング素子の短絡故障の兆候を判定して前記判定信号を出力する。前記過電圧保護手段は、前記第1スイッチング素子を含む電流経路を形成して前記第1ヒューズを溶断させる。
【発明の効果】
【0007】
実施形態によれば、過電圧の印加からより確実に負荷回路を保護できる電力変換装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る電力変換装置を例示する模式的なブロック図である。
図2】第1の実施形態に係る電力変換装置の一部であるユニットの構成を例示する模式的なブロック図である。
図3】第1の実施形態に係る電力変換層装置の動作を説明するための模式的なブロック図である。
図4】第2の実施形態に係る電力変換装置を例示する模式的なブロック図である。
図5】第2の実施形態に係る電力変換装置の動作を説明するための模式的なブロック図である。
図6】第3の実施形態に係る電力変換装置を例示する模式的なブロック図である。
図7】第3の実施形態に係る電力変換装置の動作を説明するための模式的なブロック図である。
図8】第3の実施形態に係る電力変換装置の動作を説明するためのフローチャートの例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電力変換装置を例示する模式的なブロック図である。
図1に示すように、本実施形態に係る電力変換装置10は、ユニット20-1~20-nと、制御装置40と、OVPゲート回路42と、過電圧保護回路50と、を備える。
【0011】
ユニット20-1~20-nは、直流電圧を入力して、他の直流電圧や直流電流に変換して出力する電力変換器である。ユニット20-1~20-nは、入力端子12a、12bと、出力端子14a、14bとの間で並列に接続されている。この例では、n台のユニット20-1~20-nが並列に接続されている。入力端子12a、12bには、直流電圧が印加される。入力端子12a、12bを介して、ユニット20-1~20-nには、整流平滑回路等によって変換された直流電圧を供給してもよいし、太陽光発電装置や燃料電池等によって発電された直流電圧を供給してもよい。
【0012】
並列に接続されたユニット20-1~20-nは、出力端子14a、14bを介して、負荷回路1に接続される。負荷回路1は、たとえば電解槽を含んでおり、出力端子14aが電解槽の正極に接続され、出力端子14bが電解槽の負極に接続される。
【0013】
本実施形態では、ユニット20-1~20-nは、同一の入出力電圧定格および出力電力定格を有している。ユニット20-1~20-nは、負荷回路1に供給するのに必要な直流電力を供給できる台数が並列に接続される。本実施形態では、ユニットは、複数台に限らず、1台であってもよい。
【0014】
ユニット20-1~20-nの構成について説明する。
図2は、第1の実施形態に係る電力変換装置の一部であるユニットの構成を例示する模式的なブロック図である。
本実施形態および後述する他の実施形態では、ユニット20-1~20-nは、同一の入出力電圧定格および出力電力定格を有しており、複数のユニットを区別しない場合には、ユニット20のように表記するものとする。図2では、ユニットを符号“20”と表記し、かっこ書きで、区別されたユニットの符号“20-1~20-n”を表記している。
【0015】
図2に示すように、ユニット20は、入力端子21a、21bおよび出力端子22a、22bを有している。出力端子22bは、入力端子21bに同電位で接続されている。ユニット20は、コンデンサ23と、上アームスイッチング素子24Uと、下アームスイッチング素子24Lと、上アームヒューズ25Uと、下アームヒューズ25Lと、チョークコイル26と、を含む。
【0016】
ユニット20では、コンデンサ23は、入力端子21a、21bの間に接続されている。入力端子21aには、入力端子21bの電位よりも高い電位が印加される。コンデンサ23は、たとえばフィルムコンデンサであり、入力端子21a、21bから入力されるリプル電流を流して、入力端子21a、21b間に生じるリプル電圧を低減する。
【0017】
