(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168875
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1335 20060101AFI20231121BHJP
G02F 1/13363 20060101ALI20231121BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
G02F1/1335 510
G02F1/13363
G02F1/13 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080241
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】川平 雄一
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】三枝 良輔
(72)【発明者】
【氏名】坂井 彰
【テーマコード(参考)】
2H088
2H291
【Fターム(参考)】
2H088EA10
2H088HA15
2H088HA18
2H088HA28
2H088MA06
2H291FA22X
2H291FA22Z
2H291FA24Z
2H291FA30Z
2H291FA81Z
2H291FD12
2H291FD34
2H291LA22
2H291LA24
2H291MA02
2H291PA24
2H291PA62
2H291PA64
(57)【要約】
【課題】正面方向において高輝度及び高CRを達成でき、例えばヘッドマウント型液晶表示装置として特に有用な液晶表示装置を提供する。
【解決手段】観察面側から、液晶パネル、光学素子及びバックライトをこの順に備える液晶表示装置であって、上記光学素子は、第一偏光子、位相差層及び第二偏光子を備え、上記第一偏光子、上記位相差層及び上記第二偏光子は、観察面側からこの順に配置されており、上記第一偏光子及び上記第二偏光子は、反射型偏光子であり、上記第一偏光子の反射軸と、上記第二偏光子の反射軸とは、互いに平行であり、極角60°、かつ方位0°、方位45°及び方位90°の斜め方向において、上記第一偏光子に入射する光の偏光状態が楕円偏光である、液晶表示装置。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察面側から、液晶パネル、光学素子及びバックライトをこの順に備える液晶表示装置であって、
前記光学素子は、第一偏光子、位相差層及び第二偏光子を備え、
前記第一偏光子、前記位相差層及び前記第二偏光子は、観察面側からこの順に配置されており、
前記第一偏光子及び前記第二偏光子は、反射型偏光子であり、
前記第一偏光子の反射軸と、前記第二偏光子の反射軸とは、互いに平行であり、
極角60°、かつ方位0°、方位45°及び方位90°の斜め方向において、前記第一偏光子に入射する光の偏光状態が楕円偏光である
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記光学素子は、更に、吸収型偏光子を備え、
前記吸収型偏光子は、前記第一偏光子の観察面側に配置され、
前記吸収型偏光子の吸収軸と、前記第一偏光子の反射軸と、前記第二偏光子の反射軸とは、互いに平行であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記吸収型偏光子、前記第一偏光子、前記位相差層及び前記第二偏光子からなる構造体の極角60°における透過率が、方位0°、方位45°及び方位90°の3方位でそれぞれ60%以下である(但し正面透過率を100%とする)ことを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記位相差層の遅相軸と、前記第一偏光子の反射軸とがなす角度は、30°以上、60°以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記位相差層は、第一位相差層と第二位相差層との2層を含んで構成され、
前記第一位相差層及び前記第二位相差層は、面内位相差R0と厚さ方向位相差Rthとを含む2軸位相差層であり、
前記第一偏光子側に前記第一位相差層が配置されており、
前記第一位相差層の遅相軸は、前記第一偏光子の反射軸に対して30°以上、60°以下であり、
前記第二位相差層の遅相軸は、前記第一位相差層の遅相軸に対して直交することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記第一位相差層及び前記第二位相差層は、下記(1)、(2)又は(3)のいずれかの形態であることを特徴とする請求項5に記載の液晶表示装置。
(1)NZ係数が1.4≦NZ<1.6であり、かつ面内位相差R0の絶対値|R0|が下記式(1-1)及び(1-2)を満たす形態。
|R0|≧-325×NZ+710 (1-1)
|R0|≦225×NZ-50 (1-2)
(2)NZ係数が1.6≦NZ<3.0であり、かつ面内位相差R0の絶対値|R0|が下記式(2-1)及び(2-2)を満たす形態。
|R0|≧-57×NZ+281 (2-1)
|R0|≦-114×NZ+493 (2-2)
(3)NZ係数が3.0≦NZ≦4.0であり、かつ面内位相差R0の絶対値|R0|が下記式(3-1)及び(3-2)を満たす形態。
|R0|≧-10×NZ+140 (3-1)
|R0|≦-40×NZ+270 (3-2)
【請求項7】
前記液晶パネルの観察面側に、更に、吸収型偏光子を備えることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項8】
ヘッドマウント型液晶表示装置であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、表示のために液晶材料を利用する表示装置であり、通常、液晶パネル及びバックライトとともに、偏光板や位相差板等の光学素子を含んで構成される。液晶表示装置は、その優れた表示特性や、薄型、軽量及び低消費電力といった特長を活かして、幅広い分野で利用されている。
【0003】
液晶表示装置の分野では、偏光板や位相差板等の光学素子を用いてバックライトから放射される光の視野角特性を制御する技術が知られている。例えば特許文献1には、液晶パネル、第一偏光子、複屈折率層、第二偏光子及びバックライトがこの順に配置された液晶表示装置であって、第一偏光子の透過軸と第二偏光子の透過軸とが互いに平行であり、複屈折率層の2軸性パラメータ値が所定範囲に限定され、更に、複屈折率層の厚み方向位相差又は第一偏光子の透過軸と複屈折率層の面内遅相軸とがなす角度が、所定範囲に限定された液晶表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、ユーザの体に装着するウェラブルデバイスの開発及び改良が進められており、ウェラブルデバイスの一例として、ヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display;HMDとも称す)が知られている。HMDは、ユーザの頭部に装着された状態でユーザが画像を見ることができるように画像を出力する表示装置であり、例えば、片眼の眼前に画像出力部が設けられ、画像出力部からの画像と外部の景色とが同時に視野に入る片眼型HMDと、両眼を完全に覆い、ユーザの視野にHMDの表示のみが見えるようにした両眼型HMDとがある。なお、HMDのうち、液晶を用いたHMDを、ヘッドマウント型液晶表示装置とも称する。
【0006】
HMDは、ユーザの眼球の至近距離に映像を表示させるため、他の液晶表示装置(例えばテレビ等)ほどの広い視野角特性は求められない。その反面、ユーザの眼球に対応する正面方向(例えば極角±30°内)において、輝度が高く、かつコントラスト比(CRとも略す)が高いことが求められる。しかしながら、従来の液晶表示装置では、正面方向における輝度及びCRが充分ではなかった。
【0007】
図6は、偏光板ルーバーを有しない構成の液晶表示装置の一例(比較例1に係る液晶表示装置100R)を示す断面模式図と、各光学素子の軸方位を示す概念図である。
