IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本精工株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-円錐ころ軸受 図1
  • 特開-円錐ころ軸受 図2
  • 特開-円錐ころ軸受 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168878
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】円錐ころ軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 19/38 20060101AFI20231121BHJP
   F16C 33/66 20060101ALI20231121BHJP
   F16C 33/62 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
F16C19/38
F16C33/66 Z
F16C33/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080244
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100177910
【弁理士】
【氏名又は名称】木津 正晴
(72)【発明者】
【氏名】天野 靖
(72)【発明者】
【氏名】野村 剛
【テーマコード(参考)】
3J701
【Fターム(参考)】
3J701AA16
3J701AA25
3J701AA32
3J701AA43
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA53
3J701BA57
3J701BA69
3J701BA70
3J701DA05
3J701EA02
3J701EA47
3J701EA78
3J701FA33
3J701FA44
3J701GA36
3J701XB03
3J701XB12
3J701XB33
(57)【要約】
【課題】厳しい使用環境下でも焼付きの発生を抑制することができる円錐ころ軸受を提供する。
【解決手段】円錐ころ軸受1は、内輪2と、外輪4,5と、内輪2と外輪4,5との間に配置された複数の円錐ころ7と、を備える。内輪2の内径は、200mm以下である。円錐ころ軸受1は、基本動定格荷重の0.2倍以上の荷重を受けた状態で使用されるように構成されている。内輪2は、複数の円錐ころ7の大径端面71aが接触する大鍔面23a,23bを有する。大鍔面23a,23bには被膜31が形成されており、大径端面71aにおける大鍔面23a,23bとの接触領域には被膜32が形成されている。被膜31,32は、内輪2のビッカース硬さ及び円錐ころ7のビッカース硬さよりも大きいビッカース硬さを有する。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪と、
外輪と、
前記内輪と前記外輪との間に配置された複数の円錐ころと、を備える円錐ころ軸受であって、
前記内輪の内径は、200mm以下であり、
前記円錐ころ軸受は、基本動定格荷重の0.2倍以上の荷重を受けた状態で使用されるように構成されており、
前記内輪は、前記複数の円錐ころの大径端面が接触する大鍔面を有し、
前記大鍔面、及び前記大径端面における前記大鍔面との接触領域の少なくとも一方には、前記内輪のビッカース硬さ及び前記円錐ころのビッカース硬さよりも大きなビッカース硬さを有する被膜が形成されている、円錐ころ軸受。
【請求項2】
前記被膜は、ダイヤモンドライクカーボンにより構成されている、請求項1に記載の円錐ころ軸受。
【請求項3】
前記被膜は、前記大径端面の全面にわたって形成されている、請求項1又は2に記載の円錐ころ軸受。
【請求項4】
前記被膜は、前記大鍔面及び前記接触領域の両方に形成されている、請求項1又は2に記載の円錐ころ軸受。
【請求項5】
ラジアル荷重以上のアキシアル荷重を受けた状態で使用されるように構成されている、請求項1又は2に記載の円錐ころ軸受。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円錐ころ軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、内輪と、外輪と、内輪と外輪との間に配置された複数の円錐ころとを備える円錐ころ軸受が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-127834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
