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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168719
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】医用画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20231121BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20231121BHJP
   G01T 1/161 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
A61B6/03 360D
A61B5/055 380
G01T1/161 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079991
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 秀明
【テーマコード(参考)】
4C093
4C096
4C188
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093DA03
4C093FF16
4C093FF18
4C096AC04
4C096AD14
4C096DC19
4C096DC21
4C096DD13
4C188EE02
4C188KK33
(57)【要約】
【課題】医用画像中の対象臓器の位置を効率的に特定すること。
【解決手段】実施形態に係る医用画像処理装置は、第1抽出部と、第2抽出部と、第1特定部と、第2特定部と、セグメンテーション部とを備える。第1抽出部は、医用画像から当該医用画像に含まれる解剖学的組織の特徴点を表す解剖学的ランドマークを抽出する。第2抽出部は、解剖学的ランドマークと当該解剖学的ランドマークが属する臓器との関係を対応付けた情報に基づいて、第1抽出部で抽出された解剖学的ランドマークの中から、臓器に対応付けられた解剖学的ランドマークを抽出する。第1特定部は、第2抽出部で抽出された臓器の名称に基づいて、診断の対象となる対象臓器を特定する。セグメンテーション部は、医用画像から特定された対象臓器の領域を区分する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像から当該医用画像に含まれる解剖学的組織の特徴点を表す解剖学的ランドマークを抽出する第1抽出部と、
解剖学的ランドマークと当該解剖学的ランドマークが属する臓器との関係を対応付けた情報に基づいて、前記第1抽出部で抽出された前記解剖学的ランドマークの中から、前記臓器に対応付けられた解剖学的ランドマークを抽出する第2抽出部と、
前記第2抽出部で抽出された前記解剖学的ランドマークが属する臓器に基づいて、診断の対象となる対象臓器を特定する第1特定部と、
前記医用画像から特定された前記対象臓器の領域を区分するセグメンテーション部と、
を備える医用画像処理装置。
【請求項2】
前記第1特定部は、第2抽出部により抽出された前記解剖学的ランドマークの数に基づいて、前記対象臓器を特定する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記第1特定部は、前記臓器に予め定められた優先順位と、前記第2抽出部で抽出された前記解剖学的ランドマークが属する臓器とに基づいて、前記対象臓器を特定する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記医用画像は、付帯情報として病変部位の有無を表す情報を有し、
前記第1特定部は、前記付帯情報に基づいて、対象臓器を特定する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記セグメンテーション部による前記対象臓器の領域の区分の結果を表示部に表示させる表示制御部を更に備える、
請求項1乃至4の何れか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
ユーザから前記対象臓器の領域の区分の結果の修正入力を受付ける受付部を更に備え、
前記セグメンテーション部は、前記修正入力に従い、再度前記医用画像から特定された対象臓器の領域を区分する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像診断装置で撮影された医用画像に含まれる臓器をセグメンテーションすることで、診断の対象となる対象臓器を抽出する技術が知られている。
【0003】
