(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168771
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】バンジョーボルト
(51)【国際特許分類】
F16B 35/00 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
F16B35/00 A
F16B35/00 Q
F16B35/00 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080071
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】391062159
【氏名又は名称】松本重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 充夫
(74)【代理人】
【識別番号】100172236
【弁理士】
【氏名又は名称】岩木 宣憲
(72)【発明者】
【氏名】横田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】下川 慎也
(72)【発明者】
【氏名】糸原 浩展
(57)【要約】
【課題】締め付け軸力の低下を抑制しつつ、小径の横穴をプレス加工により形成することが可能なバンジョーボルトを提供すること。
【解決手段】バンジョーボルトが、頭部と、第1方向に沿って延びる縦穴を有する筒状の軸部とを備える。軸部の第1方向の一端部に、頭部が接続され、軸部の第1方向の他端部に、縦穴に接続された開口が設けられている。軸部が、少なくとも1つの溝部と横穴とを有する。少なくとも1つの溝部は、縦穴の内面に設けられ、第1方向に沿って延びると共に第1方向に交差する第2方向でかつ縦穴の第1方向に延びる中心線から離れる方向に窪む。横穴は、溝部の底部に設けられ、第2方向に延びて縦穴および軸部の外部を接続する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部と、
第1方向に沿って延びる縦穴を内部に有する筒状の軸部と
を備え、
前記軸部の前記第1方向の一端部に、前記頭部が接続され、
前記軸部の前記第1方向の他端部に、前記縦穴に接続された開口が設けられているバンジョーボルトであって、
前記軸部は、
前記縦穴の内面に設けられ、前記第1方向に沿って延びると共に前記第1方向に交差する第2方向でかつ前記縦穴の前記第1方向に延びる中心線から離れる方向に窪む、少なくとも1つの溝部と、
前記溝部の底部に設けられ、前記第2方向に延びて前記縦穴および前記軸部の外部を接続する横穴と
を有する、バンジョーボルト。
【請求項2】
前記溝部が、前記第1方向の一端から他端に亘って略均一の前記中心線に交差する断面を有する、請求項1に記載のバンジョーボルト。
【請求項3】
前記軸部の前記溝部の底部を構成する部分を薄肉部とし、前記軸部の前記薄肉部以外の部分を厚肉部とすると、
前記厚肉部の厚さに対する前記薄肉部の厚さの比は、ゼロより大きくかつ1より小さい、請求項1または2に記載のバンジョーボルト。
【請求項4】
前記第1方向に沿って見た場合における前記溝部の底部に対する前記横穴の比は、ゼロより大きくかつ1以下である、請求項1または2に記載のバンジョーボルト。
【請求項5】
前記軸部が、複数の前記溝部を有し、
複数の前記溝部が、前記中心線に対して対称に位置している、請求項1または2に記載のバンジョーボルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バンジョーボルトに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、頭部と、この頭部下端に設けられてその外周面におねじ溝を設けた軸部とを備えるユニオンボルトが開示されている。特許文献1のユニオンボルトは、軸部が、その内部に、軸心方向に略沿った方向に流体を流通する縦孔と、縦孔を外部と連通し得るように軸心方向に略直交してドリル加工またはプレス加工により形成された横孔を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のユニオンボルトにおいて、締め付け軸力を高めるためには、例えば、縦穴の内径を小さくすることが考えられる。しかし、縦穴の内径が小さくなると、軸部の横穴が形成される部分の寸法が大きくなり、小径の横穴をプレス加工で成形することが難しくなる場合がある。
【0005】
本開示の目的は、締め付け軸力の低下を抑制しつつ、小径の横孔をプレス加工により形成することができるバンジョーボルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様のバンジョーボルトは、
頭部と、
第1方向に沿って延びる縦穴を内部に有する筒状の軸部と
を備え、
前記軸部の前記第1方向の一端部に、前記頭部が接続され、
前記軸部の前記第1方向の他端部に、前記縦穴に接続された開口が設けられているバンジョーボルトであって、
前記軸部は、
前記縦穴の内面に設けられ、前記第1方向に沿って延びると共に前記第1方向に交差する第2方向でかつ前記縦穴の前記第1方向に延びる中心線から離れる方向に窪む、少なくとも1つの溝部と、
前記溝部の底部に設けられ、前記第2方向に延びて前記縦穴および前記軸部の外部を接続する横穴と
を有する。
【発明の効果】
【0007】
前記態様のバンジョーボルトによれば、締め付け軸力の低下を抑制しつつ、小径の横穴をプレス加工により形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態のバンジョーボルトを示す斜視図。
