(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168773
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65H 5/06 20060101AFI20231121BHJP
B65H 9/00 20060101ALI20231121BHJP
B65H 7/02 20060101ALI20231121BHJP
B65H 29/58 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
B65H5/06 J
B65H9/00 K
B65H7/02
B65H29/58 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080075
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】山形 昌弘
【テーマコード(参考)】
3F048
3F049
3F053
3F102
【Fターム(参考)】
3F048AA01
3F048AB01
3F048BB02
3F048CC13
3F048DA06
3F048DC06
3F048EA14
3F048EB29
3F049DA12
3F049EA04
3F049EA10
3F049EA17
3F049EA22
3F049EA24
3F049LA01
3F049LB01
3F053BA03
3F053BA14
3F053LA01
3F053LB01
3F102AA01
3F102AB01
3F102BA06
3F102CB04
3F102EA01
3F102EC02
3F102FA04
3F102FA08
(57)【要約】
【課題】逆転ブレーキを用いたスイッチバック動作において、エンコーダのパルス信号の分解能に依存することなく、モータの停止タイミングを高精度で取得できる搬送装置を提供する。
【解決手段】制御部23は、スイッチバック動作におけるスイッチバックモータ13が停止するまでの搬送の期間において、スイッチバックモータ13の回転方向に対して逆回転方向の制動トルクを加えながら所定の加速度でスイッチバックモータ13を減速させる。そして、制御部23は、逆回転方向の制動トルクによるスイッチバックモータ13の減速開始前の搬送速度およびスイッチバックモータ13の減速時の加速度に基づき、スイッチバックモータ13が停止するタイミングを算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙をスイッチバックするスイッチバックローラと、
前記スイッチバックローラを駆動させるモータと、
前記モータの回転角度に応じてパルス信号を出力するエンコーダと、
前記エンコーダが出力するパルス信号に基づき、前記モータの速度を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、スイッチバック動作における前記モータが停止するまでの搬送の期間において、前記モータの回転方向に対して逆回転方向の制動トルクを加えながら所定の加速度で前記モータを減速させ、前記制動トルクによる減速開始前の搬送速度および前記加速度に基づき、前記モータが停止するタイミングを算出することを特徴とする搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙を搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
用紙の搬送方向を反転させるスイッチバック動作を行う搬送装置が知られている。このような搬送装置におけるスイッチバック動作において、スイッチバックローラによる用紙の搬送方向を反転させる際に、スイッチバックローラを回転させるモータに対して逆回転方向にトルクを付加する逆転ブレーキという手段が一般的に用いられる。
【0003】
これに関し、特許文献1には、モータに設けられたエンコーダが出力するパルス信号(パルス数、パルス幅、パルス周期)に基づいて回転停止状態を疑似的に判定し、モータを精度よく制御する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、エンコーダのパルス信号の分解能によっては、停止直前の低速回転動作時にモータの動作状態を正確に検出できないことがある。具体的には、エンコーダのパルス信号の分解能が小さすぎると、パルスとパルスとの間隔が大きすぎてモータの動作状態を正確に検出できないことがある。このため、用紙の搬送方向を反転させる際のモータの停止タイミングを精度よく検出することができず、次の反転搬送の制御の精度が低下するおそれがある。
【0006】
