(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168708
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】監視装置、監視方法、監視プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 11/07 20060101AFI20231121BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
G06F11/07 160
G06F11/07 140Q
G05B23/02 302Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079974
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】鵜島 衣里
(72)【発明者】
【氏名】島田 昇
【テーマコード(参考)】
3C223
5B042
【Fターム(参考)】
3C223AA11
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB04
3C223EB05
3C223FF03
3C223FF04
3C223FF24
3C223FF32
3C223FF45
3C223GG01
3C223HH04
3C223HH08
3C223HH29
5B042GA23
5B042GB06
5B042JJ03
5B042JJ29
5B042JJ42
5B042MA08
5B042MA14
5B042MC21
5B042MC22
(57)【要約】
【課題】多様な産業装置の監視に好適な監視装置等を提供する。
【解決手段】複数の異なる産業装置2A~2Zを監視可能な監視装置1は、複数の産業装置2A~2Zの中から監視対象装置2を特定する装置特定部11と、監視対象装置2が実行するタスクを認識するタスク認識部131と、タスクに割り当てられるメモリ領域を認識するメモリ領域認識部132と、タスクによるメモリ領域の使用量についての閾値を設定する閾値設定部133と、使用量が閾値を超えたことを異常として検知する異常検知部14と、を備える。監視装置1は、監視対象装置2が実行するタスクに関するタスク管理情報を取得するタスク管理情報取得部12を更に備え、タスク認識部131は、タスク管理情報に基づいて監視対象装置2が実行するタスクを認識し、メモリ領域認識部132は、タスク管理情報に基づいてタスクに割り当てられるメモリ領域を認識する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なる産業装置を監視可能な監視装置であって、
監視対象装置を特定する装置特定部と、
前記監視対象装置が実行するタスクを認識するタスク認識部と、
前記タスクに割り当てられるメモリ領域を認識するメモリ領域認識部と、
前記タスクによる前記メモリ領域の使用量についての閾値を設定する閾値設定部と、
前記使用量が前記閾値を超えたことを異常として検知する異常検知部と、
を備える監視装置。
【請求項2】
前記監視対象装置が実行するタスクに関するタスク管理情報を取得するタスク管理情報取得部を更に備え、
前記タスク認識部は、前記タスク管理情報に基づいて前記監視対象装置が実行するタスクを認識し、
前記メモリ領域認識部は、前記タスク管理情報に基づいて前記タスクに割り当てられるメモリ領域を認識する、
請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記タスク管理情報は、前記タスクによる前記メモリ領域の使用量についての閾値を含み、
前記閾値設定部は、前記タスク管理情報に含まれる前記閾値を設定する、
請求項2に記載の監視装置。
【請求項4】
前記タスクについて認識された前記メモリ領域にダミーデータを記録するダミーデータ記録部を更に備え、
前記異常検知部は、前記ダミーデータから書き換えられた量が前記閾値を超えたことを異常として検知する、
請求項1に記載の監視装置。
【請求項5】
前記タスク認識部は、前記監視対象装置が実行する複数のタスクを認識し、
前記メモリ領域認識部は、前記各タスクに割り当てられる各メモリ領域を認識し、
前記閾値設定部は、前記各タスクによる前記各メモリ領域の使用量についての各閾値を設定し、
前記異常検知部は、前記複数のタスクの少なくともいずれかによる前記使用量が、対応する前記閾値を超えたことを異常として検知する、
請求項1から4のいずれかに記載の監視装置。
【請求項6】
前記複数のタスクのうち、前記使用量が前記閾値を超えたタスクを異常タスクとして記録する異常タスク記録部を更に備える、請求項5に記載の監視装置。
【請求項7】
