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特開2023-168768スクリュープレスの運転方法、およびスクリュープレス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168768
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】スクリュープレスの運転方法、およびスクリュープレス
(51)【国際特許分類】
   B30B 9/16 20060101AFI20231121BHJP
   C02F 11/125 20190101ALI20231121BHJP
   B01D 29/17 20060101ALI20231121BHJP
   B01D 24/48 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
B30B9/16 ZAB
C02F11/125
B01D29/30 501
B01D29/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080063
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】島本 仙
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 晃人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 真祐子
(72)【発明者】
【氏名】大津 秋人
【テーマコード(参考)】
4D059
4D116
【Fターム(参考)】
4D059AA03
4D059BE04
4D059BE15
4D059BE26
4D059CB06
4D059CB07
4D059EA20
4D059EB20
4D116BB01
4D116BC27
4D116BC45
4D116BC48
4D116DD06
4D116FF17B
4D116GG02
4D116KK04
4D116QA55C
4D116QA55F
4D116QC04C
4D116QC36
4D116QC39
4D116VV12
(57)【要約】
【課題】プラグケーキと第2スクリューとの供回りを回避することにより、素早く定常運転に到達させることが可能なスクリュープレスの運転方法を提供する。
【解決手段】スクリュープレスの運転方法では、第1スクリュー3および第2スクリュー4が所定の回転速度で回転される定常運転を開始する前に、低差速運転と、差速調整運転とを実施する。低差速運転は、第2スクリュー4が配置されるプラグケーキ形成領域1B内のプラグケーキの硬さを、該プラグケーキが第2スクリュー4と供回りしない硬さまで低下させる運転である。差速調整運転は、低差速運転時の第2スクリュー4の回転速度を、定常運転時の第2スクリュー4の回転速度まで段階的に減少させる運転である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体含有物が投入されるろ過筒と、前記ろ過筒内で、該ろ過筒と同心状に配置され、前記液体含有物を所定の移送方向に移送する第1スクリューおよび第2スクリューと、前記第1スクリューを回転させる第1回転機構と、前記第1スクリューとは独立に前記第2スクリューを回転させる第2回転機構と、を備えたスクリュープレスの運転方法であって、
前記第1スクリューおよび前記第2スクリューが所定の回転速度で回転される定常運転を開始する前に、低差速運転と、差速調整運転とを実施し、
前記低差速運転は、前記第2スクリューが配置されるプラグケーキ形成領域内のプラグケーキの硬さを、該プラグケーキが第2スクリューと供回りしない硬さまで低下させる運転であり、
前記差速調整運転は、前記低差速運転時の前記第2スクリューの回転速度を、前記定常運転時の第2スクリューの回転速度まで段階的に減少させる運転である、スクリュープレスの運転方法。
【請求項2】
前記低差速運転の前に、前記プラグ形成領域内のプラグケーキの圧力を確認し、
前記プラグケーキの圧力が所定のしきい値よりも小さい場合に、汚泥充填運転を実施し、
前記汚泥充填運転は、前記プラグケーキの圧力が前記しきい値を超えるまで、前記第2スクリューを回転させずに、前記第1スクリューのみを所定の回転速度で回転させるか、または前記第2スクリューを前記低差速運転時の回転速度よりも低い回転速度で回転させつつ、前記第1スクリューを前記所定の回転速度で回転させる運転である、請求項1に記載のスクリュープレスの運転方法。
