(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168899
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】飲食物容器
(51)【国際特許分類】
B65D 51/16 20060101AFI20231121BHJP
A47J 41/02 20060101ALI20231121BHJP
A47J 41/00 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
B65D51/16 200
A47J41/02 104A
A47J41/00 304A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080282
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002473
【氏名又は名称】象印マホービン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】岸田 楓
(72)【発明者】
【氏名】西 泰輔
【テーマコード(参考)】
3E084
4B002
【Fターム(参考)】
3E084AA02
3E084AA22
3E084AB01
3E084AB10
3E084BA02
3E084CA01
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB12
3E084DC03
3E084EA03
3E084EB02
3E084FA09
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084HA05
3E084HB04
3E084HC03
3E084KA04
3E084KB01
3E084KB10
3E084LA17
3E084LB02
3E084LB07
3E084LC01
3E084LD01
4B002AA02
4B002BA15
4B002CA15
4B002CA21
(57)【要約】
【課題】開栓動作の際に、内部の負圧を開放するための隙間を早期に形成し、開閉時の栓動作を容易化させることができる飲食物容器を提供する。
【解決手段】この飲食物容器1の栓ユニット20は、上ユニット30および下ユニット40を有する。上ユニット30は、下方へ向けて突出する栓突起321を有する。下ユニット40は、栓突起の外周面に密着可能な円環状の内パッキン431を有する。容器本体内が負圧になっている場合、容器本体から栓ユニット20を取り外すときに、上ユニット30に対する下ユニット40の相対的な位置が、第1相対位置から第2相対位置に変化する。これにより、上ユニット30の栓突起321と下ユニット40の内パッキン431との間に隙間21が生じ、容器本体10内の負圧が解消される。したがって、容器本体内の負圧により開栓動作が重くなることを抑制できる。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲食物を収容可能な飲食物容器であって、
有底筒状の容器本体と、
前記容器本体の上部に対して着脱可能な栓ユニットと、
を備え、
前記栓ユニットは、
上ユニットと、
前記上ユニットの下部に取り付けられる下ユニットと、
を有し、
前記上ユニットは、下方へ向けて突出する栓突起を有し、
前記下ユニットは、前記栓突起の外周面に密着可能な円環状の内パッキンを有し、
前記下ユニットは、前記上ユニットとの相対的な位置関係において、
前記内パッキンが前記栓突起の外周面に密着する第1相対位置と、
前記内パッキンが前記栓突起の外周面から離れる第2相対位置と、
の間で移動可能である、飲食物容器。
【請求項2】
請求項1に記載の飲食物容器であって、
前記下ユニットは、前記内パッキンと、前記容器本体に密着する外パッキンと、を含む単一のパッキン部品を有する、飲食物容器。
【請求項3】
請求項2に記載の飲食物容器であって、
前記容器本体の内周面は、上方へ向かうにつれて拡径する傾斜面を有し、
前記外パッキンは、弾性変形しつつ、前記傾斜面に密着する、飲食物容器。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の飲食物容器であって、
前記下ユニットは、
第1部品と、
前記第1部品に対して、ネジ嵌合により固定された第2部品と、
を有し、
前記パッキン部品が、前記第1部品と前記第2部品との間に挟まれている、飲食物容器。
【請求項5】
請求項4に記載の飲食物容器であって、
前記第1部品は、第1爪を有し、
前記第2部品は、前記第1爪に係合する第2爪を有し、
前記第1爪と前記第2爪の係合により、前記ネジ嵌合の逆回転が防止される、飲食物容器。
【請求項6】
