(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168973
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】枚葉フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
B26D 7/18 20060101AFI20231121BHJP
B26F 1/40 20060101ALI20231121BHJP
B26F 1/38 20060101ALI20231121BHJP
B26D 3/00 20060101ALI20231121BHJP
B26F 1/44 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
B26D7/18 F
B26F1/40 B
B26F1/38 A
B26D3/00 601B
B26F1/44 G
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080401
(22)【出願日】2022-05-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平岡 慎哉
【テーマコード(参考)】
3C021
3C060
【Fターム(参考)】
3C021FD04
3C021FD05
3C060AA04
3C060AB01
3C060BA03
3C060BB05
3C060BC04
3C060BD01
3C060BD04
3C060BG07
3C060BG16
3C060BG17
(57)【要約】
【課題】 第1フィルムと粘着剤層と第2フィルムとを有する原反を切断した後、不要部分を引き出して除去する際に、粘着剤の糸引きを防止する。
【解決手段】 第1フィルムと粘着剤層と第2フィルムとを有する長尺帯状の原反1を長手方向下流側に搬送し、前記原反1を切断刃51で切断して複数の枚葉フィルム2を得る方法において、前記原反1を、複数の枚葉フィルム2と、前記各枚葉フィルム2の周囲に残存する平面視網目状の不要部分3と、に区画するように切断し、前記切断の直後に、前記不要部分3を引き出して除去する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1フィルムと粘着剤層と第2フィルムとを有する長尺帯状の原反を長手方向下流側に搬送し、前記原反を切断刃で切断して複数の枚葉フィルムを得る方法において、
前記原反を、複数の枚葉フィルムと、前記各枚葉フィルムの周囲に残存する平面視網目状の不要部分と、に区画するように切断し、
前記切断の直後に、前記不要部分を引き出して除去する、
枚葉フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記複数の枚葉フィルムと不要部分に区画された原反を、最下流側の切断位置から300cm以内に搬送するまでに、前記不要部分を引き出して除去する、請求項1に記載の枚葉フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記原反の第1フィルムが、偏光フィルムを含む、請求項1または2に記載の枚葉フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤層を含む原反を切断し、複数の枚葉フィルムを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つのフィルムの間に粘着剤層を有する製品が様々な用途に使用されている。
例えば、粘着剤層を有する光学フィルムは、画像表示装置などの画面に合わせた所定の平面視形状に形成され、画像表示装置などの画面に組み込まれる。本明細書において、所定形状に形成されたフィルムを「枚葉フィルム」という。
前記枚葉フィルムは、一般に、フィルム/粘着剤層/フィルムを有する長尺帯状の原反から切り出すことによって得られる。切り出された枚葉フィルムは、そのまま製品として用いられ、或いは、さらに、任意の切断加工などを行った上で製品として用いられる。