図6に示す通り、液晶表示装置100Rは、観察面側から順に、第一吸収型偏光板40と、液晶パネル10と、該第一吸収型偏光板40とクロスニコルに配置された第二吸収型偏光板24と、該第二吸収型偏光板24とパラレルニコルに配置された反射型偏光板23と、バックライト30とを備える。この装置では、まずバックライト30から、反射型偏光板23及び第二吸収型偏光板24を透過して液晶パネル10へ斜めに入射する斜め光が、液晶パネル10が有する液晶層等で楕円偏光に変調される。その後、液晶パネル10が有する一対の基板や液晶層での散乱により、進行方向が法線方向に変わる(散乱前後で偏光状態は殆ど変化しない)。そして、楕円偏光のまま第一吸収型偏光板40を透過するため、楕円率に応じて光漏れとして観測される。従って、正面方向のCR(正面CRとも称す)が充分とならず、また正面方向の輝度(正面輝度とも称す)も充分に得られない。
【0008】
図8は、偏光板ルーバーを有する構成の液晶表示装置の一例(比較例2に係る液晶表示装置100R)を示す断面模式図、及び、各光学素子の軸方位を示す概念図である。
図8に示す通り、液晶表示装置100Rは、観察面側から順に、第一吸収型偏光板40と、液晶パネル10と、該第一吸収型偏光板40とクロスニコルに配置された第二吸収型偏光板24と、厚み方向に位相差を有する位相差板22と、該第二吸収型偏光板24とパラレルニコルに配置された反射型偏光板23と、バックライト30とを備える。位相差板22の面内遅相軸は、第二吸収型偏光板24の吸収軸及び反射型偏光板23の反射軸と直交している。この装置では、バックライト30から反射型偏光板23を透過した斜め光が、位相差板22によってその偏光軸を回転させられ、第二吸収型偏光板24によって吸収される。そのため、上述した比較例1に係る液晶表示装置に比べて、正面CRは改善される反面、全光束量が小さくなる。即ち、バックライト30から出射された光を効率よく表示光として利用できない。従って、正面輝度が充分なものとならない。なお、第二吸収型偏光板24から反射型偏光板23までの部分は、光学的なルーバーとして機能するため、偏光板ルーバーとも称す。
【0009】
図10は、上述した比較例2に係る液晶表示装置よりも、偏光板ルーバーの絞りを大きくした構成の液晶表示装置の一例(比較例3に係る液晶表示装置100R)を示す断面模式図、及び、各光学素子の軸方位を示す概念図である。この装置では、上述した比較例2に係る液晶表示装置よりも、正面CRを更に向上することはできるが、正面輝度がやはり充分でない。
【0010】
特許文献1に記載の液晶表示装置は、生産性に優れ、かつ高CRを実現でき、よって各種用途に有用なものである。この装置は特に、テレビ等の広い視野角特性が求められる用途では非常に有用である。だが、正面方向における輝度及びCRを更に向上させて、HMDにもより好適なものとするための工夫の余地があった。
【0011】
本発明は上記現状に鑑みてなされたものであり、正面方向において高輝度及び高CRを達成でき、例えばヘッドマウント型液晶表示装置として特に有用な液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明の一実施形態は、観察面側から、液晶パネル、光学素子及びバックライトをこの順に備える液晶表示装置であって、上記光学素子は、第一偏光子、位相差層及び第二偏光子を備え、上記第一偏光子、上記位相差層及び上記第二偏光子は、観察面側からこの順に配置されており、上記第一偏光子及び上記第二偏光子は、反射型偏光子であり、上記第一偏光子の反射軸と、上記第二偏光子の反射軸とは、互いに平行であり、極角60°、かつ方位0°、方位45°及び方位90°の斜め方向において、上記第一偏光子に入射する光の偏光状態が楕円偏光である、液晶表示装置。
【0013】
(2)また、本発明のある実施形態は、上記(1)の構成に加え、上記光学素子は、更に、吸収型偏光子を備え、上記吸収型偏光子は、上記第一偏光子の観察面側に配置され、上記吸収型偏光子の吸収軸と、上記第一偏光子の反射軸と、上記第二偏光子の反射軸とは、互いに平行である、液晶表示装置。
【0014】
(3)また、本発明のある実施形態は、上記(2)の構成に加え、上記吸収型偏光子、上記第一偏光子、上記位相差層及び上記第二偏光子からなる構造体の極角60°における透過率が、方位0°、方位45°及び方位90°の3方位でそれぞれ60%以下である(但し正面透過率を100%とする)、液晶表示装置。
【0015】
(4)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、(2)又は(3)の構成に加え、上記位相差層の遅相軸と、上記第一偏光子の反射軸とがなす角度は、30°以上、60°以下である、液晶表示装置。
【0016】
(5)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、(2)、(3)又は(4)の構成に加え、上記位相差層は、第一位相差層と第二位相差層との2層を含んで構成され、上記第一位相差層及び上記第二位相差層は、面内位相差R0と厚さ方向位相差Rthとを含む2軸位相差層であり、上記第一偏光子側に上記第一位相差層が配置されており、上記第一位相差層の遅相軸は、上記第一偏光子の反射軸に対して30°以上、60°以下であり、上記第二位相差層の遅相軸は、上記第一位相差層の遅相軸に対して直交する、液晶表示装置。
【0017】
(6)また、本発明のある実施形態は、上記(5)の構成に加え、上記第一位相差層及び上記第二位相差層は、下記(1)、(2)又は(3)のいずれかの形態である、液晶表示装置。
(1)NZ係数が1.4≦NZ<1.6であり、かつ面内位相差R0の絶対値|R0|が下記式(1-1)及び(1-2)を満たす形態。
|R0|≧-325×NZ+710 (1-1)
|R0|≦225×NZ-50 (1-2)
(2)NZ係数が1.6≦NZ<3.0であり、かつ面内位相差R0の絶対値|R0|が下記式(2-1)及び(2-2)を満たす形態。
|R0|≧-57×NZ+281 (2-1)
|R0|≦-114×NZ+493 (2-2)
(3)NZ係数が3.0≦NZ≦4.0であり、かつ面内位相差R0の絶対値|R0|が下記式(3-1)及び(3-2)を満たす形態。
|R0|≧-10×NZ+140 (3-1)
|R0|≦-40×NZ+270 (3-2)
【0018】
(7)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)の構成に加え、上記液晶パネルの観察面側に、更に、吸収型偏光子を備える、液晶表示装置。
【0019】
(8)また、本発明のある実施形態は、上記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)又は(7)の構成に加え、ヘッドマウント型液晶表示装置である、液晶表示装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、正面方向において高輝度及び高CRを達成でき、例えばヘッドマウント型液晶表示装置として特に有用な液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態1に係る液晶表示装置の一例を示す断面模式図である。
【
図2】実施形態1に係る液晶表示装置の別の一例を示す断面模式図である。
【
図3】実施形態1に係る液晶表示装置をHMDとして使用したときの外観の一例を示す斜視模式図である。
【
図4】実施形態2に係る液晶表示装置の一例を示す断面模式図である。
【
図5】実施形態3に係る液晶表示装置の一例を示す断面模式図である。
【
図6】比較例1に係る液晶表示装置の構成を示す断面模式図及び各光学素子の軸方位を示す概念図である。
【
図7】比較例1に係る液晶表示装置が有する20Xで表される部分について、透過率視野角を計算した結果である。
【
図8】比較例2に係る液晶表示装置の構成を示す断面模式図及び各光学素子の軸方位を示す概念図である。
【
図9】比較例2に係る液晶表示装置が有する20Xで表される部分について、透過率視野角を計算した結果である。
【
図10】比較例3に係る液晶表示装置の構成を示す断面模式図及び各光学素子の軸方位を示す概念図である。
【
図11】比較例3に係る液晶表示装置が有する20Xで表される部分について、透過率視野角を計算した結果である。
【
図12】実施例1~4に係る液晶表示装置の構成を示す断面模式図及び各光学素子の軸方位を示す概念図である。
【
図13】実施例1に係る液晶表示装置が有する20Xで表される部分について、透過率視野角を計算した結果である。
【