請求項4に記載の飲食物容器であって、
前記パッキン部品は、回り止め凹部を有し、
前記第1部品および前記第2部品の少なくともいずれか一方は、前記回り止め凹部に嵌合する回り止め凸部を有する、飲食物容器。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の飲食物容器であって、
前記上ユニットは、周方向に延びるガイド溝を有し、
前記下ユニットは、前記ガイド溝に沿って移動可能なガイド突起を有し、
前記ガイド溝は、
第1溝部と、
前記第1溝部よりも下方へ広がる第2溝部と、
を有し、
前記上ユニットは、
前記ガイド突起が前記第1溝部に配置された状態と、
前記ガイド突起が前記第2溝部に配置された状態と、
の間で、前記下ユニットに対して、相対回転可能である、飲食物容器。
【請求項8】
請求項2または請求項3に記載の飲食物容器であって、
前記容器本体に対する前記外パッキンの接触面積は、前記栓突起に対する前記内パッキンの接触面積よりも大きい、飲食物容器。
【請求項9】
請求項7に記載の飲食物容器であって、
前記下ユニットは、前記上ユニットに対して着脱可能であり、
前記ガイド溝は、
前記上ユニットから前記下ユニットを取り外すときに、前記ガイド突起が通過する第3溝部と、
前記第3溝部に形成されたクリック突起と、
をさらに有する、飲食物容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食物を収容可能な飲食物容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スープなどの流動物を含む飲食物を収容する、フードジャーやスープジャーなどと称される飲食物容器が知られている。飲食物容器は、有底筒状の容器本体と、容器本体の上部を覆う栓ユニットとを有する。容器本体に栓ユニットが取り付けられると、栓ユニットに設けられたパッキンにより、容器本体の内部が密閉された空間となる。これにより、飲食物の漏れが防止される。
【0003】
この種の飲食物容器に高温の飲食物を収容した場合、飲食物の温度は、時間の経過とともに緩やかに低下する。そして、飲食物の温度が低下すると、容器本体内の気圧は、大気圧よりも低い負圧となる。そうすると、当該負圧によって、栓ユニットが、容器本体に引き付けられる。これにより、開栓動作が重くなるという問題がある。
【0004】
この問題について、特許文献1,2には、開栓時に、内蓋に対して中栓を上昇させることにより、通気孔を開放し、容器本体内の圧力を大気圧に戻す構造が記載されている(例えば、引用文献1の段落0071,0077,
図10等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-186014号公報
【特許文献2】特開2019-077476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の構造では、閉栓時に、内蓋の中央に設けられた通気孔の周囲に、中栓の下面に設けられた栓体を、上方から当接させることにより、通気孔を封止している。また、特許文献2の構造は、通気孔と栓体との配置が逆になっているが、同様の構造である。これらのような構造の場合、封止した通気孔から飲食物が漏れ出すことを防ぐためには、通気孔に対して、栓体を強く圧接させておく必要がある。したがって、開栓時に、封止した通気孔を開放させるまでに、外蓋を開方向に多く回さなければならないという問題がある。一方、閉栓時には、栓体を強く圧接させなければならないため、通気孔に栓体が接触してから、さらに強い力で、外蓋を閉方向に回さなければならないという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、開栓動作の際に、内部の負圧を開放するための隙間を早期に形成し、開閉時の栓動作を容易化させることができる飲食物容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、飲食物を収容可能な飲食物容器であって、有底筒状の容器本体と、前記容器本体の上部に対して着脱可能な栓ユニットと、を備え、前記栓ユニットは、上ユニットと、前記上ユニットの下部に取り付けられる下ユニットと、を有し、前記上ユニットは、下方へ向けて突出する栓突起を有し、前記下ユニットは、前記栓突起の外周面に密着可能な円環状の内パッキンを有し、前記下ユニットは、前記上ユニットとの相対的な位置関係において、前記内パッキンが前記栓突起の外周面に密着する第1相対位置と、前記内パッキンが前記栓突起の外周面から離れる第2相対位置と、の間で移動可能である。
【0009】