従来技術では、セグメンテーションを実行するにあたり、事前設定されたアトラス情報等を使って対象臓器の位置を推定することが行われている。しかしながら、撮影範囲には様々なバリエーションがあり、アトラス情報が上手く適用できない可能性がある。また、セグメンテーションを実行する前に、ユーザが対象臓器の位置を指定することも行われるが、ユーザの操作が煩雑になる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、医用画像中の対象臓器の位置を効率的に特定することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る医用画像処理装置は、第1抽出部と、第2抽出部と、第1特定部と、第2特定部と、セグメンテーション部とを備える。第1抽出部は、医用画像から当該医用画像に含まれる解剖学的組織の特徴点を表す解剖学的ランドマークを抽出する。第2抽出部は、解剖学的ランドマークと当該解剖学的ランドマークが属する臓器との関係を対応付けた情報に基づいて、第1抽出部で抽出された解剖学的ランドマークの中から、臓器に対応付けられた解剖学的ランドマークを抽出する。第1特定部は、第2抽出部で抽出された臓器の名称に基づいて、診断の対象となる対象臓器を特定する。セグメンテーション部は、医用画像から特定された対象臓器の領域を区分する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る医用情報処理システムの全体構成の一例を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る機械学習によるランドマーク抽出モデルの生成方法の一例を示す説明図である。
図3図3は、実施形態に係る学習済モデルを用いた解剖学的ランドマークの抽出方法の一例を説明する図である。
図4図4は、実施形態に係る被検体の胸部及び腹部が撮影されたCT画像データの一例である。
図5図5は、実施形態に係る臓器特有ランドマークの位置の抽出処理の一例を説明する図である。
図6図6は、実施形態に係る医用画像処理装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、医用画像処理装置の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
図1は、実施形態に係る医用情報処理システムSの構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、医用情報処理システムSは、医用画像処理装置100と、医用画像診断装置200と、医用画像保管装置500とを備える。医用画像処理装置100は、院内LAN(Local Area Network)等のネットワーク300を介して医用画像保管装置500と通信可能に接続している。
【0010】
医用画像保管装置500は、医用画像診断装置200で撮影された医用画像を保管する。また、医用画像保管装置500は、被検体の識別情報(例えば、患者ID等)と対応付けて医用画像のデータを保管している。
【0011】
医用画像保管装置500は、例えば、PACS(Picture Archiving and Communication System)のサーバ装置であり、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)に準拠した形式で、医用画像データを保管する。医用画像は、例えばCT(Computed Tomography)画像データ、磁気共鳴画像データ、超音波診断画像データ等であるが、これらに限定されるものではない。
【0012】
医用画像保管装置500は、例えば、DB(Database)サーバ等のコンピュータ機器によって実現され、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等の記憶回路に医用画像のデータを記憶させる。
【0013】
医用画像診断装置200は、例えば、被検体の医用画像を撮影する装置である。医用画像診断装置200は、例えば、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、X線CT(Computed Tomography)装置、X線診断装置、超音波診断装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置等である。
【0014】
しかしながら、医用画像診断装置200は、これらに限定されるものではない。医用画像診断装置200は、モダリティともいう。なお、図1では1台の医用画像診断装置200を図示しているが、複数の医用画像診断装置200が設けられても良い。
【0015】
医用画像は、被検体が医用画像診断装置200によって撮影された画像である。医用画像は、例えば、磁気共鳴画像、X線CT画像、超音波画像等である。しかしながら、医用画像は、これらに限定されるものではない。
【0016】