図14】実施例1に係る液晶表示装置が有する20Xで表される部分についての透過率視野角の計算結果に基づいて、極角60°又は極角80°における方位角0°及び方位角45°それぞれの透過率を縦軸とし、面内位相差R0を横軸としたときのグラフである。
【
図15】実施例2に係る液晶表示装置が有する20Xで表される部分について、透過率視野角を計算した結果である。
【
図16】実施例2に係る液晶表示装置が有する20Xで表される部分についての透過率視野角の計算結果に基づいて、極角60°又は極角80°における方位角0°及び方位角45°それぞれの透過率を縦軸とし、面内位相差R0を横軸としたときのグラフである。
【
図17】実施例3に係る液晶表示装置が有する20Xで表される部分について、透過率視野角を計算した結果である。
【
図18】実施例3に係る液晶表示装置が有する20Xで表される部分についての透過率視野角の計算結果に基づいて、極角60°又は極角80°における方位角0°及び方位角45°それぞれの透過率を縦軸とし、面内位相差R0を横軸としたときのグラフである。
【
図19】実施例4に係る液晶表示装置が有する20Xで表される部分について、透過率視野角を計算した結果である。
【
図20】実施例4に係る液晶表示装置が有する20Xで表される部分についての透過率視野角の計算結果に基づいて、極角60°又は極角80°における方位角0°及び方位角45°それぞれの透過率を縦軸とし、面内位相差R0を横軸としたときのグラフである。
【
図21】参考例1に係る液晶表示装置の構成を示す断面模式図及び各光学素子の軸方位を示す概念図である。
【
図22】参考例1に係る液晶表示装置が有する20Xで表される部分について、透過率視野角を計算した結果である。
【
図23】参考例2に係る液晶表示装置の構成を示す断面模式図及び各光学素子の軸方位を示す概念図である。
【
図24】参考例2に係る液晶表示装置が有する20Xで表される部分について、透過率視野角を計算した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(用語の定義)
本明細書中、観察面側とは、液晶表示装置の画面(表示面)に対してより近い側を意味し、背面側とは、液晶表示装置の画面(表示面)に対してより遠い側を意味する。
【0023】
偏光子とは、無偏光(自然光)、部分偏光又は偏光から、特定方向にのみ振動する偏光(直線偏光)を取り出す機能を有するものを意味し、円偏光子(円偏光板)とは区別される。吸収型偏光子とは、特定方向に振動する光を吸収し、それに垂直な方向に振動する偏光(直線偏光)を透過する機能を有する偏光子である。反射型偏光子とは、特定方向に振動する光を反射し、それに垂直な方向に振動する偏光(直線偏光)を透過する機能を有する偏光子である。
【0024】
位相差層とは、面内位相差R0の絶対値|R0|と、厚み方向位相差(厚さ方向位相差とも称す)Rthの絶対値|Rth|とのいずれか一方が、10nm以上の値を有するものを意味する。好ましくは、20nm以上の値を有するものを意味する。
【0025】
面内位相差R0は、R0=(ns-nf)dで定義される。厚み方向位相差Rthは、Rth={nz-(nx+ny)/2}dで定義される。NZ係数(2軸性パラメータ)は、NZ=(nz-nx)/(ny-nx)=(Rth/R0)+0.5で定義される。
ここで、nsはnx、nyのうち大きい方を、nfは小さい方を指す。nx及びnyは、位相差層の面内方向の主屈折率を示す。nzは、面外方向、即ち位相差層の面に対して垂直方向の主屈折率を示す。dは、位相差層の厚みを示す。
なお、主屈折率、位相差、NZ係数等の光学パラメータの測定波長は、特に断りのない限り、550nmとする。
【0026】
極角θとは、対象となる方向(例えば測定方向)と、液晶パネルの画面の法線方向とのなす角度を意味する。方位φとは、対象となる方向を液晶パネルの画面上に射影したときの方向を意味し、基準となる方位との間のなす角度(方位角)で表現される。ここで、基準となる方位(φ=0°)は、液晶パネルの画面の水平右方向に設定される。角度及び方位角は、基準となる方位から反時計回りを正の角度、基準となる方位から時計回りを負の角度とする。反時計回り及び時計回りは、いずれも液晶パネルの画面を観察面側(正面)から見たときの回転方向を表す。また、角度は、液晶パネルを平面視した状態で測定された値を表し、2つの直線(軸、方向及び稜線を含む)が互いに直交するとは、液晶パネルを平面視した状態で直交することを意味する。
【0027】
軸方位とは、特に断りのない限り、偏光子の吸収軸(反射軸)又は位相差層の遅相軸の方位を意味する。位相差層の遅相軸とは、面内遅相軸を意味する。
【0028】
以下、本発明の実施形態に係る液晶表示装置について説明する。本発明は、以下の実施形態に記載された内容に限定されるものではなく、本発明の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。
【0029】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係る液晶表示装置の一例を示す断面模式図である。
図1に示す通り、液晶表示装置100は、観察面側から、液晶パネル10、光学素子20及びバックライト30をこの順に備える。光学素子20は、観察面側から、第一偏光子21、位相差層22及び第二偏光子23をこの順に備える。第一偏光子21及び第二偏光子23は共に、反射型偏光子である。以下では、第一偏光子を「第一反射型偏光子」とも称し、第二偏光子を「第二反射型偏光子」とも称す。
【0030】
(光学素子)
第一反射型偏光子21、位相差層22及び第二反射型偏光子23を備える光学素子20は、光学的なルーバーとして機能するため、偏光板ルーバーとも称す。光学素子20は通常、粘着層(図示せず)により液晶パネル10に貼付されている。
【0031】
第一偏光子21の反射軸と第二偏光子23の反射軸とは、互いに平行になるように配置される。即ち第一偏光子21及び第二偏光子23は、パラレルニコルに配置される。より詳細には、第一偏光子21の反射軸と第二偏光子23の反射軸とが、0°±10°の範囲内の角度をなす。この角度は、0°±5°の範囲内であることが好ましい。
【0032】
極角60°、かつ方位0°、方位45°及び方位90°の斜め方向において、第一偏光子21に入射する光の偏光状態は、楕円偏光である。「第一偏光子21に入射する光」とは、バックライト30から、少なくとも第二偏光子23及び位相差層22を経て、第一偏光子21に入射する直前の光である。
なお、楕円偏光は、右回りであるか左回りであるかを問わない。偏光状態としては、必ずしも完全偏光であることを要さず、一部偏光していない状態を含む部分偏光であってもよい。
【0033】
本実施形態の液晶表示装置では、偏光板ルーバー機能を付与するための位相差層22を、1対の反射型偏光子21、23で挟む構成の光学素子20を有することで、従来の偏光板ルーバー(例えば後述する比較例2の液晶表示装置が有するような、第二吸収型偏光板24と反射型偏光板23との間に、厚さ方向に位相差を有する位相差板22を配置する構成の偏光板ルーバー)において吸収されてしまっていた斜め光を吸収せずに、バックライト30側に反射させることを可能にしている。バックライト30側に反射された光は、バックライト30中のレンズシート、導光板、反射板等によって再度液晶パネル10側に反射され、反射光の一部は多重反射を繰り返すうちに、液晶パネル10の正面方向に再出射(即ちリサイクル)されるようになる。つまり、積極的に斜め光をバックライト30側へ回帰させ、バックライト30内での多重反射により正面方向へ救済しており、これによって光束量を損なうことなく、バックライト30からの光の利用効率を高めることで、効率的に正面輝度の向上を実現している。このような構成に加えて更に、上述したように、極角60°、かつ方位0°、方位45°及び方位90°の斜め方向において、それぞれ第一偏光子21に入射する光の偏光状態が楕円偏光となる構成とすることで、HMDが要求するような高いレベルの正面輝度及び正面CRを実現している。
【0034】
第一反射型偏光子21は、透過軸と、当該透過軸と直交する反射軸とを有する。第二反射型偏光子23は、透過軸と、当該透過軸と直交する反射軸とを有する。これら偏光子は、反射型偏光子である限り、材料や光学的性能は特に限定されない。具体的には例えば、二種類の樹脂からなる共押出しフィルムを1軸延伸して得られる反射型偏光子(例えば日東電工社製のAPCF、3M社製のDBEF等)、金属ワイヤーの細線を周期的に配列させた反射型偏光子(いわゆるワイヤーグリッド偏光子)等を適宜用いることができる。