上アームスイッチング素子(第1スイッチング素子)24Uおよび下アームスイッチング素子(第2スイッチング素子)24Lは、入力端子21a、21bの間で直列に接続されている。上アームスイッチング素子24Uおよび下アームスイッチング素子24Lは、この例のように、複数個をそれぞれ並列に接続してもよい。上アームスイッチング素子24Uおよび下アームスイッチング素子24Lのそれぞれの並列数は、ユニット20が出力する電力容量に応じて決定される。
【0018】
上アームスイッチング素子24Uおよび下アームスイッチング素子24Lは、自己消弧型の半導体スイッチング素子であり、たとえば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。上アームスイッチング素子24Uおよび下アームスイッチング素子24Lでは、ダイオードがIGBTに逆並列に接続される。
【0019】
上アームヒューズ(第1ヒューズ)25Uは、この例では、入力端子21aと上アームスイッチング素子24Uとの間に接続されている。下アームヒューズ(第2ヒューズ)25Lは、下アームスイッチング素子24Lと入力端子21bとの間に接続されている。上アームヒューズ25Uは、上アームスイッチング素子24Uに短絡故障が生じたときに、上アームを開放するように設けられている。下アームヒューズ25Lは、下アームスイッチング素子24Lに短絡故障が生じたときに、下アームを開放するように設けられている。
【0020】
チョークコイル26は、上アームと下アームとの接続ノードと、出力端子22aと、の間に接続されている。チョークコイル26は、上アームスイッチング素子24Uがオンの期間に電流を流してエネルギーを蓄積し、下アームスイッチング素子24Lがオンの期間に蓄積されたエネルギーを出力端子22a側に放出するように動作する。
【0021】
このように、ユニット20は、降圧型の電力変換回路により構成されている。ユニット20は、入力端子21a、21b間に入力された直流電圧を、上アームスイッチング素子24Uのオンデューティおよび出力電流に応じた直流電圧に変換して出力する。
【0022】
図1に戻って説明を続ける。
電流検出器30-1~30-nは、ユニット20-1~20-nの出力にそれぞれ接続されている。電流検出器30-1~30-nは、ユニット20-1~20-nのそれぞれの出力電流IO1~IOnを検出する。電流検出器30-1~30-nの設置場所は、各ユニット20-1~20-nの出力電流IO1~IOnを所望の精度で検出することができれば、ユニット20-1~20-nの外部に設ける場合に限らない。たとえば、電流検出器30-1~30-nは、ユニット20-1~20-nの内部に設けてもよい。
【0023】
制御装置40は、ユニット20-1~20-nに接続されている。制御装置40は、負荷回路1に印加される電圧や負荷回路1に流れる電流および制御装置40にあらかじめ設定された条件等に応じてゲート信号vG1~vGnを生成して、ユニット20-1~20-nを制御する。
【0024】
OVPゲート回路(ユニット素子故障判定手段)42は、制御装置40、電流検出器30-1~30-nおよび過電圧保護回路50に接続されている。OVPゲート回路42は、負荷回路1に印加される電圧がOVPしきい値以上となった場合、または、ユニット20-1~20-nが出力する電流が所定の条件を満たした場合に、トリガ信号を過電圧保護回路50に出力する。
【0025】
OVPしきい値電圧は、ユニット20-1~20-nが出力する定格出力電圧の最大値よりも高い値にあらかじめ設定される。OVPしきい値電圧は、たとえば、定格出力電圧の最大値よりも5%~15%高い電圧に設定される。
【0026】
ユニット20-1~20-nの出力電流に関する所定の条件は、ユニット20-1~20-nの故障または故障の兆候を示す条件であり、複数種類の条件が設定される。この例では、3種類の条件が設定される。なお、ユニット20-1~20-nの故障または故障の兆候は、上アームスイッチング素子24Uの短絡故障または短絡故障の兆候である。
【0027】
