IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168778
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】パッシブイメージング装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/89 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
G01S13/89
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080085
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 豊
(72)【発明者】
【氏名】木村 章紘
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AA02
5J070AD06
5J070AF01
5J070AG07
5J070AK40
5J070BE01
(57)【要約】
【課題】複数の対象者に対する所持品検査を並行して行うウォークスルー型の所持品検査装置として用いることができ、且つ設置スペースを小さくすることを可能とするパッシブイメージング装置を提供する。
【解決手段】パッシブイメージング装置は、6つのセンサユニット3A~3Fにより第1通路P1を移動する第1対象者T1及び第2通路P2を移動する第2対象者T2から放射された電磁波EW1、EW2を受信して信号強度を検出し、検出された信号強度に基づき第1対象者T1及び第2対象者T2についての画像を生成するように構成される。第1通路P1と第2通路P2の間に配置されたセンサユニット3A、3Bは、第1対象者T1から放射された電磁波を第1の可動ミラーを介して受信して信号強度を検出し、第2対象者T2から放射された電磁波を第2の可動ミラーを介して受信して信号強度を検出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの通路の間に配置され、一方の通路を移動する第1対象者から放射された電磁波を第1の可動ミラーを介して受信して信号強度を検出し、他方の通路を移動する第2対象者から放射された電磁波を第2の可動ミラーを介して受信して信号強度を検出するセンサユニットを含み、
前記センサユニットの検出結果に基づき、前記第1対象者についての画像及び前記第2対象者についての画像を生成する、パッシブイメージング装置。
【請求項2】
前記第1の可動ミラー及び前記第2の可動ミラーは、回転駆動される一つの可動ミラー部材に一体的に設けられている、請求項1に記載のパッシブイメージング装置。
【請求項3】
前記第1の可動ミラー及び前記第2の可動ミラーは、前記可動ミラー部材の回転軸を含む面に関して面対称に形成されている、請求項2に記載のパッシブイメージング装置。
【請求項4】
前記第1の可動ミラー及び前記第2の可動ミラーは、前記第1対象者から放射された電磁波及び前記第2対象者から放射された電磁波を透過させる電磁波透過部を有する筐体内に配置されている、請求項1に記載のパッシブイメージング装置。
【請求項5】
前記第1対象者についての画像は、前記第1対象者が不審物を所持しているか否かの判定に使用され、前記第2対象者についての画像は、前記第2対象者が不審物を所持しているか否かの判定に使用される、請求項1~4のいずれか一つに記載のパッシブイメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者から放射された電磁波を受信してその信号強度に基づいて対象者についての画像を生成するパッシブイメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パッシブイメージング装置の一例として、特許文献1には、物体から放射されたミリ波帯の熱雑音(電磁波)を受信して画像を得るミリ波パッシブイメージング装置が記載されている。パッシブイメージング装置は、低侵襲性であること、及び、隠れた物品の検知能力が高いことなどから、セキュリティ向けのボディスキャナ(所持品検査装置)などにも応用されている。
【0003】
対象者が物品を隠して所持している場合、物品のある部分は、対象者の人体から放射された電磁波が物品によって遮られて低下する。このため、物品のある部分は、物品がない部分に比べて、パッシブイメージング装置に受信される電磁波の信号強度が低くなる。よって、所持品検査装置に応用されたパッシブイメージング装置によれば、対象者の人体に対応する画像中に物品が暗いシルエットとして現れることとなり、対象者が物品を所持しているか否かを判定すること、及び、現れたシルエットの形状から物品(つまり、対象者の所持品)の種別を推定することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-36867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者らは、パッシブイメージング装置をウォークスルー型の所持品検査装置として、特に複数の対象者に対する所持品検査を並行して行えるウォークスルー型の所持品検査装置として用いることを検討している。但し、複数の対象者に対する所持品検査を並行して行うためには、対象者の人体から放射された電磁波を受信するための構成がより多く必要になることから、設置性などの面で設置スペースを小さくすることが望まれる。
【0006】
そこで、本発明は、複数の対象者に対する所持品検査を並行して行うウォークスルー型の所持品検査装置として用いることができ、且つ設置スペースを小さくすることを可能とするパッシブイメージング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によると、パッシブイメージング装置は、2つの通路の間に配置されたセンサユニットであって、一方の通路を移動する第1対象者から放射された電磁波を第1の可動ミラーを介して受信して信号強度を検出し、他方の通路を移動する第2対象者から放射された電磁波を第2の可動ミラーを介して受信して信号強度を検出するセンサユニットを含み、前記センサユニットの検出結果に基づき、前記第1対象者についての画像及び前記第2対象者についての画像を生成するように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の対象者に対する所持品検査を並行して行うウォークスルー型の所持品検査装置として用いることができ、且つ設置スペースを小さくすることを可能とするパッシブイメージング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るパッシブイメージング装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】実施形態に係るパッシブイメージング装置の要部平面図である。
