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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168908
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 4/06 20090101AFI20231121BHJP
   H04B 7/022 20170101ALI20231121BHJP
   H04W 24/00 20090101ALI20231121BHJP
【FI】
H04W4/06
H04B7/022
H04W24/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080292
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】宮部 達志
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA34
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
(57)【要約】
【課題】 複数の同報通信システムを併用する際に、1台の操作卓を用いて各同報通信システムの子局を確実に監視することができ、利便性を向上させることができる無線通信システムを提供する。
【解決手段】 複数の同報通信システムを1台の操作卓10で制御する無線通信システムであり、操作卓10が、複数の同報通信システムの子局に対して子局監視指示を送信して子局監視応答を受信する子局監視を行う際に、複数の同報通信システムで子局の番号が重複する場合には、当該番号を対象とする子局監視指示の送信と子局監視応答の受信をセットとして、同報通信システム毎に順次行う無線通信システムとしている。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の同報通信システムを1台の操作卓で制御する無線通信システムであって、
前記操作卓は、前記複数の同報通信システムの子局に対して監視機能による子局監視指示を送信して子局監視応答を受信する際に、前記複数の同報通信システムで子局の番号が重複する場合には、当該番号の子局を対象とする前記子局監視指示の送信と前記子局監視応答の受信をセットとして前記同報通信システム毎に順次行うことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記操作卓は、前記複数の同報通信システムで子局の番号が重複している場合には、当該番号に前記同報通信システムを識別する識別子を付与して管理していることを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記操作卓は、子局監視指示を送信して特定の時間が経過しても子局監視応答を受信しない場合には、次の同報通信システムに対して前記子局監視指示の送信と前記子局監視応答の受信を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに係り、特に通信方式の異なる複数の同報通信システムを併用する場合の利便性を向上させることができる無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
無線通信システムとして、標準規格ARIB STD-T86(非特許文献1参照)で定められ、通信方式16QAM(quadrature amplitude modulation)のデジタル同報通信システム(以下16QAMシステムと記載)、及び標準規格ARIB STD-T115(非特許文献2参照)で定められ、通信方式QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)のデジタル同報通信システムTYPE2(以下QPSKシステムと記載)がある。
【0003】
[デジタル同報通信システムの構成例:図6
一般的なデジタル同報通信システムの構成例について図6を用いて説明する。図6は、一般的なデジタル同報通信システムの構成例を示す説明図である。
図6に示すように、デジタル同報通信システムは、基本的に、親局設備と、中継局設備と、子局設備とを備えている。
親局設備としては、操作卓11と、親局12とを備えている。
操作卓11は、例えば市町村役場等に設けられ、通報操作等を行う。
親局12は、子局としての受信設備に対して、電波により通報の送出を行う。
中継局設備としては、親局12と子局設備との無線通信を中継する中継局21を備えている。
【0004】
また、子局設備として、屋外拡声子局31と、戸別受信機32と、再送信子局33とを備えている。
屋外拡声子局31は、主として屋外に設置され、親局12からの電波を受信して拡声音声を出力する。