円錐ころ軸受の中には、鉄鋼圧延機のロールを支持するために用いられるものがある。一方、鉄鋼圧延機により、従来より使用されている鋼板よりも硬い圧延材(例えば高張力鋼や電磁鋼板等)を圧延する場合が考えられる。この場合、圧延材の変形抵抗が大きくなるため、圧延材に作用する圧力を増加させる必要がある。これに対し、単に圧延荷重を増加させると、ロールと圧延材との間の接触圧力が高くなることでロールが扁平に変形してしまうおそれがあり、圧延荷重を増加させても狙いの厚さの板材を製造することができない可能性がある。そこで、ロールを小径化し、ロールと圧延材との間の接触面積を減少させて高い面圧を発生させることで、従来と同程度の圧延荷重で硬い圧延材の圧延を実現可能とすることが考えられる。
【0005】
しかし、ロールの小径化に合わせて軸受も小型化する必要があるが、軸受が小型化すると軸受のラジアル荷重及びアキシアル荷重に対する耐性(負荷能力)が低下する。ラジアル荷重に関しては、小径化に伴ってロールが弾性変形しやすくなり、ロールから軸受に作用するラジアル荷重が減少する。そのため、軸受のラジアル荷重に対する耐性が低下したとしても、軸受に作用するラジアル荷重も減少することで互いの影響が相殺され、結果として軸受への影響は小さい。
【0006】
一方、アキシアル荷重はロールの小径化によって変化しない。そのため、軸受を小型化した場合、アキシアル荷重に対する耐性の低下の影響が問題となり得る。例えば、円錐ころ軸受においては、円錐ころの大径端面と内輪の大鍔面との間の接触面によりアキシアル荷重が受けられる場合がある。この場合において当該接触面に高い荷重(面圧)が作用すると、荷重の増加により接触面に存在する油膜の厚さが減少し、結果として油膜が切れやすくなり、焼付きが発生してしまうおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、厳しい使用環境下でも焼付きの発生を抑制することができる円錐ころ軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の円錐ころ軸受は、[1]「内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間に配置された複数の円錐ころと、を備える円錐ころ軸受であって、前記内輪の内径は、200mm以下であり、前記円錐ころ軸受は、基本動定格荷重の0.2倍以上の荷重を受けた状態で使用されるように構成されており、前記内輪は、前記複数の円錐ころの大径端面が接触する大鍔面を有し、前記大鍔面、及び前記大径端面における前記大鍔面との接触領域の少なくとも一方には、前記内輪のビッカース硬さ及び前記円錐ころのビッカース硬さよりも大きなビッカース硬さを有する被膜が形成されている、円錐ころ軸受」である。
【0009】
この円錐ころ軸受は、例えば鉄鋼圧延機のロールを支持するために、基本動定格荷重の0.2倍以上の荷重を受けた状態で使用される。また、この円錐ころ軸受では、内輪の内径が200mm以下であり、上述したとおり、従来のものよりも小径化された鉄鋼圧延機のロールを支持するために用いられた場合に、円錐ころの大径端面と内輪の大鍔面との間の接触面に高い荷重が作用する。このように、この円錐ころ軸受は、厳しい使用環境下で使用される。この点、この円錐ころ軸受では、内輪の大鍔面、及び円錐ころの大径端面における大鍔面との接触領域の少なくとも一方に、内輪のビッカース硬さ及び円錐ころのビッカース硬さよりも大きなビッカース硬さを有する被膜が形成されている。これにより、大鍔面と大径端面との間での焼付きの発生を抑制することができる。よって、この円錐転がり軸受によれば、厳しい使用環境下でも焼付きの発生を抑制することができる。
【0010】
本発明の円錐ころ軸受は、[2]「前記被膜は、ダイヤモンドライクカーボンにより構成されている、[1]に記載の円錐ころ軸受」であってもよい。この場合、焼付きの発生を一層抑制することができる。
【0011】
本発明の円錐ころ軸受は、[3]「前記被膜は、前記大径端面の全面にわたって形成されている、[1]又は[2]に記載の円錐ころ軸受」であってもよい。この場合、焼付きの発生を一層抑制することができる。
【0012】
本発明の円錐ころ軸受は、[4]「前記被膜は、前記大鍔面及び前記接触領域の両方に形成されている、[1]~[3]のいずれかに記載の円錐ころ軸受」であってもよい。この場合、焼付きの発生を一層抑制することができる。
【0013】
