(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168836
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】プリント配線板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
H05K1/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080176
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】513168459
【氏名又は名称】OKIサーキットテクノロジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山村 明宏
(72)【発明者】
【氏名】富樫 康久
(72)【発明者】
【氏名】島▲崎▼ 一紀
(72)【発明者】
【氏名】新藤 浩之
【テーマコード(参考)】
5E338
【Fターム(参考)】
5E338AA03
5E338BB05
5E338BB12
5E338BB63
5E338CC08
5E338EE02
(57)【要約】
【課題】放熱性に優れるプリント配線板を提供。
【解決手段】1層以上の絶縁層(26)および複数の導体層(28、30)を積層して構成されたコア基板(22)と、コア基板の積層方向にわたって立設された伝熱部材(34)とを有するプリント配線板(10)はさらに、コア基板(22)の少なくとも一方の表層面上に積層され1層以上の絶縁層(44)および1層以上の導体層(46、48)から構成されているビルドアップ層(24)を有し、ビルドアップ層(24)は伝熱部材(34)との間で熱を授受する伝熱路(53)を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1層以上の絶縁層および複数の導体層を積層して構成されたコア基板と、
該コア基板の積層方向にわたって立設された伝熱部材とを有するプリント配線板であって、該プリント配線板はさらに、
前記コア基板の少なくとも一方の表層面上に積層され、1層以上の絶縁層および1層以上の導体層から構成されているビルドアップ層を有し、
前記ビルドアップ層は、前記伝熱部材との間で熱を授受する伝熱路を有することを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
請求項1に記載のプリント配線板において、前記伝熱路はビアを含んで構成されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項3】
請求項2に記載のプリント配線板において、前記ビアは熱伝導率が0.37W/mK以上である材料で充填されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項4】
請求項2または3に記載のプリント配線板において、前記ビアは樹脂で充填されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項5】
請求項2または3に記載のプリント配線板において、前記ビアは金属または合金で充填されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項6】
請求項2または3に記載のプリント配線板において、前記ビアの少なくとも一部はスタックビアであることを特徴とするプリント配線板。
【請求項7】
請求項2または3に記載のプリント配線板において、前記ビアの少なくとも一部はスキップビアであることを特徴とするプリント配線板。
【請求項8】
請求項2または3に記載のプリント配線板において、前記ビルドアップ層に設けられている前記ビアの径は、前記ビルドアップ層の積層方向において外界に露出している表層面側に位置している頂径の方が、前記コア基板が配設されている方向寄りに位置している底径よりも大きいことを特徴とするプリント配線板。
【請求項9】
請求項1ないし3のいずれかに記載のプリント配線板において、前記ビルドアップ層の絶縁層の熱伝導率は0.8W/mK以上であることを特徴とするプリント配線板。
【請求項10】
請求項9に記載のプリント配線板において、前記ビルドアップ層の絶縁層の熱伝導率は3.0W/mK以上であることを特徴とするプリント配線板。
【請求項11】
請求項1ないし3のいずれかに記載のプリント配線板において、前記ビルドアップ層の絶縁層の熱伝導率は、前記コア基板の絶縁層の熱伝導率よりも高いことを特徴とするプリント配線板。
【請求項12】
請求項1ないし3のいずれかに記載のプリント配線板において、前記ビルドアップ層では、前記絶縁層の積層方向における熱膨張率と前記導体層の熱膨張率との差は、1ppm/℃以下であることを特徴とするプリント配線板。
【請求項13】
請求項1ないし3のいずれかに記載のプリント配線板において、前記ビルドアップ層では、前記絶縁層の積層方向における熱膨張率が16~18ppm/℃の範囲内にあることを特徴とするプリント配線板。
【請求項14】
請求項1ないし3のいずれかに記載のプリント配線板において、前記ビルドアップ層の絶縁層の積層方向における熱膨張率は、前記コア基板の絶縁層の積層方向における熱膨張率よりも小さいことを特徴とするプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
絶縁体基板上またはその内部に導体の配線を施したプリント配線板は、集積回路、コンデンサ、抵抗器など様々な電子部品を実装することにより電子回路として動作する。このような電子回路すなわちプリント回路板は、様々な電子機器に搭載されている。
【0003】
したがって、プリント回路板の不可欠な構成要素となるプリント配線板は、電子機器の主要な構成要素として、電子機器の繰返しの使用に耐え得る耐久性が求められる。特に、電子機器の使用中は、プリント回路板として動作するプリント配線板に熱が不可避的に発生するが、発生した熱をどのようにして放熱処理するかが問題となっている。
【0004】
例えば、下記特許文献1に開示されているプリント配線板では、垂直方向への放熱性を高めるべく、コア基板の貫通孔に放熱部材を収容する構成を採っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、プリント配線板に収容した放熱部材の表面に絶縁層を積層すると、配線板の表面実装部品に設けられたサーマルパッドからの熱は、プリント配線板に埋め込んだ放熱部材には十分に伝わらなかった。
【0007】