【0035】
本発明の液晶表示装置が有する各偏光子(反射型偏光子及び吸収型偏光子)は、板状のもの(偏光板と称す)であってもよい。即ち各偏光子は、偏光板であることが好ましい。偏光板として具体的には、例えば、機械強度や耐湿熱性等を確保するために、偏光機能を有する素子の観察面側及び背面側のうち少なくとも一方に、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム等の保護フィルム(図示せず)がラミネートされたものが挙げられる。保護フィルムは、任意の適切な接着層(図示せず)を介して、上記素子に貼り付けられる。
【0036】
本明細書中、接着層とは、隣り合う光学素子の面と面とを接合し、実用上充分な接着力と接着時間で一体化させるものをいう。接着層を形成する材料としては、例えば、接着剤、アンカーコート剤が挙げられる。接着層は、被着体の表面にアンカーコート層が形成され、その上に接着剤層が形成されたような、多層構造であってもよい。また、肉眼的に認知できないような薄い層であってもよい。
【0037】
第一反射型偏光子21及び第二反射型偏光子23の軸方位は適宜設定することができるが、例えば、0°±10°又は90°±10°の範囲内に設定されることが好ましい。中でも、0°±5°又は90°±5°の範囲内に設定されることがより好ましく、実質的に0°又は90°に設定されることが更に好ましい。これにより、法線方向と上下左右方向で明るい表示を得ることができる。
【0038】
位相差層22の遅相軸と第一反射型偏光子21の反射軸とがなす角度は、30°以上、60°以下であることが好ましい。これにより、正面輝度及び正面CRをより高めることができる。より好ましくは45°±10°であり、更に好ましくは45°±5°である。例えば、第一反射型偏光子21の軸方位が90°である場合、位相差層22の遅相軸は、30~60°又は120~150°であることが好ましい。より好ましくは45°±10°又は135°±10°であり、更に好ましくは45°±5°又は135°±5°であり、特に好ましくは45°±1°又は135°±1°である。
【0039】
位相差層22は、上述した通り、面内位相差R0の絶対値|R0|と、厚み方向位相差Rthの絶対値|Rth|とのいずれか一方が、10nm以上(好ましくは20nm以上)の値を有するが、面内位相差R0と厚み方向位相差Rthとを含む2軸位相差層であることが好適である。具体的には、|R0|及び|Rth|の両方が10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましい。
【0040】
位相差層22は、上述した通り2軸位相差層であることが好ましい。中でも、2軸性パラメータの指標となるNZ係数が、1≦NZ<10を満たすことが好適である。これにより、第一反射型偏光子21に入射する光の偏光状態を制御することが容易になる。即ち、極角60°、かつ方位0°、方位45°及び方位90°の各斜め方向において、第一偏光子21に入射する光の偏光状態を、第一偏光子21の吸収軸と平行な直線偏光に近づけることが容易になる。より好ましくは1.2≦NZ≦5.0、更に好ましくは1.4≦NZ≦4.0を満たすことである。
【0041】
ここで、位相差層22が2層以上の層から構成される場合(下記(B)の場合)は、位相差層22の少なくとも一つが上記範囲を満たすことが好ましいが、偏光状態をより制御しやすくする観点からは、第一反射型偏光子21と第二反射型偏光子23との間の全ての位相差層22のNZ係数が、それぞれ1≦NZ<10を満たすことがより好ましい。
【0042】
位相差層22の面内位相差R0の絶対値|R0|は、50nm以上であることが好適である。より好ましくは80nm以上、更に好ましくは100nm以上である。また、500nm以下であることが好ましい。より好ましくは400nm以下、更に好ましくは350nm以下である。また、位相差層22の厚み方向位相差Rthの絶対値|Rth|は、NZ係数が上記範囲になるように設定することが好適である。
【0043】
位相差層22は、(A)
図1に示すように1つだけ設けられてもよい(即ち位相差層22が、単層から構成されてもよい)し、(B)
図2に示すように複数設けられてもよい(即ち位相差層22が、2層以上の層から構成されてもよい)。
【0044】
上記(B)の場合、複数の位相差層22(22a、22b等)は、各遅相軸がそれぞれ、第一反射型偏光子21の反射軸と30°以上、60°以下の角度をなすことが好適である。当該角度のより好ましい範囲は、上述した通りである。また、隣り合う位相差層の遅相軸同士は、互いに直交することが好適である。即ち位相差層22aの遅相軸が位相差層22bの遅相軸に対して直交しすることが好適である。ここでの「直交する」とは、90°±10°の範囲内の角度をなすことを意味する。より好ましくは90°±5°の範囲内の角度をなすことである。
【0045】
位相差層22はまた、逆波長分散特性を有することが好ましい。これにより、斜め方向から液晶表示装置を観察したときに、表示色(特に白表示)が着色するのを抑制することが可能である。具体的には、波長550nmでの面内位相差R0に対する波長450nmでの面内位相差R0の比率である(R450/R550)が0.80以上、0.99以下であることが好ましく、0.82以上、0.90以下であることがより好ましい。また、波長550nmでの面内位相差R0に対する波長650nmでの面内位相差R0の比率である(R650/R550)が1.01以上、1.20以下であることが好ましく、1.02以上、1.18以下であることがより好ましい。
なお、上記(B)の場合、位相差層22の少なくとも一つが逆波長分散特性を有すれば着色抑制効果を多少なりとも得られるが、着色抑制の観点からは、第一偏光子21と第二偏光子23との間の全ての位相差層22が逆波長分散特性を有することがより好ましい。
【0046】
複数の位相差層22(22a、22b等)は、実質的に同じもの(実質的に同じ材料及び工程で作製された実質的に同じ特性を発揮するもの)であることが好ましい。その理由は、第一に、経済合理性である。位相差層22が板状(位相差板)である場合は、一般に、ロール状に長尺で一度に大量に製造されるため、なるべく少品種にして、同じものを使用することで製造コストを抑えることができる。第二に、技術的には、同じ位相差層を使用することで、製造バラつきを考慮して、残留位相差がゼロになる可能性が高まるというメリットがある。
【0047】
図2は、位相差層22が、第一位相差層22aと第二位相差層22bとの2層を含んで構成される場合の構成例を示す断面模式図である。第一位相差層22aと第二位相差層22bとは、面内位相差R0と厚み方向位相差Rthとを含む2軸位相差層である。第一位相差層22a及び第二位相差層22bのうち、第一位相差層22aが、第一反射型偏光子21側、即ち観察面側に配置されている。第一位相差層22aの遅相軸は、第一反射型偏光子21の反射軸に対して30°以上、60°以下であるが、好ましくは45°±10°であり、より好ましくは45°±5°である。また、第二位相差層22bの遅相軸は、第一位相差層22aの遅相軸に対して直交している。即ち第一位相差層22aの遅相軸と第二位相差層22bの遅相軸とのなす角度が90°±10°(好ましくは90°±5°)の範囲内である。
【0048】
図2で示されるように位相差層22が第一位相差層22aと第二位相差層22bとの2層を含んで構成される場合について、上述した通り第一位相差層22aと第二位相差層22bとは実質的に同じものであることが好ましく、第一位相差層22a及び第二位相差層22bのNZ係数がいずれも、上述したように1.4≦NZ≦4.0を満たすことが特に好適である。中でも、(1)第一位相差層22a及び第二位相差層22bのNZ係数が、1.4≦NZ<1.6である場合、面内位相差R0の絶対値|R0|は、下記式(1-1)及び(1-2)を満たすことが好ましい。これにより、正面方向における輝度及びCRをより一層高めることが可能になる。
|R0|≧-325×NZ+710 (1-1)
|R0|≦225×NZ-50 (1-2)
【0049】
また(2)第一位相差層22a及び第二位相差層22bのNZ係数が、1.6≦NZ<3.0である場合、面内位相差R0の絶対値|R0|は、下記式(2-1)及び(2-2)を満たすことが好ましい。これにより、正面方向における輝度及びCRをより一層高めることが可能になる。
