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特開2023-168956情報出力装置、情報出力方法、及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168956
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】情報出力装置、情報出力方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20231121BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20231121BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
G06Q50/06
H01M10/48 P
H01M10/44 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080366
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】籔 歳弘
【テーマコード(参考)】
5H030
5L049
【Fターム(参考)】
5H030AA09
5H030AS03
5H030BB21
5H030FF42
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】情報出力装置、情報出力方法、及びコンピュータプログラムの提供。
【解決手段】設計対象の蓄電装置に関する要求仕様の入力を受付ける受付部と、受付けた要求仕様に含まれる条件の一部に基づき、蓄電装置に搭載すべき蓄電セルの数と、蓄電セルの配列とを含む蓄電装置の構成案を生成する生成部と、生成した構成案が要求仕様を満足しているか否かを評価する評価部と、評価部の評価結果に応じて前記構成案を更新し、更新後の構成案を評価部に評価させる更新部と、評価部により要求仕様を満足すると評価された構成案の情報を出力する出力部とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設計対象の蓄電装置に関する要求仕様の入力を受付ける受付部と、
受付けた要求仕様に含まれる条件の一部に基づき、前記蓄電装置に搭載すべき蓄電セルの数と、該蓄電セルの配列とを含む前記蓄電装置の構成案を生成する生成部と、
生成した構成案が前記要求仕様を満足しているか否かを評価する評価部と、
前記評価部の評価結果に応じて前記構成案を更新し、更新後の構成案を前記評価部に評価させる更新部と、
前記評価部により前記要求仕様を満足すると評価された構成案の情報を出力する出力部と
を備える情報出力装置。
【請求項2】
前記要求仕様は、前記蓄電装置から放電される電力について、電力供給システムに備わるインバータにて変換される電圧及び放電仕様を含む
請求項1に記載の情報出力装置。
【請求項3】
前記生成部は、前記蓄電装置から放電される電力について、前記電力供給システムに備わるインバータにて変換される電圧と、前記蓄電セルの仕様とに基づき、前記蓄電セルの直列数を算出すると共に、前記蓄電セルの並列数を仮設定することにより、前記構成案を生成する
請求項2に記載の情報出力装置。
【請求項4】
前記評価部は、前記蓄電装置の放電仕様から必要な蓄電セルの直列数と並列数とを算出し、仮設定された並列数と算出した並列数とが一致するか否かに応じて、前記構成案が前記要求仕様を満足しているか否かを評価する
請求項3に記載の情報出力装置。
【請求項5】
前記評価部は、前記構成案に基づき算出される放電電流から、最大許容放電時間を導出し、導出した最大許容放電時間が前記放電仕様として与えられる放電時間を満足するか否かに応じて、前記構成案が前記要求仕様を満足しているか否かを評価する
請求項3に記載の情報出力装置。
【請求項6】
前記更新部は、前記構成案が前記要求仕様を満足していないと前記評価部が評価した場合、仮設定した並列数を変更する
請求項3から請求項5の何れか1つに記載の情報出力装置。
【請求項7】
前記要求仕様の入力を受付けるための受付画面を表示する表示部
を備える
請求項1に記載の情報出力装置。
【請求項8】
設計対象の蓄電装置に関する要求仕様の入力を受付け、
受付けた要求仕様に含まれる条件の一部に基づき、前記蓄電装置に搭載すべき蓄電セルの数と、該蓄電セルの配列とを含む前記蓄電装置の構成案を生成し、
生成した構成案が前記要求仕様を満足しているか否かを評価し、
評価結果に応じて前記構成案を更新し、
前記要求仕様を満足すると評価された構成案の情報を出力する
処理をコンピュータにより実行する情報出力方法。
【請求項9】
コンピュータに、
設計対象の蓄電装置に関する要求仕様の入力を受付け、
受付けた要求仕様に含まれる条件の一部に基づき、前記蓄電装置に搭載すべき蓄電セルの数と、該蓄電セルの配列とを含む前記蓄電装置の構成案を生成し、
生成した構成案が前記要求仕様を満足しているか否かを評価し、
評価結果に応じて前記構成案を更新し、
前記要求仕様を満足すると評価された構成案の情報を出力する
