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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168922
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】傘バルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 15/14 20060101AFI20231121BHJP
   H01M 50/325 20210101ALI20231121BHJP
   H01M 50/317 20210101ALI20231121BHJP
【FI】
F16K15/14 A
H01M50/325
H01M50/317 201
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080309
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100198856
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 聡
(72)【発明者】
【氏名】永嶋 二朗
(72)【発明者】
【氏名】有賀 英貴
(72)【発明者】
【氏名】渡部 光雄
(72)【発明者】
【氏名】義経 修司
【テーマコード(参考)】
3H058
5H012
【Fターム(参考)】
3H058AA14
3H058BB01
3H058BB02
3H058BB14
3H058CA01
3H058CA06
3H058CD25
3H058EE05
5H012BB08
5H012DD02
5H012EE01
5H012EE09
5H012GG05
(57)【要約】
【課題】リップ部の変形及び撓みを容易にし、低圧力であってもリップリフト方向への変形を均一、かつ十分な変形量で安定して行うことが可能な傘バルブの提供を課題とする。
【解決手段】傘バルブ1は、バルブ基部2と、バルブ基部2の基部周縁2aから斜め方向に延設された傘状のリップ部3とを具備し、バルブ基部2及びリップ部3は、弾性変形可能なゴム材料によって一体的に形成され、リップ部3は、基部周縁2aからのリップ長さが連続的に変化して形成され、リップ部3のリップ周縁部8がバルブ基部2から離隔する方向に向かって凸状に湾曲したリップ凸部6、及び、リップ周縁部8がバルブ基部2に近接する方向に向かって凹状に湾曲したリップ凹部7を有する。更に、リップ部3は、リップ凸部6及びリップ凹部7がバルブ基部2を中心として等間隔に交互に配置されている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブ基部と、
前記バルブ基部の基部周縁から斜め方向に延設された傘状のリップ部と
を具備し、
前記バルブ基部及び前記リップ部は、
弾性変形可能なゴム材料によって一体的に形成され、
前記リップ部は、
前記基部周縁からのリップ長さが連続的に変化して形成され、
前記リップ部のリップ周縁部が前記バルブ基部から離隔する方向に向かって凸状に湾曲したリップ凸部、及び、前記リップ周縁部が前記バルブ基部に近接する方向に向かって凹状に湾曲したリップ凹部を有する傘バルブ。
【請求項2】
前記リップ部は、
前記リップ凸部及び前記リップ凹部が前記バルブ基部を中心として等間隔に交互に配置されている請求項1に記載の傘バルブ。
【請求項3】
前記リップ部は、
四つ以上の前記リップ凸部及び前記リップ凸部と同数の前記リップ凹部が前記バルブ基部を中心として交互に配置されている請求項2に記載の傘バルブ。
【請求項4】
前記バルブ基部に取設され、前記傘バルブをバルブ装着対象物に装着し、固定するための装着固定手段を更に具備する請求項1~3のいずれか一項に記載の傘バルブ。
【請求項5】
前記バルブ装着対象物は、