|R0|≧-57×NZ+281 (2-1)
|R0|≦-114×NZ+493 (2-2)
【0050】
更に(3)第一位相差層22a及び第二位相差層22bのNZ係数が、3.0≦NZ≦4.0である場合、面内位相差R0の絶対値|R0|は、下記式(3-1)及び(3-2)を満たすことが好ましい。これにより、正面方向における輝度及びCRをより一層高めることが可能になる。
|R0|≧-10×NZ+140 (3-1)
|R0|≦-40×NZ+270 (3-2)
【0051】
位相差層22の材料としては特に限定されず、例えば、ポリマーフィルムを延伸したもの、液晶性材料の配向を固定したもの、無機材料から構成される薄板等を用いることができる。位相差層22の形成方法としては特に限定されない。ポリマーフィルムから形成される場合、例えば、溶剤キャスト法、溶融押出し法等を用いることができる。共押出し法により、複数の位相差層22を同時に形成する方法を用いてもよい。所望の位相差が発現しさえすれば、無延伸であってもよいし、延伸が施されてもよい。延伸方法も特に限定されず、ロール間引張り延伸法、ロール間圧縮延伸法、テンター横一軸延伸法、斜め延伸法、縦横二軸延伸法の他、熱収縮性フィルムの収縮力の作用下に延伸を行う特殊延伸法等を用いることができる。また、液晶性材料から形成される場合、例えば、配向処理を施した基材フィルムの上に液晶性材料を塗布し、配向固定する方法等を用いることができる。所望の位相差が発現しさえすれば、基材フィルムに特別な配向処理を行わない方法や、配向固定した後、基材フィルムから剥がして別のフィルムに転写加工する方法等であってもよい。更に、液晶性材料の配向を固定しない方法を用いてもよい。また、非液晶性材料から形成される場合も、液晶性材料から形成される場合と同様の形成方法を用いてもよい。
【0052】
位相差層22としては、固有複屈折が正の材料を成分として含むフィルムを延伸加工したもの等を適宜用いることができる。固有複屈折が正の材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ノルボルネン、トリアセチルセルロース、ジアチルセルロース、シクロオレフィンポリマー等が挙げられる。
【0053】
(液晶パネル)
液晶パネル10の液晶モードは特に限定されず、液晶層中の液晶分子を基板面に垂直に配向させることで黒表示を行うものであってもよいし、液晶層中の液晶分子を基板面に平行又は垂直でも平行でもない方向に配向させることで黒表示を行うものであってもよい。また、液晶パネルの駆動形式としては、TFT方式(アクティブマトリクス方式)のほか、単純マトリクス方式(パッシブマトリクス方式)、プラズマアドレス方式等であってもよい。
【0054】
液晶パネル10の構成としては、例えば、一方の基板に画素電極及び共通電極が形成された一対の基板間に液晶層を狭持し、画素電極及び共通電極の間に電圧を印加して液晶層に横電界(フリンジ電界を含む)を印加することで表示を行うもの、一方の基板に画素電極、他方の基板に共通電極が形成された一対の基板間に液晶層を狭持し、画素電極及び共通電極の間に電圧を印加して液晶層に縦電界を印加することで表示を行うものが挙げられる。より具体的には、横電界方式としては、電圧無印加時に液晶層中の液晶分子が基板面に対して平行に配向する、FFS(Fringe Field Switching)モードやIPS(In Plane Switching)モードが挙げられ、縦電界方式としては、電圧無印加時に液晶層中の液晶分子が基板面に対して垂直に配向する、垂直配向(VA:Vertical Alignment)が挙げられる。
【0055】
(バックライト)
バックライト30は、光を照射するものであれば特に限定されず、直下型やエッジ型やその他のどの方式でもよい。具体的には、例えば、バックライト30は、導光板及び光源を含む光源ユニットと、反射シートと、拡散シートとを備えるものが好ましい。光源としては、例えば、発光ダイオード(LED)を用いることができる。
【0056】
(その他の部材)
本実施形態の液晶表示装置は、上述した部材の他、TCP(テープ・キャリア・パッケージ)、PCB(プリント配線基板)等の外部回路;視野角拡大フィルム、輝度向上フィルム等の光学フィルム;ベゼル(フレーム);等の複数の部材により構成されるものであり、部材によっては、他の部材に組み込まれていてもよい。既に説明した部材以外の部材については特に限定されず、液晶表示装置の分野において通常使用されるものを用いることができるので、説明を省略する。
【0057】
(HMD)
図3は、本実施形態に係る液晶表示装置をヘッドマウントディスプレイ(HMD)として使用したとき、即ちヘッドマウント型液晶表示装置として使用したときの外観の一例を示す斜視模式図である。
図3に示すように、ヘッドマウントディスプレイ1000は、画像を表示する液晶パネル10Pと、光学素子20と、バックライト(図示せず)とを備え、ユーザUの頭部に装着可能な表示装置である。この
図3では両眼型HMDを例示したが、本発明の液晶表示装置は片眼型HMDとしても好適に使用することができる。
【0058】
本実施形態に係る液晶表示装置をHMDとして使用する場合、表示方式は特に限定されず、水平配向モード、垂直配向モード等の各種表示モードが好ましく採用される。例えば、水平配向モードを利用したHMDとしては、特開2019-113584号公報に記載のように、フリンジ電界の形成に用いる電極の開口形状に特徴を持たせた技術を採用することが好適である。
【0059】
(実施形態2)
本実施形態では、本実施形態に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態1と重複する内容については説明を省略する。実施形態2は、光学素子20が更に、第一反射型偏光子21の観察面側に、吸収型偏光子24を有する形態について説明する。なお、後述する、液晶パネルの観察面側に有してもよい吸収型偏光子40と区別するために、この吸収型偏光子24を「第二吸収型偏光子」とも称す。
【0060】
図4は、本実施形態に係る液晶表示装置の一例を示す断面模式図である。より詳細には、
図2で示される液晶表示装置が有する光学素子20が、更に吸収型偏光子24を備える場合の構成例を示す断面模式図である。
図4に示す通り、液晶表示装置100は、観察面側から、液晶パネル10、光学素子20及びバックライト30をこの順に備え、該光学素子20は、観察面側から、吸収型偏光子24、第一反射型偏光子21、位相差層22(第一、第二位相差層22a、22b)及び第二反射型偏光子23をこの順に備える。
【0061】
第二吸収型偏光子24の吸収軸と、第一反射型偏光子21の反射軸と、第二反射型偏光子23の反射軸とは、互いに平行になるように配置される。即ち第二吸収型偏光子24、第一反射型偏光子21及び第二反射型偏光子23は、パラレルニコルに配置される。より詳細には、第二吸収型偏光子24の吸収軸と、第一反射型偏光子21の反射軸とが、0°±10°の範囲内(好ましくは0°±5°)の角度をなし、かつ第一反射型偏光子21の反射軸と、第二反射型偏光子23の反射軸とが、0°±10°の範囲内(好ましくは0°±5°)の角度をなす。
【0062】
第二吸収型偏光子24は、吸収型偏光子である限り、材料や光学的性能は特に限定されない。具体的には例えば、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムに二色性を有するヨウ素錯体等の異方性材料を吸着配向させた吸収型偏光子等を適宜用いることができる。
【0063】
ここで、吸収型偏光子24、第一反射型偏光子21、位相差層22及び第二反射型偏光子23からなる構造体(即ち、液晶パネル10よりも背面側のパーツからなる部分)の極角60°における透過率は、方位0°、方位45°及び方位90°の3方位でそれぞれ60%以下であることが好適である。但し、正面透過率を100%とする。これによって、正面輝度及び正面CRの向上をより実現することができる。中でも、正面CRをより高める観点から、方位45°における上記透過率が、40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、25%以下であることが更に好ましい。
正面透過率とは、上記構造体が位相差層を有さない場合の正面方向(極角±30°内)の透過率を意味する。
【0064】
