(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168797
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】監視システム、監視方法およびそれに用いられるサーバ
(51)【国際特許分類】
G06F 16/28 20190101AFI20231121BHJP
G01N 30/86 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
G06F16/28
G01N30/86 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080119
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧 翔太
【テーマコード(参考)】
5B175
【Fターム(参考)】
5B175FB04
5B175JA02
(57)【要約】
【課題】分析装置の監視システムにおいて、セキュリティを維持しながら、分析作業の依頼者に分析作業の状況の閲覧を可能にする。
【解決手段】監視システム100は、分析装置210と、分析装置210を制御するための制御装置220と、監視装置100とを備える。監視装置100は、制御装置220と通信可能であり、分析装置210の動作状況を監視するように構成される。監視装置100は、分析装置210の分析状態および分析データを含む監視用データを制御装置220から取得する。監視装置100は、要求元からの要求指令に応答して、監視用データを用いて表示用データを生成し、生成され記表示用データを当該要求元の端末装置310,410に対して送信する。要求指令は、要求元の識別情報を含む。監視装置100は、識別情報に応じて表示用データを変化させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析装置と、
前記分析装置を制御するための制御装置と、
前記制御装置と通信可能であり、前記分析装置の動作状況を監視するように構成された監視装置とを備え、
前記監視装置は、
前記制御装置から、前記分析装置の分析状態および分析データを含む監視用データを取得し、
要求元からの要求指令に応答して、前記監視用データを用いて表示用データを生成し、生成された前記表示用データを前記要求元の端末装置に対して送信し、
前記要求指令は、前記要求元の識別情報を含み、
前記監視装置は、前記識別情報に応じて前記表示用データを変化させる、監視システム。
【請求項2】
前記分析装置を撮像するカメラをさらに備え、
前記監視装置は、
前記カメラからの画像データを取得し、
前記表示用データは、前記画像データを含む、請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
前記要求元は、第1識別情報を有する第1要求者と、前記第1要求者から一時的に発行された第2識別情報を有する第2要求者を含み、
前記監視装置は、前記第1識別情報に応答して送信する前記表示用データの内容よりも、前記第2識別情報に応答して送信する前記表示用データの内容を制限する、請求項1または2に記載の監視システム。
【請求項4】
前記第2識別情報の有効期間は1日である、請求項3に記載の監視システム。
【請求項5】
一時的に発行される識別情報は、前記第1要求者からの要求に基づいて前記監視装置によって発行され、
前記監視装置は、前記一時的に発行される識別情報の一日あたりの発行数を所定数以下に制限する、請求項3に記載の監視システム。
【請求項6】
前記第1要求者は、前記分析装置を用いて分析を行なう分析事業者であり、
前記第2要求者は、前記分析事業者に分析を依頼する分析依頼者である、請求項3に記載の監視システム。
【請求項7】
前記要求元は、前記第1要求者から一時的に発行された第3識別情報を有する第3要求者をさらに含み、
前記監視装置は、
前記第2識別情報を受信した場合には、前記第2要求者に対して、前記第2要求者に関連する情報を前記表示用データに含めて送信する一方で、前記第3要求者に関連する情報の送信を禁止し、
前記第3識別情報を受信した場合には、前記第3要求者に対して、前記第3要求者に関連する情報を前記表示用データに含めて送信する一方で、前記第2要求者に関連する情報の送信を禁止する、請求項3に記載の監視システム。
【請求項8】
前記第1要求者は、前記分析装置を用いて分析を行なう分析事業者であり、
前記第2要求者および前記第3要求者の各々は、前記分析事業者に分析を依頼する分析依頼者である、請求項7に記載の監視システム。
【請求項9】
分析装置を監視するためのデータを管理するサーバであって、
プロセッサと、
前記プロセッサで実行するためのプログラムを格納したメモリとを備え、
前記プロセッサは、前記プログラムを実行することによって、
前記分析装置の分析状態および分析データを含む監視用データを取得し、
