(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168960
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】固定装置及び記憶装置
(51)【国際特許分類】
G06F 1/16 20060101AFI20231121BHJP
G11B 33/02 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
G06F1/16 312W
G11B33/02 301F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080370
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】320008672
【氏名又は名称】i-PRO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 実
(57)【要約】
【課題】被固定物の着脱が容易に行え、安価な部材コストで被固定物の安定した固定が可能となる。
【解決手段】固定装置は、被固定物を収容するケース本体と、ケース本体に被固定物を固定する弾性線材と、を備える。ケース本体は、底壁部から起立して対向する一対の側壁部と、一対の側壁部の前端同士および後端同士の間に設けられる前壁部および後壁部と、それぞれの側壁部から外側に張り出すフランジ部と、を有する。弾性線材は、長手方向中央部が前壁部の外側に係止する引っ掛け部と、引っ掛け部の両端側が複数の曲げ部で曲げられて側壁部を外側から貫通する軸端部と、を有し、軸端部を中心に正回転された固定位置では被固定物を底壁部とで挟んでケース本体に固定するとともに軸端部を被固定物に接続させ、軸端部を中心に逆回転された固定解除位置ではフランジ部を介して軸端部を被固定物から離間させる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被固定物を収容するケース本体と、前記ケース本体に前記被固定物を固定する弾性線材と、を備え、
前記ケース本体は、
底壁部から起立して対向する一対の側壁部と、前記一対の側壁部の前端同士および後端同士の間に設けられる前壁部および後壁部と、それぞれの前記側壁部から外側に張り出すフランジ部と、を有し、
前記弾性線材は、
長手方向中央部が前記前壁部の外側に係止する引っ掛け部と、前記引っ掛け部の両端側が複数の曲げ部で曲げられて前記側壁部を外側から貫通する軸端部と、を有し、前記軸端部を中心に正回転された固定位置では前記被固定物を前記底壁部とで挟んで前記ケース本体に固定するとともに前記軸端部を前記被固定物に接続させ、前記軸端部を中心に逆回転された固定解除位置では前記フランジ部を介して前記軸端部を前記被固定物から離間させる、
固定装置。
【請求項2】
前記前壁部には、前記引っ掛け部を係止する第1ロック部と、前記引っ掛け部を係止するとともに前記底壁部を基準とした上下方向において前記第1ロック部よりも上部に配置される第2ロック部と、が少なくとも設けられている、
請求項1に記載の固定装置。
【請求項3】
前記弾性線材には、前記引っ掛け部と前記軸端部との間に設けられ、前記底壁部との間で前記被固定物を挟む抑え部が設けられている、
請求項1または2に記載の固定装置。
【請求項4】
請求項1に記載の固定装置と、
前記固定装置に固定される前記被固定物である記憶媒体と、を備える、
記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固定装置及び記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、2つの側壁それぞれに少なくとも1つの固定柱が設置されたハードディスクドライブを固定するために用いられ、かつハードディスクドライブを収容するブラケット及び回転装置を備えるハードディスクドライブ固定装置を開示している。ブラケットは、両側に位置する2つの固定壁と、一端に位置しかつ2つの固定壁の間に接続される端壁と、を備える。各々の固定壁には、少なくとも1つの係合スロットが設けられ、各々の固定柱は、対応する係合スロットに挿入されて端壁に向かってスライドする。回転装置は、2つの固定壁の端壁から離れている一端に設置されて端壁に向かってハードディスクドライブを推進する固定ロッドと、固定ロッドの両端に設置されかつ対応する固定壁に回転可能に接続される2つの回転ロッドと、一方の回転ロッドの端部に設置されかつ固定壁に係合されるラッチングロッドと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、ハードディスクドライブの両側の側壁に、それぞれ2つの固定柱(ねじ)を設け、この固定柱をブラケットの対向する固定壁に形成された合計4つの係合スロットに挿入した後、回転装置によりハードディスクドライブを推進させて、係合スロットのスライドスロットに固定柱を係合させてハードディスクドライブをブラケットに固定する。