戸別受信機32は、主に建屋内に設置され、親局12からの電波を受信して音声を出力する。
再送信子局33は、中継局21と他の子局設備との通信を中継する。再送信子局33が親局12と他の子局設備との通信を中継する場合もある。
上述した構成は、デジタル同報通信システムの基本的な構成例であり、16QAMシステムとQPSKシステムによる相違はない。
【0005】
尚、QPSKシステムは、これまで使用されてきた16QAMのデジタル同報通信システムをより簡素かつ低廉な同報通信システムとするために策定された規格であり、今後のデジタル同報通信システムでは、QPSKシステムが主に導入される。
【0006】
[システムの併用]
今後、QPSKシステムが主流となることから、既存の16QAMシステムをQPSKシステムに更新する機会が増えることが考えられる。その場合には16QAMシステムとQPSKシステムとを併用して運用する期間が発生する。
16QAMシステムとQPSKシステムは、通信方式が異なるため、併用運用時は、各システムの親局12が1台以上必要となる。
但し、運用の簡素化を図るために、両方のシステムを1台の操作卓11で制御することが求められる。
【0007】
[子局設備の監視]
デジタル同報通信システムでは、屋外拡声子局31等の子局設備の状態を、操作卓11で監視するための子局監視機能がある。
子局監視においては、操作卓11から、監視する子局を指定して、子局監視指示を送信し、指定された子局は、子局監視応答で親局12へ装置状態を送信し、親局12が操作卓11に装置状態を転送し、操作卓11では監視結果を表示する。
【0008】
子局設備には、放送時に個別に呼出先指定を行うための番号(子局番号)が付与され、操作卓11からの子局監視においても番号単位で監視が行われる。
各同報通信システムでは、それぞれ独自に子局番号を付与するため、システムが併用されている場合には、16QAMシステムの子局と、QPSKシステムの子局に同一の子局番号が付与されることもある。
【0009】
[従来の子局監視のシーケンス(1):図7]
ここで、従来の子局監視のシーケンス(1)について、図7を用いて説明する。図7は、従来の無線通信システムにおける子局監視のシーケンス(1)を示す説明図である。
図7に示すように、2つのシステムを併用している場合、操作卓11は、両方のシステムの親局に対して、順次子局番号を指定して一斉に子局監視指示を送信する。図7の例では、まず、子局番号1の子局に対する子局監視指示を出力する(S11,S12)。
【0010】
16QAMシステムの親局は、子局監視指示を受信すると、対象となった子局番号1の屋外拡声子局に対して子局監視指示を送信する(S13)。
屋外拡声子局は、子局監視指示を受信すると子局監視応答を送信し(S14)、当該応答は、16QAMシステムの親局を介して操作卓11に送信される(S15)。
【0011】
一方、図7の例では、QPSKシステムには子局番号1の子局は設けられていないため、QPSKシステムの親局は、操作卓11からの子局監視指示を転送しない。
そのため、操作卓11では、複数の子局からの応答が衝突することはなく、16QAMシステムの子局番号1の屋外拡声器からの応答を正常に受信することができる。
このように、複数の同報通信システムを併用していても、子局番号が重複していない場合には、子局監視を正常に行うことができる。
【0012】
[従来の子局監視のシーケンス(2):図8]
次に、従来の子局監視のシーケンス(2)について、図8を用いて説明する。図8は、従来の無線通信システムにおける子局監視のシーケンス(2)を示す説明図である。
従来の無線通信システムでは、16QAMシステムとQPSKシステムに同一の子局番号(ここでは子局番号1番(No.1)とする)が存在している場合にも、操作卓11は図7と同様の処理を行う。
つまり、図8に示すように、操作卓11は16QAMシステムとQPSKシステムの親局に、一斉に「子局番号1」に対する子局監視指示を送信する(S21,S22)。
【0013】
そして、各親局が当該子局監視指示を受信すると、16QAMシステムの親局は、16QAMシステムの子局番号1の屋外拡声子局に子局監視指示を送信し(S23)、QPSKシステムの親局は、QPSKシステムの子局番号1の屋外拡声子局に子局監視指示を送信する(S24)。
【0014】
16QAMシステムの屋外拡声子局及びQPSKシステムの屋外拡声子局は、子局監視指示に応じて親局を介して操作卓11宛に子局監視応答を送信し(S25,S26)、親局は当該子局監視応答を操作卓11に転送する(S27,S28)。
【0015】
操作卓11では、2つの同報通信システムの子局監視応答を、同じ子局番号1でほぼ同時に受信することになり、衝突により処理に異常が発生してしまう。