出力電流に関する第1の条件は、過大電流条件である。ユニット20-1~20-nのそれぞれで設定される電流指令値のα(α>1)倍以上の値が異常電流しきい値として設定される。ユニット20-1~20-nからの出力電流IO1~IOnのいずれかが、異常電流しきい値以上となった場合に、OVPゲート回路42は、トリガ信号を出力する。係数αは、出力電流の設定精度にもとづいて設定される。たとえば、係数αは、異常電流しきい値が出力電流の設定精度の上限値よりも+10%となるように設定される。負荷回路1の種類や状態によって電流指令値が設定されない場合には、異常電流しきい値は、ユニット20-1~20-nの定格出力電流の最大値に対して設定される。
【0028】
出力電流に関する第2の条件は、出力電流IO1~IOnの波形異常に関する条件である。降圧型の変換器回路では、出力電流は、下アームスイッチング素子24Lがオンする期間で、チョークコイル26を介して出力されて、時間とともに低下傾向を示す。この期間において、出力電流の電流値が時間とともに増大する場合には、そのユニットの上アームスイッチング素子24Uに異常が生じているものと考えられる。
【0029】
OVPゲート回路42は、制御装置40から各ユニット20-1~20-nに供給するゲート信号vG1~vGnを監視している。OVPゲート回路42は、ユニット20-1~20-nのいずれかのゲート信号vG1~vGnのうち、下アームスイッチング素子24Lのためのゲート信号がアクティブとなっている期間にわたって、出力電流の電流値が増大することを検出した場合に、トリガ信号を出力する。第2の条件では、OVPゲート回路42は、スイッチング周期の1周期分の出力電流の変化に限らず、数周期分の出力電流の変化を取得して、継続して出力電流が増大することを判定条件としてもよい。このようにすることで、ノイズ等による誤検出を防止することができる。
【0030】
出力電流に関する第3の条件は、n-1個の出力電流のそれぞれの値のばらつき範囲から、1個の出力電流の値がはずれていることを検出する条件である。たとえば、OVPゲート回路42は、n個の電流値のうち、i番目の電流値IOiを記憶し、残りのn-1個の電流値の平均値IO(k≠i)を計算してその平均値IO(k≠i)を記憶する。OVPゲート回路42は、これらの比IOi/IO(k≠i)を計算して、計算結果があらかじめ設定されたしきい値β(>1)以上の場合に、トリガ信号を出力する。OVPゲート回路42は、iを1からnまで順次変化させて、n個の電流値中にしきい値βを超える出力電流を出力するユニットを特定する。
【0031】
n-1個の出力電流のばらつき範囲の設定には、平均値を用いるほか、他の統計量を用いてももちろんよい。他の統計量は、たとえばn-1個の出力電流の中央値である。ユニット20-1~20-nが同時に複数台故障することはまれなので、nが十分に大きい場合には、n個の出力電流の値を用いてばらつき範囲を計算するようにしてもよい。
【0032】
出力電流に関する第1~第3の条件は、少なくともいずれか1つがトリガ信号を出力するための判定条件とされる。本実施形態では、OVPゲート回路42は、ユニット20-1~20-nが出力する電圧がOVPしきい値以上の場合、第1の条件を満たす場合、第2の条件を満たす場合または第3の条件を満たす場合のいずれかの場合に、トリガ信号を過電圧保護回路50に出力する。
【0033】
過電圧保護回路(過電圧保護手段)50は、出力端子14a、14bの間に接続されている。過電圧保護回路50は、出力端子14a、14b間にサイリスタ52が接続されている。過電圧保護回路50は、負荷回路1の電源端に近い位置で電圧を検出して、電圧値をOVPゲート回路42に出力する。過電圧保護回路50では、サイリスタ52のゲート端子がOVPゲート回路42の出力に接続されている。
【0034】
OVPゲート回路42がトリガ信号を過電圧保護回路50に出力すると、サイリスタ52がターンオンする。サイリスタ52がターンオンすることによって、出力端子14a、14b間が短絡される。過電圧保護回路50は、OVPゲート回路42が出力したトリガ信号により負荷回路1の電源端を短絡して、負荷回路1の電源端に過電圧が印加されることを防止する。
【0035】
過電圧保護回路50は、サイリスタ52に代えて、IGBT等の自己消弧型のスイッチング素子としてもよい。
【0036】