複数の異なる産業装置を監視可能な監視方法であって、
監視対象装置を特定する装置特定ステップと、
前記監視対象装置が実行するタスクを認識するタスク認識ステップと、
前記タスクに割り当てられるメモリ領域を認識するメモリ領域認識ステップと、
前記タスクによる前記メモリ領域の使用量についての閾値を設定する閾値設定ステップと、
前記使用量が前記閾値を超えたことを異常として検知する異常検知ステップと、
を備える監視方法。
【請求項8】
複数の異なる産業装置を監視可能な監視プログラムであって、
監視対象装置を特定する装置特定ステップと、
前記監視対象装置が実行するタスクを認識するタスク認識ステップと、
前記タスクに割り当てられるメモリ領域を認識するメモリ領域認識ステップと、
前記タスクによる前記メモリ領域の使用量についての閾値を設定する閾値設定ステップと、
前記使用量が前記閾値を超えたことを異常として検知する異常検知ステップと、
をコンピュータに実行させる監視プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は監視装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、サーバが複数の処理(分散処理とサービス処理)を並行して行う際に、分散処理に関するリソースの使用状況を監視する技術が開示されている。分散処理に関するリソースの使用量が所定の閾値を超えた場合には、分散処理の一次停止や保守者端末への通知等が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の監視技術は、実質的に一つの汎用サーバが分散処理およびサービス処理という定型的な処理を行う場合を対象にしている。このため、各種の産業現場において多様な用途に使用される産業装置の監視に適したものではない。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、多様な産業装置の監視に好適な監視装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の監視装置は、複数の異なる産業装置を監視可能な監視装置であって、監視対象装置を特定する装置特定部と、監視対象装置が実行するタスクを認識するタスク認識部と、タスクに割り当てられるメモリ領域を認識するメモリ領域認識部と、タスクによるメモリ領域の使用量についての閾値を設定する閾値設定部と、使用量が閾値を超えたことを異常として検知する異常検知部と、を備える。
【0007】
この態様によれば、特定された監視対象装置(産業装置)が実行するタスクおよび当該タスクに割り当てられるメモリ領域の認識の下、当該タスクによる当該メモリ領域の使用量についての閾値の設定と当該閾値による異常の検知が自動的に行われる。
【0008】
本発明の別の態様は、監視方法である。この方法は、複数の異なる産業装置を監視可能な監視方法であって、監視対象装置を特定する装置特定ステップと、監視対象装置が実行するタスクを認識するタスク認識ステップと、タスクに割り当てられるメモリ領域を認識するメモリ領域認識ステップと、タスクによるメモリ領域の使用量についての閾値を設定する閾値設定ステップと、使用量が閾値を超えたことを異常として検知する異常検知ステップと、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、これらの表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等に変換したものも、本発明に包含される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、多様な産業装置の監視に好適な監視装置等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】監視対象装置がステージ装置である場合のタスク管理情報の具体例を示す。
【
図3】監視対象装置が実行する複数のタスクに割り当てられるメモリ領域を模式的に示す。
【
図4】異常検知部による異常検知処理の具体例を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下では実施形態ともいう)について詳細に説明する。説明および/または図面においては、同一または同等の構成要素、部材、処理等に同一の符号を付して重複する説明を省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明の簡易化のために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施形態に記載される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも本発明の本質的なものであるとは限らない。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る監視装置1の構成を模式的に示す。監視装置1は、複数の異なる産業装置2A~2Z(以下では総称して産業装置2ともいう)を監視可能である。監視装置1は、複数の産業装置2A~2Zを同時に監視してもよいし、複数の産業装置2A~2Zの中から選択された任意の一つの産業装置2を監視してもよい。つまり、後述するように監視装置1は同時か否かに関わらず複数の産業装置2A~2Zを監視する能力または機能を有する。