【
図2】
図1のバンジョーボルトの部分断面を含む斜視図。
【
図4】
図1のバンジョーボルトの第1の変形例を示す部分断面を含む斜視図。
【
図5】
図1のバンジョーボルトの第2の変形例を示す部分断面を含む斜視図。
【
図6】
図1のバンジョーボルトの第3の変形例を示す部分断面を含む斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一例を添付図面に従って説明する。以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、本開示の適用物、または、本開示の用途を制限することを意図するものではない。添付図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは必ずしも合致していない。
【0010】
本開示の一実施形態のバンジョーボルト(ユニオンボルトとも言う。)1は、
図1に示すように、頭部10と、筒状の軸部20とを備える。バンジョーボルト1は、例えば、炭素鋼、合金鋼、ボロン鋼、ステンレス、アルミ等で構成されている。軸部20は、例えば略円筒形状を有し、第1方向(例えば、Z方向)に沿って延びている。
【0011】
図1に示すように、頭部10は、一例として、略六角柱形状のねじ頭12と、フランジ14とを有し、軸部20の第1方向Zの一端に設けられている。ねじ頭12は、フランジ14よりも軸部20の第1方向Zの他端から離れて位置している。フランジ14は、例えば略円環形状で、軸部20の第1方向Zに延びる中心線CLまわりに位置している。
【0012】
図2に示すように、軸部20は、例えば略円筒形状で、第1方向Zに沿って延びる縦穴22を内部に有している。縦穴22は、例えば略円形状を有し、頭部10から軸部20の第1方向Zの他端まで延びて、軸部20の第1方向Zの他端部に設けられた開口222に接続されている。縦穴22は、例えば、冷間鋳造で軸部20に成形される。縦穴22の形状は、略円形状に限らず、他の任意の形状であってもよい。
【0013】
図3に示すように、軸部20は、少なくとも1つの溝部223と、溝部223の底部224に設けられた横穴24とを有している。溝部223は、縦穴22の内面、より具体的には、縦穴22の内面を構成する軸部20の周壁部21に設けられている。本実施形態では、軸部20は、一例として、縦穴22の第1方向Zに延びる中心線CLに対して対称に位置する2つの溝部223および2つの横穴24を有している。
【0014】
各溝部223は、第1方向Zに沿って延びると共に、第1方向に交差する第2方向(例えば、X方向)でかつ中心線CLから離れる方向に窪んでいる。一例として、各溝部223は、第1方向Zの一端から他端に亘って、略均一の中心線CLに交差する断面を有している。本実施形態では、2つの溝部223の一方のみに、1つの横穴24が設けられている。
【0015】
軸部20の周壁部21における各溝部223の底部224を構成する部分を薄肉部211とし、軸部20の周壁部21における薄肉部211以外の部分を厚肉部212とする。本実施形態では、厚肉部212の厚さに対する薄肉部211の厚さの比(例えば、W3/W4)は、好ましくは、ゼロより大きくかつ1より小さい。つまり、薄肉部211および厚肉部212は、中心線CLに対する周方向において交互に位置している。薄肉部211および厚肉部212の厚さは、第1方向Zに交差する方向(本実施形態では、中心線CLに対する径方向)における周壁部21の寸法である。
【0016】
横穴24は、軸部20の周壁部21を第2方向に貫通して延びて、縦穴22および軸部20の外部を接続している。横穴24は、例えば略円形状を有し、溝部223の底部224の任意の位置に設けられる。横穴24は、例えば、プレス加工で軸部20に成形される。横穴24の形状は、略円形状に限らず、他の任意の形状であってもよい。
【0017】
第1方向Zに沿って見た場合における溝部223の底部224の中心線CLに対する周方向の寸法をW1とし、横穴24の中心線CLに対する周方向の寸法をW2とする。本実施形態では、第1方向Zに沿って見た場合における溝部223の底部224に対する横穴24の比(=W1/W2)は、ゼロより大きくかつ1以下である。
【0018】
図1に示すように、軸部20は、第1方向Zの他端に位置する雄ねじ部25を有している。雄ねじ部25は、軸部20の中心線CL周りの外面に設けられている。
【0019】
バンジョーボルト1は、次のような効果を発揮できる。
【0020】
バンジョーボルト1が、頭部10と、第1方向Zに沿って延びる縦穴22を有する軸部20とを備える。軸部20の第1方向Zの一端部には、頭部10が接続されている。軸部20の第1方向Zの他端部には、縦穴22に接続された開口222が設けられている。軸部20は、少なくとも1つの溝部223と、横穴24とを有する。少なくとも1つの溝部223は、縦穴22の内面に設けられ、第1方向Zに沿って延びると共に第1方向Zに交差する第2方向でかつ縦穴22の第1方向Zに延びる中心線CLから離れる方向に窪んでいる。横穴24は、溝部223の底部224に設けられ、第2方向に延びて縦穴22および軸部20の外部を接続する。このような構成により、軸部20の周壁部21の厚さのうち、横穴24が形成される部分のみが薄くなるので、締め付け軸力(言い換えると面圧)の低下を抑制しつつ、小径の横穴をプレス加工により形成することが可能なバンジョーボルト1を実現できる。
【0021】