【請求項3】
前記低差速運転における前記第2スクリューの回転速度は、前記定常運転における前記第1スクリューの回転速度に対して0.6~0.9倍の範囲にある、請求項1に記載のスクリュープレスの運転方法。
【請求項4】
前記低差速運転の運転時間は、1~20分の範囲にある、請求項3に記載のスクリュープレスの運転方法。
【請求項5】
前記差速調整運転で、前記第2スクリューの回転速度を前記低差速運転時の回転速度から前記定常運転時の第2スクリューの回転速度まで低減させる段数は、3~10の範囲にある、請求項1に記載のスクリュープレスの運転方法。
【請求項6】
前記差速調整運転の各段の運転時間は、1~20分の範囲にある、請求項5に記載のスクリュープレスの運転方法。
【請求項7】
液体含有物が投入されるろ過筒と、
前記ろ過筒内で、該ろ過筒と同心状に配置され、前記液体含有物を所定の移送方向に移送する第1スクリューおよび第2スクリューと、
前記第1スクリューを回転させる第1回転機構と、
前記第1スクリューとは独立に前記第2スクリューを回転させる第2回転機構と、
前記第1回転機構と前記第2回転機構の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1スクリューおよび前記第2スクリューが所定の回転速度で回転される定常運転を開始する前に、低差速運転と、差速調整運転とを実施し、
前記低差速運転は、前記第2スクリューが配置されるプラグケーキ形成領域内のプラグケーキの硬さを、該プラグケーキが第2スクリューと供回りしない硬さまで低下させる運転であり、
前記差速調整運転は、前記低差速運転時の前記第2スクリューの回転速度を、前記定常運転時の第2スクリューの回転速度まで段階的に減少させる運転である、スクリュープレス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥などの液体含有物を圧搾して該液体含有物から液体を分離するスクリュープレスの運転方法、およびスクリュープレスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、上下水処理場、し尿処理場などの液体処理施設から排出される汚泥(液体含有物)を圧搾して、該汚泥から水を分離する(すなわち、脱水する)装置として、スクリュープレスが知られている。このスクリュープレスは、スクリーン(多孔板)から形成されたろ過筒と、ろ過筒の内部に配置されたスクリューとを備える。スクリューは、ろ過筒と同心状に配置されたスクリュー軸と、スクリュー軸の外面に固定されたスクリュー羽根と、を有している。スクリュー軸に連結された回転機構によって、スクリュー羽根を回転させることにより、ろ過筒に投入された汚泥を圧搾し、脱水する。ろ過筒の下流側開口端には、汚泥を堰き止める背圧板が配置され、この背圧板により、回転するスクリュー羽根により送られてくるケーキ(脱水された汚泥)を滞留させ、ケーキからなるプラグ(栓)を形成する。このプラグが後から送り込まれるケーキに背圧を加えて、ケーキをさらに圧搾することにより、ろ過筒内の汚泥の含水率を低下させる。
【0003】
特許文献1には、ろ過筒内に直列に配列された第1スクリューと第2スクリューを有するスクリュープレスが記載されている。このスクリュープレスの第2スクリューは、第1スクリューの駆動装置とは異なる駆動装置によって回転させることができるように構成されており、その結果、第1スクリューと第2スクリューを、互いに異なる速度で、かつ任意の方向に回転させることができる。そのため、第1スクリューと第2スクリューの回転速度および回転方向を個別に制御することで、背圧板を設けることなく、ろ過筒内にプラグケーキを形成でき、さらには、ろ過筒内の汚泥を効率的に圧搾することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-51582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、発明者らが鋭意研究した結果、特許文献1に記載のスクリュープレスであっても、スクリュープレスに投入される汚泥の性状次第では、装置立ち上げ動作時に、第2スクリューが位置するプラグケーキ形成領域のケーキ(プラグケーキ)と第2スクリューとの間で供回りが発生してしまうおそれがあることがわかった。特に、繊維状物が少ない汚泥をスクリュープレスに投入する場合、および/またはスクリュープレスに投入された汚泥に強い背圧を一度に加えた場合に、プラグケーキと第2スクリューとの供回りが発生してしまうリスクが増加することがわかった。なお、本明細書において、装置立ち上げ動作とは、所望の含水率を有するプラグケーキをプラグ形成領域に形成するためのスクリュープレスの動作を意味する。装置立ち上げ動作時に、プラグケーキと第2スクリューとの間で供回りが発生していると、スクリュープレスから所望の含水率を有するプラグケーキを排出する定常運転に移行するまでに長時間かかってしまう。
