(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168755
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】エアー間仕切り
(51)【国際特許分類】
E04H 15/20 20060101AFI20231121BHJP
E04B 2/74 20060101ALI20231121BHJP
E04H 1/12 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
E04H15/20 C
E04B2/74 561H
E04H1/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080043
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】本田 航
【テーマコード(参考)】
2E141
【Fターム(参考)】
2E141AA03
2E141AA05
2E141BB01
2E141CC01
2E141DD01
2E141DD03
2E141DD14
2E141DD27
2E141EE03
2E141EE04
2E141EE21
2E141EE22
2E141EE23
2E141FF00
2E141GG01
2E141HH01
(57)【要約】
【課題】
コンパクトに収容可能であるとともに軽量性に優れ、かつ設営が容易で居住性にも優れる間仕切りを提供する。
【解決手段】
エアー間仕切り(100)は、4本以上偶数本の柱部(10)と、一の柱部(10)の上部と対角線方向において当該一の柱部(10)と対向する他の柱部(10)の上部とを連結するとともに上面視において互いが交差する柱部(10)の本数の2分の1の本数の梁部(20)と、を有する骨組み(40)と、4本以上偶数本の柱部(10)を亘り、上面視において柱部(10)を外縁として内外を区画するシート状の壁部(30)と、を備え、上部開口であるとともに、骨組み(40)が、気柱より構成され繰り返し気体を給排気可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4本以上偶数本の柱部と、一の柱部の上部と対角線方向において当該一の柱部と対向する他の柱部の上部とを連結するとともに上面視において互いが交差する前記柱部の本数の2分の1の本数の梁部と、を有する骨組みと、
前記4本以上偶数本の柱部を亘り、上面視において前記柱部を外縁として内外を区画するシート状の壁部と、を備え、
上部開口であるとともに、
前記骨組みが、気柱より構成され繰り返し気体を給排気可能であることを特徴とするエアー間仕切り。
【請求項2】
排気状態である前記骨組みにおいて、前記梁部の一端側と前記柱部の上端側とで構成される内角が90度を超える請求項1に記載のエアー間仕切り。
【請求項3】
前記梁部は、設置面に対して略水平方向に伸長する請求項2に記載のエアー間仕切り。
【請求項4】
前記骨組みは、2本の前記柱部、および一の前記柱部の上部と他の前記柱部の上部とを連結する前記梁部を有する骨部を2以上用いて構成される請求項1から3のいずれか一項に記載のエアー間仕切り。
【請求項5】
前記梁部が互いに交差する箇所が、第一の前記梁部と他の前記梁部との相対的な位置関係を維持するための係合手段により交差角度が固定されている請求項4に記載のエアー間仕切り。
【請求項6】
前記係合手段は、第一の前記梁部の中間部において径方向に設けられた挿通孔と、第二の前記梁部の中間部において第二の前記梁部の軸方向に設けられた細径の挿通部とを備え、
前記挿通孔は、第一の前記梁部の上下方向の中間部に設けられているとともに、
前記挿通部の軸方向は、第二の前記梁部の軸方向と同方向に設けられている請求項5に記載のエアー間仕切り。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気密性を有する気柱を用いたエアー間仕切りに関する。
【背景技術】
【0002】
災害発生の際の備えとして、地方自治体、学校、会社などにおいて、種々の防災製品が備蓄されている。たとえば体育館等の施設を避難所として使用する場合に避難者のプライベートを確保してストレスを軽減するために間仕切りが備蓄される場合がある。
【0003】
一般的な間仕切りとしては、段ボールを壁部材や床部材として所定の空間を仕切る段ボール間仕切りが市販されている(具体例は比較例1参照)。
【0004】