バッテリーを格納したバッテリーケースである請求項4に記載の傘バルブ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傘バルブに関する。更に詳しくは、電気自動車等に搭載されるバッテリーのバッテリーケース等に使用され、バッテリーケース内部の圧力の調整を図るための圧力調整弁として機能する傘バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料ポンプ等の種々の製品に使用され、内部の圧力が上昇した際に速やかに当該圧力を開放し、圧力の調整を図るための傘バルブ(アンブレラバルブ)が知られている(例えば、特許文献1参照)。更に、近年において電気自動車やハイブリッド自動車等のバッテリー駆動の車両の開発及び技術進歩に伴って、当該車両に搭載される二次電池用の圧力調整弁として、バッテリーを格納するバッテリーケース等にも当該傘バルブが使用されている。
【0003】
バッテリーケースに傘バルブを取り付けることで、ケース外部からケース内部への雨水や泥水等の液体の浸入、或いは砂や埃等の夾雑物の侵入を防ぐことができる。更に、バッテリー内部の内圧を調整することが可能となり、かつ、バッテリーのセルの暴走によってケース内部に大容量のガスが発生した場合でも、当該ガスをケース外部へ開放し、バッテリーの暴発や破裂等を防いだりすることができる。
【0004】
従来の一般的な傘バルブ100の構成について具体的に説明すると、傘バルブ100は、図9図12に示すように、全体がゴム等の弾性変形可能なゴム材料によって一体的に形成され、上部に設けられた略円板状のバルブ基部101と、当該バルブ基部101の基部周縁101aから斜め方向(図11において斜め下方向)に向かって傘状に延設されたリップ部102とを具備し、全体が略截頭円錐形状を呈して構成されている。
【0005】
ここで、図9は従来の傘バルブ100の概略構成及びリップ部102のリップリフト方向Aを示す説明図であり、図10は従来の傘バルブ100の概略構成を示す平面図であり、図11は従来の傘バルブ100の概略構成を示す正面図であり、図12は従来の傘バルブ100のバッテリーケース103への装着状態を示す説明図である。
【0006】
更に、傘バルブ100は、その他構成として、バルブ基部101の基部上面101bから上方に向かって突設され、傘バルブ100をバッテリーケース103等(図12参照)のバルブ装着対象物に装着し、固定するための装着固定手段としての固定用突起部104を具備している。なお、装着固定手段は、上記した固定用突起部104に限定されるものではなく、例えば、バルブ基部101の基部下面から下方に向かって突設され、装着対象物と固定可能な固定用軸部(詳細は後述する)を具備する構成のものも知られている。
【0007】
これらの構成を備える傘バルブ100は、図12に示すように、バッテリーケース103のケース外殻105に設けられた固定孔106に、前述した固定用突起部104を嵌挿させてケース外殻105に固定されるとともに、リップ部102のリップ周縁部107とバッテリーケース103のケース内殻108とを密着させた状態で取り付けられる。すなわち、リップ部102のリップ周縁部107によってケース内殻108を下方側に押し付けるようにした状態で取り付けられる。
【0008】
傘バルブ100の一部であり、弾性変形可能なゴム材料によって形成されたリップ部102は、ケース内殻108との密着により、リップ周縁部107及びケース内殻108の間がシールされる。その結果、前述した雨水等の液体やダスト等の夾雑物の浸入(または侵入)が規制される。すなわち、リップ部102の下方に位置するケース内部の空間(内部空間109)と、リップ部102の上方に位置するケース外殻105及びケース内殻108の間の空間(外部空間110)の間で、上記液体や夾雑物等の固体、及びガス等の気体を含む流体の流通、或いは流出が規制された状態となる。
【0009】
上記のように、リップ部102のリップ周縁部107及びケース内殻108が密着し、かつリップ周縁部107がケース内殻108を押し下げる方向に付勢された状態で、セルの暴発等により内部空間109の圧力が上昇すると、ゴム材料によって形成されたリップ部102は、リップ周縁部107の付勢方向と反対側の方向(リップリフト方向A(図9における矢印参照))にリップ部102を弾性変形による付勢力に抗して変形しようとする力が作用する。
【0010】