本発明の円錐ころ軸受は、[5]「ラジアル荷重以上のアキシアル荷重を受けた状態で使用されるように構成されている、[1]~[4]のいずれかに記載の円錐ころ軸受」であってもよい。この場合、内輪の大鍔面と円錐ころの大径端面と間の接触面において焼付きが発生しやすくなるが、この円錐ころ軸受によれば、そのような場合でも焼付きの発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、厳しい使用環境下でも焼付きの発生を抑制することができる円錐ころ軸受を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る円錐ころ軸受の周辺部の断面図である。
図2】円錐ころ軸受の断面図である。
図3】円錐ころ軸受の一部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0017】
図1に示される円錐ころ軸受1は、鉄鋼圧延機のロールR(例えばワークロール)のネック部Nを支持するロールネック軸受として構成されている。円錐ころ軸受1は、圧延機本体に取り付けられた軸箱(チョック)C内に配置されている。円錐ころ軸受1は、多列円錐ころ軸受であり、ラジアル荷重及びアキシアル荷重の両方を受けることができる。円錐ころ軸受1には、ロールの弾性変形を修正して圧延材の形状制御を行うための径方向のロールベンディングによるラジアル荷重と、軸方向のロールシフトやミスアライメントによるアキシアル荷重とを支持する機能が求められるためである。
【0018】
図1及び図2に示されるように、円錐ころ軸受1は、一対の内輪2と、第1外輪4と、一対の第2外輪5と、複数の円錐ころ7と、複数の保持器8と、一対のシールユニット10と、を備えている。円錐ころ軸受1は、例えば、軸方向Aにおける円錐ころ軸受1の中心を通り且つ軸方向Aに垂直な面(一対の内輪2の間の境界面)に関して面対称に構成されている。
【0019】
一対の内輪2は、軸方向Aに沿って並ぶように配置されており、互いに接触している。内輪2は、軌道面21及び内面22を有している。内面22は、ネック部Nと嵌め合わされる。一対の内輪2の内面22の間の境界部には円筒状の中間シール91が配置されており、中間シール91により内面22同士の間が封止されている。各内面22には溝部22aが形成されており、中間シール91は溝部22a内に配置されている。
【0020】
内輪2には、大鍔部23、第1小鍔部24及び第2小鍔部25が設けられている。大鍔部23は、軸方向Aにおける一方側を向いた第1大鍔面23aと、軸方向Aにおける他方側を向いた第2大鍔面23bと、を有している。第1大鍔面23a及び第2大鍔面23bは、円環状に形成されており、軌道面21に連続している。第1大鍔面23a及び第2大鍔面23bには、後述する円錐ころ7の大径端面71aが接触する。
【0021】
第1小鍔部24は第1小鍔面24aを有しており、第2小鍔部25は第2小鍔面25aを有している。第1小鍔面24a及び第2小鍔面25aは、円環状に形成されており、大鍔部23とは反対側において軌道面21に連続している。第1小鍔面24a及び第2小鍔面25aには、後述する円錐ころ7の小径端面72aが接触する。
【0022】
内輪2の内径は、200mm以下である。内輪2の内径とは、軸方向Aから見た場合における内面22同士の間の距離(直径)である。内輪2の内径は、150mm以下であってもよいし、100mm以下であってもよい。
【0023】
一対の第2外輪5は、軸方向Aにおいて第1外輪4を挟むように配置されている。第1外輪4は、一対の内輪2における中央側の部分と径方向において向かい合っている。第2外輪5は、一対の内輪2における端部側の部分と径方向において向かい合っている。
【0024】
第1外輪4は、軌道面41及び外面42を有している。第2外輪5は、軌道面51及び外面52を有している。外面42,52は、軸箱Cの内面Ca(図1)と嵌め合わされる。第1外輪4と第2外輪5との間には円筒状の間座92が介在している。外面52には溝部52aが形成されており、溝部52aには円環状のOリング94が配置されている。Oリング94により外面52と軸箱Cの内面Caとの間が封止されている。
【0025】
複数の円錐ころ7は、複数の第1円錐ころ7Aと、複数の第2円錐ころ7Bと、を含んでいる。第1円錐ころ7Aは、内輪2の軌道面21と第2外輪5の軌道面51との間に配置されている。第1円錐ころ7Aは、転動時に外周面(転動面)において軌道面21,51と転がり接触する。第2円錐ころ7Bは、内輪2の軌道面21と第1外輪4の軌道面41との間に配置されている。第2円錐ころ7Bは、転動時に外周面(転動面)において軌道面21,41と転がり接触する。複数の円錐ころ7は、複数列(この例では4列)に配置されている。