医用画像処理装置100は、例えば、サーバ装置またはPC(Personal Computer)等の情報処理装置である。医用画像処理装置100は、NW(network)インタフェース110と、記憶回路120と、入力インタフェース130と、ディスプレイ140と、処理回路150とを備える。
【0017】
NWインタフェース110は、処理回路150に接続されており、医用画像処理装置100と医用画像診断装置200及び医用画像保管装置500との間で行われる各種データの伝送及び通信を制御する。NWインタフェース110は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。
【0018】
記憶回路120は、処理回路150で使用される各種の情報を記憶する。例えば、記憶回路120は、各臓器に特徴的な解剖学的ランドマークを表す臓器特有ランドマークに関する臓器特有ランドマーク情報等を記憶する。また、記憶回路120は、各種のプログラムを記憶する。なお、記憶回路120は、例えば、HDD(Hard disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。
【0019】
また、記憶回路120は、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体や、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ素子等との間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。
【0020】
入力インタフェース130は、ユーザによる操作を受け付けるトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。
【0021】
入力インタフェース130は、処理回路150に接続されており、ユーザから受け取った入力操作を電気信号へ変換し処理回路150へと出力する。なお、本明細書において入力インタフェースはマウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路150へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェースの例に含まれる。
【0022】
ディスプレイ140は、処理回路150による制御の下、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ140は、処理回路150によって生成された医用画像を含む読影ビューアや、ユーザからの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。ディスプレイ140は、表示部の一例である。
【0023】
ディスプレイ140は、具体的には、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ等である。なお、入力インタフェース130とディスプレイ140とは統合しても良い。例えば、入力インタフェース130とディスプレイ140とは、タッチパネルによって実現されても良い。
【0024】
処理回路150は、記憶回路120からプログラムを読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。本実施形態の処理回路150は、取得機能151と、第1抽出機能152と、第2抽出機能153と、第1特定機能154と、第2特定機能155と、セグメンテーション機能156と、表示制御機能157と、受付機能158とを備える。
【0025】
第1抽出機能152は、第1抽出部の一例である。第2抽出機能153は、第2抽出部の一例である。第1特定機能154は第1特定部の一例である。第2特定機能155は第2特定部の一例である。セグメンテーション機能156は、セグメンテーション部の一例である。表示制御機能157は、表示制御部の一例である。受付機能158は、受付部の一例である。
【0026】
ここで、例えば、処理回路150の構成要素である取得機能151、第1抽出機能152、第2抽出機能153、第1特定機能154、第2特定機能155、セグメンテーション機能156、表示制御機能157及び受付機能158の各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路120に記憶されている。処理回路150は、プロセッサである。例えば、処理回路150は、プログラムを記憶回路120から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路150は、図1の処理回路150内に示された各機能を有することとなる。
【0027】
なお、図1においては単一のプロセッサにて取得機能151、第1抽出機能152、第2抽出機能153、第1特定機能154、第2特定機能155、セグメンテーション機能156、表示制御機能157及び受付機能158で行われる処理機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路150を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