さらに、プリント回路板の動作に伴い、プリント配線板の表面に積層した絶縁層と導体層の温度が上昇し、プリント回路板を搭載した電子機器を繰り返し使用するうちにそれらの層が剥離するデラミネーションが発生することや、導体層としてのめっきにクラックが発生することがあった。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑み、放熱性に優れるプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上述の課題を解決するために、1層以上の絶縁層および複数の導体層を積層して構成されたコア基板とコア基板の積層方向にわたって立設された伝熱部材とを有するプリント配線板はさらに、コア基板の少なくとも一方の表層面上に積層され1層以上の絶縁層および1層以上の導体層から構成されているビルドアップ層を有し、ビルドアップ層は伝熱部材との間で熱を授受する伝熱路を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、放熱性に優れるプリント配線板を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係るプリント配線板の実施形態を含むプリント回路板の一例を示す概略的な断面図である。
【
図2】
図1で示す例示的なプリント回路板の概略的な分解斜視図である。
【
図3】本発明に係るプリント配線板の実施形態の概略的な分解斜視図である。
【
図4】
図1で示されるプリント配線板の積層構成例を表の形式で示す図である。
【
図5】本発明の各実施例で絶縁層の形成に使用した材料の特性を表の形式で示す図である。
【
図6】
図1で示すプリント配線板の一実施例の概略的な要部断面図である。
【
図7】
図1で示すプリント配線板の別の実施例の概略的な要部断面図である。
【
図8】本発明の各実施例に設けられた主な構成要素に関連する寸法を表の形式で示す図である。
【
図9】
図1で示すプリント配線板の一変形例の概略的な要部断面図である。
【
図10】
図1で示すプリント回路板の実施形態における放熱の流れを概略的に示す図である。
【
図11】本発明の各実施例に対して実行した熱衝撃試験の各種条件を表の形式で示す図である。
【
図12】本願発明に係るプリント配線板を含むプリント回路板の別の実施形態を示す概略的な断面図である。
【
図13】
図12で示すプリント配線板の概略的な分解斜視図である。
【
図14】
図12で示す実施形態であるプリント配線板の積層構成例を表の形式で示す図である。
【
図15】
図12で示すプリント配線板の一実施例の概略的な要部断面図である。
【
図16】
図12で示すプリント配線板の別の実施例の概略的な要部断面図である。
【
図17】
図12で示すプリント回路板の実施形態における放熱の流れを概略的に示す図である。
【
図18】
図12で示すプリント配線板の各実施例に対して熱衝撃試験を実行した後に測定した、隣接して配列されている所定の構成要素間の絶縁抵抗値を表の形式で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に添付図面を参照して本発明によるプリント配線板の実施形態を詳細に説明する。なお、本願添付の断面図において同一の構成要素は、同一の参照符号で示すか、または、ハッチングの間隔および傾斜角度を統一させて描写している。
【0013】
図1を参照すると、本発明によるプリント配線板10の一実施形態は、その頂面にLSI(大規模集積回路)12が実装されている。また、プリント配線板10の底面にはヒートシンク14が、LSI 12で発生した熱を受け取って放熱できるように実装されている。このように、LSI 12、ヒートシンク14、さらに任意の回路部品を実装することにより、プリント配線板10を含むプリント回路板20が形成される。
【0014】
プリント配線板10は、コア基板22のほか、コア基板22の一方の表層面上、
図1では頂面上に積層されたビルドアップ層24を含んで構成されている。
【0015】
コア基板22は、複数の層が積層された導体層と、各層の銅箔の間に積層されたコア絶縁層26とを主要な構成要素とする。本実施形態では、導体層は銅箔で形成されている。導体層を銅箔によって形成することは、プリント配線板10にとって特に好適な構成といえる。
【0016】
コア基板22に積層された各銅箔は、プリント回路板20の回路パターンを形成する導電層28またはプリント回路板20で発生した熱の移動経路となる伝熱層30等としての機能を発揮するように構成することができる。なお、コア基板22に積層される好適な銅箔の層数は例えば10層であるが、描写の簡略化の観点から、
図1では一部の銅箔を除き図示を省略している。
【0017】
コア基板22には、その頂面から底面にかけて各銅箔層および各コア絶縁層26を貫通する貫通孔32が設けられている。すなわち、貫通孔32はコア基板22の積層方向にわたって貫通している孔である。貫通孔32の側部内壁面には、めっきを被覆して形成した伝熱層30が設けられている。
【0018】
コア基板22は、貫通孔32内で立設するよう貫通孔32に挿入された伝熱部材34を有する。伝熱部材34は、伝熱性に優れた任意の材料を用いて貫通孔32の孔部形状に適合するように形成することができるが、特に好適には本実施例のように銅製の円柱体、いわゆる銅コインである。貫通孔32内に挿入された伝熱部材34の頂面および底面もまた、伝熱層30を形成する材料で被覆される。このような構成から、伝熱部材34の頂面および底面を被覆した伝熱層30は、実質的に伝熱部材34の一部分を構成するものとして捉えることも可能である。
【0019】
伝熱部材34の底部から頂部までの高さは、コア基板22の厚さと同一であるかまたはほぼ等しい。コア基板22の全厚からコア基板22の頂面側または底面側の最外層部として設けられる伝熱層30の合計厚さを減じた長さを伝熱部材34の高さとして形成すると、より好適である。このような寸法で伝熱部材34を形成すると、伝熱部材34を貫通孔32内に挿入した後に伝熱部材34の頂面および底面上を伝熱層30で被覆した場合に、コア基板22における伝熱部材34の埋設位置の厚さはコア基板22の他部分の厚さと同一になるからである。
【0020】
本実施例のように伝熱部材34が銅製の円柱体である場合、伝熱部材34の外径は、めっきによる伝熱層30が被覆された貫通孔32の内径よりわずかに小さい。伝熱部材34の外径と伝熱層30被覆後の貫通孔32の内径との差は、好ましくは、伝熱部材34が貫通孔32に挿入可能であるが挿入後に貫通孔32の内壁と伝熱部材34の外周部の間に不要な隙間が実質的に生じない程度のわずかな差である。
【0021】
一般に、コア基板22には、異なる回路層間を接続する多くのビアが設けられている。コア基板22には、接続する導電層28の積層位置に応じて、埋込ビア、ブラインドビアおよびスルーホールビアが設けられる。