要求元からの要求指令に応答して、前記監視用データを用いて表示用データを生成し、生成された前記表示用データを前記要求元の端末装置に対して送信するように構成され、
前記要求指令は、前記要求元の識別情報を含み、
前記プロセッサは、前記識別情報に応じて前記表示用データを変化させるように構成される、サーバ。
【請求項10】
分析装置を監視する方法であって、
前記分析装置の分析状態および分析データを含む監視用データを取得するステップと、
要求元からの要求指令に応答して、前記監視用データを用いて表示用データを生成するステップと、
前記要求元の端末装置に対して、前記表示用データを送信するステップとを含み、
前記要求指令は、前記要求元の識別情報を含み、
前記生成するステップは、前記識別情報に応じて前記表示用データを変化させるステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、監視システム、監視方法およびそれに用いられるサーバに関し、より特定的には、分析装置の動作状況を遠隔で監視するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特表2016-541036号公報(特許文献1)には、材料試験機のような試験デバイスにおける試験に関する情報を、スマートフォンなどの遠隔コンピューティングデバイスのディスプレイに表示して監視するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特表2016-541036号公報(特許文献1)に開示された監視システムにおいては、基本的には、試験デバイスを保有および管理するユーザが、コンピューティングデバイスから試験デバイスあるいはサーバプラットフォームにアクセスすることによって、監視対象の試験デバイスの動作状態および試験結果等をコンピューティングデバイス上で確認する構成となっている。
【0005】
一般的に、上記のような試験デバイスを含む分析装置を保有するユーザは、分析者と分析結果解析者が同一ユーザである。しかし、ビジネスの様態のひとつとして、試験デバイスを含む分析装置を保有するユーザが、試料の分析を希望する依頼者からの要請を受けて当該試料に関する分析を実行し、得られた分析結果を当該依頼者へ報告する形態がある。この場合、依頼者は、ユーザから分析結果が報告されるまで、依頼した分析作業の進捗状況、作業環境および分析条件等を知ることはできない。そのため、たとえば、分析作業の実施条件に不備がある場合、あるいは、分析結果が期待した結果と大きく乖離する場合など、再分析が必要となるケースにおいては、再分析の実施タイミングが遅くなってしまうおそれがある。また、依頼者が分析作業の作業環境を確認することを希望する場合には、分析装置の実際の設置場所まで依頼者が出向くことが必要となる。したがって、分析を希望する依頼者においては、依頼した分析作業を遠隔で、かつ、リアルタイムに監視したいというニーズがある。
【0006】
このようなニーズに対して、特表2016-541036号公報(特許文献1)に開示された監視システムを、分析の依頼者においても利用可能とすることによって、分析装置の遠隔監視を行なうことが可能となる。しかしながら、通常、分析装置を保有するユーザは多くの依頼者からの分析作業を受任していることが多いため、特定の依頼者に対して監視システムの利用を許可すると、他の依頼者から受任している分析作業に関する情報が、当該特定の依頼者に漏洩してしまう可能性がある。
【0007】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、分析装置の監視システムにおいて、セキュリティを維持しながら、分析作業の依頼者に分析作業状況の閲覧を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の局面に係る監視システムは、分析装置と、分析装置を制御するための制御装置と、監視装置とを備える。監視装置は、制御装置と通信可能であり、分析装置の動作状況を監視するように構成される。監視装置は、分析装置の分析状態および分析データを含む監視用データを制御装置から取得する。監視装置は、要求元からの要求指令に応答して、監視用データを用いて表示用データを生成して、要求元の端末装置に対して送信する。要求指令は、要求元の識別情報を含む。監視装置は、識別情報に応じて表示用データを変化させる。
【0009】
本開示の第2の局面に係るサーバは、分析装置を監視するためのデータを管理するサーバに関する。サーバは、プロセッサと、プロセッサで実行するためのプログラムを格納したメモリとを備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって、分析装置の分析状態および分析データを含む監視用データを取得するとともに、要求元からの要求指令に応答して、監視用データを用いて表示用データを生成し、生成された表示用データを要求元の端末装置に対して送信するように構成される。要求指令は、要求元の識別情報を含む。プロセッサは、識別情報に応じて表示用データを変化させるように構成される。
