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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168735
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】ゲート駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20231121BHJP
   H03K 17/16 20060101ALI20231121BHJP
   H03K 17/687 20060101ALI20231121BHJP
   H03K 17/08 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H03K17/16 M
H03K17/687 A
H03K17/08 C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080018
(22)【出願日】2022-05-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100111763
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 隆
(72)【発明者】
【氏名】松原 邦夫
【テーマコード(参考)】
5H740
5J055
【Fターム(参考)】
5H740BA12
5H740BC01
5H740BC02
5H740HH06
5H740JA01
5H740JB02
5H740MM11
5J055AX26
5J055AX56
5J055BX16
5J055CX13
5J055DX13
5J055DX22
5J055EY01
5J055EY12
5J055EY21
5J055GX01
5J055GX02
5J055GX04
5J055GX05
(57)【要約】
【課題】 主回路配線インダクタンスを利用せずに、スイッチングごとにサージ電圧の抑制量を調整することが可能なゲート駆動装置を提供する。
【解決手段】 ゲート駆動装置100は、第1の端子および第2の端子と、第1の端子および第2の端子間のオンオフを制御するゲート端子とを有する半導体スイッチング素子Q1をオンオフ駆動するゲート駆動回路10と、第1の端子および第2の端子を通過する電流の電流変化率を検出する検出部であるロゴスキーコイル20と、半導体スイッチング素子Q1のターンオフ時に検出部によって検出される負の電流変化率の大きさに応じて、ゲート端子の電荷をゲート駆動回路10に放電させる放電電流を減少させるゲート電流調整回路40と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端子および第2の端子と、前記第1の端子および前記第2の端子間のオンオフを制御するゲート端子とを有する半導体スイッチング素子をオンオフ駆動するゲート駆動回路と、
前記第1の端子および前記第2の端子を通過する電流の電流変化率を検出する検出部と、
前記半導体スイッチング素子のターンオフ時に前記検出部によって検出される負の電流変化率の大きさに応じて、前記ゲート端子の電荷を前記ゲート駆動回路に放電させる放電電流を減少させるゲート電流調整回路と、
を有するゲート駆動装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記半導体スイッチング素子に流れる電流の電流路が挿入されたロゴスキーコイルを含む請求項1に記載のゲート駆動装置。
【請求項3】
前記ロゴスキーコイルに発生する誘起電圧を検出し、前記電流変化率が負である期間だけ前記誘起電圧に応じた調整信号を出力する誘起電圧検出回路を有し、
前記ゲート電流調整回路は、前記調整信号に応じて前記放電電流を減少させる請求項2に記載のゲート駆動装置。
【請求項4】
前記ゲート電流調整回路は、前記第1の端子に接続された引き込みノードから前記調整信号に応じた電流を引き込み、この引き込んだ電流に応じて前記放電電流を減少させる請求項3に記載のゲート駆動装置。
【請求項5】
前記ゲート電流調整回路は、前記調整信号の値が第1の値である場合には、前記第1の値に応じた第1の電流を前記引き込みノードから引き込み、前記調整信号の値が前記第1の値より大きい第2の値である場合に前記第2の値に応じた電流であって、前記第1の電流より大きい第2の電流を前記引き込みノードから引き込む請求項4に記載のゲート駆動装置。
【請求項6】