【0028】
また、図1においては単一の記憶回路120が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、複数の記憶回路を分散して配置して、処理回路150は個別の記憶回路から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。
【0029】
上記説明では、「プロセッサ」が各機能に対応するプログラムを記憶回路から読み出して実行する例を説明したが、実施形態はこれに限定されない。「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit )、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device :CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。
【0030】
プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。一方、プロセッサがASICである場合、記憶回路120にプログラムを保存する代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。
【0031】
なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサ毎に単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0032】
取得機能151は、ネットワーク300及びNWインタフェース110を介して、医用画像保管装置500から、被検体を撮影した医用画像を取得する。なお、取得機能151は、医用画像診断装置200から医用画像を取得しても良い。
【0033】
例えば、取得機能151は、医用画像保管装置500から、診断の対象となる被検体の患者IDに対応する医用画像を取得する。
【0034】
第1抽出機能152は、取得機能151により取得された医用画像データIGから、解剖学的組織に含まれる局所的な特徴点を表す解剖学的ランドマーク(Anatomical landmark)を抽出する。例えば、第1抽出機能152は、解剖学的情報に基づいて、解剖学的ランドマークを抽出する。
【0035】
解剖学的情報とは、例えば、骨、及び臓器等の解剖学的組織に関する特徴点の位置に関する情報である。解剖学的情報は、解剖学的ランドマーク情報ともいう。解剖学的ランドマークは、例えば、「腎臓の下端」、「第1~12肋骨の先端」等、解剖学的組織に含まれる局所的な特徴点である。
【0036】
解剖学的ランドマークの抽出手法は、公知の画像処理の技術を採用可能である。例えば、第1抽出機能152は、ランドマーク抽出モデル(解剖学的情報の一例)に医用画像を入力し、出力結果に基づいて、解剖学的ランドマークを抽出する。
【0037】
ランドマーク抽出モデルは、解剖学的情報の一例である。ランドマーク抽出モデルは、例えば、医用画像の入力に対して、解剖学的ランドマークの座標情報及び当該解剖学的ランドマークの識別情報(以下、ラベルともいう)を出力する学習済モデルである。例えば、ランドマーク抽出モデルは、外部の学習装置によって生成される。なお、医用画像処理装置100がランドマーク抽出モデルの生成を行ってもよい。
【0038】
また、本実施形態では、ランドマーク抽出モデルは、外部のワークステーション等が備える記憶装置に記憶されるものとするが、記憶回路120にランドマーク抽出モデルが記憶されていてもよい。
【0039】
ここで、ランドマーク抽出モデルの生成方法について説明する。例えば、学習装置は、機械学習(深層学習を含む)を行うことにより、ランドマークモデルを生成する。図2は、機械学習によるランドマーク抽出モデルの生成方法の一例を示す説明図である。
【0040】
例えば、学習装置は、図2に示すように、入力側教師データである「医用画像データ」と、出力側教師データである「医用画像中の各解剖学的ランドマークの座標情報及びラベル」とを学習用データセットとして機械学習エンジンに入力し、機械学習を行うことで、医用画像データの入力に応じて、当該医用画像中の各解剖学的ランドマークの座標情報及びラベルを出力するように機能付けられたランドマーク抽出モデル(学習済みモデル)を生成する。
【0041】
ここで、機械学習エンジンとしては、例えば、公知である非特許文献「クリストファー M. ビショップ(Christopher M. Bishop)著、「パターン認識と機械学習(Pattern recognition and machine learning)」、(米国)、第1版、スプリンガー(Springer)、2006年、P.225-290」に記載のニューラルネットワーク(Neural Network)等を適用することができる。
