(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168772
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】水深計測支援システムおよび計測移動体
(51)【国際特許分類】
G01C 13/00 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
G01C13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080073
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑原 智樹
(72)【発明者】
【氏名】羽子田 康之
(72)【発明者】
【氏名】池田 将
(72)【発明者】
【氏名】石丸 英嗣
(72)【発明者】
【氏名】横山 稔
(72)【発明者】
【氏名】蓮沼 仁志
(57)【要約】
【課題】孤立エリアへのアクセスルートにおける現在の水深をリアルタイムに把握することができる水深計測支援システムを提供する。
【解決手段】浸水エリアの中に孤立エリアが形成される水害時に機能する水深計測支援システム1は、孤立エリアへのアクセスルートに沿って移動する計測移動体2と、特定位置での水位を計測する水位計5と、管理装置4を含む。計測移動体2は、水深を計測する少なくとも1つの水深計3と、自己位置を特定するGPSセンサ24を含む。管理装置4は、計測移動体2の移動により得られる前記アクセスルートにおける水深データを初期水深データとして記録するとともに、前記初期水深データが得られたときの前記特定位置の水位を初期水位として記録し、前記特定位置の水位の変化に応じて前記初期水深データを補正して前記アクセスルートにおける現水深データを作成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸水エリアの中に孤立エリアが形成される水害時に機能する水深計測支援システムであって、
水深を計測する少なくとも1つの水深計、および自己位置を特定するGPSセンサを含み、前記孤立エリアへのアクセスルートに沿って移動する計測移動体と、
特定位置での水位を計測する水位計と、
前記計測移動体の移動により得られる前記アクセスルートにおける水深データを初期水深データとして記録するとともに、前記初期水深データが得られたときの前記特定位置の水位を初期水位として記録し、前記特定位置の水位の変化に応じて前記初期水深データを補正して前記アクセスルートにおける現水深データを作成する管理装置と、
を備える、水深計測支援システム。
【請求項2】
前記計測移動体は、当該計測移動体の幅方向に延びるアレイ治具を含み、
前記少なくとも1つの水深計は、所定のピッチで並ぶように前記アレイ治具に取り付けられた複数の水深計を含む、請求項1に記載の水深計測支援システム。
【請求項3】
前記所定のピッチは10cm以下であり、前記複数の水深計は前記アレイ治具における5m以上の範囲に取り付けられている、請求項2に記載の水深計測支援システム。
【請求項4】
前記アクセスルート上を移動する救援移動体であって、当該救援移動体の位置および向きを地図上に表示するナビゲーションモニタを含む救援移動体をさらに備え、
前記管理装置は前記アクセスルートにおける現水深データを前記救援移動体に送信し、前記ナビゲーションモニタには、前記現水深データに基づいて前記救援移動体の周囲の水深が表示される、請求項1~3の何れか一項に記載の水深計測支援システム。
【請求項5】
計測移動体であって、
前記計測移動体の幅方向に延びるアレイ治具と、
所定のピッチで並ぶように前記アレイ治具に取り付けられた、水深を計測する複数の水深計と、
自己位置を特定するGPSセンサと、
を備える、計測移動体。
【請求項6】
前記所定のピッチは10cm以下であり、前記複数の水深計は前記アレイ治具における5m以上の範囲に取り付けられている、請求項5に記載の計測移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水害時に機能する水深計測支援システム、およびこの水深計測支援システムに好適な計測移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