このため、複数の固定柱のそれぞれを対応する係合スロットに挿入しなければならず、作業者の固定作業が煩雑になるという課題があった。また、複数のねじ、専用の回転装置が必要となるので、部材コストがかさむ。さらに、ハードディスクドライブを固定柱とスライドスロットとで係合するため、大きな面で支持できず、振動によるがたつきが生じやすく、不安定な固定となりやすいという懸念もある。
【0005】
本開示は、被固定物の着脱を容易に行い、安価な部材コストで被固定物の安定した固定を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、被固定物を収容するケース本体と、前記ケース本体に前記被固定物を固定する弾性線材と、を備え、前記ケース本体は、底壁部から起立して対向する一対の側壁部と、前記一対の側壁部の前端同士および後端同士の間に設けられる前壁部および後壁部と、それぞれの前記側壁部から外側に張り出すフランジ部と、を有し、前記弾性線材は、長手方向中央部が前記前壁部の外側に係止する引っ掛け部と、前記引っ掛け部の両端側が複数の曲げ部で曲げられて前記側壁部を外側から貫通する軸端部と、を有し、前記軸端部を中心に正回転された固定位置では前記被固定物を前記底壁部とで挟んで前記ケース本体に固定するとともに前記軸端部を前記被固定物に接続させ、前記軸端部を中心に逆回転された固定解除位置では前記フランジ部を介して前記軸端部を前記被固定物から離間させる、固定装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、被固定物の着脱を容易に行うことができ、安価な部材コストで被固定物の安定した固定を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、ハードディスクドライブが固定解除状態となって収容された実施の形態1に係るハードディスクドライブ固定装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、ハードディスクドライブが取り外された
図1に示すハードディスクドライブ固定装置の斜視図である。
【
図3】
図3は、ハードディスクドライブが固定状態となって収容された実施の形態1に係るハードディスクドライブ固定装置の斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3に示したハードディスクドライブ固定装置の側面図である。
【
図5】
図5は、高さの高いハードディスクドライブが固定状態となって収容された実施の形態1に係るハードディスクドライブ固定装置11の斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5に示したハードディスクドライブ固定装置の側面図である。
【
図7】
図7は、ハードディスクドライブが省略された
図3に示すハードディスクドライブ固定装置の斜視図である。
【
図8】
図8は、弾性線材が固定解除位置から固定位置へ移動するときの動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る固定装置及び記憶装置を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。4既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであり、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0010】
以下の実施の形態1では、本開示に係る固定装置の一例として、被固定物(例えばハードディスクドライブ。以下同様。)を固定するためのハードディスクドライブ固定装置を例示して説明する。なお、固定装置により固定される被固定物は、ハードディスクドライブに限定されなくてもよい。
【0011】
図1は、ハードディスクドライブが固定解除状態となって収容された実施の形態1に係るハードディスクドライブ固定装置11の斜視図である。実施の形態1に係るハードディスクドライブ固定装置11は、例えば記憶装置13の筐体(図示略)に搭載される。記憶装置13は、例えばPC(Personal Computer)もしくはオーディオビジュアル機器に内蔵されたり、あるいは外付けで接続されたりする。