図1では、コア基板22に設けられるビアの例として、コア基板22の底面側に設けられた導電層28bと頂面側に設けられた導電層28tを接続するめっきスルーホール36が図示されている。
【0022】
コア基板22の底部側表層面上には、ソルダーレジスト38が被覆され、導電層28bなどの保護を図っている。ただし、伝熱部材34の底面を被覆するようにコア基板22の底面上に配置された伝熱層30の表面は、伝熱シート40を介してヒートシンク14と接続されている。伝熱シート40は、伝熱性に優れる任意の材料を薄い板状に成形することによって形成され、伝熱性に優れる材料としては例えば、アクリル系、シリコン系などの樹脂が用いられる。
【0023】
コア基板22の頂部側表層面上に積層されるビルドアップ層24は、ビルドアップ層24内でさらに任意の層数が積層された導体層、特に好ましくは銅箔と、コア基板22またはビルドアップ層24に含まれる導体層の間に積層されたビルドアップ絶縁層44とを主要な構成要素とする。ビルドアップ層24内に積層された導体層は、プリント回路板20の回路パターンを形成する導電層46、プリント回路板20で発生した熱の移動経路となる伝熱層48の一部分などとしての機能を発揮するように構成することができる。なお、コア基板22の頂層面上に積層されるビルドアップ層24内に設けられる導体層およびビルドアップ絶縁層44の層数は、ともに1層以上の任意の層数でよいが、好適な一例としては本実施形態のようにともに2層ずつである。
【0024】
コア基板22は、ビルドアップ層24を介してLSI 12と接続される。ビルドアップ層24には、導電ビア50および伝熱ビア52が設けられる。LSI 12とコア基板22の間を結ぶ通信路の構築としての接続は、導電層46とともに導電ビア50を介してなされる。LSI 12とコア基板22の間をつなぐ伝熱路53の構築としての接続は、伝熱層48とともに伝熱ビア52を介してなされる。すなわち、ビルドアップ層24は、少なくとも伝熱層48および伝熱ビア52を含んで構成され、LSI 12から受け取った熱をコア基板22、とりわけ伝熱部材34に受け渡す伝熱路53を有するといえる。
【0025】
ビルドアップ層24の具体的な内部構造については、さまざまな構成を採ることが可能である。いくつかの好適な構成例については詳細に後述する。
【0026】
LSI 12は、通信信号の入出力端子となる信号パッド54および放熱出口としての伝熱パッド56を有する。信号パッド54と導電層46および導電ビア50との接続、ならびに伝熱パッド56と伝熱層48および伝熱ビア52との接続は、金属めっきなどから形成されたバンプ58を介してなされる。
【0027】
プリント配線板10の頂面に相当するビルドアップ層24の表層面上には、ソルダーレジスト60が被覆され、導電層46などの保護を図っている。
【0028】
図2で示すように、プリント配線板10の頂面、すなわちビルドアップ層24の表層面に露出する導電層46および伝熱層48の配列は、LSI 12の底面に設けられている信号パッド54および伝熱パッド56の配列に適合させる。これにより、LSI 12はバンプ58を介してプリント配線板10上に適切に実装することができる。
【0029】
また、伝熱シート40を介してヒートシンク14を配置するプリント配線板10の底面上の位置は、プリント配線板10の頂面上にLSI 12を実装する位置、すなわち導電層46および伝熱層48の配列位置の略垂直下方にすることが好ましい。かかる配置構成によれば、LSI 12で発生した熱は効率的にヒートシンク14まで伝達されることとなるからである。
【0030】
また、
図3に示すように、LSI 12からヒートシンク14への熱伝達をより効率的にするためには、プリント配線板10において伝熱部材34を挿入可能な貫通孔32を穿設する位置は、プリント配線板10の頂面上に露出する伝熱層48が配置される位置の略垂直下方であることが好ましい。
【0031】
続いて、本実施形態の内部構造の一部となっているビルドアップ層24に特に着目して、上述した実施形態の範疇に含まれるより具体的な構成例を、
図4ないし
図9を参照しながらより詳細に説明する。
【0032】
上述の実施形態を採るプリント配線板10は、銅箔の層数や各銅箔層の厚さ、銅箔層間に積層される絶縁層の形成材料やその厚さなどを任意に設計して具現化することができる。
図4は、上述したプリント配線板10の実施形態として実際に製造した2つのタイプのプリント配線板の主な使用材料および局所寸法を、実施例1および実施例2として表の形式で示したものである。
【0033】
プリント配線板10の実施例1、実施例2ともに、コア基板22内の銅箔層として10層(
図4の表におけるL3ないしL12)、ビルドアップ層24内の銅箔層として2層(
図4の表におけるL1およびL2)、すなわち合計12層の銅箔層を有する。
【0034】
実施例1、2ともに、コア基板22内の銅箔層間に設けられたコア絶縁層26を形成する材料として、いずれも昭和電工マテリアルズ株式会社によって製造された、銅張積層板MCL-E-679FGまたはプリプレグGEA-679FGを使用した。
【0035】
ビルドアップ層24内のビルドアップ絶縁層44を形成する材料の熱伝導率は、より大きいほど好適である。実施例1、2では、ビルドアップ層24内のビルドアップ絶縁層44を形成する材料として、昭和電工マテリアルズ株式会社製のプリプレグGEA-679FGを使用した。
【0036】
これらの絶縁層を形成するために使用した上述の材料の熱伝導率などの特性は、
図5の表に示すとおりである。なお、
図5の表に示すガラス転移点(Tg)は、熱機械分析(TMA)により得られた数値範囲である。少なくとも
図5の表で示す各特性に関しては、銅張積層板MCL-E-679FGとプリプレグGEA-679FGとでは、数値上同一の特性を有する。
【0037】
図6は、実施例1の構成要素となるビルドアップ層24の断面を部分的に拡大して示している。なお、ビルドアップ層24は、本実施例を概念として包含する実施形態を示す
図1でもプリント配線板10の一部分として描写しているが、
図1では描写を省略した構造部分も含めて
図6ではより詳細に明示している。
【0038】
ビルドアップ層24に設けられる導電ビア50はフィルドビアである。導電ビア50は、ビルドアップ絶縁層44の各層に開口部を穿設し、穿設した開口部の内壁に壁めっき62を施し、壁めっき62を施した後の開口部を充填材料で埋めることによって、スタックビアとして形成することができる。開口部を埋めた充填材料は、充填部64としてビルドアップ絶縁層44内に固定された状態で設けられることとなる。
【0039】
