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特開2023-168760スイッチング制御装置、絶縁型スイッチング電源装置、及び電気機器
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  • 特開-スイッチング制御装置、絶縁型スイッチング電源装置、及び電気機器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168760
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】スイッチング制御装置、絶縁型スイッチング電源装置、及び電気機器
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
H02M3/28 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080050
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前島 聡
(72)【発明者】
【氏名】菊池 弘基
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA04
5H730AA15
5H730AS01
5H730AS13
5H730BB43
5H730BB57
5H730DD04
5H730EE02
5H730EE07
5H730EE59
5H730FD24
5H730FD41
5H730FG02
(57)【要約】
【課題】絶縁型スイッチング電源装置のロードレギュレーションを良好にできるスイッチング制御装置を提供する。
【解決手段】スイッチング制御装置は、トランス(TR1)の一次巻線(L1)に接続されるスイッチング素子(SW1)を制御するように構成される。前記スイッチング制御装置は、前記トランスの補助巻線(L3)に発生する誘起電圧に基づく帰還電圧をサンプルホールドするように構成されるサンプルホールド回路(S5、C7)と、前記サンプルホールド回路の出力に基づき前記スイッチング素子を制御するように構成される制御部(5~8)と、前記誘起電圧に応じたタイミング信号を生成するように構成されるタイミング信号生成回路(2~4、Q1~Q11、C3~C5、S1~S4)と、を有する。前記サンプルホールド回路は、前記タイミング信号に従って、前記帰還電圧をサンプリングするように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスの一次巻線に接続されるスイッチング素子を制御するように構成されるスイッチング制御装置であって、
前記トランスの補助巻線に発生する誘起電圧に基づく帰還電圧をサンプルホールドするように構成されるサンプルホールド回路と、
前記サンプルホールド回路の出力に基づき前記スイッチング素子を制御するように構成される制御部と、
前記誘起電圧に応じたタイミング信号を生成するように構成されるタイミング信号生成回路と、
を有し、
前記サンプルホールド回路は、前記タイミング信号に従って、前記帰還電圧をサンプリングするように構成される、スイッチング制御装置。
【請求項2】
前記タイミング信号生成回路は、第1電圧と第2電圧との比較結果に基づき前記タイミング信号を生成するように構成され、
前記第1電圧は、前記スイッチング素子がオンの期間に前記誘起電圧に応じて増加し、前記スイッチング素子がオンからオフに切り替わるタイミングで増加が停止し、
前記第2電圧は、前記スイッチング素子がオフの期間に前記誘起電圧に応じて増加する、請求項1に記載のスイッチング制御装置。
【請求項3】
前記タイミング信号生成回路は、
前記比較結果に基づき前記タイミング信号のパルス終了タイミングを設定し、
前記タイミング信号の前記パルス終了タイミングに先行したパルス開始タイミングを設定する、請求項2に記載のスイッチング制御装置。
【請求項4】
前記タイミング信号生成回路は、前記第1電圧と第3電圧との比較結果に基づき前記パルス開始タイミングを設定し、
前記第3電圧は、前記スイッチング素子がオフの期間に前記誘起電圧に応じて増加し、前記第2電圧より増加率が大きい、請求項3に記載のスイッチング制御装置。
【請求項5】
前記タイミング信号生成回路は、前記第2電圧と前記第1電圧より小さい電圧との比較結果に基づき前記パルス開始タイミングを設定する、請求項3に記載のスイッチング制御装置。
【請求項6】
前記誘起電圧に応じた第1電流を受け取るように構成される端子と、