また、避難所などで使用される防災用テントとして、ポップアップ式のテントが市販されている(具体例は比較例2参照)。尚、ここでいうポップアップ式のテントとは、骨組みと天幕とが一体的に構成されており、収容袋内で折り畳まれていた骨組みが収容袋から取り出されることで開放され、速やかにテント形状になる簡易テントのことをいう。
【0005】
また収容時のコンパクト性に優れる簡易テントとして、気柱を骨組み部材に用いたテントが挙げられる。尚、ここでいう気柱とは、気体を供給することで膨張する気密性のあるチューブ状成形物のことを指す。
たとえば、特許文献1には、内部に気体を給気することで膨張し形状保持が可能な柔軟性チューブからなる逆U字状の2つのフレーム部材からなるフレームと、このフレームを覆うシート部材を備えるドーム型のテントが開示されている。上記テントは、フレーム部材を構成する柔軟性のチューブの両端に設けられた係止部と地中に穿刺されたアンカー部材とを係止させることで地上に立設されるとともに、フレーム部材にシート部材を紐などの結束手段によって装着することで形成される。
【0006】
また特許文献2には、流体を内部に充填することにより膨張して棒状をなす膨張式棒状体を用い、所望の曲げ角度で当該膨張式棒状体を折り曲げて、ドーム状のテントの骨組みを構成した例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3048042号公報
【特許文献2】特開2018-193749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
防災製品は、限られた容積の備蓄スペースに収容されることが一般的である。そのため防災製品は、コンパクトに収納できること求められ、また使用時に速やかに使用可能な状態となることが好ましく、そのために軽量性や取り扱い容易性が求められる。
【0009】
しかしながら、上述する段ボール間仕切りは、総重量が大きく持ち運びし難い上、収容時において嵩がはりコンパクトに収容することが困難であった。また段ボール間仕切りは、段ボールを立体的に組み立てる必要があるため、設営に時間がかかるものが多く、この点でも改善が望まれていた。
【0010】
一方、ポップアップ式のテントは、収容袋から取り出されることで速やかにテント形状にとなるため設営時間が短いという長所を有する反面、テントの骨組みが嵩張り、収容時のコンパクト性に欠けるという点で改善の余地があった。
【0011】
これに対し特許文献1、2に示された技術によれば、テントの骨組みが繰り返し給排気可能な気柱から構成されているため、収容時には骨組み(気柱)の内部の気体を排気させポップアップテントよりもコンパクトに収容することが可能である。しかしながら、特許文献1に開示されたテントおよび特許文献2に開示された骨組みを用いたテントは、ドーム状の天井部を有するテントであるため、内部の居住空間が狭く、また実質的に人が立って行動できる範囲が狭いなど居住性の問題を有していた。
【0012】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものである。即ち、本発明は、コンパクトに収容可能であるとともに軽量性に優れ、かつ設営が容易で居住性にも優れる間仕切りの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のエアー間仕切りは、4本以上偶数本の柱部と、一の柱部の上部と対角線方向において当該一の柱部と対向する他の柱部の上部とを連結するとともに上面視において互いが交差する上記柱部の本数の2分の1の本数の梁部と、を有する骨組みと、上記4本以上偶数本の柱部を亘り、上面視において上記柱部を外縁として内外を区画するシート状の壁部と、を備え、上部開口であるとともに、上記骨組みが、気柱より構成され繰り返し気体を給排気可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上記構成を有する本発明のエアー間仕切りは、コンパクトに収容可能であり、また総重量も適度に抑えることができる上、設営方法も簡易であって短時間に速やかに使用状態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第一実施態様であるエアー間仕切りの斜視図である。
【
図2】本発明の第一実施態様であるエアー間仕切りの上面図である。
【
図3】本発明の第一実施態様であるエアー間仕切りにおける第一骨部の排気状態における平面図である。
【