導電ビア50内の充填部64を形成する充填材料としては、好ましくは熱伝導率が大きな樹脂を用いることができ、熱伝導率が大きいほど好適となる。
図6で示す実施例1では、充填材料として、山栄化学株式会社によって製造されたPHP900 IR-6PVを使用した。使用したPHP900 IR-6PVの熱伝導率は、温度波分析法ISO22007-3によって測定したところ0.37W/mKであった。
【0040】
導電ビア50は、ビルドアップ絶縁層44の1層ごとに独立して設けられ、1つ下の絶縁層44に形成された導電ビア50もしくは導電層46に、またはコア基板22の頂面に形成された導電層28tに接続される。
【0041】
ビルドアップ層24に設けられる伝熱ビア52もまたフィルドビアである。伝熱ビア52は、ビルドアップ絶縁層44の各層に開口部を穿設し、穿設した開口部の内壁に壁めっき62を施し、壁めっき62を施した後の開口部を充填材料で埋めることによって、スタックビアとして形成することができる。開口部を埋めた充填材料は、充填部64としてビルドアップ絶縁層44内に固定された状態で設けられることとなる。
【0042】
伝熱ビア52内の充填部64を形成する充填材料としては、導電ビア50の形成の場合と同様、熱伝導率が大きな樹脂を用いることができる。
図6で示す実施例1で伝熱ビア52の形成のために使用した樹脂は、導電ビア50と同じく、山栄化学株式会社によって製造されたPHP900 IR-6PVであった。
【0043】
伝熱ビア52は、ビルドアップ絶縁層44の1層ごとに独立して設けられ、1つ下の絶縁層44に形成された伝熱ビア52もしくは伝熱層48に、またはコア基板22の頂面に形成された伝熱層30に接続されている。
【0044】
なお、本実施形態では、導電ビア50および伝熱ビア52の外径はともに、LSI 12などの部品を実装する面すなわちプリント配線板10の表層面側の外径の方が、コア基板22寄りの側の外径よりも大きくなるように形成されている。すなわち、導電ビア50および伝熱ビア52が有する頂径と底径の寸法を比較すると、ビルドアップ層24の積層方向において外界に露出している表層面側に位置している頂径の方が、コア基板22が配設されている方向寄りに位置している底径よりも大きいこととなる。かかる構成により、LSI 12から伝熱部材34への伝熱効率を上げるなどの利点を得ることも可能となる。
【0045】
導電ビア50および伝熱ビア52はともに、LSI 12などの部品を実装する面すなわちプリント配線板10の表層面側にあたる充填部64の直上には、蓋めっき66が形成されている。蓋めっき66を形成する材料は、壁めっき62の材料と同一のものでもよく、あるいは壁めっき62の材料とは別のめっき材料を用いても構わない。
【0046】
このような蓋めっき66の形成により、とりわけビアの直上に別のビア、ランドまたはLSI 12のパッド54、56を配設したときに、導電ビア50の導電効率および伝熱ビア52の伝熱効率が上がることとなる。
【0047】
図7は、実施例2の構成要素となるビルドアップ層24の断面を部分的に拡大して示している。実施例2の構成でも、導電ビア50および伝熱ビア52の形成および配置に関しては実施例1の構成とは同様である。しかしながら、実施例2の場合、銅めっきによって充填部64が形成される点が、実施例1との構成上の相違点となっている。もっとも、銅めっき以外の任意の金属または合金のめっきを用いることも可能である。
【0048】
実施例2において、充填部64を形成する充填材料として使用した銅めっきの熱伝導率は、398W/mKであった。
【0049】
実施例2では、ビルドアップ層24に穿設した開口部に充填された銅めっきは、実施例1における充填部64のみならず蓋めっき66にも相当する構成要素とみなすことが可能である。
【0050】
本実施形態による実施例1および2では、主な構成要素の寸法を
図8の表で示すとおりに設定した。
【0051】
ここで、ビア径(DH)とは、
図6および
図7に示すように、導電ビア50および伝熱ビア52を形成するために穿設された穴の、LSI 12などの部品を実装する面すなわちプリント配線板10の表層側の直径、いわば頂径のことを指す。なお、ビア径DHの寸法は、導電ビア50であるか伝熱ビア52であるかを問わず、実施例毎に
図8の表で示す値を採る。
【0052】
ランド径(DL)とは、
図6および
図7に示すように、導電ビア50および伝熱ビア52の頂部周囲に設けられた銅箔またはめっきで形成された円形の導体パターンの直径のことを指す。いずれの実施例においても、導電ビア50のランド径DLは、伝熱ビア52のランド径DLと同一の寸法に設定した。
【0053】
ビアピッチとは、最も近くで隣接するビア同士の中心間距離のことを指す。いずれの実施例においてもビアピッチは同一に設定した。
【0054】
銅コイン径とは、伝熱部材34としてコア基板22内に埋設された円柱体形状を採る銅コインの頂面および底面の直径のことを指す。実施例1および2では、銅コインの寸法を同一にした。
【0055】
プリント配線板10の構成は、上述の実施形態に限らず、本発明の技術的思想の範囲内で適宜変形させても構わない。以下において、本発明に係るプリント配線板10の一変形例を、
図9を参照しながら説明する。なお、以下に説明するプリント配線板の一変形例は、ビルドアップ層24の構成が
図1で示す実施形態と異なっている。この変形例の構成のうち、コア基板22の構成に関しては上述の実施形態のコア基板22の構成と同様なので、詳細な説明および図示は省略する。
【0056】
図9で示すプリント配線板10の変形例は、実施例1に係る上述の実施形態から、いくつかの導電ビアおよび伝熱ビアの構成を変えたものである。本変形例では、ビルドアップ層24に設けられる導電ビアおよび伝熱ビアの一部は、複数のビルドアップ絶縁層44にわたって及ぶスキップビア50s、52sとして構成されている。このように、ビルドアップ層24に設けられる導電ビアおよび伝熱ビアのうち少なくとも一部は、
図1などで示すスタックビアではなくスキップビアにより構成してもよい。
【0057】
スキップビアである導電ビア50sは、ビルドアップ絶縁層44内の少なくとも2層を貫通する開口部を穿設し、穿設した開口部の内壁に壁めっき62を施し、壁めっき62を施した後の開口部を充填材料で埋めることによって、フィルドビアとして形成することができる。開口部を埋めた充填材料は、充填部64としてビルドアップ絶縁層44内に固定された状態で設けられることとなる。
【0058】
スキップビアである伝熱ビア52sもまた、ビルドアップ絶縁層44内の少なくとも2層を貫通する開口部を穿設し、穿設した開口部の内壁に壁めっき62を施し、壁めっき62を施した後の開口部を充填材料で埋めることによって、フィルドビアとして形成することができる。開口部を埋めた充填材料は、充填部64としてビルドアップ絶縁層44内に固定された状態で設けられることとなる。