前記第1電流に応じた第2電流を前記帰還電圧に変換するように構成される変換部と、
を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のスイッチング制御装置。
【請求項7】
前記端子に印加される電圧を0Vより大きい所定値にクランプするように構成されるクランパーを有する、請求項6に記載のスイッチング制御装置。
【請求項8】
請求項1に記載のスイッチング制御装置と、
前記トランスと、
前記スイッチング素子と、を有する、絶縁型スイッチング電源装置。
【請求項9】
請求項8に記載の絶縁型スイッチング電源装置を有する、電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、スイッチング制御装置、並びにこれを用いた絶縁型スイッチング電源装置及び電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一次回路系と二次回路系との間を絶縁しつつ入力電圧から所望の出力電圧を生成する絶縁型スイッチング電源装置が種々の電気機器に利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-76962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、絶縁型スイッチング電源装置は、フォトカプラを用いて出力帰還制御を行う構成である。しかしながら、フォトカプラを用いる従来構成では、部品点数の増加に伴う長期信頼性の低下及びコストアップが課題となっていた。
【0005】
また、従来、フォトカプラを用いずにトランスの補助巻線を用いて出力帰還制御を行う絶縁型スイッチング電源装置も提案されている。
【0006】
一般に、補助巻線を用いる従来構成では、スイッチング素子がターンオフしてから一定時間後に帰還電圧がサンプリングされる。このサンプリングされた帰還電圧は、二次回路系に設けられるダイオードの順方向電圧VFの情報を含んでいる。二次回路系に設けられるダイオードの順方向電圧VFは負荷に応じて変動するため、絶縁型スイッチング電源装置のロードレギュレーションが悪化する。
【0007】
特許文献1で提案されている絶縁型スイッチング電源装置は、一次電流がオフされてから帰還電圧が閾値電圧を下回るまでの期間を計測し、その計測結果に基づいて帰還電圧をサンプリングすることで、出力帰還制御の精度を高めている。しかしながら、計測結果に基づいて帰還電圧をサンプリングする構成では、回路構成が複雑になってしまう。
【0008】
したがって、補助巻線を用いる絶縁型スイッチング電源装置のロードレギュレーションを特許文献1とは別の手法で良好にすることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書中に開示されているスイッチング制御装置は、トランスの一次巻線に接続されるスイッチング素子を制御するように構成される。前記スイッチング制御装置は、前記トランスの補助巻線に発生する誘起電圧に基づく帰還電圧をサンプルホールドするように構成されるサンプルホールド回路と、前記サンプルホールド回路の出力に基づき前記スイッチング素子を制御するように構成される制御部と、前記誘起電圧に応じたタイミング信号を生成するように構成されるタイミング信号生成回路と、を有する。前記サンプルホールド回路は、前記タイミング信号に従って、前記帰還電圧をサンプリングするように構成される。
【0010】
本明細書中に開示されている絶縁型スイッチング電源装置は、上記構成のスイッチング制御装置と、前記トランスと、前記スイッチング素子と、を有する。
【0011】
本明細書中に開示されている電気機器は、上記構成の絶縁型スイッチング電源装置を有する。
【発明の効果】
【0012】
本明細書中に開示されている発明によれば、絶縁型スイッチング電源装置のロードレギュレーションを良好にできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の構成を示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の各部の電圧及び電流を示すタイミングチャートである。
図3図3は、第1実施形態の変形例で用いられる分圧回路を示す図である。
図4図4は、第2実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の構成を示す図である。