図3】実施形態に係るパッシブイメージング装置が有する6つのセンサユニット(第1~第6センサユニット)の概略正面図である。
図4A】第1及び第2センサユニットの構成を説明するための模式図である。
図4B】第1及び第2センサユニットの構成を説明するための模式図である。
図5】可動ミラー部材の斜視図である。
図6A】第3及び第6センサユニットの構成を説明するための模式図である。
図6B】第3及び第6センサユニットの構成を説明するための模式図である。
図7A】第4及び第5センサユニットの構成を説明するための模式図である。
図7B】第4及び第5センサユニットの構成を説明するための模式図である。
図8】第1通路を移動する第1対象者についての画像を生成する第1画像生成処理を示すフローチャートである。
図9】第1通路を移動する第1対象者についての画像を生成する第1画像生成処理を示すフローチャートである。
図10】画像(画素)配列として保存される、受信された電磁波の信号強度の一例を示す図である。
図11】第2通路を移動する第2対象者についての画像を生成する第2画像生成処理を示すフローチャートである。
図12】第2通路を移動する第2対象者についての画像を生成する第2画像生成処理を示すフローチャートである。
図13】実施形態に係るパッシブイメージング装置の効果の一つを説明するための図である。
図14】ウォークスルー型の所持品検査装置として用いられ得るパッシブイメージング装置の基本構成例を示す要部平面図である。
図15】複数の対象者に対する所持品検査を並行して行うことのできるパッシブイメージング装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、ウォークスルー型の所持品検査装置として用いられ得るパッシブイメージング装置の基本構成について説明する。図14は、ウォークスルー型の所持品検査装置として用いられ得るパッシブイメージング装置の基本構成例を示す要部平面図である。
【0011】
図14に示されるように、所持品検査装置として用いられ得るパッシブイメージング装置は、平面視矩形状に配置された4つのセンサユニットSU1~SU4を含み得る。4つのセンサユニットSU1~SU4のそれぞれは、それらの内側を矢印方向に移動する対象者の人体から放射された電磁波を受信してその信号強度を検出するように構成される。そして、パッシブイメージング装置は、4つのセンサユニットSU1~SU4によって検出された信号強度、すなわち、対象者の人体から放射された電磁波の受信信号強度に基づいて対象者についての画像を生成し、生成された対象者についての画像を表示するように構成される。表示された対象者についての画像は、例えば、検査員等が対象者の所持品検査を行うために使用される。なお、対象者の所持品検査とは、主に対象者が不審物(主に刃物、銃、爆発物などの危険物)を所持しているか否かを判定することをいう。
【0012】
具体的には、基本構成を有するパッシブイメージング装置においては、対象者の移動に伴い、対象者の前方左側に位置するセンサユニットSU1が主に対象者の人体の正面左半分の部位から放射された電磁波を受信してその信号強度を検出し、対象者の前方右側に位置するセンサユニットSU2が主に対象者の人体の正面右半分の部位から放射された電磁波を受信してその信号強度を検出する。また、対象者の移動に伴い、対象者の後方左側に位置するセンサユニットSU3が主に対象者の人体の背面左半分の部位から放射された電磁波を受信してその信号強度を検出し、対象者の後方右側に位置するセンサユニットSU4が主に対象者の人体の背面右半分の部位から放射された電磁波を受信してその信号強度を検出する。そして、パッシブイメージング装置は、対象者の前方に位置する2つのセンサユニットSU1、SU2によって検出された信号強度に基づいて対象者の正面側画像を生成し、対象者の後方に位置する2つのセンサユニットSU3、SU4によって検出された信号強度に基づいて対象者の背面側画像を生成し、生成された対象者の正面側画像及び背面側画像を対象者についての画像として表示部などに表示するように構成される。
【0013】
ここで、図15に示されるように、図14に示された基本構成を有するパッシブイメージング装置を複数(ここでは2つ)並べて配置することにより、複数(ここでは二人)の対象者に対する所持品検査を並行して行うことのできるパッシブイメージング装置が構成され得る。但し、基本構成を有するパッシブイメージング装置が並べられると、センサユニットが占めるスペースの割合が増加し、その分、より広い設置スペースが必要になる。より広いスペースが必要になると、設置場所が制限されたり、並行して所持品検査を行うことのできる対象者の人数が制限されたりするおそれがある。このため、設置スペースをできるだけ小さくすることが望まれる。
【0014】
この点に関し、本発明によるパッシブイメージング装置では、以下に説明するような構成を採用することにより、複数の対象者に対する所持品検査を並行して行うことを可能としつつ、設置スペースの低減を図っている。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るパッシブイメージング装置1の概略構成を示すブロック図であり、図2は、本発明の実施形態に係るパッシブイメージング装置1の要部平面図である。
【0016】
実施形態に係るパッシブイメージング装置1は、並列した2つの通路のそれぞれを歩行で移動する対象者、すなわち、二人の対象者から放射された電磁波を受信してその信号強度を検出し、検出された信号強度に基づいて二人の対象者のそれぞれについての画像を生成し、生成された画像を表示することが可能に構成されている。
【0017】
具体的には、パッシブイメージング装置1は、2つの通路のうちの一方の通路である第1通路P1を矢印方向に移動する対象者(以下「第1対象者T1」という)の人体から放射された電磁波EW1を受信してその信号強度を検出し、検出された信号強度、つまり、第1対象者T1の人体から放射された電磁波EW1の受信信号強度に基づいて第1対象者T1についての画像を生成するように構成されている。
【0018】
また、パッシブイメージング装置1は、2つの通路のうちの他方の通路である第2通路P2を矢印方向に移動する対象者(以下「第2対象者T2」という)の人体から放射された電磁波EW2を受信してその信号強度を検出し、検出された信号強度、つまり、第2対象者T2の人体から放射された電磁波EW2の受信信号強度に基づいて第2対象者T2についての画像を生成するように構成されている。
【0019】
そして、パッシブイメージング装置1は、主に検査員等が第1対象者T1及び第2対象者T2の所持品検査を行うため、生成された第1対象者T1についての画像及び第2対象者T2についての画像を表示するように構成されている。
【0020】