【0059】
なお、本変形例においても、導電ビア50sおよび伝熱ビア52sの外径はともに、LSI 12などの部品を実装する面すなわちプリント配線板10の表層側の外径の方が、コア基板22寄りの側の外径よりも大きくなるように形成される。すなわち、導電ビア50sおよび伝熱ビア52sが有する頂径と底径の寸法を比較すると、ビルドアップ層24の積層方向において外界に露出している表層面側に位置している頂径の方が、コア基板22が配設されている方向寄りに位置している底径よりも大きいこととなる。かかる構成により、LSI 12から伝熱部材34への伝熱効率を上げるなどの利点を得ることも可能となる。
【0060】
導電ビア50sおよび伝熱ビア52s内の充填部64を形成する充填材料としては、熱伝導率が大きな樹脂を用いることができる。あるいは、充填部64を形成する充填材料として、樹脂に代えて実施例2のように銅や同様の金属材料によるめっきを用いることもできる。なお、導電ビア50sおよび伝熱ビア52s内の充填部64を樹脂により形成した場合、
図9でも示すように充填部64の頂面上に蓋めっき66を被覆することができる。
【0061】
続いて、
図10を参照しながら、本実施形態に係るプリント配線板10およびこれを含んで構成されているプリント回路板20の放熱動作についての説明をする。なお、以下においては、プリント配線板10は
図1に示す実施例1の構成を採るものとして、放熱の流れを矢印H1ないしH5で示している
図10を参照しながら放熱動作の説明をする。
【0062】
プリント配線板10に実装されたLSI 12の動作は、信号パッド54にバンプ58を介して接続されている導電層46から電源電流および信号電流が入出力されることによってなされる。動作に伴ってLSI 12は熱を発生し、発生した熱は伝熱パッド56を介してLSI 12の外部に放出される。
【0063】
伝熱パッド56から放出されたLSI 12の熱は、バンプ58を介してプリント配線板10の表層に配設されている伝熱層48に伝導される(矢印H1)。伝熱層48に伝導された熱はさらに、ビルドアップ層24の内部に配設された伝熱ビア52および伝熱層48を介して、プリント配線板10のコア基板22に伝熱される。また、伝熱層48に伝導された熱は、ビルドアップ層24の内部に配設された伝熱ビア52および伝熱層48を介してビルドアップ絶縁層44にも伝熱され、ビルドアップ層24の側端部からも放熱されることとなる(矢印H2)。このように、ビルドアップ層24内での熱の流れを示している矢印H1およびH2は、伝熱路53における伝熱過程を例示したものといえる。
【0064】
ビルドアップ層24からコア基板22への熱伝導は特に、コア基板22の頂面を配設領域に含んでいる伝熱層30を介してなされる。コア基板22の伝熱層30に伝導された熱は、銅コインなどである伝熱部材34を介してコア基板22の底面方向に伝導されるとともに、コア基板22の内層として積層されている伝熱層30を介してプリント配線板10の水平方向にも伝熱され、コア基板22の側端部からも放熱されることとなる(矢印H3)。
【0065】
伝熱部材34などを介してコア基板22の底面に設けられた伝熱層30に伝導された熱は、さらに伝熱シート40を介してヒートシンク14に伝導される(矢印H4)。そして、ヒートシンク14に伝導された熱は、最終的にヒートシンク14からその外部に放熱される(矢印H5)。
【0066】
続いて、プリント配線板10の信頼性を評価するために実行した熱衝撃試験について説明する。実施例1または2の構成を採るプリント配線板10をそれぞれ製造して、それぞれの実施例に係るプリント配線板10に対して熱衝撃試験を実行した。実行した熱衝撃試験の各種条件は
図11の表に示すとおりである。
【0067】
まずは、熱衝撃試験実行後のプリント配線板10の外観を目視した。実施例1、実施例2のプリント配線板10からはともに、プリント配線板10の表面から露出しているパターン(例えば、導電層28、46および伝熱層30、48)の断線、ソルダーレジスト38、60の膨れ、プリント配線板10に織り込まれたガラス繊維が剥離するミーズリング、積層した絶縁層26、44が剥離するデラミネーションは見つからなかった。
【0068】
熱衝撃試験後に測定した、導電ビア50を含む導電パターンの導通抵抗変化率は、10%以下であった。また、熱衝撃試験後に測定した、導電ビア50を含む導電パターンと伝熱部材(銅コイン)34および伝熱ビア52を含む伝熱パターンとの間におけるパターン間の絶縁抵抗値は、5.0×108Ω以上であった。
【0069】
熱衝撃試験実行後、実施例1および2のプリント配線板10をそれぞれ断面観察した。断面観察の結果、いずれの実施例についても導電ビア50、伝熱ビア52およびめっきスルーホール36にクラックは見つからなかった。
【0070】
ところで、ビルドアップ層24に形成される小径のビア、すなわち導電ビア50や伝熱ビア52は、ビアを囲繞する絶縁層44の熱膨張の影響を受けやすいはずである。しかしながら、3000回の温度変化サイクルを経た熱衝撃試験後でも、実施例1および2に設けられている導電パターンの導通抵抗変化率は最大でも10%と、十分小さなものであった。加えて、熱衝撃試験後の実施例1、2ともに、導電パターンと伝熱パターンの間に絶縁劣化が発生することもなく、良好な電気特性が保たれた。
【0071】
外観目視にてデラミネーションが見つからなかったこと、および断面観察にてめっき部分のクラックが見つからなかったことの原因としては、例えば以下のことが挙げられる。
【0072】
実施例1および2に係るプリント配線板10では、絶縁層26、44にガラス転移点Tgが高い材料、具体的には125℃以上の材料を用いたため、高温時の強度低下も生じなかった。
【0073】
また、実施例1および2ともに、伝熱ビア52は、熱伝導率が0.37W/mK以上の高伝熱材料を用いて充填部64を形成したフィルドビアであった。そのため、LSI 12から発せられる熱は効率よく伝熱ビア52の下方に配設された銅コイン34へと伝熱され、その結果、プリント配線板10の絶縁層、ビア、めっきスルーホールなど各部における温度上昇が抑えられた。
【0074】
さらに、実施例1および2ともに、ビルドアップ層24のビルドアップ絶縁層44に用いられた材料は、熱伝導率が0.8W/mKであり、絶縁層に使用される材料としてはかなり大きなものであった。そのため、プリント配線板10において温度が高い部分と逆に低い部分が一部分に集中して発生することもなく、ビルドアップ層24内に生じる応力が大きくなることもなかった。
【0075】