例えば、特許文献1には、光学フィルムと粘着剤層とセパレーターフィルム(はく離ライナー)とを有する光学フィルム原反を切断して、前記光学フィルム原反の面内を、長手方向に延びる複数の縦帯と短手方向に延びる複数の横帯とを有する切断残余部と、前記縦帯と横帯で囲われた前記フィルム製品と、に区画する工程、前記光学フィルム原反を搬送する途中で前記切断残余部を引き出すことにより、前記フィルム製品と分離して前記切断残余部を除去する工程、を有し、前記フィルム製品が浮き上がらないように押さえ且つ前記切断残余部の縦帯を押さえることなく、前記切断残余部を引き出して除去するフィルム製品の製造方法が開示されている。
【0003】
特許文献1の方法によれば、切断残余部を引き出す際にフィルム製品が切断残余部に追従することがなく、切断残余部をフィルム製品から確実に分離して除去できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
ところで、2つのフィルムの間に粘着剤層が設けられている原反を切断すると、切断線において生じる2つの切断端面が向かい合っている。このため、前記切断端面において粘着剤層の粘着剤が付着するおそれがある。切断後に粘着剤が付着すると、切断残余部(不要部分)を引き出した際に、付着した粘着剤が糸のように伸ばされた後に引き千切られる。このため、糸のように引き伸ばされた粘着剤が、枚葉フィルムの表面などに付着し、枚葉フィルムやその周辺が粘着剤で汚れるおそれがある。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、第1フィルムと粘着剤層と第2フィルムとを有する原反を切断した後、不要部分を除去する際に、粘着剤の糸引きを防止できる、枚葉フィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1フィルムと粘着剤層と第2フィルムとを有する長尺帯状の原反を長手方向下流側に搬送し、前記原反を切断刃で切断して複数の枚葉フィルムを得る方法において、前記原反を、複数の枚葉フィルムと、前記各枚葉フィルムの周囲に残存する平面視網目状の不要部分と、に区画するように切断し、前記切断の直後に、前記不要部分を引き出して除去する。
【0008】
本発明の好ましい製造方法は、前記複数の枚葉フィルムと不要部分に区画された原反を、最下流側の切断位置から300cm以内に搬送するまでに、前記不要部分を引き出して除去する。
本発明の好ましい製造方法は、前記原反の第1フィルムが、偏光フィルムを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、不要部分と枚葉フィルムの切断端面において粘着剤が付着し難く、不要部分を引き出した際に、粘着剤の糸引きが生じることを防止できる。よって、本発明によれば、枚葉フィルムやその周辺が粘着剤によって汚れることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図8】枚葉フィルムと不要部分とに区画された原反の平面図。
【
図11】原反を切断刃で切断するときの状態を示す拡大断面図。
【
図12】不要部分と枚葉フィルムに区画された原反から不要部分を除去するときの状態を示す拡大断面図。
【
図13】粘着剤の糸引きが生じる原理を説明した参考図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「平面視」は、対象物の面に対して鉛直方向から見ることをいい、「平面視形状」及び「平面図」は、対象物の面に対して鉛直方向から見たときの対象物の形状及び図面をいう。
また、本明細書において、「略」という表現は、本発明の技術分野で許容される範囲を含むことを意味する。さらに、本明細書において、「下限値以上上限値以下」で表される数値範囲が別個に複数記載されている場合、任意の下限値と任意の上限値を選択できるものとする。
【0012】
[枚葉フィルムの製造装置]
図5及び
図6は、枚葉フィルム2の製造装置Aを示す。
図5及び
図6を参照して、製造装置Aは、原反1や枚葉フィルム2を搬送する搬送部Bと、前記原反1を複数の枚葉フィルム2と平面視網目状の不要部分3とに切断する切断処理部Cと、前記不要部分3を除去する除去部Dと、集積部Eと、を有する。
【0013】
<原反>
本発明の製造装置Aは、長尺帯状の原反1の面内を切断し、不要部分3を除去して枚葉フィルム2を得るものである。
原反1は、通常、
図1に示すような、長尺帯状である。ただし、