【0012】
実施の形態1に係る記憶装置13は、ハードディスクドライブ固定装置11と、このハードディスクドライブ固定装置11に固定されるハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)と、を備える。ハードディスクドライブ固定装置11は、記憶装置13の筐体(図示略)に固定される。
【0013】
ハードディスクドライブ15は、上面17と下面(図示略)とがほぼ長方形状となって、ハードディスクドライブ15の筐体高さ方向の辺が他の辺よりも十分に小さい偏平な六面体となる。ハードディスクドライブ15は、上部の開口した箱状のケーシング(図示略)の内方に磁気ディスク等の記憶媒体を収容する。記憶媒体を収容したケーシングにおいては、上部開口が蓋部材19で塞がれる。ハードディスクドライブ15は、収容される記憶媒体の形状に応じ、上面17に凸部21が突出する。すなわち、ハードディスクドライブ15の上面17は、平面でなくてもよい。ハードディスクドライブ15は、高さが異なる少なくとも2種類のサイズを有する。
【0014】
図2は、ハードディスクドライブが取り外されたハードディスクドライブ固定装置11の斜視図である。ハードディスクドライブ固定装置11は、ハードディスクドライブ15を収容するケース本体23と、ケース本体23にハードディスクドライブ15を固定する弾性線材25と、を備える。弾性線材25としては、例えば、ばね鋼線材、金属ワイヤ、あるいは高強度を有する樹脂製の棒状部材を用いることができる。
【0015】
ケース本体23は、平面視がほぼ長方形の底壁部27を有する。底壁部27には、短辺の中央から長辺に沿う方向の縦リブ29が形成される。底壁部27には、この縦リブ29を横断して短辺に沿う方向の複数(例えば3つ)の横リブ31が、長辺に沿う方向に所定の間隔で形成される。横リブ31の左右端には、ハードディスクドライブ15の下面を載置する凸板部33が横リブ31よりも上方に突出して設けられている。凸板部33の上面には、弾性材料よりなるクッションシート35等が貼着されてもよい。縦リブ29を挟む両側には、ハードディスクドライブ15の下面を載置する凸条部37が縦リブ29に沿って、縦リブ29よりも上方に突出して設けられている。
【0016】
なお、任意の凸板部33には、底壁部27に対して垂直な方向で起立する係合ピン39が設けられてもよい。係合ピン39は、ハードディスクドライブ15に下面に形成される既存穴(図示略)に挿入される。
【0017】
ケース本体23は、底壁部27から起立して対向する一対の側壁部41を備える。側壁部41は、ケース本体23の長辺に沿って平坦壁43と湾曲壁45とが交互に連なって形成される。湾曲壁45は、対向する反対側の湾曲壁45に向かって湾曲して突出する。すなわち、湾曲壁45は、対向する湾曲先端でハードディスクドライブ15を挟持する。それぞれの湾曲壁45の下部には、ハードディスクドライブ15を載置する湾曲台部47が形成される。一対の側壁部41は、長辺に沿う方向の一端側(後部側)に、挟持壁部49をそれぞれ有する。一対の挟持壁部49は、対向する離間距離が、対向する湾曲壁45の離間距離と同じとなっている。つまり、挟持壁部49は、対向面でハードディスクドライブ15を挟持する。この一対の挟持壁部49には、挟持壁部49の厚み方向に貫通する貫通穴51がそれぞれに穿設されている。
【0018】
それぞれの側壁部41は、外側に張り出すフランジ部53を挟持壁部49に有する。フランジ部53は、底壁部27と平行となって挟持壁部49から突出する。このフランジ部53は、平面視において、ほぼ三角形状で形成される。フランジ部53には傾斜部55が形成される。傾斜部55は、ケース本体23の後部に向かうにしたがって外側に突出する方向の傾斜となる。この傾斜部55の後部側の終端は挟持壁部49と平行な線材摺接部57(
図8参照)となる。線材摺接部57の後部側の終端には、弾性線材25が嵌る線材保持凹部59(
図8参照)が形成される。
【0019】
ケース本体23は、一対の側壁部41の前端同士の間に前壁部61を有し、一対の側壁部41の後端同士の間に後壁部63を有する。
【0020】
前壁部61は、その中央部において、上端から底壁部27に向かって縦方向に切り込まれた一対のスリット65の間に挟まれる弾性可撓片部67を有する。弾性可撓片部67は、前壁部61の両側の前壁端部69よりも高く形成される。スリット65に挟まれた弾性可撓片部67は、ほぼ下端のみが底壁部27と接続され、この接続部分を中心に、上端がケース本体23の内外方向に弾性変形により揺動可能となる。
【0021】
