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  • 特開-ガラス板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168872
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】ガラス板
(51)【国際特許分類】
   C03C 21/00 20060101AFI20231121BHJP
   C03C 19/00 20060101ALI20231121BHJP
   C03C 17/245 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
C03C21/00 101
C03C19/00 Z
C03C17/245 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080236
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 丈太郎
【テーマコード(参考)】
4G059
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AB11
4G059AC02
4G059AC08
4G059AC16
4G059AC22
4G059EA05
4G059EB04
4G059HB03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高い耐圧強度を有しつつ任意の凹凸形状を付与可能なガラス板を提供する。
【解決手段】強化ガラス2と、上記強化ガラス2の少なくとも表面側に形成された透明無機層3と、を有するガラス板1である。強化ガラス2の厚さは、50μm以下である。更に上記透明無機層は、上記強化ガラスと対向する面とは反対側の面に、凹凸形状が形成されており、上記凹凸形状にて、表面に装飾が施され、更には表面反射低減の処置が施されていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面に圧縮応力層が形成されている板状の強化ガラスと、
上記強化ガラスの表面及び裏面のうちの少なくとも表面側に積層した透明無機層と、を有し、
上記透明無機層の厚さが50μm以下である、
ことを特徴とするガラス板。
【請求項2】
上記透明無機層は、上記強化ガラスと対向する面とは反対側の面に、凹凸形状が形成されている、請求項1に記載したガラス板。
【請求項3】
上記凹凸形状にて、表面に装飾が施されている、請求項2に記載したガラス板。
【請求項4】
上記凹凸形状にて、表面反射低減の処置が施されている、請求項2に記載したガラス板。
【請求項5】
請求項4に記載したガラス板であって、表示装置の表示部の表面を形成するガラス板。
【請求項6】
上記強化ガラスの表面に上記透明無機層が直接形成されている、請求項4に記載したガラス板。
【請求項7】
上記透明無機層の上に防指紋層が形成されている、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載したガラス板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い耐圧強度を有するガラス板に関する技術である。本発明は、情報機器の表示部やカーナビ等の表示装置の表面を形成する保護ガラスとして好適な技術である。
【0002】
なお、本発明は、テーブルの天板、ガラス陳列棚、ガラスドアなど、高い耐圧強度と意匠性(装飾性)を有する事が好ましい箇所に使用されるガラス板にも適用可能である。
【背景技術】
【0003】
タッチパネル等の表示装置の表示部の表面を形成するガラス板(保護ガラス)としては、例えば特許文献1に記載のガラス板がある。
【0004】
特許文献1に記載のように、表示装置は、視認側に透明な保護板が設けられ、強度などの観点から、保護板としてガラス板が使用されることも多い。また、表示装置の軽量化や薄型化の要求から、保護板も薄肉化することに鑑み、特許文献1に記載のように、保護板を構成する保護ガラスとして、高い耐圧強度を有する強化ガラスが使用されることも多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-178640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
強化ガラスは、通常のガラス(普通ガラス)に熱強化処理や化学強化処理を施すことで、表層に圧縮応力層が形成された、耐圧強度が高いガラスである。
【0007】
ここで、ガラス板の表面に凹凸加工を施して、ガラス板の表面を半透明にしたり、グレアの発生を抑制したりして、ガラス板の表面に反射低減機能を持たせたい場合もある。また、ガラス表面に装飾を施したい場合がある。