図3は、第1の実施形態に係る電力変換装置の動作を説明するための模式的なブロック図である。
本実施形態に係る電力変換装置10の動作について説明する。
図3に示すように、図1に示したOVPゲート回路42が出力電圧VOの過電圧、出力電流に関する第1~第3の条件のいずれかを満たすと、OVPゲート回路42は、トリガ信号を過電圧保護回路50に出力する。過電圧保護回路50では、サイリスタ52がターンオンする。
【0037】
サイリスタ52のターンオンにより、電流は、入力端子21aを介してユニット20に流入し、上アームヒューズ25U、短絡した上アームスイッチング素子24U、チョークコイル26を介して、出力端子22aから流出する。ユニット20から流出した電流は、過電圧保護回路50に流れる。この電流が上アームヒューズ25Uの溶断条件に達することによって、上アームヒューズ25Uが溶断し、上述の電流経路が遮断される。
【0038】
本実施形態に係る電力変換装置10の効果について説明する。
本実施形態に係る電力変換装置10では、OVPゲート回路42を備えている。OVPゲート回路42は、負荷回路1の電源端での電圧値だけでなく、ユニット20-1~20-nごとに出力電流に関する条件を満たすか否かを監視する。
【0039】
電力変換装置10の出力電圧が過電圧となる原因は複数存在するが、その1つに、上アームスイッチング素子24Uの短絡故障がある。上アームスイッチング素子24Uの短絡故障の経過は、スイッチング素子の短絡耐量のばらつきや、ユニットの入出力の条件、電力変換装置が設置された環境条件等によって、異なることがある。たとえば、上アームスイッチング素子24Uが一気に短絡して、出力電圧が入力電圧の大きさまで上昇する場合があり、上アームスイッチング素子24Uに流れた過大な電流や印加された過大なサージ電圧によって遮断能力が劣化して次第に短絡に至る場合等さまざまである。
【0040】
負荷回路1には、たとえば、水素製造のための電解槽を含む場合がある。電解槽を構成する多数のセルのそれぞれには、正極、負極および正極と負極との間に電解膜が設けられている。電解膜は、たとえば固体高分子材料等により形成されている。固体高分子材料で形成された電解膜は、過大な電圧を印加されると、復帰不能な損傷を被る。直列セルの一部のセルが過大電圧で損傷を受けると、電解槽全体の機能に影響することがあり、操業の中断や停止に至るおそれがある。一方、セルに印加する電圧は、電気分解の効率に影響するため、十分高い電圧とする必要がある。
【0041】
このような負荷回路1に電力を供給する電力変換装置10は、負荷回路1に十分高い直流電圧を供給しつつ、過電圧の印加に対して十分な保護が求められる。
【0042】
負荷回路1の電源端の電圧を監視して過電圧保護回路50を構成する場合には、検出電圧の精度が問題となる場合がある。電力変換装置10が出力できる定格電圧の上限ぎりぎりに過電圧検出値を設定すると、検出値の設定精度により、設定値が低くばらついた場合には、通常運転時に十分高い出力電圧が得られなくなるおそれがある。過電圧検出値を電力変換装置10が出力できる定格電圧の上限から余裕をもって十分高い値に設定すると、電解膜の過電圧からの保護が不十分となるおそれがある。
【0043】
本実施形態に係る電力変換装置10では、上アームスイッチング素子24Uの短絡故障に至る過程において、上アームスイッチング素子24Uに流れる電流に異常が生ずることを利用する。上アームスイッチング素子24Uが短絡故障となる兆候として、電流指令値よりも大きな電流が流れることがあり、このような電流を監視することで、上アームスイッチング素子24Uの短絡故障の兆候を検出することが可能になる。本実施形態に係る電力変換装置10では、出力電流IO1~IOnを監視することによって、上アームスイッチング素子24Uの短絡故障の兆候を検出し、負荷回路1に過電圧が印加される前に、過電圧保護回路50を機能させる。
【0044】
第1の条件は、各ユニットの出力電流を電流指令値のα倍の値を異常電流しきい値に設定するものである。これにより、簡便に、各ユニットの上アームスイッチング素子24Uの短絡故障の兆候を監視することができる。
【0045】