前記半導体スイッチング素子は、炭化ケイ素、窒化ガリウム、酸化ガリウムおよびダイアモンドの少なくとも1つを主材料とするワイドバンドギャップ半導体素子である請求項1に記載のゲート駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体スイッチング素子のゲート駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置等のパワーエレクトロニクス機器では、半導体スイッチング素子の大電流化および高速化が進んでいる。半導体スイッチング素子の大電流化および高速化が進むと、半導体スイッチング素子のターンオフ時に発生するサージ電圧が過大になり、半導体スイッチング素子の破壊等の問題が発生する。
【0003】
ここで、サージ電圧を抑制するために、半導体スイッチング素子のスイッチング速度を低下させるという対策が考えられる。しかし、スイッチング速度を低下させると、スイッチング損失の増大を招く問題がある。
【0004】
そこで、特許文献1は、図6に示すゲート駆動装置200を提案している。図6において、半導体スイッチング素子211は、ダイオードが逆並列接続されたMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor;金属酸化膜半導体構造の電界効果トランジスタ)であり、電力変換装置(図示略)の主回路に設けられている。ゲートドライバ201は、ゲート電圧発生ノードからゲート抵抗Rgを介して半導体スイッチング素子211のゲート端子にゲート電圧を供給し、半導体スイッチング素子211のオンオフ駆動を行う。インダクタ212は、半導体スイッチング素子211に接続された主回路配線のインダクタンスである。ゲート放電電流調整回路220は、抵抗R11およびR12により構成されている。ここで、抵抗R11は、一端がゲートドライバ201の基準ノードに接続され、他端がインダクタ212の上流側(すなわち、半導体スイッチング素子211側)に接続されている。また、抵抗R12は、一端がゲートドライバ201の基準ノードに接続され、他端がインダクタ212の下流側に接続されている。ゲートドライバ201は、基準ノードの電位を基準として、ゲート電圧を発生し、ゲート電圧発生ノードから出力する。
【0005】
このゲート駆動装置200において、ゲートドライバ201のゲート電圧発生ノードから半導体スイッチング素子211をオフさせるゲート電圧が出力されると、半導体スイッチング素子211のゲート端子の電荷をゲートドライバ201に放電させる放電電流が流れる。この放電電流は、ゲート抵抗Rg→ゲートドライバ201→抵抗R11と抵抗R12の並列回路という経路を介して流れ、半導体スイッチング素子211のゲート-ソース間電圧を低下させる。そして、半導体スイッチング素子211のゲート-ソース間電圧が低下すると、半導体スイッチング素子211に流れるドレイン電流が急激に減少し、インダクタ212に負の誘起電圧が発生する。この誘起電圧により抵抗R12および抵抗R11に電流が流れる。これにより抵抗R11が接続されたゲートドライバ21の基準ノードの電位は、半導体スイッチング素子Q1のソース端子の電位よりも抵抗R11の電圧降下分だけ上昇する。この結果、半導体スイッチング素子211のゲート端子の電荷の放電速度が減少し、半導体スイッチング素子51を流れる主回路電流の電流変化率(この場合、負の電流変化率)の大きさが低下し、サージ電圧が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2020/095351号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されたゲート駆動装置200では、主回路配線インダクタンスに発生する誘起電圧を検出し、この誘起電圧の大きさに応じてゲート電荷の放電速度を遅くする方向に変化させるので、スイッチングごとにサージ電圧の抑制量を調整することができる。しかしながら、電力変換装置等の半導体スイチング素子として、SiCなどの高速デバイスが用いられる場合、Siデバイスが用いられる場合よりも高いサージ電圧の発生が懸念されるため、主回路配線の一巡インダクタンスを極力小さくする設計が要求される(数十nH程度)。特許文献1のように、主回路配線インダクタンスの一部分を利用する構成は、主回路配線インダクタンスの増加を招くので、設計難易度が上がり実現が困難となる可能性がある。
【0008】