地震による津波や大雨による河川の氾濫などにより水害が発生すると、浸水エリアの中に孤立エリアが形成されることがある。孤立エリアは、建物である場合もあるし、特定の地域である場合もある。孤立エリアに病院や避難所等がある場合には、その孤立エリアへの薬品および食料等の物資や医療関係者等の人材の輸送が必要である。
【0003】
上述したような孤立エリアへの物資および人材の輸送にはヘリコプターを用いることが最適であるが、孤立エリアにヘリポートが無い場合にはヘリコプターを用いることができない。また、孤立エリアが多数存在する場合、ヘリコプターで全ての孤立エリアへ物資および人材を輸送するには時間がかかり過ぎる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヘリコプターを用いることの代替案としては、小型のモーターボート、水上オートバイ、四輪バギーなどを救援移動体として用いることが考えられる。モーターボートおよび水上オートバイは水深が深い場合に用いることができ、四輪バギーは水深が浅い場合に用いることができる。このため、どの種類の救援移動体を使用するかを判断するために、浸水エリアの水深を正確に把握したいという要望がある。
【0006】
例えば、特許文献1には、事前に航空レーザー計測により地盤標高を計測し、浸水時の水位分布から地盤標高を減算することで、水深分布を算出することが記載されている。
【0007】
しかしながら、地震時には地盤の隆起や沈下が発生することがあり、事前に計測した地盤標高を用いる算出方法では水深を正確に算出できないおそれがある。また、地盤の変形は、河川の氾濫時にも発生することがある。
【0008】
しかも、水深は時間経過に伴って変化するため、ある時期ではモーターボートおよび水上オートバイの使用が可能であったとしても、その後は四輪バギーしか使用できないこともある。
【0009】
そこで、本開示は、孤立エリアへのアクセスルートにおける現在の水深をリアルタイムに把握することができる水深計測支援システムを提供することを目的とする。また、本開示は、その水深計測支援システムに好適な計測移動体を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、浸水エリアの中に孤立エリアが形成される水害時に機能する水深計測支援システムであって、水深を計測する少なくとも1つの水深計、および自己位置を特定するGPSセンサを含み、前記孤立エリアへのアクセスルートに沿って移動する計測移動体と、特定位置での水位を計測する水位計と、前記計測移動体の移動により得られる前記アクセスルートにおける水深データを初期水深データとして記録するとともに、前記初期水深データが得られたときの前記特定位置の水位を初期水位として記録し、前記特定位置の水位の変化に応じて前記初期水深データを補正して前記アクセスルートにおける現水深データを作成する管理装置と、を備える、水深計測支援システムを提供する。
【0011】
また、本開示は、計測移動体であって、前記計測移動体の幅方向に延びるアレイ治具と、所定のピッチで並ぶように前記アレイ治具に取り付けられた、水深を計測する複数の水深計と、自己位置を特定するGPSセンサと、を備える、計測移動体を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、孤立エリアへのアクセスルートにおける現在の水深をリアルタイムに把握することができる水深計測支援システムと、この水深計測支援システムに好適な計測移動体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係る水深計測支援システムの概略構成図である。
【
図3】水位計が取り付けられた支柱の側面図である。
【
図4】浸水エリアおよび孤立エリアを示す地図である。
【
図5】救援移動体のナビゲーションモニタの画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に、一実施形態に係る水深計測支援システム1を示す。この水深計測支援システム1は、
図4に示すように、浸水エリア72の中に孤立エリア71が形成される水害時に機能するものである。
図4の例では、孤立エリア71が山73に接している。浸水エリア72では、道路74,75などが水没している。なお、孤立エリア71には、周辺地域との間の交通ルートが完全に遮断されたエリアだけでなく、周辺地域との間の交通ルートが残っていてもその交通ルートが非常に遠回りとなるエリアも含まれる。
【0015】
具体的に、水深計測支援システム1は、