なお、以下の説明において、「前」、「後」、「左」、及び「右」とは、主に対象者を基準とした(対象者から見た)方向のことをいう。また、本実施形態において、第1通路P1における第1対象者T1の移動方向と第2通路P2における第2対象者T2の移動方向とは同じであるので、これらをまとめて「対象者の移動方向」という。
【0021】
図1を参照すると、実施形態に係るパッシブイメージング装置1は、6つのセンサユニット(第1~第6センサユニット3A~3F)と、処理部5と、表示部7とを含む。
【0022】
図2を参照すると、6つのセンサユニット(第1~第6センサユニット3A~3F)のうち、第1センサユニット3A及び第2センサユニット3Bは、第1通路P1と、第1通路P1の右側に間隔をあけて設けられた第2通路P2との間に配置されている。換言すれば、第1センサユニット3A及び第2センサユニット3Bは、第1通路P1の右側であって、且つ第2通路P2の左側に配置されている。また、第2センサユニット3Bは、対象者の移動方向における第1センサユニット3Aの後方に配置されている。
【0023】
第3センサユニット3Cは、第1通路P1を挟んで第1センサユニット3Aとは反対側に配置され、第4センサユニット3Dは、第1通路P1を挟んで第2センサユニット3Bとは反対側に配置されている。つまり、第3センサユニット3C及び第4センサユニット3Dは、第1通路P1の左側に配置されている。また、第4センサユニット3Dは、対象者の移動方向における第3センサユニット3Cの後方に配置されている。
【0024】
第5センサユニット3Eは、第2通路P2を挟んで第1センサユニット3Aとは反対側に配置され、第6センサユニット3Fは、第2通路P2を挟んで第2センサユニット3Bとは反対側に配置されている。つまり、第5センサユニット3E及び第6センサユニット3Fは、第2通路P2の右側に配置されている。また、第6センサユニット3Fは、対象者の移動方向における第5センサユニット3Eの後方に配置されている。
【0025】
特に限定されないが、本実施形態において、第1~第6センサユニット3A~3Fは、概ね同じ外観形状を有している。図3は、第1~第6センサユニット3A~3Fの概略正面図である。
【0026】
図3を参照すると、第1~第6センサユニット3A~3Fは、それぞれ筐体(ハウジング)30を有している。筐体30の正面(前面)には、電磁波を透過させる電磁波透過部31が設けられている。電磁波透過部31は、第1通路P1を移動する第1対象者T1の人体から放射された電磁波EW1及び/又は第2通路P2を移動する第2対象者T2の人体から放射された電磁波EW2を透過させる部位である。電磁波透過部31は、所定の大きさを有し、筐体30の正面(前面)における上下方向の中間位置に配置されている。なお、電磁波透過部31は、筐体30の両側面まで延びていてもよい。
【0027】
また、特に限定されないが、本実施形態において、第1センサユニット3Aと第2センサユニット3Bとは同じ構成を有しており、第3センサユニット3Cと第6センサユニット3Fとは同じ構成を有しており、第4センサユニット3Dと第5センサユニット3Eとは同じ構成を有している。
【0028】
図4A図4Bは、第1センサユニット3A及び第2センサユニット3Bの構成を説明するための模式図である。図4Aは、第1センサユニット3A(第2センサユニット3B)の筐体30の内部を上方から見た状態を示し、図4Bは、第1センサユニット3A(第2センサユニット3B)の筐体30の内部を正面側(前方)から見た状態を示している。
【0029】
図4A図4Bを参照すると、第1センサユニット3A及び第2センサユニット3Bのそれぞれは、筐体30内に、可動ミラー部材41と、第1集光ミラー42Aと、第2集光ミラー42Bと、第1受信アンテナ43Aと、第2受信アンテナ43Bと、第1信号強度検出部44Aと、第2信号強度検出部44Bとを有する。
【0030】
可動ミラー部材41は、対象者の移動方向に平行な回転軸X1回りに回転可能に構成されており、図示省略の電動モータなどによって駆動されて回転する。図5は、可動ミラー部材41の斜視図である。図4A図4B及び図5に示されるように、可動ミラー部材41は、第1ミラー面41Aと第2ミラー面41Bとを有する。第1ミラー面41A及び第2ミラー面41Bは、可動ミラー部材41に一体的に形成されており、可動ミラー部材41と共に回転する。よって、以下では、第1ミラー面41Aを「第1可動ミラー41A」といい、第2ミラー面41Bを「第2可動ミラー41B」という。本実施形態において、第1可動ミラー41Aと第2可動ミラー41Bとは、可動ミラー部材41の回転軸X1を含む面に関して面対称に形成されている。
【0031】
可動ミラー部材41は、筐体30の外部から電磁波透過部31を介して第1可動ミラー41Aに入射する電磁波を第1集光ミラー42Aに向けて反射(走査)し、及び、筐体30の外部から電磁波透過部31を介して第2可動ミラー41Bに入射する電磁波を第2集光ミラー42Bに向けて反射(走査)するように構成されている。
【0032】
第1集光ミラー42Aは、可動ミラー部材41の第1可動ミラー41Aによって反射(走査)された電磁波を第1受信アンテナ43Aに集光させ、第1受信アンテナ43Aは、第1集光ミラー42Aによって集光された電磁波を受信する。そして、第1信号強度検出部44Aは、第1受信アンテナ43Aによって受信された電磁波の信号強度を検出するように構成されている。
【0033】
第2集光ミラー42Bは、可動ミラー部材41の第2可動ミラー41Bによって反射(走査)された電磁波を第2受信アンテナ43Bに集光させ、第2受信アンテナ43Bは、第2集光ミラー42Bによって集光された電磁波を受信する。そして、第2信号強度検出部44Bは、第2受信アンテナ43Bによって受信された電磁波の信号強度を検出するように構成されている。
【0034】
また、第1センサユニット3A及び第2センサユニット3Bのそれぞれには、可動ミラー部材41の回転角度、さらに言えば、第1可動ミラー41Aのミラー角度及び第2可動ミラー41Bのミラー角度を検出するための角度検出センサ45が設けられている。
【0035】
本実施形態において、第1センサユニット3Aは、第1通路P1と第2通路P2との間に、正面が対象者の移動方向における後方側を向くように配置されている。そして、第1センサユニット3Aは、第1通路P1を移動する第1対象者T1の人体の正面右半分の部位から放射され且つ電磁波透過部31を透過した電磁波EW1を、可動ミラー部材41の第1可動ミラー41Aを介して受信し、その信号強度を第1信号強度検出部44Aによって検出するように構成されている。また、第1センサユニット3Aは、第2通路P2を移動する第2対象者T2の人体の正面左半分の部位から放射され且つ電磁波透過部31を透過した電磁波EW2を、可動ミラー部材41の第2可動ミラー41Bを介して受信し、その信号強度を第2信号強度検出部44Bにより検出するように構成されている。
【0036】