【0006】
一方で、装置立ち上げ動作時に、スクリュープレスに投入された汚泥に弱めの背圧をかけ続けることで、比較的ゆっくりと汚泥の含水率を低下させると、プラグケーキと第2スクリューとの間の供回りを回避することができる。しかしながら、この場合も、装置立ち上げ動作から定常運転に到達するまでに長時間かかってしまう。
【0007】
そこで、本発明は、プラグケーキと第2スクリューとの供回りを回避することにより、素早く定常運転に到達させることが可能なスクリュープレスの運転方法を提供することを目的とする。また、本発明は、このような運転方法を実施可能なスクリュープレスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、液体含有物が投入されるろ過筒と、前記ろ過筒内で、該ろ過筒と同心状に配置され、前記液体含有物を所定の移送方向に移送する第1スクリューおよび第2スクリューと、前記第1スクリューを回転させる第1回転機構と、前記第1スクリューとは独立に前記第2スクリューを回転させる第2回転機構と、を備えたスクリュープレスの運転方法であって、前記第1スクリューおよび前記第2スクリューが所定の回転速度で回転される定常運転を開始する前に、低差速運転と、差速調整運転とを実施し、前記低差速運転は、前記第2スクリューが配置されるプラグケーキ形成領域内のプラグケーキの硬さを、該プラグケーキが第2スクリューと供回りしない硬さまで低下させる運転であり、前記差速調整運転は、前記低差速運転時の前記第2スクリューの回転速度を、前記定常運転時の第2スクリューの回転速度まで段階的に減少させる運転である、スクリュープレスの運転方法が提供される。
【0009】
一態様では、前記低差速運転の前に、前記プラグ形成領域内のプラグケーキの圧力を確認し、前記プラグケーキの圧力が所定のしきい値よりも小さい場合に、汚泥充填運転を実施し、前記汚泥充填運転は、前記プラグケーキの圧力が前記しきい値を超えるまで、前記第2スクリューを回転させずに、前記第1スクリューのみを所定の回転速度で回転させるか、または前記第2スクリューを前記低差速運転時の回転速度よりも低い回転速度で回転させつつ、前記第1スクリューを前記所定の回転速度で回転させる運転である。
一態様では、前記低差速運転における前記第2スクリューの回転速度は、前記定常運転における前記第1スクリューの回転速度に対して0.6~0.9倍の範囲にある。
一態様では、前記低差速運転の運転時間は、1~20分の範囲にある。
【0010】
一態様では、前記差速調整運転で、前記第2スクリューの回転速度を前記低差速運転時の回転速度から前記定常運転時の第2スクリューの回転速度まで低減させる段数は、3~10の範囲にある。
一態様では、前記差速調整運転の各段の運転時間は、1~20分の範囲にある。
【0011】
一態様では、液体含有物が投入されるろ過筒と、前記ろ過筒内で、該ろ過筒と同心状に配置され、前記液体含有物を所定の移送方向に移送する第1スクリューおよび第2スクリューと、前記第1スクリューを回転させる第1回転機構と、前記第1スクリューとは独立に前記第2スクリューを回転させる第2回転機構と、前記第1回転機構と前記第2回転機構の動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1スクリューおよび前記第2スクリューが所定の回転速度で回転される定常運転を開始する前に、低差速運転と、差速調整運転とを実施し、前記低差速運転は、前記第2スクリューが配置されるプラグケーキ形成領域内のプラグケーキの硬さを、該プラグケーキが第2スクリューと供回りしない硬さまで低下させる運転であり、前記差速調整運転は、前記低差速運転時の前記第2スクリューの回転速度を、前記定常運転時の第2スクリューの回転速度まで段階的に減少させる運転である、スクリュープレスが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、差速調整工程で、第2スクリューの回転速度を、定常運転時の第2スクリューの回転速度である目標回転速度まで段階的に減少させることで、螺旋状に延びる第2スクリュー羽根の間に存在するプラグケーキ全体の硬さを徐々に低減させる。その結果、プラグケーキと第2スクリュー4との供回りの発生を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、一実施形態に係るスクリュープレスを示す模式図である。