処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報出力装置、情報出力方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池、風力発電機等の発電機によって充電され、必要に応じて放電する蓄電装置を備える蓄電設備が普及している。蓄電装置は複数の蓄電素子(蓄電セル)を搭載する。蓄電装置の容量(満充電容量)は、充放電の繰り返し(充放電サイクル)、並びに、時間の経過とともに低下する。蓄電装置の容量が劣化する速度は、SOC(State Of Charge)、即ち、蓄電装置に蓄えられている電力の電力量に応じて変化する。
【0003】
特許文献1は、充放電の繰り返し及び時間の経過とともに低下する蓄電装置の容量を予測する技術を開示している。特許文献1では、SOCの推移に基づいて蓄電装置の容量の低下を予測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-169393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蓄電装置の製造業者は、顧客の要求仕様に基づき、蓄電装置(蓄電設備)の構成案を提示するために、以下のことを行う。
(1)製造業者は、蓄電セルの直列数、並列数等の蓄電装置の構成案を作成する。
(2)製造業者は、想定される使用環境で、決定した構成の蓄電装置が顧客要求を満足できる期間(寿命)についてシミュレーション(予測)を行う。
(3)製造業者は、決定及びシミュレーションの試行錯誤を繰り返し、最適と思われる蓄電装置の構成案を決定する。
【0006】
蓄電装置の放電率、電池温度、放電深度といった様々な制約条件が考慮し、顧客要求を満足するような蓄電装置の構成案を提示することは、営業担当者や経験の浅い技術担当者にとって容易ではない。
【0007】
本発明は、蓄電装置における制約条件を考慮しつつ、顧客要求を満足するような蓄電装置の構成案を提示する情報出力装置、情報出力方法、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る情報出力装置は、設計対象の蓄電装置に関する要求仕様の入力を受付ける受付部と、受付けた要求仕様に含まれる条件の一部に基づき、前記蓄電装置に搭載すべき蓄電セルの数と、該蓄電セルの配列とを含む前記蓄電装置の構成案を生成する生成部と、生成した構成案が前記要求仕様を満足しているか否かを評価する評価部と、前記評価部の評価結果に応じて前記構成案を更新し、更新後の構成案を前記評価部に評価させる更新部と、前記評価部により前記要求仕様を満足すると評価された構成案の情報を出力する出力部とを備える。
【0009】
本発明の一態様に係る情報出力方法は、設計対象の蓄電装置に関する要求仕様の入力を受付け、受付けた要求仕様に含まれる条件の一部に基づき、前記蓄電装置に搭載すべき蓄電セルの数と、該蓄電セルの配列とを含む前記蓄電装置の構成案を生成し、生成した構成案が前記要求仕様を満足しているか否かを評価し、評価結果に応じて前記構成案を更新し、前記要求仕様を満足すると評価された構成案の情報を出力する処理をコンピュータにより実行する。
【0010】
本発明の一態様に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、設計対象の蓄電装置に関する要求仕様の入力を受付け、受付けた要求仕様に含まれる条件の一部に基づき、前記蓄電装置に搭載すべき蓄電セルの数と、該蓄電セルの配列とを含む前記蓄電装置の構成案を生成し、生成した構成案が前記要求仕様を満足しているか否かを評価し、評価結果に応じて前記構成案を更新し、前記要求仕様を満足すると評価された構成案の情報を出力する処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
上記態様によれば、蓄電装置における制約条件を考慮しつつ、顧客要求を満足するような蓄電装置の構成案を提示できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係る電力供給システムの構成例を示す模式図である。
図2】蓄電装置の構成例を示す模式図である。
図3】演算装置の内部構成を説明するブロック図である。
図4】演算装置が実行する処理の手順を示すフローチャートである。
図5】顧客の要求仕様を受付けるための入力画面の一例を示す模式図である。
図6】放電深度と期待寿命との関係を示すグラフである。
図7】放電率別の環境温度と放電容量との関係を示すグラフである。
図8】放電電流と終止電圧との関係を示す図である。
図9】放電電流と放電時間との関係を表すグラフである。
図10】蓄電装置の構成案を表示するための出力画面の一例を示す模式図である。
図11】実施の形態2に係る演算装置が実行する処理の手順を示すフローチャートである。
図12】実施の形態3に係る演算装置が実行する処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