図4】(4A)は第一実施形態における骨組みを分解した概略正面図であり、(4B)は他の例の骨組みを分解した概略正面図である。
【
図5】本発明の第二実施形態における骨組みの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第一実施形態]
以下に、本発明の第一実施形態のエアー間仕切り100について
図1~
図4を用いて説明する。
図1は、本発明の第一実施態様であるエアー間仕切り100の斜視図である。
図2は、エアー間仕切り100の上面図である。
図3は、エアー間仕切り100における排気状態の第一骨部40aを床面に広げた状態の平面図である。
図4Aは、本実施形態における骨組み40を第一骨部40aと第二骨部40bとに分解し、各骨組みを正面視した状態を示す概略正面図であり、係合手段26(
図2参照)の一例を説明する説明図である。
図4Bも、第一骨部40aと第二骨部40bとに分解し、各骨組みを正面視した状態を示す概略正面図であり、本実施形態における係合手段26とは異なる態様の係合手段を説明する説明図である。尚、各図はそれぞれ本発明のエアー間仕切りの寸法等を何ら制限するものではない。
【0017】
尚、以下において本発明に関する説明に用いるいくつかの用語について説明する。特段の断りなく本発明に関し言う上下方向とは、設置面に使用状態(気柱に気体が給気された状態)で設置されたエアー間仕切りにおける天地方向を指す。また骨組みに関していう軸方向とは、長尺方向における骨組みの軸の伸長方向を指し、径方向とは上記軸方向に対し垂直な方向を指す。柱部の内周部とは、エアー間仕切りの内側に面する柱部の周面を指し、柱部の外周部とは、上記内周部ではない柱部の周面を指す。便宜的に柱部を内周部と外周部とで分けるときには、たとえば、上面視において、一の柱部の断面中心と、これに対角線上で対向する他の柱部の断面中心とを結ぶ直線I、および柱部の断面中心をとおり直線Iと直交する直線IIを想定したとき、直線IIよりもエアー間仕切りの内側に位置する周面を内周部といい、直線IIよりもエアー間仕切りの外側に位置する周面を外周部と呼ぶことができる。
【0018】
図1に示すとおり、本実施形態のエアー間仕切り100は、4本以上偶数本の柱部10と、一の柱部10の上部と対角線方向において当該一の柱部10と対向する他の柱部10の上部とを連結するとともに上面視において互いが交差する複数の梁部20と、を有する骨組み40を備える。梁部20の本数は、柱部10の本数の2分の1の本数となる。
骨組み40に対し、壁部30が設けられてエアー間仕切り100が構成される。壁部30は、上述する4本以上偶数本の柱部10を亘り、上面視において複数の柱部10を外縁として内外を区画するシート状の部材より構成される。
図1に示されるように、エアー間仕切り100は、上部が開口されており、これによって、内部の空間50(
図2参照)の居住性および換気の向上および防犯が図られている。
エアー間仕切り100における骨組み40は、気柱より構成されており、繰り返し気体を給排気可能である。そのため、収容時には当該気柱の内部の気体を排気させて排気状態とし骨組み40の容積を小さくすることができ、収容に要する空間を有効に活用することができる。また使用時には気柱である骨組み40に給気するだけでよいため設営が容易であり、速やかに収容状態から使用状態に変更することが可能である。
【0019】
上記構成を有するエアー間仕切り100は、4本以上偶数本の柱部10において、2本の柱部10に対し1本の梁部20が対角線上に設けられており、部品点数が少なく簡易な構造でありながら設置姿勢の安定性が良好に図られている。また骨組み40が気柱から構成されるために軽量であり持ち運び等の取り扱い性も容易である。
以下に本実施形態についてさらに詳細に説明する。
【0020】
(骨組み)
骨組み40は、4本以上偶数本の柱部10と、一の柱部10の上部と対角線方向において当該一の柱部10と対向する他の柱部10の上部とを連結するとともに上面視において互いが交差する複数の梁部20と、を有する。本実施形態では具体的には、4本の柱部10(10a、10a’、10b、10b’)と、柱部10aの上端および柱部10a’の上端を連結する第一梁部20a、並びに柱部10bの上端および柱部10b’の上端を連結する第二梁部20bから骨組み40が構成されている。
【0021】
本実施形態では、2本の梁部20それぞれは、設置面に対して略水平方向に伸長するよう構成されている。また本実施形態では、骨組み40を構成する4本の柱部は、設置面から略垂直上方に伸長している。