図2図2は、図1に示される第2スクリューの概略断面図である。
図3図3は、第2スクリュー羽根の巻数を説明するための模式図である。
図4図4は、一実施形態に係るスクリュープレスの運転方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態に係るスクリュープレスを示す模式図である。図1に示されるスクリュープレスは、円筒状のスクリーンケーシング(ろ過筒)1と、スクリーンケーシング1内で、該スクリーンケーシング1と同心状に配置され、汚泥(液体含有物)を所定の移送方向Dに移送する第1スクリュー3および第2スクリュー4と、第1スクリュー3を回転させる第1回転機構7と、第1スクリュー3とは独立に第2スクリュー4を回転させる第2回転機構20と、を備えている。スクリーンケーシング1は、パンチングメタルなどのスクリーン(多孔板)から形成されている。スクリーンケーシング1の上流側端部には、汚泥の投入口2が形成されている。投入口2からスクリーンケーシング1に投入された汚泥は、回転する第1スクリュー3および第2スクリュー4によりスクリーンケーシング1内で所定の移送方向Dに移送される。さらに、スクリュープレスは、第1回転機構7と第2回転機構20の動作を制御する制御部6を有する。
【0015】
第2スクリュー4は、第1スクリュー3とは独立に回転可能なように、第1スクリュー3に連結されている。第1スクリュー3および第2スクリュー4は、スクリーンケーシング1および排出チャンバー33をそれぞれ貫通して延びている。排出チャンバー33は、スクリーンケーシング1に接続されている。この排出チャンバー33に、後述するプラグケーキがスクリーンケーシング1から排出される。第2スクリュー4の軸方向の長さは、第1スクリュー3の軸方向の長さよりも短い。第1スクリュー3は、汚泥の移送方向Dにおける下流側に向かってその径が徐々に大きくなる円錐台形状(テーパ形状)の第1スクリュー軸3Aと、第1スクリュー軸3Aの外面に固定された第1スクリュー羽根3Bとを有している。第2スクリュー4は、円筒形状の第2スクリュー軸4Aと、第2スクリュー軸4Aの外面に固定された第2スクリュー羽根4Bとを有している。
【0016】
スクリーンケーシング1の上流側の端部は閉塞壁8によって密封されている。第1スクリュー軸3Aの一方の端部(移送方向Dにおける上流側端部)はこの閉塞壁8を貫通して延びている。この閉塞壁8には、該閉塞壁8と第1スクリュー軸3Aとの間の隙間をシールする水封装置10が設置されている。閉塞壁8を貫通して延びる第1スクリュー軸3Aの上流側端部は、ベース(図示せず)に設置された軸受11,12により軸方向の移動を拘束されながら回転自在に支持されている。なお、軸受11,12の一方を省略することができる。
【0017】
第1スクリュー軸3Aの上流側端部は、第1スクリュー3を回転させるための第1回転機構7に連結されている。本実施形態では、第1回転機構7は、第1駆動機(例えば、電動機)14と、第1駆動機14の回転軸に固定されたスプロケット15と、第1スクリュー軸3Aに固定されたスプロケット16と、これらスプロケット15,16に巻きかけられたチェーン17とを備える。スプロケット16は、上記軸受11,12の間に位置している。第1回転機構7の第1駆動機14を駆動すると、この第1駆動機14の回転軸に固定されたスプロケット15が回転し、チェーン17を介して第1スクリュー軸3Aに固定されたスプロケット16を回転させる。その結果、第1スクリュー3が第1回転機構7により回転させられる。第1駆動機14は、制御部6に接続され、制御部6は、第1駆動機14の動作を制御することができるように構成されている。
【0018】
図示はしないが、第1駆動機14の回転軸を、減速機を介して第1スクリュー軸3Aに連結してもよい。あるいは、第1駆動機14の回転軸を、直接第1スクリュー軸3Aに連結してもよい。
【0019】