その結果、リップ部102が撓むようにして、リップ周縁部107が上方に変形し、バッテリーケース103のケース内殻108との密着状態が解除される。これにより、セルの暴発等によって上昇した圧力が開放される。換言すると、内部空間109に溜まったガス等の流体(図示しない)がバッテリーケース103の外部空間110に流出することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭63-252980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の通り、従来の傘バルブ100は、内部空間109の圧力を調整するための圧力調整弁として有効に機能することができる。しかしながら、図9図12に示したように、従来の傘バルブ100は、リップ部102(またはリップ周縁部107)を均一にリップリフト方向Aに変形させることが困難であった。
【0013】
更に具体的に説明すると、従来の傘バルブ100は、略円板状のバルブ基部101の基部周縁101aから斜め方向(図11及び図12参照において斜め下方向に相当)に沿って一定の長さで延設されている。その結果、図9等に示すように、リップ部102のリップ周縁部107の形状は、バルブ基部101の基部周縁101aの形状である円形状と同様に、上方視で円形状を呈して構成されている。
【0014】
したがって、内部空間109の圧力を開放するためにリップ周縁部107全体をリップリフト方向Aに向けて均一に変形しようとすると、リップ周縁部107の周長さC(図10参照)を一時的に拡張させる、換言すれば、円形状のリップ周縁部107の直径を一時的に拡げる必要があった。
【0015】
しかしながら、従来の傘バルブ100の場合、円形状のリップ周縁部107を具備するため、リップ部102の撓みが困難であり、上記の変形のためには非常に大きな力が必要となり、圧力の開放のために十分な変形ができない場合があった。その結果、圧力開放が必要な状況であっても、内部空間109から外部空間110への流体の流出を安定して行うことができないといった問題を生じることがあった。
【0016】
そこで、本発明は上記実情に鑑み、傘バルブにおけるリップ部の変形及び撓みを容易にし、低圧力であってもリップリフト方向への変形を均一、かつ十分な変形量で安定して行うことが可能な傘バルブの提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば、上記課題を解決した傘バルブが下記において提供される。
【0018】
[1] バルブ基部と、前記バルブ基部の基部周縁から斜め方向に延設された傘状のリップ部とを具備し、前記バルブ基部及び前記リップ部は、弾性変形可能なゴム材料によって一体的に形成され、前記リップ部は、前記基部周縁からのリップ長さが連続的に変化して形成され、前記リップ部のリップ周縁部が前記バルブ基部から離隔する方向に向かって凸状に湾曲したリップ凸部、及び、前記リップ周縁部が前記バルブ基部に近接する方向に向かって凹状に湾曲したリップ凹部を有する傘バルブ。
【0019】
[2] 前記リップ部は、前記リップ凸部及び前記リップ凹部が前記バルブ基部を中心として等間隔に交互に配置されている前記[1]に記載の傘バルブ。
【0020】
[3] 前記リップ部は、四つ以上の前記リップ凸部及び前記リップ凸部と同数の前記リップ凹部が前記バルブ基部を中心として交互に配置されている前記[2]に記載の傘バルブ。
【0021】
[4] 前記バルブ基部に取設され、前記傘バルブをバルブ装着対象物に装着し、固定するための装着固定手段を更に具備する前記[1]~[3]のいずれかに記載の傘バルブ。
【0022】
[5] 前記バルブ装着対象物は、バッテリーを格納したバッテリーケースである前記[4]に記載の傘バルブ。
【発明の効果】
【0023】
本発明の傘バルブは、リップ凸部及びリップ凹部を有するリップ部によって、低い圧力であってもリップリフト方向に均一に変形が可能であり、安定した圧力の開放を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態の傘バルブの概略構成を示す斜視図である。