そのためエアー間仕切り100は、全体としてキューブ状の外観を呈している。キューブ状とはより具体的には、立方体あるいは直方体である。このようにキューブ状のエアー間仕切り100であれば、例えばドーム状のテントなどと比較して梁部20を構成する部材量を少なくすることができ、経済性、製造容易性および軽量性の点で好ましい。また、設置面から梁部20までの距離が一定であるため、柱部10の高さを適度に大きく設計することによって、使用者が、エアー間仕切り100の内部の空間50において、中央および壁部30付近等のいずれにおいても背を屈めるなどの行動の制限を受けることがない。
ただし、本発明において、エアー間仕切り100の外観形状はこれに限定されるものではなく、たとえば図示省略する他の態様として、梁部20がそれぞれ上方に突形状に形成されドーム状の外観を呈するエアー間仕切りを本発明は包含する。
【0022】
骨組み40は気柱から構成されており、具体的には、柱部10および梁部20はいずれも気柱から構成されている。
本発明に関し気柱とは、気密性を有し繰り返し気体を給排気可能な細径の袋状体を指し、エアーテントなどを構成する骨組みと同様に構成されうる。気柱は、たとえば樹脂部材やゴム部材を用いて製造されたチューブ、当該チューブが生地や不織布などからなる外層によって覆われて構成されたインナーチューブ、生地などからなる基材の少なくとも一方側面に樹脂層やゴム層(以下、樹脂層等ともいう)が設けられた引布より構成された基材付きチューブなどから構成することができる。
上述する気柱は、構成部材を所望の形状に裁断しウェルダー加工や接着剤などの加工方法により適宜管状に形成される。
【0023】
中でも、基材付きチューブにより構成された気柱は、簡易な構成であって、かつ基材によりチューブ(気柱)における樹脂層等が膨張し過ぎることが防止されるため繰り返しの使用にも好適である。気柱に用いる基材付きチューブは、たとえば基材の一方側面に樹脂層等が設けられた引布を1枚用いて当該基材を外側として管状に構成されたチューブであってもよいし、あるいは、基材の一方側面に樹脂層等が設けられた引布を2枚用いて互いの樹脂層等を当接させて積層させ内側も外側も基材が現れるよう管状に構成されたチューブであってもよい。
【0024】
気柱から構成される骨組み40は、給気されることで膨張し、柱部10および梁部20として強度を発揮する。ただし、気柱は可撓性があるため、内部に気体が充分に給気された場合、給気前に示す形状(排気状体における形状)に対し膨張時の形状が変形する場合がある。
たとえば、本実施形態のように使用状態において、柱部10が設置面から略垂直上方に伸長するとともに、梁部20を設置面に対し略水平方向に伸長するエアー間仕切り100を良好に実現するためには、
図3に示すように、排気状体において柱部10と梁部20とで構成される内角θの角度が90度を超えるように設計されることが好ましく、内角θは95度以上120度以下であることが好ましく100度以上115度以下であることがより好ましい。気柱においてかかる内角θが示される場合、当該気柱に給気して膨張させた際、設置面から略垂直上方に伸長する柱部10と、設置面に対し略水平方向に伸長する梁部20とを備える骨組み40が実現されやすく、設置姿勢が安定したエアー間仕切り100を提供し易い。
【0025】
本実施形態では、2本の柱部10、および一の柱部10の上部と他の柱部10の上部とを連結する梁部20を有する骨部を複数有し、これにより骨組み40が構成されている。具体的には、
図1に示すとおり、柱部10a、柱部10a’およびこれらを連結する第一梁部20aにより、第一骨部40aが構成され、また、柱部10b、柱部10b’およびこれらを連結する第二梁部20bにより、第二骨部40bが構成されており、これら第一骨部40aおよび第二骨部40bにより骨組み40が構成されている。ここで、第一骨部40aおよび第二骨部40bは、それぞれ独立に形成されており、1つの骨部ごとに、2本の柱部および一の柱部10の上部と対角線方向において当該一の柱部10と対向する他の柱部10の上部とを連結する梁部20が互いに気体が流通可能に連結している。したがって、1つの骨部においてこれら柱部10または梁部20の部材のいずれか一か所に設けられた給排気孔12から給気することによって、当該骨部全体を膨張させることができる。このように、骨組み40を複数の独立した骨部で構成することによって、骨組み40の製造が容易となり、また単純な構成の骨部(気柱)によって立体的な骨組み40を構成することができるため、気柱の気体漏れの発生を良好に防止することができる。