鉛蓄電池では、放電率や電池温度によって放電可能な容量が異なるという特性を有する。例えば鉛蓄電池では、放電深度100%の使用は短寿命化につながるため、容量に余裕を持たせる必要がある。他にも電池温度によって充電特性が異なるため、充電不足や過充電を避けるために充電電圧に温度係数を考慮する等、様々な制約条件が存在する。サイクル用途向けの鉛蓄電池やリチウム電池を用いた装置の設計を行う際には、様々な制約条件を考慮して蓄電装置の構成案を決定し、顧客に提案する。
【0014】
しかしながら、各種の制約条件を考慮するためには、電池特性曲線から数値を読み取る必要があったり、計算自体が複雑になったりすることがある。そのため、顧客から要求仕様を入手したとしても、営業部門で対応することは難しく、技術部門で構成案を検討する必要がある。これにより、対応が遅いという印象を顧客に与え、顧客満足度が低下する虞がある。電池メーカの立場としては、事業機会を失う可能性がある。技術担当者であっても、計算を実行するためには蓄電池についての知識が必要であり、知識が浅いと最終的な構成案に到達しない可能性がある。
【0015】
電池の各種制約条件を考慮せずに、定格容量を基準にシステムを構成した場合、計算が比較的容易となる。高放電率を要求されるシステムでは、電池の実容量は定格容量よりも小さくなるため、要求仕様を満足するためには、定格容量で計算した構成より規模の大きな装置が必要となる。定格容量を基に算出した構成案と、各種制約条件を考慮した構成案とを比較した場合、価格面で前者の構成案の方が有利となる。その一方で、前者の構成案では要求仕様を満足できない可能性がある。後者の構成案を提示する電池メーカは、それを適切に指摘できなければ失注となる可能性がある。
【0016】
本開示の情報出力装置は、設計対象の蓄電装置に関する要求仕様の入力を受付ける受付部と、受付けた要求仕様に含まれる条件の一部に基づき、前記蓄電装置に搭載すべき蓄電セルの数と、該蓄電セルの配列とを含む前記蓄電装置の構成案を生成する生成部と、生成した構成案が前記要求仕様を満足しているか否かを評価する評価部と、前記評価部の評価結果に応じて前記構成案を更新し、更新後の構成案を前記評価部に評価させる更新部と、前記評価部により前記要求仕様を満足すると評価された構成案の情報を出力する出力部とを備える。
【0017】
受付部が受付ける顧客の要求仕様は、蓄電装置に用いる蓄電セルの情報、インバータ電圧の情報、放電仕様(放電容量、放電出力、放電時間など)、環境温度、サイクル数、要求寿命などを含む。生成部が生成する構成案は、蓄電装置に搭載する蓄電セルの数や配列を含む。蓄電セルの数や配列は、蓄電セルの直列数や並列数によって定まり、計算初期には仮設定の値が含まれてもよい。生成された構成案は、評価部によって評価され、評価結果に応じて更新される。顧客の要求仕様を満足すると評価された構成案の情報は出力部より出力される。
【0018】
以上の構成により、情報出力装置は、顧客の要求仕様が入力されると、その要求仕様を満足するような蓄電装置の構成案を出力する。そのため、作業者は、その知識レベルに関わらず操作でき、要求仕様を入手次第、情報出力装置に計算させることによって、要求仕様を満たす蓄電装置の構成案を顧客に提示できる。
【0019】
情報出力装置より出力される構成案は、各種制約条件を考慮した実容量に基づくため、定格容量で算出された構成案よりも必要な蓄電セルの数が多くなる場合がある。しかしながら、最終的に得られる構成案だけでなく、計算過程を含めて出力することにより、最適な構成案が提示されたことを顧客に証明できる。よって、価格面で不利であっても、結果的に本開示の情報出力装置により提示された構成案が採用される可能性が高くなる。
【0020】
更に、サイクル放電という電池への負荷が高い用途においても、各種制約条件を適切に考慮することによって要求仕様を満足できる。これによって、サイクル用途においても要求寿命期間において必要な性能を発揮でき、顧客に対して製品品質が高いという印象を与える。
【0021】
前記要求仕様は、前記要求仕様は、前記蓄電装置から放電される電力について、電力供給システムに備わるインバータにて変換される電圧及び放電仕様を含んでもよい。この構成によれば、要求仕様の一部の条件であるインバータ電圧から蓄電セルの直列数が算出され、放電仕様から実容量が算出される。
【0022】
前記生成部は、前記蓄電装置から放電される電力について、前記電力供給システムに備わるインバータにて変換される電圧と、前記蓄電セルの仕様とに基づき、前記蓄電セルの直列数を算出すると共に、前記蓄電セルの並列数を仮設定することにより、前記構成案を生成してもよい。この構成によれば、蓄電セルの直列数は要求仕様から算出される。その一方で、初期の並列数は仮設定される。
【0023】
前記評価部は、前記蓄電装置の放電仕様から必要な蓄電セルの直列数と並列数とを算出し、仮設定された並列数と算出した並列数とが一致するか否かに応じて、前記構成案が前記要求仕様を満足しているか否かを評価してもよい。この構成によれば、要求仕様から算出した並列数と、仮設定した並列数とが一致するか否かに応じて、要求仕様を満足するか否かが評価される。
【0024】
