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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168786
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】植物の固形食品とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20231121BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20231121BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20231121BHJP
   A61K 36/8998 20060101ALI20231121BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20231121BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20231121BHJP
   A23L 29/00 20160101ALI20231121BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20231121BHJP
【FI】
A23L33/10
A61K9/20
A61K47/02
A61K36/8998
A61P1/16
A23L33/105
A23L29/00
A23L5/00 K
A23L5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080103
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】508200090
【氏名又は名称】株式会社マテラ
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 照旺
【テーマコード(参考)】
4B018
4B035
4C076
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB03
4B018LE01
4B018MD01
4B018MD48
4B018MD94
4B018ME14
4B018MF02
4B018MF07
4B018MF08
4B035LC06
4B035LE01
4B035LG01
4B035LG31
4B035LG37
4B035LG57
4B035LK09
4B035LP02
4B035LP21
4B035LP24
4B035LP34
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC21
4C076DD21
4C076DD29
4C076FF01
4C076GG01
4C088AB73
4C088AC05
4C088BA07
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA75
(57)【要約】
【課題】保存や取り扱いに便利で、健康食品としてより好ましい物性の植物の粉砕物を錠剤に成形する。
【解決手段】植物の固形食品は、可食できる植物の粉砕物に、岩石の焼成粉末である親水性と吸水性のある多孔質粉末を混合して錠剤に成形している。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可食できる植物の粉砕物が錠剤に成形されてなる植物の固形食品であって、
植物の粉砕物に、焼成された岩石の粉末であって、親水性と吸水性のある多孔質粉末が混合されて、錠剤に打錠されてなる植物の固形食品。
【請求項2】
請求項1に記載する植物の固形食品であって、
前記多孔質粉末が火成岩の焼成粉末である植物の固形食品。
【請求項3】
請求項2に記載する植物の固形食品であって、