第1センサユニット3Aの第1信号強度検出部44Aによって検出された信号強度、つまり、第1通路P1を移動する第1対象者T1の人体の正面右半分の部位から放射された電磁波EW1の受信信号強度と、第1センサユニット3Aの第2信号強度検出部44Bによって検出された信号強度、つまり、第2通路P2を移動する第2対象者T2の人体の正面左半分の部位から放射された電磁波EW2の受信信号強度とは、第1センサユニット3Aの検出結果として処理部5に出力される。
【0037】
本実施形態において、第2センサユニット3Bは、第1通路P1と第2通路P2との間に、正面が対象者の移動方向における前方側を向くように配置されている。つまり、第1センサユニット3Aと第2センサユニット3Bとは、第1通路P1と第2通路P2との間において、互いに向かい合うように配置される。そして、第2センサユニット3Bは、第1通路P1を移動する第1対象者T1の人体の背面右半分の部位から放射され且つ電磁波透過部31を透過した電磁波EW1を、可動ミラー部材41の第2可動ミラー41Bを介して受信し、その信号強度を第2信号強度検出部44Bによって検出するように構成されている。また、第2センサユニット3Bは、第2通路P2を移動する第2対象者T2の人体の背面左半分の部位から放射され且つ電磁波透過部31を透過した電磁波EW2を、可動ミラー部材41の第1可動ミラー41Aを介して受信し、その信号強度を第1信号強度検出部44Aによって検出するように構成されている。
【0038】
第2センサユニット3Bの第2信号強度検出部44Bによって検出された信号強度、つまり、第1通路P1を移動する第1対象者T1の人体の背面右半分の部位から放射された電磁波EW1の受信信号強度と、第2センサユニット3Bの第1信号強度検出部44Aによって検出された信号強度、つまり、第2通路P2を移動する第2対象者T2の人体の背面左半分の部位から放射された電磁EW2波の受信信号強度とは、第2センサユニット3Bの検出結果として処理部5に出力される。
【0039】
図6A図6Bは、第3センサユニット3C及び第6センサユニット3Fの構成を説明するための模式図である。図6Aは、第3センサユニット3C(第6センサユニット3F)の筐体30の内部を正面側(前方)から見た状態を示し、図6Bは、第3センサユニット3C(第6センサユニット3F)の筐体30の内部を上方から見た状態を示している。
【0040】
図6A図6Bを参照すると、第3センサユニット3C及び第6センサユニット3Fのそれぞれは、筐体30内に、可動ミラー部材51と、集光ミラー52と、受信アンテナ53と、信号強度検出部54とを有する。
【0041】
第3センサユニット3C(第6センサユニット3F)の可動ミラー部材51、集光ミラー52、受信アンテナ53及び信号強度検出部54は、第1センサユニット3A(第2センサユニット3B)の可動ミラー部材41、第2集光ミラー42B、第2受信アンテナ43B及び第2信号強度検出部44Bに相当する。つまり、第3センサユニット3C及び第6センサユニット3Fは、第1センサユニット3A(第2センサユニット3B)から第1集光ミラー42A、第1受信アンテナ43A及び第1信号強度検出部44Aが取り除かれた構成を有している。
【0042】
第3センサユニット3C(第6センサユニット3F)の可動ミラー部材51は、第1センサユニット3A(第2センサユニット3B)の可動ミラー部材41と同様の形状を有している。すなわち、可動ミラー部材51は、対象者の移動方向に平行な回転軸X2回りに回転可能に構成され、回転軸X2を含む面に介して面対称に形成された第1可動ミラー51A及び第2可動ミラー51Bを有する。本実施形態において、第3センサユニット3C(第6センサユニット3F)の可動ミラー部材51は、筐体30の外部から電磁波透過部31を透過して第2可動ミラー51Bに入射する電磁波を集光ミラー52に向けて反射(走査)する。
【0043】
集光ミラー52は、可動ミラー部材51の第2可動ミラー51Bによって反射(走査)された電磁波を受信アンテナ53に集光させ、受信アンテナ53は、集光ミラー52によって集光された電磁波を受信する。そして、信号強度検出部54は、受信アンテナ53によって受信された電磁波の信号強度を検出するように構成されている。
【0044】
また、第3センサユニット3C及び第6センサユニット3Fのそれぞれには、可動ミラー部材51の回転角度、さらに言えば、第2可動ミラー51Bのミラー角度を検出するための角度検出センサ55が設けられている。
【0045】
本実施形態において、第3センサユニット3Cは、第1通路P1の左側に、正面が対象者の移動方向における後方側を向くように配置されている。そして、第3センサユニット3Cは、第1通路P1を移動する第1対象者T1の人体の正面左半分の部位から放射され且つ電磁波透過部31を透過した電磁波EW1を、可動ミラー部材51の第2可動ミラー51Bを介して受信し、その信号強度を信号強度検出部54によって検出するように構成されている。
【0046】
第3センサユニット3Cの信号強度検出部54によって検出された信号強度、つまり、第1通路P1を移動する第1対象者T1の人体の正面左半分の部位から放射された電磁波EW1の受信信号強度は、第3センサユニット3Cの検出結果として処理部5に出力される。
【0047】
本実施形態において、第6センサユニット3Fは、第2通路P2の右側に、正面が対象者の移動方向における前方側を向くように配置されている。そして、第6センサユニット3Fは、第2通路P2を移動する第2対象者T2の人体の背面右半分の部位から放射され且つ電磁波透過部31を透過した電磁波EW2を、可動ミラー部材51の第2可動ミラー51Bを介して受信し、その信号強度を信号強度検出部54により検出するように構成されている。
【0048】
第6センサユニット3Fの信号強度検出部54によって検出された信号強度、つまり、第2通路P2を移動する第2対象者T2の人体の背面右半分の部位から放射された電磁波EW2の受信信号強度は、第6センサユニット3Fの検出結果として処理部5に出力される。
【0049】
なお、第1センサユニット3A(第2センサユニット3B)が第3センサユニット3C及び/又は第6センサユニット3Fとして用いられてもよい。この場合、第1センサユニット3A(第2センサユニット3B)は、第1信号強度検出部44Aの機能が停止された状態で第3センサユニット3C及び/又は第6センサユニット3Fとして用いられるのが好ましい。
【0050】
図7A図7Bは、第4センサユニット3D及び第5センサユニット3Eの構成を説明するための模式図である。図7Aは、第4センサユニット3D(第5センサユニット3E)の筐体30の内部を正面側(前方)から見た状態を示し、図7Bは、第4センサユニット3D(第5センサユニット3E)の筐体30の内部を上方から見た状態を示している。
【0051】
図7A図7Bを参照すると、第4センサユニット3D及び第5センサユニット3Eのそれぞれは、筐体30内に、可動ミラー部材61と、集光ミラー62と、受信アンテナ63と、信号強度検出部64とを有する。
