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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168732
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】接触判定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/00 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
G01B7/00 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080014
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 新一
(72)【発明者】
【氏名】田口 翔
【テーマコード(参考)】
2F063
【Fターム(参考)】
2F063AA49
2F063BA08
2F063HA04
2F063LA06
2F063LA24
(57)【要約】
【課題】断線検出用の構成要素を必要とすることなく、断線等の接触不良を検出可能な接触判定装置を提供する。
【解決手段】接触判定装置は、センサ部から出力される検出信号と等しい周波数及び位相を持つ正弦波の第1参照信号FAと、検出信号と等しい周波数で位相がずれた正弦波の第2参照信号FBとを生成する参照信号生成部と、検出信号に第1参照信号及び第2参照信号を乗算した第1及び第2復調信号を生成する復調回路と、第1及び第2復調信号の直流成分である第1及び第2直流信号を抽出するローパスフィルタと、第1直流信号に基づいて接触判定する接触判定部と、第1及び第2直流信号に基づいて、センサ部と検出回路との接続状態を判定する接触判定部とを含み、接触判定部は、第1及び第2直流信号の変化方向が同じ場合には接続状態は不良と判定し、逆の場合には正常と判定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象が接触可能な接触部位に設けられる検出電極と前記検出対象との間の静電容量に応じた振幅を持つ正弦波の検出信号を出力するセンサ部と、
前記検出信号に基づいて、前記接触部位に前記検出対象が接触しているかどうかを判定する検出回路とを備え、
前記検出回路は、
前記検出信号と等しい周波数を持ち、かつ、前記検出信号と等しい位相を持った正弦波の第1参照信号を生成する第1参照信号生成部と、
前記検出信号と等しい周波数を持ち、かつ、前記検出信号に対して位相がずれた正弦波の第2参照信号を生成する第2参照信号生成部と、
前記センサ部から出力される前記検出信号に前記第1参照信号を乗算した信号を第1復調信号として生成するとともに、前記センサ部から出力される前記検出信号に前記第2参照信号を乗算した信号を第2復調信号として生成する復調回路と、
前記第1復調信号の直流成分である第1直流信号を抽出する第1ローパスフィルタと、
前記第2復調信号の直流成分である第2直流信号を抽出する第2ローパスフィルタと、
前記第1直流信号に基づいて、前記接触部位に前記検出対象が接触しているかどうかを判定する接触判定部と、
を含み、
前記接触判定部は、
前記第1直流信号の変化量が第1閾値を超えた最新の変化方向と、前記第2直流信号の変化量が第2閾値を超えた最新の変化方向とが同じ場合には、前記センサ部と前記検出回路の接続状態は不良であると判定し、
前記第1直流信号の変化量が第1閾値を超えた最新の変化方向と、前記第2直流信号の変化量が第2閾値を超えた最新の変化方向とが逆の場合には、前記センサ部と前記検出回路の接続状態は正常であると判定する、接触判定装置。
【請求項2】
前記接触判定部は、前記接続状態は不良であると判定した場合、接触状態を非接触であると見なす、請求項1に記載の接触判定装置。
【請求項3】
前記接触判定部は、前記接触部位に前記検出対象が接触していない状態における前記第1直流信号を基準値として更新し、
前記接触判定部は、前記接続状態が不良であると判定すると、前記基準値を更新しない、請求項1又は2に記載の接触判定装置。
【請求項4】
前記接触判定部は、前記第1直流信号と、前記基準値との差が第1接触閾値以上である状態の継続時間をカウントするタイマを有し、
前記タイマがカウントする継続時間が、所定時間以上になると、前記接触部位に前記検出対象が接触したと判定し、
前記接続状態が不良であると判定すると、前記タイマがカウントする継続時間をリセットする、請求項3に記載の接触判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接触判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路走行時や低速走行時などの条件下に限り、自動運転可能な自動車がある。このような自動車は、自動運転と手動運転を安全に切り替えるために、運転者の状態を検知する必要がある。運転者の状態を検知する装置の一つとして、運転者のステアリングホイール掌握状態を検出する装置がある。ステアリングホイール掌握状態を検知するための接触判定装置では、センサを取り付ける位置に、接触判定回路を設けられる空間が無く、センサと接触判定回路を接続する配線が必要となる。ステアリングホイール用の接触判定装置は、安全確保に重要な装置であるため、配線の断線検出の機能が必要である。従来より、ステアリングホイールにセンサ電極と、断線検出電極と、を備えて、断線検出を可能にした接触判定装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-178527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の接触判定装置は、断線検出のために、断線検出電極と、断線検出電極に接続される断線検出用信号線とを設けており、断線検出用の構成要素が必要である。
【0005】
そこで、断線検出用の構成要素を必要とすることなく、断線等の接触不良を検出可能な接触判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態の接触判定装置は、検出対象が接触可能な接触部位に設けられる検出電極と前記検出対象との間の静電容量に応じた振幅を持つ正弦波の検出信号を出力するセンサ部と、前記検出信号に基づいて、前記接触部位に前記検出対象が接触しているかどうかを判定する検出回路とを備え、前記検出回路は、前記検出信号と等しい周波数を持ち、かつ、前記検出信号と等しい位相を持った正弦波の第1参照信号を生成する第1参照信号生成部と、前記検出信号と等しい周波数を持ち、かつ、前記検出信号に対して位相がずれた正弦波の第2参照信号を生成する第2参照信号生成部と、前記センサ部から出力される前記検出信号に前記第1参照信号を乗算した信号を第1復調信号として生成するとともに、前記センサ部から出力される前記検出信号に前記第2参照信号を乗算した信号を第2復調信号として生成する復調回路と、前記第1復調信号の直流成分である第1直流信号を抽出する第1ローパスフィルタと、前記第2復調信号の直流成分である第2直流信号を抽出する第2ローパスフィルタと、前記第1直流信号に基づいて、前記接触部位に前記検出対象が接触しているかどうかを判定する接触判定部と、を含み、前記接触判定部は、前記第1直流信号の変化量が第1閾値を超えた最新の変化方向と、前記第2直流信号の変化量が第2閾値を超えた最新の変化方向とが同じ場合には、前記センサ部と前記検出回路の接続状態は不良であると判定し、前記第1直流信号の変化量が第1閾値を超えた最新の変化方向と、前記第2直流信号の変化量が第2閾値を超えた最新の変化方向とが逆の場合には、前記センサ部と前記検出回路の接続状態は正常であると判定する。
【発明の効果】
【0007】
断線検出用の構成要素を必要とすることなく、断線等の接触不良を検出可能な接触判定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の接触判定装置100を実装したステアリングホイール10を示す図である。