第2の条件は、上アームスイッチング素子24Uのオフ期間にわたって出力電流値の増大の有無を監視するものである。各ユニットの出力電流の検出精度以内の電流変動であっても、同一期間内の変化の割り合いを測定することによって、出力電流値の異常の有無をより高精度に検出することが可能である。
【0046】
第3の条件は、n台のユニットを並列運転する場合に適用され、n個またはn-1個の出力電流のデータを統計的に処理することによって、いずれかのユニットの上アームスイッチング素子24Uの短絡故障の兆候を検出する。
【0047】
この条件を実行するために、上述の具体例のように、出力電流のデータの統計値として、n個またはn-1個の出力電流の平均値を用いてもよいし、中央値を用いてもよい。並列台数が十分に多い場合には、n台分の出力電流の標準偏差を逐次求めて、求めた標準偏差にもとづいて、しきい値を設定するようにしてもよい。この条件では、n台のユニットの出力電流の値を統計的に処理することによって、異常値を精度よく検出することができ、上アームスイッチング素子24Uの短絡故障の兆候を検出することが可能になる。
【0048】
本実施形態に係る電力変換装置10では、OVPゲート回路42において、出力電流値の異常検出を第1~第3の条件を少なくとも1つ、好ましくは複数適用することによって、上アームスイッチング素子24Uの短絡事故による負荷回路への過電圧印加をより確実に防止することができる。
【0049】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係る電力変換装置を例示する模式的なブロック図である。
本実施形態に係る電力変換装置210では、第1の実施形態の場合の過電圧保護回路50に代えて、ユニット20の下アームスイッチング素子24Lを用いる。なお、過電圧保護の多重化、冗長化のために、負荷回路1の電源端の近傍の電圧を検出して、検出電圧にもとづいて動作する過電圧保護回路50を設けるようにしてももちろんよい。
本実施形態に係る電力変換装置210では、第1の実施形態の場合の制御装置40に代えて制御装置240を備える点で第1の実施形態の場合と相違する。本実施形態に係る電力変換装置210は、第1の実施形態の場合のOVPゲート回路42に代えてユニット素子故障判定回路242を備える点で第1の実施形態の場合と相違する。本実施形態に係る電力変換装置210は、他の点では、第1の実施形態の場合と同じであり、同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0050】
図4に示すように、本実施形態に係る電力変換装置210は、ユニット20-1~20-nと、制御装置240と、ユニット素子故障判定回路242と、を備える。ユニット20-1~20-nは、負荷回路1に供給するのに必要な直流電力を供給できる台数が並列に接続される。本実施形態では、ユニットは、複数台に限らず、1台であってもよい。制御装置240は、負荷回路1に印加される電圧や負荷回路1に流れる電流および制御装置240にあらかじめ設定された条件等に応じてゲート信号vG1~vGnを生成して、ユニット20-1~20-nを制御する。
【0051】
ユニット素子故障判定回路(ユニット素子故障判定手段)242は、制御装置240および電流検出器30-1~30-nに接続されている。ユニット素子故障判定回路242は、電流検出器30-1~30-nから出力された出力電流IO1~IOnのデータを入力する。ユニット素子故障判定回路242は、制御装置240から各ユニット20-1~20-nのためのゲート信号vG1~vGnを入力する。
【0052】
ユニット素子故障判定回路242は、第1の実施形態の場合と同様に、出力電流IO1~IOnにもとづいて、ユニット20-1~20-nごとに上アームスイッチング素子24Uの短絡故障の兆候を検出する。上アームスイッチング素子24Uの短絡故障の兆候を検出する場合には、ユニット素子故障判定回路242は、第1~第3の条件の少なくとも1つを用いる。第1~第3の条件は、第1の実施形態の場合と同じであり、詳細な説明を省略する。
【0053】