【0052】
第4センサユニット3D(第5センサユニット3E)の可動ミラー部材61、集光ミラー62、受信アンテナ63及び信号強度検出部64は、第1センサユニット3A(第2センサユニット3B)の可動ミラー部材41、第1集光ミラー42A、第1受信アンテナ43A及び第1信号強度検出部44Aに相当する。つまり、第4センサユニット3D及び第5センサユニット3Eは、第1センサユニット3A(第2センサユニット3B)から第2集光ミラー42B、第2受信アンテナ43B及び第2信号強度検出部44Bが取り除かれた構成を有している。
【0053】
第4センサユニット3D(第5センサユニット3E)の可動ミラー部材61は、第1センサユニット3A(第2センサユニット3B)の可動ミラー部材41と同様の形状を有する。すなわち、可動ミラー部材61は、対象者の移動方向に平行な回転軸X3回りに回転可能に構成され、回転軸X3を含む面に関して面対称に形成された第1可動ミラー61A及び第2可動ミラー61Bを有する。本実施形態において、第4センサユニット3D(第5センサユニット3E)の可動ミラー部材61は、筐体30の外部から電磁波透過部31を透過して第1可動ミラー61Aに入射する電磁波を集光ミラー62に向けて反射(走査)する。
【0054】
集光ミラー62は、可動ミラー部材61の第1可動ミラー61Aによって反射(走査)された電磁波を受信アンテナ63に集光させ、受信アンテナ63は、集光ミラー62によって集光された電磁波を受信する。そして、信号強度検出部64は、受信アンテナ63によって受信された電磁波の信号強度を検出するように構成されている。
【0055】
また、第4センサユニット3D及び第5センサユニット3Eのそれぞれには、可動ミラー部材61の回転角度、さらに言えば、第1可動ミラー61Aのミラー角度を検出するための角度検出センサ65が設けられている。
【0056】
本実施形態において、第4センサユニット3Dは、第1通路P1の左側に、正面が対象者の移動方向における前方側を向くように配置される。つまり、第3センサユニット3Cと第4センサユニット3Dとは、第1通路P1の左側において、互いに向かい合うように配置される。そして、第4センサユニット3Dは、第1通路P1を移動する第1対象者T1の人体の背面左半分の部位から放射され且つ電磁波透過部31を透過した電磁波EW1を、可動ミラー部材61の第1可動ミラー61Aを介して受信し、その信号強度を信号強度検出部64によって検出するように構成されている。
【0057】
第4センサユニット3Dの信号強度検出部64によって検出された信号強度、つまり、第1通路P1を移動する第1対象者T1の人体の背面左半分の部位から放射された電磁波EW1の受信信号強度は、第4センサユニット3Dの検出結果として処理部5に出力される。
【0058】
本実施形態において、第5センサユニット3Eは、第2通路P2の右側に、正面が対象者の移動方向における後方側を向くように配置される。つまり、第5センサユニット3Eと第6センサユニット3Fとは、第2通路P2の右側において、互いに向かい合うように配置される。そして、第5センサユニット3Eは、第2通路P2を移動する第2対象者T2の人体の正面右半分の部位から放射され且つ電磁波透過部31を透過した電磁波EW2を、可動ミラー部材61の第1可動ミラー61Aを介して受信し、その信号強度を信号強度検出部64によって検出するように構成されている。
【0059】
第5センサユニット3Eの信号強度検出部64によって検出された信号強度、つまり、第2通路P2を移動する第2対象者T2の人体の正面右半分の部位から放射された電磁波EW2の受信信号強度は、第5センサユニット3Eの検出結果として処理部5に出力される。
【0060】
なお、第1センサユニット3A(第2センサユニット3B)が第4センサユニット3D及び/又は第5センサユニット3Eとして用いられてもよい。この場合、第1センサユニット3A(第2センサユニット3B)は、第2信号強度検出部44Bの機能が停止された状態で第4センサユニット3D及び/又は第5センサユニット3Eとして用いられるのが好ましい。
【0061】
再び図2を参照すると、本実施形態において、第2センサユニット3B及び第4センサユニット3Dには、第1対象者T1が第1~第4センサユニット3A~3Dに囲まれた第1検査領域A1に進入したことを検知するための第1進入検知センサ71が設けられ、第1センサユニット3A及び第3センサユニット3Cには、第1対象者T1が第1検査領域A1から進出したことを検知するための第1進出検知センサ72が設けられている。第1進入検知センサ71は、例えば透過型光学センサからなり、第4センサユニット3D側の投光素子71Aと第2センサユニット3B側の受光素子71Bとを含む。同様に、第1進出検知センサ72は、例えば透過型光学センサからなり、第3センサユニット3C側の投光素子72Aと第1センサユニット3A側の受光素子72Bとを含む。
【0062】
また、第2センサユニット3B及び第6センサユニット3Fには、第2対象者T2が第1センサユニット3A、第2センサユニット3B、第5センサユニット3E及び第6センサユニット3Fに囲まれた第2検査領域A2に進入したことを検知するための第2進入検知センサ73が設けられ、第1センサユニット3A及び第5センサユニット3Eには、第2対象者T2が第2検査領域A2から進出したことを検知するための第2進出検知センサ74が設けられている。第2進入検知センサ73は、例えば透過型光学センサからなり、第6センサユニット3F側の投光素子73Aと第2センサユニット3B側の受光素子73Bとを含む。同様に、第2進出検知センサ74は、例えば透過型光学センサからなり、第5センサユニット3E側の投光素子74Aと第1センサユニット3A側の受光素子74Bとを含む。
【0063】
処理部5は、第1~第6センサユニット3A~3Fのそれぞれの検出結果を入力する。そして、処理部5は、第1センサユニット3Aの検出結果のうちの第1信号強度検出部44Aによって検出された信号強度と、第3センサユニット3Cの検出結果とに基づいて第1対象者T1の正面側画像を生成し、第2センサユニット3Bの検出結果のうちの第2信号強度検出部44Bによって検出された信号強度と、第4センサユニット3Dの検出結果とに基づいて第1対象者T1の背面側画像を生成する。
【0064】
また、処理部5は、第1センサユニット3Aの検出結果のうちの第2信号強度検出部44Bによって検出された信号強度と、第5センサユニット3Eの検出結果とに基づいて第2対象者T2の正面側画像を生成し、第2センサユニット3Bの検出結果のうちの第1信号強度検出部44Aによって検出された信号強度と、第6センサユニット3Fの検出結果とに基づいて第2対象者T2の背面側画像を生成する。
【0065】
