(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168939
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】半身不随患者用の医療パジャマ
(51)【国際特許分類】
A41D 13/12 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
A41D13/12 136
A41D13/12 190
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080334
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】522192610
【氏名又は名称】株式会社Polaris.
(74)【代理人】
【識別番号】100099014
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 滿茂
(72)【発明者】
【氏名】小貫 真博
【テーマコード(参考)】
3B011
3B211
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AA05
3B011AB08
3B011AC22
3B211AA01
3B211AA05
3B211AB08
3B211AC22
(57)【要約】
【課題】 半身不随患者用の医療パジャマで、パジャマの掴みやすさを向上させるとともに、パジャマの早期劣化を防止すること。
【解決手段】 半身不随となっている右の上下肢または左の上下肢を被覆する部位の表面側に、非不随の手指によって係合または把持が可能なハンドル部材を設ける(請求項1)。半身不随は、右の上下肢または左の上下肢のどちらか一方が麻痺状態にあるが、逆サイドの手指および腕は動かすことが出来る。そこで、半身不随となっている右の上下肢または左の上下肢を被覆する部位のパジャマの表面側に、非不随の手指を係合/把持させるハンドル部材を設けると、該ハンドル部材を介して麻痺している手足を比較的容易に位置変更させることが出来る。ハンドル部材は、取っ手(把手)またはポケットとする場合がある(請求項2)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パジャマであって、
半身不随となっている右の上下肢または左の上下肢を被覆する部位の表面側に、
非不随の手指によって係合または把持が可能なハンドル部材を設けることを特徴とする半身不随患者用の医療パジャマ。
【請求項2】
ハンドル部材は、
非不随の手指によって係合または把持が可能な帯状/紐状の把手、
または、
非不随の手指によって係合または把持が可能なポケットであることを特徴とする請求項1記載の半身不随患者用の医療パジャマ。
【請求項3】
ハンドル部材は、
上肢の袖口から上に向かって30cm以内の範囲、
下肢の股下から下に向かって40cm以内の範囲に設けることを特徴とする請求項1または請求項2記載の半身不随患者用の医療パジャマ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パジャマに係り、特に、半身不随患者用の医療パジャマに関する。
【背景技術】
【0002】
半身不随は、内的/外的な急性の脳内循環障害により運動神経路が冒されたとき、反対側の手足・体幹・顔面筋が麻痺する疾病である。
【0003】
半身不随(片麻痺)の治療は、例えば、マッサージや電気療法などの理学療法、或いは作業療法によるリハビリテーションなどが行われる。
【0004】
入院中または家庭でのリハビリは、麻痺に対する訓練と残された能力を開発する訓練を並行して行うことが推奨される。例えば、半身麻痺で歩けなくなった場合には、歩く訓練と並行して、健常な半身をうまく使って車いすに移動したり、実際に操作したりする訓練を行う等である。
【0005】
リハビリ中は、パジャマを着用することが多い。しかしながら、従来、半身不随患者に適したパジャマの技術提案はみられない。
【0006】
医療用パジャマとしては、下記特許文献1があり、半身不随患者を支援する技術提案としては下記特許文献2がある。
【0007】
特許文献1は、点滴用バッグを係止することの出来るパジャマであり、特許文献2は、半身不随患者の不随になった手首を保持するバンドに関する提案である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第3233698号
【特許文献2】実用新案登録第3092789号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
半身不随患者は、不随になった手/足の位置を動かすときは、非不随の手(手指)を使って、パジャマ等の衣服を掴んで移動させる。そうしなければ、不随になった手/足の位置を移動させることは出来ないからである。
【0010】
問題は、不随になった手/足の位置を移動させるため、例えば、パジャマの腕袖口近傍や脚太股部分を掴んで持ち上げる動作を繰り返すと、当該部分のパジャマ生地が短期間で劣化し破損する点にある。
【0011】
また、高齢者等、非不随の手(手指)の握力が十分でない場合は、パジャマ生地を掴む(把持する)ことが困難な場合もある。