【0014】
産業装置2は、各種の製品やサービスの生産や提供を行う産業現場において、特定の用途に使用される装置である。産業装置は、例えば、日本産業機械工業会が取り扱っているボイラ・原動機、鉱山機械、化学機械、環境装置、タンク、プラスチック機械、風水力機械、運搬機械、動力伝導装置、製鉄機械、業務用洗濯機等の企業の工場等の産業現場で使用される産業用機械、産業機械、産業機器等や、半導体等の製造装置、工作機械、印刷機、産業ロボットを含む。具体的には、処理対象の半導体ウェハー等が載置されるテーブルの位置を制御するステージ装置、プラスチック製品等の生産に利用される射出成形機、シート状の被搬送物を搬送する搬送装置等が例示される。なお、パーソナルコンピュータやスマートフォン等の用途が限定されない汎用装置は産業装置に含まれない。
【0015】
監視装置1は、装置特定部11と、タスク管理情報取得部12と、監視設定部13と、異常検知部14と、異常タスク記録部15を備える。これらの機能ブロックは、コンピュータの中央演算処理装置、メモリ、入力装置、出力装置、コンピュータに接続される周辺機器等のハードウェア資源と、それらを用いて実行されるソフトウェアの協働により実現される。コンピュータの種類や設置場所は問わず、上記の各機能ブロックは、単一のコンピュータのハードウェア資源で実現してもよいし、複数のコンピュータに分散したハードウェア資源を組み合わせて実現してもよい。例えば、監視装置1の機能ブロックの一部または全部は、産業装置2と同じ産業現場に設けられるコンピュータやプロセッサで分散的または集中的に実現してもよいし、産業装置2と異なる敷地や建物に設けられるコンピュータやプロセッサで分散的または集中的に実現してもよい。
【0016】
装置特定部11は、複数の産業装置2A~2Zの中から一または複数の監視対象装置(以下では監視対象装置2ともいう)を特定する。監視対象装置2は、監視装置1および/または産業装置2の管理者が監視装置1(装置特定部11)に対して指示したものでもよいし、監視装置1(装置特定部11)が産業装置2との接続および/または通信に基づいて自律的に認識したものでもよい。
【0017】
タスク管理情報取得部12は、装置特定部11によって特定された一または複数の監視対象装置2が実行するタスクに関するタスク管理情報を取得する。
図2は、監視対象装置2がステージ装置である場合のタスク管理情報の具体例を示す。このタスク管理情報は、ステージ装置が実行する複数のタスクのリストである。各タスクには「タスク番号」「タスク名」「スタック領域」「スタックサイズ」「閾値」等のデータが付与されている。「タスク番号」は、各タスクを識別するための識別情報であり、図示の例では「0」から始まる通し番号が付与されている。「タスク名」は、各タスクの名称であり、図示の例では「Ethernet通信タスク」「位置管理タスク」「サーボ制御タスク」が付与されている。
【0018】
「スタック領域」は、各タスクに割り当てられるメモリ領域またはスタック領域である。図示の例における「task0_stack」「task1_stack」「task2_stack」は、監視対象装置2(ステージ装置)が各タスクを実行する際に利用できるメモリまたはスタック中の代表アドレスまたは代表位置を指定する。なお、「スタック領域」を空欄とすることで、監視対象装置2(ステージ装置)のプロセッサ等がメモリまたはスタック中の空き領域(後述する「スタックサイズ」で指定されたサイズのアドレス領域)を自律的に各タスクのために特定または確保してもよい。
【0019】
「スタックサイズ」は、各タスクに割り当てられるメモリ領域またはスタック領域のサイズである。例えば、「スタック領域」で指定されるメモリまたはスタック中の開始アドレスから、「スタックサイズ」で指定されるサイズのアドレス領域が各タスクに割り当てられる。図示の例では、タスク番号「0」について「スタック領域」で指定された「task0_stack」を開始アドレスとする「スタックサイズ」で指定されたサイズ「10,000」のアドレス領域がタスク「Ethernet通信タスク」に割り当てられ、タスク番号「1」について「スタック領域」で指定された「task1_stack」を開始アドレスとする「スタックサイズ」で指定されたサイズ「50,000」のアドレス領域がタスク「位置管理タスク」に割り当てられ、タスク番号「2」について「スタック領域」で指定された「task2_stack」を開始アドレスとする「スタックサイズ」で指定されたサイズ「20,000」のアドレス領域がタスク「サーボ制御タスク」に割り当てられる。