この発明は、以上説明した事情に鑑みてなされたものであり、主回路配線インダクタンスを利用せずに、スイッチングごとにサージ電圧の抑制量を調整することが可能なゲート駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の一態様によるゲート駆動装置は、第1の端子および第2の端子と、前記第1の端子および前記第2の端子間のオンオフを制御するゲート端子とを有する半導体スイッチング素子をオンオフ駆動するゲート駆動回路と、前記第1の端子および前記第2の端子間を通過する電流の電流変化率を検出する検出部と、前記半導体スイッチング素子のターンオフ時に前記検出部によって検出される負の電流変化率の大きさに応じて、前記ゲート端子の電荷を前記ゲート駆動回路に放電させる放電電流を減少させるゲート電流調整回路と、を有することを特徴とする。
【0010】
好ましい態様において、前記検出部は、前記半導体スイッチング素子に流れる電流の電流路が挿入されたロゴスキーコイルを含む。
【0011】
他の好ましい態様において、ゲート駆動装置は、前記ロゴスキーコイルに発生する誘起電圧を検出し、前記電流変化率が負である期間だけ前記誘起電圧に応じた調整信号を出力する誘起電圧検出回路を有し、前記ゲート電流調整回路は、前記調整信号に応じて前記放電電流を減少させる。
【0012】
他の好ましい態様において、前記ゲート電流調整回路は、前記第1の端子に接続された引き込みノードから前記調整信号に応じた電流を引き込み、この引き込んだ電流に応じて前記放電電流を減少させる。
【0013】
具体的には、前記ゲート電流調整回路は、前記調整信号の値が第1の値である場合には、前記第1の値に応じた第1の電流を前記引き込みノードから引き込み、前記調整信号の値が前記第1の値より大きい第2の値である場合に前記第2の値に応じた電流であって、前記第1の電流より大きい第2の電流を前記引き込みノードから引き込む。
【0014】
好ましい態様において、ゲート駆動装置の駆動対象である前記半導体スイッチング素子は、炭化ケイ素、窒化ガリウム、酸化ガリウムおよびダイアモンドの少なくとも1つを主材料とするワイドバンドギャップ半導体素子である。
【発明の効果】
【0015】
この発明の一態様であるゲート駆動装置によれば、第1の端子および第2の端子を通過する電流の電流変化率を検出部が検出し、ゲート電流調整回路は、半導体スイッチング素子のターンオフ時に検出部によって検出される負の電流変化率の大きさに応じて、ゲート端子の電荷をゲート駆動回路に放電させる放電電流を減少させる。従って、このゲート駆動装置によれば、主回路配線インダクタンスを利用せずに、スイッチングごとに半導体スイッチング素子に発生するサージ電圧の抑制量を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の一実施形態であるゲート駆動装置の構成を示す回路図である。
図2】同ゲート駆動装置の具体的な回路構成を示す回路図である。
図3】同ゲート駆動装置のゲート電流調整回路に用いられるMOSFETの出力電流特性を例示する図である。
図4】同実施形態の動作例を示す波形図である。
図5】同実施形態の他の動作例を示す波形図である。
図6】従来のゲート駆動装置の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつこの発明の実施形態について説明する。図1はこの発明の一実施形態であるゲート駆動装置100の構成を示す回路図である。このゲート駆動装置100は、電力変換装置(図示略)の主回路に設けられた半導体スイッチング素子Q1のオンオフ駆動を行い、半導体スイッチング素子Q1に主回路電流Idを流す装置である。この例において、半導体スイッチング素子Q1は、ダイオードが逆並列接続されたMOSFETである。このMOSFETは、第1の端子としてのソース端子Sと、第2の端子としてのドレイン端子Dと、第1の端子および第2の端子間のオンオフを制御するゲート端子Gとを有する半導体スイッチング素子である。半導体スイッチング素子Q1は、炭化ケイ素、窒化ガリウム、酸化ガリウム、およびダイアモンドの少なくとも1つを主材料とするワイドバンドギャップ半導体素子であってもよい。
【0018】
ゲート駆動装置100は、ゲート駆動回路10と、ゲート抵抗Rgと、ロゴスキーコイル20と、誘起電圧検出回路30と、ゲート電流調整回路40とを含む。ここで、ゲート駆動回路10は、半導体スイッチング素子Q1をオンオフ駆動するためのゲート電圧を、ゲート抵抗Rgを介して半導体スイッチング素子Q1のゲート端子Gに供給する回路である。ロゴスキーコイル20には、半導体スイッチング素子Q1のソース端子Sに接続された主回路配線が挿入される。この主回路配線には、半導体スイッチング素子Q1からの主回路電流Idが流れる。この主回路電流Idにより主回路配線の周囲に磁界が発生し、主回路電流Idが変化すると、主回路配線の周囲の磁界が変化する。ロゴスキーコイル20は、この主回路電流Idの変化によって主回路配線の周囲に発生する磁界の変化に応じた誘起電圧V1を出力する。すなわち、ロゴスキーコイル20は、第1の端子および第2の端子を通過する主回路電流Idの電流変化率dId/dtを検出することにより誘起電圧V1を出力する検出部である。