図5図5は、第2実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置の各部の電圧及び電流を示すタイミングチャートである。
図6図6は、電気機器の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、MOS(Metal Oxide Semiconductor)電界効果トランジスタとは、ゲートの構造が、「導電体または抵抗値が小さいポリシリコン等の半導体からなる層」、「絶縁層」、及び「P型、N型、又は真性の半導体層」の少なくとも3層からなる電界効果トランジスタをいう。つまり、MOS電界効果トランジスタのゲートの構造は、金属、酸化物、及び半導体の3層構造に限定されない。
【0015】
本明細書において、基準電圧とは、理想的な状態において一定である電圧を意味しており、実際には温度変化等により僅かに変動し得る電圧である。
【0016】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置101の構成を示す図である。第1実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置101は、トランスTR1と、ダイオードD1と、出力コンデンサC1と、コンデンサC2と、抵抗R1と、半導体装置201と、を有する。
【0017】
トランスTR1は、互いに逆極性で電磁結合された一次巻線L1及び二次巻線L2を含む。一次巻線L1及び二次巻線L2は、一次回路系と二次回路系との間を電気的に絶縁する。一次巻線L1の第1端には入力電圧VINが印加される。一次巻線L1の第2端は、半導体装置201の端子T3に接続される。二次巻線L2の第1端は、ダイオードD1のアノードに接続される。ダイオードD1のカソードは、出力コンデンサC1の第1端に接続される。二次巻線L2の第2端及び出力コンデンサC1の第2端は、二次回路系のグラウンド電位に接続される。二次巻線L2に発生する誘起電圧は、ダイオードD1によって整流され、出力コンデンサC1によって平滑化されて出力電圧VOUTに変換される。出力電圧VOUTは、ダイオードD1のカソード及び出力コンデンサC1の第1端の接続ノードから出力される。
【0018】
トランスTR1は、一次巻線L1及び二次巻線L2に加えて補助巻線L3を含む。補助巻線L3の第1端は、抵抗R1の第1端と、コンデンサC2の第1端と、半導体装置201の端子T1とに接続される。補助巻線L3の第2端及びコンデンサC2の第2端は、一次回路系のグラウンド電位に接続される。抵抗R1の第2端は、半導体装置201の端子T2に接続される。補助巻線L3に発生する誘起電圧Vdは、コンデンサC2によって平滑化されて電源電圧Vccに変換される。電源電圧Vccは、端子T1に印加される。補助巻線L3に発生する誘起電圧Vdは、抵抗R1によって電流Idに変換される。端子T2には、電流Idが供給され、第1帰還電圧VFB1が印加される。第1帰還電圧VFB1は、以下の式で表される。ただし、Rは抵抗R1の抵抗値である。
FB1=Vd-Id×R
【0019】
半導体装置201は、スイッチング素子SW1と、スイッチング素子SW1を制御するスイッチング制御装置と、スイッチング素子SW1に流れる電流を検出するセンス抵抗R4と、クランパー1Aと、端子T1~T3と、有する。
【0020】
スイッチング素子SW1は、本実施形態ではNチャネル型MOS電界効果トランジスタである。スイッチング素子SW1のドレインは、端子T3を介して一次巻線L1に接続される。スイッチング素子SW1のソースは、センス抵抗R4を介してグラウンド電位に接続される。なお、本実施形態の変形例として、スイッチング素子SW1はNチャネル型MOS電界効果トランジスタ以外の素子であってもよい。
【0021】
スイッチング制御装置は、サンプルホールド回路と、制御部と、タイミング信号生成回路と、を有する。
【0022】
サンプルホールド回路は、スイッチS5と、コンデンサC7と、を有する。サンプルホールド回路は、補助巻線L3に発生する誘起電圧Vdに基づく第2帰還電圧VFB2をサンプルホールドする。サンプルホールド回路は、タイミング信号生成回路によって生成されるタイミング信号に従って、第2帰還電圧VFB2をサンプリングする。
【0023】
制御部は、サンプルホールド回路の出力に基づきスイッチング素子SW1を制御する。制御部は、基準電圧源5と、エラーアンプ6と、コンパレータ7と、制御部8と、コンデンサC8と、抵抗R3と、を有する。
【0024】