【0010】
本開示の第3の局面に係る方法は、分析装置を監視する方法に関する。方法は、分析装置の分析状態および分析データを含む監視用データを取得するステップと、要求元からの要求指令に応答して、監視用データを用いて表示用データを生成するステップと、要求元の端末装置に対して、表示用データを送信するステップとを含む。要求指令は、要求元の識別情報を含む。生成するステップは、識別情報に応じて表示用データを変化させるステップを含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係る監視システムによれば、監視装置が、要求元(分析依頼者)からの要求指令に含まれる識別情報に応じて、当該要求元に送信すべき分析状況を示す表示用データを変化させることができる。これにより、要求元である分析依頼者に対応した表示用データを選択的に送信することができるので、他の依頼者に関する情報の漏洩を防止することができる。したがって、分析装置の監視システムにおいて、セキュリティを維持しながら、分析作業の依頼者に分析作業状況の閲覧を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態に係る監視システムの全体概要図である。
【
図5】アカウントのライセンス契約を説明するための図である。
【
図6】各アカウントの内容を説明するための図である。
【
図7】監視システムの各機器において実行される制御の詳細を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0014】
[監視システムの概要]
図1は、実施の形態に係る監視システム10の全体概要図である。
図1を参照して、監視システム10は、監視用サーバ100と、分析装置211~213と、制御装置220と、通信装置230と、撮像装置240と、端末装置310,410とを含む。なお、以降の説明においては、分析装置211~213を包括的に「分析装置210」とも称する。
【0015】
監視用サーバ100は、たとえば、監視業務を専門で行なう事業者、あるいは、分析装置を提供する事業者(A社)によって管理されているクラウドサーバである。分析装置210、制御装置220、通信装置230、および、撮像装置240は、分析作業を実行する分析事業者200(B社)に配置されている。端末装置310,410は、分析事業者200に分析作業を依頼する分析依頼者300(C社)および分析依頼者400(D社)がそれぞれ保有する、汎用コンピュータあるいは携帯端末などの情報機器である。なお、監視用サーバ100は、分析事業者200が保有していてもよい。
【0016】
分析事業者200は、分析依頼者300,400から、特定の材料あるいは試料についての分析の依頼を受けると、分析装置210を用いて当該材料,試料を分析し、依頼元である分析依頼者300,400に分析結果を報告する。
【0017】
監視用サーバ100、ならびに、分析事業者200および分析依頼者300,400の保有する機器は、インターネットなどの通信ネットワーク500に接続されており、相互に通信を行なうことが可能に構成されている。通信ネットワーク500との通信は、有線であってもよいし無線であってもよい。
【0018】
概略的には、監視用サーバ100を保有するA社は、監視用サーバ100を用いて、分析事業者200から提供される分析状況を示す情報(以下、「監視用データ」とも称する。)を取得し、分析事業者200内のスタッフ、および、分析依頼者300,400からの要求に応じて、当該監視用データに含まれる情報を要求元に提供する、分析装置の閲覧サービスを提供する。このような構成によって、分析事業者200における監督者および作業者、ならびに、分析依頼者300,400は、必要に応じて、監視用サーバ100に記憶された監視用でデータを閲覧することによって、現在の分析の進捗状況をリアルタイムで確認することができる。
【0019】
次に、監視システム10を構成する各機器についての詳細について説明する。
監視用サーバ100は、プロセッサ110と、メモリ120と、通信装置130とを含む。プロセッサ110,メモリ120および通信装置130は、共通のバス140により互いに接続されており、互いに情報の授受が可能に構成されている。
【0020】
プロセッサ110は、たとえばCPU(Central Processing Unit)であって、プログラムに記述された所定の演算処理を実行するように構成されている。メモリ120は、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)とを含む。ROMは、プロセッサ110により実行されるプログラムを格納する。RAMは、プロセッサ110におけるプログラムの実行により生成されるデータと、通信装置130を介して入力されたデータとを一時的に格納する。RAMは、作業領域として利用される一時的なデータメモリとしても機能する。
【0021】