処理部5で生成された画像、すなわち、第1対象者T1の正面側画像、第1対象者T1の背面側画像、第2対象者T2の正面側画像及び第2対象者T2の背面側画像は、表示部7に表示される。そして、検査員等は、表示された第1対象者T1についての画像(第1対象者T1の正面側画像及び背面側画像)に基づいて第1対象者T1が不審物を所持しているか否かを判定し、及び、表示された第2対象者T2についての画像(第2対象者T1の正面側画像及び背面側画像)に基づいて第2対象者T2が不審物を所持しているか否かを判定する。
【0066】
次に、図8図12を参照してパッシブイメージング装置1の動作の一例を説明する。なお、以下の説明において、第1~第6センサユニット3A~3Fは、それぞれの可動ミラー部材41、51、61が回転しており、電磁波の受信及び受信された電磁波の信号強度の検出が可能な状態になっているものとする。
【0067】
図8図9は、第1通路P1を移動する第1対象者T1についての画像を生成する第1画像生成処理を示すフローチャートである。
【0068】
ステップS1において、パッシブイメージング装置1は、第1検査領域A1に第1対象者T1が進入したか否かを判定する。この判定は、第1進入検知センサ71の出力信号に基づいて行われる。パッシブイメージング装置1は、第1検査領域A1に第1対象者T1が進入すると(ステップS1;YES)、ステップS2に進む。
【0069】
ステップS2において、パッシブイメージング装置1は、第1通路P1を移動する第1対象者T1の人体から放射される電磁波EW1を受信するため、第1~第4センサユニット3A~3Dを電磁波の受信待機状態とする。
【0070】
ステップS3~S8において、パッシブイメージング装置1は、第1~第4センサユニット3A~3Dにより、第1通路P1を移動する第1対象者T1の人体から放射された電磁波EW1の受信信号強度を検出する。
【0071】
具体的には、ステップS3~S8において、第1センサユニット3Aでは、第1信号強度検出部44Aが、可動ミラー部材41の第1可動ミラー41Aのミラー角度が設定範囲の下限から上限まで変化する間、所定角度毎(下限、下限+1、下限+2、・・・、上限-1、上限)に受信される電磁波の信号強度SIを検出する。第1センサユニット3Aの第1信号強度検出部44Aによって検出される信号強度SIは、第1対象者T1の人体の正面右半分の部位から放射された電磁波EW1の受信信号強度である。
【0072】
また、ステップS3~S8において、第2センサユニット3Bでは、第2信号強度検出部44Bが、可動ミラー部材41の第2可動ミラー41Bのミラー角度が設定範囲の下限から上限まで変化する間、所定角度毎に受信される電磁波の信号強度SIを検出する。第2センサユニット3Bの第2信号強度検出部44Bによって検出される信号強度SIは、第1対象者T1の人体の背面右半分の部位から放射された電磁波EW1の受信信号強度である。
【0073】
また、ステップS3~S8において、第3センサユニット3Cでは、信号強度検出部54が、可動ミラー部材51の第2可動ミラー51Bのミラー角度が設定範囲の下限から上限まで変化する間、所定角度毎に受信される電磁波の信号強度SIを検出する。第3センサユニット3Cの信号強度検出部54によって検出される信号強度SIは、第1対象者T1の人体の正面左半分の部位から放射された電磁波EW1の受信信号強度である。
【0074】
また、ステップS3~S8において、第4センサユニット3Dでは、信号強度検出部64が、可動ミラー部材61の第1可動ミラー61Aのミラー角度が設定範囲の下限から上限まで変化する間、所定角度毎に受信される電磁波の信号強度SIを検出する。第4センサユニット3Dの信号強度検出部64によって検出される信号強度SIは、第1対象者T1の人体の背面左半分の部位から放射された電磁EW1波の受信信号強度である。
【0075】
なお、ミラー角度の設定範囲(ミラー角度の下限~上限)及び所定角度は、所持品検査の対象となる人体の範囲や生成される画像の画素数などに応じて任意に設定可能である。本実施形態において、これらは第1~第6センサユニット3A~3Fで共通である。
【0076】
ステップS9において、パッシブイメージング装置1は、第1~第4センサユニット3A~3Dのそれぞれにおいて、ステップS3~ステップS8で検出された信号強度SIを画像(画素)配列の現在時刻の列に保存する。このステップS9の処理は、処理部5によって実施される。
【0077】
ステップS10において、パッシブイメージング装置1は、第1検査領域A1から第1対象者T1が進出したか否かを判定する。この判定は、第1進出検知センサ72の出力信号に基づいて行われる。第1検査領域A1から第1対象者T1が進出していない場合(ステップS10:NO)、パッシブイメージング装置1は、ステップS3に戻り、ステップS3~ステップS9の処理を繰り返す。
【0078】
これにより、第1~第4センサユニット3A~3Dのそれぞれにおいて、所定角度毎に受信される電磁波の信号強度SIの検出が継続され、所定角度毎に受信された電磁波の信号強度SIが画像(画素)配列の異なる時刻の列に保存されることになる。
【0079】
図10は、ステップS9で画像(画素)配列として保存される、所定角度毎(下限、下限+1、下限+2、・・・、上限-1、上限)に受信された電磁波の信号強度SIの一例を示している。図10に示される例においては、所定角度毎に受信された電磁波の信号強度SIが現在時刻tの列に保存される際、現在時刻に対して所定時間前の時刻「t-1」の列と、さらに所定時間前の時刻「t-2」の列には、それらの時刻において所定角度毎に受信された電磁波の信号強度SIがすでに保存されている。また、現在時刻に対して所定時間後の時刻「t+1」の列、さらにその所定時間後の「t+2」の列、・・・「t+n」の列には、それらの時刻において所定角度毎に受信される電磁波の信号強度SIが保存され得る。なお、前記画像(画素)配列の異なる時刻に保存された又は保存される電磁波の信号強度SIは、第1対象者T1の移動に伴い、第1対象者T1の人体の左右方向における異なる部位から放射された又は放射される電磁波の受信信号強度である。
【0080】
他方、第1検査領域A1から第1対象者T1が進出した場合には(ステップS10;YES)、パッシブイメージング装置1は、ステップS11に進む。
【0081】
ステップS11おいて、パッシブイメージング装置1は、前記画像(画素)配列に保存されている信号強度SIに基づいて第1対象者T1についての画像を生成する。このステップS11の処理(第1対象者T1についての画像の生成)は、処理部5によって実施される。
【0082】
具体的には、パッシブイメージング装置1(の処理部5)は、第1センサユニット3Aの第1信号強度検出部44Aによって検出された信号強度SIに基づいて第1対象者T1の正面右半分の画像を生成し、第3センサユニット3Cの信号強度検出部54によって検出された信号強度SIに基づいて第1対象者T1の正面左半分の画像を生成する。好ましくは、パッシブイメージング装置1は、第1センサユニット3Aの第1信号強度検出部44Aによって検出された信号強度SIを増幅し、増幅された信号強度SIに基づいて第1対象者T1の正面右半分の画像を生成し、第3センサユニット3Cの信号強度検出部54によって検出された信号強度SIを増幅し、増幅された信号強度SIに基づいて第1対象者T1の正面左半分の画像を生成する。そして、パッシブイメージング装置1は、生成された正面右半分の画像と正面左半分の画像とを合成(合体)して第1対象者T1の正面側画像を生成する。