つまり、従来の無線通信システムでは、1台の操作卓11を用いた場合、複数のシステムで同一の子局番号があると、子局監視を正常に行うことができない。そのため、一方の子局のみを監視し、他方は監視しない、といった制限が発生する。
【0016】
[関連技術]
尚、複数の通信方式が混在した無線通信システムに関する従来技術としては、特開2020-48065号公報「無線通信システム」(特許文献1)がある。
特許文献1には、複数の通信方式が混在した無線通信システムにおいて、1台の操作卓を用いて、1度の操作で複数方式での放送を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2020-48065号公報号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】標準規格ARIBSTD-T86:市町村デジタル同報通信システム、一般社団法人電波産業会
【非特許文献2】標準規格ARIBSTD-T115:市町村デジタル同報通信システム TYPE2、一般社団法人電波産業会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上述したように、従来の無線通信装置では、通信方式が異なる複数の同報通信システムを併用する場合に、複数の同報システムで同一の子局番号があると、1台の操作卓で子局監視を行うことができず、不便であるという問題点があった。
【0020】
尚、特許文献1には、複数の同報通信システムを併用する場合に、それらの同報通信システムにおいて同一の子局番号があっても、1台の操作卓から当該複数の同報通信システムの子局を監視する構成は記載されていない。
【0021】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、通信方式の異なる複数の同報通信システムを併用する際に、1台の操作卓を用いて各同報通信システムの子局を確実に監視することができ、利便性を向上させることができる無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、複数の同報通信システムを1台の操作卓で制御する無線通信システムであって、操作卓は、複数の同報通信システムの子局に対して監視機能による子局監視指示を送信して子局監視応答を受信する際に、複数の同報通信システムで子局の番号が重複する場合には、当該番号の子局を対象とする子局監視指示の送信と子局監視応答の受信をセットとして同報通信システム毎に順次行うことを特徴としている。
【0023】
また、本発明は、上記無線通信システムにおいて、操作卓は、複数の同報通信システムで子局の番号が重複している場合には、当該番号に同報通信システムを識別する識別子を付与して管理していることを特徴としている。
【0024】
また、本発明は、上記無線通信システムにおいて、操作卓は、子局監視指示を送信して特定の時間が経過しても子局監視応答を受信しない場合には、次の同報通信システムに対して子局監視指示の送信と子局監視応答の受信を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、複数の同報通信システムを1台の操作卓で制御する無線通信システムであって、操作卓は、複数の同報通信システムの子局に対して監視機能による子局監視指示を送信して子局監視応答を受信する際に、複数の同報通信システムで子局の番号が重複する場合には、当該番号の子局を対象とする子局監視指示の送信と子局監視応答の受信をセットとして同報通信システム毎に順次行う無線通信システムとしているので、複数の同報通信システムで子局の番号が重複していても、子局からの子局監視応答が衝突するのを防ぎ、1台の操作卓でそれぞれの同報通信システムの子局監視応答を正常に受信して動作状態を確認することができ、利便性を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本無線通信システムの構成例を示す説明図である。
図2】子局番号管理テーブルの説明図である。
図3】操作卓10の子局監視時の処理を示すフローチャートである。
図4】受信処理のフローチャートである。
図5】本無線通信システムにおける子局監視のシーケンスを示す説明図である。
図6】一般的なデジタル同報通信システムの構成例を示す説明図である。
図7】従来の無線通信システムにおける子局監視のシーケンス(1)を示す説明図である。