図1に示すように、管理装置4、計測移動体2および救援移動体6を含む。管理装置4は、例えば、浸水が想定されない場所(例えば、高台に建てられた建屋内または複数階建てビルの上階)に設置される。計測移動体2および救援移動体6は、浸水エリア72を移動可能な小型のモーターボート、水上オートバイ、四輪バギーなどである。
【0016】
管理装置4は無線通信器41と接続されており、計測移動体2および救援移動体6には無線通信器21,61がそれぞれ搭載されている。つまり、管理装置4は、計測移動体2に搭載されたコントローラ22と無線通信器41,21を介して無線通信可能であるともに、救援移動体6に搭載されたコントローラ62と無線通信器41,61を介して無線通信可能である。この無線通信は、直接的な無線通信であってもよいし、インターネットを介した無線通信であってもよい。
【0017】
また、水深計測支援システム1は、特定位置での水位を計測する少なくとも1つの水位計5を含む。水位計5は無線通信器51と接続されており、水位計5で計測された水位に関する水位データ、およびその計測時刻が無線通信器51,41を介した無線通信により管理装置4へ送信される。
【0018】
管理装置4およびコントローラ22,62に関し、本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、および/または、それらの組み合わせ、を含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウエアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウエアである。ハードウエアは、本明細書に開示されているハードウエアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウエアであってもよい。ハードウエアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、またはユニットはハードウエアとソフトウエアの組み合わせであり、ソフトウエアはハードウエアおよび/またはプロセッサの構成に使用される。
【0019】
計測移動体2は、水害発生後の初期の水深を計測するためのものである。具体的に、計測移動体2は、上述した無線通信器21およびコントローラ22の他に、ナビゲーションモニタ23、GPS(Global Positioning System)センサ24、少なくとも1つの水深計3を含む。これらはバスによって互いに接続されている。
【0020】
GPSセンサ24は自己位置を特定する。コントローラ22は、GPSセンサ24で特定された自己位置に基づいて、ナビゲーションモニタ23に、計測移動体2の位置および向きを地図上に表示させる。
【0021】
計測移動体2は、孤立エリア71への少なくとも1つのアクセスルートに沿って移動する。本実施形態では、
図4に示すように、四輪バギー用の第1アクセスルート81と、モーターボートまたは水上オートバイ用の第2アクセスルート82が設定されている。
図4では、第1アクセスルート81および第2アクセスルート82が直線であるが、第1アクセスルート81および第2アクセスルート82は折れ線(複数の直線の組み合わせ)または曲線であってもよいし、1つまたは複数の直線と曲線の組み合わせであってもよい。
【0022】
第1アクセスルート81は、水没した地盤のうちの比較的に標高の高い場所を通るルートである。本実施形態では、第1アクセスルート81が、水没した道路74上に設定されている。第2アクセスルート82は、水没した地盤のうちの比較的に標高の低い場所(例えば、田んぼなど)を通るルートである。第1アクセスルート81および第2アクセスルート82は、例えば、水害発生前の地盤標高データに基づいて決定することができる。
【0023】
水深計3に関し、本実施形態では、
図2Bに示すように、計測移動体2が複数の水深計3を含む。また、計測移動体2は、移動体本体20と、この移動体本体20の後部に取り付けられたアレイ治具31を含む。
図2Aに示すように、本実施形態では、移動体本体20にコントローラ22および無線通信器21が設けられ、アレイ治具31にGPSセンサ24が設けられている。例えば、GPSセンサ24は、アレイ治具31の中央に配置される。
【0024】
図2Aおよび
図2Bに示すように、アレイ治具31は計測移動体2の幅方向(進行方向と直交する方向)に延びている。水深計3は、所定のピッチで計測移動体2の幅方向に並ぶようにアレイ治具31に取り付けられている。例えば、アレイ治具31の長さは5m以上であり、水深計3はアレイ治具31の5m以上の範囲に10cm以下のピッチで取り付けられる。