図1では、長尺帯状の原反1の長手方向一方側を省略している。原反1は、ロール状に巻かれた状態で、原反送り部の巻き出し部41にセットされる。ここで、本明細書において、長尺帯状は、長手方向の長さが短手方向よりも十分に長い平面視略長方形状をいう。原反1の長手方向の長さは、例えば、5m以上であり、好ましくは、長手方向の長さが10m以上である。なお、短手方向は、長手方向と直交する方向である。
【0014】
原反1から得られた枚葉フィルム2は、
図2に示すように、平面視で所定形状に形成されている。つまり、枚葉フィルム2は、原反1から所定形状に形成されたフィルムである。
図2では、平面視略長方形を成した枚葉状の枚葉フィルム2を図示している。枚葉フィルム2の平面視形状は、特に限定されない。例えば、枚葉フィルム2の平面視形状は、略矩形状(略矩形状は、略長方形状又は略正方形状)、略三角形状、略六角形状などの略多角形状、略円形状、略楕円形状、これらの形状が組み合わされた形状、又は、任意の異形状などが挙げられる。略矩形状、略三角形状及び略多角形状の「略」は、例えば、角部が面取りされている形状、辺の一部が僅かに膨らむ又は窪んでいる形状、辺が若干湾曲している形状などが含まれる。また、略円形状及び略楕円形状の「略」は、例えば、周の一部が僅かに膨らむ又は窪んでいる形状、周の一部が若干直線又は斜線とされた形状などが含まれる。
【0015】
枚葉フィルム2は、最終的な製品又は製品の中間体となる。前記製品の中間体は、製品を作製する途中のものであり、その中間体を更に切断及び/又は表面処理などの適切な加工を施すことにより、製品が得られる。
前記製品の用途は、特に限定されない。枚葉フィルム2から得られる製品は、例えば、画像表示装置の画面やサングラスのレンズなどに組み込む光学的部品又は機械的部品;タックラベルなどのシール材;ラッピングフィルムなどの包装材;電磁波シールドなどの電気的部品;などが挙げられる。特に、高い清潔性が要求されることから、光学的部品用途の製品を形成するために、本発明の方法を適用することが好ましい。
【0016】
層構成の観点では、原反1は、第1フィルムと、第2フィルムと、前記第1フィルムと第2フィルムの間に設けられた粘着剤層と、を有する。枚葉フィルム2の層構成も原反1の層構成と同じであり、枚葉フィルム2も、第1フィルムと、第2フィルムと、前記第1フィルムと第2フィルムの間に設けられた粘着剤層と、を有する。枚葉フィルム2の層構成は、原反1の層構成と同じであるため、原反1の層構成を説明し、枚葉フィルム2の層構成の説明は省略する。
原反1は、第1フィルム/粘着剤層/第2フィルムの積層構造を有することを条件として、さらに、別のフィルムや層を有していてもよい。
【0017】
以下、光学的部品用途の原反1の層構成例のいくつかを例示的に説明する。
図3は、原反1の1つの層構成例を示す側面図であり、
図4は、原反1の他の層構成例を示す側面図である。
図3に示す原反1は、表面側から順に、第1フィルム11と、粘着剤層15と、第2フィルム12と、を有する。原反1の周囲において、前記第1フィルム11及び第2フィルム12の各端面11a,12aと前記粘着剤層15の端面15aは平行に延在している。換言すると、第1フィルム11の端面11aと粘着剤層15の端面15aと第2フィルム12の端面12aは、連続して1つの平面を成している。従って、原反1の端面は、第1フィルム11、粘着剤層15及び第2フィルム12の各端面11a,15a,12aの集合から構成されている。なお、本明細書において、端面は、厚み方向に沿った面であり、表面及び裏面は、厚み方向と直交する面である。
図4に示す原反1は、表面側から順に、第3フィルム13と、第1の粘着剤層151と、第1フィルム11と、第2の粘着剤層152と、第2フィルム12と、を有する。原反1の周囲において、前記第1乃至第3フィルム11,12,13の各端面11a,12a,13aと前記第1及び第2の粘着剤層151,152の各端面151a,152aは平行に延在している。換言すると、各フィルム11,12,13の端面11a,12a,13aと各粘着剤層151,152の各端面151a,152aは、連続して1つの平面を成している。
その他、図示しないが、原反1は、さらに他のフィルム及び/又は粘着剤層を有していてもよい。前記他のフィルム及び/又は粘着剤層を有する原反1についても、各フィルムの端面と各粘着剤層の端面は、連続して1つの平面を成している。