一般に、横穴24をプレス加工で形成する場合、ピアスパンチが用いられる。例えば、周壁部21の厚肉部212に横穴24を形成する場合、薄肉部211に横穴24を形成する場合よりも横穴24の加工に必要な加工荷重が増加する。加工荷重がピアスパンチの材料強度を超えると、ピアスパンチが破壊される(=加工限界を超える)ため、次に示すような不利益が発生する場合がある。バンジョーボルト1は、プレス加工により形成することができるので、このような不利益の発生を回避できる。
・プレス加工よりも加工コストが高い加工手段(例えば、ドリル加工)を用いる必要があり、バンジョーボルトの製造コストが高くなる。
・例えば、ドリル加工はプレス加工に比べて、バリおよびカエリが発生し易いため、異物混入の品質問題が増大する。
【0022】
溝部223が、第1方向Zの一端から他端に亘って略均一の中心線CLに交差する断面を有する。このような構成により、均一の締め付け軸力を有するバンジョーボルト1を実現できる。
【0023】
軸部20の溝部223の底部224を構成する部分を薄肉部211とし、軸部20の薄肉部211以外の部分を厚肉部212とすると、厚肉部212の厚さに対する薄肉部211の厚さの比は、ゼロより大きくかつ1より小さい。このような構成により、締め付け軸力の低下を抑制しつつ、小径の横穴をプレス加工により形成することが可能なバンジョーボルト1をより確実に実現できる。
【0024】
第1方向Zに沿って見た場合における溝部223の底部224に対する横穴24の比は、ゼロより大きくかつ1以下である。このような構成により、締め付け軸力の低下を抑制しつつ、小径の横穴をプレス加工により形成することが可能なバンジョーボルト1をより確実に実現できる。
【0025】
軸部20が、複数の溝部223を有し、複数の溝部223が、中心線CLに対して対称に位置している。このような構成により、軸部20に複数の横穴24を形成することができる。
【0026】
バンジョーボルト1は、次のように構成することもできる。
【0027】
軸部20は、少なくとも1つの溝部223を有していればよい。例えば、
図4に示すように、1つの溝部223が軸部20に設けられていてもよい。また、
図5に示すように、2つの溝部223が軸部20に設けられていてもよい。また、図示していないが、3以上の溝部223が軸部20に設けられていてもよい。
【0028】
軸部20は、少なくとも1つの横穴24を有していればよい。例えば、
図5に示すように、複数の溝部223の各々に、1つの横穴24が設けられていてもよい。また、図示していないが、1つの溝部223に、複数の横穴24が設けられていてもよい。
【0029】
頭部10は、任意の形状および構成を採用できる。例えば、ねじ頭12の形状は、略六角柱に限らず、ヘクサロビュラ、12ポイント、トリプルスクエア等であってもよい。
図6に示すように、頭部10は、フランジ14が省略された構成であってもよい。
【0030】
以上、図面を参照して本開示における種々の実施形態を詳細に説明したが、最後に、本開示の種々の態様について説明する。
【0031】
本開示の第1態様のバンジョーボルトは、
頭部と、
第1方向に沿って延びる縦穴を内部に有する筒状の軸部と
を備え、
前記軸部の前記第1方向の一端部に、前記頭部が接続され、
前記軸部の前記第1方向の他端部に、前記縦穴に接続された開口が設けられているバンジョーボルトであって、
前記軸部は、
前記縦穴の内面に設けられ、前記第1方向に沿って延びると共に前記第1方向に交差する第2方向でかつ前記縦穴の前記第1方向に延びる中心線から離れる方向に窪む、少なくとも1つの溝部と、
前記溝部の底部に設けられ、前記第2方向に延びて前記縦穴および前記軸部の外部を接続する横穴と
を有する。
【0032】
本開示の第2態様のバンジョーボルトは、
前記溝部が、前記第1方向の一端から他端に亘って略均一の前記中心線に交差する断面を有する。
【0033】
本開示の第3態様のバンジョーボルトは、第1態様または第2態様のバンジョーボルトにおいて、
前記軸部の前記溝部の底部を構成する部分を薄肉部とし、前記軸部の前記薄肉部以外の部分を厚肉部とすると、
前記厚肉部の厚さに対する前記薄肉部の厚さの比は、ゼロより大きくかつ1より小さい。
【0034】
本開示の第4態様のバンジョーボルト1は、第1態様~第3態様のいずれかのバンジョーボルトにおいて、
前記第1方向に沿って見た場合における前記溝部の底部に対する前記横穴の比は、ゼロより大きくかつ1以下である。
【0035】
本開示の第5態様のバンジョーボルト1は、第1態様~第4態様のいずれかのバンジョーボルトにおいて、
前記軸部が、複数の前記溝部を有し、
複数の前記溝部が、前記中心線に対して対称に位置している。
【0036】
前記様々な実施形態または変形例のうちの任意の実施形態または変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施形態同士の組み合わせまたは実施例同士の組み合わせまたは実施形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施形態または実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。
【0037】
本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本開示の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0038】
1 バンジョーボルト
10 頭部
12 ねじ頭
14 フランジ
20 軸部
21 周壁部
211 薄肉部
212 厚肉部
22 縦穴
222 開口
223 溝部
224 底部
24 横穴
25 雄ねじ部