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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168711
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】封止用エポキシ樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20231121BHJP
   C08K 5/5333 20060101ALI20231121BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K5/5333
C08K5/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079979
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】奥山 雄太
(72)【発明者】
【氏名】藤田 博也
(72)【発明者】
【氏名】江塚 博紀
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CD051
4J002EF057
4J002EL138
4J002EN038
4J002EW126
4J002FD148
4J002FD206
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】硬化性が高く、一液型における未硬化状態での保存安定性が良好である封止用エポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】封止用エポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、(B)ホスホン酸と炭素数6~20のアルコールとから得ることができる、特定のホスホン酸エステルを0.1~5質量部、(C)炭素数8~20の脂肪酸を0.01~0.15質量部、(D)硬化剤を10~150質量部含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、(B)式(1)で表されるホスホン酸エステルを0.1~5.0質量部、(C)炭素数8~20の脂肪酸を0.001~0.15質量部、および(D)硬化剤を10~150質量部含有することを特徴とする、封止用エポキシ樹脂組成物。

【化1】
(式(1)中、
は、炭素数6~20の炭化水素基を示し、
は、水素または炭素数6~20の炭化水素基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車・電化製品に広汎に使用されている電気電子部品は、外部環境からの保護および周囲に対する電気的絶縁性を確保しなければならないという観点から、樹脂組成物で注型封止して用いられるのが一般的となっている。昨今、携帯電話等に搭載される電子部品は、小型化かつ形状の複雑化が進む中で、封止には種々の樹脂や添加剤が使用されている。特に電気絶縁体となる樹脂によって回路基板等複雑な形状を有する電気電子部品を封止するときは、その電気電子部品の形状を確実に保護し得る硬化性の向上が必要となっている。
【0003】
これまで、封止剤の硬化性を向上するため、二液硬化型エポキシ樹脂が広く使用されてきた(特許文献1)。これは主剤と硬化剤を封止直前に混合して、低粘度の樹脂組成物を電気電子部品間に含浸させかつ電気電子部品を包み込み、次いで加温して硬化反応を促進させ、完全に固化させるものである。しかし、こうした二液硬化型エポキシ樹脂においては、二液の混合比率を精密に調整する必要があるため、ハンドリング性やコストに課題があり、混合比率の変動による不良発生のリスクが懸念される。さらに、可使時間、すなわち塗布するために調製したエポキシ樹脂組成物が使用できる状態を維持する時間が短く、作業効率が悪いという欠点がある。
【0004】
そこで、製造および取り扱いが容易な液状の硬化性エポキシ樹脂組成物として、一液硬化型のエポキシ樹脂組成物が提案されている(特許文献2)。これは、エポキシ樹脂、イミダゾール系硬化剤、水酸基1つ以上を有する亜リン酸化合物を必須成分として含む組成物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-60826号公報
【特許文献2】特開2010-168516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2記載のような一液硬化型のエポキシ樹脂組成物は、23℃における保存安定性は高いものの、夏場を想定した際、粘度上昇する懸念があり、数日にわたる作業を行う場合、保存安定性が不十分な場合があった。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、硬化性が高く、一液型における未硬化状態での保存安定性が良好である封止用エポキシ樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題に対し、鋭意検討した結果、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、(B)式(1)で表されるホスホン酸エステルを0.1~5.0質量部、(C)炭素数8~20の脂肪酸を0.001~0.15質量部、(D)硬化剤を10~150質量部含有する封止用エポキシ樹脂組成物を使用することで、硬化性が高く、一液型における未硬化状態での保存安定性が良好であり、耐熱性を有することを見出し、本発明の開発に至った。
【化1】

( 式(1)中、Rは、炭素数6~20の炭化水素基を示し、Rは、水素または炭素数6~20の炭化水素基を示す。)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、硬化性が高く、一液型における未硬化状態での貯蔵安定性が良好である封止用エポキシ樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
((A)エポキシ樹脂)