上記透過率は、上記構造体について透過率視野角(透過率視野角特性とも称す)を計算することで求めることができる。計算には、シンテック社製の「LCD Master」を用いる。上記構造体は、液晶パネルよりも背面側に位置するため、透過率視野角特性を求めることにより、液晶パネルに入射するバックライト光の配光分布を把握することができる。
【0065】
(実施形態3)
本実施形態では、本実施形態に特有の特徴について主に説明し、上記実施形態1と重複する内容については説明を省略する。実施形態3は、液晶表示装置が更に、液晶パネル10の観察面側に、吸収型偏光子40を備える場合形態について説明する。なお、この吸収型偏光子40を「第一吸収型偏光子」とも称す。
【0066】
図5は、本実施形態に係る液晶表示装置の一例を示す断面模式図である。より詳細には、
図4で示される液晶表示装置(実施形態2)が、液晶パネル10の観察面側に更に第一吸収型偏光子40を備える場合の構成例を示す断面模式図である。
図5に示す通り、液晶表示装置100は、観察面側から、第一吸収型偏光子40、液晶パネル10、光学素子20及びバックライト30をこの順に備え、該光学素子20は、観察面側から、吸収型偏光子24、第一反射型偏光子21、位相差層22(第一、第二位相差層22a、22b)及び第二反射型偏光子23をこの順に備える。
【0067】
第一吸収型偏光子40の吸収軸の軸方位は特に限定されないが、例えば、第一反射型偏光子21及び第二反射型偏光子の反射軸と、互いに直行になるように配置されることが好適である。即ち第一吸収型偏光子40と、第一、第二反射型偏光子21、23とは、クロスニコルに配置されることが好ましい。より詳細には、吸収型偏光子24の吸収軸と、第一反射型偏光子21の反射軸とが、90°±10°の範囲内(好ましくは90°±5°)の角度をなし、かつ第一反射型偏光子21の反射軸と、第二反射型偏光子23の反射軸とが、0°±10°の範囲内(好ましくは0°±5°)の角度をなす。
【0068】
第一吸収型偏光子40は、吸収型偏光子である限り、材料や光学的性能は特に限定されない。具体的には例えば、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムに二色性を有するヨウ素錯体等の異方性材料を吸着配向させた吸収型偏光子等を適宜用いることができる。
【0069】
以下に実施例及び比較例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、
図6、8、10、12、21、23において、各断面模式図の各層の右に示した角度は、吸収型偏光板であれば吸収軸の方位角を、反射型偏光板であれば反射軸の方位角を、位相差板であれば遅相軸の方位角を、液晶パネルであれば遅相軸の方位角を、それぞれ意味する。
【0070】
(比較例1)
比較例1の液晶表示装置は、
図3に示すようなヘッドマウント型液晶表示装置である。その構成は、
図6に示す通り、観察面側から順に、第一吸収型偏光板40と、液晶パネル10と、該第一吸収型偏光板40とクロスニコルに配置された第二吸収型偏光板24と、該第二吸収型偏光板24とパラレルニコルに配置された反射型偏光板23と、バックライト30とを備える。
図6は、比較例1の液晶表示装置の構成を説明するための図である。液晶パネル10とバックライト30との間の各光学素子の軸方位も
図6に記載した。吸収型偏光板40、24としては、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムに二色性を有するヨウ素錯体を吸着配向させた吸収型偏光板を用いた。反射型偏光板23としては、3M社製の反射型偏光子APFを用いた。液晶パネル10としては、ヘッドマウント用途の高解像度液晶パネル(2.5型、1200ppi)を使用した。バックライト30としては、レンズシート2枚を斜めに交差させるクロスBEF(Brightness Enhancement Film)バックライトを使用した。
【0071】
比較例1の液晶パネルに入射するバックライト光の配光分布を把握するために、液晶パネルよりも背面側のパーツだけ、即ち第二吸収型偏光板24と反射型偏光板23とからなる部分20Xの透過率視野角を計算した。その際、シンテック社製の「LCD Master」を用いた。結果を、
図7に示す(
図7(a))。
図7には、本例において計算した透過率視野角の結果を、比較例1の当該結果で除すことで規格化したチャート(
図7(b))も示す。比較例1は対比基準であるため、
図7(b)は、全面において透過率視野角が「1.000000」であることが示されている。
【0072】
比較例1の液晶表示装置(ヘッドマウント型液晶表示装置)を実際に試作し、TOPCON社製の「SR-UL1」を用いて正面方向の白輝度及び黒輝度を測定し、その比を正面方向のコントラスト比(CR=白輝度/黒輝度)とした。正面方向の白輝度(正面輝度と称す)及び正面方向のCR(正面CRと称す)を表1に示す。いずれも実測値である。表1に示されるように、比較例1の液晶表示装置では正面輝度及び正面CRともに充分ではないが、その理由については上述した通りである。
【0073】
(比較例2)
比較例2の液晶表示装置は、第二吸収型偏光板24と反射型偏光板23との間に、位相差板22を、その遅相軸が第二吸収型偏光板24の吸収軸と90°の角度をなすように配置したことを除いて、比較例1の液晶表示装置と同じ構成である。その構成を、
図8に示す。
図8は、比較例2の液晶表示装置の構成を説明するための図である。液晶パネル10とバックライト30との間の各光学素子の軸方位も
図8に記載した。位相差板22として、NZ係数=1.6、面内位相差R0=260nm、厚み方向位相差Rth=286nmである2軸位相差フィルムを使用した。
【0074】
比較例1と同様に、液晶パネルよりも背面側のパーツだけ、即ち第二吸収型偏光板24から反射型偏光板23までの部分20X(偏光板ルーバー)の透過率視野角を計算した。結果を
図9に示す(
図9(a))。併せて、本比較例において計算した透過率視野角の結果を、比較例1の当該結果で除すことで規格化したチャートも
図9に示す(
図9(b))。このチャート中の極角60°における方位角0°、方位角45°及び方位角90°の相対的な透過率を、表1に記載した。また、比較例1と同様に、正面輝度及び正面CRを測定した。結果を表1に示す。
【0075】
図9及び表1に示されるように、比較例2では、比較例1に比べて、斜め方位45°、-225°、130°及び-315°において、極角40°以上で透過率が小さくなっている。それゆえ、偏光板ルーバーによる効果があることが分かる。また、表1に示されるように、比較例2では、比較例1よりも正面CRは向上したが、正面輝度は変わらなかった。これは、偏光板ルーバーによって絞られる斜め方位(45°、-225°、130°及び-315°)の斜め光が、第二吸収型偏光板24によって吸収され、リサイクルされなかったためと考えられる。
【0076】
(比較例3)
比較例3の液晶表示装置は、比較例2よりも斜め光の絞りが大きな偏光板ルーバーを用いた構成である。具体的には、第二吸収型偏光板24と反射型偏光板23との間に、観察面側から第一位相差板22aと第二位相差板22bとを配置したことを除いて、比較例2の液晶表示装置と同じ構成である。その構成を、
図10に示す。
図10は、比較例3の液晶表示装置の構成を説明するための図である。液晶パネル10とバックライト30との間の各光学素子の軸方位も
図10に記載した。第一、第二位相差板22a、22bは、これらの遅相軸がそれぞれ第二吸収型偏光板24の吸収軸と45°の角度をなし、かつ第一位相差板22aの遅相軸と第二位相差板22bの遅相軸とがなす角度が90°になるように配置した。位相差板として、比較例1で用いた2軸位相差フィルムを2枚使用した(第一、第二位相差板22a、22b)。
【0077】
比較例1と同様に、液晶パネルよりも背面側のパーツだけ、即ち第二吸収型偏光板24から反射型偏光板23までの部分20X(偏光板ルーバー)の透過率視野角を計算した。結果を
図11に示す(
図11(a))。併せて、本例において計算した透過率視野角の結果を、比較例1の当該結果で除すことで規格化したチャートも
図11に示す(
図11(b))。このチャート中の極角60°における方位角0°、方位角45°及び方位角90°の相対的な透過率を、表1に記載した。また、比較例1と同様に、正面輝度及び正面CRを測定した。結果を表1に示す。
【0078】
図11及び表1に示されるように、比較例3では、比較例1に比較して全方位で透過率が小さくなっている。それゆえ、比較例3の偏光板ルーバー(