【0012】
そこで、本発明の目的は、パジャマの掴みやすさを向上させるとともに、パジャマの早期劣化を防止可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するため、本発明に係る半身不随患者用の医療パジャマは、半身不随となっている右の上下肢または左の上下肢を被覆する部位の表面側に、非不随の手指によって係合または把持が可能なハンドル部材を設ける(請求項1)。
【0014】
半身不随は、右の上下肢または左の上下肢のどちらか一方が麻痺状態にあり、逆サイドの手指および腕は動かすことが出来る。
【0015】
そこで、半身不随となっている右の上下肢または左の上下肢を被覆する部位の表面側に、非不随の手指を係合/把持させるハンドル部材を設けると、当該ハンドル部材を介して麻痺している手足を比較的容易に位置変更させることが可能となる。
【0016】
パジャマ生地を直接掴む必要がないから、パジャマ生地の早期劣化を防止でき、また握力が衰えている患者(高齢者等)でも、麻痺した上下肢を従来より容易に位置変更させることが出来る。
【0017】
ハンドル部材は、非不随の手指を係合または把持可能とする帯状/紐状の把手(取っ手)、または、非不随の手指を係合または把持可能とするポケットとする場合がある(請求項2)。
【0018】
帯状/紐状の把手(取っ手)は、鞄の把手(取っ手)と同様に、手指の係合/把持が最も容易な部材である。
【0019】
ポケットは、麻痺した手足を持ち上げる必要がない場合に、開口部に手指を係合させて麻痺した手足を横方向へ移動させるには、最も構成を簡易化できる手段である。
【0020】
ハンドル部材は、上肢の袖口から上に向かって30cm以内の範囲、下肢の股下から下に向かって40cm以内の範囲に設ける場合がある(請求項3)。
【0021】
ハンドル部材の配設位置は、性別、身長、体型、年齢等に応じて設定するが、上肢の袖口から上に向かって30cm以内の範囲、下肢の股下から下に向かって40cm以内の範囲に設けると、リハビリに適した配設位置を担保しやすい。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る半身不随患者用の医療パジャマによれば、パジャマの掴みやすさを向上させるとともに、パジャマの早期劣化を防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第一の実施形態に係る医療パジャマを正面から示す図である。
【
図2】
図1に示すハンドル部材を具体的に例示する図である。
【
図3】
図1に示すハンドル部材の配設位置を例示する図である。
【
図4】第二の実施形態に係る医療パジャマを正面から示す図である。
【
図5】
図4に示すハンドル部材を具体的に例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、第一の実施形態に係る半身不随患者用の医療パジャマ10を示すものである。
【0025】
この実施形態では、例えば、右半身が不随である患者用の医療パジャマ10を例示する。
【0026】
11は、上半身用パジャマ、18は下半身用パジャマ(ズボン)である。12は襟、14は胸ポケット、15はボタン(釦)である。
【0027】
上半身用パジャマ11は、寝間着である一般的なパジャマと同様、良好な肌触りと吸湿性が生まれる素材、例えば、綿、麻、絹、化学繊維等を用いて織った生地を用い、動きの多い腕まわり部分16は、アームホールを大きくしてより動きやすくすることが望ましい。
【0028】
また、上半身用パジャマ11、下半身用パジャマ(ズボン)18いずれも、寝返りしても生地がからだに巻きこまれてつっぱらないよう、ほどよいゆとりをもたせる。下半身用パジャマ18は、やわらかいウエストゴムを用いてしめつけを少なくする。
【0029】
20は、右の上下肢を被覆するパジャマの表面側に設けたハンドル部材である。配設部位は、具体的には、上半身用パジャマ11の右腕を被覆する袖口近傍、下半身用パジャマ(ズボン)18の右脚太股を被覆する部分に配設する。
【0030】
ハンドル部材20を配設するとき、右腕を被覆する袖口近傍、右脚太股を被覆する部分のうち、360度ある取付可能位置のうちどの部位に設けるかは、患者の腕の長さ、握力等に応じて設定することが好ましい。
【0031】
ハンドル部材20を介して右腕を移動させるとき、右腕の外側(右側部)、内側(左側部)、右腕の正面側(前側)、右腕の背面側(後側)のいずれの箇所が使いやすいかは、患者によって異なるからである。右脚太股を被覆する部分に設けるハンドル部材も同様である。
【0032】
腕周り部分の好ましい配設角度と、太股周りの好ましい配設角度が異なる場合も少なくないので、上下パジャマ(10)ともハンドル部材20を同じ角度部位に設ける必要はない。
【0033】
図2は、ハンドル部材20の具体的構成を例示するものである。
【0034】
21は、帯状の把手(取っ手)であるハンドル本体、23は、ハンドル本体21を取り付ける基礎シートである。
【0035】
基礎シート23を用いるのは、ハンドル本体21を引っ張ったり持ち上げたりしたときに、パジャマ生地にかかる引張力の負担を軽減するためである。
【0036】