【0020】
「閾値」は、各タスクによるメモリ領域またはスタック領域の使用量についての閾値である。具体的には、「スタックサイズ」で指定されたメモリ領域またはスタック領域のサイズを「100%」として、各タスクに関する警報発信および/または異常検知のための閾値が百分率で指定される。図示の例では、タスク番号「0」のタスク「Ethernet通信タスク」について「スタックサイズ」で指定されたサイズ「10,000」(100%)に対する閾値「80%」(8,000)が指定され、タスク番号「1」のタスク「位置管理タスク」について「スタックサイズ」で指定されたサイズ「50,000」(100%)に対する閾値「75%」(37,500)が指定され、タスク番号「2」のタスク「サーボ制御タスク」について「スタックサイズ」で指定されたサイズ「20,000」(100%)に対する閾値「70%」(14,000)が指定される。後述するように、各タスクの使用量が閾値を超えると異常検知部14によって異常が検知され、当該各タスクに関する警報の発信や当該各タスクまたは監視対象装置2全体の停止が行われる。図示の例のように、各タスクの閾値を異なる値に個別に設定可能とすることで、タスク毎に閾値を最適化できる。但し、閾値は全てのタスクに共通の値(例えば「80%」)としてもよい。この場合、
図2のようなタスク管理情報のリストに「閾値」の情報を含めなくてもよい。
【0021】
図2のようなタスク管理情報は、監視装置1および/または監視対象装置2の管理者が作成したものでもよいし、監視装置1(タスク管理情報取得部12)および/または監視対象装置2が自律的に生成したものでもよい。後者の場合、監視装置1(タスク管理情報取得部12)および/または監視対象装置2を、機械学習能力を有する人工知能によって構成するのが好ましい。この場合、監視対象装置2(産業装置2A~2Z)と
図2のようなタスク管理情報の網羅的な組を訓練データまたは学習データとして、監視装置1(タスク管理情報取得部12)に機械学習を行わせる。このような機械学習済の監視装置1(タスク管理情報取得部12)は、装置特定部11によって特定された監視対象装置2を入力として、適切なタスク管理情報を自律的に生成して出力できる。
【0022】
図2のようなタスク管理情報は、監視対象装置2毎に異なるものが作成されるのが好ましい。例えば、ステージ装置に対するタスク管理情報(
図2の例)と、射出成形機に対するタスク管理情報は互いに異なりうる。例えば、射出成形機ついては「Ethernet通信タスク」「I2C通信タスク」「シーケンス制御タスク」等に関する別のタスク管理情報が作成される。また、一つの監視対象装置2が異なる処理やソフトウェア(典型的には複数のタスクを含む)を実行可能な場合、処理やソフトウェア毎に
図2のようなタスク管理情報が作成されるのが好ましい。このように本実施形態によれば、監視対象装置2毎および/または処理やソフトウェア毎に監視装置1の監視処理を最適化できる。また、一つの汎用的な監視装置1によって、複数の異なる産業装置2A~2Zおよび/または複数の異なる処理やソフトウェアの監視処理を実行できる。
【0023】
監視設定部13は、タスク管理情報取得部12によって取得または生成されたタスク管理情報に基づいて、各タスクの監視のための各種の設定を行う。なお、
図1では便宜的にタスク管理情報取得部12および監視設定部13が異なる機能ブロックとして示されているが、これらは互いに密接に関連する処理を実行するため実際には一つの機能ブロックとして構成可能である。特に、タスク管理情報取得部12および監視設定部13を機械学習済の一つの人工知能によって構成することで、装置特定部11によって特定された監視対象装置2を入力として、当該監視対象装置2によって実行される各タスクの監視のための適切な設定を自律的かつ効率的に行える。
【0024】
監視設定部13は、タスク認識部131と、メモリ領域認識部132と、閾値設定部133と、ダミーデータ記録部134を備える。タスク認識部131は、タスク管理情報取得部12によって取得または生成されたタスク管理情報(
図2のようなリスト)に基づいて、装置特定部11によって特定された監視対象装置2が実行する一または複数のタスクを認識する。