この弾性可撓片部67の外側の面には、ロック部が形成される。ロック部は、上下方向異なる位置に2箇所以上設けられる。実施の形態1において、ロック部は、上側の上段ロック部71(第1ロック部の一例)と、下側の下段ロック部73(第2ロック部の一例)との2箇所となる。上段ロック部71は、弾性可撓片部67の中央に1つで設けられる。下段ロック部73は、上段ロック部71を挟む左右両側の2つで設けられる。これら上段ロック部71および下段ロック部73は、上端から前方に向かって下り傾斜となる案内面75(
図4参照)と、この案内面75から底壁部27と平行な方向で弾性可撓片部67に向かう係止面77(
図4参照)と、からなる。
【0022】
後壁部63は、一方の側壁部41の挟持壁部49と、底壁部27とに接続して形成される。後壁部63は、他方の側壁部41との間で不在となる。この後壁部63が不在となった部分は、開放部79となる。開放部79は、ハードディスクドライブ15と接続される配線(図示略)の接続空間等に利用される。なお、他方の側壁部41には、開放部79に向かって突出する袖壁部81が設けられる。ケース本体23は、袖壁部81がハードディスクドライブ15の角部に当たることで、ケース本体23からのハードディスクドライブ15のはみ出しを強固に規制できる。
【0023】
図3は、ハードディスクドライブが固定状態となって収容された実施の形態1に係るハードディスクドライブ固定装置11の斜視図である。弾性線材25の長手方向中央部は、前壁部61の外側に係止する引っ掛け部83となる。引っ掛け部83は、前壁部61に平行となって所定長(例えば数センチメートル)ほどの長さで延在する。引っ掛け部83は、ハードディスクドライブ15の高さサイズに応じて、下段ロック部73と、上段ロック部71とのいずれかに選択的に係止する。
図3に示すハードディスクドライブ15は、高さの低いタイプのハードディスクドライブ15である。高さの低いタイプのハードディスクドライブ15を固定するときは、引っ掛け部83は下段ロック部73に係止される。
【0024】
図4は、
図3に示したハードディスクドライブ固定装置11の側面図である。引っ掛け部83が下段ロック部73に係止した弾性線材25は、前壁部61の近傍でハードディスクドライブ15の上面17を押下する。
【0025】
図5は、高さの高いハードディスクドライブが固定状態となって収容された実施の形態1に係るハードディスクドライブ固定装置11の斜視図である。
図5に示すハードディスクドライブ15は、高さの高いハードディスクドライブ15である。高さの高いハードディスクドライブ15を固定するときは、引っ掛け部83は上段ロック部71に係止される。
【0026】
図6は、
図5に示したハードディスクドライブ固定装置11の側面図である。引っ掛け部83が上段ロック部71に係止した弾性線材25は、高さの高いハードディスクドライブ15を固定するときとほぼ同様に、前壁部61の近傍でハードディスクドライブ15の上面17を押下する。
【0027】
図7は、ハードディスクドライブが省略された
図3に示すハードディスクドライブ固定装置11の斜視図である。弾性線材25は、引っ掛け部83の両端側が複数の曲げ部で曲げられて側壁部41の貫通穴51(
図2参照)を外側から貫通する軸端部85(
図7参照)となる。より詳細には、弾性線材25は、引っ掛け部83の両側が第1曲げ部87により後壁部63に向かって曲げられる。第1曲げ部87で曲げられた両側は、抑え部89となる。抑え部89の終端は、第2曲げ部91により側壁部41に直交する外側に曲げられた張り出し部93となる。張り出し部93の終端は、第3曲げ部95により側壁部41の外側で側壁部41と平行となって下降する下降部97となる。下降部97の終端は、第4曲げ部99により側壁部41を外側から直交方向で貫通する上述の軸端部85となる。
【0028】
したがって、弾性線材25は、引っ掛け部83と軸端部85との間に、底壁部27とでハードディスクドライブ15を挟む抑え部89が設けられることになる。
【0029】
弾性線材25は、軸端部85を中心に正回転された
図7に示す固定位置で、ハードディスクドライブ15を底壁部27とで挟んでケース本体23に固定する。これと同時に、軸端部85が側壁部41の貫通穴51から突出し、ハードディスクドライブ15に接する。より具体的には、軸端部85は、ハードディスクドライブ15の側面に形成されているねじ用の既存穴(図示略)に挿入される。一方、弾性線材25は、
図2に示すように、軸端部85を中心に逆回転された固定解除位置では、フランジ部53の傾斜部55に当たって変形することで、軸端部85がハードディスクドライブ15に接しなくなる。より具体的には、ハードディスクドライブ15の既存穴から抜ける。
【0030】