図2は、図1に示される第2スクリュー4の概略断面図である。図2に示されるように、第2スクリュー軸4Aは、中空構造を有している。第1スクリュー軸3Aの他方の端部(移送方向Dにおける下流側端部)には、円筒形状の第2スクリュー軸4Aに挿入される縮径部3Cが形成されている。縮径部3Cを第1スクリュー軸3Aに形成することによって、第1スクリュー軸3Aには、その軸方向と垂直な壁面3Dが形成される。縮径部3Cは、円筒形状の第2スクリュー軸4Aに挿入され、第2スクリュー軸4Aの内壁4Cに固定されたすべり軸受30,31に回転自在に支持されている。このような構成で、第1スクリュー3は、第2スクリュー4と回転可能に連結される。
【0020】
図2に示されるように、第1スクリュー軸3Aの縮径部3Cが第2スクリュー軸4Aの内部に挿入された状態で、第2スクリュー軸4Aの上流側端部は、第1スクリュー軸3Aの壁面3Dと接触している。一実施形態では、第2スクリュー軸4Aの上流側端部と第1スクリュー軸3Aの壁面3Dとの間に、わずかな隙間が形成されてもよい。この場合、スクリーンケーシング1内の汚泥がすべり軸受30と縮径部3Cとの間の隙間を通過することを阻止するシール構造(例えば、ラビリンス構造)を、すべり軸受30および/または縮径部3Cに設けてもよい。
【0021】
図1および図2に示されるように、第2スクリュー4の第2スクリュー軸4Aは、第1スクリュー軸3Aと同心状に配置される。第2スクリュー軸4Aの外径は第1スクリュー軸3Aの最大径と同一である。第2スクリュー軸4Aは、排出チャンバー33の壁33Aを貫通して延びている。第2スクリュー軸4Aの上流側端部は、上記すべり軸受30,31を介して第1スクリュー軸3Aに回転自在に支持され、第2スクリュー軸4Aの下流側端部は、ベース(図示せず)に設置された軸受22,23により軸方向の移動を拘束されながら回転自在に支持されている。なお、軸受23を省略することができる。
【0022】
第2スクリュー軸4Aの下流側端部は、第2スクリュー4を回転させるための第2回転機構20に連結されている。本実施形態では、第2回転機構20は、第2駆動機(例えば、電動機)24と、第2駆動機24の回転軸に固定されたスプロケット25と、第2スクリュー軸4Aに固定されたスプロケット26と、これらスプロケット25,26に巻きかけられたチェーン27とを備える。スプロケット26は、軸受22,23の間に位置している。第2回転機構20の第2駆動機24を駆動すると、この第2駆動機24の回転軸に固定されたスプロケット25が回転し、チェーン27を介して第2スクリュー軸4Aに固定されたスプロケット26を回転させる。その結果、第2スクリュー4が第2回転機構20により回転させられる。
【0023】
第2駆動機24は、上記制御部6に接続される。第2駆動機24には、インバータ(図示せず)が内蔵されており、制御部6は、インバータを介して第2駆動機24の動作を制御することができるように構成されている。すなわち、制御部6は、インバータを介して第2駆動機24の回転速度および回転方向を制御することができる。第2駆動機24は、第2スクリュー4を第1スクリュー3とは独立して回転させることが可能である。なお、上記第1駆動機14も、該第1駆動機14の回転速度および回転方向を変更可能なインバータを内蔵していることが好ましい。
【0024】
図示はしないが、第2駆動機24の回転軸を、減速機を介して第2スクリュー軸4Aに連結してもよい。あるいは、第2駆動機24の回転軸を、直接第2スクリュー軸4Aに連結してもよい。
【0025】
第1スクリュー羽根3Bは、第1スクリュー軸3Aの軸方向に沿って螺旋状に延びており、第2スクリュー羽根4Bは、第2スクリュー軸4Aの軸方向に沿って螺旋状に延びている。第1スクリュー羽根3Bが固定されている第1スクリュー3の部分と、第2スクリュー羽根4Bが固定されている第2スクリュー4の部分を合計した長さは、スクリーンケーシング1の軸方向の長さと同一か、または長い。
【0026】
スクリーンケーシング1の内面と第1スクリュー羽根3Bとの間には微小な隙間が形成されており、第1スクリュー羽根3Bはスクリーンケーシング1に接触することなく回転することができるようになっている。同様に、スクリーンケーシング1の内面と第2スクリュー羽根4Bとの間には微小な隙間が形成されており、第2スクリュー羽根4Bはスクリーンケーシング1に接触することなく回転することができるようになっている。スクリーンケーシング1の上流側端部に形成された投入口2からスクリーンケーシング1に投入された汚泥を、回転する第1スクリュー羽根3Bおよび第2スクリュー羽根4Bによって排出チャンバー33に向かって(すなわち、移送方向Dに)移送することができる。