ただし本発明は上記態様に限定されるものではなく、たとえば、複数の柱部および梁部が全て一体に連通する一体成形物として構成されたエアー間仕切りや、第一骨部と第二骨部が独立に構成されるとともに互いがバイパス状の連結通気路により連結されたエアー間仕切りを包含する。
【0026】
本実施形態では、膨張状態にある第一骨部40aおよび第二骨部40bは、略コの字状であって、
図2に示すとおり上面視において第一骨部40aにおける第一梁部20aと、第二骨部40bにおける第二梁部20bとが交差している。本実施形態の変形例として、第一骨部40aおよび第二骨部40bに加え、さらに図示省略する第三骨部を備えもよく、かかる場合であっても、これら3つの骨部は、上面視において梁部で互いに交差するよう構成される。
【0027】
上面視において梁部20(第一梁部20aおよび第二梁部20b)が互いに交差する箇所は、一の梁部40(第一梁部20a)と他の梁部40(第二梁部20b)との相対的な位置関係を維持するための係合手段26により交差角度が固定されていることが好ましい。これによって、別体である第一骨部40aと第二骨部40bとの位置関係を固定し、一体性のある骨組み40を構成することができ、エアー間仕切り100の設置姿勢をより安定させることができる。
【0028】
係合手段26は、第一梁部20aと第二梁部20bとの交差角度を維持可能な手段であればよく、本実施形態における係合手段26は、
図2及び
図4Aに示すとおり、第一梁部20aの軸方向の中間部において径方向に設けられた挿通孔22と、第二梁部20bの軸方向の中間部において当該軸方向に設けられた細径の挿通部24とを備えて実施される。ここで挿通孔22は、第一梁部20aの上下方向の中間部に設けられているとともに、挿通部24の軸方向は、第二梁部20bの軸方向と同方向に設けられている。
かかる挿通孔22に挿通部24を挿通させた状態で、第一梁部20aを備える第一骨部40aおよび第二梁部20bを備える第二骨部40bを給気により膨張させることで、第一梁部20aと第二梁部20bとを略直交させた状態で互いの位置関係を固定させることが可能である。またかかる係合手段26により第一骨部40aと第二骨部40bとを係合させることによって、これら2つの骨部を同等の高さに設計し、2本の梁部20の高さを揃えやすい。
尚、
図4Aに示される挿通部24は、第二梁部20bにおいて相対的に細径部に構成されており、給気された際に反りが生じ易い部分ではあるが、挿通部24は挿通孔22に挿通されるため、挿通孔22の内周面の規制により反りが抑制される。挿通部24の反りをより確実に抑制するために、本実施形態は、挿通部24の軸が第二梁部20bの軸と一致するよう構成されるとともに、挿通孔22の軸が第一梁部20aの軸と直角に交差するよう構成されている。これによって、挿通孔22の内周面により、細径部である挿通部24が上下左右方向に均一に規制され、膨張時の反り返りが充分に抑制されている。尚、ここでいう挿通部24の軸とは、挿通部24の長尺方向に伸長する軸のことを指し、挿通孔22の軸とは、挿通孔22の開口部における開口方向(2つの開口端面の中心を結ぶ方向)に伸長する軸を指す。
【0029】
本実施形態では、より確実に第一梁部20aと第二梁部20bとを略直交させた状態で互いの位置関係を固定させるために、挿通孔22の孔径と、挿通部24の径は略同寸法に設計されており、また挿通部24の長さは、第一梁部20aの径と略同寸法に設計されている。
尚、挿通孔22に挿通部24を挿通させるタイミングは特に限定されないが、給気する前に挿通孔22に第二骨部40bを挿通させて挿通孔22の位置に挿通部24を配置し、その後に給気をすることで骨組み40の設営を容易に行うことができる。
【0030】
図4Bに異なる係合手段の例を示す。
図4Bでは、第一梁部20aの軸方向の中間部において上方から下方に向けて上下方向中間部まで切りかかれた第一切り欠き部27が設けられ、また第二梁部20bの軸方向の中間部において下方から上方に向けて上下方向中間部まで切りかかれた第二切り欠き部28が設けられ、これら第一切り欠き部27と第二切り欠き部28とにおいて実施される係合手段を例示している。上述のとおり形成された第一梁部20aと第二梁部20bとを交差させるとともに第一切り欠き部27と第二切り欠き部28とを互いに篏合させることで、これら2本の梁部20の交差角度を維持することが可能である。交差角度をより正確に維持するためには、第一切り欠き部27と第二切り欠き部28それぞれの長さ寸法(梁部の軸方向における寸法)を他方の梁部の径と同じがやや大きい寸法に設計されることが好ましい。ここでいうやや大きい寸法とは、給気により膨張した状態の梁部において、第一切り欠き部27と第二切り欠き部28とが互いにぴったりと篏合できる程度のゆとりを示す寸法を意味する。