そこで、エンコーダのパルス信号に依存することなく、スイッチバックローラを駆動させるモータの停止タイミングを高精度で取得できる技術が要望されていた。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、逆転ブレーキを用いたスイッチバック動作において、エンコーダのパルス信号に依存することなく、モータの停止タイミングを高精度で取得できる搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の搬送装置は、用紙をスイッチバックするスイッチバックローラと、前記スイッチバックローラを駆動させるモータと、前記モータの回転角度に応じてパルス信号を出力するエンコーダと、前記エンコーダが出力するパルス信号に基づき、前記モータの速度を制御する制御部とを備え、前記制御部は、スイッチバック動作における前記モータが停止するまでの搬送の期間において、前記モータの回転方向に対して逆回転方向の制動トルクを加えながら所定の加速度で前記モータを減速させ、前記制動トルクによる減速開始前の搬送速度および前記加速度に基づき、前記モータが停止するタイミングを算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の搬送装置によれば、逆転ブレーキを用いたスイッチバック動作において、エンコーダのパルス信号の分解能に依存することなく、モータの停止タイミングを高精度で取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係る搬送装置の概略構成図である。
【
図2】
図1に示す搬送装置の制御ブロック図である。
【
図3】スイッチバックローラのスイッチバック動作を説明するためのタイムチャート図である。
【
図4】スイッチバックローラを正転搬送から制動開始し、反転搬送に切り替え制御を行った場合の動作を説明するための図である。
【
図5】スイッチバックローラのスイッチバック動作の比較例を説明するためのタイムチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0012】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る搬送装置の概略構成図である。
図2は、
図1に示す搬送装置の制御ブロック図である。
【0014】
図1、
図2に示すように、本発明の実施の形態に係る搬送装置1は、進入経路2と、反転経路3と、非反転経路4と、排出経路5と、フリッパ6と、ソレノイド7と、切替ゲート8と、1対の進入ローラ9と、進入モータ10と、2対の反転ローラ11と、1対のスイッチバックローラ12と、スイッチバックモータ(モータに相当)13と、エンコーダ14と、スイッチバックセンサ15と、2対の中間ローラ16と、中間搬送モータ17と、1対のフェイスアップローラ18と、1対の上昇ローラ19と、上昇モータ20と、1対の排出ローラ21と、排出モータ22と、制御部23とを備える。
【0015】
搬送装置1は、例えば、用紙に印刷する印刷装置と用紙を排紙する排紙装置との間、または2つの印刷装置の間に配置される。また、搬送装置1は、印刷装置等の装置に一体に組み込まれていてもよい。
【0016】
進入経路2は、搬送装置1に進入してくる用紙を受け入れて搬送するための搬送経路である。
【0017】
反転経路3は、用紙をスイッチバックさせることにより表裏反転させるための搬送経路である。反転経路3は、反転上流経路31と、スイッチバック経路32と、反転下流経路33とを備える。
【0018】
反転上流経路31は、フリッパ6により進入経路2から反転経路3へ導かれた用紙をスイッチバックローラ12へ搬送するための搬送経路である。用紙の搬送方向における反転上流経路31の上流端は進入経路2の下流端に接続され、反転上流経路31の下流端はスイッチバック経路32の一方の端(上端)に接続されている。
【0019】
スイッチバック経路32は、用紙をスイッチバックするための搬送経路である。スイッチバック経路32の一方の端(上端)は反転上流経路31の下流端および反転下流経路33の上流端に接続されている。
【0020】
反転下流経路33は、スイッチバックローラ12によりスイッチバックされた用紙を排出経路5へ搬送するための搬送経路である。反転下流経路33の上流端はスイッチバック経路32の一方の端(上端)に接続され、反転下流経路33の下流端は排出経路5の上流端に接続されている。
【0021】
非反転経路4は、用紙を表裏反転させずに進入経路2から排出経路5へ搬送するための搬送経路である。非反転経路4の上流端は進入経路2の下流端に接続され、非反転経路4の下流端は排出経路5の上流端に接続されている。
【0022】
排出経路5は、用紙を搬送装置1から排出するための搬送経路である。排出経路5の上流端は、非反転経路4の下流端および反転下流経路33の下流端に接続されている。
【0023】
フリッパ6は、進入経路2に沿って搬送されてきた用紙の進路を反転経路3と非反転経路4との間で切り替える。
【0024】
ソレノイド7は、フリッパ6を駆動させる。
【0025】
切替ゲート8は、スイッチバック前の用紙を反転上流経路31からスイッチバック経路32へ導き、スイッチバックローラ12によりスイッチバックされた用紙をスイッチバック経路32から反転下流経路33へ導く。