次に、上述した実施の形態1に係るハードディスクドライブ固定装置の作用を説明する。
【0031】
実施の形態1に係るハードディスクドライブ固定装置11は、被固定物を収容するケース本体23と、ケース本体23に被固定物を固定する弾性線材25と、を備える。ケース本体23は、底壁部27から起立して対向する一対の側壁部41と、この一対の側壁部41の前端同士および後端同士の間に設けられる前壁部61および後壁部63と、それぞれの側壁部41から外側に張り出すフランジ部53と、を有する。弾性線材25は、長手方向中央部が前壁部61の外側に係止する引っ掛け部83と、この引っ掛け部83の両端側が複数の曲げ部で曲げられて側壁部41を外側から貫通する軸端部85と、を有する。また、弾性線材25は、軸端部85を中心に正回転された固定位置では被固定物を底壁部27とで挟んでケース本体23に固定すると同時に軸端部85を被固定物に接続させ、軸端部85を中心に逆回転された固定解除位置ではフランジ部53を介して(例えばフランジ部53に当たって変形することで)軸端部85を被固定物から離間させる。
【0032】
実施の形態1に係るハードディスクドライブ固定装置11では、ケース本体23が、底壁部27を有する。ケース本体23は、底壁部27から起立する一対の側壁部41と、前壁部61と、後壁部63とが、ハードディスクドライブ15を収容する収容空間101(
図2参照)を囲む。ケース本体23は、これら各部位が樹脂材料等により一体的に成形される。
【0033】
収容空間101に収容されたハードディスクドライブ15は、底壁部27の凸板部33、凸条部37および湾曲台部47に載置されるとともに、底壁部27と平行な方向の移動が、一対の側壁部41、前壁部61、後壁部63および袖壁部81によって規制される。ケース本体23の収容空間101に挿入されたハードディスクドライブ15は、底壁部27に垂直な方向の厚みが、側壁部41、前壁部61および後壁部63の起立高さよりも大きい。したがって、ハードディスクドライブ15は、上部が収容空間101から突出する。
【0034】
上部が収容空間101から突出したハードディスクドライブ15は、弾性線材25によってケース本体23に固定される。弾性線材25は、長手方向中央部の引っ掛け部83が、前壁部61の外側に係止する。弾性線材25は、この引っ掛け部83の両端側が、複数の曲げ部で曲げられて、側壁部41を外側から貫通する2つの軸端部85となる。
【0035】
弾性線材25は、一対の側壁部41のそれぞれを外側から貫通した軸端部85を中心に回転可能となる。つまり、引っ掛け部83は、回転半径方向の外側の端(回転半径の外端)となる。
【0036】
図8は、弾性線材25が固定解除位置から固定位置へ移動するときの動作説明図である。弾性線材25は、両側の軸端部85を中心に正回転(例えば矢印A方向)されると、引っ掛け部83が前壁部61に引っ掛かる固定位置となる。この固定位置では、弾性線材25が弾性変形し、収容空間101から突出したハードディスクドライブ15の上面17を押下する。弾性線材25に上面17が押下されたハードディスクドライブ15は、この弾性線材25と底壁部27とで挟まれてケース本体23に固定される。
【0037】
同時に、固定位置となった弾性線材25は、一対の側壁部41のそれぞれから外側に張り出すフランジ部53の傾斜部55に矢印B方向で摺接した後、フランジ部53と干渉しなくなる。弾性線材25は、フランジ部53と干渉しなくなることにより、拡開形状から元の形状に戻る。その結果、弾性線材25は、軸端部85が側壁部41を貫通する方向(矢印C方向)に移動する。移動した軸端部85は、側壁部41から収容空間101に突出し、収容空間101に収容されているハードディスクドライブ15のねじ固定用の既存穴に挿入される。
【0038】
これにより、ハードディスクドライブ15は、底壁部27と弾性線材25とにより、弾性線材25に蓄積された所定の弾性復元力で挟まれる。また、ハードディスクドライブ15は、一対の側壁部41、前壁部61および後壁部63により底壁部27と平行な方向の移動が規制される。さらに、ハードディスクドライブ15は、既存穴に軸端部85が挿入されるので、軸端部85の大きな剪断強度を利用でき、しっかりとした固定が実現する。
【0039】