【0031】
ところで、
図4Bに示す係合手段では、第一切り欠き部27および第二切り欠き部28がそれぞれの梁部20において相対的に細径部になるため、給気されて膨張した際、切り欠き部において反りが確認される場合がある。これにより、設置面に対する梁部20の水平性が示されにくい等の問題が生じる場合には、たとえば、第一切り欠き部27および第二切り欠き部28は、保護シートなどで被覆させて多層構造とし、反りの防止を図るとよい。
【0032】
別体で構成される第一骨部40aおよび第二骨部40bには、それぞれ給排気孔12が設けられている。本実施形態では、エアー間仕切り100の外側から給気作業を行い易いよう、たとえば給排気孔12は柱部10の外周部に設けられている。柱部10の外周部は壁部30で被覆されているため、壁部30の所定の位置に窓部36が設けられており、窓部36を開口させることで給排気孔12を露出させ、給気作業または排気作業を行うことができる。
【0033】
(壁部)
壁部30は、4本以上偶数本の柱部10を亘り、上面視において複数の柱部10を外縁として内外を区画するシート状の部材より構成されている。本実施形態では、より具体的には、4本の柱部10(柱部10a、10a’、10b、10b’)の外周部を亘り、上面視において四辺形の空間50を区画するシート状物により壁部30が構成されている。ただし、本発明における壁部の設置の態様はこれに限定されず、たとえば壁部30が4本の柱部10の内周部を亘り骨部40に対し取り付けられてもよい。この場合にであって、壁部30は、上面視において柱部10の外縁として内外を区画することができる。
図1に示すとおり、エアー間仕切り100は、横側面に壁部30が設けられ、天井部は有しないため、上部開口となっている。
【0034】
壁部30を構成するシート状の部材としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などの樹脂部材から製造された樹脂シート、または天然繊維またはポリエステル繊維やナイロン繊維などの合成繊維から製造された織物または編物などの生地もしくは不織布などが例示され、収容時の容積、軽量性、破れ難さ、通気性などの観点からは織物が用いられることが好ましい。エアー間仕切り100はプライベートな空間を提供可能とするものであるため、壁部30は不透明の部材から構成されることが好ましい。
【0035】
本実施形態における壁部30は、柱部10の上端から下端までの長さを有し、柱部10の外周部を覆ってエアー間仕切り100の周方向全周に設けられており、任意の一横側面に出入り口32が設けられている。また本実施形態における壁部30は、骨組み40とは分離可能に形成されており、キューブ状のエアー間仕切り100の横側面に位置する4面を有し、これらが周方向に輪をなすとともに、上部の4隅に水平方向に張り出した被覆部34が設けられている。被覆部34は、柱部10の上端の一部または全部を被覆可能な面積を有しており、4本の柱部10の上端それぞれに被覆部34が被覆されることによって、上から吊り下げられるように壁部30が骨組み40に対し設置されている。
壁部30の設置を安定させるために、さらに任意で、壁部30の裏面(エアー間仕切り100の内部に面する側の面)に接合部を設け、柱部10に対して接合させてもよい。接合部は、たとえば、壁部30の裏面に設けられ柱部10に対して結びつけることが可能な紐部、あるいは、面ファスナーまたは点ファスナーなどの第一接合手段を柱部30の外周部の任意の位置に設けるとともに第一接合手段と対となる第二接合手段を壁部30の裏面に設け、これらを互いに接合させてもよい。
【0036】
図示省略する本実施形態の変形例として、壁部30を柱部10の内周部に亘って設ける場合には、接合部は、たとえば、壁部30の表面に設けられ柱部10に対して結びつけることが可能な紐部、あるいは、面ファスナーまたは点ファスナーなどの第一接合手段を柱部30の内周部の任意の位置に設けるとともに第一接合手段と対となる第二接合手段を壁部30の表面に設け、これらを互いに接合させてもよい。
また、図示省略するさらなる変形例として、壁部30は、予め柱部10に対し縫製により固定されていてもよい。かかる態様は、給気により骨組み40を膨張させることによって、速やかにエアー間仕切り100を使用状態にすることができる点で優れている。