図2】静電センサ110の出力正弦波の一例を示す図である。
図3】基準値を用いた接触の判定を説明する図である。
図4】AFE120Aを示す図である。
図5】AFE120Aに含まれる参照信号生成部40を示す図である。
図6A】比較用の接触判定装置における問題点を説明する図である。
図6B】比較用の接触判定装置における問題点を説明する図である。
図7A】第1直流信号CA及び第2直流信号CBの特性を示す図である。
図7B】第1直流信号CA及び第2直流信号CBの特性を示す図である。
図8】接触判定装置100のMPU120Bが実行する判定処理を示す図である。
図9】sub初期設定の処理の一例を示すフローチャートである。
図10】sub接続状態判定の処理の一例を示すフローチャートである。
図11】sub接触判定の処理の一例を示すフローチャートである。
図12】subBase計算の処理の一例を示すフローチャートである。
図13A】接触判定装置100の効果の一例を説明する図である。
図13B】接触判定装置100の効果の一例を説明する図である。
図14A】接触判定装置100の効果の一例を説明する図である。
図14B】接触判定装置100の効果の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の接触判定装置を適用した実施形態について説明する。
【0010】
<実施形態>
図1は、実施形態の接触判定装置100を実装したステアリングホイール10を示す図である。図1に示すように、ステアリングホイール10は、車両に搭載され、グリップ11の内部に接触判定装置100の静電センサ110が実装されている。静電センサ110は、センサ部の一例である。接触判定装置100は、運転者の手Hがステアリングホイール10のグリップ11に接触しているかどうかを判定する。手Hは、検出対象の一例である。ステアリングホイール10のグリップ11は、検出対象が接触可能な接触部位の一例である。
【0011】
以下、車両の運転者を接触判定装置100の操作者と称す。接触判定装置100は、静電センサ110が設けられた物体に、検出対象としての操作者の手Hが接触しているかどうかを判定する接触判定装置100について説明する。静電センサ110が設けられた物体に操作者が触れることを操作者の操作と称す。
【0012】
<接触判定装置100の構成>
接触判定装置100は、コネクタ105、静電センサ110及びHOD_ECU(Hands Off Detection Electronic Control Unit)120を含む。HOD_ECU120は検出回路の一例である。コネクタ105は、HOD_ECU120の信号端子及びグランド端子を有するコネクタである。コネクタ105は、ステアリングホイール10の信号端子及びグランド端子を有するコネクタ15と接続される。コネクタ105が有する複数の信号端子と、コネクタ15が有する複数の信号端子とを接続する信号線には、図1に示す信号線12が含まれる。図1では、静電センサ110に接続された信号線12以外の信号線を省略する。ステアリングホイール10のグランド端子は、ステアリングホイール10のグリップ11に1周にわたって設けられるコアメタルを介して、ステアリングホイール10が取り付けられるコラムシャフト10Aに電気的に接続されている。コネクタ105とコネクタ15とを接続することにより、HOD_ECU120のグランド電位は、ステアリングホイール10及びコラムシャフト10Aのグランド電位と等しくなる。
【0013】
静電センサ110は、ステアリングホイール10のグリップ11に1周にわたって設けられるコアメタルとは絶縁された状態で、ステアリングホイール10のグリップ11の一周にわたって設けられており、例えば金属製の電極で構成される。静電センサ110は、信号線12を介してHOD_ECU120に接続されている。静電センサ110は、複数枚の電極を用いても良い。例えば、ステアリングホイール10のグリップ11に90度ずつ4つの静電センサ110を設ければ、2本の手Hが90度以上離れた位置に接触していることを検知できる。
【0014】
HOD_ECU120は、一例としてインストルメントパネルの内部に設けられている。HOD_ECU120は、AFE(Analog Front End)120AとMPU(Micro Processor Unit)120Bとを有する。
【0015】
AFE120Aは、静電センサ110に接続されており、MPU120Bから入力される指令に基づいて静電センサ110に正弦波(入力正弦波)を入力し、静電センサ110から出力される正弦波(出力正弦波)を取得する。AFE120Aは、入力正弦波と出力正弦波から静電センサ110の容量値(静電容量)を取得し、デジタル変換するとともにローパスフィルタによるノイズ除去等を行って振幅AD値としてMPU120Bに出力する。振幅AD値は、一例として単位を持たないカウント値で表される。ローパスフィルタによるノイズ除去を行うことにより、所定周波数以上のノイズを取り除いた振幅AD値を取得することができる。AFE120Aは、振幅AD値としての第1直流信号CAと第2直流信号CBとを生成してMPU120Bに出力する。第1直流信号CAは振幅AD値であり、第2直流信号CBは、第1直流信号CAとは別に、静電センサ110の容量値(静電容量)に基づいて生成される直流信号である。第1直流信号CAと第2直流信号CBについては、図4図7A、及び図7Bを用いて後述する。
【0016】
MPU120Bは、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、入出力インターフェース、及び内部バス等を含むコンピュータによって実現される。MPU120Bには一例としてECU50が接続されている。ECU50は、ステアリングホイール10が搭載される車両の電子機器を制御する制御装置である。電子機器は、例えば車両の自動運転等に関する電子機器であってよい。
【0017】
MPU120Bは、主制御部121、接触判定部122、及びメモリ124を有する。主制御部121、接触判定部122は、MPU120Bが実行するプログラムの機能(ファンクション)を機能ブロックとして示したものである。また、メモリ124は、MPU120Bのメモリを機能的に表したものである。
【0018】
主制御部121は、MPU120Bの制御処理を統括する処理部であり、接触判定部122が行う処理以外の処理を実行する。
【0019】
接触判定部122は、振幅AD値(第1直流信号CA)から基準値を減算して得る差分が閾値を超えているかどうかを判定することにより、手Hがグリップ11に接触しているかどうかを判定する。これは、接触判定部122が実行する接触判定処理である。また、接触判定部122は、判定結果を表すデータをECU50に通知する。ここで、基準値とは、接触判定部122がステアリングホイール10のグリップ11に手Hが接触しているかどうかを判定する際に用いる静電センサ110の容量値の基準値であり、グリップ11に手Hが接触していない状態における静電センサ110の容量値である。
【0020】
また、接触判定部122は、接触判定処理に用いるタイマ122Aを有する。接触判定処理とタイマ122Aについては後述する。
【0021】
接触判定部122は、第1直流信号CA及び第2直流信号CBに基づいて、コネクタ105とコネクタ15の接続状態が正常であるか、又は、接触不良であるかを判定する。
【0022】
また、接触判定部122は、接続状態の判定処理に用いるタイマ123Aを有する。接続状態の判定処理、タイマ123Aについては後述する。
【0023】
メモリ124は、主制御部121、接触判定部122が処理を行うために必要なプログラム及びデータ等を格納する。メモリ124には、静電センサ110の容量値を表すデータや、接触判定部122が処理の過程で生成したデータ等が保存される。
【0024】
<静電センサ110の出力正弦波>
図2は、静電センサ110の出力正弦波の一例を示す図である。図2には手Hでグリップ11から離しているとき(リリース時)の出力正弦波を実線で示し、手Hでグリップ11を握っているとき(接触時)の出力正弦波を破線で示す。