【0018】
光学的部品用途の原反1は、光学フィルムを含んでいる。この場合、第1フィルム11などの全てのフィルムが光学フィルムであってもよく、或いは、複数のフィルムから選ばれる少なくとも1つのフィルムが光学フィルムで且つ少なくとも1つのフィルムが光学フィルム以外のフィルムであってもよい。
図3に示す層構成では、例えば、第1フィルム11が、光学フィルムであり、第2フィルム12がはく離ライナー(光学フィルム以外のフィルム)であり、
図4に示す層構成では、例えば、第1フィルム11及び第3フィルム13が、光学フィルムであり、第2フィルム12がはく離ライナーである。
図3では、例えば、第1フィルム11として後述する光学機能フィルムが用いられる。
図4では、例えば、第1フィルム11として後述する光学機能フィルムが用いられ、第3フィルム13として後述する保護フィルムが用いられる。はく離ライナーは、粘着剤層15,152に対してはく離可能に接着されている。従って、はく離ライナーと粘着剤層15,152は、それらの界面においてはく離できるが、光学フィルムと粘着剤層15,152は、はく離困難である。使用時には、はく離ライナーは、引き剥がして除去される。なお、
図4の第3フィルム13が保護フィルムである場合、その第3フィルム13が粘着剤層151を伴って第1フィルム11から剥離できるようにしてもよく、或いは、第3フィルム13が第1フィルム11から剥離困難な状態で粘着剤層151を介して接着されていてもよい。
【0019】
光学フィルムとしては、光学機能フィルム、保護フィルムなどが挙げられる。光学フィルムは、1層構造でもよく、或いは、2層以上の複層構造であってもよい。光学フィルムが2層以上の複層構造である場合、同一の機能を有するフィルムを2層以上積層した積層体でもよく、異なる機能を有するフィルムを2層以上積層した積層体でもよい。前記異なる機能を有するフィルムの積層体としては、例えば、偏光フィルムと位相差フィルムの積層体、偏光フィルムと保護フィルムの積層体などが挙げられる。
前記光学機能フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム、輝度向上フィルム、防眩フィルム、光反射フィルムなどが挙げられる。偏光フィルムは、特定の1つの方向に振動する光(偏光)を透過し、それ以外の方向に振動する光を遮断する性質を有するフィルムである。位相差フィルムは、光学異方性を示すフィルムであり、代表的には、例えば、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂などの延伸フィルムなどが挙げられる。また、保護フィルムは、前記光学機能フィルムを保護する目的で用いられるフィルムである。保護フィルムとしては、典型的には、無色透明なフィルムが用いられる。
光学フィルムの厚みは、特に限定されず、例えば、5μm以上300μm以下である。
【0020】
はく離ライナーは、前記粘着剤層に対してはく離性に優れた離型面を有する。
はく離ライナーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルム;紙;織布、不織布、網布などの多孔質フィルム;発泡樹脂フィルム;などが挙げられる。表面平滑性に優れていることから、はく離ライナーは、樹脂フィルムであることが好ましい。前記樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルムなどが挙げられる。
前記はく離ライナーの厚みは、特に限定されず、例えば、5μm以上200μm以下であり、好ましくは10μm以上100μm以下である。
【0021】
粘着剤層は、常温で粘着性を有し且つはく離後も粘着性が持続して再貼付可能なものである。粘着剤層は、公知の粘着剤によって構成される。前記粘着剤としては、無色透明なアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などが挙げられる。
特に、比較的軟らかい粘着剤によって形成された粘着剤層を有する原反1に、本発明の方法を適用することが効果的である。