図8】従来の無線通信システムにおける子局監視のシーケンス(2)を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る無線通信システム(本無線通信システム)は、通信方式の異なる複数の同報通信システムを1台の操作卓で制御する無線通信システムであり、操作卓が、複数の同報通信システムの子局に対して子局監視指示を送信して子局監視応答を受信する子局監視を行う際に、複数の同報通信システムで子局の番号が重複する場合には、当該番号に対する子局監視指示の送信と子局監視応答の受信をセットとして、同報通信システム毎に順次行うようにしており、複数の同報通信システムで子局の番号が重複していても、子局からの子局監視応答が衝突するのを防ぎ、1台の操作卓でそれぞれの同報通信システムの子局監視応答を正常に受信して動作状態を確認することができ、利便性を向上させることができるものである。
【0028】
特に、本無線通信システムは、一つの同報通信システムから他の同報通信システムへの切り替えに伴う移行時において、両方の同報通信システムが併用されている状態でも、同報通信システム側での変更を加えることなく、1台の操作卓で両システムの子局装置の監視を行うことができ、利便性を向上させることができるものである。
【0029】
[本無線通信システムの構成:図1
本無線通信システムの構成例について図1を用いて説明する。図1は、本無線通信システムの構成例を示す説明図である。
本無線通信システムは、16QAMによるデジタル同報通信システム(16QAMシステム)と、QPSKによるデジタル同報通信システム(QPSKシステム)とを併用し、1台の操作卓10で制御する構成であり、図1に示すように、操作卓10と、16QAMシステムの親局13、屋外拡声子局31a、戸別受信機32aと、QPSKシステムの親局14、屋外拡声子局31b、戸別受信機32bとを備えている。
必要に応じて、中継局や再送信子局を備えてもよい。
【0030】
16QAMシステムの親局13は、屋外拡声子局31a、及び戸別受信機32aに操作卓10からの通報を16QAM方式で無線送信する。
また、親局13は、操作卓10からの子局監視指示を受信すると、対象となっている屋外拡声子局31aに当該指示を送信し、屋外拡声子局31aから子局監視応答を受信すると、当該応答を操作卓10に転送する。
【0031】
屋外拡声子局31aは、図5に示した屋外拡声子局31と同様に、親局13から無線で受信した通報を拡声音声として出力する。
また、屋外拡声子局31aは、無線により子局監視指示を受信すると、装置の状態を子局監視応答として親局13を介して操作卓10に応答する。
戸別受信機は、親局13から無線で受信した通報を音声で出力する。
QPSKシステムの親局14、屋外拡声子局31b、戸別受信機32bは、無線通信方式がQPSKであることを除いて、親局13、屋外拡声子局31a、及び戸別受信機32aと同様の動作を行う。
【0032】
操作卓10は、基本的に、制御部、記憶部、インタフェース部を備えたコンピュータであり、操作部、音声入力部、表示部、スピーカ等が接続されている。また、操作卓10は、親局13及び親局14に有線で接続し、16QAMシステム及びQPSKシステムの両方に対して通報を出力し、それぞれの子局設備を監視する制御を行う。
【0033】
また、操作卓10は、従来と同様に子局監視機能を備えており、複数の同報通信システムに対して子局監視を行う。
特に、本無線通信システムの操作卓10は、複数の同報通信システムが併用されている状態における子局番号の管理及び子局監視の処理が特徴となっている。
【0034】
具体的な処理は後述するが、操作卓10は、複数の同報通信システムで重複して用いられている子局番号があれば、子局監視の際に、当該子局番号への子局監視指示を複数の同報通信システムに対して一斉に送信するのではなく、まず1つのシステムに送信し、その応答を受信した後で、別のシステムに子局監視指示を送信する。これにより、同一の子局番号があっても、子局監視応答を1つずつ受信することができ、確実に状態監視を行うことができるものである。
これらの処理は、操作卓10の記憶部に記憶された処理プログラムを制御部が起動して実行することによって実現される。
【0035】
[子局番号管理テーブル:図2
本無線通信システムの操作卓10は、配下の同報通信システムに接続する子局の子局番号を管理するため、子局番号管理テーブルを備えている。
子局番号管理テーブルについて図2を用いて説明する。図2は、子局番号管理テーブルの説明図である。
図2に示すように、子局番号管理テーブルは、項番ごとに、本無線通信システム内の子局の子局番号と、当該子局が所属する同報通信システム名(ここでは16QAMシステム又はQPSKシステム)と、識別子とを対応付けるテーブルであり、操作卓10の記憶部に記憶されている。
【0036】
特に、識別子は、子局番号が複数の同報通信システムで重複して使用されている場合に、それぞれを区別するために付された情報である。
図2の例では、項番1の子局番号1は、16QAMシステムで用いられるものであり、「1-16QAM」の識別子が対応付けられている。