【0026】
進入ローラ9は、搬送装置1に進入してくる用紙を受け取って搬送する。進入ローラ9は、進入経路2に沿って配置されている。
【0027】
進入モータ10は、進入ローラ9、2対の反転ローラ11のうちの上流側の反転ローラ11、およびフェイスアップローラ18を駆動させる。
【0028】
反転ローラ11は、フリッパ6により反転経路3へ導かれた用紙をスイッチバックローラ12へ搬送する。2対の反転ローラ11は、反転上流経路31に沿って配置されている。
【0029】
スイッチバックローラ12は、反転ローラ11により搬送されてきた用紙をスイッチバックして中間ローラ16へ搬送する。スイッチバックローラ12は、用紙のスイッチバックを行うため、正逆転可能に構成されている。スイッチバックローラ12は、スイッチバック経路32の上端部に配置されている。
【0030】
スイッチバックモータ13は、スイッチバックローラ12を正転方向および逆転方向に駆動させる。
【0031】
エンコーダ14は、スイッチバックモータ13の回転角度(スイッチバックモータ13の出力軸の回転角度)に応じてパルス信号を出力する。
【0032】
スイッチバックセンサ15は、スイッチバックローラ12によりスイッチバックされる用紙を検出する。スイッチバックセンサ15は、スイッチバック前の搬送方向におけるスイッチバックローラ12の下流側近傍に配置されている。
【0033】
中間ローラ16は、スイッチバックローラ12によりスイッチバックされた用紙を上昇ローラ19へ搬送する。2対の中間ローラ16は、反転下流経路33に沿って配置されている。
【0034】
中間搬送モータ17は、2対の反転ローラ11のうちの下流側の反転ローラ11、および2対の中間ローラ16を回転駆動させる。
【0035】
フェイスアップローラ18は、フリッパ6により非反転経路4へ導かれた用紙Pを上昇ローラ19へ搬送する。フェイスアップローラ18は、非反転経路4に沿って配置されている。
【0036】
上昇ローラ19は、中間ローラ16またはフェイスアップローラ18から搬送されてきた用紙Pを排出ローラ21へ搬送する。上昇ローラ19は、排出経路5の上流端部に配置されている。
【0037】
上昇モータ20は、上昇ローラ19を駆動させる。
【0038】
排出ローラ21は、上昇ローラ19から搬送されてきた用紙Pを搬送して搬送装置1から排出する。排出ローラ21は、排出経路5の下流端部に配置されている。
【0039】
排出モータ22は、排出ローラ21を駆動させる。
【0040】
制御部23は、搬送装置1の全体の動作を制御する。制御部23は、CPU、メモリ等を備えて構成される。なお、搬送装置1が印刷装置等の他の装置に一体に組み込まれている場合には、他の装置の制御部が制御部23を兼ねていてもよい。
【0041】
制御部23は、スイッチバックローラ12により用紙をスイッチバックするスイッチバック動作において、エンコーダ14が出力するパルス信号に基づき、スイッチバックモータ13の速度(スイッチバックモータ速度)を制御する。制御部23は、スイッチバック動作におけるスイッチバックモータ13が停止するまでの搬送の期間において、スイッチバックモータ13の回転方向に対して逆回転方向の制動トルクを加えながら所定の加速度でスイッチバックモータ13を減速させる。そして、制御部23は、逆回転方向の制動トルクによるスイッチバックモータ13の減速開始前の搬送速度およびスイッチバックモータ13の減速時の加速度に基づき、スイッチバックモータ13が停止するタイミングを算出する。制御部23は、算出したスイッチバックモータ13が停止するタイミング以降のスイッチバックモータ速度を負方向(マイナス)として制御する。
【0042】
次に、スイッチバックローラ12のスイッチバック動作について、
図3のタイムチャート図を参照して説明する。
【0043】
図3の時刻t1において、制御部23は、スイッチバックモータ13を正転方向で駆動開始させる。ここで、正転方向は、用紙を正転搬送する際のスイッチバックモータ13の(出力軸の)回転方向である。正転搬送は、反転上流経路31からスイッチバック経路32へ向かう方向の搬送である。制御部23は、エンコーダ14のパルス信号に基づき、スイッチバックローラ12に用紙先端が到達する前に、スイッチバックローラ12が、予め設定された所定の搬送速度に到達するよう制御する。
【0044】
スイッチバックローラ12に用紙が到達すると、スイッチバックローラ12により用紙が正転搬送され、時刻t2において、スイッチバックセンサ15に用紙先端が到達する。
【0045】
スイッチバックセンサ15に用紙先端が到達してから、用紙後端が切替ゲートを通過するまで所定量だけ用紙が搬送されたら、その時刻t3において、制御部23は、スイッチバックモータ13に逆転方向(正転方向に対して逆回転方向)の制動トルクを加える逆転ブレーキを開始するようスイッチバックモータ13を制御する。これにより、制御部23は、予め設定された所定の加速度でスイッチバックモータ13を減速させる。
【0046】