ユニット素子故障判定回路242は、上アームスイッチング素子24Uの短絡故障の兆候を検出した場合には、その上アームスイッチング素子24Uを有するユニットに対するヒューズ強制断指令を制御装置240に出力する。
【0054】
制御装置240は、ヒューズ強制断指令にもとづいて、短絡故障の兆候を検出したユニットに対して、下アームスイッチング素子24Lを常時オンとするゲート信号を送信する。制御装置240は、短絡故障の兆候を検出したユニット以外のユニットに対して、ゲートブロック(GB)とする指令を送信する。これにより、短絡故障の兆候を検出したユニットでは、上アームヒューズ25Uを溶断させて故障処理を行い、他のユニットは停止する。
【0055】
図5は、第2の実施形態に係る電力変換装置の動作を説明するための模式的なブロック図である。
本実施形態に係る電力変換装置210の動作について説明する。
図5に示すように、ヒューズ強制断指令を受信した制御装置240からゲート信号を受信したユニット20は、下アームスイッチング素子24Lをターンオンさせ、常時オンとする。電流は、入力端子21aを介してユニット20に流入し、上アームヒューズ25U、短絡故障した上アームスイッチング素子24U、下アームスイッチング素子24Lおよび下アームヒューズ25Lの電流経路で流れて、入力端子21bから流出する。電力変換装置10の出力端子14a、14bは、チョークコイル26、下アームスイッチング素子24Lおよび下アームヒューズ25Lによって、短絡されている。
【0056】
上アームヒューズ25Uに流れる電流が上アームヒューズ25Uの溶断条件に達することによって、上アームヒューズ25Uが溶断して、ユニット20は負荷回路1から切り離される。したがって、負荷回路1には過電圧が印加されることがなく、負荷回路1は保護される。
【0057】
本実施形態に係る電力変換装置210の効果について説明する。
本実施形態に係る電力変換装置210は、ユニット素子故障判定回路242を備えている。ユニット素子故障判定回路242は、ユニット20-1~20-nごとに出力電流IO1~IOnを監視している。ユニット素子故障判定回路242では、第1の実施形態の場合と同様に、出力電流に関する第1~第3の条件のうち、少なくとも1つの条件を用いて、ユニット20-1~20-nごとの上アームスイッチング素子24Uの短絡故障の兆候を検出する。したがって、過電圧保護のための電圧検出値のばらつきを考慮することなく、確実に負荷回路1の過電圧保護を行うことができる。
【0058】
本実施形態に係る電力変換装置210では、ユニットを構成する下アームスイッチング素子24Lを負荷回路1の電源端の短絡に利用するので、保護回路のための部品数を削減することができる。
【0059】
(第3の実施形態)
図6は、第3の実施形態に係る電力変換装置を例示する模式的なブロック図である。
本実施形態に係る電力変換装置310では、上アームスイッチング素子24Uの短絡故障の兆候が検出されたユニットの下アームスイッチング素子24Lを常時オンとするとともに、他のユニットの下アームスイッチング素子24Lを常時オンとする。これにより、上アームスイッチング素子24Uの短絡故障の兆候が検出されたユニットの上アームヒューズ25Uを確実に溶断させることができる。本実施形態に係る電力変換装置310は、第2の実施形態の場合の制御装置240に代えて制御装置340を備える点で第2の実施形態の場合と相違する。本実施形態に係る電力変換装置310は、第2の実施形態の場合のユニット素子故障判定回路242に代えて、ユニット素子故障判定回路342を備える点で、第2の実施形態の場合と相違する。本実施形態に係る電力変換装置310は、他の点では、上述の他の実施形態の場合と同じであり、同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0060】
図6に示すように、本実施形態に係る電力変換装置310は、ユニット20-1~20-nと、制御装置340と、ユニット素子故障判定回路342と、を備える。制御装置340は、ユニット20-1~20-nに接続されている。制御装置340は、負荷回路1の状態およびユニット20-1~20-nの状態に応じてゲート信号vG1~vGnを生成して、ユニット20-1~20-nを制御する。本実施形態では、ユニット20-1~20-nは、複数台設けられる。
