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  • 特開-沸騰水型原子炉の隔離弁支持構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168810
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】沸騰水型原子炉の隔離弁支持構造
(51)【国際特許分類】
   G21D 1/00 20060101AFI20231121BHJP
   G21C 13/02 20060101ALI20231121BHJP
   G21C 13/067 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
G21D1/00 K
G21C13/02 200
G21C13/067 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080142
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松川 梢
(57)【要約】
【課題】
主蒸気ノズルと主蒸気隔離弁の間にスペースを設けることなく主蒸気隔離弁を支持することができ、原子炉格納容器や原子炉建屋が大型化することはないこと。
【解決手段】
本発明の沸騰水型原子炉の隔離弁支持構造は、上記課題を解決するために、原子炉圧力容器の主蒸気ノズルから原子炉格納容器を貫通して延在し、前記原子炉圧力容器で発生した蒸気をタービン設備側へ導く主蒸気配管に設置され、事故時に放射性物質を含んだ前記蒸気の前記タービン設備側への放出を防ぐため、前記タービン設備側への系統を閉鎖する主蒸気隔離弁を支持する沸騰水型原子炉の隔離弁支持構造であって、前記主蒸気隔離弁は、前記主蒸気隔離弁の原子炉圧力容器側が前記主蒸気ノズルに直接取り付けられて支持されていることを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉圧力容器の主蒸気ノズルから原子炉格納容器を貫通して延在し、前記原子炉圧力容器で発生した蒸気をタービン設備側へ導く主蒸気配管に設置され、事故時に放射性物質を含んだ前記蒸気の前記タービン設備側への放出を防ぐため、前記タービン設備側への系統を閉鎖する主蒸気隔離弁を支持する沸騰水型原子炉の隔離弁支持構造であって、
前記主蒸気隔離弁は、前記主蒸気隔離弁の原子炉圧力容器側が前記主蒸気ノズルに直接取り付けられて支持されていることを特徴とする沸騰水型原子炉の隔離弁支持構造。
【請求項2】
請求項1に記載の沸騰水型原子炉の隔離弁支持構造であって、
前記原子炉圧力容器に主蒸気隔離弁支持構造物を取り付け、前記主蒸気隔離弁支持構造物で前記主蒸気隔離弁が支持されていることを特徴とする沸騰水型原子炉の隔離弁支持構造。
【請求項3】
請求項2に記載の沸騰水型原子炉の隔離弁支持構造であって、
前記原子炉圧力容器は円筒状に形成され、前記主蒸気隔離弁支持構造物の前記原子炉圧力容器への取り付け面は、前記原子炉圧力容器の円筒面に略合致する曲面状に形成されていることを特徴とする沸騰水型原子炉の隔離弁支持構造。
【請求項4】
請求項3に記載の沸騰水型原子炉の隔離弁支持構造であって、
前記主蒸気隔離弁支持構造物は、前記原子炉圧力容器に溶接で取り付けられていることを特徴とする沸騰水型原子炉の隔離弁支持構造。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか1項に記載の沸騰水型原子炉の隔離弁支持構造であって、
前記主蒸気隔離弁支持構造物と前記主蒸気隔離弁の間に、前記原子炉圧力容器と前記主蒸気隔離弁の相対変位を吸収する変位吸収手段が設置されていることを特徴とする沸騰水型原子炉の隔離弁支持構造。
【請求項6】
請求項5に記載の沸騰水型原子炉の隔離弁支持構造であって、
前記変位吸収手段は、運転中の前記原子炉圧力容器の縦方向の熱伸びによる前記主蒸気隔離弁と前記主蒸気隔離弁支持構造物の相対変位を吸収するか、運転中の前記主蒸気隔離弁の周方向の移動量を拘束するか、或いは運転中の前記主蒸気隔離弁の開閉操作を駆動する駆動部の振動を拘束するものであることを特徴とする沸騰水型原子炉の隔離弁支持構造。
【請求項7】
請求項6に記載の沸騰水型原子炉の隔離弁支持構造であって、
前記変位吸収手段は、前記主蒸気隔離弁に取り付けられた逆T字状部材と、該逆T字状部材の先端に取り付けられたばねと、該ばねと前記逆T字状部材を覆うカバーとから構成されていることを特徴とする沸騰水型原子炉の隔離弁支持構造。
【請求項8】
請求項7に記載の沸騰水型原子炉の隔離弁支持構造であって、