タイミング信号生成回路は、誘起電圧Vdに応じたタイミング信号を生成する。タイミング信号生成回路は、コンパレータ2及び3と、フリップフロップ4と、MOS電界効果トランジスタQ1~Q10と、コンデンサC3~C5と、スイッチS1~S3と、ワンショット回路9と、NOTゲートN1と、を有する。
【0025】
スイッチング制御装置は、スイッチS4と、コンデンサC6と、MOS電界効果トランジスタQ11と、抵抗R2と、NOTゲートN2と、スイッチS6と、クランパー1Aと、をさらに有する。
【0026】
次に、半導体装置201の内部回路の接続関係について説明する。
【0027】
電源電圧Vccは、Pチャネル型のMOS電界効果トランジスタQ1、Q2、Q5~Q7、及びQ11の各ソースと、コンデンサC6の第1端と、に印加される。Nチャネル型のMOS電界効果トランジスタQ3、Q4、及びQ8~Q10の各ソースは、グラウンド電位に接続される。以下、MOS電界効果トランジスタQ1~Q11をトランジスタQ1~Q11と略す。
【0028】
端子T2は、クランパー1Aを介して、トランジスタQ1のドレイン及びゲート並びにトランジスタQ1のゲートに接続される。また、端子T2は、トランジスタQ3及びQ4の各ゲートに接続され、スイッチS6を介してトランジスタQ3のドレインに接続される。
【0029】
トランジスタQ2のドレインは、スイッチS1を介してコンデンサC3の第1端に接続される。コンデンサC3の第2端はグラウンド電位に接続される。
【0030】
トランジスタQ4のドレインは、トランジスタQ5のドレインと、トランジスタQ5~7の各ゲートと、に接続される。また、トランジスタQ4のドレインは、スイッチS4を介して、トランジスタQ11のゲートと、コンデンサC6の第2端と、に接続される。
【0031】
トランジスタQ6のドレインは、スイッチS2を介してコンデンサC4の第1端に接続される。コンデンサC4の第2端はグラウンド電位に接続される。
【0032】
トランジスタQ7のドレインは、スイッチS3を介してコンデンサC5の第1端に接続される。コンデンサC5の第2端はグラウンド電位に接続される。
【0033】
コンデンサC3の第1端は、コンパレータ2の非反転入力端子と、コンパレータ3の反転入力端子と、トランジスタQ8のドレインと、に接続される。コンデンサC4の第1端は、コンパレータ2の反転入力端子と、トランジスタQ9のドレインと、に接続される。コンデンサC5の第1端は、コンパレータ3の非反転入力端子と、トランジスタQ10のドレインと、に接続される。
【0034】
コンパレータ2の出力端子は、フリップフロップ4のリセット端子に接続される。コンパレータ3の出力端子は、フリップフロップ4のクロック端子に接続される。フリップフロップ4のデータ入力端子には電源電圧Vccが印加される。スイッチS4及びS5は、フリップフロップ4の出力端子から出力される電圧VSMPによって制御される。電圧VSMPがHIGHレベルであるときにスイッチS4及びS5はオンになり、電圧VSMPがLOWレベルであるときにスイッチS4及びS5はオフになる。
【0035】
トランジスタQ11のドレインは、抵抗R2の第1端と、スイッチS5の第1端と、に接続される。抵抗R2の第2端は、グラウンド電位に接続される。抵抗R2は、電流Idに応じたトランジスタQ11のドレイン電流を第2帰還電圧VFB2に変換する。
【0036】
スイッチS5の第2端は、エラーアンプ6の非反転入力端子と、コンデンサC7の第1端と、に接続される。コンデンサC7の第2端は、グラウンド電位に接続される。基準電圧源5から出力される基準電圧は、エラーアンプ6の反転入力端子に供給される。
【0037】
コンパレータ7の非反転入力端子は、エラーアンプ6の出力端子と、コンデンサC8の第1端と、に接続される。コンデンサC8の第2端は、抵抗R3を介してグラウンド電位に接続される。コンパレータ7の反転入力端子は、スイッチング素子SW1のソースとセンス抵抗R4との接続ノードに接続される。
【0038】