前記評価部は、前記構成案に基づき算出される放電電流から、最大許容放電時間を導出し、導出した最大許容放電時間が前記放電仕様として与えられる放電時間を満足するか否かに応じて、前記構成案が前記要求仕様を満足しているか否かを評価してもよい。最大許容放電時間は、蓄電装置の放電可能時間(すなわち、満充電から放電終止電圧まで放電させるのに要する時間)に対し、放電深度を考慮して算出した放電可能時間である。放電可能時間をT、放電深度を50%とした場合、最大許容放電時間はT/2と算出される。上記構成によれば、所要の放電深度を考慮した最大許容放電時間を導出でき、導出した最大許容放電時間が顧客の要求する放電時間よりも長い場合、顧客仕様を満足すると評価できる。
【0025】
前記更新部は、前記構成案が前記要求仕様を満足していないと前記評価部が評価した場合、仮設定した並列数を変更してもよい。この構成によれば、蓄電セルの並列数を順次変更して、顧客の要求仕様を満足する蓄電装置の構成案を導出できる。
【0026】
前記要求仕様の入力を受付けるための受付画面を表示する表示部を備えてもよい。この構成によれば、顧客との打ち合わせの場で、蓄電装置の構成案を提示できる。
【0027】
本開示の情報出力方法は、設計対象の蓄電装置に関する要求仕様の入力を受付け、受付けた要求仕様に含まれる条件の一部に基づき、前記蓄電装置に搭載すべき蓄電セルの数と、該蓄電セルの配列とを含む前記蓄電装置の構成案を生成し、生成した構成案が前記要求仕様を満足しているか否かを評価し、評価結果に応じて前記構成案を更新し、前記要求仕様を満足すると評価された構成案の情報を出力する処理をコンピュータにより実行する。この構成によれば、蓄電装置における制約条件を考慮しつつ、顧客要求を満足する蓄電装置の構成案を提示できる。
【0028】
本開示のコンピュータプログラムは、コンピュータに、設計対象の蓄電装置に関する要求仕様の入力を受付け、受付けた要求仕様に含まれる条件の一部に基づき、前記蓄電装置に搭載すべき蓄電セルの数と、該蓄電セルの配列とを含む前記蓄電装置の構成案を生成し、生成した構成案が前記要求仕様を満足しているか否かを評価し、評価結果に応じて前記構成案を更新し、前記要求仕様を満足すると評価された構成案の情報を出力する処理をコンピュータに実行させる。この構成によれば、蓄電装置における制約条件を考慮しつつ、顧客要求を満足する蓄電装置の構成案を提示できる。
【0029】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
(実施の形態1)
図1は実施の形態に係る電力供給システムの構成例を示す模式図である。実施の形態に係る電力供給システム1は、蓄電装置10、パワーコンディショナ20、発電機30、及び負荷40を備える。蓄電装置10は、パワーコンディショナ20を介して発電機30や負荷40に接続される。発電機30は、太陽電池や風力発電機などの電力供給源である。負荷40は蓄電装置10又は発電機30から供給される電力によって稼働する各種の装置や施設である。代替的に、負荷40は、蓄電装置10又は発電機30が供給する電力によって走行する車両の駆動源や飛行する飛行体の駆動源であってもよい。
【0030】
発電機30から入力される電圧が交流電圧である場合、パワーコンディショナ20には交流電圧を直流電圧に変換するコンバータが設けられる。この場合、パワーコンディショナ20は、コンバータによって変換した直流電圧に係る直流電力を蓄電装置10や負荷40に供給する。発電機30から入力される電圧が直流電圧である場合、パワーコンディショナ20は、入力された直流電圧に係る直流電力を蓄電装置10に供給すればよい。蓄電装置10は、パワーコンディショナ20を通じて供給される直流電力を蓄電する。パワーコンディショナ20は、蓄電装置10から入力される直流電圧を交流電圧に変換するためのインバータを備える。パワーコンディショナ20は、インバータによって変換した交流電圧に係る交流電力を負荷40に供給する。
【0031】
図2は蓄電装置10の構成例を示す模式図である。蓄電装置10は、並列に接続されたK個(Kは1以上の整数)のバンク100を備える。移動体用途では、各バンク100の一端は、電力線を介してパワーコンディショナ20に接続され、他端は接地される。定置用では、各バンク100の他端は接地されなくてもよい。各バンク100は、充放電回路110と、直列に接続されたL個(Lは1以上の整数)の蓄電セル120とを備える。蓄電セル120は、例えば鉛蓄電池である。この蓄電装置10における蓄電セル120の総数はK×L(並列数はK、直列数はL)である。充放電回路110は、スイッチ又はブレーカを備えており、スイッチ又はブレーカのオン/オフを切り替えることによって、各蓄電セル120に対する充放電を制御する。
【0032】
蓄電セル120の総数、並列数及び直列数を含む蓄電装置10の構成案は、顧客の要求仕様に応じて作成される。本実施の形態では、後述の演算装置50(図3を参照)を用いて蓄電装置10の構成案を作成する。より具体的には、演算装置50は、設計対象の蓄電装置10に関して、顧客が要求する要求仕様を受付け、受付けた要求仕様を満足するように蓄電装置10の構成案を生成する。
【0033】
図3は演算装置50の内部構成を説明するブロック図である。演算装置50は、タブレット端末、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、サーバ装置などの専用又は汎用のコンピュータである。演算装置50は、例えば、制御部51、記憶部52、通信部53、操作部54、及び表示部55を備える。