前記多孔質粉末が流紋岩の焼成粉末である植物の固形食品。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載する植物の固形食品であって、
前記多孔質粉末の平均粒径が0.5μm以上であって100μm以下である植物の固形食品。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載する植物の固形食品であって、
前記岩石の前記多孔質粉末の混合率が20重量%以上であって95重量%以下である植物の固形食品。
【請求項6】
可食できる植物の粉砕物が錠剤に成形されてなる植物の固形食品の製造方法であって、
岩石を焼成し、粉砕して、親水性と吸水性のある多孔質粉末とする岩石加工工程と、
可食できる植物を乾燥し、粉砕して植物の粉砕物とする植物粉砕工程と、
前記岩石加工工程で得られる多孔質粉末と、前記植物粉砕工程で得られる植物の粉砕物とを混合して混合原料とする混合工程と、
前記混合工程で得られる混合原料を錠剤に打錠する成形工程とを含む植物の固形食品の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載する植物の固形食品の製造方法であって、
前記岩石加工工程において、岩石に火成岩を使用する植物の固形食品の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載する植物の固形食品の製造方法であって、
前記岩石加工工程において、岩石に流紋岩を使用する植物の固形食品の製造方法。
【請求項9】
請求項6ないし8のいずれか一項に記載する植物の固形食品の製造方法であって、
前記成形工程において、前記混合原料を湿潤状態として打錠する植物の固形食品の製造方法。
【請求項10】
請求項6ないし8のいずれか一項に記載する植物の固形食品の製造方法であって、
前記岩石加工工程において、岩石を600℃以上で焼成する植物の固形食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可食できる植物を破砕して成形してなる植物の固形食品とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
可食できる植物を粉砕して顆粒や錠剤に成形した固形食品は開発されている。この固形食品は、種々の植物を粉砕して粉砕物とし、結合剤を添加して成形している。結合剤には種々のものが開発されている。例えば、特許文献1は、植物の粉末を乾式で打錠して錠剤とする結合剤に、睡蓮科植物であるハスの葉の荷葉粉末を使用する技術を記載する。この公報は、主原料にモロヘイヤの葉や茎、茶葉、レンコン等の野菜、マカ、寒天、ビール酵母等を単独、或いは混合した植物粉末を使用し、この植物質粉末95~40重量%に、荷葉粉末5~60重量%の割合で使用して成形している。さらに、特許文献2は、サツマイモ、エンサイ等のヒルガオ科の植物粉末に、結合剤として、アルギン酸またはその塩を加えて造粒し、次いで得られた造粒物を打錠する錠剤の製造方法が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-179591号公報
【特許文献2】特開2009-184995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
植物粉末に、結合剤としてハスの葉の粉末を添加する固形食品は、結合剤を天然材料とするので、保存や取り扱いが簡単でなく、また結合剤にアルギン酸を使用する固形食品は、アルギン酸が食物添加物として認められてはいるが、健康食品である固形食品としての目的とは関係のない不要な成分を含む欠点がある。
【0005】
本発明は、さらに以上の欠点を解消することを目的に開発されたもので、本発明の一目的は、保存や取り扱いに便利で、健康食品として好ましい物性の岩石の焼成粉末を含む植物の固形食品と、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様に係る植物の固形食品は、可食できる植物の粉砕物に、焼成された岩石の粉末であって、親水性と吸水性のある多孔質粉末を混合して錠剤に成形している。