本発明によれば、容器本体内が負圧になっている場合、容器本体から栓ユニットを取り外すときに、上ユニットに対する下ユニットの相対的な位置が、第1相対位置から第2相対位置に変化する。これにより、栓突起の外周面と円環状の内パッキンとの間に隙間が生じ、容器本体内の負圧が解消される。したがって、容器本体内の負圧により開栓動作が重くなることを抑制できる。また、内パッキンは、孔に対して上下方向に押し付けられるものではない。このため、開栓動作の際に、栓突起と内パッキンとの間に、上記の隙間を早期に形成でき、栓ユニットの開方向への回転量が少ない回転量で済む。また、閉栓動作の際に、上ユニットに対して下ユニットを第2相対位置から第1相対位置に変化させる場合も、栓ユニットの閉方向への回転量が少ない回転量でよく、しかも栓ユニットを軽い力で回せば閉栓は済む。このことにより、開閉時の栓動作を容易化することができる。
【0010】
また、前記下ユニットは、前記内パッキンと、前記容器本体に密着する外パッキンと、を含む単一のパッキン部品を有することが望ましい。これにより、下ユニットの部品点数を低減できる。
【0011】
また、前記容器本体の内周面は、上方へ向かうにつれて拡径する傾斜面を有し、前記外パッキンは、弾性変形しつつ、前記傾斜面に密着することが望ましい。このようにすれば、外パッキンが、傾斜面から上方へ向かう力を受ける。これにより、閉栓時には、下ユニットを第1相対位置に配置して、内パッキンを栓突起に密着させることができる。
【0012】
また、前記下ユニットは、第1部品と、前記第1部品に対して、ネジ嵌合により固定された第2部品と、を有し、前記パッキン部品が、前記第1部品と前記第2部品との間に挟まれていることが望ましい。これにより、内パッキンおよび外パッキンを止水可能な態様で露出させつつ、パッキン部品を固定できる。また、第1部品と第2部品の固定に、スナップフィット等の他の固定方法を用いる場合よりも、下ユニットの上下方向の寸法を抑えることができる。
【0013】
また、前記第1部品は、第1爪を有し、前記第2部品は、前記第1爪に係合する第2爪を有し、前記第1爪と前記第2爪の係合により、前記ネジ嵌合の逆回転が防止されることが望ましい。これにより、ユーザが分解できない(少なくともユーザが分解しにくい)状態でパッキン部品を固定できる。
【0014】
また、前記パッキン部品は、回り止め凹部を有し、前記第1部品および前記第2部品の少なくともいずれか一方は、前記回り止め凹部に嵌合する回り止め凸部を有することが望ましい。これにより、第1部品および第2部品に対して、パッキン部品が回転することを抑制できる。
【0015】
また、前記上ユニットは、周方向に延びるガイド溝を有し、前記下ユニットは、前記ガイド溝に沿って移動可能なガイド突起を有し、前記ガイド溝は、第1溝部と、前記第1溝部よりも下方へ広がる第2溝部と、を有し、前記上ユニットは、前記ガイド突起が前記第1溝部に配置された状態と、前記ガイド突起が前記第2溝部に配置された状態と、の間で、前記下ユニットに対して、相対回転可能であることが望ましい。この場合、容器本体から栓ユニットを取り外すときに、上ユニットを回転させると、ガイド突起が第1溝部から第2溝部へ移動する。これにより、上ユニットに対する下ユニットの相対的な位置を、第1相対位置から第2相対位置に変化させることが可能となる。
【0016】
また、前記容器本体に対する前記外パッキンの接触面積は、前記栓突起に対する前記内パッキンの接触面積よりも大きいことが望ましい。このようにすれば、容器本体と外パッキンとの間に作用する摩擦力が、栓突起と内パッキンとの間に作用する摩擦力よりも大きくなる。このため、上ユニットを回転させると、栓ユニットの全体ではなく、上ユニットのみを回転させることができる。これにより、ガイド突起を、第1溝部から第2溝部へ移動させることができる。
【0017】
また、前記下ユニットは、前記上ユニットに対して着脱可能であり、前記ガイド溝は、前記上ユニットから前記下ユニットを取り外すときに、前記ガイド突起が通過する第3溝部と、前記第3溝部に形成されたクリック突起と、をさらに有することが望ましい。これにより、容器本体から栓ユニットを取り外すときに、上ユニットから下ユニットが脱落することを、抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、容器本体内が負圧になっている場合、容器本体から栓ユニットを取り外すときに、上ユニットに対する下ユニットの相対的な位置が、第1相対位置から第2相対位置に変化する。これにより、栓突起の外周面と円環状の内パッキンとの間に隙間が生じ、容器本体内の負圧が解消される。したがって、容器本体内の負圧により開栓動作が重くなることを抑制できる。また、内パッキンは、孔に対して上下方向に押し付けられるものではない。このため、開栓動作の際に、栓突起と内パッキンとの間に、上記の隙間を早期に形成でき、栓ユニットの開方向への回転量が少ない回転量で済む。また、閉栓動作の際に、上ユニットに対して下ユニットを第2相対位置から第1相対位置に変化させる場合も、栓ユニットの閉方向への回転量が少ない回転量でよく、しかも栓ユニットを軽い力で回せば閉栓は済む。このことにより、開閉時の栓動作を容易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図9】第1相対位置のときの栓ユニットの縦断面図である。