ところで、本実施形態の構成によれば、プリント配線板10は、バンプ58の周囲からの輻射熱による伝熱のほか、伝熱部材34、伝熱ビア52および伝熱層30、48からも伝熱される。そのため、プリント回路板20を製造する過程でLSI 12をプリント配線板10に実装するリフロー工程の実行時において、LSI 12を確実にプリント配線板10に実装することができた。
【0076】
次に、
図12以降を参照して本発明によるプリント配線板の別の実施形態を詳細に説明する。
図12で示すプリント回路板20に含まれるプリント配線板10の実施形態は、
図1で示した先の実施形態の構成に加えて、コア基板22の底面側すなわちヒートシンク14を実装する面側に、さらなるビルドアップ層72を設ける構成を採っている。なお、本実施形態の構成のうち、
図1で示した先の実施形態の構成と共通する部分については、
図1で図示した構成要素と同一の参照符号を付与し、以後において詳細な説明を省略する。
【0077】
ビルドアップ層72は、先の実施形態と同様にコア基板22に積層されているビルドアップ層24の積層面の反対側の面上、すなわちコア基板22の底部側表層面上に積層される。ビルドアップ層72は、ビルドアップ層72内でさらに任意の層数が積層された導体層、特に好ましくは銅箔と、コア基板22またはビルドアップ層72に含まれる導体層の間に積層されたビルドアップ絶縁層74とを主要な構成要素とする。
【0078】
ビルドアップ層72内に積層された各銅箔は、プリント回路板20の回路パターンを形成する導電層76、プリント回路板20で発生した熱の移動経路となる伝熱層78の一部分などとしての機能を発揮するように構成することができる。なお、コア基板22の底層面上に積層されるビルドアップ層72内に設けられる導体層およびビルドアップ絶縁層74の層数は、ともに1層以上の任意の層数でよいが、好適な一例としては本実施形態のようにともに2層ずつである。
【0079】
コア基板22は、ビルドアップ層72を介してヒートシンク14と接続される。また、ビルドアップ層72の底面すなわち本実施形態に係るプリント配線板10の底面上には、ヒートシンク14の他にも任意の電子部品80を実装することができる。電子部品80の動作は、バンプ58を介して接続されている導電層76から電源電流および信号電流が入出力されることによってなされる。
【0080】
ビルドアップ層72には、導電ビア82および伝熱ビア84が設けられる。導電層76および同層と電気的に接続された導電ビア82を介して、電子部品80とコア基板22の間をつなぐ通信路の構築としての接続がなされる。電子部品80と導電層76との間は、バンプ58を介して接続することができる。
【0081】
ヒートシンク14とコア基板22の間をつなぐ伝熱経路の構築としての接続は、伝熱層78とともに伝熱ビア84を介してなされる。より具体的に述べると、ビルドアップ層72に設けられた伝熱ビア84は、伝熱部材34の底面下に配設されている伝熱層30と接続され、これによりコア基板22から特にコア基板22内の伝熱部材34を介してヒートシンク14に至るまでの伝熱路85が形成される。すなわち、ビルドアップ層72は、少なくとも伝熱層78および伝熱ビア84を含んで構成されコア基板22、とりわけ伝熱部材34から熱を受け取りさらにヒートシンク14へ受け渡す伝熱路85を有するといえる。
【0082】
もちろん、図示の構成に限らず、ビルドアップ層72の具体的な内部構造については、さまざまな構成を採ることが可能である。
【0083】
ビルドアップ層72の底部側表層面上には、ソルダーレジスト86が被覆され、導電層76などの保護を図っている。ただし、ビルドアップ層72の底面上に露出して配置された伝熱層78の表層面は、
図1で示す先の実施形態と同様に、伝熱シート40を介してヒートシンク14と接続される。
【0084】
本実施形態に係るプリント配線板10は、
図2で示す先の実施形態の場合と同様に、プリント配線板10の頂面、すなわちビルドアップ層24の表層面に露出する導電層46および伝熱層48の配列は、LSI 12の底面に設けられている信号パッド54および伝熱パッド56の配列に適合させる。これにより、LSI 12はバンプ58を介してプリント配線板10上に適切に実装することができる。
【0085】
また、
図13に示すように、本実施形態におけるLSI 12からヒートシンク14への熱伝達をより効率的にするためには、コア基板22の底面層の直下に層接合されるビルドアップ層72の表層面上に露出する伝熱ビア84は、伝熱部材34の底面直下に儲けられプリント配線板10の底面上に露出している伝熱層30が配置される位置の直下に配列されることが好ましい。その他の、特にコア基板22およびビルドアップ層24に配列される各要素の配列位置は、先の実施形態と同様の位置でも構わない。
【0086】
続いて、本実施形態の内部構造の一部となっているビルドアップ層72に特に着目して、本実施形態の範疇に含まれるより具体的な構成例を、
図14ないし
図16を参照しながらより詳細に説明する。
【0087】
本実施形態によるプリント配線板10は、銅箔の層数や各銅箔層の厚さ、銅箔層間に積層される絶縁層の形成材料やその厚さなどを任意に設計して具現化することができる。
図14は、本実施形態によるプリント配線板10として実際に製造した2つのタイプのプリント配線板の主な使用材料および局所寸法を、実施例3および実施例4として表の形式で示したものである。
【0088】
図12で示す本実施形態によるプリント配線板10の構造の、
図1で示した先の実施形態に対する相違点の1つは、コア基板22およびビルドアップ層24の他に、2層の銅箔を含んで形成されたビルドアップ層72が加わっているために、プリント配線板10の全体層数は14層となっていることにある。
【0089】
これらの実施形態の構造における別の相違点は、ビルドアップ層24、72の層間材料として使用した絶縁材にある。先の実施形態の場合、層L1-L2間および層L2-L3間の層間材料としてはGEA-679FG(昭和電工マテリアルズ株式会社製)を使用したことは上述したとおりである。これに対して、本実施形態の場合、ビルドアップ層24のビルドアップ絶縁層44となる層L1-L2間および層L2-L3間ならびにビルドアップ層72のビルドアップ絶縁層74となる層L12-L13間および層L13-L14間の層間材料として使用したのは、利昌工業株式会社によって製造されたプリプレグES-3245であった(
図14の表を参照)。
【0090】
プリプレグES-3245の主な材料特性は、プリント配線板10の実施例において絶縁層を形成し得る材料の1つとして
図5の表で示すとおりである。なお、実施例3および4におけるコア基板22内の層間材料としては、実施例1および2と同様、昭和電工マテリアルズ社製の銅張積層板MCL-E-679FGおよびプリプレグGEA-679FGを使用したが、これらの材料の主な特性は