【0027】
本実施形態では、第2スクリュー羽根4Bの巻き方向(すなわち、螺旋方向)は、第1スクリュー羽根3Bの巻き方向とは逆である。したがって、投入口2から投入された汚泥を、排出チャンバー33へ送り出すときは、図1に示されるように、第2スクリュー4を第1スクリュー3とは逆方向に回転させることになる。
【0028】
第2スクリュー羽根4Bの巻き方向を、第1スクリュー羽根3Bの巻き方向と同一にしてもよい。この場合、投入口2から投入された汚泥を、排出チャンバー33へ送り出すときは、第2スクリュー4を第1スクリュー3と同方向に回転させることになる。
【0029】
図2に示されるように、第2スクリュー羽根4BのピッチP1は、第1スクリュー羽根3BのピッチP2よりも小さい(すなわち、P1<P2)。さらに、第2スクリュー羽根4Bは、その巻数が3巻き未満である。図3は、第2スクリュー羽根4Bの巻数を説明するための模式図である。図3に示されるように、螺旋状に延びる第2スクリュー羽根4Bの巻数は、該第2スクリュー羽根4Bが始点S1から点S2まで第1スクリュー軸3Aの周りを360°進んだときに、1巻きとカウントする。図3に示される第2スクリュー4では、第2スクリュー羽根4Bの巻数は、2巻きである。
【0030】
図1に示されるように、スクリーンケーシング1は、第1スクリュー3が配置された脱水領域1Aと、第2スクリュー4が配置されたプラグ形成領域1Bとに分割される。脱水領域1Aで汚泥が移送される空間は、スクリーンケーシング1の内面と、第1スクリュー羽根3Bと、第1スクリュー軸3Aとによって形成される。この移送空間の断面積は、図1に示すように、汚泥の移送方向Dに沿って漸次減少する。したがって、投入口2から投入された汚泥がこの移送空間を第1スクリュー羽根3Bによって移送されるに従って、汚泥は圧搾され、脱水される。スクリーンケーシング1のスクリーン(多孔板)を通過したろ液は、スクリーンケーシング1の下方に配置されたろ液受け38によって回収される。ろ液受け38には、ドレイン39が接続されており、ろ液受け38によって回収されたろ液は、ドレイン39を介してスクリュープレスから排出される。
【0031】
プラグ形成領域1Bで汚泥が移送される空間は、スクリーンケーシング1の内面と、第2スクリュー羽根4Bと、第2スクリュー軸4Aとによって形成される。図1に示すように、この移送空間の断面積は一定である。プラグ形成領域1Bでは、脱水領域1Aで脱水された汚泥(すなわち、ケーキ)によって、プラグケーキが形成される。プラグケーキを形成する方法については後述する。
【0032】
図1に示すように、スクリュープレスは、プラグ形成領域1Bに配置された圧力センサ29を有している。圧力センサ29は、プラグ形成領域1B内の汚泥の圧力、すなわち、(プラグ)ケーキの圧力を測定するためのセンサである。圧力センサ29は、信号線(図示せず)を介して制御部6に接続されており、その測定値を制御部6に送信可能に構成されている。制御部6は、圧力センサ29の測定値に基づいてプラグ形成領域1B内の(プラグ)ケーキの圧力を監視することができる。
【0033】
次に、図1に示すスクリュープレスの運転方法の一例について説明する。図4は、一実施形態に係るスクリュープレスの運転方法を示すフローチャートである。より具体的には、図4は、図1に示すスクリュープレスの装置立ち上げ動作を主として示すフローチャートである。
【0034】
図4に示すように、制御部6は、最初に、圧力センサ29を用いてプラグ形成領域1B内のケーキ(または、汚泥)の圧力を取得し、ケーキの圧力が所定のしきい値以上であるか否かを決定する(S101)。所定のしきい値は、プラグ形成領域1B全体にわたってプラグケーキを作るのに十分な汚泥が充填されているか否かを判断するために、スクリュープレスに投入される汚泥の性状によって予め設定される値であり、例えば、5kPaに設定される。この所定のしきい値は、制御部6に予め記憶されている。
【0035】
圧力センサ29の測定値が所定のしきい値よりも小さい場合(S101で、「No」)、制御部6は、プラグ形成領域1Bに汚泥が十分に充填されていないと決定し、汚泥充填運転工程を実施する(S102)。汚泥充填運転工程は、プラグ形成領域1Bに汚泥を充填する工程である。汚泥充填運転工程では、制御部6は、圧力センサ29の測定値が所定のしきい値を超えるまで、第2スクリュー4を回転させずに、第1スクリュー3のみを所定の回転速度で回転させる。この動作によって、プラグ形成領域1Bに汚泥が充填される。