一方、ハードディスクドライブ固定装置11は、ハードディスクドライブ15の取り外し時、弾性線材25の引っ掛け部83が前壁部61から外される。弾性線材25は、両側の軸端部85を中心に逆回転されると、引っ掛け部83がハードディスクドライブ15の上方に離間するように起立する。ハードディスクドライブ15は、弾性線材25が上方に移動すると、弾性線材25による上面17の押圧が解除される。この際、同時に、弾性線材25は、逆回転に伴って一対のフランジ部53の傾斜部55が内側に干渉する。一対のフランジ部53の傾斜部55が内側に干渉した弾性線材25は、両側の下降部97が離間する外方向に開き、両側の軸端部85がハードディスクドライブ15の既存穴から抜去される。つまり、ハードディスクドライブ固定装置11は、ハードディスクドライブ15の上面押圧の解除と、既存穴からの軸端部85の抜去とが、弾性線材25の回転動作のみで一度に行われる。
【0040】
このように、ハードディスクドライブ固定装置11では、弾性線材25の回転操作のみで、ハードディスクドライブ15が容易に着脱可能となる。また、ハードディスクドライブ固定装置11は、一体成形品のケース本体23と、線材を折り曲げたのみの弾性線材25との2部品を用いて簡素に構成できる。このため、部材コストを安価にできる。さらに、ハードディスクドライブ固定装置11では、弾性線材25と底壁部27とによる押圧挟持と、側壁部41、前壁部61および後壁部63の嵌合構造と、に加え、ハードディスクドライブ15の両側面の既存穴に軸端部85を挿入することで、ハードディスクドライブ15のがたつきのない、高強度な固定、すなわち、安定した固定を実現できる。
【0041】
また、ハードディスクドライブ固定装置11において、前壁部61には、引っ掛け部83を係止する第1ロック部(例えば下段ロック部73)と、引っ掛け部83を係止するとともに底壁部27を基準とした上下方向において第1ロック部よりも上部に配置される第2ロック部(例えば上段ロック部71)と、が少なくとも設けられている。
【0042】
このハードディスクドライブ固定装置11では、弾性線材25が、長手方向両側の軸端部85を中心に回転されると、回転半径の外端となる引っ掛け部83が前壁部61に外側から係止する。この係止は、前壁部61から前方に向かって突出する爪形状のロック部によって可能となる。
【0043】
ロック部は、例えば前壁部61の中央部において、上端から底壁部27に向かって縦方向に切り込まれた一対のスリット65の間に挟まれる弾性可撓片部67の外側に形成される。弾性可撓片部67は、前壁部61の他の部分よりも高く形成することができる。スリット65に挟まれた弾性可撓片部67は、ほぼ下端のみが底壁部27と接続され、この接続部分を中心に、上端が、収容空間101に対して内外方向に弾性変形により揺動可能となる。
【0044】
ロック部は、上端から前方に向かって下り傾斜となる案内面75と、この案内面75から底壁部27と平行な方向で弾性可撓片部67に向かう係止面77と、からなる。
【0045】
弾性線材25は、軸端部85を中心に正回転されると、引っ掛け部83が案内面75に上方より接触する。弾性線材25は、さらに正回転されると、案内面75を押圧することにより、弾性可撓片部67を収容空間101へ向かう方向へ撓ませる。これにより、撓められた弾性可撓片部67には、弾性力が蓄積される。
【0046】
弾性線材25は、引っ掛け部83が案内面75の下端に達すると、弾性復元力により弾性可撓片部67が撓む前の起立位置に戻ることで、引っ掛け部83が係止面77の下側に入り込む。これにより、弾性線材25は、長手方向両側の軸端部85が側壁部41およびハードディスクドライブ15に支持されるとともに、長手方向中央部の引っ掛け部83がロック部に係止して、収容空間101から突出したハードディスクドライブ15を底壁部27に向けて押さえ込むようにして固定する。
【0047】
ここで、ハードディスクドライブ15は、底壁部27に垂直な方向である高さ(厚み)の異なる複数種のバリエーションを有する。ロック部は、この異なる高さのハードディスクドライブ15に応じ上下方向異なる位置に2箇所以上で設けられる。
【0048】
したがって、ハードディスクドライブ固定装置11は、高さの低いハードディスクドライブ15に対しては、下側のロック部(下段ロック部73)に引っ掛け部83が係止することで、低いハードディスクドライブ15を底壁部27に向けて押さえ込むことができる。また、ハードディスクドライブ固定装置11は、高さの高いハードディスクドライブ15に対しては、上側のロック部(上段ロック部71)に引っ掛け部83が係止することで、高いハードディスクドライブ15を底壁部27に向けて押さえ込むことができる。
【0049】
ハードディスクドライブ固定装置11では、このようにハードディスクドライブ15の厚みに応じて異なる高さのロック部に引っ掛け部83が係止することにより、異なる厚みのハードディスクドライブ15であっても一定の弾性復元力で押圧挟持することができる。つまり、ハードディスクドライブ固定装置11は、異なる高さのハードディスクドライブ15に、1種類で対応することができる。
