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  • 特開-汚水処理装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168718
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】汚水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/28 20230101AFI20231121BHJP
   C02F 3/10 20230101ALN20231121BHJP
【FI】
C02F3/28 B
C02F3/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079990
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】591045116
【氏名又は名称】株式会社アールエコ
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【弁理士】
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】岸脇 孝
【テーマコード(参考)】
4D003
4D040
【Fターム(参考)】
4D003DA22
4D003FA10
4D040AA04
4D040AA34
4D040AA42
(57)【要約】
【課題】 送風機が不要で、無動力で逆洗を行うことができる汚水処理装置を提供する。
【解決手段】 汚水処理装置1は、上流側嫌気処理槽2と、下流側嫌気処理槽3と、嫌気性微生物により汚水内で発生した有機ガスを収集するためのガス捕集部4と、下流側嫌気処理槽3内の嫌気処理担体C1を逆洗する逆洗装置5とを備え、逆洗装置5は、ガス捕集部4に接続されたガス供給管6と、下流側嫌気処理槽3内の水没位置に配設されてガス供給管4から送られる有機ガスを貯留するガス溜室7と、ガス溜室7内に挿通されてガス溜室7内の有機ガスが所定量貯留された時に貯留された有機ガスを上流側嫌気処理槽2側に排出する排出管8と、を備え、排出管8からガス溜室7内の有機ガスが排出されることにより、ガス溜室7外の水がガス溜室7内に流入し、下流側嫌気処理槽3の水位を瞬時に低下させて下流側嫌気処理槽3内に収容される嫌気処理担体C1を逆洗するように構成される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側嫌気処理槽と、
前記上流側嫌気処理槽の下流側に配設された下流側嫌気処理槽と、
前記上流側嫌気処理槽内の所定水深位置に配置され、嫌気性微生物により汚水内で発生した有機ガスを収集するためのガス捕集部と、
前記ガス捕集部に接続されたガス供給管と、前記下流側嫌気処理槽内の水没位置に配設されて前記ガス供給管から送られる有機ガスを貯留するガス溜室と、前記ガス溜室内に挿通されて前記ガス溜室内の有機ガスが所定量貯留された時に貯留された有機ガスを前記上流側嫌気処理槽側に排出する排出管と、を備え、前記排出管から前記ガス溜室内に貯留された有機ガスが排出されることにより、前記ガス溜室外の水が前記ガス溜室内に流入し、前記下流側嫌気処理槽の水位を瞬時に低下させて前記下流側嫌気処理槽内に収容される嫌気処理担体を逆洗するように構成された逆洗装置と、
を備える汚水処理装置。
【請求項2】
前記排出管は、前記ガス溜室内の上部空間に開口を有する略U字状である、請求項1に記載の汚水処理装置。
【請求項3】
前記ガス捕集部は、前記ガス供給管に接続された逆漏斗状部を有し、前記逆漏斗状部の下端縁が、水面以下であって前記上流側嫌気処理槽の底部より50cm以上の高さ位置で水没するように配設される、請求項1に記載の汚水処理装置。
【請求項4】
前記排出管の内部流路下端位置は、前記ガス捕集部の下端位置の水深より浅い水深に配置される、請求項1に記載の汚水処理装置。
【請求項5】
前記ガス捕集部は、前記ガス供給管に接続された逆漏斗状部を有し、前記逆漏斗状部の上部が、水面より上方に配置される、請求項1に記載の汚水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水を嫌気処理のみによって処理する汚水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、汚水処理装置は、一般に、前段部(上流側)において比較的大型の担体が充填されて嫌気的処理が行われ、後段部(下流側)では小粒形の濾過担体が充填され、外部に設置された送風機から空気が供給される好気的処理が行われる。