【0036】
一実施形態では、制御部6は、汚泥充填運転工程で、第2スクリュー4を比較的低い速度で回転させてもよい。例えば、制御部6は、汚泥充填工程で、第2スクリュー4を、後述する低差速運転時の回転速度よりも低い回転速度で回転させてもよい。この場合も、制御部6は、汚泥充填工程用に設定された所定の回転速度で第1スクリュー3を回転させる。
【0037】
圧力センサ29の測定値が所定のしきい値以上である場合(S101で、「Yes」)、または汚泥充填運転工程が完了した場合、制御部6は、低差速運転工程を実施する(S102)。低差速運転工程は、プラグケーキ形成領域1Bに形成されたプラグケーキの硬さ(または、含水率)を、プラグケーキが第2スクリュー4と供回りしない程度の硬さまで低下させる工程であり、プラグケーキに弱めの背圧をかけながら、スクリュープレスを運転する工程である。そのため、低差速運転工程を、弱背圧運転工程と称してもよい。
【0038】
低差速運転では、プラグケーキ形成領域1B内のプラグケーキが脱水されすぎないように、第2スクリュー4の回転速度が調整される。具体的には、制御部6は、第2スクリュー4の回転速度を、後述する定常運転を開始するときの第1スクリュー3の回転速度に対して0.6~0.9倍の範囲の回転速度に調整する。この動作により、プラグケーキ形成領域1B内のプラグケーキは、汚泥充填運転工程時の含水率よりは低いが、ある程度は高い含水率に維持される。
【0039】
低差速運転時の第2スクリュー4の回転速度は、スクリュープレスに供給される汚泥の性状に応じて予め決定され、制御部6に予め記憶されている。例えば、低差速運転時の第2スクリュー4の回転速度は、プラグケーキ形成領域1B内のプラグケーキの含水率が80%以上に、好ましくは、81~84%の範囲に維持されるように、定常運転を開始するときの第1スクリュー3の回転速度に対して0.6~0.9倍の回転速度の範囲で、好ましくは、0.65~0.8倍の範囲で調整される。第2スクリュー4の回転速度が速いと、プラグケーキが所望の硬さに到達するのに時間がかかり、第2スクリュー4の回転速度が遅いと、プラグケーキが硬くなりすぎるおそれがある。
【0040】
低差速運転は、所定の時間だけ運転される。この低差速運転の運転時間(継続時間)は、制御部6に予め記憶されている。低差速運転の運転時間を長くすると、プラグケーキを所望の硬さにすることができるが、スクリュープレスが定常運転を開始するまでに必要となる時間が長くなる。一方で、低差速運転の運転時間を短くすると、プラグケーキの硬さが、後述する差速調整工程を開始するのに適した硬さに到達できないおそれがある。
【0041】
そのため、低差速運転の運転時間は、スクリュープレスに供給される汚泥の性状に応じて実施された実験および/またはシミュレーションなどに基づいて、1~20分の範囲で、好ましくは、5~10分の範囲で設定される。あるいは、低差速運転の運転時間は、第2スクリュー4の回転速度、プラグケーキ形成領域1Bの長さ、第2スクリュー羽根4Bの巻数、および第2スクリュー羽根4Bのピッチなどに基づいて、第2スクリュー4の回転数によって設定されてもよい。例えば、低差速運転は、第2スクリュー4が1~5回転、好ましくは、1.5~3回転する間だけ実行されてもよい。
【0042】
低差速運転が完了すると、制御部6は、差速調整運転工程を実施する(S104)。差速調整運転工程は、低差速運転時の第2スクリュー4の回転速度を、定常運転時の第2スクリュー4の回転速度である目標回転速度まで段階的に減少させながら、スクリュープレスを運転する工程である。この差速調整工程では、第2スクリュー4の回転速度を段階的に漸減するにしたがって、プラグケーキにかかる背圧が段階的に上昇させられる。そのため、低差速運転工程を、背圧調整工程と称してもよい。
【0043】
低差速運転時の第2スクリュー4の回転速度を、目標回転速度まで一度に低減させてしまうと、第2スクリュー羽根4Bに接触しているプラグケーキにかかる背圧が一気に上昇し、その結果、第2スクリュー羽根4Bに接触しているプラグケーキだけが硬くなってしまう。その結果、第2スクリュー羽根4Bと硬めのプラグケーキとが、螺旋状に延びる第2スクリュー羽根4Bの間に存在する柔らかめのプラグケーキに対して供回りしてしまうリスクが上昇する。そのため、差速調整工程では、第2スクリュー4の回転速度を、目標回転速度まで段階邸に減少させることで、螺旋状に延びる第2スクリュー羽根4Bの間に存在するプラグケーキ全体の硬さを徐々に低減させる。この動作により、プラグケーキと第2スクリュー4との供回りの発生を効果的に防止することができる。