【0007】
本発明のある態様に係る植物の固形食品の製造方法は、可食できる植物の粉砕物が錠剤に成形された植物の固形食品の製造方法であって、岩石を焼成し、粉砕して、親水性と吸水性のある多孔質粉末とする岩石加工工程と、可食できる植物を乾燥し、粉砕して植物の粉砕物とする植物粉砕工程と、岩石加工工程で得られる多孔質粉末と、植物粉砕工程で得られる植物の粉砕物とを混合して混合原料とする混合工程と、混合工程で得られる混合原料を錠剤に打錠する成形工程とを含んでいる。
【発明の効果】
【0008】
以上の植物の固形食品とその製造方法は、植物の粉砕物に、岩石の焼成粉末であって、親水性と吸水性のある多孔質粉末を混合して、錠剤に成形しているので、錠剤の経年変化を抑制して保存や取り扱いを簡便とし、さらに混合している岩石の多孔質粉末によって、健康食品として好ましい効果も実現する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。
【0010】
植物の固形食品は、植物の粉砕物に、岩石の焼成粉末であって多孔質で親水性のある多孔質粉末を混合して錠剤に打錠している。この固形食品は、植物の粉砕物に、親水性と吸水性のある多孔質粉末を混合して混合原料とし、この混合原料を湿潤状態で打錠することで能率よく安定して錠剤に成形できる。とくに、打錠された錠剤を、速やかに乾燥して所定の硬度にできる特長も実現できる。それは、親水性と吸水性のある多孔質粉末が、植物の粉砕物の水分を吸湿して錠剤に成形できるからである。さらに岩石の多孔質粉末で植物の粉砕物を錠剤に成形するので、岩石加工工程においては勿論、さらに錠剤に成形された状態においても、植物の経年変化がなく、保存や取り扱いを簡便にしながら、岩石の多孔質粉末が放射する遠赤外線放射による効果も期待できる。
【0011】
それは、多孔質粉末による効果は、岩石の焼成粉末である多孔質粉末が、体内において体温に加温されて、遠赤外線を放射するからである。とくに、服用して体温で加温される岩石の多孔質粉末は、人体に有効な波長である8~14μmの遠赤外線を体内に放射する。この波長の遠赤外線は、人体によく吸収されて、細胞組織と共鳴作用を起こし、人体を内部から暖め、毛細血管を拡張し、体の血液循環を活性化し、新陳代謝を促進する効果があり、さらに、異常に興奮した神経を抑制し、自律神経を調整して交換神経と副交感神経のバランスを整える効果が期待できる。
【0012】
本発明の他の実施形態にかかる植物の固形食品は、岩石の焼成粉末を火成岩の焼成粉末とすることができ、さらに火成岩の焼成粉末を流紋岩の焼成粉末として、植物の粉砕物を錠剤に成形できる。流紋岩の焼成粉末からなる多孔質粉末は、肝疾患又は肝障害の症状のある被験者やその疑いのある被験者、或いは健常人が服用して、肝機能パラメータの改善が見られる。具体的には、流紋岩の多孔質粉末の摂取開始時にはγ-GTPの値が基準値を大幅に超過していた被験者でも、一定期間の服用後には、ほとんどの被験者が基準値内の数値となる。服用継続後でもγ-GTPの基準値を超過している被験者においても、顕著な改善が見られており、同時に測定したASL(GOT)及びALT(GPT)の改善も見られる。さらに、健常人においては、流紋岩の多孔質粉末の摂取継続後も、摂取開始時同様にγ-GTPが基準値内の値を示す。以上のとおり、焼成された流紋岩の多孔質粉末は、肝疾患又は肝障害の治療、改善効果を有し、さらに、健常人においては、少なくとも流紋岩の多孔質粉末の服用期間内において肝疾患や肝障害を発症することがなく、予防効果も有する可能性が示唆される。
【0013】
本発明の他の実施形態にかかる植物の固形食品は、岩石の多孔質粉末を0.5μm以上であって100μm以下の平均粒径とすることができる。本明細書において、平均粒径は、レーザー回折法(レーザー回折・錯乱法)によって求めた粒度分布における50%径(ピーク粒径;メジアン径)を示し、粒子径分布測定装置(例えば、日機装株式会社製 マイクロトラックMT3300)で解析して算出することができる。