【0003】
また、この種の汚水処理装置では、好気的処理槽において、送風機から供給される空気を用いてろ過担体が収容されている濾過槽の水位を瞬時に低下させることにより逆流洗浄(逆洗とも言う。)を行う逆洗装置が広く知られている(特許文献1~4等)。
【0004】
斯かる逆洗装置は、送風機に接続された空気供給管と、処理槽内に水没されて空気供給管から送られる空気を貯留する空気溜室と、空気溜室内に挿通されて空気溜室内の空気が所定量貯留された際に貯留された空気を処理槽外へ排出する排出管と、を備え、排出管から空気溜室内の貯留空気が排出されることにより、前記処理槽内の水が前記空気溜室内に流入し、処理槽の水位を瞬時に低下させ、処理槽内の濾過担体を逆洗するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-132082号公報
【特許文献2】特開2010-184210号公報
【特許文献3】特開2010-207662号公報
【特許文献4】特開2021-10876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
日本国内に設置されて可動している汚水処理装置(浄化槽)は、約750万基(2019年)とされている。各浄化槽に付設された送風機は、24時間稼働し、その平均動力を50W(0.05kW)と仮定しても、約40万kWの電力となり、原子力発電所の1基分程度の電力が浄化槽のみによって消費されていることになる。
【0007】
そこで、本発明は、送風機が不要で、無動力で逆洗を行うことができる汚水処理装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一実施形態に係る汚水処理装置は、上流側嫌気処理槽と、前記上流側嫌気処理槽の下流側に配設された下流側嫌気処理槽と、前記上流側嫌気処理槽内の所定水深位置に配置され、嫌気性微生物により汚水内で発生した有機ガスを収集するためのガス捕集部と、前記下流側嫌気処理槽内に収容される嫌気処理担体を逆洗する逆洗装置とを備え、前記逆洗装置は、前記ガス捕集部に接続されたガス供給管と、前記下流側嫌気処理槽内の水没位置に配設されて前記ガス供給管から送られる有機ガスを貯留するガス溜室と、前記ガス溜室内に挿通されて前記ガス溜室内の有機ガスが所定量貯留された時に貯留された有機ガスを前記上流側嫌気処理槽側に排出する排出管と、を備え、前記排出管から前記ガス溜室内の貯留ガスが排出されることにより、前記ガス溜室外の水が前記ガス溜室内に流入し、前記下流側嫌気処理槽の水位を瞬時に低下させて前記下流側嫌気処理槽内に収容される嫌気処理担体を逆洗するように構成されている。
【0009】
一実施態様において、前記排出管は、前記ガス溜室内の上部空間に開口を有する略U字状である。
【0010】
前記ガス捕集部は、前記ガス供給管に接続された逆漏斗状部を有し、前記逆漏斗状部の下端縁が、水面以下であって前記上流側嫌気処理槽の底部より50cm以上の高さ位置に配設され得る。
【0011】
前記排出管の内部流路下端位置は、前記ガス捕集部の下端位置の水深より浅い水深に配置され得る。
【0012】
前記ガス捕集部は、前記ガス供給管に接続された逆漏斗状部を有し、前記逆漏斗状部の上部が、水面より上方に配置され得る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、嫌気処理槽で発生する有機ガスにより逆洗装置を作動させることにより、無動力で逆洗が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る汚水処理装置の第1実施形態を示す断面図である。
図2図1の部分拡大図である。
図3図2の作動状態を示す部分拡大図である。
図4図3に続く作動状態を示す部分拡大図である。
図5図4に続く作動状態を示す部分拡大図である。
図6】本発明に係る汚水処理装置の第2実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る汚水処理装置の実施形態について、以下に図1図6を参照して説明する。なお、全図及び全実施形態を通じて同一又は類似の構成部分に同符号を付した。