【0044】
プラグケーキと第2スクリュー4との間で供回りが発生すると、プラグ形成領域1Bから排出されるプラグケーキの含水率を所望の値まで減少させるのに時間がかかる。本実施形態に係るスクリュープレスの運転方法によれば、プラグケーキと第2スクリュー4との供回りの発生を効果的に防止できるので、スクリュープレスの運転状態を定常状態に素早く移行することができる。
【0045】
差速調整運転工程で、第2スクリュー4の回転速度を低差速運転時の回転速度から目標回転速度まで低減させる段数(以下、単に「段数」と称する)、各段の運転時間、および次の段に移行する際の第2スクリュー4の回転速度の低減量(以下、単に「低減量」と称する)は、スクリュープレスに供給される汚泥の性状、低差速運転時の回転速度と目標回転速度との差分、および各段での運転時間などに基づいて、予め設定される。段数、各段の運転時間、および低減量は予め制御部6に記憶される。
【0046】
発明者らが差速調整運転工程について鋭意研究したところ、段数を3段以上に設定することで、プラグケーキと第2スクリュー4との供回りの発生を効果的に防止できることがわかった。さらに、各段の運転時間を1分以上に設定することで、プラグケーキと第2スクリュー4との供回りの発生を効果的に防止できることがわかった。一方で、段数を増やせば増やすほど、および各段の運転時間を増やせば増やすほど、プラグケーキと第2スクリュー4との供回りの発生を効果的に防止できるが、スクリュープレスの運転状態を定常状態に移行するのに時間がかかってしまう。そこで、段数は、3~10の範囲で、好ましくは、5~8の範囲で設定されるのが好ましく、各段の運転時間は、1~20分の範囲で、好ましくは、3~10分の範囲で設定されるのが好ましい。
【0047】
なお、次の段に移行する際の第2スクリュー4の回転速度の低減量は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。同様に、各段の運転時間は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0048】
差速調整運転工程が完了すると、制御部6は、定常運転を開始させる(S105)。定常運転では、含水率が所望の値以下まで低減されたプラグケーキがプラグ形成領域1Bから排出されるように、第1スクリュー3の回転速度、および第2スクリュー4の回転速度が設定されている。
【0049】
一実施形態では、スクリュープレスの運転状態が定常運転に移行した後で、制御部6は、第2スクリュー4の回転速度を変更することによって、排出チャンバー33に排出されるプラグケーキの量を調整してもよい。より具体的には、制御部6が第2スクリュー4の回転速度を低下させることで、プラグケーキの排出量を減少させてもよいし、制御部6が第2スクリュー4の回転速度を増加させることで、プラグケーキの排出量を増加させてもよい。プラグケーキの排出量が減少すると、後続のケーキが脱水領域1Aに滞留して、該後続のケーキに加えられる背圧が増加する。したがって、制御部6が第2スクリュー4の回転速度を低下させることにより、後続のケーキの含水率を低下させることができる。一実施形態では、第2スクリュー4の回転と停止とを交互に繰り返す間欠運転を行うことにより、後続のケーキに加えられる背圧を調整してもよい。
【0050】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0051】
1 スクリーンケーシング(ろ過筒)
1A 脱水領域
1B プラグ形成領域
2 投入口
3 第1スクリュー
3A 第1スクリュー軸
3B 第1スクリュー羽根
3C 縮径部
3D 壁面
4 第2スクリュー
4A 第2スクリュー軸
4B 第2スクリュー羽根
4C 内壁
6 制御部
7 第1回転機構
8 閉塞壁
10 水封装置
11,12 軸受
14 第1駆動機
15,16 スプロケット
17 チェーン
20 第2回転機構
22,23 軸受
24 第2駆動機
25,26 スプロケット
27 チェーン
29 圧力センサ
30,31 すべり軸受
33 排出チャンバー
36 軸受
38 ろ液受け
39 ドレイン
図1
図2
図3
図4