図10の20X部分)は、比較例2の偏光板ルーバーよりも絞りが大きいことが分かる。また、表1に示されるように、比較例3では、比較例1及び比較例2よりも正面CRは向上したが、正面輝度は変わらなかった。これは、比較例1と同様に、偏光板ルーバーによって絞られる斜め方位(45°、-225°、130°及び-315°)の斜め光が、第二吸収型偏光板24によって吸収され、リサイクルされなかったためと考えられる。
【0079】
(実施例1)
実施例1の液晶表示装置は、第二吸収型偏光板24と第一位相差板22aとの間に、反射型偏光板(第一反射型偏光板21)を配置したことを除いて、比較例3の液晶表示装置と同じ構成である。その構成を、
図12に示す。
図12は、実施例1及び後述する実施例2~4の液晶表示装置の構成を説明するための図である。液晶パネル10とバックライト30との間の各光学素子の軸方位も
図12に記載した。第一反射型偏光板21としては、3M社製の反射型偏光子APFを用いた。反射型偏光板23を第二反射型偏光板23とも称す。
【0080】
比較例1と同様に、液晶パネルよりも背面側のパーツだけ、即ち第二吸収型偏光板24から第二反射型偏光板23までの部分20X(偏光板ルーバー)の透過率視野角を計算した。第一、第二位相差板22a、22bともに、NZ係数=1.6、面内位相差R0=260nm、厚み方向位相差Rth=286nmである場合の計算結果を、
図13に示す(
図13(a))。併せて、本例において計算した透過率視野角の結果を、比較例1の当該結果で除すことで規格化したチャートも
図13に示す(
図13(b))。このチャート中の極角60°における方位角0°、方位角45°及び方位角90°の相対的な透過率を、表1に記載した。また、比較例1と同様に、正面輝度及び正面CRを測定した。この測定には、面内位相差R0=260nmの構成を用いた。結果を表1に示す。
【0081】
測定に使用した「LCD Master」での計算では、液晶パネル10からバックライト30側に多重反射されて正面方向に光がリサイクルされる効果を考慮することができないため、透過率視野角の結果(
図13及び表1)は、比較例3と同じ計算結果となる。
【0082】
ここで、透過率の面内位相差R0への依存性を検討するために、第一、第二位相差板22a、22bともに、NZ係数を1.6とし、面内位相差R0を100~380nmの間で変化させて透過率を検討した。
図14は、この計算結果のうち、極角60°における方位角0°及び方位角45°それぞれの透過率を縦軸とし、面内位相差R0を横軸としたときのグラフ(
図14(a))、並びに、極角80°における方位角0°及び方位角45°それぞれの透過率を縦軸とし、面内位相差R0を横軸としたときのグラフ(
図14(b))である。
図14中、縦軸に示す透過軸(縦軸)は、比較例1の透過率を100%としたときの相対値である。比較例1の透過率は、正面方向の透過率(正面透過率とも称す)に該当する。
【0083】
図14(a)より、R0=260nmのときに、極角60°、かつ方位角0°の透過率が最小値となることが分かる。それゆえ、正面輝度及び正面CRの測定には、極角60°、かつ方位角0°の透過率が最小値となった面内位相差R0=260nmの構成を用いた。また、
図14(a)より、方位角0°で透過率が60%となるときのR0は、190nm(y1)及び310nm(y2)であり、
図14(b)より、方位角0°で透過率が60%となるときのR0は148nm(x1)及び323nm(x2)である。従って、R0=190~310nmの範囲内(y1からy2まで)であれば、極角60°以上、かつ方位角0°及び方位角45°の透過率が60%以下となることが分かる。
【0084】
表1に示されるように、実施例1では、比較例1に対して正面CR及び正面輝度のいずれも向上する結果となった。
【0085】
(実施例2)
実施例2の液晶表示装置は、第一、第二位相差層22a、22bのNZ係数を1.4に変更したことを除いて、実施例1の液晶表示装置と同じ構成である。その構成を、
図12に示す。
【0086】
比較例1と同様に、液晶パネルよりも背面側のパーツだけ、即ち第二吸収型偏光板24から第二反射型偏光板23までの部分20X(偏光板ルーバー)の透過率視野角を計算した。第一、第二位相差板22a、22bともに、NZ係数=1.4、面内位相差R0=260nm、厚み方向位相差Rth=234nmである場合の計算結果を、
図15に示す(
図15(a))。併せて、本例において計算した透過率視野角の結果を、比較例1の当該結果で除すことで規格化したチャートも
図15に示す(
図15(b))。このチャート中の極角60°における方位角0°、方位角45°及び方位角90°の相対的な透過率を、表1に記載した。また、比較例1と同様に、正面輝度及び正面CRを測定した。この測定には、面内位相差R0=260nmの構成を用いた。結果を表1に示す。
【0087】
ここで、透過率の面内位相差R0への依存性を検討するために、第一、第二位相差板22a、22bともに、NZ係数を1.4とし、面内位相差R0を100~380nmの間で変化させて透過率を検討した。
図16は、この計算結果のうち、極角60°における方位角0°及び方位角45°それぞれの透過率を縦軸とし、面内位相差R0を横軸としたときのグラフ(
図16(a))、並びに、極角80°における方位角0°及び方位角45°それぞれの透過率を縦軸とし、面内位相差R0を横軸としたときのグラフ(
図16(b))である。
図16中、縦軸に示す透過軸(縦軸)は、比較例1の透過率を100%としたときの相対値である。
【0088】
図16(a)より、R0=260nmのときに、極角60°、かつ方位角0°の透過率が最小値となることが分かる。それゆえ、正面輝度及び正面CRの測定には、極角60°、かつ方位角0°の透過率が最小値となった面内位相差R0=260nmの構成を用いた。また、
図16(a)より、方位角0°で透過率が60%となるときのR0は、255nm(y1)及び265nm(y2)であり、
図16(b)より、方位角0°で透過率が60%となるときのR0は170nm(x1)及び323nm(x2)である。従って、R0=255~265nmの範囲内(y1からy2まで)であれば、極角60°以上、かつ方位角0°及び方位角45°の透過率が60%以下となることが分かる。
【0089】
表1に示されるように、実施例2では、比較例1に対して正面CR及び正面輝度のいずれも向上する結果となった。なお、
図15及び表1の透過率視野角の結果並びに上記実施例1の結果を考慮すると、NZ係数が1.4よりも小さくなると、方位0°、方位45°及び方位90°の透過率が高くなる、即ち絞りが弱くなるため、輝度向上効果は頭打ちになると考えられる。
【0090】
(実施例3)
実施例3の液晶表示装置は、第一、第二位相差層22a、22bのNZ係数を3.0に変更したことを除いて、実施例1の液晶表示装置と同じ構成である。その構成を、
図12に示す。
【0091】
比較例1と同様に、液晶パネルよりも背面側のパーツだけ、即ち第二吸収型偏光板24から第二反射型偏光板23までの部分20X(偏光板ルーバー)の透過率視野角を計算した。第一、第二位相差板22a、22bともに、NZ係数=3.0、面内位相差R0=140nm、厚み方向位相差Rth=350nmである場合の計算結果を、
図17に示す(
図17(a))。併せて、本例において計算した透過率視野角の結果を、比較例1の当該結果で除すことで規格化したチャートも
図17に示す(
図17(b))。このチャート中の極角60°における方位角0°、方位角45°及び方位角90°の相対的な透過率を、表1に記載した。また、比較例1と同様に、正面輝度及び正面CRを測定した。この測定には、面内位相差R0=140nmの構成を用いた。結果を表1に示す。
【0092】
ここで、透過率の面内位相差R0への依存性を検討するために、第一、第二位相差板22a、22bともに、NZ係数を3.0とし、面内位相差R0を100~380nmの間で変化させて透過率を検討した。
図18は、この計算結果のうち、極角60°における方位角0°及び方位角45°それぞれの透過率を縦軸とし、面内位相差R0を横軸としたときのグラフ(
図18(a))、並びに、極角80°における方位角0°及び方位角45°それぞれの透過率を縦軸とし、面内位相差R0を横軸としたときのグラフ(
図18(b))である。
図18中、縦軸に示す透過軸(縦軸)は、比較例1の透過率を100%としたときの相対値である。