通信装置130は、通信ネットワーク500を介して分析事業者200および分析依頼者300,400の機器との間でデータの授受を行なうための通信インターフェースである。上述のように、監視用サーバ100と通信ネットワーク500との通信は、有線あるいは無線で行なわれる。
【0022】
分析事業者200には、少なくとも1台の分析装置が配置されている。ここで、本明細書における「分析装置」とは、試料および材料の組成を分析する分析装置、試料および材料の機械的,化学的性質を試験するための試験機、および、対象物の状態を検出するための検出装置および検査装置を含むものと定義する。
【0023】
分析装置210は、たとえば、クロマトグラフ、質量分析計、分光光度計、表面分析計、MALDI(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization:マトリックス支援レーザー脱離イオン化法)、材料試験機、非破壊検査機器、医療用検査機器などが含まれる。より具体的には、クロマトグラフには、ガスクロマトグラフ(GC)および液体クロマトグラフ(LC)などが含まれる。質量分析計には、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)および液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)などが含まれる。分光光度計には、分光蛍光光度計(RF)、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、および紫外可視近赤外分光光度計などが含まれる。表面分析計には、電子線プローブマイクロアナライザ(EPMA)、X線電子分光分析計(XPS)、蛍光X線分析計、X線回折装置(XRD)、原子吸光分光光度計などが含まれる。材料試験機には、引張試験機、疲労試験機、硬さ試験機、超音波探傷試験機などが含まれる。非破壊検査機器には、X線検査装置などが含まれる。医療用検査機器には、X線撮影システム、PET検査装置およびPCR検査装置などが含まれる。
【0024】
なお、
図1においては、3台の分析装置211~213が配置される構成が一例として示されているが、分析装置の数はこれに限られず、少なくとも1台の分析装置が配置されていればよい。分析装置211~213の各々は、制御装置220に接続されている。
【0025】
制御装置220は、分析装置211~213を統括的に制御するための機器である。制御装置220は、たとえば汎用コンピュータによって構成されており、キーボードあるいはタッチパネルのような入力部、および、ディスプレイなどの表示部を含む。制御装置220は、各分析装置における分析作業のスケジュールを管理するとともに、各分析装置における分析作業の自動運転を実行する。また、制御装置220は、分析装置211~213に取り付けられた各種センサから取得される分析条件(温度,圧力など)のデータを取得するとともに、分析によって得られた分析データを取得して記憶する。制御装置220には、取得した分析データを解析するためのソフトウェアが組み込まれており、分析データを表形式に編集したり、グラフを生成したりすることができる。
【0026】
撮像装置240は、複数のカメラを含む。分析装置210が配置されている室内、および、各分析装置に対して複数のカメラが配置されている。撮像装置240によって、分析環境の様子、分析装置の状態、および、分析作業者の作業の様子などの映像が撮像される。
【0027】
通信装置230は、通信ネットワーク500を介して監視用サーバ100との間でデータの授受を行なうための通信インターフェースである。通信装置230には、制御装置220、および、撮像装置240に含まれるカメラが接続されている。通信装置230は、制御装置220から送信された監視用データ、および、撮像装置240から取得した画像データ、または画像データから情報を抜き出し定量化したデータを、通信ネットワーク500を介して監視用サーバ100に送信する。
【0028】
また、通信装置230は、制御装置220および/または分析事業者200内の端末装置(図示せず)からの要求に対して監視用サーバ100から送信された表示用データを取得して、制御装置220あるいは端末装置へ出力する。制御装置220および端末装置においては、監視用サーバ100から送信された表示用データがディスプレイなどの表示部に表示される。このような構成によって、分析事業者200における分析作業者および監督者は、分析装置210における分析情報を遠隔にて監視することができる。
【0029】
分析依頼者300,400における端末装置310,410の各々は、上述のように、汎用コンピュータ、あるいは、スマートフォンまたはタブレットなどの携帯端末装置のような、通信ネットワーク500にアクセスすることが可能な通信機器である。後述するように、監視用サーバ100は、端末装置310,410からの要求指令を受けると、メモリ120内に記憶されている監視用データと映像データとを時刻に基づいて関連付けて表示用データを生成し、当該要求指令を送信した端末装置へ出力する。監視用サーバ100から取得された表示用データは、端末装置310,410の表示部に表示される。このような構成によって、分析依頼者300,400においても、分析事業者200における分析の進捗状況および分析結果等を確認することができる。