本発明のエポキシ樹脂は、分子内にエポキシ基を1個以上有する樹脂である限り特に制限されない。エポキシ樹脂組成物の硬化性並びに硬化物の耐熱性及び強度等の観点から、好ましくは、分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂を含み、より好ましくは、分子内にエポキシ基を2個有するエポキシ樹脂を含む。エポキシ樹脂の分子量は、硬化性の観点から100~2,000が好ましく、200~1,000がさらに好ましい。
【0011】
具体的には、分子内にエポキシ基を2個有する芳香族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニルジオール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂が挙げられる。
分子内にエポキシ基を2個有する脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0012】
分子内にエポキシ基を2個有するグリシジルエステル型エポキシ樹脂としては、例えば、フタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステルが挙げられる。
分子内にエポキシ基を2個有するグリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、例えば、グリシジルアニリン、グリシジルトルイジン等が挙げられる。
【0013】
エポキシ樹脂の粘度、ひいてはエポキシ樹脂組成物の粘度及びポットライフ、硬化性並びに硬化物の強度等の観点から、エポキシ樹脂は、好ましくは、芳香族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂を含み、より好ましくはビスフェノール型エポキシ樹脂を含み、さらに好ましくはビスフェノールA型エポキシ樹脂を含む。
【0014】
エポキシ樹脂は、好ましくは、液状エポキシ樹脂を含み、より好ましくは、エポキシ樹脂が1種又は2種以上のエポキシ樹脂を含む場合において、エポキシ樹脂全体として液状である。
【0015】
((B)ホスホン酸エステル)
(B)ホスホン酸エステルは、式(1)で示され、ホスホン酸と炭素数6~20のアルコールとから得ることができるエステルである。R、Rを構成する炭化水素基の炭素数が5以下の場合、加熱時の被膜形成性が低く、耐熱性が低下する可能性があるので、6以上とするが、8以上とすることが更に好ましい。また、R、Rを構成する炭化水素基の炭素数が21以上になると、樹脂との相溶性が低下し、外観不良を生じるため、R、Rを構成する炭化水素基の炭素数を20以下とするが、18以下が更に好ましい。
【0016】
、Rを構成する炭化水素基は、飽和炭化水素基、つまりアルキル基であってよく、不飽和炭化水素基であってもよい。また、直鎖状、分岐状、またはそれらの組み合わせのいずれでもよいが、アルキル基であることが好ましく、分岐状アルキル基であることが特に好ましい。
【0017】
(B)ホスホン酸エステルの原料となるアルコールは、例えば、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3―ヘキサノール、カプリルアルコール、2-エチルヘキサノール、ノナノール、イソノナノール、カプリンアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、イソパルミチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール、イソアラキジルアルコール等が挙げられる。
【0018】
ホスホン酸とアルコールが反応して得られた(B)ホスホン酸エステルのエステル化度は、0.50~1.00とする。このエステル化度は、硬化性、保存安定性の観点から0.52~0.90が好ましく、0.55~0.75がより好ましい。
【0019】
なお、ホスホン酸エステルのエステル化度は、以下の式(3)から算出する。
エステル化度=
(測定したエステル価)/(フルエステルの理論エステル価)・・・(3)
ただし、「エステル価」とは、反応体であるアルコール1分子中の水酸基の数に対する、水酸基から生成するエステル数の比率である。「フルエステルの理論エステル価」は、アルコールの水酸基が100%エステル化したと仮定したときのエステル価である。「測定したエステル価」は、基準油脂分析試験法(JOCS)2.3.3-1996に準じて測定したエステル価である。
【0020】
((C)炭素数8~20の脂肪酸)
(C)炭素数8~20の脂肪酸は、飽和脂肪酸であってよく、不飽和脂肪酸であってよく、混合脂肪酸であってもよい。また、脂肪酸の炭素数は、8以上、18以下であることが更に好ましい。この脂肪酸の具体例としては、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ヤシ油脂肪酸(炭素数は8~18)などが挙げられる。好ましくはラウリン酸、ヤシ油脂肪酸であり、特に好ましくはヤシ油脂肪酸である。
【0021】
((D)硬化剤)
(D)硬化剤としては、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、カルボン酸とブロック剤とを反応させて得られるブロックカルボン酸系硬化剤、フェノール系硬化剤、ヒドラジド化合物、ジシアンジアミド等を使用することができる。硬化性樹脂組成物の流動性、硬化性の観点から、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ブロックカルボン酸系硬化剤が好ましい。硬化性樹脂組成物の保存安定性の観点からは、ブロックカルボン酸系硬化剤が好ましく、酸無水物系硬化剤がより好ましい。
【0022】