コンパレータ7の出力信号は、制御部8に供給される。制御部8は、例えば所定周期で電圧VGATEをLOWレベルからHIGHレベルに切り替える。また制御部8は、コンパレータ7の出力信号がHIGHレベルからLOWレベルに切り替わると、電圧VGATEをHIGHレベルからLOWレベルに切り替える。制御部8から出力される電圧VGATEは、スイッチング素子SW1のゲートと、ワンショット回路9と、に供給される。ワンショット回路9から出力される電圧VOSは、トランジスタQ8~Q10の各ゲートに供給される。電圧VOSは、電圧VGATEがLOWレベルからHIGHレベルに切り替わるときにワンショットパルスが発生する電圧である。スイッチS1は、電圧VGATEによって制御される。NOTゲートN2は、電圧VGATEを反転する。スイッチS6はNOTゲートN2の出力電圧によって制御される。スイッチS1は、電圧VGATEがHIGHレベルであるときにオンになり、電圧VGATEがLOWレベルであるときにオフになる。スイッチS6は、電圧VGATEがLOWレベルであるときにオンになり、電圧VGATEがHIGHレベルであるときにオフになる。なお、本実施形態の変形例として、センス抵抗R4は、半導体装置201の外付け素子であってもよい。また、本実施形態の変形例として、コンデンサC8及び抵抗R3は、半導体装置201の外付け素子であってもよい。
【0039】
図2は、第1実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置101の各部の電圧及び電流を示すタイミングチャートである。
【0040】
タイミング信号生成回路は、コンデンサC3の第1端から出力される電圧VC1とコンデンサC4の第1端から出力される電圧VC2との比較結果(コンパレータ2の出力)に基づきタイミング信号(電圧VSMP)を生成する。より具体的には、タイミング信号生成回路は、コンパレータ2の出力に基づきタイミング信号(電圧VSMP)のパルス終了タイミングPETMを設定する。
【0041】
電圧VC1は、スイッチング素子SW1がオンの期間Tに誘起電圧Vdに応じて増加し、スイッチング素子SW1がオンからオフに切り替わるタイミングで増加が停止する。電圧VC2は、スイッチング素子SW1がオフの期間に誘起電圧Vdに応じて増加する。
【0042】
タイミング信号生成回路は、パルス終了タイミングPETMに先行したパルス開始タイミングPSTMを設定する。タイミング信号生成回路は、電圧VC1とコンデンサC5の第1端から出力される電圧VC3との比較結果(コンパレータ3の出力)に基づきタイミング信号(電圧VSMP)のパルス開始タイミングPSTMを設定する。電圧VC3は、スイッチング素子SW1がオフの期間に誘起電圧Vdに応じて増加し、電圧VC2より増加率が大きい。例えば、トランジスタQ5のドレイン電流をトランジスタQ2のドレイン電流より大きくすることにより、電圧VC3の増加率を電圧VC2の増加率より大きくすることができる。また、例えば、コンデンサC5の容量をコンデンサC3の容量より小さくすることにより、電圧VC3の増加率を電圧VC2の増加率より大きくすることができる。
【0043】
なお、本実施形態の変形例として、タイミング信号生成回路が、電圧VC2と電圧VC1より小さい電圧との比較結果に基づきパルス開始タイミングPSTMを設定してもよい。この場合、トランジスタQ7、スイッチS3、及びコンデンサC5、及びトランジスタQ10の代わりに、例えば図3に示す分圧回路20を用いることができる。分圧回路20は、電圧VC1の分圧を生成し、電圧VC1の分圧をコンパレータ3の非反転入力端子に供給する。
【0044】
次に、二次電流Isが流れる期間Tについて説明する。
【0045】
二次電流Isが流れる期間Tは、次の手順によって計算することができる。
【0046】
スイッチング素子SW1を流れる電流のピーク値Ippkは、下記の式(1)で表される。なお、Lは一次巻線L1のインダクタンスである。
【数1】
【0047】
トランスの巻き数比Nは、一次巻線L1の巻き数Nを二次巻線L2の巻き数Nで割った値である。
【0048】
二次電流Isのピーク値Ispkは、下記の式で表される。なお、VはダイオードD1の順方向電圧であり、Vripはリップル成分である。そして、VOUT+V+VripをVと置くことで、下記の式(2)が得られる。
【数2】
【0049】
上記の式(2)に上記の式(1)を代入することで、下記の式が得られる。
【数3】
【0050】
一次巻線L1のインダクタンスL、二次巻線L2のインダクタンスL、一次巻線L1の巻き数N、及び二次巻線L2の巻き数Nの間で成立する下記の関係を用いると、期間Tは下記の式で表される。
【数4】
【0051】
二次巻線L2と補助巻線L3との関係を用いて期間Tを書き換えると、下記のようになる。なお、Nは補助巻線L3の巻き数である。また、ここでのVdは、誘起電圧Vdの最大値である。
【数5】
【0052】
続いて、タイミング信号(電圧VSMP)のパルス終了タイミングPETMについて説明する。
【0053】