【0083】
また、パッシブイメージング装置1は、第2センサユニット3Bの第2信号強度検出部44Bによって検出された信号強度SIに基づいて第1対象者T1の背面右半分の画像を生成し、第4センサユニット3Dの信号強度検出部64によって検出された信号強度SIに基づいて第1対象者T1の背面左半分の画像を生成する。好ましくは、パッシブイメージング装置1は、第2センサユニット3Bの第2信号強度検出部44Bによって検出された信号強度SIを増幅し、増幅された信号強度SIに基づいて第1対象者T1の背面右半分の画像を生成し、第4センサユニット3Dの信号強度検出部64によって検出された信号強度SIを増幅し、増幅された信号強度SIに基づいて第1対象者T1の背面左半分の画像を生成する。そして、パッシブイメージング装置1は、生成された背面右半分の画像と背面左半分の画像とを合成(合体)して第1対象者T1の背面側画像を生成する。
【0084】
ステップS12において、パッシブイメージング装置1は、ステップS11で生成された第1対象者T1の正面側画像及び背面側画像を表示部7に表示する。表示された第1対象者T1の正面側画像及び背面側画像は、第1対象者T1が不審物を所持しているか否かの判定に使用される。そして、第1対象者T1の正面側画像及び背面側画像を表示部7に表示すると、パッシブイメージング装置1は、本フローを終了する。
【0085】
図11図12は、第2通路P2を移動する第2対象者T2についての画像を生成する第2画像生成処理を示すフローチャートである。
【0086】
ステップS21において、パッシブイメージング装置1は、第2検査領域A2に第2対象者T2が進入したか否かを判定する。この判定は、第2進入検知センサ73の出力信号に基づいて行われる。パッシブイメージング装置1は、第2対象者T2が第2検査領域A2に進入すると(ステップS21;YES)、ステップS22に進む。
【0087】
ステップS22において、パッシブイメージング装置1は、第2通路P2を移動する第2対象者T2の人体から放射される電磁波を受信するために、第1、第2、第5及び第6センサユニット3A、3B、3E、3Fを電磁波の受信待機状態とする。
【0088】
ステップS23~S28において、パッシブイメージング装置1は、第1、第2、第5及び第6センサユニット3A、3B、3E、3Fにより、第2通路P2を移動する第2対象者T2の人体から放射される電磁波EW2の受信信号強度を検出する。
【0089】
具体的には、ステップS23~S28において、第1センサユニット3Aでは、第2信号強度検出部44Bが、可動ミラー部材41の第2可動ミラー41Bのミラー角度が設定範囲の下限から上限まで変化する間、所定角度毎(下限、下限+1、下限+2、・・・上限-1、上限)に受信される電磁波の信号強度SIを検出する。第1センサユニット3Aの第2信号強度検出部44Bによって検出された信号強度SIは、第2対象者T2の人体の正面左半分の部位から放射された電磁波EW2の受信信号強度である。
【0090】
また、ステップS23~S28において、第2センサユニット3Bでは、第1信号強度検出部44Aが、可動ミラー部材41の第1可動ミラー41Aのミラー角度が設定範囲の下限から上限まで変化する間、所定角度毎に受信される電磁波の信号強度SIを検出する。第2センサユニット3Bの第1信号強度検出部44Aによって検出される信号強度SIは、第2対象者T2の人体の背面左半分の部位から放射された電磁波EW2の受信信号強度である。
【0091】
また、ステップS23~S28において、第5センサユニット3Eでは、信号強度検出部64が、可動ミラー部材61の第1可動ミラー61Aのミラー角度が設定範囲の下限から上限まで変化する間、所定角度毎に受信される電磁波の信号強度SIを検出する。第5センサユニット3Eの信号強度検出部64によって検出される信号強度SIは、第2対象者T2の人体の正面右半分の部位から放射された電磁波EW2の受信信号強度である。
【0092】
また、ステップS23~S28において、第6センサユニット3Fでは、信号強度検出部54が、可動ミラー部材51の第2可動ミラー51Bのミラー角度が設定範囲の下限から上限まで変化する間、所定角度毎に受信される電磁波の信号強度SIを検出する。第6センサユニット3Fの信号強度検出部54によって検出される信号強度SIは、第2対象者T2の人体の背面右半分の部位から放射された電磁波EW2の受信信号強度である。
【0093】
ステップS29において、パッシブイメージング装置1は、第1、第2、第5及び第6センサユニット3A、3B、3E、3Fのそれぞれにおいて、ステップS23~ステップS28で検出された信号強度SIを画像(画素)配列の現在時刻の列に保存する。このステップS29の処理は、処理部5によって実施される。
【0094】
ステップS30において、パッシブイメージング装置1は、第2検査領域A2から第2対象者T2が進出したか否かを判定する。この判定は、第2進出検知センサ74の出力信号に基づいて行われる。第2検査領域A2から第2対象者T2が進出していない場合(ステップS30:NO)、パッシブイメージング装置1は、ステップS23に戻り、ステップS23~ステップS29の処理を繰り返す。
【0095】
これにより、第1、第2、第5及び第6センサユニット3A、3B、3E、3Fのそれぞれにおいて、所定角度毎に受信される電磁波の信号強度SIの検出が継続され、所定角度毎に受信された電磁波の信号強度SIが画像(画素)配列の異なる時刻の列に保存されることになる。なお、ステップS29で保存される、所定角度毎に受信された電磁波の信号強度SIは、前記第1画像生成処理の場合と同様であるので説明を省略する。
【0096】
他方、第2検査領域A2から第2対象者T2が進出した場合には(ステップS30;YES)、パッシブイメージング装置1は、ステップS31に進む。
【0097】
ステップS31おいて、パッシブイメージング装置1は、前記画像(画素)配列に保存されている信号強度SIに基づいて第2対象者T2についての画像を生成する。このステップS31の処理(第2対象者T2についての画像の生成)は、処理部5によって実施される。
【0098】