【0025】
静電センサ110で測定される容量値は、グリップ11に手Hが接触するとリリース時と比べて変化するため、リリース時の正弦波に比べて接触時の正弦波は位相や振幅が変化する。接触時の正弦波の位相や振幅は、グリップ11に対する手Hの接触度合に応じて変化する。接触度合とは、例えば、手Hがグリップ11を軽く握っているか、又は、強く握っているか、あるいは、手Hがグリップ11に触れている面積が小さいか、又は、大きいか等の度合である。
【0026】
例えば、リリース時の振幅がゼロになるタイミングを検出タイミングtdとして予め決めておいて、検出タイミングtdで正弦波の振幅を検出すれば、手Hの接触度合に応じた振幅AD値(AD値)を測定できる。検出タイミングtdにおける振幅AD値は、手Hの接触度合に応じた値と見なせる。
【0027】
<基準値を用いた接触の判定>
図3は、基準値を用いた接触の判定を説明する図である。図3において、横軸は時間、縦軸はAD値を表す。図3では振幅AD値(第1直流信号CA)を実線で示し、基準値を破線で示し、振幅AD値と基準値の差分ΔAD(AD値-基準値)を一点鎖線で示す。振幅AD値は、AFE120Aが出力する値である。振幅AD値は、静電センサ110と周囲の導体との間の静電容量を示す。基準値は、静電センサ110の近くに手Hが存在しない時に測定した静電センサ110と周囲の導体との間の静電容量を示す。差分ΔADは、手Hが近くにある場合の静電センサ110と周囲の導体との間の静電容量と、手Hが近くにない場合の静電センサ110と周囲の導体との間の静電容量との差である。即ち、差分ΔADは、静電センサ110と手Hとの間の静電容量である。
【0028】
図3において、時刻t1より前の状態では、手Hはグリップ11に接触していない。時刻t1で手Hがグリップ11に接触すると、基準値に対して振幅AD値が立ち上がる。このとき、差分(AD値-基準値)も立ち上がり、オン閾値Th1以上になることにより、接触判定部122は、手Hはグリップ11に接触したと判定する。オン閾値Th1は、第1接触閾値の一例である。また、時刻t2で手Hがグリップ11から離れると、振幅AD値が立ち下がる。このとき、差分(AD値-基準値)も立ち下がり、オン閾値Th1よりも低いオフ閾値Th2以下になることにより、接触判定部122は、手Hはグリップ11から離れたと判定する。オフ閾値Th2は、第2接触閾値の一例である。
【0029】
図4は、AFE120Aを示す図である。図4には、静電センサ110とMPU120Bも示す。また、図4では、MPU120BからAFE120Aに入力される指令を省略する。図5は、AFE120Aに含まれる参照信号生成部40を示す図である。
【0030】
AFE120Aは、静電容量検出回路102、復調回路22、正弦波発生部30、駆動信号生成部35、及び参照信号生成部40を有する。以下では、手Hと静電センサ110の電極との間にキャパシタCxがあるものとして説明する。参照信号生成部40は、第1参照信号生成部の一例であるとともに、第2参照信号生成部の一例である。
【0031】
[静電容量検出回路102]
静電容量検出回路102は、静電センサ110を介してキャパシタCxに伝送される電荷に基づいて、キャパシタCxの静電容量に応じた検出信号Sを生成する。静電容量検出回路102は、静電センサ110を介してキャパシタCxに駆動信号Vdを印加し、駆動信号Vdの印加に伴ってキャパシタCxに伝送される電荷に応じた検出信号Sを生成する。検出信号Sは、キャパシタCxの静電容量に応じた振幅を持つ。
【0032】
静電容量検出回路102は、例えば図4に示すように、演算増幅器102Aと、キャパシタCf1を含む。演算増幅器102Aの反転入力端子と出力端子との間には、キャパシタCf1が接続される。演算増幅器102Aの非反転入力端子には、駆動信号生成部35によって正弦波の駆動電圧Vdが供給される。静電センサ110は、演算増幅器102Aの反転入力端子に接続される。駆動電圧Vdは、例えば正弦波の交流電圧である。演算増幅器102Aは、反転入力端子の電圧と非反転入力端子の電圧とがほぼ一致するように出力電圧を制御するため、キャパシタCxには、駆動電圧Vdとほぼ同じ交流電圧が発生する。キャパシタCxに交流電圧が発生するとき、この交流電圧とキャパシタCxの静電容量とに比例した電荷の変化が生じる。キャパシタCxにおける電荷の変化は、キャパシタCf1における電荷の変化とほぼ等しい。その結果、キャパシタCf1に生じる交流電圧は、キャパシタCxの静電容量に概ね比例した振幅を持つ。検出信号Sは、演算増幅器102Aの出力端子と非反転入力端子との間に生じる電圧であり、キャパシタCf1に生じる交流電圧と略等しい。従って、検出信号Sは、キャパシタCxの静電容量に概ね比例した振幅を持つ。
【0033】
[正弦波発生部30]
正弦波発生部30は、MPU120Bの主制御部121の制御に従って、駆動信号Vdの基となる正弦波信号Wを生成する。正弦波発生部30は、例えばMPU120Bのクロックと同期して動作するデジタル回路であり、正弦波信号Wは駆動周波数fdに設定されたデジタル信号である。
【0034】
[駆動信号生成部35]
駆動信号生成部35は、正弦波発生部30において生成された正弦波信号Wに基づいて、アナログ信号である正弦波の駆動信号Vdを生成する。一例において、駆動信号Vdは正弦波の交流電圧であるが、他の例において、駆動信号Vdは非正弦波(例えば矩形波)の交流電圧であってもよい。駆動信号Vdを正弦波の交流電圧とすることにより、静電センサ110から放出される高調波のノイズを低減することができる。
【0035】
[参照信号生成部40]
参照信号生成部40は、正弦波信号Wに基づいて第1参照信号FA及び第2参照信号FBを同時に生成する。参照信号生成部40は、図5に示すように、位相調節部44及び位相調節部45を有する。位相調節部45は、位相調節部44の出力側に接続されている。位相調節部44は、正弦波信号Wが入力され、第1参照信号FAを出力する。検出信号Sは、駆動信号Vdに対してφ1ずれた位相を持つ。検出信号Sと第1参照信号FAの位相が一致するように、位相調節部44が、第1参照信号FAの位相を調節する。第1参照信号FAは、参照信号生成部40の一方の出力として出力されるとともに、位相調節部45に入力される。位相調節部45は、第1参照信号FAに対して位相が4分の1周期ずれた信号を、第2参照信号FBとして出力する。
【0036】
第1参照信号FAは、正弦波の検出信号Sと等しい周波数を持ち、かつ、正弦波の検出信号Sと等しい位相を持った正弦波の参照信号である。参照信号生成部40は、駆動信号生成部35から入力される駆動信号Vdの駆動周波数fdと等しい周波数を持ち、かつ、駆動信号Vdに対して所定の位相φ1を持った第1参照信号FAを生成する。
【0037】
また、参照信号生成部40は、正弦波の検出信号Sと等しい周波数を持ち、かつ、正弦波の検出信号Sに対して位相が4分の1周期ずれた正弦波の第2参照信号FBを生成する。参照信号生成部40は、駆動周波数fdと等しい周波数を持ち、かつ、駆動信号Vdに対する位相が第1参照信号FAと比較して4分の1周期ずれた第2参照信号FBを生成する。第1参照信号FAの位相は、検出信号Sと、ほぼ一致しているため、第2参照信号は、検出信号Sに対して位相が4分の1周期ずれた信号になる。
【0038】
[復調回路22]
復調回路22は、アナログの検出信号Sをデジタル信号に変換するA/D変換器211と、乗算回路212と、ローパスフィルタ213と、A/D変換器211の出力信号(検出信号Sをデジタル化した信号)と第2参照信号FBとの乗算を行う乗算回路222と、乗算回路222の乗算結果から直流成分を抽出するローパスフィルタ223とを含む。ローパスフィルタ213は、第1ローパスフィルタの一例である。ローパスフィルタ223は、第2ローパスフィルタの一例である。
【0039】
復調回路22は、静電容量検出回路102から出力される検出信号Sに第1参照信号FAを乗算した信号を第1直流信号CAとして生成するとともに、静電容量検出回路102から出力される検出信号Sに第2参照信号FBを乗算した信号を第2直流信号CBとして生成する。復調回路22は、第1直流信号CA及び第2直流信号CBをMPU120Bに出力する。