粘着剤の硬さは、例えば、貯蔵弾性率G’で指標することができる。前記軟らかい粘着剤としては、例えば、25℃における貯蔵弾性率G’が、0.001MPa以上1MPa以下であり、好ましくは、0.01MPa以上1MPa以下である。前記貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定によって測定できる。具体的には、粘着剤層を、動的粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント社製の装置名「ARES」)を用いて、周波数1Hzの条件で、-20~100℃の温度範囲、昇温速度5℃/分で測定して、25℃における貯蔵弾性率G’を算出できる。
前記粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上50μm以下であり、好ましくは1μm以上30μm以下である。
【0022】
<搬送部>
図5及び
図6を参照して、製造装置Aの搬送部Bは、原反1を搬送する原反送り部と、切断前後の原反1及び複数の枚葉フィルム2を搬送する少なくとも1つのコンベアベルトと、を有する。前記原反送り部は、ロールに巻かれた原反1が装填された巻き出し部41と、原反1を案内するガイドローラ42と、駆動装置(図示せず)と、を有する。前記原反送り部は、巻き出し部41から原反1を巻き出し、その原反1を長手方向上流側から下流側へと搬送する。なお、原反1の長手方向と搬送方向は、同じ方向であり、原反1の短手方向と幅方向は、同じ方向である。
また、第1コンベアベルト43は、切断前後の原反1を載せて搬送する。その第1コンベアベルト43の途中の上方には、切断処理部Cが配置され、さらに、切断処理部Cの直ぐ下流側には、除去部Dが配置されている。第2コンベアベルト44は、複数の枚葉フィルム2を載せて搬送する。第2コンベアベルト44の下流側には、枚葉フィルム2を集める集積部Eが配置されている。なお、第1コンベアベルト43の端部と第2コンベアベルト44の端部の間には、橋渡し板45が設けられている。
【0023】
<切断処理部>
図5及び
図6を参照して、切断処理部Cは、カッター装置を有する。カッター装置は、切断刃51と、ベース板52と、を有する。
また、切断刃51に対向して、受け台53が設けられている。受け台53は、例えば、強度に優れた鋼板などが用いられる。前記受け台53は、製造装置Aのフレーム(図示せず)などに固定されている。前記受け台53は、第1コンベアベルト43の裏面側に配置される。第1コンベアベルト43は、切断前後の原反1を搬送する機能の他、刃受け部材としても機能する。刃受け部材は、切断刃51の刃先を受ける部材を意味する。原反1の切断時に、原反1の裏面側に出た切断刃51の刃先が、第1コンベアベルト43に食い込むことにより、原反1を確実に切断でき且つ切断刃51の刃先が劣化することを防止できる。このような刃受け部材としても機能する第1コンベアベルト43としては、切断刃51の刃先を受け入れることができる柔軟性を有し、さらに、前記刃先が進入しても破断しない程度の強度及び厚みを有するシートが用いられる。例えば、第1コンベアベルト43としては、合成樹脂製シート、ゴム製シート、不織布などを用いることができる。
なお、特許文献1(特開2021-164984号)に開示されているように、コンベアベルトとは独立した刃受けシートを別に設けてもよい。
【0024】
前記切断刃51は、ベース板52に設けられている。ベース板52は、平坦状であり、そのベース板52に、切断刃51が固定的に設けられている。カッター装置(切断刃51)は、図示しない駆動装置によって、原反1の表面に対して鉛直方向に進行し且つ退出される。図示例のカッター装置は、上下方向に出退する。カッター装置は、下降することによって原反1を打ち抜き、上昇することによって原反1から離れる、打ち抜き方式のカッターである。このようなカッター装置としては、代表的には、トムソン刃を用いることができる。
なお、カッター装置は、打ち抜き方式に限られず、例えば、ロータリーダイを用いてもよい(図示せず)。また、カッター装置は、原反1を厚み方向に切断できるものであればよく、上記打ち抜き方式やロータリーダイなどの回転式に限定されるわけではない。
【0025】
図7は、切断刃51を含むカッター装置の拡大斜視図である。
図7のカッター装置は、
図6のカッター装置を下方側から見た斜視図であり、
図7の紙面上側は、