【0008】
しかし、強化ガラスは、表面が圧縮応力層で構成されることから、強化ガラスの表面を削って任意の凹凸形状を付与することは、困難若しくは手間が掛かる。一般に、強化ガラスに凹凸形状を付与する場合には、強化前のガラス表面に対し凹凸加工を施してから、強化処理を施して圧縮応力層を形成する必要があった。
【0009】
また、強化ガラス自体の表面に凹凸形状を形成することは、強度の低下が発生するため、一般に、強化ガラスの表面に任意の凹凸形状を付与することが行われなかった。これは、特に、微細な凹凸形状を形成する場合に顕著である。
【0010】
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、高い耐圧強度を有しつつ任意の凹凸形状を付与可能なガラス板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
課題解決のために、本発明の一態様は、少なくとも表面に圧縮応力層が形成されている板状の強化ガラスと、上記強化ガラスの表面及び裏面のうちの少なくとも表面側に積層した透明無機層と、を有するガラス板である。
【0012】
透明無機層の透明性は、可視光が透過可能な透明性を有していれば良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明の態様によれば、ガラス板表面を透明な無機層で形成することにより、強化ガラスの表面に対し、透明無機層の厚みの範囲に収まる程度の深さの凹凸状を付与しても、圧縮応力層に影響を与えることがない。つまり、凹凸形状を付与してもガラス板の強度低下を防ぐことができる。
この結果、本発明の態様によれば、高い耐圧強度を有しつつ、例えば後加工で、任意の凹凸形状を付与可能なガラス板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に基づく実施形態に係るガラス板を説明する断面図である。
図2】本発明に基づく実施形態に係るガラス板の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(構成)
本実施形態のガラス板1は、図1に示すように、強化ガラス2と、透明無機層3とを備える。
【0016】
<強化ガラス2>
本明細書で強化ガラス2は、少なくとも表面(おもて面)に圧縮応力層2aが形成されることで、高い耐圧強度を有するガラスを指す。図1では、上面を表面としている。
【0017】
なお、図1では、非圧縮応力のガラス部分2bの全周(表面、裏面、及び端面全周)に圧縮応力層2aが形成されている場合が例示されている。しかし、圧縮応力層2aは、少なくともガラス部分2bの表裏両面に形成されていれば良い。
【0018】
強化ガラス2は、普通ガラスに熱強化処理若しくは化学強化処理を行うことで、表層に圧縮応力層2aを形成したガラスである。強化ガラス2の板厚が3mm以下の場合、化学強化処理が好ましい。
強化ガラス2の材料その他には、公知の強化ガラスで使用されるものを採用すれば良い。
化学強化ガラスとしては、アルミノシリケートガラスが例示出来る。
強化ガラス2は、透明性を有していることが好ましいが、着色材が添加されて着色されていてもよい。
なお、強化ガラスは、例えば普通ガラスに比べ3倍以上の強度を有す。
【0019】
カーナビ等の表示部の保護ガラスとしての使用を考えた場合、強化ガラス2の厚さは、例えば0.3mm~3mmである。また、ガラス天板やガラスドアなどの装飾品への適用の場合には、例えば4mm~20mmである。
圧縮応力層2aの深さは、例えば、5μm~20μmであり、10μm以上であることが好ましい。
【0020】
また、強化ガラス2の表面圧縮応力は、例えば600MPa~900MPaである。また、強化ガラス2の表面の算出平均粗さは、例えば、0.07μm以下の平滑な面とする。
【0021】
<透明無機層3>
透明無機層3は、強化ガラス2の表面に積層した層である。
透明無機層3は、可視光が透過可能な透過性を有していればよい。すなわち、透明無機層3は、不透明でなければ、透過率が低くなっていても着色されていてもよい。すなわち、公知の着色材が添加されていても良い。ただし、表示部に設けられる場合には、透明性が高い方が好ましい。
【0022】
透明無機層3は、例えば、無機酸化ケイ素層が形成された普通ガラスで構成する。透明無機層3は、また、有機成分が含まれていてもよい。透明無機層3を形成する無機材料としては、酸化ケイ素、アルミニウムなどが例示できる。
透明無機層3は、強度は期待されていないが、表面加工性がよい材料であることが好ましい。
【0023】
透明無機層3は、強化ガラス2の表面に対し、例えば、蒸着、スパッタ、CVD、有機シリカ樹脂による焼成、もしくは、薄膜ガラスの熱融着、貼り合わせなどに積層される。
【0024】