また、項番4の子局番号1は、QPSKシステムで用いられるものであり、「1-QPSK」の識別子が付されている。子局番号1は、16QAMシステムとQPSKシステムの両方で用いられる番号となっている。
つまり、識別子が付された子局番号は、複数の同報通信システムで重複していることを示すものである。
【0037】
また、項番2の子局番号2は、16QAMシステムで用いられ、他のシステムでは用いられていないため、識別子は記憶されていない。つまり、識別子が付されていない子局番号は、当該同報通信システムでのみ用いられており、子局監視の際に子局からの応答が衝突する恐れはないものである。
【0038】
これにより、本無線通信システムの操作卓10は、複数の同報通信システムで同一の子局番号が用いられていても、それぞれの子局を区別して監視動作を行うことができるものであり、また、同報通信システム側では、他の同報通信システムと併用状態となっても、子局番号の変更を行うことなく、運用を継続することができるものである。
【0039】
[子局監視時の処理:図3
次に、子局監視時の操作卓10の制御部における処理について図3を用いて説明する。図3は、操作卓10の子局監視時の処理を示すフローチャートである。
図3に示すように、操作卓10は、子局監視機能の実行時(定期的若しくは入力部からの指示に応じて)には、子局番号監視テーブルから監視対象となる子局番号を読み出し(100)、子局番号監視テーブルにおいて、当該子局番号に対応する識別子を参照して、当該子局番号が他の同報通信システムと重複しているか否かを判断する(102)。
【0040】
操作卓10は、当該子局番号に対応して識別子が記憶されていれば、他の同報通信システムと重複していると判断し(Yesの場合)、まず、16QAMシステムの親局13に、当該子局番号を付して子局監視指示を送信する(104)。
そして、操作卓10は、応答を待ち受けて受信処理を行う(106)。受信処理については後述するが、監視対象の子局からの応答を待ち受ける時間を特定時間に限定する処理である。特定時間を経過しても、応答がなかった場合には、処理108に移行する。
【0041】
操作卓10は、16QAMシステムについての受信処理を行うと、次に、QPSKシステムの親局14に、当該子局番号を付して子局監視指示を送信する(108)。この子局番号は、処理104で送信した子局監視指示に付した番号と同一の番号である。
そして、操作卓10は、処理106と同様の受信処理を行って(110)、処理124に移行する。
【0042】
このように、本無線通信システムでは、複数の同報通信システムで重複している子局番号については、1つのシステムについて子局監視指示を送信し、応答を受信してから、別のシステムについて子局監視指示を送信し、応答を受信する、というように、子局監視指示の送信と応答の受信とをセットとして、同報通信システムごとに順次行うようにしている。
これにより、1台の操作卓10でも、応答が衝突することなく、複数の同報通信システムの子局の状態を正常に受信することができるものである。
【0043】
尚、図3の例では16QAMシステムについて先に子局監視指示を送信しているが、QPSKシステムを先にしても構わない。また、同報通信システムが3つ以上となった場合でも、同様に、子局監視指示の送信と子局監視応答の受信をセットにして、同報通信システムごとに順次行うことにより、正常に子局監視を行うことができるものである。
【0044】
また、処理102で、読み出した子局番号に対応して識別子が記憶されておらず、他の同報通信システムと重複していないと判断した場合(Noの場合)には、操作卓10は、16QAMシステムの親局13及びQPSKシステムの親局14に、当該子局番号を付して一斉に子局監視指示を送信する(120)。
当該子局番号は、一方の同報通信システムのみで用いられているので、図7に示した従来の無線通信システムと同様に、当該子局を有する同報通信システムの親局(親局13又は親局14のいずれか一方)のみが当該子局に子局監視指示を転送する。
【0045】
すなわち、本無線通信システムの操作卓は、複数の同報通信システムで子局の番号が重複しない場合には、当該番号の子局を対象とする子局監視指示を複数の同報通信システムに一斉送信するものである。
つまり、本無線通信システムでは、複数の同報通信システムで重複していない子局番号については、衝突の危険がないため、従来と同様に一斉に子局監視指示を送信するようにしており、処理を簡略化し、子局監視の処理を迅速に行うことができるものである。
【0046】
そして、操作卓10は、当該子局からの応答を待ち受けて受信処理を行い(122)、処理124に移行して、子局番号管理テーブルの子局番号を全て読み出したか(子局番号終わりかどうか)を判断し、まだ子局番号が残っていれば(Noの場合)、処理100に戻って次の子局番号について同様の処理を行う。
【0047】