【0061】
ユニット素子故障判定回路(ユニット素子故障判定手段)342は、ユニット20-1~20-nごとに出力電流IO1~IOnを監視し、上アームスイッチング素子24Uの短絡故障の兆候を検出して、ヒューズ強制断指令を制御装置340に送信する。
【0062】
制御装置340は、すべてのユニットに対して、上アームスイッチング素子24Uを常時オフとし、下アームスイッチング素子24Lを常時オンとするゲート信号を送信する。これにより、電力変換装置10は、負荷回路1の電源端から切り離される。また、上アームスイッチング素子24Uの短絡故障の兆候を検出されたユニットの上アームヒューズ25Uに大きな電流が流れて、上アームヒューズ25Uの溶断条件に達することによって、そのユニットは、電力変換装置310から切り離される。
【0063】
なお、上述では、故障のユニット以外の他のすべてのユニットの下アームスイッチング素子24Lを常時オンとするとしたが、これに限るものではなく、全数のユニットのうちの一部の複数台のユニットであってもよい。下アームスイッチング素子24Lを常時オンとする複数のユニットに、故障の兆候を有するユニットを含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0064】
また、故障の兆候を検出した場合に、ユニット20-1~20-nごとにマイナーな電流制御をしているときには、制御装置340は、ユニット20-1~20-nに対して、電流を吸い込むように負の電流指令値を設定する。これにより、下アームスイッチング素子24Lのオン期間を長く設定するようにしてもよい。
【0065】
図7は、本実施形態に係る電力変換装置の動作を説明するための模式的なブロック図である。
図7に示すように、短絡故障の兆候を有するユニット20-1の上アームスイッチング素子24Uに流れる電流は、そのユニット20-1の下アームスイッチング素子24Lに流れるとともに、他のユニット20-2~20-nの下アームスイッチング素子24Lにもそれぞれ流れる。これにより、ユニット20-1の上アームヒューズ25Uに十分に大きな電流を流すことが可能になり、電流は、容易に上アームヒューズ25Uの溶断条件に達して、上アームヒューズ25Uを溶断することが可能になる。
【0066】
本実施形態では、上アームヒューズ25Uを溶断させた後に、他のユニット20-2~20-nを再起動して、負荷回路1に再度電力を供給することができる。ユニット素子故障判定回路342は、ヒューズ強制断指令を出力後も、出力電流IO1~IOnを監視する。
図8は、本実施形態に係る電力変換装置310の動作を説明するためのフローチャートの例である。
【0067】
図8に示すように、ステップS1において、ユニット素子故障判定回路242は、第1~第3の条件(図8では、条件1~3と表記)を検出したか否かを判定する。ユニット素子故障判定回路342は、第1~第3の条件のいずれかを検出した場合には、処理をステップS2に遷移させる。ユニット素子故障判定回路342は、第1~第3の条件のいずれも検出しない場合には待機する。
【0068】
ステップS2において、第1~第3の条件のいずれかを検出したユニット素子故障判定回路342は、制御装置340にヒューズ強制断指令を出力する。制御装置340は、ヒューズ強制断指令にもとづいて、上アームスイッチング素子24Uを常時オフとし、下アームスイッチング素子24Lを常時オンとするゲート信号を各ユニット20-1~20-nに送信する。
【0069】
ステップS3において、ユニット素子故障判定回路342は、各ユニット20-1~20-nの出力電流IO1~IOnの少なくともいずれかが所定のしきい値よりも小さい値となった場合には、ユニット20-1の上アームヒューズ25Uが溶断されたものと判定し、処理をステップS4に遷移させる。ユニット素子故障判定回路242は、出力電流IO1~IOnが所定のしきい値以上の場合には、電流値の監視を継続して待機する。
【0070】
ステップS4において、ユニット素子故障判定回路342は、ヒューズ断信号を制御装置340に出力する。