【
図10】第2相対位置のときの栓ユニットの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明においては、栓ユニット20の中心軸Aを中心とする径方向を、単に「径方向」と称する。また、栓ユニット20の中心軸Aを中心とする周方向を、単に「周方向」と称する。
【0021】
<1.飲食物容器の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る飲食物容器1の側面図である。
図2は、飲食物容器1の縦断面図である。この飲食物容器1は、流動物を含む飲食物を内部に収容可能な容器である。流動物を含む飲食物とは、例えば、スープ、味噌汁、冷や汁、雑炊、そうめんなどである。ただし、飲食物容器1は、固形物のみの食物を収容可能なものであってもよい。飲食物容器1のユーザは、これらの飲食物を飲食物容器1に入れ、飲食物を保温または保冷しながら、持ち運ぶことができる。
図1および
図2に示すように、飲食物容器1は、容器本体10と栓ユニット20とを備える。
【0022】
容器本体10は、飲食物を内部に収容する、有底筒状の部品である。容器本体10は、ステンレス鋼などの金属により形成される。
図2に示すように、容器本体10は、底部11、胴部12、および開口部13を有する。底部11は、容器本体10の下端に位置する円板状の部分である。胴部12は、底部11の縁から上方へ向けて延びる、略円筒状の部分である。開口部13は、胴部12の上方に位置し、胴部12よりも外径が小さい、略円筒状の部分である。開口部13の外周面には、雄ネジ14が形成されている。雄ネジ14は、螺旋状の突起である。
【0023】
底部11、胴部12、および開口部13は、それぞれ、二重構造となっており、内面と外面との間に真空層を有する。これにより、容器本体10の内部に収容された飲食物を、保温または保冷することができる。
【0024】
栓ユニット20は、容器本体10の上部の開口を塞ぐ部品である。栓ユニット20は、容器本体10の上部に対して着脱可能となっている。容器本体10の上部に栓ユニット20が取り付けられると、飲食物容器1の内部空間が密閉される。また、容器本体10から栓ユニット20が取り外されると、容器本体10の開口部13が開放される。
【0025】
図3は、栓ユニット20の側面図である。
図4は、栓ユニット20の分解側面図である。
図2~
図4に示すように、栓ユニット20は、上ユニット30および下ユニット40を有する。容器本体10に栓ユニット20が取り付けられた状態において、上ユニット30は、開口部13の上部および外周部を覆う。また、容器本体10に栓ユニット20が取り付けられた状態において、下ユニット40は、容器本体10の開口部13の内側に挿入される。
【0026】
下ユニット40は、上ユニット30の下部に取り付けられる。また、下ユニット40は、上ユニット30に対して、着脱可能となっている。飲食物容器1のユーザは、
図4のように、栓ユニット20を、上ユニット30と下ユニット40とに分解して、各ユニットを洗浄することができる。
【0027】
図5は、上ユニット30の分解側面図である。
図5に示すように、上ユニット30は、カバー部品31、栓部品32、および断熱部品33を有する。カバー部品31、栓部品32、および断熱部品33は、弾性変形しにくい合成樹脂により形成される。
【0028】
図2に示すように、カバー部品31は、天板部311、筒状部312、および雌ネジ313を有する。天板部311は、上ユニット30の上面を構成する円板状の部分である。筒状部312は、上ユニット30の外側面を構成する円筒状の部分である。筒状部312は、天板部311の外周部から下方へ向けて延びる。雌ネジ313は、筒状部312の下端部付近の内周面に形成された、螺旋状の突起である。容器本体10に栓ユニット20を取り付けるときには、容器本体10の雄ネジ14に、カバー部品31の雌ネジ313を螺合させる。
【0029】
栓部品32は、カバー部品31の天板部311の下面に固定された部品である。
図2および
図5に示すように、栓部品32は、固定爪320を有する。栓部品32は、固定爪320を、カバー部品31の段差314に係合させることにより、カバー部品31に固定される。したがって、飲食物容器1のユーザは、カバー部品31から栓部品32を、容易に取り外すことはできない。また、栓部品32の外周部と、カバー部品31との境界部は、シーラントにより封止されている。したがって、カバー部品31の天板部311の下面と、栓部品32の上面との間には、密閉された内部空間34が形成される。