【0026】
各円錐ころ7は、円錐状(円錐台状)に形成されており、大径側の頭部71と、小径側の尾部72と、を有している。頭部71側における円錐ころ7の端面は、円形状の大径端面71aとなっており、尾部72側における円錐ころ7の端面は、円形状の小径端面72aとなっている。大径端面71aの直径は、小径端面72aの直径よりも大きい。
【0027】
第1円錐ころ7Aは、大径端面71aが軸方向Aにおける中央側を向くように配置されており、第2円錐ころ7Bは、大径端面71aが軸方向Aにおける端部側を向くように配置されている。複数の第1円錐ころ7A及び複数の第2円錐ころ7Bは、軌道面21と軌道面41又は軌道面51との間において一定の間隔で回転可能となるように、保持器8によって保持されている。
【0028】
転動時には、各第1円錐ころ7Aの大径端面71aが内輪2の第1大鍔面23aと滑り接触し、各第1円錐ころ7Aの小径端面72aが内輪2の第1小鍔面24aと滑り接触する。また、各第2円錐ころ7Bの大径端面71aが内輪2の第2大鍔面23bと滑り接触し、各第2円錐ころ7Bの小径端面72aが内輪2の第2小鍔面25aと滑り接触する。円錐ころ軸受1に作用するアキシアル荷重は、主に、大径端面71aと第1大鍔面23a及び第2大鍔面23bとの間の接触面により受けられる。
【0029】
一対のシールユニット10は、軸方向Aにおける第2外輪5の両端部にそれぞれ取り付けられ、内輪2と第2外輪5との間を封止している。図2及び図3に示されるように、シールユニット10は、シールド部材11と、シールド部材11に取り付けられた接触部材12と、を有している。シールド部材11は、例えば鋼等の金属材料により円環状に形成されており、底壁部13と、内側壁部14と、外側壁部15と、を有している。シールド部材11は、外側壁部15が第2外輪5の内面53と嵌め合わされることにより、第2外輪5の端部に固定されている。接触部材12は、例えばゴム等の弾性材料により円環状に形成されている。接触部材12は、シールド部材11の内側壁部14と嵌め合わされることにより、シールド部材11に固定されている。接触部材12の先端部は、内輪2の外面27に接触している。
【0030】
円錐ころ軸受1は、基本動定格荷重(Cr)の0.2倍以上の荷重を受けた状態で使用されるように軸箱に設置される。すなわち、円錐ころ軸受1は、そのような荷重を受けた状態で使用されるように構成されている。鉄鋼圧延機においてロールRを支持するために用いられる場合、円錐ころ軸受1には、基本動定格荷重の0.2倍以上の極めて大きな荷重が作用する(鉄鋼圧延機のベンダー荷重)。基本動定格荷重とは、軸受が100万回転の基本定格寿命(90%寿命)に耐えられるように設定された一定の大きさの静止荷重である。また、円錐ころ軸受1は、ラジアル荷重以上のアキシアル荷重を受けた状態で使用されるように構成されている。すなわち、使用時に円錐ころ軸受1に作用するアキシアル荷重は、使用時に円錐ころ軸受1に作用するラジアル荷重以上である。円錐ころ軸受1は、基本動定格荷重の0.3倍以上、0.4倍以上又は0.5倍以上の荷重を受けた状態で使用されるように構成されていてもよい。
【0031】
円錐ころ軸受1では、各内輪2の第1大鍔面23a及び第2大鍔面23b上に、被膜31が形成されている。また、各円錐ころ7の大径端面71a上に、被膜32が形成されている。この例では、被膜31は、第1大鍔面23aの全面及び第2大鍔面23bの全面にわたって形成されており、被膜32は、大径端面71aの全面にわたって形成されている。円錐ころ7の小径端面72a、並びに内輪2の第1小鍔面24a及び第2小鍔面25a上には被膜は形成されていない。円錐ころ軸受1では、大径端面71aは、被膜31及び被膜32を介して第1大鍔面23a又は第2大鍔面23bと滑り接触する。
【0032】
被膜31,32は、内輪2のビッカース硬さ及び円錐ころ7のビッカース硬さよりも大きなビッカース硬さを有する硬質被膜である。ビッカース硬さは、例えばJIS規格(JIS Z 2244-1:2020、JIS Z 2244-2:2020)により規定されたビッカース硬さ試験により測定され得る。被膜31,32は、例えば非金属材料により形成されている。この例では、被膜31,32は、ダイヤモンドライクカーボン(Diamond-Like Carbon)により構成された硬質炭素膜であり、3000HV程度のビッカース硬さを有している。一例として、内輪2の材料が浸炭炭素鋼である場合、内輪2のビッカース硬さは例えば650HV~750HV程度であり、円錐ころ7の材料が浸炭炭素鋼である場合、円錐ころ7のビッカース硬さは例えば670HV~770HV程度である。