【0042】
なお、機械学習エンジンについては、上記したニューラルネットワークの他、例えば、ディープラーニングや、ロジスティック(Logistic)回帰分析、非線形判別分析、サポートベクターマシン(Support Vector Machine:SVM)、ランダムフォレスト(Random Forest)、ナイーブベイズ(Naive Bayes)等の各種のアルゴリズムを用いるものでもよい。
【0043】
ここで、図3は、学習済モデルを用いた解剖学的ランドマークの抽出方法の一例を説明する図である。例えば、第1抽出機能152は、図3に示すように、取得機能151により取得された医用画像データを、ランドマーク抽出モデル(学習済モデル)に入力する。そして、第1抽出機能152は、ランドマーク抽出モデルから出力される、入力された医用画像データに存在する解剖学的ランドマークの座標情報及びラベルに基づいて、解剖学的ランドマークの抽出を行う。
【0044】
以下、胸部及び腹部(大動脈弓、大動脈弁、心尖部、前肝部、及び後肝部等)が撮影されたCT画像データを医用画像データとして、ランドマーク抽出モデルに入力する場合を例に第1抽出機能152の処理について説明する。図4は、被検体の胸部及び腹部が撮影されたCT画像データの一例である。第1抽出機能152は、CT画像データIGを、NWインタフェース110を介して、外部のワークステーションの記憶装置に記憶されたランドマーク抽出モデルに入力する。
【0045】
ランドマーク抽出モデルは、CT画像データIGの入力に対して、CT画像データIG上に存在する複数の解剖学的ランドマークである、大動脈弓、大動脈弁、心尖部、前肝部、及び後肝部等に対応する特徴点の座標情報と、大動脈弓、大動脈弁、心尖部、前肝部、及び後肝部等を夫々表すラベル(DK、DB、SS、ZK、及びKK等)とを対応付けて出力する。
【0046】
例えば、ランドマーク抽出モデルは、「DK(x1,y1,z1),DB(x2,y2,z2),SS(x3,y3,z3),ZK(x4,y4,z4),KK(x5,y5,z5))」のように、特徴点(解剖学的ランドマーク)を識別するラベルと、当該特徴点の座標を表すテキストデータを出力する。なお、座標情報及びラベルは、DICOMの付帯情報として記録可能な形式のデータとして出力されてもよい。
【0047】
そして、第1抽出機能152は、NWインタフェース110を介して、ランドマーク抽出モデルから出力された、各解剖学的ランドマークの座標情報及びラベルを取得する。
【0048】
図1に戻り、説明を続ける。第2抽出機能153は、臓器特有ランドマーク情報に基づいて、第1抽出機能152で抽出された解剖学的ランドマークから、臓器特有ランドマークを抽出する。
【0049】
具体的には、第2抽出機能153は、臓器特有ランドマーク情報を参照し、第1抽出機能152により抽出された解剖学的ランドマークのうち、臓器特有ランドマークとして登録されている解剖学的ランドマークの座標情報及びラベルを抽出する。
【0050】
臓器特有ランドマーク情報は、例えば、「解剖学的ランドマーク:特徴点DK、DB、SS」と「臓器:心臓」、「解剖学的ランドマーク:特徴点ZK、KK」と「臓器:肝臓」のように、解剖学的ランドマークのラベルと、当該ラベルで識別される解剖学的ランドマークが属する臓器の名称とが対応付けられた情報である。臓器特有ランドマーク情報は、例えば、記憶回路120に記憶される。
【0051】
例えば、「解剖学的ランドマーク:特徴点DK、DB、SS」と「臓器:心臓」とが臓器特有ランドマーク情報として登録されている場合、第2抽出機能153は、特徴点DK、DB、及びSSに対応する解剖学的ランドマークの座標情報及びラベルを取得する。また、例えば、「解剖学的ランドマーク:特徴点ZK、KK」と「臓器:肝臓」とが臓器特有ランドマーク情報として登録されている場合、第2抽出機能153は、特徴点ZK、及びKKに対応する解剖学的ランドマークの座標情報及びラベルを取得する。
【0052】
図5は、臓器特有ランドマークの抽出結果の一例を示す図である。図5は、図4に示した医用画像データIGから臓器特有ランドマークを抽出した場合の一例を表している。第2抽出機能153は、図4に示した医用画像データIGから、図5において、特徴点DK、DB、SS、ZK、及びKKとして表された臓器特有ランドマークの座標情報と、夫々を識別するラベルであるDK、DB、SS、ZK、及びKKとを抽出する。
【0053】
図1に戻り、説明を続ける。第1特定機能154は、臓器特有ランドマークの属する臓器に基づいて、診断の対象となる対象臓器を特定する。具体的には、第1特定機能154は、臓器特有ランドマーク情報を参照し、第2抽出機能153により抽出された解剖学的ランドマークのラベルに対応する臓器を対象臓器として特定する。