【0030】
また、
図2に示すように、栓部品32は、下方へ向けて突出した栓突起321を有する。栓突起321は、筒状部312の内側に位置する。栓突起321の形状は、略カップ状である。より具体的には、栓突起321は、栓ユニット20の中心軸Aを中心とする円形の底面322と、底面322の外周部から上方へ向かうにつれて拡径する略円錐状の下外周面323と、下外周面323の上端から上方へ延びる略円筒状の上外周面324と、を有する。また、
図5に示すように、栓部品32の上外周面324には、周方向に延びるガイド溝35が形成されている。
【0031】
断熱部品33は、上ユニット30の内部空間34(カバー部品31と栓部品32との間の空間)に配置された部品である。断熱部品33は、上ユニット30の内部空間34を、複数の空間に仕切る。これにより、飲食物容器1の内部から栓ユニット20を介して外部へ、熱が逃げることを抑制し、飲食物容器1の保温・保冷の効果を高める。断熱部品33の詳細な構成については、後述する。
【0032】
図6は、下ユニット40の分解側面図である。
図6に示すように、下ユニット40は、第1部品41、第2部品42、およびパッキン部品43を有する。第1部品41および第2部品42は、弾性変形しにくい合成樹脂により形成される。
【0033】
パッキン部品43は、中心軸Aを中心とする円環状のシール部材である。パッキン部品43は、弾性変形可能なシリコーン等の軟性部材により形成される。
図2に示すように、パッキン部品43は、内パッキン431および外パッキン432を有する。
【0034】
内パッキン431は、パッキン部品43の内周部において、径方向内側へ向けて突出する。容器本体10に栓ユニット20が取り付けられた状態において、内パッキン431は、栓突起321の下外周面323に、弾性変形しつつ密着する。これにより、上ユニット30と下ユニット40の間の隙間が封止される。したがって、容器本体10に収容された飲食物が、上ユニット30と下ユニット40の間を通って外部ヘ漏れ出すことが、防止される。
【0035】
外パッキン432は、パッキン部品43の外周部において、下向きに突出する。容器本体10に栓ユニット20が取り付けられた状態において、外パッキン432は、容器本体10の内周面に、弾性変形しつつ密着する。より具体的には、容器本体10の内周面は、傾斜面15を含む。傾斜面15は、上方へ向かうにつれて拡径するように、傾斜している。外パッキン432は、この傾斜面15に、弾性変形しつつ密着する。これにより、栓ユニット20と容器本体10の間の隙間が封止される。したがって、容器本体10に収容された飲食物が、栓ユニット20と容器本体10の間を通って外部ヘ漏れ出すことが、防止される。また、内パッキン431および外パッキン432により、飲食物容器1の内部が、密閉された空間となる。
【0036】
上記のように、本実施形態では、内パッキン431と外パッキン432とが、単一のパッキン部品43により実現されている。このようにすれば、内パッキン431および外パッキン432を別々の部品とする場合よりも、下ユニット40の部品点数を低減できる。ただし、内パッキン431と外パッキン432とは、別々の部品であってもよい。
【0037】
第1部品41は、パッキン部品43の上方に配置され、パッキン部品43を上方側から挟持するための円環状の部品である。
図2および
図6に示すように、第1部品41は、円板部411および円筒部412を有する。円板部411は、栓ユニット20の中心軸Aに対して垂直に広がる。円筒部412は、円板部411の上面から、上方へ向けて延びる。第2部品42は、パッキン部品43の下方に配置され、パッキン部品43を下方側から挟持するための円環状の部品である。
図2および
図6に示すように、第2部品42は、栓ユニット20の中心軸Aに対して垂直に広がる。
【0038】
パッキン部品43は、第1部品41と第2部品42との間に挟まれることにより、第1部品41と第2部品42との間に固定される。内パッキン431は、下ユニット40の内周部において、第1部品41および第2部品42から露出する。外パッキン432は、下ユニット40の外周部において、第1部品41および第2部品42から露出する。このように、第1部品41と第2部品42の間にパッキン部品43を挟持することにより、内パッキン431および外パッキン432を止水可能な態様で露出させつつ、パッキン部品43を固定できる。
【0039】
図7は、第1部品41を斜め下側から見た斜視図である。