【0037】
上述するエアー間仕切り100の全体のサイズは特に限定されず、用途にあった寸法にて適宜設計することができる。たとえば、防災のガイドラインに示される避難所用のパーテションの寸法(たとえば2m×2m×2m)が推奨される。また骨組み40は、たとえば断面円形であって、概ね5cm以上18cm以下の径の気柱から構成することができるがこれに限定されるものではない。
【0038】
[第二施形態]
次に本発明の第二実施形態について
図5を用いて説明する。
図5は、本発明の第二実施形態における骨組み40の斜視図である。
【0039】
第二実施形態は、骨組み40の構成が第一実施形態と異なること以外は、適宜第一実施形態と同様に構成される。換言すると、第一実施形態における骨組み40と、本実施形態における骨組み40とを入れ替えて、本発明のエアー間仕切りを実施することができる。したがって、以下の説明では、本実施形態における骨組み40に関し、第一実施形態とは異なる点について主として説明し、第一実施形態と同様に構成可能な点については適宜説明を割愛する。
【0040】
第二実施形態における骨組み40は、互いに別体である、略コの字状の第一骨部40aと第二骨部40bとを備える。本実施形態では、第二骨部40bの任意の箇所(
図5では柱部10bの下端側)に給排気孔12が設けられるとともに、第一梁部20aと第二梁部20bとが気体の流通を可能とするバイパス状の連結通気路14により連結されている。このため、1つの給排気孔12から給気をすることによって骨組み40全体に対し給気を行うことができる。本発明のエアー間仕切りは、本実施形態のように、別体で製造された複数の骨部を、連結通気路で連結させることによって給排気孔の数を1つに設計することもできる。
【0041】
本実施形態では、第二骨部40bに設けられた柱部10b、10b’よりも第一骨部40aに設けられた柱部10a、10a’の方がやや長く(具体的には第一梁部20aの径寸法分程度)形成されている。そのため、
図5に示すとおり、第二骨部40bに被せるように第一骨部40aが設置され、第一梁部20aと第二梁部20bとが上面視において交差している。
【0042】
本実施形態では、第一梁部20aと第二梁部20bとが交差している箇所において、第一梁部20aの下面と第二梁部20bの上面に面ファスナーや点ファスナー等の繰り返し着脱可能な接合手段42が設けられているとよい。
また接合手段42を設ける替りに、あるいは接合手段42を捕捉するために、第一梁部20aと第二梁部20bとが交差している箇所を紐などの結合手段(図示省略)で結合させてもよい。
【0043】
本実施形態では、上述する接合手段42による第一梁部20aと第二梁部20bとの接合状態は、特定の交差角度に限定されない。換言すると、本実施形態では、第一梁部20aおよび第二梁部20bの交差角度は、所望の角度に変更することができる。したがって、エアー間仕切り100の内部を広く使用したい場合には、たとえば第一梁部20aと第二梁部20bとを上面視において90度に交差させればよく、またエアー間仕切り100を設置するスペースが狭い場合等には、第一梁部20aと第二梁部20bとを上面視において90度未満に交差させるとよい。
【0044】
本実施形態における骨組み40には、柱部10の下端に下端支持部60が設けられている。下端支持部60は、柱部10の下端を挿入可能な上面開口の管状体を備える支持部64を備える。柱部10の下端を支持部64に挿入することによって、柱部10の下端を安定に支持するとともに、設置面との接触部分を、実質的に、膨張により下方向に湾曲した柱部10の下端面ではなく、管状体である下端支持部60の下端面とすることで、エアー間仕切り100の設置状態をより良好に安定させることができる。さらに下端支持部60は、支持部64の下面に支持部64の底面と同等か、大面積である基板62を備えてもよい。支持部64の下面の基板64により、設置状態をさらに安定させることができる。
加えて、下端支持部60に対し柱部10を着脱しやすくするために、可撓性部材で構成されたリング状のカバー部(図示省略)を下端支持部60の上面開口に設けても良い。リング状のカバー部は、所定の長さを有する両端開口の筒状体であって、一方の開口端部が下端支持部60の上面開口に沿って固定される。当該導入部の他方の開口端部に柱部10の下端を挿入することによって、硬質の下端支持部60に対しスムーズに柱部10の下端を挿入することができる。柱部10の下端の挿入をよりスムーズにするという観点からは、リング状の挿入部の一方の開口端部は、下端支持部60の内周面に沿って固定されるとよい。また同様の観点から、挿入部の他方の開口端部の開口径は、上記一方の開口端部以上であることが好ましく、上記一方の開口端部よりも大きいことがより好ましい。