基礎シート23は、例えば、縫製によって医療パジャマ10の適宜位置に取り付ける。23-2は、医療パジャマ10に取り付ける縫製糸、21-2は、ハンドル本体21を基礎シート23に取り付ける縫製糸である。
【0037】
ハンドル本体21、基礎シート23は、柔軟で引っ張りに強い素材を用いる。例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリエステルを用いた樹脂シート、或いは、所謂ナイロンキャンバス生地である。パジャマに用いる素材であるから柔軟性が必要であり、腕と脚を移動させるための手段であるから外力に抗する強度が必要であるが、これらの樹脂素材は、十分な機能性を備える。
【0038】
また、縫製糸21-2、23-2も、好ましくは樹脂製の糸を用いる。例えば、ナイロン糸、ポリ塩化ビニル糸、ポリエチレン糸、ポリエステル糸等である。
【0039】
図3は、ハンドル部材20の取付位置を例示するものである。
【0040】
符号27は、上肢の取付位置、28は、下肢の取付位置である。
【0041】
上肢の取付位置27は、袖口から上に向かって30cm以内の範囲、下肢の取付位置28は、股下から下に向かって40cm以内の範囲に設けることが望ましい。麻痺していない手指を用いてハンドル部材20を掴むとき、或いは係合させるとき、この範囲が最も把持/係合させやすいからである。
【0042】
かかる構成によれば、麻痺した腕と脚をハンドル部材20を介して位置移動させることが出来るため、パジャマ生地を直接引っ張るよりも、掴み易さが向上し、パジャマ生地の早期劣化を防ぐことが可能となる。
【0043】
図4は、第二の実施形態に係る半身不随患者用の医療パジャマ30を示すものである。
【0044】
本実施形態は、右半身が不随である患者用の医療パジャマ30を例示した。前記実施形態と同一構成の部位には、同一符号を附してある。
【0045】
この実施形態に係る医療パジャマ30は、ハンドル部材40をポケット41として構成するものである。麻痺していない手指を入れるポケット41の開口は太線で示すとともに、開口位置を明確にするために矢印A(A1、A2)で示した。
【0046】
ポケット41の開口A(A1、A2)は、腕、脚の長手方向に沿って設けることが望ましい。麻痺していない逆サイドの手指を入れ易くするためである。直立したときに略鉛直となる角度設定である。鉛直に対して若干の角度を設けても良い。
【0047】
図5は、本実施形態に係るハンドル部材40であるポケット41の具体的構成を例示するものである。
【0048】
43は、ポケット41を構成する下布地、44は、ポケット41を構成する上布地である。本実施形態では、下布地43を上布地44よりも面積を若干大きくし、当該下布地43を医療パジャマ30に取り付ける場合を示した。
【0049】
43-1は、下布地43を医療パジャマ30に取り付ける縫製糸、44-1は、上布地44を下布地43に取り付ける縫製糸である。
【0050】
下布地43を用いるのは、開口(A)から手指を入れて上布地44を引っ張ったり持ち上げたときに、パジャマ生地にかかる引張力の負担を軽減するためである。
【0051】
下布地43と上布地44は、前記実施形態と同様、柔軟で引っ張りに強い素材を用いる。例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリエステルを用いた樹脂シート、或いは、所謂ナイロンキャンバス生地である。パジャマに用いる素材であるから柔軟性が必要であり、腕と脚を移動させるための手段であるから外力に耐える強度が必要であるが、これらの樹脂素材は十分な機能性を備える。
【0052】
縫製糸43-1、44-1は、樹脂糸を使用することが望ましい。強度を保証するためである。
【0053】
ポケット41の配設位置は、前記実施形態と同様、腕の長さや握力、腕力等に応じて適宜デザインする。ポケット41は、物を入れる衣服ポケットと異なりハンドル部材40として機能させるものであるから、開口(A)からの深さは小さくても(浅くても)構わない。
【0054】
かかる構成によれば、麻痺した腕と脚を、ハンドル部材40であるポケット41を介して容易に位置移動させることが出来る。またパジャマ生地の早期劣化を防止できる。
【0055】
前記実施形態は、右半身が不随である患者用の医療パジャマ(10、30)を例示したが、左半身が不随である患者用の場合は、左右を水平反転させた位置にハンドル部材(20、40)を設けることが出来る。
【0056】
帯状の把手(取っ手)であるハンドル本体21は、鞄の把手(取っ手)と異なり、硬質性のものである必要はない。強度はあるが十分な柔軟性を備える肉薄素材を用いて構成することが望ましい。ハンドル本体21を下にして横臥したときに、ハンドル本体21が基礎シート23に密着する状態が好ましいからである。
【符号の説明】
【0057】
10、30 医療パジャマ
11 上半身用パジャマ
12 襟
14 胸ポケット
15 ボタン(釦)
16 腕まわり部分
18 下半身用パジャマ(ズボン)
20、40 ハンドル部材
21 ハンドル本体
23 基礎シート
21-2、23-2、43-1、44-1 縫製糸
27、28 取付位置
41 (ハンドル部材としての)ポケット
43 下布地
44 上布地
A(A1、A2) (ポケットの)開口