【0093】
図18(a)より、R0=140nmのときに、極角60°、かつ方位角45°の透過率が最小値となることが分かる。それゆえ、正面輝度及び正面CRの測定には、極角60°、かつ方位角45°の透過率が最小値となった面内位相差R0=140nmの構成を用いた。また、
図18(a)より、方位角0°で透過率が60%となるときのR0は、115nm(y1)であり、
図18(b)より、方位角0°で透過率が60%となるときのR0は、測定下限である100nm(x1)及び225nm(y2)であり、方位角45°で透過率が60%となるときのR0は、150nm(x2)である。従って、R0=115~150nmの範囲内(y1からx2まで)であれば、極角60°以上、かつ方位角0°及び方位角45°の透過率が60%以下となることが分かる。
【0094】
表1に示されるように、実施例3では、比較例1に対して正面CR及び正面輝度のいずれも向上する結果となった。
【0095】
(実施例4)
実施例4の液晶表示装置は、第一、第二位相差層22a、22bのNZ係数を4.0に変更したことを除いて、実施例1の液晶表示装置と同じ構成である。その構成を、
図12に示す。
【0096】
比較例1と同様に、液晶パネルよりも背面側のパーツだけ、即ち第二吸収型偏光板24から第二反射型偏光板23までの部分20X(偏光板ルーバー)の透過率視野角を計算した。第一、第二位相差板22a、22bともに、NZ係数=4.0、面内位相差R0=100nm、厚み方向位相差Rth=350nmである場合の計算結果を、
図19に示す(
図19(a))。併せて、本例において計算した透過率視野角の結果を、比較例1の当該結果で除すことで規格化したチャートも
図19に示す(
図19(b))。このチャート中の極角60°における方位角0°、方位角45°及び方位角90°の相対的な透過率を、表1に記載した。また、比較例1と同様に、正面輝度及び正面CRを測定した。この測定には、面内位相差R0=100nmの構成を用いた。結果を表1に示す。
【0097】
ここで、透過率の面内位相差R0への依存性を検討するために、第一、第二位相差板22a、22bともに、NZ係数を4.0とし、面内位相差R0を100~380nmの間で変化させて透過率を検討した。
図20は、この計算結果のうち、極角60°における方位角0°及び方位角45°それぞれの透過率を縦軸とし、面内位相差R0を横軸としたときのグラフ(
図20(a))、並びに、極角80°における方位角0°及び方位角45°それぞれの透過率を縦軸とし、面内位相差R0を横軸としたときのグラフ(
図20(b))である。
図20中、縦軸に示す透過軸(縦軸)は、比較例1の透過率を100%としたときの相対値である。
【0098】
図20(a)より、R0=100nmのときに、極角60°、かつ方位角45°の透過率が最小値となることが分かる。それゆえ、正面輝度及び正面CRの測定には、極角60°、かつ方位角45°の透過率が最小値となった面内位相差R0=140nmの構成を用いた。また、
図20(a)より、方位角0°(及び45°)で透過率が60%となるときのR0は、測定下限である100nm(y1)及び153nm(y2)であり、
図20(b)より、方位角0°(及び45°)で透過率が60%となるときのR0は、測定下限である100nm(x1)及び110nm(x2)である。従って、R0=100~110nmの範囲内(y1(=x1)からx2まで)であれば、極角60°以上、かつ方位角0°及び方位角45°の透過率が60%以下となることが分かる。
【0099】
表1に示されるように、実施例4では、比較例1に対して正面CR及び正面輝度のいずれも向上する結果となった。なお、
図19及び表1の透過率視野角の結果並びに上記実施例3の結果を考慮すると、NZ係数が4.0よりも大きくなると、方位0°、方位45°及び方位90°の透過率が高くなる、即ち絞りが弱くなるため、輝度向上効果は頭打ちになると考えられる。
【0100】
(参考例1)
参考例1の液晶表示装置は、第二吸収型偏光板24と位相差板22との間に、反射型偏光板(第一反射型偏光板21)を、その反射軸が、第二吸収型偏光板24の吸収軸と平行になるように配置したことを除いて、比較例2の液晶表示装置と同じ構成である。その構成を、
図21に示す。
図21は、参考例1の液晶表示装置の構成を説明するための図である。液晶パネル10とバックライト30との間の各光学素子の軸方位も
図21に記載した。第一反射型偏光板21としては、3M社製の反射型偏光子APFを用いた。反射型偏光板23を第二反射型偏光板23とも称す。
【0101】
比較例1と同様に、液晶パネルよりも背面側のパーツだけ、即ち第二吸収型偏光板24から第二反射型偏光板23までの部分20X(偏光板ルーバー)の透過率視野角を計算した。結果を
図22に示す(
図22(a))。併せて、本例において計算した透過率視野角の結果を、比較例1の当該結果で除すことで規格化したチャートも
図22に示す(
図22(b))。このチャート中の極角60°における方位角0°、方位角45°及び方位角90°の相対的な透過率を、表1に記載した。また、比較例1と同様に、正面輝度及び正面CRを測定した。結果を表1に示す。
【0102】
本例は、液晶表示装置を
図21で示される構成とすることで、比較例2の構成では第二吸収型偏光板24によって吸収されていた斜め方位(45°、-225°、130°及び-315°)の斜め光を、新たに配置した第一反射型偏光板21によって反射させ、バックライト30との間で反射を繰り返すうちに一部が正面方向に再出射されることを目的とした例である。だが、測定に使用した「LCD Master」での計算では、液晶パネル10からバックライト30側に多重反射されて正面方向に光がリサイクルされる効果を考慮することができないため、透過率視野角の結果(
図22及び表1)は、比較例2と同じ計算結果となる。
【0103】
表1に示されるように、参考例1では、比較例1に対して、正面CR及び正面輝度のいずれも向上する結果となった。だが、実施例1~4に比べるとその向上効果は小さい。
【0104】
(参考例2)
参考例2の液晶表示装置は、位相差層22として、NZ係数=10、面内位相差R0=50nm、厚み方向位相差Rth=475nmである2軸位相差フィルムを使用したことを除いて、参考例1の液晶表示装置と同じ構成である。その構成を、
図23に示す。
図23は、参考例2の液晶表示装置の構成を説明するための図である。液晶パネル10とバックライト30との間の各光学素子の軸方位も
図23に記載した。
【0105】
比較例1と同様に、液晶パネルよりも背面側のパーツだけ、即ち第二吸収型偏光板24から第二反射型偏光板23までの部分20X(偏光板ルーバー)の透過率視野角を計算した。結果を
図24に示す(
図24(a))。併せて、本例において計算した透過率視野角の結果を、比較例1の当該結果で除すことで規格化したチャートも
図24に示す(
図24(b))。このチャート中の極角60°における方位角0°、方位角45°及び方位角90°の相対的な透過率を、表1に記載した。また、比較例1と同様に、正面輝度及び正面CRを測定した。結果を表1に示す。
【0106】
図24及び表1に示されるように、参考例2では、参考例1よりも、斜め方位(45°、-225°、130°及び-315°)の斜め光が絞られてはいるが、方位0°、180°、90°及び-270°の絞りが全くない。
【0107】
表1に示されるように、参考例2では、比較例1に対して、正面CR及び正面輝度のいずれも向上する結果となった。だが、実施例1~4に比べるとその向上効果は小さい。
【0108】
【0109】
以上に示した本発明の各態様は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0110】
10、10P:液晶パネル
20:光学素子
20X:液晶パネルよりも背面側のパーツ
21:第一偏光子、(第一)反射型偏光子、(第一)反射型偏光板
22:位相差層、位相差板
22a:(第一)位相差層、(第一)位相差板
22b:(第二)位相差層、(第二)位相差板
23:第二偏光子、(第二)反射型偏光子、(第二)反射型偏光板
24:(第二)吸収型偏光子、(第二)吸収型偏光板
21A、22A、22aA、22bA、23A、24A:偏光子の吸収軸若しくは反射軸、又は、位相差層の遅相軸
30:バックライト
40:(第一)吸収型偏光子、(第一)吸収型偏光板
100、100R:液晶表示装置
1000:ヘッドマウントディスプレイ
U:ユーザ