【0050】
また、ハードディスクドライブ固定装置11において、弾性線材25には、引っ掛け部83と軸端部85との間に設けられ、底壁部27との間で被固定物を挟む抑え部89が設けられている。
【0051】
このハードディスクドライブ固定装置11では、弾性線材25が、引っ掛け部83と軸端部85との間に、抑え部89を有する。弾性線材25は、長手方向中央部が引っ掛け部83となる。引っ掛け部83は、弾性可撓片部67の両側に入れられた一対のスリット65の間隔よりも若干大きく形成される。つまり、一対のスリット65の外側に両端が位置する。弾性線材25は、この引っ掛け部83の両端から後壁部63に向かって折り曲げられる。
【0052】
引っ掛け部83の両端から折り曲げられた弾性線材25の両側は、左右の側壁部41に徐々に接近する方向となる。より具体的には、弾性線材25の両側は、側壁部41に接近した位置で、側壁部41にほぼ直交する向きで張り出し部93が外側に曲げられて側壁部41の外側に至る。側壁部41の外側となった弾性線材25は、今度は、側壁部41に沿って下降部97が底壁部27に向かう下向きに曲げられ、最終的には、側壁部41に外側から貫通する向きで直角に曲げられて軸端部85となる。
【0053】
弾性線材25は、このような複数箇所で曲げられることにより、引っ掛け部83と、下降部97と、軸端部85とを除く他の部分が、ハードディスクドライブ15の上面17に接触するように形成される。弾性線材25は、他の部分の全てがハードディスクドライブ15の上面17に接する必要はなく、一部分若しくは複数部分で接触してもよい。弾性線材25は、このハードディスクドライブ15に接触する部分が抑え部89となる。
【0054】
抑え部89は、引っ掛け部83の両側から後壁部63に向かって拡開しながら側壁部41へ接近するので、その間の任意の位置でハードディスクドライブ15に接することが可能となる。これにより、弾性線材25における両側一対の抑え部89は、例えばハードディスクドライブ15の上面17が、左右で異なる起伏形状であっても、任意の位置で柔軟にハードディスクドライブ15と接触して、ハードディスクドライブ15を押さえ込むことができる。
【0055】
また、実施の形態1に係る記憶装置13は、固定装置(例えばハードディスクドライブ固定装置11)と、この固定装置(例えばハードディスクドライブ固定装置11)に固定される被固定物である記憶媒体(例えばハードディスクドライブ)と、を備える。
【0056】
実施の形態1に係る記憶装置13では、記憶装置13の筐体に、ハードディスクドライブ固定装置11が取り付けられる。ハードディスクドライブ固定装置11には、ハードディスクドライブ15が固定される。つまり、ハードディスクドライブ15は、ハードディスクドライブ固定装置11を介して記憶装置13の筐体に固定される。
【0057】
記憶装置13は、筐体に取り付けられたハードディスクドライブ固定装置11に、ハードディスクドライブ15が固定されることにより、弾性線材25の回転操作のみで、ハードディスクドライブ15が容易に着脱可能となる。また、記憶装置13は、ハードディスクドライブ固定装置11が簡素に構成されているので、部材コストを安価にできる。さらに、記憶装置13では、ハードディスクドライブ固定装置11が、弾性線材25と底壁部27とによる押圧挟持と、側壁部41、前壁部61および後壁部63の嵌合構造と、に加え、ハードディスクドライブ15の両側面の既存穴に軸端部85を挿入することで、ハードディスクドライブ15のがたつきのない、高強度な固定、すなわち、安定した固定を実現できる。
【0058】
したがって、実施の形態1に係るハードディスクドライブ固定装置11および記憶装置13によれば、ハードディスクドライブ15の着脱が容易に行え、安価な部材コストでハードディスクドライブ15の安定した固定が可能となる。
【0059】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本開示は、被固定物の着脱を容易に行い、安価な部材コストで被固定物の安定した固定を実現する固定装置及び記憶装置として有用である。
【符号の説明】
【0061】
11 ハードディスクドライブ固定装置
13 記憶装置
15 ハードディスクドライブ(被固定物)
23 ケース本体
25 弾性線材
27 底壁部
41 側壁部
53 フランジ部
61 前壁部
63 後壁部
71 上段ロック部(ロック部)
73 下段ロック部(ロック部)
83 引っ掛け部
85 軸端部
87 第1曲げ部(曲げ部)
89 抑え部
91 第2曲げ部(曲げ部)
95 第3曲げ部(曲げ部)
99 第4曲げ部(曲げ部)