また、処理124で、全ての子局番号について処理が終わった場合(Yesの場合)には、操作卓10は、処理を終わる。
このようにして、操作卓10における子局監視時の処理が行われる。
【0048】
尚、図3では、定期的又は操作卓10からの指示入力により、全子局に対して子局監視を行う場合を例として説明したが、操作卓10からの操作で個別の子局番号を指定して監視を行ってもよい。
その場合にも、操作卓10は、複数の同報通信システムで子局の番号が重複しているか否かを判断して、重複している場合には子局監視指示の送信と子局監視応答の受信をセットとして、同報通信システム毎に順次行うものである。
【0049】
[受信処理:図4
次に、図3の処理106,110,122に示した受信処理について図4を用いて説明する。図4は、受信処理のフローチャートである。
図4に示すように、受信処理が開始されると、操作卓106は、制御部がプログラム処理で実現するタイマをスタートさせて(200)、応答待ち受け時間のカウントを開始する。
そして、操作卓10は、子局からの応答を受信したかどうかを判断し(202)、応答を受信した場合には(Yesの場合)、子局の状態を記憶し、結果を表示する(206)。
【0050】
また、処理202で、応答を受信していない場合(Noの場合)には、操作卓10は、タイマがタイムアップしたかどうかを判断し(204)、タイムアップしていない場合(Noの場合)には、処理202に戻って応答を待ち受ける。
また、処理204でタイマがタイムアップした場合(Yesの場合)には、操作卓10は、処理206に移行して、応答なし等の情報を記憶し、表示して、処理を終わる。
このようにして受信処理が行われるものである。
【0051】
特に、図3の処理104の後で受信処理106を行うことにより、子局からの子局監視応答を特定時間に限定し、特定時間が経過しても子局監視応答を受信しない場合には、次の同報通信システムへの子局監視指示を送信することができるものである。
【0052】
[本無線通信システムにおける子局監視のシーケンス:図5
次に、本無線通信システムにおける子局監視のシーケンスについて図5を用いて説明する。図5は、本無線通信システムにおける子局監視のシーケンスを示す説明図である。
図5に示すように、操作卓10は、子局監視の操作がなされると、まず16QAMシステムの親局13に、子局番号1番の子局に対する子局監視指示を送信し(S31)、親局13は、16QAMシステムの子局番号1番の子局に当該子局監視指示を転送する(S32)。
【0053】
16QAMシステムの子局番号1番である屋外拡声子局31a1は、子局監視指示を受信して、自装置の状態を子局監視応答として操作卓10宛に送信する(S33)。当該子局監視応答は、親局13によって操作卓10に転送され、操作卓10で受信される(S34)。
【0054】
その後、操作卓10は、QPSKシステムの親局14に対して、子局番号1番の子局に対する子局監視指示を送信し(S35)、親局14は、子局番号1番の子局に当該子局監視指示を転送する(S36)。
QPSKシステムの子局番号1の子局である屋外拡声子局31b1は、子局監視指示を受信して、子局監視応答を操作卓10宛に送信し(S37)、子局監視応答は、親局14を介して操作卓10に受信される(S38)。
このようにして、本無線通信システムにおける子局監視のシーケンスが行われる。
【0055】
[実施の形態の効果]
本無線通信システムによれば、通信方式の異なる複数の同報通信システム(例えば16QAMシステムとQPSKシステム)を1台の操作卓10で制御する無線通信システムであり、操作卓10が、複数の同報通信システムの子局に対して子局監視指示を送信して子局監視応答を受信する子局監視を行う際に、複数の同報通信システムで子局の番号が重複する場合には、当該番号を対象とする子局監視指示の送信と子局監視応答の受信をセットとして、同報通信システム毎に順次行うようにしているので、同報通信システムごとに子局監視を行うことで、子局からの子局監視応答が衝突するのを防ぎ、1台の操作卓でそれぞれの同報通信システムの子局監視応答を正常に受信して動作状態を確認することができ、利便性を向上させることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、通信方式の異なる複数の同報通信システムを併用する際に、1台の操作卓を用いて各同報通信システムの子局を確実に監視することができ、利便性を向上させることができる無線通信システムに適している。
【符号の説明】
【0057】
10,11…操作卓、 12…親局、 13…親局(16QAM)、 14…親局(QPSK)、 21…中継局、 31…屋外拡声子局、 32…戸別受信機、 33…再送信子局
図1
図2
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図8