具体的には、パッシブイメージング装置1(の処理部5)は、第1センサユニット3Aの第2信号強度検出部44Bによって検出された信号強度SIに基づいて第2対象者T2の正面左半分の画像を生成し、第5センサユニット3Eの信号強度検出部64によって検出された信号強度SIに基づいて第2対象者T2の正面右半分の画像を生成する。好ましくは、パッシブイメージング装置1は、第1センサユニット3Aの第2信号強度検出部44Bによって検出された信号強度SIを増幅し、増幅された信号強度SIに基づいて第2対象者T2の正面左半分の画像を生成し、第5センサユニット3Eの信号強度検出部64によって検出された信号強度SIを増幅し、増幅された信号強度SIに基づいて第2対象者T2の正面右半分の画像を生成する。そして、パッシブイメージング装置1は、生成された正面左半分の画像と正面右半分の画像とを合成(合体)して第2対象者T2の正面側画像を生成する。
【0099】
また、パッシブイメージング装置1は、第2センサユニット3Bの第1信号強度検出部44Aによって検出された信号強度SIに基づいて第2対象者T2の背面左半分の画像を生成し、第6センサユニット3Fの信号強度検出部54によって検出された信号強度SIに基づいて第2対象者T2の背面右半分の画像を生成する。好ましくは、パッシブイメージング装置1は、第2センサユニット3Bの第1信号強度検出部44Aによって検出された信号強度SIを増幅し、増幅された信号強度SIに基づいて第2対象者T2の背面左半分の画像を生成し、第6センサユニット3Fの信号強度検出部54によって検出された信号強度SIを増幅し、増幅された信号強度SIに基づいて第2対象者T2の背面右半分の画像を生成する。そして、パッシブイメージング装置1は、生成された背面左半分の画像と背面右半分の画像とを合成(合体)して第2対象者T2の背面側画像を生成する。
【0100】
ステップS32において、パッシブイメージング装置1は、ステップS31で生成された第2対象者T2の正面側画像及び背面側画像を表示部7に表示する。表示された第2対象者T2の正面側画像及び背面側画像は、第2対象者T2が不審物を所持しているか否かの判定に使用される。そして、第2対象者T2の正面側画像及び背面側画像を表示部7に表示すると、パッシブイメージング装置1は、本フローを終了する。
【0101】
実施形態に係るパッシブイメージング装置1によれば以下のような効果が得られる。
【0102】
従来のパッシブイメージング装置では、二人の対象者に対する所持品検査を並行して行う場合、図13(a)に示されるように、二人の対象者のそれぞれについての画像を生成するために8つのセンサユニットSU1~SU8が必要であった。これは、一方の対象者についての画像を生成するために一方の対象者から放射された電磁波を4つのセンサユニットSU1~SU4で受信してその信号強度を検出し、他方の対象者についての画像を生成するために他方の対象者から放射された電磁波を別の4つのセンサユニットSU5~SU8で受信してその信号強度を検出するからである。
【0103】
これに対し、実施形態に係るパッシブイメージング装置1は、第1通路P1を移動する第1対象者T1と第2通路P2を移動する第2対象者T2の両方から放射された電磁波を受信してその信号強度を検出する第1センサユニット3A及び第2センサユニット3Bを含んでおり、その結果、上述のように、6つのセンサユニット(第1~第6センサユニット3A~3F)により、第1通路P1を移動する第1対象者T1から放射された電磁波EW1を受信して信号強度を検出し、第2通路P2を移動する第2対象者T2から放射された電磁波EW2を受信して信号強度を検出し、検出された信号強度に基づいて第1対象者T1についての画像及び第2対象者T2についての画像を生成することが可能である。このため、図13(b)に示されるように、実施形態に係るパッシブイメージング装置によれば、図13(a)に示される従来の構成に比べて、設置スペースを小さくすることができる。
【0104】
なお、上述の実施形態において、パッシブイメージング装置1は、二人の対象者(第1対象者T1、第2対象者T2)についての画像を生成することで二人の対象者に対する所持品検査を並行して行うことを可能にしている。しかし、これに限られるものではない。パッシブイメージング装置1は、三人以上の対象者についての画像を生成することで三人以上の対象者に対する所持品検査を並行して行うことを可能にするように構成されてもよい。この場合、各対象者が移動する通路のうち、最も左側の通路の左側に第3センサユニット3C及び第4センサユニット3Dが配置され、最も右側に通路の右側に第5センサユニット3E及び第6センサユニット3Fが配置され、2つの通路の間のそれぞれに第1センサユニット3A及び第2センサユニット3Bが配置されればよい。
【0105】
また、上述のパッシブイメージング装置1は、第1対象者T1についての画像及び第2対象者T2についての画像を表示部7に表示し、検査員等が表示された画像に基づいて第1対象者及び第2対象者の所持品検査を行っている。しかし、これに限られるものではない。パッシブイメージング装置1は、画像処理などを用いて、第1対象者T1についての画像に基づいて第1対象者T1の所持品検査を行い、第2対象者T2についての画像に基づいて第2対象者T2の所持品検査を行うように構成されてもよい。この場合、パッシブイメージング装置1は、第1対象者T1についての画像及び第2対象者T2についての画像に代えて又は加えて、第1対象者T1の所持品検査の結果及び第2対象者T2の所持品検査の結果を表示部7に表示するように構成され得る。
【0106】
さらに、上述のパッシブイメージング装置1において、第1可動ミラー41A、51A、61Aと、第2可動ミラー41B、51B、61Bとは、一つの可動ミラー部材41、51、61に一体的に形成されている。しかし、これに限られるものではない。第1可動ミラー41A、51A、61Aと第2可動ミラー41B、51B、61Bとが別体で構成されてもよい。
【0107】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明したが、本発明は、上述の実施形態や変形例に制限されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいてさらなる変形及び変更が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0108】
1…パッシブイメージング装置、3A~3F…第1~第6センサユニット、5…処理部、7…表示部、30…筐体、31…電磁波透過部、41,51,61…可動ミラー部材、41A,51A,61A…第1可動ミラー、41B,51B,61B…第2可動ミラー、
42A…第1集光ミラー、42B…第2集光ミラー、43A…第1受信アンテナ、43B…第2受信アンテナ、44A…第1信号強度検出部、44B…第2信号強度検出部、45,55,65…角度検出センサ、52,62…集光ミラー、53,63…受信アンテナ、54,64…信号強度検出部、71…第1進入検知センサ、72…第1進出検知センサ、73…第2進入検知センサ、74…第2進出検知センサ、P1…第1通路、P2…第2通路、T1…第1対象者、T2…第2対象者
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15