【0030】
図2~
図4を用いて、監視用サーバ100から送信される表示用データの表示例について説明する。なお、
図2~
図4においては、分析事業者200における制御装置220、あるいは、分析事業者200のスタッフの保有する端末装置において表示される表示画面の例について説明する。
【0031】
図2は、分析装置の一覧表示の画面の一例である。
図2の例においては、4台の分析装置についての情報が表示されており、各分析装置についての「機器名」、「コメント」、「分析状態」、および「分析データ」が表示される。
【0032】
「機器名」の欄には、分析作業の整理番号(分析No.)、分析装置の名称および種類、分析依頼者名、現在のステータスなどが表示される。
図2の例においては、「分析装置1は液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)であり、「分析装置2」は引張試験機であり、「分析装置3」はガスクロマトグラフ(GC)であり、「分析装置4」は電子線プローブアナライザ(EPMA)である。「コメント」の欄には、たとえば、分析対象のサンプル名、分析における注意点、および/または、分析後における分析作業者からの報告事項などが表示される。
【0033】
「分析状態」の欄には、現在の分析装置の状態、および、分析の際に設定される分析条件が表示される。分析条件としては、温度、圧力、荷重、濃度、速度および暴露時間などが含まれる。また、分析に使用すべき、あるいは、実際に分析に使用された試薬、カラム、移動相などの種類も表示される。
【0034】
「分析データ」の欄には、実際に分析によって得られた分析データの現在値、あるいは代表値などが表示される。
【0035】
図2の一覧表示における特定の分析装置を選択すると、
図3および
図4に示されるような、選択された分析装置についての詳細情報が表示される。
図3および
図4は、
図2における「分析装置2」が選択された場合の表示画面の例である。
図3および
図4の表示画面の上段には、
図2と同様の情報が表示され、下段に詳細情報が表示される。
【0036】
詳細情報としては、
図3のような、制御装置220におけるソフトウェアで処理された分析データの画像を表示することができる。あるいは、
図4のような、現在あるいは分析中のカメラ画像を表示することができる。
図4で示されるように、分析装置2は引張試験機である。なお、図には示されていないが、計測値の生データをリスト形式で表示することもできる。
【0037】
このように、分析事業者200においては、分析事業者200が保有するすべての分析装置についての各種情報を監視用サーバ100から取得して閲覧することができる。これにより、分析作業の進捗管理および分析結果の管理を行なうことができる。
【0038】
[契約形態と閲覧制限について]
次に、
図5および
図6を用いて、監視システム10によって提供される分析状況の閲覧サービスについての契約形態について説明する。
図5は、アカウントのライセンス契約を説明するための図である。また、
図6は、各アカウントの内容を説明するための図である。
【0039】
上述のように、監視用サーバ100はA社が保有しており、A社によって閲覧サービスが提供される。分析事業者200であるB社は、A社とライセンス契約を締結して所定の利用料金を支払うことにより、当該閲覧サービスを利用するためのアカウントを取得することができる。ライセンス契約により発行されるアカウントは「通常アカウント」である。通常アカウントは、
図6に示されるように、契約期間中(たとえば、1年間、5年間など)においては、A社は、監視用サーバ100に格納したA社の監視用データおよび画像データを制限なく閲覧することができる。通常アカウントにおいては、たとえば、1アカウントあたり5ユーザの使用が認められる。
【0040】
また、B社は、分析依頼者であるC社およびD社のように、A社とライセンス契約を締結していない第三者に対して、一時的に当該閲覧サービスを利用可能な臨時のアカウントを発行することができる。この臨時のアカウントは、たとえば使用期限が1日であり、この場合「ワンデイアカウント」とも称される。ワンデイアカウントは、通常アカウントを有するB社からの要求によりA社(監視用サーバ100)によって発行される。
【0041】
A社によって発行される通常アカウントおよびワンデイアカウントには、識別情報(ID情報)とパスワード情報が含まれている。利用者は、ID情報およびパスワードを用いることによって、監視用サーバ100へのアクセスが可能となる。ID情報およびパスワードはアカウント毎に異なっており、監視用サーバ100は、ID情報およびパスワードによって、当該サーバへのアクセスした利用者を特定することができる。