図5ですでに示したとおりである。
【0091】
ビルドアップ層24、72に用いられる絶縁材料の熱伝導率は、0.8W/mK以上であることが好ましく、熱伝導率が大きいほどより好適である。本実施形態では、実施例3および実施例4のいずれにも、
図5の表で示すとおり熱伝導率が3.0W/mKであるプリプレグES-3245を用いた。
【0092】
また、同表で示すとおり、本実施形態におけるビルドアップ層24、72に用いられた層間材料の厚さ方向のガラス転移点Tg未満での熱膨張率(熱膨張係数)は16ppm/℃であった。そのため、ビルドアップ絶縁層44、74と、プリント配線板10でめっき、導体層および伝熱層に使用される銅の熱膨張率17ppm/℃との差の絶対値はわずか1ppm/℃であった。
【0093】
図15は、実施例3の構成要素となるビルドアップ層72の断面を部分的に拡大して示している。なお、ビルドアップ層72は、本実施例を概念として包含する実施形態を示す
図12でもプリント配線板10の一部分として描写しているが、
図12では描写を省略した構造部分も含めて
図15ではより詳細に明示している。
【0094】
ビルドアップ層72に設けられる導電ビア82はフィルドビアである。導電ビア82は、ビルドアップ絶縁層74の各層に開口部を穿設し、穿設した開口部の内壁に壁めっき88を施し、壁めっき88を施した後の開口部を充填材料で埋めることによって、スタックビアとして形成することができる。開口部を埋めた充填材料は、充填部90としてビルドアップ絶縁層74内に固定された状態で設けられることとなる。
【0095】
導電ビア82内の充填部90を形成する充填材料としては、好ましくは熱伝導率が大きな樹脂を用いることができ、熱伝導率が大きいほど好適となる。
図15で示す実施例3では、充填材料として、実施例1と同じく、熱伝導率が0.37W/mKである山栄化学株式会社製のPHP900 IR-6PVを使用した。
【0096】
導電ビア82は、ビルドアップ絶縁層74の1層ごとに独立して設けられ、1つ上の絶縁層74に形成された導電ビア82もしくは導電層76に、またはコア基板22の底面に形成された導電層28bに接続される。
【0097】
ビルドアップ層72に設けられる伝熱ビア84もまたフィルドビアである。伝熱ビア84は、ビルドアップ絶縁層74の各層に開口部を穿設し、穿設した開口部の内壁に壁めっき88を施し、壁めっき88を施した後の開口部を充填材料で埋めることによって、スタックビアとして形成することができる。開口部を埋めた充填材料は、充填部90としてビルドアップ絶縁層74内に固定された状態で設けられることとなる。
【0098】
伝熱ビア84内の充填部90を形成する充填材料としては、導電ビア82の形成の場合と同様、熱伝導率がより大きな樹脂を用いるほど好適である。
図15で示す実施例3で伝熱ビア84の形成のために使用した樹脂は、導電ビア82と同じく、山栄化学株式会社製のPHP900 IR-6PVであった。
【0099】
伝熱ビア84は、ビルドアップ絶縁層74の1層ごとに独立して設けられ、1つ上の絶縁層74に形成された伝熱ビア84もしくは伝熱層78に、またはコア基板22の底面に形成された伝熱層30に接続されている。
【0100】
なお、本実施形態では、導電ビア82および伝熱ビア84の外径はともに、ヒートシンク14や電子部品80を実装する面すなわちプリント配線板10の底層面側の外径の方が、コア基板22寄りの側の外径よりも大きくなるように形成されている。すなわち、導電ビア82および伝熱ビア84が有する頂径と底径の寸法を比較すると、ビルドアップ層72の積層方向において外界に露出している表層面側に位置している頂径の方が、コア基板22が配設されている方向寄りに位置している底径よりも大きいこととなる。
【0101】
図15で示す実施例の場合、導電ビア82および伝熱ビア84はともに、ヒートシンク14や電子部品80などを実装する面すなわちプリント配線板10の底層側にあたる充填部90の直下には、蓋めっき92が形成されている。蓋めっき92を形成する材料は、壁めっき88の材料と同一のものでもよく、あるいは壁めっき88の材料とは別のめっき材料を用いても構わない。
【0102】
このような蓋めっき92の形成により、とりわけビアの直下に別のビア、ランドまたは伝熱シート40を介してヒートシンク14と接続される伝熱層78を配設したときに、導電ビア82の導電効率および伝熱ビア84の伝熱効率が上がることとなる。
【0103】
図16は、実施例4の構成要素となるビルドアップ層72の断面を部分的に拡大して示している。実施例4の構成でも、導電ビア82および伝熱ビア84の形成および配置に関しては実施例3の構成とは同様である。しかしながら、実施例4の場合、充填部90は樹脂ではなく銅めっきによって充填されている点が、実施例3との構成上の相違点となっている。もっとも、銅めっき以外の任意の金属または合金のめっきにより充填部90を充填することも可能である。
【0104】
実施例4において、充填部90を形成する充填材料として使用した銅めっきの熱伝導率は、398W/mKであった。
【0105】
実施例4では、ビルドアップ層72に穿設した開口部に充填された銅めっきは、実施例3における充填部90のみならず蓋めっき92にも相当する構成要素とみなすことが可能である。
【0106】
本実施形態による実施例3および4では、主な構成要素の寸法を
図8の表で示すとおりに設定した。
【0107】
先の実施形態における実施例1および2の関係と同様、ランド径(DL)、ビアピッチおよび銅コイン径についてはいずれの実施例でも同一の寸法に設定しているが、導電ビア82および伝熱ビア84のビア径(DH)に関しては、実施例3と実施例4とで寸法が異なる。
【0108】
なお、ビルドアップ層24を
図9で示したような構成に変形させることが可能であることと同様、本実施形態で積層されるビルドアップ層72も、導電ビア82および伝熱ビア84の少なくとも一部をスタックビアではなくスキップビアで形成しても構わない。
【0109】
続いて、
図12で示す実施形態に係るプリント配線板10およびこれを含んで構成されているプリント回路板20の放熱動作についての説明をする。なお、以下においては、プリント配線板10は
図12に示す実施例3の構成を採るものとして、放熱の流れを矢印H1ないしH3および矢印H6ないしH8で示している
図17を参照しながら放熱動作の説明をする。
【0110】
LSI 12で発せられた熱がコア基板22の底層面に至るまでの伝熱の過程(矢印H1ないしH3)は、
図10で示した先の実施形態の伝熱過程と同様であるため、重複する説明は省略する。
【0111】