図2】本実施形態の傘バルブの概略構成を示す平面図である。
図3】本実施形態の傘バルブの概略構成を示す正面図である。
図4】本実施形態の傘バルブのバッテリーケースへの装着状態を示す説明図である。
図5】本実施形態の傘バルブにおける圧力開放時のリップ部のリップリフト方向及び撓み方向を示す説明図である。
図6】本発明の別例構成の傘バルブを示す平面図である。
図7】本発明の別例構成の傘バルブのバッテリーケースへの装着状態を示す断面図である。
図8】本発明の別例構成の傘バルブのバッテリーケースへの装着状態を示す説明図である。
図9】従来の傘バルブの概略構成及びリップ部のリップリフト方向を示す説明図である。
図10】従来の傘バルブの概略構成を示す平面図である。
図11】従来の傘バルブの概略構成を示す正面図である。
図12】従来の傘バルブのバッテリーケースへの装着状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ、本発明の傘バルブの実施の形態について説明する。なお、本発明の傘バルブは、以下に示すものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、種々の設計の変更、修正、及び改良等を加え得るものである。
【0026】
1.傘バルブ
本発明の一実施形態の傘バルブ1は、図1図5に示されるように、バルブ基部2と、傘状のリップ部3と、傘バルブ1をバッテリーを格納したバッテリーケース4に装着し、固定するための固定用突起部5とを具備して主に構成されている。
【0027】
ここで、図1は本発明の一実施形態の傘バルブ1の概略構成を示す斜視図であり、図2は本実施形態の傘バルブ1の概略構成を示す平面図であり、図3は本実施形態の傘バルブ100の概略構成を示す正面図であり、図4は本実施形態の傘バルブ100のバッテリーケース4への装着状態を示す説明図であり、図5は本実施形態の傘バルブ100における圧力開放時のリップ部3のリップリフト方向A及び撓み方向Bを示す説明図である。また、ここでバッテリーケース4が本発明におけるバルブ装着対象物に相当し、固定用突起部5が本発明における装着固定手段に相当する。
【0028】
本実施形態の傘バルブ1を構成する上記バルブ基部2、リップ部3、及び固定用突起部5は、弾性変形可能なゴム材料によって一体的に形成されている。
【0029】
弾性変形可能なゴム材料は、特に限定されるものではなく、従来の傘バルブに使用されている周知なゴム材料を使用することが可能であり、例えば、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ビニル変性ブチルゴム、エチレンプロピレン系ゴム、フッ素ゴム、アクリル系ゴム、或いは水素添加ニトリルゴム等の飽和系ゴム等を用いることが可能である。更に、当該ゴム材料にその他の架橋剤、充填材、可塑剤、或いは老化防止剤等を適宜配合して構成されるものであっても構わない。
【0030】
これらのゴム材料は、傘バルブ1の外観形状に合わせて形成された成形型等に押出成形する等、周知のゴム成形加工技術を用いることにより、本実施形態の傘バルブ1のような所望の形状のものに製造することができる。
【0031】
更に、傘バルブ1に使用される上記ゴム材料の硬度(Hs)は、特に限定されるものであり、例えば、40~90の範囲、より好ましくは50~80の範囲のものを使用することができる。
【0032】
一般に、硬度の高いゴム材料は、ガス透過性を抑えることができるものの、硬度が高すぎると、シール性や装着性が劣る傾向がある。一方、硬度が低いゴム材料は、上記のシール性や装着性は良好ではあるものの、ガス透過性が劣る傾向がある。そのため、上記の硬度の範囲で本実施形態の傘バルブを各構成について一体的に形成することが好適である。かかるゴム材料の硬度は、後述するリップ部3のリップリフト方向A及び撓み方向Bへの変形量の調整のため、上記ガス透過性やシール性等を勘案し、適切なものが選択される。
【0033】
本実施形態の傘バルブ1は、その特徴的構成として、傘状のリップ部3がバルブ基部2の基部周縁2aからのリップ長さが連続的に変化して形成されている。ここで、本実施形態の傘バルブ1におけるバルブ基部2は、略円板状を呈するものであり、上記基部周縁2aは円形状を呈している。