【0025】
なお、アレイ治具31は必ずしも移動体本体20の後部に取り付けられる必要はない。例えば、アレイ治具31が筏などのフロートに取り付けられ、そのフロートが移動体本体20の前部にフレキシブルに連結されて、移動体本体20がフロートを押してもよい。あるいは、アレイ治具31が取り付けられたフロートが移動体本体20で牽引されてもよい。
【0026】
より詳しくは、アレイ治具31は、水上で横方向に延びるフレーム32と、フレーム32から水中まで垂れ下がる複数のアーム33を含み、各アーム33に水深計3が取り付けられている。
【0027】
すなわち、本実施形態では、水深計3が水中に配置される。各水深計3は、当該水深計3から水底までの距離を検出し、この距離に当該水深計3の水面からセンサ位置の深度を加算することで、水深を計測する。
【0028】
コントローラ22は、無線通信器21に、水深計3で計測された水深に関する水深データ、その計測時刻における各水深計3の位置(各水深計3の位置は、計測移動体2の位置および向きから幾何学的に算出される)に関する位置データ、および計測時刻を無線通信器41へ送信させる。これにより、水深データ、位置データおよび計測時刻が管理装置4に入力される。
【0029】
計測移動体2が第1アクセスルート81に沿って移動しながら水深計3が水深を計測することにより、第1アクセスルート81における水深データが得られる。同様に、計測移動体2が第2アクセスルート82に沿って移動しながら水深計3が水深を計測することにより、第2アクセスルート82における水深データが得られる。
【0030】
水位計5に関し、本実施形態では、
図4に示すように、水深計測支援システム1が3つの水位計5を含む。各水位計5は、水面までの距離を検出し、検出した距離を基準距離と比較することで水位を計測する。
【0031】
本実施形態では、
図3に示すように、水位計5および無線通信器51が支柱52に取り付けられている。支柱52の下部には重り53が設けられている。本実施形態では、水害の発生後に、水位計5および無線通信器51が取り付けられた支柱52が、水位を計測すべき特定位置に設置される。例えば、水位を計測すべき特定位置は、第1アクセスルート81および第2アクセスルート82の近傍や、水没した道路75の近傍である。水位計5にはGPSセンサが取り付けられ、支柱52の設置後に、水位計5で水位が計測される特定位置に関する位置情報が管理装置4へ送信されてもよい。
【0032】
ただし、水位計5は、水害の発生前から特定位置に設置されてもよい。すなわち、水位計5は常設されてもよい。例えば、水位計5は、電柱や建物に取り付けられてもよい。
【0033】
管理装置4は、第1アクセスルート81における水深データおよび第2アクセスルート82における水深データを初期水深データとして記録する。水深計3同士の間などの水深が計測されていない部分については、管理装置4がその部分の水深を数学的に補完する。また、管理装置4は、初期水深データが得られたときの特定位置での水位を初期水位として記録する。
【0034】
なお、計測移動体2が第1アクセスルート81および第2アクセスルート82に沿って移動する間に水位計5で計測される水位が変化する場合、管理装置4は、標準時刻(例えば、水位の計測開始時刻)からの水位の変化量に基づいて、第1アクセスルート81における水深データおよび第2アクセスルート82における水深データを前記標準時刻でのデータとなるように修正する。
【0035】
その後、管理装置4は、特定位置の水位の変化に応じて前記初期水深データを補正して第1アクセスルート81における現水深データおよび第2アクセスルート82における現水深データを作成する。例えば、現在の水位が初期水位から低下している場合には、その水位差を初期水深データから差し引くことで現水深データを作成する。例えば、現水深データの作成は、一分ごとに行われる。
【0036】
救援移動体6は、上述した無線通信器61およびコントローラ62の他に、ナビゲーションモニタ63およびGPSセンサ64を含む。これらはバスによって互いに接続されている。
【0037】
GPSセンサ64は自己位置を特定する。コントローラ62は、GPSセンサ64で特定された自己位置に基づいて、ナビゲーションモニタ63に、救援移動体6の位置および向きを地図上に表示させる。
【0038】