【0016】
本発明の第1実施形態に係る汚水処理装置1は、上流側嫌気処理槽2と、上流側嫌気処理槽2の下流側に配設された下流側嫌気処理槽3と、上流側嫌気処理槽2内の所定水深位置に配置され、嫌気性微生物により汚水内で発生した有機ガスGを収集するためのガス捕集部4と、下流側嫌気処理槽3内に収容される嫌気処理担体C1を逆洗する逆洗装置5と、を備える。
【0017】
逆洗装置5は、ガス捕集部4に接続されたガス供給管6と、下流側嫌気処理槽3内の水没位置に配設されてガス供給管6から送られる有機ガスを貯留するガス溜室7と、ガス溜室7内に挿通されてガス溜室7内の有機ガスGが所定量貯留された時に貯留された有機ガスGを上流側嫌気処理槽2側に排出する排出管8と、を備え、ガス溜室7内に貯留された有機ガスGが排出管8から排出されることにより、ガス溜室7外の水がガス溜室7内に流入し、下流側嫌気処理槽3の水位を瞬時に低下させて下流側嫌気処理槽3内に収容される嫌気処理担体C1を逆洗するように構成されている。
【0018】
上流側嫌気処理槽2は、図示例では、上流側の第1室2aと、越流壁9を介して仕切られた下流側の第2室の2室に分かれている。第1室2aには、汚水流入口10が設けられている。上流側嫌気処理槽2には、第1室2a及び第2室2bの其々に、嫌気処理担体C2、C3が充填されている。汚水流入口10から第1室2aに汚水Wが供給され、第1室2aに供給された汚水Wは、嫌気処理担体C2を通過した後、第1室2aの底から、越流壁9と流路壁9aとの間の流路9bを通り、越流壁9を超えて、第2室2bに流れ込む。第1室2a及び第2室2bの其々に充填された嫌気処理担体C2、C3は、ネット(図示せず。)等によって上下から挟まれて、バラけないように保持されている。
【0019】
嫌気処理担体C1~C3は、嫌気性微生物を増やし、付着させる役目を果たすもので、従来公知の担体を用いることができ、例えば、円空円筒状、粒状、小片等の形状をしたもので、多孔質、セラミックス、ポリエチレン、ポリウレタン等の材質で形成されたものが用いられ得る。又、汚水の流入側に近い嫌気処理担体C2、C3は外径が大きく内部構造の空隙も大きく、汚泥による閉塞が起こりにくい構造であるのに対し、流出側に近いC1は、濾過性能を高く保持させる必要があるところから、比表面積が大きく小粒形であるため汚泥による閉塞が起こり易く、逆洗操作等による洗浄を必要とする。
【0020】
下流側嫌気処理槽3は、越流壁11によって上流側嫌気処理槽2と仕切られている。図示例では、上流側嫌気処理槽2の第2室2bと下流側嫌気処理槽3との間に越流壁11が設けられている。第2室2bの嫌気処理担体C3を通過した水は、第2室2bの底から、越流壁11と流路壁11aの間の流路11bを通り、越流壁11を超えて、下流側嫌気処理槽3に流入する。下流側嫌気処理槽3は、下部開通部12a有する隔壁12を形成することができ、隔壁12の下流側に嫌気処理担体C1を充填することができる。越流壁11から越流した水は、越流壁11と隔壁12との間を下方に流れ、下部開通部12aを通って、嫌気処理担体C1を通過する。下流側嫌気処理槽3に充填されている嫌気処理担体C1は、上流側嫌気処理槽2に充填されている嫌気処理担体C2,C3より目の細かい担体が用いられる。下流側嫌気処理槽3の嫌気処理担体C1を通過した水は、放流口13から放流される。
【0021】
ガス捕集部4は、嫌気処理担体C2、C3の上方に配置され、ガス供給管6に接続された逆漏斗状部4aを有する。嫌気処理担体C2,C3の嫌気性微生物の代謝作用により汚水(有機性排水・廃棄物等)に含まれる有機物が有機ガス(メタンガス、アンモニアガス、硫化水素等)に分解され、汚水W内で発生する。汚水W内で発生した有機ガスGが、ガス捕集部4の逆漏斗状部4aによって捕集される。ガス捕集部4は、好ましくは、逆漏斗状部4aの下端縁が、上流側嫌気処理槽2の底部からの距離50cm以上から水面までの高さ位置に水没されるように配設され得る。例えば、ガス捕集部4により水深30cmで捕集した有機ガスGは、最大ゲージ圧0.03kgf/cmの圧力を保持した状態で、ガス供給管6を通じてガス溜室7に移送され、ガス溜室7内に圧入される。ガス捕集部4は、好ましくは、逆漏斗状部4aの上部が水面より上方に配置され、それにより、逆漏斗状部4aで捕集される有機ガスGとともに槽内の汚泥が捕集されてガス供給管6に汚泥が詰まることを防止する。
【0022】