図8は、第2部品42を斜め上側から見た斜視図である。本実施形態では、第2部品42が、第1部品41に対して、ネジ嵌合により固定される。具体的には、
図7に示すように、第1部品41は、雄ネジ413を有する。雄ネジ413は、螺旋状の突起である。また、
図8に示すように、第2部品42は、雌ネジ421を有する。雌ネジ421は、螺旋状の突起である。第2部品42は、この雌ネジ421を、第1部品41の雄ネジ413に螺合させることにより、第1部品41に対して固定される。このように、ネジ嵌合を使用すれば、スナップフィット等の他の固定方法を用いる場合よりも、下ユニット40の上下方向の寸法を抑えつつ、第1部品41と第2部品42とを固定できる。
【0040】
図7に示すように、第1部品41は、第1爪414を有する。第1爪414は、円板部411の下面から、下方へ向けて突出する。また、
図8に示すように、第2部品42は、第2爪422を有する。第2爪422は、第2部品42の上面から、上方へ向けて突出する。第1部品41の雄ネジ413に、第2部品42の雌ネジ421を螺合させる際、第2爪422が第1爪414を乗り越えて、第1爪414と第2爪422とが係合する。これにより、ネジ嵌合の逆回転が防止される。このようにすれば、ユーザが下ユニット40を分解することを抑制できる。
【0041】
また、
図6に示すように、パッキン部品43は、回り止め凹部434を有する。回り止め凹部434は、パッキン部品43の外周部から、径方向内側へ向けて凹む。一方、
図7に示すように、第1部品41は、回り止め凸部415を有する。回り止め凸部415は、第1部品41の外周部から、径方向内側へ向けて突出する。パッキン部品43が、第1部品41と第2部品42の間に挟まれた状態において、回り止め凸部415は、回り止め凹部434に嵌合する。これにより、第1部品41および第2部品42に対して、パッキン部品43が回転することを抑制できる。
【0042】
なお、回り止め凸部415は、第2部品42に設けられていてもよい。すなわち、第1部品41および第2部品42の少なくともいずれか一方に、パッキン部品43の回り止め凹部434に嵌合する回り止め凸部が設けられていればよい。
【0043】
また、
図7に示すように、第1部品41は、ガイド突起44を有する。ガイド突起44は、円筒部412の内周面から、径方向内側へ向けて突出する。ガイド突起44は、栓部品32のガイド溝35に挿入される。これにより、上ユニット30に対して下ユニット40が取り付けられる。また、ガイド突起44は、ガイド溝35に沿って、周方向に移動可能である。飲食物容器1のユーザは、上ユニット30に対して下ユニット40を回転させ、ガイド溝35に沿ってガイド突起44を周方向に移動させることにより、上ユニット30に対して下ユニット40を着脱することができる。
【0044】
<2.負圧解消構造について>
容器本体10内に高温の飲食物を収容した場合、飲食物の温度は、時間の経過とともに緩やかに低下する。そして、飲食物の温度が低下すると、容器本体10内の気圧は、大気圧よりも低い負圧となる。そうすると、当該負圧によって、栓ユニット20に、開栓動作に逆らう方向の力が加わる。しかしながら、本実施形態の飲食物容器1は、このような負圧を解消するための構造を有する。以下では、当該構造について、説明する。
【0045】
図5に示すように、栓部品32のガイド溝35は、第1溝部351、第2溝部352、第3溝部353、および出入口354を有する。上ユニット30に下ユニット40を取り付けるときは、下ユニット40のガイド突起44を、出入口354を介して、ガイド溝35へ挿入する。また、上ユニット30から下ユニット40を分離するときには、ガイド溝35から出入口354を介して、ガイド突起44を取り外す。
【0046】
第1溝部351は、ガイド溝35のうち、出入口354から周方向に最も離れた位置にある。ガイド突起44を第1溝部351まで挿入すると、ガイド突起44は、第1溝部351に軽圧入される。これにより、上ユニット30と下ユニット40とが一体化される。第2溝部352は、第1溝部351の出入口354側に位置し、第1溝部351と周方向に隣接する。第2溝部352は、第1溝部351よりも、下方へ広がる。第3溝部353は、第2溝部352と出入口354との間で、周方向に延びる。
【0047】
容器本体10に栓ユニット20が取り付けられた閉栓状態では、ガイド突起44が第1溝部351に配置される。このときの上ユニット30に対する下ユニット40の相対的な位置を、以下では「第1相対位置」とする。
図9は、第1相対位置のときの栓ユニット20の縦断面図である。
図9のように、第1相対位置では、内パッキン431が、栓突起321の外周面に密着する。
【0048】