【0054】
また、複数の対象臓器が特定された場合、第1特定機能154は、例えば、抽出された臓器特有ランドマークの個数が最も多い臓器を対象臓器として特定する。また、抽出された臓器特有ランドマークの個数が同数の場合は、第1特定機能154は、例えば、予め定めた優先順位に従って対象臓器を特定する。
【0055】
なお、第1特定機能154は、優先順位のみに従って対象臓器を特定してもよいし、他の基準に従って対象臓器を特定してもよい。例えば、第1特定機能154は、医用画像データIG上の中心位置により近い臓器特有ランドマークがある臓器を対象臓器としてもよい。
【0056】
また、例えば、医用画像データIGのDICOMの付帯情報として病変部位の情報が記録されている場合、第1特定機能154は、当該病変部位の有無に従って対象臓器を特定してもよい。
【0057】
この場合、まず、第1特定機能154は、取得機能151により取得された医用画像データIGのDICOMの付帯情報を参照し、病変部位の情報が記録されているか否かを確認する。病変部位の情報が記録されている場合、第1特定機能154は、臓器特有ランドマーク情報を参照し、病変部位(臓器名)に対応する臓器特有ランドマークを特定する。
【0058】
次いで、第1特定機能154は、第2抽出機能153により抽出された臓器特有ランドマークの中に、DICOMの付帯情報として記録された病変部位に対応する臓器特有ランドマークが含まれるか否かを確認する。当該病変部位に対応する臓器特有ランドマークが第2抽出機能153により抽出されている場合、第1特定機能154は、抽出された臓器特有ランドマークの個数に関わらず、当該臓器特有ランドマークに対応する臓器を対象臓器として特定する。
【0059】
また、例えば、第1特定機能154は、臓器特有ランドマーク毎に、予め臓器特有ランドマークに対応する複数の画素値の平均値の閾値を定めておき、閾値を超える(又は下回る)画素値を示す臓器特有ランドマークの数に従って、対象臓器を特定してもよい。
【0060】
この場合、第1特定機能154は、まず、第2抽出機能153により抽出された各臓器特有ランドマークに対応する複数の画素(例えば、臓器特有ランドマークの中心座標から半径nピクセル内の全画素)の画素値の平均値を算出する。次いで、第1特定機能154は、各臓器特有ランドマークについて、算出した画素値の平均値が、予め定められた閾値を超える(又は下回る)か否かを確認する。
【0061】
そして、第1特定機能154は、臓器毎に、閾値を超える(又は下回る)画素値を示す臓器特有ランドマークの数を算出する。例えば、第1特定機能154は、閾値を超える(又は下回る)画素値を示す臓器特有ランドマークの数が最も多い臓器を対象臓器として特定する。
【0062】
また、第1特定機能154は、医用画像データIG以外の情報に基づいて、対象臓器を特定してもよい。例えば、第1特定機能154は、電子カルテシステムのサーバ装置等に記憶された被検体の電子カルテを参照し、電子カルテに記録された病変部位に基づいて、対象臓器を特定してもよい。
【0063】
また、例えば、第1特定機能154は、放射線部門情報システム(RIS:Radiology Information Systems)のサーバ装置等に記憶された検査オーダ情報を参照し、検査オーダ情報に記録された検査対象の臓器に関する情報に基づいて、対象臓器を特定してもよい。
【0064】
また、例えば、第1特定機能154は、ユーザから医用画像データIG上における領域の指定入力を受け付け、当該入力の内容に従って、対象臓器を特定してもよい。
【0065】
図5の例で、抽出された臓器特有ランドマークの個数に従って対象臓器を特定する場合、第1特定機能154は、臓器特有ランドマーク情報を参照し、心臓の臓器特有ランドマークが3個抽出され、肝臓の臓器特有ランドマークの個数が2個抽出されたことを特定する。そして、第1特定機能154は、臓器特有ランドマークの個数が多い心臓を対象臓器として特定する。
【0066】
図1に戻り、説明を続ける。第2特定機能155は、特定された対象臓器に基づいて、セグメンテーション範囲及び開始点を特定する。具体的には、まず、第2特定機能155は、取得機能151により取得された医用画像データIGと、第1特定機能154により特定された対象臓器の臓器特有ランドマークとに基づいて、医用画像データIG上における対象臓器の輪郭を抽出する。なお、対象臓器の輪郭の抽出には、公知のエッジ検出技術等を利用可能である。
【0067】
第2特定機能155は、例えば、第1特定機能154により特定された対象臓器の臓器特有ランドマークに基づいて、医用画像データIG上のエッジ検出処理を実行する範囲を決定する。そして、第2特定機能155は、決定した領域に対して公知のエッジ検出処理を実行することにより、対象臓器の輪郭を抽出する。
【0068】