【0034】
そして、リップ部3は、リップ周縁部8がバルブ基部2から離隔する方向に向かって凸状に湾曲したリップ凸部6と、リップ周縁部8がバルブ基部2に近接する方向に向かって凹状に湾曲したリップ凹部7とを有している。リップ部3は、複数のリップ凸部6及びリップ凹部7によって構成されており、かかる複数のリップ凸部6及びリップ凹部7がバルブ基部2を中心として等間隔に交互に配置されている。
【0035】
本発明の傘バルブにおいて、リップ部のリップ凸部及びリップ凹部のそれぞれの数は特に限定されるものではない。しかしながら、図1等に示すように、四つのリップ凸部6と、リップ凸部6と同数の四つのリップ凹部7を等間隔に交互に配置してリップ部3を構成することにより、十分なシール性を維持するとともに、低い圧力であってもリップリフト方向A(詳細は後述する)への均一な変形が可能であり、特に好適である。また、六つのリップ凸部22及び六つのリップ凹部23を有してリップ部21を構成した態様の傘バルブ20(図6参照。詳細は後述する。)であっても好適に使用することができる。
【0036】
本実施形態の傘バルブ1の場合、図1及び図2等に示すように、前述した好適例の通り、四つのリップ凸部6及びリップ凹部7を有してリップ部3が構成されており、バルブ基部2を中心として交互に45°の間隔で配置されている。更に換言すれば、90°間隔で配置されたリップ凸部6の間にそれぞれリップ凹部7が配置されている。
【0037】
これにより、リップ凸部6及びリップ凹部7のリップ周縁部8の基部周縁2aからのリップ長さが連続的に変化している。すなわち、従来の傘バルブ100(図9及び図10等参照)のリップ周縁部107が円形状を呈して構成されているのに対し、本実施形態の傘バルブ1におけるリップ部3のリップ周縁部8は、連続的に変化する曲線状に形成されている。
【0038】
基部周縁2aからリップ凸部6の頂点P1に位置するリップ周縁部8までのリップ長さL1が最大値となり、基部周縁2aからリップ凹部7の凹頂点P2に位置するリップ周縁部8までのリップ長さL2が最小値となる。最大値であるリップ長さL1及び最小値であるリップ長さL2の間を曲線的に変化しながらリップ部3のリップ周縁部8が形成されている。
【0039】
ここで、傘バルブ1の装着される装着対象物に相当するバッテリーケース4は、例えば、図4に示すように、ケース外殻9及びケース内殻10を有する二重殻構造を有して構成されているものを対象とすることができる。ケース外殻9には、バルブ基部2の基部上面2bから突設された固定用突起部5と嵌合可能な大きさ及び位置に調整された複数の固定孔11が設けられている。そして、当該固定孔11にバルブ基部2に取設された装着固定手段としての固定用突起部5を嵌挿した状態とすることで、傘バルブ1がバッテリーケース4に装着され、固定される。
【0040】
このとき、バッテリーケース4に装着し、固定された傘バルブ1のリップ部3のリップ周縁部8は、バッテリーケース4のケース内殻10と密着した状態となっている。ゴム材料で形成され、弾性変形可能なリップ部3は、ケース内殻10に押し付けられ、弾性変形した状態で固定されている。
【0041】
その結果、リップ周縁部8及びケース内殻10でのシール性、密着性が維持され、ケース内殻10の下方側に位置する内部空間12と、ケース外殻9及びケース内殻10の間に位置する外部空間13との間でガス等の流体の流通が規制された状態となる。これにより、傘バルブ1によるシール性の機能が発揮される。
【0042】
かかるシール性が機能した状態で、バッテリーのセルの暴発等により大容量のガス等の流体が発生し、内部空間12の圧力が高くなった場合、傘バルブ1のリップ部3及びケース内殻10の密着状態を解除しようと、リップ部3(リップ周縁部8)を上方に向かって押し上げるように変形させる力、すなわち、リップリフト方向A(図5参照)への変形させる力が作用する。
【0043】