ガス溜室7は、底7aの開いた箱状に形成されており、その天板7bにガス供給管6が連通状に接続されている。ガス溜室7は、越流壁11と隔壁12との間に配置することができる。排出管8は、一端が略U字状とされ、ガス溜室7の上部空間に開口8aを有する。排出管8の他端8bは、上流側嫌気処理槽2の上部、図示例では、第1室2aの上部に配置されている。排出管8の下端は、ガス溜室7の下端より高い位置に配置される。
【0023】
ガス捕集部4で捕集された有機ガスGが、ガス供給管6を通じてガス溜室7に圧入されることにより、ガス溜室7内の水位L1は低下していく(図3)。このとき、排出管8内にあった水も、排出管8のガス溜室7に接する側の液面が有機ガスGに押されて、排出管8内を移動し、ガス溜室7に接していない側の液面L2が上昇する。ガス溜室7内からガス溜室7外へ押し出された水に相当する水量の水は、放流口13から放流される。
【0024】
図4に示すように、ガス溜室7の水位L1が低下して、排出管8の下端部に達した瞬間に、ガス溜室7内の有機ガスGは排出管8の略U字状の底部の部分を通って排出管8内の水柱W2内を上昇することができるようになり、排出管8内の水柱W2中に有機ガスGが一気に入り込み、その結果、排出管8内の水柱W2の比重が小さくなって、ガス溜室7内の加圧状態の有機ガスGは、いわゆるブレークダウンを起こし、排出管8内の水柱W2を一気に押し出して、上流側嫌気処理槽2上に排出されるとともに、ガス溜室7の開いた底7aからガス溜室7に水が流入し、再びガス溜室7内の水位が上昇する。
【0025】
排出管8がブレークダウンを発生させるブレークポイントBPは、ガス捕集部4の下端位置4Lの水深D1より、浅い水深D2、即ち、鉛直方向上方位置にある。従って、排出管8の内部流路下端位置(BPに相当する。)は、ガス捕集部4の下端位置4Lの水深D1より浅い水深D2に配置される。排出管8の内部流路下端位置(BPに相当する。)が、ガス捕集部4の下端位置4Lの水深D1より深い位置にあると、有機ガスGのガス圧が、ブレークポイントでのガス溜室7内の水の水深圧より低くなり、ブレークポイントまでガス溜室7内の水位L1を低下させることができず、ガス捕集部4で捕集した有機ガスGがガス捕集部4の逆漏斗状部4aの下部開口から溢れて漏れ出すからである。
【0026】
上記ブレークダウンにより、図5に示すように、ガス溜室7に水が一気に流入することにより、ガス溜室7内の水位L1が一気に上昇するとともに、下流側嫌気処理槽3の水位L4が急激に低下し、嫌気処理担体C1内に下降流が発生し、嫌気処理担体C1の逆洗が行われる。この動作は、一日当たりの有機ガス発生量が一般家庭5人家族用の浄化槽(汚水処理装置)の場合、捕集できる有機ガス量が約100リットルと推定できるので、ガス溜室7の容量が50リットルあれば、1日に2回の逆洗が行われ、処理性能を連続的に維持することが可能となる。
【0027】
上記のように、本発明の汚水処理装置は、嫌気処理により発生する有機ガスを逆洗浄装置の駆動源としているため、送風機が不要で、無動力で稼働することができる。
【0028】
図6は、本発明の第2実施形態に係る汚水処理装置を示している。第2実施形態の汚水処理装置1は、第1実施形態に越流壁11に代えて、下部流通路14aを有する隔壁14が形成されている点が上記第1実施形態と相違し、その他の構成は上記第1実施形態と同様である。第2実施形態では、逆洗時に第2室2bの水位と下流側嫌気処理槽3の水位とが同時に低下する。
【0029】
本発明は、上記実施形態に限定解釈されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、上記第1実施形態において上流側嫌気処理槽を第1室と第2室とに分けたが、1室にしてもよいし、3室以上にすることもできる。また、逆洗装置は、上記実施形態に限らず、ガスをガス溜室に貯留してブレークダウンによりガス溜室内のガスを周囲の水と置き換えることによる逆洗装置であればよく、上記先行技術文献に開示されている逆洗装置、ガス作動式の容積ポンプを備える逆洗装置、その他の公知の逆洗装置を採用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 汚水処理装置
2 上流側嫌気処理槽
3 下流側嫌気処理槽
4 ガス捕集部
4a 逆漏斗状部
5 逆洗装置
6 ガス供給管
7 ガス溜室
8 排出管
図1
図2
図3
図4
図5
図6