図2のタスク管理情報の例では、タスク認識部131によって、監視対象装置2(ステージ装置)が実行する複数のタスク「Ethernet通信タスク」「位置管理タスク」「サーボ制御タスク」が認識される。
【0025】
メモリ領域認識部132は、タスク管理情報取得部12によって取得または生成されたタスク管理情報(
図2のようなリスト)に基づいて、タスク認識部131によって認識された一または複数のタスクに割り当てられるメモリ領域またはスタック領域を認識する。
図2のタスク管理情報の例では、メモリ領域認識部132によって、監視対象装置2(ステージ装置)が実行する複数のタスク「Ethernet通信タスク」「位置管理タスク」「サーボ制御タスク」に割り当てられる複数のメモリ領域またはスタック領域が「スタック領域」および/または「スタックサイズ」の情報に基づいて認識される。
【0026】
閾値設定部133は、タスク認識部131によって認識された一または複数のタスクによる、メモリ領域認識部132によって認識されたメモリ領域またはスタック領域の使用量についての閾値を設定する。
図2のタスク管理情報の例では、閾値設定部133によって、監視対象装置2(ステージ装置)が実行する複数のタスク「Ethernet通信タスク」「位置管理タスク」「サーボ制御タスク」によるメモリ領域またはスタック領域の使用量についての閾値「80%」「75%」「70%」が設定される。なお、
図2のようなタスク管理情報に「閾値」の情報が含まれていない場合、閾値設定部133は例えば全てのタスクに共通の閾値(例えば「80%」)を設定する。
【0027】
ダミーデータ記録部134は、タスク認識部131によって認識された一または複数のタスクについて、メモリ領域認識部132によって認識されたメモリ領域またはスタック領域にダミーデータを記録する。
図3は、監視対象装置2が
図2の例における各タスク「Ethernet通信タスク」「位置管理タスク」「サーボ制御タスク」を実行する際に利用できるメモリまたはスタックにおいて、各タスクに割り当てられるメモリ領域またはスタック領域ST0~ST2を模式的に示す。具体的には、第0スタック領域ST0は第0タスク「Ethernet通信タスク」に割り当てられたサイズ「10,000」の領域であり、第1スタック領域ST1は第1タスク「位置管理タスク」に割り当てられたサイズ「50,000」の領域(一部のみが示されている)であり、第2スタック領域ST2は第2タスク「サーボ制御タスク」に割り当てられたサイズ「20,000」の領域である。
【0028】
第0スタック領域ST0には、閾値設定部133によって設定された「80%」の閾値を示す太線TH0が模式的に示されている。図示の例では、「Ethernet通信タスク」による第0スタック領域ST0の使用領域が閾値TH0以下に留まっていれば、「Ethernet通信タスク」が正常に実行されていると異常検知部14が判定する。模式的に示されるように、第0スタック領域ST0にはダミーデータ記録部134によって「0」「A」の繰返しからなるダミーデータが記録されている。第0スタック領域ST0において「Ethernet通信タスク」が使用した領域は「0」および/または「A」から書き換えられるため、その量が「Ethernet通信タスク」による第0スタック領域ST0の使用量となる。
【0029】
第2スタック領域ST2には、閾値設定部133によって設定された「70%」の閾値を示す太線TH2が模式的に示されている。図示の例では、「サーボ制御タスク」による第2スタック領域ST2の使用領域が閾値TH2以下に留まっていれば、「サーボ制御タスク」が正常に実行されていると異常検知部14が判定する。模式的に示されるように、第2スタック領域ST2にはダミーデータ記録部134によって「2」「C」の繰返しからなるダミーデータが記録されている。第2スタック領域ST2において「サーボ制御タスク」が使用した領域は「2」および/または「C」から書き換えられるため、その量が「サーボ制御タスク」による第2スタック領域ST2の使用量となる。
【0030】
なお、第1スタック領域ST1についても同様に、閾値設定部133によって「位置管理タスク」に関する閾値TH1が設定されるが図示は省略した。模式的に示されるように、第1スタック領域ST1にはダミーデータ記録部134によって「1」「B」の繰返しからなるダミーデータが記録されている。第1スタック領域ST1において「位置管理タスク」が使用した領域は「1」および/または「B」から書き換えられるため、その量が「位置管理タスク」による第1スタック領域ST1の使用量となる。
【0031】
以上のように、ダミーデータ記録部134によって記録されるダミーデータは、異常検知部14が各スタック領域ST0~ST2の使用量を把握するために利用される。従って、異常検知部14が各スタック領域ST0~ST2の使用量をダミーデータによらず直接的に検知できる場合は、ダミーデータ記録部134を設ける必要はない。なお、