【0034】
制御部51は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などにより構成される。制御部51が備えるCPUは、ROM又は記憶部52に記憶されている各種コンピュータプログラムをRAM上に展開して実行することにより、装置全体を本願の情報出力装置として機能させる。
【0035】
代替的に、制御部51は、複数のCPU、マルチコアCPU、GPU(Graphics Processing Unit)、マイコン、揮発性又は不揮発性のメモリ等を備える任意の処理回路又は演算回路であってもよい。制御部51は、計測開始指示を与えてから計測終了指示を与えるまでの経過時間を計測するタイマ、数をカウントするカウンタ、日時情報を出力するクロック等の機能を備えてもよい。
【0036】
記憶部52は、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブなどの記憶装置を備える。記憶部52には、制御部51によって実行される各種コンピュータプログラム、及びコンピュータプログラムの実行に必要なデータ等が記憶される。記憶部52に記憶されるコンピュータプログラムの1つは、顧客の要求仕様に適合する蓄電装置10の構成案を生成し、生成した構成案の情報を出力する処理を制御部51に実行させるための演算プログラムPG1である。演算プログラムPG1は、単一のコンピュータプログラムであってもよく、複数のコンピュータプログラムにより構築されるプログラム群であってもよい。演算プログラムPG1は、既存のライブラリやシミュレータを部分的に用いてもよい。
【0037】
演算プログラムPG1を含むコンピュータプログラムは、当該コンピュータプログラムを読み取り可能に記録した非一時的な記録媒体(プログラム製品)RMにより提供される。記録媒体RMは、例えば、CD-ROM、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード、マイクロSDカード、コンパクトフラッシュ(登録商標)などの可搬型メモリである。制御部51は、不図示の読取装置を用いて記録媒体RMからコンピュータプログラムを読み取り、読み取ったコンピュータプログラムを記憶部52にインストールすればよい。代替的に、演算プログラムPG1を含むコンピュータプログラムは、通信により提供されてもよい。この場合、制御部51は、通信部53を介した通信により、演算プログラムPG1を含むコンピュータプログラムを取得し、取得したコンピュータプログラムを記憶部52にインストールすればよい。
【0038】
通信部53は、各種データを送受信する通信インタフェースを備える。通信部53が備える通信インタフェースは、例えば、WiFi(登録商標)やイーサネット(登録商標)で用いられるLANの通信規格に準じた通信インタフェースである。通信部53は、送信すべきデータが制御部51から入力された場合、指定された宛先へ送信すべきデータを送信する。通信部53は、外部装置から送信されたデータを受信した場合、受信したデータを制御部51へ出力する。
【0039】
操作部54は、タッチパネル、キーボード、スイッチなどの操作デバイスを備え、ユーザによる各種の操作やデータの入力を受付ける。制御部51は、操作部54より与えられる各種の操作情報に基づき適宜の制御を行い、必要に応じて入力されたデータを記憶部52に記憶させる。
【0040】
表示部55は、液晶ディスプレイや有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイなどの表示デバイスを備える。表示部55は、制御部51からの指示に応じてユーザに報知すべき情報を表示する。表示部55は通知部と読み替えて、音声等の他の手段でユーザに報知する手段であってもよい。以降は表示部55を備えた例について説明するが、他の手段でユーザを報知する手段である通知部に読み替えた場合は、該通知部の報知手段に応じた方法でユーザに報知し、以降に説明するフローチャートが進行し、同様の結果・効果が得られるものとする。表示部55を通知部と読み替えることは実施の形態1以外の実施の形態でも適用可能である。
【0041】
演算装置50は、外部に接続されたコンピュータを通じて操作を受付け、通知すべき情報を外部のコンピュータへ出力する構成であってもよい。この場合、演算装置50は、操作部54及び表示部55を備えていなくてもよい。
【0042】
本実施の形態において、演算装置50は、単一のコンピュータであってもよく、複数のコンピュータや周辺機器などにより構成されるコンピュータシステムであってもよい。代替的に、演算装置50は、実体が仮想化された仮想マシンであってもよく、クラウドであってもよい。
【0043】
以下、演算装置50の動作について説明する。
図4は演算装置50が実行する処理の手順を示すフローチャートである。演算装置50の制御部51は、記憶部52に記憶された演算プログラムPG1を読み出して実行することにより、以下の処理を実行する。
【0044】
制御部51は、蓄電装置10に関する顧客の要求仕様を受付けるための入力画面を生成し、表示部55に表示する(ステップS101)。制御部51は、表示部55に表示した入力画面を通じて、顧客の要求仕様を受付ける(ステップS102)。