【0042】
そして、監視用サーバ100は、ワンデイアカウントを有する利用者については、閲覧可能範囲を制限し、当該利用者が依頼した分析作業に関連する情報のみしか閲覧できないようにする。具体的には、C社にワンデイアカウントが付与された場合には、C社は、C社の分析作業に関連する情報のみが閲覧可能であるが、D社の分析作業に関連する情報は閲覧することができない。同様に、D社にワンデイアカウントが付与された場合には、D社は、D社の分析作業に関連する情報のみが閲覧可能であるが、C社の分析作業に関連する情報は閲覧することができない。
【0043】
このように、ワンデイアカウントのような臨時のアカウントを使用することによって、ライセンス契約を有さない利用者に対しても、自身が依頼した分析作業の情報を電子的に遠隔で閲覧することができる。そして、ワンデイアカウントによるアクセスに対して閲覧可能範囲を制限することによって、他の利用者に関連する情報が漏洩することを防止することができる。
【0044】
なお、ワンデイアカウントの発行については、通常アカウントの契約範囲内としてもよいし、追加料金が必要となるオプション契約としてもよい。また、1日あたりのワンデイアカウントの発行数は、たとえば5アカウントに制限されてもよい。この場合、さらに追加料金を支払うことによって、6アカウント以上のワンデイアカウントの発行を要求できるようにしてもよい。本実施例ではワンデイアカウントに基づき説明したが、ワンデイアカウントのような一時的なアカウントは有効期限が1日に限らず、1日より長い期間に閲覧権限を与えるアカウントでもよい。また本実施例ではB社がC社およびD社にワンデイアカウントを付与する例を記載したが、例えばC社がB社に分析を依頼しているという情報をもとにA社が直接C社にワンデイアカウントを付与してもよい。
【0045】
以上のようなアカウントに基づく契約形態を用いることによって、本実施の形態の閲覧サービスを提供することができる。そして、A社は当該閲覧サービスの提供により収益をあげることができるとともに、分析の進捗状況をリアルタイム、かつ、遠隔で確認したいという分析依頼者のニーズにも、セキュリティを維持した状態で応えることができる。さらに、分析依頼者においては、分析結果を早期に確認できるため、分析条件を変更した再分析および追加項目の分析が必要な場合に、迅速に対応することが可能となる。
【0046】
[各機器における制御の詳細]
次に、
図7を用いて、監視用サーバ100、分析事業者200の制御装置220、および、分析依頼者300,400における端末装置310,410において実行される制御の詳細について説明する。
図7においては、監視用サーバ100、制御装置220、および端末装置310,410で実行される処理のフローチャートが示されている。
【0047】
(監視用サーバの処理)
まず、監視用サーバ100についての処理について説明する。監視用サーバ100は、ステップ(以下、ステップを「S」と略す。)100において、分析事業者200の制御装置220から送信された監視用データおよび画像データを通信ネットワーク500経由で受信し、受信したデータをメモリ120に記憶する。
【0048】
次に、監視用サーバ100は、S110にて、制御装置220、あるいは、分析依頼者300,400の端末装置310,410から表示要求指令を受信したか否かを判断する。表示要求指令を受信していない場合(S110にてNO)は、処理がS100に戻されて、監視用サーバ100は、制御装置220からの監視用データおよび画像データを引き続き受信および記憶しつつ、表示要求指令の受信を待つ。
【0049】
表示要求指令を受信した場合(S110にてYES)は、処理がS120に進められ、監視用サーバ100は、表示要求指令に含まれるID情報に基づいて、当該表示要求指令が、通常アカウント契約をしている分析事業者200から送信されたものであるか、ワンデイアカウントが付与された分析依頼者300,400から送信されたものであるかを判断する。
【0050】
表示要求指令が分析事業者200から送信されたものである場合(S120にてYES)は、処理がS130に進められて、監視用サーバ100は、閲覧制限をすることなく、表示要求指令に従った表示用データを生成して制御装置220へ送信する。なお、分析事業者200のスタッフであっても、要求者の所属先あるいは役職等によって、部分的に閲覧制限がなされてもよい。
【0051】
一方、表示要求指令が分析依頼者300,400から送信されたものである場合(S120にてNO)は、処理がS140に進められて、監視用サーバ100は、表示可能範囲を制限しながら表示用データを生成して、生成された表示用データを要求元の端末装置に送信する。ここで、S140にて生成される表示用データにおいては、要求元の分析依頼者から依頼された分析に関連する情報のみが含まれ、他の分析依頼者から依頼された分析に関連する情報が含まれないように閲覧可能範囲が制限される。また、分析事業者200の内部のみで利用するデータについても、表示されないように制限される。