半導体装置201の回路方式において、スイッチング素子SW1がオンであるときには、下記の式が成立する。なお、IはコンデンサC3の充電電流であり、CはコンデンサC3の容量である。ここでは、トランジスタQ1及びQ2のミラー比を1として考えているが、トランジスタQ1及びQ2のミラー比は1以外であってもよい。
【数6】
【0054】
半導体装置201の回路方式において、スイッチング素子SW1がオフであるときには、下記の式が成立する。なお、IはコンデンサC4の充電電流であり、CはコンデンサC4の容量である。ここでは、トランジスタQ3及びQ4のミラー比を1、トランジスタQ5及びQ6のミラー比を1として考えているが、トランジスタQ3及びQ4のミラー比は1以外であってもよく、トランジスタQ5及びQ6のミラー比は1以外であってもよい。
【数7】
【0055】
半導体装置201の回路方式において、電圧VC1と電圧VC2とが等しいときが、タイミング信号(電圧VSMP)のパルス終了タイミングPETMになる。したがって、パルス終了タイミングPETMでは、下記の式が成立する。下記の式は、上述した期間Tの式と一致する。したがって、半導体装置201の回路方式において、パルス終了タイミングPETMを期間Tの終了時点と一致させることができる。しかしながら、製造誤差等を考慮し、パルス終了タイミングPETMは、期間Tの終了時点より少し先行させるとよい(図2参照)。パルス終了タイミングPETMは、期間Tの終了時点より少し先行させる手法としては、電流Iを上記の式で求めた値より少し大きい値に設定すればよい。
【数8】
【0056】
次に、クランパー1Aについて説明する。
【0057】
クランパー1Aは、Nチャネル型のMOS電界効果トランジスタ11及び12と、電流源13と、を有する。以下、MOS電界効果トランジスタ11及び12をトランジスタ11及び12と略す。
【0058】
トランジスタ11のドレインは、トランジスタQ2のゲート並びにトランジスタQ1のドレイン及びゲートに接続される。トランジスタ11のソースは、端子T2に接続される。電流源13の第1端には電源電圧Vccが印加される。電流源13の第2端は、トランジスタ12のドレイン及びゲート並びにトランジスタ11のゲートに接続される。トランジスタ12のソースは、グラウンド電位に接続される。
【0059】
クランパー1Aは、端子T2に印加される電圧VFB1を0Vでクランプする。ここで、端子T2は、寄生容量の第1端に接続される構成である。なお、寄生容量の第2端はグラウンド電位に接続される。したがって、誘起電圧Vdが負から正に遷移するときに、寄生容量が充電されるまで、電圧VFB1が遅延する。つまり、本実施形態では、誘起電圧Vdを即座に電流信号に変換できないという課題が残る。
【0060】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置102は、第1実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置101が有する課題を解決することができるスイッチング電源装置である。
【0061】
図4は、第2実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置102の構成を示す図である。図5は、第2実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置102の各部の電圧及び電流を示すタイミングチャートである。
【0062】
第2実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置102は、トランスTR1と、ダイオードD1と、出力コンデンサC1と、コンデンサC2と、抵抗R1と、半導体装置202と、を有する。
【0063】
半導体装置202は、半導体装置201からクランパー1Aを取り除き、クランパー1Aの代わりにクランパー1Bを設けた構成である。
【0064】
クランパー1Bは、Nチャネル型のMOS電界効果トランジスタ14と、オペアンプ15と、電流源16と、Nチャネル型のMOS電界効果トランジスタ17と、を有する。以下、MOS電界効果トランジスタ14及び17をトランジスタ14及び17と略す。
【0065】
トランジスタ14のドレインは、トランジスタQ2のゲート並びにトランジスタQ1のドレイン及びゲートに接続される。トランジスタ14のソースは、端子T2及びオペアンプ15の反転入力端子に接続される。トランジスタ14のゲートは、オペアンプ15の出力端子に接続される。電流源16の第1端には電源電圧Vccが印加される。電流源16の第2端は、オペアンプ15の非反転入力端子並びにトランジスタ17のドレイン及びゲートに接続される。トランジスタ17のソースは、グラウンド電位に接続される。