図6の紙面下側に対応することに留意されたい。また、
図7には、切断刃51の立体的な形状を部分的に示した拡大図を併記している。
図7において、ベース板52の表面には、切断刃51が突設されている。一般的には、1度の下降によって、同時に複数の枚葉フィルム2を打ち抜くために、1つのベース板52に複数の切断刃51が設けられる。前記各切断刃51は、平面視で無端環状であり、原反1の搬送方向及び幅方向に一定間隔を開けて設けられている。
なお、図示例では、原反1の搬送方向に2列、幅方向に4列の切断刃51が配置されているが、切断刃51の数は、これに限定されるわけではない。また、切断刃51の平面視形状は、図示例のような略長方形状に限られず、形成したい枚葉フィルム2の形状に応じて設定される。
切断刃51の刃先51aの角度αは、特に限定されず、例えば、10度以上100度以下であり、好ましくは、20度以上90度以下である。前記刃先51aの角度αが前記範囲内であることにより、不要部分3と枚葉フィルム2の切断端面において粘着剤が再付着することを防止できる。
【0026】
切断処理部Cにおいて、カッター装置の切断刃51を、原反1の表面側から原反1に押し当てることにより、原反1の面内に、切断刃51の平面視形状と同形状の切断線が生じる。この切断線で囲われた内側部分が、枚葉フィルム2となり、その切断線の外側部分が、不要部分3となる。
図8は、枚葉フィルム2と不要部分3に区画された原反1を示す平面図である。枚葉フィルム2と不要部分3を区別し易くするため、不要部分3に無数のドットを付している。
図8に示すように、切断された原反1の面内は、複数の枚葉フィルム2と平面視網目状の不要部分3とに区画されている。
前記不要部分3は、搬送方向に帯状に延びる複数の縦帯3aと、幅方向の帯状に延びる複数の横帯3bと、から構成される。このような縦帯3a及び横帯3bからなる不要部分3は、平面視格子状を成している。なお、不要部分3は、平面視網目状であることを条件として、平面視格子状に限られず、例えば、斜め格子状などであってもよい。
【0027】
<除去部>
除去部Dは、切断処理部Cにて原反1の面内に形成された枚葉フィルム2(切断線で囲われた部分)の周りに残存する不要部分3を除去する。
図9は、搬送方向下流側から除去部Dを見た拡大正面図であり、
図10は、切断処理部C及び除去部Dを搬送方向に沿って切断した拡大断面図である。
図5、
図6、
図9及び
図10を参照して、除去部Dは、前記不要部分3と前記枚葉フィルム2を分離するための分離部材61と、前記不要部分3を巻き取る回収ローラ62と、を有し、必要に応じて、ガイドローラ63をさらに有する。
分離部材61は、原反1の幅方向に延在する棒状体からなり、例えば、円柱体から構成されている。なお、分離部材61として、特許文献1に開示された、押さえ部と非押さえ部とを有する分離部材を用いてもよい。
【0028】
分離部材61は、不要部分3と枚葉フィルム2に区画された原反1の表面に接するように配置されている。切断処理部Cにおいて、原反1は不要部分3と枚葉フィルム2に区画された後、第1コンベアベルト43によって除去部Dに搬送される。
具体的には、第1コンベアベルト43に載った状態で、複数の枚葉フィルム2と不要部分3に区画された原反1が下流側に搬送される。その搬送途中の原反1に接するように、分離部材61が配置されている。
不要部分3を分離部材61の周面に沿って引き出すことにより、不要部分3が、切断線を境に隣接する枚葉フィルム2から分離する。以下、不要部分3を引き出した際に、不要部分3と枚葉フィルム2が分離するポイントを「分離点」という。
不要部分3は、カッター装置による原反1の切断によって生じる。本発明者らの知見によれば、原反1を切断後、可及的速やかに不要部分3を除去することにより、粘着剤の糸引きを防止できる。そのため、前記分離点が最下流側の切断位置から300cm以内となるように、前記分離部材61を配置することが好ましく、さらに、前記分離点が最下流側の切断位置から250cm以内となるように、前記分離部材61を配置することがより好ましい。前記最下流側の切断位置は、
図10に示すように、切断刃51で原反1を切断したときの、最も下流側(この下流側は原反1の搬送方向下流側を意味する)にある切断位置をいう。
図10に、最下流側の切断位置から分離点までの距離を符号L1で示す。