【0040】
A/D変換器211は、例えば、演算増幅器102Aの出力信号と駆動信号Vdとの差を増幅するとともに、エイリアシングを防ぐローパスフィルタとしても機能する差動アンプを含む。A/D変換器211は、この差動アンプの出力信号(キャパシタCf1の交流電圧に相当する信号)をデジタル信号に変換する。乗算回路212は、A/D変換器211においてデジタル信号に変換された検出信号Sと、第1参照信号FAとを乗算する。
【0041】
乗算回路222は、A/D変換器211においてデジタル信号に変換された検出信号Sと、第2参照信号FBとを乗算する。ローパスフィルタ213は、乗算回路212の乗算結果の第1復調信号に含まれる高周波成分を除去し、直流成分を抽出する。ローパスフィルタ213において抽出された直流成分は、第1直流信号CAとしてMPU120Bに出力される。ローパスフィルタ223は、乗算回路222の乗算結果の第2復調信号に含まれる高周波成分を除去し、直流成分を抽出する。ローパスフィルタ223において抽出された直流成分は、第2直流信号CBとしてMPU120Bに出力される。
【0042】
第1直流信号CAは、検出信号Sと第1参照信号FAとの乗算結果の信号に含まれる直流成分に応じた信号である。検出信号S及び、第1参照信号FAの角周波数ωは、「2πfd」である。検出信号Sを「As・sin(ωt-φ1)」とし、第1参照信号FAを「Af・sin(ωt-φ1)」とした場合、検出信号Sと第1参照信号FAとを乗算して得られる信号Y1は、次の式(1)で表される。
【0043】
Y1 = As・sin(ωt-φ1)×Af・sin(ωt-φ1)
= - K・cos(2ωt-2φ1)+K … (1)
ただし、K = As・Af/2
【0044】
第1直流信号CAは、式(1)に示す信号Y1の直流成分に応じた信号であり、「K」に比例した大きさを持つ。Afは予め大きさが分かっている一定値である。Asの大きさは、キャパシタCxの静電容量に応じた大きさである。従って、復調回路22が生成する第1直流信号CAは、キャパシタCxの静電容量に応じた大きさを持つ信号となる。尚、キャパシタCxの静電容量が変化することで、検出信号Sの位相が変化するため、検出信号Sの位相と、第1参照信号FAの位相は、必ずしも、完全には一致しない。しかし、検出信号Sの位相と、第1参照信号FAの位相の差は、無視できる程度に小さい。
【0045】
他方、検出信号Sに対して位相が4分の1周期(π/2ラジアン)ずれた第2参照信号FBを「Af・sin(ωt-φ1-π/2)」とした場合、検出信号Sと第2参照信号FBとを乗算して得られる信号Y2は、次の式(2)で表される。
【0046】
Y2 = As・sin(ωt-φ1)×Af・sin(ωt-φ1-π/2)
= - K・cos(2ωt-2φ1―π/2)+K・cos(π/2) … (2)
【0047】
第2直流信号CBは、式(2)に示す信号Y2の直流成分に応じた信号である。「cos(π/2)」はゼロである。そのため、検出信号Sに全くノイズ成分が重畳していない場合、信号Y2の直流成分はゼロになるため、第2直流信号CBもゼロ(若しくはゼロに相当する基準値)となる。逆にいうと、第2直流信号CBは、駆動周波数fdと同じ周波数を持ち、かつ、検出信号Sとは異なる位相を持ったノイズ成分に応じた大きさを持つ。従って、復調回路22が生成する第2直流信号CBは、検出信号Sに重畳する駆動周波数fdと同一周波数のノイズ成分に応じた大きさを持つ信号となる。尚、キャパシタCxの静電容量が変化することで、検出信号Sの位相が変化するため、検出信号Sの位相と、第2参照信号FAの位相の差は、必ずしも正確にπ/2にならない。しかし、検出信号Sの位相と、第1参照信号FAの位相の差は、無視できる程度に小さい。したがって、検出信号Sの位相と、第2参照信号FAの位相の差は、π/2と見なせる。
【0048】
<比較用の接触判定装置における問題点>
図6A及び図6Bは、比較用の接触判定装置における問題点を説明する図である。比較用の接触判定装置は、図4に示すAFE120Aから乗算回路222とローパスフィルタ223を省いた構成を有し、第1直流信号CAのみを出力し、第2直流信号CBは出力しない。比較用の接触判定装置のMPUは、第1直流信号CAに基づいて、グリップ11に手Hが添えられた(ハンズオン)かどうかを判定する。
【0049】
図6A及び図6Bにおいて、横軸は時間を表し、縦軸は、比較用のAFEが出力する第1直流信号CAと、基準値Baseの静電容量と、判定値とをカウント値で示す。判定値は、基準値Baseに接触判定用の閾値(オン閾値Th1又はオフ閾値Th2)を加算した値である。オン閾値Th1とオフ閾値Th2の値は、図3に示すように異なるが、ここでは説明を簡単にするために、判定値を1つの値として示す。
【0050】
コネクタ105とコネクタ15の接続状態が不良の場合には、第1直流信号CAの信号レベルに変動が生じる場合がある。コネクタ105とコネクタ15の接続状態が不良の場合とは、コネクタ105とコネクタ15(図1参照)の嵌合が不十分な場合や、コネクタ105又はコネクタ15に接続される配線の断線等の破損が生じている場合である。コネクタ105とコネクタ15の嵌合が不十分な場合とは、例えば、コネクタ15に対してコネクタ105が緩んでいる場合や、コネクタ15に対するコネクタ105の嵌め込みが不十分であるような場合である。
【0051】
前提として、接触判定装置100は、車両のイグニッションがオフからオンに切り替わると、HOD_ECU120の要求にしたがって、ステアリングホイール10に手Hが添えられているかどうかを判定するように構成されている。ただし、ステアリングホイール10に手Hが添えられている状態で車両のイグニッションがオフからオンに切り替わると、ステアリングホイール10に手Hが添えられていない状態における基準値Baseを正しく計算できないため、ステアリングホイール10から手Hを離し、正しい基準値Baseが計算されてから、ステアリングホイール10に再び手Hを添える必要がある。
【0052】
まず、図6Aを用いて、コネクタ105とコネクタ15の接続状態が正常な場合の動作について説明する。図6Aにおいて、約22秒の時点で、グリップ11に手Hが添えられている状態で、車両のイグニッションがオフからオンに切り替わり、グリップ11から手Hが離れる。約22秒を過ぎたあたりで第1直流信号CAが低下すると、比較用の接触判定装置のMPUは基準値Baseを低下させてリセットする。グリップ11に手Hが添えられていない状態における基準値Baseが計算され、基準値Baseは計算された値にリセットされる。
【0053】
基準値Baseの低下に追従して判定値も低下し、約23秒あたりでグリップ11に再び手Hが添えられることで第1直流信号CAが増大し、判定値以上になると、比較用の接触判定装置のMPUは、グリップ11に手Hが添えられた(ハンズオン)と判定する。その後、約24秒の時点でグリップ11から再び手Hが離れることによって第1直流信号CAが低下し、判定値以下になると、比較用の接触判定装置のMPUは、手Hがグリップ11から離れたと判定する。前述した通り、判定値は、基準値Baseに接触判定用の閾値(オン閾値Th1又はオフ閾値Th2)を加算した値である。
【0054】
次に、図6Bを用いて、コネクタ105とコネクタ15の接続状態が不良の場合の動作について説明する。図6Bはグリップ11に手Hが添えられていない時の挙動である。接続状態が不良の場合には、コネクタ105とコネクタ15の電気的な接続が保たれているときと、保たれていないときとが生じうる。以下、詳述する。
【0055】
図6Bにおいて、約13秒を過ぎたあたりで第1直流信号CAが低下すると、比較用の接触判定装置のMPUは基準値Baseを低い値にリセットする。グリップ11に手Hが添えられていない状態における基準値Baseが計算され、基準値Baseは計算された値にリセットされる。基準値Baseの低下に追従して判定値も低下する。
【0056】