視認性の観点からは、蒸着その他により、強化ガラス2の表面に対し、透明無機層3が直接形成されていることが好ましい。
【0025】
図1では、透明無機層3が、強化ガラス2の上面の表層を形成する圧縮応力層2aの全面に形成されているが、当該圧縮応力層2aの一部にだけ透明無機層3が形成されていても良い。すなわち、透明無機層3を、凹凸形状を付与する1又は2以上のエリアだけに形成してもよい。強化ガラス2の上面に透明無機層3を部分的に形成する場合、透明無機層3の厚さは薄い方が好ましい。
【0026】
透明無機層3の厚さは、透明無機層3の表面に形成する凹凸形状(図2符号3a参照)の深さよりも厚ければ特に限定は無い。すなわち、透明無機層3の厚さは、予定する凹凸加工による凹部の深さに応じて、十分な厚みになるよう設定する。これにより、凹凸形状を圧縮応力層2aの表面まで加工しないようになる。
【0027】
透明無機層3の厚さは、例えば50μm以下とする。透明無機層3の厚さは、軽量・薄肉化の観点からは、薄い方が好ましく、凹凸形状の形成に必要な厚さ以上の厚さにする必要は無い。すなわち、上記凹凸形状を形成する場合、透明無機層3の厚さは、形成する凹凸形状の深さ以上とする。
【0028】
(効果)
本実施形態のガラス板1では、圧縮応力層2aの上に表面加工用の透明無機層3を形成することで、高い耐圧強度を有しつつ、表面の後加工が可能なガラス板を提供可能となる。
【0029】
このため、本実施形態では、予めガラス表面に凹凸加工を施してから強化処理を実施する必要がなく、ガラス表面の加工の自由度が向上している。すなわち、本実施形態では、高い耐圧強度を有するガラス板1の表面に対し、後加工で、任意の凹凸形状を付与可能となる。
【0030】
(凹凸形状の付与)
無機酸化ケイ素を含む透明無機層3の表面に凹凸形状3aを付与したガラス板1の例を図2に示す。
【0031】
図2に示すガラス板1は、図1に示すガラス板1において、透明無機層3の表面に凹凸形状3aを付与すると共に、その凹凸形状3aを付与した透明無機層3の表面に防指紋層4を形成した例である。防指紋層4は無くても良い。
【0032】
透明無機層3の表面に凹凸形状3aを付与する凹凸加工は、例えば透明無機層3の表面にケミカルエッチング、もしくはウェットブラスト処理などをすることで実行出来る。
【0033】
凹凸加工で、ガラス板1の表面に任意の凹凸形状が付与される。付与した凹凸形状3aによって、ガラス板1表面に装飾を施したり、擦りガラス状にして半透明にしたり、防眩性を設けたりすることができる。
【0034】
なお、凹凸形状で、ガラス板1の表面を装飾した場合、ガラス板1に意匠性を付与することができる。
【0035】
また凹凸形状で、擦りガラス状にして半透明にしたり、防眩性を設けたりすることで、表面反射の低減処置が施されることで、不要な光の反射を抑えてガラス板1の下方の視認性が向上できる。この場合、表示装置などの装置の表示部の表面を形成するガラス板(保護ガラス)として好適である。
凹凸形状は、ガラス板1を表示部に適用する場合には、微細な深さの凹凸形状となり、装飾用の場合には、視認可能な深さの凹凸形状となる。
【0036】
ここで、本実施形態では、強化ガラス2の表面に透明無機層3を形成された後に凹凸加工を施して、凹凸形状を付与する場合を例示した。強化ガラス2の表面に、凹凸形状を有する透明無機層3を積層することで、ガラス板1を作製して良い。
【0037】
<防指紋層4>
本実施形態では、凹凸形状が付与された透明無機層3の上に、防指紋層4を形成している。防指紋層4を形成することで、ガラス板1の表面を指で触れることによる、視認性やタッチパネルへの悪影響を抑えることができる。
防指紋層4は、防指紋の機能をもつコート剤で表面にコーティング層を形成することで構成する。
【0038】
防指紋の機能をもつコート剤としては、フッ素鎖をもち、シランカップリングにより表面と結合し、フッ素鎖で覆うことで撥水性を持たせるものが例示できる。
【0039】
(その他)
本開示は、次の構成も取り得る。
(1)少なくとも表面に圧縮応力層が形成されている板状の強化ガラスと、上記強化ガラスの表面及び裏面のうちの少なくとも表面側に積層した透明無機層と、を有し、上記透明無機層の厚さが50μm以下である、ガラス板。
(2)上記透明無機層は、上記強化ガラスと対向する面とは反対側の面に、凹凸形状が形成されている。
(3)上記凹凸形状にて、表面に装飾が施されている。
(4)上記凹凸形状にて、表面反射の低減処置が施されている。
(5)装置の表示部の表面を形成するためのガラス板。
(6)上記強化ガラスの表面に上記透明無機層が直接形成されている。
(7)上記透明無機層の上に防指紋層が形成されている。
【符号の説明】
【0040】
1 ガラス板
2 強化ガラス
2a 圧縮応力層
2b ガラス部分(非圧縮応力層)
3 透明無機層
3a 凹凸形状
4 防指紋層
図1
図2