このとき、本実施形態の傘バルブ1の場合、リップ部3が四つのリップ凸部6及び四つのリップ凹部7によって形成され、かつリップ周縁部8のリップ長さがリップ長さL1及びリップ長さL2の間で連続的に変化するように形成されている。そのため、リップ凸部6のリップリフト方向Aへの変形時において、リップ周縁部8の周長さを拡張しようする力が働いた場合、かかる力がリップ凸部6を横方向(撓み方向B)に変化し、周長さの拡張を吸収することができる。
【0044】
これにより、リップ部3の変形が容易となり、リップ凸部6は、リップリフト方向Aへの弾性変形が速やかに行われる。本実施形態の傘バルブ1における特徴的構成であるリップ凸部6と、当該リップ凸部6に対して撓んだ形状のリップ凹部7とを備えることにより、図5に示したように、内部空間12の比較的小さな圧力の上昇であっても、リップ部3の速やかな変形が可能となり、内部空間12の圧力を適切に外部空間13に開放することができる。すなわち、従来の傘バルブ1と比較して、圧力調整弁としての更に十分な機能を発揮することができる。
【0045】
特に、本実施形態の傘バルブ1は、複数のリップ凸部6及びリップ凹部7がそれぞれ交互に等間隔で配置されていることにより、内部空間12の圧力上昇に伴うリップ部3の変形を更に均一化して行うことが可能となり、安定した圧力調整が可能となる。これにより、傘バルブ1の一部に局所的に力が加わることがなく、圧力開放に伴う傘バルブ1(リップ部3)の変形を均一、かつ安定して行うことができる。なお、内部空間12で大容量のガス等の流体が発生し、大流量の流体がリップ周縁部8及びケース内殻10の間を流通する必要がある場合には、傘状のリップ部3が全て拡がり、リップ部3全体が平面状となるような弾性変形も可能となる。
【0046】
本実施形態の傘バルブ1として、リップ凸部6及びリップ凹部7をそれぞれ四つずつ有するリップ部3のものを例示したが、本発明の傘バルブはこれに限定されるものではない。例えば、図6に示すような別例構成の傘バルブ20であっても構わない。なお、別例構成の傘バルブ20において、本実施形態の傘バルブ1と同一構成及び機能を有するものは、同一符号を付し、特に詳細な説明は省略するものとする。
【0047】
別例構成の傘バルブ20は、図6に示すように、略円板状を呈するバルブ基部2と、バルブ基部2の基部周縁2aから斜め方向に延設された傘状のリップ部21と、バッテリーケース等に装着するための固定用突起部5とを具備し、特に、傘状のリップ部21がバルブ基部2の基部周縁2aからのリップ長さが連続的に変化しているものであり、かつ、当該リップ部21は、リップ周縁部24がバルブ基部2から離隔する方向に向かって凸状に湾曲したリップ凸部22と、リップ周縁部24がバルブ基部2に近接する方向に向かって凹状に湾曲したリップ凹部23とを有し、六つのリップ凸部22と当該リップ凸部22と同数の六つのリップ凹部23がバルブ基部2を中心として交互に30°の間隔で配置されたものである。更に換言すれば、60°間隔で配置されたリップ凸部22の間にそれぞれリップ凹部23が配置されている。
【0048】
すなわち、本実施形態の傘バルブ1に対し、リップ凸部22及びリップ凹部23の数をそれぞれ増やしたものである。かかる別例構成の傘バルブ20の場合、基部周縁2aからリップ部21のリップ周縁部24まで連続的に変化するリップ長さの最大値及び最小値の幅が本実施形態の傘バルブ1よりも小さくなる。そのため、従来の傘バルブ100のリップ周縁部107の長さに近似している。これにより、リップ凸部22のリップリフト方向Aの変形及び撓み方向Bの変形量が小さくなる。
【0049】
更に、本実施形態の傘バルブ1において、バルブ基部2に取設される装着固定手段として、当該バルブ基部2の基部上面2bから突設された固定用突起部5を有するものを示したがこれに限定されるものではない。
【0050】
例えば、図7及び図8に示すように、バルブ基部2の基部下面2cから突設された略円柱状の固定用軸部31を装着固定手段として備える別例構成の傘バルブ30であっても構わない。なお、別例構成の傘バルブ30において、本実施形態の傘バルブ1と同一構成及び機能を有するバルブ基部2、リップ部3(リップ凸部6、リップ凹部7)等は、同一符号を付し、特に詳細な説明は省略するものとする。
【0051】