前記変位吸収手段は、ダンパーであることを特徴とする沸騰水型原子炉の隔離弁支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は沸騰水型原子炉の隔離弁支持構造に係り、特に、配管破断等の事故時に、放射性物質を含んだ蒸気がタービン設備側へ放出するのを防ぐため、事故発生後に速やかに原子炉圧力容器側からタービン設備側への系統を閉鎖できるように主蒸気配管に設置されている主蒸気隔離弁を支持するものに好適な沸騰水型原子炉の隔離弁支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、原子力発電プラントにおいては、原子炉圧力容器から原子炉格納容器を貫通して主蒸気配管が延在し、この主蒸気配管を通して原子炉圧力容器で発生した蒸気がタービン設備側に導かれる。
【0003】
上記した主蒸気配管の原子炉格納容器の配管貫通部の内側及び外側には、原子力発電プラントの事故時に、放射性物質を含んだ蒸気のタービン設備側への放出を防ぐため、事故発生後に速やかに原子炉圧力容器側からタービン設備側への系統を閉鎖できるに主蒸気隔離弁が設置されている。
【0004】
この主蒸気隔離弁が配置された沸騰水型原子炉の一例として、一般的な改良型沸騰水型軽水炉における主蒸気隔離弁の配置状態を図1に示す。
【0005】
図1に示すように、原子炉圧力容器3は、原子炉建屋1内及びその内部の原子炉格納容器2に格納されており、原子炉圧力容器3には、タービン設備側(図1の右側)に蒸気を送るための主蒸気ノズル4及び主蒸気配管5が接続されている。
【0006】
例えば、配管破断等の事故時に、放射性物質を含んだ蒸気の放出を防ぐため、事故発生後に速やかに原子炉圧力容器3側からタービン設備側への系統を閉鎖できるように、主蒸気配管5には主蒸気隔離弁6a及び6bが設けられており、この主蒸気隔離弁6a及び6bは、原子炉格納容器2の配管貫通部7の前後(内外)に設けられている。
【0007】
上記の主蒸気隔離弁6a及び6bは、重量物であるが直接支持されておらず、前後の主蒸気配管5を配管サポート8等で支持することにより間接的に支持されている。
【0008】
即ち、図2に示すように、従来の沸騰水型軽水炉では、主蒸気ノズル4と主蒸気隔離弁6aの間に主蒸気配管5があるため、原子炉格納容器2内に配管を支持するための配管サポート8を設けるスペースが確保できるので、主蒸気隔離弁6aを、前後の主蒸気配管5を配管サポート8で支持することにより間接的に支持できる。
【0009】
なお、原子力発電プラントにおいて、配管破断等の事故時に、放射性物質を含んだ蒸気のタービン設備側への放出を防ぐため、事故発生後に速やかに原子炉圧力容器側からタービン設備側への系統を閉鎖できるよう主蒸気配管に主蒸気隔離弁を設置したものが特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平1-182799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記した主蒸気隔離弁6aを、前後の主蒸気配管5を配管サポート8で支持することにより間接的に支持する従来の支持構造では、主蒸気ノズル4と主蒸気隔離弁6aの間に主蒸気配管5があるため、この主蒸気配管5を配置するためのスペースが必要となり、その主蒸気配管5を配置するためのスペース分を確保するためには、原子炉格納容器2や原子炉建屋1を大型化する必要がある。
【0012】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、主蒸気ノズルと主蒸気隔離弁の間にスペースを設けることなく主蒸気隔離弁を支持することができ、原子炉格納容器や原子炉建屋が大型化することのない沸騰水型原子炉の隔離弁支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の沸騰水型原子炉の隔離弁支持構造は、上記目的を達成するために、原子炉圧力容器の主蒸気ノズルから原子炉格納容器を貫通して延在し、前記原子炉圧力容器で発生した蒸気をタービン設備側へ導く主蒸気配管に設置され、事故時に放射性物質を含んだ前記蒸気の前記タービン設備側への放出を防ぐため、前記タービン設備側への系統を閉鎖する主蒸気隔離弁を支持する沸騰水型原子炉の隔離弁支持構造であって、前記主蒸気隔離弁は、前記主蒸気隔離弁の原子炉圧力容器側が前記主蒸気ノズルに直接取り付けられて支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、主蒸気ノズルと主蒸気隔離弁の間にスペースを設けることなく主蒸気隔離弁を支持することができ、原子炉格納容器や原子炉建屋が大型化することはない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一般的な改良型沸騰水型軽水炉における主蒸気隔離弁の配置状態を示す断面図である。