尚、支持部64は、上述する第一実施形態における骨組み40に用いられてもよい。
【0045】
支持部64は、樹脂または金属などの硬質の部材から構成された上部開口の管状部材などから構成される。たとえば塩化ビニル樹脂から成形された塩ビ管などが好適であるが、これに限定されない。
また、基板62も同様に樹脂または金属などの硬質の部材から構成され、骨組40の設置状態をより安定させることが好ましい。
また、上述するカバー部は、可撓性部材で構成され、より具体的には、たとえば樹脂シートまたは生地、編物などの可撓性を示す部材から構成される。これにより、下端支持部60に対し柱部10を着脱しやすくするなるため好ましい。
【0046】
収容時の容積を小さくするという観点からは、支持部64と基板62とは繰り返し着脱可能に構成されていることが好ましく、またその場合に、複数の支持部64は互いに少しずつ径寸法を変更し、互いに入れ子の状態で収容可能としてもよい。また、支持部64の内部に、折り畳んだ骨組み40を収容することも可能である。
また下端支持部60または基板64の設置面側には、ゴム等の滑り止め部材を設けてもよい。
【実施例0047】
以下に本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
実施例1として上述する第一実施形態(
図1、
図2参照)と同様の構成であって2m×2m×2mの寸法のエアー間仕切りを準備した。
具体的には、骨組みは、二本の柱部とこの柱部の上端を連結する梁部とを有し、梁部の中間部に直径60mmの挿通孔が形成された第一骨部、および二本の柱部とこの柱部の上端を連結する梁部とを有し、柱部の中間部に直径60mmであって長さ20mmの細径の挿通部が形成された第二骨部を用いた。第一骨部および第二骨部にはそれぞれ1つずつ、給排気孔を設けた。そして排気状態において、第一骨部の挿通孔に第二骨部を挿入し、当該第二骨部の挿通部が第一骨部の挿通孔に位置するよう互いを組み合わせて骨組みを構成した。尚、第一骨部および第二骨部を構成する気柱は、ナイロン繊維からなる基材の一方側面にポリウレタン樹脂層が形成された引布(目付け300g/m
2)を用い径100mmとなるよう作製された。
また、ポリエステル製繊維(東レ株式会社製、テトロン(登録商標))を用い、目付68g/m
2になるよう製造された織物からなるシート部材を用い、2m×2mの面を4つ備える筒状の壁部を作成した。壁部の面と面との境界上端には柱部の上端を被覆可能な被覆部を形成した。
実施例1は、第一骨部の挿通孔に第二骨部を挿入し、当該第二骨部の挿通部が第一骨部の挿通孔に位置するよう互いを組み合わせた状態で準備された骨組みに対し、給気を開始し始めたときを設営開始時とし、充分に給気された骨組みに対し、壁部に設けられた被覆部で4本の柱部それぞれの上端を被覆することで、壁部を骨組みに対し設置し終わったときを設営終了時とした。
【0048】
(比較例1)
2m×2mの4面の段ボール製の壁部から構成される多用途簡易間仕切り(東明工業株式会社製、商品名;Eウォール)を準備した。
【0049】
(比較例2)
床面2.1m×2.1m、高さ1.8mであり上面開口のポップアップテント(株式会社BRAVO製、商品名;シェルターガード スタンダード型)を準備した。
【0050】
上述する実施例1、比較例1、2について収容時の容積および総重量を確認した。また実施例1、比較例1、2の設営に要する時間を計測し以下のとおり評価した。上述する確認内容と評価結果は、いずれも表1に示した。
〇・・・設営時間が5分以内であった。
×・・・設営時間が5分を超えた。
【0051】
本発明のエアー間仕切りは、コンパクトに収容可能であり、また総重量も適度に抑えることができる上、設営方法も簡易であって短時間に速やかに使用状態とすることができることから、備蓄される防災製品として好適であり、体育館などにおける避難所において避難者にプライベートな空間を容易に提供することができる。ただし、本発明のエアー間仕切りは、上記用途に限られず、事故時のけが人や救急患者に対する応急処置などを行う場合の緊急の医療処置スペースや、臨時の脱衣場などを提供することもでき、アウトドアにおける用途も含め、幅広く活用することができる。