その後、手Hがグリップ11に添えられていないのに、約24秒から約30秒、約53秒から約56秒、約58秒から約62秒、約68秒から約73秒、約85秒から約86秒、約87秒から約91秒、約96秒から約100秒にかけて第1直流信号CAがノイズのように変動すると、グリップ11に手Hが添えられた(ハンズオンになった)と誤って判定する。すなわち、ハンズオンの誤判定が生じる。
【0057】
このようなハンズオンの誤判定は、コネクタ105とコネクタ15の接続状態が不良であることによって電気的な接続が保たれず、グランド電位が揺れ、第1直流信号CAが変動することによって生じる。また、コネクタ105とコネクタ15の接続状態が不良であることによって、コラムシャフトのように重量が大きく、グランド電位に保持される部材が揺れることで、第1直流信号CAの変動が増大し、ハンズオンの誤判定に繋がりやすくなる。
【0058】
以上のように、コネクタ105とコネクタ15の接続状態が不良であることによって、第1直流信号CAがノイズのように変動し、グリップ11に手Hが添えられた(ハンズオンになった)と誤判定が生じる。
【0059】
<第1直流信号CAと第2直流信号CBの特性>
図7A及び図7Bは、第1直流信号CA及び第2直流信号CBの特性を示す図である。図7A及び図7Bでは、横軸は時間を表し、左の縦軸は第1直流信号CA(カウント値)を表し、右の縦軸は第2直流信号CB(カウント値)を表す。第1直流信号CA及び第2直流信号CBは、最大値及び最小値の取り得る範囲が異なるため、右の縦軸と左の縦軸とはスケールが異なるが、図7A及び図7Bは、第1直流信号CA及び第2直流信号CBの取り得る範囲における動きを表している。
【0060】
図7Aは、コネクタ105とコネクタ15の接続状態が正常な場合の第1直流信号CAと第2直流信号CBの特性を示す。接続状態が正常な場合に、約22秒の時点でグリップ11に手Hが添えられている状態では、第1直流信号CAは略最大値であり、第2直流信号CBは略最小値である。22秒を過ぎた時点でグリップ11から手Hが離れると、第1直流信号CAが略最小値に向かって低下するとともに、第2直流信号CBは略最大値に向かって増大し、第1直流信号CAとは逆方向に変化する。このように、接続状態が正常な場合には、第1直流信号CA及び第2直流信号CBは逆方向に変化する(変化方向が逆である)。
【0061】
図7Bは、コネクタ105とコネクタ15の接続状態が不良の場合の動作について説明する。図7Bは、コネクタ105のグランド端子とコネクタ15のグランド端子との接続を不安定にした実験結果である、図7Bは、コネクタ105のグランド端子とコネクタ15のグランド端子とが、接続される状態と、接続されない状態が、0秒から110秒まで繰り返される。
【0062】
10秒の時点では、第1直流信号CA及び第2直流信号CBは、ともに略最大値である。その後、約12秒の時点で、第1直流信号CAが略最小値に向かって低下するときに、第2直流信号CBも同時に変化して略最小値に向かって低下している。また、約24秒の時点で、第1直流信号CAが略最大値に向かって増大するときに、第2直流信号CBも同時に変化して略最大値に向かって増大している。その後も同様に、第1直流信号CA及び第2直流信号CBは、同じタイミングで同一方向に変化している(変化方向が同一である)。
【0063】
このように、コネクタ105とコネクタ15の接続状態が正常な場合には、第1直流信号CA及び第2直流信号CBは逆方向に変化する。一方、コネクタ105のグランド端子とコネクタ15のグランド端子との接続状態が不良の場合には、第1直流信号CA及び第2直流信号CBは、同じタイミングで同一方向に変化する。
【0064】
実施形態の接触判定装置100は、このような第1直流信号CA及び第2直流信号CBの変化の方向の特性を利用して、コネクタ105のグランド端子とコネクタ15のグランド端子の接続状態の正常又は不良を判定する。コネクタ105とコネクタ15の接続状態が不良の場合、全端子の接続が不良状態になるので、グランド端子の接続状態によって、コネクタ全体の接続状態を判断できる。尚、信号線12のみ断線した場合には、手Hとグリップ11の実際の接触状態に関わらず、接触状態が"Hands Off"の状態を継続することから、断線を判断できる。また、第1直流信号CA及び第2直流信号CBを用いることでノイズ成分の大きさも測定できる。つまり、同一の回路で、ノイズ成分の大きさの測定と、コネクタ105とコネクタ15の接続状態の正常又は不良の判定が可能である。この為、回路規模の増大を抑制できる。以下、判定方法について説明する。
【0065】
<判定方法>
図8は、接触判定装置100のMPU120Bが実行する判定処理を示す図である。
【0066】
接触判定部122は、サブルーチン「sub初期設定」を呼び出し、初期設定を行う(ステップS1)。初期設定では、以後の処理に用いる様々な値を初期化するサブルーチン処理を行う。詳細については、図9を用いて後述する。
【0067】
接触判定部122は、第1直流信号CA及び第2直流信号CBを取得する(ステップS2)。接続状態を判定するために、最新の第1直流信号CA及び第2直流信号CBを取得する処理である。
【0068】
接触判定部122は、サブルーチン「sub接続状態判定」を呼び出し、コネクタ105とコネクタ15の接続状態を判定する処理を行う(ステップS3)。詳細については、図10を用いて後述する。
【0069】
接触判定部122は、サブルーチン「sub接触判定」を呼び出し、接触判定を行う(ステップS4)。詳細については、図11を用いて後述する。
【0070】
MPU120Bは、ステップS4の処理を終えると、フローをステップS2にリターンし、ステップS2からS4の処理を一例として10ms周期で繰り返し実行する。
【0071】
<sub初期設定>
次に、図9を用いて、図8のステップS1のサブルーチン「sub初期設定」に基づき行われる初期設定処理について説明する。図9は、sub初期設定の処理の一例を示すフローチャートである。
【0072】
接触判定部122は、初期設定の処理を開始すると、第1直流信号CA及び第2直流信号CBを取得する(ステップS11)。初期設定の処理のために、最新の第1直流信号CA及び第2直流信号CBを取得する処理である。
【0073】
接触判定部122は、基準値Base、CA_old、CB_old、Decision_A、Decision_Bを設定する(ステップS12)。具体的には、接触判定部122は、基準値Baseを初期値(CA_ini)に設定する(Base=CA_ini)。初期値(CA_ini)は、正常時の基準値Baseに成り得る値であればよい。例えば、設計時に室温(20℃)で測定した値を用いても良い。接触判定部122は、第1直流信号CA及び第2直流信号CBの1周期前の値(CA_old、CB_old)として、初期設定時の第1直流信号CA及び第2直流信号CBに設定する(CA_old=CA、CB_old=CB)。また、接触判定部122は、変数Decision_A及びDecision_BをPlusに設定する(Decision_A="Plus"、Decision_B="Plus)。変数Decision_A及びDecision_Bは、第1直流信号CA及び第2直流信号CBの変化方向を表す変数である。"Plus"は、変化方向が増大(+)であることを表す。また、変数Decision_A及びDecision_Bは、"Minus"を取ることもある。"Minus"は、変化方向が減少(-)であることを表す。変数Decision_A及びDecision_Bは、"Plus"と"Minus"の二種類の値を取るので、ブーリアン型(論理型)変数を用いても良い。
【0074】
接触判定部122は、タイマ123Aをゼロにリセットし(Timer=0)、接触状態をハンズオフに設定する(接触状態=HandOff)(ステップS13)。接触状態は、手Hがステアリングホイール10のグリップ11に接触しているかどうかを表す。接触状態は、ハンズオフ又はハンズオンの値を取る。変数としての接触状態は、"HandOff"と、"HandOn"の二種類の値を取るので、ブーリアン型(論理型)変数を用いても良い。
【0075】
以上で、接触判定部122は、初期設定の処理を終了する。