そして、制御部23は、逆転ブレーキ開始前(逆回転方向の制動トルクによるスイッチバックモータ13の減速開始前)の正転搬送の搬送速度およびスイッチバックモータ13の減速時の加速度に基づき、スイッチバックモータ13が停止するタイミングを算出する。ここで、スイッチバックモータ13は、一旦停止した後、逆転方向の回転を開始する。
【0047】
算出したスイッチバックモータ13が停止するタイミングが到来すると、その時刻t4において、制御部23は、エンコーダ14のパルス信号に基づくスイッチバックモータ速度の計算をマイナスに切り替える。すなわち、制御部23は、エンコーダ14のパルス信号から算出されるスイッチバックモータ速度をマイナスとして計算する。また、制御部23は、加速度設定を「搬送→停止」設定から「停止→搬送」設定に切り替える。このようにして、制御部23は、スイッチバックローラ12のスイッチバック後の逆転搬送を制御する。
【0048】
逆転搬送の開始後、時刻t5において、用紙後端がスイッチバックセンサ15を通過する。
【0049】
用紙後端がスイッチバックセンサ15を通過してから、用紙後端がスイッチバックローラ12を通過するまで所定量だけ用紙が搬送されたら、その時刻t6において、制御部23は、スイッチバックモータ13に正転方向の制動トルクを加える逆転ブレーキを開始するようスイッチバックモータ13を制御する。これにより、制御部23は、所定の加速度でスイッチバックモータ13を減速させる。
【0050】
そして、制御部23は、逆転ブレーキ開始前の逆転搬送の搬送速度およびスイッチバックモータ13の減速時の加速度に基づき、スイッチバックモータ13が停止するタイミングを算出する。ここで、スイッチバックモータ13は、一旦停止した後、正転方向の回転を開始する。
【0051】
算出したスイッチバックモータ13が停止するタイミングが到来すると、その時刻t7において、制御部23は、エンコーダ14のパルス信号に基づくスイッチバックモータ速度の計算をプラスに切り替える。すなわち、制御部23は、エンコーダ14のパルス信号から算出されるスイッチバックモータ速度をプラスとして計算する。また、制御部23は、加速度設定を「搬送→停止」設定から「停止→搬送」設定に切り替える。
【0052】
スイッチバックローラ12による用紙の搬送速度が、正転搬送の搬送速度に到達すると、制御部23は、その時刻t8から搬送速度を維持するようスイッチバックモータ13を制御する。この後、次の用紙がスイッチバックローラ12に到達してスイッチバックローラ12により正転搬送され、時刻t9において、スイッチバックセンサ15に用紙先端が到達する。以降、最後の用紙がスイッチバックされるまで同様の動作が繰り返される。
【0053】
次に、スイッチバックローラ12を正転搬送から制動開始し、反転搬送に切り替え制御を行った場合の動作について、
図4を参照して説明する。
【0054】
図4に示すように、スイッチバックモータ速度M1,M2は、目標速度に応じて一定の加速度で制御され、スイッチバックローラ速度(スイッチバックローラ12の速度)は、駆動ギアのバックラッシによりスイッチバックモータ速度に対して遅延しつつ追従する。
【0055】
ここで、スイッチバックモータ速度M1は、エンコーダ14のパルス信号から算出されたスイッチバックモータ13の速度である。スイッチバックモータ速度M2は、スイッチバックモータ13が停止するタイミング(スイッチバックモータ速度がゼロとなるタイミング)以降のスイッチバックモータ速度を負方向(マイナス)として制御した場合のスイッチバックモータ速度である。
【0056】
スイッチバックモータ速度は正転方向(正方向)から逆転ブレーキにより一定の加速度で減速し、逆転方向(負方向)に切り替わる。また、スイッチバックモータ速度M1において、回転方向が切り替わっているので速度は一度ゼロになるはずだが、エンコーダ14のパルス信号の分解能が不足しているため、ゼロ付近の速度が正確に得られていない様子を示している。
【0057】
このとき、スイッチバックモータ速度はエンコーダ14のパルス信号に基づき算出されるが、正負の概念がないため、スイッチバックモータ速度M1のように反転した時に加速したように見える。この状態で制御するとスイッチバックモータ13の回転方向(負方向)に対してスイッチバックモータ速度が遅れていることになるため、過剰トルクを付加するように制御されてしまう。
【0058】
そこで、搬送装置1では、前述のように、搬送速度および加速度に基づき速度がゼロになるタイミングを推定(スイッチバックモータ13が停止するタイミングを算出)し、ゼロタイミング以降のスイッチバックモータ速度を負方向として制御する(スイッチバックモータ速度M1)こととする。これにより、スイッチバックローラ12の反転後も、スイッチバックモータ速度を正しく制御することができる。
【0059】
次に、スイッチバックローラ12のスイッチバック動作の比較例について、
図5のタイムチャート図を参照して説明する。
【0060】
比較例では、