【0019】
誘起電圧検出回路30は、ターンオフ時にロゴスキーコイル20が出力する誘起電圧V1を検出し、調整信号である調整電圧V2に変換する回路である。ゲート電流調整回路40は、ターンオフ時に半導体スイッチング素子Q1のゲート端子の電荷をゲート駆動回路10に放電させる放電電流を調整電圧V2に応じて減少させる回路である。すなわち、ゲート電流調整回路40は、半導体スイッチング素子Q1のターンオフ時にロゴスキーコイル20によって検出される負の電流変化率の大きさに応じて、ゲート端子Gの電荷をゲート駆動回路10に放電させる放電電流を減少させる回路である。
【0020】
以上のように、本実施形態では、半導体スイッチング素子Q1に流れる電流Idの電流変化率dId/dtを検出するロゴスキーコイル20を設け、ターンオフ時に、このロゴスキーコイル20が発生する誘起電圧V1に基づいて、半導体スイッチング素子Q1のゲート端子の電荷の放電速度の調整を行う。従って、本実施形態によれば、主回路配線のインダクタンスを用いることなく、スイッチングごとに、半導体スイッチング素子Q1が発生するサージ電圧を電流変化率dId/dtに応じた適切な量だけ抑制することができる。
【0021】
図2は本実施形態によるゲート駆動装置100の具体的な回路構成を示す回路図である。図2において、ゲート駆動回路10は、直流電源VCCおよびVEEと、スイッチSW1およびSW2と、ダイオードD2と、インバータ11とを有する。
【0022】
直流電源VCCの負極は、直流電源VEEの正極に接続されている。この直流電源VCCおよびVEEの共通接続ノードは、ゲート電流調整回路40の抵抗R1を介して半導体スイッチング素子Q1の第1の端子(すなわち、ソース端子S)に接続されている。直流電源VCCの正極はスイッチSW1の一端に接続され、スイッチSW1の他端はダイオードD2のアノードに接続されている。このスイッチSW1およびダイオードD2の共通接続ノードはゲート抵抗Rgを介して半導体スイッチング素子Q1のゲート端子Gに接続されている。ダイオードD2のカソードはスイッチSW2の一端に接続され、スイッチSW2の他端は直流電源VEEの負極に接続されている。
【0023】
ゲート駆動回路10には、半導体スイッチング素子Q1のオンオフを指令する制御信号が供給される。この制御信号はスイッチSW1に供給される一方、インバータ11によって反転されてスイッチSW2に供給される。
【0024】
制御信号がHレベルの場合、スイッチSW1がON、スイッチSW2がOFFとなる。これにより直流電源VCCの出力電圧がスイッチSW1、抵抗RgおよびR1を介して半導体スイッチング素子Q1のゲート端子Gおよびソース端子S間に印加され、半導体スイッチング素子Q1のターンオン駆動が行われる。
【0025】
制御信号がLレベルの場合、スイッチSW1がOFF、スイッチSW2がONとなる。これにより直流電源VEEの出力電圧の極性を反転した電圧がスイッチSW2、ダイオードD2、抵抗RgおよびR1を介して半導体スイッチング素子Q1のゲート端子Gおよびソース端子S間に印加され、半導体スイッチング素子Q1のターンオフ駆動が行われる。
【0026】
誘起電圧検出回路30は、ロゴスキーコイル20の両端間に直列接続された抵抗R3およびダイオードD1により構成されている。ここで、ダイオードD1のカソードは、抵抗R3の一端に接続されている。また、ダイオードD1のアノードは、ロゴスキーコイル20の一端に接続され、かつ、直流電源VEEの負極に接続されたb点に接続されている。
【0027】
本実施形態では、ロゴスキーコイル20に挿入された主回路配線に流れる主回路電流Idが減少して、電流変化率dId/dtの極性が負になった場合に、正の誘起電圧V1=-k・dId/dt(kは負の比例定数)がロゴスキーコイル20から出力され、調整電圧V2としてダイオードD1のカソードおよびアノード間に印加される。また、本実施形態では、ロゴスキーコイル20に挿入された配線に流れる主回路電流Idが増加して、電流変化率dId/dtの極性が正になった場合には、誘起電圧V1の極性は負となり、この誘起電圧V1がダイオードD1によって短絡されるため、調整電圧V2は約0Vとなる。