【0014】
さらに本発明の他の実施形態にかかる植物の固形食品は、岩石の多孔質粉末の混合率を20重量%以上であって95重量%以下とすることができる。ただし本明細書において、多孔質粉末の混合率は、水分率を10重量%とする植物の粉砕物と、焼成して水分を除去した多孔質粉末との重量比を意味する。
【0015】
本発明の一実施形態にかかる植物の固形食品の製造方法は、岩石を焼成し、粉砕して、親水性と吸水性のある多孔質粉末とする岩石加工工程と、可食できる植物を粉砕する植物粉砕工程と、岩石加工工程で得られる多孔質粉末と、植物粉砕工程で得られる植物の粉砕物とを混合して混合原料とする混合工程と、混合工程で得られる混合原料を打錠して錠剤に成形する成形工程とで植物の固形食品を製造することができる。
【0016】
本発明の他の実施形態にかかる植物の固形食品の製造方法は、混合工程において使用する岩石に火成岩を使用することができ、さらに火成岩には流紋岩を使用することができきる。
【0017】
本発明の他の実施形態にかかる植物の固形食品の製造方法は、成形工程において、混合原料を湿潤状態として打錠することができる。
【0018】
さらに本発明の他の実施形態にかかる植物の固形食品の製造方法は、岩石加工工程において、岩石を600℃以上で焼成することができる。
【0019】
以下、植物の固形食品とその製造方法をより具体的に詳述する。
植物の固形食品は、岩石を焼成し、粉砕して、親水性と吸水性のある多孔質粉末とする岩石加工工程と、可食できる植物を粉砕する植物粉砕工程と、岩石加工工程で得られる多孔質粉末と、植物粉砕工程で得られる植物の粉砕物とを混合して混合原料とする混合工程と、混合工程で得られる混合原料を錠剤に打錠する成形工程とで製造する。
【0020】
(岩石加工工程)
岩石加工工程は、岩石を焼成し、粉砕して多孔質粉末とする。焼成する岩石は、焼成し、粉砕した状態において、多孔質であって親水性と吸水性のある岩石であれば特に限定されないが、火成岩であることが好ましく、さらに好ましくは流紋岩が使用できる。ただ、本発明は岩石を特定するものでなく、以上の岩石に代わって、例えば、麦飯石、角閃石、トルマリン、石英閃緑玲石(医王石)、貴陽石、ホルンヘルス、隕石、黒曜石、御影石、竜王石、光明石、黄土、溶岩、絹雲母、紫水晶、生光石、蛇紋岩、美向石、ブラックシリカ鉱石(神光石、黒鉛珪石)、三仙石赤、三仙石青、黒点花蛇紋石、石英変岩石、緑泥石、ゼノタイム石、サマルスキー石、モナズ石、ゲルマニウム、北投石、天照石、溶岩石、天寿石、生効石等が使用できる。これらのうち、焼成して、優れた親水性と吸水性と多孔質となって多孔質粉末とし優れた物性を示す流紋岩であることが最も好ましい。
【0021】
多孔質粉末の原料となる岩石は、以下の成分の火成岩が使用できる。
二酸化珪素(SiO)は50重量%~95重量%であり、60重量%~85重量%であることが好ましい。
酸化アルミニウム(Al)は、2重量%~40重量%であり、10重量%~25重量%であることが好ましい。
酸化ナトリウム(NaO)は、0.1重量%~20重量%であり、1重量%~10重量%であることが好ましい。
酸化カリウム(KO)は、0.1重量%~20重量%であり、1重量%~10重量%であることが好ましい。
三酸化第二鉄(Fe)は、0.1重量%~20重量%であり、0.5重量%~10重量%であることが好ましい。
酸化カルシウム(CaO)は、0.1重量%~20重量%であり、1重量%~10重量%であることが好ましい。
酸化マグネシウム(MgO)は、0.001重量%~5重量%であり、0.01重量%~1重量%であることが好ましい。
二酸化チタン(TiO)は、0.001重量%~5重量%であり、0.01重量%~1重量%であることが好ましい。
【0022】
多孔質粉末の火成岩は、愛媛地方で産出する流紋岩が使用できる。流紋岩は、約8000万年前にできた関東から九州までを縦断する中央構造線上にある四国・石鎚山のふもとから産出される火成岩の一種である。多孔質粉末は、流紋岩を砂利程度の粒径に破砕して焼成した後、粉砕する。流紋岩は、酸化雰囲気で焼成した後、粉砕して親水性と吸水性のある多孔質粉末に加工できる。