【0071】
ステップS5において、制御装置340は、ヒューズ断信号にもとづいて、n-1台の正常なユニット20-2~20-nにゲート信号vG2~vGnをそれぞれ送信する。ゲート信号vG2~vGnを受信した正常なユニットは、再度正常な動作を開始して、負荷回路1に対する電力の供給を再開する。
【0072】
なお、上述では、上アームヒューズ25Uの溶断状態を各ユニットの出力電流を監視することとしたが、上アームヒューズ25Uが溶断すれば、すべての出力電流が遮断されるので、少なくとも1つの出力電流を監視するようにしてももちろんよい。また、上アームヒューズ25Uの溶断有無をマイクロスイッチ等により直接監視している場合には、出力電流の監視に代えて、マイクロスイッチ等の監視をするようにしてもよい。
【0073】
本実施形態に係る電力変換装置310の効果について説明する。
本実施形態に係る電力変換装置310は、上述の他の実施形態の場合と同様の効果を奏する。すなわち、電力変換装置310は、ユニット素子故障判定回路342を備えており、ユニット素子故障判定回路342は、ユニット20-1~20-nの出力電流IO1~IOnを監視して、出力電流IO1~IOnにもとづいて、いずれかのユニットの上アームスイッチング素子24Uの短絡故障の兆候を検出することができる。そのため、過電圧検出のための電圧検出値の精度によらずに、負荷回路1の電源端の過電圧を防止することができる。
【0074】
このほか、本実施形態の電力変換装置310では、複数のユニットの下アームスイッチング素子24Lを常時オンとすることによって、故障の兆候を有するユニットの上アームヒューズ25Uに大電流を流すことを可能にする。そのため、迅速かつ確実に故障の兆候を有するユニットの上アームヒューズ25Uを溶断させることができる。
【0075】
各ユニット20-1~20-nでは、上アームスイッチング素子24Uおよび下アームスイッチング素子24Lそれぞれの短絡故障が他のユニットや構成要素におよばないように、上アームヒューズ25Uおよび下アームヒューズ25Lをそれぞれ設けている。本実施形態では、複数のユニットの下アームスイッチング素子24Lを常時オンとするので、故障の兆候を有するユニットの上アームヒューズ25Uを迅速かつ確実に溶断させて、故障のユニットを負荷回路1から切り離すことが可能になる。
【0076】
また、本実施形態に係る電力変換装置310では、ユニット素子故障判定回路342は、出力電流IO1~IOnを継続的に監視することによって、上アームヒューズ25Uの溶断を検出することができる。ユニット素子故障判定回路342は、ヒューズ断完了信号を制御装置340に出力し、制御装置340は、正常なユニットにゲート信号を送信して、正常な動作を再開させることができる。そのため、電解槽等により構成される負荷回路1を含む製造プラントの操業中断期間を短縮し、その製造プラントの生産性を実質的に向上させることが可能になる。なお、第2の実施形態において、複数台のユニットを並列に接続した場合に、ユニット素子故障判定回路342を適用することができる。その場合には、第2の実施形態の場合においても、故障の兆候を有するユニットを負荷回路1から切り離した後に、残りの正常なユニットを再起動させて、負荷回路1への電力供給を再開することができる。
【0077】
このようにして、過電圧の印加からより確実に負荷回路を保護できる電力変換装置を実現することができる。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
1…負荷回路、10…電力変換装置、20…ユニット、20-1~20-n…ユニット、24L…下アームスイッチング素子、24U…上アームスイッチング素子、25L…下アームヒューズ、25U…上アームヒューズ、30-1~30-n…電流検出器、40…制御装置、42…OVPゲート回路、50…過電圧保護回路、210…電力変換装置、240…制御装置、242…ユニット素子故障判定回路、310…電力変換装置、340…制御装置、342…ユニット素子故障判定回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8