【0052】
このように、ID情報に基づいて閲覧可能範囲を制限することよって、ある分析依頼者に関連する情報が、他の分析依頼者へ漏洩してしまうことを防止できる。
【0053】
(分析事業者における処理)
次に、分析事業者200の制御装置220における処理について説明する。
【0054】
制御装置220は、分析装置210からの監視用データを取得すると、S200において、取得した監視用データを、通信装置230および通信ネットワーク500を介して監視用サーバ100へ送信する。なお、このとき、撮像装置24からの画像データについても、通信装置230から送信される。
【0055】
次に、制御装置220は、S210にて、要請に応じて、分析依頼者300,400に対してワンデイアカウントを付与する。ワンデイアカウントには、ID情報およびパスワードの情報が含まれる。当該ワンデイアカウントのID情報およびパスワードは、監視用サーバ100によって発行されたものである。なお、ワンデイアカウントの情報は、制御装置220と端末装置310,410との間でシステム的に伝達される必要はなく、分析事業者200の担当者から分析依頼者300,400の担当者に、口頭あるいは書面にて伝達されてもよい。
【0056】
次に、制御装置220は、S220にて、分析事業者200のスタッフからの指示に基づいて、監視用サーバ100へアクセスして表示要求指令を送信する。当該表示要求指令には、分析事業者200の有する通常アカウントのID情報およびパスワードの情報が含まれる。
【0057】
その後、制御装置220は、当該表示要求指令に応答して監視用サーバ100から送信される表示用データを受信し(S230)、受信したデータを制御装置220の表示部に表示する(S240)。
【0058】
なお、上記においては、制御装置220における処理について説明したが、S220~S240までの処理については、分析事業者200内の他の端末装置についても適用可能である。
【0059】
(分析依頼者における処理)
次に、分析依頼者300,400の端末装置310,410における処理について説明する。
【0060】
端末装置310,410は、S300にて、分析事業者200の制御装置220からワンデイアカウントのアカウント情報(ID情報、パスワード)を取得する。そして、端末装置310,410は、S310にて、分析依頼者300,400のスタッフからの指示に基づいて、得られたID情報およびパスワードを用いて監視用サーバ100へアクセスし、表示要求指令を送信する。
【0061】
その後、端末装置310,410は、当該表示要求指令に応答して監視用サーバ100から送信される表示用データを受信し(S320)、受信したデータを端末装置310,410の表示部に表示する(S330)。
【0062】
以上のような処理に従って各機器を制御することによって、監視用サーバを保有する事業者とのライセンス契約を有さない分析依頼者についても、表示可能期間および表示可能範囲を制限した状態で、分析事業者における分析状態を閲覧することが可能となる。表示可能範囲を、要求元の分析依頼者に関連する情報に制限することによって、当該分析依頼者に関連する情報が別の分析依頼者に漏洩することを防止することができる。したがって、セキュリティを維持しながら、分析作業の依頼者に分析作業の状況を遠隔で閲覧をにすることができる。
【0063】
なお、本実施の形態における「監視用サーバ100」は、本開示における「監視装置」に対応する。本実施の形態における「分析事業者200」は本開示における「第1要求者」に対応する。本実施の形態における「分析依頼者300」および「分析依頼者300」は、本開示における「第2要求者」および「第3要求者」にそれぞれ対応する。
【0064】
[態様]
(第1項)一態様に係る監視システムは、分析装置と、分析装置を制御するための制御装置と、監視装置とを備える。監視装置は、制御装置と通信可能であり、分析装置の動作状況を監視するように構成される。監視装置は、分析装置の分析状態および分析データを含む監視用データを制御装置から取得する。監視装置は、要求元からの要求指令に応答して、監視用データを用いて表示用データを生成して、要求元の端末装置に対して送信する。要求指令は、要求元の識別情報を含む。監視装置は、識別情報に応じて表示用データを変化させる。
【0065】
第1項に記載の監視システムによれば、監視装置が、要求元(分析依頼者)からの要求指令に含まれる識別情報に応じて、当該要求元に送信すべき分析状況を示す表示用データを変化させることができる。これにより、要求元である分析依頼者に対応した表示用データを選択的に送信することができるので、他の依頼者に関する情報の漏洩を防止することができる。したがって、分析装置の監視システムにおいて、セキュリティを維持しながら、分析作業の依頼者に分析作業状況の閲覧を可能にすることができる。
【0066】