【0023】
岩石の多孔質粉末は、上記岩石を酸化雰囲気で焼成した後、粉砕して粉末状とし、あるいは岩石を粉砕して酸化雰囲気で焼成したものである。岩石を焼成して粉砕する方法は、好ましくは岩石を砂利の粒径に破砕して、酸化雰囲気で焼成した後、粉砕する。岩石を破砕して焼成する方法は、破砕されない岩石に比べて表面積を広くして効率よく焼成できる。また、焼成された岩石は、焼結されて硬く、脆くなって能率よく粉砕できる。焼成温度は、岩石を多孔質に焼結できる温度であって、低すぎると内部まで均一に焼成できずに硬度が低くなる。反対に焼成温度を高くしすぎると焼成コストが高くなり、さらに溶融して多孔質な空隙が減少する。この焼成温度は岩石の種類に合わせて適切な温度とする必要がある。例えば、岩石が流紋岩である場合、焼成温度は、600℃以上1300℃以下であり、900℃以上1250℃以下であることが好ましく、1000℃以上1200℃以下であることがより好ましい。焼成は、破砕した岩石を下り勾配に配置した回転するトロンメルに供給し、トロンメルで撹拌しながら移送して能率よく均一に焼成することができる。岩石に含まれる融点の低い物質(例えば酸化カリウム等)は、焼成工程で溶融され、さらに高温に加熱されて消失して微細な空隙が発生して多孔質となる。また、焼成工程では、溶融した低融点の物質(酸化カリウム等)が融材となって硬く焼結される。
【0024】
火成岩の焼成は、破砕した火成岩を下り勾配に配置した回転するトロンメルに供給し、トロンメルで撹拌しながら移送して均一に焼成できる。火成岩に含まれる融点の低い酸化カリウム等は溶融し、さらに高温に加熱されて一部が消失して微細な空隙が発生して、親水性と吸水性のある多孔質となる。この状態に焼成された火成岩は、粉末表面に付着する水を速やかに吸水して保水する。また、焼成工程で溶融した低融点の酸化カリウムの一部は、融材となって焼成火成岩を硬く焼結するので、衝撃で効率よく破砕できる焼成岩となる。焼成後の火成岩を粉末状に粉砕して、親水性と吸水性のある多孔質粉末が得られる。以上の工程で得られた多孔質粉末は、好ましくは、さらにルツボに充填して、酸化雰囲気で焼成することで、全ての多孔質粉末を完全に焼成して親水性と吸水性に優れた多孔質粉末とすることができる。
【0025】
焼成した火成岩を粉砕して得られる多孔質粉末は、平均粒径が100μmよりも大きく、また0.5μmよりも小さいと、錠剤の硬度が低下するので、多孔質粉末の平均粒径は、例えば0.5μm~100μmであり、0.6μm~80μmであることが好ましく、0.7μm~70μmであることがより好ましく、0.8μm~50μmであることがさらに好ましく、0.8μm~20μm以下であることが特に好ましく、1.0μm~15μmであることが最も好ましい。なお、上記粉末の平均粒径は、粒度分布を粒子径分布測定装置(例えば、日機装株式会社製、マイクロトラックMT3300)にて解析して算出することができる。
【0026】
多孔質粉末の平均粒径は、例えば、焼成し、粉砕した後、特定の粒径よりも小さいものを選別して調整することができる。たとえば、焼成して粉砕した粉末から、14μm以下の粉末を選別して、体積平均径が2.9μm、ピーク粒径が2.7μm、10%径(d10)が1.5μm、50%径(d50;メジアン径)が2.7μm、90%径(d90)が4.6μmの多孔質粉末が得られ、60μm以下の粉末を選別して、体積平均径が13μm、ピーク粒径が12μm、10%径(d10)が4.5μm、50%径(d50;メジアン径)が12μm、90%径(d90)が22μmの多孔質粉末が得られる。
【0027】
なお、粉末の集団において、粒子径の小さい順から、d1、d2、d3、・・・、di、・・、dkの粒子径を持つ粒子がそれぞれn1、n2、n3、・・・、ni、・・、nk個あるとした際の、粒子1個あたりの表面積をai、体積viとする。この時体積で重み付けられた体積平均径MVは以下の式で計算される。
【0028】