図2図1における沸騰水型軽水炉における原子炉圧力容器と主蒸気ノズル、主蒸気配管及び配管サポートの配置状態を示す部分斜視図である。
図3】本発明の沸騰水型原子炉の隔離弁支持構造の実施例1における原子炉圧力容器への主蒸気隔離弁の設置状態を示す図である。
図4図3における主蒸気隔離弁を主蒸気隔離弁支持構造物で支持した状態を示す部分斜視図である。
図5図4における主蒸気隔離弁と主蒸気隔離弁支持構造物の間に変位吸収手段が配置された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図示した実施例に基づいて本発明の沸騰水型原子炉の隔離弁支持構造を説明する。なお、各図において、同一構成部品には同符号を使用する。
【実施例0017】
図3図4及び図5に、本発明の沸騰水型原子炉の隔離弁支持構造の実施例1を示す。
【0018】
該図に示す本実施例の沸騰水型原子炉の一例である改良型沸騰水型軽水炉でも、図1と同様に、原子炉圧力容器3の主蒸気ノズル4から原子炉格納容器2を貫通して延在し、原子炉圧力容器3で発生した蒸気をタービン設備側へ導く主蒸気配管5に設置され、事故時に放射性物質を含んだ蒸気のタービン設備側への放出を防ぐため、タービン設備側への系統を閉鎖する主蒸気隔離弁6を備えている。
【0019】
そして、本実施例では、主蒸気隔離弁6は、図4に示すように、主蒸気隔離弁6の原子炉圧力容器3側が主蒸気ノズル4に直接取り付けられて支持されている。
【0020】
しかも、本実施例では、原子炉圧力容器3に主蒸気隔離弁支持構造物9を取り付け、この主蒸気隔離弁支持構造物9で主蒸気隔離弁6が支持されている。
【0021】
更に、原子炉圧力容器3は円筒状に形成されており、上記した主蒸気隔離弁支持構造物9の原子炉圧力容器3への取り付け面は、原子炉圧力容器3の円筒面に略合致する曲面状に形成されている。なお、主蒸気隔離弁支持構造物9は、原子炉圧力容器3に溶接で取り付けられている。
【0022】
また、主蒸気隔離弁6は、原子炉格納容器2の入口側と出口側に2個設置されており、それぞれの主蒸気隔離弁6には、弁の開閉操作を行うシリンダ11が設置されている。
【0023】
また、本実施例では、主蒸気隔離弁支持構造物9と主蒸気隔離弁6の間には、原子炉圧力容器3と主蒸気隔離弁6の相対変位を吸収する変位吸収手段(例えば、ダンパー)10が設置されている。
【0024】
この変位吸収手段10は、図5に示すように、主蒸気隔離弁6に取り付けられた逆T字状部材10aと、この逆T字状部材10aの先端に取り付けられたばね10bと、このばね10bと逆T字状部材10aを覆うカバー10cとから構成されており、運転中の原子炉圧力容器3の縦方向の熱伸びによる主蒸気隔離弁6と主蒸気隔離弁支持構造物9の相対変位を吸収することができるし、また、運転中の主蒸気隔離弁6の周方向の移動量を拘束することもでき、更には、運転中の主蒸気隔離弁6の開閉操作を駆動する駆動部(上記したシリンダ11)の振動を拘束することもできる。
【0025】
このような本実施例の構成によれば、主蒸気隔離弁6は、その原子炉圧力容器3側が主蒸気ノズル4に直接取り付けられて支持されているため、従来のような、主蒸気ノズル4と主蒸気隔離弁6aの間に配置されている主蒸気配管5は不要となり、主蒸気配管5を配置するためのスペースが必要なくなり、主蒸気配管5を配置するためのスペース分が不要となるので、原子炉格納容器2や原子炉建屋1の小型化が図れる。即ち、原子炉格納容器2や原子炉建屋1が大型化することはない。
【0026】
また、主蒸気隔離弁6は重量物であるため、原子炉圧力容器3の主蒸気ノズル4に主蒸気隔離弁6を直接取り付けると、主蒸気ノズル4に過大な荷重が掛かる恐れがあるが、本実施例のように、原子炉圧力容器3に主蒸気隔離弁支持構造物9を取り付け、この主蒸気隔離弁支持構造物9で主蒸気隔離弁6を支持することで、主蒸気ノズル4への主蒸気隔離弁6の荷重の負荷を低減することができる。
【0027】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0028】
1…原子炉建屋、2…原子炉格納容器、3…原子炉圧力容器、4…主蒸気ノズル、5…主蒸気配管、6、6a、6b…主蒸気隔離弁、7…配管貫通部、8…配管サポート、9…主蒸気隔離弁支持構造物、10…変位吸収手段、10a…逆T字状部材、10b…ばね、10c…カバー、11…シリンダ。
図1
図2
図3
図4
図5