【0076】
<sub接続状態判定>
次に、図10を用いて、図8のステップS3のサブルーチン「sub接続状態判定」に基づき行われる接続状態の判定処理について説明する。
【0077】
図10は、sub接続状態判定の処理の一例を示すフローチャートである。接触判定部122は、sub接続状態判定の処理を開始すると、ステップS2で取得される第1直流信号CA及び第2直流信号CBを用いて、第1直流信号CA及び第2直流信号CBの変化分ΔCA、ΔCBを算出する(ステップS31)。第1直流信号CAの変化分ΔCAは、CA-CA_oldであり、1周期前の値からの変化分である。第2直流信号CBの変化分ΔCBは、CB-CB_oldであり、1周期前の値からの変化分である。起動直後のCA_oldは、初期設定時のCAである(ステップS12参照)。起動直後のCB_oldは、初期設定時のCBである(ステップS12参照)。起動直後のΔCA、ΔCBは、初期設定時からの変化分である。起動直後以外のCA_oldは、1周期前のCAである(ステップS38参照)。起動直後以外のCB_oldは、1周期前のCBである(ステップS38参照)。起動直後以外のΔCA、ΔCBは、1周期前からの変化分である。
【0078】
接触判定部122は、第1直流信号CAの変化分ΔCAが閾値TH_CA_Pよりも大きいかどうかを判定する(ステップS32)。閾値TH_CA_Pは、変化分ΔCAが増大傾向にあるかどうかの判定に用いる閾値である。閾値TH_CA_Pは、変化分ΔCAが増大傾向にある場合の第1閾値の一例である。
【0079】
接触判定部122は、第1直流信号CAの変化分ΔCAが閾値TH_CA_Pよりも大きい(S32:Yes)と判定すると、変数Decision_AをPlusに設定(更新)する(Decision_A="Plus")(ステップS33A)。接触判定部122は、ステップS33Aの処理を終えると、フローをステップS34に進める。
【0080】
接触判定部122は、ステップS32において、第1直流信号CAの変化分ΔCAが閾値TH_CA_Pよりも大きくない(S32:No)と判定すると、第1直流信号CAの変化分ΔCAが閾値TH_CA_Mよりも小さいかどうかを判定する(ステップS33B)。閾値TH_CA_Mは、変化分ΔCAが減少傾向にあるかどうかの判定に用いる閾値である。閾値TH_CA_Mは、変化分ΔCAが減少傾向にある場合の第1閾値の一例である。
【0081】
接触判定部122は、第1直流信号CAの変化分ΔCAが閾値TH_CA_Mよりも小さい(S33B:Yes)と判定すると、変数Decision_AをMinusに設定(更新)する(Decision_A="Minus")(ステップS33C)。接触判定部122は、ステップS33Cの処理を終えると、フローをステップS34に進める。
【0082】
また、接触判定部122は、ステップS33Bにおいて、第1直流信号CAの変化分ΔCAが閾値TH_CA_Mよりも小さくない(S33B:No)と判定すると、フローをステップS34に進める。この場合は、変数Decision_Aが更新されないため、更新前の値を用いることになる。
【0083】
接触判定部122は、第2直流信号CBの変化分ΔCBが閾値TH_CB_Pよりも大きいかどうかを判定する(ステップS34)。閾値TH_CB_Pは、変化分ΔCBが増大傾向にあるかどうかの判定に用いる閾値である。閾値TH_CB_Pは、変化分ΔCBが増大傾向にある場合の第2閾値の一例である。
【0084】
接触判定部122は、第2直流信号CBの変化分ΔCBが閾値TH_CB_Pよりも大きい(S34:Yes)と判定すると、変数Decision_BをPlusに設定(更新)する(Decision_B="Plus")(ステップS35A)。接触判定部122は、ステップS35Aの処理を終えると、フローをステップS36に進める。
【0085】
接触判定部122は、ステップS34において、第2直流信号CBの変化分ΔCBが閾値TH_CB_Pよりも大きくない(S34:No)と判定すると、第2直流信号CBの変化分ΔCBが閾値TH_CB_Mよりも小さいかどうかを判定する(ステップS35B)。閾値TH_CB_Mは、変化分ΔCBが減少傾向にあるかどうかの判定に用いる閾値である。閾値TH_CB_Mは、変化分ΔCBが減少傾向にある場合の第2閾値の一例である。
【0086】
接触判定部122は、第2直流信号CBの変化分ΔCBが閾値TH_CB_Mよりも小さい(S35B:Yes)と判定すると、変数Decision_BをMinusに設定(更新)する(Decision_B="Minus")(ステップS35C)。接触判定部122は、ステップS35Cの処理を終えると、フローをステップS36に進める。
【0087】
また、接触判定部122は、ステップS35Bにおいて、第2直流信号CBの変化分ΔCBが閾値TH_CB_Mよりも小さくない(S35B:No)と判定すると、フローをステップS36に進める。この場合は、変数Decision_Bが更新されないため、更新前の値を用いることになる。
【0088】
接触判定部122は、第1直流信号CA及び第2直流信号CBの変化が逆方向であるかどうかを判定する(ステップS36)。より具体的には、接触判定部122は、Decision_A="Plus"かつDecision_B="Minus"であるか、又は、Decision_A="Minus"かつDecision_B="Plus"であるかどうかを判定する。
【0089】
接触判定部122は、第1直流信号CA及び第2直流信号CBの変化が逆方向である(S36:Yes)と判定すると、接続状態をTrueに設定する(ステップS37A)。接続状態がTrueであることは、コネクタ105とコネクタ15の接続状態が正常であることを意味する。接触判定部122は、ステップS37Aの処理を終えるとフローをステップS38に進める。
【0090】
接触判定部122は、ステップS36において、第1直流信号CA及び第2直流信号CBの変化が逆方向ではない(S36:No)と判定すると、接続状態が不良であると判定し、接続状態をFalseに設定する(ステップS37B)。また、接触判定部122は、接続状態は不良であると判定すると、接続状態が不良であることを示す接続不良信号を出力する。接続不良信号は、MPU120BからECU50に出力される。この結果、ECU50は、接続状態が不良であることを認識する。
【0091】
接触判定部122は、接触状態をハンズオフに設定する(接触状態=HandOff)(ステップS37C)。接触判定部122は、ステップS37Cの処理を終えるとフローをステップS38に進める。また、接触判定部122は、ECU50に接触状態がハンズオフであることを通知する。この結果、ECU50は、接触状態がハンズオフであることを認識する。接触状態がハンズオフであることをECU50に通知するのは、起動後から静電容量が変化していない場合にも、ステップ37Cを辿るため、ステップS37Cを辿る場合は、必ずしも接続状態が不良なわけではないからである。また、手Hがグリップ11に接触してもハンズオフの状態が継続すれば、出荷前のテスト走行で接続状態の不良を容易に発見できるからである。また、万一、出荷後に、接続状態の不良が発生しても、ハンズオフ警告の表示等によって容易に故障と分かるからである。つまり、ステップS37Cにより、フェイルセーフ機能が作動する。
【0092】
接触判定部122は、第1直流信号CA及び第2直流信号CBの1周期前の値(CA_old、CB_old)を最新の(現在の周期の)第1直流信号CA及び第2直流信号CBに設定する(CA_old=CA、CB_old=CB)(ステップS38)。CA_old、CB_oldは、再びサブルーチン「sub接触状態判定」が実行される際に、1周期前の値として用いられる。
【0093】
以上で、接続状態の判定処理が終了する。
【0094】
<sub接触判定>
次に、図11を用いて、図8のステップS4のサブルーチン「sub接触判定」に基づき行われる接触判定の処理について説明する。図11は、sub接触判定の処理の一例を示すフローチャートである。
【0095】