救援移動体6が四輪バギーの場合、管理装置4は、無線通信器41に、第1アクセスルート81の現水深データを救援移動体6の無線通信器61へ送信させる。これにより、コントローラ62へ第1アクセスルート81における現水深データが入力される。コントローラ62は、第1アクセスルート81における現水深データに基づいて、ナビゲーションモニタ63に、救援移動体6の周囲の水深(特に、進行方向の水深)を表示させる。
【0039】
図5に、ナビゲーションモニタ63の画面の一例を示す。この例では、画面の右半分が地図を表示し、画面の左半分が水深を表示する。本実施形態では、水深の表示が色分けで行われる。例えば、水深が40cm以下の部分は緑色、水深が40~80cmの部分は黄色、水深が80cm以上の部分は赤色で表示される。
図5は、水没した道路74に窪み76があることを想定した画面である。なお、水深が60cmの部分を黄色とし、水深が40~60cmの部分および水深が60~80cmの部分はグラデーションによって水深の変化が表示されてもよい。
【0040】
救援移動体6がモーターボートまたは水上オートバイの場合、管理装置4は、無線通信器41に、第2アクセスルート82の現水深データを救援移動体6の無線通信器61へ送信させる。これにより、コントローラ62へ第2アクセスルート82における現水深データが入力される。コントローラ62は、第2アクセスルート82における現水深データに基づいて、ナビゲーションモニタ63に、救援移動体6の周囲の水深(特に、進行方向の水深)を表示させる。
【0041】
救援移動体6がモーターボートまたは水上オートバイの場合でも、水深の表示が色分けで行われる。例えば、水深が100cm以上の部分は緑色、水深が100~60cmの部分は黄色、水深が60cm以下の部分は赤色で表示される。なお、水深が80cmの部分を黄色とし、水深が100~80cmの部分および水深が80~60cmの部分はグラデーションによって水深の変化が表示されてもよい。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の水深計測支援システム1では、特定位置の水位の変化に応じて第1アクセスルート81および第2アクセスルート82における現水深データが作成されるので、第1アクセスルート81および第2アクセスルート82における現在の水深をリアルタイムに把握することができる。
【0043】
ところで、水深が数十m以上と深い場合には水深計としてマルチビーム測定器を用いれば、比較的に広い幅で水深を高精度に計測することができる。しかし、マルチビーム測定器を水深の浅いところで使用した場合には、水深の計測がビーム出射角の小さな角度範囲だけでなくビーム出射角の大きな角度範囲でも行われるため、そのビーム出射角の大きな角度範囲では水底の隆起の存在によって水深を高精度に計測することが困難である。これに対し、本実施形態では、計測移動体2の幅方向に延びるアレイ治具31に複数の水深計3が所定のピッチで取り付けられているので、水深に拘わらずに、比較的に広い幅で水深を高精度に計測することができる。
【0044】
特に、水深計3がアレイ治具31の5m以上の範囲に10cm以下のピッチで取り付けられていれば、四輪バギーのタイヤ幅は20cm程度であるため、四輪バギーのタイヤが入り込むような窪みを見逃すことなく検出することができる。また、四輪バギーの幅は2m程度であるため、5m以上の幅で水深を計測すれば、水深が計測された領域内で障害物を迂回するような四輪バギーの移動を計画することができる。
【0045】
また、本実施形態では、救援移動体6のナビゲーションモニタ63に当該救援移動体6の周囲の水深が表示されるので、救援移動体6の運転者がナビゲーションモニタ63上で周囲の水深を確認しながら救援移動体6を運転することができる。
【0046】
(変形例)
本開示は上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0047】
例えば、現水深データに基づく水深の表示は、必ずしも救援移動体6のナビゲーションモニタ63で行われる必要はなく、管理装置4にモニタが接続される場合は、そのモニタで行われてもよい。
【0048】
(まとめ)