図3に示されるダミーデータは一例であり、これらに限られない任意のデータをダミーデータとして利用できる。例えば、ダミーデータは、各タスクに固有の値(タスクID等)でもよいし、異常検知部14がダミーデータとして検知できる所定の文字列や数字列でもよい。
【0032】
異常検知部14は、タスク認識部131によって認識された一または複数のタスクの少なくともいずれかによる、メモリ領域認識部132によって認識された各メモリ領域または各スタック領域の使用量が、閾値設定部133によって設定された対応する閾値を超えたことを異常として検知する。ダミーデータ記録部134が設けられる場合、異常検知部14は、メモリ領域認識部132によって認識された各メモリ領域または各スタック領域において、ダミーデータ記録部134によって記録されたダミーデータから書き換えられた量が、閾値設定部133によって設定された対応する閾値を超えたことを異常として検知する。異常検知部14によって特定タスクに異常が検知された場合、当該特定タスクに関する警報の発信や当該特定タスクまたは監視対象装置2全体の停止が行われる。このため、各タスクのメモリまたはスタックの使用量が、当該各タスクに割り当てられたメモリ領域またはスタック領域(メモリサイズまたはスタックサイズ)を超えてしまうスタックオーバーフローの発生を未然に防止できる。
【0033】
図4は、異常検知部14による異常検知処理の具体例を模式的に示す。
図2および
図3の例と同様に、各タスク「Ethernet通信タスク」「位置管理タスク」「サーボ制御タスク」に各スタック領域ST0~ST2が割り当てられている。本図における各スタック領域ST0~ST2のサイズ(上下方向の高さ)は便宜的に同一としている(つまり「100%」等に正規化されている)。図示の例では、「Ethernet通信タスク」による第0スタック領域ST0の使用量が第0閾値TH0「80%」以下であり、「Ethernet通信タスク」が正常に実行されていると異常検知部14によって判定される。同様に、「サーボ制御タスク」による第2スタック領域ST2の使用量が第2閾値TH2「70%」以下であり、「サーボ制御タスク」が正常に実行されていると異常検知部14によって判定される。一方、「位置管理タスク」による第1スタック領域ST1の使用量が第1閾値TH1「75%」を超えており、「位置管理タスク」が正常に実行されていないこと、具体的には「位置管理タスク」においてスタックオーバーフローの恐れがあること等が、異常検知部14によって異常として検知される。
【0034】
異常タスク記録部15は、監視対象装置2が実行する複数のタスク「Ethernet通信タスク」「位置管理タスク」「サーボ制御タスク」のうち、スタック領域ST0~ST2の使用量が閾値TH0~TH2を超えたタスクを異常タスクとして不図示の不揮発メモリ等に記録する。
図4の例では、異常タスク記録部15は、第1スタック領域ST1の使用量が第1閾値TH1を超えた「位置管理タスク」を異常タスクとして記録する。この記録を確認することで、監視装置1および/または監視対象装置2の管理者は、当該監視対象装置2にスタックオーバーフローの兆候または発生リスク等の異常があることを把握できるだけでなく、当該監視対象装置2が実行する複数のタスクのうちの特定タスク(位置管理タスク)にスタックオーバーフローの兆候または発生リスク等の異常があることを把握できる。このため、当該特定タスクを主対象とした的確な対処(スタックサイズの割当量の増加やソフトウェアの改良等)を行える。
【0035】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。例示としての実施形態における各構成要素や各処理の組合せには様々な変形例が可能であり、そのような変形例が本発明の範囲に含まれることは当業者にとって自明である。
【0036】
なお、実施形態で説明した各装置や各方法の構成、作用、機能は、ハードウェア資源またはソフトウェア資源によって、あるいは、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働によって実現できる。ハードウェア資源としては、例えば、プロセッサ、ROM、RAM、各種の集積回路を利用できる。ソフトウェア資源としては、例えば、オペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0037】
1 監視装置、2 産業装置(監視対象装置)、11 装置特定部、12 タスク管理情報取得部、13 監視設定部、14 異常検知部、15 異常タスク記録部、131 タスク認識部、132 メモリ領域認識部、133 閾値設定部、134 ダミーデータ記録部。