容器本体10内が負圧になった状態で、栓ユニット20を開く場合、ユーザは、上ユニット30を掴み、上ユニット30を開栓方向(上面視において反時計回り)に回転させる。そうすると、下ユニット40に対して上ユニット30が相対的に回転し、ガイド突起44が、第1溝部351から第2溝部352へ移動する。そうすると、第2溝部352が第1溝部351よりも下方へ広がっているため、下ユニット40に対して上ユニット30を、相対的に上昇させる(離間方向に移動させる)ことが可能となる。
【0049】
上ユニット30は、回転に伴い高さが上昇するが、下ユニット40は、容器本体10内の負圧によって、容器本体10に引き付けられるため、下ユニット40の高さ方向の位置が維持される。したがって、下ユニット40と上ユニット30の相対的な位置関係において、下ユニット40が、上ユニット30に対して第1相対位置よりも離れた「第2相対位置」となる。
図10は、第2相対位置のときの栓ユニット20の縦断面図である。
図10のように、第2相対位置では、内パッキン431が、栓突起321の外周面から離れる。すなわち、内パッキン431と栓突起321の外周面との間に、隙間21が生じる。このため、当該隙間21から、容器本体10内に空気が流入する。その結果、容器本体10内の負圧が解消される。
【0050】
容器本体10内の負圧が解消されると、栓ユニット20の開栓動作の抵抗となる力が無くなる。したがって、その後は、栓ユニット20を、軽い力で開栓方向に回転させることができる。
【0051】
以上のように、この飲食物容器1では、下ユニット40が、第1相対位置と第2相対位置との間で、上ユニット30に対して相対的に移動可能となっている。このため、容器本体10内が負圧になっているときには、栓ユニット20を開くときに、上ユニット30に対する下ユニット40の相対的な位置関係を、第1相対位置から第2相対位置へ変化させることができる。これにより、栓突起321の下外周面323と円環状の内パッキン431との間に隙間21が生じ、容器本体10内の負圧が解消される。したがって、容器本体10内の負圧により、開栓動作が重くなることを抑制できる。
【0052】
また、内パッキン431は、閉栓時に、孔に対して上下方向に押し付けられるものではく、栓突起321の下外周面323に、円環状に接触するものである。このような構造では、閉栓時に、内パッキン431を、上下方向に大きく圧縮させる必要がない。したがって、開栓動作の際に、栓突起321と内パッキン431との間に、上記の隙間21を早期に形成できる。また、閉栓動作の際に、下ユニット40を第2相対位置から第1相対位置に変化させる場合も、栓ユニット20の閉方向への回転量が少ない回転量でよく、しかも栓ユニット20を軽い力で回せられる。よって、開閉時の栓動作を容易化することができる。
【0053】
また、この飲食物容器1では、外パッキン432が、容器本体10の傾斜面15に、弾性変形しつつ密着する。これにより、下ユニット40が、傾斜面15から上方へ向かう力を受ける。このため、閉栓時には、上ユニット30に対する下ユニット40の相対的な位置関係が、第1相対位置に維持される。したがって、閉栓時には、内パッキン431を栓突起321に密着させて、容器本体10内の密閉性を保つことができる。
【0054】
また、この飲食物容器1では、容器本体10に対する外パッキン432の接触面積が、栓突起321に対する内パッキン431の接触面積よりも、大きい。このため、容器本体10と外パッキン432との間に作用する摩擦力が、栓突起321と内パッキン431との間に作用する摩擦力よりも、大きくなる。したがって、上ユニット30を開栓方向に回転させると、栓ユニット20の全体ではなく、上ユニット30のみを回転させることができる。これにより、ガイド突起44を、第1溝部351から第2溝部352へ移動させることができる。
【0055】
また、この飲食物容器1では、
図5に示すように、第3溝部353に、クリック突起355が形成されている。このクリック突起355により、第3溝部353の幅が、部分的に狭められている。このようにすれば、上ユニット30を開栓方向に回転させたときに、ガイド突起44が第3溝部353に進入したとしても、ガイド突起44がクリック突起355を通過することを抑制できる。したがって、ガイド突起44が出入口354まで到達することを抑制できる。これにより、上ユニット30から下ユニット40が脱落することを抑制できる。
【0056】
<3.断熱部品について>
続いて、上述した断熱部品33の詳細な構成について、説明する。
図11は、断熱部品33の斜視図である。
【0057】
既述の通り、断熱部品33は、上ユニット30の内部空間34に配置されている。断熱部品33は、一般的な発泡性樹脂からなる断熱材ではなく、非発泡性の樹脂からなる成形品である。非発泡性の樹脂を使用すれば、発泡性樹脂を使用する場合と比べて、断熱部品33にかかる製造コストを抑えることができる。断熱部品33を構成する樹脂には、例えば、耐熱性に優れたポリプロピレン(PP)を使用するとよい。