別例構成の傘バルブ30について、更に具体的に説明すると、固定用軸部31は、バルブ基部2の基部下面2cから突設された円柱状の軸部本体32と、軸部本体32の先端近傍に設けられ、軸部本体32の軸径よりも小さな軸径で形成されたくびれ部33と、くびれ部33の先に設けられ軸部本体32の軸径と同径の部分を有する先端部34とを具備して構成されている。すなわち、固定用軸部31の先端付近で軸径が変化している。
【0052】
一方、別例構成の傘バルブ30の装着される装着対象物に相当するバッテリーケース35には、ケース本体36に固定用軸部31の一部と嵌合可能な固定孔37が設けられている。ここで、固定孔37の孔径は、固定用軸部31のくびれ部33の軸径と一致するように形成されている。また、別例構成の傘バルブ30は、本実施形態の傘バルブ1と同様にバルブ基部2、リップ部3、及び装着固定手段である固定用軸部31が弾性変形可能なゴム材料によって一体的に形成されている。
【0053】
すなわち、固定用軸部31の先端部34は応力に対して弾性変形することができる。そのため、バッテリーケース35の固定孔37よりも軸径の大きな固定用軸部31の先端部34を弾性変形させながら固定孔37に挿入することができる。更に、固定孔37を通過した先端部34は元の軸径に弾性復帰し、固定孔37の孔径と略同一の軸径に形成されたくびれ部33が固定孔37と密着する。その結果、バッテリーケース35のケース本体36に傘バルブ30を安定した状態で装着することができる。係る装着状態において、リップ部3のリップ周縁部8はケース本体36の表面と密接され、リップ部3の下方側及びケース本体36の表面の間に位置する内部空間38とリップ部3の外側に位置する外部空間39との間でガス等の流体の流通が規制された状態となる。これにより、傘バルブ30によるシール性の機能が発揮される。
【0054】
なお、ケース本体36には、バッテリー内部で発生したガス等の流体を内部空間38まで導入し、圧力開放を行うための流体導入孔40が設けられている。これにより、バッテリー内部で大流量のガス等が発生した場合、当該バッテリー内部から内部空間38に流体が導かれ、内部空間38の圧力が上昇する。そして、複数のリップ凸部6及びリップ凹部7が等間隔で交互に配置されたリップ部3が均一に変形することで内部空間38の圧力を外部空間39に適切に逃がすことができる。なお、別例構成の傘バルブ30の場合、四つのリップ凸部6及び四つのリップ凹部7が等間隔で交互に配置されたリップ部3を有している。これにより、装着固定手段がバルブ基部2の下に位置する構成の傘バルブ30であっても、本発明の効果を十分に発揮することが可能となる。
【0055】
以上示したように、本発明の傘バルブは、従来のリップ周縁部が円形状のものに比べ、低い圧力であってもリップ部の変形を容易に行うことができ、圧力開放を容易に行うことができる。例えば、リップ周縁部の周長さを一定にした場合、従来の傘バルブと比較して、リップリフトの量を6~9倍程度まで増加させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の傘バルブは、電気自動車やハイブリッド自動車等の車両に搭載されるバッテリーの製造に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1,20,30,100:傘バルブ
2,101:バルブ基部
2a,101a:基部周縁
2b,101b:基部上面
2c:基部下面
3,21,102:リップ部
4,35,103:バッテリーケース(装着対象物)
5,104:固定用突起部(装着固定手段)
6,22:リップ凸部
7,23:リップ凹部
8,24,107:リップ周縁部
9,105:ケース外殻
10,108:ケース内殻
11,37,106:固定孔
12,38,109:内部空間
13,39,110:外部空間
31:固定用軸部(装着固定手段)
32:軸部本体
33:くびれ部
34:先端部
36:ケース本体
40:流体導入孔
A:リップリフト方向
B:撓み方向
C:周長さ
L1,L2:リップ長さ
P1:頂点
P2:凹頂点

図1
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