図5の時刻t11において、スイッチバックモータ13の正転方向の駆動が開始される。スイッチバックローラ12に用紙先端が到達する前に、スイッチバックローラ12が所定の搬送速度に到達するよう制御される。
【0061】
スイッチバックローラ12に用紙が到達すると、スイッチバックローラ12により用紙が正転搬送され、時刻t12において、スイッチバックセンサ15に用紙先端が到達する。
【0062】
スイッチバックセンサ15に用紙先端が到達してから、用紙後端が切替ゲートを通過するまで所定量だけ用紙が搬送されたら、その時刻t13において、スイッチバックモータ13の減速が開始され、その後、スイッチバックモータ13が停止する。なお、時刻t13までの動作は、上述した
図3の時刻t3までの動作と同様である。
【0063】
スイッチバックモータ13が停止してから所定時間経過後の時刻t14において、スイッチバックモータ13の逆転方向の駆動が開始される。
【0064】
その後、時刻t15において、用紙後端がスイッチバックセンサ15を通過する。次いで、時刻t16において、スイッチバックモータ13の減速が開始され、その後、スイッチバックモータ13が停止する。
【0065】
スイッチバックモータ13が停止してから所定時間経過後の時刻t17において、スイッチバックモータ13の正転方向の駆動が開始される。
【0066】
スイッチバックローラ12による用紙の搬送速度が、正転搬送の搬送速度に到達すると、その時刻t18から搬送速度が維持される。この後、次の用紙がスイッチバックローラ12に到達してスイッチバックローラ12により正転搬送され、時刻t19において、スイッチバックセンサ15に用紙先端が到達する。以降、最後の用紙がスイッチバックされるまで同様の動作が繰り返される。
【0067】
ここで、前述した
図3の時刻t8~t9の時間をTa、
図5の比較例における時刻t18~t19の時間をTbとすると、TaがTbよりも長くなる。すなわち、
図3で説明した本実施の形態のスイッチバック動作では、
図5の比較例のスイッチバック動作よりも、用紙のスイッチバック後に次の用紙を受け入れるためにスイッチバックローラ12が正転搬送の搬送速度に到達してから当該次の用紙がスイッチバックローラ12に到達するまでの時間が長くなる。
【0068】
このため、本実施の形態では、比較例よりも、スイッチバックローラ12における用紙の受け入れのタイミングの許容範囲が拡大する。この拡大した分の時間を、紙間の短縮や、搬送装置1の下流側に接続された装置における用紙の進み、遅れの補正に利用することができる。
【0069】
以上説明したように、搬送装置1では、制御部23は、スイッチバック動作におけるスイッチバックモータ13が停止するまでの搬送の期間において、スイッチバックモータ13の回転方向に対して逆回転方向の制動トルクを加えながら所定の加速度でスイッチバックモータ13を減速させる。すなわち、制御部23は、逆転ブレーキを用いて所定の加速度でスイッチバックモータ13を減速させる。そして、制御部23は、逆転ブレーキ開始前の搬送速度およびスイッチバックモータ13の減速時の加速度に基づき、スイッチバックモータ13が停止するタイミングを算出する。
【0070】
このように、設定された搬送速度および加速度に基づきスイッチバックモータ13が停止するタイミングを算出することで、逆転ブレーキを用いたスイッチバック動作において、エンコーダ14のパルス信号に依存することなく、スイッチバックモータ13の停止タイミングを高精度で取得できる。
【0071】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0072】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0073】
(付記1)
用紙をスイッチバックするスイッチバックローラと、
前記スイッチバックローラを駆動させるモータと、
前記モータの回転角度に応じてパルス信号を出力するエンコーダと、
前記エンコーダが出力するパルス信号に基づき、前記モータの速度を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、スイッチバック動作における前記モータが停止するまでの搬送の期間において、前記モータの回転方向に対して逆回転方向の制動トルクを加えながら所定の加速度で前記モータを減速させ、前記制動トルクによる減速開始前の搬送速度および前記加速度に基づき、前記モータが停止するタイミングを算出することを特徴とする搬送装置。
【符号の説明】
【0074】
1 搬送装置
2 進入経路
3 反転経路
4 非反転経路
5 排出経路
6 フリッパ
7 ソレノイド
8 切替ゲート
9 進入ローラ
10 進入モータ
11 反転ローラ
12 スイッチバックローラ
13 スイッチバックモータ
14 エンコーダ
15 スイッチバックセンサ
16 中間ローラ
17 中間搬送モータ
18 フェイスアップローラ
19 上昇ローラ
20 上昇モータ
21 排出ローラ
22 排出モータ
23 制御部