接触判定部122は、1つ前の制御周期における接触状態が接触(HandsOn)であるかどうかを判定する(ステップS41)。制御周期は10msであるため、1つ前の制御周期における接触状態は10ms前の判定結果である。
【0096】
接触判定部122は、前回の状態が接触(HandsOn)ではない場合(S41:No)、第1直流信号CAから基準値Baseを減算した差分(CA-Base)がオン閾値Th1以上であるかどうかを判定する(ステップS42)。オン閾値Th1を用いて接触があるかどうかを判定する。基準値Baseは、グリップ11に手Hが接触していない状態における静電センサ110の静電容量を示す。差分(CA-Base)は、静電センサ110と手Hとの間の静電容量を示す。
【0097】
接触判定部122は、差分ΔADがオン閾値Th1以上である(S42:Yes)と判定すると、接続状態が正常(True)であるかどうかを判定する(ステップS43)。
【0098】
接触判定部122は、接続状態が正常(True)である(S43:Yes)と判定すると、タイマ122Aのカウント時間TimerSをインクリメントする(ステップS44A)。すなわち、TimerS=TimerS+1となる。
【0099】
接触判定部122は、タイマ122Aのカウント時間TimerSが時間閾値THT以上であるかどうかを判定する(ステップS44C)。時間閾値THTは、予め定めた値を用いても良い。差分(CA-Base)がオン閾値Th1を超えた場合に直ちに(即座に)手Hがステアリングホイール10のグリップ11に接触していると判定するのではなく、ある程度の時間(時間閾値THT)にわたって差分(CA-Base)がオン閾値Th1を超えた場合に接触していると判定するためである。このため、接触判定部122は、カウント時間TimerSが時間閾値THT以上ではない(S44C:No)と判定すると、フローを終了する(エンド)。sub接触判定のサブルーチンが終了すると、ステップS2にリターンする。
【0100】
接触判定部122は、カウント時間TimerSが時間閾値THT以上である(S44C:Yes)と判定すると、接触状態を接触(HandsOn)に設定する(ステップS44D)。接触判定部122は、ステップS44Dの処理を終えると、フローを終了する(エンド)。sub接触判定のサブルーチンが終了すると、ステップS2にリターンする。
【0101】
また、接触判定部122は、ステップS43において、接続状態が正常ではない(S43:No)と判定すると、タイマ122Aのカウント時間TimerSをゼロにリセットする(ステップS44B)。接触判定部122は、ステップS44Bの処理を終えると、フローを終了する(エンド)。sub接触判定のサブルーチンが終了すると、ステップS2にリターンする。
【0102】
また、接触判定部122は、ステップS42において、差分(CA-Base)がオン閾値Th1以上ではない(S42:No)と判定すると、サブルーチン「subBase計算」を呼び出し、基準値Baseを計算する処理を行う(ステップS45)。詳細については、図12を用いて後述する。
【0103】
接触判定部122は、タイマ122Aのカウント時間TimerSをリセットする(ステップS46)。すなわち、TimerS=0となり、タイマ122Aのカウントが再スタートする。接触判定部122は、ステップ46の処理を終えると、フローを終了する(エンド)。sub接触判定のサブルーチンが終了すると、ステップS2にリターンする。
【0104】
また、接触判定部122は、ステップS41において、前回の判定が接触(HandsOn)であった場合(S41:Yes)、第1直流信号CAから基準値Baseを減算した差分(CA-Base)がオフ閾値Th2以下であるかどうかを判定する(ステップS47)。
【0105】
接触判定部122は、ステップS47において、差分(CA-Base)がオフ閾値Th2以下である(S47:Yes)と判定すると、接触状態は非接触(HandsOff)であると判定する(ステップS48)。すなわち、接触状態=HandsOffとなる。
【0106】
接触判定部122は、タイマ122Aのカウント時間TimerSをリセットする(ステップS49)。すなわち、TimerS=0となり、タイマ122Aのカウントが再スタートする。接触判定部122は、ステップS49の処理を終えると、フローを終了する(エンド)。sub接触判定のサブルーチンが終了すると、ステップS2にリターンする。
【0107】
なお、接触判定部122は、ステップS47において、差分(CA-Base)がオフ閾値Th2以下ではない(S47:No)と判定すると、フローをステップS49に進める。
【0108】
<subBase計算>
次に、図12を用いて、図11のステップS45のサブルーチン「subBase計算」に基づき行われる基準値Baseの計算処理について説明する。図12は、subBase計算の処理の一例を示すフローチャートである。
【0109】
接触判定部122は、接続状態は正常(True)であるかどうかを判定する(ステップS51)。
【0110】
接触判定部122は、接続状態は正常(True)である(S51:Yes)と判定すると、差分を(CA-Base)に設定(更新)する(ステップS52)。すなわち、最新の第1直流信号CAを用いて基準値Baseとの差分が更新される。
【0111】
接触判定部122は、差分が落ち込み閾値DropTHよりも小さいかどうかを判定する(ステップS53)。落ち込み閾値DropTHは、第1直流信号CAが例えば図7Aの22秒を過ぎたときのように、急激に低下しているかどうかを判定するための閾値である。
【0112】
接触判定部122は、差分が落ち込み閾値DropTHよりも小さい(S53:Yes)と判定すると、タイマ123Aのカウント値Timerをインクリメントする(ステップS54A)。すなわち、Timer=Timer+1となる。接触判定部122は、ステップS54Aの処理を終えると、フローをステップS55に進める。
【0113】
一方、接触判定部122は、ステップS53において、差分が落ち込み閾値DropTHよりも小さくない(S53:No)と判定すると、タイマ123Aをリセットする(ステップS54B)。すなわち、Timer=0となる。接触判定部122は、ステップS54Bの処理を終えると、フローをステップS55に進める。
【0114】
接触判定部122は、タイマ123Aのカウント値(Timer)が落ち込み時間DropTimeを超えたかどうかを判定する(ステップS55)。
【0115】
接触判定部122は、タイマ123Aのカウント値(Timer)が落ち込み時間DropTimeを超えた(S55:Yes)と判定すると、基準値Baseを第1直流信号CAに設定する(ステップS56A)。接触判定部122は、ステップS56Bの処理を終えると、subBase計算の処理を終える。
【0116】
接触判定部122は、タイマ123Aのカウント値(Timer)が落ち込み時間DropTimeを超えていない(S55:No)と判定すると、基準値Baseを次式(3)に基づいて計算する(ステップS56B)。
【0117】
【数1】
【0118】
接触判定部122は、式(3)に基づいて、基準値Base(10ms前)に重みMを乗じることによって、基準値(10ms前)と第1直流信号CAの加重平均を基準値Baseとして求める。接触判定部122は、ステップS56Bの処理を終えると、subBase計算の処理を終える。
【0119】
また、接触判定部122は、ステップS51において、接続状態は正常ではない(S51:No)と判定すると、基準値Baseを計算せずに、subBase計算の処理を終える。すなわち、接触判定部122は、基準値Baseをリセットせずに、subBase計算の処理を終える。
【0120】
接触判定部122は、subBase計算のサブルーチンが終了すると、フローを図11のステップS46に進める。
【0121】
<効果>
図13A及び図13Bは、接触判定装置100の効果の一例を説明する図である。図13A及び図13Bには、コネクタ105とコネクタ15の接続状態が正常な場合の動作を示す。
【0122】