ここで、医用画像データIG上のエッジ検出処理を実行する範囲は、対象臓器の臓器特有ランドマークが存在する位置又は領域に基づき規定される。例えば、対象臓器の臓器特有ランドマークの各座標を包含する範囲が、医用画像データIG上のエッジ検出処理を実行する範囲として規定される。
【0069】
次いで、第2特定機能155は、例えば、抽出した対象臓器の輪郭の内側をセグメンテーション範囲として特定する。また、第2特定機能155は、例えば、特定したセグメンテーション範囲中の、標準臓器モデルに定められるセグメンテーションの開始点に対応する位置を特定する。なお、標準臓器モデルは、例えば、臓器毎に設けられる形状モデルである。標準臓器モデルは、例えば、標準的な体型の成人男性又は成人女性の臓器の形状に基づいて生成される。
【0070】
図1に戻り、説明を続ける。セグメンテーション機能156は、医用画像データIGから特定された対象臓器の領域を区分するセグメンテーション処理を実行する。ここで、本実施形態において、セグメンテーションとは、画像中に描出されている注目領域(対象臓器が描出された領域)と注目領域以外の領域とを区別する処理のことである。
【0071】
表示制御機能157は、各種情報をディスプレイ140に表示させる制御を行う。例えば、表示制御機能157は、セグメンテーション機能156によるセグメンテーション結果をディスプレイ140に表示させる制御を行う。
【0072】
受付機能158は、ユーザから各種操作入力を受付ける。例えば、受付機能158は、セグメンテーション結果の修正入力を受付ける。具体的には、受付機能158は、まず、ユーザからセグメンテーション結果を修正するか否かの入力を受付ける。ユーザから修正する旨の入力を受付けた場合、受付機能158は、ユーザからセグメンテーション範囲及び開始点の指定入力を受付ける。
【0073】
受付機能158がユーザからセグメンテーション範囲及び開始点の指定入力を受付けた場合、セグメンテーション機能156は、当該セグメンテーション範囲及び開始点に従い、再度セグメンテーション処理を実行する。
【0074】
次に、以上のように構成された医用画像処理装置100で実行される処理について説明する。図6は、医用画像処理装置100が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0075】
まず、取得機能151は、診断対象となる被検体の医用画像データIGを取得する(S1)。具体的には、取得機能151は、医用画像保管装置500から、診断対象となる被検体の患者IDに対応する医用画像データIGを取得する。
【0076】
次いで、第1抽出機能152は、取得された医用画像データIGから複数の解剖学的ランドマークを抽出する(ステップS2)。具体的には、第1抽出機能152は、ランドマーク抽出モデルに医用画像データIGを入力する。そして、第1抽出機能152は、ランドマーク抽出モデルから出力される解剖学的ランドマークを表す座標情報及びラベルを取得する。
【0077】
次いで、第2抽出機能153は、臓器特有ランドマークを抽出する(ステップS3)。具体的には、第2抽出機能153は、臓器特有ランドマーク情報を参照し、第1抽出機能152により抽出された解剖学的ランドマークのうち、臓器特有ランドマークとして登録されている解剖学的ランドマークの座標情報及びラベルを取得する。
【0078】
次いで、第1特定機能154は、対象臓器を特定する(ステップS4)。具体的には、第1特定機能154は、臓器特有ランドマーク情報を参照し、ステップS3で抽出された解剖学的ランドマークのラベルに対応する臓器を対象臓器として特定する。
【0079】
次いで、第2特定機能155は、セグメンテーション範囲及び開始点を特定する(ステップS5)。具体的には、第2特定機能155は、ステップS1で取得された医用画像データIGと、ステップS4で特定された臓器特有ランドマークとに基づいて、対象臓器の輪郭を抽出する。次いで、第2特定機能155は、抽出した輪郭に基づいて、セグメンテーション範囲を特定する。また、第2特定機能155は、抽出した対象臓器の輪郭と、対象臓器の標準モデルとに基づいて、セグメンテーションの開始点を特定する。
【0080】
次いで、セグメンテーション機能156は、特定されたセグメンテーション範囲及び開始点に基づいて、セグメンテーション処理を実行する(ステップS6)。次いで、表示制御機能157は、セグメンテーション処理の実行結果をディスプレイ140に表示させる制御を行う(ステップS7)。次いで、受付機能158は、所定期間内に、ユーザからセグメンテーション結果の修正指示の入力を受付けたか否かを確認する(ステップS8)。
【0081】
所定時間内に修正指示の入力を受付けなかった場合(ステップS8:No)、本処理を終了する。一方、所定時間内に修正指示の入力を受付けた場合(ステップS8:Yes)、セグメンテーション機能156は、ユーザの修正指示の入力に従い、セグメンテーション範囲及び開始点を特定する(ステップS9)。その後、ステップS6の処理に移行する。