【0028】
ゲート電流調整回路40は、抵抗R1およびR2と、MOSFET41とを有する。抵抗R1は、一端が直流電源VCCおよびVEEの共通接続ノードに接続され、他端は半導体スイッチング素子Q1のソース端子Sに接続されたa点に接続されている。抵抗R2は、一端がa点に接続され、他端はMOSFET41のドレインに接続されている。本実施形態では、a点が放電電流を減少させる電流を引き込むための引き込み点となっている。MOSFET41は、ゲート端子が抵抗R3およびダイオードD1の共通接続ノードに接続され、ソース端子がb点に接続されている。
【0029】
本実施形態において、ゲート電流調整回路40のMOSFET41は、半導体スイッチング素子Q1のターンオフ時に、調整電圧V2に応じた電流を引き込み点であるa点から引き込むことによりa点の電位を低下させる(負方向に変化させ)。この結果、半導体スイッチング素子Q1のゲート端子Gおよびソース端子Sを介してa点に電流が引き込まれ、ゲート端子Gの電荷をゲート駆動回路10に放電させる放電電流(図2に示すゲート電流Igと逆極性の電流)が減少する。これによりゲート端子Gの電荷の放電速度が低下し、ターンオフの動作が遅延される。
【0030】
図3はゲート電流調整回路40のMOSFET41の出力電流特性を例示する図である。図3において、横軸はMOSFET41のドレイン-ソース間電圧V(MOS)であり、縦軸はMOSFET41のドレイン電流I(MOS)である。一般的なMOSFETと同様、MOSFET41の出力電流特性には、ドレイン-ソース間電圧V(MOS)の増加に略比例して応じてドレイン電流I(MOS)が増加する線形領域と、ドレイン電流I(MOS)が飽和する飽和領域とがある。本実施形態では、直流電源VEEの出力電圧に略一致する電圧がMOSFET41のドレイン-ソース間に与えられ、MOSFET41は飽和領域で動作する。
【0031】
図3に示すように、飽和領域において、MOSFET41のドレイン電流I(MOS)は、ゲート-ソース間電圧VGSがVGS1→VGS2→…→VGS6と増加するのに応じて増加する。そして、本実施形態では、誘起電圧検出回路30から出力される調整電圧V2がMOSFET41のゲート-ソース間に印加される。従って、本実施形態によれば、主回路電流の電流変化率dId/dtに比例した調整電圧V2が第1の値VGS2である場合には、この第1の値VGS2に応じた第1の電流Id2がMOSFET41に引き込まれる。また、主回路電流の電流変化率-dId/dtに比例した調整電圧V2が第1の値VGS2より大きい第2の値VGS4である場合には、この第2の値VGS4に応じた電流であって、第1の電流Id2より大きい第2の電流Id4がMOSFET41に引き込まれ、ターンオフ動作の遅延が大きくなる。
【0032】
図4および図5は、ゲート駆動装置100の動作例を示す波形図である。ここで、図4はターンオフ時において主回路電流の電流変化率-dId/dtが大きい場合の動作例を示しており、図5図4よりも電流変化率-dId/dtが小さい場合の動作例を示している。
【0033】
図4および図5において、ターンオフ時、半導体スイッチング素子Q1のゲート-ソース間電圧VGSが低下を開始すると、半導体スイッチング素子Q1のゲート端子Gの電荷をゲート駆動回路10に放電させる放電電流、すなわち、負のゲート電流Igが流れる。この負のゲート電流Igの大きさはピークに達した後、低下し始める。
【0034】
一方、ターンオフ時、ミラー期間が終了すると、半導体スイッチング素子Q1のドレイン端子Dおよびソース端子S間を流れる主回路電流Idが減少する。この結果、主回路電流Idの電流変化率dId/dtの極性が負となり、この負の電流変化率dId/dtの大きさ(絶対値)に比例した正の調整電圧V2が誘起電圧検出回路30から出力され、この調整電圧V2に応じたドレイン電流I(MOS)がa点からMOSFET41に引き込まれる。これにより引き込み点であるa点の電位が低下し、半導体スイッチング素子Q1のゲート端子Gの電荷をゲート駆動回路10に放電させる放電電流(図4および図5ではゲート電流Ig)を減少させる。
【0035】