【0045】
図5は顧客の要求仕様を受付けるための入力画面の一例を示す模式図である。図5に示す入力画面510は、蓄電セル120の型式の選択を受付ける選択欄511を備える。選択欄511は、例えばプルダウンメニュー方式の選択欄である。営業担当者(若しくは顧客)は、演算装置50の操作部54を操作して、プルダウンメニュー方式の選択欄511から、所望の蓄電セル120の型式を選択する。選択欄511にて型式が選択されると、制御部51は、記憶部52に記憶されているデータシートから対応する蓄電セル120の仕様を読み出し、表示欄512に表示させる。蓄電セル120の仕様は、定格容量、公称電圧、通常電圧、均等充電電圧などの情報を含む。
【0046】
入力画面510は、顧客の要求仕様を受付ける入力欄513を備える。入力欄513では、例えば、インバータの最大電圧及び最小電圧、負荷の放電容量、放電出力及び放電時間、環境温度、サイクル数、要求寿命等の情報を受付ける。営業担当者(若しくは顧客)は、演算装置50の操作部54を操作して、要求仕様に係る情報を入力する。
【0047】
制御部51は、図5に示すような入力画面510を通じて顧客の要求仕様を受付けた後、ステップS103以降の処理を実行し、蓄電装置10の構成案を作成する。
【0048】
制御部51は、ステップS102で受付けた要求仕様を参照し、環境温度から充電電圧を算出する(ステップS103)。蓄電セル120における端子電圧は、V=E+Irで表される。ここで、Vは端子電圧、Eは起電力、Iは充電電流、rは内部抵抗である。鉛蓄電池では、低温の場合、内部の電解液の化学反応が鈍化するため、内部抵抗は増大し、端子電圧が上昇する。制御部51は、ステップS103において、環境温度に応じた充電電圧を算出する。
【0049】
制御部51は、インバータ電圧から蓄電セル120の直列数を算出する(ステップS104)。ここで、制御部51は、1つのバンク100において直列に接続される蓄電セル120の数(=L)を算出する。例えば、制御部51は、データシートより得られる蓄電セル120の均等充電電圧(=V3)と、インバータの最大電圧(=V4)とを用いて、V4/V3より、蓄電セル120の直列数を算出する。
【0050】
蓄電セル120の並列数(=K)については現時点では定まらないため、制御部51は、並列数を1に仮設定する(ステップS105)。
【0051】
制御部51は、要求仕様から必要な電池容量を算出し(ステップS106)、放電電流を算出する(ステップS107)。顧客が要求する放電容量、放電時間、放電電圧は要求仕様によって定められている。しかしながら、鉛蓄電池では、放電深度によって蓄電セル120の期待寿命が変化し、環境温度や放電率によって放電容量が変化することが知られている。顧客の使用先にて使用される蓄電装置10の電池容量や放電電流は、これらを考慮して算出される。
【0052】
図6は放電深度と期待寿命との関係を示すグラフである。グラフの横軸は放電深度(%)を表し、縦軸は期待寿命(回)を表している。要求仕様から、蓄電装置10に要求されるサイクル数及び寿命をそれぞれ例えばM1回/年及びi3年(期待寿命=M1×i3回)とする。図6のグラフを参照すれば、期待寿命を満たすために必要な放電深度の運用範囲を定めることができる。
【0053】
図7は放電率別の環境温度と放電容量との関係を示すグラフである。グラフの横軸は環境温度(℃)を表し、グラフの縦軸は放電容量(%)を表している。ここで、I10は10時間率電流を表す。図7に示すグラフから、環境温度や放電電流に応じて、放電容量が変化することが分かる。
【0054】
制御部51は、要求仕様として与えられる放電電流や要求寿命などに基づき、図6に示すグラフや図7に示すグラフ等を参照し、顧客の使用先で必要な電池容量及び放電電流を算出する。演算装置50は、図6及び図7に示すグラフをテーブルとして備えてもよく、関数やライブラリとして備えてもよい。放電電流が算出されると、図8に示す放電電流と終止電圧との関係を示す図に基づき終止電圧が定まる。
【0055】
制御部51は、ステップS107で算出した放電電流に基づき、放電時間、セル実容量、必要セル数、必要並列数を算出する(ステップS108)。図9は放電電流と放電時間との関係を表すグラフである。グラフの横軸及び縦軸は共に対数軸であり、横軸は放電電流(×I10A)、縦軸は放電時間(分)を表す。制御部51は、図9のグラフに示す放電電流/放電時間特性を参照することによって、ステップS107で算出した放電電流を基に放電時間を算出できる。図9のグラフの縦軸に示す放電時間は、終止電圧まで放電した場合の時間(放電可能時間)を表す。放電深度(DOD:Depth of Discharge)を50%で運用した場合の放電時間(最大許容放電時間)は、放電可能時間の半分の時間である。ステップS107で算出した放電電流と、蓄電セル120の許容最低電圧とに基づき、図9のグラフから放電時間を読み取ることができる。演算装置50は、図9に示すグラフをテーブルとして備えてもよく、関数やライブラリとして備えてもよい。
【0056】