【数1】
【0029】
粉末の集団の全体積を100%として累積カーブを求めた際に、累積カーブが10%、50%、90%となる点の粒径をそれぞれ10%径、50%径(ピーク粒径;メジアン径)、90%径(μm)とする。
【0030】
(植物粉砕工程)
植物粉砕工程は、以下の植物を粉砕物に加工することができる。植物粉砕工程において、葉を含む植物を粉砕することができる。例えば植物には、大麦若葉、ケール、笹の葉、茶葉、稲若葉、ビワの葉、レタス、ほうれん草、ブロッコリー、小松菜、イチョウ葉、シモン葉、ウコン葉、ヤーコン葉、あした葉、すぎな葉、桑の葉、グァバ葉、よもぎ葉、葛の葉、荷葉、キャベツ等の野菜などの葉類、植物の茎、ショウガ、サツマイモ、ニンジン、シモン芋、ウコンの根、ヤーコンの根等の根菜、黒豆、大豆、小豆等の豆類、玄米等の穀類等が使用できる。ただし、本発明は可食できる植物を以上の植物に特定するものでなく、植物には現在食されており、さらにこれから食される全ての植物を使用できる。
【0031】
植物粉砕工程は、植物を洗浄した状態で、乾燥し、あるいは乾燥することなく粉砕し、破砕し、磨砕し、あるいはすり潰して粉砕物に加工する。この工程は、90重量%以上の粉砕物の粒径が100μm以下、さらに好ましくは80μm以下、最適には1μm以上であって80μm以下となるように粉砕する。以上の粒径に粉砕した植物は、岩石の多孔質粉末と混合されて十分な硬度の錠剤に打錠できる。植物の粉砕物は、粒径が小さすぎると植物本来の有効性が低下することに加えて、加工コストが高くなり、反対に大きすぎると成形された錠剤の硬度が低下する。
【0032】
植物を粉砕物に加工する装置と方法は、現在使用されている装置と方法が利用できる。この工程は、植物を乾燥して粉砕できるが、この方法は、洗浄した植物を乾燥した後、市販の粉砕機で粉砕し、あるいは破砕機で破砕して乾燥粉末にできる。また、植物を乾燥することなく磨砕機ですり潰し、その後、乾燥して乾燥粉末とすることもできる。植物は乾燥することなく非乾燥状態で粉砕することもできる。この方法は、植物を洗浄した後、脱水して、磨砕し、あるいは高速回転する刃物で裁断する等の方法で粉砕物とする。植物を乾燥することなく磨砕して得られる粉砕物を乾燥して乾燥粉末にできる。植物を非乾燥状態で粉砕する方法は、脱水した植物を、低温の加温空気を強制送風し、あるいは遠赤外線を照射して乾燥し水分率を低くし粉砕することで、湿潤状態の粉砕物が得られる。この粉砕物は、植物の乾燥状態で粉砕物の水分率を調整できる。この方法で得られる湿潤状態の粉砕物は、多孔質粉末を混合して得られる混合工程の水分率を最適値とするように調整する。
【0033】
(混合工程)
この工程は、植物の粉砕物と多孔質粉末とを混合する。植物の粉砕物と多孔質粉末との混合は、市販されている粉体混合器が使用できる。ただ、植物の粉砕物と多孔質粉末は比重が異なる粉体を混合できる混合器が適している。多孔質粉末の混合量は、錠剤に要求される硬度を考慮して調整されるが、20重量%以上であって95重量%以下の範囲として、錠剤に成形できる。さらに、多孔質粉末の混合量は、30重量%以上であって90重量%以下であることが好ましい。さらに多孔質粉末の混合量は、40重量%以上であって85%以下であることがより好ましく、50重量%以上であって80重量%以下であることがさらに好ましい。多孔質粉末の含有量が20重量%よりも少ないと、多孔質粉末による結合強度が低下し、さらに95重量%よりも多いと、多孔質粉末自体の結合強度が低下して、錠剤の成形が難しくなる。
【0034】
(成形工程)
この工程は、植物の粉砕物と多孔質粉末が混合された混合原料を錠剤に成形する。錠剤は、例えば円盤状であって、直径を3mm以上であって10mm以下、厚さを直径の0.3倍以上であって0.8倍以下のとするが、この形状と大きさに特定するものでなく、ユーザーが便利に服用できる形状とすることができる。
【0035】