【0066】
クランパー1Bは、端子T2に印加される電圧VFB1をオペアンプ15の反転入力端子に供給される電圧VTH1でクランプする。誘起電圧Vdが電圧VTH1と等しくなったとき、クランパー1Bからは電流源16の出力電流と同じ電流しか流せない。そのため、誘起電圧Vdが上昇して電圧VTH1より大きくなると、クランパー1Bからの電流供給が停止し、端子T2に印加される電圧VFB1は電圧VTH2になり、電流は全てトランジスタQ3に流れる。その結果、図5に示すように、端子T2に印加される電圧VFB1は、電圧VTH1と電圧VTH2との間を遷移する。
【0067】
電圧VTH1は0Vより大きい所定値であり電圧VTH1から電圧VTH2に即座に遷移する。したがって、半導体装置202は、電圧VFB1が寄生容量の影響によって遅延することを抑制することができる。
【0068】
<絶縁型スイッチング電源装置の適用例>
図6は、空気調和機の一構成例を示す外観図である。本構成例の空気調和機Yは、室内機Y1と、室外機Y2と、これらを連結する配管Y3と、を有する。なお、室内機Y1は、主として、蒸発器及び室内ファンを内蔵しており、室外機Y2は、主として、圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び室外ファンを内蔵している。室内機Y1は、第1実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置101又は第2実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置102も内蔵している。
【0069】
空気調和機Yの冷房運転時には、まず、室外機Y2の圧縮機で冷媒を圧縮して高温高圧の気体とした後、室外機Y2の凝縮器で放熱して冷媒を液化させる。その際、放熱を促すために室外ファンを回して凝縮器に風が当てられるので、室外機Y2からは熱風が吹き出す。次に、液化された冷媒を室外機Y2の膨張弁で減圧して低温低圧の液体とした後、配管Y3を介して室内機Y1に送り、室内機Y1の蒸発器で気化させる。その際、蒸発器は冷媒の気化熱によって低温となるので、室内ファンを回して蒸発器に風を当てることにより、室内機Y1から室内に向けて冷風が送り出される。気化された冷媒は、再び配管Y3を介して室外機Y2に送られた後、上記と同様の熱交換処理が繰り返される。
【0070】
なお、空気調和機Yの暖房運転時には、冷媒の循環方向が逆となり、室内機Y1の蒸発器と室外機Y2の凝縮器の役割が入れ替わるものの、基本的には上記と同様の熱交換処理が行われる。
【0071】
ここでは、絶縁型スイッチング電源装置の適用例として、民生機器を取りあげたが、産業機器、車載機器などに絶縁型スイッチング電源装置が搭載されてもよい。つまり、絶縁型スイッチング電源装置が搭載される電気機器は、民生機器に限定されない。
【0072】
<その他>
発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0073】
以上説明したスイッチング制御装置は、トランス(TR1)の一次巻線(L1)に接続されるスイッチング素子(SW1)を制御するように構成されるスイッチング制御装置であって、前記トランスの補助巻線(L3)に発生する誘起電圧に基づく帰還電圧をサンプルホールドするように構成されるサンプルホールド回路(S5、C7)と、前記サンプルホールド回路の出力に基づき前記スイッチング素子を制御するように構成される制御部(5~8)と、前記誘起電圧に応じたタイミング信号を生成するように構成されるタイミング信号生成回路(2~4、Q1~Q10、C3~C5、S1~S3)と、を有し、前記サンプルホールド回路は、前記タイミング信号に従って、前記帰還電圧をサンプリングするように構成される構成(第1の構成)である。
【0074】
上記第1の構成のスイッチング制御装置は、絶縁型スイッチング電源装置の二次回路系に設けられるダイオードの順方向電圧の情報が帰還電圧に含まれることを抑制することができるので、絶縁型スイッチング電源装置のロードレギュレーションを良好にできる。
【0075】
上記第1の構成のスイッチング制御装置において、前記タイミング信号生成回路は、第1電圧と第2電圧との比較結果に基づき前記タイミング信号を生成するように構成され、前記第1電圧は、前記スイッチング素子がオンの期間に前記誘起電圧に応じて増加し、前記スイッチング素子がオンからオフに切り替わるタイミングで増加が停止し、前記第2電圧は、前記スイッチング素子がオフの期間に前記誘起電圧に応じて増加する構成(第2の構成)であってもよい。