図13Aにおいて、横軸は時間を表し、縦軸は、第1直流信号CAと、基準値Baseの静電容量と、判定値とをカウント値で示す。判定値は、基準値Baseに接触判定用の閾値(オン閾値Th1又はオフ閾値Th2)を加算した値である。オン閾値Th1とオフ閾値Th2の値は、図3に示すように異なるが、ここでは説明を簡単にするために、判定値を1つの値として示す。図13Bにおいて、横軸は時間を表し、左側の縦軸は、第1直流信号CAをカウント値で示し、右側の縦軸は、第2直流信号CBをカウント値で示す。
【0123】
図13Aにおいて、約22秒の時点で、グリップ11に手Hが添えられている状態で、車両のイグニッションがオフからオンに切り替わり、グリップ11から手Hが離れる。約22秒を過ぎたあたりで第1直流信号CAが低下すると、接触判定装置100のMPU120Bは基準値Baseを低下させてリセットする。グリップ11に手Hが添えられていない状態における基準値Baseが計算され、基準値Baseは計算された値にリセットされる。この動作は、図6Aに示す比較用の接触判定装置の動作と同様である。
【0124】
また、図13Bに示すように、第1直流信号CAが変化する際に、第2直流信号CBは、第1直流信号CAとは逆方向に変化していることが確認できる。
【0125】
図14A及び図14Bは、接触判定装置100の効果の一例を説明する図である。図14A及び図14Bには、コネクタ105とコネクタ15の接続状態が不良な場合の動作を示す。
【0126】
図14Aにおいて、図6Bに示す場合と同様に第1直流信号CAが急激に低下しても、コネクタ105とコネクタ15の接続状態が不良であることから、接続状態はFalseに設定されているため、図12のステップS51でNoと判定されることによって、基準値Baseはリセットされずに高い値になる。基準値Baseは高い値を保持することで、判定値も高くなるため、第1直流信号CAが変化しても判定値以下になることはなく、ハンズオンの誤判定は生じない。
【0127】
また、図14Bに示すように、第1直流信号CAが変化する際に、第2直流信号CBは、第1直流信号CAと同一方向に変化していることが確認できる。
【0128】
以上のように、接触判定装置100は、手Hが接触可能なステアリングホイール10のグリップ11に設けられる検出電極と手Hとの間の静電容量に応じた振幅を持つ正弦波の検出信号Sを出力する静電センサ110を含む。また、接触判定装置100は、検出信号Sと等しい周波数を持ち、かつ、検出信号Sと等しい位相を持った正弦波の第1参照信号FAを生成する第1参照信号生成部(復調回路22の乗算回路212、正弦波発生部30、及び参照信号生成部40)と、検出信号Sと等しい周波数を持ち、かつ、検出信号Sに対して位相がずれた正弦波の第2参照信号FBを生成する第2参照信号生成部(復調回路22の乗算回路222、正弦波発生部30、及び参照信号生成部40)とを含む。また、接触判定装置100は、静電センサ110から出力される検出信号Sに第1参照信号を乗算した信号を第1復調信号として生成するとともに、静電センサ110から出力される検出信号Sに第2参照信号を乗算した信号を第2復調信号として生成する復調回路22と、第1復調信号の直流成分である第1直流信号CAを抽出するローパスフィルタ213と、第2復調信号の直流成分である第2直流信号CBを抽出するローパスフィルタ223とを含む。また、接触判定装置100は、第1直流信号CAに基づいて、ステアリングホイール10のグリップ11に手Hが接触しているかどうかを判定する接触判定部122とを含む。接触判定部122は、第1直流信号CAの変化量が第1閾値(TH_CA_P、TH_CA_M)を超えた最新の変化方向と、第2直流信号CBの変化量が第2閾値(TH_CB_P、TH_CB_M)を超えた最新の変化方向とが同じ場合には、センサ部と検出回路の接続状態は不良であると判定し、第1直流信号CAの変化量が第1閾値(TH_CA_P、TH_CA_M)を超えた最新の変化方向と、第2直流信号CBの変化量が第2閾値(TH_CB_P、TH_CB_M)を超えた最新の変化方向とが逆の場合には、センサ部と検出回路の接続状態は正常であると判定する。
【0129】
つまり、接触判定部122は、第1直流信号CA及び第2直流信号CBの変化方向が同じであれば、接続状態は不良であると判定し、逆方向の場合には、接続状態は正常であると判定する。
【0130】
したがって、断線検出専用の物理的な構成を必要とすることなく、断線等の接触不良を検出可能な接触判定装置100を提供することができる。
【0131】
また、接触判定部122は、ステップS37Bにおいて接続状態は不良であると判定すると、接続状態が不良であることを示す接続不良信号を出力する。このため、ECU50にコネクタ105とコネクタ15の接続状態が不良であることを通知できる。接触判定装置100を車両に取り付ける際には、手Hでグリップ11を触らなくても、ECU50に接続した検査用モニターで、コネクタ105とコネクタ15の接続不良を確認できる。また、接続状態が不良の場合、接触状態を"Hands Off"としてECU50に通知する。接続不良であれば、運転者が、手Hでグリップ11を握っても、"Hands Off"の表示がされるため、運転者は、検査用のモニターがなくても、接続不良を認識できる。
【0132】
また、接触判定部122は、ステップS56Aにおいてステアリングホイール10のグリップ11に手Hが接触していない状態における第1直流信号CAを基準値Baseとして更新する。また、接触判定部122は、ステップS37Bにおいて接続状態が不良であると判定すると、基準値Baseを更新しない(ステップS51:No参照)。このため、更新前の正常な状態における大きな値を有する基準値Baseに基づく判定値で接続状態を判定でき、誤判定を効果的に抑制することができる。また、起動時に、基準値Baseの初期値を既定の値に設定することで、正常な状態における大きな値を有する基準値Baseに基づく判定値で接続状態を判定でき、誤判定を効果的に抑制することができる。
【0133】
接触判定部122は、第1直流信号CAと、基準値Baseとの差が閾値Th1以上である状態の継続時間をカウントするタイマ122Aを有し、タイマ122Aがカウントする継続時間が、所定時間THT以上になると、ステアリングホイール10のグリップ11に手Hが接触したと判定する(ステップS44D参照)。また、接触判定部122によって接続状態が不良であると判定されると、タイマ122Aがカウントする継続時間をリセットする(ステップS44B参照)。このため、第1直流信号CAと、基準値Baseとの差が閾値Th1以上である状態が所定時間THT以上継続した場合に、安定的にステアリングホイール10のグリップ11に手Hが接触したと判定することができる。また、接触判定部122によって接続状態が不良であると判定されると、タイマ122Aがカウントする継続時間をリセットするので、接続状態が不良である場合に、ステアリングホイール10のグリップ11に手Hが接触したと判定することを抑制できる。
【0134】
以上、本開示の例示的な実施形態の接触判定装置について説明したが、本開示は、具体的に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0135】
H 手 (検出対象の一例)
10 ステアリングホイール
10A コラムシャフト
11 グリップ(検出対象が接触可能な接触部位の一例)
15 コネクタ
22 復調回路
30 正弦波発生部
35 駆動信号生成部
40 参照信号生成部(第1参照信号生成部の一例、第2参照信号生成部の一例)
100 接触判定装置
105 コネクタ
110 静電センサ(センサ部の一例)
120 HOD_ECU(検出回路の一例)
121 主制御部
122 接触判定部
122A タイマ
123A タイマ
124 メモリ
211 A/D変換器
212 乗算回路
213 ローパスフィルタ(第1ローパスフィルタの一例)
222 乗算回路
223 ローパスフィルタ(第2ローパスフィルタの一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B