【0058】
図11に示すように、断熱部品33は、複数の仕切壁331,332を有する。上ユニット30の内部空間34は、複数の仕切壁331,332によって、複数の小空間に仕切られる。これにより、上ユニット30の内部空間34において生じる熱の対流が小さくなる。したがって、飲食物容器1の内部から、栓ユニット20を介して外部へ、熱が逃げることを抑制できる。その結果、飲食物容器1による飲食物の保温・保冷の効果を高めることができる。
【0059】
ただし、断熱部品33により仕切られる小空間の数を過剰に多くすると、断熱部品33の樹脂量が増えるため、熱伝導による放熱量が多くなる。したがって、高い断熱効果を得るために、内部空間34の大きさに対する断熱部品33の樹脂使用量は適宜設定される。例えば、本飲食物容器1の一般的なものの場合、断熱部品33により仕切られる小空間の数は、10~25程度とすることが望ましい。非発泡性の樹脂を使用すれば、材料自体に小孔が無いため、個々の小空間を、適切な大きさとすることができる。したがって、対流熱による放熱と、熱伝導による放熱とを、ともに小さくすることができる。
【0060】
複数の仕切壁331,332は、複数の横壁331と、複数の縦壁332とを含む。横壁331は、栓ユニット20の中心軸Aに対して垂直に広がる。複数の横壁331は、上下方向に間隔をあけて配置されている。上ユニット30の内部空間34は、横壁331によって、上下方向に並ぶ複数の小空間に仕切られる。これにより、栓ユニット20を介して上向きに熱が逃げることを、より効果的に抑制できる。
【0061】
複数の縦壁332は、栓ユニット20の中心軸Aから放射状に広がる。上ユニット30の内部空間34は、複数の縦壁332によって、周方向に並ぶ複数の小空間に仕切られる。このように、複数の横壁331および複数の縦壁332により、上ユニット30の内部空間34を、断熱に適した大きさに仕切ることができる。
【0062】
図2に示すように、断熱部品33の少なくとも一部分は、栓突起321の内部に収容されている。すなわち、上ユニット30のうち、容器本体10の内部に挿入される部分に、断熱部品33を配置する。これにより、容器本体10の内部から熱が逃げることを、より抑制できる。ただし、断熱部品33は、栓突起321内に限らず、上ユニット30の内部空間の略全体に配置されていることが望ましい。
【0063】
また、
図11に示すように、断熱部品33は、複数の位置決め突起333を有する。位置決め突起333は、断熱部品33の表面の一部に形成された半円状の突起である。位置決め突起333は、栓突起321を構成する栓部品32に接触する。これにより、栓突起321に対して断熱部品33が位置決めされる。また、位置決め突起333は、栓部品32の表面に対して点接触する。このため、面接触の場合よりも、断熱部品33の変形を抑制できる。また、面接触の場合よりも、熱伝導による放熱を、より抑制できる。
【0064】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0065】
上記の実施形態では、栓ユニット20が、非発泡性の樹脂からなる断熱部品33を有していた。しかしながら、断熱部品33は、発泡性樹脂からなる断熱材であってもよい。また、栓ユニット20は、断熱部品33を有していなくてもよい。
【0066】
また、上記の実施形態では、スープ、味噌汁、冷や汁、雑炊、そうめんなどの流動物を含む飲食物を貯留する飲食物容器について説明した。しかしながら、本発明の飲食物容器は、お茶などの飲料を貯留する水筒であってもよい。また、本発明の飲食物容器は、流動物を含まない飲食物を収容するものであってもよい。例えば、高温の飲食物が固形の食物であっても、容器本体内の気圧は大気圧よりも低い負圧となるが、本発明により、容器本体内の負圧を解消できることに変わりはないからである。
【0067】
また、飲食物容器の細部の形状については、本願の各図と相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 飲食物容器
10 容器本体
15 傾斜面
20 栓ユニット
21 隙間
30 上ユニット
31 カバー部品
32 栓部品
33 断熱部品
34 内部空間
35 ガイド溝
40 下ユニット
41 第1部品
42 第2部品
43 パッキン部品
44 ガイド突起
320 固定爪
321 栓突起
331 仕切壁(横壁)
332 仕切壁(縦壁)
333 位置決め突起
351 第1溝部
352 第2溝部
353 第3溝部
354 出入口
355 クリック突起
414 第1爪
415 回り止め凸部
421 雌ネジ
422 第2爪
431 内パッキン
432 外パッキン
434 回り止め凹部