(第2項)第1項に記載の監視システムは、分析装置を撮像するカメラをさらに備える。監視装置は、カメラからの画像データを取得する。表示用データは、画像データを含む。
【0067】
第2項に記載の監視システムによれば、分析中の分析装置の状況を画像データとして確認することができる。
【0068】
(第3項)第1項または第2項に記載の監視システムにおいて、要求元は、第1識別情報を有する第1要求者と、第1要求者から一時的に発行された第2識別情報を有する第2要求者を含む。監視装置は、第1識別情報に応答して送信する表示用データの内容よりも、第2識別情報に応答して送信する表示用データの内容を制限する。
【0069】
第3項に記載の監視システムによれば、一時的に閲覧が許可された要求者に対しては、通常の識別情報を有する要求者よりも閲覧可能範囲を制限することができる。
【0070】
(第4項)第3項に記載の監視システムにおいて、第2識別情報の有効期間は1日である。
【0071】
第4項に記載の監視システムによれば、一時的に閲覧が許可された要求者の閲覧期間を1日に制限することができる。
【0072】
(第5項)第3項または第4項に記載の監視システムにおいて、一時的に発行される識別情報は、第1要求者からの要求に基づいて監視装置によって発行される。監視装置は、一時的に発行される識別情報の一日あたりの発行可能数を所定数に制限する。
【0073】
第5項に記載の監視システムによれば、一時的に閲覧が許可される要求者の数を制限することができる。
【0074】
(第6項)第3項~第5項のいずれか1項に記載の監視システムにおいて、第1要求者は、分析装置を用いて分析を行なう分析事業者である。第2要求者は、分析事業者に分析を依頼する分析依頼者である。
【0075】
第6項に記載の監視システムによれば、分析を実行する分析事業者については閲覧可能範囲は制限せず、分析依頼者に対して閲覧可能範囲を制限することができる。
【0076】
(第7項)第3項に記載の監視システムにおいて、要求元は、第1要求者から一時的に発行された第3識別情報を有する第3要求者をさらに含む。監視装置は、第2識別情報を受信した場合には、第2要求者に対して、第2要求者に関連する情報を表示用データに含めて送信する一方で、第3要求者に関連する情報の送信を禁止する。監視装置は、第3識別情報を受信した場合には、第3要求者に対して、第3要求者に関連する情報を表示用データに含めて送信する一方で、第2要求者に関連する情報の送信を禁止する。
【0077】
第7項に記載の監視システムによれば、一時的に閲覧が許可される要求者に対しては、他の要求者に関連する情報の閲覧を禁止することができる。これによって、異なる要求者の情報が漏洩することが防止される。
【0078】
(第8項)第7項に記載の監視システムにおいて、第1要求者は、分析装置を用いて分析を行なう分析事業者である。第2要求者および第3要求者の各々は、分析事業者に分析を依頼する分析依頼者である。
【0079】
第8項に記載の監視システムによれば、分析を実行する分析事業者については閲覧可能範囲は制限せず、分析依頼者に対して閲覧可能範囲を制限することができる。
【0080】
(第9項)一態様に係るサーバは、分析装置を監視するためのデータを管理するサーバである。サーバは、プロセッサと、プロセッサで実行するためのプログラムを格納したメモリとを備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって、分析装置の分析状態および分析データを含む監視用データを取得するとともに、要求元からの要求指令に応答して、監視用データを用いて表示用データを生成し、生成された表示用データを要求元の端末装置に対して送信するように構成される。要求指令は、要求元の識別情報を含む。プロセッサは、識別情報に応じて表示用データを変化させるように構成される。
【0081】
(第10項)一態様に係る方法は、分析装置を監視する方法に関する。方法は、分析装置の分析状態および分析データを含む監視用データを取得するステップと、要求元からの要求指令に応答して、監視用データを用いて表示用データを生成するステップと、要求元の端末装置に対して、表示用データを送信するステップとを含む。要求指令は、要求元の識別情報を含む。生成するステップは、識別情報に応じて表示用データを変化させるステップを含む。
【0082】
第9項に記載のサーバおよび第10項に記載の方法によれば、セキュリティを維持しながら、分析作業の依頼者に分析作業状況の閲覧を可能にすることができる。
【0083】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0084】
10 監視システム、100 監視用サーバ、110 プロセッサ、120 メモリ、130,230 通信装置、140 バス、200 分析事業者、210~213 分析装置、220 制御装置、240 撮像装置、300,400 分析依頼者、310,410 端末装置、500 通信ネットワーク。