被膜31,32は、第1大鍔面23a又は第2大鍔面23bと大径端面71aとの間に介在し、第1大鍔面23a又は第2大鍔面23bと大径端面71aとの間の金属接触を抑制する。被膜31,32は、第1大鍔面23a又は第2大鍔面23bと大径端面71aとの間の接触面における摩擦(摩耗)を抑制する機能を有する。被膜31,32はダイヤモンドライクカーボンに限定されず、例えばクロムめっきにより構成されてもよい。この場合、被膜31,32のビッカース硬さは例えば700HV~1000HV程度である。被膜31,32は、互いに異なる種類の被膜により構成されていてもよい。
[作用及び効果]
【0033】
円錐ころ軸受1は、例えば鉄鋼圧延機のロールを支持するために、基本動定格荷重の0.2倍以上の荷重を受けた状態で使用される。また、円錐ころ軸受1では、内輪2の内径が200mm以下であり、上述したとおり、従来のものよりも小径化された鉄鋼圧延機のロールを支持するために用いられた場合に、円錐ころ7の大径端面71aと内輪2の大鍔面23a,23bとの間の接触面に高い荷重が作用する。このように、円錐ころ軸受1は、厳しい使用環境下で使用される。この点、円錐ころ軸受1では、内輪2の第1大鍔面23a及び第2大鍔面23bに被膜31が形成されていると共に、円錐ころ7の大径端面71aに被膜32が形成されている。被膜31,32は、内輪2のビッカース硬さ及び円錐ころ7のビッカース硬さよりも大きなビッカース硬さを有している。これにより、大鍔面23a,23bと大径端面71aとの間での焼付きの発生を抑制することができる。よって、円錐ころ軸受1によれば、耐アキシアル性能を高めることができ、厳しい使用環境下でも焼付きの発生を抑制することができる。
【0034】
被膜31,32が、ダイヤモンドライクカーボンにより構成されている。これにより、焼付きの発生を一層抑制することができる。
【0035】
被膜32が、大径端面71aの全面にわたって形成されている。これにより、焼付きの発生を一層抑制することができる。
【0036】
被膜31,32が、大鍔面23a,23b及び大径端面71aにそれぞれ形成されている。これにより、焼付きの発生を一層抑制することができる。
【0037】
円錐ころ軸受1が、ラジアル荷重以上のアキシアル荷重を受けた状態で使用されるように構成されている。この場合、内輪2の第1大鍔面23a及び第2大鍔面23bと円錐ころ7の大径端面71aとの間の接触面において焼付きが発生しやすくなるが、円錐ころ軸受1によれば、そのような場合でも焼付きの発生を抑制することができる。
【0038】
本発明は、上記実施形態及び変形例に限られない。例えば、各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。上記実施形態では円錐ころ軸受1が密封されていたが、円錐ころ軸受1は密封されていなくてもよい。円錐ころ軸受1内には潤滑剤(潤滑油)が存在していてもよい。潤滑剤が存在している場合、仮に被膜31,32が摩耗等により無くなってしまった場合でも、被膜31,32の代わりに油膜が形成されて大鍔面23a,23bが保護され得る。
【0039】
上記実施形態では被膜32が大径端面71aの全面にわたって形成されていたが、被膜32は、大径端面71aにおける大鍔面23a,23bとの接触領域(大径端面71aにおける外周に沿った縁部)のみに形成されていてもよい。この場合にも、上記実施形態と同様に、焼付きの発生を抑制することができる。また、被膜32が形成される領域を小さくすることで、生産性を高めて低コスト化を図ることができる。大径端面71aの中央に逃がし部(凹部)が形成されている場合、大径端面71aにおいて逃がし部が形成されていない領域のみに被膜32が形成されていてもよい。
【0040】
上記実施形態では第1大鍔面23a及び第2大鍔面23bに被膜31が形成されていると共に大径端面71aに被膜32が形成されていたが、被膜31,32はは、大鍔面23a,23b及び大径端面71aの少なくとも一方に形成されていればよく、大鍔面23a,23bのみに形成されていてもよいし、大径端面71aのみに形成されていてもよい。すなわち、被膜31,32の一方が省略されてもよい。この場合にも、上記実施形態と同様に、焼付きの発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…円錐ころ軸受、2…内輪、4…第1外輪、5…第2外輪、23a…第1大鍔面、23b…第2大鍔面、71a…大径端面、31…被膜、32…被膜。

図1
図2
図3