アミン系硬化剤には、脂肪族アミン、芳香族アミンの他、イミダゾール類も包含される。脂肪族アミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、m-キシレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン等の脂肪族ポリアミン、イソフォロンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン等の脂環式ポリアミン、N-アミノエチルピペラジン、1,4-ビス(2-アミノ-2-メチルプロピル)ピペラジン等のピペラジン型のポリアミンが挙げられる。芳香族アミンとしては、ジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、トリメチレンビス(4-アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエート等の芳香族ポリアミン等が挙げられる。トリス( ジメチルアミノメチル) フェノール、ベンジルジメチルアミン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデンセン-7等の3級アミン等も使用することができる。このうち、エポキシ樹脂との相溶性、耐熱性の観点から芳香族アミンが好ましく、ジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミンがより好ましい。
【0023】
酸無水物系硬化剤としては、エポキシ樹脂の硬化剤として公知の酸無水物を用いることができ、無水フタル酸、無水マレイン酸、ドデセニル無水コハク酸、トリメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、2 種以上を併用して用いてもよい。このうち、常温で液状のものが好ましく、具体的には、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等が好ましい。
【0024】
ブロックカルボン酸系硬化剤としては、下記一般式(2)で表されるアルキルビニルエーテルでブロックされたブロックカルボン酸が挙げられる。
【化2】

式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に1価の有機基を示し、nは1以上の整数を示す。ここで、Rは、以下のカルボキシ基を有する化合物がアシル化した構造の残基であり、カルボキシ基を有する化合物としては、フタル酸、マレイン酸、グルタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、コハク酸、テトラヒドロフタル酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、ドデセニルコハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸等が挙げられ、エポキシ樹脂との相溶性や汎用性の観点から、フタル酸、マレイン酸、グルタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸が好ましい。Rは、脱離性の観点から炭素数1~12の炭化水素基が好ましい。
また、上記一般式(2)で表されるブロックカルボン酸としては、より良好な硬化性を得るために、一般式(2)のnは2~6が好ましく、3~4が更に好ましい。上記ブロックカルボン酸は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
上記一般式(2)で表されるブロックカルボン酸としては、例えば、ノフキュアーHK-6、ノフキュアーTN-1、ノフキュアーTN-2、サンタシッドG、サンタシッドH、サンタシッドI、サンタシッドK(以上、日油株式会社製)等が挙げられる。
【0026】
(組成比率)
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して下記の組成を有することことが好ましい。
すなわち、(B)式(1)で表されるホスホン酸エステルの量は、保存安定性の観点から、0.1質量部以上、5.0質量部以下とするが、0.5質量部以上が好ましく、また、2.0質量部以下が好ましく、1.0質量部以下がさらに好ましい。
【0027】
(C)炭素数8~20の脂肪酸の量は、0.001~0.15質量部とする。(C)炭素数8~20の脂肪酸の量は、0.005質量部以上が好ましく、0.01質量部以上が更に好ましい。また、(C)炭素数8~20の脂肪酸の量は、0.1質量部以下が好ましく、0.03質量部以下が更に好ましい。
(D)硬化剤の量は、エポキシ樹脂組成物の硬化性の観点から、10質量部以上、150質量部以下とする。こうした観点から、(D)硬化剤の量は、20質量部以上が好ましく、また、100質量部以下が好ましい。
【0028】
以上の各成分(A)~(D)の他に、本発明の効果を阻害しない範囲で、この種の組成物に一般に配合される、その他の成分を1種または2種以上含有することができる。例えば、無機充填剤、白色顔料、酸化防止剤、離型剤、光安定剤、消泡剤、レベリング剤、シランカップリング材、界面活性剤、難燃剤、着色剤、イオン吸着体等が挙げられる。
【0029】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、常法により上述した各成分、すなわちエポキシ樹脂、ホスホン酸エステル、脂肪酸、硬化剤およびその他の成分を加えて、十分に混合、撹拌して製造することができる。
また、上記のようにして得られた本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、電気機器部品、例えば、コイル、ICチップ等の封止、被覆、絶縁等に適用することができる。
【実施例0030】
〔実施例1~5および比較例1~5〕
以下、本発明を実施例及び比較例により、更に具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
表1に、実施例1~5および比較例1~5に使用した添加剤を示す。また、各実施例及び比較例の添加剤を用いて下記の通り評価を行った。その結果を表2および表3に示す。
【0031】
なお、エステル化度の計算方法について例示する。例えば実施例1の場合はフルエステルの理論エステル価は134であり、測定したエステル価は77であるため、式(1)の数値は、77/134となる。77/134は、有効数字を小数点一桁とすると、0.58となる。実施例2~5、比較例1~5についても、同様の計算方法によりエステル化度を算出した。