第1の態様として、本開示は、浸水エリアの中に孤立エリアが形成される水害時に機能する水深計測支援システムであって、水深を計測する少なくとも1つの水深計、および自己位置を特定するGPSセンサを含み、前記孤立エリアへのアクセスルートに沿って移動する計測移動体と、特定位置での水位を計測する水位計と、前記計測移動体の移動により得られる前記アクセスルートにおける水深データを初期水深データとして記録するとともに、前記初期水深データが得られたときの前記特定位置の水位を初期水位として記録し、前記特定位置の水位の変化に応じて前記初期水深データを補正して前記アクセスルートにおける現水深データを作成する管理装置と、を備える、水深計測支援システムを提供する。
【0049】
上記の構成によれば、特定位置の水位の変化に応じて孤立エリアへのアクセスルートにおける現水深データが作成されるので、アクセスルートにおける現在の水深をリアルタイムに把握することができる。
【0050】
第2の態様として、第1の態様において、前記計測移動体は、当該計測移動体の幅方向に延びるアレイ治具を含み、前記少なくとも1つの水深計は、所定のピッチで並ぶように前記アレイ治具に取り付けられた複数の水深計を含んでもよい。水深が数十m以上と深い場合には水深計としてマルチビーム測定器を用いれば、比較的に広い幅で水深を高精度に計測することができる。しかし、マルチビーム測定器を水深の浅いところで使用した場合には、水深の計測がビーム出射角の小さな角度範囲だけでなくビーム出射角の大きな角度範囲でも行われるため、そのビーム出射角の大きな角度範囲では水底の隆起の存在によって水深を高精度に計測することが困難である。これに対し、計測移動体の幅方向に延びるアレイ治具に複数の水深計が所定のピッチで取り付けられていれば、水深に拘わらずに、比較的に広い幅で水深を高精度に計測することができる。
【0051】
第3の態様として、第2の態様において、前記所定のピッチは10cm以下であり、前記複数の水深計は前記アレイ治具における5m以上の範囲に取り付けられてもよい。この構成によれば、四輪バギーのタイヤ幅は20cm程度であるため、四輪バギーのタイヤが入り込むような窪みを見逃すことなく検出することができる。また、四輪バギーの幅は2m程度であるため、5m以上の幅で水深を計測すれば、水深が計測された領域内で障害物を迂回するような四輪バギーの移動を計画することができる。
【0052】
第4の態様として、第1~第3の態様の何れかにおいて、上記の水深計測支援システムは、前記アクセスルート上を移動する救援移動体であって、当該救援移動体の位置および向きを地図上に表示するナビゲーションモニタを含む救援移動体をさらに備え、前記管理装置は前記アクセスルートにおける現水深データを前記救援移動体に送信し、前記ナビゲーションモニタには、前記現水深データに基づいて前記救援移動体の周囲の水深が表示されてもよい。この構成によれば、救援移動体の運転者がナビゲーションモニタ上で周囲の水深を確認しながら救援移動体を運転することができる。
【0053】
第5の態様として、本開示は、計測移動体であって、前記計測移動体の幅方向に延びるアレイ治具と、所定のピッチで並ぶように前記アレイ治具に取り付けられた、水深を計測する複数の水深計と、自己位置を特定するGPSセンサと、を備える、計測移動体を提供する。
【0054】
水深が数十m以上と深い場合には水深計としてマルチビーム測定器を用いれば、比較的に広い幅で水深を高精度に計測することができる。しかし、マルチビーム測定器を水深の浅いところで使用した場合には、水深の計測がビーム出射角の小さな角度範囲だけでなくビーム出射角の大きな角度範囲でも行われるため、そのビーム出射角の大きな角度範囲では水底の隆起の存在によって水深を高精度に計測することが困難である。これに対し、計測移動体の幅方向に延びるアレイ治具に複数の水深計が所定のピッチで取り付けられていれば、水深に拘わらずに、比較的に広い幅で水深を高精度に計測することができる。
【0055】
第6の態様として、第5の態様において、前記所定のピッチは10cm以下であり、前記複数の水深計は前記アレイ治具における5m以上の範囲に取り付けられてもよい。この構成によれば、四輪バギーのタイヤ幅は20cm程度であるため、四輪バギーのタイヤが入り込むような窪みを見逃すことなく検出することができる。また、四輪バギーの幅は2m程度であるため、5m以上の幅で水深を計測すれば、水深が計測された領域内で障害物を迂回するような四輪バギーの移動を計画することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 水深計測支援システム
2 計測移動体
23 ナビゲーションモニタ
3 水深計
31 アレイ治具
4 管理装置
5 水位計
6 救援移動体
63 ナビゲーションモニタ