【0082】
上述したように、本実施形態に係る医用画像処理装置100は、医用画像データIGから、複数の解剖学的ランドマークを抽出し、抽出された複数の解剖学的ランドマークから、解剖学的ランドマークと臓器とを対応付けた臓器特有ランドマーク情報に基づいて、臓器特有ランドマークを抽出する。また、医用画像処理装置100は、臓器特有ランドマークの属する臓器に基づいて、対象臓器を特定する。また、医用画像処理装置100は、特定した対象臓器から、セグメンテーション範囲及び開始点を特定し、当該セグメンテーション範囲及び開始点に基づいて、セグメンテーションを実行する。
【0083】
これにより、本実施形態に係る医用画像処理装置100は、解剖学的ランドマークの抽出結果を利用して対象臓器を特定することができる。したがって、本実施形態に係る医用画像処理装置100は、例えば、特殊な撮影範囲の医用画像データIGからも対象臓器を特定することができる。
【0084】
また、本実施形態に係る医用画像処理装置100は、特定した対象臓器から、セグメンテーション範囲及び開始点を特定できる。したがって、本実施形態に係る医用画像処理装置100は、ユーザからセグメンテーション範囲及び開始点を受付けることなく、対象臓器に応じたセグメンテーション処理を実行することができる。
【0085】
以上より、本実施形態に係る医用画像処理装置100によれば、医用画像中の対象臓器の位置を効率的に特定することができる。
【0086】
なお、上述した実施形態は、各装置が有する構成又は機能の一部を変更することで、適宜に変形して実施することも可能である。そこで、以下では、上述した実施形態に係る変形例を他の実施形態として説明する。なお、以下では、上述した実施形態と異なる点を主に説明することとし、既に説明した内容と共通する点については詳細な説明を省略する。また、以下で説明する変形例は、個別に実施されてもよいし、適宜組み合わせて実施されてもよい。
【0087】
(変形例)
上述の実施形態においては、医用画像処理装置100が解剖学的ランドマークの抽出処理を実行する形態について説明した。しかしながら、解剖学的ランドマークの抽出処理を実行する装置は、医用画像処理装置100に限定されない。例えば、医用画像診断装置200が解剖学的ランドマークの抽出処理を実行してもよい。
【0088】
医用画像診断装置200がX線CT装置である場合、例えば、X線CT装置が備えるコンソール装置の処理回路が解剖学的ランドマークの抽出処理を実行する。この場合、処理回路は、X線CT装置で撮影・再構成したCT画像データを、外部のワークステーション等に記憶された、ランドマーク抽出モデルに入力する。そして、処理回路は、ランドマーク抽出モデルから出力された、各解剖学的ランドマークの座標情報及びラベルを取得する。
【0089】
また、処理回路は、取得した各解剖学的ランドマークの座標情報及びラベルをCT画像データのDICOMの付帯情報として記録する処理を行う。処理回路は、解剖学的ランドマークの座標情報及びラベルがDICOMの付帯情報として記録されたCT画像データを医用画像保管装置500に送信する。
【0090】
なお、処理回路は、取得した各解剖学的ランドマークの座標情報及びラベルの情報を表すテキストデータを生成してもよい。この場合、処理回路は、CT画像データとともに医用画像保管装置500に送信する。
【0091】
本変形例では、医用画像処理装置100の取得機能151は、解剖学的ランドマークの座標情報及びラベルがDICOMの付帯情報として記録されたCT画像データ(医用画像データ)を取得することができる。
【0092】
このため、本変形例に係る医用画像処理装置100は、ランドマーク抽出モデルを記憶する外部のワークステーション等と通信を行うことなく、医用画像データIG上の臓器特有ランドマークを抽出することができる。つまり、本変形例によれば、医用画像処理装置100の処理負担を軽減することができ、かつ、医用画像中の対象臓器の位置を効率的に推定することができる。
【0093】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、医用画像中の対象臓器の位置を効率的に特定することができる。
【0094】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0095】
100 医用画像処理装置
110 NWインタフェース
120 記憶回路
130 入力インタフェース
140 ディスプレイ
150 処理回路
151 取得機能
152 第1抽出機能
153 第2抽出機能
154 第1特定機能
155 第2特定機能
156 セグメンテーション機能
157 表示制御機能
158 受付機能
200 医用画像診断装置
500 医用画像保管装置
S 医用情報処理システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6