このように放電電流が減少すると、ゲート-ソース間電圧VGSの低下の勾配は緩やかになり、主回路電流Idの低下の勾配も緩やかになる。この効果を分かりやすくするため、図4および図5には本実施形態の動作が実線で示されるとともに、比較例として、ゲート電流調整回路40が設けられていないゲート駆動装置の動作が破線で示されている。図4および図5に示すように、本実施形態によれば、比較例に比べて、ターンオフ時のゲート-ソース間電圧VGSの低下の勾配が緩やかになり、主回路電流Idの低下の勾配も緩やかになる。また、本実施形態によれば、ターンオフ時に主回路電流Idの低下の勾配が緩やかになるため、半導体スイッチング素子Q1のドレイン-ソース間電圧VDSに発生するサージ電圧がサージ電圧許容値以内に抑制される(図4参照)。
【0036】
また、本実施形態では、スイッチングごとに、主回路電流Idの負の電流変化率dId/dtの大きさに応じた適切な量だけ半導体スイッチング素子Q1に流す放電電流を減少させ、サージ電圧を抑制することができる。図4の例では、ターンオフ時に発生する主回路電流Idの負の電流変化率dId/dtの絶対値が大きく、大きなドレイン電流I(MOS)がa点からMOSFET41に引き込まれる。このため、放電電流(ゲート電流Ig)の減少量が大きくなり、サージ電圧の抑制量も大きくなる。これに対し、図5の例では、図4の例よりも、ターンオフ時に発生する主回路電流Idの負の電流変化率dId/dtの絶対値が小さく、小さなドレイン電流I(MOS)がa点からMOSFET41に引き込まれる。このため、図4の例よりも、放電電流Igの減少量が小さくなり、サージ電圧の抑制量も小さくなる。
【0037】
ところで、逆回復動作時において、半導体スイッチング素子Q1の逆回復電流がピークに到達して低下するとき、正の調整電圧V2が誘起電圧検出回路30から出力される。このとき、仮にダイオードD2がなかったとすると、半導体スイッチング素子Q1のゲート端子Gおよびソース端子S間→抵抗R2→MOSFET41→スイッチSW2→抵抗Rg→半導体スイッチング素子Q1のゲート端子Gおよびソース端子S間というループを電流が流れ、逆バイアス状態にある半導体スイッチング素子Q1のゲート端子Gの電荷を不必要に放電させて、逆バイアス電圧を低下させる(浅くする)こととなる。しかしながら、本実施形態では、このループ内にダイオードD2が設けられているため、このようなゲート端子Gの電荷を不必要に放電させる電流の発生が阻止される。
【0038】
また、ターンオン動作では、主回路電流Idがピークに達して低下するときに、負の電流変化率dId/dtが発生して、ゲート電流調整回路40のMOSFET41がa点からドレイン電流I(MOS)を引き込む。しかし、MOSFET41が引き込むドレイン電流I(MOS)は、直流電源VCC→スイッチSW1→抵抗Rg→半導体スイッチング素子Q1のゲート-ソース間→抵抗R2→MOSFET41→直流電源VEE→直流電源VCCというループを流れ、半導体スイッチング素子Q1のゲート端子Gに対する充電電流と同方向に流れ、充電電流を増加させるので、ターンオン動作に悪影響を与えない。
【0039】
以上説明したように、本実施形態のゲート駆動装置100によれば、第1の端子および第2の端子を通過する電流の電流変化率を検出部であるロゴスキーコイル20が検出し、ゲート電流調整回路40は、半導体スイッチング素子Q1のターンオフ時に検出部によって検出される負の電流変化率の大きさに応じて、ゲート端子の電荷をゲート駆動回路に放電させる放電電流を減少させる。従って、このゲート駆動装置100によれば、主回路配線インダクタンスを利用せずに、スイッチングごとに半導体スイッチング素子Q1に発生するサージ電圧の抑制量を調整することができる。
【0040】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態が考えられる。
【0041】
(1)上記実施形態において、誘起電圧検出回路30は、調整信号として、負の電流変化率の大きさに応じた調整電圧を出力したが、負の電流変化率の大きさに応じた調整電流を出力してもよい。この場合、ゲート電流調整回路40は、調整電流に応じた大きさの電流をa点から引き込むようにすればよい。
【0042】
(2)上記実施形態では、a点から電流を引き込むことによりゲート端子Gの電荷を放電させる放電電流を減少させたが、他の手段により放電電流を減少させてもよい。例えば調整電圧V2に応じた量だけゲート抵抗Rgの抵抗値を高くすることにより放電電流を減少させてもよい。
【符号の説明】
【0043】
100……ゲート駆動装置、10……ゲート駆動回路、Rg……ゲート抵抗、Q1……半導体スイッチング素子、20……ロゴスキーコイル、30……誘起電圧検出回路、40……ゲート電流調整回路、VCC,VEE……直流電源、SW1,SW2……スイッチ、11……インバータ、R1,R2,R3……抵抗、41……MOSFET、D1,D2……ダイオード。
図1
図2
図3
図4
図5
図6