岩石加工工程は、混合原料を顆粒に成形した後、顆粒を打錠して錠剤に成形することができる。この成形工程は、湿潤状態にある混合原料を成形孔から押し出しながら所定の粒サイズに切断して柱状の粒に成形した後、転動して略球形に成形する。また、顆粒成形機を使用して、顆粒に成形することができる。顆粒成形機を使用する方法は、水やアルコール等の液体と、混合原料の粉末を噴霧しながら造粒し、その後、乾燥して顆粒の固形食品に成形する。この方法は、例えば混合原料を50分噴霧して造粒し、その後約30分乾燥して顆粒に成形できる。
【0036】
錠剤は、好ましくは滑沢剤を使用することなく、現在すでに使用されている打錠機で成形する。錠剤は、多孔質粉末の混合量と、打錠圧力で、破壊重量と崩壊速度を調整できる。多孔質で親水性と吸水性のある多孔質粉末は、混合量を多くし崩壊時間を短くできる。多孔質粉末の混合量と打錠圧力を調整して、錠剤の崩壊速度を好ましくは30分以内とする。
【0037】
錠剤は、混合原料を顆粒に成形し、あるいは成形することなく、混合原料を錠剤に成形できる。この方法は、滑沢剤を使用することなく錠剤に成形できるが、滑沢剤を使用して、打錠機のスティッキングを防止して能率よく打錠することもできる。滑沢剤には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等が使用できるが、好ましくは親水性のあるフマル酸ステアリルナトリウムを使用して好ましい崩壊速度にできる。
【0038】
[実施形態1]
以下、本発明の具体的な実施形態を詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0039】
(岩石加工工程)
この工程は、砂利の粒径に破砕した流紋岩を下り勾配に配置した回転するトロンメルに供給し、トロンメルで撹拌しながら移送して1100℃で均一に焼成する。この温度で焼成される流紋岩は、含有している融点の低い酸化カリウムが溶融し、さらに加熱されて一部が消失して微細な空隙が発生し、親水性と吸水性のある多孔質となって、表面に付着する水を速やかに吸水して保水する。また、焼成工程で溶融した低融点の酸化カリウムの一部は、融材となって流紋岩を硬く焼結するので、衝撃で効率よく粉砕できる。焼成後の流紋岩を粉末状に粉砕して、親水性と吸水性のある多孔質粉末が得られる。以上の工程で得られた多孔質粉末は、ルツボに充填し、さらに酸化雰囲気で1100℃で2時間焼成して全ての多孔質粉末を均一に焼成できるが、ルツボによる焼成は必ずしも必要な焼成工程ではない。
【0040】
焼成された流紋岩を粉砕機で粉砕し、粉砕された粉末を選別して特定の平均粒径の多孔質粉末とする。多孔質粉末は、粉砕された粉末から、粒径60μm以下のものを選別して使用する。この多孔質粉末は、体積平均径(MV;Mean Volume Diameter)が13μm、ピーク粒径が12μm、10%径(d10)が4.5μm、50%径(d50;メジアン径)が12μm、90%径(d90)が22μmである。
【0041】
さらに、以上の工程で得られた流紋岩の多孔質粉末の成分を蛍光X線分析・EZスキャン分析すると以下のとおりであった。
【0042】
二酸化珪素(SiO):68.2%
酸化アルミニウム(Al):17.4%
酸化鉄(Fe):2.6%
酸化ナトリウム(NaO):3.9%
酸化カリウム(KO):3.4%
酸化カルシウム(CaO):3.8%
酸化マグネシウム(MgO):0.2%
二酸化チタン(TiO):0.2%
【0043】
(植物粉砕工程)
植物の一種である大麦若葉を洗浄し、脱水した後、裁断して5mm以下に粗粉砕して、40℃~50℃で熱風乾燥し、その後、粉砕機で、90重量%以上の粉砕物の粒径が1μm~80μmの範囲となるように粉砕する。
【0044】
(混合工程)
混合工程は、水分率を約10重量%とする植物の粉砕物100重量部に、岩石の多孔質粉末100重量部を混合して、多孔質粉末の混合率を50重量%とする混合原料とする。
【0045】
(成形工程)