蓄電セル120の実容量は、ステップS107で算出した放電電流やステップS108で算出した放電時間に基づき算出される。更に、必要な蓄電セル120の直列数(必要セル数)や並列数(必要並列数)は、蓄電セル120の実容量に基づき算出される。
【0057】
制御部51は、算出した放電時間が要求を満足し、算出した必要並列数が仮設定した値と同一であるか否かを判断する(ステップS109)。具体的には、制御部51は、ステップS108で算出される最大許容放電時間が、顧客の要求仕様に含まれる放電時間を満たすか否かを判断する。例えば、ステップS108で算出した最大許容放電時間がtx、顧客の要求仕様に含まれる放電時間がt1であり、最大許容放電時間txが要求仕様に含まれる放電時間t1よりも長い場合、要求を満たすと判断される。更に、ステップS105で仮設定される並列数は1であるから、ステップS108で算出した必要並列数が1であれば、同一と判断され、ステップS108で算出した必要並列数が2以上であれば、同一でないと判断される。
【0058】
制御部51は、算出した放電時間が要求を満足しないと判断した場合、又は、算出した必要並列数が仮設定した値と同一でないと判断した場合(S109:NO)、仮設定の並列数を1だけ増加させ(ステップS110)、処理をステップS106へ戻す。
【0059】
制御部51は、算出した放電時間が要求を満足すると判断し、かつ、算出した必要並列数が仮設定した値と同一であると判断した場合(S109:YES)、蓄電装置10の構成案を出力する(ステップS111)。具体的には、制御部51は、算出した構成案の情報を表示部55に表示させる。代替的に、制御部51は、算出した構成案の情報を通信部53より送信することによって、顧客が使用する端末に通知してもよい。
【0060】
図10は蓄電装置10の構成案を表示するための出力画面の一例を示す模式図である。出力画面520に表示される構成案には、例えば、蓄電セル120の直列数及び並列数が含まれる。直列数は、1つのバンク100において直列に接続されている蓄電セル120の総数(=L)であり、並列数は、蓄電装置10に搭載されるバンク100の数に等しい。
【0061】
構成案には、更に、蓄電装置10の容量、充電電圧、放電電圧、放電電流、放電時間、サイクル寿命などの情報が含まれてもよい。図10の例では、蓄電装置10の容量として、BOL容量(BOL : Beginning of Life)及びEOL容量(EOL : End of Life)が含まれている。本実施の形態において、BOL容量は、寿命初期時に要求されている放電を行うとDODでd1%に値し、EOL容量は、寿命末期時に要求されている放電を行うとDODでd2%に値することを意味する。
【0062】
図10の例では、蓄電装置10の充電電圧として、通常充電時最大電圧及び均等充電時最大電圧が含まれている。更に、蓄電装置10の放電電圧として、公称電圧、放電打ち切り時電圧、放電終始時電圧が含まれている。公称電圧及び放電打ち切り時電圧は、蓄電セル120の公称電圧×直列数である。放電終止時電圧は、DOD100%で放電した際の電圧である。DOD100%での放電は寿命劣化の観点から推奨されていないが、非常時の例外としてDOD100%で放電する場合がある。ただし、放電終止電圧がインバータの最低電圧以下となっている場合には、運用条件を満たさないので、DOD100%での運用は不可能である。
【0063】
放電電流及び放電時間(放電可能時間及び最大許容放電時間)は、それぞれ上述のように算出され、出力画面520に表示される。サイクル寿命は、例えば、図6に示す特性から導出される。EOL時のDOD(=d2%)で換算した場合、サイクル寿命はz回となる。
【0064】
以上のように、実施の形態1では、演算装置50において顧客の要求仕様を受付けることにより、蓄電装置10における制約条件を考慮しつつ、要求仕様を満足するような蓄電装置10の構成案を提示できる。
【0065】
(実施の形態2)
図11は実施の形態2に係る演算装置50が実行する処理の手順を示すフローチャートである。実施の形態2に係る演算装置50は、最終的に得られる構成案だけでなく、計算過程として得られる構成案を逐次出力する。演算装置50の構成や設計対象となる蓄電装置10の構成は実施の形態1と同様であるため、その説明を省略する。
【0066】
演算装置50の制御部51は、図4に示すフローチャートのステップS101~S108と同じ手順で処理を実行し、蓄電装置10の構成案に必要な情報を算出する。制御部51は、ステップS108で放電時間、セル実容量、必要セル数、及び必要並列数を算出した後、計算過程の構成案を出力する(ステップS120)。ここでは、仮設定した並列数に基づき算出される蓄電装置10の容量、充電電圧、放電電圧、放電電流、放電時間、サイクル寿命などの情報が表示部55に表示される。出力例は、図10と同様である。代替的に、計算過程の構成案は、通信部53より、顧客が使用する端末に通知されてもよい。
【0067】
ステップS109で、制御部51は、算出した放電時間が要求を満足し、算出した必要並列数が仮設定した値と同一であるか否かを判断する。算出した放電時間が要求を満足しないと判断した場合、又は、算出した必要並列数が仮設定した値と同一でないと判断した場合(S109:NO)、仮設定の並列数を1だけ増加させ(ステップS110)、処理をステップS106へ戻す。これにより、並列数が1だけ増加する都度、計算過程で得られる蓄電装置10の構成案(すなわち、並列数に応じて更新される構成案)が表示部55又は通信部53より出力される。