【0076】
上記第2の構成のスイッチング制御装置は、タイミング信号生成回路を簡易な回路構成で実現することができる。
【0077】
上記第2の構成のスイッチング制御装置において、前記タイミング信号生成回路は、 前記比較結果に基づき前記タイミング信号のパルス終了タイミングを設定し、前記タイミング信号の前記パルス終了タイミングに先行したパルス開始タイミングを設定する構成(第3の構成)であってもよい。
【0078】
上記第3の構成のスイッチング制御装置は、タイミング信号のパルス幅を確実に確保することができる。
【0079】
上記第3の構成のスイッチング制御装置において、前記タイミング信号生成回路は、前記第1電圧と第3電圧との比較結果に基づき前記パルス開始タイミングを設定し、前記第3電圧は、前記スイッチング素子がオフの期間に前記誘起電圧に応じて増加し、前記第2電圧より増加率が大きい構成(第4の構成)であってもよい。
【0080】
上記第4の構成のスイッチング制御装置は、タイミング信号のパルス幅を確実に確保しつつ、タイミング信号生成回路を簡易な回路構成で実現することができる。
【0081】
上記第3の構成のスイッチング制御装置において、前記タイミング信号生成回路は、前記第2電圧と前記第1電圧より小さい電圧との比較結果に基づき前記パルス開始タイミングを設定する構成(第5の構成)であってもよい。
【0082】
上記第5の構成のスイッチング制御装置は、タイミング信号のパルス幅を確実に確保しつつ、タイミング信号生成回路を簡易な回路構成で実現することができる。
【0083】
上記第1~第5いずれかの構成のスイッチング制御装置において、前記誘起電圧に応じた第1電流を受け取るように構成される端子と、前記第1電流に応じた第2電流を前記帰還電圧に変換するように構成される変換部(R2)と、を有する構成(第6の構成)であってもよい。
【0084】
上記第6の構成のスイッチング制御装置は、サンプルホールド回路のために必要となる端子と、タイミング信号生成回路のために必要となる端子とを共通化することができる。
【0085】
上記第6の構成のスイッチング制御装置において、前記端子に印加される電圧を0Vより大きい所定値にクランプするように構成されるクランパー(1B)を有する構成(第7の構成)であってもよい。
【0086】
上記第7の構成のスイッチング制御装置は、誘起電圧に応じた第1電流を受け取るように構成される端子に印加される電圧が寄生容量の影響によって遅延することを抑制することができる。
【0087】
以上説明した絶縁型スイッチング電源装置(101、102)は、上記第1~第7いずれかの構成のスイッチング制御装置と、前記トランスと、前記スイッチング素子と、を有する構成(第8の構成)である。
【0088】
上記第8の構成の絶縁型スイッチング電源装置は、二次回路系に設けられるダイオードの順方向電圧の情報が帰還電圧に含まれることを抑制することができるので、ロードレギュレーションを良好にできる。
【0089】
以上説明した電気機器(Y)は、上記第8の構成の絶縁型スイッチング電源装置を有する構成(第9の構成)である。
【0090】
上記第9の構成の電気機器は、絶縁型スイッチング電源装置の二次回路系に設けられるダイオードの順方向電圧の情報が帰還電圧に含まれることを抑制することができるので、絶縁型スイッチング電源装置のロードレギュレーションを良好にできる。
【符号の説明】
【0091】
1A、1B クランパー
2、3 コンパレータ
4 フリップフロップ
5 基準電圧源
6 エラーアンプ
7 コンパレータ
8 制御部
9 ワンショット回路
11、12、14、17、Q1~Q11 MOS電界効果トランジスタ
13、16 電流源
15 オペアンプ
20 分圧回路
101 第1実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置
102 第2実施形態に係る絶縁型スイッチング電源装置
201、202 半導体装置
C1 出力コンデンサ
C2~C8 コンデンサ
D1 ダイオード
L1 一次巻線
L2 二次巻線
L3 補助巻線
N1、N2 NOTゲート
R1~R3 抵抗
R4 センス抵抗
S1~S6 スイッチ
SW1 スイッチング素子
T1~T3 端子
TR1 トランス
Y 空気調和機
Y1 室内機
Y2 室外機
Y3 配管
図1
図2
図3
図4
図5
図6