【0032】
〔実施例1〕
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、「jER828」)100質量部、ホスホン酸ラウリル0.99質量部、ヤシ油脂肪酸0.01質量部、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化株式会社製、「リカシッドMH―700」)90質量部を加え、自転公転ミキサー(株式会社シンキー製、「ARE-310」)2,000rpm、3分間混錬しエポキシ樹脂組成物を得た。
【0033】
〔実施例2〕
実施例1において、ホスホン酸ラウリルの代わりにホスホン酸イソステアリル0.97質量部を加え、ヤシ油脂肪酸の代わりにラウリン酸0.03質量部を加えた。これら以外は実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得た。
【0034】
〔実施例3〕
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、「jER828」)100質量部、ホスホン酸アラキジル0.98質量部、ヤシ油脂肪酸0.02質量部、ジアミノジフェニルメタン(東京化成工業株式会社製)27質量部を加え、自転公転ミキサー(株式会社シンキー製、「ARE-310」)2,000rpm、3分間混錬後、三本ロールミル(株式会社ナガセスクリーン印刷所、「M-80S」)にて混錬し、エポキシ樹脂組成物を得た。
【0035】
〔実施例4〕
実施例3において、ホスホン酸アラキジルの代わりにホスホン酸オレイル0.99質量部を添加し、ヤシ油脂肪酸の代わりにラウリン酸0.02質量部を添加した。これ以外は実施例3と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得た。
【0036】
〔実施例5〕
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、「jER828」)100質量部、ホスホン酸2-エチルヘキシル0.96質量部、ヤシ油脂肪酸0.02質量部、ブロックカルボン酸(日油株式会社製、「ノフキュア―TN―1」)98質量部を加え、自転公転ミキサー(株式会社シンキー製、「ARE-310」)2,000rpm、3分間混錬しエポキシ樹脂組成物を得た。
【0037】
〔比較例1〕
実施例1において、ホスホン酸ラウリルの代わりにホスホン酸プロピル1.03質量部を添加し、ヤシ油脂肪酸の代わりにラウリン酸0.01質量部を加えた。これ以外は実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得た。
【0038】
〔比較例2〕
実施例1において、ホスホン酸ラウリルの代わりに亜リン酸イソデシル0.98質量部を添加し、ヤシ油脂肪酸0.02質量部を加えた。これ以外は実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得た。
【0039】
〔比較例3〕
実施例3において、ホスホン酸アラキジルの代わりにホスホン酸ベヘニル0.97質量部を添加し、ヤシ油脂肪酸の代わりにラウリン酸0.03質量部を加えた。これ以外は実施例3と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得た。
【0040】
〔比較例4〕
実施例3において、ホスホン酸アラキジルの代わりにホスホン酸イソステアリル1.00質量部を添加し、ヤシ油脂肪酸を未添加とした。これ以外は実施例3と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得た。
【0041】
〔比較例5〕
実施例5において、ホスホン酸2-エチルヘキシルの代わりにトリフェニルホスフィン0.98質量部を添加し、ヤシ油脂肪酸を未添加とした。これ以外は実施例5と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得た。
【0042】
各実施例および比較例で得られた各エポキシ樹脂組成物を、以下に示す条件により、エポキシ樹脂組成物の特性および硬化物の特性を評価した。結果を表2および表3に示す。
【0043】
(1)保存安定性
実施例および比較例で得られたエポキシ樹脂組成物の粘度をE型粘度計(VISCOMETERTV-25、東機産業株式会社製)で測定後、40℃で3日間保管した。その後、粘度を測定し、保管前後での粘度から変化率を算出することで保存安定性を評価した。変化率は以下の式(2)から算出する。

変化率=|((変化後-変化前)/ 変化前)×100|・・・(2)

◎: 変化率が50.0%未満
○: 変化率が50.0%以上、70.0%未満
×: 変化率が70.0%以上
【0044】
(2)硬化性
5cm×5cmのガラス基板に実施例および比較例で得られたエポキシ樹脂組成物をバーコーターNo.4を使用して塗布する。その後、120℃で3時間、150℃で3時間加熱硬化し、JIS K 5600-5-4に準じて鉛筆硬度試験を行い、以下のように評価した。

◎: H以上
○: F、HB、B
×: 2B以下
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
実施例1~5のエポキシ樹脂組成物では、保存安定性、硬化性に関して良好な結果が得られた。
【0049】
比較例1では、ホスホン酸エステルを構成するアルコールの炭素数が3であり、硬化性は高いものの、保存安定性が不十分であった。
比較例2では、(B)ホスホン酸エステルとは構造の異なる亜リン酸エステルを使用しているため、保存安定性の低下を生じた。
比較例3では、(B)ホスホン酸エステルを構成するアルコールの炭素数が22であり、外観が不均一となり硬化性が劣る結果となった。また保存安定性が低かった。
比較例4では、(C)脂肪酸を含有していないため、保存安定性は良好である一方、硬化性の低下を生じた。
比較例5では、(B)ホスホン酸エステルと構造が異なるトリフェニルホスフィンを用いているため、硬化性は良好である一方、保存安定性の低下を生じた。