【0068】
算出した放電時間が要求を満足すると判断し、かつ、算出した必要並列数が仮設定した値と同一であると判断した場合(S109:YES)、制御部51は、本フローチャートによる処理を終了する。この場合、直前の構成案が最終案として表示部55又は通信部53より出力される。
【0069】
以上のように、実施の形態2では、最終的に得られる構成案だけでなく、計算過程で得られる構成案を顧客に提示するので、蓄電装置10の各種制約条件を考慮した演算が現実に行われていることを顧客に提示できる。蓄電装置10の各種制約条件に基づき、実容量を考慮した構成案は、定格容量で算出された構成案よりも必要な電池数が多くなる(すなわち価格が高くなる)ことが予想されるが、実容量に応じた直列数や並列数が計算過程で示されるので、最終的に得られる構成案の信頼性の高さを顧客にアピールできる。
【0070】
実施の形態2では、並列数を更新する都度、構成案を出力する構成とした。代替的に、制御部51は、蓄電装置10の直列数、並列数、容量、充電電圧、放電電圧、放電電流、放電時間、サイクル寿命などの値を算出する都度、表示部55又は通信部53より出力してもよい。
【0071】
(実施の形態3)
実施の形態3では、リチウムイオン電池への適用例について説明する。
演算装置50の構成は実施の形態1と同様であるため、その説明については省略する。
【0072】
図12は実施の形態3に係る演算装置50が実行する処理の手順を示すフローチャートである。実施の形態3に係る演算装置50の制御部51は、表示部55に選択画面(不図示)を表示し、表示した選択画面にて蓄電装置10の用途の選択を受付ける(ステップS301)。実施の形態3において、蓄電装置10は、蓄電装置10は、並列に接続されたK個(Kは1以上の整数)のバンク100を備える。各バンク100は、充放電回路110と、直列に接続されたM個(Mは1以上の整数)の蓄電モジュールとを備える。各蓄電モジュールは、直列に接続されたN個(Nは1以上の整数)の蓄電セル120を備える。実施の形態3において、蓄電セル120は、リチウムイオン電池である。ステップS301において、制御部51は、直流負荷への用途、直流負荷以外への用途の何れか一方を受付ける。
【0073】
制御部51は、選択された用途に応じて要求仕様の入力を受付ける(ステップS302)。制御部51は、用途に応じた入力画面(不図示)を表示部55に表示し、表示した入力画面にて要求仕様の入力を受付ける。例えば、直流負荷への用途が選択された場合、制御部51は、負荷パターン、環境温度、最低温度、電池形式、セル電圧範囲、期待寿命等の情報を要求仕様として受付ける。一方、直流負荷以外への用途が選択された場合、インバータ/UPS(Uninterruptible Power Supply)容量、逆変換効率、負荷力率、負荷電圧範囲、環境温度、最低温度、放電時間、放電頻度、電池型式、セル電圧範囲、要求寿命、電池盤形式、電池盤高さ等の情報を要求仕様として受付ける。
【0074】
制御部51は、受付けた要求仕様に基づき、蓄電装置10の構成案を導出する(ステップS303)。制御部51は、実施の形態1と同様に、要求仕様から直列数を算出すると共に、並列数を仮設定する。制御部51は、要求仕様や保守率及びK値を考慮し、仮設定した並列数を更新しながら必要な電池構成を算出する。用途が直流負荷以外の場合、電池構成と共に電池盤の構成を併せて算出してもよい。1つの蓄電モジュール内で監視できる蓄電セル120の上限数が定められている場合、制御部51は、その上限数に基づき、1つのバンク100に搭載する蓄電モジュールの数(=M)と、各蓄電モジュールに搭載する蓄電セル120の数(=N)とを算出してもよい。
【0075】
制御部51は、ステップS303で導出した蓄電装置10の構成案を出力する(ステップS304)。具体的には、制御部51は、算出した構成案の情報を表示部55に表示させる。代替的に、制御部51は、算出した構成案の情報を通信部53より送信することによって、顧客が使用する端末に通知してもよい。
【0076】
以上のように、実施の形態3では、リチウムイオン電池を蓄電セル120として備える蓄電装置10に関して、構成案を顧客に提示できる。
【0077】
開示された実施形態は、全ての点において例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0078】
例えば、上述の実施形態では、鉛蓄電池やリチウムイオン電池を一例に挙げて説明したが、これに限定する必要はなく、他の電池、蓄電可能な媒体、エネルギ蓄積可能な媒体等であっても適用可能である。
【0079】
特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載してもよい。
【符号の説明】
【0080】
10 蓄電装置
50 演算装置
51 制御部
52 記憶部
53 通信部
54 操作部
55 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12