成形工程は、混合原料を攪拌しながら水をスプレーしてペースト状態とする。混合原料は、スプレーする水量を調整して、押出成形で粒サイズに加工できるペースト状態とする。水の添加量が少ない混合原料は、スムーズな押出成形が難しく、反対に水分の添加量が多すぎる混合原料は、成形孔から押し出して円柱状に成形することが難しく、また、押し出された円柱状の混合原料を切断して粒サイズに切り離しするのが難しくなる。したがって、ペースト状態の混合原料は、スムーズに押し出し成形して粒状に切断できる水分率のペースト状態とする。ペースト状態の混合原料は、成形孔から押し出しながら所定の長さの粒サイズに切断されて柱状の粒サイズに成形する。柱状の粒は、ボール内で転動させて略球形に成形しながら水分の一部を蒸発させて湿潤状態の顆粒に成形する。湿潤状態の顆粒を、打錠機の臼に供給して、1000kgの力で打錠し、外径約8mmφ、厚さ約3mmで錠剤に成形し、その後、乾燥して、約200mgの錠剤を製作する。
【0046】
以上の工程で得られた錠剤は、崩壊速度が約30分以下のOD剤(口腔内崩壊錠)となる。また、以上の工程で得られる錠剤の硬度は、平面状の金属板で挟んで圧縮し、圧縮強度を次第に増加して破壊する圧縮重量で硬度を測定して、直径方向の圧縮重量は約20N、厚さ方向の圧縮重量は約100Nとなった。
【0047】
以上の錠剤は、多孔質粉末の混合率を変更して、硬度を調整できる。例えば、多孔質粉末の混合率を20重量%~95重量%の範囲で、厚さ方向の圧縮重量を50N以上に調整でき、また、混合する多孔質粉末の平均粒径を0.5μm~100μmとしても、厚さ方向の圧縮重量を50N以上に調整できる。
【0048】
さらに、流紋岩の多孔質粉末を含有する錠剤の効果は、以下の試験で確認している。
【0049】
[試験例:肝疾患予防/治療効果の検討]
上記実施形態1で製作した錠剤を、肝疾患又は肝障害の症状のある被験者、その疑いのある被験者、健常人に対して、2か月間~14か月間服用させた。被験者は、約200mgの錠剤を、毎日10個服用して、開始時及び一定期間の服用継続後に血液検査を行い、肝臓機能のパラメータであるγ-GTP、ASL(GOT)、又はALT(GPT)を測定した。γ-GTPは、たんぱく質分解酵素で、肝臓、腎臓、膵臓等の細胞に含まれており、これらの組織に障害が起こったり、肝・胆道系に閉塞があると、血液中に流出することが知られている。また、ASL(GOT)及びALT(GPT)は健常人の血液中にもみられるが、肝臓に障害が起こって肝細胞が壊れると、血液中に流れる量が増えるため、値が上昇する。心筋や骨格筋、赤血球中等にも多く含まれているASTと比べて、ALTは主に肝臓中に存在しているため、肝細胞の障害の程度を調べるのに適している。健康な人ではALTよりASTが高値を示すが、肝障害の場合、ALTの方が高くなる。それぞれのパラメータの基準値は、概ねγ-GTPが80以下、ASL(GOT)が10~40、ALT(GPT)が4~45とされている。
γ-GTPは11人の被験者の平均値が、107から62に低下し、
ASL(GOT)は6人の被験者の平均値が、48から28に低下し、
ALT(GPT)は6人の被験者の平均値が、65から39に低下した。
【0050】
肝疾患又は肝障害の症状のある被験者、その疑いのある被験者においては、全てで、肝機能パラメータの改善が見られた。具体的には、錠剤の摂取開始時にはγ-GTPの値が基準値を大幅に超過していた被験者でも、一定期間の服用後には、ほとんどの被験者が基準値内の数値となった。服用継続後でもγ-GTPの基準値を超過している被験者においても、顕著な改善が見られており、同時に測定したASL(GOT)及びALT(GPT)の改善も見られている。さらに、健常人においては、錠剤の摂取継続後も、摂取開始時同様にγ-GTPが基準値内の値を示していた。以上のとおり、錠剤は、肝疾患又は肝障害の治療、改善効果を有することが示された。さらに、健常人においては、少なくとも錠剤の服用期間内において肝疾患や肝障害を発症することがなく、予防効果も有する可能性が示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、岩石の多孔質粉末を使用して植物の粉砕物を錠剤に成形する用途に有効に利用できる。