なお、原反1の切断時から不要部分3の引き出し時までの時間は、前記距離L1と原反1の搬送速度から求めることができる。
【0029】
<集積部>
集積部Eは、前記除去部Dにおいて不要部分3を除去することによって得られる枚葉フィルム2を集める。
例えば、集積部Eには、コンテナ71が配置されており、第2コンベアベルト44にて搬送される枚葉フィルム2は、コンテナ71内に順次収容される。
コンテナ71内に集積された枚葉フィルム2は、必要に応じて、切断及び/又は任意の適切な加工をすることにより、製品が得られる。
【0030】
[枚葉フィルムの製造方法]
本発明の枚葉フィルム2の製造方法は、第1フィルムと粘着剤層と第2フィルムとを有する長尺帯状の原反1を長手方向下流側に搬送し、前記原反1を、複数の枚葉フィルム2と、前記各枚葉フィルム2の周囲に残存する平面視網目状の不要部分3と、に区画するように切断する。本発明においては、前記原反1の切断の直後に、前記不要部分3を引き出して除去することを特徴とする。
【0031】
図10に示すように原反1の上方にあるベース板52を下降させ、切断刃51で原反1を切断する(
図11参照)。
次に、
図12に示すように、ベース板52を上昇させ、切断刃51を原反1から抜き出す。切断刃51で切断された原反1は、複数の枚葉フィルム2と平面視網目状の不要部分3とに区画される。この枚葉フィルム2と不要部分3に区画された原反1を第1コンベアベルト43にて下流側に搬送し、分離部材61において不要部分3を引き出して除去する。引き出した不要部分3は、回収ローラ62に巻き取られる。不要部分3の引き出しは、原反1の切断の直後に行なわれる。例えば、上記<切断処理部>の欄の分離部材61の配置により、枚葉フィルム2と不要部分3に区画された原反1を、最下流側の切断位置から300cm以内(好ましくは250cm以内)に搬送するまでに、不要部分3を引き出すことが好ましい。
不要部分3の引き出しは、前記原反1の搬送と同期して行なわれる。従って、不要部分3の引き出し速度と原反1の搬送速度は、同じである。例えば、原反1の搬送速度は、1m/分以上であり、好ましくは、2m/分以上である。なお、原反1の搬送速度は、切断端面において粘着剤が再付着することを防止する観点から、できるだけ速い方が好ましいためその上限は特にないが、ライン全体の処理を考慮して、搬送速度の上限は設定される。
【0032】
本実施形態のように、打ち抜き方式のカッター装置を用いた場合には、カッター装置の1度の下降によって切断される範囲に略相当する長さ分だけ、原反1を搬送する。例えば、カッター装置の1度の下降によって、横帯3b(不要部分3の一部分)の間に2つの枚葉フィルム2が形成される場合には、それらに略相当する長さ分だけ搬送する。この1度の搬送長さL2は、
図12に示すように、1つの横帯3bの搬送方向長さ+1つの枚葉フィルム2の搬送方向長さ+1つの横帯3bの搬送方向長さ+1つの枚葉フィルム2の搬送方向長さ、に等しい。
前記1度の搬送長さ分だけの原反1の搬送及び不要部分3の引き出しを行なった後、原反1の搬送及び不要部分3の引き出しを一時停止すると、
図10に示すような状態となる。
事後、
図11に示すカッター装置の下降と、
図12に示す切断後の原反1の搬送及び不要部分3の引き出し除去と、搬送及び引き出しの一時停止と、を1つのサイクルとして繰り返していく。
不要部分3を除去した後に残る複数の枚葉フィルム2は、第2コンベアベルト44にて下流側に搬送される。なお、第2コンベアベルト44は、原反1の搬送に同期して、枚葉フィルム2の搬送と一時停止を繰り返してもよく、或いは、停止することなく枚葉フィルム2を連続的に搬送してもよい。
【0033】
本発明のように、原反1を切断した直後に不要部分3を除去することにより、粘着剤の糸引きを防止できる。
詳しくは、原反1を切断し、原反1を不要部分3と枚葉フィルム2に区画すると、
図13(a)に示すように、不要部分3の切断端面3Xと枚葉フィルム2の切断端面2Xが向かい合った状態となる。この状態の原反1をコンベアベルトなどで搬送すると、装置の振動などによって粘着剤が膨出し、同図(b)に示すように、不要部分3の粘着剤層31の切断端面31Xと枚葉フィルム2の粘着剤層21の切断端面21Xが付着する場合がある。このように粘着剤が付着した状態で、不要部分3を引き出すと、同図(c)に示すように、粘着剤Yが糸のように引き伸ばされる(いわゆる、粘着剤の糸引き)。糸引き状になった粘着剤Yは、その後、千切れる。千切れた糸状の粘着剤は、枚葉フィルム2の表面や切断端面、或いは、コンベアベルトの表面などに付着するようになる。特に、上述の軟らかい粘着剤からなる粘着剤層にあっては、切断端面における粘着剤の付着が生じ易い。