伝熱部材34などを介してコア基板22の底層面に設けられた伝熱層30に伝導された熱は、ビルドアップ層72の内部に配設された伝熱ビア84および伝熱層78を介して、伝熱シート40に伝熱される。また、伝熱層30に伝導された熱は、ビルドアップ層72の内部に配設された伝熱ビア84および伝熱層78を介してビルドアップ絶縁層74にも伝熱され、ビルドアップ層72の側端部からも放熱されることとなる(矢印H6)。伝熱シート40に達した熱は、さらにヒートシンク14に伝導される(矢印H7)。このように、ビルドアップ層72内での熱の流れを示している矢印H6およびH7は、伝熱路85における伝熱過程を例示したものといえる。
【0112】
伝熱路85を介してヒートシンク14に伝導された熱は、最終的にヒートシンク14からその外部に放熱される(矢印H8)。
【0113】
本実施形態の実施例3および4の構成を採るプリント配線板10に対しても、信頼性を評価すべく熱衝撃試験を実行した。実施例3および4に対する熱衝撃試験の各種条件は、先の実施形態の実施例1および2に対する試験条件と同一すなわち
図11の表に示すとおりであった。
【0114】
まずは、熱衝撃試験実行後のプリント配線板10の外観を目視した。実施例3、実施例4のプリント配線板10からはともに、プリント配線板10の表面から露出しているパターン(例えば、導電層28、46、76および伝熱層30、48、78)の断線、ソルダーレジスト38、86の膨れ、プリント配線板10に織り込まれたガラス繊維が剥離するミーズリング、積層した絶縁層26、44、74が剥離するデラミネーションは確認できなかった。
【0115】
本実施形態の実施例3および4に対する熱衝撃試験でも、熱衝撃試験後に測定した導電ビア50を含む導電パターンの導通抵抗変化率は、10%以下であった。そして、熱衝撃試験後に測定した、導電ビア50を含む導電パターンと伝熱部材(銅コイン)34および伝熱ビア52を含む伝熱パターンとの間におけるパターン間の絶縁抵抗値は、5.0×108Ω以上であった。
【0116】
加えて、本実施形態の実施例3および4に対する熱衝撃試験後には、隣接して配列されている所定の構成要素間の絶縁抵抗値についても測定したが、その結果は
図18の表に示すとおりであった。
【0117】
また、熱衝撃試験実行後、実施例3および4のプリント配線板10をそれぞれ断面観察した。断面観察の結果、いずれの実施例についても導電ビア50、82、伝熱ビア52、84およびめっきスルーホール36にクラックは見つからなかった。
【0118】
本実施形態によれば、プリント配線板10は、コア基板22の表底両面の面上にビルドアップ層24、72を積層することでパターン密度が高まり、底面側に設けられた導電層76に電子部品80やコネクタなどを接続することも可能となる。
【0119】
さらに、本実施形態によれば、コア基板22の厚さ方向の中心に対して対称な層構造を採ることになるため、プリント配線板10に生じる反りを軽減することができる。すなわち、本実施形態によれば、プリント配線板10の形状はより安定的になり、これによってプリント配線板10の信頼性が向上することとなる。
【0120】
さらに言えば、本実施形態の各実施例によれば、コア基板22を挟む両ビルドアップ層24、72の絶縁層44、74の積層方向における熱膨張率は、コア基板22の絶縁層26の積層方向における熱膨張率よりも小さいため、プリント配線板10の反りはより生じにくく、プリント配線板10の形状は極めて安定的である。
【0121】
また、
図5の表で示すとおり、本実施形態におけるビルドアップ絶縁層44、74として用いられた層間材料の厚さ方向におけるガラス転移点Tg未満での熱膨張率は16ppm/℃である。他方、プリント配線板10のめっき、導体層および伝熱層に使用された銅の熱膨張率は17ppm/℃であり、ビルドアップ絶縁層44、74の熱膨張率との差は絶対値にしてわずか1ppm/℃と、極めて小さいといえる。そのため、プリント配線板10が低温または高温環境下に置かれたとしても、ビルドアップ層24、72内に生じる応力は非常に小さく抑えられることとなる。
【0122】
このような応力に関する利点は、ビルドアップ層24、72において、ビルドアップ絶縁層44、74を、ビルドアップ層24、72内のめっきなどに用いた金属または合金の熱膨張率との差が絶対値で1ppm/℃以下となる材料で形成することによって得られる。すなわち、ビルドアップ層24、72内のめっき材として熱膨張率が17ppm/℃である銅を用いた場合には、熱膨張率が16~18ppm/℃の範囲内にある材料でビルドアップ絶縁層44、74を形成すればよいこととなる。
【0123】
これに加えて、本実施形態におけるビルドアップ絶縁層44、74として用いられた層間材料の熱伝導率は3.0W/mKと、プリント配線板の絶縁層に使用される材料の熱伝導率としては非常に大きなものであった。そのため、プリント配線板10において温度が高い部分と逆に低い部分が一部分に集中して発生することもなく、そのためにビルドアップ層24、72内に生じる応力が大きくなることもなかった。したがって、ビルドアップ絶縁層44、74が剥離するデラミネーションや、ビルドアップ層24、72内の導電ビア50、82、伝熱ビア52、84、導電層46、76および伝熱層48、78におけるクラックの発生も抑えられた。
【0124】
ところで、
図12に示す本実施形態の構成においても、プリント配線板10の頂面側は、バンプ58の周囲からの輻射熱による伝熱のほか、伝熱部材34、伝熱ビア52および伝熱層30、48からも伝熱されることになる。そのため、プリント回路板20を製造する過程でLSI 12をプリント配線板10に実装するリフロー工程の実行時において、LSI 12を確実にプリント配線板10に実装することができた。
【0125】
ここまで、本発明の実施形態およびその実施例の構成および動作について説明してきたが、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態およびその実施例に限定されるものではない。添付の特許請求の範囲およびその要旨を逸脱することなく、様々な変更、置換が可能であり、または上述の実施形態および実施例の構成と本質的に同等な構成のプリント配線板が具現化され得ることは、当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0126】
10 プリント配線板
22 コア基板
24 ビルドアップ層
26 (コア基板内)絶縁層
28 導電層
30 伝熱層
34 伝熱部材
44 ビルドアップ絶縁層
46 導電層
48 伝熱層
50 導電ビア
52 伝熱ビア
53 伝熱路
72 ビルドアップ層
74 ビルドアップ絶縁層
76 導電層
78 伝熱層
82 導電ビア
84 伝熱ビア
85 伝熱路