【0034】
この点、本発明のように、原反1を切断した直後に不要部分3を除去すると、不要部分3の切断端面と枚葉フィルム2の切断端面において、粘着剤が付着し難く、粘着剤の糸引きを防止できる。つまり、本発明は、切断端面において粘着剤が付着しない間に(すなわち、切断直後に)、不要部分3を引き出すので、粘着剤の糸引きを防止できる。よって、本発明の方法によれば、枚葉フィルム2やその周辺に粘着剤が付着して汚れることを防止できる。
【0035】
[変形例]
上記実施形態の切断処理部Cにおいては、打ち抜き方式のカッター装置を例示したが、例えば、
図14に示すように、回転式のカッター装置を用いてもよい。
回転式のカッター装置の場合、切断刃54を有するロータリーダイ55の周面と原反1とが接する箇所で、原反1が切断される。このため、回転式のカッター装置を用いた場合、最下流側の切断位置S2は、回転するロータリーダイ55の周面と原反1が接する接点である。また、回転式のカッター装置の場合、停止することなく原反1を一定速度で搬送し、これに同期して、不要部分3も同速度で引き出される。
【0036】
上記実施形態においては、不要部分3を上方に引き出して巻き取る方式であったが、例えば、
図15に示すように、不要部分3を下方に引き出し、回収ローラ62に巻き取ってもよい。
不要部分3を下方に引き出す場合、例えば、
図15に示すように、コンベアベルトの周面を利用して不要部分3を反転させることもできる。
【符号の説明】
【0037】
1 原反
11 第1フィルム
15,151,152 粘着剤層
12 第2フィルム
2 枚葉フィルム
3 不要部分
S1 分離点
S2 最下流側の切断位置
【手続補正書】
【提出日】2023-04-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1フィルムと粘着剤層と第2フィルムとを有する長尺帯状の原反を長手方向下流側に搬送し、前記原反を切断刃で切断して複数の枚葉フィルムを得る方法において、
前記粘着剤層の粘着剤の、25℃における貯蔵弾性率G’が、0.001MPa以上1MPa以下であり、
前記原反を、複数の枚葉フィルムと、前記各枚葉フィルムの周囲に残存する平面視網目状の不要部分と、に区画するように切断し、
前記切断によって生じた切断端面において前記粘着剤層の粘着剤が付着しない間に、前記不要部分を引き出して除去する、
枚葉フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記複数の枚葉フィルムと不要部分に区画された原反を、最下流側の切断位置から300cm以内に搬送するまでに、前記不要部分を引き出して除去する、請求項1に記載の枚葉フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記原反の第1フィルムが、偏光フィルムを含む、請求項1または2に記載の枚葉フィルムの製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明は、第1フィルムと粘着剤層と第2フィルムとを有する長尺帯状の原反を長手方向下流側に搬送し、前記原反を切断刃で切断して複数の枚葉フィルムを得る方法において、前記粘着剤層の粘着剤の、25℃における貯蔵弾性率G’が、0.001MPa以上1MPa以下であり、前記原反を、複数の枚葉フィルムと、前記各枚葉フィルムの周囲に残存する平面視網目状の不要部分と、に区画するように切断し、前記切断によって生じた切断端面において前記粘着剤層の粘着剤が付着しない間に、前記不要部分を引き出して除去する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明の製造方法によれば、不要部分を引き出した際に、粘着剤の糸引きが生じることを防止できる。よって、本発明によれば、枚葉フィルムやその周辺が粘着剤によって汚れることを防止できる。